説明

抗インフルエンザウイルス用組成物

【課題】容易に入手可能で、日常的に経口摂取でき、安全性に優れた抗インフルエンザウイルス組成物を提供する。
【解決手段】ラクトスクロース(β−D−ガラクトシル−(1,4)−α−D−グルコシル−(1,2)−β−D−フラクトシド)を有効成分として含有するインフルエンザウイルス感染予防・症状軽減作用を有する抗インフルエンザウイルス用組成物、該抗インフルエンザウイルス用組成物を含む飲食品、飲料、医薬品。
【効果】本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物によるウイルス感染予防効果は、あらかじめ該組成物を摂取しておくことで発揮されるため、本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物は、インフルエンザの型を問わない利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗インフルエンザウイルス用組成物に関するものであり、更に詳しくは、インフルエンザウイルス感染予防ならびにインフルエンザウイルス感染後の症状軽減作用を有する新規抗インフルエンザウイルス用組成物に関するものである。本発明は、容易に入手可能で、日常的に経口摂取でき、安全性に優れたラクトスクロースを用いて、インフルエンザウイルス感染予防あるいは感染後の症状を軽減することができる抗インフルエンザウイルス用組成物に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、インフルエンザウイルス(A型,B型,C型)の感染によって生ずる急性炎症であり、上気道より更に気管支などの下気道の炎症に及ぶことが多く、また、気道の症状と共に、高熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状が著明なことである。
【0003】
A型インフルエンザは、他の型に比べ世界的大流行を惹起することで知られている。近年は、型が異なるインフルエンザが混在して流行することも少なくないといわれ、A型,B型インフルエンザは、肺炎、気管支炎と合併することや、5才以下の年少者では、脳炎・脳症を併発する例も報告されている。一方、わが国においては、老齢者の増加に伴い、A型,B型インフルエンザの流行の影響は大きく、心・肺疾患保有者も同様に重症化する危険が高い。
【0004】
インフルエンザウイルス薬として、塩酸アマンタジンやオセルタミビルなどが承認されているが、副作用や耐性ウイルスの出現が危惧されており、効果的で安全性の高い予防薬や治療薬は未だ開発されていない。その理由は、インフルエンザウイルスの多様な抗原性変異にある。ヒトは、抗原特異的な抗体を生産することで生体防御を行っているが、インフルエンザウイルスの変異により特異的な抗体はその効力を失い、流行の原因となる。
【0005】
インフルエンザウイルス感染の予防は、ワクチンが主流であるが、ワクチンは、インフルエンザの流行状況や流行前の健康なヒトが持っている免疫状況などから、インフルエンザウイルスの抗原性を予測し製造される。しかし、インフルエンザウイルスは、先述の通り抗原性変異を起こしやすいため、ワクチンの抗原が流行しているウイルスと一致しないことが多く、ワクチンによる予防効果は満足のいくものではない場合がある。また、高齢者や児童への予防接種は現在では義務付けられていない。
【0006】
近年、食品成分を有効成分とする様々なインフルエンザウイルス感染予防剤として、例えば、タデ科植物由来の抗インフルエンザウイルス素材及びその用途、カシス果実由来のウイルス感染予防・治療剤、インフルエンザ感染予防のための医薬及び飲食品などが提案されているが、何れも過剰摂取や長期摂取した場合の安全性評価はなされておらず、一般的に入手困難な成分も多い(特許文献1,2,3)。
【0007】
一方、β−D−ガラクトシル−(1,4)−α−D−グルコシル−(1,2)−β−D−フラクトシド、すなわち、ラクトスクロースは、例えば、先行文献に記載されているように、スクロースとラクトースとを含有する溶液に、微生物由来のβ−フラクトフラノシダーゼを作用させ、このβ−フラクトフラノシダーゼの糖転移反応によって工業的に製造されるオリゴ糖である(特許文献5)。
【0008】
近年、ラクトスクロースは、難消化性、ビフィズス菌増殖促進作用、難う蝕性、保湿性、ミネラル吸収促進作用などの機能を有することが報告されている。また、ラクトスクロースは、消費者庁が許可する特定保健用食品の関与成分としても利用されており、安全性が高くかつ安価な食品素材である。他の先行文献には、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)を有効成分とする甲殻類及び魚類のウイルス感染予防治療剤が報告されている(特許文献4)。しかし、この文献のウイルス感染予防治療剤は、甲殻類及び魚類の特定の感染症を対象とするものであり、この文献には、インフルエンザウイルスの感染予防作用や感染時の症状軽減作用については記載も示唆もなされておらず、その他の先行文献を見てもラクトスクロースによる抗インフルエンザウイルス作用についての報告例は見あたらない。これらの先行技術に鑑みて、当技術分野においては、日常的に経口摂取することでインフルエンザ感染予防ならびに感染時の症状を軽微することが可能であり、安全かつ入手が容易な新しい物質の開発が切望されているところであり、そのような物質を有効成分とするインフルエンザ感染予防のための組成物、飲食品、飼料及び医薬などを開発することが強く要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−270098号公報
【特許文献2】特開2009−269861号公報
【特許文献3】特開2007−169200号公報
【特許文献4】特開平10−45605号公報
【特許文献5】特開平3−27285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、有効成分が安全かつ入手が容易な物質であって、日常的に経口摂取することができ、インフルエンザ感染予防ならびに感染時の症状を軽減することを可能にする新しいインフルエンザウイルス用組成物を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、ラクトスクロースがインフルエンザウイルス感染時の症状軽減作用を有し、ラクトスクロースを有効成分とする組成物により所期の目的を達成することができることを見出した。すなわち、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、ラクトスクロースがインフルエンザウイルス感染時の症状軽減作用を有するとの知見を得て、本発明を完成するに至った。本発明は、容易に入手可能で、日常的に経口摂取でき、安全性に優れた抗インフルエンザウイルス組成物、該抗インフルエンザウイルス用組成物を含む飲食品、飲料、及び医薬品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)ラクトスクロース(β−D−ガラクトシル−(1,4)−α−D−グルコシル−(1,2)−β−D−フラクトシド)を有効成分として含有するインフルエンザウイルス感染予防・症状軽減作用を有することを特徴とする抗インフルエンザウイルス用組成物。
(2)前記(1)記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする飲食品。
(3)上記飲食品が、特定保健用食品、保健機能食品、栄養機能食品、又は健康食品を含む、前記(2)記載の飲食品。
(4)前記(1)記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする飼料。
(5)前記(1)記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする医薬品。
【0012】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物は、有効成分としてラクトスクロースを含有することを特徴とするものである。ラクトスクロースの使用形態としては、本発明の効果を損ねない範囲で、通常、シラップ、含蜜結晶粉末、含水結晶、非晶質固体などから適宜選択することができる。また、ラクトスクロースとして、市販品を利用することができ、例えば、塩水港精糖株式会社により販売されているラクトスクロース含有食品(商品名「オリゴのおかげ」、商品名「オリゴのおかげダブルサポート」、商品名「LS−55P」など)を利用することが可能である。
【0013】
本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物におけるラクトスクロースの含量としては、ヒトを含む動物に摂取せしめてその作用が発揮されればよく、通常、固形物当たり、1〜100%(w/w)、好ましくは10〜100%(w/w)、更に好ましくは20〜100%(w/w)である。
【0014】
本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物の投与又は摂取方法としては、いかなる方法でも良いが、通常、経口経路が好ましい。投与又は摂取量としては、投与方法又は摂取方法、適用する動物の種類などを考慮して適宜決定すればよく、有効成分としてのラクトスクロースを、1日当たり、通常、0.001〜10g/kg体重の範囲内で投与又は摂取すればよい。
【0015】
ヒトの場合、ラクトスクロースの最大無作用量は0.6〜0.8g/kg体重であることが確認されていることから、この範囲を超えた摂取は、下痢を起こす可能性があるので注意が必要である。また、本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物は、ヒトと同様の免疫系を有する脊椎動物全般に適用することができ、例えば、カモ類、鶏、豚などの飼料や餌料に配合することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、次のような格別の作用効果が奏される。
(1)容易に入手可能で、日常的に経口摂取でき、安全性に優れたラクトスクロースを有効成分とする新しい抗インフルエンザウイルス用組成物を提供することができる。
(2)本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物を利用することにより、インフルエンザウイルス感染予防あるいは感染後の症状を軽減することができる。
(3)ラクトスクロースを有効成分として含有する抗インフルエンザウイルス用組成物を含む飲食品、飼料、若しくは医薬品を提供することができる。
(4)本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物によるウイルス感染予防効果は、あらかじめ該組成物を摂取しておくことで発揮されるため、本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物は、インフルエンザの型を問わない利点がある。
(5)本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物を含む飲食品、医薬品により、季節性インフルエンザに罹患する可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ラクトスクロースの致死量インフルエンザ感染時における体重減少抑制作用を示す。
【図2】図2は、ラクトスクロースの致死量インフルエンザ感染時における生存率上昇作用を示す。
【図3】図3は、ラクトスクロースの軽微なインフルエンザ感染時における体重減少抑制作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、それらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、致死量感染における抗インフルエンザウイルス作用試験(in vivo試験)を行った。
(1)被験試料の投与とインフルエンザウイルス感染
ラクトスクロースを用いて、致死量のインフルエンザウイルス感染マウスに対するインフルエンザウイルス感染予防作用を調べた。用いたインフルエンザウイルス株は、インフルエンザウイルスA(PR8株:H1N1、以下PR8)である。このインフルエンザウイルス価は、MDCK細胞(イヌ腎由来細胞)を用いてプラーク法にて測定し、3.8×10PFU/mLであった。
【0020】
具体的には、BALB/cマウス(5週齢、メス)を下記の2群(21匹ずつ)に分け、各群のマウスに致死量のPR8(300PFU/10μL/匹)を麻酔下で経鼻接種(経鼻感染)させ、感染の4週間前から感染後16日後の計40日間、第1群には対照としてAIN−93G飼料を、第2群には5%ラクトスクロース飼料を自由摂取させた。
【0021】
<マウス被験群>
第1群:対照群[AIN−93G飼料]
第2群:ラクトスクロース群
【0022】
(2)インフルエンザウイルス感染予防作用の評価
各被験群のマウスは、感染直前(感染日)から16日後まで、体重と死亡数を記録した。体重推移は、感染日の体重を100%として感染日の体重に対する割合で表した。また、感染から16日後に生存したマウスの肺は、摘出し、重量を測定後、病理組織解析を行い、炎症スコアを5段階評価、すなわち、5:炎症面積8割以上、4:炎症面積6割以上〜8割未満、3:炎症面積3割以上〜6割未満、2:炎症面積1割以上〜3割未満、1:炎症面積1割未満、0:炎症面積なし、の5段階で評価した。
【0023】
体重推移の対照群とラクトスクロース群間の違いについては、SPSS statics(SPSS Japan、統計解析ソフト)を使用し、繰り返しのある分散分析にて評価した。なお、体重推移は体重減少率が最も低下した10日後までで統計処理を行った。生存率の対照群とラクトスクロース群間の違いについては、SPSS staticsを用いてロングランク検定にて評価した。肺病理組織炎症スコアについては、SPSS statics用いて対応のないt検定にて評価した。
【0024】
(体重推移)
感染時から経時的に体重を測定し、感染日の体重に対する割合を求めた結果、図1に示す通り、ラクトスクロース群の体重減少は対照群と比較して有意に緩やかであった。
【0025】
(生存率)
生存率は、図2に示す通り、対照群が感染16日後で約14%であったのに対し、ラクトスクロース群では約57%の生存率を示し、有意に生存率が上昇した。
【0026】
(肺の重量、及び炎症スコア)
感染から16日後に生存したマウスにおける、肺の重量及び炎症スコアを表1に示す。肺重量は、対照群に対して、ラクトスクロース群は低値であった。肺の病理組織解析の結果、生存マウスの肺はいずれも間質性肺炎であり、炎症スコアは対照群が4.3に対して、ラクトスクロースは3.4であり、炎症スコアの低下が認められた。
【0027】
【表1】

【実施例2】
【0028】
本実施例では、軽微感染における抗インフルエンザウイルス作用試験(in vivo 試験)を行った。
(1)被験試料の投与とインフルエンザウイルス感染
ラクトスクロースを用いて、軽微なインフルエンザウイルス感染マウスに対するインフルエンザウイルス感染予防作用を調べた。
【0029】
具体的には、BALB/cマウス(5週齢、メス)を、下記の2群(9匹ずつ)に分け、各群のマウスに致死量の4分の1にあたるPR8(75PFU/10μL/匹)を麻酔下で経鼻接種(経鼻感染)させ、感染の2週間前から感染後7日後の計21日間、1群には対照としてAIN−93G飼料を、2群には5%ラクトスクロース飼料を自由摂取させた。
【0030】
<マウス被験群>
第1群:対照群[AIN−93G飼料]
第2群:ラクトスクロース群
【0031】
(2)インフルエンザウイルス感染予防作用の評価
すべてのマウスは、感染直前(感染日)から7日後まで体重と死亡数を記録した。体重推移は、感染日の体重を100%として感染日の体重に対する割合で表わした。また、感染7日後に生存したすべてのマウスの肺を採取して、重量測定ならびに肺のインフルエンザウイルス価をプラーク法にて定量した。
【0032】
(肺のウイルス価)
MDCK細胞を0.5×10 cells/wellで12well plateへ播種し1晩培養した後、培地を除き、PBS(−)で細胞を3回洗浄した。その後、ウイルスを含む肺ホモジネートを添加し、37℃で1時間培養することでウイルスを細胞へ吸着させ、余剰のウイルス液を除き、0.8% agarose、2μg/mL acetyltrypsinを含むE−MEM培地を添加した。
【0033】
次いで、agarose固化後、35℃の5%炭酸インキュベーター内で2〜3日間培養した。形成されたプラークをクリスタルバイオレット液で染色して白く抜けたプラークを観察し、プラーク数を求めた。プラーク数はマウス1匹(個体)あたりに換算した。
【0034】
体重推移の対照群とラクトスクロース群間の違いについては、SPSS staticsを使用し、群と感染後日数を因子とする二元配置分散分析にて評価し、有意差が認められた場合は、群間差を多重比較(Dunnettテスト)により評価した。肺重量は、SPSS staticsを用いて対応のないt検定にて、インフルエンザウイルス価については、SPSS staticsを用いてマン・ホイットニーのU検定にて評価した。
【0035】
(死亡数)
感染から5日後に対照群のマウスは1匹死亡したのに対して、ラクトスクロース群は死亡するマウスはなかった。
【0036】
(体重推移)
感染時から経時的に体重を測定し、感染日の体重に対する割合を求めた結果、図3に示す通り、ラクトスクロース群の体重減少は、対照群と比較して、感染4日後から7日後まで有意に高値を示し、すなわち体重減少が有意に抑制されたことが示された。
【0037】
(肺重量ならびにウイルス価)
感染7日後における肺の重量ならびにウイルス価を表2に示す。肺重量は、対照群に対してラクトスクロース群は低値であった。肺のウイルス価は、対照群に対してラクトスクロース群は有意に低値を示した。
【0038】
【表2】

【実施例3】
【0039】
本実施例では、成人におけるインフルエンザウイルス感染予防作用試験(ヒト試験)を行った。
ラクトスクロース含有食品を日常的に継続摂取することを推奨している企業Aにおけるインフルエンザウイルス罹患者数、予防接種の有無を調査した。調査は、過去5年間を対象に行い、厚生労働省公表資料、「2010年度及び2008年度インフルエンザ予防接種需要予測」3基礎的な分析 表1:接種率・罹患率に記載されている成人のインフルエンザ罹患率(診断)、と比較した。
【0040】
1)被験食品
日常的に入手可能なラクトスクロース含有食品(商品名「オリゴのおかげ」)を被験食品とした。本食品は、ラクトスクロースを固形分あたり42〜47%含む。
【0041】
2)試験方法
ラクトスクロース含有食品を日常的に継続摂取することを推奨している企業Aに在席する社員と家族を対象とし、アンケート調査の内容を説明し、同意の得られたボランティア101名(男性69名、女性32名)に、以下のアンケート調査を行った。
【0042】
なお、調査対象は健常成人(20歳以上65歳未満)とした。また、アンケートは、調査年を含む5シーズンとし、季節性インフルエンザ発症の定義は、医療機関を受診し、医師により季節性インフルエンザであると診断された場合を発症とした。なお、インフルエンザのシーズンとは、毎年第36週(8月末〜9月はじめ)からの1年間を示す。
【0043】
(アンケート調査の内容)
A オリゴのおかげ摂取状況(毎日、週4〜6日、週2〜3日、週1日、摂取なし)
B 予防接種の有無
C 季節性インフルエンザ発症の有無
【0044】
(結果の解析方法)
回収したアンケートで、A、B、C、いずれかが未記入のものは削除したところ、有効回答数は100名となった。100名のうち、5シーズンにおける季節性インフルエンザ発症総数は9例であった。5シーズンにおける、オリゴのおかげ摂取状況、季節性インフルエンザ発症数、予防接種率をまとめたところ、表3のようになった。
【0045】
【表3】

【0046】
得られたデータから、オリゴのおかげ未摂取のデータを除いた、すなわち、1週間のうち1日以上、オリゴのおかげを摂取している標本について、各シーズンにおけるインフルエンザ出現率を求め、厚生労働省公表資料、「2010年度及び2008年度インフルエンザ予防接種需要予測」3基礎的な分析 表1:接種率・罹患率に記載されている成人の季節性インフルエンザ罹患率(診断)、を用いて、出現率の比較検定を行った。その結果を表4に示した。
【0047】
【表4】

【0048】
シーズン2009〜2010、2007〜2008、2006〜2007の出現率を厚生労働省データと比較したところ、2009〜2010、2006〜2007シーズンにおいて、危険率5%で有意な差が認められた。
【0049】
なお、厚生労働省公表資料における予防接種率は、2009〜2010シーズンが35.55%、2007〜2008シーズンが26.19%、2006〜2007シーズンが20.95%であり、企業Aの予防接種率と大きな差はないことから、予防接種の影響は小さいものと考えられた。
【0050】
これらの結果より、オリゴ糖を週1回以上摂取している成人では、インフルエンザに罹患する可能性が低いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上詳述した通り、本発明は、抗インフルエンザウイルス用組成物に係るものであり、本発明により、容易に入手可能で、日常的に経口摂取でき、安全性に優れたラクトスクロースを用いて、インフルエンザウイルス感染予防あるいは感染後の症状を軽減することができる。また、本発明により、ラクトスクロースを有効成分として含有する抗インフルエンザウイルス用組成物を含む飲食品、飼料、あるいは医薬品を調製し、提供することができる。なお、本発明の抗インフルエンザウイルス用組成物によるウイルス感染予防効果は、あらかじめ該組成物を摂取しておくことで発揮されるため、インフルエンザの型を問わない利点がある。本発明は、インフルエンザウイルス感染時の症状軽減作用を有する抗インフルエンザウイルス用組成物、該組成物を含む飲食品、飼料、医薬品を提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトスクロース(β−D−ガラクトシル−(1,4)−α−D−グルコシル−(1,2)−β−D−フラクトシド)を有効成分として含有するインフルエンザウイルス感染予防・症状軽減作用を有することを特徴とする抗インフルエンザウイルス用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする飲食品。
【請求項3】
上記飲食品が、特定保健用食品、保健機能食品、栄養機能食品、又は健康食品を含む、請求項2記載の飲食品。
【請求項4】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする飼料。
【請求項5】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス用組成物を含むことを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214403(P2012−214403A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80442(P2011−80442)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390021636)塩水港精糖株式会社 (11)
【Fターム(参考)】