説明

抗体アレイを用いた肺癌治療のための薬剤選択

本発明は、腫瘍細胞中のシグナル伝達経路の構成因子の活性化状態を検出する組成物および方法を提供する。本発明の使用から導出されるシグナル伝達経路の構成因子の活性化状態に関する情報は、癌診断、予後予測、および癌治療の設計に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年7月13日に出願された米国特許仮出願第60/949,820号の優先権を主張し、それらの開示は、すべての目的のため、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
細胞におけるシグナル伝達のプロセスは、ほんの数例を挙げると、細胞分裂および細胞死、代謝、免疫細胞活性神経伝達および知覚を含む様々な生物学的機能に影響する。従って、細胞における正常なシグナル伝達の異常は、肥満、心臓病、自己免疫および癌といった多数の病状をもたらしうる。
【0003】
一つのよく特徴付けられたシグナル伝達経路は、細胞における上皮細胞増殖因子(EGF)から細胞増殖の促進へのシグナルを伝達することに関与する、MAPキナーゼ経路である(図1を参照)。EGFは、EGFの結合によって活性化される、膜貫通受容体関連チロシンキナーゼ、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に結合する。EGFのEGFRへの結合は、受容体の細胞質ドメインのチロシンキナーゼ活性を活性化する。このキナーゼ活性の一つの結果は、チロシン残基におけるEGFRへの結合の自己リン酸化である。活性型EGFR上のリン酸化されたチロシン残基は、GRB2といったSH2ドメインを含むアダプタータンパク質の結合のためのドッキング部位を提供する。アダプターとしての機能において、GBR2はさらに、GBR2上のSH3ドメインによって、グアニンヌクレオチド交換因子、SOSに結合する。EGFR−GRB2−SOS複合体の形成は、RasからのGDPの除去を促進するグアニンヌクレオチド交換因子へのSOS活性化をもたらす。GDPの除去により、RasはGTPに結合し、活性化される。
【0004】
活性化に続いて、Rasが、RAFキナーゼ、セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼに結合し、そのタンパク質キナーゼ活性を活性化する。タンパク質キナーゼカスケードの活性化は、細胞増殖をもたらす。概略では、RAFキナーゼは、その後、MEK、もう一方のセリン/スレオニンキナーゼをリン酸化し、活性化する。活性型MEKは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)をリン酸化し、活性化する。MAPKによるさらなるリン酸化のためのターゲットには、40Sリボソーム蛋白質S6キナーゼ(RSK)がある。MAPKによるRSKのリン酸化は、次にリボソームタンパク質S6をリン酸化する、RSKの活性化をもたらす。MAPKのもう一方の公知のターゲットは、プロトオンコジーン、c−Myc、複数の癌において突然変異する細胞増殖にとって重要な遺伝子、である。MAPKはまた、次に転写因子、CREBをリン酸化する、他のタンパク質キナーゼ、MNKをリン酸化し、活性化する。間接的に、MAPKはまた、細胞増殖に含まれるさらに他の転写因子をコードするFos遺伝子の転写を制御する。そのような転写因子の量および活性を変化させることによって、MAPKは、EGFからの元々の細胞外シグナルを、細胞周期の進行に重要な遺伝子の転写の変更に変換する。
【0005】
シグナル伝達経路が細胞増殖に働く中心的役割を考慮すると、多くの癌が、細胞増殖経路の異常な活性化の結果をもたらす、シグナル伝達構成因子における変異および他の変化の結果として生じることは驚くことではない。例えば、EGFRの過剰発現または過活性は、多形性膠芽腫、結腸癌、肺癌を含む複数の癌に関連している。これは、肺癌のためのゲフィチニブ(gefitinib)およびエルロチニブerlotinib、結腸癌のためのセツキシマブ(cetuximab)を含む、EGFRに対する抗癌治療の開発を促進している。
【0006】
セツキシマブは、EGFRの細胞外リガンド結合ドメインに結合するモノクローナル抗体阻害剤の一例であり、従って、EGFRチロシンキナーゼを活性化するリガンドの結合を阻害する。一方、ゲフィチニブ及びエルロチニブは、細胞内に位置するEGFRチロシンキナーゼを阻害する小分子である。キナーゼ活性が欠如すると、EGFRへの結合は、GRB2といった下流のアダプタータンパク質の結合のために必要条件である、チロシン残基でのリン酸化を受けることができない。増殖のためにこの経路に頼るシグナルカスケードを停止することによって、腫瘍の増殖および転移が軽減される。
【0007】
加えて、他の研究は、約70%のヒト黒色腫および少ない割合の他の腫瘍が、MAPK経路の恒常的活性をもたらすRaf遺伝子における点変異(V599E)を有することを示した(例えば、Davies et al.,Nature, 417:949−954 (2002)を参照)。そのような結果は、特定のシグナル伝達経路における変化が、特定の癌タイプの特徴を示しうること、およびそのような特定のシグナル伝達経路の変化が、化学療法の介入のための有望なターゲットでありうることを示唆する。
【0008】
異なる癌治療、特に癌の化学療法は、細胞増殖または細胞死それぞれに含まれる細胞シグナル伝達経路を遮断または活性化することによって、直接的または間接的に機能しうることを考慮すると、特定の形態の癌における公知のシグナル伝達経路の活性は、様々な癌治療の有効性の良好な指標として役立ちうる。従って、他の必要性を満たすことに加えて、本発明は、個々の患者のための可能性のある抗癌治療の効果を評価する方法を提供する。そのように、本発明は、医師が、全ての患者に対し適正な量と適正な時間で適切な癌治療を選択する助けとなる方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、腫瘍細胞(例えば、肺腫瘍の循環細胞)におけるシグナル伝達経路の構成因子の活性化状態を検出するための組成物および方法を提供する。本発明の使用から導き出せるシグナル伝達経路の構成因子の活性化状態についての情報は、癌診断、予後診断および癌治療の設計のために使用されうる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの態様において、本発明は、肺癌治療のための適切な抗癌剤を選択する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤の投与後、または抗癌剤とのインキュベーション前に肺癌細胞を分離する工程と、
(b)分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程と、
(c)固相担体上に拘束された、一つ以上の分析物に特異的な複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて、細胞抽出物中の一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程と、
(d)一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、抗癌剤の非存在下において生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、抗癌剤が、肺癌治療に適しているか、また適していないかを決定する工程と、
を備える。
【0011】
他の態様において、本発明は、抗癌剤を用いた治療のための適切な候補である、肺癌を患う被験者を選択する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤の投与後、または抗癌剤とのインキュベーション前に、肺癌細胞を分離する工程と、
(b)分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程と、
(c)固相担体上に拘束された、一つ以上の分析物に特異的な複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて、細胞抽出物中の一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程と、
(d)一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、抗癌剤の非存在かで生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、被験者が、抗癌剤による肺癌治療に適しているか、または適していないかを決定する工程と、
を備える。
【0012】
他の態様において、本発明は、抗癌剤を用いた治療に対する肺腫瘍の応答を確認する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤の投与後、または抗癌剤とのインキュベーション前に肺癌細胞を分離する工程と、
(b)分離された細胞を溶解し、細胞抽出物を作製する工程と、
(c)固相担体上に拘束された、一つ以上の分析物に特異的な複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて、細胞抽出物中の一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程と、
(d)一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、抗癌剤の非存在下で生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、抗癌剤治療に対して、該肺腫瘍が応答性であるまたは非応答性であると同定する工程と、
を備える。
【0013】
さらに他の態様において、本発明は、肺癌を患う被験者の抗癌剤治療に対する反応性を予測する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤の投与後、または抗癌剤とのインキュベーション前に、肺癌細胞を分離する工程と、
(b)分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程と、
(c)固相担体上に拘束された、一つ以上の分析物に特異的な複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて、細胞抽出物中の一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程と、
(d)一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、抗癌剤の非存在下で生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、被験者が抗癌剤での治療に応答するであろう可能性を予測する工程と、
を備える。
【0014】
さらに他の態様において、本発明は、抗癌剤で治療された肺癌被験者のための臨床転帰を予測する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤の投与後に肺癌細胞を分離する工程と、
(b)分離された細胞を溶解し、細胞抽出物を作製する工程と、
(c)固相担体上に拘束された、一つ以上の分析物に特異的な複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて、細胞抽出物中の一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程と、
(d)一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、抗癌剤の非存在下で生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、抗癌剤で治療された被験者の臨床転帰を予測する工程と、
を備える。
【0015】
更なる態様において、本発明は、固相担体上に拘束された、複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成される、高いダイナミックレンジを有するアレイを提供し、各希釈系列中のキャプチャ抗体は、細胞抽出物中のシグナル伝達経路の構成因子に対応する、一つ以上の分析物に特異的である。
【0016】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、当業者には明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において使用されうる細胞増殖に含まれるシグナル伝達経路の例を示す図である。細胞増殖シグナルを細胞増殖に変換するために細胞によって用いられるEGFR/MAPK/ERK経路の構成因子が描写される。
【図2】癌治療の過程にわたる薬剤選択のための本発明のアドレス可能なアレイの適用を概略的に示す図である。
【図3】EGFR/MAPK/ERK経路における受容体チロシンキナーゼ経路といった受容体チロシンキナーゼ経路の構成因子に対する抗体の希釈物から構成されるアドレス可能なアレイの概略的な例を示す図である。
【図4】腫瘍の血管新生において活性化されるシグナル伝達経路の構成因子に対する抗体の希釈物から構成されるアドレス可能なアレイの概略的な例を示す図である。
【図5】AおよびBは、患者2002(A)及び患者2015(B)におけるVeridex CellSearchシステムを用いたCTCの測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(I.序文)
上述したように、細胞増殖に含まれるシグナル伝達経路の活性化および細胞死に含まれる経路の不活性化は、多くの異なる種類の癌を特徴付ける分子特性の非限定的な例である。多くの場合、特定のシグナル伝達経路の活性化、及びそれらの構成因子は、所定の種類の癌のための分子署名として働きうる。そのような活性型構成因子はさらに、治療的介入のための有用なターゲットを提供しうる。従って、治療前、治療中、治療後における癌細胞内の特定のシグナル伝達システムの活性レベルを知ることは、採用される治療の適切な過程を選択するのに使用されうる、非常に関連した情報を医師に提供する。さらに、治療効果として癌細胞中で活性なシグナル伝達経路の継続的なモニターは、治療の効果に関する付加的な情報を医師に提供し、医師がある特定の治療過程を継続する、または、例えば癌細胞が、同一または他のシグナル伝達経路のいずれかを活性化する、さらなる異常によって治療に耐性となった場合に、他の路線の治療に切り替えるように促す。
【0019】
従って、本発明は、特異的な、多重の、ハイスループットのアッセイにおいて、腫瘍組織または固形腫瘍の希少循環細胞といった外部の腫瘍細胞中の、制御が解除された複数のシグナル伝達分子の発現および活性化状態を検出する方法および構成因子を提供する。本発明はまた、制御が解除されたシグナル経路を下方制御する、または遮断するように、適切な治療(単一の薬剤または薬剤の組み合わせ)の選択のための方法および構成因子を提供する。従って、本発明は、癌患者のための各個人用の治療の設計を助けるために使用されうる。
【0020】
単一細胞レベルでのシグナル伝達経路の活性の決定によって、血液循環中の腫瘍細胞を検出し、同定することができることは、本発明の重要な利点である。腫瘍細胞は、しばしば、様々な早期癌を患う患者の血液中に「マイクロメタスターゼ(micrometastase)」(播種性腫瘍細胞)として検出される。血液中の腫瘍細胞の数は、腫瘍のステージと種類に依存するだろう。生検は、概して原発巣腫瘍で得られるのに対し、殆どの転移性腫瘍は、生検が行われず、腫瘍試料の分子解析を非常に困難にする。腫瘍の転移の際、殆どの浸潤性腫瘍細胞は、原発巣を離れ、血液及びリンパ系を通って遠隔部位に達する。従って、血液からの循環腫瘍細胞は、最も浸潤性が高く均質な腫瘍細胞群を示す。しかしながら、血液中の転移性腫瘍細胞の数は、非常に低いことが多く、血液1ミリリットルあたり一つから数千細胞の範囲である。そのような希少な細胞においてシグナル伝達経路を分離および分析し、この情報をより効果的な癌治療に適用することができることは、本発明の一つの目的である。
【0021】
ある実施形態において、本発明の多重でハイスループットのアッセイは、単一細胞レベルで固形腫瘍の循環細胞中の一つ以上のシグナル伝達分子の活性化状態を検出することができる。実際、EGFRといった単一のシグナル伝達分子は、約100ゼプトモルの感度で、約100ゼプトモルから約100フェムトモルまでの直線状のダイナミックレンジで検出されうる。そのように、希少循環細胞中の多数のシグナル伝達因子の活性化状態の単一細胞での検出は、各個人の、標的化された治療の設計と同様に、癌の予後診断および癌診断を助ける。
【0022】
希少循環細胞は、固形腫瘍から転移したまたは微小転移した固形腫瘍の循環細胞を含む。循環腫瘍細胞、癌幹細胞、および循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環血管新生促進骨髄細胞および循環樹枝状細胞といった腫瘍へと(化学誘引によって)移動する細胞は、固形腫瘍に関連する循環性細胞の例の一部である。
【0023】
対象となるシグナル伝達分子は、それらのin situでの活性化状態を保存するために、概して、循環性細胞が分離された直後、好ましくは、約24、6または1時間以内に、より好ましくは、約30、15、5分以内に抽出される。分離された細胞はまた、通常ナノモルからマイクロモル濃度で、約1〜30分間、シグナル伝達分子の活性を回復または刺激するために、一つ以上の増殖因子とインキュベートされる(例えば、Irish et al., Cell, 118:217−228(2004)を参照)。
【0024】
本明細書においてより詳細に説明するように、個々の患者のための可能性のある抗癌治療を評価するために、分離された細胞は、様々な量で一つ以上の抗癌剤とインキュベートされうる。増殖因子の刺激は、その後、短期間(例えば、約1〜5分)または数時間(例えば、約1〜6時間)実施されうる。抗癌剤存在下および抗癌剤非存在下でのシグナル経路の異なる活性が、各個人の患者のための適した用量での適切な癌治療の選択を助けうる。循環性細胞はまた、抗癌剤治療の際、患者試料から分離され、一つ以上の増殖因子で刺激されて、治療の変更が実行されるべきかどうかを決定する。そのように、本発明の方法は、有利に、臨床医が、全ての患者に対し適正な量、適正な時間で適正な抗癌剤を与えるのを助ける。
【0025】
(II.定義)
本明細書では、以下の用語は、他に特定されない限り、以下の意味を有する。
【0026】
「癌(cancer)」という用語は、異常な細胞の制御されない増殖によって特徴付けられる一種の疾患の任意のものを含むと意図される。その用語は、悪性、両性、軟組織、または固形組織に関わらず、全ての公知の癌および腫瘍性の状態、および転移前および転移後の癌を含む全てのステージ及びグレードの癌を含む。異なる種類の癌の例は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌);結腸直腸癌、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌および胃癌といった消化器および胃腸癌;食道癌;胆嚢癌;肝臓癌;膵臓癌;虫垂癌;乳癌;卵巣癌;腎臓癌(例えば、腎細胞癌);中枢神経系の癌;皮膚癌;リンパ腫;絨毛癌;頭頸部癌;骨肉腫;および血液癌を含むが、これに限定されるものではない。本明細書で使用されるように、「腫瘍(tumor)」は、一つ以上の癌性細胞から構成される。好ましい実施形態において、肺腫瘍は、例えば、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、気管支肺胞癌(BAC)または燕麦細胞癌といった非小細胞肺癌を患う被験者から得られる。
【0027】
「分析物(analyte)」という用語は、対象となるあらゆる分子、概してポリペプチドといった巨大分子を含み、その存在、量、および/または由来が決定される。ある例において、分析物は、固相腫瘍の循環細胞の細胞成分であり、好ましくは、シグナル伝達分子である。
【0028】
本明細書では、「希釈系列(dilution series)」という用語は、特定の試料(例えば、細胞溶解物)または試薬(例えば、抗体)の一連の下降濃度を含むと意図される。希釈系列は、概して、開始濃度の試料または試薬の測定された量を希釈剤(例えば、希釈緩衝液)と混合して、より低い濃度の試料または試薬を作製し、所望の数の一連の希釈を得るのに充分な回数、この工程を繰り返す工程によって生成される。試料または試薬は、少なくとも 2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50個の下降濃度の試料または試薬からなる希釈系列を作製するために、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500または1000倍で連続的に希釈されうる。例えば、1mg/mlの開始濃度で補足抗体試薬の2倍の連続的な希釈からなる希釈系列は、0.5mg/mlの濃度の補足抗体を作製するように、一定量の開始濃度の補足抗体を等量の希釈緩衝液と混合し、0.25mg/ml、0.125mg/ml、0.0625mg/ml、0.0325mg/mlなどの補足抗体濃度を得るようにこの工程を繰り返すことによって作製されうる。
【0029】
「高いダイナミックレンジ(superior dynamic range)」という用語は、わずか一つの細胞において、または数千もの細胞において、特定の分析物を検出するアッセイの能力のことをいう。例えば、本明細書で述べる免疫アッセイは、補足抗体濃度の希釈系列を用いて約1〜10000細胞における対象となる特定のシグナル伝達分子を有利に検出するので、高いダイナミックレンジを有する。
【0030】
「シグナル伝達分子(signal transduction molecule)」または「シグナル伝達因子(signal transducer)」という用語は、細胞が細胞外シグナルまたは刺激を、概して細胞内での秩序だった連続した生化学的反応を含む応答に変換するプロセスを実行するタンパク質および他の分子を含む。シグナル伝達分子の例は、EGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、VEGFR−1/FLT−1、VEGFR−2/FLK−1/KDR、VEGFR−3/FLT−4、FLT−3/FLK−2、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c−KIT/SCFR、INSR(インスリン受容体)、IGF−IR、IGF−IIR、IRR(インスリン受容体関連受容体)、CSF−1R、FGFR1−4、HGFR1−2、CCK4、TRK A−C、MET、RON、EPHA 1−8、EPHB 1−6、AXL、MER、TYRO3、TIE1−2、TEK、RYK、DDR1−2、RET、c−ROS、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR1−2、MUSK、AATYK1−3、およびRTK106といった受容体型チロシンキナーゼ;BCR−ABL、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、およびLIMKといった非受容体型チロシンキナーゼ;Akt、MAPK/ERK、MEK、RAF、PLA2、MEKK、JNKK、JNK、p38、Shc(p66)、PI3K、Ras(例えば、K−Ras、N−Ras、H−Ras)、Rho、Rac1、Cdc42、PLC、PKC、p70 S6キナーゼ、p53、サイクリンD1、STAT1、STAT3、PIP2、PIP3、PDK、mTOR、BAD、p21、p27、ROCK、IP3、TSP−1、NOS、PTEN、RSK1−3、JNK、c−Jun、Rb、CREB、Ki67、およびパキシリンといったチロシンキナーゼシグナルカスケード構成因子;およびそれらの組み合わせを含むが、これに限定されるものではない。
【0031】
本明細書では、「循環細胞(circulating cell)」という用語は、固形腫瘍から転移または微小転移した外部腫瘍細胞からなる。循環細胞の例は、循環腫瘍細胞、癌肝細胞および/または腫瘍へと移動する細胞(例えば、循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環血管新生促進骨髄細胞および循環樹枝状細胞など)を含むがこれに限定されるものではない。
【0032】
本明細書では、「試料(sample)」という用語は、患者から得られるあらゆる生物学的分析物を含む。試料は、全血、血漿、血清、赤血球細胞、白血球細胞(例えば、末梢血単核細胞)、唾液、尿、便(排泄物)、痰、気管支洗浄液、涙、乳頭吸引液、リンパ液(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、細針吸引物、他のあらゆる体液、腫瘍の生検(例えば、針生検)といった組織試料(例えば、腫瘍組織)およびそれらの細胞抽出物を含むがこれに限定されるものではない。ある実施形態において、試料は、全血、または血漿、血清または細胞沈殿物といったその細胞画分である。好ましい実施形態において、試料は、当該分野で公知の技術を用いて、全血からのまたはその細胞画分から固形腫瘍の循環細胞を分離することによって得られる。他の実施形態において、試料は、例えば、肺、結腸または直腸からのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料である。
【0033】
「生検(biopsy)」という用語は、診断または予後評価のための組織資料を取り出すプロセスおよびその組織試料をいう。当該分野において公知のあらゆる生検の技術が本発明の方法および組成物に適用されうる。適応される生検技術は、その他の因子としては、概して、評価される組織の種類、および腫瘍の大きさおよび種類(すなわち、固形または浮遊性(すなわち、血液または腹水)に依る。代表的な生検技術は、切除生検、切開生検、針生検(例えば、コアニードル生検、穿刺吸引細胞診など)、外科生検および骨髄生検を含む。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, Kasper, et al., eds., 16th ed., 2005, Chapter 70、およびパートVを通して説明される。
【0034】
「被験者(subject)」または「患者(patient)」という用語は、概して、ヒトを含むが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物、羊、ブタなどといった、他の動物も含みうる。
【0035】
「アレイ(array)」または「マイクロアレイ(microarray)」という用語は、例えばガラス(例えばガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルタ、ビーズ、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリジンフルオライド(PVDF)など)、繊維束または他のあらゆる適切な基質といった固相担体上に固定または拘束されたキャプチャ抗体の同一のセットおよび/または希釈系列から構成される。キャプチャ抗体は、概して、共有または非共有性相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子結合)を介して固相担体上に固定または拘束される。本発明のアッセイにおいて使用されるアレイは、典型的に、異なる既知の/アドレス可能な位置において固相担体の表面に連結された複数の異なるキャプチャ抗体および/またはキャプチャ抗体濃度から構成される。
【0036】
「キャプチャ抗体(capture antibody)」という用語は、試料中の一つ以上の対象となる分析物に特異的な(すなわち分析物に結合する、分析物によって結合される、または分析物ち複合体を形成する)固定された抗体を含むことを意図される。好ましい実施形態において、キャプチャ抗体は、アレイ中の固相担体上に拘束される。固相担体上のあらゆる様々なシグナル伝達分子を固定するために適したキャプチャ抗体は、Upstate(Temecula,CA)、Biosource(Camarillo,CA)、Cell Signaling Technologies(Danvers,MA)、 R&D Systems(Minneapolis,MN)、Lab Vision(Fremont,CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)、Sigma(St.Louis,MO)およびBD Biosciences(San Jose,CA)から入手可能である。
【0037】
本明細書では、検出抗体(detection antibody)」という用語は、試料中の一つまたはそれ以上の対象となる分析物に特異的な(対象物と結合する、対象物によって結合される、または対象物と複合体を形成する)検出可能なラベルを備える抗体を含む。その用語はまた、一つ以上の対象となる分析物に特異的な抗体を包含し、該抗体は、検出可能なラベルを備える他の種類のものによって結合されうる。検出可能なラベルの例は、ビオチン/ストレプトアビジンラベル、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)ラベル、化学反応性等別、蛍光ラベル、酵素ラベル、放射性ラベル、およびそれらの組み合わせを含むが、これに限定されるものではない。あらゆる様々なシグナル伝達分子の活性化状態を検出するための適切な検出抗体は、Upstate(Temecula,CA)、Biosource(Camarillo,CA)、Cell Signaling Technologies (Danvers, MA)、R&D Systems(Minneapolis,MN)、Lab Vision(Fremont,CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)、Sigma(St.Louis,MO)およびBD Biosciences(San Jose,CA)から入手可能である。非限定的な例として、EGFR、c−KIT、c−Src、FLK−1、PDGFRA、PDGFRB、Akt、MAPK/ERK、PTEN、RafおよびMEKといった様々なシグナル伝達分子のリン酸化型に対するリン酸特異的抗体が、Santa Cruz Biotechnologyから入手可能である。
【0038】
活性化状態依存抗体(activation state−dependent antibody)」という用語は、試料中の対象となる一つ以上の分析物の特定の活性化状態に特異的な(すなわち、結合し、結合され、または複合体を形成する)検出抗体を含む。好ましい実施形態において、活性化状態依存抗体は、一つ以上のシグナル伝達分子といった一つ以上の分析物のリン酸化、ユビキチン化、および/または複合体状態を検出する。ある実施形態において、受容体型チロシンキナーゼのEGFRファミリーのメンバーのリン酸化および/またはEGFRファミリーメンバー間のヘテロ二量体複合体の形成は、活性化状態依存抗体を用いて検出される。活性化状態依存抗体を用いた検出に適した(括弧中に挙げられた)活性化状態の非限定的な例は、EGFR(EGFRvIII、リン酸化(p−)EGFR、EGFR:Shc、ユビキチン化(u−)EGFR、p−EGFRvIII);ErbB2(p85:切断型(Tr)−ErbB2、p−ErbB2、p85:Tr−p−ErbB2、Her2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:ErbB3、ErbB2:ErbB4);ErbB3(p−ErbB3、ErbB3:PI3K、p−ErbB3:PI3K、ErbB3:Shc);ErbB4(p−ErbB4、ErbB4:Shc);IGF−1R(p−IGF−1R、IGF−1R:IRS、IRS:PI3K、p−IRS、IGF−1R:PI3K);INSR(p−INSR);KIT(p−KIT);FLT3(p−FLT3);HGFRI(p−HGFRI);HGFR2(p−HGFR2);RET(p−RET);PDGFRa(p−PDGFRa);PDGFRP(p−PDGFRP);VEGFRI(p−VEGFRI、VEGFRI:PLCg、VEGFR1:Src);VEGFR2(p−VEGFR2、VEGFR2:PLCy、VEGFR2:Src、VEGFR2:hヘパリン硫酸、VEGFR2:VE−カドヘリン);VEGFR3(p−VEGFR3);FGFR1(p−FGFR1);FGFR2(p−FGFR2);FGFR3(p−FGFR3);FGFR4(p−FGFR4);Tiel(p−Tiel);Tie2(p−Tie2);EphA(p−EphA);EphB(p−EphB);NFKBおよび/またはIKB(p−IK(S32)、p−NFKB(S536)、p−P65:IKBa);Akt(p−Akt(T308、S473));PTEN(p−PTEN);Bad(p−Bad(S112、S136)、Bad:14−3−3);mTor(p−mTor(S2448));p70S6K(p−p70S6K(T229、T389));Mek(p−Mek(S217、S221));Erk(p−Erk(T202、Y204));Rsk−1(p−Rsk−1(T357、S363));Jnk(p−Jnk(T183、Y185));P38(p−P38(T180、Y182));Stat3(p−Stat−3(Y705、S727));Fak(p−Fak(Y576));Rb(p−Rb(S249、T252、S780));Ki67;p53(p−p53(S392、S20));CREB(p−CREB(S133));c−Jun(p−c−Jun(S63));cSrc(p−cSrc(Y416));およびパキシリン(p−パキシリン(Y118))を含む。
【0039】
「活性化状態非依存抗体(activation state−independent antibody)」という用語は、その活性化状態に関わりなく、試料中の一つ以上の対象となる分析物に特異的な(すなわち、結合し、結合され、または複合体を形成する)検出抗体を含む。例えば、活性化状態非依存性抗体は、一つ以上のシグナル伝達分子といった一つ以上の分析物のリン酸化型および非リン酸化型の両方を検出しうる。
【0040】
「核酸(nucleic acid)」または「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」という用語は、例えば、DNAおよびRNAといった単鎖型または二重鎖型におけるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを含む。核酸は、参照核酸と同様の結合特性を有し、合成され、自然発生し、および自然発生しない既知のヌクレオチドアナログまたは改変された骨格残基または結合を含む核酸を含む。そのようなアナログの例は、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホン酸塩、キラルーメチルホスホン酸塩、2’−O−メチルリボヌクレオチドおよびペプチド−核酸(PNA)を含むが、これに限定されるものではない。特に限定されない限り、その用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する、天然核酸の公知のアナログを含む核酸を包含する。他に示されない限り、特定の核酸配列がまた、明確に示された配列と同様に、保存的に改変されたその変異体および相補配列を黙示的に包含する。
【0041】
「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」という用語は、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド、および/またはそれらの類似物の単鎖オリゴマーまたはポリマーのことをいう。ある例において、オリゴヌクレオチドは、自然発生(即ち、改変していない)の核酸塩基、糖、およびヌクレオシド間(骨格)結合から構成される。ある他の例において、オリゴヌクレオチドは、改変された核酸塩基、糖、および/またはヌクレオシド間結合から構成される。
【0042】
本明細書では、「ミスマッチモチーフ(mismatch motif)」または「ミスマッチ領域(mismatch region)」という用語は、その相補配列に対し100%の相補性を有さないオリゴヌクレオチドの部分をいう。オリゴヌクレオチドは、少なくとも、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のミスマッチ領域を有してもよい。ミスマッチ領域は、連続してもよいし、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の核酸によって分離されてもよい。ミスマッチモチーフまたは領域は、単一の核酸から構成されてもよく、または2、3、4、5またはそれ以上の核酸から構成されてもよい。
【0043】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(stringent hybridization condition)」という用語は、オリゴヌクレオチドが、他の配列にはハイブリダイズしないが、その相補配列にハイブリダイズするであろう条件をいう。ストリンジェント条件は、配列に依存しており、異なる環境において異なるだろう。より長い配列は、特により高い温度でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイズについての広範囲のガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes,”Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に開示されている。概して、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度pHで、特定の配列に対する熱融点(T)よりも約5〜10℃低いように選択される。Tは、平衡状態で、(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度で)ターゲット配列に相補的なプローブの50%がターゲット配列にハイブリダイズする(ターゲット配列が過剰に存在する場合に、Tで、プローブの50%が平衡状態で占領される)温度である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドといった不安定化試薬の添加で達成されてもよい。選択されるまたは特定のハイブリダイゼーションのため、ポジティブシグナルは、少なくともバックグラウンドのハイブリダイゼーションの2倍であり、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。
【0044】
2つまたはそれ以上の核酸との関連で「実質的に同一の(substantially identical)」「実質同一(substantial identity)」という用語は、配列比較アルゴリズムを用いてまたはマニュアルアライメントおよび外観観察によって測定される際に、比較窓または指定領域にわたって最大限一致するように比較および位置比較されると、特定の割合同一である(すなわち、特定の領域にわたって、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有する)核酸を有するまたは同一である、2つまたはそれ以上の配列またはサブ配列のことをいう。この定義はまた、文脈が示す際には、同様に配列の相補性のこともいう。好ましくは、実質同一は、長さが、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75または100個の核酸である領域にわたって存在する。
【0045】
(III.実施形態の説明)
一つの実施形態において、本発明は、特異的で、多重の、ハイスループットのアッセイにおいて、腫瘍組織から取り出した腫瘍細胞または固形腫瘍の循環細胞における複数の制御が解除されたシグナル伝達因子の発現および活性化状態を検出する方法を提供する。本発明はまた、一つ以上の制御が解除されたシグナル経路を下方制御または遮断するための適切な治療法の選択のための方法および組成物を提供する。従って、本発明の実施形態は、特定の患者の腫瘍における活性化されたシグナル伝達タンパク質の収集によって提供される特定の分子署名に基づいて各個人用の治療法の設計を促進するために使用されてもよい。
【0046】
固形腫瘍の循環細胞は、癌幹細胞、または内皮前駆細胞、循環内皮細胞、周皮細胞、循環血管新生促進骨髄性細胞、樹状細胞などといった腫瘍へと移動する細胞を含む、固形腫瘍から転移または微小転移したいずれかの細胞を含む。循環細胞を含む患者試料は、あらゆる入手しやすい生物液体(例えば、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、細針吸引物など)から得られうる循環細胞を含む。ある例において、全血試料は、血漿または血清画分、および細胞画分(すなわち、細胞沈殿物)に分離される。細胞画分は、典型的に、赤血球細胞、白血球細胞、および/または循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、循環内皮前駆細胞(CEPC)、癌幹細胞(CSC)、リンパ節の播種性腫瘍細胞、およびそれらの組み合わせといった循環細胞を含む。血漿または血清画分は通常、とりわけ、固形腫瘍の循環細胞によって放出される核酸(例えば、DNA、RNA)およびタンパク質を含む。
【0047】
循環細胞は、典型的に、例えば、免疫磁気分離法(例えば、Racila et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:4589−4594(1998);Bilkenroth et al.,Int.J.Cancer,92:577−582(2001)を参照)、the CellTrack(登録商標)System by Immunicon(Huntingdon Valley,PA)、マイクロ流体分離法(例えば、Mohamed et al.,IEEE Trans.Nanobiosci.,3:251−256(2004);Lin et al.,Abstract No.5147,97th AACR Annual Meeting,Washington,D.C.(2006)を参照)、FACS(例えば、Mancuso et al.,Blood,97:3658−3661(2001)を参照)、密度勾配遠心法(例えば、Baker et al.,Clin.Cancer Res.,13:4865−4871(2003)を参照)および減少法(depletion method)(例えば、 Meye et al.,Int.J.Oncol.,21:521−530(2002)を参照)を含む一つ又は複数の分離方法を用いて、患者から分離される。
【0048】
ある実施形態において、in situ活性化状態を維持するために、細胞が分離された後すぐに、好ましくは、96、72、48、24、6または1時間以内に、より好ましくは、30、15または5分以内に、シグナル伝達因子が抽出されるのが有利である。分離された細胞はまた、有利には、シグナル伝達因子の活性を復活させる、または刺激するために、通常、ナノモル濃度〜マイクロモル濃度で、約1〜30分間、増殖因子とインキュベートされてもよい(例えば、Irish et al.,Cell,118:217−228(2004)を参照)。促進性の増殖因子は、上皮細胞増殖因子(EGF)、ヘレグリン(HRG)、TGF−α、PIGF、アンギオポイエチン(Ang)、NRG1、PGF、TNF−α、VEGF、PDGF、IGF、FGF、HGF、サイトカインなどを含む。個々の患者に対する可能な抗癌療法を評価するため、増殖因子の刺激の前に、分離された細胞が、複数の容量の一つ以上の抗癌剤とインキュベートされ得る。増殖因子の刺激は、数分または数時間(例えば、1〜5分から1〜6時間)、実施され得る。抗癌剤の有無におけるシグナル伝達経路の活性化差異は、個々の患者それぞれに対する適切な用量での適切な癌治療の選択を助ける。分離、抗癌剤処理および/または増殖因子刺激後、細胞は、当業者に公知の任意の技術を用いてシグナル伝達因子を抽出するために溶解される。好ましくは、細胞溶解は、増殖因子刺激後、約1〜360分の間に開始され、より好ましくは、2つの異なる時間間隔:(1)増殖因子刺激後約1〜5分で;および(2)増殖因子刺激後約30〜180分の間で開始される。その代わりに、溶解物は、使用まで−80℃で保存され得る。
【0049】
ある実施形態において、抗癌剤は、癌細胞における活性型シグナル伝達経路の分子の機能を阻害する薬剤から構成される。そのような薬剤の非限定的な例は、以下に記載された薬剤を含む。
【表1】

【表2】

【0050】
他の実施形態において、本発明は、固相担体上に拘束された、複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成される、高いダイナミックレンジを有するアレイを提供し、各希釈系列中のキャプチャ抗体は、シグナル伝達経路の構成因子に対応した、一つ以上の分析物に特異的である。様々な観点において、この実施形態は、特定の腫瘍の特徴的なシグナル伝達経路、例えば、肺癌細胞において活性化されているシグナル伝達経路、の構成因子から構成されるアレイを含む。従って、本発明は、有利には、各種類の癌が単一のアレイまたはチップ上に提示されるように実施され得る。いくつかの観点において、特定の腫瘍細胞において活性化している所定のシグナル伝達経路の構成因子は、細胞内においてシグナル伝達経路を介して情報が伝達される順番に、対応する直線状配列に配置される。そのようなアレイの例は、図3および図4に示される。
【0051】
本発明を使用して調べられ得るシグナル伝達経路の非限定的な例は、表1に示される経路を含む。
【表3】

【0052】
ある実施形態において、抗癌剤は、モノクローナル抗体またはチロシンキナーゼ阻害剤抗シグナル伝達剤(即ち、細胞増殖抑制剤)、抗増殖剤、化学療法剤(即ち、細胞毒性薬)、放射線治療薬、ワクチン、および/または癌性細胞といった異常細胞の非制御性増殖を低減または無効にする能力を有する任意の他の構成因子から構成される。いくつかの実施形態において、分離された循環細胞は、一つ以上の化学療法剤と組み合わせて、抗シグナル伝達剤および/または抗増殖剤と一緒に処理される。
【0053】
本発明における使用に適した抗シグナル伝達剤の例は、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(登録商標))、アレムツズマブ(alemtuzumab)(Campath(登録商標))、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))、セツキシマブ(cetuximab)(Erbitux(登録商標))、ゲムツズマブ(gemtuzumab)(Mylotarg(登録商標))、パニツムマブ(panitumumab)(Vectibix(登録商標))、リツキシマブ(rituximab)(Rituxan(登録商標))およびトシツモマブ(tositumomab)(BEXXAR(登録商標))といったモノクローナル抗体;ゲフィチニブ(gefitinib)(Iressa(登録商標))、スニチニブ(sunitinib)(Sutent(登録商標))、エルロチニブ(erlotinib)(Tarceva(登録商標))、ラパチニブ(lapatinib)(GW−572016)、カネルチニブ(canertinib)(CI 1033)、セマキシニブ(semaxinib)(SU5416)、バタラニブ(vatalanib)(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(sorafenib)(BAY 43−9006;Nexavar(登録商標))、イマチニブメシレート(imatinib mesylate)(Gleevec(登録商標))、レフルノミド(leflunomide)(SU101)およびバンデタニブ(vandetanib)(ZACTIM(登録商標);ZD6474)といったチロシンキナーゼ阻害剤およびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない。
【0054】
具体的な抗増殖剤は、シロリムス(sirolimus)(rapamycin)、テムシロリムス(temsirolimus)(CCI−779)、およびエベロリムス(everolimus)(RAD001)といったmTOR阻害剤、1L6−ヒドロキシメチル−チロ−イノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカルボネート、9−メトキシ−2−メチルエリプチシニウムアセテート(9−methoxy−2−methylellipticinium acetate)、1,3−ジヒドロ−1−(1−((4−(6−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−g]キノキサリン−7−イル)フェニル)メチル)−4−ピペリジニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン、10−(4’−(N−ジエチルアミノ)ブチル)−2−クロロフェノキサジン、3−フォルミルクロモンチオセミカルバゾン(3−formylchromone thiosemicarbazone)(Cu(II)Cl複合体)、API−2、癌原遺伝子TCL1の10〜24アミノ酸由来の15−merペプチド(Hiromura et al., J. Biol. Chem., 279:53407−53418 (2004))、KP372−1、およびKozikowski et al., J. Am. Chem. Soc., 125:1144−1145 (2003)およびKau et al., Cancer Cell, 4:463−476 (2003)に記載された組成物といったAkt阻害剤、およびそれらの組み合わせを含む。
【0055】
化学療法剤の非限定的な例は、白金に基づく薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロノプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド(ifosfamide)、クロランブシル(chlorambucil)、ブスルファン(busulfan)、メルファラン(melphalan)、メクロレサミン(mechlorethamine)、ウラムスチン(uramustine)、チオテパ(thiotepa)、ニトロソウレア(nitrosourea)など)、抗−代謝産物(例えば、5−フルオロウラシル(5−fluorouracil)、アザチオプリン(azathioprine)、6−メルカプトプリン(6−mercaptopurine)、メトトレキサン(methotrexate)、ロイコボリン(leucovorin)、カペシタビン(capecitabine)、シタラビン(cytarabine)、フロクスウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)(Gemzar(登録商標))、ペメトレキセド(pemetrexed)(ALIMTA(登録商標))、ラルチトレキセド(raltitrexed)など)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンデスチン(vindesine)、ポドフィルトキシン(podophyllotoxin)、パクリタキセル(paclitaxel)(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(docetaxel)など)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン(amsacrine)、エトポシド(etoposide)(VP16)、エトポシドホスフェート、テニポシド(teniposide)など)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン(doxorubicin)、アドリアマイシン(adriamycin)、ダウロルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、アクチノマイシン、ブレオマイシン(bleomycin)、マイトマイシン、ミトキサントロン(mitoxantrone)、プリカマイシン(plicamycin)など)、それらの製剤的に許容できる塩、、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらの類似体、およびそれらの組み合わせを含む。
【0056】
本発明において有用な癌ワクチンの非限定的な例は、アクティブバイオテック(Active Biotech)からのANYARA、ノースウエストバイオセラピューティクス(Northwest Biotherapeutics)からのDCVax−LB、IDMファーマからのEP−2101、ファルメクサ(Pharmexa)からのGV1001、イデラファーマシューティカル(Idera Pharmaceuticals)からのIO−2055、イントロジェンセラピューチクス(Introgen Therapeutics)からのINGN 225およびバイオミラ/メルク(Biomira/Merck)からのスチムバックス(Stimuvax)を含むが、これに限定されるものではない。
【0057】
放射線治療薬の例は、任意に腫瘍抗原に対する抗体に結合された47Sc,64Cu,67Cu,89Sr,86Y,87Y,90Y,105Rh,111Ag,111In,117mSn,149Pm,153Sm,166Ho,177Lu,186Re,188Re,211Atおよび212Biといった放射性核種を含むが、これに限定されるものではない。
【0058】
いくつかの実施形態において、キャプチャ抗体の各希釈系列は、一連の下降するキャプチャ抗体濃度から構成される。ある例において、キャプチャ抗体は、少なくとも2倍(例えば、2,5,10,20,50,100,500または1000倍)で連続的に希釈されて、アレイ上にスポットされる、規定数(例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25またはそれ以上)の下降キャプチャ抗体濃度から構成される希釈系列を作成する。各キャプチャ抗体の希釈の少なくとも2,3,4,5または6の反復がアレイ上にスポットされることが好ましい。
【0059】
他の実施形態において、固相担体は、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)など)、繊維束、または他の適切な基質から構成される。好ましい実施形態において、キャプチャ抗体は、例えば、Whatman Inc.(Florham Park,NJ)から商業的に入手可能なFAST(登録商標)スライドといった、ニトロセルロースポリマーを塗布されたガラススライド上に(例えば、共有または非共有結合を介して)固定される。
【0060】
いくつかの実施形態において、細胞抽出物は、固形腫瘍の循環細胞の抽出物から構成される。循環細胞は、典型的には、例えば、免疫磁気分離法、CellTrack(登録商標)システム、マイクロ流体分離法、FACS、密度勾配遠心法、および減少法を含む当業者に公知の一つ以上の分離方法を使用して、患者試料から分離される。
【0061】
他の実施形態において、患者試料は、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、および/または細針吸引試料から構成される。ある例において、全血試料は、血漿または血清画分および細胞画分(即ち、細胞沈殿物)に分離される。細胞画分は、典型的には、赤血球細胞、白血球細胞および/またはCTC,CEC,CEPC,リンパ節の播種性腫瘍細胞、および/またはCSCといった固形腫瘍の循環細胞を包含する。血漿または血清画分は、通常、とりわけ、固形腫瘍の循環細胞によって放出される核酸(例えば、DNA、RNA)およびタンパク質を含む。
【0062】
いくつかの例において、分離された循環細胞は、一つ以上の目的の抗癌剤とのインキュベーション前、その間、および/またはその後に、インビトロで一つ以上の増殖因子で刺激され得る。刺激性の増殖因子は、上述される。他の例において、分離された循環細胞は、当業者に公知の任意の技術を使用して細胞抽出物(例えば、細胞溶解物)を作製するために、例えば、増殖因子の刺激および/または抗癌剤処理に続いて溶解され得る。細胞溶解は、増殖因子刺激後約1〜360分の間に開始されることが好ましく、2つの異なる時間間隔:(1)増殖因子刺激後約1〜5分;(2)増殖因子刺激後約30〜180分の間、で開始されることがより好ましい。代わりに、細胞溶解物は、使用まで−80℃で保存され得る。
【0063】
好ましい実施形態において、固形腫瘍の循環細胞といった腫瘍細胞中における多数のシグナル伝達分子の発現および/または活性化状態は、以下に述べるような単一の検出アッセイまたは近接二重検出アッセイを使用して検出される。
【0064】
(IV.抗体アレイの構築)
ある形態において、固形腫瘍の循環細胞といった腫瘍細胞の細胞抽出物における多数のシグナル伝達分子の活性化状態は、固相担体上に固定されたキャプチャ抗体の希釈系列から構成される抗体に基づくアレイを使用して検出される。アレイは、典型的に、異なるアドレス可能な位置において固相担体の表面に連結された、ある範囲のキャプチャ抗体濃度での複数の異なるキャプチャ抗体から構成される。
【0065】
固相担体は、タンパク質を固定するための、任意の適切な基質から構成され得る。固相担体の例は、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、ゲル、金属、セラミクス、などを含むが、これに限定されるものではない。ナイロン(Biotrans(登録商標)),ICN Biomedicals,Inc.(Costa Mesa,CA);Zeta−Probe(登録商標),Bio−Rad Laboratories(Hercules, CA);ニトロセルロース(Protran(登録商標),Whatman Inc.(Florham Park,NJ))および PVDF(Immobilona,Millipore Corp.(Billerica,MA))といった膜が、本発明のアレイにおける固形支持体としての使用に適している。キャプチャ抗体は、Whatman Inc.(Florham Park,NJ)から商業的に入手可能なニトロセルロースポリマー、例えば、FAST(登録商標)スライドを塗布されたガラス上に固定されることが好ましい。
【0066】
望ましい固形支持体の特定の特徴は、多数のキャプチャ抗体への結合能および最小限の変性でのキャプチャ抗体との結合能を含む。他の適切な特徴は、キャプチャ抗体を含む抗体溶液が、固形支持体上に塗布される際、固形支持体が最小限の「ウィッキング(wicking)」を示すことである。最小限のウィッキングを有する固形支持体は、支持体に塗布されるキャプチャ抗体溶液の少量一定分量を許容し、結果として固定されたキャプチャ抗体の小さく明確なスポットをもたらす。
【0067】
キャプチャ抗体は、典型的に、共有または非共有相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子結合)を介して固相担体上に直接または間接的に(例えばキャプチャ抗体を介して)固定される。いくつかの実施形態において、キャプチャ抗体は、標準的な架橋方法および条件を使用して、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性の架橋剤を用いて固相担体に共有結合される。適切な架橋剤は、例えばPierce Biotechnology(Rockford,IL)といった業者から商業的に入手可能である。
【0068】
本発明における使用に適したアレイを製造する方法は、タンパク質または核酸アレイを製造するために使用される任意の技術を含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、キャプチャ抗体は、典型的には、スプリットピンまたはインクジェットプリンタを備えるロボットのプリンタであるマイクロスポッタを使用して、アレイ上にスポットされる。ここで述べる抗体アレイを印刷するために適したロボットシステムは、ChipMaker2スプリットピン(TeleChem International;Sunnyvale,CA)を有するPixSys 5000ロボット(Cartesian Technologies;Irvine,CA)に加えてBioRobics (Woburn,MA)およびPackard Instrument Co.(Meriden,CT)から入手可能な他のロボットのプリンタを含む。各キャプチャ抗体希釈の少なくとも2,3,4,5または6の反復がアレイ上にスポットされることが好ましい。
【0069】
本発明における使用に適したアレイを製造するための他の方法は、支持体上に規定量の液体を取り出すのに効果的な条件下で固相担体上にキャピラリーディスペンサを接触させることによって各選択されたアレイ位置に既知の量のキャプチャ抗体を分注することから構成され、この工程は、完全なアレイを作製するために各選択されたアレイ位置で選択されたキャプチャ抗体の希釈を使用して繰り返される。その方法は、複数のそのようなアレイを形成する際に実施されてもよく、その液体分注工程が、各繰り返しサイクルで複数の固相支持体のそれぞれの上の選択された位置に適用される。そのような方法の更なる説明は、例えば米国特許第5,807,522号明細書に開示されている。
【0070】
ある例において、紙上に印刷するための装置は、抗体アレイを製造するために使用され得る。例えば、所定のキャプチャ抗体希釈が、デスクトップジェットプリンタのプリントヘッドへと積み込まれ得、適切な固相担体上に印刷され得る(例えば、Silzel et al.,Clin.Chem.,44:2036−2043(1998)を参照)。
【0071】
いくつかの実施形態において、固相担体上に作製されたアレイは、少なくとも約5スポット/cmの密度を有し、好ましくは少なくとも約10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200,210,220,230,250,275,300,325,350,375,400,425,450,475,500,550,600,650,700,750,800,850,900,950,1000,2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000,9000または10000スポット/cmを有する。
【0072】
ある例において、固相担体上のスポットは、異なるキャプチャ抗体を示す。ある他の例において、固相担体上の多数のスポットは、例えば、一連の下降キャプチャ抗体濃度から構成される希釈系列のような、同一のキャプチャ抗体を提示する。
【0073】
固相担体上に抗体アレイを作製、構築する方法の追加の例は、米国特許第6,197,599号,第6,777,239号、第6,780,582号、第6,897,073号、第7,179,638号、第7,192,720号、米国特許出願公報第20060115810号明細書、第20060263837号明細書、第20060292680号明細書、第20070054326号明細書;およびVarnum et al., Methods Mol. Biol., 264:161−172 (2004)に記載されている。
【0074】
抗体アレイをスキャンする方法は、当業者に公知であり、タンパク質または核酸アレイをスキャンするために使用される任意の技術を含むが、これに限定されるものではない。本発明の使用に適したマイクロアレイスキャナは、PerkinElmer(Boston,MA),Agilent Technologies(Palo Alto,CA),Applied Precision(Issaquah,WA),GSI Lumonics Inc.(Billerica,MA)およびAxon Instruments(Union City,CA)から入手可能である。非限定的な例として、蛍光検出のためのGSI ScanArray3000 は、定量のためのImaGeneソフトウエアと共に使用され得る。
【0075】
(V.単一検出アッセイ)
いくつかの実施形態において、固形腫瘍の循環細胞といった腫瘍細胞の細胞抽出物中の目的の特定の分析物(例えば、シグナル伝達分子)の活性化状態を検出するためのアッセイは、高いダイナミックレンジを有する、多重でハイスループットの2抗体アッセイである。非限定的な例として、アッセイにおいて使用される2つの抗体は、(1)分析物に特異的なキャプチャ抗体、および(2)分析物の活性型に特異的な検出抗体(即ち、活性化状態依存性抗体)から構成され得る。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化および/または複合体形成の状態を検出することができる。その代わりに、検出抗体は、細胞抽出物中の分析物の総量を検出する、活性化状態非依存性抗体から構成される。活性化状態非依存性抗体は、概して、分析物の活性型および不活性型の両方を検出することができる。
【0076】
好ましい実施形態において、2抗体アッセイは、
(i)複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程と、
(ii)対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体とともに複数の捕捉された分析物をインキュベートして複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程と、
(iii)複数の検出可能な捕捉された分析物を、シグナル増幅対の第1および第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程と、
(iV)シグナル増幅対の第1および第2の要素から生成された増幅されたシグナルを検出する工程と、
から構成される。
【0077】
本明細書で述べる2抗体アッセイは、典型的には、異なるアドレス可能な位置において、固相担体の表面に連結される、一定の範囲のキャプチャ抗体濃度の、複数の異なるキャプチャ抗体から構成される抗体に基づくアレイである。本発明の使用に適した固相担体の例は上述される。
【0078】
キャプチャ抗体および検出抗体は、結合する分析物に対する、それらの間の競合を最小限にするように選択されることが好ましい(即ち、キャプチャ抗体および検出抗体は、それらの対応するシグナル伝達分子と同時に結合し得る)。
【0079】
一つの実施形態において、検出抗体は、結合対の第1の要素(例えば、ビオチン)から構成され、シグナル増幅対の第1の要素は、結合対(例えば、ストレプトアビジン)の第2の要素から構成される。結合対の要素は、当業者に広く知られた方法を使用して、検出抗体とまたはシグナル増幅対の第1の要素と、直接的または間接的に連結され得る。ある例において、シグナル増幅対の第1の要素は、ペルオキシダーゼ(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP))、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、シトクロームcペルオキシダーゼ、エノシノフィルペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、チロイドペルオキシダーゼ、デヨードナーゼ、等)であり、シグナル増幅対の第2の要素は、チラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)である。これらの例において、増幅されたシグナルは、過酸化水素(H)の存在下において、活性型チラミドを生み出すために、チラミド試薬のペルオキシダーゼ酸化によって生成される。
【0080】
活性型チラミドは、直接検出されるか、或いは、例えば、ストレプトアビジン標識フルオロフォア、またはストレプトアビジン標識フルオロフォアと発色試薬との組み合わせといったシグナル検出試薬の添加によって検出されるかのいずれかである。本発明の使用に適したフルオロフォアの例は、アレクサフルオール(Alexa Fluor(登録商標))染色剤(例えば、Alexa Fluor(登録商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(Oregon Green(登録商標); ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(登録商標)フルオール(例えば、Cy2,Cy3,Cy5)等を含むが、これに限定されるものではない。ストレプトアビジン標識フルオロフォア標識は、当業者に広く知られた方法を用いて、フルオロフォア又はペルオキシダーゼに直接又は間接的に連結され得る。本発明の使用に適した発色試薬の非限定的な例は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾチン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)および/又はポルフィリノーゲンを含む。
【0081】
本明細書において述べる2抗体アッセイを実施するための具体的なプロトコルは、実施例3において提供される。
【0082】
その他の実施形態において、本発明は、上述した2抗体アッセイを実施するためのキットを提供し、このキットは、(a)固相担体上に固定された複数のキャプチャ抗体の希釈系列と、(b)複数の検出抗体(例えば、活性化状態依存性抗体および/または活性化状態非依存性抗体)と、から構成される。いくつかの例において、このキットは更に、固形腫瘍の循環細胞の複数のシグナル伝達分子の活性化状態を検出するためのキットを用いる方法のための取扱説明書を含み得る。このキットはまた、例えば、シグナル増幅対の第1および第2の要素、チラミドシグナル増幅試薬、洗浄用緩衝液、などといった本発明の特定の方法を実施することに関して上述された任意の追加の試薬を含んでもよい。
【0083】
(VI.近接2重検出アッセイ)
いくつかの実施形態において、固形腫瘍の循環細胞といった腫瘍細胞の細胞抽出物中における目的の特定の分析物の活性化状態を検出するためのアッセイは、高いダイナミックレンジを有する、多重で、ハイスループットの近接(即ち、3抗体)アッセイである。非限定的な例として、この近接アッセイにおいて使用される2つの抗体は、(1)分析物に特異的なキャプチャ抗体と、(2)分析物の活性型に特異的な検出抗体(即ち、活性化状態依存性抗体)と、(3)分析物の総量を検出する検出抗体(即ち、活性化状態非依存性抗体)と、から構成され得る。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化、および/または複合体形成状態を検出することができる。活性化状態依存性抗体は、概して、分析物の活性型および非活性型の両方を検出することができる。
【0084】
好ましい実施形態において、近接アッセイは、
(i)複数の捕捉された分析物を形成するための複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに細胞抽出物をインキュベートする工程と、
(ii)複数の検出可能な捕捉された分析物を形成するための対応する分析物に特異的な複数の活性化状態非依存性抗体と活性化状態依存性抗体とから構成される検出抗体とともに複数の捕捉された分析物をインキュベートする工程であって、この活性化状態非依存性抗体は、促進部位で標識され、活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の要素で標識され、この促進部位は、シグナル増幅対の第1の要素に向けられて反応する酸化剤を生成する、工程と、
(iii)増幅されたシグナルを生成するために、シグナル増幅対の第2の要素とともに複数の検出可能な捕捉された分析物をインキュベートする工程と、
(iv)シグナル増幅対の第1および第2の要素から生成された増幅シグナルを検出する工程と、から構成される。
【0085】
その代わりに、活性化状態依存性抗体は、促進部位で標識され得、活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の要素で標識され得る。
【0086】
本明細書において述べる近接アッセイは、典型的には、異なるアドレス可能な位置における固相担体の表面に連結された、一定の範囲のキャプチャ抗体濃度の、複数の異なるキャプチャ抗体から構成される抗体に基づくアッセイである。本発明における使用に適した固相担体の例は、上述される。
【0087】
キャプチャ抗体、活性化状態非依存性抗体、および活性化状態依存性抗体は、分析物の結合に関して、それらの間の競合を最小限にするように選択される(即ち、全ての抗体が、同時に、それらの対応するシグナル伝達分子に結合し得る)ことが好ましい。
【0088】
いくつかの実施形態において、活性化状態非依存性抗体は更に、検出可能部位から構成される。そのような例において、検出可能部位の量は、細胞抽出物における一つ又は複数の分析物の量に相関する。検出可能部位の例は、蛍光標識、化学反応性標識、酵素標識等を含むが、これに限定されるものではない。検出部位は、アレクサフルオール(Alexa Fluor(登録商標))染色剤 (例えば、Alexa Fluor(登録商標)647)、フルオレセイン(fluorescein)、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)、オレゴングリーン(Oregon Green(登録商標));ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(登録商標)フルオール (例えば、Cy2,Cy3,Cy5)等であることが好ましい。検出可能部位は、当業者に広く知られた方法を用いて、活性化状態非依存性抗体に直接または間接的に連結され得る。
【0089】
ある例において、活性化状態非依存性抗体は、促進部位で直接、標識される。促進部位は、当業者に公知の方法を用いて活性化状態非依存性抗体に連結され得る。本発明における使用に適した促進部位は、促進部位に近接する(即ち、空間的に隣接または接近する)他の分子に向けられ(即ち、方向付けられ)、この分子と反応する(即ち、それと結合する、それによって結合される、又はそれと複合体を形成する)酸化剤を生成することができる任意の分子を含む。促進部位の例は、グルコースオキシダーゼまたは電子受容体として酸素分子(O)を含む酸化/還元反応を触媒する他の酵素といった酵素、メチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、スクアル酸染色剤、フタロシアニン等といった光感受性物質と、を含むが、これに限定されるものではない。酸化剤の非限定的な例は、過酸化水素(H)、一重項酸素、および酸化/還元反応において酸素原子を移動させる又は電子を得る任意の化合物を含む。適切な基質(例えば、グルコース、光など)の存在下において、促進部位(例えば、グルコースオキシダーゼ、光感受性物質等)は、シグナル増幅対の第1の要素(例えば、セイヨウワサビベルオキシダーゼ(HRP)、保護基によって保護されたハプテン、酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素等)に向けられ、2つの部位が互いに近接する場合に、それと反応する酸化剤(例えば、過酸化水素、一重項酸素等)を生成する。
【0090】
ある他の例において、活性化状態非依存性抗体は、活性化状態非依存性抗体に共役されたオリゴヌクレオチドリンガーと促進部位に共役された相補オリゴヌクレオチドリンカーとの間のハイブリダイゼーションを介して促進部位で間接的に標識される。オリゴヌクレオチドリンカーは、当業者に公知の方法を用いて促進部位または活性化状態非依存性抗体に連結され得る。いくつかの実施形態において、促進部位に連結されたオリゴヌクレオチドリンカーは、活性化状態非依存性抗体に連結されたオリゴヌクレオチドリンカーに100%相補性を有する。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカー対は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、少なくとも1,2,3,4,5,6またはそれより多いミスマッチ領域を備える。当業者は、異なる分析物に特異的な活性化状態非依存性抗体が、同一のオリゴヌクレオチドリンカーに連結されてもよく、または異なるオリゴヌクレオチドリンカーに連結されてもよいことを理解するだろう。
【0091】
促進部位または活性化状態非依存性抗体に連結されるオリゴヌクレオチドリンカーの長さは、様々であり得る。概して、リンカー配列は、少なくとも約5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,75または100ヌクレオチドの長さである。典型的には、ランダムな核酸配列が共役のために生成させる。非限定的な例として、オリゴヌクレオチドリンカーのライブラリは、3つの明確な隣接ドメインと、スペーサドメインと;シグナチュアドメインと;共役ドメインと、を有するように設計され得る。オリゴヌクレオチドリンカーは、それらが共役される促進部位又は活性化状態非依存性抗体の機能を破壊することなく効果的に共役するように設計される。
【0092】
オリゴヌクレオチドリンカー配列は、多様なアッセイ条件下で、あらゆる2次構造形成を阻害又は最小化するように設計され得る。溶解温度は、典型的には、リンカー内の各断片について注意深く監視され、アッセイ手順全体において、それらの関与を認めるようにする。概して、リンカー配列の断片の溶解温度の範囲は、1〜10℃の間である。所定のイオン濃度下における溶解温度、2次構造およびヘアピン構造を決定するためのコンピュータアルゴリズム(例えば、OLIGO6.0)は、各リンカー内の3つの異なるドメインそれぞれを分析するために使用され得る。全体を組み合わせた配列も、それらの構造特徴および共役されたオリゴヌクレオチドリンカー配列との比較可能性、例えば、それらがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、相補オリゴヌクレオチドリンカーとハイブリダイズするかどうかについて分析され得る。
【0093】
オリゴヌクレオチドリンカーのスペーサ領域は、オリゴヌクレオチド架橋部位から共役ドメインを充分に分離する。共役ドメインは、相補的なオリゴヌクレオチドリンカー配列で標識された分子を核酸ハイブリダイゼーションを介して共役ドメインに連結する働きをする。核酸を介したハイブリダイゼーションは、抗体−分析物(即ち、抗原)複合体形成の前または後のいずれかにおいて実施され得、より柔軟なアッセイ形式を与える。多くの直接抗体共役法と異なり、抗体又は他の分子への比較的小さいヌクレオチドの連結は、それらの標的分析物に対する抗体の特異的な親和性又は共役された分子の機能に対して最小限の影響を有する。
【0094】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカーのシグナチュア配列ドメインは、複合多重タンパク質アッセイにおいて利用され得る。多数の抗体が、異なるシグナチュア配列を有するオリゴヌクレオチドリンカーと共役され得る。多重免疫アッセイにおいて、適切なプローブで標識されたレポーターオリゴヌクレオチド配列は、多重アッセイ形式において、抗体とそれらの抗原との間の交差反応性を検出するために使用され得る。
【0095】
オリゴヌクレオチドリンカーは、様々な異なる方法を用いて抗体または他の分子に連結され得る。例えば、オリゴヌクレオチドリンカーは、5’または3’末端のいずれかにチオール基を付加して合成され得る。チオール基は、還元剤(例えば、TCEP−HCl)を用いて脱保護され得、その結果として得られるリンカーは脱塩スピンカラムを用いることによって精製され得る。その結果として脱保護されるオリゴヌクレオチドリンカーは、SMCCといったヘテロ二官能性クロスリンカーを用いて抗体または他の種類のタンパク質の1級アミンに連結され得る。その代わりに、オリゴヌクレオチドの5’−リン酸基は、リン酸エステルを生成するために、水溶性カルボジイミン・EDCで処理され得、同時にアミン含有分子と共役され得る。ある例において、3’リボース残基上のジオールは、アルデヒド基へと酸化され、その後、還元アミン化を用いて、抗体または他の種類のタンパク質のアミン基と共役され得る。ある例において、オリゴヌクレオチドリンカーは、3’または5’末端のいずれかにおいてビオチン化されて合成され得、ストレプトアビジン標識分子と共役され得る。
【0096】
オリゴヌクレオチドリンカーは、 Usman et al., J. Am. Chem. Soc., 109:7845 (1987); Scaringe et al., Nucl. Acids Res., 18:5433 (1990); Wincott et al., Nucl. Acids Res., 23:2677−2684 (1995); および Wincott et al., Methods Mol. Bio., 74:59 (1997)に記載された方法などの、当業者に公地の様々な任意の技術を用いて合成され得る。概して、オリゴヌクレオチドの合成は、5’末端ではジメトキシトリチル、3’末端ではホスホールアミダイト、などの一般的な核酸保護カップリング基を使用する。オリゴヌクレオチド合成のための適切な試薬、核酸脱保護のための方法、および核酸精製のための方法は、当業者にとって公知である。
【0097】
ある例において、活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の因子で標識される。そのシグナル増幅対の因子は、当業者に公知の方法を用いて、直接、活性化状態依存性抗体に共役され得る。ある他の例において、活性化状態依存性抗体は、活性化状態依存性抗体に共役された結合対の第1の因子と、シグナル増幅対の第1の因子に共役された結合対の第2の因子との間の結合を介して、シグナル増幅対の第1の因子で、間接的に標識される。結合対の因子(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)は、当業者に公知の方法を用いてシグナル増幅対の因子または活性化状態依存性抗体に連結され得る。シグナル増幅対因子の例は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、シトクロームc ペルオキシダーゼ、エノシノフィルペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、チロイドペルオキシダーゼ、デイオダイナーゼ、などといったペルオキシダーゼを含むが、これに限定されるものではない。シグナル増幅対因子の他の例は、保護基によって保護されたハプテンおよび酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素を含む。
【0098】
近接チャネリングの一つの例は、促進部位が、グルコースオキシダーゼ(GO)であり、シグナル増幅対の第1の因子が、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。GOが、グルコースといった基質と接触されると、それは、酸化剤(すなわち、過酸化水素(H))を生成する。HRPがGOへとチャネリング近接内にある場合、GOによって生成された過酸化水素は、HRPに向けられ、複合体を形成して、シグナル増幅対の第2の因子(例えば、ルミノールまたはイソルミノールといった化学発光性基質、あるいはチラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸またはヒドロキシフェニル酢酸といった蛍光生成基質)の存在下で、増幅されたシグナルを生成する、HRP−H複合体を形成する。近接アッセイにおいてGOおよびHRPを用いる方法は、例えば、Langry et al., U.S. Dept. of Energy Report No. UCRL−ID−136797 (1999)に記載されている。ビオチン−チラミドが、シグナル増幅対の第2の因子として使用される場合、HRP−H複合体は、チラミドを酸化して、隣接するヌクレオフィル残基に共有結合する還元性チラミドラジカルを生成する。活性型チラミドは、直接検出されるか、または、例えば、ストレプトアビジン標識フルオロフォアまたはストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせといったシグナル検出試薬の添加によって検出されるか、のいずれかである。本発明における使用に適したフルオロフォアの例は、アレクサフルオール(Alexa Fluor(登録商標))染色剤(たとえば、アレクサフルオール555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(登録商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(登録商標)フルオール(例えば、Cy2,Cy3,Cy5)などを含むが、これに限定されるものではない。ストレプトアビジン標識は、当業者に公知の方法を用いて、直接または間接的にフルオロフォアまたはペルオキシダーゼに連結され得る。本発明の使用に適したクロモジェニック試薬の非限定的な例は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)および/またはポルフィリノーゲンを含む。
【0099】
近接チャネリングの他の例において、促進部位は、光増感剤であり、シグナル増幅対の第1の因子は、特異的な結合相手(例えば、リガンド、抗体など)へのハプテンの結合を避ける保護基で保護された多重ハプテンで標識された巨大分子である。例えば、シグナル増幅対因子は、保護されたビオチン、クマリン、および/またはフルオレセイン分子で標識されたデキストラン分子であり得る。適切な保護基の例は、フェニル−、アナリノ−(analino−)、オレフィン−、チオエーテル、およびセレノエーテル−保護基を含むが、これに限定されるものではない。本発明の近接アッセイにおける使用に適した追加の光発生剤および保護されたハプテン分子は、米国特許第5,807,675号に記載されている。光発生剤は、光で励起されると、それは酸化剤(すなわち一重項酸素)を生成する。ハプテン分子が、光発生剤とチャネリング近接内にある場合、光発生剤によって生成された一重項酸素は、ハプテンの保護基上のチオエーテルに向けられ、チオエーテルと反応して、カルボニル基(ケトンまたはアルデヒド)およびスルフィン酸を生成し、ハプテンから保護基を放出する。保護されていないハプテンは、その後、シグナル増幅対の第2の因子(例えば、検出可能なシグナルを生成し得る特異的な結合相手)と特異的に結合するのに利用され得る。例えば、ハプテンがビオチンであると、特異的な結合相手は、酵素標識ストレプトアビジンであり得る。具体的な酵素は、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、HRPなどを含む。洗浄して非結合試薬を除去した後、検出可能なシグナルは、その酵素の検出可能な(例えば、蛍光、化学発光、ケモジェニックなどの)基質を添加することによって生成され、当業者に公知の適切な方法および装置を用いて検出され得る。その代わりに、検出可能なシグナルは、チラミドシグナル増幅を用いて増幅され得、活性化されたチラミドは、直接的に検出され、または上述したようなシグナル検出試薬の添加によって検出され得る。
【0100】
近接チャネリングのさらに他の例において、促進部位は、光発生剤であり、シグナル増幅対の第1の因子は、酵素−阻害剤複合体である。酵素および阻害剤(例えば、リン酸標識デキストラン)は、切断可能なリンカー(例えば、チオエーテル)によって一緒に連結される。光発生剤が、光で励起されると、酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。酵素−阻害剤複合体が光発生剤とチャネリング近接内にある場合、光発生剤によって生成された一重項酸素は、切断可能なリンカーに向けられ、このリンカーと反応し、酵素から阻害剤を放出して、それによって酵素を活性化する。酵素基質が、検出可能なシグナルを生成するために添加され、または、増幅剤が、増幅したシグナルを生成するために添加される。
【0101】
近接チャネリングのさらなる例は、促進部位がHRPであり、シグナル増幅対の第1の要素が保護されたハプテンまたは上述したような酵素−阻害剤複合体であり、保護基はp−アルコキシフェノールから構成される。フェニレンジアミンおよびHの添加は、保護されたハプテンまたは酵素−阻害剤複合体に向けられる反応性フェニレンジイミンを生成し、p−アルコキシフェノール保護基と反応して、露出したハプテンまたは反応し酵素を生成する。増幅されたシグナルが生成され、上述のように検出される(例えば、米国特許第5532138号明細書および第5,445,944号明細書を参照)。
【0102】
本明細書において述べる近接アッセイを実施するための具体的なプロトコルは、実施例4に提供される。
【0103】
他の実施形態において、本発明は、(a)固相担体上に固定された複数のキャプチャ抗体の希釈系列と;(b)複数の検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体および活性化状態依存性抗体)と、から構成される、上述した近接アッセイを実施するためのキットを提供する。いくつかの例において、そのキットはさらに、固形腫瘍の循環細胞の複数のシグナル伝達分子の活性化状態を検出するためにそのキットを使用する方法に関する使用説明書を含み得る。そのキットは、たとえば、シグナル増幅対の第1および第2の要素、チラミドシグナル増幅試薬、促進部位に対する基質、洗浄用緩衝液など、といった本発明の特定の方法を実施するという観点で上述した任意の追加の試薬を含んでもよい。
【0104】
(VII.抗体の作製)
本発明に係る希少循環細胞といった腫瘍細胞におけるシグナル伝達分子の活性化状態を分析するために、依然として商業的に入手可能ではない抗体の作製および選択は、様々な方法で成し遂げられ得る。例えば、一つの方法は、当業者に公知のタンパク質発現および精製方法を使用して、目的のポリペプチド(すなわち、抗原)を発現および/または精製することであり、一方、他の方法は、当業者に公知の固相ペプチド合成法を使用して目的のポリペプチドを合成することである。例えば、Guide to Protein Purification, Murray P. Deutcher, ed., Meth. Enzymol., Vol. 182 (1990); Solid Phase Peptide Synthesis, Greg B. Fields, ed., Meth. Enzymol., Vol. 289 (1997); Kiso et al., Chem. Pharm. Bull., 38:1192−99 (1990); Mostafavi et al., Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids, 1:255−60, (1995); and Fujiwara et al., Chem. Pharm. Bull., 44:1326−31 (1996)を参照する。精製され、または合成されたポリペプチドは、その後、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製するために、例えば、マウスまたはウサギに注射され得る。当業者は、例えば、A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988)に記載されるような、多くの手法が抗体の製造のために利用可能であることを認識しているだろう。当業者はまた、結合断片または抗体を真似た(例えば、その機能性結合領域を保有する)Fab断片も様々な手法によって遺伝子情報から用意され得ることも理解しているだろう。例えば、Antibody Engineering: A Practical Approach, Borrebaeck, Ed., Oxford University Press, Oxford (1995); and Huse et al., J. Immunol., 149:3914−3920 (1992)を参照する。
【0105】
加えて、多数の刊行物は、選択された標的抗原に結合するためのポリペプチドライブラリを作製しスクリーニングするためのファージディスプレイ技術の使用を報告している(例えば、Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378−6382 (1990); Devlin et al., Science, 249:404−406 (1990); Scott et al., Science, 249:386−388 (1990); and Ladner et al., U.S. Patent No. 5,571,698)を参照)。ファージディスプレイ法の基本的な概念は、ファージDNAによってコードされたポリペプチドと標的抗原との間の物理的な結合の形成である。この物理的な結合は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを包囲するカプシドの部分としてポリペプチドを提示する、ファージ粒子によって与えられる。ポリペプチドとそれらの遺伝物質との間の物理的な結合の形成は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時マススクリーニングを許容する。標的抗原への親和性を有するポリペプチドを提示するファージは、標的抗原に結合し、これらのファージは、標的抗原への親和性スクリーニングによって濃縮される。これらのファージから提示されるポリペプチドの同一性は、それらのそれぞれのゲノムから決定され得る。これらの方法を用いて、所定の標的抗原に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドは、その後、従来の方法によって大量に合成され得る(例えば、米国特許第6,057,098号を参照)。
【0106】
これらの方法によって作製された抗体は、その後、目的の精製されたポリペプチド抗原との親和性および特異性に関する第1のスクリーニングによって選択され得、必要に応じて、結合から除外されると望まれる他のポリペプチド抗原との抗体の親和性および特異性と、その結果を比較する。スクリーニング手法は、マイクロタイタープレートの個々のウェルにおける、精製されたポリペプチド抗原の固定化を含み得る。潜在的な抗体または抗体の集団を含む溶液は、その後、各マイクロタイターウェルへと入れられ、約30分から約2時間インキュベートされる。マイクロタイターウェルは、その後洗浄され、標識された第2の抗体(例えば、上昇させられた抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼを共役された抗−マウス抗体)がウェルに添加されて、約30分間インキュベートされ、その後洗浄される。基質がウェルに添加され、固定されたポリペプチド抗原に対する抗体が存在すると、色反応が現れるだろう。
【0107】
そのように同定された抗体は、その後、さらに親和性および特異性に関して分析され得る。標的タンパク質に対する免疫アッセイの開発において、精製された標的タンパク質が、選択されている抗体を用いた免疫アッセイの感度と特異性を判断するための標準物質として働く。様々な抗体の結合親和性は異なり得、例えば、ある抗体の組み合わせは、互いに立体的に阻害し得るので、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性および特異性よりも重要な基準であり得る。
【0108】
当業者は、抗体または結合断片を作製し、目的の様々なポリペプチドに対する親和性および特異性に関してスクリーニングし、および選択するのに、多くのアプローチが採られ得、これらのアプローチが本発明の範囲を変更するものではないことを認識するだろう。
【0109】
(A.ポリクローナル抗体)
ポリクローナル抗体は、目的のポリペプチドおよびアジュバントの、多数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって動物内で増加されることが好ましい。二官能性物質または誘導体化剤を使用して、目的のポリペプチドを、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ−サイログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤といった、その種において免疫性を付与する免疫原性のタンパク質キャリアに共役することは有用であり得る。二官能性物質または誘導体化剤の非限定的な例は、マレイミドベンゾイルスルホスクシニミドエステル(システイン残基を介する共役)、N−ヒドロキシスクシニミド(リジン残基を介して共役)、グルタルアルデヒド、スクシニックアンヒドリド、SOClおよびRN=C=NR(RおよびRは異なるアルキル基である)を含む。
【0110】
動物は、目的のポリペプチドまたは免疫原性共役物またはそれらの誘導体に対して、例えば、100μg(対ウサギ)または5μg(対マウス)の抗原または3倍量のフロイド完全アジュバントとの共役物を混合して、多数部位でその溶液を皮内に注射されることによって免疫性を付与される。一ヵ月後、その動物は、多数部位での皮下注射によって、元々の量の約1/5〜1/10の量のポリペプチドまたはフロイド非感染アジュバントでブーストされる。7〜14日後、その動物は、血を採られ、その血清が、抗体力価に関して分析される。動物は、典型的に、力価が安定するまでブーストされる。動物は、同一のポリペプチドの共役物でブーストされることが好ましいが、異なる免疫原性たんぱく質への共役および/または異なる架橋試薬が使用されてもよい。共役はまた、融合たんぱく質として、組み換え細胞培養において成され得る。ある例において、硫酸アルミニウムといった凝集剤が免疫反応を高めるために使用されうる。
【0111】
(B.モノクローナル抗体)
モノクローナル抗体は、概して、実質的に相同な抗体の集団から得られ、すなわち、その集団から構成される個々の抗体は、少量存在していてもよい生じうる自然発生変異を除いて同一である。したがって、修飾語句「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないとする抗体の特徴を示す。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって開示されたハイブリドーマ法を用いて、または当業者に公知の任意の組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)によって作製されうる。
【0112】
ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切なホスト動物(例えば、ハムスター)が、上述したように免疫を付与され、免疫付与に使用された目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体を作製し、または作製することができるリンパ球を誘発させる。)その代わりに、リンパ球が、インビトロで免疫される。免疫されたリンパ球は、その後、ポリエチレングリコールといった適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp. 59−103 (1986)を参照)。そのように調整されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一つ以上の基質を含む適切な培地中に植えられて増殖する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポチサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を欠損している場合、ハイブリドーマ細胞のための培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を阻害する、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含むだろう。
【0113】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体細胞による安定で高レベルな抗体の生産を支持し、および/またはHAT培地といった培地に感受性である細胞である。ヒトモノクローナル抗体の作製に関して、そのような好ましい骨髄腫細胞系統は、(Salk Institute Cell Distribution Center; San Diego,CAから入手可能な)MOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、(American Type Culture Collection; Rockville,MDから入手可能な)SP−2またはX63−Ag8−653細胞といった、齧歯類骨髄腫系統、およびヒト骨髄腫またはマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統を含むが、これに限定されるものではない(例えば、Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);およびBrodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51−63 (1987)を参照)。
【0114】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、目的のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の産生に関して分析され得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)または 酵素結合免疫吸着法(ELISA)といったインビトロ結合アッセイによって決定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード解析を使用して決定され得る。
【0115】
ハイブリドーマ細胞が所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生することが確認された後、そのクローンは、限界希釈手法によってサブクローン化されてよく、標準的な方法で、増殖されてよい(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp. 59−103 (1986)を参照)。この目的のために適した培地は、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。また、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖されてもよい。サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A−セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーといった、従来の抗体精製手法によって、培地、腹水または血清から分離され得る。
【0116】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に分離されて従来の手法を使用して(例えば、齧歯類抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定され得る。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい源として役立つ。一旦、分離されると、DNAは、発現ベクターに挿入されてよく、その後、そうでなければ抗体を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞に導入されて、組み換えホスト細胞中においてモノクローナル抗体の合成を誘導する。例えば、Skerra et al., Curr. Opin. Immunol., 5:256−262 (1993);およびPluckthun, Immunol Rev., 130:151−188 (1992)を参照する。DNAはまた、例えば、相同な齧歯類配列をヒト重鎖および軽鎖不変ドメインをコードする配列に置換することによって(例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984)を参照)または非イムノグロブリンポリペプチドをコードする配列のすべてまたは一部をイムノグロブリンをコードする配列に共有結合することによって改変され得る。
【0117】
さらなる実施形態において、モノクローナル抗体または抗体断片は、例えば、McCafferty et al., Nature, 348:552−554 (1990);Clackson et al., Nature, 352:624−628 (1991); およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581−597 (1991)に記載された技術を使用して作製される抗体ファージライブラリーから分離され得る。鎖シャッフリングによる高い親和性(nMレンジ)のヒトモノクローナル抗体の製造は、Marks et al., BioTechnology, 10:779−783 (1992)に記載されている。非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてコンビナトリアル感染およびin vivo組み換えの使用は、Waterhouse et al., Nuc. Acids Res., 21:2265−2266 (1993)に記載されている。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体の製造のために伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な代替案である。
【0118】
(C.ヒト化抗体)
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当業者に公知である。ヒト化抗体は、非ヒトであるソースからそれに導入された一つ以上のアミノ酸残基を有することが好ましい。これらの非ヒトのアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には、「インポート」可変ドメインから採られる。ヒト化は、本質的に、非ヒト抗体の超可変領域の配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって実施され得る。例えば、Jones et al., Nature, 321:522−525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323−327 (1988); and Verhoeyen et al., Science, 239:1534−1536 (1988)を参照する。従って、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(例えば、米国特許第4,816,567号参照)であり、完全なヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されることは実質的にほとんどない。実際に、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域の残基および可能ないくつかのフレームワーク領域(FR)の残基が齧歯類抗体のアナログ部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
【0119】
本明細書において述べられるヒト化抗体を作製するのに使用されるヒト可変ドメイン、軽鎖および重鎖の両方、の選択は、抗原性を低下するために重要な検討事項である。いわゆる「最適な」方法によると、齧歯類抗体の可変領域が、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされた。齧歯類の配列にもっとも近いヒトの配列は、その後、ヒト化抗体のためのヒトFRとして受け入れられる(例えば、Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);およびChothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987)を参照)。他の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブ集団のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のFRを用いる。同じFRは、様々な異なるヒト化抗体のために使用されてもよい(例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); および Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照)。
【0120】
抗体は、抗原に対する高い親和性の保持、または他の有利な生物学的特性を有してヒト化されることも重要である。この目的を達成するため、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いた親配列と様々な概念上のヒト化された産物との分析プロセスによって用意され得る。三次元イムノグロブリンモデルは、共通して利用され得、当業者にはよく知られている。選択された候補イムノグロブリン配列の予想される三次元コンフォメーション構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが利用できる。これらの調査表示は、候補イムノグロブリン配列の機能性における残基の好ましい役割の分析、即ち、候補イムノグロブリンのその抗原への結合能に影響する残基の分析を可能にする。この方法において、FR残基は、受容およびインポート配列から選択されて組み合わせられ得るので、標的抗原に対する増加した親和性といった所望の抗体の特徴が得られる。概して、超可変領域残基は、直接的かつ特異的に抗原結合に影響する。
【0121】
様々な形状のヒト化抗体が本発明に関して意図される。例えば、ヒト化抗体は、Fab断片といった抗体断片であり得る。代わりに、ヒト化抗体は、完全なIgA、IgGまたはIgM抗体といった完全な抗体であり得る。
【0122】
(D.ヒト抗体)
ヒト化の代替案として、ヒト抗体が生成され得る。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物(例えば、マウス)は、免疫付与において、内因性イムノグロブリンの産生のない状態で、ヒト抗体の完全なレパートリを産生することができる。例えば、キメラ生殖系突然変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)のホモ接合体欠失は、内因性抗体の産生の完全な阻害という結果をもたらす。そのような生殖系突然変異マウスにおけるヒト生殖系イムノグロブリン遺伝子アレイのトランスファーは、抗原チャレンジにおけるヒト抗体の産生という結果をもたらすだろう。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255−258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immun., 7:33 (1993);および米国特許第5,591,669号,第5,589,369号,および第5,545,807号を参照する。
【0123】
代わりに、ファージディスプレイ技術(例えば、McCafferty et al., Nature, 348:552−553 (1990)を参照)が、免疫されていないドナーからのイムノグロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを用いて、ヒト抗体および抗体断片をインビトロで産生するのに使用され得る。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdといったフィラメントバクテリオファージのメジャーまたはマイナーのいずれかのコートタンパク質遺伝子へとインフレームでクローン化され、ファージ粒子の表面上で機能性抗体断片として提示される。フィラメント粒子は、ファージゲノムの単鎖DNAコピーを包含するので、抗体の機能特性に基づく選択はまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択という結果になる。従って、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 3:564−571 (1993)に記載されるように、様々な形式で実施され得る。V遺伝子セグメントの様々なソースは、ファージディスプレイのために使用され得る。例えば、Clackson et al., Nature, 352:624−628 (1991)を参照する。免疫されていないヒトドナーからのV遺伝子レパートリーが構築され得、(自己抗原を含む)抗原の多様なアレイへの抗体が、本質的に、Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581−597 (1991); Griffith et al., EMBO J., 12:725−734 (1993);および米国特許第5,565,332号および第5,573,905号に記載された技術に従って分離され得る。
【0124】
ある例において、ヒト抗体は、米国特許第5,567,610号および第5,229,275号に記載されるようにインビトロで活性化されたB細胞によって産生され得る。
【0125】
(E.抗体断片)
様々な技術が、抗体断片の製造のために開発されてきている。伝統的に、これらの断片は、完全な抗体のタンパク質分解を介して得られた(例えばMorimoto et al., J. Biochem. Biophys. Meth., 24:107−117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照)。しかしながら、これらの断片は、現在は、組み換えホスト細胞を用いて、直接的に作製され得る。例えば、抗体断片は、上述した抗体ファージライブラリから分離され得る。代わりに、Fab’−SH断片は、E.coli細胞から直接、回収され、化学的に共役されて、F(ab’)断片を形成することができる(例えば、Carter et al., BioTechnology, 10:163−167 (1992)を参照)。他のアプローチによると、F(ab’)断片は、組み換えホスト細胞培養から直接、分離され得る。抗体断片の他の製造技術は、当業者にとって明らかであるだろう。他の実施形態において、選択される抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際公開93/16185号;および米国特許第5,571,894 号および第5,587,458号を参照する。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように直線抗体であってもよい。そのような直線抗体断片は、単一特異的であってよく、または二重特異的であってもよい。
【0126】
(F.二重特異性抗体)
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。具体的な二重特異性抗体は、目的の同じポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合してもよい。他の二重特異性抗体は、目的のポリペプチドに対する結合部位と一つ以上の追加の抗原に対する結合部位とを兼ね備えてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’) 二重特異性抗体)として調整され得る。
【0127】
二重特異性抗体の作製方法は当業者に公知である。全長二重特異性抗体の伝統的な製造は、2つの鎖が異なる特異性を有する、2つのイムノグロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づく(例えば、Millstein et al., Nature, 305:537−539 (1983)を参照)。イムノグロブリンの重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を酸性紙、そのうちの一つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティクロマトグラフィによって実施される。同様の手法が、国際公開第93/08829号およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655−3659 (1991)に開示される。
【0128】
異なるアプローチによると、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、イムノグロブリンの共通ドメイン配列に融合される、融合体は、少なくともヒンジの一部、CH2およびCH3領域から構成されるイムノグロブリン重鎖共通ドメインを有することが好ましい。少なくとも融合体の一つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖共通領域(CH1)を有することが好ましい。イムノグロブリン重鎖融合体および必要であればイムノグロブリン軽鎖をコードするDNAは、個々の発現ベクターに挿入され、適切なホスト生物に共導入される。これにより、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす場合、実施形態における3つのポリペプチド断片の相互の比率を非常に柔軟に調整することができるようになる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖が等しい割合で高い収率をもたらす場合、または比率が特に重要ではない場合、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0129】
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、一つの手腕に第1の結合特異性を有するハイブリッドイムノグロブリン重鎖を、他方の手腕に(第2の結合特異性を与える)ハイブリッドイムノグロブリン重鎖−軽鎖対を備える。イムノグロブリン軽鎖が二重特異性分子の一方のみに存在することは、分離を容易にするので、この非対称な構造は、望まないイムノグロブリン鎖の組み合わせ物から所望の二重特異性組成物の分離を促進する。例えば、国際公開第94/04690号およびSuresh et al., Meth. Enzymol., 121:210 (1986)を参照する。
【0130】
米国特許第5,731,168号に記載される他のアプローチによると、抗体分子の対の接合部は、組み換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーの割合を最大化するように改変され得る。好ましい接合部は、抗体共通ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部から構成される。この方法において、第1の抗体分子の接合部からの一つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置換される。大きな側鎖と同一または類似の寸法の補償「空洞(cavity)」は、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもので置換することによって、第2の抗体分子の接合部上に形成される。これは、ホモダイマーといった他の望まない最終産物に対するヘテロダイマーの収率を増加させるための機構を与える。
【0131】
二重特異性抗体は、架橋された、または「ヘテロ複合体」抗体を含む。例えば、ヘテロ複合体における抗体の一方はアビジンと連結され、他方はビオチンと連結される。ヘテロ複合体抗体は、任意の使い易い架橋方法を用いて作製され得る。適切な架橋剤および技術は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第4,676,980号に開示される。
【0132】
抗体断片から二重特異性抗体を作製するために適した技術も当業者に公知である。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて用意され得る。ある例において、二重特異性抗体は、完全な抗体がタンパク質分解によって切断されて、F(ab’)断片を作製する手法によって作製され得る(例えば、Brennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照)。これらの断片は、近接するジチオールを安定化するためにチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、分子内ジスルフィドの形成を回避される。作製されたFab’断片は、その後、チオニトロベンゼゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’−TNB誘導体の一つは、その後、メルカプトエチルアミンを用いて還元されることによってFab’−チオールに再変換され、等モルの他のFab’−TNBと混合されて二重特異性抗体が形成される。
【0133】
いくつかの実施形態において、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収され得、化学的に共役されて二重特異性抗体を形成することができる。例えば、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子は、Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217−225 (1992)に記載された方法によって製造され得る。各Fab’断片は、E.coliから別々に分泌され、インビトロで直接化学的結合にさらされて二重特異性抗体が形成される。
【0134】
組み換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し分離するための様々な方法も述べられてきた。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて製造される。例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148:1547−1553 (1992)を参照する。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合による2つの異なる抗体のFab’部分に連結される。抗体ホモダイマーが、ヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、その後、再酸化されて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法は、抗体ホモダイマーの製造のためにも利用され得る。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444−6448 (1993)によって開示された「ダイアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代わりの機構を提供している。断片は、小さすぎて同一鎖上の2つのドメイン間での対形成を許容しないリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)から構成される。従って、一つの断片のVHおよびVLドメインは、他の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成せざるを得ず、それによって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用による二重特異性抗体断片を形成するための他の戦略は、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)に開示されている。
【0135】
2以上の価数を有する抗体はまた、検討される。例えば、三重特異性抗体が調整され得る。例えば、Tutt et al., J. Immunol., 147:60 (1991)を参照する。
【0136】
(G.抗体精製)
組み換え技術を用いると、抗体は、ホスト細胞のペリプラズム空間において、分離された細胞内で製造され得、またはホスト細胞から培地中に直接分泌される。抗体が、細胞内で製造される場合、例えば、遠心分離または限外ろ過によって特定の残骸がまず除去される。Carter et al., BioTech., 10:163−167 (1992)は、E.coliのペリプラズム空間へと分泌された抗体を分離する手法を説明する。簡単に言うと、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)の存在化で、約30分間溶解される。細胞の残骸は遠心分離によって除去され得る。抗体が培地中に分泌されると、そのような発現系からの上清は、概して、市販で購入可能なタンパク質濃縮フィルタ、例えば、アミコンまたはミリポアペリコン限外ろ過ユニットを用いて濃縮される。PMSFといったプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために、任意の前工程において包含されてよく、抗生物質が、外来の混入物の正常を抑制するために包含されてもよい。
【0137】
細胞から用意される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製され得る。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意のイムノグロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγl,γ2,またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(例えば、Lindmark et al., J. Immunol. Meth., 62:1−13 (1983)を参照)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に推奨される(例えば、Guss et al., EMBO J., 5:1567−1575 (1986)を参照)。親和性リガンドを付着される基質は、ほとんどの場合、アガロースであるが、他の基質も利用可能である。制御孔ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンといった機械的な安定な基質が、アガロースで達成され得るよりも速い流速および短い処理時間を許容する。抗体が、CH3ドメインを備える場合、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂 (J.T.Baker; Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。(ポリアスパラギン酸カラムといった)イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆送HPLC、シリカ上のクロマトグラフィ、ヘパリンセファロース(登録商標)上のクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿といったタンパク質精製のための他の技術も回収された抗体に応じて利用可能である。
【0138】
任意の予備的な精製工程に続いて、目的の抗体と共雑物から構成される混合物は、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で実施される、約2.5〜4.5の間のpHの溶出緩衝液を用いた低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供されてもよい。
【0139】
当業者は、抗体と同様の機能を有する任意の結合分子、例えば、試料中の目的の一つ以上の分析物に特異的な結合分子または結合相手はまた、本発明の方法および組成物に使用され得る。適切な抗体様分子の例は、ドメイン抗体、ユニボティ(unibody)、ナノボディ(nanobody)、サメ抗原感受性タンパク質、アビマー(avimer)、アドネクチン(adnectin)、アンチカーム(anticalm)、親和性リガンド、フィロマー(phylomer)、アプタマー(aptamer)、アフィボディ(affibody)、トリネクチン(trinectin)などを含むが、これに限定されるものではない。
【0140】
(VIII.投与方法)
本発明の方法によると、本明細書において述べられる抗癌剤は、当業者に公知の任意の使用しやすい手段によって被検者に投与される。本発明の方法は、被検者における腫瘍(例えば、肺腫瘍)の治療のために適した抗癌剤または抗癌剤の組み合わせを選択するのに使用され得る。加えて、本発明の方法は、抗癌剤または抗癌剤の組み合わせでの治療に適した候補者である腫瘍(例えば、肺腫瘍)を患う被検者を選択するために使用され得る。本発明の方法はまた、抗癌剤または抗癌剤の組み合わせを用いた治療に対する被検者における腫瘍の応答を同定するために使用され得る。加えて、本発明の方法は、抗癌剤または抗癌剤の組み合わせを用いた治療に対する腫瘍(例えば、肺腫瘍)を患う被検者の応答を予測するために使用され得る。当業者は、本明細書で述べられる抗癌剤は、それのみで投与され得、または従来の化学療法、放射線療法、ホルモン治療、免疫療法、および/または手術と組み合わせ治療アプローチの一部として投与され得る。
【0141】
ある実施形態おいて、抗癌剤は、モノクローナル抗体またはチロシンキナーゼ阻害剤といった抗シグナル伝達剤(即ち、細胞増殖抑制剤);抗増殖剤;化学療法剤(即ち、細胞毒性薬);放射線療法剤;ワクチン;および/または癌性細胞といった異常細胞の制御されていない増殖を減らしまたは無効にする能力を有する任意の他の組成物から構成される。いくつかの実施形態において、被験者は、一つ以上の化学療法剤と組み合わせて、抗シグナル伝達剤および/または抗増殖剤で治療される。具体的なモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、放射線療法剤、およびワクチンが上述される。
【0142】
本明細書において述べられる抗癌剤はまた、これに限定されないが、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステライド、アロマターゼ、タモキシフェン、およびゴセレリンといったゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)を含む従来のホルモン療法剤と共投与され得る。
【0143】
加えて、本明細書において述べられる抗癌剤は、これに限定されないが、免疫促進剤(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、レバミゾール、インターロイキン−2、アルファ−インターフェロン、など)、抗毒素(例えば、抗−CD33モノクローナル抗体−カリケアマイシン共役体、など)、および放射線療法剤(例えば、111In,90Y,または 131Iなどに共役した抗−CD20モノクローナル抗体)を含む従来の免疫療法剤と共投与され得る。
【0144】
抗癌剤は、必要であれば、適切な医薬品賦形剤とともに投与され得、許容される投与形態のいずれを介して実行されてもよい。従って、投与は、例えば、経口,口腔,舌下,歯肉,口蓋,静脈,局所,皮下,経皮(transcutaneous),経皮(transdermal),筋肉内,関節内,非経口,細動脈内,皮内,脳室内,頭蓋内、腹腔内,膀胱内,髄腔内,病巣内,鼻腔内,直腸,膣内であり得、または吸入によってもよい。「共投与」によって、抗癌剤は、第2の薬剤(例えば、他の抗癌剤、抗癌剤治療剤、放射線治療剤、ホルモン治療、免疫療法剤など)の投与と同時に、直前に、または直後に投与されることを意味する。
【0145】
抗癌剤の治療に効果的な量は、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の回数、繰り返し投与されてもよく、またはその用量(dose)が、例えば、タブレット、ピル、ペレット、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、乳濁液、坐薬、停留浣腸、クリーム、軟膏、液体、ゲル、エアロゾル、泡などといった固形、半固形、凍結乾燥粉末または液体の投薬形態の形状をとってもよい。
【0146】
本明細書において使用されるように、「ユニット剤形(unit dosage form)」という用語は、ヒト被験者および他のほ乳類に対して単位投与量として適した物理的に不連続な単位を含み、それぞれのユニットは、適切な医薬品賦形剤(例えば、アンプル)と関連して、所望の発現、許容性、および/または治療効果を生じるように計算された所定量の抗癌剤を含む。加えて、より濃縮された剤形が調整されてもよく、そこからより希釈されたユニット剤形が、その後、作製される。従って、より濃縮された剤形は、同時に、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍またはそれ以上の量の抗癌剤を同時に包含するだろう。
【0147】
そのような剤形を調整する方法は、当業者に公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PAを参照。)剤形は、典型的に、従来の医薬品キャリアまたは賦形剤を含み、加えて、他の薬剤、キャリア、アジュバント、希釈剤、組織浸透促進剤、可溶化剤などを含んでもよい。適切な賦形剤は、当業者に公知の方法によって特定の剤形および投与経路に合わせられ得る(例えば、上記EMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照)。
【0148】
適切な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシア・ゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント
、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、例えば、Carbopol 941, Carbopol 980, Carbopol 981などのカルボポール(Carbopol)といったポリアクリル酸を含むが、これに限定されるものではない。剤形は、加えて、talc、マグネシウムステアレート、およびミネラルオイルといった平滑剤;湿潤剤;乳化剤;懸濁化剤;メチル−、エチル−、およびプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(即ち、パラベン)といった保存剤;無機および有機酸および塩基といったpH調整剤;甘味剤;および香料添加剤を伝統的に含む。剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン、およびシクロデキストリン包含錯体から構成されてもよい。
【0149】
経口投与のため、治療に効果的な用量は、タブレット、カプセル、乳化液、懸濁液、溶液、シロップ、スプレー、トローチ、粉末、および徐放性製剤の形状であり得る。経口投与に適した賦形剤は、医薬品品質のマンニトール、ラクトース、スターチ、マグネシウムステアレート、サッカリン・ナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゲラチン、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、治療に効果的な用量は、ピル、タブレット、またはカプセルの形態をとり、従って、剤形は、抗癌剤とともに、任意の以下のもの:ラクトース、スクロース、第二リン酸カルシウム等;スターチまたはその誘導体といった崩壊剤;マグネシウムステアレートなどといった潤滑剤;およびスターチ、アカシア・ガム、ポリビニルピロリドン、ゲラチン、セルロースおよびそれらの誘導体といった結合剤、を含み得る。抗癌剤はまた、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)キャリアに配置された坐薬へと成形され得る。
【0151】
液体剤形は、例えば、食塩水(例えば、0.9重量%塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリコール、エタノールなどといったキャリアにおいて、抗癌剤と任意の一つ以上の医薬上に許容されるアジュバントとを溶解または分散させて、例えば、経口、局所、静脈内投与などのための溶液または懸濁液を作製することによって用意され得る。抗癌剤はまた、停留かん腸剤に構築され得る。
【0152】
局所投与のため、治療に効果的な用量は、乳化剤、ローション、ゲル、泡、クリーム、ゼリー、溶液、懸濁液、軟膏、および経皮パッチの形態であり得る。吸入剤による投与のため、抗癌剤は、乾燥粉末として、または噴霧器を介した液体形状で投与され得る。非経口による投与のため、治療に効果的な用量は、無菌的な注射可能な溶液および無菌的に封入された粉末の形態であり得る。注射可能な溶液が約4.5〜約7.5のpHで作製されることが好ましい。
【0153】
治療に効果的な用量はまた、凍結乾燥製剤として提供され得る。そのような剤形は、投与前の再構成のために、例えばジカルボン酸といった緩衝液を含んでよく、またはその緩衝液は、例えば、水での再構築のために、凍結乾燥製剤に含まれてよい。凍結乾燥剤形は、さらに、適切な血管収縮剤、例えば、エピネフリンを包含してもよい。凍結乾燥剤形は、再構成された剤形が、すぐに被験者に投与され得るように、再構成のための緩衝液と組み合わせて任意に包装された、シリンジとして提供され得る。
【0154】
被験者はまた、ある治療レジメの有効性を評価するために、周期的な時間間隔でモニターされ得る。例えば、あるシグナル伝達分子の活性化状態が、本明細書において述べる一つ以上の抗癌剤での処置の治療効果に基づいて、変化し得る。被検者は、反応を評価するためにモニターされ得、個別のアプローチにおけるある薬剤または処置の効果を理解し得る。加えて、まず特定の抗癌剤または抗癌剤の組み合わせに反応する被検者は、その抗癌剤または抗癌剤の組み合わせに対して難治性をしめすようになり得、これらの患者は、薬剤耐性獲得していることを示す。これらの被検者は、その現在の治療を中止され得、本発明の方法に従って代わりの治療法が示され得る。
【0155】
ある他の例において、多重ハイスループット免疫アッセイおよびタンパク質アッセイを実施する方法は、本明細書において参照によって援用される国際公開第2008/036802号に開示される。出願人は、とりわけ、希少循環細胞における複数のシグナル伝達分子の活性化状態および/または総量を検出するための抗体に基づくアレイ、および、癌の予後および診断、および個々人に標的化された治療法の設計を促進するためのアレイの使用方法を開示する。出願人はさらに、「アドレス可能な」または「ジップコード」アレイにこれいされた複数のキャプチャ分子を備える基質表面を開示する。そのアレイの明確な領域のそれぞれは、活性化状態非依存性検出抗体または活性化状態依存性抗体上に存在するキャプチャタグに特異的に結合する特異的なキャプチャ剤を包含し、それによって、アレイ中にタグ化検出抗体を固定して体系化する。好ましい実施形態において、キャプチャ剤およびキャプチャタグは、互いに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。
【0156】
(IX.実施例)
以下の実施例は、要求される発明を説明するために述べられるが、これに限定されるものではない。
【0157】
(実施例1.循環細胞の分離、刺激、および溶解)
固形腫瘍の循環細胞は、固形腫瘍から転移または微小転移した細胞から構成され、循環性腫瘍細胞(CTC)、癌幹細胞(CSC)、および/または腫瘍へと移動する細胞(例えば、循環内皮前駆細胞(CEPC)、循環内皮細胞(CEC)、循環血管新生促進骨髄性細胞、循環樹状細胞など)を含む。循環細胞を含む患者試料は、任意の採取可能な体液(例えば、血液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、細針吸引液など)から獲得され得る。循環細胞は、例えば、免疫磁気分離法(例えば、Racila et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:4589−4594 (1998); Bilkenroth et al., Int. J. Cancer, 92:577−582 (2001)を参照)、イムニコン(Immunicon) によるCellTrack(登録商標)システム(Huntingdon Valley, PA)、微小流体分離法 (例えば、Mohamed et al., IEEE Trans. Nanobiosci., 3:251−256 (2004); Lin et al., Abstract No. 5147, 97th AACR Annual Meeting, Washington, D.C. (2006))、FACS (例えば、Mancuso et al., Blood, 97:3658−3661 (2001))、密度勾配遠心分離法(例えば、Baker et al., Clin. Cancer Res., 13:4865−4871 (2003))および減少法(例えば、 Meye et al., Int. J. Oncol., 21:521−530 (2002))といった一つ以上の方法を用いて、患者試料から分離され得る。
【0158】
CTCの手動分離:
CTCの免疫磁気分離法−活性化アッセイによって後続される手動分離:
1)前もって、抗−EpCAMモノクローナル抗体、(Kordia Life Sciences; Leiden、The Netherlands)に共役された磁性ビーズ(Dynal M450;Dynal AS;Oslo,Norway)が使用される。
2)使用の直前に、プレコートされたダイナビーズが0.01%でBSAを含む等量のPBS中で一度洗浄される。
3)25μlのプレコートされたダイナビーズが試料1mlに添加される。
4)混合物が、緩やかな角度と回転で、2−8℃で20分間インキュベートされる。 5)そのチューブは、磁性分離器(MPL−1 magnet)に、2分間載置される。
6)上清が廃棄され、ビーズに結合した細胞が、0.01%でBSAを含むPBS中に懸濁し、磁性分離が続くことによって、3回洗浄される。
7)試料は、100μlの促進緩衝液中に懸濁される。
【0159】
試料調整:
1)ヒト被検者からの末梢血が、1mg/mlのEDTAを含むシリコン処理したチューブに引き抜かれる。最初の3〜5mlは、刺された静脈から放出される内皮細胞での汚染を回避するために廃棄される。
2)全血の1mlが、使用前に0.9%のNaClを用いて1:3に希釈される。
【0160】
コントロールの調整:
1)細胞系統のコントロールは、HL−60細胞にヒト癌細胞系統をスパイクすることによって作製される。
2)細胞系統のコントロールは、2.5×10細胞/mlの濃度で使用される。
【0161】
CECおよびCEPCの手動分離:
非限定的な例として、生存CECおよびCEPCは、Beerepoot et al., Ann. Oncology, 15:139−145 (2004)に述べられた免疫磁気分離/濃縮技術を使用して分離され得る。簡単に言えば、末梢血が、前もって抗−CD146モノクローナル抗体(Kordia Life Sciences)と共役された磁性ビーズ(Dynal M450 IgG)とインキュベートされる。この抗体は、末梢血における、造血細胞または上皮細胞ではなく、内皮細胞の全ての系統を認識する(George et al., J. Immunol. Meth., 139:65−75 (1991))。造血細胞および上皮細胞のネガティブ選択は、適切な抗体(例えば、白血球を除くためのDynal−CD45ビーズ、単球を除くためのDynal−CD14ビーズ、上皮細胞を除くためのDynal−EpCAM(Invitrogen; Carlsbad,CA))に共役された磁性ビーズとともにポジティブ選択に先んじて使用され得る。この実施例において、ポジティブ選択のみが使用される。
【0162】
CECおよびCEPCの免疫磁気分離法−活性化アッセイに後続される手動分離:
1)前もって、抗−CD146モノクローナル抗体(Kordia Life Sciences)に共役された磁性ビーズ(Dynal M450)が使用される。
2)使用の直前に、プレコートされたダイナビーズが0.01%でBSAを含む等量のPBS中で一度洗浄される。
3)25μlのプレコートされたダイナビーズが試料1mlに添加される。
4)混合物が、緩やかな角度と回転で、2−8℃で20分間インキュベートされる。 5)そのチューブは、磁性分離器(MPL−1 magnet)に、2分間載置される。
6)上清が廃棄され、ビーズに結合した細胞が、0.01%でBSAを含むPBS中に懸濁され、磁性分離が続くことによって、3回洗浄される。
7)試料は、100μlの促進緩衝液中に再懸濁される。
【0163】
試料調整:
1)ヒト被検者からの末梢血が、1mg/mlのEDTAを含むシリコン処理したチューブに引き抜かれる。最初の3〜5mlは、刺された静脈から放出される内皮細胞での汚染を回避するために廃棄される。
2)全血の1mlが、使用前に0.9%のNaClを用いて1:3に希釈される。
【0164】
コントロールの準備:
1)細胞系統のコントロールは、HL−60細胞へとヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC) をスパイクすることによって作製される。
2)細胞系統のコントロールは、2.5×10細胞/mlの濃度で使用される。
【0165】
CEPC(CECを除く)の手動分離:
CEPCは、様々な造血因子に応答して成熟型内皮細胞へと分化する能力を有するの骨髄由来前駆細胞の循環性サブタイプである。CEPCは、表面マーカーCD34を認識する抗体を用いた選択によって分離される。CD133は、CEPCから、未熟型内皮前駆細胞(EPC)または原造血幹細胞(HSC)を区別する表面マーカーである。異なる源からのCEPCの様々な分離手法は、付着培養または磁性マイクロビーズを用いて説明されている。この実施例において、Asahara et al., Science, 275:964−967 (1997) に記載されたものから改変されたプロトコールが使用される。
【0166】
CEPCの免疫磁気分離−活性化アッセイによって後続される手動分離:
1)磁性ビーズ(Dynal M450 CD34)が使用される。これらのビーズは、CD34抗原に特異的なモノクローナル抗体で覆われている。
2)使用の直前に、プレコートされたダイナビーズが0.01%でBSAを含む等量のPBS中で一度洗浄される。
3)25μlのプレコートされたダイナビーズが試料1mlに添加される。
4)混合物が、緩やかな角度と回転で、2〜8℃で20分間インキュベートされる。 5)そのチューブは、磁性分離器(MPL−1 magnet)に、2分間載置される。
6)上清が廃棄され、ビーズに結合した細胞が、0.01%でBSAを含むPBS中に再懸濁され、磁性分離が続くことによって、3回洗浄される。
7)試料は、100μlの促進緩衝液中に再懸濁される。
【0167】
試料調整:
1)ヒト被検者からの末梢血が、1mg/mlのEDTAを含むシリコン処理したチューブに引き抜かれる。最初の3〜5mlは、刺された静脈から放出される内皮細胞での汚染を回避するために廃棄される。
2)全血の10mlが、平衡塩類溶液で1:1に希釈される。
3)4mlの希釈血液は、10mlチューブ中で、3mlのフィコール−プラーク(Ficoll−Paque)上に層状に置かれる。
4)チューブは、18〜20℃で30〜40分間、400×gで回転される。
5)血漿および血小板を含む上側の層は、無菌的なパスツールピペットを用いて引き抜かれて捨てられ、接触面で乱れていない単核細胞の層が残る。
6)単核細胞は、無菌的なピペットを用いて、無菌的な遠心分離用チューブに移される。
7)6mlの平衡塩類溶液が添加され、細胞はゆっくりと再懸濁される。
8)混合物は、18〜20℃で10分間、60〜100×gで遠心分離される。
9)上清は、除去されて、各チューブからの単核細胞が、1mlのPBS中に再懸濁される。
【0168】
Veridexシステムを用いたCTC、CECおよびCEPCの細胞分離:
Veridex(Warren,NJ)は、CellPrepシステム、CellSearch上皮細胞キット、およびCellSpotter AnalyzerCellSearchシステムを販売する。CellPrepシステムは、半自動化された試料準備システムである(Kagan et al., J. Clin. Ligand Assay, 25:104−110(2002)) 。CellSearch上皮細胞キットは:上皮細胞特異的な抗−EpCAM抗体でコートされた磁性流体;サイトケラチン8,18,および19に対するフィコエリスリン−共役抗体;アロフィコシアニンに共役された抗−CD45抗体;DAPI染色剤;および細胞を洗浄、透過、および再懸濁するための緩衝液、からなる。この実施例において使用されるプロトコールはまた、Allard et al., Clin. Cancer Res., 10:6897−6904 (2004)に記載される。全Veridexシステムが、CTCの計数のために使用され得、または、CellPrepシステムを用いた分離の後に手動で試料を除去することによって、経路活性化状態のための分析に先んずる分離方法を提供し得る。CTCの数は、アルゴリズム開発のために情報を提供し得る。
【0169】
Veridexシステム−計数に後続されるCTC濃縮:
1)7.5mlの血液が6mlの緩衝液と混合され、10分間800×gで遠心分離され、CellPrepシステム上に載置される。
2)装置が上清を吸引した後、その装置は、磁性流体を添加する。
3)その装置は、インキュベーションおよび後続する磁性分離工程を実施する。
4)非結合細胞および残存する血漿が吸引される。
5)染色試薬が、蛍光染色のための浸透緩衝液とともに添加される。
6)システムによるインキュベートの後、細胞は、磁性的に再度分離され、CellSpotter Analyzerを用いた分析のため、MagNest Cell Presentation装置において、再懸濁される。
7)その装置は、CellSpotter Analyzer、4色の半自動化された蛍光顕微鏡上に載置される。
8)画像は、Veridexが定義した基準に合うように取得され、最終的な手動選択のために、ウェブに基づくブラウザを介して示される。
9)細胞計数の結果が、7.5mlの血液あたりの細胞数として表示される。
【0170】
Veridexシステム−活性化アッセイに後続されるCTC濃縮:
1)7.5mlの血液が6mlの緩衝液と混合され、10分間800×gで遠心分離され、その後、CellPrepシステム上に載置される。
2)装置が上清を吸引した後、その装置は、磁性流体を添加する。
3)その装置は、インキュベーションおよび後続する磁性分離工程を実施する。
4)非結合細胞および残存する血漿が吸引される。
5)試料は、100μlの促進緩衝液中に再懸濁される。
【0171】
Veridexシステム−活性化アッセイに後続されるCECおよびCEPC濃縮:
1)Veridexは、抗−CD146抗体を有するキャプチャを利用するCellTracks内皮細胞キットを用意する。CellTracks内皮細胞キットは、血液試料調整のためのVeridexのCellTracks AutoPrepシステムおよび全血からのCECおよびCEPCを計測し、特徴づけるCellTracks Analyzer IIとともに使用される。
【0172】
試料調整:
1)ヒト被検者からの末梢血は、CellSave Preservativeチューブ中に、製造業者の取り扱い説明書に従って、引き抜かれる。最初の3〜5mlは、刺された静脈から放出される上皮細胞または内皮細胞での汚染を回避するために廃棄される。
【0173】
CSCの手動分離:
腫瘍が、特徴的な自己再生および生存機構を有する、少数の推定癌幹細胞を含むこと証拠が築かれる (例えば、Sells, Crit. Rev. Oncol. Hematol., 51:1−28 (2004); Reya et al., Nature, 414:105−111 (2001); Dontu et al., Trends Endocrinol. Metal., 15:193−197 (2004); and Dick, Nature, 423:231−233 (2003)を参照)。癌幹細胞(CSC)は、長期間、休止状態にあり得、それによって、それらの細胞は、分裂細胞を標的とする化学療法剤に対し耐性になる。この癌を発症している集団は、選択的な除去のために標的化された治療にさらされる自己再生および生存経路の活性化に特徴づけられ得る。CSCの分離手法は、付着培養または磁性マイクロビーズを用いて述べられる。この実施例において、Cote et al., Clin. Can. Res., 12:5615 (2006)に記載されたものを改変したプロトコールが使用される。
【0174】
免疫磁性CSC分離−活性化アッセイに後続される手動分離:
1)磁性ビーズ(Dynal AS;Oslo,Norway)が使用される。これらのビーズは、CD34またはCD133表面抗原に特異的なモノクローナル抗体で覆われている。
2)使用の直前に、プレコートされたダイナビーズが0.01%でBSAを含む等量のPBS中で一度洗浄される。
3)1〜10個のプレコートされたダイナビーズが試料3mlに添加される。
4)混合物が、緩やかな角度と回転で、2〜8℃で60分間インキュベートされる。
5)その混合物は、1mlずつに分注され、各チューブは、磁性分離器(MPL−1 magnet)に、少なくとも6分間載置される。
6)上清が廃棄され、ビーズに結合した細胞が、0.01%でBSAを含むPBS中に再懸濁され、磁性分離が続くことによって、3回洗浄される。
7)試料は、100μlの促進緩衝液中に再懸濁される。
【0175】
試料調整:
1)骨髄検体が、患者へのインフォームドコンセントに従い、早期乳癌患者から採取される。
2)骨髄吸引物の処理が、Bauer et al., Clin. Can. Res., 6:3552−3559 (2000)に記載されるように実施される。任意の播種性腫瘍細胞を含む単核細胞画分は、フィコール−ハイパーク(Ficoll−Hypaque)において、Beckman GS−6遠心分離機を用いた4000×g、35分間の密度勾配遠心分離によって濃縮され、PBSで2回洗浄される。
【0176】
分離されたCTCの細胞刺激および溶解:
細胞刺激:
1)増殖因子TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)が、細胞に添加され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0177】
薬剤処理での細胞刺激:
1)試料は、治療に効果的な濃度で、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバおよび/またはラパマイシン類似物と37℃、30分間インキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)を添加し、37℃で5分間インキュベートされることによって刺激される。
【0178】
薬剤処理を伴う細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、ハーセプチン(Herceptin)、ラパチニブ(Lapatanib)、タルセバ(Tarceva)、および/またはラパマイシン(Rapamycin)類似体と、治療に効果的な濃度で、37℃、30分間インキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)によって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0179】
刺激されたCTCは、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【表4】

【0180】
分離されたCECおよび/またはCEPCの細胞刺激および溶解:
VEGFは、CEPC (Larrivee et al., J. Biol. Chem., 278:22006−22013 (2003))および血管壁からはがれ落ちた成熟型CECの両方において抗アポトーシス経路を活性化することによって、生存を促進すると考えられる。成熟型CECは、CEPCと比較して限定された増殖能しか有していないであろうが、VEGFはまた、CEPCまたは成熟型CECの増殖を促進し得る (Lin et al., J. Clin. Invest., 105:71−77 (2000)を参照)。これらの理由のため、CECおよび/またはCEPCは、溶解前に、VEGFファミリー増殖因子とのインキュベーションによって活性化される。
【0181】
細胞刺激:
1)増殖因子VEGF、FGF、PDGF、PIGFおよび/またはAngは、各100nmで、細胞に添加され、37℃、5分間インキュベートされる。
【0182】
薬剤を用いた細胞刺激:
1)試料は、アバスチン、ネクサバール(Nexavar)、スーテント(Sutent)、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、増殖因子VEGF、FGF、PDGF、PIGFおよび/またはAngを各100nmで添加することによって刺激され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0183】
薬剤を用いた細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、アバスチン、ネクサバール、スーテント、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃で、インキュベートされる。
2)細胞は、その後、VEGF、FGF、PDGF、PIGFおよび/またはAngを各100nmで添加することによって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0184】
刺激されたCECおよび/またはCEPC細胞は、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【0185】
分離されたCSCの細胞刺激および溶解:
1)増殖因子TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)が細胞に添加されて、37℃で5分間インキュベートされる。
【0186】
薬剤を用いた細胞刺激:
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃で、インキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(10nM)を添加することによって刺激され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0187】
薬剤を用いた細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(10nM)を添加することによって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0188】
分離されたCSC細胞は、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【0189】
(実施例2.組織、生検またはプライマリ培養からの腫瘍細胞抽出物の調整)
この実施例は、腫瘍組織または生検試料から細胞を分離し、刺激し、および溶解する方法を示す。この実施例はまた、組織、生検、または全血から分離された腫瘍細胞のプライマリ培養を開始し、刺激し、および溶解する方法を示す。化学療法剤をスクリーニングするために、生物試料からの腫瘍細胞を分離し、培養する追加の方法は、米国特許第5,728,541号;第6,416,967号;第6,887,680号;第6,900,027号;第6,933,129号;および第7,112,415号;および米国特許出願公開第20040023375号明細書および第20050202411号明細書に記載される。この実施例に従って調整される細胞抽出物は、本明細書において述べられる単一検出または近接アッセイにおいて使用され得る。
【0190】
原発性および転移性組織からの腫瘍細胞の分離:
細胞の分離と培養:
1)約5〜100mgの非壊死性、非汚染腫瘍組織が、外科的に摘出され、無菌性細胞培地(例えば、10%FBSおよび抗体を有するRMPI−1640)を含む100mlボトルへと入れられる。
2)試料は、抽出の72時間内は、室温で保存され得、または輸送され得る。
3)試料は、細胞培地において3回洗浄される。
4)組織は、外科用メスで小片へと細分化され、その後、微細な金網を通過させることによって細胞懸濁液へと分散される。
5)代わりに、細分化された組織は、抗体を含む無血清細胞培地にて希釈された0.25%コラゲナーゼIIおよび0.001%DNaseを含むカクテルで処理される。インキュベーションは、15〜20分間、緩やかな撹拌を伴う。酵素は、細胞培地で3回洗浄することによって処理された後、除去される。
6)細胞濃度は、10細胞/mlに調整され、細胞は6ウェルプレートへと植え付けられ、一晩安定させられる。次の日、細胞は、トリプシン処理され、リガンドでの刺激および/または標的薬剤での阻害のために、マイクロタイタープレートに再度植え付けられる。
【0191】
分散された腫瘍からの細胞刺激および細胞の溶解:
細胞刺激:
1)増殖因子TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)が細胞に添加されて、37℃で5分間インキュベートされる。
【0192】
薬剤処理での細胞刺激:
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(10nM)を添加することによって刺激され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0193】
薬剤処理での細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(10nM)を添加することによって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0194】
刺激された細胞は、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、上記表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【0195】
生検試料からの腫瘍細胞の分離:
細胞の分離および培養:
1)コア生検が外科的に摘出され(引圧吸引生検のための1〜2生検で、14ゲージの針に対して2コア、16ゲージの針に対して3コア、および18ゲージの針に対して4コア)、腫瘍生検に関しては、細胞培地を含む100mlバイアルへと入れられる。
2)試料は、抽出の72時間以内は、室温で保存され得、または輸送され得る。
3)コア生検からの細胞物質は、微細な金網を通過させることによって細胞懸濁液へと分散される。
4)代わりに、生検は、抗体を含む細胞培地にて希釈された0.25%コラゲナーゼIIおよび0.001%DNaseを含むカクテルで処理され得る。インキュベーションは、15〜20分間、緩やかな撹拌を伴う。酵素は、細胞培地で3回洗浄することによって処理された後、除去される。
5)細胞濃度は、10細胞/mlに調整され、細胞は6ウェルプレートへと植え付けられ、一晩安定させられる。次の日、細胞は、トリプシン処理され、リガンドでの刺激および/または標的薬剤での阻害のために、マイクロタイタープレートに再度植え付けられる。
【0196】
生検からの細胞刺激および細胞の溶解:
細胞刺激:
1)増殖因子TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)が細胞に添加されて、37℃で5分間インキュベートされる。
【0197】
薬剤処理での細胞刺激:
1)試料は、ハーセプチン)、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(10nM)を添加することによって刺激され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0198】
薬剤処理での細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃で、インキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)を添加することによって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0199】
刺激された細胞は、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、上記表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【0200】
組織、生検または全血から分離された腫瘍細胞由来のプライマリー培養の開始:
細胞培養:
1)上述のとおり組織、生検または全血から分離された腫瘍細胞は、分離された腫瘍細胞の数に応じて、小さな無菌性フラスコ(例えば、T−25)、ペトリ皿(例えば、10mm)またはプレート(例えば、24ウェルプレート)において培養される。
2)インキュベーションは、5%COで充満された加湿された37℃のインキュベーションにおいて、細胞培地(例えば、2%のFBSと抗体とを有するRMPI−1640)中でなされる。徐々に、細胞は、ベッセルの底部上に単層を形成し、分裂し始める。細胞が、ほぼ重なり合うようになると、それらは、トリプシン処理され、リガンドでの刺激および/または標的薬剤での阻害のためにマイクロタイタープレートへと再度植え付けられる。
【0201】
組織、生検、または全血から分離された腫瘍細胞由来の細胞刺激およびプライマリー培養の溶解:
細胞刺激:
1)増殖因子TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)が細胞に添加されて、37℃で5分間インキュベートされる。
【0202】
薬剤処理での細胞刺激:
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)を添加することによって刺激され、37℃で5分間インキュベートされる。
【0203】
薬剤処理での細胞刺激(フィードバックループ):
1)試料は、ハーセプチン、ラパチニブ、タルセバ、および/またはラパマイシン類似体と、治療に効果的な濃度で、30分間、37℃でインキュベートされる。
2)細胞は、その後、TGF−α(100nM)、Hrg(100nM)、および/またはIGF(100nM)を添加することによって刺激され、37℃で120分間インキュベートされる。
【0204】
刺激された細胞は、以下のプロトコールを用いて溶解される:
1)新鮮な溶解緩衝液が、上記表2に示す試薬を混合することによって、新鮮に調整され得る。
2)最後の洗浄の後、細胞は、100μlの冷緩衝液中に、氷上で、再懸濁される。
3)インキュベーションは、氷上で30分間実施される。
4)混合物は、10分間、最高速度で、微量遠心管中において回転され、溶解物からビーズが分離される。
5)溶解物は、アッセイまたは−80℃での保存のために新しいチューブに移される。
【0205】
実施例3.チラミドシグナル増幅を伴う単一検出マイクロアレイ
この実施例は、希少循環細胞におけるシグナル伝達分子の活性化状態を分析するのに適した高いダイナミックレンジを有する、多重、ハイスループット、単一検出マイクロアレイELISAを説明する:
1)キャプチャ抗体が、2倍の連続希釈で、16−パッドFASTスライド(Whatman Inc.;Florham Park,NJ)上に印刷された。
2)一晩乾燥後、スライドは、Whatmanブロッキング緩衝液でブロックされた。
3)80μlの細胞溶解物が各パッドに10倍の連続希釈で添加された。スライドは、室温で2時間インキュベートされた。
4)TBS−Tweenで6回洗浄後、80μlのビオチン標識検出抗体(例えば、pEGFR 認識モノクローナル抗体または活性化状態に関係なくEGFRを認識するモノクローナル抗体)が室温で2時間インキュベートされた。
5)6回洗浄後、ストレプトアビジン標識セイヨウワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP)が添加され、SA−HRPがビオチン標識検出抗体に結合するように1時間インキュベートされた。
6)シグナル増幅のため、5μg/mlのビオチン−チラミド80μlが添加されて15分間反応させられた。素来ふぉは、TBS−Tweenで6回、20% DMSO/TBS−Tweenで2回、TBSで1回洗浄された。
7)80μlのSA−Alexa 555が添加され、30分間インキュベートされた。スライドは、その後、2回洗浄され、5分間乾燥され、そしてマイクロアレイスキャナ(Perkin−Elmer,Inc.;Waltham,MA)上でスキャンされた。
【0206】
実施例4.チラミドシグナル増幅を伴う近接二重検出マイクロアレイELISA
この実施例は、希少循環細胞におけるシグナル伝達分子の活性化状態を分析するのに適した高いダイナミックレンジを有する、多重、ハイスループット、近接二重検出マイクロアレイELISAを説明する:
1)キャプチャ抗体が、1mg/ml〜0.004mg/mlの希釈系列で16−パッドFASTスライド(Whatman Inc.;Florham Park,NJ) 上に印刷された。
2)一晩乾燥後、スライドは、Whatman ブロッキング緩衝液でブロックされた。
3)80μlのA431細胞溶解物が各パッドに10倍の連続希釈で添加された。スライドは、室温で2時間インキュベートされた。
4)TBS−Tweenで6回洗浄後、TBS−Tween/2% BSA/1% FBSに希釈された近接アッセイのための検出抗体80μlがスライドに添加された。使用された検出抗体は:(1)グルコースオキシダーゼ(GO)に直接共役された−EGFRモノクローナル抗体;および(2)セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に直接共役されたリン酸化EGFRを認識するモノクローナル抗体、であった。インキュベーションは、2時間、室温であった。
5)代わりに、検出工程は、リン酸化EGFRを認識するモノクローナル抗体のビオチン共役体を利用した。これらの例において、6回洗浄後、ストレプトアビジン−HRPとの1時間のインキュベーションという追加の連続工程が含まれた。
6)代わりに、検出工程は、抗−EGFR抗体のオリゴヌクレオチドを介したグルコースオキシダーゼ(GO)を利用した。リン酸化EGFR抗体に対する、直接共役されたHRP共役体またはビオチン−ストレプトアビジン(SA)で接続されたHRP共役体のいづれかが使用された。
6)シグナル増幅のため、5μg/mlのビオチン−チラミド80μlが添加され、15分間反応させられた。スライドは、TBS−Tweenで6回、20% DMSO/TBS−Tweenで2回、TBS−Tweenで6回洗浄後で1回洗浄された。
7)80μlのSA−Alexa 555が添加され、30分間インキュベートされた。スライドは、その後、2回洗浄され、5分間乾燥され、そしてマイクロアレイスキャナ(Perkin−Elmer,Inc.)上でスキャンされた。
【0207】
実施例5.薬剤選択のための活性プロファイルの生成
本発明の方法および組成物は、癌治療のための薬剤選択に適用され得る、典型的なプロトコールは、2つのプロファイル、一つの参照活性プロファイルおよび一つのテスト活性プロファイルの生成を必要とし、その後、これらは、特定の薬剤治療レジメの有効性を決定するために比較される(図2を参照)。
【0208】
参照活性プロファイル
参照活性プロファイルを導出するため、血液試料が、抗癌剤治療の前に、特定の種類の癌(例えば、肺腫瘍)を患う患者から取得される。癌性腫瘍由来の希少循環細胞が、例えば、本明細書において非常に詳細に述べたように、免疫磁気分離技術を用いて、血液試料から分離される。分離された循環細胞は、インビトロで一つ以上の増殖因子で刺激され得る。刺激された細胞は、その後、溶解されて、細胞抽出物を生成する。細胞抽出物は、活性化状態が患者の癌のタイプで変化され得るシグナル伝達分子に特異的なキャプチャ抗体のパネルの希釈系列を含む、アドレス可能なアレイに加えられる。単一検出または近接アッセイが、目的の各シグナル伝達分子の活性化状態を決定するために、適切な検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体および/または活性化状態依存性抗体)を用いて実施される。表1に示される「経路選択」テーブルが、患者の癌のタイプに基づいて活性化状態を検出するものを選択するために特に有用である。例えば、ある患者が、表1の「経路1」に示されるEGFR経路の活性化状態を示す癌タイプを患っていてもよい。代わりに、他の患者が、表1の「経路2」に示されるEGFR経路の活性化状態を示す他の癌タイプであってもよい。従って、参照活性プロファイルが作成されて、任意の抗癌剤のない状態での患者の癌中のシグナル伝達分子の活性化状態を提供する。
【0209】
テスト活性プロファイル:
テスト活性プロファイルを得るため、第2の血液試料が、抗癌剤治療前または抗癌剤の投与後のいずれか(例えば、癌治療の過程を通して任意の時)に、特定の癌タイプ(例えば、肺腫瘍)を患う患者から取得される。癌性腫瘍由来の希少循環細胞は、血液試料から分離される。分離された細胞が、抗癌剤治療を受けていない患者から得られた場合、分離された細胞は、上述した参照活性プロファイルから決定された活性型シグナル伝達分子の一つまたは複数を標的化した抗癌剤とインキュベートされる。「薬剤選択」テーブル(表A)は、特定の活性化された標的シグナル伝達分子を阻害する、認可されたまたは臨床試験のいずれかである適切な抗癌剤を選択するために特に有用である。例えば、EGFRが活性化されていることが参照活性プロファイルから決定されると、その後、細胞は、表Aのカラム「A」または「B」にリスト化された薬剤の一つまたは複数とインキュベートされ得る。分離された細胞は、その後、インビトロで、一つ以上の増殖因子で刺激され得る。分離された細胞は、その後、溶解されて細胞抽出物を生成する。細胞抽出物は、アドレス可能なアレイに適用され、近接アッセイが、目的の各シグナル伝達分子の活性化状態を決定するために実施される。従って、患者のためのテスト活性プロファイルが作成されて、特定の抗癌剤の存在下で、患者の癌におけるシグナル伝達分子の活性化状態を提供する。
【0210】
薬剤選択:
抗癌剤は、テスト活性プロファイルを参照活性プロファイルと比較することによって患者の癌の治療に適した、または適さないことが決定される。例えば、薬剤治療が、ほとんどまたは全てのシグナル伝達分子を、薬剤のない状態よりも実質的に活性化されないようにする場合、例えば、薬剤がないときの強い活性から、薬剤があるときの弱いまたは非常に弱い活性へと変化する場合、その後、その治療は、その患者の癌に適していると決定される。そのような例において、治療は、薬剤治療を受けていない患者に適した抗癌剤で開始する、または、すでに薬剤を投与されている患者に適した抗癌剤で次の治療が継続される。しかしながら、薬剤治療が、患者の癌の治療に適していないと見なされる場合、異なる薬剤が、選択され、新しいテスト活性プロファイルを作成するために使用され、その後、参照活性プロファイルと比較される。そのような例において、治療は、薬剤療法を受けていない患者に適した抗癌剤で開始され、または次の治療が、不適切な薬剤を現在投与されている患者に適した抗癌剤へと変えられる。
【0211】
実施例6.活性型受容体チロシンキナーゼの分析のためのアドレス可能なアレイ:
図3は、本発明のアドレス可能な受容体チロシンキナーゼアレイを示す。本明細書において述べられるように、受容体チロシンキナーゼは、細胞増殖に含まれる多くのシグナル伝達経路の鍵となる構成因子である。例えば、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーは、4つのファミリー要素を有し、細胞増殖、分化、および生存といった基本的な細胞プロセスにおいて重要な役割を果たす。このファミリーの受容体チロシンキナーゼは、多くの異なる癌において過剰発現されることが報告されており、悪い臨床転帰と相関する。増殖因子の結合において、ErbB1またはEGFR、ErbB3またはHER3、およびErbB4またはHER4がホモ−およびヘテロ−2量体化して、多数の異なるシグナル伝達経路を活性化する。ErbB2またはHER2は、増殖因子と結合せず、全ての3つのファミリー要素にとって好ましいヘテロ2量体化の相手である。ErbB2はまた、過剰発現されるとホモ2量体化され得、シグナル伝達経路を活性化し得る。ErbBファミリーのホモ−またはヘテロ−2量体化は、結果としてトランスリン酸化をもたらす。自己リン酸化またはトランスリン酸化は、受容体チロシンキナーゼの阻害型立体構造を緩和し、完全なキナーゼ活性を可能にし、同時に、Src、Shc、SHP−1、SHEP−1およびPI(3)Kといった様々なSH2含有シグナル伝達分子のための結合部位を形成する。Shc、Grb2またはPI3Kのようなアダプタータンパク質またはシグナル伝達タンパク質は、リン酸化された受容体に取り込まれる。アダプタータンパク質のリン酸化は、MAPKおよびAKT経路の活性化をもたらす。MAPK経路の活性化は、ErkおよびRskのリン酸化状態を決定することによって評価され得、一方、PI3K経路の活性化は、Aktおよびp70S6Kのリン酸化状態を決定することによって評価され得る。
【0212】
従って、図3に示されたアドレス可能なErbBファミリーチップは、4つの受容体チロシンキナーゼの発現を決定するだけでなく、それらの活性化状態を決定することも可能にする。MAPKおよびPI3K/Akt経路両方の活性化はまた、アドレス可能なチップ上で試験され得る。チップの他の特徴は、腫瘍の量を決定するための内部標準およびあらゆる非特異的結合を決定するための非特異的IgGが存在していることである。
【0213】
実施例7.血管新生におけるシグナル伝達経路の分析のためのアドレス可能なアレイ
図4は、血管新生に含まれるシグナル伝達構成因子の活性化状態を決定するためのアドレス可能なアレイの構成を示す。本明細書において述べるように、腫瘍の血管新生は、多くの固形腫瘍の増殖にとって重要である。内皮細胞上に顕著に発現される受容体チロシンキナーゼのVEGFR、FGFRおよびTIEファミリーのメンバーを含む。PDGFRは、典型的には、周皮細胞上に発現される。これらの受容体の発現および活性化状態は、個々の腫瘍検体における血管新生の主要な機構を決定するのに重要である。VEGFおよびPIGFのような増殖因子は、VEGFR−1およびVEGFR−2に結合し、ホモ−およびヘテロ−2量体化を開始する。2量体化は、これらの受容体のリン酸化によって後続され、次に、MAPKおよびPI3K/Aktシグナル伝達経路の活性化が続く。FGFR、TIE、およびPDGFR受容体はまた、同様に活性化される。自己リン酸化またはトランスリン酸化は、受容体チロシンキナーゼの阻害型立体構造をを緩和し、完全なキナーゼ活性を可能にし、同時に、Src、Shc、SHP−1、V−カドヘリン、SHEP−1およびPI3Kといった様々なSH2含有シグナル伝達分子のための結合部位を形成する。Shc、Grb2またはPI3Kのようなアダプタータンパク質またはシグナル伝達タンパク質は、リン酸化された受容体に取り込まれる。アダプタータンパク質のリン酸化は、MAPKおよびAKT経路の活性化をもたらす。MAPK経路の活性化は、ErkおよびRskのリン酸化状態を決定することによって評価され得、一方、PI3K経路の活性化は、Aktおよびp70S6Kのリン酸化状態を決定することによって評価され得る。
【0214】
従って、図4に示されるもののような、アドレス可能な血管新生チップは、患者試料における全ての受容体チロシンキナーゼの発現を決定するだけでなく、それらの活性化状態も決定することを可能にする。MAPKおよびPI3K/Akt経路の活性化はまた、アドレス可能なチップ上で試験され得る。そのチップは、腫瘍または腫瘍関連細胞(CEC、CEP、周皮細胞など)の量を決定するための内部標準およびあらゆる非特異的結合を決定する非特異的IgGを有する。
【0215】
実施例8.非小細胞肺癌治療のための患者の選択
非小細胞肺癌(NSCLC)の現在の治療は、化学療法および抗血管新生治療の両方の使用を必要とする。第1のラインの治療として、医師は、典型的には、非扁平上皮細胞の患者に対して、カルボプラチン(carboplatin)(C)またはタキソール(Taxol)(登録商標)(T)およびアバスタチン(Avastinl)(登録商標)を採用する。第2のラインの薬剤は、(登録商標)(非喫煙者、女性、およびアジア人に対して)タキソール、ALIMTA(登録商標)およびタルセバを含む。進行中の臨床試験は、様々な薬剤の以下のものを含む組み合わせの有効性を試験する:非扁平上皮細胞の患者においてアバスタチン+タルセバ;扁平上皮細胞癌を含む全てのNSCLCにおいてソラフェニブ(sorafenib)+カルボプラチン+タキソール;扁平上皮細胞癌を含む全てのNSCLCにおいてZD6474(ZACTIMA(登録商標))+カルボプラチン+タキソール)。
【0216】
鍵となるシグナル伝達の構成因子における多数の変化がNSCLCにおいて示されている。これらは:活性化をもたらすEGFR変異;c−metといった他の受容体チロシンキナーゼの活性化;HER2および3活性化またはHER2の増幅を伴うEGFR活性化;PI3K変異を伴うEGFR活性化;PTEN欠損を伴うEGFRを新式活性化;およびRas変異を伴うEGFR活性化、を含む。シグナル伝達経路の異なる構成因子における様々な変化が、様々な形態の化学療法によって標的化されている。
【0217】
同時に、腫瘍細胞への新しい血管の形成、血管新生と呼ばれるプロセス、が標的化され得る。VEGFは、新しい血管の形成に必要不可欠である内皮細胞生存因子である。従って、VEGFを介した血管新生の調整への一つのアプローチは、VEGFタンパク質自身またはVEGFRに対する抗体を使用することである。ベバシズナブ(Bevacizumab)、VEGFへの組み換えヒト化モノクローナル抗体、は、化学療法と相乗的に働き、結腸癌、乳癌、および肺癌を患う患者における生存を改善することが示されている。
【0218】
表3に以下示される例は、内皮細胞またはECPにおいて活性な経路の分析が、医師が有効な治療過程を決定するのを助けるためにどのように使用され得るかを示す。簡単に言えば、内皮細胞またはECPにおけるVEGF経路の異なる構成因子の活性レベルは、試験治療剤の異なる組み合わせの存在または非存在化において決定され得る。
【表5】

【0219】
表3に示される情報は、強いリン酸化レベルによって示されるような強い活性を示すシグナル伝達構成因子が、アバスタチンまたはC+T+アバスタチンを用いた治療によって、弱いレベルに減少される。従って、活性型VEGFR−2およびVEGFR−1経路を有する患者は、アバスタチンまたはC+T+アバスタチンで処理されるべきである。
【0220】
血管新生シグナル伝達経路を標的化し、テスト活性プロファイルを作成するのに使用され得る他の治療剤の例は、以下、表4に示される。
【表6】

【0221】
上記の表4は、新規抗血管新生剤のための標的を列挙する。本発明は、最もよく生存を予測するであろう活性マーカーの知的な選択を可能にする。最も適切な活性マーカーは、異なる薬剤間で変わってよく、抗血管新生単一療法、対、組み合わせ療法の間の選択のためのガイドとして使用され得る。
【0222】
実施例9.他の抗血管新生剤での治療のための患者の選択
本発明によって開示される経路分析の表4に示される様々な薬剤の適正の決定に対する適用の追加の例は、以下に示される。
【0223】
ZD6474
ZD6474(ZACTIMA(登録商標))は、現在、EGFRに対する治療が失敗している患者の治療のため、フェーズIII臨床試験の段階にある。特に、この試験は、最良の支持治療(BSC)にZD6474を加えることが、以前の化学療法およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の後に病気が再発した非小細胞肺癌を患う患者の治療のために、最良の支持治療単独よりも有効であるかを評価するために実施されている。ZD6474 は、腫瘍への新しい血管の成長を標的化し、それによって腫瘍の増殖速度を減少してもよい。前試験は、ZD6474が、腫瘍がさらなる段階へと進行し得る時期に対してポジティブな効果を有することを示す。第3のラインの治療のため、ZD6474が化学療法およびEGFR TKIにおいて再発した患者に与えられる。ZD6474の構造は、タルセバ/イレッサ(Iressa)(登録商標)とは異なり、従って、それは、EGFRおよび抗血管新生経路(例えば、VEGFR−1,−2および−3)を未だに阻害するであろう期待がある。
【0224】
従って、以下の試験が行われている:
・ペメトレキセド(pemetrexed)と組み合わせたZD6474と、ペメトレキセドpemetrexed単独とを比較する効果試験;
・非小細胞肺癌(NSCLC)におけるドセタキセル(docetaxel)を組み合わせたZACTIMA(登録商標)とドセタキセル(docetaxel)単独との比較試験;
・手術によって除去され得るステージI、ステージII、またはステージIIIのNSCLCを患う患者の治療におけるバンデタニブ(Vandetanib)、カルボプラチン(carboplatin)、およびパクリタキセル(paclitaxel);および
・少なくとも一つの先の化学療法の失敗後のNSCLCにおいてZD6474とエルロチニブを比較する効果試験。
【0225】
本発明の方法および組成物を用いてZD6474を含む薬剤の組み合わせに応答する患者の選択は、以下、表5に示されるように、フェーズIII臨床試験における患者の数を減らすだけでなく、より良好な患者の治療をもたらすだろう。
【表7】

【表8】

【0226】
表5および表6における情報は、ZD6474が、内皮細胞と腫瘍細胞との両方において経路を下方制御することを示す。
【0227】
AZD2171
PDGFRおよびVEGFRを阻害する薬剤、AZD2171での多数の臨床試験が、行われている。例えば、AZD2171とペメトレキセド(pemetrexed)二ナトリウムの組み合わせが、再発した非小細胞肺癌を患う患者の治療のために試験されている。この組み合わせの根本的理由は、ペメトレキセド二ナトリウムが、細胞分裂に必要な酵素を阻害することによって腫瘍細胞の増殖を停止し得ることである。AZD2171は、腫瘍へと流れる血液を遮断することによる腫瘍細胞の増殖を停止するという追加の寄与を提供する。従って、AZD2171をペメトレキセド二ナトリウムと共に投与することは、より多くの腫瘍細胞を殺すことにおける相乗効果を有し得る。
【0228】
他の臨床試験は、転移性または切除不能な固形腫瘍またはリンパ腫を患う患者を処置するためにベバシズマブ(bevacizumab)(アバスチン(Avastin)(登録商標))およびAZD2171を対としている。この組み合わせの根本的理由は、ベバシズマブといったモノクローナル抗体が、多様な方法で、癌の増殖を遮断し得る。いくつかは、腫瘍細胞が増殖し、広がる能力を遮断する。その他は、癌細胞を見つけ、それらを殺すのを、またはそれらに癌を殺す基質を運ぶのを助ける。ベバシズマブおよびAZD2171はまた、癌への血流を遮断することによって、癌細胞の増殖を停止し得る。従って、AZD2171と共にベバシズマブを投与することは、より多くの癌細胞を相乗効果で殺し得る。
【0229】
他の臨床試験は、ステージIIIBまたはステージIVの非小細胞肺癌を患う患者を処置する際の第1ラインの治療として、AZD2171の存在または非存在下での、ゲムシタビン(gemcitabine)およびカルボプラチン(carboplatin)の組み合わせを評価し、ステージIIIまたはステージIVの非小細胞肺癌を患う患者を処置する際のAZD2171の存在または非存在下でのパクリタキセル(paclitaxel)およびカルボプラチン(carboplatin)の組み合わせを評価している。
【0230】
本発明の方法および組成物を用いてAZD2171を含む薬剤の組み合わせに応答する患者の選択は、以下表7に示される。
【表9】

【0231】
PDGFが、アバスタチン耐性の患者において過剰発現しているので、表7に示されるような情報は、PDGFRおよびVEGFRを阻害するAZD2171が、そのような腫瘍を処置する選択がされる薬剤であり得る。
【0232】
ソラフェニブ
ソラフェニブ(BAY 43−9006)を用いた多数の臨床試験も、進行中である。例えば、以下の試験がなされている:(1)小細胞肺癌を患う患者における、カルボプラチンおよびパクリタキセル、プラスまたはマイナスソラフェニブの比較;(2)ステージIII〜IVの非小細胞肺癌を患う、化学物質に過敏な患者における、カルボプラチンおよびパクリタキセル、プラスまたはマイナスソラフェニブの安全性と有効性ランダムに制御された試験;(3)耐性、転移性、または切除不能な固形腫瘍を患う患者のソラフェニブおよびベバシズマブ治療。
【0233】
本発明の方法および組成物を用いたソラフェニブを含む薬剤の組み合わせに応答する患者の選択は、以下表8に示される。
【表10】

【0234】
アバスタチン耐性の患者において、VEGFおよびPDGFの両方が過剰発現しているの、アバスタチンおよびソラフェニブの組み合わせが、両経路を遮断するのに有効であり得る。加えて、ソラフェニブはRafを阻害し、従って、全ての細胞タイプにおいてMAPK経路を阻害し得る。
【0235】
実施例10.他の抗血管新生および抗シグナル伝達療法の組み合わせ
血管内皮増殖因子および上皮増殖因子受容体(EGFR)の両方は、腫瘍組織における血管新生に貢献し得、下流のシグナル伝達経路を共有する。それゆえ、両経路を標的化することは、原理上、追加のまたは相乗的な抗腫瘍効果をもたらす。最近のフェーズI/II試験は、非扁平上皮の難治性進行性非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者における、ベバシズマブと、EGFR小分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)エルロチニブとの組み合わせを評価した。フェーズII試験において、エルロチニブと組み合わせたベバシズマブは、EGFRチロシンキナーゼの変異状態に依存せずに利益を与えることが分かった(例えば、Herbst et al., J. Clin. Oncol., 23:2544−2555 (2005)を参照)。従って、EGFRおよびVEGFR−2の両方を明確に遮断することが患者に有益であることが分かる。
【0236】
この領域における進行中の臨床試験の間では:(1)非小細胞肺癌(ATLAS)の第1のラインの治療のための、エルロチニブを併用する、または併用しないベバシズマブの治療を比較する試験;局所的に進行した、または転移性NSCLCを患う被検者における、ベバシズマブ+エルロチニブ対ベバシズマブ+エルロチニブプラセボが後続する、化学療法+ベバシズマブの安全性と有効性を評価するための、フェーズIIIbの、複数のセンターでの、ランダム化された、プラゼボ制御された試験;(2)進行した非小脂肪肺癌のためのタルセバと組み合わせたベバシズマブの有効性を評価する試験;第2のラインのフェーズIIIの、多数のセンターでの、プラセボ制御された、二重ブラインドの、ランダム化された試験、である。約650人の患者が、2つの治療群の一つに1:1の割合でランダムにされるだろう:群1:タルセバ+プラセボ;群2:タルセバ+ベバシズマブ;(3)ステージIIIBまたはステージIVの原発性非小細胞肺癌を患い、一度も喫煙していない患者を治療するエルロチニブおよびベバシズマブ;(4)新に診断されたまたは再発したステージIIIBまたはステージIVの非小細胞肺癌を患う患者を治療する、シスプラチンまたはカルボプラチンおよびゲムシタビンによって後続される、ベバシズマブおよびエルロチニブ;(5)これまでに全身療法を受けていない非小細胞肺癌(NSCLC)患者におけるRAD001のカルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブとの組み合わせ;(6)進行性非小細胞肺癌を患う患者を治療する、セツキシマブ、パクリタキセル、カルボプラチンおよびベバシズマブ;(7)パゾパニブ(pazopanib)+ラパタニブ(lapatanib);(8)第1のラインの化学療法後のイマチニブ(imatinib)メシラートおよびベバシズマブ、およびステージIIIBまたはステージIVの非小細胞肺癌を患う患者を治療する、ベバシズマブ;および(9)進行性NSCLCに対する、化学療法と組み合わせたAMG706またはベバシズマブのフェーズII試験。
【0237】
以下に、本発明の方法および組成物を用いた様々な薬剤の組み合わせでの治療のための患者選択の例を示す。
【表11】

【表12】

【0238】
表9および10における情報は、アバスタチンおよびタルセバの組み合わせが内皮細胞と腫瘍細胞の両方において経路を下方制御することを示す。
【表13】

【0239】
表11における情報は、患者5001が、受容体リン酸化の完全な阻害剤としてタルセバで治療されるべきであり、下流のエフェクタが、タルセバ添加に基づき観察された。エルビタックス(Erbitux)(登録商標)は、同様のレベルの阻害は誘導しなかった。タルセバで治療することの決定は、以下に基づき得る:
・腫瘍細胞において活性化された経路(アドレス可能なチップ上に基づく活性プロファイル);
・刺激に基づき活性化された経路;または
・タルセバでの経路の阻害。
【表14】

【0240】
表12における情報から、この患者は、阻害プロファイルに基づき、EKB569で処理されるだろう。変わりに、患者は、まずタルセバで治療され、再発時に、患者は、EKB569で治療され得る。
【表15】

【0241】
この患者の活性プロファイルは、cMetの高い発現とリン酸化を示す。従って、患者は、cMetおよびEGFR阻害剤の組み合わせで治療されるべきである。
【表16】

【0242】
Her3リン酸化に基づく表14における経路プロファイルは、pan−Her阻害剤を用いることを提案する。ラパタニブで観察された強い阻害は、この薬剤が、選択されるべき治療であるべきことを強く示す。
【表17】

【表18】

【0243】
表15および16に示されるプロファイルを有する腫瘍タイプの増殖は、ErbBファミリーによって促進されるだけでなく、下流の出来事の活性化によっても(典型的には、RasまたはRas変異により)促進される。従って、プロファイルされた情報は、そのような患者は、MAPKおよびPI3K経路といった下流の経路を阻害する薬剤とともにEGFR阻害剤で治療すべきことを示す。
【表19】

【0244】
上の表17に示す情報は、この患者が、タルセバおよびエルビタックスの組み合わせで治療されるべきことを示す。
【表20】

【0245】
上の表18に示される情報は、Ras変異を有する患者は、化学療法に応答しにくいことを示す。従って、そのようなプロファイルを有する患者は、TKIの組み合わせでの治療のための候補であり得る。
【0246】
実施例11.治療選択を導くためのEGFRおよび/またはHER−2活性化のための肺癌患者のモニタリング
治療中の9人の肺癌患者がVeridex CellSearch(登録商標)システムによってCTCの数が評価され、本明細書における近接アッセイを用いてEGFR阻害剤で治療及びHER−2のリン酸化が評価された。これらの患者の5人がまた、Veridex CellSearch(登録商標)腫瘍フェノタイピング試薬EGFRを用いた染色によってCTC上でのEGFRの発現のために試験された。患者人口統計、癌病歴、及び最近の投薬が、表19,20および21にそれぞれ与えられる。表22は、各試料において検出されたCTC上でのEGFR阻害剤の数およびにEGFR及びHERー2に関する相対的なリン酸化レベルを示す。相対的なリン酸化レベルは、マイクロアレイ上での正常標準の値を差し引くことによって計算された。図5(AおよびB)は、選択された患者に関する、EGFR、サイトケラチン(CK)及びDAPIを伴うサイトケラチンのためのCTC染色の画像を示す。細胞系統のコントロールは、EGFR及びHER−2の発現に関して、それぞれ陽性である、SKBr3及びA431である。
【0247】
患者2002は、CellSearch(登録商標)システムにおいて試験された7.5mlの血液中に2つのCTCが検出された。両方の細胞では、EGFR阻害剤で治療及びHER−2の発現が検出された。この患者は、アバスタチンで治療されていた。アバスタチン単独または化学療法との組み合わせのいずれか、または化学療法単独での治療は、この患者にとって適切な治療ではなかったであろう。これらのデータは、例えば、ラパチニブ、ヘルセプチン+ザクチマ(zactima)、ヘルセプチン+エルビタックス、ヘルセプチン+イレッサ、またはヘルセプチン+タルセバといった、EGFRおよびHER−2の両方を標的化する薬剤を含む治療が示されることを医師に教える。
【0248】
患者2015は、CellSearch(登録商標)システムを用いた分析において11のCTCが検出された。これらの細胞の多くはまた、Veridexキットを用いてEGFRの発現に関して陽性に試験された。EGFR及びHER−2の商法が非常に活性化されていた。この患者は、アバスタチン、ゲムザール(gemzar)、タキソテール(taxotere)で治療されていた。アバスタチン単独、または化学療法との組み合わせ、または化学療法単独での治療は、この患者にとって適切な治療ではなかったであろう。これらのデータは、例えば、ラパチニブ、ヘルセプチン+ザクチマ(zactima)、ヘルセプチン+エルビタックス、ヘルセプチン+イレッサ、またはヘルセプチン+タルセバといった、EGFRおよびHER−2の両方を標的化する薬剤を含む治療が示されることを医師に教える。
【0249】
患者1023,2040,1037及び1035は、CellSearch(登録商標)システムにおいて試験された7.5mlの血液中にCTCがなかった。それらはまた、予想通り、近接アッセイを用いたEGFR阻害剤で治療及びHER−2のリン酸化に関しては、陰性に試験された。これらの患者に対する現在の治療が以下の通りである:患者1023はカルボプラチン;患者2040はアバスタチン;患者1037はアバスタチン、カルボプラチン、タキソール;患者1035はアバスタチン、カルボプラチン、ゲムザール。これらの患者の血液中にCTCが検出されないことは、現在の治療を継続することを示す。
【0250】
患者2016および1025はそれぞれ、CellSearch(登録商標)システムにおいて試験された7.5mlの血液中に3つのCTCが検出された。両方の場合において、Veridex EGFR染色によって示されるように全ての細胞上にEGFRの発現があった。しかしながら、試験されたこれらの患者の試料はいずれもEGFRまたはHER2リン酸化に対して陽性ではなかった。全身療法は、これらの患者に対して未だ始められていない。これらのデータは、腫瘍細胞上でEGFRの発現はあるにも関わらず、患者の腫瘍細胞は、EGFR/HER−2経路によって促進されていないことを医師に教える。
【0251】
患者1012は、CellSearch(登録商標)システムにおいて分析されて、血液中に3つのCTCを有した。Veridex キットを用いた染色されるEGFRはなかった。近接アッセイ分析によって示されるEGFRまたはHER2のリン酸化もなかった。この患者は、アバスタチン、カルボプラチンおよびタキソールで治療されている。EGFRまたはHER−2のいずれかに向けられた標的化された治療でこの患者を治療しないことが示唆されるだろう。
【0252】
表22は、各患者に関する診断情報と、CTC数、およびEGFRおよびHER2リン酸化に関するデータに基づく治療のための提案のまとめを示す。
【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【0253】
この明細書において引用する全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願それぞれが、明確におよび個々に参照によって援用されることが示されたように、参照によって本明細書に援用される。前述の発明は、理解の明確化の目的のため、図および実施例によってある程度詳細に説明されたが、この発明の教示を考慮すると、添付の請求項の精神と範囲から逸脱することなく、ある程度の変化および改変が本発明になされ得ることは当業者には容易に理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺腫瘍の治療に適した抗癌剤を選択する選択方法であって、
前記選択方法は、
(a)抗癌剤の投与後または該抗癌剤とのインキュベーション前に、前記肺腫瘍の細胞を分離する工程、
(b)該分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程、
(c)固相担体上に固定されたキャプチャ抗体であって、一つ以上の分析物に特異的な複数の該キャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを使用して前記細胞抽出物中の前記一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程、および
(d)前記一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、前記抗癌剤の非存在下において作製された参照活性プロファイルと、を比較することによって、前記抗癌剤が、前記肺腫瘍の前記治療に適しているか、または不適切であるかを決定する工程、
を備える、ことを特徴とする選択方法。
【請求項2】
前記肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)を患う被検者由来である、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項3】
前記非小細胞肺癌(NSCLC)は、扁平上皮細胞癌、腺癌、大細胞癌、気管支肺胞癌(BAC)および燕麦細胞癌からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の選択方法。
【請求項4】
前記細胞は、前記肺腫瘍の循環細胞を包含する、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項5】
前記循環細胞は、免疫磁気分離法によって試料から分離される、ことを特徴とする請求項4に記載の選択方法。
【請求項6】
前記試料は、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、細針吸引液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の選択方法。
【請求項7】
前記循環細胞は、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、循環内皮前駆細胞、癌幹細胞、播種性腫瘍細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の選択方法。
【請求項8】
前記細胞は、腫瘍組織から分離される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項9】
前記分離された細胞は、インビトロにおいて、増殖因子で刺激される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項10】
前記分離された細胞は溶解され、増殖因子の刺激が後続して、前記細胞抽出液を作製する、ことを特徴とする請求項9に記載の選択方法。
【請求項11】
前記抗癌剤は、癌細胞における活性化されたシグナル伝達経路の構成因子の機能を阻害する薬剤から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項12】
前記抗癌剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、放射線療法剤、ワクチン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項11に記載の選択方法。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体は、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(登録商標))、アレムツズマブ(alemtuzumab)(Campath(登録商標))、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))、セツキシマブ(cetuximab)(Erbitux(登録商標))、ゲムツズマブ(gemtuzumab)(Mylotarg(登録商標))、パニツムマブ(panitumumab)(Vectibix(登録商標))、リツキシマブ(rituximab)(Rituxan(登録商標))、トシツモマブ(tositumomab)(BEXXAR(登録商標))、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項12に記載の選択方法。
【請求項14】
前記チロシンキナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブ(gefitinib)(Iressa(登録商標))、スニチニブ(sunitinib)(Sutent(登録商標))、エルロチニブ(erlotinib)(Tarceva(登録商標))、ラパチニブ(lapatinib)(GW−572016)、カネルチニブ(canertinib)(CI 1033)、セマキシニブ(semaxinib)(SU5416)、バタラニブ(vatalanib)(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(sorafenib)(BAY 43−9006)、イマチニブメシレート(imatinib mesylate)(Gleevec(登録商標))、レフルノミド(leflunomide)(SU101)およびバンデタニブ(vandetanib)(ZACTIMA(登録商標);ZD6474)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択させる、ことを特徴とする請求項12に記載の選択方法。
【請求項15】
前記化学療法剤は、ペメトレキセド(pemetrexed)(ALIMTA(登録商標))、ゲムシタビン(gemcitabine)(Gemzar(登録商標))、シロリムス(sirolimus)(rapamycin)、ラパマイシン(rapamycin)類似体、白金化合物、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、サトラプラチン(satraplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)(Taxol(登録商標))、テムシロリムス(temsirolimus)(CCI−779)、エベロリムス(everolimus)(RAD001)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項12に記載の選択方法。
【請求項16】
前記放射線療法剤は、47Sc,64Cu,67Cu,89Sr,86Y,87Y,90Y,105Rh,111Ag,111In,117mSn,149Pm,153Sm,166Ho,177Lu,186Re,188Re,211At,212Bi,およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項12に記載の選択方法。
【請求項17】
前記抗癌剤は、カルボプラチン(carboplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)(Taxol(登録商標))、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))、ペメトレキセド(pemetrexed)(ALIMTA(登録商標))、エルロチニブ(erlotinib)(Tarceva(登録商標))、ゲムシタビン(gemcitabine)(Gemzar(登録商標))、ソラフェニブ(sorafenib)(BAY 43−9006)、バンデタニブ(vandetanib)(ZACTIMA(登録商標);ZD6474)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される要素である、ことを特徴とする請求項12に記載の選択方法。
【請求項18】
前記一つ以上の分析物が、複数のシグナル伝達分子から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項19】
前記複数のシグナル伝達分子が、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼシグナル伝達カスケードの要素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項20】
前記複数のシグナル伝達分子は、EGFR(ErbB1),Her2(ErbB2),Her3(ErbB3),Her4(ErbB4),Raf,SRC,Mek,NFkB−IkB,mTor,PI3K,VEGF,VEGFR−1,VEGFR−2,VEGFR−3,Eph−a,Eph−b,Eph−c,Eph−d,cMet,FGFR,PDGFR,cKit,Flt−3,Tie−1,Tie−2,Flt−3,cFMS,PDGFR,Abl,FTL 3,RET,Kit,HGFR,FGFR1,FGFR2,FGFR3,FGFR4,IGF−1R、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項21】
前記複数のシグナル伝達分子は、TErbB1,ErbB2,ErbB4、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項22】
前記複数のシグナル伝達分子は、VEGF,VEGFR−1,VEGFR−2,VEGFR−3,Eph−a,Eph−b,Eph−c,Eph−d、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項23】
前記複数のシグナル伝達分子はErbB1,ErbB2,VEGFR−2,cMet,FGFR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項24】
前記複数のシグナル伝達分子は、VEGFR−2,VEGFR−3,Raf,PDGFR,cKit,Flt−3,Tie−1,Tie−2、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項25】
前記複数のシグナル伝達分子は、VEGFR−1,VEGFR−2,VEGFR−3,Flt−3,CFMS,PDGFR,cKit、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の選択方法。
【請求項26】
前記活性化状態は、リン酸化状態、ユビキチン化状態、錯体形成状態、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項27】
前記固相担体は、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項28】
前記キャプチャ抗体は、アドレス可能なアレイにおける固相担体上に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項29】
各希釈系列中の前記キャプチャ抗体は、少なくとも2倍で連続的に希釈される、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項30】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、シグナル増幅対の第1および第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の前記第1および第2の要素から生成された前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項31】
前記活性化状態依存性抗体は、結合対の第1の要素から構成される、ことを特徴とする請求項30に記載の選択方法。
【請求項32】
前記結合対の第1の要素はビオチンである、ことを特徴とする請求項31に記載の選択方法。
【請求項33】
前記シグナル増幅対の前記第1の要素は、前記結合対の第2の要素から構成される、ことを特徴とする請求項30に記載の選択方法。
【請求項34】
前記結合対の前記第2の要素はストレプトアビジンである、ことを特徴とする請求項33に記載の選択方法。
【請求項35】
前記シグナル増幅対の前記第1の要素は、ペルオキシダーゼである、ことを特徴とする請求項33に記載の選択方法。
【請求項36】
前記ペルオキシダーゼは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、ことを特徴とする請求項35に記載の選択方法。
【請求項37】
前記シグナル増幅対の前記第2の要素は、チラミド試薬である、ことを特徴とする請求項35に記載の選択方法。
【請求項38】
前記チラミド試薬は、ビオチン−チラミドである、ことを特徴とする請求項37に記載の選択方法。
【請求項39】
前記増幅されたシグナルは、前記ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって発生し、活性化されたチラミドを生じる、ことを特徴とする請求項38に記載の選択方法。
【請求項40】
前記活性化されたチラミドは、直接、検出される、ことを特徴とする請求項39に記載の選択方法。
【請求項41】
前記活性化されたチラミドは、シグナル検出試薬の添加によって検出される、ことを特徴とする請求項39に記載の選択方法。
【請求項42】
前記シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識フルオロフォアである、ことを特徴とする請求項41に記載の選択方法。
【請求項43】
前記シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせである、ことを特徴とする請求項41に記載の選択方法。
【請求項44】
前記発色試薬は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である、ことを特徴とする請求項43に記載の選択方法。
【請求項45】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な複数の活性化状態非依存性抗体および複数の活性化状態依存性抗体から構成される検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、前記シグナル増幅対の第1および第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の第1および第2の要素から生じた前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備え、
前記活性化状態非依存性抗体は、促進部位で標識され、前記活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の要素で標識され、前記促進部位は、前記シグナル増幅対の前記第1の要素に向けられ、該第1の要素と反応する酸化剤を生じる、ことを特徴とする請求項1に記載の選択方法。
【請求項46】
前記活性化状態非依存性抗体は、さらに検出可能部位を備える、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項47】
前記検出可能部位は、フルオロフォアである、ことを特徴とする請求項46に記載の選択方法。
【請求項48】
前記検出可能部位の量は、一つ以上の前記分析物の量と相関関係にある、ことを特徴とする請求項46に記載の選択方法。
【請求項49】
前記活性化状態非依存性抗体は、前記促進部位で直接的に標識化される、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項50】
前記活性化状態非依存性抗体は、前記活性化状態依存性抗体と共役されたオリゴヌクレオチドと、前記促進部位と共役された相補オリゴヌクレオチドと、の間のハイブリダイゼーションを介して、前記促進部位で標識される、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項51】
前記活性化状態依存性抗体は、前記シグナル増幅対の前記第1の要素で直接的に標識される、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項52】
前記活性化状態依存性抗体は、前記活性化状態依存性抗体と共役された結合対の第1の要素と、前記シグナル増幅対の前記第1の要素と共役した前記結合対の第2の要素と、の間の結合を介して、前記シグナル増幅対の前記第1の要素で標識される、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項53】
前記結合対の前記第1の要素はビオチンである、ことを特徴とする請求項52に記載の選択方法。
【請求項54】
前記結合対の前記第2の要素はストレプトアビジンである、ことを特徴とする請求項52に記載の選択方法。
【請求項55】
前記促進部位はグルコースオキシダーゼである、ことを特徴とする請求項45に記載の選択方法。
【請求項56】
前記酸化剤は過酸化水素(H)である、ことを特徴とする請求項55に記載の選択方法。
【請求項57】
前記シグナル増幅対の前記第1の要素は、ペルオキシダーゼである、ことを特徴とする請求項56に記載の選択方法。
【請求項58】
前記ペルオキシダーゼは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、ことを特徴とする請求項57に記載の選択方法。
【請求項59】
前記シグナル増幅対の前記第2の要素は、チラミド試薬である、ことを特徴とする請求項57に記載の選択方法。
【請求項60】
前記チラミド試薬は、ビオチン−チラミドである、ことを特徴とする請求項59に記載の選択方法。
【請求項61】
前記増幅されたシグナルは、前記ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって発生し、活性化されたチラミドを生じる、ことを特徴とする請求項60に記載の選択方法。
【請求項62】
前記活性化されたチラミドは、直接的に検出される、ことを特徴とする請求項61に記載の選択方法。
【請求項63】
前記活性化されたチラミドは、シグナル検出試薬の添加によって検出される、ことを特徴とする請求項61に記載の選択方法。
【請求項64】
前記シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン−標識化フルオロフォアである、ことを特徴とする請求項63に記載の選択方法。
【請求項65】
前記シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン−標識化ペルオキシダーゼと、発色試薬と、の組み合わせである、ことを特徴とする請求項63に記載の選択方法。
【請求項66】
前記発色試薬は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である、ことを特徴とする請求項65に記載の選択方法。
【請求項67】
抗癌剤での治療に対する肺腫瘍の応答を同定する同定方法であって、
該同定方法は、
(a)前記抗癌剤の投与後、または前記抗癌剤とのインキュベーション前に、前記肺腫瘍の細胞を分離する工程、
(b)前記分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程、
(c)固相担体上に固定されたキャプチャ抗体であって、一つ以上の分析物に特異的な複数の前記キャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて前記細胞抽出物中の前記一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程、および
(d)前記一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、前記抗癌剤の非存在下において生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、前記抗癌剤での治療に前記肺腫瘍が応答するか、または応答しないかを同定する工程、
を備える、ことを特徴とする同定方法。
【請求項68】
前記肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)を患う被検者由来である、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項69】
前記非小細胞肺癌(NSCLC)は、扁平上皮細胞癌、腺癌、大細胞癌、気管支肺胞癌(BAC)および燕麦細胞癌からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項68に記載の同定方法。
【請求項70】
前記細胞は、前記肺腫瘍の循環細胞を包含する、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項71】
前記循環細胞は、免疫磁気分離法によって試料から分離される、ことを特徴とする請求項70に記載の同定方法。
【請求項72】
前記試料は、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、細針吸引液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項71に記載の同定方法。
【請求項73】
前記循環細胞は、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、循環内皮前駆細胞、癌幹細胞、播種性腫瘍細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項70に記載の同定方法。
【請求項74】
前記細胞は、腫瘍組織から分離される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項75】
前記分離された細胞は、インビトロにおいて、増殖因子で刺激される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項76】
前記抗癌剤は、癌細胞における活性化されたシグナル伝達経路の構成因子の機能を阻害する薬剤から構成される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項77】
前記抗癌剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、放射線療法剤、ワクチン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項76に記載の同定方法。
【請求項78】
前記一つ以上の分析物が、複数のシグナル伝達分子から構成される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項79】
前記活性化状態は、リン酸化状態、ユビキチン化状態、錯体形成状態、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項80】
前記固相担体は、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項81】
前記キャプチャ抗体は、アドレス可能なアレイにおける前記固相担体上に固定される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項82】
各希釈系列中の前記キャプチャ抗体は、少なくとも2倍で連続的に希釈される、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項83】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、シグナル増幅対の第1および第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の前記第1および第2の要素から生成された前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備える、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項84】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な複数の活性化状態非依存性抗体および複数の活性化状態依存性抗体から構成される検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、前記シグナル増幅対の第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の前記第1および第2の要素から生成された前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備え、
前記活性化状態非依存性抗体は、促進部位で標識され、前記活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の要素で標識され、前記促進部位は、前記シグナル増幅対の前記第1の要素に向けられ、該第1の要素と反応する酸化剤を生成する、ことを特徴とする請求項67に記載の同定方法。
【請求項85】
抗癌剤での治療に対する、肺腫瘍を患う被検者の応答を予測する予測方法であって、
該予測方法は、
(a)前記抗癌剤の投与後、または前記抗癌剤とのインキュベーション前に、前記肺腫瘍の細胞を分離する工程、
(b)前記分離された細胞を溶解して、細胞抽出物を作製する工程、
(c)固相担体上に固定されたキャプチャ抗体であって、一つ以上の分析物に特異的な複数の前記キャプチャ抗体の希釈系列から構成されるアッセイを用いて前記細胞抽出物中の前記一つ以上の分析物の活性化状態を検出する工程、および
(d)前記一つ以上の分析物について検出された活性化状態と、前記抗癌剤の非存在下において生成された参照活性プロファイルと、を比較することによって、前記抗癌剤での治療に被検者が応答するであろう可能性を予測する工程、
を備える、ことを特徴とする予測方法。
【請求項86】
前記肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)を患う被検者由来である、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項87】
前記非小細胞肺癌(NSCLC)は、扁平上皮細胞癌、腺癌、大細胞癌、気管支肺胞癌(BAC)および燕麦細胞癌からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項86に記載の予測方法。
【請求項88】
前記細胞は、前記肺腫瘍の循環細胞を包含する、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項89】
前記循環細胞は、免疫磁気分離法によって試料から分離される、ことを特徴とする請求項88に記載の予測方法。
【請求項90】
前記試料は、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、細針吸引液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項89に記載の予測方法。
【請求項91】
前記循環細胞は、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、循環内皮前駆細胞、癌幹細胞、播種性腫瘍細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項88に記載の予測方法。
【請求項92】
前記細胞は、腫瘍組織から分離される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項93】
前記分離された細胞は、インビトロにおいて、増殖因子で刺激される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項94】
前記分離された細胞は溶解され、増殖因子の刺激が後続して、前記細胞抽出物を作製する、ことを特徴とする請求項93に記載の予測方法。
【請求項95】
前記抗癌剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、放射線療法剤、ワクチン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項96】
前記一つ以上の分析物が、複数のシグナル伝達分子から構成される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項97】
前記活性化状態は、リン酸化状態、ユビキチン化状態、錯体形成状態、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項98】
前記固相担体は、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項99】
前記キャプチャ抗体は、アドレス可能なアレイにおける前記固相担体上に固定される、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項100】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な活性化状態依存性抗体とインキュベートして複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、シグナル増幅対の第1および第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の前記第1および第2の要素から生成された前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備える、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項101】
前記工程(c)における前記アッセイは、
(i)前記複数のキャプチャ抗体の希釈系列とともに前記細胞抽出物をインキュベートして、複数の捕捉された分析物を形成する工程、
(ii)前記複数の捕捉された分析物を、対応する分析物に特異的な複数の活性化状態非依存性抗体および複数の活性化状態依存性抗体から構成される検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された分析物を形成する工程、
(iii)前記複数の検出可能な捕捉された分析物を、前記シグナル増幅対の第2の要素とインキュベートして、増幅されたシグナルを生成する工程、および
(iv)前記シグナル増幅対の前記第1および第2の要素から生成された前記増幅されたシグナルを検出する工程、を備え、
前記活性化状態非依存性抗体は、促進部位で標識され、前記活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1の要素で標識され、前記促進部位は、前記シグナル増幅対の前記第1の要素に向けられ、該第1の要素と反応する酸化剤を生成する、ことを特徴とする請求項85に記載の予測方法。
【請求項102】
固相担体上に固定された複数のキャプチャ抗体の希釈系列から構成される高いダイナミックレンジを有するアレイであって、各希釈系列中の前記キャプチャ抗体は、細胞抽出物中のシグナル伝達経路の構成因子に対応する一つ以上の分析物に特異的である、ことを特徴とするアレイ。
【請求項103】
前記シグナル伝達経路は、細胞増殖に含まれる、ことを特徴とする請求項102に記載のアレイ。
【請求項104】
前記シグナル伝達経路は、腫瘍血管新生に含まれる、ことを特徴とする請求項102に記載のアレイ。
【請求項105】
前記キャプチャ抗体が、EGFR,ErbB2,ErbB3,ErbB4,Shc,PI3K,Erk,Rsk,Akt,P70S6K,VEGFR1,VEGFR2,Tie2、およびV−Cadherin−R2複合体と反応性を有する抗体からなる群から選択される一つ以上の要素から構成される、ことを特徴とする請求項102に記載のアレイ。
【請求項106】
前記細胞抽出物は、固形腫瘍の循環細胞の抽出物から構成される、ことを特徴とする請求項102に記載のアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−533842(P2010−533842A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516264(P2010−516264)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069764
【国際公開番号】WO2009/012140
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508161207)プロメテウス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】