説明

抗グレリン抗体

アシル化および非アシル化ヒトグレリンと結合するヒト化抗体を含むモノクローナル抗体を開示する。本発明の抗体は、完全長抗体またはその抗原結合断片でありうる。本発明の抗体は、例えばグレリン活性が有害な障害に罹患したヒト対象においてグレリン活性を中和するのに有用である。組換え抗グレリン抗体を発現するための核酸、ベクター、および宿主細胞も本発明に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、詳細にはヒトグレリンに対するモノクローナル抗体の分野にある。より具体的には、本発明はアシル化および非アシル化形のヒトグレリンの両者と特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明の抗体はヒトグレリンのアミノ酸14〜27内に局在する抗原性エピトープと結合し、グレリンレベルまたは活性の低下が、例えば肥満および肥満関連疾患、例えばNIDDMの望ましい治療効果に寄与する哺乳動物の種々の疾患または障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
グレリンは、その一部が典型的には3位のアミノ酸がn-オクタノイル基でアシル化されている28アミノ酸のペプチドである(配列番号19参照)。グレリンホルモンはアシル化されると、下垂体の成長ホルモン分泌促進レセプター(GHS-R1a)と結合し、成長ホルモンの放出を刺激する。アシル化グレリンは、例えばエネルギーバランス、胃の運動性、および不安にも関与する(Masuda、et al.、Biochem Biophy Res Commun、276:905-908、2000;Asakawa、A. et al.、Neuroendocrinology、74:143-147、2001)。さらにアシル化形のグレリンはマウスに投与すると脂肪沈着をもたらす(Tschop、M. et al.、Nature 407:908-913、2000)。
【0003】
非アシル化または「des-アシル」形のグレリンは、GHS-R1aレセプターと結合しない(Kojima、M. et al.、Nature 402:656-660、1999)。血流中にアシル化グレリンより2.5倍高濃度で存在するdes-アシルグレリンは、生物活性がないわけではないことが示されている。des-アシルグレリンは、アシル化グレリンと心血管作用、細胞増殖の調節、および脂質生成に対する影響のようなある種の非内分泌作用を共有する(Broglio、F. et al.、J. Clin. Endo & Met.、89:3062-3065、2004)。des-アシルグレリンはまだ未同定のGHS-Rサブタイプと結合するかもしれない。
【0004】
グレリンは、主として胃で合成され、血中を循環する。グレリンの血清レベルは、動物の絶食中に増加し、食事前にピークとなりリフィーディンにより低下する(Kojima、M. et al.、Nature 402:656-660、1999、Cummings、et al.、New Eng. J. Med.、346:1623-1630、2002)。胃バイパス手術を受け、体重が最大36%減少したヒトでは循環グレリンレベルが著しく減少し、グレリン分泌の食前ピークがなくなることを示した。制御不能の食欲を伴う重度の肥満をもたらす遺伝的疾患であるプラダーウィリ症候群のヒトは、グレリンレベルがきわめて高い(Cummings、et al.、上記)。これらの観察結果は、グレリンが食欲に重要な役割を果たすことを示唆する。さらに、グレリンは代謝効率の増加が必要な時に視床下部に合図すると考えられる(Muller、et al.、Clin Endocrinol. 55:461-467、2001)。多くのグレリンに関する総説が利用可能である。例えば、van der Lely、A.、et al.、Endocrine Reviews 25:426-457、2004。
【0005】
国際特許公開公報WO 01/07475(EP1197496)は、ヒトを含む種々の種のグレリンアミノ酸配列を開示し、グレリンポピュレーションの一部は典型的には天然ヒトグレリンではセリンであるアミノ末端から3番目のアミノ酸がO-n-オクタン酸でアシル化されていることを開示している。WO 01/07475は、アシル化グレリンのアミノ末端の4アミノ酸はアシル化グレリンのGHSR1aレセプター結合活性に必須であることも示唆している。さらに該出願は情報伝達をもたらすペプチドであるグレリンの脂肪酸修飾ペプチドに対する抗体、およびグレリンをアッセイまたは検出するための該抗体の使用を開示している。
【0006】
国際特許公開公報WO 01/87335は、肥満を治療するための抗グレリン抗体を含むグレリンと特異的に結合する薬剤の使用を開示している。
【0007】
Eli Lilly and Companyが譲受した、発明の名称がすべて「抗グレリン抗体」である仮特許出願No.(i) 60/475,708(2003年6月4日出願)、(ii)60/491,352(2003年7月31日出願)、および(iii)60/501,465(2003年9月9日出願)は、非アシル化ヒトグレリンに対してアシル化ヒトグレリン(アシル化ヒトグレリンのアミノ酸1〜8内に局在するエピトープで)と選択的に結合する、肥満および肥満関連障害の治療に有用なモノクローナル抗グレリン抗体を開示している。
【0008】
Eli Lilly and Companyが譲受した、発明の名称がすべて「抗グレリン抗体」である仮特許出願No.(i)60/500,496(2003年9月5日出願)、(ii)60/572,249(2004年3月18日出願)、および(iii)2004年7月23日に出願の第3の出願は、ヒトグレリンのアミノ酸4〜20内に局在するエピトープでアシル化および非アシル化形の両ヒトグレリンと結合するモノクローナル抗グレリン抗体を開示している。
【0009】
国際特許公開公報WO 03/051389は、des-アシルグレリンの投与があるグレリン作用と拮抗することのより食後のインスリン抵抗性の誘導を予防しまたは減少させ、また、ある患者の体重を減少させるかもしれないことを開示している。
【0010】
Murakami、N. et al.は、ラットグレリンのアシル化アミノ末端11アミノ酸に対するポリクローナル抗グレリン抗体を脳室内投与により肥満ラットに投与した。該著者は、ラットによる食物摂取および体重のそれに続く減少を証明することができた。J. Endocrinology 174:283-288、2002。
【0011】
肥満は、体脂肪の過剰の蓄積を特徴とする複雑な慢性疾患であり、強い家族的要素がある。肥満は一般的に遺伝因子を含む因子の組み合わせの結果である。米国の総人口の約6%が病的肥満である。病的肥満は、肥満度指数が40以上であるか、またはより一般的に理解されているようにヒトの平均身長に対して100ポンド以上の体重超過があると定義される。肥満は他の障害および疾患と関連がある。すなわち、肥満は変形性関節炎、II型糖尿病、高血圧症、癌、および循環器病を含む約30の重症の医学的病状からの疾患のリスクを増大し、すべての原因からの死亡の増加と関連がある。さらに、肥満は鬱病と関連し、さらに運動の制限や身体持久力の低下を通してクオリティ・オブ・ライフに影響を及ぼしうる。
【0012】
現在、肥満の治療は限られている。体重を管理するための現在の治療的選択には、食事療法、身体活動の増大、および行動療法がある。残念なことに、これらの治療は大部分成功せず、失敗率は95%に達する。この失敗は、該病状が食欲増加、高カロリー食嗜好、身体活動の低下、および脂質合成代謝の増加に関与する遺伝的因子と強く関連するという事実によるかもしれない。これは、これら遺伝特性が遺伝するヒトは該病状と戦う努力にも関わらず肥満になる傾向があることを示す。限られた数の肥満患者に胃バイパス手術が利用可能である。しかしながら、このタイプの外科手術は大手術を伴い、患者が変更を望んでも容易に変更することができない。さらに、この療法が試みられても失敗することもありうる(例えば、Kriwanek、Langenbecks Archiv. Fur Chirurgie、38:70-74、1995参照)。薬剤療法の選択は、少なく利用が限られている。さらに、該薬剤の慢性使用は、長期投与による副作用およびトレランスをもたらしうる。また、薬剤を中断すると、体重が戻ることが多い。
【0013】
肥満、肥満関連障害および疾患、ならびに他の摂食障害およびグレリンレベルの上昇に関連する障害を治療する手段に対する大きな治療的要求がある。グレリンは、その摂食をもたらす役割により、治療的介在の望ましい標的である。特に、グレリンに対するモノクローナル抗体はそのような治療をもたらしうる。ヒト化型のそのようなモノクローナル抗体が治療的には特に重要である。さらに、グレリンは種を超えて配列および機能が高度に保存されているため、本発明のモノクローナル抗体がヒトだけでなく、スポーツ動物(例えばウマ)および食料源動物(例えばウシ、ブタ、およびヒツジ)および実験動物(例えばラット)を含む他の哺乳動物のグレリン関連疾患の治療にも有用である。本発明の抗グレリンモノクローナル抗体は、肥満、肥満関連疾患、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患の治療または予防に有用かもしれない。さらに、本発明の抗グレリンモノクローナル抗体は、アシル化または非アシル化形のグレリン、またはその両方のレベル低下または活性低下からの利益があるあらゆる疾患または障害の治療または予防に有用かもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(発明の要約)
本発明は、アシル化および非アシル化(「des-アシル」)形のヒトグレリン(「hグレリン」)の両方に共通のアミノ酸14-27(含む)に及ぶ抗原性ペプチド(すなわち、QRKESKKPPAKLQP、配列番号20)内に局在するエピトープと特異的に結合するhグレリンに対するモノクローナル抗体について記載する。そのような抗体は、本明細書では「抗hグレリンモノクローナル抗体」または「本発明抗体」または「本発明モノクローナル抗体」と呼ぶ。本発明モノクローナル抗体は、配列番号20に示す配列を有するペプチドがアシル化またはdes-アシル化グレリン内に局在するか、またはあらゆる付加的グレリン配列から独立しているときそれと特異的に結合することができよう。本発明モノクローナル抗体には、ネズミモノクローナル抗体、ならびにキメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体、およびその抗原結合断片がある。好ましくは本発明抗体は、均質または実質的に均質なポピュレーションで存在する。
【0015】
好ましくは、本発明抗体は、利用可能な実験的技術を用い、例えば、ELISAアッセイやBiacore(登録商標)アッセイのKD値により測定した、そのdes-アシルhグレリンとの特異結合より、アシル化hグレリンと6倍または5倍程度の、より好ましくは4倍または3倍程度の、最も好ましくは2倍程度の差で特異的に結合する。本発明抗体は、少なくとも1の、in vitroまたはin vivoまたはin situバイオアベイラビリティ、もしくはアシル化またはdes-アシルhグレリンまたはその両方と関連する生物学的特性を混乱させるかまたはそれらと拮抗する。
【0016】
好ましくは、本発明モノクローナル抗体は、koff値(1/sec)が10-3、10-4、10-5以下、より好ましくは10-6以下または10-7以下である。好ましくは、本発明モノクローナル抗体は、kon値(1/Msec)が105または106以上、より好ましくは107以上である。好ましくは、本発明モノクローナル抗体は、KD値(M)が10-9または10-10以下、より好ましくは10-11または10-12以下である。
【0017】
本発明は、本発明抗体と特異的に結合する抗原性エピトープを含むかまたはそれからなる「抗原性ペプチド」を提供する。該抗原性ペプチドは、ヒトグレリンの14、13、12、11、10、9、8、7、または6隣接アミノ酸に及び、ヒトグレリンのアミノ酸14-27(含む)に及ぶペプチド内に局在する。該抗原性ペプチドは、独立して存在するか、または非グレリンペプチド、例えば免疫増強剤、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と該抗原性ペプチドのC末端に付加されたアミノ酸、好ましくはシステイン残基を介して結合していてよい。該抗原性ペプチドを用いて非ヒト動物に投与し、本発明モノクローナル抗体を生成することができよう。
【0018】
ある態様において、本発明hグレリンモノクローナル抗体は、(a) 配列番号1、2、または3;(b) 配列番号4;(c) 配列番号5;(d) 配列番号6、7、または8;(e) 配列番号9、10、または11;および(f) 配列番号12からなる群から選ばれる配列を有するペプチド由来の少なくとも1または2個、より好ましくは3、4、または5個のペプチドを含む。好ましくは、配列番号1、2、または3で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在するときは、該ペプチドは軽鎖可変領域(「LCVR」)CDR1にある。好ましくは、配列番号4で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在する時は該ペプチドはLCVR CDR2にある。好ましくは、配列番号5で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在する時は該ペプチドはLCVR CDR3にある。好ましくは、配列番号6、7、または8で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在する時は該ペプチドは重鎖可変領域("HCVR") CDR1にある。好ましくは、配列番号9、10、または11で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在する時は該ペプチドはHCVR CDR2にある。好ましくは、配列番号12で示される配列を有するペプチドが本発明抗体中に存在する時は該ペプチドはHCVR CDR3にある。LCVRまたはHCVR内の隣接CDRの局在については本明細書の表2または配列番号13-16を参照のこと。
【0019】
ある態様は、配列番号1、4、5、6、9、および12で示される配列を有する6ペプチドを含む抗hグレリンモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、配列番号1に示す配列を有するペプチドはLCVR CDR1に局在し、配列番号4に示す配列を有するペプチドはLCVR CDR2に局在し、配列番号5に示す配列を有するペプチドはLCVR CDR3に局在し、配列番号6に示す配列を有するペプチドはHCVR CDR1に局在し、配列番号9に示す配列を有するペプチドはHCVR CDR2に局在し、配列番号12に示す配列を有するペプチドはHCVR CDR3に局在する(表1の3281参照)。
【0020】
別の態様は、配列番号2、4、5、6、9、および12で示される配列を有する6ペプチドを含む抗hグレリンモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、配列番号2のペプチドはLCVR CDR1に局在し、配列番号4のペプチドはLCVR CDR2に局在し、配列番号5のペプチドはLCVR CDR3に局在し、配列番号6のペプチドはHCVR CDR1に局在し、配列番号9のペプチドはHCVR CDR2に局在し、配列番号12のペプチドはHCVR CDR3に局在する(表1の4731参照)。
【0021】
別の態様は、配列番号2、4、5、7、10、および12で示される配列を有する6ペプチドを含む抗hグレリンモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、配列番号2のペプチドはLCVR CDR1に局在し、配列番号4のペプチドはLCVR CDR2に局在し、配列番号5のペプチドはLCVR CDR3に局在し、配列番号7のペプチドはHCVR CDR1に局在し、配列番号10のペプチドはHCVR CDR2に局在し、配列番号12のペプチドはHCVR CDR3に局在する(表1の4281参照)。
【0022】
別の態様は、配列番号3、4、5、8、11、および12で示される配列を有する6ペプチドを含む抗hグレリンモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、配列番号3のペプチドはLCVR CDR1に局在し、配列番号4のペプチドはLCVR CDR2に局在し、配列番号5のペプチドはLCVR CDR3に局在し、配列番号8のペプチドはHCVR CDR1に局在し、配列番号11のペプチドはHCVR CDR2に局在し、配列番号12のペプチドはHCVR CDR3に局在する(表1のコンセンサス参照)。
【0023】
別の態様において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、配列番号13または14に示す配列を有するペプチドを含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。別の態様において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、配列番号15または16に示す配列を有するペプチドを含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。別の態様において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、配列番号13または14に示す配列を有するペプチドを含むLCVRを含み、さらに配列番号15または16に示す配列を有するペプチドを含むHCVRを含む。本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、配列番号13に示す配列を有するペプチドを含むLCVRを含み、さらに配列番号15に示す配列を有するペプチドを含むHCVRを含んでよい。本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、配列番号14に示す配列を有するペプチドを含むLCVRを含み、さらに配列番号15または16に示す配列を有するペプチドを含むHCVRを含んでよい。
【0024】
好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のLCVR CDR1は、配列番号1、2、または3で示される配列を有するペプチドを含む。好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のLCVR CDR2は、配列番号4で示される配列を有するペプチドを含む。好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のLCVR CDR3は、配列番号5で示される配列を有するペプチドを含む。好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のHCVR CDR1は、配列番号6、7、または8で示される配列を有するペプチドを含む。好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のHCVR CDR2は、配列番号9、10、または11で示される配列を有するペプチドを含む。好ましくは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体のHCVR CDR3は、配列番号12で示される配列を有するペプチドを含む。
【0025】
さらに本発明は、当該分野で知られたあらゆる方法、好ましくは例えば本明細書の実施例に記載の競合的ELISAアッセイ、またはBIAcore(登録商標)アッセイ、またはFLIPRアッセイによるか、またはウエスタンブロット、免疫沈降法またはFACSにより測定される、抗体3281、4731、または4281のin vivoまたはin vitro結合を競合的に阻害する抗体を含む。
【0026】
さらに本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、およびIgDからなる群から選ばれる重鎖定常領域を含んでよい。好ましくは、該重鎖定常領域はIgG4またはIgG1である。さらに本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、κまたはλ鎖定常領域を含んでよい。
【0027】
本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、完全抗体(すなわち完全長)、実質的に完全抗体、Fab断片、F(ab')2断片、一本鎖Fv断片、またはそのあらゆる抗原結合(すなわち「抗原性ペプチド」結合)断片を含むか、またはそれからなってよい。
【0028】
本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、(a) LCVR CDR1に配列番号1、2、または3;(b) LCVR CDR2に配列番号4;(c) LCVR CDR3に配列番号5;(d) HCVR CDR1に配列番号6、7、または8;(e) HCVR CDR2に配列番号9、10、または11;および(f) HCVR CDR3に配列番号12からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる1、2、3、4、5、または6ペプチドを含んでよく、ここで、該ペプチドは該配列番号に示す配列に対して2または1の保存アミノ酸置換および/または末端欠失を有する。
【0029】
好ましい態様において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体はキメラ抗体である。より好ましい態様において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、該抗体中に存在するフレームワーク配列および定常領域がヒト起源であるかまたは実質的にヒト起源であるヒト化抗体である。ヒト化抗体は好ましくは完全長抗体である。あるいはまた、該抗体に存在するフレームワーク配列またはその部分および定常領域が、該抗体を治療剤として用いる動物(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ)のゲノムに実質的に由来していてよい。
【0030】
別の態様において、本発明は本発明抗体のLCVRを含むポリペプチドおよび/または本発明抗体のHCVRを含むポリペプチドをコードするDNA分子を含む単離核酸分子(すなわち、「本発明核酸分子」を提供する。典型的態様において、本発明抗体のLCVRを含むポリペプチド(例えば4731)は、配列番号17で示される配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる。別の態様において、本発明抗体のHCVRを含むポリペプチド(例えば4731)は、配列番号18で示される配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる。
【0031】
別の態様において、本発明は、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、ベクター、好ましくはプラスミド、組換え発現ベクター、酵母発現ベクター、またはレトロウイルス発現ベクターを提供する。あるいはまた、本発明のベクターは、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体中に存在するLCVRおよび/またはHCVRを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例として、本発明のベクターは配列番号17で示される配列を含むポリヌクレオチドおよび/または配列番号18で示される配列を含むポリヌクレオチドを含んでよい。
【0032】
本発明抗体のLCVRを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび/または本発明抗体のHCVRを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが1つのベクター中に存在するときは、該LCVRおよびHCVR配列は、それらがともに機能的に連結した1つのプロモーターから転写されるか、または機能的に連結した別個のプロモーターからそれぞれ独立して転写されてよい。該LCVRおよびHCVR配列をコードするDNA配列が同じベクター中に存在し、それらがともに機能的に連結した1つのプロモーターから転写される場合は、該LCVR配列は、HCVR配列の5’側にあるか、または該LCVR配列はHCVR配列の3’側にあってよく、さらに該ベクター中のLCVRおよびHCVRコード領域は、あらゆるサイズまたは含有量のリンカー配列により分離されていてよく、好ましくはそのようなリンカーは存在する時は内部リボソーム侵入部分を含むポリヌクレオチドである。
【0033】
別の態様において、本発明は本発明の核酸分子を含む宿主細胞を提供する。好ましくは「本発明の宿主細胞」は、本発明の核酸分子を含む1またはそれ以上のベクターまたは構築物を含む。本発明の宿主細胞は、本発明のベクターが導入される(例えば形質転換、形質導入、感染などを介して)細胞である。本発明は、本発明抗体に存在するLCVRを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターと本発明抗体に存在するHCVRを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの、本発明の2つのベクターが導入された宿主細胞も提供する(ここで、各LCVRおよびHCVRをコードする領域はプロモーター配列と機能的に連結している)。好ましくは、該ベクターは宿主細胞の染色体DNA中に統合される。該宿主細胞のタイプには哺乳動物、細菌、植物、および酵母細胞がある。好ましくは、該ベクターは宿主細胞の染色体DNAに統合される。好ましくは、該宿主細胞は、CHO細胞、CHO-K1細胞、COS細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、酵母細胞、または好ましい細胞種の誘導体または子孫である。
【0034】
別の態様において、本発明は本発明の宿主細胞を培養液中で培養し、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を細胞中で発現させることを含む本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体の合成方法を提供する。該抗体(またはその抗原結合断片)は、宿主細胞または好ましくは宿主細胞が増殖する培養液から精製される。
【0035】
本発明のさらなる態様は、(i)所望により免疫増強物質と結合している、ヒトグレリンのアミノ酸残基14-27に及ぶペプチド(配列番号18参照)の14、13、12、11、10、9、8、7、または6隣接アミノ酸を含むかまたはそれからなる免疫原性ポリペプチドで非ヒト動物、好ましくはマウスまたはラットを免疫し、(ii)当該分野で知られたあらゆる方法、好ましくはハイブリドーマ合成法により免疫動物からモノクローナル抗体を同定および単離することにより本発明抗体を製造する方法である。該抗グレリン抗体は、当該分野で利用可能なあらゆる方法(例えば、ファージ提示法、リボソーム提示法、酵母提示法、細菌提示法、ELISAアッセイ)によりスクリーニングし、ヒトグレリンのアミノ酸14-27内に局在する抗原性エピトープでアシル化hグレリンおよびdes-アシルhグレリンと特異的に結合する抗体を同定する。本発明のさらなる態様はこの方法により作製したモノクローナル抗体である。好ましくは、該モノクローナル抗体はあらゆる当該分野で知られた方法を用い、例えば、ELISAアッセイやBiacore(登録商標)アッセイのKD値により測定した、そのdes-アシルhグレリンとの結合より、アシル化hグレリンと6倍または5倍程度、より好ましくは4倍または3倍程度、最も好ましくは2倍程度の差で結合する。該抗体は当該分野で知られた方法を用いキメラ抗体またはヒト化抗体に変換することができ、これもまだ本発明の範囲内にあると予期される。
【0036】
種々の形の本発明抗体が本明細書において予期される。例えば、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、完全長抗体(例えばネズミまたは好ましくはヒト免疫グロブリン定常領域を有する)またはそのあらゆる抗原結合断片(例えばF(ab')2)であってよい。抗体のすべてのそのような形は本明細書において用語「抗体」内に含まれると理解される。さらに、該抗体は、当該分野で知られた方法に従って、検出可能な標識で標識し、固相上に固定し、および/またはヘテロローガスな化合物(例えば酵素もしくは毒素または他の検出可能な標識、例えば放射性標識、発色団、蛍光(fluorescer))と結合させてよい。
【0037】
本発明抗体の診断的使用も予期される。ある診断的応用において、本発明は、グレリンタンパク質を含むことが疑われる被検試料を本発明の抗hグレリン抗体に曝露し、該試料に対する抗体の特異結合を検出することを含むグレリンタンパク質の存在を検出する方法を提供する。本発明の抗hグレリン抗体を用い、既知量のグレリンを含む試料に対する該抗体の結合により作製した標準曲線と被検試料値を比較することにより被検試料中のグレリンレベルを測定することができよう。診断的使用では、本発明は本発明の抗体および例えば被検試料中のグレリンタンパク質を検出するのに抗体を使用するための取り扱い説明書を含むキットを提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供する。さらに本発明の医薬組成物は医薬的に許容される担体を含んでよい。該医薬組成物において、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体が活性成分である。好ましくは、該医薬組成物は本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体の均質または実質的に均質なポピュレーションを含む。治療的使用のための該組成物は無菌であり、凍結乾燥してよい。
【0039】
本発明は、活性がアシル化グレリンまたはdes-アシルグレリン、またはその両方から生じる、対象、好ましくはヒトのグレリン活性を阻害し、または活性グレリンレベルを低下させる方法であって、それを必要とする該対象に治療的有効量または予防的有効量の本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体を投与することを含む方法を提供する。さらに、本発明は、グレリンのGHS-R1aに対する結合から生じる情報伝達の阻害により改善される疾患または障害を治療または予防する方法であって、そのような治療または予防を必要とする対象または患者(例えばヒト)に治療的または予防的有効量の本発明モノクローナル抗体を投与することを含む方法を提供する。本明細書で用いている用語「グレリンのGHS-R1aに対する結合から生じる情報伝達の阻害により改善される疾病(病気)または障害(疾患)」は、アシル化グレリンまたはdes-アシルグレリンである存在するグレリンレベルの変化により利益があるかまたはグレリンレベルの異常に関連する病状を意味する。本発明モノクローナル抗体で治療または予防される病気または疾患には、限定されるものではないが対象、例えばヒトの肥満、肥満関連疾患、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患がある。
【0040】
本発明の態様は、肥満、肥満関連疾患、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患を治療するためのそれを必要とする対象、例えばヒトに投与するための医薬の製造に使用するための本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体である。
【0041】
さらに本発明の態様は、上記疾患を予防または治療するための家畜、食物源動物、スポーツ動物、および実験動物を含む他の哺乳動物に投与するための医薬の製造に使用するための本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体である。
【0042】
本発明の態様は、包装物質および該包装物質中に含まれる本発明のモノクローナル抗体を含む製品であり、ここで、該包装物質は、該抗体がグレリン活性を中和し、または活性グレリンレベルを低下させることを示す添付文書を含む。
表1:Fab 3281、4731、および4281のCDR配列
【0043】
【表1】

(発明の詳細な説明)
【0044】
本発明は、ヒトグレリンのアミノ酸14-27に局在する(すなわちその中にある)エピトープでヒトグレリンと特異的に結合することができる抗グレリン抗体(その抗原結合断片を含む)を提供する。好ましい抗グレリン抗体はグレリンに関連する生物活性を調節することができ、肥満および肥満関連疾患を含む種々の病気および病的状態の治療または予防に有用である。
【0045】
ヒトに存在するグレリンのある活性形は、典型的には3位に位置するセリンアミノ酸がn-オクタノイル基でアシル化されている28アミノ酸ペプチド(配列番号19)である。アシル化グレリンは成長ホルモン分泌促進レセプター1a(GHS-R1a)の内因性リガンドとして同定された(Kojima、M. et al. Nature 402:656-660、1999)。該アシル化グレリンは身体の多くの器官から分泌されるが、主として胃から分泌される。非アシル化または「des-アシル」形のグレリンはGHS-R1aと結合しないが、GHS-Rの別のサブタイプと結合するようである。
【0046】
最近、グレリンの主要な形の種々の修飾を有するグレリンペプチド(配列番号19)がヒト胃で同定された(Hosoda、H. et al.、J.Biol. Chem. 278:64-70、2003)。このマイナー形は、配列番号19に示す配列のC末端Argを各27アミノ酸グレリンペプチド、およびデカノイル化または3位がデカノイル化されたグレリンペプチドを含む。本発明抗体はアシル化およびdes-アシル形両方の、28および27アミノ酸形のhグレリン(またはC末端が欠失しているときはさらに短い形)と結合する。
【0047】
本明細書においてグレリンのアシル化形と具体的に言及する必要があるときは、本明細書では「アシル化グレリン」またはヒトグレリンに具体的に言及する時は「アシル化hグレリン」という。グレリンの非アシル化と具体的に言及するときは、本明細書では用語「des-アシルグレリン」または「des-アシルhグレリン」を用いる。
【0048】
抗体は、典型的には特異抗原との特異的結合を示すタンパク質またはポリペプチドである。天然に存在する完全長抗体は、ジスルフィド結合で相互に連結した4本のペプチド鎖、すなわち、2本の同じ重(H)鎖(完全長のとき約50〜70kDa)および2本の同じ軽(L)鎖(完全長のときは約25kDa)からなる免疫グロブリン分子である。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識を担う約100〜110アミノ酸またはそれ以上の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクター機能を担う定常領域を特徴付ける。
【0049】
軽鎖は、κまたはλに分類され、特定の定常領域により特徴付けられる。重鎖はγ、ν、α、δ、またはεに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義される。各重鎖のタイプは特定の定常領域により特徴付けられる。
【0050】
各重鎖は重鎖可変領域(本明細書では「HCVR」)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、IgG、IgD、およびIgAでは3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)、およびIgMおよびIgEでは4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書では「LCVR」)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1ドメイン、CLからなる。該HCVRおよびLCVR領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域がちりばめられた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各HCVRおよびLCVRは、3つのCDRと4つのFRからなり、それらはアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配列する:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各ドメインに対するアミノ酸の配置は、よく知られた慣例に従う[例えば、Kabat,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987および1991)、またはAl-Lazikani et al.、J. Mol. Biol. 273:927-948、1997に記載のChothia付番スキーム、インターネットサイト:www.rubic.rdg.ac.uk/〜andrew/bioinf.org/absも参照のこと]。特定の抗原と結合する抗体の機能的能力は、6CDRによりまとめて決定される。しかしながら、完全Fabより低親和性であるが、抗原に特異的な3CDRのみを含むただ1個の可変ドメインが抗原を認識し、それと結合する能力を有するかもしれない。
【0051】
本明細書において本発明の抗hグレリンについて用語「抗体」(または単に「本発明抗体」)は、モノクローナル抗体を表す。本明細書において「モノクローナル抗体」は、ネズミモノクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体を表す。本明細書において用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。本明細書において用語「モノクローナル抗体」は、それが製造される方法ではなく、例えばあらゆる真核性、原核性、またはファージクローンを含む単一コピーまたはクローンから誘導される抗体を表す。本明細書において「モノクローナル抗体」は、ネズミ抗体、またはキメラ抗体、またはヒト化抗体の、完全(完全または完全長)抗体、実質的に完全抗体、抗原結合部分を含む抗体の部分または断片、例えばFab断片、Fab'断片、またはF(ab')2断片であり得る。
【0052】
本明細書で用いている「抗原結合部分」または「抗原結合断片」は、抗原と相互作用し、抗体に抗原に対する特異性と親和性をもたらすアミノ酸残基を含む抗体分子の部分を表す。この抗体部分は抗原結合残基の正しいコンフォメーション(構造)を維持するのに必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体の抗原結合領域のCDRは、ネズミ起源または実質的にネズミ起源であろう。他の態様において、該抗原結合領域は、ウサギ、ラット、またはハムスターのような他の非ヒト種由来であり得る。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、二重特異性抗体(diabody)、一本鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多特異的抗体がある。
【0053】
さらに、本明細書で用いている「モノクローナル抗体」は、LCVRおよびHCVRをコードするDNAとリンカー配列を結合することにより生成される一本鎖Fv断片であり得る(Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol. 113、Rosenburg and Moore編、Springer-Verlag、New York、pp 269-315、1994参照)。断片が特定されるか否かに関わらず、本明細書で用いる用語「抗体」には該抗原結合断片および一本鎖形が含まれる。該タンパク質がその意図する標的(例えばエピトープまたは抗原)と特異的に結合する能力を保持する限り、用語「抗体」に含まれる。抗体はグリコシル化されていてもいなくてもよく、本発明の範囲内にあってもなくてもよい。
【0054】
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」は、抗体のポピュレーションに言及するときは均質または実質的に均質な(または純粋な)抗体ポピュレーションを表す(すなわち、ポピュレーション中の抗体の少なくとも約90%、92%、95%、96%、より好ましくは少なくとも約97%、または98%、またはより好ましくは少なくとも99%が同一であり、同じ抗原に対するELISAアッセイにおいて競合する。)。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより発現されるか、組換え的に発現するか、または当該分野ですでに知られた手段により合成的に合成されてよい。本明細書においてモノクローナル抗体には、抗グレリン抗体の可変(超可変を含む)ドメインを定常ドメインで(例えば「ヒト化」抗体)、または軽鎖を重鎖で、またはある種由来の鎖を別の種由来の鎖で、または融合物を起源の種や免疫グロブリンクラスまたはサブクラスの表示に関わらすヘテロローガスなタンパク質でスプライシングすることにより生成されたキメラ、ハイブリッド、および組換え抗体、ならびに望む生物活性または特性を示す限り抗体断片(例えば、Fab、F(ab')2、およびFv)が含まれる。例えば米国特許No.4,816,567およびMage et al.、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.79-97(Marcel Dekker、Inc.:New York、1987)参照。
【0055】
すなわち、用語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質なポピュレーションから得られる抗体の特性を示し、特定の方法を必要とすると解釈してはならない。例えば、本発明にしたがって用いるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein、Nature、256:495(1975)が最初に記載したハイブリドーマ技術により製造するか、または、または米国特許No.4,816,567に記載のような組換えDNA法により製造してよい。「モノクローナル抗体」は、例えばMcCafferty et al.、Nature、348:552-554(1990)に記載の技術を用いて作製されるファージライブラリーから単離してもよい。
【0056】
本明細書において用語「特異(的)結合」または「特異的に結合する」は、抗体またはその抗原結合部分が、抗原性エピトープを含むペプチドであるその特異的結合パートナー以外の分子といかなる有意な結合も示さない(すなわち10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以下)状況を表す。該用語は、例えば本発明抗体の抗原結合ドメインが多くの抗原が含む特定のエピトープに特異的である場合にも適用でき、その場合は、抗原結合ドメインを有する該特異抗体は該エピトープを含む種々の抗原と結合することができるであろう。本発明のモノクローナル抗体は、配列番号20を含むグレリン分子と選択的に結合し、非グレリンタンパク質と結合しない(または弱く結合する)であろう。最も好ましい抗体は、ヒトグレリンのアミノ酸14-27と特異的に結合するだろう。
【0057】
本発明の抗体に言及して用語「生物学的特性」または「生物学的特徴」または用語「生物(学的)活性」または「バイオアクティビティ」は、本明細書で互換性に用い、限定されるものではないが、例として哺乳動物細胞の少なくとも1タイプにおける細胞内カルシウムレベル、エピトープ/抗原親和性および特異性(例えばグレリンと結合する抗グレリンモノクローナル抗体)、in vivo、in vitro、またはin situでアシル化またはdes-アシルグレリンの活性と拮抗する能力(例えば成長ホルモン放出)、抗体のin vivo安定性、および抗体の免疫原性の変化を含むグレリン活性(アシル化またはdes-アシル)、グレリンレベル、またはグレリン活性化を調節する能力を有することが含まれる。当該分野で認識される抗体の他の同定可能な生物学的特性または特徴には、例えば交差反応性(すなわち、標的ペプチドの非ヒトホモログまたは一般的には他のタンパク質または組織との)、および哺乳動物細胞のタンパク質の高発現レベルを保つ能力が含まれる。前記特性または特徴は、限定されるものではないがELISA、競合ELISA、BIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴分析、in vitroおよびin vivo中和アッセイ(例えば、実施例2-5参照)、およびヒト、霊長類、または必要とされるあらゆる他の供給源を含む種々の供給源由来の組織切片との免疫組織化学を含む当該分野で認識された技術を用いて観察または測定することができる。
【0058】
用語「阻害する」または「阻害」は、例えば限定されるものではないが生物学的活性または特性、疾病または病状を含む阻害されるものの進行または重症度を中和し、拮抗し、妨げ、抑制し、制止し、遅らせ、崩壊させ、止め、または逆転させることを意味する。
【0059】
用語「単離(された)」は、核酸またはタンパク質(例えば抗体)と関連して用いる場合は、それが天然供給源中に最初に結合している少なくとも1の夾雑物(それぞれ核酸またはタンパク質)から分離および同定された核酸分子またはタンパク質分子を表す。単離核酸またはタンパク質は天然でみられるのと異なる形または設定で存在する。反対に、非単離核酸またはタンパク質は天然に存在する状態でみいだされる。好ましくは、「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体である(例えばグレリンペプチド以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まないグレリンと特異的に結合する単離抗体を含む本発明の医薬組成物)。
【0060】
用語「Kabat付番(番号付け)」および「Kabat表示(ラベリング)」は、本明細書では互換性に用いる。当該分野で認識されるこれら用語は、抗体の重および軽鎖可変領域において他のアミノ酸残基より可変性(すなわち超可変)であるアミノ酸残基の付番システムを表す(Kabat、et al.、Ann. NY Acad. Sci. 190:382-93(1971);Kabat、et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第15版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242(1991))。
【0061】
ポリヌクレオチドは、それが別のポリヌクレオチドと機能的関係にあるときは「機能的に連結している」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーはそれが配列の転写に影響を与える場合はコーディング配列と機能的に連結している。
【0062】
本発明の抗hグレリン(または抗グレリン)モノクローナル抗体に関して用語「中和(する)」または「拮抗(する)」または用語「グレリン活性と拮抗する(を中和する)抗体」または「グレリンと拮抗する(を中和する)」は、hグレリンとの結合または接触がアシル化またはdes-アシルヒトグレリンにより誘導される生物活性の阻害をもたらす抗体を表すことを意図する。hグレリン生物活性の阻害は、限定されるものではないが体重低下の誘導、摂食変化、またはレセプター結合の阻害(例えばレセプター結合アッセイについてはWO 01/87335参照)またはグレリンレセプター結合アッセイにおける情報伝達の阻害を含むhグレリン生物活性の1またはそれ以上のin vitroまたはin vivo指標を測定することにより評価することができる。グレリンの生物活性の指標は、当該分野で知られた1またはそれ以上の種々のin vitroまたはin vivoアッセイにより評価することができる。好ましくは、抗グレリン抗体のグレリン活性を中和または拮抗する能力は本明細書の実施例4に記載のFLIPRアッセイを用いて評価される。
【0063】
本明細書で互換性に用いる用語「個体」、「対象」、および「患者」は、限定されるものではないがネズミ、サル、ヒト、哺乳類の家畜、哺乳類のスポーツ動物、哺乳類のペット、および哺乳類の実験動物を含む哺乳動物を表し、好ましくは該用語はヒトを表す。
【0064】
本明細書で用いる用語「Koff」は、抗体/抗原複合体から抗体を解離するための分離速度定数(off rate constant)を表す。抗グレリンモノクローナル抗体の解離速度定数(Koff)は、本明細書の実施例5に一般的に記載したBIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴法により測定することができる。一般的には、BIAcore(登録商標)分析は、BIAcore(登録商標)システム(Pharmacia Biosensor、Piscataway、NJ)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によりリガンド(バイオセンサーマトリックス上に固定化した組換えグレリンペプチド)と測定物質(溶液中の抗体)のリアルタイム結合相互作用を測定する。SPRは測定物質(バイオセンサーマトリックス上の抗体)を固定化し、溶液中のリガンドの示すことにより行うこともできる。
【0065】
本明細書で用いる用語「KD」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を表す。本発明の目的においてKDは実施例5に示すように測定する。特定エピトープと高親和性に結合する抗体は、10-8Mまたはそれ以下、より好ましくは10-9Mまたはそれ以下、最も好ましくは5x10-10Mまたはそれ以下のKDを有する。
【0066】
用語「ベクター」には、結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を含み、これには限定されるものではないがプラスミドベクター、酵母発現ベクター、レトロウイルス発現ベクター、および他のウイルスベクターが含まれる。ある種のベクターは、それが導入された宿主細胞中で自己複製することができるが、他のベクターは、宿主細胞中に導入されると宿主細胞のゲノムに統合され、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、ベクター内のプロモーターが機能的に連結している遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」といい、典型的ベクターは当該分野でよく知られている。
【0067】
用語「宿主細胞」には、本発明のあらゆる組換えベクターまたは単離ポリヌクレオチドのレシピエントである個々の細胞または細胞培養が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、該子孫は、天然、偶発的、または意図的突然変異および/または変化により元の親細胞と必ずしも完全に同一でないかもしれない(形態学的または全DNA相補性において)。宿主細胞には、本発明の(1またはそれ以上の)組換えベクターまたはポリヌクレオチドでin vivoまたはin vitroでトランスフェクト、形質転換、エレクトロポーレート、または感染させた細胞を含む。宿主細胞は、宿主染色体内に安定に組み込まれているかまたは組み込まれていない本発明の組換えベクターを含み、「組換え宿主細胞」と呼ぶこともできよう。本発明に用いる好ましい宿主細胞には、CHO細胞(例えばATCC CRL-9096)、CHO-K1細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、およびCOS細胞(ATCC、例えば、CRL-1650、CRL-1651)、およびHeLa(ATCC CCL-2)、およびその誘導体および子孫がある。本発明に用いるさらなる宿主細胞には植物細胞、酵母細胞、および他の哺乳動物または細菌細胞がある。
【0068】
本発明は、アシル化hグレリンおよびdes-アシルhグレリンと特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明抗体は、アシル化hグレリンまたはdes-アシルhグレリンまたはその両方であるhグレリンまたはhグレリンの生物活性を中和する。阻害される活性は、好ましくは(i)アシル化hグレリンのレセプターGHS-R1aに対する結合、(ii)アシル化hグレリンとGHS-R1aとの結合により促進される情報伝達、(iii)des-アシルhグレリンとそれが特異的に結合する結合パートナーとの結合、または(iv)des-アシルhグレリンとそれが特異的に結合する結合パートナーとの結合により促進される情報伝達である。本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体(その抗原結合部分、および同様な特異性を有するヒト化モノクローナル抗体を含む)とhグレリン(アシル化およびdes-アシル形の両方)との特異的結合は、該抗体を、グレリン関連疾病および障害、すなわち対象に存在する活性グレリンレベルまたはグレリンの生物活性を低下させるかまたは阻害することから利益が得られる疾病または疾患のための治療薬または予防薬として用いることを可能にする。
エピトープの同定
【0069】
本発明抗体が結合するエピトープはヒトグレリンのアミノ酸14-27(配列番号20)内に局在する。用語「エピトープ」は、抗体の抗原結合領域の1またはそれ以上で抗体により認識され、またはそれと結合することができるあらゆる分子の部分を表す。エピトープは、しばしばアミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面の群分けからなり、特異的3次元構造的特性および特異的荷電特性を有する。「エピトープを阻害する」および/または「エピトープを中和する」とは、エピトープが抗体と特異的に結合した時にin vivo、in vitro、またはin situで該エピトープを含む分子または生物の生物活性の損失または減少をもたらすことを意図する。
【0070】
本明細書で用いる用語「エピトープ」は、さらに動物、好ましくは哺乳動物、例えばマウスまたはヒトにおいて抗原性または免疫原性活性を有するポリペプチドの部分を表す。本明細書で用いる用語「抗原性エピトープ」は、当該分野でよく知られたあらゆる方法、例えば常套的イムノアッセイにより測定される抗体が特異的に結合するポリペプチドの部分と定義する。抗原性エピトープは必ずしも免疫原性である必要はないが、免疫原性であってよい。本明細書で用いる「免疫原性エピトープ」は、当該分野で知られたあらゆる方法により測定される動物の抗体反応を誘発するポリペプチドの部分と定義する(例えば、Geysen et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002(1983)参照)。
【0071】
本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体(「本発明抗体」)はhグレリンのアシル化およびdes-アシル形の両方と特異的に結合する。それが結合するエピトープ、すなわち抗原性エピトープは、ヒトグレリンのアミノ酸14-27に局在する。抗原性エピトープは、ヒトグレリンのアミノ酸14-27(含む)におよぶペプチド(配列番号19)の14、13、12、11、10、9、8、7、または6隣接アミノ酸を含む。該抗原性エピトープは、ヒトグレリンのアミノ酸14-27の外側にさらなるグレリン残基を有してよいが、本発明のモノクローナル抗体は該抗原性エピトープと特異的に結合するためにこのさらなる残基を必要としない。アミノ酸14-27抗原性エピトープの外側のhグレリンのさらなるグレリン残基は、抗原性エピトープのコンフォメーション構造に影響を与え、本発明抗体の抗原性エピトープに対する結合特性を変化させるかもしれない。しかしながら、本発明のモノクローナル抗体はアシル化されているかいないに関わらず完全長ヒトグレリンと特異的に結合する。本発明のモノクローナル抗体は、例えば、ELISAアッセイやBiacore(登録商標)アッセイのKD値により測定した、そのdes-アシルhグレリンとの特異結合より、アシル化hグレリンと6倍または5倍程度の、より好ましくは4倍または3倍程度の、最も好ましくは2倍程度の差で特異的に結合する。
【0072】
本明細書の実施例の項に記載のELISA、BIAcore(登録商標)、およびFLIPRアッセイは、Fab 3281、4731、および4281がヒトまたはラットのアシル化またはdes-アシルグレリンのアミノ酸14-27内に局在する同様のエピトープと結合することを示し、hグレリンのアミノ酸3のアシル基がエピトープの部分でないことを示唆する。ラットグレリンはアミノ酸11および12以外はヒトグレリンと同じである。これらデータはアミノ酸11および12が本発明のFabと結合するエピトープの部分でないことを示唆する。さらに、hグレリン20-28およびhグレリン18-28は本発明のFabとの結合に関して完全長hグレリンと競合しない。Fab3281との結合に関してhグレリン20-28または18-28ペプチドは完全長hグレリンと統計的な競合を示さない。このデータはアミノ酸20-28またはアミノ酸18-28におよぶグレリンポリペプチドは完全エピトープをもたらさないことを示唆する。しかしながら、ヒトグレリンのアミノ酸1-28または1-27または14-28におよぶグレリンポリペプチドは、完全な抗原性ポリペプチドをもたらす。線状エピトープは、8-12アミノ酸の最適長を有し、線状エピトープの最小サイズは約6アミノ酸残基であると当該分野で一般に考えられている。しかしながら、線状エピトープは長さが30アミノ酸以上あるかもしれない(例えば、Oleksiewicz、MB et al.、J. Virology、75:3277-3290、2001;Torrez-Martinez、N.、et al.、Virology、211: 336-338、1995参照)。
【0073】
hグレリンのアミノ酸14-27(含む)におよぶドメインは、本発明のモノクローナル抗体を製造するための免疫原性抗原として用いてもよい。このドメイン(すなわちQRKESKKPPAKLWP、配列番号20)またはその融合タンパク質は、非ヒト動物、好ましくはマウスを免疫するのに用いてよい。種々の抗体製造方法が当該分野でよく知られている。例えば、単離または免疫結合形のグレリンタンパク質、ポリペプチド、または断片を用いて適切な哺乳動物宿主を免疫することにより抗体を製造してよい(Harlow、Antibodies、Cold Spring Harbor Press、NY(1989))。さらに、グレリンの融合タンパク質または抗原性ペプチドを用いることもでよう。グレリンを発現または過剰発現する細胞を免疫に用いてもよい。同様に、グレリンまたはグレリンの抗原性ペプチドを発現するように操作したあらゆる細胞を用いてよい。
【0074】
ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、典型的には免疫物質と特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を刺激する免疫物質で免疫される。あるいはまた、該リンパ球をin vitroで免疫してよい。一般的には、ヒト起源の細胞を望む場合は末梢血リンパ球(「PBL」)を用い、非ヒト哺乳動物供給源を望む場合は脾臓細胞やリンパ節細胞を用いる。次に、リンパ球を適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて不死化細胞系と融合させハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press,(1986) pp. 59-1031)。不死化細胞系は、通常、形質転換哺乳動物細胞、特に齧歯類、ウシ、およびヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラットまたはマウスミエローマ細胞系はKohlerおよびMilsteinの標準的方法、または一般に知られた改良法を用いて使用する。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは非融合不死化細胞の増殖や生存を阻害する1またはそれ以上の物質を含む適切な培養液中で培養してよい。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合は、典型的には、ハイブリドーマ用培養液は、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含むであろう。
【0075】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体発現を指示し、HAT培地のような培地に感受性であるものである。より好ましい不死化細胞系は、例えばSalk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.およびAmerican Type Culture Collection、Manassas、Vaから入手できるネズミミエローマ系である。そのようなネズミミエローマ細胞系の例にはP3X63AgU.1がある。ヒトミエローマおよびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系もヒトモノクローナル抗体の製造用に記載されている[Kozbor、J. Immunol.、133:3001(1984);Brodeur et al.、Monoclonal Antibodies Production Techniques and Applications、Marcel Dekker、Inc.、New York,(1987) pp. 51-63)]。
【0076】
次に、ハイブリドーマ細胞を培養する培養液を、抗原性エピトープまたは抗原性エピトープを含むペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生成されるモノクローナル抗体の特異的結合は免疫沈降法、またはin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、または酵素免疫測定法(ELISA)により測定される。そのような技術およびアッセイは当該分野でよく知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson and Pollard、Anal. Biochem.、107:220(1980)のScatchard分析、またはBIAcore(登録商標)アッセイにより測定することができる。
【0077】
所望の抗体を分泌する適切な不死化細胞培養を同定するときは、細胞をin vitroでまたは腹水中で産生することにより培養することができる。所望するハイブリドーマ細胞を同定し、次いでクローンを限界希釈法により継代し、標準的方法により増殖させてよい[Goding、上記)。このための適切な培養液には、例えばDulbecco's Modified Eagle's Medium(ダルベッコ変法イーグル培地)またはRPMI-1640培地がある。あるいはまた、ハイブリドーマ細胞をin vivoで哺乳動物中で腹水として増殖させてよい。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体を例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィのような常套的免疫グロブリン精製法により培養液または腹水液から単離し、精製してよい。
【0078】
モノクローナル抗体は米国特許No.4,816,567に記載のような組換えDNA法により製造してもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的方法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に単離し、シークエンスすることができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。単離したら、DNAを発現ベクター中に置き、次いで、そうしなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えばシミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成をもたらす。DNAは、例えばホモローガスなネズミ配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換する(米国特許No.4,816,567)か、または免疫グロブリンコーディング配列を非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列の全てまたは部分と共有結合させることにより修飾してもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを本発明抗体の定常ドメインと置換するか、または本発明抗体のある抗原結合部位の可変領域と置換してキメラ二価抗体を製造してもよい。
【0079】
抗hグレリン抗体を免疫動物から単離し、当該分野でよく知られた方法によりスクリーニングしてアシル化およびdes-アシル形の両hグレリンのアミノ酸14-27におよぶポリペプチドと特異的に結合する抗体を単離する。そのような単離法およびスクリーニング法は当該分野でよく知られている[例えば、Kohler and Milstein、Nature、256:495(1975)、Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、Academic Press,(1986) pp. 59-1031、Kozbor、J. Immunol.、133:3001(1984); Brodeur et al.、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker、Inc.、New York,(1987) pp. 51-63)、米国特許No.4,816,567参照]。
【0080】
本発明抗体は一価抗体を含みうる。一価抗体の製造方法は当該分野でよく知られている。例えば、ある方法は免疫グロブリン軽鎖および修飾重鎖の組換え発現が含まれる。重鎖は、一般的には重鎖の架橋を抑制するためFc領域のあらゆる点でトランケートされる。あるいはまた、関連システイン残基は、架橋を抑制するため別のアミノ酸残基で置換されるか、または欠失している。
【0081】
In vitro法も一価抗体を製造するのに適している。抗体断片、具体的にはFab抗体を製造するための抗体の消化は、当該分野で知られた常套的技術を用いて達成することができる。例えば、消化はパパインを用いて行うことができる。パパイン消化の例は、米国特許No.4,342,566に記載されている。抗体のパパイン消化は典型的にはそれぞれ1個の抗原結合部位を有するFab断片と呼ばれる2つの同じ抗原結合断片と残りのFc断片を生じる。パパイン処理は、2つの抗原結合部位を有し、まだ抗原と架橋することができるF(ab')2断片を生じる。
【0082】
抗体の消化により生じるFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメインも含む。Fab'断片は、重鎖CHのカルボキシ末端に少数の残基が付加することがFabと異なり、ドメインは抗体ヒンジ領域由来の1またはそれ以上のシステインを含む。Fab'-SHは、本明細書において定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'を示す。F(ab')2抗体断片は、最初はその間にヒンジシステインを有するFab'断片対として生じる。抗体断片の他の化学カップリングも知られている。一本鎖Fv断片は、Iliades et al.、FEBS Letters、409:437-441、1997に記載のように製造してもよい。種々のリンカーを用いるそのような一本鎖断片のカップリングはKortt et al.、Protein Engineering、10:423-433(1997)に記載されている。さらに、単離抗体は、当該分野でよく知られた方法を用いてキメラまたはヒト化形に変更してよい。この方法により単離されたモノクローナル抗hグレリン抗体は本発明の範囲内にあると予期される。
【0083】
好ましい態様において、本発明は、平衡解離定数KDが10-7または10-8Mまたはそれ以下の、より好ましくは10-9Mまたはそれ以下の(室温でBIAcore(登録商標)表面プラズモン共鳴により測定した)ヒトグレリン(アシル化またはdes-アシル)のアミノ酸14-27内に局在するエピトープを含むかまたはからなり、ヒトグレリンの活性と拮抗する能力を有する単離抗hグレリンモノクローナル抗体を提供する。
【0084】
本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体は、例えば本明細書の実施例3および4に記載のFLIPRアッセイにより示されるhグレリン介在活性を阻害する。好ましくは、該hグレリン介在活性は、40nMまたはそれ以下、より好ましくは20nMまたはそれ以下、10nMまたはそれ以下、5nMまたはそれ以下、4nMまたはそれ以下、3nMまたはそれ以下、最も好ましくは2nMまたはそれ以下、または1nMまたはそれ以下のIC50、または0.8nMまたはそれ以下のIC50で阻害される。
【0085】
ある態様において、好ましい抗hグレリンFabは、本明細書において3281および4731で示されるものである。3281Fabは、それぞれ配列番号13および配列番号15で示される配列を有するペプチドを含むLCVRおよびHCVRを有する。4731Fabは、それぞれ配列番号14および配列番号15で示される配列を有するペプチドを含むLCVRおよびHCVRを有する。Fab4731のLCVRおよびHCVRをコードする典型的ポリヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号17および配列番号18で示される。
【0086】
本発明は、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を生じる細胞系にも関する。本発明のモノクローナル抗体を生じる細胞系の作製および単離は当該分野で知られた常套的技術を用いて達成することができる。好ましい細胞系にはCOS、CHO、SP2/0、NS0、HeLa、および酵母(公共の保管所、例えばATCC、American Type Culture Collection、Manassas、VAから入手できる)がある。
【0087】
原核性および真核性発現系(例えば酵母、バクロウイルス、植物、哺乳動物、および他の動物細胞、トランスジェニック動物、およびハイブリドーマ細胞)、およびファージ提示発現系を含む種々の宿主発現系を用いて本発明抗体を発現させることができる。適切な細菌発現ベクターの例にはpUC119があり、適切な真核性発現ベクターには弱DHFR選択系を用いる修飾pcDNA3.1がある。他の抗体発現系も当該分野で知られており、本明細書において予期される。
【0088】
本発明抗体は宿主細胞の免疫グロブリン軽および重鎖遺伝子の組み換え発現により製造することができる。抗体を組換え的に発現させるには本発明抗体の免疫グロブリン軽および重鎖をコードするDNA断片を有する1またはそれ以上の組換え発現ベクターをトランスフェクション、形質転換、感染などを介して宿主細胞内に導入し、本発明抗体またはその抗原結合断片を宿主細胞中で発現させる。好ましくは、抗体は宿主細胞が培養される培地中に分泌され、それから回収または精製することができる。標準的組換えDNA方法論を用いて抗体重および軽鎖遺伝子を得、これら遺伝子を組換え発現ベクターに組み込み、次いで該ベクターを宿主細胞に導入する。そのような標準的組換えDNA技術は、例えばSambrook、Fritsch、and Maniatis(編)、Molecular Cloning; A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.,(1989);およびAusubel、et al(編) Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates,(1989)に記載されている。
【0089】
HCVR領域をコードする単離DNAは、HCVRをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2、およびCH3)をコードする別のDNA分子と機能的に連結することにより完全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当該分野で知られている。例えば、Kabat、et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242(1991)参照。これら領域を含むDNA断片は標準的PCR増幅法から得ることができる。重鎖定常領域はKabat(上記)に記載のようなあらゆるタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgM、またはIgD)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、またはサブクラスの定常領域、またはそのあらゆるアロタイプ変異体でありうるが、IgG4またはIgG1定常領域が最も好ましい。あるいはまた、抗原結合部分は、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fd、または一本鎖Fv断片(scFv)であり得る。Fab断片重鎖遺伝子について、HCVRコーディングDNAは重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と機能的に連結することができる。
【0090】
LCVR領域をコードする単離DNAは、LCVRコーディングDNAを軽鎖定常領域CLをコードする別のDNAと機能的に連結することにより完全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該分野で知られている。例えば、Kabat、上記参照。これら領域を含むDNA断片は標準的PCR増幅法により得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域であり得る。
【0091】
scFv遺伝子を作製するには、HCVR-およびLCVR-コーディングDNA断片を、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードするフレキシブルリンカーをコードする別の断片と機能的に連結し、HCVRおよびLCVR配列をLCVRおよびHCVR領域がフレキシブルリンカーで連結された隣接一本鎖タンパク質として発現させることができる。例えば、Bird、et al.、Science 242:423-426(1988); Huston、et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988);McCafferty、et al.、Nature 348:552-554(1990)参照。
【0092】
本発明抗体を発現するには、上記で得られる部分または完全長軽および/または重鎖を含むDNAを発現ベクターに挿入し、該遺伝子を転写および翻訳制御配列と機能的に連結する。該部分または完全長軽および/または重鎖はそれぞれ別個のプロモーター配列と機能的に連結するか、または1つのプロモーターと機能的に連結してよい。LCVRおよびHCVRを含む配列(該配列はさらに抗体の定常領域と機能的に連結していてよい)が同じベクター中に存在し、いずれもが機能的に連結している1つのプロモーターから転写される場合は、LCVRを含む配列はHCVRを含む配列に対して5’または3’であってよい。さらに、ベクター中のLCVRおよびHCVRコーディング領域は、あらゆるサイズまたは容量のリンカー配列により分離していてよく、存在するときは好ましくはそのようなリンカーは内部リボソーム侵入部位をコードする配列を含む。
【0093】
発現ベクターおよび発現制御配列は用いる発現宿主細胞と適合性であるように選ばれる。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別個の発現ベクターに挿入することができるか、より典型的には両遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は標準的方法により発現ベクター中に挿入される。さらに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗グレリンモノクローナル抗体軽鎖および/または重鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗グレリンモノクローナル抗体軽鎖および/または重鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端とin-frame(インフレーム)に機能的に連結するようにベクターにクローンすることができる。該シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたはヘテロローガスなシグナルペプチドであり得る。
【0094】
抗体重鎖および/または軽鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を調節する制御配列を有する。用語「制御(調節)配列」は、プロモーター、エンハンサー、および必要に応じて抗体鎖遺伝子の転写や翻訳を調節する他の制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルといった因子に依存しうる。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマウイルスのような哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現をもたらすウイルスエレメントが含まれる。
【0095】
抗体重および/または軽鎖遺伝子および制御配列に加え、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)および1またはそれ以上の選択可能マーカー遺伝子を有してよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促す。例えば、典型的には選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ヒグロマイシン、またはメトトレキセートのような薬剤に対する耐性をもたらす。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を示すDHFR-マイナス宿主細胞に使用するための)、neo遺伝子(G418選択のための)、およびGS陰性細胞系(例えばNS0)において選択/増幅のためのグルタミン合成酵素(GS)がある。
【0096】
軽鎖および/または重鎖を発現するには、重および/または軽鎖をコードする発現ベクターを標準的技術、例えばエレクトロポーレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション法などにより宿主細胞にトランスフェクトする。理論的には本発明抗体は原核性または真核性宿主細胞のいずれでも発現可能であるが、好ましくは真核性細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞が適切にホールドされ、免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌する可能性が高い。本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、Kaufman and Sharp、J. Mol. Biol. 159:601 21(1982)に記載のDHFR選択可能マーカーとともに用いるUrlaub and Chasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20(1980)に記載のDHFR-CHO細胞を含む)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞、HeLa細胞、およびSP2/0細胞がある。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するときは、該抗体は、宿主細胞を宿主細胞中で抗体が発現するか、より好ましくは宿主細胞が増殖する培養液中に抗体が分泌されるようにするのに十分な時間培養することにより生成される。抗体は標準的精製技術を用いて宿主細胞および/または培養液から回収することができる。
【0097】
宿主細胞を用いて、完全抗体の部分または断片、例えば、Fab断片またはscFv分子を生成することもできる。上記方法の変形も本発明の範囲内にあると理解されよう。例えば、宿主細胞を本発明抗体の軽鎖または重鎖(両方ではない)をコードするDNAでトランスフェクト、形質転換、エレクトロポーレートなどすることが望ましいかもしれない。組換えDNA技術を用い、グレリンとの結合に必要ではない軽および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAのいくつかまたはすべてを除去することもできよう。そのようなトランケートされたDNA分子から発現した分子も本発明抗体に含まれる。
【0098】
本発明抗体を組換え発現するための好ましい系において、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウム介在トランスフェクションによりDHFR-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内の抗体重および軽鎖遺伝子はそれぞれ分離したエンハンサー/プロモーター制御エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなど由来、例えばCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメント)と機能的に連結し、高レベルの遺伝子転写をもたらす。組換え発現ベクターはDHFR遺伝も有し、これは該ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞をメトトレキセート選択/増幅を用いて選択するのを可能にする。選択した形質転換宿主細胞を培養して抗体重および軽鎖を発現させ、完全抗体を培養液から回収する。標準的分子生物学的技術を用い、組換え発現ベクターを製造し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、次いで培養液から抗体を回収する。本発明の抗体またはその抗原結合部分をヒト免疫グロブリン遺伝子に対するトランスジェニックな動物(例えばマウス)に発現させることができる(例えば、Taylor、et al.、Nucleic Acids Res. 20:6287-95(1992)参照)。植物細胞を修飾し、本発明の抗体またはその抗原結合部分を発現するトランスジェニック植物を製造することもできる。
【0099】
本発明は抗体重鎖および/または抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターも提供する。例えば、ある態様において、本発明は、
a) 配列番号6-12からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する少なくとも1のペプチドを含む可変領域を有する抗体重鎖をコードし、さらに
b) 配列番号1-5からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する少なくとも1のペプチドを含む可変領域を有する抗体軽鎖
をコードする配列を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0100】
本発明は、1またはそれ以上の本発明の組換え発現ベクターを導入された宿主細胞も提供する。好ましくは宿主細胞は哺乳動物宿主細胞であり、より好ましくはCHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、COS細胞である。そのような細胞は、ATCC(Manassas、VA)のような公共の保管所から入手できる。さらに本発明は、本発明の宿主細胞を適切な培養液中で本発明の該抗体が合成されるまで培養することにより本発明抗体を合成する方法を提供する。さらに該方法は培養液から抗体を単離することを含みうる。
【0101】
発現したら、本発明の完全抗体、その二量体、個々の軽および重鎖、または他の免疫グロブリン形を、硫酸アンモニウム沈殿法、イオン交換、アフィニティ、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などを含む当該分野の標準的方法に従って精製することができる。医薬的に使用するには少なくとも約90%、92%、94%、または96%均質な実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。必要により部分的または均質に精製したら、次いで該ペプチドを本明細書に示すように医薬的または予防的に用いることができよう。
キメラ抗体
【0102】
本明細書で用いる用語「キメラ抗体」には、一価、二価、または多価免疫グロブリンが含まれる。一価キメラ抗体は、ジスルフィド架橋を介してキメラ軽鎖と結合したキメラ重鎖により形成される二量体である。二価キメラ抗体は、少なくとも1のジスルフィド架橋を介して結合した2つの重鎖-軽鎖二量体により形成される四量体である。
【0103】
キメラ重鎖は、ヒト重鎖定常領域の少なくとも部分、例えばCH1またはCH2と連結したグレリンに特異的な非ヒト抗体の重鎖由来の抗原結合領域を含む。キメラ軽鎖は、ヒト軽鎖定常領域(CL)の少なくとも部分と連結したグレリンに特異的な非ヒト抗体の軽鎖由来の抗原結合領域を含む。
【0104】
同じかまたは異なる可変領域結合特異性のキメラ重鎖および軽鎖を有する抗体、断片、または誘導体は、既知の方法の工程に従って個々のポリペプチド鎖の適切な結合により製造することもできる。この方法を用いて、キメラ重鎖を発現する宿主をキメラ軽鎖を発現する宿主と分離して培養することができ、免疫グロブリン鎖が分離して回収され、次いで結合する。あるいはまた、宿主を同時培養し、該鎖を培養液中で自然に結合させ、次いで組み立てられた免疫グロブリンまたは断片を回収する。
【0105】
キメラ抗体の製造方法は当該分野で知られている(例えば、米国特許No.:6,284,471;5,807,715;4,816,567;および4,816,397参照)。
【0106】
好ましい態様において、米国特許No. 6,284,471(この内容は本明細書の一部を構成する)に記載のヒト定常(C)領域の少なくとも部分をコードする第2DNA断片と結合した、非ヒト起源の少なくとも抗原結合領域(例えばFab 1181またはFab 1621)、例えば(J)断片と結合した機能的再配列した可変(V)領域をコードする第1DNA断片を含む遺伝子を製造する。
ヒト化抗体
【0107】
「ヒト化抗体」は、非ヒト(好ましくはマウスモノクローナル抗体)由来CDRを有するが、フレームワークおよび定常領域は、それが存在する範囲で(またはその実質的な部分、すなわち少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%、または99%)、該抗体がヒト細胞中で生成されるか否かに関わらず、ヒトグレリン免疫グロブリン領域またはその組換えまたは突然変異形で生じる核酸配列情報によりコードされる。ヒト化抗体は完全抗体、実質的に完全抗体、抗原結合部位を含む抗体の部分、またはFab断片、Fab'断片、F(ab')2、または一本鎖Fv断片を含む抗体の部分であってよい。ヒト化抗体の作製方法において、CDRのいずれかの末端のアミノ酸(例えば配列番号1-12参照)をフレームワーク配列に隣接する断片としてヒト生殖細胞系に生じるアミノ酸で置換することができると予期される。好ましくは、本発明の治療的抗体は、哺乳動物の治療的抗体に対する免疫反応を誘発する可能性を減少させるために治療薬として用いる哺乳動物由来のフレームワークおよび/または定常領域の配列を有するであろう。
【0108】
非ヒト抗体をヒト化する方法が当該分野でよく知られている。一般的には、ヒト化抗体は非ヒト供給源から導入された1またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これら非ヒトアミノ酸残基はしばしば「輸入」残基と呼ばれ、これは典型的には「輸入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、基本的に、Winterと共同研究者(Jones et al.、Nature、321:522-5251986); Riechmann et al.、Nature、332:323-327(1988);Verhoeyen et al.、Science、239:1534-1536、1988)の方法に従い、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより行うことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許No.4,816,567)、実質的に完全に満たないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはあるCDR残基および場合によりあるフレームワーク残基が齧歯類抗体中の類似部位由来の残基で置換されているヒト抗体である。
【0109】
ヒト化抗体の製造に用いるためのヒト可変ドメイン(軽および重両方)の選択は抗原性の低下を助ける。「ベストフィット」法によれば、齧歯類抗体の可変領域の配列を既知のヒト可変ドメイン配列の完全ライブラリーに対してスクリーニングする。次に、齧歯類のそれに最も近いヒト配列は、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として許容される(Sims et al.、J. Immunol.、151:2296-2308、1993;Chothia and Lesk、J. Mol. Biol.、196:901-917、1987)。別の方法では、軽または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを用いる。同じフレームワークを種々の異なるヒト化抗体に用いてよい(Carter et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285-4289、1992;Presta et al.、J. Immunol.、151:2623-2632、1993)。ヒト化抗体に用いるためのヒトフレームワークを選択するあらゆる当該分野で知られた手段を本発明に用いてよい。
【0110】
ヒト化抗体は、当該分野で用いる方法を用いてin vitro(変異)誘発にかけてよい(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を用いるときはin vivo体細胞変異)。すなわち、ヒト化組換え抗体のHCVRおよびLCVR領域のフレームワーク領域アミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系HCVRおよびLCVRに関連するもの由来であるが天然にはin vivoヒト抗体生殖細胞系レパートリー中に存在しないかもしれない配列である。ヒト化組換え抗体のHCVRおよびLCVRフレームワーク領域のそのようなアミノ酸配列はヒト生殖細胞系配列と少なくとも90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0111】
ヒト化抗体は、ヒトの治療に用いる非ヒトおよびキメラ抗体より少なくとも3つの潜在的利点がある:(i)エフェクター部分がヒトであり、ヒト免疫系の他の部分とよりよく相互作用するかもしれない(例えば補体依存性細胞毒性または抗体依存性細胞毒性によりより効率的に標的細胞を破壊する);(ii)ヒト免疫系はヒト化抗体のフレームワークまたは定常領域を外来物として認識しないので、注射したそのような抗体に対する抗体反応は全て外来非ヒト抗体や部分外来キメラ抗体に対するものより少ないはずである;および(iii)注射される非ヒト抗体はヒト循環中でヒト抗体の半減期より遙かに短い半減期を有すると報告されている。注射されるヒト化抗体は天然ヒト抗体に酷似した半減期を有し、投与する用量と頻度をより少なくできるかもしれない。
【0112】
ヒト化は、場合により抗原と抗体との結合に悪影響があるかもしれない。好ましくは本発明のヒト化抗hグレリンモノクローナル抗体は、hグレリンに対する親ネズミ抗体、好ましくはFab 3281、4731、またはFab 4281の結合親和性の少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約30%、最も好ましくは少なくとも約5%のhグレリンに対する結合親和性を有するだろう。好ましくは、本発明のヒト化抗体は本明細書に記載のFab 3281、4731、または4281と同じエピトープに結合するだろう。該抗体は、アシル化hグレリンまたはdes-アシルhグレリン、またはアシル化hグレリンまたはdes-アシルhグレリン発現細胞との結合に対してFab 3281、4731、または4281と競合する能力に基づいて同定することができる。
【0113】
本発明のヒト化抗体の設計は以下のごとく行うことができよう。一般的には、ヒト化抗体は、hグレリンのアミノ酸14-27に局在するhグレリンエピトープと結合する抗体のHCVRおよびLCVRをコードする核酸配列を得、該HCVRおよびLCVR(非ヒト)中のCDRを同定し、次いで選択したヒトフレームワークをコードする核酸配列上にそのようなCDRをコードする核酸配列を移植することにより製造される。好ましくは、ヒトフレームワークアミノ酸は、得られる抗体がヒトへのin vivo投与に適するであろうように選ばれる。これは、例えばそのようなヒトフレームワーク配列を含む抗体の以前の使用に基づいて決定することができる。好ましくは、ヒトフレームワーク配列はそれ自身あまり免疫原性ではないであろう。
【0114】
あるいはまた、ヒト化する抗体に対するフレームワークのアミノ酸配列(例えば、Fab 3281)は、既知のヒトフレームワーク配列のそれと比較され、CDR移植に用いるヒトフレームワーク配列は親抗体、例えばhグレリンと結合するネズミ抗体のそれと高度に類似したそれらを含む配列に基づいて選択されよう。多くのヒトフレームワーク配列が単離されており、その配列は当該分野で報告されている。これは、選択したヒトフレームワーク(およびおそらくヒト定常領域も)上に移植した親(例えばネズミ)抗体のCDRを含む得られるCDR移植ヒト化抗体が抗原結合構造を実質的に保持し、親抗体の結合親和性を保持する確率を増大させる。十分な抗原結合親和性を維持するため、選択したヒトフレームワーク領域はin vivo投与に適する、すなわち免疫原性でないと予期されるものが好ましい。
【0115】
いずれの方法においても、好ましくはネズミ抗hグレリン抗体のHCVRおよびLCVR領域をコードするDNA配列が得られる。免疫グロブリンをコードする核酸配列のクローニング方法は当該分野でよく知られている。そのような方法は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により適切なプライマーを用いてクローンされる免疫グロブリンをコードする配列の増幅を含むかもしれない。免疫グロブリン核酸配列、具体的にはネズミHCVRおよびLCVR配列を増幅するのに適したプライマーが文献に報告されている。そのような免疫グロブリンをコードする配列をクローンし、次いで当該分野でよく知られた方法によりシーケンシングされよう。
【0116】
ヒト化する抗体のCDRおよびフレームワークをコードするDNA配列を同定したら(例えば本明細書の表1および2参照)、CDRをコードするアミノ酸配列を同定し(核酸配列および遺伝子コードに基づいて、先の抗体配列と比較することにより推定される)、CDRをコードする核酸配列を選択したヒトフレームワークをコードする配列上に移植する。これは、適切なプライマーおよびリンカーを用いることにより達成することができよう。適切なプライマーおよび所望の核酸配列を結合するためのリンカーの選択方法は十分当業者の能力内である。
【0117】
CDRをコードする配列を選択したヒトフレームワークをコードする配列上に移植し、次いで得られる「ヒト化」可変重および可変軽配列をコードするDNA配列を発現させ、本発明の抗原性ポリペプチド(すなわち、ヒトグレリンのアミノ酸14-27)でアシル化およびdes-アシルhグレリンと特異的に結合するヒト化Fvまたはヒト化抗体を製造する。典型的には、ヒト化HCVRおよびLCVRは、全抗hグレリン抗体分子の部分として、すなわち、コーディングDNA配列が市販のライブラリーから得られるか、または例えばDNA配列を得るための上記もしくは当該分野の方法の一つを用いて得られるヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現する。しかしながら、HCVRおよびLCVR配列を定常配列非存在下で発現させ、ヒト化抗hグレリンFvを製造することもできる。それにも関わらず、得られるヒト化抗hグレリン抗体はヒトエフェクター機能を有することがあるのでヒト定常配列の融合が潜在的に望ましい。
【0118】
既知の配列のタンパク質をコードするDNAの合成方法は当該分野でよく知られている。そのような方法を用いて、対象のヒト化HCVRおよびLCVR配列(定常領域を含むかまたは含まない)をコードするDNA配列を合成し、次いで組換え抗体を発現させるのに適したあらゆるベクター系を用いて発現させる。これは、ヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現し、機能的(抗原結合)抗体または抗体断片が生成するよう結合させる対象のヒト化HCVRおよびLCVR配列を提供するあらゆるベクター系を用いて行うことができよう。
【0119】
ヒト定常ドメイン配列は当該分野でよく知られており、文献に報告されている。好ましいヒト定常軽鎖配列にはκおよびλ定常軽鎖配列がある。好ましいヒト定常重鎖配列には、ヒトγ1、ヒトγ2、ヒトγ3、ヒトγr、および変化した効果または機能、例えばin vivo半減期の増加、Fcレセプター結合の低下などをもたらすその突然変異バージョンがある。
【0120】
場合により、CDR(hグレリンの14-27、本発明の抗原性ペプチドと結合する本発明抗体由来)を選択したヒトフレームワーク上に移植することにより製造されるヒト化抗体はhグレリンに対する望ましい親和性を有するヒト化抗体を提供してよい。しかしながら、抗原結合を増大するために選択したヒトフレームワークの特定残基をさらに修飾することが必要または望ましいかもしれない。好ましくは、結合部位構造を維持またはそれに影響を及ぼす親(例えばネズミ)抗体のそのフレームワーク残基が維持されよう。この残基を親抗体またはFab断片のX線結晶学により同定し、抗原結合部位の3次元構造を同定することができよう。
【0121】
使用できるマウス抗体のヒト化に関与する方法をさらに記載する参考文献には、例えば、Queen et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869、1991;米国特許No.5,693,761; 米国特許No.4,816,397;米国特許No.5,225,539;Levitt、M.、J. Mol. Biol. 168:595-620、1983に記載のコンピュータープログラムABMODおよびENCADがある。
【0122】
本発明はさらに本明細書に記載のヒト化抗体および抗体断片と実質的にホモローガスな変異体および等価物を含む。これらは抗体のCDR内に1または2の保存置換突然変異を含むと予期される。保存アミノ酸置換はタンパク質のコンフォメーションや機能を変化させることなくタンパク質中にしばしば生じ得る。保存置換は、あるアミノ酸の、同じ一般的クラス内の別のアミノ酸による、例えばある酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸による、ある塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸による、ある疎水性アミノ酸の別の疎水性アミノ酸による、またはある中性アミノ酸の別の中性アミノ酸による置換を表す。他の置換は、特定アミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造におけるその役割に応じて保存的と考えることもできる。例えば、グリシンおよびアラニンは、アラニンとバリンがそうであるようにしばしば互換性でありうる。保存的アミノ酸置換により意図することは当該分野でよく知られている。ヒト化抗体と実質的にホモローガスなこれら変異体および等価物もCDRの末端アミノ酸の欠失を含むと予期される。
診断的使用
【0123】
本発明抗体は、ヒトグレリン、すなわちアシル化またはdes-アシル形のグレリンの発現に関連する障害または疾病の診断に用いることができよう。同様に、本発明抗体は以下に対する治療がなされているかまたは治療が考慮されている対象のグレリンレベルをモニターするためのアッセイに用いることができる:グレリン関連病状(例えば、肥満、肥満関連疾患、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患。診断的アッセイは、本発明抗体、および試料、例えばヒト体液または細胞もしくは組織抽出物中のアシル化グレリンおよび/またはdes-アシルグレリンを検出するための標識を利用する方法を含む。例えば抗体のような結合組成物は、修飾しまたは修飾せずに用い、レポーター分子の共有または非共有結合により標識される。
【0124】
ELISA、RIA、およびFACSを含むグレリンを測定するための種々の常套的プロトコールが当該分野で知られており、グレリン発現レベルの変化または異常を診断する基礎をもたらす。正常または標準的発現値は、あらゆる当該分野で知られた技術を用い、例えばグレリンポリペプチドを含む試料をグレリン抗体複合体を形成するのに適した条件下で、例えば抗体と混合することにより樹立される。該抗体は、結合または非結合抗体の検出を促進するために検出可能な物質で直接または間接的に標識される。適切な検出可能な物質には、種々の酵素、補欠分子団(prosthetic group)、蛍光物質、発光物質、および放射性物質がある。適切な酵素の例には、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼがあり;適切な補欠原子団には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがあり;適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリスリンがあり;蛍光物質の例にはルミノールがあり;放射性物質の例には125I、131I、35S、または3Hがある(例えば、Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、CRC Press、Inc.(1987)参照)。
【0125】
形成される標準複合体の量を、例えば測光的手段のような種々の方法により定量する。次に、対象、コントロール、および試料(例えば生検組織由来の)中に発現したグレリンポリペプチドの量を標準値と比較する。標準と対象値の間の偏差は、特定の疾患、状態、病状、症候群、および疾病とグレリンポリペプチドのある発現レベル(またはその欠如)との相関のパラメーターを確立する。
【0126】
疾患、状態、病状、症候群、または疾病の存在が確立されたら、治療プロトコールを開始し、アッセイを規則的に反復してグレリン発現レベルをモニターする。一連のアッセイから得られる結果を用いて数日〜数カ月間の期間におよぶ治療効果を示す。細胞増殖性疾患(例えば癌)に関して、対象からの生検組織または体液中のグレリン量の異常(発現不足または過剰)の存在は細胞増殖性の疾患、状態、病状、症候群、または疾病の発現の傾向を示すか、または実際の臨床症状が発現する前に疾患、状態、病状、症候群、または疾病を検出する手段を提供するかもしれない。より明確な初期検出は、より早い治療を可能にし、細胞増殖のさらなる進行を予防および/または改善することができよう。
医薬組成物
【0127】
本発明抗体は、対象に投与するのに適した医薬組成物に組み込むことができる。本発明化合物は、単独でかまたは医薬的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と組み合わせて、単用量または多用量で投与することができる。投与用の医薬組成物は選んだ投与方法に適するように設計され、医薬的に許容される希釈剤、単体、および/または賦形剤、例えば分散剤、緩衝剤、界面活性剤、保存料、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを適切に用いる。該組成物は、例えば、当業者に一般的に知られた製剤技術の概論を示す、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro、編、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1995に記載の常套的技術に従って設計される。医薬組成物に適した担体には、本発明のモノクローナル抗体と混合したときに分子の活性を保持し、対象の免疫系と非反応性のあらゆる物質が含まれる。
【0128】
本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻内、バッカル、舌下、または坐剤投与を含む標準的投与技術を用いて本明細書に記載の肥満または関連疾患と関連する病因を有するかまたはそのリスクがある対象に投与することができる。
【0129】
本発明の医薬組成物は、好ましくは「治療的有効量」または「予防的有効量」の本発明抗体である。「治療的有効量」は、望む治療結果を達成するための、必要な用量および期間で有効な量を表す。該抗体の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別、および体重、および個体に望む反応をもたらす抗体または抗体部分の能力のような因子により異なることがある。治療的有効量は、治療的に有用な効果が該抗体のあらゆる毒性または有害作用を上回る量である。「予防的有効量」は、望む予防効果を達成するの、必要な用量および期間で有効な量を表す。典型的には、予防用量は疾病の前または初期段階で対象に用いるので、予防的有効量は治療的有効量より少ないだろう。
【0130】
治療的有効量は対象に治療的利益をもたらすのに必要な活性物質の少なくとも最小用量で毒性用量未満である。特記しない限り、糖尿病を治療するための治療的有効量は、肥満度指数(BMI)を低下させることにより哺乳動物の肥満状態の改善を誘導、改善、またはもたらす量である。
【0131】
本発明抗体の投与経路は、経口的、非経口的、吸入により、または局所的であってよい。好ましくは、本発明抗体は非経口投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。本明細書で用いる用語、非経口的には、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、または腹腔内投与が含まれる。静脈内または腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達が好ましい。そのような注射に適したビークルは単純である。
【0132】
医薬組成物は、典型的には製造条件下、および例えば密封バイアルまたはシリンジを含む提供される容器中での保存条件下で無菌および安定でなければならない。したがって、医薬組成物は、製剤製造後に無菌濾過するか、または微生物学的に許容されるようにすることができよう。静脈内注入用の典型的な組成物は容量250〜1000mLほどの液体、例えば無菌リンゲル溶液、生理食塩水、ブドウ糖溶液、およびハンクス溶液と治療的有効量(例えば1〜100mg/mLまたはそれ以上)の抗体濃度を有するであろう。本発明の治療剤は貯蔵するために凍結または凍結乾燥し、使用前に適切な無機担体で再構成することができる。凍結乾燥および再構成は、種々の程度の抗体活性損失をもたらしうる(例えば常套的免疫グロブリンを用いると、IgM抗体はIgG抗体より活性損失が大きい傾向がある)。用量は補償されるよう調製する必要があるかもしれない。一般的に、pH6〜8が好ましい。
【0133】
医学分野でよく知られているように、あらゆるある対象に対する用量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与する特定化合物、性別、投与回数と経路、一般健康状態、および同時に投与する他の薬剤を含む多くの因子に依存する。典型的用量は、例えば0.001〜1000μgの範囲であり得るが、特に前記因子を考慮してこの典型的量以下または以上の用量が想定される。1日非経口投与法は、約0.1μg/kg〜約100mg/kg総体重、好ましくは約0.3μg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約1μg/kg〜1mg/kg、さらにより好ましくは約0.5〜10mg/kg体重/日である。
治療的使用
【0134】
グレリンは、糖尿病および多くの関連疾患または疾病の病態生理学に役割を果たす。グレリンは全身投与後にヒトの摂食を刺激することが示されている最初の循環ホルモンである。ある研究は、肥満対象は痩せた対象において食事後にみられる血漿グレリンレベルの低下を示さず、食物摂取の増加をもたらすことがあることを示した(English、P. et al.、J. Clin. End. & Metabolism、87:2984-2987、2002)。したがって、本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体を含む医薬組成物を用いて肥満および/または肥満関連疾患、例えばNIDDM、プラダーウィリ症候群、満腹障害、過食症を治療または予防することができよう。
【0135】
肥満(obesity)は、corpulenceまたはfatnessとも呼ばれ、通常身体が使用するより多量のカロリーを消費することを原因とする体脂肪の過剰蓄積である。次に、過剰なカロリーは脂肪または脂肪組織として貯蔵される。体重超過が中程度であれば例えば筋肉質の個体では必ずしも肥満ではない。しかしながら、一般的には、最適より20%またはそれ以上重い対象の体重は肥満と関連する傾向がある。あるいはまた、肥満は肥満度指数(BMI)で定義することができよう。ヒトBMIは、ヒトの体重(kg)÷個体の身長の二乗(m)で定義する。典型的には、25〜29のBMIのヒトは体重超過と考えられ、29またはそれ以上のBMIは肥満と考えられる。これは性別または体格の違いによりあるヒトでは異なることがある。しかしながら、典型的には25またはそれ以上のBMIが疾病のリスクが体重超過により増大する点を定義する。肥満対象に対する本発明抗体の効果を決定するのに有用な動物のエネルギー消費量、身体組成、および体重減少を測定するアッセイが当該分野で知られている。例えば、国際特許公開公報WO 01/87335(この内容は本明細書の一部を構成する)参照。
【0136】
空腹は食物に対する欲求であり正常である。空腹は、典型的にはカロリー摂取がカロリー消費より少ない(負のエネルギーバランス)の時、および個体が正のエネルギーバランスでも食事の同調(entrained meal)を予測するときに生じる。過食症および満腹症は基礎エネルギー要求に必要な量を超える過剰な食物摂取と定義される。摂取は異常な時間を占めることがある。摂食は義務的で混乱した正常活動であるかもしれず、種々の疾患の徴候となりうる。過食症または満腹障害状態は、第3脳室の神経節細胞腫、視床下部星状細胞腫、Kleine-Levin症候群、Froehlich症候群、パーキンソン病を含む中枢神経系(CNS)疾患;プラダーウィリ症候群(第15染色体の長腕の欠失)を含む遺伝子疾患;不安、大鬱病性障害、双極性障害の鬱期、季節性情動障害、および統合失調症を含む精神障害;δ-9テトラヒドロカンナビノール、抗鬱薬、および神経弛緩薬を含む向精神薬に関連して生じることがある。睡眠時無呼吸を含む睡眠障害も過食に関連する。
【0137】
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも呼ばれるII型糖尿病は、身体がまだ産生することができるインスリンが生理学的に有効でない対象に生じる。個体は遺伝因子および環境因子の両方によりNIDDMに罹りやすくなりうる。遺伝、肥満、および年齢増加は、NIDDMの発症に主な役割を果たす。リスク因子には、ストレスの持続、座りがちの生活スタイル、および身体のホルモンプロセスに影響を与えるある種の薬物治療が含まれる。本発明抗体は、限定されるものではないが過食症、拒食症、暴食、および代謝症候群を含む摂食障害の治療または予防に用いることもできよう。
【0138】
本発明抗体は、必要とする対象、好ましくはヒトの以下の治療または予防に用いることができよう:肥満、肥満関連疾患、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患。
【0139】
グレリン(アシル化またはdes-アシル、またはその両方)活性が有害な前記障害の少なくとも1つを治療または予防するための本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体の使用も本明細書において予期される。さらに、グレリン)活性が有害な前記障害の少なくとも1つを治療または予防するための医薬を製造するための本発明の抗hグレリンモノクローナル抗体の使用も予期される。
【0140】
本明細書で用いる用語「治療(処置)」、「治療(処置)する」などは、望む薬理学的および/または生理学的効果を得ることを表す。該効果は、その疾病または症状の完全または部分的な予防について予防的であるかもしれず、そして/または疾病の部分的または完全な治癒および/または該疾病に起因する副作用について治療的であるかもしれない。本明細書で用いる「治療」には、哺乳動物、特にヒトの疾病を治療するための本発明化合物の投与が含まれ、これには(a)該疾病に罹りやすいがまだ罹患していると診断されていない対象に該疾患が生じるのを予防し;(b)該疾患を阻止し、すなわちその進行を止め、(c)該疾病を軽減する、すなわち、該疾病もしくは障害の退行をもたらすかまたはその症状または合併症を緩和することが含まれる。治療は食物摂取の制限および運動のような行動の変更と併用してよい。したがって、糖尿病の治療には、食物摂取の阻害、体重増加の阻害を含み、および/または必要とする対象の体重減少が含まれる。
【0141】
用法(dosage regimen)は、最適な望む反応(例えば治療または予防反応)をもたらすよう調整してよい。例えば、単回ボーラスを投与するか、種々の分割用量を時間をかけて投与してよく、または、該用量を治療状況の要件で示されるように比例的に減少または増加させてよい。
【0142】
以下の実施例は例示のためだけに提供され、何ら本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0143】
実施例1:抗体Fab合成
本明細書に記載のCDRおよびフレームワーク配列は、Omniclonal(登録商標)抗体技術(Biosite(登録商標)、San Diego、CA)を用い、免疫C57/Bl6野生型マウスにより作製した抗体RNAから作製した抗体ライブラリーから単離したFab断片のクローンから同定される。単離したFab 3281、4731、および4281のアミノ酸配列を本明細書の表2に示す。
実施例2:競合的ELISAアッセイ
【0144】
本発明の抗hグレリンFabを、Fabに対する結合について抗原と競合するかもしれない化合物を溶液相中で最初にFabと結合させるアッセイである競合的ELISAアッセイを用いて試験する。プレート上にコートした抗原に対するFabの結合を測定する。
【0145】
96ウェルプレートの各ウェルを60μLのBSA-hグレリン抗原(すなわち、BSA結合完全長アシル化ヒトグレリン、炭酸緩衝液中2μg/ml、pH9.6)でコートする。プレートを4℃で一夜インキュベーションする。ウェルを吸引し洗浄用緩衝液(20mM Tris-Cl、pH7.4、0.15M NaCl、0.1% Tween20)で2回洗浄する。化合物(すなわちヒトグレリンまたはグレリン類似体、またはグレリン断片)を抗体溶液で希釈する。該抗体溶液はマウス抗ヒトグレリンFabを有する。化合物濃度は0〜5μg/mLで変化するが、Fab濃度はブロッキング溶液(洗浄用緩衝液中10mg/ml)中0.1μg/mLに一定に保つ。室温で1時間インキュベーションし、次いで50μLの化合物Fab溶液をトリプリケートでBSA-hグレリンコートしたウェルに加える。プレートを室温で1時間インキュベーションする。次に、ウェルを洗浄用緩衝液で3回洗浄する。
【0146】
パーオキシダーゼ結合第2抗体(50μlの、ブロッキング緩衝液で1:2000に希釈したヤギ抗マウスκHRP(Southern Biotech))を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベーションする。次に、ウェルを洗浄用緩衝液で4回洗浄する。50μLの発色基質(すなわちOPD基質)を各ウェルに加え、室温で10分間発色させる。各ウェルに100μL 1N HClを加えて反応を止める。ウェルの吸光度を490nMで測定する。
【0147】
例えば以下の種々の長さのグレリン断片を試験することができよう:(1)完全長(アミノ酸1-28)アシル化またはdes-アシルヒト(またはラット)グレリン、(2)アミノ酸20-28のヒト(またはラット)グレリン、(3)アミノ酸14-28のヒト(またはラット)グレリン、(4)アミノ酸1-27のアシル化またはdes-アシルヒト(またはラット)グレリン、および(6)アミノ酸18-28のヒト(またはラット)グレリン。トリプリケートのウェルから平均吸光度を測定する。
本発明抗体はグレリンがアシル化またはdes-アシルであるかにかかわらず、ヒトまたはラットのアミノ酸14-27内に存在する抗原性エピトープと結合する。
実施例3:FLIPR in vitro活性アッセイ
【0148】
in vitro FLIPR(登録商標)カルシウムアッセイ系(Molecular Devices)を、GHS-R1ヒトグレリンレセプターを発現するように安定にトランスフェクトしたハムスターAV12細胞と共に用いた。このアッセイは、本発明のFabの存在下または非存在下におけるグレリン/GHS-R1a結合および情報伝達を検出する手段として細胞内カルシウム変化を評価する。この機能的アッセイを用いてさらに本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープの局在をマップする。
【0149】
AV12細胞を増殖培地(DMEM/F12(3:1)、5%ウシ胎児血清、50μg/mlヒドロマイシン、および50μg/mlゼオシン)中で約50〜90x106細胞/T-150フラスコに増殖させる。次に、該細胞をトリプシン処理し、洗浄し、次いでBiocoatブラックポリ-D-リジンコートしたプレートに分散させる(100μL増殖培地/ウェル中60,000細胞)。細胞を5%CO2中、37℃で約20時間インキュベーションする。培地をプレートから除去し、150μl HBSS(Gibco 14025-037)を各ウェルに加え、次いで除去する。次に、各ウェルに50μLのローディング緩衝液[FLIPR緩衝液[カルシウム含有Hank's Balanced Salt(ハンクス緩衝塩)(HBSS、Gibco 14025-092)、および0.75% BSA(Gibco)]中の5μM Fluo-4AM(Molecular Devices)、0.05%プルロニック]を加えて細胞中に色素をロードする。プレートをさらに5%CO2中37℃で1時間インキュベーションする。次に、ウェルをHBSSで2回洗浄し、次いで50μL FLIPR緩衝液をウェルに加える。
7.2μLカルシウム濃縮物(HBSSと1:1に混合した水中CaCl2-2H2O、3.7mg/ml)を3.75% BSA/50% HBSS中の30μLペプチド、30μL Fab(種々の濃度の)、および16.8μL hグレリン(2.5μMストック)と混合して試料を作製する。試料溶液の最終濃度は、0.75% BSAであり、カルシウムはFLIPR緩衝液中とほぼ同じ濃度である。50μLの試料溶液をAV12細胞を含むウェル中の50μL FLIPR緩衝液に加える。該ペプチドの最終濃度は、100nMであり、hグレリンの最終濃度は0.83nMである。細胞プレートを約15秒間振盪させ、次いでそれをFLIPR器具にロードする。被検試料またはコントロール試料を各ウェルに加え、Fluorometric Imaging Plate Reader(Molecular Devices)により計測する。
【0150】
溶液中にFabまたは無関係な抗体が存在しなければ、完全長hグレリンは遊離し、AV12細胞上のGHS-R1aレセプターと結合し、情報伝達が生じ、アッセイにおいて比較的高値がえられるだろう。溶液中に完全長hグレリンと結合するFabが存在すると、GHS-R1aレセプターと完全長hグレリンとの結合は阻害され、情報伝達は阻害され、アッセイにおいて比較的低値が得られる。しかしながら、ペプチド(すなわち、ヒトグレリンの断片)も溶液に加えFabが該ペプチドと結合すると、完全長hグレリンはGHS-R1aレセプターとの結合を妨げず、情報伝達を阻害せず、アッセイの値は比較的高い。反対に、ペプチドを溶液に加え、Fabが該ペプチドと結合しなければ、Fabは溶液中の完全長hグレリンとの結合に利用可能であり、アッセイの値は比較的低いだろう。特に、試験したペプチド断片は活性ではなく、GHS-R1aレセプターと結合しないので、その存在はバックグラウンドレベルに関与しないだろう。Fabとの結合についてhグレリンと競合するペプチドをhグレリンの50倍以上の濃度でアッセイに用いた。用いたFab濃度は、1nM hグレリン活性の約95%阻害をもたらすレベルであることをタイトレーションにより測定した。
実施例4:活性類似体を用いるFLIPRアッセイ
【0151】
活性ヒトグレリン類似体または完全長アシル化ラットグレリンを本発明のFabと混合し、Fabが類似体活性を阻害することができるか検討する。このFLIPRアッセイを以下の例外があるが実質的に本明細書の実施例3の記載のように行う。ここで試験した類似体は活性であり完全長アシル化hグレリンと結合するGHS-1aレセプターと結合する。したがって、完全長アシル化hグレリンはこのアッセイでは試料中に加えない。
【0152】
活性類似体を最大下(sub-maximal)活性をもたらす濃度で用いる。該類似体は1nMアシル化hグレリンを完全に阻害することが分かっている濃度でFabとインキュベーションする。
【0153】
本アッセイ用の試料は、7.2μLカルシウム濃縮物((HBSSと1:1に混合し、無菌濾過した水中CaCl2-2H2O、3.7mg/ml)を60μL Fab(種々の濃度の)、および3.75% BSA/50% HBSS中の16.8μlペプチドを混合して作製する。試料溶液の最終濃度は、0.75% BSAであり、カルシウム濃度はFLIPR緩衝液中とほぼ同じ濃度である。50μLの試料溶液をAV12細胞を含むウェル中の50μL FLIPR緩衝液に加える。該アッセイの他の局面は実施例3の記載と同じである。
【0154】
実施例3および4から得られるアミノ酸14-28に及ぶヒトグレリンペプチドは3281、4731、および4281 Fab阻害の有意な減少をもたらすが、アミノ酸4-20に及ぶペプチドはFabの阻害の低下を生じない。さらに、グレリンペプチド18-28は、Fab3281について阻害の低下を示さなかった。Fab 3281、4731、および4281はヒトグレリン1-27と結合し、その類似活性を阻害する。このデータから、抗原エピトープは、ラットグレリンと同一であるヒトグレリンのアミノ酸14-27に及ぶペプチド内にあると結論される。
実施例5:モノクローナル抗体の親和性測定
【0155】
抗グレリンFab 3281、4731、および4281の親和性(KD)をCM5センサーチップを含むBIAcore(登録商標)2000器具を用いて測定する。BIAcore(登録商標)は、表面プラズモン共鳴の光学特性を利用し、デキストランバイオセンサーマトリックス内で相互作用する分子のタンパク質濃度を検出する。特記しない限り、すべての試薬および材料はBIAcore(登録商標)AB(Upsala、Sweden)から購入する。測定は約25℃で行う。ラットまたはヒトグレリン(完全長、C8-アシル化またはdes-アシル化)を含む試料をHBS-EP緩衝液(150mM塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.005%(w/v)界面活性剤P-20、および10mM HEPES、pH 7.4)に溶解する。捕捉抗体、ヤギ抗マウスκ(Southern Biotechnology、Inc)をアミンカップリング化学を用いてフローセル上に固定する。フローセル(1-4)を流速10μL/分で7分間、0.1M N-ヒドロキシスクシンイミドおよび0.1M 3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル-N-エチルカルボジイミドの1:1混合物で活性化する。ヤギ抗マウスκ(10mM酢酸ナトリウム中、30μg/mL、pH 4.5)を流速10μL/分で4フローセル全てに手動で注射する。表面密度をモニターし、必要であればさらにヤギ抗マウスκをすべてのフローセルが表面密度4500〜5000反応単位(RU)に達するまで個々のセルに注射する。表面を1Mエタノールアミン-HCl、pH 8.5(10μL/min)の7分間注射によりブロックする。あらゆる非共有結合ヤギ抗マウスκが確実に完全に除去されるように、15μLの10mMグリシン、pH1.5を2回注射する。動力学的実験に用いた操作用緩衝液は、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、0.005% P2Oを含んでいた。
【0156】
動力学的結合データの回収は、最大流速(100μL/分)および物質移動効果を最小にする低表面密度で行う。各分析周期は、以下からなる:
(i)流速10μL/分で種々のFabについてフローセル2、3、および4に5〜10μLの5μg/mL溶液を注射することにより300-350 RUのFab(BioSite)を捕捉、(ii)基準フローセルとしてフローセル1を用い、4フローセル全てにhグレリン(濃度範囲は50nM〜0.78nM、2倍希釈で増加する)を200μL注射(2分間)、(iii)20分間解離(緩衝液流)、(iv)10mMグリシン、pH1.5の15秒間注射によりヤギ抗マウスκを再生、(v)操作用緩衝液を30秒間ブランク注射、および(vi)次のサイクルの開始前に2分間の安定化時間。シグナルをフローセル2−フローセル1、フローセル3−フローセル1、およびフローセル4−フローセル1としてモニターする。試料および緩衝液ブランクを無作為な順番でデュプリケートで注射する。データをBIA評価v3.1ソフトウエアを用いて処理し、次いでデータをBIA評価v3.1またはCLAMP大域解析ソフトウエアを用いる1:1結合モデルに適合させる。典型的実験からの値は以下をもたらす:
(i)本発明のFabおよびアシル化ヒトグレリンに対するkon値:8.64 x 105〜2.94 x 106(1/Msec)、koff値:4.86 x 10-4〜3.94 x 10-3(1/sec)、およびKD値:4.36 x 10-9〜8.62 x 10-11M;
(ii)本発明のFabおよびアシル化ラットグレリンに対するkon値:1.6 x 105〜1.42 x 106(1/Msec)、koff値:4.98 x 10-4〜2.72 x 10-3(1/sec)、およびKD値:5.53 x 10-9〜5.63 x 10-10(M);および
(iii)本発明のFabおよびdes-アシルヒトグレリンに対するkon値:x〜y 1/Msec、koff値:x〜y 1/sec、およびKD値:x〜y M。
表2:抗グレリンFab配列
【0157】
【表2−1】

【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる少なくとも1のペプチドを含むヒトグレリンのアミノ酸14-27に局在するエピトープでヒトグレリンと特異的に結合するモノクローナル抗体:
a)軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に局在する配列番号1、2、または3;
b) LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
c) LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
d) 重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に局在する配列番号6、または7;
e) HCVRのCDR2に局在する配列番号8、9、または10;および
f) HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項2】
以下からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる少なくとも2のペプチドを含む請求項1記載の抗体:
a)軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に局在する配列番号1、2、または3;
b) LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
c) LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
d) 重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に局在する配列番号6、または7;
e) HCVRのCDR2に局在する配列番号8、9、または10;および
f) HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項3】
以下からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる少なくとも3のペプチドを含む請求項1記載の抗体:
a)軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に局在する配列番号1、2、または3;
b) LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
c) LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
d) 重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に局在する配列番号6、または7;
e) HCVRのCDR2に局在する配列番号8、9、または10;および
f) HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項4】
以下からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる少なくとも4のペプチドを含む請求項1記載の抗体:
a)軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に局在する配列番号1、2、または3;
b) LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
c) LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
d) 重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に局在する配列番号6または7;
e) HCVRのCDR2に局在する配列番号8、9、または10;および
f) HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項5】
以下からなる群から選ばれる配列を有するペプチドから選ばれる少なくとも5のペプチドを含む請求項1記載の抗体:
a)軽鎖可変領域(LCVR)のCDR1に局在する配列番号1、2、または3;
b) LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
c) LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
d) 重鎖可変領域(HCVR)のCDR1に局在する配列番号6、または7;
e) HCVRのCDR2に局在する配列番号8、9または10;および
f) HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項6】
以下に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体:
LCVRのCDR1に局在する配列番号1;
LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
HCVRのCDR1に局在する配列番号6;
HCVRのCDR2に局在する配列番号8;および
HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項7】
以下に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体:
LCVRのCDR1に局在する配列番号2;
LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
HCVRのCDR1に局在する配列番号6;
HCVRのCDR2に局在する配列番号8;および
HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項8】
以下に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体:
LCVRのCDR1に局在する配列番号2;
LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
HCVRのCDR1に局在する配列番号6;
HCVRのCDR2に局在する配列番号9;および
HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項9】
以下に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体:
LCVRのCDR1に局在する配列番号3;
LCVRのCDR2に局在する配列番号4;
LCVRのCDR3に局在する配列番号5;
HCVRのCDR1に局在する配列番号7;
HCVRのCDR2に局在する配列番号10;および
HCVRのCDR3に局在する配列番号11。
【請求項10】
LCVRが配列番号13または14に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体。
【請求項11】
HCVRが配列番号15または16に示す配列を有するペプチドを含む請求項1記載の抗体。
【請求項12】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、およびIgDからなる群から選ばれる重鎖定常領域を含む請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項13】
κまたはλ軽鎖定常領域を含む請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項14】
Fab断片である請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項15】
F(ab')2断片である請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項16】
一本鎖Fv断片である請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項17】
CDRが2または1の保存アミノ酸置換または末端欠失を有する請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項18】
キメラである請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項19】
ヒト化されている請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項20】
請求項1〜19記載の抗体のいずれかの結合を競合的に阻害する抗体。
【請求項21】
標識されている請求項1〜20のいずれかに記載の抗体。
【請求項22】
標識が以下からなる群から選ばれる請求項21記載の抗体:
(a)酵素標識;
(b)ラジオアイソトープ;
(c)蛍光標識;および
(d)ビオチン。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれかに記載の抗体をコードする単離核酸分子。
【請求項24】
請求項23記載の該核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項24記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項25記載の宿主細胞を培養し、抗hグレリンモノクローナル抗体を該細胞に発現させ、該細胞または該細胞が増殖している培養液から該抗体を精製することを含む抗hグレリンモノクローナル抗体の合成方法。
【請求項27】
以下を含む抗hグレリンモノクローナル抗体の製造方法:
a) 非ヒト動物を、ヒトグレリンのアミノ酸残基14-27に及ぶペプチドの6、7、8、9、10、11、12、13、または14隣接アミノ酸を含むペプチドで免疫し(ここで、該隣接アミノ酸の1、2、または3個はヒトグレリンのアミノ酸4、5、および6から選ばれる;および
b) アシル化hグレリンおよびdes-アシルhグレリン両方のアミノ酸14-27からなるペプチドと特異的に結合する抗体を免疫動物から単離する。
【請求項28】
以下を含む抗hグレリンモノクローナル抗体の製造方法:
a) 非ヒト動物を、ヒトグレリンのアミノ酸残基14-27に及ぶペプチドの6、7、8、9、10、11、12、13、または14隣接アミノ酸からなるペプチドで免疫し(ここで、該隣接アミノ酸の1、2、または3個はヒトグレリンのアミノ酸4、5、および6から選ばれる;および
b) アシル化hグレリンおよびdes-アシルhグレリン両方のアミノ酸14-27を含むペプチドと特異的に結合する抗体を免疫動物から単離する。
【請求項29】
請求項27または28記載の方法により製造するモノクローナル抗体。
【請求項30】
請求項29記載の抗体のCDRを含むキメラ抗体。
【請求項31】
請求項29記載の抗体のCDRを含むヒト化抗体。
【請求項32】
請求項1-22、29、30、および31のいずれかに記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項33】
さらに医薬的に許容される担体を含む請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
該抗体が活性成分である請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
生物試料を請求項1-22、29、30、および31のいずれかに記載の抗体と接触させ、該生物試料中のヒトグレリンタンパク質を検出することを含む生物試料中のアシル化および/またはdes-アシル形のヒトグレリンを検出する方法。
【請求項36】
治療的有効量の請求項32〜34のいずれかに記載の医薬組成物を必要とするヒトに投与することを含む肥満を治療または予防する方法。
【請求項37】
治療的有効量の請求項32〜34のいずれかに記載の医薬組成物を必要とする対象に投与することを含む肥満関連疾患を治療または予防する方法。
【請求項38】
治療的有効量の請求項32〜34のいずれかに記載の医薬組成物を必要とする対象に投与することを含む、NIDDM(II型糖尿病)、プラダーウィリ症候群、摂食障害、過食症、満腹障害、不安、胃の消化運動異常(例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良を含む)、インスリン抵抗性症候群、代謝症候群、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、高アンドロゲン血症、多嚢胞性卵巣症候群、癌、および循環器疾患
を治療または予防する方法。
【請求項39】
包装物質と該包装物質中に含まれる抗体を含む製品であって、該抗体が、グレリン活性が有害である疾患に罹患した対象を治療または予防するためにグレリン活性を中和し、該包装物質が、該抗体が対象のグレリンと結合することにより中和することを示す添付文書を含むものである製品。
【請求項40】
該抗体が請求項1〜19のいずれかに記載の抗体である請求項39記載の製品。
【請求項41】
隣接アミノ酸がヒトグレリンのアミノ酸14-27に及ぶペプチド内に局在するヒトグレリンの14、13、12、11、10、9、8、7、または6隣接アミノ酸からなるペプチド。
【請求項42】
さらに非グレリンペプチドと結合した、隣接アミノ酸がヒトグレリンのアミノ酸14-27に及ぶペプチド内に局在するヒトグレリンの14、13、12、11、10、9、8、7、または6隣接アミノ酸からなるペプチド。

【公表番号】特表2008−515771(P2008−515771A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521502(P2007−521502)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/023968
【国際公開番号】WO2006/019577
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】