説明

抗ヒトCCR7抗体、ハイブリドーマ、核酸、ベクター、細胞、医薬組成物、並びに、抗体固定化担体

【課題】組織の線維化や癌の治療薬として有用な新規の抗ヒトCCR7抗体と、当該抗ヒトCCR7抗体を含む医薬組成物等を提供することを課題とする。
【解決手段】ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、配列番号7、17、27、37、47、57、67、又は77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する抗ヒトCCR7抗体が提供される。配列番号5〜10、15〜20、25〜30、35〜40、45〜50、55〜60、65〜70、又は75〜80に示すアミノ酸配列を含む重鎖CDR1〜3と軽鎖CDR1〜3を有する抗ヒトCCR7抗体も提供される。CCR7リガンド刺激によるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断する活性を有するものであることが好ましい。本発明の抗ヒトCCR7抗体は、組織の線維化や癌の治療薬の有効成分として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ヒトCCR7抗体、ハイブリドーマ、核酸、ベクター、細胞、医薬組成物、並びに、抗体固定化担体に関し、さらに詳細には、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体、当該抗体を生産するハイブリドーマ、当該抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする核酸、当該核酸を有するベクター、当該ベクターを有する細胞、当該抗体を含む医薬組成物、並びに、当該抗体が固定化された抗体固定化担体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは様々な細胞の遊走や細胞機能を調節するサイトカインである。ケモカインならびにその受容体の機能異常は、自己免疫疾患、急性ならびに慢性炎症、癌といった様々な病気の原因となっている。これまで、ケモカインならびにその受容体の活性を制御する薬剤の開発がなされ、臨床応用されているが、問題を充分に解決しているとはいい難い。
【0003】
特定のケモカインが細胞の遊走や細胞機能の調節といった活性を発現するためには、ケモカイン選択的な細胞膜受容体と結合することが必要である。ケモカイン受容体はすでに約20種類発見されており、いずれのケモカイン受容体も3量体Gタンパク質と結合する7回膜貫通型タンパク質(GPCR)である。ケモカインが受容体に結合すると、3量体Gタンパク質のGαユニットを遊離させる。その結果、細胞内のCa濃度を上昇させたり、phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)やsmall Rho GTPases経路やその他の経路を活性化させて機能を発現させる。いずれのケモカイン受容体も、比較的選択的なケモカインで活性化するものの、タンパク質の1次構造や細胞内の活性化機構は非常に類似している。したがって、特定のケモカイン受容体の機能を選択的に遮断することは容易ではない。生理的ならびに病態における各ケモカインとケモカイン受容体の機能発現は、それぞれのタンパク質が特定の細胞や組織に特定の時期(炎症時)に発現することで制御されている(非特許文献1)。
【0004】
ヒトCCモチーフレセプター7(CC MOTIF, RECEPTOR 7;別名:EBI1、CMKBR7;以下、「CCR7」と称する。)は、当初、エプスタイン・バー(EPSTEIN-BARR)ウイルス感染によりリンパ球選択的に発現するGPCRとして発見された(非特許文献2)。その後、CCR7は、CCL19(別名:ELC)ならびにCCL21(別名:SLC、EXODUS 2)の選択的ケモカイン受容体であることがわかった。CCR7は生理的条件下では、CD4陽性T細胞(Th1、Th2、Treg細胞)、成熟樹状細胞、B細胞といった細胞に比較的選択的に発現している。CCR7を介して炎症部位などの病巣にこうした細胞が導引され、炎症反応や免疫反応が亢進することが知られている。またCCR7異常活性化が自己免疫疾患、急性ならびに慢性炎症後の線維症、癌転移といった様々な病気の原因となっている。
ヒトCCR7のアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列は、すでに知られている(例えば、GenBank: EAW60669.1)。
【0005】
炎症は、組織の損傷や感染に対する防御反応である。様々な炎症刺激に応答して炎症性分子(ケモカインやサイトカイン)の発現亢進に引き続き、好中球及び単球の浸潤を促進する。さらに炎症反応が亢進すると、TならびにBリンパ球の流入し病態が慢性化する。一方、炎症の収束段階においては、過剰な白血球のアポトーシスや組織マクロファージによる貪食が起こり、間質細胞(例えば線維芽細胞)による損傷組織の修復が見られる。
【0006】
過剰な間質細胞の分化増殖は、種々の線維症(肝線維症、腎線維症、肺線維症、皮膚線維症、心血管線維症、消化管線維症及び他の線維性疾患)の増悪と深く関連している。慢性肺線維症は、肺全体にわたる瘢痕形成に起因し、予後不良の疾患である。抗線維化作用を有するピルフェニドン、コルチコステロイド類(例えばプレドニゾン)及び/又は体内の免疫系を抑制するその他の薬物が、線維症につながる過程を抑えるため処方される。しかしながら、今のところ充分な治療成績をあげているとはいい難い。
【0007】
一方、近年、炎症反応後の修復過程における線維化の分子機構が明らかにされつつある。そのような修復機構では、局所的な休止線維芽細胞が、損傷領域に移動し、細胞外マトリックスタンパク質を生成し、傷の収縮と線維形成(瘢痕)を促進する。また、循環する線維芽前駆細胞、線維芽細胞(これらは血液中に存在する)が、傷や線維形成の部位に移動し、そこでそれらが分化して組織の修復やその他の線維化反応を仲介することが示唆されてきた。
【0008】
血液中線維芽前駆細胞は、CD14+末梢血単球前駆細胞群が炎症部位に浸潤し、局所で間質細胞様(コラーゲンI型及びIII型並びにフィブロネクチン)に分化する(非特許文献3)。これらの細胞は、炎症性サイトカインを分泌するとともに、細胞外マトリックスタンパク質、他のサイトカイン類、を分泌し、それらが線維形成をもたらし得る。血液中線維芽前駆細胞の炎症部位への過剰な浸潤を選択的に抑制することができれば、線維化を最小限に食い止めることが期待できるが、まだ臨床応用には至っていない。
【0009】
近年、線維芽前駆細胞に発現するケモカイン受容体として、前記したCCR7が注目されている(特許文献1)。CCR7を欠損させた遺伝子変換動物に肺線維症や腎線維症を発症させるような刺激を付加しても、線維症を発症しないことが示されている(非特許文献4)。そこで、CCR7の機能を低分子化合物、モノクローナル抗体、RNAi等で阻害することができれば、種々の線維化を抑制することが期待できる。しかし、ケモカイン受容体のタンパク質の1次構造や細胞内の活性化機構は非常に類似しているため、よりCCR7を選択的に阻害しうる物質が望まれる。これまでCCR7の機能を阻害する物質(モノクローナル抗体あるいはRNAi)の研究が行われているが、臨床応用まで到達した事例はない。
【0010】
また一方、癌治療においては原発癌の増殖抑制と遠隔転移を伴う再発予防が重要である。従来の外科療法や化学療法に加え、分子標的薬(例えばキナーゼ阻害剤)や抗体医薬療法により治療成績は向上している。しかしながら、遠隔転移を伴う再発癌は予後不良であり、新たな治療薬の開発が望まれている。遠隔転移の機構としては、原発癌より血管を経由する場合とリンパ組織を経由する場合がある。これまで、細胞外マトリックスタンパク質分解酵素阻害剤(MMP阻害剤)などが、転移予防薬として開発されたものの、臨床応用まで到達した事例はない。
【0011】
様々な研究により、CCR7が、B細胞慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、乳癌細胞、悪性乳房腫瘍などの様々な腫瘍細胞で発現されることが示されている。更に、CCR7は、胃癌、黒色腫、非小細胞肺癌、T細胞白血病細胞などの様々な癌のリンパ節転移において役割を果たしていることが明らかになってきた(非特許文献1)。CCR7のリガンドであるCCL19ならびにCCL21がリンパ節で高発現していることから、選択的なCCR7機能阻害が、癌細胞のリンパ性転移を抑制することが期待できる。
【0012】
膜タンパク質(受容体)に対する抗体医薬の主要な作用機序は、当該タンパク質を発現する細胞を抗体が認識した後、補体依存性細胞溶解作用(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)に基づき除去するものが一般的であった。しかしながら、CDCやADCCはマクロファージ等の炎症細胞の活性化を伴い、線維症治療としては必ずしも適切とはいえない。したがって、CCR7を選択的に阻害しうるモノクローナル抗体を線維症治療に応用する場合には、CDCやADCCによらない機能性抗体が望ましい。すなわち、CCR7のCCL19あるいはCCL21依存的細胞内情報伝達を選択的に遮断する抗体が望ましい。しかし、一般的に、GPCRに対する機能性抗体を効率的に取得することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2009−528977号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Viola A, Luster AD "Chemokines and their receptors: drug targets in immunity and inflammation", Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2008;48:171-97
【非特許文献2】Birkenbach, M., Josefsen, K., Yalamanchili, R., Lenoir, G., Kieff, E., "Epstein-Barr virus-induced genes: first lymphocyte-specific G protein-coupled peptide receptors", J. Virol. 67: 2209-2220, 1993.
【非特許文献3】Pilling D, Fan T, Huang D, Kaul B, Gomer RH. "Identification of markers that distinguish monocyte-derived fibrocytes from monocytes, macrophages, and fibroblasts", PLoS One. 2009 Oct 16;4(10):e7475
【非特許文献4】Wada T, Sakai N, Matsushima K, Kaneko S."Fibrocytes: a new insight into kidney fibrosis",Kidney Int. 2007 Aug;72(3):269-73.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、線維症や癌の治療薬として有用な新規の抗ヒトCCR7抗体と、当該抗ヒトCCR7抗体を含む医薬組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するための本発明の1つの様相は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(重鎖CDR3)を有することを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
【0017】
同様の課題を解決するための本発明の他の様相は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(A1)〜(A8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
(A1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する。
【0018】
同様の課題を解決するための本発明の他の様相は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(B1)〜(B8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
(B1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号10で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号19で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号38で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号39で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号40で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号48で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号49で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号68で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号69で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号70で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する。
【0019】
同様の課題を解決するための本発明の他の様相は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列について、下記(C1)〜(C8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
(C1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C2)配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C3)配列番号22で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C4)配列番号32で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号34で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C5)配列番号42で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号44で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C6)配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号54で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C7)配列番号62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号64で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C8)配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号74で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0020】
好ましくは、CCR7リガンド刺激によるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断する活性を有する。
【0021】
好ましくは、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0022】
好ましくは、抗体断片、一本鎖抗体、又はダイアボディである。
【0023】
本発明の他の様相は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)により産生されることを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
【0024】
本発明の他の様相は、上記の抗ヒトCCR7抗体と同一のエピトープに結合することを特徴とする抗ヒトCCR7抗体である。
【0025】
本発明のさらに他の様相は、R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)であることを特徴とするハイブリドーマである。
【0026】
本発明のさらに他の様相は、本発明の抗ヒトCCR7抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする核酸である。
【0027】
好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号31、配列番号33、配列番号41、配列番号43、配列番号51、配列番号53、配列番号61、配列番号63、配列番号71、又は配列番号73で表される塩基配列を有する。
【0028】
本発明のさらに他の様相は、上記核酸を含むベクターである。
【0029】
本発明のさらに他の様相は、上記ベクターが導入された細胞である。
【0030】
本発明のさらに他の様相は、上記した本発明の抗ヒトCCR7抗体と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする医薬組成物である。
【0031】
好ましくは、CCR7リガンドによるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断するものである。
【0032】
好ましくは、組織の線維化を治療するために用いられる。
【0033】
好ましくは、前記組織の線維化が、肝線維症、腎線維症、肺線維症、皮膚線維症、心血管線維症、消化管線維症及び他の線維性疾患からなる群から選択される線維症である。
【0034】
好ましくは、前記肝線維症が、肝硬変、虚血再灌流、肝移植後傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、及び原発性硬化性胆管炎からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、前記肝硬変が、アルコールによる誘発、薬物による誘発、及び化学的な誘発からなる群から選択された少なくとも1つによるものである。
【0036】
好ましくは、前記腎線維症が、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎症、腎尿細管間質性線維症、及び巣状分節性糸球体硬化症からなる群から選択されるものである。
【0037】
好ましくは、前記肺線維症が、肺間質性線維症、薬物誘発サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞損傷疾患、肺高血圧症、及び新生児気管支肺形成異常からなる群から選択されるものである。
【0038】
好ましくは、前記皮膚線維症が、強皮症、ケロイド瘢痕化、乾癬、肥厚性瘢痕化、及び偽性強皮症からなる群から選択されるものである。
【0039】
好ましくは、前記心血管線維症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈再狭窄、うっ血性心筋症、心不全、心移植、及び心筋線維症からなる群から選択されるものである。
【0040】
好ましくは、前記消化管線維症が、コラーゲン蓄積大腸炎、絨毛萎縮、陰窩過形成、ポリープ形成、クローン病の線維症、胃潰瘍治癒、及び腹部癒着術後瘢痕からなる群から選択されるものである。
【0041】
好ましくは、前記線維症が、骨に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、リウマチ様パンヌス形成である。
【0042】
好ましくは、癌の転移を治療するために用いられる。
【0043】
好ましくは、前記癌が、咽頭癌、軟骨肉腫、大腸癌、膵臓癌、白血病、乳癌からなる群から選択されるものである。
【0044】
本発明のさらに他の様相は、上記した本発明の抗ヒトCCR7抗体が担体に固定化されてなる抗体固定化担体である。
【0045】
好ましくは、CCR7発現細胞を含む血液を接触させて、前記体液からCCR7発現細胞を除去するために用いられる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の抗ヒトCCR7抗体によれば、治療困難な線維症やリンパ性癌転移等に対する新規医薬品を提供することができる。
【0047】
本発明のハイブリドーマについても同様であり、治療困難な線維症やリンパ性癌転移等に対する新規医薬品の有効成分となる抗ヒトCCR7抗体を製造することができる。
【0048】
本発明の核酸によれば、本発明の抗体を組換え技術をもって生産することができる。また、遺伝子治療への応用も可能である。
【0049】
本発明のベクターについても同様であり、本発明の抗体を組換え技術をもって生産することができる。また、遺伝子治療への応用も可能である。
【0050】
本発明の細胞についても同様であり、本発明の抗体を組換え技術をもって生産することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物によれば、治療困難な線維症やリンパ性癌転移等に対する新規医薬品を提供することができる。
【0052】
本発明の抗体固定化担体によれば、線維症や癌などを罹患している患者の血液から、CCR7発現細胞を選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】R7−01の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図2】R7−02の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図3】R7−05の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図4】R7−09の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図5】R7−11の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図6】R7−18の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図7】R7−25の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図8】R7−47の可変領域のアミノ酸配列とCDR1〜3の位置を表す説明図であり、(a)は重鎖可変領域、(b)は軽鎖可変領域を示す。
【図9】ヒトCCR7遺伝子導入細胞とマウスコントロールIgGとの相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。
【図10】ヒトCCR7遺伝子導入細胞と抗ヒトCCR7抗体R7−47との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。
【図11】細胞内Ca2+濃度と各添加物の濃度との関係を表すグラフである。
【図12】(a)はアイソタイプコントロール抗体とFITC標識抗マウスIgG抗体で染色した結果を表すヒストグラム、(b)はR7−47とFITC標識抗マウスIgG抗体で染色した結果を表すヒストグラムである。
【図13】肺線維症を惹起させたマウスに抗ヒトCCR7抗体R7−11、R7−18、又はR7−47を投与した実験の結果を表すグラフである。
【図14】(a)はCHO−K1細胞とハイブリドーマR7−02由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラム、(b)はヒトCCR7遺伝子導入細胞とハイブリドーマR7−02由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラムである。
【図15】(a)はCHO−K1細胞とハイブリドーマR7−11由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラム、(b)はヒトCCR7遺伝子導入細胞とハイブリドーマR7−11由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラムである。
【図16】(a)はCHO−K1細胞とハイブリドーマR7−18由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラム、(b)はヒトCCR7遺伝子導入細胞とハイブリドーマR7−18由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果を表す2次元ドット表示図とヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
まず、本発明の抗体が特異的に認識するヒトCCR7について、その構造を中心に説明する。前述したように、CCR7はGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種であり、細胞膜を7回貫通し、そのN末端を細胞外に、C末端を細胞内に向けて存在している。ヒトCCR7をコードする遺伝子(cDNA)はすでに単離されており、ヒトCCR7のアミノ酸配列も知られている。当該配列情報は、例えば、GenBank等のデータベースから得ることができる(例えば、GenBank:EAW60669.1)。その一例として、配列番号81にヒトCCR7遺伝子の塩基配列と該塩基配列に対応するアミノ酸配列を、配列番号82にアミノ酸配列のみを示す。
【0055】
ヒトCCR7の各ドメインは、配列番号82に示すアミノ酸配列における以下の部分に相当すると考えられている。左側がアミノ酸番号、右側が各ドメインである。なお各ドメイン間の境界については、多少の前後が生じ得る。
【0056】
1〜 24:膜移行シグナルペプチド配列(発現後に切断・除去される)
25〜 59:N末端ドメイン
87〜 95:細胞内第1ループドメイン
117〜130:細胞外第1ループドメイン
153〜170:細胞内第2ループドメイン
192〜219:細胞外第2ループドメイン
248〜263:細胞内第3ループドメイン
290〜313:細胞外第3ループドメイン
332〜378:C末端ドメイン
【0057】
ヒトCCR7には、配列番号82に示すもの以外にアミノ酸置換体等の各種のバリアントが知られている。本発明における「ヒトCCR7」には、細胞外ドメインを有し且つCCR7としての機能を有する限り、前記バリアントが含まれる。
【0058】
本発明の抗ヒトCCR7抗体(以下、単に「本発明の抗体」と略記することがある。)は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合するものである。1つの様相(第一の様相)において、本発明の抗体は、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(重鎖CDR3)を有する。
【0059】
また他の様相(第二の様相)において、本発明の抗体は、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(A1)〜(A8)のいずれかを満たす。
(A1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する。
【0060】
また他の様相(第三の様相)において、本発明の抗体は、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(B1)〜(B8)のいずれかを満たす。
(B1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号10で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号19で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号38で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号39で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号40で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号48で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号49で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号68で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号69で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号70で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する。
【0061】
また他の様相(第四の様相)において、本発明の抗体は、その重鎖可変領域(以下、「VH」と略記することがある。)と軽鎖可変領域(以下、「VL」と略記することがある。)のアミノ酸配列が以下(C1)〜(C8)のいずれかを満たす。
(C1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C2)配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C3)配列番号22で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C4)配列番号32で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号34で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C5)配列番号42で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号44で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C6)配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号54で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C7)配列番号62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号64で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C8)配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号74で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0062】
配列番号5(重鎖CDR1),配列番号6(重鎖CDR2),配列番号7(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号2(VH)のアミノ酸番号27〜35,50〜66,97〜112の部分に相当する(図1(a))。
配列番号8(軽鎖CDR1),配列番号9(軽鎖CDR2),配列番号10(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号4(VL)のアミノ酸番号24〜39,55〜68,94〜102の部分に相当する(図1(b))。
【0063】
配列番号15(重鎖CDR1),配列番号16(重鎖CDR2),配列番号17(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号12(VH)のアミノ酸番号43〜51,66〜82,113〜124の部分に相当する(図2(a))。
配列番号18(軽鎖CDR1),配列番号19(軽鎖CDR2),配列番号20(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号14(VL)のアミノ酸番号24〜37,53〜59,87〜99の部分に相当する(図2(b))。
【0064】
配列番号25(重鎖CDR1),配列番号26(重鎖CDR2),配列番号27(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号22(VH)のアミノ酸番号30〜38,53〜68,100〜111の部分に相当する(図3(a))。
配列番号28(軽鎖CDR1),配列番号29(軽鎖CDR2),配列番号30(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号24(VL)のアミノ酸番号23〜36,52〜58,91〜99の部分に相当する(図3(b))。
【0065】
配列番号35(重鎖CDR1),配列番号36(重鎖CDR2),配列番号37(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号32(VH)のアミノ酸番号28〜36,51〜67,98〜109の部分に相当する(図4(a))。
配列番号38(軽鎖CDR1),配列番号39(軽鎖CDR2),配列番号40(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号34(VL)のアミノ酸番号23〜36,52〜58,91〜99の部分に相当する(図4(b))。
【0066】
配列番号45(重鎖CDR1),配列番号46(重鎖CDR2),配列番号47(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号42(VH)のアミノ酸番号29〜37,52〜68,98〜110の部分に相当する(図5(a))。
配列番号48(軽鎖CDR1),配列番号49(軽鎖CDR2),配列番号50(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号44(VL)のアミノ酸番号24〜39,55〜61,94〜102の部分に相当する(図5(b))。
【0067】
配列番号55(重鎖CDR1),配列番号56(重鎖CDR2),配列番号57(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号52(VH)のアミノ酸番号30〜37,53〜69,99〜111の部分に相当する(図6(a))。
配列番号58(軽鎖CDR1),配列番号59(軽鎖CDR2),配列番号60(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号54(VL)のアミノ酸番号24〜39,55〜61,94〜102の部分に相当する(図6(b))。
【0068】
配列番号65(重鎖CDR1),配列番号66(重鎖CDR2),配列番号67(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号62(VH)のアミノ酸番号30〜41,54〜69,100〜111の部分に相当する(図7(a))。
配列番号68(軽鎖CDR1),配列番号69(軽鎖CDR2),配列番号70(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号64(VL)のアミノ酸番号24〜39,56〜62,95〜102の部分に相当する(図7(b))。
【0069】
配列番号75(重鎖CDR1),配列番号76(重鎖CDR2),配列番号77(重鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号72(VH)のアミノ酸番号27〜35,50〜66,96〜109の部分に相当する(図8(a))。
配列番号78(軽鎖CDR1),配列番号79(軽鎖CDR2),配列番号80(軽鎖CDR3)は、それぞれ、配列番号74(VL)のアミノ酸番号24〜39,55〜61,94〜102の部分に相当する(図8(b))。
【0070】
本発明において「抗体」という文言は、「免疫グロブリン」と置き換えることができる。
【0071】
本発明における抗体には、その機能的断片が含まれる。ここで「抗体の機能的断片」とは、抗体(すなわち免疫グロブリン)の部分断片であって、抗原に対する作用を少なくとも1つ保持するものを指す。前記部分断片の例としては、F(ab’)2、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv、VH−VL)、VH、及びこれらの重合体、並びに、これらと重鎖CH3領域との融合体が挙げられる。また、CDR1、CDR2、CDR3等の各CDR、及びこれらCDRの連結体、並びに、これらCDR又はCDR連結体と重鎖CH3領域との融合体が挙げられる。すなわち本発明の抗体には、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合するものである限り、前記したような抗体の部分断片も含まれる。抗体の部分断片を「抗体断片」と称することもある。
【0072】
さらに本発明の抗体は、多重特異性抗体であってもよい。例としては、二重特異性抗体の一種であるダイアボディ(Diabody)(国際公開第93/11161号パンフレット等)が挙げられる。
【0073】
本発明の抗体が機能的断片である場合には、例えば、以下のような効果がある。すなわち、本発明の抗ヒトCCR7抗体を後述するような医薬に応用する際に、IgG型等の全長の抗体を使用すると、標的受容体のシグナル阻害に加えて、標的組織に障害が起き、これが副作用につながる場合がある。このような場合に、可変領域だけを用いた「抗体の機能的断片」を採用すると、前記したような副作用を回避しやすくなる。
【0074】
本発明の抗体のクラス(アイソタイプ)は特に限定されない。例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等、いずれのクラスであってもよい。さらに、本発明の抗体のサブクラスについても特に限定はなく、例えば、IgGであれば、IgG1、IgG2、IgG3等のいずれのサブクラスであってもよい。
【0075】
好ましい実施形態では、CCR7リガンド刺激によるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断する活性を有する。
【0076】
本発明の抗体におけるさらに他の様相(第五の様相)は、R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)により産生される抗ヒトCCR7抗体である。これらの8種のハイブリドーマが産生する抗体は、ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合するものである。
後述の実施例で詳細に説明されるとおり、これらのハイブリドーマによって産生される8種の抗体は、それぞれ、上記した特定のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、及び各CDRを有する。表1に、VH、VL、各CDRのアミノ酸配列の配列番号と、対応するクローンの関係をまとめる。
【0077】
【表1】

【0078】
本発明の抗体を産生する上記8種のハイブリドーマは、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD,あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。寄託の詳細は以下のとおりである。
【0079】
表示:R7−01
受託番号:FERM BP−11369
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21988より移管)
【0080】
表示:R7−02
受託番号:FERM BP−11404
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21989より移管)
【0081】
表示:R7−05
受託番号:FERM BP−11371
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21990より移管)
【0082】
表示:R7−09
受託番号:FERM BP−11372
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21991より移管)
【0083】
表示:R7−11
受託番号:FERM BP−11373
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21992より移管)
【0084】
表示:R7−18
受託番号:FERM BP−11374
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21993より移管)
【0085】
表示:R7−25
受託番号:FERM BP−11375
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21994より移管)
【0086】
表示:R7−47
受託番号:FERM BP−11376
受託日:平成22年(2010年)7月28日
(2010年7月28日に寄託されたFERM−21995より移管)
【0087】
本発明の抗体が特異的に結合するヒトCCR7の細胞外ドメインは、N末端ドメイン、細胞外第1ループドメイン、細胞外第2ループドメイン、細胞外第3ループドメインのいずれでもよい。また本発明の抗体は、これらの細胞外ドメインのいずれか1つのみに結合するものでもよいし、2つ以上に結合するものでもよい。
【0088】
本発明の抗体には、上記した第一から第五の様相に係る抗ヒトCCR7抗体と同一のエピトープに結合する抗ヒトCCR7抗体も含まれる。換言すれば、上記した第一から第五の様相に係る抗ヒトCCR7抗体のCDRと「機能的に同等」のCDRを有する抗ヒトCCR7抗体も含まれる。例えば、後述の実施例で具体的に示す8種の抗ヒトCCR7抗体のエピトープを、ヒトCCR7の部分ペプチド等を用いたエピトープマッピング法により解析する。そして、同定されたエピトープを含む合成ペプチドを抗原として用い、上記8種の抗ヒトCCR7抗体と同一のエピトープに結合する抗ヒトCCR7抗体を得ることができる。さらに、得られた抗ヒトCCR7抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列を決定し、重鎖CDR1〜3と軽鎖CDR1〜3のアミノ酸配列を特定することができる。
なお、当該抗ヒトCCR7抗体における「機能的に同等」のCDRのアミノ酸配列の例としては、元のアミノ酸配列(配列番号5〜10、15〜20、25〜30、35〜40、45〜50、55〜60、65〜70、75〜80)において1若しくは数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列で且つCDRとして同等の機能を有するものが挙げられる。別の例としては、前記元のアミノ酸配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のアミノ酸配列で且つCDRとして同等の機能を有するものが挙げられる。
2つの抗体についてエピトープが同一か否かを調べる方法としては、競合実験による方法が挙げられる。例えば、第一抗体たる前記8種の抗ヒトCCR7抗体と受容体との結合が、試験対象である第二抗体によって競合阻害を受ける場合には、当該第二抗体は、前記第一抗体と同じエピトープに結合するものであるといえる。
【0089】
本発明の核酸は、本発明の抗体における重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)をコードするものである。すなわち、第一の様相に係る、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する抗ヒトCCR7抗体のVHまたはVLをコードする核酸は、本発明の核酸に含まれる。また、第二の様相に係る、上記(A1)〜(A8)のいずれかを満たすVH又はVLをコードする核酸は、本発明の核酸に含まれる。また、第三の様相に係る、上記(B1)〜(B8)のいずれかを満たすVH又はVLをコードする核酸は、本発明の核酸に含まれる。また、第四の様相に係る、上記(C1)〜(C8)のいずれかを満たすVH又はVLをコードする核酸は、本発明の核酸に含まれる。これらの核酸の具体例としては、配列番号1、配列番号3、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号31、配列番号33、配列番号41、配列番号43、配列番号51、配列番号53、配列番号61、配列番号63、配列番号71、又は配列番号73で表される塩基配列を有する核酸が挙げられる。
本発明の核酸は、上記8種のハイブリドーマからPCR等を用いて取得することもできる。
【0090】
本発明のベクターは、本発明の核酸を含むものである。ベクターの種類としては特に限定はなく、その後に導入される宿主細胞の種類等によって適宜選択すればよい。また、本発明のベクターには、遺伝子治療用ベクターが含まれる。この場合には、ベクターそのものを生体内に直接投与可能である。
【0091】
本発明の細胞は、本発明のベクターが導入されたものである。細胞の種類としては、導入されたベクターが機能するものであれば特に限定はない。例としては、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、酵母、細菌(大腸菌等)、植物細胞、昆虫細胞、などが挙げられる。
【0092】
本発明の抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0093】
(ハイブリドーマによる生産)
上記8種のいずれかのハイブリドーマを培養し、該培養物から本発明の抗体を生産することができる。培養の方法としては、ハイブリドーマの培養方法として一般に採用されている方法をそのまま適用することができる。例えば、DMEMやRPMI1640のような動物細胞用の培地を用いてハイブリドーマを培養し、その培養上清から本発明の抗体を得ることができる。動物の腹腔内でハイブリドーマを培養する場合には、腹水を採取し、その腹水から本発明の抗体を得ることができる。
【0094】
(遺伝子組換え技術による生産)
本発明の抗体は、遺伝子組換えの手法を用いて生産することもできる。特に、キメラ型抗体、ヒト化抗体、抗体の機能的断片などを生産する場合には、遺伝子組換えの手法により生産することが一般的である。
【0095】
まず、第四の様相に係る、上記(C1)〜(C8)のいずれかを満たす重鎖可変領域と軽鎖可変領域を有する抗体を生産する方法について、キメラ型抗体の生産を例に説明する。ここで「キメラ型抗体」とは、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)がヒト以外の動物由来のもので、重鎖定常領域(CH)や軽鎖定常領域(CL)などの他の領域がヒト由来のものである抗体を指す。
まず、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、又は配列番号72に示すアミノ酸配列(VH)をコードするDNAを調製する。同様に、配列番号4、配列番号14、配列番号24、配列番号34、配列番号44、配列番号54、配列番号64、又は配列番号74に示すアミノ酸配列(VL)をコードするDNAを調製する。これらのDNAとしては、配列番号1、配列番号3、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号31、配列番号33、配列番号41、配列番号43、配列番号51、配列番号53、配列番号61、配列番号63、配列番号71、又は配列番号73に示すものが例示されるが、他の塩基配列のものでもよい。DNAの調製は、PCR等の公知の方法を用いて行うことができる。化学合成により当該DNAを調製することもできる。
得られたVH又はVLをコードするDNAを、ヒト抗体のCH又はCLをコードする配列を有するベクターにそれぞれ挿入し、キメラ型抗体発現ベクターを構築する。なお、ヒト抗体のCH又はCLをコードする配列を有するベクターは、市場から入手できる。構築した発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、キメラ型抗体を発現する組換え細胞を得る。そして、この組換え細胞を培養し、該培養物から所望のキメラ型抗体を取得する。
【0096】
前記宿主細胞としては、発現ベクターが機能できるものであれば特に限定はない。上述したような、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、酵母、細菌(大腸菌等)、植物細胞、昆虫細胞、などを適宜採用することができる。
【0097】
次に、第三の様相に係る、上記(B1)〜(B8)のいずれかを満たす特定のCDRを有する抗体を生産する方法について、ヒト化抗体の生産を例に説明する。ここでヒト化抗体とは、CDRがヒト以外の動物由来のもので、その他の領域(フレームワーク領域や定常領域など)がヒト由来のものである抗体を指す。
【0098】
まず、重鎖CDR1〜3および軽鎖CDR1〜3をコードするDNAとして、配列番号5〜10、配列番号15〜20、配列番号25〜30、配列番号35〜40、配列番号45〜50、配列番号55〜60、配列番号65〜70、又は配列番号75〜80に示すアミノ酸配列をコードする各DNAを調製する。当該DNAとしては、配列番号1、配列番号3、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号31、配列番号33、配列番号41、配列番号43、配列番号51、配列番号53、配列番号61、配列番号63、配列番号71、又は配列番号73に示す塩基配列における各CDR相当部分の配列が例示されるが、他の塩基配列のものでもよい。DNAの調製は、PCR等の公知の方法を用いて行うことができる。化学合成により当該DNAを調製することもできる。
次に、これらのDNAを用いて、任意のヒト抗体におけるVHのフレームワーク領域(FR)に重鎖CDR1〜3が移植された可変領域をコードするDNAを作製する。同様に、任意のヒト抗体におけるVLのFRに軽鎖CDR1〜3が移植された可変領域をコードするDNAを作製する。作製した各DNAを、ヒト抗体のCH又はCLをコードする配列を有するベクターに挿入し、ヒト化抗体発現ベクターを構築する。構築した発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、ヒト化抗体を発現する組換え細胞を得る。そして、この組換え細胞を培養し、該培養物から所望のヒト化抗体を取得する。
第二の様相に係る、上記(A1)〜(A8)のいずれかを満たす特定のCDRを有する抗体についても、同様の手順で生産することができる。
第一の様相に係る、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する抗ヒトCCR7抗体についても、同様の手順で生産することができる。
【0099】
本発明の抗体の精製方法としては特に限定はなく、公知の手法を採用することができる。例えば、前記ハイブリドーマ又は前記組換え細胞の培養上清を回収し、各種クロマトグラフィー、塩析、透析、膜分離等の公知の手法を組み合わせて、本発明の抗体を精製することができる。抗体のアイソタイプがIgGである場合には、プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって簡便に精製することもできる。
【0100】
なお、本発明のハイブリドーマは、後述の実施例にて詳述するように、公知のハイブリドーマ作製技術を用いて選抜及び取得されたものである。ここで、動物(例えばマウス)に抗原を免疫する際には、精製されたヒトCCR7を抗原として用いることもできるが、遺伝子免疫の手法を用いてもよい。特に、大腸菌シャペロニンであるGroELの遺伝子にCCR7遺伝子を連結させた融合遺伝子を免疫原として用いることにより、抗体作製が容易に行えることがある。当該遺伝子免疫手法の詳細は、国際公開第2006/041157号パンフレットに記載されている。
【0101】
本発明の抗体は医薬組成物(治療剤)の有効成分として有用である。本発明の医薬組成物は、本発明の抗ヒトCCR7抗体と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とするものである。好ましくは、CCR7リガンドによるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断するものである。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、組織の線維化を治療するために用いられる。組織の線維化の例としては、肝線維症、腎線維症、肺線維症、皮膚線維症、心血管線維症、消化管線維症及び他の線維性疾患からなる群から選択される線維症が挙げられる。
前記肝線維症の例としては、肝硬変、虚血再灌流、肝移植後傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、及び原発性硬化性胆管炎からなる群から選択される肝線維症が挙げられる。肝硬変については、アルコールによる誘発、薬物による誘発、及び化学的な誘発からなる群から選択された少なくとも1つによるものが挙げられる。前記腎線維症の例としては、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎症、腎尿細管間質性線維症、及び巣状分節性糸球体硬化症からなる群から選択される腎線維症が挙げられる。前記肺線維症の例としては、肺間質性線維症、薬物誘発サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞損傷疾患、肺高血圧症、及び新生児気管支肺形成異常からなる群から選択される肺線維症が挙げられる。
【0103】
前記皮膚線維症の例としては、強皮症、ケロイド瘢痕化、乾癬、肥厚性瘢痕化、及び偽性強皮症からなる群から選択される皮膚線維症が挙げられる。前記心血管線維症の例としては、アテローム性動脈硬化、冠動脈再狭窄、うっ血性心筋症、心不全、心移植、及び心筋線維症からなる群から選択される心血管線維症が挙げられる。前記消化管線維症の例としては、コラーゲン蓄積大腸炎、絨毛萎縮、陰窩過形成、ポリープ形成、クローン病の線維症、胃潰瘍治癒、及び腹部癒着術後瘢痕からなる群から選択される消化管線維症が挙げられる。
【0104】
また前記線維症が、骨に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、リウマチ様パンヌス形成であってもよい。
【0105】
また本発明の医薬組成物は、癌の転移を治療するためにも用いることができる。前記癌の例としては、咽頭癌、軟骨肉腫、大腸癌、膵臓癌、白血病、乳癌からなる群から選択される癌が挙げられる。
【0106】
本発明の医薬組成物は、経口あるいは非経口的に、全身あるいは局部的に投与することができる。投与の形態としては、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の場合には、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより、全身または局部的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により、適宜、投与方法を選択することができる。本発明の抗体の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことができる。あるいは、例えば、患者あたり抗体0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗体の投与量は、これらの範囲に限定されるものではない。
【0107】
本発明の抗体を含む医薬組成物は、常法に従って製剤化することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体や添加物を含む。前記担体あるいは前記添加物の例としては、界面活性剤(PEG、Tween等)、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、キレート剤(EDTA等)、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに限定されず、その他常用の担体等を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等のタンパク質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0108】
注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。また、必要に応じ本発明の抗体をマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる("Remingto's Pharmaceutical Science 16th edition",Oslo Ed. (1980)等参照)。
【0109】
さらに、薬剤を徐放させる技術が知られており、本発明の医薬組成物に適用し得る(Langer et al., J. Biomed. Master. Res. 15:167-277 (1981); Langer, Chem. Tech. 12:98-105 (1982);米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開第58,481号;Sidman et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983);欧州特許出願公開第133,988号)。
【0110】
さらに、抗体に他の薬剤(抗線維化作用剤、低分子抗癌剤、サイトカインなど)を直接融合させ治療効果を高める技術が知られており、本発明の医薬組成物に適用し得る。
【0111】
また、本発明の抗体をコードする遺伝子を遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療薬とすることも考えられる。当該遺伝子治療薬(組換えベクター)の投与方法としては、nakedプラスミドによる直接投与の他、リポソーム等にパッケージングして投与する方法、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、HVJベクター等の各種ウイルスベクターに組み込んで投与する方法(Adolph『ウイルスゲノム法』,CRC Press,Florid(1996)参照)、コロイド金粒子等のビーズ担体に被覆(国際公開第93/17706号パンフレット等)して投与する方法、等が挙げられる。すなわち、前記遺伝子治療薬は、生体内において本発明の抗体が発現され、その作用を発揮できる限り、いかなる方法により投与してもよい。好ましくは、適当な非経口経路(静脈内、腹腔内、皮下、皮内、脂肪組織内、乳腺組織内、吸入または筋肉内の経路を介して注射、注入、またはガス誘導性粒子衝撃法(電子銃等による)、添鼻薬等粘膜経路を介する方法等)により十分な量が投与される。さらに、前記遺伝子治療薬は、ex vivoにおいてリポソームトランスフェクション、粒子衝撃法(米国特許第4,945,050号)、またはウイルス感染を利用して細胞に投与し、該細胞を動物に再導入することにより投与してもよい。
【0112】
さらに、本発明には、CCR7シグナルの異常亢進によって発症する疾患又は疾病に罹患した哺乳動物の該疾患に関する治療方法と治療薬も含まれる。
ここで「治療」とは、疾患に罹患するおそれがあるか又は罹患した哺乳動物において、該疾患の病態の進行及び悪化を阻止又は緩和することを意味し、これによって該疾患の諸症状等の進行及び悪化を阻止又は緩和することを目的とする治療的処置の意味として使用される。
【0113】
また、「疾患」とは、CCR7シグナルの異常亢進に起因して発症する疾患全般のことを意味し、特に限定されるものではなく、例えば、肝線維症、腎線維症、肺線維症、皮膚線維症、心血管線維症、消化管線維症及び他の線維性疾患を含む概念である。また、咽頭癌、軟骨肉腫、大腸癌、膵臓癌、白血病、乳癌を原発とする癌転移を含む概念である。治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
【0114】
本発明の抗体固定化担体は、本発明の抗ヒトCCR7抗体が担体に固定化されてなるものである。好ましい実施形態では、本発明の抗体固定化担体は、CCR7発現細胞を含む血液を接触させて、前記体液からCCR7発現細胞を除去するために用いられる。担体に固定化される抗ヒトCCR7抗体は、1種類のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0115】
本発明の抗体固定化担体の具体的形態としては、例えば、本発明の抗体が水不溶性担体に固定され、容器に充填されたものが挙げられる。ここで、水不溶性担体としてはいかなる材質も使用可能であるが、成型性、滅菌性や細胞毒性が低いという点で好ましいものを列記すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子、アガロース、セルロース、酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩等の天然高分子、ハイドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、ステンレス、チタン等の金属材料が挙げられる。
【0116】
担体の形状としては、粒状、綿状、織布、不織布、スポンジ状多孔質体、平板状、などが挙げられるが、体積当たりの表面積が大きいという点で粒状、綿状、織布、不織布、スポンジ状多孔質体が好ましい。例えば、抗体が固定された水不溶性担体を予め容器に充填した多孔質体フィルターに末梢血液を通過させ、疾患に関わるCCR7発現細胞を効率よく除去することができる。
【0117】
本発明の抗体固定化担体と他の構成要素とを組み合わせて、CCR7発現細胞除去用キットを作製することができる。当該他の構成要素としては、抗凝固剤、体外循環回路などが挙げられる。
【0118】
本発明は、下記(1)〜(5)の抗ヒトCCR7抗体を包含する。
【0119】
(1)ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(重鎖CDR3)を有することを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
【0120】
(2)その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(A1)〜(A8)のいずれかを満たすことを特徴とする上記(1)に記載の抗ヒトCCR7抗体。
(A1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する。
【0121】
(3)その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(B1)〜(B8)のいずれかを満たすことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の抗ヒトCCR7抗体。
(B1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号10で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号19で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号38で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号39で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号40で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号48で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号49で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号68で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号69で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号70で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する。
【0122】
(4)その重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列について、下記(C1)〜(C8)のいずれかを満たすことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体。
(C1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C2)配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C3)配列番号22で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C4)配列番号32で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号34で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C5)配列番号42で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号44で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C6)配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号54で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C7)配列番号62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号64で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C8)配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号74で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0123】
(5)R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)により産生されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体。
【0124】
本発明は、有効量の前記抗ヒトCCR7抗体を投与する組織の繊維化又は癌の転移の治療方法、を包含する。組織の繊維化と癌の具体例は、前述したとおりである。
【0125】
本発明は、組織の繊維化又は癌の転移の治療剤製造のための前記抗ヒトCCR7抗体の使用、を包含する。また本発明は、組織の繊維化又は癌の転移の治療用の前記抗ヒトCCR7抗体、を包含する。組織の繊維化と癌の具体例は、前述したとおりである。
【実施例】
【0126】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
(1)ヒトCCR7(hCCR7)遺伝子の調製
ジーンバンク登録済みのヒトCCR7遺伝子配列(NM_001838、配列番号81)の5'末端にGCTAGC配列、3'末端にGTCGACTAGGAATTC配列(配列番号83)を付加した人工合成遺伝子をDNA合成装置により作製した。その後、この遺伝子をpUC57クローニングベクターに導入し、ヒトCCR7遺伝子クローンを調製した。以下、得られたベクターをNheIとSalIサイトで切断して調製される遺伝子断片を「DNA断片A」と称し、NheIとEcoRIサイトで切断して調製される遺伝子断片を「DNA断片B」と称する。
【0128】
(2)GroELサブユニット遺伝子の単離
大腸菌HMS174(DE3)株(ノバジェン社)からゲノムDNAを抽出・精製した。次に、精製したゲノムDNAを鋳型とし、配列番号84及び85に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、配列番号86に示す塩基配列を有するGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片(以下、「DNA断片C」と称する。)を増幅した。DNA断片Cには、プライマーに由来して、5'末端にSalIサイト、3'末端に2個の停止コドン(TAATAG)をコードする配列及びNotIサイトが導入された。
【0129】
(3)ヒトCCR7とGroELサブユニットとの融合タンパク質を発現する遺伝子免疫用ベクターの構築
哺乳動物発現ベクターpCI Mammalian Expression Vector(プロメガ社)を制限酵素NheIとSalIで消化し、バクテリア由来アルカリフォスファターゼ(BAP)にて末端を脱リン酸化処理した後、上記(1)で調製したDNA断片Aを挿入した。さらに、この発現ベクターをSalIおよびNotIで消化し、BAPにて末端を脱リン酸化処理した後、上記(2)で調製したDNA断片Cを挿入し、ベクターpCI−hCCR7・GroELを構築した。すなわち、ベクターpCI−hCCR7・GroELは、ヒトCCR7をコードする遺伝子とGroELサブユニットをコードする遺伝子との融合遺伝子を有している。
【0130】
(4)ヒトCCR7遺伝子導入安定発現細胞の作製
上記(1)で調製したDNA断片BをpCIneo(プロメガ社)のNheI−EcoRIサイトに導入し、pCIneo−hCCR7を構築した。
【0131】
リポフェクタミン(Lipofectamin)溶液37.5μLと、OPTI−MEMI培地625μLと、20μgのpCIneo−hCCR7を含むOPTI−MEMI培地625μLとを混和した。この混和液を用いて、pCIneo−hCCR7を2×105個のCHO−K1細胞(大日本製薬社)に導入した。対照として、pCIneoのみをCHO−K1細胞に導入した。遺伝子が導入された各CHO−K1細胞を、Ham'sF12K+10%FBS培地(ICN社)にて30時間培養した。さらに、各細胞を剥離、懸濁し、100mmディッシュに5×105個を播き、抗生物質G418(プロメガ社)を0.8mg/mLの濃度で含有するHam'sF12K+10%FBS培地で2週間薬剤処理を行なった。薬剤処理後、限界希釈法により、G418耐性細胞をクローニングした。さらに、Caシグナル応答を増大させるために、クローニングした細胞にpCEP−Gα16(Molecular Devices社)を遺伝子導入し、抗生物質ハイグロマイシンを0.2mg/mLの濃度下で、同様に薬剤処理を行ない、その後、さらにハイグロマイシン耐性細胞のクローニングを行なった。以上の操作により、ヒトCCR7遺伝子導入安定発現細胞を作製した。次に、この細胞上のCCR7機能活性を確認するため、以下の評価を行なった。細胞は2×104個/100μLの初期細胞濃度にて、96穴マイクロタイタープレートを用いて一昼夜培養し、培養終了後、10-6〜10-12Mの濃度範囲内のCCL21(R&D systems社)によって各細胞を刺激したところ、細胞内のCa2+濃度が一過的に上昇した。Ca2+濃度は、Ca2+シグナル解析装置(FLIPR;Molecular Devices社)及び細胞内Ca2+染色キット(Ca3kit;Molecular Devices社)を用いて測定した。このことから、活性型ヒトCCR7が、CHO−K1細胞膜上に正常に安定発現していることがわかった。
【0132】
(5)遺伝子免疫
生理食塩水にベクターpCI−hCCR7・GroELを250μg/mLの濃度になるよう溶解し、免疫用組成物を調製した。この免疫用組成物を、8週齢のマウスBALB/c(雌)の両足大腿筋に各0.12mLずつ注射を行い、免疫した(0日目)。これにより、pCI−hCCR7・GroELを両足に各30μgずつ、すなわち、1匹につき1回あたり60μg投与した。その後、7日目、21日目、及び28日目にも同様して繰り返し免疫した。そして、0、7、14、21、28、35、42日目に採血を行い、血清を調製した。対照として、hCCR7を単独で発現するベクターpCI−hCCR7を用いてマウスを免疫した。
【0133】
(6)フローサイトメトリーによる活性型ヒトCCR7に対する血清中抗体結合性評価
pCIneo−hCCR7が導入され安定発現を確認したCHO−K1細胞(以下、「hCCR7遺伝子導入細胞」と称する。)及び、pCIneoが導入されたCHO−K1細胞(対照の細胞)をPBSで洗浄した。免疫後56日目の血清を500倍希釈し、各細胞と一緒にインキュベートした。さらに、各細胞をPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、フローサイトメーターFACScalibur(ベクトンディッキンソン社)を用いて、各細胞と血清中の抗ヒトCCR7抗体との相互作用を解析した。
【0134】
その結果、ヒトCCR7遺伝子導入細胞を用いた場合は、遺伝子免疫前の血清ではフィコエリスリンがほとんど検出されなかったが、遺伝子免疫後の血清では検出された。これは、免疫後の血清中の抗ヒトCCR7抗体がヒトCCR7遺伝子導入細胞に結合することを示していた。一方、対照の細胞を用いた場合も、遺伝子免疫後の血清でもフィコエリスリンが検出されなかった。これは、免疫後の血清中の抗ヒトCCR7抗体が対照の細胞に結合しないことを示していた。
以上のことから、ベクターpCI−hCCR7・GroELによる遺伝子免疫によって、マウス血清中に活性型ヒトCCR7の細胞外ドメインを特異的に認識する抗体の産生を誘導することができた。
【0135】
(7)抗ヒトCCR7モノクローナル抗体の作製
上記(5)と同様の手順で遺伝子免疫したマウス6匹に対して追加免疫を行った。追加免疫の3日後に脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。PEG法により、1×108個の脾細胞と、1×107個のBALB/Cマウス由来のHAT選択性のミエローマSP2/0細胞とを融合した(細胞融合)。融合した細胞(ハイブリドーマ)の集団をRPMI培地に懸濁し、96穴マイクロプレート14枚の各穴に播種した。この段階で、約990種のハイブリドーマが得られた。
【0136】
細胞融合の翌日から2週間、3日に1度の頻度で、上記マイクロプレート内の培地をHAT Media Supplement(50×)(シグマ社、品番:H0262)を添加したRPMI培地に置き換えた。
上記(6)と同様のフローサイトメトリーによって抗体結合評価を行い、ヒトCCR7遺伝子導入細胞と各穴のハイブリドーマ培養上清中の抗体との結合性を調べた。その結果、8穴において抗体との結合性が確認された。
抗体との結合性が確認された8種のハイブリドーマについて、限界希釈法によるクローニングを行った。すなわち、8種のハイブリドーマについて96穴マイクロプレートに細胞1個以下/穴になるように播種し、培養した。2週間後、同様のフローサイトメトリーを行い、クローニングされた培養上清中の抗体(抗ヒトCCR7モノクローナル抗体)の結合性を確認した。その結果、抗ヒトCCR7モノクローナル抗体を産生する8種のハイブリドーマがクローニングされた。
各ハイブリドーマについてRPMI培地100mL内でフラスコ培養を2週間行った。各培養上清を、プロテインGカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に供して精製・濃縮し、精製された8種の抗ヒトCCR7モノクローナル抗体を各々約20mg得た。
【0137】
各ハイブリドーマを、IPODに寄託した。各ハイブリドーマの表示と受託番号は、上述のとおりである。
【0138】
各々の抗ヒトCCR7モノクローナル抗体(以下、単に「抗ヒトCCR7抗体」と称する。)について、以下に示す試験を行った。以下の記載において、ハイブリドーマの表示を抗体名としても用いることとする。
【0139】
(8)フローサイトメトリーによるヒトCCR7遺伝子導入細胞に対する結合性評価
10μg/mL濃度の抗ヒトCCR7モノクローナル抗体及びマウスコントロールIgG(Thermo、陰性対照)のPBS溶液を調製した(以下、「抗体溶液」と称する。)。一方、ヒトCCR7遺伝子導入細胞をPBSで洗浄した後、抗体溶液を細胞と共にインキュベートした。さらに、細胞をPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加した後、フローサイトメーターFACScalibur(ベクトンディッキンソン社)を用いて、細胞と抗ヒトCCR7抗体及びマウスコントロールIgGとの相互作用を解析した。結果を図9、10及び表2に示す。図9はヒトCCR7遺伝子導入細胞と、マウスコントロールIgGとの相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。図10はヒトCCR7遺伝子導入細胞と、抗ヒトCCR7抗体R7−47との相互作用の解析結果を表すヒストグラムである。表2は、ヒトCCR7遺伝子導入細胞と、各抗ヒトCCR7抗体との相互作用の解析結果より、算出された特異的結合細胞の割合を示す。図9、10において、縦軸は細胞数、横軸はフィコエリスリン(PE)由来の蛍光強度を表す。また、2つのエリア(M1、M2)のうち、M2(右領域)に属する細胞が抗体と結合した細胞を表す。表2において、特異的に結合した細胞の割合は、M2/(M1+M2)で表される。
【0140】
その結果、ヒトCCR7遺伝子導入細胞を用いた場合は、M2のエリアに多くの細胞が検出された(図10、表2)。これは、各抗ヒトCCR7抗体がヒトCCR7遺伝子導入細胞に結合することを示していた。一方、マウスコントロールIgGを用いた場合(図9)は、M2のエリアにはほとんど細胞が検出されなかった。これは、マウスコントロールIgGがヒトCCR7遺伝子導入細胞に結合しないことを示していた。以上のことから、得られた抗ヒトCCR7抗体は、いずれも活性型ヒトCCR7の細胞外ドメインを特異的に認識するものであることが示された。
【0141】
【表2】

【0142】
(9)細胞内Ca2+シグナル伝達阻害活性評価
ヒトCCR7遺伝子導入細胞を、2×104個/100μLの初期細胞濃度にて、96穴マイクロタイタープレートを用いて一昼夜培養した。培養終了後、各穴に10-6〜10-11Mの濃度範囲内の抗ヒトCCR7抗体を添加した。また対照として、マウスコントロールIgG(Thermo社、陰性対照)を同様に10-6〜10-11Mの濃度範囲内で添加したものも調製した。1時間後、1×10-7MのCCL21(R&D systems社)によって各細胞を刺激した際の細胞内Ca2+濃度の一過的上昇の抗体濃度依存的減少度を測定した。Ca2+濃度の測定は、Ca2+シグナル解析装置(FLIPR;Molecular Devices社)及び細胞内Ca染色キット(Ca3kit;Molecular Devices社)を用いて行った。抗ヒトCCR7抗体R7−47を添加した結果を図11に示す。図11は細胞内Ca2+濃度と各添加物の濃度との関係を表すグラフである。図11に示すように、R7−47の濃度依存的に、細胞内Ca2+濃度の低下がみられた。これは、R7−47がCCL21とヒトCCR7との結合を競合的に阻害した結果、細胞内へのシグナル伝達が阻害されたことを示していた。50%阻害濃度(IC50)を算出すると、R7−47では7.4nMであった。表3は、R7−47以外の抗ヒトCCR7抗体のIC50を示す。
以上より、得られた抗ヒトCCR7抗体は、いずれもヒトCCR7リガンドによるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断できることが示された。
【0143】
【表3】

【0144】
(10)アイソタイプ解析
マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(GEヘルスケア社)を用いて、抗ヒトCCR7抗体のアイソタイプを決定した。検出はホースラディッシュペルオキシダーゼ標識マウスIgG抗体を用いたサンドイッチELISAによった。結果を表4に示す。
【0145】
【表4】

【0146】
(11)抗体可変領域のcDNAクローニング、及び相補性決定領域(CDR)の決定
上記8種のハイブリドーマより、各抗体のL鎖及びH鎖の可変領域をコードするDNAをクローニングし、その塩基配列を決定した。クローニングは以下のように行った。まずハイブリドーマからRNeasyMini Kit(QIAGEN社)を用いてRNAを単離した。次に、「SMARTer-RACE cDNA Amplification Kit」(タカラバイオ社)を用いて、メーカーマニュアルに従い5’−RACE法によるcDNA合成、及びPCR産物を得た。PCRの3'側プライマーとして、γ鎖の場合は、配列番号87の配列を、κ鎖の場合は配列番号88〜90の配列を、λ鎖の場合は配列番号91の配列をそれぞれ使用した。
【0147】
得られたDNA断片をpT7 Blue T Vector(ノバジェン社)にDNA Ligation kit ver.2(タカラバイオ社)に挿入した。このベクターでXL10Gold(ストラタジーン社)をトランスフォームし、X−gal、アンピシリン、IPTG含有プレートに播種後、白いコロニーをピックアップした。正常なサイズのインサートを含むクローン各5種よりプラスミドを調製後、ABI PRISM 3130型自動シーケンサーを用いてDNA配列を決定した。決定した配列は一部にPCRエラーによると思われる変異が認められた以外は3クローンとも同じ配列を示したので、その配列をもって目的のDNA配列とした。得られた塩基配列と対応するアミノ酸配列を、配列番号1(R7−01のVH)、配列番号3(R7−01のVL)、配列番号11(R7−02のVH)、配列番号13(R7−02のVL)、配列番号21(R7−05のVH)、配列番号23(R7−05のVL)、配列番号31(R7−09のVH)、配列番号33(R7−09のVL)、配列番号41(R7−11のVH)と43(R7−11のVL)、配列番号51(R7−18のVH)、配列番号53(R7−18のVL)、配列番号61(R7−25のVH)、配列番号63(R7−25のVL)、配列番号71(R7−47のVH)、配列番号73(R7−47のVL)に示す。
【0148】
各塩基配列に対応するアミノ酸配列のみを、配列番号2(R7−01のVH)、配列番号4(R7−01のVL)、配列番号12(R7−02のVH)、配列番号14(R7−02のVL)、配列番号22(R7−05のVH)、配列番号24(R7−05のVL)、配列番号32(R7−09のVH)、配列番号34(R7−09のVL)、配列番号42(R7−11のVH)と44(R7−11のVL)、配列番号52(R7−18のVH)、配列番号54(R7−18のVL)、配列番号62(R7−25のVH)、配列番号64(R7−25のVL)、配列番号72(R7−47のVH)、配列番号74(R7−47のVL)に示す。
【0149】
各VHとVLについて、CDR1〜3を特定した(配列番号5〜10、15〜20、25〜30、35〜40、45〜50、55〜60、65〜70、75〜80)。図1〜9および表1を参照のこと。
【0150】
(12)ヒト初代培養細胞を用いた抗ヒトCCR7抗体の結合確認
健常人の末梢血から、常法に従い Lymphoprep (Axis-Shield社)を用いて単核球細胞(PBMC)を単離した。単離したPBMCを、1mg/mLのヒトガンマグロブリン(Jackson Immuno Research Laboratories社)を含む Phosphate Buffered Saline(PBS)溶液に懸濁し、室温で30分間インキュベートすることでブロッキングした。ブロッキング後のPBMC(3×105細胞)を、各抗ヒトCCR7抗体(0.5μg)もしくはアイソタイプコントロール抗体(0.5μg)と共に4℃で1時間インキュベートした。その後、PBMCを洗浄バッファー(0.1% ウシ胎児血清を含むPBS溶液)で3回洗浄した。次に2次抗体として、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。このPBMCを再度洗浄バッファーで3回洗浄した後、フローサイトメーター(ベックマンコールター社製)を用いて分析した。
【0151】
R7−47を用いたときのフローサイトメトリーの結果を図12に示す。図12(a)はアイソタイプコントロール抗体とFITC標識抗マウスIgG抗体で染色した結果を、図12(b)はR7−47とFITC標識抗マウスIgG抗体で染色した結果を、それぞれ示す。図12(a),(b)の両矢印で示す部分は、それぞれ、アイソタイプコントロール抗体とR7−47が特異的に結合した細胞集団を示している。また図中の数字は、分析したPBMCの細胞数を100%としたときの該細胞集団の割合を示す。
【0152】
PBMC中で各抗ヒトCCR7抗体が特異的に結合した細胞の割合を表5に示す。
【表5】

【0153】
これらの結果から、当該抗ヒトCCR7抗体がヒト天然型CCR7を認識し、ヒト天然型CCR7に結合できることが示された。
【0154】
(13)ヒト初代培養細胞を用いた抗ヒトCCR7抗体の機能性確認
PBMC(1.6×105細胞)を24ウェルセルカルチャーインサート(ベクトン・ディッキンソン社)のインサートに播種した。さらに、各抗ヒトCCR7抗体もしくはアイソタイプコントロールIgG抗体10μg/mLを添加し、室温にて5分間反応させた。セルカルチャーインサートの各ウェルにはヒトリコンビナントCCL21(150ng/mL)を添加した。インサートをプレート上に設置後、37℃にて1.5時間反応させた。反応後、インサートを除去し、各ウェル中に遊走した細胞数を測定した。表6と表7に、CCL21依存的細胞遊走に対する当該抗体による機能阻害の結果を示す。
【0155】
【表6】

【0156】
【表7】

【0157】
まず、CCL21未添加とCCL21添加との比較から、PBMCの一部の細胞がCCL21依存的に細胞遊走することが示された。そして、アイソタイプコントロール(IgG1あるいはIgG2)抗体を添加しても、CCL21依存的な細胞遊走には影響を与えなかった。一方、当該抗体を添加した場合は、8種の抗体全てがCCL21依存的な細胞遊走を有意に抑制した。これらの結果から、当該抗ヒトCCR7抗体のいずれもが、ヒト天然型CCR7の機能を抑制することが示された。
【0158】
(14)抗ヒトCCR7抗体の肺線維症モデルにおける組織線維化形成の阻害作用の確認
ヒトPBMC中の、CCR7を発現するCD14陽性細胞は、肺線維における線維化形成に重要な細胞である(Abe R, Donnelly SC, Peng T, Bucala R, Metz CN, "Peripheral blood fibrocytes: differentiation pathway and migration to wound sites." J Immunol. 2001 Jun 15;166(12):7556-62;Curnow SJ, Fairclough M, Schmutz C, Kissane S, Denniston AK, Nash K, Buckley CD, Lord JM, Salmon M,"Distinct types of fibrocyte can differentiate from mononuclear cells in the presence and absence of serum." PLoS One. 2010 Mar 18;5(3):e9730)。抗ヒトCCR7抗体の肺線維症における有効性は、免疫不全マウス(例えばSCIDマウス)に肺線維症を誘発させる刺激物質(例えばブレオマイシン)を投与後、ヒト由来のCCR7を発現するCD14陽性細胞を移入した際の当該細胞の肺組織への移行を調べることで示すことができる。
【0159】
健常人の末梢血から、常法に従いPBMCを単離した。単離したPBMCを、さらにヒトCD14標識磁気ビーズ(ミルテニーバイオテク社)に接触させ、CD14陽性細胞を分離し、マウスへの細胞移入に用いた。T細胞とB細胞が欠如したSCIDマウスに、生理食塩水に溶解したブレオマイシン(日本化薬社、商品名:ブレオ)を5mg/kgとなるように経気道投与し、常法に従い肺線維症を惹起させた。ブレオマイシン投与日を0日とし、ブレオマイシン投与4日前、および、投与後から1,4,8,11日目に、生理食塩水に溶解した抗ヒトCCR7抗体R7−11、R7−18、又はR7−47をそれぞれ20mg/kgの用量で腹腔投与した。対照として、アイソタイプコントロールIgGを同様のスケジュールで投与した。ブレオマイシン投与後4日目に、上述の方法でCCR7を発現する細胞を含むヒトCD14陽性細胞を単離し、PKH26PCL赤色蛍光細胞リンカーキット(シグマ社)で蛍光標識した。蛍光標識細胞をマウス一匹当たり1×106個、尾静脈より移入した。ブレオマイシン投与から15日後にマウスを剖検し、常法に従い肺組織を中性ホルマリンで固定し、病理切片を作製した。病理組織を蛍光顕微鏡で観察し、蛍光標識されたヒト細胞由来の細胞数を右肺全視野で計測した。その結果、アイソタイプコントロールIgGを投与したマウスと比較して、抗ヒトCCR7抗体を投与したマウスでは、いずれも肺において蛍光標識細胞数が減少していた。
【0160】
また、剖検によって得られた左肺からTRIzol 試薬(Invitrogen社)により組織の全RNAを抽出し、Nano Drop 1000 (Thermo Fisher Scientific社)により抽出したRNA量を定量した。各マウス肺から得られたRNAサンプル2μgに対して、High Capacity cDNA Reverse transcription kit(Applied Biosystems社)を用いて逆転写反応を行い、得られたcDNAサンプルをリアルタイムPCR法により肺組織中のヒトCCR7のmRNA量の測定を行った。リアルタイムPCRによる解析は、TaqMan Gene Expression Assaysシステム(Applied Biosystems社)によって行った。内部標準としてTaqMan Ribosomal RNA Control Reagents(Applied Biosystems社)を用い、ヒトCCR7の検出にはHs01013469_m1のプローブセット(Applied Biosystems社)を用いた。得られたデータはΔΔCt法によって解析を行い、アイソタイプコントロールを投与した群を基準とした相対発現量として評価した。その結果、アイソタイプコントロールIgGを投与したマウスと比較して、抗ヒトCCR7抗体R7−11、R7−18、又はR7−47を投与したマウスでは、いずれもヒトCCR7のmRNA量が減少していた(図13)。この結果は、当該抗ヒトCCR7抗体が肺線維症において、線維化に重要な細胞の肺組織への浸潤を抑制することを反映している。これらの結果から、当該抗CCR7抗体が肺線維化治療に有用であることが示された。
【0161】
(15)遺伝子組換え技術による抗ヒトCCR7抗体の製造
配列番号11で表されるDNAを含むマウス抗体重鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2(インビトロジェン社)に導入した。このベクターをpSecTag2−R702HCと命名した。同様に、配列番号41で表されるDNAを含むマウス抗体重鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2に導入した。このベクターをpSecTag2−R711HCと命名した。同様に、配列番号51で表されるDNAを含むマウス抗体重鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2に導入した。このベクターをpSecTag2−R718HCと命名した。
【0162】
配列番号13で表されるDNAを含むマウス抗体軽鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2に導入した。このベクターをpSecTag2−R702LCと命名した。同様に、配列番号43で表されるDNAを含むマウス抗体軽鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2に導入した。このベクターをpSecTag2−R711LCと命名した。同様に、配列番号53で表されるDNAを含むマウス抗体軽鎖全長の遺伝子をクローニングし、分泌発現用ベクターpSecTag2に導入した。このベクターをpSecTag2−R718LCと命名した。
【0163】
リポフェクタミン2000(インビトロジェン社)を用いて、pSecTag2−R702HC及びpSecTag2−R702LCを、HEK293細胞に導入した。この細胞を2日間培養した。培養上清をProtein−Gカラムに供し、ハイブリドーマR7−02由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を調製した。同様に、リポフェクタミン2000を用いて、pSecTag2−R711HC及びpSecTag2−R711LCを、HEK293細胞に導入した。この細胞を2日間培養した。培養上清をProtein−Gカラムに供し、ハイブリドーマR7−11由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を調製した。同様に、リポフェクタミン2000を用いて、pSecTag2−R718HC及びpSecTag2−R718LCを、HEK293細胞に導入した。この細胞を2日間培養した。培養上清をProtein−Gカラムに供し、ハイブリドーマR7−18由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を調製した。
【0164】
上記(6)と同様にして、ヒトCCR7遺伝子導入細胞及びCHO−K1細胞(陰性対照)に対し、10μg/mLの各組換え型抗ヒトCCR7抗体が結合するかどうかを、フローサイトメーターを用いて確認した。蛍光2次抗体としてフィコエリスリン標識抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社)を、フローサイトメーターとしてFACScalibur(ベクトンディッキンソン社)を用い、各細胞と各組換え型抗ヒトCCR7抗体との相互作用を解析した。結果を図14〜16に示す。図14はハイブリドーマR7−02由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を用いた結果を示す。図15はハイブリドーマR7−11由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を用いた結果を示す。図16はハイブリドーマR7−18由来の組換え型抗ヒトCCR7抗体を用いた結果を示す。図14〜16において、(a)はCHO−K1細胞を使用した場合の2次元ドット表示図(左)とヒストグラム(右)、(b)はヒトCCR7遺伝子導入細胞を使用した場合の2次元ドット表示図(左)とヒストグラム(右)である。各2次元ドット表示図において、縦軸はフィコエリスリン(PE)由来の蛍光強度、横軸はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)由来の蛍光強度を表す。すなわち、いずれの組換え型抗ヒトCCR7抗体とも、ヒトCCR7遺伝子導入細胞には結合するが、CHO−K1細胞には結合しないことが示された。これらの結果から、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明の抗体を、マウス型抗体、キメラ型抗体、ヒト化抗体、抗体の機能的断片、などの形で生産することができることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、又は配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(重鎖CDR3)を有することを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
【請求項2】
ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(A1)〜(A8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
(A1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する、
(A8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を有する。
【請求項3】
ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)のアミノ酸配列について、下記(B1)〜(B8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
(B1)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号10で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B2)配列番号15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号19で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B3)配列番号25で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B4)配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号37で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号38で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号39で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号40で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B5)配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号48で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号49で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号50で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B6)配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号56で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B7)配列番号65で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号67で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号68で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号69で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号70で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する、
(B8)配列番号75で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号77で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を有する。
【請求項4】
ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、その重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列について、下記(C1)〜(C8)のいずれかを満たすことを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
(C1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C2)配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C3)配列番号22で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C4)配列番号32で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号34で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C5)配列番号42で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号44で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C6)配列番号52で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号54で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C7)配列番号62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号64で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、
(C8)配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号74で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【請求項5】
CCR7リガンド刺激によるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断する活性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体。
【請求項6】
ヒト化抗体又はキメラ抗体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体。
【請求項7】
抗体断片、一本鎖抗体、又はダイアボディであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体。
【請求項8】
ヒトCCR7の細胞外ドメインに特異的に結合する抗ヒトCCR7抗体であって、R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)により産生されることを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体と同一のエピトープに結合することを特徴とする抗ヒトCCR7抗体。
【請求項10】
R7−01(FERM BP−11369)、R7−02(FERM BP−11404)、R7−05(FERM BP−11371)、R7−09(FERM BP−11372)、R7−11(FERM BP−11373)、R7−18(FERM BP−11374)、R7−25(FERM BP−11375)、又はR7−47(FERM BP−11376)であることを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする核酸。
【請求項12】
配列番号1、配列番号3、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号31、配列番号33、配列番号41、配列番号43、配列番号51、配列番号53、配列番号61、配列番号63、配列番号71、又は配列番号73で表される塩基配列を有する請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の核酸を含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターが導入された細胞。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
CCR7リガンドによるCCR7依存的な細胞内情報伝達機構を遮断するものであることを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
組織の線維化を治療するために用いられることを特徴とする請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組織の線維化が、肝線維症、腎線維症、肺線維症、皮膚線維症、心血管線維症、消化管線維症及び他の線維性疾患からなる群から選択される線維症であることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記肝線維症が、肝硬変、虚血再灌流、肝移植後傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、及び原発性硬化性胆管炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記肝硬変が、アルコールによる誘発、薬物による誘発、及び化学的な誘発からなる群から選択された少なくとも1つによるものであることを特徴とする請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記腎線維症が、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎症、腎尿細管間質性線維症、及び巣状分節性糸球体硬化症からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記肺線維症が、肺間質性線維症、薬物誘発サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞損傷疾患、肺高血圧症、及び新生児気管支肺形成異常からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記皮膚線維症が、強皮症、ケロイド瘢痕化、乾癬、肥厚性瘢痕化、及び偽性強皮症からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記心血管線維症が、アテローム性動脈硬化、冠動脈再狭窄、うっ血性心筋症、心不全、心移植、及び心筋線維症からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記消化管線維症が、コラーゲン蓄積大腸炎、絨毛萎縮、陰窩過形成、ポリープ形成、クローン病の線維症、胃潰瘍治癒、及び腹部癒着術後瘢痕からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記線維症が、骨に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、リウマチ様パンヌス形成であることを特徴とする請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項27】
癌の転移を治療するために用いられることを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記癌が、咽頭癌、軟骨肉腫、大腸癌、膵臓癌、白血病、乳癌からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜9のいずれかに記載の抗ヒトCCR7抗体が担体に固定化されてなる抗体固定化担体。
【請求項30】
CCR7発現細胞を含む血液を接触させて、前記体液からCCR7発現細胞を除去するために用いられることを特徴とする請求項29に記載の抗体固定化担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−59343(P2013−59343A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262162(P2012−262162)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2012−536465(P2012−536465)の分割
【原出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(507420835)株式会社エヌビィー健康研究所 (2)
【Fターム(参考)】