説明

抗ヘプシジン抗体およびその使用

ヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、ヒトヘプシジン−25に対する高親和性、および強力なヒト成熟ヘプシジン中和特性を有することを特徴とする、モノクローナル抗体が提供される。本発明の抗体は、ヒトにおける血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させるため、ならびにヒト被験体における貧血などの成熟ヘプシジンにより促進される疾患の処置および診断のために治療的に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野、特にヒト成熟ヘプシジンに対する抗体の分野である。より具体的には、本発明は、ヒト成熟ヘプシジン生物活性を中和でき、それにより、貧血などのヒト成熟ヘプシジンにより促進される疾患、状態または障害を処置または予防するために、ヒトにおける血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させるのに有用である、ヘプシジン−25選択的モノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、貧血、または慢性疾患に伴う貧血のための適切かつ有効な治療は、限られている。具体的には、エリスロポエチン投与は、全ての患者の約50%のみに効果的であり、望ましくない副作用を伴う。さらに、輸血は、汚染、感染、および鉄過剰負荷の危険性があるため望ましくない。
【0003】
肝細胞によって主に発現されるポリペプチドであるヒトヘプシジンは、腸からの鉄吸収、マクロファージによる鉄の再利用、および肝臓での鉄貯蔵からの鉄動員を負に調節する重要な鉄調節タンパク質であると考えられている。ヘプシジンの過剰生産は、貧血および/または慢性疾患に伴う貧血の病態生理学において主用な役割を果たすように見える。
【0004】
ヒトヘプシジンは、典型的なN末端24アミノ酸の小胞体標的シグナル配列、およびコンセンサスフリン切断部位を有する35アミノ酸のプロ領域(proregion)、直後にC末端25アミノ酸の生物活性鉄調節ホルモンである、ヒトヘプシジン−25(配列番号1)を含む84アミノ酸のプレプロペプチドとしてコードされる。ヒトヘプシジン25の種々のN末端切断型、例えば、ヒトヘプシジン−20(すなわち、配列番号1のアミノ酸6〜25)およびヒトヘプシジン−22(配列番号1のアミノ酸4〜25)もまた、インビボにおいて形成することが知られている。
【0005】
ヒトヘプシジンに対する抗体は以前に報告されている(例えば、特許文献1および特許文献2、ならびに特許文献3を参照のこと)が、癌による貧血および炎症による貧血などの慢性疾患に伴う貧血を含む、貧血に関連する疾患および障害を処置するためのさらなる薬物について、当該分野における重要な必要性が依然として存在する。ヘプシジン−25は、ヒトにおけるヘプシジンの(唯一ではないにせよ)最も生理的に適切な形態であるため、生理的に適切でないヘプシジンポリペプチドと比較して、ヒトヘプシジン−25を選択的に標的とする抗体が、特に必要とされる。従って、本発明は、貧血などの増加したレベルの成熟ヘプシジンに関連する障害の処置または診断において多数の利点を有する、ヒトヘプシジン−25に対して選択的で、高親和性の遺伝子操作された治療抗体を提供する。例えば、ヒトにおけるヘプシジンの生理的に適切な形態に対して、高親和性で、中和し、ヒトの遺伝子操作され、かつ非常に選択的である、これらの抗体は、副作用についての危険性、ならびに効果的な処置に必要とされる臨床用量および投薬回数を減少させる。本発明はまた、好適な選択的ヘプシジン−25抗体をコードする好適な核酸を含み、その核酸は、哺乳動物の宿主細胞による発現の際に本発明の特定の抗体の望ましくない凝集を生じる潜在的なスプライス部位を除去するために遺伝子操作されている。従って、本発明から導かれるさらなる利点は、所望の程度の純度の抗体産物の向上した産生を含み、これにより、産生についてのコスト削減、ならびにより増大した程度の臨床効果、および投与される抗体産物についての安全性を含む。
【0006】
さらに、ヒトヘプシジンについての商業的に利用可能な免疫学的検定法は、ヒトヘプシジンの活性な生理的に適切な形態と、不活性な生理的に適切でないヘプシジン種とを区別しない(例えば、非特許文献1を参照のこと)。現在、ヘプシジン−25についての選択的アッセイに対するほとんどの方法は、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量スペクトル)またはヘプシジンの種々の形態の分離を必要とする同様の煩雑な方法を含む(例えば、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4を参照のこと)。これらのアッセイは正確かつ精密であり得るが、それらの複雑性、費用、および必要とされる高レベルの操作者の知識により、それらの慣例的な実施が妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0096990号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0224186号明細書
【特許文献3】PCT国際公開第2008/097461号
【0008】
【非特許文献1】Kemna,E.H.ら,Haematologica,2008年,93(1),p90−7
【非特許文献2】Gutierrez,J.A.ら,BioTechniques,2005年,38,S13−S17
【非特許文献3】Murphyら,Blood,2007年,110,p1048−54
【非特許文献4】Kemna,E.H.ら,Clin.Chem.,2007年,53,p620−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、診断的および/または予後的適用に関するヒトヘプシジンの成熟形態の特異的検出または測定のための比較的簡単で、迅速で、かつ強力な免疫学的検定法における抗体の適用に関して、高親和性でヒト成熟ヘプシジンに結合するさらなるそれらの抗体についての重要な必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、25℃にて表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される場合、約800pM以下の結合親和性(K)でヒトヘプシジン−25に結合する抗体を提供する。好ましくは、その抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約8.5×10−3−1〜約1.8×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25に対する解離速度(KOFF)を有する。より好ましくは、その抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約400pM〜約30pMの間のヒトヘプシジン−25に対するKを有する。さらにより好ましくは、その抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約200pM〜約30pMの間のヒトヘプシジン−25に対するKを有する。さらにより好ましくは、その抗体は、ヘプシジン−25生物活性のインビボアッセイにおいて約100nM〜約25nMの間のIC50を有し、好ましくは、そのアッセイは、IL−6により誘発される血清鉄レベルの減少を測定する。さらにより好ましくは、その抗体は、ヘプシジン−25生物活性のインビトロアッセイにおいて約100nM〜約50nMの間のIC50を有し、好ましくは、そのアッセイは、ヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化および/または分解を測定する。さらにより好ましくは、その抗体は、i)配列番号75に示されるアミノ酸配列を有するHCDR3、およびii)配列番号62に示されるアミノ酸配列を有するLCDR3からなる群より選択されるCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
本発明は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、重鎖可変領域(「HCVR」)ポリペプチドおよび軽鎖可変領域(「LCVR」)ポリペプチドを含む、抗体を含み、ここで、(i)そのHCVRおよびそのLCVRポリペプチドは、配列番号148および126にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、(ii)そのHCVRおよびそのLCVRポリペプチドは、配列番号128および127にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、(iii)そのHCVRおよびそのLCVRポリペプチドは、配列番号151および125にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、または(iv)そのHCVRおよびそのLCVRポリペプチドは、配列番号150および124にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
本発明は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含む、抗体を含み、ここで、(i)その重鎖ポリペプチドおよびその軽鎖ポリペプチドは、配列番号6および14にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、(ii)その重鎖ポリペプチドおよびその軽鎖ポリペプチドは、配列番号7および15にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、(iii)その重鎖ポリペプチドおよびその軽鎖ポリペプチドは、配列番号9および17にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するか、または(iv)その重鎖ポリペプチドおよびその軽鎖ポリペプチドは、配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する。
【0013】
本発明は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、本明細書の表1に記載されるFabに一緒に存在し、かつ表1に示される同じCDR位置において抗体に存在する3つのCDR配列を含むLCVRポリペプチドを含む、抗体を含む。好ましくは、このような抗体は、配列番号101〜127からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチドを含む。
【0014】
本発明は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、本明細書の表2に記載されるFabに一緒に存在し、かつ表2に示される同じCDR位置において抗体に存在する3つのCDR配列を含むHCVRポリペプチドを含む、抗体を含む。好ましくは、このような抗体は、配列番号128〜151からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを含む。
【0015】
本発明は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、i)表1に記載されるFabに一緒に存在し、かつ表1に示される同じCDR位置において抗体に存在する3つのCDRを含むLCVRポリペプチド、およびii)表2に記載されるFabに一緒に存在し、かつ表2に示される同じCDR位置において本発明の抗体に存在する3つのCDRを含むHCVRポリペプチドを含む、抗体を含む。好ましくは、このような抗体は、本明細書の表3に記載されるFabに一緒に存在し、表3に示される同じCDR位置において抗体に存在する6つのCDRを含む。
【0016】
本発明は、約200pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、(i)配列番号101〜127からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチド、および(ii)配列番号128〜151からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを含む、抗体を含む。
【0017】
本発明はまた、約200pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドを含む、抗体を含み、ここで、その重鎖ポリペプチドの各々は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、その軽鎖ポリペプチドの各々は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する。
【0018】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体をコードする単離された核酸分子、必要に応じて、ベクターで形質転換される宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結される、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むベクター、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養する工程であり、それにより、その核酸が発現される工程、および必要に応じて、その宿主細胞培養培地から抗体を回収する工程を含む、本発明の抗体を産生するためのプロセスを提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体および薬理学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。好ましくは、その医薬組成物は、均質または実質的に均質な本発明の抗体の集団、および薬理学的に許容可能な担体または希釈剤を含む。
【0020】
別の態様において、本発明は、治療に使用するための約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する抗体を提供する。本発明はまた、被験体における貧血を処置または予防する際に使用するための約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する抗体を提供する。
【0021】
本発明は、慢性疾患に伴う貧血および癌に伴う貧血を含む、貧血の処置のための医薬を調製するための約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する、抗体の使用を含む。本発明はさらに、動物、好ましくは、哺乳動物種、より好ましくはヒト被験体において、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させるための医薬を調製するための約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する抗体の使用を含む。
【0022】
本発明は、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させる方法を含み、その方法は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する有効量の抗体を、それらを必要とするヒト被験体に投与する工程を含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、患者において、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させることによって利点がある、成熟ヘプシジンにより促進される障害(限定されないが、貧血、例えば、感染、炎症、慢性疾患、および/または癌に起因する貧血を含む)を処置するための方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量の本発明のヘプシジン−25選択的抗体を、それらを必要とする被験体に投与する工程を含む。
【0024】
本発明はさらに、ヒト成熟ヘプシジンに選択的な免疫学的検定法を提供する。この方法は、まず、ヒト成熟ヘプシジンについてアッセイされる試料を取得する工程、結合および任意のヒト成熟ヘプシジンの存在を可能にするための適切な条件下で、その試料と、本発明の抗体とを接触させて、抗原−抗体複合体を形成させる工程、次に、その複合体の存在または非存在を検出する工程、および/または免疫学的検定法によりその試料中のその複合体の量を測定する工程を含む。
【0025】
本発明はさらに、患者由来の生体液の試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルを測定する工程、およびその試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルと、1つ以上のコントロール個体由来の生体液、または参照基準を有する生体液の試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルとを比較する工程により、患者において、ヒト成熟ヘプシジンにより促進される状態を診断する方法を提供する。
【0026】
患者において、成熟ヘプシジンにより促進される障害をモニタリングする方法も提供される。この方法は、第1の時点で成熟ヘプシジンにより促進される障害を罹患しているか、またはその危険性がある患者由来の生体液の試料中の成熟ヘプシジンのレベルを測定する工程、1つ以上の異なる時点でその患者由来の生体液の1つ以上の試料中の成熟ヘプシジンのレベルを測定する工程、異なる時点で測定された成熟ヘプシジンのレベルを比較する工程、およびそれにより、その成熟ヘプシジンにより促進される障害をモニタリングする工程を含む。本発明はさらに、免疫学的検定法を実施するためのキットを提供し、そのキットは、本発明の抗体および適切な容器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ヒト血清から単離されたヒトヘプシジンの複数型におけるMALDI−TOF質量スペクトルを示す。シグナル1は、インタクトなヒトヘプシジン−25の予想質量と一致する質量を有する。シグナル2、3、および4は、ヒト成熟ヘプシジン(ヘプシジン−24、ヘプシジン−22、および、ヘプシジン−20)のN末端切断型に一致する質量を有する。質量スペクトルは、以下の実施例5に記載される試料のマトリックスのようなシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(ペプチドマトリックス)を用いるリニアモード法で、陽イオンを利用して、MALDI−TOF質量分析計上で生成された。
【図2】図2は、試料のマトリックスとして3,5−ジメチル−4ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸マトリックス)を用いて図1に示した同試料のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。シグナル1は、インタクトなヒトヘプシジン−25を表す。プロヘプシジンのシグナルは観察されなかった。質量スペクトルは、以下の実施例5に記載されるリニアモード法で、陽イオンを利用して、質量分析計上で生成された。
【図3】図3Aは、散在CDRを有する完全なヒト軽鎖フレームワークO2のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRL1、FRL2、FRL3、および、FRL4で標識される(それぞれ配列番号39、40、96、および、97)。図3Bは、散在CDRを有するヒト重鎖フレームワークVH1−69のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRH1、FRH2、FRH3、および、FRH4で標識される(それぞれ配列番号35〜38)。
【図4】図4Aは、散在CDRを有するヒト軽鎖フレームワークO18のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRL1、FRL2、FRL3、および、FRL4で標識される(それぞれ配列番号154、40、156、および、97)。図4Bは、散在CDRを有するヒト重鎖フレームワークVH1−18のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRH1、FRH2、FRH3、および、FRH4で標識される(それぞれ配列番号157、36、158、38)。
【図5】図5Aは、散在CDRを有するヒト軽鎖フレームワークL12のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRL1、FRL2、FRL3、および、FRL4で標識される(それぞれ配列番号159、40、160、および、97)。図5Bは、散在CDRを有するヒト重鎖フレームワークVH1−46のアミノ酸配列を示す図である。4つのフレーム領域は、FRH1、FRH2、FRH3、および、FRH4で標識される(それぞれ配列番号157、36、161、38)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の略語が本明細書において用いられる:ACN:アセトニトリル、BSA:ウシ血清アルブミン、DTT:ジチオスレイトール、EDTA:エチレンジアミン四酢酸、ELISA:酵素結合免疫吸着測定法、IMAC:固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、IPTG:イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド、Mab:モノクローナル抗体、Mabs:モノクローナル抗体(複数)、MALDI−TOF:マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間、PBS:リン酸緩衝生理食塩水、SPR:表面プラズモン共鳴、TFA:トリフルオロ酢酸。本開示に使用される全てのアミノ酸の略語は、37C.F.R.§1.822(B)(2)に記載されるように米国特許商標庁により受け入れられているものである。
【0029】
本明細書に使用される場合、用語「ヘプシジン」とは、哺乳動物に存在すると知られているヘプシジンタンパク質の任意の形態をいう。本明細書に使用される場合、用語「成熟ヘプシジン」とは、哺乳動物において発現されるヘプシジンタンパク質の任意の成熟な生物活性形態をいう。本明細書に使用される場合、用語「ヒトヘプシジン」とは、ヒトに存在するヘプシジンタンパク質の任意の形態をいう。本明細書に使用される場合、用語「ヒトヘプシジン−25」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトヘプシジンの成熟形態をいう。
【0030】
本明細書に使用される場合、本発明の抗ヘプシジン抗体(または簡単に「本発明の抗体」)に関して、用語「抗体」とは、他に示されない限り、ヒトの遺伝子操作されたモノクローナル抗体または完全なヒトモノクローナル抗体をいう。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトの遺伝子操作された抗体である。本発明の抗体は、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、例えば、CDR移植、またはこのような技術の組み合わせあるいは当該分野において容易に知られる他の技術を用いて産生され得る。「モノクローナル抗体」とは、例えば、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む、単一のコピーまたはクローン由来の抗体をいい、その方法によりモノクローナル抗体が産生されるわけではい。本明細書に使用される場合、抗体は、インタクトな抗体(完全な、または完全長のFc領域を含む)であってもよいか、あるいは抗原結合部分、例えば、ヒトの遺伝子操作された抗体、または完全なヒト抗体のFab断片、Fab’断片、またはF(ab’)断片を含む抗体の一部もしくは断片であってもよい。本発明の抗体の好適な抗原結合断片は、インビボまたはインビトロにおいて哺乳動物のヘプシジンの成熟形態の1つ以上の生物活性特性を阻害または中和する能力を有する。例えば、一実施形態において、本発明の抗体の抗原結合部分は、ヒトヘプシジン−25と、1つ以上のレセプター、例えば、ヒトフェロポーチン(配列番号25)との相互作用を阻害でき、および/またはヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化を阻害できる。
【0031】
さらに、本明細書に使用される場合、「本発明の抗体」または単に「抗体」とは、LCVRおよびHCVRをコードするDNAと、リンカー配列とを結合することにより産生され得る一本鎖Fv断片であってもよい(Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻,RosenburgおよびMoore編,Springer−Verlag,New York,pp269−315,1994を参照のこと)。抗原結合断片または部分が特定されているか否かに関わらず、本明細書に使用される場合、用語「抗体」は、他に示されない限り、そのような断片または部分、および一本鎖形態を含む。
【0032】
抗ヘプシジン−25抗体またはその結合に関して、本明細書に使用される、用語「選択的」または「選択的に」とは、それぞれ、25℃にてSPRにより測定される場合、抗体がヘプシジン−25の少なくとも1つの前駆体形態、および/または同じ哺乳動物種において形成することが知られている成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された種に結合するより、約1000倍、500倍、200倍、100倍、50倍、10倍、または約5倍小さいKでヘプシジン−25に選択的に結合する抗体をいう。加えて、または代替的に、限定されないが、本明細書の実施例5に記載されるアッセイを含む、当業者に用いられる免疫学的検定法および/またはMALDI−TOF質量分析法により測定される場合、本発明のヘプシジン−25選択的抗体はヘプシジン−25に結合するが、ヘプシジン−25の少なくとも1つの前駆体形態、および/または同じ哺乳動物種において形成することが知られている成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された種に結合しないか、またはわずかしか結合しない。好ましくは、25℃にてSPRにより測定される場合、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体は、その抗体がヒトプロヘプシジン、好ましくは配列番号34に示されるアミノ酸配列を有するヒトプロヘプシジン、および/またはヒト成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された形態に結合するより、約1000倍、500倍、200倍、100倍、50倍、10倍、または約5倍小さいKでヒトヘプシジン−25に結合する。加えて、または代替的に、限定されないが、本明細書の実施例5に記載されるアッセイを含む、当業者に用いられる免疫学的検定法および/またはMALDI−TOF質量分析法により測定される場合、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体はヒトヘプシジン−25に結合するが、ヒトプロヘプシジン、好ましくは配列番号34に示されるアミノ酸配列を有するヒトプロヘプシジン、および/または同じ哺乳動物種において形成することが知られている成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された種に結合しないか、またはわずかしか結合しない。より好ましくは、25℃にてSPRにより測定される場合、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体は、その抗体が配列番号34に示されるアミノ酸配列を有するヒトプロヘプシジン、およびヒト成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された形態に結合するより、約1000倍、500倍、200倍、100倍、50倍、10倍、または約5倍小さいKでヒトヘプシジン−25に結合する。加えて、または代替的に、限定されないが、本明細書の実施例5に記載されるアッセイを含む、当業者に用いられる免疫学的検定法および/またはMALDI−TOF質量分析法により測定される場合、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体はヒトヘプシジン−25に結合するが、ヒトプロヘプシジン(配列番号34)、および同じ哺乳動物種において形成することが知られている成熟ヘプシジンの少なくとも1つのN末端が切断された種に結合しないか、またはわずかしか結合しない。最も好ましくは、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、i)その抗体がヒトプロヘプシジン(配列番号34)に結合するより、約1000倍、500倍、200倍、100倍、50倍、10倍、または約5倍小さいKでヒトヘプシジン−25に結合し、そして、ii)その抗体がヒトヘプシジン−20(すなわち、配列番号1のアミノ酸6〜25)、および/またはヒトヘプシジン−22(配列番号1のアミノ酸4〜25)に結合するより、約1000倍、500倍、200倍、100倍、50倍、10倍、または約5倍小さいKでヒトヘプシジン−25に結合する。加えて、または代替的に、限定されないが、本明細書の実施例5に記載されるアッセイを含む、当業者に用いられる免疫学的検定法および/またはMALDI−TOF質量分析法により測定される場合、本発明の抗ヘプシジン−25選択的抗体はヒトヘプシジン−25に結合するが、i)ヒトプロヘプシジン(配列番号34)、ならびにii)ヒトヘプシジン−20および/またはヒトヘプシジン−22に結合しないか、またはわずかしか結合しない。
【0033】
用語「検出する」または「検出すること」は広範囲の意味で使用されて、標的分子の定量的、半定量的、または定性的測定を含む。一態様において、本明細書に記載される方法は、生物学的試料中の特定のヘプシジンポリペプチドの存在または非存在を測定するだけであってもよく、従って、この方法により測定される場合、そのヘプシジンポリペプチドは、その試料中に検出され得るか、または検出され得ない。
【0034】
用語「エピトープ」とは、抗体の抗原結合領域の1つ以上において抗体により認識されて、結合され得る分子の部分をいう。
【0035】
本発明の抗体に関して、用語「生物活性」とは、限定されないが、エピトープまたは抗原の結合親和性、抗体のインビボおよび/またはインビトロでの安定性、例えば、ヒト被験体に投与された場合の抗体の免疫特性、ならびに/あるいは限定されないが、炎症(例えば本明細書の実施例4に記載されるような、例えばIL−6、チャレンジアッセイ)における血清鉄レベルの異常調節の阻害を含む、インビボまたはインビトロにおけるヘプシジンの生物活性を中和または拮抗する能力を含む。上述の特性または特徴は、限定されないが、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGEN免疫学的検定法(IGEN)、蛍光消光、蛍光ELISA、競合ELISA、SPR解析(限定されないが、BIAcoreバイオセンサーを用いるSPR解析を含む)、限定を用いないインビトロおよびインビボにおける中和アッセイ(例えば、国際公開第2006/062685号を参照のこと)、レセプター結合、ならびにヒト、霊長類、または必要とされ得る場合、任意の他の起源を含む、異なる起源由来の組織切片を用いる免疫組織化学を含む、当該分野において認識されている技術を用いて観測または測定され得る。
【0036】
ヘプシジン−25を含む成熟ヘプシジンに関して、用語「生物活性」とは、限定されないが、別のタンパク質(限定されないが、成熟ヘプシジンのレセプターフェロポーチンを含む)に対する成熟ヘプシジンの特異的結合、成熟ヘプシジンの1つ以上のフェロポーチンにより媒介される機能(例えば、成熟ヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化および/または分解(例えば、Nemeth,E.ら,Hepcidin Regulates Iron Efflux by Binding to Ferroportin and Inducing Its Internalization,Science 306,2090−2093,(2004)を参照のこと))、ヒトにおけるフェロポーチンにより媒介される鉄排出、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの成熟ヘプシジン調節、タンパク質の安定性(すなわち、成熟ヘプシジンに影響を与えるインビボまたはインビトロにおける別のタンパク質のレベルまたは活性)、ならびにヘプシジン発現レベルおよび/または組織分布を含む。
【0037】
本発明の抗体の生物活性に関して、本明細書に使用される場合、用語「阻害」または「中和」とは、限定されないが、本明細書の実施例3または4において測定される場合のヒト成熟ヘプシジンの生物活性を含む、ヒト成熟ヘプシジンの生物活性を実質的に拮抗、予防、防止、抑制、遅延、破壊、除去、停止、減少または逆転する能力を意味する。
【0038】
本発明の抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約1000pM未満、好ましくは約800pM未満、より好ましくは約400pM未満、さらにより好ましくは約200pM未満、さらにより好ましくは約100pM未満、さらにより好ましくは約75pM未満、または最も好ましくは約50pM未満のヒトヘプシジン−25に対するKを有することを特徴とする。好ましくは、この抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM未満、好ましくは約400pM未満、より好ましくは約200pM未満、さらにより好ましくは約100pM未満、さらにより好ましくは約75pM未満、または最も好ましくは約50pM未満のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、また、カニクイザルヘプシジン−25等の別の種の少なくとも1つのヘプシジン−25に選択的に結合する。より好ましくは、このような抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM未満、さらにより好ましくは約400pM未満、さらにより好ましくは約200pM未満、さらにより好ましくは約100pM未満、さらにより好ましくは約75pM未満、または最も好ましくは約50pM未満のKでカニクイザルヘプシジン−25に選択的に結合する。
【0039】
本発明の抗体は、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM〜約30pMの間、好ましくは約400pM〜約30pMの間、より好ましくは約200pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約100pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約75pM〜約30pMの間、または最も好ましくは約50pM〜約30pMの間のヒトヘプシジン−25に対するKを有する、抗−ヘプシジン−25選択的抗体を含む。好ましくは、このような抗体はまた、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM〜10pMの間、より好ましくは約400pM〜約10pMの間、さらにより好ましくは約200pM〜約10pM、さらにより好ましくは約100pM〜約10pMの間、さらにより好ましくは約75pM〜10pMの間、または最も好ましくは約50pM〜10pMの間のカニクイザルヘプシジン−25に対するKを有する。
【0040】
本発明の抗体はまた、25℃にてSPRにより測定される場合、マウスヘプシジン−25および/またはラットヘプシジン−25に対する抗体のKより、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、または少なくとも約200倍小さいヒトヘプシジン−25および/またはカニクイザルヘプシジン−25に対するKを有する抗体を含む。
【0041】
本発明の抗体はまた、25℃にてSPRにより測定される場合、約1×10−2−1〜約1.8×10−4−1の間、好ましくは約8.5×10−3−1〜約1.8×10−4−1の間、より好ましくは約7.7×10−4−1〜約1.8×10−4−1の間、さらにより好ましくは約6.5×10−4−1〜約1.8×10−4−1の間、または最も好ましくは約5.5×10−4−1〜約2.0×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25からのKoff速度を有する抗体を含む。好ましくは、そのような抗体はまた、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM〜30pMの間、さらにより好ましくは約400pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約200pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約100pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約75pM〜50pMの間、または最も好ましくは約50pM〜30pMの間のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する。
【0042】
本発明はまた、好ましくは、約200pM未満のKで、選択的に、ヒトヘプシジン−25に結合し、インビトロまたはインビボで、少なくとも1つのヒト成熟ヘプシジン生物活性を中和または拮抗させる抗体を含む。好ましくは、本発明の抗体は、本明細書中の実施例3または実施例4において例えば記載されるように、成熟ヘプシジン生物活性のインビトロまたはインビボアッセイにおいて、約200nM未満、より好ましくは約100nM未満、さらにより好ましくは約75nM未満、または最も好ましくは約50nM未満のIC50を有する。
【0043】
本発明の抗体はまた、例えば、本明細書中の実施例4に記載されるように、カニクイザルアッセイにおいて、IL−6により誘発される血清鉄レベルの減少を著しく阻害する抗体に結合、好ましくは選択的に結合する抗ヒトヘプシジン−25を含む。好ましくは、このような抗体は、約10mg/kgでの抗体の静脈内投与の受容の約6時間以内に、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%で、5μg/kg用量のヒトIL−6で誘発されたカニクイザルにおいて血清鉄の減少を阻害する。
【0044】
本発明の抗体は、本明細書中の実施例3に記載される成熟ヘプシジンにより誘発されたフェロポーチン内在化アッセイにおいて、約200nM未満、好ましくは約100nM未満、より好ましくは約75nM未満、さらにより好ましくは約50nM未満、または最も好ましくは約25nM未満のIC50を有する。好ましくは、本発明の抗体は、本明細書中の実施例3に記載される成熟ヘプシジンにより誘発されたフェロポーチン内在化アッセイにおいて、約200nM〜約25nMの間、より好ましくは約100nM〜約50nMの間、より好ましくは約100nM〜約25nMの間、さらにより好ましくは約75nM〜約25nMの間、または最も好ましくは約75nM〜約50nMの間のIC50を有する。
【0045】
別の実施形態において、本発明の抗体は、実施例3に記載されるヘプシジンにより誘発されるフェロポーチン内在化アッセイにおいて、約200nM〜約25nMの間、好ましくは約100nM〜約50nMの間、より好ましくは約100nM〜約25nMの間、さらにより好ましくは約75nM〜約25nMの間、または最も好ましくは約75nM〜約50nMの間のIC50を有し、ヒトヘプシジン−25からのKoff速度は、25℃にてSPRにより測定される場合、約1×10−2−1〜約1.8×10−4−1の間、好ましくは約8.5×10−3−1〜約1.8×10−4−1の間、より好ましくは約7.7×10−4−1〜約1.8×10−4−1の間、さらにより好ましくは、約6.5×10−4−1〜約1.8×10−4−1の間、または最も好ましくは約5.5×10−4−1〜約2.0×10−4−1の間であり、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM〜30pMの間、好ましくは約400pM〜約30pMの間、より好ましくは約200pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは約100pM〜約30pMの間、さらにより好ましくは、約75pM〜50pMの間、最も好ましくは、約50pM〜30pMの間のKで、ヒトヘプシジン−25に選択的に結合する。
【0046】
本明細書に使用される場合、用語「Kabat付番」は、当該分野において認識され、抗体の重鎖領域および軽鎖領域において他のアミノ酸残基より可変性(すなわち、超可変)であるアミノ酸残基の付番システムをいう(Kabatら,Ann.NY Acad.Sci.190:382−93(1971);Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991))。
【0047】
ポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと機能的関係にある場合、そのポリヌクレオチドは「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている。
【0048】
本明細書に交換可能に使用される用語「被験体」および「患者」とは、哺乳動物、好ましくはヒトをいう。特定の実施形態において、患者は、ヘプシジン−25の減少したレベル、ヘプシジン−25の生物活性の減少、ならびに/あるいは血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの増加によって利点がある障害を有する。特定の実施形態において、患者は、ヘプシジン−25の減少したレベル、ヘプシジン−25の生物活性の減少、ならびに/あるいは血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの増加によって利点がある障害を有する。
【0049】
用語「ベクター」とは、作動可能に連結されている別の核酸を運搬できる核酸分子をいい、限定されないが、プラスミドおよびウイルスベクターを含む。特定のベクターは、それらが導入されている宿主細胞において自己複製でき、一方、他のベクターは、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに統合され得、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)という。例示的なベクターは当該分野において周知である。
【0050】
本明細書に使用される場合、「細胞」および「宿主細胞」との表現は、交換可能に使用されて、インビトロまたはインビボのいずれに存在していようと、任意の原核細胞(例えば、E.coliなどの細菌性細胞)、または好ましくは真核細胞(例えば、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、またはCHO細胞などの哺乳動物細胞)をいう。宿主細胞には、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを含む1つ以上の組換え発現ベクターで形質転換、形質導入、トランスフェクト、または感染された細胞が含まれる。宿主細胞は、インビトロに存在していても、インビボに存在していてもよい。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物に存在していてもよい。
【0051】
完全長抗体の各々の重鎖は、N末端重鎖可変領域(本明細書において「HCVR」)およびC末端重鎖定常領域からなる。完全長抗体の各々の軽鎖は、N末端軽鎖可変領域(本明細書において「LCVR」)およびC末端軽鎖定常領域からなる。HCVRおよびLCVRはさらに、相補性決定領域(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域に細かく分けられ得、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれるより保存された領域が散在し得る。特定の抗原またはエピトープに結合する抗体の機能的能力は、抗体の可変領域に存在する6つのCDRによって大きく影響される。各HCVRおよびLCVRは、3つのCDR(HCVRにおいてHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにLCVRにおいてLCDR1、LCDR2およびLCDR3)およびアミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される4つのフレームワーク領域からなる。
【0052】
従って、本明細書に使用される場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続な抗原結合部位を意味すると意図される。これらの特定の領域は、Kabatら,J.Biol.Chem.252,6609−6616(1977),Kabatら,Sequences of protein of immunological interest,(1991),およびChothiaら,J.MoI.Biol.196:901−917(1987)およびMacCallumら,J.MoI.Biol.,262:732−745(1996)により記載され、その定義には、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。本開示において、各ドメインに対するアミノ酸の指定は、周知の慣例技術(例えば、Kabat,(1991)および/またはChothia(1987))に従う。CDRは、抗原と特異的相互作用を形成する残基の大部分を含む。
【0053】
以下の表1および表2は、本発明の抗体についての好適なCDRをコードするアミノ酸配列およびコンセンサスアミノ酸配列を示す。
【0054】
【表1】

はA、L、I、またはWであり;XはSまたはGであり;XはRまたはSであり;XはT、P、AまたはWであり;XはLまたはGであり;XはA、T、V、またはLであり;XはTまたはVである。
【0055】
【表2】

はT、W、Y、またはLであり;XはSまたはEであり;X10はD、T、L、V、またはMであり;X11はTまたはAであり;X12はTまたはFであり;X13はSまたはAであり;X14はDまたはPである。
【0056】
本発明の抗体についてのより好適なCDRをコードするアミノ酸配列およびコンセンサスアミノ酸配列の配列番号を以下の表3に提供する。
【0057】
【表3】

【0058】
ヒト軽鎖定常領域はκまたはλに分類されており、当該分野において公知の特定の定常領域によって特徴付けられる。ヒト重鎖定常領域は、γ、μ、α、δ、またはεに分類されており、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義し、それらのうちのいくつかはさらに、サブクラス、例えば、IgG、IgG、IgG、IgGに分けられ得る。各々の重鎖のタイプは、当該分野において容易に知られる配列を有する特定の定常領域を有する。軽鎖定常領域κおよび重鎖定常領域IgG、IgG、およびIgGは、本発明の抗体における好適な定常領域である。本発明の抗体についての好適なヒト重鎖定常領域は、配列番号90〜94に示される重鎖定常領域のアミノ酸配列、および1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または約15のアミノ酸変化(置換、挿入または欠失を含む)を有するその任意の変異体である。より好ましくは、本発明の抗体のヒト重鎖定常領域は、配列番号93および94に示される重鎖定常領域のアミノ酸配列である。最も好ましくは、本発明の抗体の重鎖定常領域は、配列番号93に示される重鎖定常領域のアミノ酸配列である。本発明の抗体の好適なヒト軽鎖定常領域は、配列番号89に示される軽鎖定常領域κのアミノ酸配列、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または約10のアミノ酸変化(置換、挿入または欠失を含む)を有するその任意の変異体である。最も好ましくは、本発明の抗体のヒト軽鎖定常領域は、配列番号89に示される軽鎖定常領域κのアミノ酸配列である。
【0059】
本明細書に使用される場合、「抗原結合領域」または「抗原結合部分」とは、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性および親和性を抗体に与えるアミノ酸残基を含む、可変領域内の抗体分子の部分をいう。この抗体部分は、抗原結合残基の適切な立体構造を維持するのに必要なフレームワークのアミノ酸残基を含む。
【0060】
本発明は、25℃にてSPRにより測定される場合、約800pM以下のKでヘプシジン−25に選択的に結合する抗体を含み、ここで、その抗体は、i)配列番号75に示されるアミノ酸配列を有するHCDR3、およびii)配列番号62に示されるアミノ酸配列を有するLCDR3からなる群より選択される少なくとも1つのCDRを含む。好ましくは、このような抗体は、(i)配列番号52、60、62、65、71、および75にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに(ii)配列番号42、76、62、79、87、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3からなる群より選択されるアミノ酸および/またはコンセンサスアミノ酸配列を含む6つのCDRを含む。より好ましくは、本発明の抗体は、(i)配列番号41、53、31、63、84、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、(ii)配列番号43、30、31、32、44、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、(iii)配列番号43、53、61、63、85、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに(iv)配列番号43、57、61、63、84、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3からなる群より選択される6つのCDRを含む。さらにより好ましくは、本発明の抗体は、2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドを含み、ここで、その重鎖ポリペプチドの各々は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、その軽鎖ポリペプチドの各々は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する。さらにより好ましくは、その抗体は、実施例3に記載されるヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化アッセイにおいて約100nM〜約50nMの間のIC50、25℃にてSPRにより測定される場合、約5.5×10−4−1〜約2.0×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25からのkoff速度を有し、約100pM〜約50pMの間のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する。最も好ましくは、本発明の抗体は、2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドを含み、ここで、その重鎖ポリペプチドの各々は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、その軽鎖ポリペプチドの各々は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有し、ここで、その抗体は、実施例3に記載されるヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化アッセイにおいて約100nM〜約50nMの間のIC50、25℃にてSPRにより測定される場合、約5.5×10−4−1〜約2.0×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25からのkoff速度を有し、約100pM〜約50pMの間のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する。
【0061】
本発明の他の好適な抗体は、配列番号124、125、126、および127からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。より好ましくは、本発明の抗体は、配列番号148、128、150、および151からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。さらにより好ましくは、本発明の抗体は、配列番号126のLCVRおよび配列番号148のHCVRを含む。さらにより好ましくは、本発明の抗体は、配列番号127のLCVRおよび配列番号128のHCVRを含む。さらにより好ましくは、本発明の抗体は、配列番号125のLCVRおよび配列番号151のHCVRを含む。本発明の最も好適な抗体は、配列番号124のLCVRおよび配列番号150のHCVRを含む。このようなLCVRは、好ましくは、ヒト由来の軽鎖定常領域に連結されるか、またはヒト由来の軽鎖定常領域、好ましくはヒトκ鎖、および最も好ましくは配列番号89のκ鎖に由来する。このようなHCVRは、好ましくは、ヒト由来の重鎖定常領域に連結されるか、またはヒト由来の重鎖定常領域、好ましくはIgG、IgG、またはIgG、より好ましくは配列番号90、91、92、93、および94からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域、および最も好ましくは配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域に由来する。好ましくは、その抗体は、実施例3に記載されるヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化アッセイにおいて約100nM〜約50nMの間のIC50、25℃にてSPRにより測定される場合、約5.5×10−4−1〜約2.0×10−4−1からの間のヒトヘプシジン−25からのkoff速度を有し、約100pM〜約50pMの間のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する。
【0062】
本発明の抗体は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含み得る。配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドは、配列番号2のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドは、配列番号10に示される核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0063】
本発明の抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドは、配列番号3のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドは、配列番号11に示される核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0064】
本発明の抗体はまた、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドは、配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドは、配列番号12に示される核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0065】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む。配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチドは、配列番号5のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドは、配列番号13に示される核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0066】
本発明の好適なヒトの遺伝子操作された抗体は、本明細書において、Mabs L1.5、Hu22、3.12および3.23といわれる。重鎖、軽鎖、重鎖可変領域および軽鎖可変領域、ならびにMabs L1.5、Hu22、3.12、および3.23についてのCDRをコードするアミノ酸配列の配列番号を、以下の表4に提供する。
【0067】
【表4】

【0068】
標準的な分子生物学技術を、組換え発現ベクターを調製するため、宿主細胞をトランスフェクトするため、本発明の抗体を産生する形質転換体、単離された宿主細胞株を選択するため、それらの宿主細胞を培養するため、およびその培養培地から抗体を回収するために用いる。
【0069】
本発明はまた、本発明の抗ヘプシジン抗体を発現する宿主細胞に関する。当該分野において公知の様々な宿主発現系を、本発明の抗体を発現させるために用いることができ、それらには、原核生物(細菌)および真核生物発現系(例えば、酵母、バキュロウイルス、植物、哺乳動物および他の動物細胞、トランスジェニック動物、ならびにハイブリドーマ細胞)、ならびにファージディスプレイ発現系が含まれる。
【0070】
本発明の抗体は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現により調製され得る。抗体を組換えて発現させるために、宿主細胞は、抗体の免疫グロブリン軽鎖および/または重鎖をコードするDNA断片を運搬する1つ以上の組換え発現ベクターで形質転換、形質導入、感染などをされて、その結果、軽鎖および/または重鎖が宿主細胞において発現される。重鎖および軽鎖は、それらが1つのベクター中で作動可能に連結される異なるプロモーターから独立して発現されてもよいか、あるいは、重鎖および軽鎖は、それらが2つのベクター中(1つは重鎖を発現し、もう1つは軽鎖を発現する)で作動可能に連結される異なるプロモーターから独立して発現されてもよい。必要に応じて、重鎖および軽鎖は、異なる宿主細胞において発現されてもよい。
【0071】
さらに、組換え発現ベクターは、宿主細胞由来の抗体の軽鎖および/または重鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードできる。抗体の軽鎖および/または重鎖の遺伝子は、ベクター中にクローンされ得、その結果、シグナルペプチドは、インフレームにおいて抗体鎖遺伝子のアミノ末端に作動可能に連結される。そのシグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであってもよいか、または異種シグナルペプチドであってもよい。好ましくは、組換え抗体は宿主細胞が培養される培地に分泌され、その培地から抗体が回収され得るか、または精製され得る。
【0072】
HCVRをコードする単離されたDNAは、そのHCVRをコードするDNAを、重鎖定常領域をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト、および他の哺乳動物の重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野において公知である。これらの領域を含むDNA断片は、例えば、標準的なPCR増幅により得られ得る。重鎖定常領域は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgMまたはIgD)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgGおよびIgG)またはサブクラス定常領域およびKabat(前出)に記載されるそれらの任意のアロタイプ変異体のものであってよい。
【0073】
LCVR領域をコードする単離されたDNAは、そのLCVRコードDNAを、軽鎖定常領域をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト、および他の哺乳動物の軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野において公知である。これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅により得られ得る。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域であってもよい。
【0074】
抗体の重鎖および/または軽鎖遺伝子(複数も含む)に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中の抗体鎖遺伝子(複数も含む)の発現を制御する調節配列を保有する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび必要な場合、抗体鎖遺伝子(複数も含む)の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルのような要因に依存し得る。哺乳動物の宿主細胞発現についての好適な調節配列としては、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))および/またはポリオーマウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーが挙げられる。
【0075】
さらに、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞中のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子を保有してもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする。例えば、典型的に、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞にG418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を与える。好適な選択可能なマーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−マイナス宿主細胞において使用するため)、neo遺伝子(G418選択のため)、および選択/増幅のためのGS陰性細胞系(例えば、NS0)におけるグルタミン合成酵素(GS)が挙げられる。
【0076】
軽鎖および/または重鎖の発現に関して、その重鎖および/または軽鎖をコードする発現ベクター(複数も含む)は、標準的な方法(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション、形質導入、感染など)により宿主細胞に導入される。原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかで本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞が好ましく、最も好ましくは哺乳動物の宿主細胞である。なぜなら、このような細胞は、適切にフォールディングされて免疫学的に活性な抗体を構築し、分泌しやすいからである。本発明の組換え抗体を発現させるための好適な哺乳動物の宿主細胞としては、(例えば、KaufmanおよびSharp,J.Mol.Biol.159:601−21,1982に記載されるDHFR選択可能なマーカーとともに使用されるUrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20,1980に記載されるdhfrマイナスCHO細胞を含む)チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2/0細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物の宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞中の抗体の発現、またはより好ましくは培養培地中に抗体の分泌を可能にするのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより産生され、その宿主細胞は当該分野において公知の適切な条件下で増殖される。抗体は、標準的な精製方法を用いて宿主細胞および/または培養培地から回収され得る。
【0077】
従来の技術によってインタクトな抗体の部分、または断片、例えば、Fab断片またはscFv分子を生成するために宿主細胞も用いてもよい。例えば、本発明の抗体の軽鎖または重鎖のいずれかをコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望まれてもよい。ヒトヘプシジン−25に対する結合に必要でない軽鎖または重鎖のいずれかまたは両方をコードする一部または全てのDNAを除去するために組換えDNA技術も用いてもよい。このような切断DNA分子から発現される分子もまた、本発明の抗体に含まれる。
【0078】
本発明は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞を提供する。好ましくは、本発明の宿主細胞は、本発明の核酸分子を含む1つ以上のベクターまたは構築物を含む。例えば、本発明の宿主細胞は、本発明のベクターが導入されている細胞であり、前記ベクターは、本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチドおよび/または本発明のHCVRをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明はまた、本発明の2つのベクターが導入されている宿主細胞を提供し、1つは本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、もう1つは本発明の抗体に存在するHCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、各々はエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント))に作動可能に連結されて、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。
【0079】
いったん発現されると、本発明のインタクトな抗体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態は、硫安塩析、イオン交換、親和性(例えば、プロテインA)、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該分野の標準的な手順に従って精製され得る。治療抗体を精製するための標準的な手順は、例えば、Feng Li,X.Zhou,Xiaoming Yang,Tim TresselおよびBrian Leeによる「Current Therapeutic Antibody Production and Process Optimization」という題名の論文(BioProcessing Journal,Sept./Oct.2005)に記載されている。さらに、組換えて発現された抗体調製物からウイルスを除去するための標準的な技術もまた、当該分野において公知である(例えば、Gerd KernおよびMani Krishnan,「Viral Removal by Filtration:Points to Consider」(Biopharm International,Oct.2006)を参照のこと)。治療抗体の調製物からウイルスを除去するための濾過の有効性は、濾過される溶液中のタンパク質および/または抗体の濃度に少なくとも部分的に依存することが知られている。本発明の抗体についての精製プロセスは、1つ以上のクロマトグラフィー操作の主流からウイルスを除去するために濾過する工程を含んでもよい。好ましくは、ウイルスを除去するために医薬品グレードのナノフィルターにより濾過する前に、本発明の抗体を含むクロマトグラフィーの主流を希釈または濃縮して、約1g/L〜約3g/Lの濃度の全タンパク質および/または全抗体を得る。さらにより好ましくは、そのナノフィルターはDV20ナノフィルター(例えば、Pall Corporation;East Hills,NY)である。医薬的用途のために、少なくとも約90%、約92%、約94%または約96%均質の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、約98%〜約99%以上の均質が最も好ましい。部分的または所望の場合は均質に精製されると、次いで、本明細書に記載されるように、無菌抗体が治療的に使用されてもよい。
【0080】
上述の議論を考慮して、本発明はさらに、限定されないが、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むポリヌクレオチドまたはベクターにより形質転換されている哺乳動物、植物、細菌、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物の細胞を含む宿主細胞を培養する工程、それにより、核酸が発現され、必要に応じて、宿主細胞培養培地から抗体を回収する工程を含むプロセスによって得られる抗体に関する。好ましくは、その宿主細胞は、配列番号14、15、16、または17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む。より好ましくは、その宿主細胞は、配列番号12または13に示される核酸分子を含むベクターを含む。さらにより好ましくは、その形質転換された宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、またはSP2/0細胞である。
【0081】
本発明はさらに、本発明の抗体を産生する方法に関し、その方法は、限定されないが、哺乳動物、植物、細菌、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物の細胞を含む宿主細胞を、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換する工程、それにより、核酸が発現され、宿主細胞培養培地から抗体を回収する工程を含む。好ましくは、その宿主細胞は、配列番号14、15、16、または17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターで形質転換される。より好ましくは、その宿主細胞は、配列番号12または13に示される核酸分子を含むベクターで形質転換されている。さらにより好ましくは、その宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、またはSP2/0細胞である。
【0082】
本明細書に使用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、ゲノム、cDNA、または合成起源、あるいはそれらの一部の組み合わせのポリヌクレオチドを意味し、その起源のために、単離されたポリヌクレオチドは、(1)その単離されたポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドの全てまたは一部と会合されず、(2)天然に結合されないポリヌクレオチドと結合され、または(3)より長い配列の一部として天然に存在しない。
【0083】
本明細書で言及される用語「単離されたタンパク質」とは、対象のタンパク質が、(1)通常見出される少なくとも一部の他のタンパク質を含まず、(2)同じ起源由来、例えば同じ種由来の他のタンパク質を本質的に含まず、(3)異なる種由来の細胞により発現され、(4)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、または天然に会合される他の物質のうちの少なくとも約50%から分離されており、(5)「単離されたタンパク質」が天然に会合されるタンパク質の一部と(共有結合または非共有結合相互作用により)会合されず、(6)天然に会合されないポリペプチドと(共有結合または非共有結合相互作用により)作動可能に会合され、または(7)天然に生じないことを意味する。このような単離されたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNAまたは合成起源の他のRNA、あるいはそれらの任意の組み合わせによりコードされ得る。好ましくは、その単離されたタンパク質は、実質的に、その使用(治療的、診断的、予防的研究または他のもの)を妨げるその天然環境に見出されるタンパク質またはポリペプチドあるいは他の夾雑物から精製される。
【0084】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から同定され分離および/または回収されているものである。その天然環境の夾雑物の成分は、抗体についての診断的または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含んでもよい。好適な実施形態において、抗体は、(1)ローリー法により測定される場合、95重量%を超える抗体、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用により、少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた還元または非還元条件下でのSDS−PAGEにより均質になるまで精製される。単離された抗体には、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。
【0085】
本明細書に使用される場合、「実質的に純粋」または「実質的に精製される」とは、主要な種が存在する(すなわち、モル基準で、組成物中のどの他の個々の種よりも豊富である)化合物または種を意味する。特定の実施形態において、実質的に精製される組成物は、種が、全ての存在する高分子種のうちの少なくとも約50%(モル基準で)を含む組成物である。特定の実施形態において、実質的に純粋な組成物は、その組成物中に存在する全ての高分子種のうちの約80%、85%、90%、95%、または99%より多くを含む。特定の実施形態において、その種は、本質的に均質になるまで精製され(夾雑物種は、従来の検出法により組成物中に検出され得ない)、その組成物は本質的に、単一の高分子種からなる。
【0086】
本発明はさらに、配列番号124、125、126、127、128、148、150、および151からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0087】
別の実施形態において、本発明は、配列番号124、125、126、127、128、148、150、および151からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを提供する。
【0088】
本明細書に使用される場合、用語「ヒトの遺伝子操作された抗体」とは、少なくとも一部がヒト由来である抗体をいう。さらに、本明細書に使用される場合、用語「ヒトの遺伝子操作された抗体」とは、本明細書に開示される特定の抗体、および本明細書に開示される抗体のように本発明に従う同様の機能的特性を有し、かつ、非ヒト抗体に由来するCDRを囲む実質的にヒトまたは完全にヒトであるフレームワーク領域を有する付加的な抗体をいう。実質的にヒトフレームワークは、既知のヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するものである。好ましくは、その実質的にヒトフレームワークは、既知のヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、または約99%の配列同一性を有する。最も好ましくは、本発明のヒトの遺伝子操作された抗体は、非ヒト抗体由来の最小配列を含む。
【0089】
例えば、ヒトの遺伝子操作された抗体は、非ヒト起源(例えば、マウス)の抗体に由来する部分、および例えば、従来の技術(例えば、合成)により化学的に結合されるか、または遺伝子操作技術を用いて隣接ポリペプチドとして調製されるヒト起源の抗体に由来する部分を含んでもよい。本明細書に使用される場合、抗体の可変領域に関して使用される場合、用語「フレームワーク」とは、抗体の可変領域内のCDRの外側の全てのアミノ酸残基を意味するために記される。本明細書に使用される場合、用語「フレームワーク領域」とは、CDRにより分離されるフレームワークの各ドメインを意味することが意図される。軽鎖についてのフレームワーク領域は、同様に、各々の軽鎖可変領域CDRにより分離される。好ましくは、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域は、フレームワークまたはフレームワーク領域の少なくとも一部(例えば、FR2およびFR3などの2つまたは3つのサブ領域を含む)を含む。より好ましくは、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、またはFRL4は完全にヒトであるか、あるいは、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、またはFRH4は完全にヒトである。さらにより好ましくは、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、またはFRL4は生殖細胞系列配列(例えばヒト生殖細胞系列)、あるいは、当該技術分野で公知の特定のフレームワークのヒトコンセンサス配列を含み、および/または、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、またはFRH4は生殖細胞系列配列(例えばヒト生殖細胞系列)、あるいは、特定のフレームワークのヒトコンセンサス配列を含む。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒト生殖細胞系列の軽鎖フレームワーク配列およびヒト生殖細胞系列の重鎖フレームワーク配列を含む(PCT国際公開第WO2005/005604号を参照)。より好ましくは、ヒト生殖細胞系列の軽鎖フレームワークは、A11、A17、A18、A19、A20、A27、A30、L1、L11、L12、L2、L5、L6、L8、O12、O18、O2、およびO8からなる群より選択される。さらにより好ましくは、ヒト生殖細胞系列の軽鎖フレームワークは、O2またはO18である。より好ましくは、ヒト生殖細胞系列の軽鎖フレームワークはO2である。さらに、好ましいヒト生殖細胞系列の重鎖フレームワームは、VH2−5、VH2−26、VH2−70、VH3−20、VH3−72、VH1−24、VH1−46、VH3−9、VH3−66、VH3−74、VH4−31、VH1−18、VH1−69、VH3−7、VH3−11、VH3−15、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−48、VH4−39、VH4−59、VH5−51、VH3−73、VH1−58、VH1−3、およびVH1−2からなる群より選択される。さらにより好ましくは、ヒト生殖細胞系列の重鎖フレームワークはVH1−69またはVH1−18である。最も好ましくは、ヒト生殖細胞系列の重鎖フレームワークはVH1−69である。
【0090】
本発明に従う機能的特性によりヒトヘプシジン−25に選択的に結合する本明細書に開示されるものに加えてヒトの遺伝子操作された抗体は、いくつかの異なるアプローチを用いて生成され得る。本明細書に開示される特定の抗体は、付加的な抗体を作製するための鋳型または親抗体として使用され得る。1つのアプローチにおいて、親抗体のCDRは、その親抗体のフレームワークと高い配列同一性を有するヒトフレームワークに移植される。新規のフレームワークの配列同一性は、通常、親抗体における対応するフレームワークと少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%である。この移植は、親抗体と比べて、結合親和性の減少を生じる場合がある。この場合、そのフレームワークは、Queenらにより公開された特定の基準に基づく特定の位置において親フレームワークに戻し変異(back−mutated)されてもよい。戻し変異を検討するための残基の同定は以下のように実施され得る:アミノ酸が以下の分類に入る場合、使用されるヒト生殖細胞系配列のフレームワークアミノ酸(受容体フレームワーク)は、親抗体のフレームワーク由来のフレームワークアミノ酸(供与体フレームワーク)と置換される:
(a)受容体フレームワークのヒトフレームワークにおけるアミノ酸は、その位置においてヒトフレームワークに対して異常であるが、供与体免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸は、その位置においてヒトフレームワークに対して正常である;
(b)アミノ酸の位置がCDRの1つと直接隣接する;または
(c)フレームワークアミノ酸の任意の側鎖原子が、三次元免疫グロブリンモデルにおいてCDRアミノ酸の任意の原子の約5〜6オングストローム(中心〜中心)内である(Queenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2869(1991))。
【0091】
受容体フレームワークのヒトフレームワークにおけるアミノ酸の各々および供与体フレームワークにおける対応するアミノ酸が、その位置においてヒトフレームワークに対してほとんど異常である場合、そのようなアミノ酸は、その位置においてヒトフレームワークに対して正常であるアミノ酸と置換されてもよい。この戻し変異の基準により、親の活性に回復することができる。
【0092】
別のアプローチは、フレームワークを変化させずに移植されたCDRをランダムに変異させて、親抗体より十分であるかより良い結合親和性についてそのような抗体をスクリーニングする。さらに、これらのアプローチの両方の組み合わせが可能である。移植後、特定のフレームワーク領域は、CDRを変化させることに加えて戻し変異されてもよい。この一般的な方法論は、Wuら,(1999),「Humanization of a murine monoclonal antibody by simultaneous optimization of framework and CDR residues」,J.Mol.Biol.,294:151−162に記載されている。
【0093】
本明細書に使用される場合、用語「供与体」とは、受容する分子に親抗体の構造的または機能的特性のいずれかを与えるために、別の抗体分子またはその断片に与えられるか、または寄与される、親抗体分子またはその一部に由来するその断片を意味すると意図される。CDR移植の特定の例に関して、親抗体(移植されたCDRはその親抗体由来である)は供与体分子である。供与体のCDRは、受容する分子に親分子の結合親和性を与える。供与体分子が、受容する分子のその断片と異なる種に由来しなくてもよいことは理解されるべきである。実際には、供与体は別および異なる分子であれば十分である。
【0094】
本明細書に使用される場合、用語「受容体」とは、親抗体もしくは供与体抗体分子またはその断片由来の供与部分を受容する抗体分子またはその断片を意味すると意図される。従って、受容体抗体分子またはその断片は、親分子の供与部分の構造的または機能的特徴が与えられる。CDR移植の特定の例に関して、CDRが移植される受容分子は、受容体分子である。受容体抗体分子または断片は、供与体CDRまたは親分子の結合親和性が与えられる。供与体分子に関して、受容体分子が、供与体と異なる種由来でなくてもよいことは理解される。
【0095】
抗体またはその重鎖もしくは軽鎖に関して使用される場合、「可変領域」とは、分子に抗原結合を与え、定常領域ではない抗体のアミノ末端部分を意味すると意図される。この用語は、全可変領域の結合機能の一部または全てを維持するその機能的断片を含むと意図される。従って、用語「異種可変領域結合断片」とは、異種複合体に構築される少なくとも1つの重鎖可変領域および少なくとも1つの軽鎖可変領域あるいはそれらの機能的断片を意味すると意図される。異種可変領域結合断片としては、例えば、Fab、F(ab)2、Fv、一本鎖Fv(scFv)などの機能的断片が挙げられる。このような機能的断片は当業者に周知である。従って、異種可変領域の機能的断片を記載するこれらの用語の使用は、当業者に周知の定義に対応することが意図される。このような用語は、例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989);Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),New York:VCH Publisher,Inc.);Hustonら,Cell Biophysics,22:189−224(1993);PluckthunおよびSkerra,Meth.Enzymol.,178:497−515(1989)ならびにDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,第2版,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されている。
【0096】
好ましくは、ヒトの遺伝子操作された抗体は、親抗体(すなわち、非ヒト抗体、好ましくはマウス抗体)またはマウスFab JXB7などのその断片が起源であるか、あるいはそれらに由来するCDRを有するが、存在する限り、フレームワークおよび定常領域(またはそのほとんどもしくは実質的な部分、すなわち、少なくとも約90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%)は、前記抗体がヒト細胞において産生されるか否かに関わらず、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン領域(例えば、国際ImMunoGeneTicsデータベースを参照のこと)を生じる核酸配列情報によりコードされるか、あるいはその組換えまたは変異された形態である。好ましくは、ヒトの遺伝子操作された抗体の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRは、非ヒト親抗体(ヒトの遺伝子操作された抗体はその親抗体由来である)のCDRから最適化されて、スクリーニングアッセイ、例えば、ELISAアッセイにより同定され得る所望の特性、例えば、向上した特異性、親和性または中和性を生成する。好ましくは、本発明の抗体は、親マウスのFab JXB7のHCDR3(すなわち、配列番号46)と同一のHCDR3を含み、HCDR1、HCDR2、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、親マウスのFab JXB7に存在するものと比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。親マウスのFab JXB7のものと比べて、本発明のヒトの遺伝子操作された抗体のCDRにおける特定のアミノ酸置換は、抗体の不安定性の可能性を減少させる(例えば、1つ以上のCDR Asn残基の除去)か、またはヒト被験体に投与された場合、抗体の免疫原性の可能性を減少させる(例えば、IMMUNOFILTER(商標)技術(Xencor,Inc.,Monrovia,CA)により予測される)。
【0097】
ヒトの遺伝子操作された抗体は、当該分野における慣例の使用方法を用いてインビトロにおいて変異誘発に供されてもよく、それにより、ヒトの遺伝子操作された組換え抗体のHCVRおよびLCVRのフレームワーク領域のアミノ酸配列は、ヒトの生殖細胞系列HCVRおよびLCVR配列に関するものに由来するが、インビボにおいてヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内に天然ではなく存在してもよい。ヒトの遺伝子操作された組換え抗体のHCVRおよびLCVRフレームワークのこのようなアミノ酸配列は、ヒトの生殖細胞系列の配列に対して、少なくとも約85%、約90%、約92%、約94%、約95%、約96%、約98%、またはより好ましくは少なくとも約99%、または最も好ましくは100%同一であることが企図される。従って、ヒトの遺伝子操作された抗体は、受容体抗体にも、あるいは親抗体から輸入されたCDRまたはフレーム配列のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。
【0098】
ヒトの遺伝子操作された抗体を生成するために当該分野において利用可能な複数の方法が存在する(例えば、PCT国際公開第2006/06046935号;Queenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2869(1991);Jonesら,Nature,321:522(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);およびVerhoeyenら,Science,239:1534(1988)を参照のこと)。例えば、ヒトの遺伝子操作された抗体は、ヘプシジン−25に選択的に結合する親抗体(例えば、マウス抗体またはハイブリドーマによって作製された抗体)のHCVRおよびLCVRをコードする核酸配列を得ることにより産生されてもよく、前記HCVRおよびLCVR(非ヒト)におけるCDRを同定し、このようなCDRをコードする核酸配列を選択されたヒトのフレームワークをコードする核酸配列に移植する。必要に応じて、CDR領域は、そのCDR領域をフレームワークに移植する前に、異なるアミノ酸を有するCDRにおける1つ以上のアミノ酸を置換させるために、ランダムにまたは特定の位置に変異を誘発することにより最適化されてもよい。あるいは、CDR領域は、当業者に利用可能な方法を用いて、ヒトフレームワークへの挿入後に最適化されてもよい。
【0099】
CDRをコードする配列が選択されたヒトフレームワークをコードする配列に移植された後、ヒトの遺伝子操作された可変重鎖および可変軽鎖配列をコードする得られたDNA配列は、次いで、発現されて、ヘプシジン−25に選択的に結合するヒトの遺伝子操作された抗体を産生する。ヒトの遺伝子操作されたHCVRおよびLCVRは、全抗ヘプシジン−25抗体分子の一部として、すなわち、ヒト定常領域配列との融合タンパク質として発現されてもよい。しかしながら、HCVRおよびLCVR配列はまた、定常配列の非存在下において発現されて、例えば、ヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジン−25選択的FvまたはFabを生成してもよい(例えば、Watkins,J.ら,Anal.Biochem.,253:37−45(1997)およびWatkins,J.ら,Anal.Biochem.256:169−177,(1998)を参照のこと)。
【0100】
本発明の教示を適用することにより、当業者は、本明細書に開示される特定のCDRおよびフレームワーク配列内のアミノ酸を置換、付加、または欠失させるために、一般的な技術、例えば、部位特異的突然誘発法を使用でき、そうすることで、本明細書に提供される配列由来のさらなる可変領域アミノ酸配列を生成できることが理解されるだろう。全部で21まで、代替の天然に存在するアミノ酸が特定の置換部位に導入されてもよい。最終的に、本明細書の実施例2に記載されるもののようなインビトロまたはインビボでのスクリーニング技術が、ヘプシジンポリペプチドに対する所望の結合親和性を有するFab断片についての可変領域のアミノ酸配列を選択するために当業者に利用可能である。このようにさらなるFab断片が、本発明に従う抗ヘプシジン抗体を調製するのに適切であると確認されてもよい。好ましくは、フレームワーク内のアミノ酸の置換、付加、および欠失は、本明細書に開示されるフレームワーク領域配列(すなわち、FRL1、FRL2、FRL3、FRL4、FRH1、FRH2、FRH3、FRH4)の1つまたは各々内で1つ、2つ、3つ、または4つの位置に限定される。好ましくは、CDR内のアミノ酸の置換、付加、および欠失は、1つまたは各々のCDR内で1〜3つの位置に制限され、より好ましくは、1つまたは各々のCDR内で1つまたは2つのアミノ酸位置における置換、付加、および欠失が行われる。さらに好ましくは、アミノ酸の置換、付加、および欠失は、重鎖可変領域のCDR内の1つまたは2つのアミノ酸位置で行われる。最も好ましくは、アミノ酸の置換、付加、および欠失は、CDRH2内の1つまたは2つのアミノ酸位置で行われる。
【0101】
ヒトの遺伝子操作された可変重鎖および可変軽鎖配列をコードする得られたDNA配列は、次いで、発現されて、高親和性でヒトヘプシジン−25に選択的に結合するヒトの遺伝子操作された抗体を産生する。ヒトの遺伝子操作されたHCVRおよびLCVRは、全抗ヘプシジン−25抗体分子の一部として、すなわち、ヒト定常領域配列との融合タンパク質として発現されてもよい。
【0102】
本発明の別の態様は、診断的および予防的目的のためのヒト組織および生体液における成熟ヘプシジンを検出および測定するために、比較的簡単だが、非常に感受性が高く、選択的な免疫学的検定法において本発明の抗体を用いる方法を提供する。
【0103】
本発明の抗体は、成熟ヘプシジンにより促進される障害に対する素因を評価するため、ならびにそれらに罹患している患者におけるこのような障害を検出および診断するために、ヒト由来の組織または生体液における成熟ヘプシジンの量を正確に検出または測定するための手段を提供する。例えば、本発明の抗体は、感受性があり、かつ信頼性のある免疫学的検定法、例えば、ELISA、RIA、免疫拡散法、または免疫検出法(例えば、SPRアッセイ)に導入されてもよい。同様に、本発明の抗体はまた、組織または生体液試料の免疫組織化学(IHC)および免疫蛍光(IF)アッセイにも有用である。このような解析は、ヘプシジン−25の異常レベルを検出し、従って、ヘプシジン−25により促進される障害を診断するために使用され得る。より具体的には、本発明は、患者由来の組織または生体液の試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルを測定し、その試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルと、1つ以上のコントロール個体由来、または参照基準を有する対応する試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルとを比較して、障害に関連する増加したレベルのヒト成熟ヘプシジンを検出することにより、患者におけるヒト成熟ヘプシジンにより促進される障害を診断する方法を提供する。疾患状態は、減少した血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットに関連する1つ以上の遺伝的疾患または非遺伝的疾患を含んでもよい。好ましくは、その疾患状態は、貧血に関連する1つ以上の障害を含んでもよい。
【0104】
患者におけるヒト成熟ヘプシジンにより促進される疾患、障害または状態をモニタリングする方法も提供される。その方法は、第1の時点において、ヒト成熟ヘプシジンにより促進される疾患、障害または状態を罹患しているか、あるいはそれらの危険性がある患者由来の組織または生体液の試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルを測定する工程、1つ以上の異なる時点において、患者由来の組織または生体液の1つ以上の試料中のヒト成熟ヘプシジンのレベルを測定する工程、異なる時点で測定されたヒト成熟ヘプシジンのレベルを比較して、ヒト成熟ヘプシジンにより促進される疾患または状態をモニタリングする工程を含む。
【0105】
ハイスループット法に適用される場合、本発明のヒト成熟ヘプシジン選択的抗体は特に、有用である。このような方法は、マイクロチップおよびマイクロアレイ法を含み、それにより、多くの試料を、マイクロプレートまたはスライド、あるいは当該分野において公知の他のアッセイ基板上で試験することができる。
【0106】
生体試料中のヒト成熟ヘプシジンの存在またはそのレベルは、抗原−抗体複合体を形成するのに適切な条件下で、生体試料と、例えば、本発明の抗体とを合わせることにより立証され得る。その抗体は、直接的、またはより好ましくは間接的に検出可能な部分で標識されて、結合または未結合抗体の検出を容易にする。免疫複合体形成を検出する様々な方法は当該分野において周知であり、例えば、SPRなどの物理的要因の変化の検出に頼る、例えば、ELISA、RIA、免疫ブロット法(例えば、ドットブロット、スロットブロット、ウェスタンブロットなど)、間接免疫蛍光技術および方法がある。このような適用には、検出可能な部分と結合した本発明のヘプシジン−25選択的抗体を利用して、生体試料中、例えば、ヒトの生体液中、または細胞もしくは組織抽出物中のヘプシジンを検出する方法が含まれる。本発明の抗体は、検出可能な部分による修飾を有するか、または有さないこのようなアッセイにおいて使用されてもよい。検出可能な部分で修飾する場合、本発明の抗体は、検出可能な部分の共有または非共有結合により修飾されてもよい。本明細書に使用される場合、用語「検出可能」とは、公知の解析技術を用いて、検出器により物質を同定または追跡することを可能にする物質(結合体、化合物、または部分)の特徴を記載する。検出可能な部分の代表的な例としては、限定されないが、発色団、蛍光部分、リン光部分、発光部分、放射性部分、種々の酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼ)、磁性部分(例えば、反磁性、常磁性および強磁性物質)、および重金属群、ならびに任意の他の公知の検出可能な部分が挙げられる。形成される抗体−抗原の標準的な複合体の量は、例えば、測光手段または比色分析手段などの当該分野において公知の種々の方法により定量化されてもよい。好ましくは、本発明の抗体は修飾されずに使用される(すなわち、当該分野において周知の方法に従って間接的に標識される)。
【0107】
本発明は、生体試料中のヒト成熟ヘプシジンタンパク質を検出するための方法を具体化し、本発明の抗体がヒト成熟ヘプシジンタンパク質に結合することを可能にする条件下で、かつ十分な時間、本発明の抗体と生体試料とをインキュベートする工程、および前記結合を検出する工程を含む。
【0108】
本発明はまた、ヒト成熟ヘプシジンポリペプチドを含有している疑いのある試料をスクリーニングするための組成物、方法およびキットを提供する。このようなスクリーニングは、このようなポリペプチドを含有しているか、または産生している疑いのある患者の試料、または実験用試料で実施されてもよい。キットは、本発明のヘプシジン−25選択的抗体を含んでもよい。そのキットは、試料と本発明のヘプシジン−25選択的抗体との間の相互作用を検出するための適切な緩衝液および試薬を含んでもよい。提供される試薬は、抗マウスIgG抗体などの本発明の抗体と結合または相互作用できる放射性標識されるか、蛍光標識されるか、または酵素標識された薬剤であってもよい。
【0109】
そのキットの試薬は、溶液として、固体支持体に結合されて、または乾燥粉末として提供されてもよい。その試薬が溶液で提供される場合、好ましくは、その溶液は水溶液である。好ましくは、その提供される試薬が固体支持体に結合される場合、その固体支持体は、クロマトグラフ媒体、複数のウェルを有する試験プレート、または顕微鏡スライドであってもよい。その提供される試薬が乾燥粉末である場合、その粉末は、さらにキットに提供され得る適切な溶媒の添加により再構成されてもよい。
【0110】
本発明のキットは、通常、バイアルを含む容器で提供され、そのバイアル中に抗体、抗原、または検出試薬が入れられてもよく、好ましくは適切にアリコートされる。本発明のキットはまた、典型的に、商業的に販売するための抗体、抗原、および試薬の容器を収容するための手段を備える。このような容器はプラスチック容器を含んでもよく、その中に所望のバイアルが保持され、1つ以上の必要な化学物質(例えば、クロマトグラフィー材料)、溶媒および溶離剤、試験管、洗浄剤、抗体および検出試薬のための化学物質を含む。
【0111】
本発明の抗体は、成熟ヘプシジンの活性に関連する障害または疾患を診断するために使用されてもよい。同様の方法で、本発明の抗体は、成熟ヘプシジンにより促進される状態、疾患、または障害を処置される被験体において成熟ヘプシジンのレベルをモニターするためのアッセイに使用されてもよい。このような適用は、本発明の抗体および生体試料中、例えば、ヒト体液中、または細胞もしくは組織抽出物中の成熟ヘプシジンを検出するための標識を利用する方法を含む。本発明の抗体は、修飾を用いて、または用いずに使用されてもよく、検出可能な部分の共有または非共有結合により標識されてもよい。
【0112】
生体試料中のタンパク質レベルを測定するための様々な従来のプロトコル(例えば、ELISA、RIAおよびFACSを含む)は当該分野において公知であり、成熟ヘプシジン発現の変化したレベル、または異常なレベルを診断するための基準を与える。試料中に存在する正常または標準的なヘプシジンレベルは、任意の公知の技術を用いて、例えば、抗原:抗体複合体を形成するのに適切な条件下で、成熟ヘプシジンポリペプチドを含む試料と、例えば、本発明の抗体とを合わせることによって立証される。その抗体は、検出可能な物質と直接または間接的に標識されて、結合または未結合の検出を容易にする。適切な検出可能な物質としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が挙げられる。形成される標準的な複合体の量は、例えば、測光手段などの種々の方法により定量される。次いで、試料中に存在する成熟ヘプシジンポリペプチドの量は、基準値と比較される。診断的、予防的、および/またはモニタリングアッセイ、キットならびに方法に使用するための好適な抗体は、(i)配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド、(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド、(iii)配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド、または(iv)配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを有する。
【0113】
本発明の単離されたヘプシジン−25選択的抗体は、治療、好ましくはヒトの治療に使用されてもよい。
【0114】
本発明の抗体を含む医薬組成物は、有効量がそれを必要とするヒト被験体に投与された場合、ヒトにおける血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させるために使用されてもよい。さらに、本発明の抗体は、ヘプシジン−25の存在が、望ましくない病理学的作用またはヘプシジン−25レベルの減少を引き起こすか、またはそれらの原因となるか、あるいはヘプシジン−25生物活性がヒト被験体において治療的に有益である状態、疾患、または障害の処置に有用であり得る。このような状態、疾患または障害としては、限定されないが、感染、炎症、慢性疾患、および/または癌に起因する貧血を含む、限定されないが、貧血が挙げられる。被験体は男性であっても女性であってもよい。
【0115】
本発明は、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させる方法を含み、その方法は、約800pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する本発明の有効量の抗体を、それらを必要とするヒト被験体に投与する工程を含む。加えて、または代替的に、本発明は、限定されないが、貧血(例えば、感染、炎症、慢性疾患、および/または癌に起因する貧血)を含む、血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させることにより有益である、ヒト被験体における疾患、状態または障害を処置するための方法を含む。好ましくは、被験体は、望ましくない低い血清鉄レベル、低い網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを有するか、あるいはそれらを有する危険性がある。より好ましくは、被験体は、限定されないが、感染、炎症、慢性疾患、および/または癌に起因する貧血を含む、貧血の危険性があるか、あるいはそれらを罹患している。さらにより好ましくは、抗体は、
i)配列番号41および43からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1;
ii)配列番号30、53、56、57、58、および76からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2;および
iii)配列番号31、61、および60からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3、
を含むLCVR、ならびに
i)配列番号32、63、78、および79からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1;
ii)配列番号44、80、81、82、83、84、85、86、および87からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2;および
iii)配列番号46に示されるアミノ酸配列を有するHCDR3、
を含むHCVRを含む。さらにより好ましくは、抗体は、(i)配列番号6および14にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(ii)配列番号7および15にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(iii)配列番号9および17にそれぞれ示されるアミノ酸配列、または(iv)配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖ポリペプチドを含む。最も好ましくは、抗体は、配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖ポリペプチドを含む。
【0116】
さらに、貧血または少なくとも1つの上述の障害の処置のための医薬の調製のための本発明の抗体の使用が企図される。好ましくは、抗体は、
i)配列番号41および43からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1;
ii)配列番号30、53、56、57、58、および76からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2;および
iii)配列番号31、61、および60からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3、
を含むLCVR、ならびに
i)配列番号32、63、78、および79からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1;
ii)配列番号44、80、81、82、83、84、85、86、および87からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2;および
iii)配列番号46に示されるアミノ酸配列を有するHCDR3、
を含むHCVRを含む。より好ましくは、抗体は、(i)配列番号6および14にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(ii)配列番号7および15にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(iii)配列番号9および17にそれぞれ示されるアミノ酸配列、または(iv)配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖ポリペプチドを含む。最も好ましくは、抗体は、配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖ポリペプチドを含む。
【0117】
用語「処置すること」(または「処置」および「処置する」)とは、本明細書に記載される障害の進行を遅延、遮断、抑制、制御、または停止し得る全てのプロセスをいうことを意図されるが、全ての障害の症状の全除去を必ずしも指すわけではない。本明細書に使用される場合、「処置」とは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患または状態を処置するための本発明の化合物の投与を含み、そして、(a)疾患の進行をさらに阻害すること、すなわち、その発生を停止すること、および(b)疾患を緩和すること、すなわち、疾患または障害の退行を引き起こすこと、あるいはその症状または合併症を軽減することを含む。投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応)を与えるように調整されてもよい。例えば、単一のボーラスが投与されてもよく、複数回に分けた用量が時間とともに投与されてもよいか、またはその用量は、治療状況の緊急性に示されるように、比例的に減少もしくは増加させてもよい。
【0118】
用語「予防すること」(または「予防する」もしくは「予防」)とは、症状、障害、状態、または疾患の出現または発生を防止、抑制、または阻害することを意味する。急性事象および慢性状態は、処置および予防され得る。急性事象において、本発明の抗体は、症状、障害、状態、または疾患の開始時に投与され、急性事象が終了した場合に停止する。対照的に、慢性症状、障害、状態、または疾患は、より長い期間のフレームにわたって処置される。
【0119】
「障害」は、本発明に従う処置によって利点がある任意の状態である。用語「障害」、「状態」および「疾患」は、本明細書において交換可能に使用され、限定されないが、慢性疾患の貧血(限定されないが、感染、炎症、および/または癌に起因する貧血を含む)を含む、限定されないが、貧血を含む、慢性および急性の成熟ヘプシジンにより促進される障害を含む。
【0120】
本発明の抗体は、ヒト被験体への投与に適切な医薬組成物に組み込まれてもよい。本発明の抗体は、単回または複数回用量において、単独または薬理学的に許容可能な担体および/もしくは希釈剤と組み合わせてヒト被験体に投与されてもよい。このような医薬組成物は、選択された投与様式に適切であるように設計され、薬理学的に許容可能な希釈剤、担体、および/または賦形剤、例えば、分散剤、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤(限定されないが、塩化ナトリウムを含む)、安定剤などが、適切に使用される。前記組成物は、例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,第19版,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA 1995(これは、一般に医師に公知である製剤技術の概要を提供する)に開示される従来の技術に従って設計されることができる。医薬組成物に適切な担体には任意の物質が含まれ、それは、本発明の抗体と合わせられる場合、分子活性を保持し、被験体の免疫系に反応しない。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、i)本発明の抗体、ii)クエン酸緩衝剤、およびiii)塩化ナトリウムを含む。好ましくは、その抗体は約1mg/ml〜約35mg/mlの範囲の濃度で存在し、クエン酸は約5mM〜約20mMの範囲の濃度で存在し、塩化ナトリウムは約100mM〜約300mMの範囲の濃度で存在し、組成物のpHは約5.0〜約7.2の間である。より好ましくは、その抗体は約5mg/ml〜約30mg/mlの範囲の濃度で存在し、クエン酸は約5mM〜約15mMの範囲の濃度で存在し、塩化ナトリウムは約150mM〜約300mMの範囲の濃度で存在し、組成物のpHは約5.5〜約6.5の間である。さらにより好ましくは、その抗体は約5mg/ml〜約25mg/mlの範囲の濃度で存在し、クエン酸は約10mMで存在し、塩化ナトリウムは約200mM〜約300mMの範囲の濃度で存在し、組成物のpHは約5.5〜約6.5の間である。
【0121】
本発明の抗ヘプシジン−25抗体を含む医薬組成物は、標準的な投与技術を用いて、本明細書に開示される病態(例えば、貧血障害)の危険性があるか、またはそれらを示す被験体に投与されてもよい。
【0122】
本明細書に使用される場合、用語「有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに(投薬時に、ならびに投与期間および投与手段についての)必要な量をいう。抗体の有効量は、個体において所望の反応を誘発するために、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに抗体または抗体部分の能力などの要因に従って変化させてもよい。有効量はまた、治療的に有益な効果が、抗体のいかなる毒性または有害作用をも上回るものである。
【0123】
有効量は少なくとも最低限の量であるが、被験体に治療効果を与えるのに必要である活性剤の毒性の量より少ない。別の言い方をすれば、本発明の抗体の有効量または治療的に有効な量は、哺乳動物、特にヒトにおいて、(i)血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させるか、あるいは(ii)成熟ヘプシジンの存在が、望まれない病理学的効果を引き起こすか、またはそれらの原因となる障害を処置するか、あるいは(iii)成熟ヘプシジンレベルまたは成熟ヘプシジン生物活性の減少が、限定されないが、感染、炎症、および/または癌に起因する貧血を含む、限定されないが、慢性疾患の貧血を含む、限定されないが、貧血を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおいて有益な治療効果を生じる量である。本発明の抗体の有効量は、単回用量または複数回用量で投与されてもよい。さらに、本発明の抗体の有効量は、複数回用量の量で投与されてもよく、その量は、複数回投与されない場合の有効量より少ない。
【0124】
医薬分野において周知のように、いずれかの被験体についての投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康、ならびに同時に投与される他の薬物を含む、多くの要因に依存する。用量はさらに、疾患の種類および重症度に依存して変化させてもよい。通常の用量は、例えば、約1mg〜約200mg、好ましくは約2mg〜約200mg、より好ましくは約5mg〜約200mg、さらにより好ましくは約5mg〜約50mg、さらにより好ましくは約5mg〜約25mg、さらにより好ましくは約5mg〜約20mg、さらにより好ましくは約5mg〜約15mgの範囲であってよい。しかしながら、この例示的な範囲より少ないか、またはそれよりも多い用量が、特に前述の要因を検討する場合に想定される。1日の非経口投与計画は約10μg/kg〜約20mg/kg、好ましくは約25μg/kg〜約20mg/kg、より好ましくは約50μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約100μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約200μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約300μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約400μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約500μg/kg〜約20mg/kg、約600μg/kg〜約20mg/kg、約700μg/kg〜約20mg/kg、約800μg/kg〜約20mg/kg、約900μg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約1mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは、約2mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約3mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約4mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約5mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約6mg/kg〜約20mg/kg、さらにより好ましくは約7mg/kg〜約20mg/kg、およびさらにより好ましくは約8mg/kg〜約20mg/kgであってもよい。進行は定期的な評価によってモニタリングされてもよく、その用量を適宜調整してもよい。
【0125】
抗体のこれらの提示された量は大いに治療の裁量による。適切な用量および計画を選択するのに重要な要因は得られる結果である。この文脈において考慮するための要因としては、処置される特定の障害、個々の患者の臨床状態、障害の原因、抗体の送達部位、抗体の特定の種類、投与方法、投与計画、および医師に公知の他の要因が挙げられる。
【0126】
本発明の抗体の投与経路は、経口、非経口、吸入による、または局所的であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は、非経口投与に適切な医薬組成物に組み込まれてもよい。本明細書に使用される場合、用語、非経口は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、または腹腔内投与を含む。静脈内または腹腔内または皮下注射による非経口送達が好ましい。皮下注射が最も好ましい。このような注射のための適切なビヒクルは当該分野において周知である。
【0127】
医薬組成物は、典型的に、製造および貯蔵条件下で、例えば、密閉されたバイアル、シリンジまたは他の送達装置(例えば、ペン(pen))を含む、与えられる容器において無菌または安定でなければならない。従って、医薬組成物は、製剤の作製後、濾過滅菌される必要があるか、あるいは、微生物学的に受容可能にされる必要がある。
【0128】
以下の実施例は例示の目的のみのために提供され、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0129】
(実施例1:ヒトヘプシジン−25の産生)
ヒトヘプシジン−25は、市販の供給源(例えば、Peptide International(ケンタッキー州、ルイスビル)から得ることができるか、あるいは当該分野において公知の様々な合成技術または組換え技術によって産生され得る。あるいは、ヒトヘプシジン−25配列の25個のアミノ酸を含み、配列番号95に示されるアミノ酸配列を有する融合タンパク質を、E.coliにおいて発現させる。封入体を、37℃にて、1mM IPTGを用いて、3〜6時間の誘導後にヒトヘプシジン融合タンパク質を発現する3リットルのE.coliから単離する。この封入体を緩衝液A(50mMのトリスおよび8Mの尿素(pH8.0))に溶解する。上清をIMACカラム(20mL樹脂)に通した。このカラムを、吸光度が基準値に戻り、結合ポリペプチドを、緩衝液A中の0.5Mのイミダゾールによって、そのカラムからバッチ溶出するまで緩衝液Aで洗浄する。ヒトヘプシジン−25融合タンパク質をプールし、50mMのDTTを用いて還元する。この融合タンパク質を次いで、プールした物質を、2Mの尿素、3mMのシステイン、50mMのトリス(pH8.0)に希釈することでリフォールディングして、50μg/mL未満の最終タンパク質濃度とした。この物質を室温で攪拌し、48時間、空気によって酸化する。酸化させたポリペプチドを、5mL/分の流速で、IMACカラム(20mL)に通し、ヒトヘプシジン−25融合タンパク質を、緩衝液A中の0.5Mのイミダゾールによってそのカラムからバッチ溶出する。ヒトヘプシジン−25融合タンパク質を含むプールした画分を、濃縮し、流速3mL/分にて、50mMのトリス、4Mの尿素(pH8.0)を用いて平衡化したSuperdex 75(GE Healthcare、XK26/60)サイジングカラムに通す。単量体の融合タンパク質をプールし、次いで50mMのトリス、2Mの尿素、5mMのCaCl(pH8.0)で希釈し、次いで、エンテロキナーゼで切断し、配列番号1のヒトヘプシジン−25を産生する。切断されていないヒトヘプシジン−25融合タンパク質を、(上記に概説したように)不活性のIMACクロマトグラフィーによって除去する。IMACカラムからの流体を、次いで、流速4.0mL/分にて、C−18逆相カラムに通す。吸光度が基準値に戻り、結合ポリペプチドを、流速0.5%/分にて、0.1%のTFAを用いて、20%〜40%のACNの線形勾配でこのカラムから溶出するまで、このカラムを水中の0.1%のTFAを用いて洗浄する。ヒトヘプシジン−25ポリペプチドを含む画分をプールし、N末端アミノ酸シークエンシングおよびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)によって解析する。ラット、マウス、およびカニクイザルのヘプシジン−25、ならびに、ヘプシジン−22およびヘプシジン−20を含む様々なN末端切断型のヒトヘプシジン−25をコードするポリペプチドを商業的に得た(例えば、Peptide International)。
【0130】
(実施例2:抗ヘプシジン−25のFabおよびMabの親和結合の測定)
表面プラズモン共鳴バイオセンサー(例えば、BIAcore(登録商標)T100)を、本明細書に開示する抗体の結合反応速度および結合親和性を測定するために用いてもよい。このBIAcore(登録商標)システムは、SPRの最適な性質を利用して、デキストランのバイオセンサーマトリックス内の相互作用分子のタンパク質濃度の変化を検出する。指定のない限り、全ての試薬および材料はBIAcore(登録商標)AB(スウェーデン国、Upsala)から購入する。全ての測定は25℃で行う。試料を、HBS−EP緩衝液(150mMの塩化ナトリウム、3mMのEDTA、0.05%(w/v)の界面活性剤P−20、および10mMのHEPES、pH7.4)に溶解する。ヒトκを有するFabを捕捉するために、ヤギ抗ヒトκを、アミン結合キットを用いて、5000〜10000の反応単位(Rus)のレベルにて、CM5センサーチップのフローセル1〜4に固定する。マウスIgG1を有するMabを捕捉するために、ヤギ抗マウスFcγを、アミン結合キットを用いて、5000〜10000のRusのレベルにて、CM5センサーチップのフローセル1〜4に固定する。ヒトIgG4を有する抗体を捕捉するために、タンパク質Aを、アミン結合キットを用いて、400〜700Rusのレベルにて、CM4センサーチップのフローセル1〜4に固定する。E.coliのペリプラスマから調製したFab、および、哺乳動物の細胞培養液から調製したMabを、複数の解析サイクルを用いて評価する。各サイクルは、以下の工程:200〜1000Rusの捕捉を目的とする、約10μL/分でのFabまたはMabの0.3〜2分の注入、上述の実施例1に記載するように、得られたヒトヘプシジン−25(600nM〜0.1nM)の様々な濃度の50μL/分での2分の注入、続いて、2〜10分間の解離、30μLの10mMの塩酸グリシン、pH 1.5を用いた再生からなる。この測定結果を25℃で得て、各サイクルについての会合および解離速度を、BIAevaluationソフトウェアにおける「質量移動で1:1(1:1 with mass transfer)」結合モデルを用いて評価する。
【0131】
マウスFab JXB7および特定のヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンFabのヒトヘプシジン−25結合パラメータを表5に示す。表3に記載された他のヒトの遺伝子操作されたFabのヒトヘプシジン−25の結合親和性(K)を、各々が約7.68×10−4−1〜約2.22×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25からのKoff速度を有する状態で、約214pM〜約54pMの間で評価する。これにより、マウスFab JXB7のKより最大52倍低いヒトヘプシジン−25に対するKを有するヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンFabを確認した。表5に示されるヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンFabは、ヒト生殖細胞系列の軽鎖および重鎖のフレームワークO2およびVH1−69をそれぞれ含む。
【0132】
【表5】

【0133】
マウスMab JXB7および特定のヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンMabのヒトヘプシジン−25の結合パラメータを表6に示す。これにより、マウスMab JXB7のKより最大約33倍低いヒトヘプシジン−25に対する結合親和性(K)を有するヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンMabを確認した。Mab JXB7および31B2に対する重鎖定常領域はマウスIgG1である。表6中の他のMabに対する重鎖定常領域はヒトIgG4(配列番号94)であった。
【0134】
【表6】

【0135】
様々なヒトの遺伝子操作された抗ヘプシジンMabのカニクイザルヘプシジン−25およびマウスヘプシジン−25の結合パラメータを表7および表8にそれぞれ示す。ラットヘプシジン−25への結合は、Mab Hu22、3.23、および3.8に対しては検出できなかった。一般に、Mab Hu22および3.23は、ヒトヘプシジン−25に対するものと匹敵する成熟カニクイザルヘプシジンに対するKを有することを示した。しかしながら、Mab3.8は、ヒトヘプシジン−25に対するKよりも、10倍以上低いカニクイザルヘプシジン−25に対するKを有することを示した。他方で、Mab Hu22、3.23、および3.8は、マウスヘプシジン−25に対してよりも、ヒトヘプシジン−25に対して、より低いKを有することを示した。
【0136】
【表7】

【0137】
【表8】

【0138】
(実施例3:ヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化および分解に関するセルベースアッセイ)
ヒトヘプシジンに対するMabの中和活性を測定するためにインビトロセルベースアッセイを利用することができる。本発明の抗体の中和化活性を測定するのに有用なインビトロセルベースアッセイの1つは、ヘプシジンにより誘発されるその受容体であるフェロポーチンの内在化および分解に基づくものである。つまり、フェロポーチン(FPN)の誘発発現を可能にするためにHEK293安定細胞株を調製する。追跡目的のため緑色蛍光タンパク質(GFP)でFPNのC末端を結合する。ウイルス転写活性化因子を用いない市販のテトラサイクリン調節発現システムであるT−RExシステム(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてFPN−GFP分子の誘発発現を制御する。FPN−GFPコード配列を、誘導プロモーターおよびゼオシン耐性マーカーを含むpCNDS4/TOベクターにクローン化する。得られたコンストラクトをドキシサイクリン誘導発現に必要な調節タンパク質を発現するT−REx−293細胞へトランスフェクトする。ゼオシン耐性クローンのFPN−GFP誘導発現について検査する。細胞培養条件は、T−RExシステムに関するメーカーのユーザマニュアルに基本的に記載される。つまり、DMEM、10%透析FBS、20μMのFAC(クエン酸第二鉄アンモニウム)、プラス5μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン内で細胞を増殖させる。セレクションを100μg/mLのゼオシンおよび5μg/mLのブラストサイジンで維持する。ポリDリシンでコーティングされた96ウェルブラック/クリアプレート上に細胞をプレートする。1ウェルあたりの蛍光総量を読み取るために高精度の蛍光プレートリーダーを利用する。
【0139】
基本的には、アッセイは以下のように行う。以下のトリプシン処理において、96ウェルアッセイプレートにFPN−GFP/TREx293安定細胞株を用いて9,000セル/ウェルの状態で播種する。1ウェルあたりの播種量は80μlである。細胞を一晩置く。次の早朝に30ng/mLのドキシサイクリン(doxycyline)を9μl、各プレートに加えてFPN−GFP発現を誘導する。この誘導を8時間起こさせる。誘導後、培地を吸引し、培地とウェルを120μL/ウェルPBSで十分に洗浄する。余分な培地がある限り、各ウェルから全ての液体を除去して、FPN−GFP発現を誘導することが重要である。
【0140】
洗浄後、迅速にアッセイプレートに追加するために96ウェルフォーマットにおいてセットするのが好ましい処置である。1ウェルあたりの最終アッセイ量は45μLである。処置を加えた後すぐに、アッセイプレートを高精度の蛍光プレートリーダー(チャンネル1で550ボルトに設定)を用いて読み取る。この読み取りは、0時間の読み取りであり、1ウェルあたりの全FLUと相関する1ウェルあたりの細胞数を標準化するために行う。ヒトヘプシジン−25は、0.5μMにてフェロポーチンの最大の内在化および分解を誘発した。ヒトペプシジン−25についてのIC50は、約8nMである。抗ヘプシジン抗体の中和アッセイのために、ヒトペプシジン−25の濃度を100nMに維持し、抗ヘプシジン抗体を0.5μMから8nMの2倍希釈にて使用する。プレートを24時間インキュベートし、その後再度読み取り、そして、0時間における1ウェルあたりFLUの合計で割られた、24時間における1ウェルあたりの蛍光ユニット(FLU)の合計の比として、データを生成する。
【0141】
このインビトロアッセイにおいて、表9に示すようにIC50を測定しながら、ヒトヘプシジン−25生物活性を種々の抗ヘプシジンMabで中和した。
【0142】
【表9】

【0143】
(実施例4:抗ヘプシジンモノクローム抗体の投与によるインターロイキン−6で皮下処置されたカニクイザルにおける血清鉄レベルの上昇)
カニクイザルにおけるIL−6に誘発された血清鉄の異常調節に関する抗ヘプシジン抗体の活性を、以下に示すように測定することができる。
【0144】
つまり、抗ヘプシジン抗体を、静脈内ボーラス(i.v. bolus.)として1および10mg/kgにてオスのカニクイザルに投与する。抗体投与の約1時間後、動物は、5μg/kgでヒトIL−6の1回の皮下処置を受ける。血液試料を、−1時間(抗体投与前)、0時間(IL−6投与直前)、および、1L−6処置の1、3、6、12、24、48、96、168、336、504、および、672時間にて収集する。好ましくは、各処置群は少なくとも3匹の動物から構成される。血清鉄レベルは、血清鉄レベルを測定する方法として医療界で許容可能であると一般的に考えられる当該分野において公知の任意の方法により測定し得る。
【0145】
【表10】

*IL−6の全用量は、0.1mg/mLの組換えヒト血清アルブミンを含む1×PBSから構成されるビヒクルで投与される。
S.C. 皮下注射(任意の1箇所の注射部位)
I.V. 静脈注射(伏在静脈を介して注射される)
【0146】
PBSコントロール群と比較して、ヒトIL−6処置は、IL−6処置の12時間後に底に達する、血清鉄レベルの一時的な減少をもたらす。ヒトIL−6投与の約1時間前における10mg/kgのHu22および3.23の静脈内投与は、IL−6処置に起因して血清鉄レベルの降下を防ぎ、IL−6処置の3から6時間後において、それぞれ約52%および108%の血清鉄の増加となる。ピークレベルに達した後、血清鉄濃度は、その後以下の2つ群に減少し、24時間にて他の群と似たレベルに達する。Hu22(p<0.01、3時間および6時間)と3.23(p<0.01、3時間、6時間、および、12時間)の両方は、10mg/kgにおいて、PBS前処置を行ったIL−6群と比べて、血清鉄濃度の統計的に有意な増加をもたらす。一方で、Hu22および3.23ともに、1mg/kgでは、コントロールと比べて血清鉄レベルが統計的に有意な違いを示さない。したがって、これらの結果は、本発明の抗体が成熟ヘプシジン生物活性による貧血を処置するのに有用であることを示す。
【0147】
(実施例5:MALDI−TOFを用いる抗ヘプシジン抗体の選択性の決定)
バイオマーカーの臨床的な慣例の診断は、主に、免疫学的定量的技術(例えば、ELISA)に基づいている。これらの方法は、多くの場合、小さな抗原または抗原イソフォームに対して利用できない(Sparbier,K.,International Meeting of the Association of Biomolecular Resource Facilities,Salt Lake City,UT,Poster V28−S,(2008)、および、Guterrez,J.A.ら(2005))。
【0148】
抗ヒトヘプシジンMab31B2を、メーカーのプロトコルに従って、CNBr活性化セファロース6MBリシン(GE healthcare,Piscataway,NJ)と結合する。つまり、セファロース樹脂を1mMのHClで3回洗浄し、抗体をカップリング緩衝液(100mMのNaHC03、0.5MのNaCl(pH8.3))内に希釈した。約1.7mgの抗体を4℃で一晩、1mgごとの樹脂と結合するのに用いた。余分な抗体を0.1Mの酢酸緩衝液(pH.4)で洗浄除去した。約100mlのヒト血清試料を4℃において0.8mlの当該セファロース−31B2樹脂でインキュベートした。一晩のインキュベーション後、樹脂/血清ミクスチャーをカラム内に詰めて、10〜20カラム量の10mMのリン酸ナトリウム、0.5MのNaCl(pH7.4)で洗浄した。カラムを、5〜10カラム量のNaClを含まない10mMリン酸ナトリウムpH7.4で洗浄した。最後に、カラムを0.2%TFAで溶出した。溶出した画分の分子量をVoyager−DE STR装置(Applied Biosystems,Foster City,CA)上でリニアモードにて分析した。
【0149】
ヒトヘプシジン−25よりも小さい分子量について、ペプチドマトリックスを用いてマススペクトルを生成した。ヒトヘプシジン−25(2790ダルトン)に対応する主要ピークを同定した。種々の切断型のヘプシジン、すなわち、ヘプシジン−24(2674ダルトン)、ヘプシジン−22(2436ダルトン)、および、ヘプシジン−20(2192ダルトン)に対応する少数の主要ピークもまた検出可能である。
【0150】
ヒトヘプシジン−25よりも大きい分子量について、タンパク質マトリックスを用いてマススペクトルを生成した。ヒトヘプシジン−25(25aa,2790ダルトン)に対応する主要ピークを依然として同定したが、プレプロ−ヘプシジン(84aa,9400ダルトン)、または、プロ−ヘプシジン(60aa,6929ダルトン)に対応するピークは何も検出できなかった。
【0151】
したがって、31B2Mabおよびそれらのヒトの遺伝子操作型を用いる免疫学的検定法は、ヒト血清中に存在する公知のプレカーサおよび/またはN末端切断型のヘプシジンと比較して、ヒト血清中の活発で最も生理学的に関連する型のヘプシジンである、ヒトヘプシジン−25について選択的である。
【0152】
(実施例6:CHO細胞内の発現に関する抗ヘプシジン−25抗体をコードするmRNAの暗号スプライシング(cryptic splicing)の相関)
組換え発現ベクターの調製、宿主細胞のトランスフェクト、形質転換細胞の選択、本発明の抗体を発現可能な宿主細胞株の単離、宿主細胞の培養、培地から発現された抗体を回収するために、標準的な分子生物学的手法を利用することができる。驚くべきことに、組換えグルタミン合成酵素(GS)発現システム(Lonza Biologics,Inc.,Slough,UK)を用いて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞懸濁培地によりMab3.12および3.23を産生中に、著しく高いレベルで抗体タンパク質の凝集を観察した(サイズ排除クロマトグラフィーよりそれぞれ測定されるように、約15%および約30%)。しかしながら、ヒト由来HEK−293細胞中で一時的には発現された2つのMabの場合は、高いレベルの凝集を観察しなかった。2つのCHO細胞株それぞれからのmRNAの検査により、Mab3.12および3.23の抗体タンパク質をコードするヌクレオチド配列が暗号スプライシング事象の影響を受けやすいことを示唆する、予想外のサイズの転写物の存在が明らかにされた。加えて、凝集されたタンパク質試料の検査により、軽鎖タンパク質において切断が存在することが明らかにされた。Mab3.12および3.23を発現するCHO細胞から単離されたmRNAから調製されたcDNAのシークエンシングにより、軽鎖遺伝子に暗号イントロンが存在することが確認された。スプライス供与体は、LCCDR1のアミノ酸残基R/VS(配列番号43のアミノ酸5〜7、および、「/」はフレーム中のスプライス部位を示す)をコードするコドン内に含まれた。さらに、推定ブランチポイントを、Mab3.12および3.23のLCDR2のアミノ酸残基STLおよびSPLのそれぞれをコードするコドン内に推定ポリピリミジンストレッチを、FRL2(配列番号40)のアミノ酸残基LIをコードするコドンにて、発見した。そして最後に、受容体部位を、Mab3.12および3.23の両方のLCDR3のアミノ酸残基C/Q/Q(配列番号61のアミノ酸1〜3、および、「/」は推定スプライス部位を示す)をコードするコドンにて、同定した。
【0153】
Mab3.12および3.23の軽鎖をコードする元のDNA配列(それぞれ配列番号153および155)は、スプライス供与体、ブランチポイント、受容体、および、暗号イントロンに対するポリピリミジン追跡を付与する配列を除くために、その後修飾した。より具体的には、供与体部位をCGCGTAAGTからAGAGTCTCC(配列番号45)に変更した。ブランチポイントをCTGATCからCTCATG(配列番号162)に変更した。ポリピリミジン追跡を3.12および3.23においてTCCACCCTGからAGCACACTG(配列番号77)に、および、TCCCCCCTGからAGCCCACTG(配列番号78)にそれぞれ変更した。受容体をTGTCAGCAGTGGからTGCCAACAATGG(配列番号100)に変更した。
【0154】
したがって、Mab3.12および3.23の軽鎖において生じる発現は、配列番号12および13のそれぞれ示すような修飾されたDNA配列を含む組換え発現ベクターにより生じさせられた。CHO細胞の修飾された核酸配列の発現中に生じた凝集抗体の量を、3.12および3.23の両方のMabについて1%以下に決定した。
【0155】
本発明における種々の他の抗体の軽鎖をコードするDNA配列に対する修飾は、スプライス供与体、ポリピリミジン追跡、および、スプライス受容体が抗体に対する特異性を与えるLCDRをコードするコドンから由来するので、同様に大きな利点を期待できる。FRL2およびLLIY配列におけるブランチポイントは、軽鎖フレームワーク中に高度に保存される。さらに、同定されたスプライス受容体領域にわたる核酸配列をコードするQQモチーフは、本発明における多くの抗ヘプシジンmAbのLCDR3内に保存される。一般的に、多くの軽鎖生殖細胞系列配列は、潜在的な暗号イントロンの受容体として役立つことができるこれらQコドン(CAG)の1つまたは両方を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃にて表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される場合、約800pMまたはそれ以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合する抗体。
【請求項2】
25℃にてSPRにより測定される場合、約8.5×10−3−1〜約1.8×10−4−1の間のヒトヘプシジン−25に対する解離速度(koff)を有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
25℃にてSPRにより測定される場合、約400pM〜約30pMの間のヒトヘプシジン−25に対するKを有する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
25℃にてSPRにより測定される場合、約200pM〜約30pMの間のヒトヘプシジン−25に対するKを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
ヘプシジン−25生物活性のインビトロアッセイにおいて約100nM〜約50nMの間のIC50を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
ヘプシジン−25生物活性のインビボアッセイにおいて約100nM〜約25nMの間のIC50を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記アッセイは、ヘプシジンにより誘発されるフェロポーチンの内在化および/または分解を測定する、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
前記アッセイは、IL−6により誘発される血清鉄レベルの減少を測定する、請求項6に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体は、ヒトの遺伝子操作された抗体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
ヒトIgG、IgG、IgGおよびそれらの変異体の重鎖定常領域からなる群より選択される重鎖定常領域を含み、前記変異体は、約15未満のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号75に示されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号62に示されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号52に示されるアミノ酸配列を有するLCDR1を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
(i)配列番号52、60、62、65、71、および75にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、
(ii)配列番号42、76、62、79、87、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、
(iii)配列番号41、53、31、63、84、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、
(iv)配列番号43、30、31、32、44、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、
(v)配列番号43、53、61、63、85、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに
(vi)配列番号43、57、61、63、84、および46にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3
からなる群より選択される6つのCDRを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、ここで、(i)前記HCVRおよび前記LCVRは、それぞれ配列番号148および126に示されるアミノ酸配列を有するか、(ii)前記HCVRおよび前記LCVRは、それぞれ配列番号128および127に示されるアミノ酸配列を有するか(iii)前記HCVRおよび前記LCVRは、それぞれ配列番号150および124に示されるアミノ酸配列を有するか、または(iv)前記HCVRおよび前記LCVRは、それぞれ配列番号151および125に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
(i)配列番号6および14にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(ii)配列番号7および15にそれぞれ示されるアミノ酸配列、(iii)配列番号9および17にそれぞれ示されるアミノ酸配列、または(iv)配列番号8および16にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドを含み、ここで、前記重鎖ポリペプチドの各々は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有し、前記軽鎖ポリペプチドの各々は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
約200pM以下のKでヒトヘプシジン−25に選択的に結合し、前記ヒトヘプシジン−25と請求項17に記載の抗体との結合を競合する抗体。
【請求項19】
前記軽鎖可変領域のフレームワークおよび前記重鎖可変領域のフレームワークは、完全にヒトである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項20】
前記軽鎖可変領域のフレームワークは、完全なヒト軽鎖可変領域のフレームワークO2と比較して、5未満のアミノ酸の置換、付加、および欠失を有する、請求項1〜19に記載の抗体。
【請求項21】
前記重鎖可変領域のフレームワークは、完全なヒト重鎖可変領域のフレームワークVH1−69と比較して、7未満のアミノ酸の置換、付加、および欠失を有する、請求項1〜19に記載の抗体。
【請求項22】
前記軽鎖可変領域のフレームワークは、O2、O18、またはL12から選択される、請求項1〜19に記載の抗体。
【請求項23】
前記重鎖可変領域のフレームワーク領域は、VH1−69、VH1−18、またはVH1−46から選択される、請求項1〜19に記載の抗体。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項25】
配列番号14、15、16、または17に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列番号12または13に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組換え発現ベクター。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドおよび/またはベクターによって形質転換されている宿主細胞。
【請求項29】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、またはSP2/0細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
治療に使用するための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項31】
貧血の処置のための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項32】
医薬の調製に使用するための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項33】
被験体における貧血の処置および/または予防のための医薬の調製のための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項34】
被験体における血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、またはヘマトクリットを増加させるのに使用するための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項35】
被験体における血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、またはヘマトクリットを増加させるための医薬の調製のための請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項36】
血清鉄レベル、網状赤血球数、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットを増加させる方法であって、有効量の請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体を被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項37】
有効量の請求項1〜23のいずれか1項に記載の抗体を被験体に投与する工程を含む、被験体における貧血を処置するための方法。
【請求項38】
i)配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、およびii)配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む、有効量のヒトの遺伝子操作された抗体を被験体に投与する工程を含む、被験体における貧血を処置する方法。
【請求項39】
抗体を産生するためのプロセスであって、(i)前記抗体の発現を可能にするのに適切な条件下で、請求項28または29に記載の宿主細胞を培養する工程、および(ii)前記発現された抗体を回収する工程を含む、抗体を産生するためのプロセス。
【請求項40】
請求項39に記載のプロセスにより得られる抗体。
【請求項41】
請求項1〜23または40のいずれか1項に記載の抗体、および薬理学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項42】
a)ヒト成熟ヘプシジンについてアッセイされる試料を取得する工程、b)抗体結合および任意のヒト成熟ヘプシジンの存在を可能にするための適切な条件下で、前記試料と、請求項1〜22のいずれか1項に記載の抗体とを接触させて、前記抗体との複合体を形成させる工程、ならびにc)前記複合体の存在または非存在を検出する工程、および/または免疫検出法により前記試料中の前記複合体の量を測定する工程を含む、免疫学的検定法。
【請求項43】
前記免疫検出法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、免疫組織化学(IHC)法、免疫蛍光検査(IF)法、凝集法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、または表面プラズモン抵抗検出法である、請求項42に記載の免疫学的検定法。
【請求項44】
請求項1〜23または40のいずれか1項に記載の抗体を含む、免疫学的検定法を実施するためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502482(P2011−502482A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532186(P2010−532186)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/081493
【国際公開番号】WO2009/058797
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】