説明

抗マラリア薬有効成分としてのグリオトキシンの新規用途、及びグリオトキシンを有効成分とする抗マラリア薬。

【課題】 新規な抗マラリア薬として有効成分を見出し、その作用機序を解明すること。
【解決手段】 真菌であるアスペルギルス菌が産生する抗生物質であるグリオトキシンの抗マラリア薬有効成分としての使用を提案する。また、グリオトキシンを有効成分とする抗マラリア薬を提供する。具体的には、このグリオトキシンに、マラリア原虫のプロテアソーム活性を阻害することによって、抗マラリア効果を発揮させる。さらに、例えば、前記グリオトキシンを、クロロキン感受性又は耐性のマラリア原虫に対する抗マラリア有効成分として作用させる。グリオトキシンは、細胞毒性がない濃度を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗マラリア薬有効成分に関する。より詳しくは、抗マラリア薬有効成分としてのグリオトキシンの使用、及びグリオトキシンを有効成分とする抗マラリア薬に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、Anopheles属の蚊によって伝播されるマラリア原虫が赤血球に寄生して発症する感染症である。1999年のWHO(The World Health Report)の推計では、全世界で1年間に3〜5億人の罹患者、150〜270万人の死者があると報告されている。
【0003】
現在、マラリアの流行地域は、世界90カ国以上に上り、世界人口の40%が感染の危機にさらされている。最大流行地域はサハラ砂漠以南であるが、アフリカ以外ではアジア(特に、南アジアや東南アジア)、オセアニア(特にパプアニューギニアやソロモン)、南米(特にアマゾン川流域)などに多く発生している。
【0004】
ヒトに感染するマラリア原虫は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)の4種類である。中でも、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされる熱帯熱マラリアは、短期間で脳症、腎症、肺水腫/ARDS、出血傾向、重症貧血、代謝性アシドーシス、低血糖などを生じて重症化し易く、死に至ることもあるため、その制圧対策が急がれている。
【0005】
マラリアを予防するためのワクチン開発が急がれており、米国をはじめ多数の国々で研究開発が進められているが、現在までのところ真に有効なワクチンは確立されていない。一方、マラリアの治療薬としてクロロキン、メフロキン、プリマキン、ハロファントリンなどが使われてきたが、これらの薬剤に対する耐性熱帯熱マラリア原虫が出現し、マラリアの治療に大きな障害になっている。そのため副作用が少なく、薬剤耐性マラリアにも効果のある新薬の開発が求められている。
【0006】
今日最も有力視されているマラリア治療薬は、アルテミシニンという有効成分をもつ中国漢方の植物から作られる薬剤である。アルテミシニンからは種々の誘導体が合成されており、中でもアルテメーサー、アルテエーサー、アルテスニック酸、アルテレニック酸などは有用である。そのため、アルテミシニンとその誘導体は薬剤耐性マラリアに対する有効な手段とされており、現在アフリカやアジアの多くの国々で既に利用されている。
【0007】
また、特許文献1には、ボレリジンを有効成分するマラリア原虫類の感染予防・治療剤、特許文献2には、ポリエーテル系抗生物質を有効成分とするマラリア原虫類の感染予防・治療剤、特許文献3には、キジマイシンを有効成分とするマラリア疾患の予防及び治療剤、特許文献4には、スルファモノメトキシンを有効成分とする抗マラリア剤、特許文献5には、テトラピロール誘導体等を有効成分とする抗マラリア剤、特許文献6には、DHAエチルエステルを有効成分として含有するマラリア治療薬が開示されている。その他、特許文献7〜12にも抗マラリア作用のある物質が開示されている。
【0008】
ここで、日本ではコウジカビとも呼ばれており、昔から清酒、焼酎、味噌、しょう油、かつお節などの製造に使われてきた真菌であるアスペルギルス菌が産生する抗生物質であるグリオトキシン(エピポリチオジオキシピペラジン族に属する)が知られており、その生理作用や薬理作用が解明されつつある。
【0009】
最近の研究では、このグリオトキシンにタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームの活性阻害作用があることが報告され(非特許文献1参照)、さらにはこのプロテアソーム活性阻害作用が、マラリア原虫と同属であるトキソプラズマ原虫の成長抑制を誘導することも明らかにされた(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−269440号公報。
【特許文献2】特開2003−335667号公報。
【特許文献3】特開2001−278787号公報。
【特許文献4】特開平08−059471号公報。
【特許文献5】特開平06−157308号公報。
【特許文献6】特開平05−148140号公報。
【特許文献7】特開平05−097665号公報。
【特許文献8】特開平08−231401号公報。
【特許文献9】特開平11−228446号公報。
【特許文献10】特開2000−191531号公報。
【特許文献11】特開2003−335774号公報。
【特許文献12】特開2004−026689号公報。
【非特許文献1】Kroll M, Arenzana-SeisdedosF, bachelerie F, Thomas D, friguetB, Conconi M.(1999): The secondary fungal metabolite gliotoxin targets proteolyticactivities of the proteasome. Chemistry & Biology. 6.689-698。
【非特許文献2】Andre Paugman, Claudine Creuzet, Jean Dupouy-Camet, Marie Poule Roisin.(2002):In vitro effects of gliotoxin, a natural proteasome inhibitor,on the infectivity and proteolytic activity of Toxoplasma gondii. Parasitology research. 88.785-787。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、グリオトキシンの抗マラリア薬として有効成分としての効果を、新規に確認するとともに、その作用機序を解明することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、好中球の活性酸素生成を著しく阻害することなどが知られるグリオトキシン(次の「化学式1」を参照)に着目した。そして、その抗マラリア効果を詳細な検証試験によって確認することで、新たなマラリア治療薬開発のへの可能性を鋭意追究したところ、当該グリオトキシンの抗マラリア効果を確認し、さらには、抗マラリアの作用機序を推定することができたので、本発明を完成した。
【0012】
【化1】

【0013】
そこで、本発明は、グリオトキシンの抗マラリア薬有効成分としての使用、グリオトキシンを有効成分とする抗マラリア薬を提供する。また、本発明では、このグリオトキシンに、マラリア原虫のプロテアソーム活性を阻害することによって、抗マラリア効果を発揮させる。さらに、本発明は、例えば、前記グリオトキシンを、クロロキン感受性又は耐性のマラリア原虫に対する抗マラリア有効成分として作用させることができる。なお、上記化学式1に示されたグリオトキシンについて、その誘導体やその塩を抗マラリア目的で使用することは本発明の範囲である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グリオトキシンによって、マラリアを予防又は治療することができる。特に、適正な濃度のグリオトキシンを選択することにより、細胞毒性の心配もなく、マラリアを治療することができる。
【実施例】
【0015】
材料と方法について。
【0016】
(1)マラリア原虫:熱帯熱マラリア原虫は、国立国際医療センター研究所で維持されているクロロキン感受性株FCR-3(FCR-3)、クロロキン耐性株K-1(K-1)を、当研究所より分与を受けて使用した。
【0017】
(2)グリオトキシン:日本肥糧株式会社より供与されたものを使用した。グリオトキシンは、メタノールで2.5Mに調整し、使用まで−80℃で保存した。
【0018】
(3)マラリア原虫培養法。
a)培地。
RPMI 1640(GIBCO Co.)10.4 g とHEPES(同仁化学研究所(株))5.95 gを1 Lビーカーに入れ約 950 ml の蒸留水に溶かし、更に炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株))2.0 g を加えてスターラーで20〜30分攪拌した。5規定の水酸化ナトリウムを加えてpH7.4に調整した後、メスシリンダーを用い全量を1Lに合わせた。穴径が0.2μmのフィルター(Nalge Nunc International Co.)で濾過滅菌し、この培地をRPMI 1640(-)とした。これにA型ヒト血清10% とゲンタマイシン(Gentamicin 10 mg/ml、Sigma Co. 最終濃度25 μg/ml)を加えたものをRPMI 1640(+)とした。なお、正常ヒト血清は健常人ボランティアより採取した。
【0019】
b)血球。
O型の正常ヒト赤血球は、健常人ボランティアより採取した。赤血球はRPMI 1640(-)で3回洗浄(400 g、5分、4 ℃)した後、RPMI 1640(-)で50% 赤血球浮遊液になるよう調整し使用した。
【0020】
c)培養方法。
熱帯熱マラリア原虫の培養は、TragerとJensenの方法を改良して行った(Trager.W,Jense.J.B,(1976):Human malaria parasites in continuous culture. Science. 193.673-675)。培養液RPMI 1640(+)にヘマトクリット値が5%になるように赤血球を添加し、37℃、5%CO2、5%O2のガス条件で培養した。培養液の交換は24時間毎に行い、その際に血液薄層塗抹ギムザ染色標本を作製し、顕微鏡下で10,000個の赤血球を数えた時の感染赤血球数を数え感染率を算出した。
【0021】
d)同調培養法。
同調培養は、Lambros とVanderbergの方法に従った(LambrosC, Vandederberg.J.P.(1979): Synchronization of plasmodium falciparum erythrocyticstage in culture. Journal of Parasitology. 65.418-420)。
【0022】
熱帯熱マラリア原虫感染赤血球培養液を遠心チューブに移し、遠心(400g、5分)を行い、上清を取り除いた。沈殿した赤血球の5倍量の5% D-sorbitol水溶液を入れ15分、室温にて静置した。その後、遠心(400g、5分)し、5% D-sorbitol 水溶液を除き、RPMI 1640(-)で3回洗浄(400g、5分)する。洗浄中に血液薄層塗抹ギムザ染色標本を作製して鏡検し、原虫発育段階が全て輪状体であることを確認した。洗浄後、RPMI1640(+)を加えて培養を行った。
【0023】
e)肝細胞培養法。
正常ヒト肝細胞株 Chang細胞の培養は、DulbeccoModeified Eagle’s Medium (D-MEM Sigma Co.)に、非働化したウシ胎児血清(FBS)を10%添加し、培養ボトル(NUNCLONTM DELTA Surface: Nalge NuncInternational Co.)を用いて37℃、5%CO2のガス条件で培養した。
【0024】
以上の材料や方法に基づいて、以下の検証試験を行なった。
【0025】
<試験1:グリオトキシンの殺マラリア原虫効果の検証試験>
【0026】
熱帯熱マラリア原虫感染赤血球は、感染率が0.1%になるようRPMI 1640(+)で希釈し、24穴平底マイクロプレート(SUMIRON登録商標)の各ウェルへ500μlずつ分注した。-80℃で保存していた2.5MのグリオトキシンをRPMI 1640 (-)で希釈し、最終濃度が0.0、0.156、0.625、1.25、2.5、5.0、10.0μMとなるよう各ウェルへ20μlずつ添加した。その後37℃、5%CO2、5%O2の条件下で培養を行った。このとき対照群としてRPMI 1640(-)を原虫培養液へ添加したものを用意した。24時間ごとに培養液の交換と血液薄層塗抹ギムザ染色標本の作製をし、同様の作業を72時間後まで継続した。作製した標本の「感染率」は、光学顕微鏡下で算出した。
【0027】
グリオトキシンの殺マラリア原虫効果を検討するため、「クロロキン感受性株FCR-3」と「クロロキン耐性株K-1」を用いた。各株の培養液中に様々な濃度に調整したグリオトキシン溶液を添加し、熱帯熱マラリア原虫の発育阻害効果を検証した。
【0028】
図1、図2は、その結果を示す図面代用グラフであり、グリオキシン添加後のマラリア原虫生存曲線を表している。なお、図1、2において、○はグリオキシン無添加の対照群、◇はグリオキシン濃度2.5μM群、□はグリオキシン濃度5.0μM群、△はグリオキシン濃度10.0μM群を示している。結果は平均±SEMで示している。
【0029】
まず、図1に示すように、「クロロキン感受性株FCR-3」に対する殺マラリア原虫効果を検証した結果、グリオトキシン0.156,0.313,0.625,1.25,2.5μM添加群では、対照群とほぼ同様の発育が観察された。培養3日後、対照群の感染率が3.68% であるのに対し5.0μMの添加群では感染率は0.39%であった。10.0μM添加群の感染率は培養1日目には0.11%、2日目には0.01%、3日目には0.0% と時間経過につれて感染率は減少した。なお、0.156,0.313,0.625,1.25 μMの結果は省略した(図1参照)。この時、培養2日目から徐々に原虫は収縮し、培養開始3日目には正常赤血球のみ観察された。
【0030】
次に、図2に示すように、「クロロキン耐性株K-1」に対する殺マラリア原虫効果を検討した結果、グリオトキシン0.156,0.313,0.625,1.25,2.5 μM添加群は対照群と比較し、ほぼ同様の発育が観察された。5.0μMのグリオトキシン添加群では緩やかに感染率を下げ、培養3日後には対照群の感染率が1.47%であるのに対し、感染率は0.08% であった。10.0 μMの添加群では培養開始1日目の感染率は0.04%、2日目には0.0% であった。0.156,0.313,0.625,1.25 μMの結果は省略した(図2)。クロロキン耐性株K-1に対しては培養1日目から原虫は収縮を開始し、培養2日目以降原虫感染赤血球は観察されなかった。
【0031】
<試験2:グリオトキシンによる各発育段階への形態的変化の観察試験>
【0032】
上記した同調培養法を用いて、輪状体と栄養体に揃えた熱帯熱マラリア原虫感染赤血球を準備し、24穴平底マイクロプレートに熱帯熱マラリア原虫感染血球の入った培地を各ウェルに500μlずつ分注した。グリオトキシンの最終濃度が10.0μMとなるようウェルへ20μl添加した。その後37℃、5%CO2、5%O2の条件下で培養を行った。このとき対照群としてRPMI 1640 (-)を原虫培養液へ添加したものを用意した。培養開始24時間後に血液薄層塗抹ギムザ染色標本の作製をし、光学顕微鏡下で、原虫のグリオトキシンによる各発育段階への形態的変化を観察した。
【0033】
本試験2の結果、輪状体期にグリオトキシンを添加した場合コントロール群が分裂体期に移行するまでに原虫は死滅した。形態的特徴として、原虫の残骸が赤血球内に残存しているものには収縮を観察できた。また分裂体期にグリオトキシンを添加したものも原虫は死滅し、形態的特徴は輪状体期にグリオトキシンを添加したのと同様に原虫の残骸は赤血球内に残存し収縮が観察できた。
【0034】
<試験3:グリオトキシンによる50%増殖阻害濃度(IC50値)の検討試験>
【0035】
上記同調培養法を用いて輪状体に揃えた熱帯熱マラリア原虫感染赤血球を準備し、24穴平底マイクロプレート(SUMIRON登録商標)に熱帯熱マラリア原虫感染血球の入った培地を各ウェルに500μlずつ分注した。グリオトキシンを最終濃度が0.0、0.156、0.625、1.25、2.5、5.0、10.0、20.0、40.0 μMとなるよう各ウェルへ20μlずつ添加した。また生育状態を観察するために、グリオトキシン非添加熱帯熱マラリア原虫感染赤血球培養液を500μlずつ分注したものを数ウェル用意した。
【0036】
培養開始後約20時間からモニター用のウェルの血液薄層塗抹ギムザ染色標本を作製し形態を観察し、原虫の多くが分裂体となった時点で培養を止めた。つぎに各濃度のウェルの標本を作製した。光学顕微鏡下にて対照群の分裂体50個を数えた時の赤血球数を基準値とし、各濃度で赤血球の基準内に認められる分裂体を数え生存率(%)を算出した。またプロビット法によりそれぞれの株について50% 増殖阻害濃度(IC50 値)を求め、「クロロキン感受性株FCR-3」と「クロロキン耐性株K-1」を比較検討した。
【0037】
本試験3の結果を図3に示す。クロロキン感受性株FCR‐3とクロロキン耐性株K-1のそれぞれの株におけるIC50値をプロビット法で算出した結果、クロロキン感受性株FCR-3で4.43μM、クロロキン耐性株K-1では3.17μMであった。クロロキン感受性株FCR-3、クロロキン耐性株K-1両者のIC50値に有意差は認められなかった(P>0.05)。
【0038】
<試験4:グリオトキシン添加後の感染赤血球と非感染赤血球内の還元型グルタチオン量の検証>
【0039】
グリオトキシンによる殺マラリア原虫作用機序の一つとしてグリオトキシンによる活性酸素種の影響を検討するために、赤血球内の還元型グルタチオン量を測定した。実験にはクロロキン耐性株K-1を用いた。
【0040】
還元型グルタチオンの測定は、HissinとHilfの方法に従った(Hissin.P.J, Hilf.R.(1976): A fluorometricmethod for determination of oxidized and reduced glutathionein tissues. Analytical Biochemistry. 74.214-226)。
【0041】
感染赤血球と非感染赤血球をそれぞれ2.5、5.0、10.0μMのグリオトキシンで処理し、24時間37℃、5%CO2、5%O2の条件下で培養を行った。前処理したそれぞれの赤血球数はビュルケル・チュルク型血球計算板を用いて細胞数を算出した。その後、赤血球を1.5 mlチューブへ移し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄(400g、5分、4℃)を行った。洗浄後、0.1Mリン酸緩衝液(PB)- 0.005 M EDTAと25%メタクリン酸4:1の混合液に加え、超音波ホモジナイザーを用いて氷上で40秒間、赤血球の破砕処理を行った。破砕処理した赤血球を遠心(21000 g、30分、4℃)した後、上清のみを集めた。上清100μlに対し、0.1MPB-0.005 M EDTA (EDTAバッファー) 900 μlを加え10倍に希釈した。希釈した上清50μlとEDTAバッファー900μlを、24穴平底マイクロプレートに分注し、メタノールで調整した0.1%のο‐フタルアルデヒド(関東化学株式会社)を50μl加え、15分ミキサーを用いて振盪した。96穴丸底ブラックプレートの各ウェルにο-フタルアルデヒドと反応させたサンプルをそれぞれ100μlずつ分注した。還元型グルタチオン値は、マルチウェルプレートリーダー(CytoFluor登録商標、Perspective Biosystem、Framingham、MA.)を用いて360 nmの励起波長および460 nmの蛍光波長にて、1010 個あたりの還元型グルタチオン量を算出した。検量線は、0.0-2.0μg/mlの還元型グルタチオンを用いて作製した。
【0042】
本試験4の結果を図4に示す。この図4には、クロロキン耐性株K-1の培養液中にグリオトキシンを添加したときの感染赤血球内の還元型グルタチオン量が示されている(図4中の黒色棒グラフを参照)。この図4に示すように、対照群の赤血球内還元型グルタチオン量を100.0%とした時、2.5〜20.0 μMの間に有意差は認められなかった(P>0.05)。
【0043】
次に、図4には、非感染赤血球(図4中の白ぬき棒グラフ)の培養液中にグリオトキシンを添加したときの赤血球内還元型グルタチオン量の測定結果が示されている(図4中の白ぬき棒グラフを参照)。その結果、対照群の赤血球内還元型グルタチオン量を100%とした時、5μMでは94.7% に、10.0μMでは108.2%であり対照群と比較して有意差は認められなかった (P>0.05)。
【0044】
<試験5:グリオトキシンによるマラリア原虫のプロテアソーム活性阻害の検討>
【0045】
グリオトキシンは、マラリア原虫と同属のトキソプラズマ原虫に対し、プロテアソーム活性阻害作用のあることが知られている。そこで、マラリア原虫におけるグリオトキシンのプロテアソーム活性阻害の有無について検討した。
【0046】
クロロキン耐性株K-1を用い、グリオトキシン濃度は20.0μMとした。また陽性対照群としてプロテアソーム阻害剤のラクタシスチンを用いた。クロロキン耐性株K-1の培養液中にグリオトキシンを添加し、1,4,8時間後のマラリア原虫のプロテアソーム活性阻害を測定した。
【0047】
1)熱帯熱マラリア原虫粗抽出液の調製。
熱帯熱マラリア原虫浮遊液をシャーレより15ml遠心チューブへ移し、遠心(500 g、10分、4℃)を行った。上清を取り除き、ペレットをボルテックス後、ペレットの10倍量の0.05%サポニン(Sigma Co.)溶液を添加し、30分氷上で静置させた。その後、PBSで4回洗浄(500g、10分、4℃)を行った。ペレットを1.5mlチューブへ移し、さらにPBSで2回洗浄(17,000g、2分、4℃)を行い、ペレットを500μlのPBSに溶かした。ペレットは、超音波を用いて氷上で40秒間、細胞破砕処理を行った。細胞破砕処理後、遠心(18,000g、5分、4℃)を行い、残渣を沈殿させ上清を集めた。
【0048】
2)熱帯熱マラリア原虫のタンパク質濃度の測定。
タンパク質濃度の測定はBradford法 (Protein assay kit, Bio Rad)を用いて行った(Bradford M.(1976): A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Analytical biochemistry. 72.248-254)。
【0049】
このBradford法は、トリフェニルメタン系青色色素のCoomassieBrilliant Blue G - 250がタンパク質と結合することで最大吸収波長が変化し、色調が赤紫色から青色に変色することを利用した定量方法である。原虫粗抽出液は蒸留水にて100倍に希釈を行った。
【0050】
希釈したサンプル2.0mlに対し、タンパク質分析色素溶液(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を500μl添加した。添加後ボルテックスを用いて、液をよく混和させ5分静置した。タンパク質濃度は分光光度計(SHIMADZU)を用いて波長595nmで測定し、検量線は0.0-20.0μg/mlのアルブミンを用いて作製した。
【0051】
3)熱帯熱マラリア原虫のプロテアソーム活性の測定。
熱帯熱マラリア原虫のプロテアソーム活性の測定は、Gonzalezの報告に従い行った(Jorge Gonzalez, F.Juarez Ramalha-Pinto, Ute Frevert, Jorge Ghiso Stephen Tomlinson, Julio Scharfstein, E.J.Corey, Victor Nussenzweig.(1996): ProteasomeActivity Is Required for the Stage-specific Trans-formation of a Protozoan Parasite.Journal of experimental medicine.184.1909-1918)。
【0052】
この測定原理は、プロテアソーム基質succinyl-leucyl-leucyl-valyl-tyrosyl-4-Methylcoumarinyl-7-Amideをサンプル中のプロテアソームが切断することにより、フルオロフォアAMCが遊離し蛍光を発する。この合成蛍光基質の蛍光量を測定することによりプロテアソームのキモトリプシン様活性を測定する方法である。
【0053】
同調培養法を用いて熱帯熱マラリア原虫のステージを輪状体に揃えたクロロキン耐性株K-1を準備し、培養液 RPMI 1640(+)にヘマトクリット値が5%になるように赤血球を添加し、60×15mmの細胞培養ディッシュ(FALCON)に分注した。その後37℃、5% CO2、5% O2の条件下で培養を行い、栄養体の感染率が約5.0-10.0%になるまで培養を続けた。グリオトキシンは、最終濃度が20.0μMになるように添加した。添加後1,4,8時間37℃、5% CO2、5%O2の条件下で培養を行い、原虫細胞の溶解を行った。原虫細胞溶解処理により集めたサンプルのタンパク質濃度を測定し、PBSでそれぞれ25.0μg/mlになるよう調整した。
【0054】
熱帯熱マラリア原虫のプロテアソーム活性の測定に用いた合成蛍光基質uccinyl-leucyl-leucyl-valyl-tyrosyl-4-Methylcoumarinyl-7-Amide(ペプチド研究社) は100% DMSO(Sigma Co.)で、10.0mMに調整し、使用まで-80℃で保存した。基質は用時、Tris-HCl (50 mM、pH7.5)で200.0 μMになるよう調整し使用した。
【0055】
プロテアソーム活性は以下の手順で行った。タンパク質濃度を25.0μg/mlに調整したサンプル150μlに対し、基質150μl(最終濃度100μM)を1.5 mlチューブへ入れ、37℃で2時間培養した。培養後、96穴丸底ブラックプレートの各wellに基質と反応させたサンプル100 μlずつ分注し、マルチウェルプレートリーダ (CytoFluor登録商標、Perspective Biosystem、Framingham、MA.) を用いて360 nmの励起波長および460 nmの蛍光波長にて測定した。陽性対照としてプロテアソーム阻害薬として知られるラクタシスチン(ペプチド研究社)を最終濃度10.0 μMになるように添加したものを用いた。
【0056】
本試験5の結果を図5に示す。この図5では、対照群が黒色、グリオトキシンを白色グラフ、ラクタスチン(斜線グラフ)でそれぞれ示されている。グリオトキシンを添加しないマラリア原虫を対照群としプロテアソーム活性を100.0%とした時、グリオトキシンの添加群は、1時間目の活性が対照群より高く115.4%であったが、暴露時間が長くなるほどプロテアソーム活性は低下し、4時間後には75.4%、8時間後には25.5% に低下した(P<0.05)。
【0057】
<試験6:グリオトキシンを使用した細胞毒性試験>
【0058】
グリオトキシンのヒト正常肝細胞株への毒性を確認するため、細胞毒性試験を行った。
【0059】
細胞毒性試験には、蛍光法を利用したキット(CytoTox-ONETM Homogeneous Membrane Integrity Assay;Promega Co.)を使用した。このキットでは細胞膜にダメージを受けた細胞から漏出された乳酸脱水素酵素をレサズリン/ジアホラーゼ共役系を介して生成するレゾルフィンの蛍光を測定する。
【0060】
簡単に方法を述べるとまず、96穴丸底ブラックプレートの各wellに正常ヒト肝細胞株Chang細胞1×105 cell/mlをそれぞれ100μlずつ分注した。またグリオトキシンを最終濃度が0.0、7.8、15.6、31.3、62.5、125.0、250.0、500.0、1000.0 μMとなるように分注し、37℃、5% CO2の条件下にて培養を行った。
【0061】
72時間後アッセイプレートを周囲の温度に平衡化した後、各wellにCytoTox-ONETM Reagentを100 μlずつ添加した。さらに10分間37℃で温置後、Stop Solutionを50μlずつ添加し、530 nm励起波長および580 nmの蛍光波長にて蛍光量を測定した。測定した蛍光量から、濃度0.0 μM の蛍光度を基準として生存率(%)を算出し、グリオトキシンがヒト肝細胞に及ぼす細胞毒性を検討した。
【0062】
本試験6の結果を図6に示す。この図6は、グリオキシン添加後のヒト正常肝細胞の生存率を、グリオキシン濃度0.0μMでの蛍光度を基準に生存率(%)を算出して示した図面代用グラフである。
【0063】
この図6に示された結果から、7.8〜125.0μMでは生存率が117.0〜145.0% と、いずれの濃度でもグリオトキシン非添加群以上の値を示し、グリオトキシンのヒト正常肝細胞株に対する細胞毒性は認められなかった (P>0.05)。
【0064】
グリオトキシン濃度250μM添加群では、その生存率が77.0%であったが、非添加群との間に有意差は認められなかった。しかしながら、グリオトキシン濃度500.0〜1000.0μMでは65.0〜66.0%であり、対照群と比較して有意に生存率の低下が認められた(P<0.05)。
【0065】
なお、以上の試験での統計解析において、データは、少なくとも3回の実験結果の平均±標準誤差(SEM)で表している。有意差計算はスチューデントのt検定を用いて解析を行った。P<0.05を有意差ありと判定した。
【0066】
以上の試験1〜6の結果について、考察する。
【0067】
まず、グリオトキシンの熱帯熱マラリア原虫に対する発育抑制効果を検討したところ(上記試験1参照)、グリオトキシン濃度10μMでは、「クロロキン感受性株FCR-3」と「クロロキン耐性株K-1」のどちらの熱帯熱マラリア原虫に対しても発育抑制をする効果が認められた。
【0068】
グリオトキシンが輪状体・栄養体・分裂体のどの発育段階に対して殺原虫効果を示すか、形態的変化を指標として検討したところ(上記試験2参照)、その結果、原虫はどの発育段階においても対照群と比較して原虫は死滅し、形態的特徴として原虫の残骸が赤血球内に残存しているものは、原虫の著しい収縮が見られた。
【0069】
また、グリオトキシンの50%増殖阻害濃度(IC50値)を算出したところ(上記試験3参照)、クロロキン感受性株FCR-3で4.43 μM、クロロキン耐性株K-1で3.17μMとなり、この株間のIC50値に有意差は認められなかった。
【0070】
さらにグリオトキシンの毒性を検討するため、ヒト正常肝細胞株を用いて細胞毒性試験を行ったところ(上記試験6)、その結果、7.8〜250.0μMでは、グリオトキシンのヒト正常肝細胞株に対する細胞毒性は認められなかった。
【0071】
しかしながら、グリオトキシン濃度500.0〜1000.0μMでは、65.0〜66.0%と生存率の低下が認められ、対照群と比較して細胞毒性が認められた。なお、参考のため、実験的にガン細胞株に対してグリオトキシンを使用する場合は、通常38〜985μM で使用する(D.M.Vigushin, N.Mirsaidi, G.Brooke, C.Sun, P.Pace, L.Inman, C.J.Moody, R.C.Coombes.(2004): Gliotoxin Is a Dual Inhibitor of Farnesyl-transferase and Geranylgeranyltransferase I with AntitumorActivity Against Breast Cancer In Vivo. Medical Oncology. 21.21-30)。
【0072】
一方、グリオトキシンのマラリア原虫増殖抑制濃度は、10.0μM であった。グリオトキシンは、ヒト正常肝細胞株に対する細胞毒性を示さない濃度であり、かつガン細胞株に対する使用濃度の1/3〜1/100でマラリア原虫に対する殺原虫効果を示すことから、抗マラリア原虫薬としての可能性が示唆された。
【0073】
次に、グリオトキシンの殺マラリア原虫の作用機構について考察する。まず、グリオトキシンは、好中球やマウス由来繊維芽細胞に対するアポトーシス誘引作用やDNA傷害作用、DNA合成阻害作用を有することが報告されている(例えば、MullbacherA, Waring P, Tiwari-PalniU, Eichner RD. (1984): Structural relationship of epipolythiogiodioxopiperazines and their immmuno-modulating activity. Molecular Immunology. 23.231-235)。
【0074】
これらは、グリオトキシンが産生する活性酸素種によることが一つの作用機序として報告されている(Eichner RD, WaringP, Geue AM, Braithwaite AW, Mullbacher A.(1988):Gliotoxincauses oxidative damage to plasmid and cellular DNA. Journal of Biological Chemistry. 263.3772-3777)。活性酸素種は、生体内において種々の機能的役割を担うことが知られている一方、過剰な活性酸素種は生体に対する障害を引き起こすことも知られている。
【0075】
マラリア原虫は、その好気的生存環境の中で絶妙なバランスをとりながら生存していることが知られている。このバランスが崩壊することで、原虫もまた障害を受けることとなる。すなわち、細胞内酸化還元バランスを崩すことで、抗マラリア原虫作用を示すことができると考えられる。
【0076】
また、亜セレン酸ナトリウムやチンハオスーとその誘導体アルテミニシンでは、この現象が利用されており、これらの薬剤により産生される活性酸素種による細胞傷害であることが報告されている(例えば、Klayman DL. (1985): Qinghaosu (artemisinin): an antimalarial drug from China. Science. 228, 1049-55.あるいは、Hien TT, White NJ. (1993): Qinghaosu. Lancet. 341, 603-8、あるいは、Nao Taguchi, Toshimitsu Hatabu, Haruyasu Yamaguchi, Mamoru Suzuki, KumikoSato, Shigeyuki Kano.(2004): Plasmodium falciparum: selenium-Induced cytotoxicityto P.falciparum.Experimental Parasitology. 106.50-55)。
【0077】
これらのことから、グリオトキシンの示す抗マラリア原虫作用機構の一つとして、グリオトキシンが産生する活性酸素種による細胞内酸化ストレスの亢進の可能性が推察される。そこで、活性酸素種の指標の一つである細胞内還元型グルタチオン量の変化を検証した(上記試験4参照)。
【0078】
その結果、上記したように、感染赤血球と非感染赤血球内の還元型グルタチオン量に変化は認められなかった。このことから、グリオトキシンによる抗マラリア原虫作用機構は、産生された活性酸素種による細胞内酸化還元バランスの破綻ではないことが推察された。
【0079】
一方で、グリオトキシンはプロテアソームの機能阻害能を有することが知られている(Andre Paugman, Anne-Laure Bulteau, Jean Dupouy-Camet, Claudine Creuzet, Bertrand Friguet.(2003): Characterization and role of protozoan parasite proteasome. TRENDS in Parasitology. 19.55-59)。
【0080】
細胞において、タンパク質は次々と新しく作られながら、変性したタンパク質は次々分解されていくが、新らたにタンパク質が作られたとき、古いタンパク質が分解・処分されなければ、細胞機能を維持することができなくなり最終的に細胞は死滅する。
【0081】
この恒常性を維持するために細胞内タンパク質の生成・分解調節機能を有するタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームが存在する。ガンなどの研究ではプロテアソーム活性阻害剤が新しい薬剤として注目されている(Alexei F, Kisselev, Alfred L.Goldberg.(2001): Proteasomeinhibitors: From research tools to drug candidates. Chemistry & Biology. 8.739-758)。
【0082】
また、マラリア原虫と同属のトキソプラズマ原虫では、グリオトキシンがプロテアソームの活性を阻害することでトキソプラズマ原虫の増殖を抑制することが報告されている(Andre Paugman, Claudine Creuzet, Jean Dupouy-Camet, Marie Poule Roisin. (2002):In vitro effects of gliotoxin, a natural proteasome inhibitor, on the infectivity and proteolytic activity of Toxoplasmagondii. Parasitologyresearch. 88.785-787)。
【0083】
また、プロテアソーム阻害剤の一つであるラクタシスチンは赤外型、赤内型発育段階のマラリア原虫の発育を抑制することが最近の研究において明らかにされた(Soren M. Gantt, Joon Mo Myung, Marcelo R.S.Briones, Wei Dong Li, E.J.Corey, Satoshi Omura, Victor Nussenzweig, Photini Sinnis.(1998): ProteasomeInhibitions Block Development of plasmodium spp. Antimi-crobial Agents and Chemotherapy.42.2731-2738)。
【0084】
以上のことから熱帯熱マラリア原虫の発育を抑制する作用機序としてグリオトキシンがプロテアソーム活性を阻害することが推察され、マラリア原虫内プロテアソーム活性阻害の検討を行った(上記試験5)。
【0085】
その結果、グリオトキシンの暴露時間に依存してプロテアソームの活性を阻害していることが示された。このことからグリオトキシンの殺マラリア原虫作用機序の1つとして、原虫のプロテアソームの活性阻害が推察された。
【0086】
また、グリオトキシン添加時のマラリア原虫の形態学的変化を光学顕微鏡で観察した結果、原虫の収縮像が認められた。これはチンハオスー誘導体やセレン化合物による抗マラリア原虫効果の形態学的変化と同様の観察結果と考えられた。
【0087】
しかしながら、グリオトキシンによる抗マラリア原虫作用機構は、活性酸素種による細胞内酸化還元バランスの破綻ではなく、プロテアソーム活性阻害であることが、本発明により示された。
【0088】
グリオトキシンは、培養細胞系に添加するとそれらの細胞に対してプロテアソーム活性阻害の結果、アポトーシスを誘導することが既に報告されているKroll M, Arenzana-Seisdedos F, bachelerie F, Thomas D, friguetB, Conconi M.(1999): The secondary fungal metabolite gliotoxin targets proteolyticactivities of the proteasome. Chemistry & Biology. 6.689-698)。
【0089】
一方で、活性酸素種による細胞傷害機構は、原虫にネクローシスを惹起することが電子顕微鏡的観察において報告されている(Agtmael MA, EggelteTA, van Boxtel CJ. (1999): Artemisinindrugs in the treatment of malaria: from medicinal herb to registered medication. Trends Pharmacol Science. 20, 199-205)。
【0090】
以上のことから、光学顕微鏡下で観察された原虫の収縮像は、結果的に活性酸素種による細胞傷害と類似していたが、作用機序の違いが推察されていることから、今後は電子顕微鏡下での細胞内小器官の変化を観察することを検討している。
【0091】
このように、グリオトキシンは、クロロキン感受性・耐性株両方に対し殺マラリア原虫効果を示しながら、ヒト正常肝細胞株に対して細胞毒性も示さなかった。この作用機序は、マラリア原虫のプロテアソーム活性阻害と推定する。
【0092】
未だ未解明な部分も多いが、既存薬の抗原虫作用機序のひとつは、ヘモグロビン代謝阻害であり、グリオトキシンで見られたプロテアソーム活性阻害作用ではない。このことから、グリオトキシンは、既存の抗マラリア薬に代わる新規な作用機序に基づく薬剤として有用であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、抗マラリアに係わる予防技術や治療技術として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例における試験1の結果を示す図面代用グラフである(クロロキン感受性株FCR-3の場合)。
【図2】実施例における試験1の結果を示す図面代用グラフである(クロロキン耐性株K-1の場合)。
【図3】実施例における試験2の結果を示す図面代用グラフである。
【図4】実施例における試験3の結果を示す図面代用グラフである。
【図5】実施例における試験5の結果を示す図面代用グラフである。
【図6】実施例における試験6の結果を示す図面代用グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリオトキシンの抗マラリア薬有効成分としての使用。
【請求項2】
グリオトキシンを有効成分とする抗マラリア薬。
【請求項3】
前記グリオトキシンは、マラリア原虫のプロテアソーム活性を阻害することを特徴とする請求項2記載の抗マラリア薬。
【請求項4】
前記グリオトキシンは、クロロキン感受性又は耐性のマラリア原虫に対する抗マラリア有効成分として作用することを特徴とする請求項2又は3に記載の抗マラリア薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−249019(P2006−249019A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69560(P2005−69560)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(504307630)プライム・デルタ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】