説明

抗体及びその使用

本発明は、癌細胞に結合し、細胞ローリング及び転移といったような生理学的現象の中で重要である抗体又はそのフラグメントを提供する。かかる抗体又はそのフラグメントを使用する治療及び診断方法及び組成物も同様に提供される。本発明に従った方法及び組成物は、治療薬をターゲティングする上で、及び腫瘍の成長及び転移、白血病、自己免疫疾患及び炎症性疾患を含めた癌などの疾病の診断、予後診断及び病期診断において使用可能である。同様に提供されているのは、重鎖cDR3においてのみ多様性をもつ、相補性結合のためのさまざまな抗原結合ドメインを有する免疫グロブリン結合ドメインライブラリである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌細胞、転移細胞、白血病細胞、白血病及び血小板といったような細胞上に存在し、かつ細胞ローリング、転移、炎症及び自己免疫疾患といったようなさまざまな生理学的現象において重要である特定のエピトープに結合する抗体に関する。より特定的には、該抗体は、抗癌活性、抗転移活性、抗白血病活性、抗ウイルス活性、抗感染活性、及び/又は、その他の疾病例えば炎症性疾患、自己免疫疾患、HIV感染、心臓血管疾患例えば心筋梗塞、網膜症疾患及び硫酸化チロシン依存性タンパク質−タンパク質相互作用によりひき起こされる疾病に対する活性を有することができる。さらに、本発明の抗体は、体内の特定の細胞又は部位に向かって治療薬を導くためのターゲティング剤としても使用できる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗体、ファージディスプレー及び組織ターゲティング
【0003】
治療薬の組織選択的ターゲティングは、製薬業界における新興の研究分野である。ターゲティングに基づく新しい癌治療が、毒性を低減させながら治療の特異性及び効力を増大させ、かくして全体的な効能を増強させるように設計されてきた。標的毒素、放射性ヌクレオチド及び化学療法接合体を腫瘍に対しターゲティングしようとして、腫瘍関連抗原に対するマウスモノクローナル抗体(MAbs)が利用されてきた。さらに、CD19、CD20、CD22及びCD25といったような分化抗原が造血器悪性腫瘍の治療における癌特異的標的として開発利用されてきた。
【0004】
大規模に研究されてきたにもかかわらず、このアプローチには、いくつかの制限がある。1つの制限は、選択的結合を表示する適切なMAbsを単離することのむずかしさにある。第2の制限は、うまく抗体を単離するための前提条件として高い抗体免疫原性が必要であるということにある。第3の制限は、最終産物が免疫応答を誘発する非ヒト配列を有するということにある。たとえば、ヒトに対してマウスMAbが与えられた場合、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答が生成されることになる。HAMA応答は往々にしてより短かい血清半減期を結果としてもたらし、反復的治療を妨げ、かくして抗体の治療的価値を低減させる。この後者の制限は、マウス由来のキメラ又はヒト化モノクローナル抗体を工学処理することと同時にヒト抗体を発見することに対する関心を刺激してきた。このアプローチのもう1つの制限は、それが、唯一の既知の及び精製された抗原に対して導かれた唯一の抗体種の単離を可能にするということにある。その上、この方法は、それが、正常な細胞と同様に悪性の細胞上にも存在する細胞表面マーカーに対する抗体の単離を可能にする限りにおいて、選択的ではない。
【0005】
癌を治療するためのMAbsの治療的効能に影響を及ぼす因子が数多く存在する。これらの因子には、腫瘍細胞上の抗原の特異性とレベル、抗原の不均一性及び腫瘍塊のアクセス可能性が含まれる。癌腫といったような中実腫瘍に比べて、白血病及びリンパ腫は一般に抗体での治療に対するより高い応答性を示してきた。MAbは、血流中で白血病及びリンパ腫細胞に急速に結合し、リンパ組織内で悪性細胞に容易に進入し、かくしてリンパ系腫瘍をMAbベースの療法に対するすぐれた候補にしている。理想的な系は、悪性後代細胞を産生している基幹細胞の細胞表面上のマーカーを認識するMAbの同定をひき起こす。
【0006】
抗体、ホルモン及び受容体といったような単離された予め決定された標的タンパク質に結合する無作為の一本鎖変異体フラグメント(scFvs)を選択するためにファージライブラリが使用される。さらに、抗体表示ライブラリ全般、そして特にファージscFvライブラリの使用は、特異的な、それでも未認識で未決定の細胞表面部分をターゲティングするためのユニークな分子を発見する代替的手段を容易にする。
【0007】
白血病、リンパ腫及び骨髄腫は、骨髄及びリンパ組織内に由来する癌であり、細胞の無制御成長に関与している。急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、特異的な臨床的及び免疫学的特徴によって定義される不均一性疾患である。ALLのその他の形態と同様、B細胞ALL(B−ALL)の大部分の症例の決定的な原因はわかっていない。しかしながら、数多くの症例において、該疾病は、単一細胞のDNA内の後天的遺伝子改変の結果としてもたらされ、異常及び連続的増加をひき起こす。B−ALLを患う患者の予後は、小児においても成人においても、その他の白血病患者の場合に比べ著しく悪い。慢性リンパ性白血病(CLL)は、リンパ球の数の増加を特徴とする、緩徐進行性の白血病形態である。急性骨髄性白血病(AML)は、正常な状態で骨髄性系の末端分化細胞(赤血球、顆粒球、単球及び血小板)を発生させる始原細胞を伴う不均質な新生物群である。その他の新生組織形成形態の場合と同様にAMLは、単数又は複数のタイプの早期脊髄分化を示す、比較的未分化の芽細胞と正常に分化した脊髄細胞の置換を結果としてもたらす後天的遺伝子改変に結びつけられる。AMLは一般に、骨髄内で進行し、より低い程度で二次的造血器官内において進行する。AMLには主として成人が罹患し、15〜40才の間で発生率がピークに達するが、小児及びこれより高齢の成人の両方が罹患するものとしても知られている。ほぼ全てのAML患者は、異常なレベルの循環未分化芽細胞の徴候が全く無い臨床的寛解に達するために、診断直後の治療を必要とする。
【0008】
これまでに、腫瘍細胞に対する細胞溶解活性を誘発するためにさまざまなMAbsが開発されてきた。HER2(P185)の細胞外ドメインに対して産生され、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖を著しく阻害することがわかっているマウスMAbmuMab4D5は、FDAにより承認され現在ヒトの乳癌を治療するのに使用されている薬物HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)を生産するためにヒト化された(米国特許5,821,337号及び5,720,954号)。結合の後、抗体は、HER2成長因子受容体に依存する腫瘍細胞成長を阻害する能力をもつ。さらに、リンパ腫に関連づけされるものを含めた末梢B細胞の急速な枯渇をひき起こすCD20、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)に対するキメラ抗体が、近年FDAによって承認された(米国特許5,843,439号)。標的細胞に対するこの抗体の結合は、結果として補体依存性溶解をもたらす。この製品は、最近承認され、現在、低グレードのB細胞非ホジキンリンパ腫を治療するため、診療所で使用されつつある。
【0009】
いくつかのその他のヒト化及びキメラ抗体が開発中であるか、又は臨床試験中である。さらに、正常な骨髄性細胞ならびに大部分のタイプの骨髄性白血病細胞の両方の上で発現されるCD33抗原と特異的に反応するヒト化免疫グロブリン(Ig)が、抗癌薬カリチアマイシン、CMA−676に対し接合された(Sievers et al., Blood Supp. 308:504a(1997))。薬物MYLOTARG(登録商標)として知られているこの接合体は、近年FDAの承認を受けた(Caron et al., Cancer Supp.73:1049−56(1994))。その細胞溶解活性に照らし合わせて、現在臨床試験中である付加的な抗CD33抗体(Hum M195)が、ゲロニン毒素(McGraw et al., Cancer Immunol. Immunother. 39:367−74(1994))及び放射性同位体131I(Caron et al., Blood 83:1760−68(1994))、90Y(Jurcic et al., Blood Supp. 92:613a(1998))及び213Bi(Humm et al., Blood Supplement38:231P(1997))を含む複数の細胞傷害作用物質に接合された。
【0010】
白血球抗原CD45(cHuLym3)に対するキメラ抗体が、ヒトの白血球及びリンパ腫の治療のために臨床研究されている(Sun et al., Cancer Immunol, Immunother.48:595−602(2000))。インビトロ検定においては、ADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害)検定(Henkart, Immunity 1:343−46(1994);Squier and Cohen, Current Opin. Immunol. 6:447−52(1994))が観察された。
【0011】
その標的に対するより高い親和力を有し、より安定となりかつ最適なバイオディストリビューション生物分布を有するように、治療用抗体も同じく特異的に工学処理されてきた。例えば(Presta, Current Pharma. Biotechnol., 3:237−56(2002);Presta et al., Biochem. Society Transactions, 30(4):487−90(2002)を参照のこと。
【0012】
マウスモノクローナルヒト化及びキメラ抗体の構築とは対照的に、ファージディスプレー技術の使用は、完全にヒトの配列を有するscFvsの単離を可能にする。ファージディスプレー技術から誘導された、scFvクローンに基づくヒトTGFα−2受容体に対する完全にヒトの抗体が最近開発された。TGFa−2(Thompson et al., J.Immunol. Meth.227:17−29(1999))の結合と競合する能力をもつ完全にヒトのIgG4へと転換されたこのscFvは、強い抗増殖活性を有する。当業者にとって既知であるファージディスプレー技術は、Smith, Science228:1315(1985);Scott et al., Science 249:386−90(1990);Cwirla et al., PNAS87:6378−82(1990);Devlin et al., Science 249:404−06(1990);Griffiths et al., EMBO J.13(14):3245−60(1994);Bass et al., Proteins 8:309−14(1990);McCafferty et al., Nature 348:552−54(1990);Nissim et al., EMBO J.13:692−98(1994);米国特許5,427,908、5,432,018、5,223,409及び5,403,484号といった刊行物中でより特定的に記述されている。
【0013】
単離されたscFv抗体分子のためのリガンド
血小板、フィブリノーゲン、GPIb、セレクチン及びPSGL−1(P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1)は各々、複数の病原性身体条件又は疾病状態、例えば異常な又は病原性の炎症、異常な又は病原性の免疫反応、自己免疫反応、転移、異常又は病原性の接着、血栓症及び/又は再狭窄及び異常又は病原性の凝集において重要な役割を果たしている。かくして、血小板と及びこれらの分子と交差反応する抗体が、これらの及びその他の病原性身体条件が関与する疾病及び障害の診断及び治療において有用であると思われる。
【0014】
血小板
血小板は、特徴が充分に明らかにされた血液系の成分であり、止血、血栓症及び/又は再狭窄においていくつかの重要な役割を果たす。血管に対する損傷は、一連の逐次的事象により特徴づけされる、止血として知られるプロセスを発動する。損傷を受けた血管に対する初期反応は、血管の内部表面上の罹患領域に対する血小板の接着である。次の段階は、止血血栓を形成し血管壁を封止する、以前に接着した血小板上への多数の血小板層の凝集である。止血血栓はさらにフィブリン重合体の被着により強化される。凝血塊又は血栓は、損傷が修復された時点で初めて分解される。循環血小板は、巨核球の周辺から放出された細胞質粒子である。かくして、血小板は止血中で重要な役割を果たす。血管の傷害の時点で、血小板は損傷を受けた組織表面に接着し互いに付着し合う(凝集 Cohesion)。この事象シーケンスは急速に発生し、血管傷害部位で無組織塊(一般に血小板血栓又は血栓と呼ばれる)を形成する。Aggregation(凝集)とも呼ばれる凝集(cohesion)現象は、さまざまな物質又はアゴニスト例えばコラーゲン、アデノシン二リン酸(ADP)、エピネフリン、セロトニン及びリストセチンによってインビトロで開始され得る。凝集は、血小板の機能の尺度として実施される数多くのインビトロ試験の1つである。
【0015】
転移における血小板の重要性
腫瘍の転移は、おそらく、癌患者の生存を制限する最も重要な因子である。蓄積されたデータは、宿主血小板と相互作用する腫瘍細胞の能力が転移の不可欠な決定因子の1つを表わすことを示している(Oleksowicz, Thrombosis Res. 79:261−74(1995))。
【0016】
血小板を凝集させる腫瘍細胞の能力が腫瘍細胞の転移潜在性と相関関係をもつことが実証され、腫瘍により誘発される血小板凝集の阻害がげっ歯類モデルにおける転移の抑制と相関関係をもつことが示されてきた。血小板との腫瘍細胞の相互作用には、膜粘着分子及びアゴニストの分泌が関与することが実証されてきた。免疫関係血小板糖タンパク質の発現が、腫瘍細胞系列上で固定されてきた。血小板免疫関連糖タンパク質GPIb、GPIIb/IIIa、GPIb/IX及びインテグリンαvサブユニットが、乳房の腫瘍細胞系列の表面上で発現されることが実証された(Oleksowicz,(1995)、前出;kamiyama et al., J. Lab. Clin. Med. 117(3):209−17(1991));
【0017】
Gasic et al.(PNAS61:46−52(1968))は、抗体誘発された血小板減少が、CT26結腸腺癌、ルイス肺癌腫及びB16黒色腫により生成される転移の数及び体積を著しく低減させることを示した(Karpatkin et al., J. Clin. Invest.81(4):1012−19(1988);Clezardin et al., Cancer Res. 53(19):4695−700(1993))。さらに、単一のポリペプチド鎖(60kd)が、GPIbに密に関連し不完全に又は異常にO−グリコシル化されたGPIbαサブユニットに対応するHEL細胞の表面膜上で発現されることがわかった(Kieffer et al., J.Biol. Chem. 261(34):15854−62(1986))。
【0018】
同様に転移プロセスにも血小板が関与している。転移癌細胞が血流中に入った時点で、腫瘍細胞をコーティングする白血球及び血小板から成る多細胞複合体が形成される。微小塞栓と呼ぶことのできるこれらの複合体は、腫瘍細胞が免疫系から逃れるのを助ける。血小板による腫瘍細胞のコーティングには、血小板によるP−セレクチンの発現が必要とされる。
【0019】
GPIb複合体
止血プロセスにおける各段階は、血小板表面上の受容体の存在を必要とする。止血において重要な1つの受容体が糖タンパク質Ib−IX複合体(CD42としても知られている)である。この受容体は、内皮下層内のフォンヴィレブランド因子(vWF)の部位における血管壁に対する血小板の接着(初期付着)を媒介する。それは同様に、止血における(a)動脈狭窄領域内の高いせん断によって誘発される血小板の凝集及び(b)トロンビンの低濃度により誘発される血小板活性化というその他の2つの血小板機能においてきわめて重要な役割を有する。
【0020】
GPIb−IX複合体は、血小板血漿膜の外部表面の主要な成分の1つである。GPIb−IX複合体は、3つの膜貫通ポリペプチドすなわち、GPIbのジスルフィド連結された130kDaのα鎖及び25kDaのβ鎖及び非共有会合GPIX(22kDa)を含む。全てのサブユニットは、CD42複合体の効率の良い細胞表面発現及び機能のため、血小板膜上で等モル量で提示され、1つの複合体の3つのサブユニットの適切な組立てが血漿膜上の完全な発現のために必要とされる、ということを示している。GPIbのα鎖は、3つの全く異なる構造ドメインすなわち(1)ロイシン反復配列、及びCyS結合したフランキング配列を含む球状N末端ペプチドドメイン;(2)高度にグリコシル化されたムチン様マクログリコペプチドドメイン及び(3)GPIbα膜内外及び細胞質配列に対するジスルフィド架橋を含む膜会合C末端領域から成る。
【0021】
複数の証拠が、GPIb−IX複合体のトロンビン結合ドメインとvWFがGPIbαのアミノ末端において約300のアミノ酸を包含する球状領域内に常在するということを示している。ヒト血小板GPIb−IX複合体は、血小板の機能と反応性の両方を媒介する主要な膜受容体である。GPIbによる内皮下層結合vWFの認識は、血小板が損傷を受けた血管に接着できるようにする。さらに、GPIbαに対するvWFの結合は、細胞骨格又はホスホリパーゼA2とGPIb−IXとの細胞質ドメインの相互作用が関与しうる血小板活性化をも誘発する。その上、GPIbαは、α−トロンビンのための高親和力結合部位を含み、このため、まだほとんど定義されていないメカニズムによる血小板の活性化が容易になっている。
【0022】
セレクチン及びPSGL−1
P−、E−及びL−セレクチンは、その他の機能の中でも、血管内皮上の白血球のローリングを媒介する接着分子ファミリーの成員である。P−セレクチンは、血小板中の顆粒内に貯蔵され、トロンビン、ヒスタミン、ホルボールエステル又はその他の刺激分子による活性化の後表面に輸送される。P−セレクチンは同様に、活性化された内皮細胞上でも発現される。E−セレクチンは、内皮細胞上で発現され、L−セレクチンは、好中球、単球、T細胞及びB細胞上で発現される。
【0023】
PSGL−1(CD162とも呼ばれる)は、GPIbと構造類似性を共有するP−セレクチン、E−セレクチン及びL−セレクチンのためのムチン糖タンパク質リガンドである(Afshar-Kharghan et al.(2001)。前出)。PSGLは、PACE(対合塩基性アミノ酸転換酵素)分割部位を有するジスルフィド連結されたホモ二量体である。PSGL−1の細胞外部分は、3つのN連結型グリコシル化部位を含み、数多くのシアリル化、フコシル化O連結型オリゴ糖分枝を有する(Moore et al., J. Biol. Chem. 118:445−56(1992))。N−グリカン部位の大部分及び数多くのO−グリカン部位が占有されている。ヒトHL−60細胞からのPSGL−1のO−グリカンの構造は決定済みである。これらのO−グリカンのサブセットは、セレクチンに対する結合のために必要とされるコア−2、シアリル化及びフコシル化構造である。
【0024】
PSGL−1は、267残基細胞外領域、25残基膜内外領域及び69残基細胞内領域を伴って、HL60細胞内に361個の残基を有する。PSGL−1は、細胞表面上にジスルフィド結合型ホモ二量体又はヘテロ二量体を形成する(Afshar-Kharghan et al., Blood97:3306−12(2001))。PSGL−1をコードする配列は、単一のエクソン内にあり、従って、代替的スプライシングは可能であるはずがない。しかしながら、HL60細胞中及び大部分の細胞系列中のPSGL−1は、細胞外領域内に存在する10個の残基コンセンサス配列の15の連続的反復を有するが、多形核白血球、単球及び大部分の未変性白血球を含めた複数のその他の細胞系列内にはこの配列の反復が14〜16存在している。
【0025】
PSGL−1は、好中球上で、250kDa及び160kDaの両方の見かけの分子量をもつ二量体として発現されるが、一方HL60上では、二量体形態は、およそ220kDaである。分子質量の差異は、異なる数の十量体反復の存在によってひき起こされる分子中の多形現象に起因し得る(Leukocyte Typing VI, 編集;T.Kishimoto et al.(1997))。
【0026】
PSGL−1は同様に、好中球、単球、白血球、B細胞サブセット及び全てのT細胞といった大部分の血液白血球上で発現される(Kishimoto et al.(1997)、前出)。PSGL−1は、活性化された内皮上、活性化された血小板上及びその他の白血球及び炎症性部位上で白血球のローリングを媒介し、P−セレクチン上で好中球のローリングを媒介する。PSGL−1は同様に、L−セレクチンとの結合を介して好中球−好中球相互作用をも媒介でき、かくして炎症を媒介する(Snapp et al., Blood 91(1):154−64(1998))。
【0027】
白血球ローリングは、炎症において重要であり、(傷害部位で固定化されうる血小板上でかつ活性化された内皮により発現される)P−セレクチンとPSGL−1の間の相互作用は、血管壁上の白血球の係留(tethering)及びローリングのために役立つ(Ramachandran et al., PNAS98(18):10166−71(2001);Afshar-Kharghan et al.(2001)、前出)。細胞ローリングは転移においても重要であり、内皮細胞上のP及びE−セレクチンは、転移細胞を結合して血流から周囲の組織内への管外遊出を容易にすると考えられている。
【0028】
かくして、PSGL−1は全ての白血球上すなわち好中球、単球、リンパ球、活性化された末梢T細胞、顆粒球、好酸球、血小板上及び一部のCD34陽性基幹細胞及び或る種のB細胞サブセット上に発見された。P−セレクチンは、活性化された血小板及び内皮細胞上で選択的に発現される。P−セレクチンとPSGL−1の間の相互作用は、血管壁上の白血球のローリングを促進し、血管部位における白血球の異常な蓄積は、さまざまな病原性炎症を結果としてもたらす。PSGL−1上の個々の硫酸チロシンの立体特異性貢献は、PSGL−1に対するP−セレクチンの結合にとって重要である。結合にとっては電荷も同じく重要である。すなわちNaClの減少(150から50mM)は、結合を増強させた(Kd〜75nM)。PSGL−1上のチロシン−硫酸化はP−セレクチン上のPSGL−1の接着を増強するが、究極的に必要とされるものではない。PSGL−1チロシン硫酸化は、全てのせん断速度でより緩慢なローリング接着を支援し、はるかに高いせん断速度でローリング接着を支援する(Rodgers et al., Biophys. J.81:2001−09(2001))。その上、血小板上でのPSGL−1発現は、白血球内で25〜100分の1低いことが示唆されてきたFrenette et al., J. Exp. Med.191(8):1413−22(2000))。
【0029】
ヒトPSGL−1に対する市販のモノクローナル抗体KPL1が生成され、PSGL−1とP−セレクチン間及びPSGL−1とL−セレクチン間の相互作用を阻害することが示された。KPL1エピトープは、PSGL−1のチロシン硫酸化領域(YEYLDYD)(配列番号1)に対してマッピングされた(Snapp et al., Blood91(1):154−64(1998))。
【0030】
シアリル化、フコシル化されたムチンリガンドを除去するO−シアログリコプロテアーゼでの腫瘍細胞の前処理は同様に、腫瘍細胞−血小板複合体形成を阻害した。インビボ実験は、これらの処理のいずれかが、循環する腫瘍細胞とより大きな単球会合を結果としてもたらすことを示しており、血小板結合の減少が循環腫瘍細胞に対する免疫細胞によるアクセスを増大させることを示唆している(Varki and Varki, Braz. J. Biol. Red. 34(6):711−17(2001))。
【0031】
フィブリノーゲン
正常なヒトフィブリノーゲンの2つの形態、すなわち各々正常な個体内で見い出される正常な(γ)及びγ′が存在する。より豊富な形態である(体内に見られる全フィブリノーゲンの約90%)である正常フィブリノーゲンは、2つの同一の55kDaのβ鎖、2つの同一の95kDaのβ鎖及び2つの同一の49.5kDaのγ鎖から成る。さほど豊富でない形態(体内に見られる全フィブリノーゲンの約10%)である正常な変異体フィブリノーゲンは、2つの同一の55kDaのβ鎖、2つの同一の95kDaのβ鎖、1つの49.5kDaのγ鎖及び1つの変異体50.5kDaのγ′鎖から成る。ガンマ及びガンマダッシュ鎖は両方共、3′末端で代替的スプライシングが、発生している状態で、同じ遺伝子によってコードされる。正常なガンマ鎖は、アミノ酸1−411から成り、正常な変異体ガンマ、ダッシュ鎖は、427個のアミノ酸から成り、そのうちアミノ酸1−407は正常なガンマ鎖内のものと同じであり、アミノ酸408〜427はVRPEHPAETEYDSLYPEDDL(配列番号2)である。この領域は通常、トロンビン分子で占有されている。
【0032】
フィブリノーゲンは、血液の凝集を生み出すべくイオン化カルシウムの存在下でトロンビンの作用によってフィブリンに転換される。フィブリンは同様に、血栓、及び急性炎症性滲出液の1成分である。
【0033】
タンパク質硫酸化
タンパク質硫酸化は、糖側鎖又はポリペプチド主鎖のいずれかに対する硫酸塩の酵素的共有結合付着が関与する広く見られる翻訳後修飾である。この修飾は、トランス−ゴルジ区画内に発生する。かかるタンパク質は、分泌タンパク質、顆粒に対し標的されたタンパク質、及び血漿膜タンパク質の細胞外領域を含む。チロシンは、現在硫酸化を受けるものとして知られているアミノ酸残基であるKehoe et al., Chem Biol.7:R57−61(2000))。その他のアミノ酸、例えばトレオニンも同様に、特に罹患した細胞内で、硫酸化を受ける。
【0034】
GPIbに関しては、GPIbの負荷電N末端球状ドメインは、硫酸化を受けるものとして知られている3つのチロシン残基を含む。血小板及び巨核球により発現されvWFとの結合を介して内皮下層に対する血小板の付着及びその上でのローリングを媒介するGPIbα(CD42)は同様に、Asp−269とAsp−287の間に負電荷アミノ酸のクラスタを含有する。このように高い酸性及び親水性の環境は、チロシルタンパク質スルフォトランスフェラーゼが酸性アミノ酸残基に隣接するチロシンを特異的に認識し硫酸化することから、硫酸化のための前提条件であると考えられている(Bundgaard et al., J.Biol. Chem.272:21700−05(1997))。GPIbαの酸性領域の完全な硫酸化は、顕著な負荷電密度(すなわち19アミノ酸ストレッチ内に13の負電荷)をもつ領域を生成し、それをその他のタンパク質との静電相互作用の候補部位にしている。複数の証拠が、GPIb−IX複合体を発現するトランスフェクションを受けたCHO細胞内及び血小板GPIbα内で、このドメイン内に含まれた3つのチロシン残基(Tyr−276、Tyr−278及びTyr−279)が硫酸化を受けるということを示している。
【0035】
PSGL−1に関しては、このタンパク質は3つの潜在的な硫酸部位(分子のN末端ドメインにある3つのチロシン残基の各々の上)とそれに続いてプロリン、セリン及びトレオニン内で高い10〜16の十量体反復を有する。
【0036】
PSGL−1の硫酸化は、P−セレクチンの結合に関係するものとして知られており、PSGL−1上の個々の硫酸チロシンの立体特異的貢献は、PSGL−1に対するP−セレクチンの結合にとって重要である。しかしながら、少なくとも1つのチロシン残基の硫酸化がP−セレクチン結合にとって重要であるといういくつかの指摘が存在する(J. Biol.Chem, Vol.273、12、7078−87)。PSGL−1チロシン硫酸化は、全てのせん断速度でより緩慢なローリング接着を支援し、はるかに高いせん断速度でローリング接着を支援する(Rodgers et al., Biophys. J.81:2001−09(2001))。
【0037】
硫酸化されたN末端チロシンが、標的細胞内へのヒト及びサルの免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2及びSIV)の進入のための関連する7膜内外セグメント(7TMS)受容体との補助受容体として役立つCCR5といったCC−ケモカイン受容体の役割に影響を及ぼすことも考えられている。例えば、硫酸化N末端チロシンは、MIP−1α、MIP−1β及びHIV−1gp120/CD4複合体に対するCCR5の結合及びCCR5及びCD4を発現する細胞に進入するHIV−1の能力に貢献すると考えられている。もう1つの重要なHIV−1コ受容体であるCXCR4も同様に硫酸化されている(Farzan et al., Cell96(5):667−76(1999))。チロシン硫酸化は、CCR5依存性進入に比べCXCR4依存性HIV−1進入においてさほど有意でない役割を果たし、かくしてCXC−ケモカインファミリ内でのチロシン硫酸化のために役割を果たしている可能性を実証しており、又、CCR5及びCXCR4のHIV−1の利用における一般的な差異を強調している(Farzan et al., J. Biol. Chem.,277(33):29、484−89(2002))。
【0038】
PSGL−1及び/又はGPIbに結合する抗体が、ファージライブラリを用いて同定され、米国出願第10/032,423;10/032,037;10/029,988;10/029,926;09/751,181;10,189,032;及び60/258,948号及び国際出願第PCT/US01/49,442号及びPCT/US01/49,440号内で開示された。これらの出願において開示された抗体の特定的例には、Y1、Y17及びL32抗体が含まれている。これらの抗体は、生殖細胞系(DP32)から単離され、N末端チロシンにおいて硫酸化され例えば腫瘍転移といった細胞移動に関与すると考えられている造血細胞のタンパク質上に発見されるエピトープに特異的に結合することが発見された。
【0039】
以前にY1/Y17/L32に結合するものとして同定された硫酸化エピトープは、好ましくは、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移、接着、血栓症及び/又は再狭窄、細胞ローリング及び凝集といったさまざまなプロセス内で重要な役割を果たすリガンド及び受容体上に見い出される2つ以上の酸性アミノ酸のクラスタ内部の硫酸化チロシン残基又は硫酸化炭水化物又は脂質部分といったような硫酸化部分の存在によって、特徴づけされる。かかるエピトープは同様に、T−ALL細胞、B−CLL細胞、AML細胞、多発性骨髄腫細胞及び転移細胞といったような罹患細胞上にも見られる。
【0040】
これらのエピトープは、これらのプロセスの治療的媒介(ならびにターゲティング作用物質)及び診断手順のための有用な標的である。
【0041】
目的
本発明の目的は、細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移及びHIV進入といったようなプロセスにおいて役立つさまざまな分子上に存在するエピトープに結合する抗体及びポリペプチドを提供することにある。
【0042】
本発明は同様に、接着、血栓症及び/又は再狭窄及び血小板凝集といったプロセスに関与するエピトープに結合しかつ、心筋梗塞及び再狭窄といったような心臓血管疾患の治療のため及び炎症性疾患のために使用できる抗体及びポリペプチドを提供することをも目的とする。
【0043】
本発明のもう1つの目的は、AML、T−ALL、B−白血病、B−CLL、Pre−B−ALL、多発性骨髄腫、転移、HIV感染、心臓血管疾患、又は細胞ローリング;炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移といったような細胞機能又は作用が有意な役割を果たすその他の疾病といったような個体のさまざまな疾病状態を診断、予後診断又は病期診断するための方法において抗体及びポリペプチドを利用することにもある。さらに、本発明のこれらの抗体は、特定の細胞又は部位に治療薬を導くためのターゲティング作用物質として使用できる。
【0044】
本発明のもう1つの目的は、例えばAML、T−ALL、B−白血病、B−CLL、Pre−B−ALL、多発性骨髄腫、転移、HIV感染、心臓血管疾患、又は細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移といったような細胞機能又は作用が有意な役割を果たすその他の疾病といったようなさまざまな疾病状態のための治療方法を提供することにある。本発明のもう1つの目的は、腫瘍細胞のパージ方法を提供することにある。
【0045】
本発明の目的は、AML、T−ALL、B−白血病、B−CLL、Pre−B−ALL、多発性骨髄腫、転移、HIV感染、再灌流傷害及び動脈硬化を含めた心臓血管疾患、又は細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移といったような細胞機能又は作用が有意な役割を果たすその他の疾病といったようなさまざまな疾病状態の治療のための医薬品を製造する上で使用するための抗体及びポリペプチドを提供することにもある。
【0046】
本発明の目的は、T−細胞、NK細胞を刺激しかつ/又は抗体依存性細胞傷害及び/又はアポトーシスを刺激する抗体及びポリペプチドを提供することにもある。
【0047】
本発明の目的は、細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移、HIV進入、接着、血栓症、再狭窄及び血小板凝集といったプロセスに関与する抗体を発現するポリペプチド、発現ベクター及び組換え型宿主細胞を提供することにもある。
【0048】
本発明のさらなる目的は、特定的にはscFv分子である免疫グロブリン結合ドメインのライブラリを提供することにある。
【0049】
該発明のこられの及びその他の目的が本書において提供される。
【発明の開示】
【0050】
発明の要約
【0051】
本発明は、X1及びX6が疎水性アミノ酸であり、X2、X3及びX5が任意のアミノ酸であり、X2が好ましくは塩基性アミノ酸であり、かつコンセンサス配列がN末端からC末端まで又はC末端からN末端まで配置されている、X1−X2−X3−Pro−X5−X6(配列番号3)というコンセンサス配列を含む抗体及びポリペプチドを提供する。該コンセンサス配列は、好ましくは該抗体の超可変領域内にあり、より好ましくはCDR3領域内にある。好ましくは、コンセンサス配列は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3領域を除外する。本発明はさらに、配列番号5又は配列番号6のscFv抗体の結合能力をもつ抗体及びポリペプチドを提供する。
【0052】
本発明はさらに、抗体又はポリペプチドを産生するためのプロセスにおいて、ファージディスプレーライブラリを提供する段階、配列番号4のscFv抗体フラグメントの結合能力をもつ抗体及びポリペプチドに結合する配列番号7のペプチドを提供する段階、配列番号7のペプチドに結合するscFv抗体フラグメントについてファージディスプレーライブラリをパニングする段階;及び配列番号7のペプチドに結合するscFv抗体フラグメントを含む抗体又はポリペプチドを産生する段階を含んで成るプロセスを提供する。
【0053】
本発明は同様に、免疫グロブリン結合ドメインライブラリ、特定的には相補的結合のためのさまざまな抗原結合ドメインを含むscFv分子のライブラリにおいて、重鎖CDR3内にのみ多様性を有するライブラリをも提供する。
【0054】
本発明は同様に、本発明の抗体及びポリペプチドを含む薬学組成物も提供している。これらの薬学組成物は、細胞ローリング;炎症;自己免疫疾患;血小板凝集;再狭窄;HIV感染;転移;腫瘍細胞の成長及び/又は複製;及び白血病細胞の複製に関する又はこれらが関与する身体条件を含むさまざまな身体条件を治療、診断、予後診断又は病期診断するために使用することができる。これらの薬学組成物は、細胞ローリングを阻害する;炎症を阻害する;自己免疫疾患を阻害する;血小板凝集を阻害する;再狭窄を阻害する;HIV感染を阻害する;転写を阻害する;腫瘍細胞の成長及び/又は複製を阻害して腫瘍細胞の死亡率を増大させる、白血病細胞の成長及び/又は複製を阻害して白血病細胞の死亡率を増大させる;抗疾病剤による損傷に対する罹病細胞の感受性を改変させる;抗癌剤による損傷に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる;抗白血病剤による損傷に対する白血病細胞の感受性を増大させる;腫瘍を有する患者の体内の腫瘍細胞の数の増加を阻害する;癌を有する患者の体内の腫瘍細胞数を減少させる;白血病を有する患者の体内の白血病細胞数の増加を阻害する;及び白血病を有する患者の体内の白血病細胞数を減少させる、ために使用することができる。
【0055】
本発明はさらに、AML、T−ALL、B−白血病、B−CLL細胞、Pre−B−ALL、多発性骨髄腫、転移、HIV感染、心臓血管疾患、又は細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移といったような細胞機能又は作用が有意な役割を果たすその他の疾病といったような個体のさまざまな疾病状態の治療のための医薬品を製造する方法をも提供している。
【0056】
本発明は同様に、患者由来の細胞を含有する試料を提供し、かつ本発明の抗体又はポリペプチドが患者の細胞に結合するか否かを判定し、かくしてその患者がその疾病のリスクをもつか又はその疾病を有していることを標示することによって、患者の体内の疾病を診断、予後診断又は病期診断する方法をも提供する。
【0057】
本発明は同様に、患者由来の細胞を含有する試料を提供し、患者由来の細胞を本発明の抗体又はポリペプチドと共にインキュベートすることにより、患者由来の腫瘍細胞をパージする方法をも提供する。
【0058】
定義
抗体(Abs)又は免疫グロブリン(Igs)は、抗原に結合するタンパク質分子である。天然に発生する抗体の各々の機能的結合単位は、ジスルフィド結合によって一緒に連結された4つのポリペプチドペプチド(重鎖2個と軽鎖2個)の単位から成る。鎖の各々は定常領域と可変領域を有する。天然に発生する抗体は、その重鎖成分に基づいてIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを含む複数のクラスに分割され得る。IgGクラスは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む(ただしこれらに制限されない)複数のサブクラスを包含している。免疫グロブリンは、B−リンパ球によってインビボで産生され、各々のこのような分子は、特定の異種抗原決定基を認識し、その抗原の一掃を容易にする。
【0059】
抗体は、抗体複合体を含め、数多くの形態で産生され使用され得る。本書で使用されている「抗体複合体(単複)」という語は、もう1つの抗体又は抗体フラグメント(単複)と単数又は複数の抗体の複合体を意味するべく使用されている。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、F(ab’)2、Fc及びFdフラグメントが含まれる。従って、本発明に従った抗体は、その抗体又はフラグメントの複合体を包含している。
【0060】
本書で明細書及び特許請求の範囲内で使用されているように、Fvというのは、同じものであるか又は異なるものでありうる、ヒト抗体の重鎖の可変領域とヒト抗体の軽鎖可変領域で構成され、その中で重鎖の可変領域が軽鎖の可変領域に接続、連結、融合又は共有結合付着されているか又はそれと会合させられている分子として定義される。Fvは、1本鎖Fv(scFv)又はジスルフィド安定化Fv(dsFv)であり得る。scFvは、フレキシブルなアミノ酸ポリペプチドスペーサ又はリンカーによって連結される、抗体の重鎖及び軽鎖の各々の可変ドメインから成る。リンカーは、有枝又は未分枝であり得る。好ましくは、リンカーは0〜15のアミノ酸残基、そして最も好ましくは(Gly4Ser)3(配列番号8)である。
【0061】
Fv分子自体は、各々第1、第2及び第3の超可変領域をもつ第1鎖と第2鎖から成る。軽鎖及び重鎖の可変ドメイン内部の超可変ループは、相補的決定領域(CDR)と呼ばれる。重鎖及び軽鎖の各々の中にCDR1、CDR2及びCDR3が存在する。これらの領域は、抗原結合部位を形成すると考えられており、増強した結合活性を生成するべく特定的に修飾可能である。これらの領域のうち現実に最も可変的であるのは、重鎖のCDR3である。CDR3は、Lg分子の最も露呈された領域であるものと理解されており、本書に示され提供されているように、観察される選択的及び/又は特異的結合特性の主たる原因となる部位である。
【0062】
Fv分子のフラグメントは、もとのFvよりも小さく、しかもなおもとのFvの選択的及び/又は特異的結合特性を保持している任意の分子として定義される。かかるフラグメントの例としては、(1)Fvの重鎖のみのフラグメントを含むミニボディ、(2)抗体重鎖可変領域の小さな分画単位を含むミクロボディ(国際出願第PCT/IL99/00581号)、(3)軽鎖のフラグメントをもつ類似のボディ及び(4)軽鎖可変領域の機能的単位を有する類似のボディが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0063】
本書で使用されているように、「Fabフラグメント」という用語は、免疫グロブリンの一価抗原結合フラグメントである。Fabフラグメントは、軽鎖及び重鎖の一部分から成る。
【0064】
F(ab′)2フラグメントは、ペプシン消化によって得られる免疫グロブリンの2価の抗原結合フラグメントである。それは、両方の軽鎖及び両方の重鎖の一部を含有する。
【0065】
Fcフラグメントは、免疫グロブリンの非抗原結合部分である。それは、重鎖のカルボキシ末端部分及びFc受容体のための結合部位を含有する。
【0066】
Fdフラグメントは、免疫グロブリンの重鎖の可変領域及び第1の定常領域である。
【0067】
ポリクローナル抗体は免疫応答の産物であり、一定数の異なるB−リンパ球によって形成される。モノクローナル抗体は、1つのクローナルB細胞から誘導される。
【0068】
疎水性アミノ酸は、一般にバリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、アラニン(A)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)、プロリン(P)、及びグリシン(G)である。塩基性アミノ酸は一般にアルギニン、ヒスチジン及びリジンである。
【0069】
ポリペプチドに適用され本発明内で定義されているカセットというのは、1つの枠組として役立ち単一の単位としてみなされそのように操作される連続的なアミノ酸の一定の与えられた配列を意味する。アミノ酸を、一方又は両方の端部で、置換、挿入、除去又は付着することが可能である。同様にして、アミノ酸ストレッチを一方の端部又は両方の端部で置換、挿入、除去又は付着することができる。
【0070】
「エピトープ」という用語は、本書では、抗体、抗体フラグメント、抗体複合体又はその結合フラグメント又はT細胞受容体をもつ複合体と相互作用する抗原決定基又は認識部位又は抗原部位を意味するべく使用されている。エピトープという用語は、本書では、リガンド、ドメイン及び結合領域という用語と互換的に使用される。
【0071】
選択性という語は、本書では、その全ての実体又は実体状態がターゲティング分子に特異的であり得る、実体又は実体状態の混合物から、1つの実体又は細胞状態を選択し結合するターゲティング分子の能力として定義づけされる。
【0072】
本書に使用されている「親和力」という語は、結合分子(例えば抗体上の1結合部位)とリガンド(例えば抗原決定基)の間の結合強度(会合定数)の1つの尺度である。抗体上の単一抗原結合部位と単一エピトープの間の非共有結合相互作用の総体的結果が、そのエピトープに対する抗体の親和力である。低親和力抗体は抗原を弱く結合させ、容易に解離する傾向をもつが、一方、高親和力の抗体は、抗原をより密に結合させ、より長く結合状態にとどまらせる。「結合活性」という用語は、それが抗原−抗体相互作用の結合価を反映していることから、親和力と異なる。
【0073】
抗体−抗原相互作用の特異性: 抗原−抗体反応は特異的であるものの、一部のケースでは、1つの抗原により惹起される抗体は、もう1つの関係のない抗原と交差反応し得る。このような交差反応は、2つの異なる抗原がその相同な又は類似の構造、エピトープ又はアンカー領域を共有する場合に、又は1つのエピトープに特異的な抗体が、類似の構造、立体構造又は化学特性を有する無関係のエピトープに結合する場合に起こる。
【0074】
血小板というのは、骨髄洞内を流れ、その後末梢血流内を循環する巨核球の円板状の細胞質フラグメントである。血小板は、凝固における主要な役割を含め複数の生理学的機能を有する。血小板は、中心に位置設定された顆粒及び末梢の明らかな原形質を含有するが、明確な核を全くもたない。
【0075】
本書では、アグルチネーションという用語は、懸濁した細菌、細胞、円板又は類似のサイズのその他の粒子を接着させて凝集塊を形成させるプロセスを意味する。このプロセスは、沈降に類似しているが、粒子はさらに大きく、溶解状態ではなく懸濁状態にある。
【0076】
凝集は、インビトロで誘発される血小板及びトロンビンとコラーゲンの、血栓又は止血血栓の形成を導く逐次的メカニズムの一部としてのクランピングを意味する。
【0077】
保存的アミノ酸置換は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質又はそのフラグメントの1つ又は2つのアミノ酸を変更することによるアミノ酸組成物の変化として定義づけされる。置換というのは、その置換が実質的にペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の特性(例えば電荷、等電点、親和性、結合活性、立体構造、溶解度)又は活性を改変しないような、一般的な類似の特性(例えば酸性、塩基性、芳香族、サイズ、正荷電又は負荷電、極性、非極性)を伴うアミノ酸の置換である。かかる保存的アミノ酸置換のために実施可能な標準的な置換は、以下のようなアミノ酸基の中のものであり得る:
グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)
アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)、アラニン(A)、セリン(S)及びトレオニン(T)、ヒスチジン(H)、リジン(K)及びアルギニン(R)、アスパラギン(N)及びグルタミン(Q)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)。
【0078】
保存的アミノ酸置換は、分子の選択的及び/又は特異的結合特性の主たる原因である超可変領域をフランキングする領域ならびに分子のその他の部分。例えば可変的重鎖カセットの中で行なうことができる。付加的又は代替的には、フルサイズ抗体、ダイアボディ(二量体)、トリアボディ(三量体)及び/又はテトラボディ(四量体)を形成するため、又はミニボディ又はミクロボディを形成するために分子を再構築することにより修飾を達成することができる。
【0079】
プロモータというのは、RNAポリメラーゼが結合し転写を開始するDNA上の領域である。
【0080】
ファージディスプレーライブラリ(同じくファージペプチド/抗体ライブラリ、ファージライブラリ又はペプチド/抗体ライブラリとも呼ばれる)は、大きなファージ集合(108以上)を含み、各ファージ粒子はペプチド配列を表示する。
【0081】
薬学組成物というのは、該発明のペプチド又はポリペプチド及び薬学的に受容可能な担体、賦形剤又はその希釈剤、又は抗体−薬学作用物質(抗体−作用物質)複合体及びその薬学的に受容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含む製剤を意味する。
【0082】
作用物質というのは、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ又はその他のあらゆる温血動物を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)哺乳動物の活性疾患の治療、予防的治療、又は診断において有用である作用物質を意味する。作用物質は、放射性同位体、毒素、オリゴヌクレオチド、組換え型タンパク質、抗体フラグメント、薬学的作用物質、抗癌剤、抗白血病剤、抗転移剤、抗新生物剤、抗疾病剤、抗接着剤、抗血栓剤、抗再狭窄剤、抗自己免疫剤、抗凝集剤、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗炎症剤から成る群から選択される。このような作用物質のその他の例としては、アシクロビル、ガンシクロビル及びジドブジンを含めた抗ウイルス剤;シロスタゾル、ダルテパリンナトリウム、レビパリンナトリウム、及びアスピリンを含めた抗血栓症/再狭窄剤;ザルトプロフェン、プラノプロフェン、ドロキシカム、アセチルサリチル酸17、ジクロフェナク、イブプロフェン、デキシブプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、アムトルメチン、セレコキシブ、インドメタシン、ロフェコキシブ及びニメスリドを含む抗炎症剤;レフルノミド、デニロイシン、ジフチトクス、サブレウム、WinRho SDF、デフィブロチド及びシクロホスファミドを含めた抗自己免疫剤;及びリマプロスト、クロルクロメン及びヒアルロン酸を含む抗接着/抗凝集剤及びその誘導体、組合せ及び修飾が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0083】
抗白血病剤というのは、抗白血病性をもつ作用物質である。例えば、抗白血病剤には、白血病性又は未成熟の前白血病性細胞の成長を阻害するか停止させる作用物質、白血病性又は前白血病性細胞を殺す作用物質、白血病性又は前白血病性細胞のその他の抗白血病剤に対する感受性を増大させる作用物質及び白血病細胞の転移を阻害する作用物質が含まれる。本発明においては、抗白血病剤は同様に、腫瘍の血管新生を防止、阻害、遅延又は停止させる抗血管形成活性をもつ作用物質でもあり得る。
【0084】
抗癌剤というのは、抗癌活性をもつ作用物質である。例えば、抗癌剤には、癌性又は未成熟の前癌性細胞の成長を阻害するか停止させる作用物質、癌性又は前癌性細胞を殺す作用物質、癌性又は前癌性細胞のその他の抗癌剤に対する感受性を増大させるAJK及び癌細胞の転移を阻害する作用物質が含まれる。本発明においては、抗癌剤は同様に、腫瘍の血管新生を防止、阻害、遅延又は停止させる抗血管形成活性をもつ作用物質でもあり得る。
【0085】
遺伝子の発現パターンは、さまざまな組織内で、特定の時点でさまざまな条件下などで産生される遺伝子産物の量を分析することにより研究することができる。遺伝子は、遺伝子産物の量が正常な対照例えば非罹患対照内で見られるものよりも高い場合に「過剰発現されている」とみなされる。
【0086】
一定の与えられた細胞は、一定の与えられた抗体のための結合部位(又はエピトープ)をもつタンパク質をその表面上で発現する可能性があるが、その結合部位は、第1期(病期I)と呼ぶことのできる1つの状態にある細胞内で隠れた形で存在しうる(例えば立体障害を受けているか又は遮断されている、又は抗体による結合に必要とされる特長が欠如している)。病期Iは、例えば、正常な、健常な、非罹患状況でありうる。エピトープが隠れた形で存在する場合、それは、一定の与えられた抗体によって認識されない。すなわち病期Iではこのエピトープ又は一定の与えられた細胞に対する抗体の結合は全く存在しない。しかしながら、エピトープは、近くにある又は会合した分子が修飾されているか又は領域が立体配座の変化を受けていることを理由として、例えば修飾自体を受けるか又は遮断解除されることなどによって露呈される可能性がある。修飾の例としては、折畳みの変化、翻訳後修飾の変化、リン脂質化の変化、硫酸化の変化、グリコシル化の変化、などが含まれる。かかる修飾は、細胞が第2期(病期II)と呼ぶことのできる異なる状態に入った場合に発生し得る。第2の状態又は第2期の例としては、活性化、増殖、形質転換又は悪性の状況が含まれる。修飾を受けた時点で、エピトープはそのとき露呈され得、抗体は結合し得る。
【0087】
ペプチドミメティック(peptido-mimetics, peptide mimetics)は、いかなるペプチド結合すなわちアミド結合もアミノ酸の間に含まなくなった分子のことである。しかしながら本発明の状況下では、ペプチドミメティックという用語は、もはや現実に完全にペプチド性でない分子、例えば擬似ペプチド、半ペプチド及びペプトイドを内含することが意図されている。完全に非ペプチドであろうと部分的に非ペプチドであろうと、本発明に従ったペプチドミメティックは、その基礎であるペプチド内の活性基の3次元配置と密に似た反応性化学部分の空間的配置を提供する。これらの分子は小分子、脂質、多糖体又はその接合体を内含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
発明の詳細な説明
本発明は、X1及びX6が疎水性アミノ酸であり、X2、X3及びX5が任意のアミノ酸であり、X2が好ましくは塩基性アミノ酸であり、かつコンセンサス配列がN末端からC末端まで又はC末端からN末端まで配置されている、X1−X2−X3−Pro−X5−X6(S3)というコンセンサス配列を含む抗体又はそのフラグメントに関する(本書ではかかる抗体を一般にコンセンサス抗体と呼ぶ)。
【0089】
本発明のコンセンサス抗体の1実施形態においては、X2はアルギニン及びリジンから成る群から選択され、X1及びX6はロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン及びイソロイシンから成る群から選択される。好ましくは、この実施形態のコンセンサス抗体は、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択されたコンセンサス配列を含む。より好ましくは、本実施形態においては、コンセンサス抗体は配列番号5を含み(CDR3配列は、配列番号9である)、かかるコンセンサス抗体は、本書でS15と呼称されそのように言及される。代替的には、この実施形態におけるコンセンサス抗体は、より好ましくは、配列番号6であり(CDR3配列は配列番号10である)、かかるコンセンサス抗体は本書でA3Rと呼称されそのように言及される。
【0090】
本発明のコンセンサス抗体のもう1つの実施形態においては、X2及びX3はアルギニンであり、疎水性アミノ酸X6は好ましくはイソロイシンである。好ましくはこのもう1つの実施形態のコンセンサス抗体は、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択されたコンセンサス配列を含む。より好ましくは、このもう1つの実施形態のコンセンサス抗体はA3R及び/又はS15である。
【0091】
本発明のコンセンサス抗体のもう1つの実施形態においては、X1はロイシン及びメチオニンから成る群から選択されており、X2及びX3はアルギニンであり、X5はセリン及びバリンから成る群から選択され、X6はイソロイシンである。好ましくは、このもう1つの実施形態のコンセンサス抗体は、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択されたコンセンサス配列を含む。
【0092】
本発明のコンセンサス抗体のもう1つの実施形態においては、X1はロイシンであり、X2は塩基性アミノ酸から成る群から選択され、X6は疎水性アミノ酸から成る群から選択される。この実施形態の好ましいコンセンサス抗体は、配列番号11〜配列番号16のDシリーズの抗体を含む。より好ましくは、本発明のコンセンサス抗体はD1(CDR3領域は配列番号14であり、完全scFcは配列番号55である)か又はD3(CDR3領域は配列番号13であり、完全scFvは配列番号56である)。
【0093】
本発明のコンセンサス抗体は、好ましくは、第2のエピトープよりも第1のエピトープを優先的に結合させ、ここで第1及び第2のエピトープのうちの少なくとも1つは硫酸化されている。第1及び第2のエピトープの例にはPSGL−1エピトープ及びGPIbエピトープが含まれている。より好ましくは、コンセンサス抗体は、PSGL−1及びGPIbの両方のエピトープを結合し、好ましくは、GPIbエピトープに比べPSGL−1エピトープに対してより強い親和力での結合を示す。代替的には、コンセンサス抗体は、類似の親和力で第1及び第2のエピトープ(例えばPSGL−1及びGPIb)を結合する。類似の親和力でPSGL−1及びGPIbに結合する適切な抗体の例としては、D1及びD3、完全scFv又はCDR3領域のいずれかが含まれる。
【0094】
コンセンサス抗体がA3Rである実施形態においては、好ましくは、コンセンサス抗体は、硫酸化PSGL−1エピトープに対するその結合よりも強い親和力で硫酸化GPIbのエピトープを結合させる。特定的には、類似の濃度でのS15及びA3Rの結合特性の比較に関しては、A3RがS15よりも強い親和力で健康なGPIb血小板に結合することが発見されてきた。同様に、類似の濃度でS15がA3Rに比べて強い親和力で(PSGL−1を発現する顆粒球;リンパ球及び単球を含有する)全血細胞に結合することも発見されてきた。
【0095】
かくして、本発明は、S15の親和力に実質的に類似した親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに特異的に結合しかつGPIbよりも強い親和力でPSGL−1に結合する抗体を提供する。より好ましくは、抗体は、位置51で第3のN末端チロシン残基で硫酸化されている硫酸化PSGL−1エピトープに結合する。もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、A3Rのものと実質的に類似した親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに対し特定的に結合し、好ましくはPSGL−1よりも強い親和力でGPIbに結合する。より好ましくは、この実施形態の抗体は、位置46で第1のN末端チロシン残基で硫酸化される硫酸化GPIbエピトープに結合する。代替的には、本発明は、(好ましくはTry−51で第3のN末端チロシン残基において硫酸化された)硫酸化PSGL−1及び(好ましくは、Try−276で第1のN−末端チロシンで硫酸化された)硫酸化GPIbに対し、D1及び/又はD3のものと実質的に類似した親和力で特異的に結合する抗体を提供する。
【0096】
硫酸化されたPSGL−1及びGPIbに対する本発明のさまざまな抗体(例えばS15及びA3R)の親和力の差異の結果として、又これら2つの抗体がコンセンサス配列の位置X1及びX5で異なっていることを理由として、本発明のコンセンサス抗体のコンセンサス配列のX1及びX5はチロシン硫酸化部位に対するコンセンサス抗体の結合に貢献し得る。従って、コンセンサス配列のX1及びX5位置内のアミノ酸は、特定の硫酸化されたエピトープが結合のためにターゲティングしているか否かに応じて特異的に選択され得る。換言すると、位置X1及びX5を、特定の硫酸化エピトープに特異的に結合するように抗体を調整するべく改変することができる。その上、S15は好ましくは、第3のN末端チロシンに硫酸塩修飾を含むPSGL−1エピトープに結合し、A3Rは好ましくは第1のN末端エピトープで硫酸塩修飾をもつGPIbエピトープに結合することから(一方でD1及びD3はPSGL−1及びA3Rの両方を同等に結合させる)、コンセンサス配列のX1及びX6は、それぞれPSGL−1及びGPIbの第3及び第1の硫酸化チロシンに対するS15及びA3Rの結合と関係する可能性がある。
【0097】
PSGL−1及び/又はGPIbに結合する抗体はファージライブラリを用いて同定され、米国特許出願第10/032,423号;10/032,037号;10/029,988号;10/029,926号;09/751,181号;10,189,032号及び60/258,948号及び国際出願第PCT/US01/49,442号及びPCT/US01/49,440号で開示された。これらの出願において開示された抗体の特定的例には、Y1、Y17、及びL32抗体が含まれている。これらの抗体は、生殖細胞系(DP32)から単離され、N末端チロシンで硫酸化され例えば腫瘍転移といった細胞移動に関与すると思われている造血細胞のタンパク質上に見られるエピトープに対し特異的に結合することが発見された。
【0098】
Y1/Y17/L32に結合しているものとして以前に同定された硫酸化エピトープは、好ましくは、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移、接着、血栓症及び/又は再狭窄、細胞ローリング及び凝集といったようなさまざまなプロセスにおいて重要な役割を果たすリガンド及び受容体上に見られる2つ以上の酸性アミノ酸のクラスタ内部での硫酸化チロシン残基又は硫酸化炭水化物又は脂質部分といったような硫酸化部分の存在により特徴づけられる。かかるエピトープは同じく、T−ALL細胞、B−CLL細胞、AML細胞、多発性骨髄腫細胞及び転移細胞といったような罹患細胞上にも発見される。
【0099】
DP32ファミリーから単離された本発明のコンセンサス抗体は、硫酸化チロシンエピトープをもつタンパク質に結合する。かかるタンパク質には、PSGL−1、GPIb、α−2−抗プラスミン;アミノペプチダーゼB;CCR2、CCR5、CCR3、CXCR3、CXCR4、CCR8及びCCR2bといったCCケモカイン受容体;7膜内外セグメント(7TMS)受容体;第V、VIII及びIX因子といった凝固因子;フィブリノーゲンガンマ鎖;ヘパリン補因子II;セレクトグラニンI及びIIといったセクレトグラニン;ビトロネクチン、アミロイド前駆体、α−2−抗プラスミン;コレシストキニン;α−コリオゴナドトロピン;補体C4;デルマタンスルファートプロテオグリカン;フィブロネクチン;及びカストリン、を含むが、これらに制限されるわけではない。好ましい実施形態においては、本発明のコンセンサス抗体は、CCR5、CXCR4及びCCR2bといったような硫酸化CCケモカイン受容体に対して結合する。硫酸化チロシンは、MIP−1α、MIPβ及びHIV−1gp120/CD4に対するCCR5の結合及びCCR5及びCD4を発現する細胞に進入するHIV−1の能力に貢献し得る。
【0100】
その上、本発明の抗体の結合は、細胞の発達期によっても左右され得る(AML亜型は、日常的プロセッシング及び細胞化学的染色の下で観察される形態を用いてフランス−アメリカ−イギリスシステムに基づいて分類される)。抗体は、M3亜型以上のものであってM0又はM1亜型細胞ではないAML細胞に結合し得る。さらに、抗体は、M2亜型細胞に結合してもしなくてもよい。従って、本発明の抗体は、正常な健康な骨髄(例えばCD34+細胞)に対する低い結合を示す。かかる差異は、PSGL−1発現及び/又は硫酸化の改変、ならびにわずかに異なるエピトープを露呈する考えられるPSGL−1の立体配座変化に基づくものであると考えられている。
【0101】
従って、コンセンサス抗体は、M0、M1、M2及びM3細胞といったような骨髄内の未分化細胞を結合させない可能性がある。コンセンサス抗体が結合するPSGL−1は、有意なレベルで発現されず、これらの未分化細胞上で硫酸化されないと考えられている。本発明のコンセンサス抗体は、健康な骨髄細胞(例えばCD34+細胞)にも同様に結合しない可能性がある。
【0102】
より好ましい実施形態においては、本発明のコンセンサス抗体は硫酸化PSGL−1に結合する。特にS15抗体は、硫酸化PSGL−1に対する高い選択性を示す。単球、好中球及びリンパ球といったような炎症に関与する白血球は、アテローム性動脈硬化症といったような疾病の炎症プロセスにおいてPSGL−1、P−セレクチン、VLA−4及びVCAM−1という4つの接着分子によって主として補強される(Huo and Ley, Acta Physiol, Scand., 173:35−43(2001);Libby, Sci. Am. May:48−55(2002);Wang et al., J. Am. Coll. Cardiol. 38:577−582(2001))。コンセンサス抗体特にS15とこれらの中心的分子のいずれかとの干渉は、関連する疾病を抑制する上でのコンセンサス抗体の潜在的役割を示唆している。
【0103】
特定的には、P−セレクチンが細胞の付着及びローリングを制御する。付加的には、P−セレクチン・PSGL−1の相互作用は、(悪性細胞に関係する場合には)腫瘍形成そして(白血球に関係する場合には)炎症性応答と完全に結びつけられている細胞上の一定数のその他の分子を活性化する(Shebuski and Kilgore, J.Pharmacol. Exp. Ther. 300:729−735(2002))。P−セレクチンの細胞プロセス調節能力についてのこの理解に基づき、硫酸化PSGL−1についてのコンセンサス抗体及びS15のscFv選択性の増強により、これらがさまざまな悪性及び炎症性疾患を治療するためのより優れた分子となり得る、ということは明白である。さらに、悪性疾患モデルは、悪性細胞に対するP−セレクチン結合が、PSGL−1の硫酸化を必要とするということを示した(Ma及びGeng, Immunol. 168:1690−1696(2002))。この必要条件は、コンセンサス抗体の結合、特にS15結合についての必要条件に類似している。かくして、コンセンサス抗体特にS15が、進行性悪性疾患のP−セレクチン促進を抑制することができると予想することが可能である。
【0104】
特にX2及びX3がアルギニンであり、X6がイソロイシンである実施形態における本発明のコンセンサス抗体、好ましくはA3Rは、同様に硫酸化GPIbについて高い選択性を示す。GPIbは、トロンビンの低濃度により誘発される血小板活性化及び動脈狭窄の領域における高いせん断によって巻き込まれる血小板の凝集に関与する。GPIbについてのこの理解に基づくと、硫酸化GPIbについてのコンセンサス抗体及びA3RのscFv選択性の増強により、それがさまざまな心臓血管及び炎症性の疾病を治療するためのより優れた分子となり得る、ということは明白である。
【0105】
好ましくは、本発明のコンセンサス抗体は、T−ALL細胞、AML細胞、Pre−B−ALL細胞、β−白血球細胞、B−CLL細胞、多発性骨髄腫細胞及び転移細胞を含む炎症又は腫瘍形成に関与する少なくとも1つの細胞型上に存在するエピトープに結合する。さらに好ましくは、本発明のコンセンサス抗体は、脂質、炭水化物、ペプチド、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質及び/又はリポ多糖体分子上のエピトープに結合し得る。かかるエピトープは、好ましくは少なくとも1つの硫酸化部分を有する。代替的にそして好ましくは、本発明のコンセンサス抗体は、PSGL−1を一例とする2つ以上の酸性アミノ酸の少なくとも1つのクラスタ及び単数又は複数の硫酸化チロシン残基を各々有する2つ以上のエピトープと交差反応する。本発明のこれらの抗体又はそのフラグメントは、例えばPSGL−1に対する結合の後AML細胞に内在化され得る。このような内在化は、エンドサイドーシス及びプロセス、時間及び温度依存性である活発なプロセスを介して発生し得る。
【0106】
抗原結合部位の形成に参与するのは、本発明に従ったSIS、A3R、S1、S11、D1及びD3と実質的に同じ親和力で結合する抗体及びコンセンサス抗体の超可変領域である。抗原結合部位は、抗体が結合するエピトープの構造と相補的であり、従って、これらの結合部位は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。これらは、各々VH及びVLドメインのβストランドを結びつけるループ上にある抗体の各々の軽鎖及び重鎖上の3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)である。これらの領域のうち最も可変的であるのは、重鎖のCDR3領域である。CDR3領域は、Ig分子の最も露呈された領域であると理解されており、本書に提供されている通り、観察される選択的及び/又は特異的結合特性を決定する上で中心的役割をもつ。
【0107】
ファージディスプレーライブラリ内に存在する49の生殖細胞系のうちの1つであるDP32は、本発明のコンセンサス抗体が単離されたファージライブラリの特異的生殖細胞系である。従って、DP32は、少なくとも重及び軽鎖枠組可変領域、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域及び/又は重鎖CDR1及びCDR2を伴う本発明の抗体を提供する。DP32は同様に、超可変領域が適合された3次元構造を提供する。1つの抗体の特異性がその3次元立体構造により決定されるということは周知である。かくして、DP32により課せられる制限条件は、本発明の抗体の特異性を決定する上で重要な役割を有し得る。さらに、DP32は、さまざまな帯電アミノ酸を有し、これは抗体の抗原認識において構造的役割をもち得る。
【0108】
本発明に従うと、CDRは同様に抗体を産生するべくカセット内に挿入され得る。ポリペプチドに適用され本書で言及されているカセットは、枠組として役立ち単一の単位としてみなされそのように操作される連続するアミノ酸の一定の与えられた配列を意味する。アミノ酸は、片端又は両端で、置換、挿入、除去又は付着可能である。同様にして、アミノ酸のストレッチの片端又は両端で置換、挿入、除去又は付着することもできる。
【0109】
カセットのアミノ酸は、表面的には固定され得る一方で、置換、挿入又は付着された配列はきわめて可変的であり得る。カセットは、最終的構成体にとって重要である1つの機能を各々包含する複数のドメインで構成され得る。
【0110】
本発明の特定の実施形態のカセットは、N末端から、枠組領域1(FR1)、CDR1、枠組領域2(FR2)、CDR2、枠組領域3(FR3)及び枠組領域4(FR4)を含む。
【0111】
該発明の1実施形態においては、カセット内部で全く異なる領域を置換することが可能である。例えば、カセットのCDR2及びCDR1超可変領域は、非保存的又は好ましくは保存的アミノ酸置換によって置換え又は修飾され得る。
【0112】
本発明においては、A3R及びS15と同じ親和力で結合する抗体及びコンセンサス抗体は、重鎖及び軽鎖を有し、各々の鎖はそれぞれCDR3、CDR2及びCDR1領域である第1、第2及び第3の超可変領域を有する。結合選択性及び特異性は、特に、鎖のCDR3領域、場合によっては軽鎖のCDR3領域、そして好ましくは重鎖のCDR3領域によって、そして二次的には軽鎖、好ましくは重鎖のCDR2及びCDR1領域によって決定される。結合選択性及び特異性は、同様に、第1、第2及び/又は第3の超可変領域をフランキングする上流又は下流領域によって二次的に影響され得る。
【0113】
好ましくは、コンセンサス抗体のコンセンサス配列は、コンセンサス抗体の超可変領域内部にある。特に、コンセンサス配列は、コンセンサス抗体のCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあり得る。例えば、コンセンサス配列は2つの超可変領域に重複していてもよいし、又は単数又は複数の超可変領域内に一部分あり又、コンセンサス抗体の可変領域のもう1つの部分内に一部分あってもよい。好ましくは、コンセンサス配列は、CDR3領域内にある。同様に好ましくは、コンセンサス配列は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3領域を除外する。
【0114】
特に、1実施形態においては、コンセンサス抗体は好ましくは、配列番号9、配列番号17及び配列番号18の単数又は複数のアミノ酸配列を内含する。代替的な1実施形態においては、コンセンサス配列は、好ましくは、配列番号10、配列番号17及び配列番号18の単数又は複数のアミノ酸配列を内含する。アミノ酸配列は好ましくは、コンセンサス抗体の超可変領域内にある。特に、アミノ酸配列は、コンセンサス抗体のCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあり得る。好ましくは、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列は、CDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列はCDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列はコンセンサス抗体のCDR1領域内にある。
【0115】
本発明は同様に、S15、A3R、S1、S11、D1及び/又はD3と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合する抗体をも提供する。1つの実施形態においては、抗体は、S15と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号9、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0116】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、A3Rと実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号10、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号10のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0117】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、S1と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号28、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号28のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0118】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、S11と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号31、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号31のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0119】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、D1と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号14、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号14のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0120】
もう1つの実施形態においては、本発明の抗体は、D3と実質的に同じ親和力で硫酸化PSGL−1及び/又は硫酸化GPIbに結合し、この実施形態においては、抗体は好ましくは、配列番号13、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のうちの単数又は複数のものを含む。好ましくは、これらのアミノ酸配列は抗体の超可変領域内にある。特にアミノ酸配列は抗体のCDR3領域、CDR1領域又はCDR1領域内にあり得る。アミノ酸配列の全て又は一部分のみがCDR3領域、CDR2領域又はCDR1領域内にあってもよい。好ましくは、配列番号13のアミノ酸配列は、抗体のCDR3領域内にあり、配列番号17のアミノ酸配列は、CDR2領域内にあり、配列番号18のアミノ酸配列は抗体のCDR1領域内にある。
【0121】
本書で記述され詳述されている25個以下のアミノ酸残基のアミノ酸配列の全てについて(例えばCDR、CDRフランキング領域)、これらのアミノ酸配列がその範囲内に1つ又は2つのアミノ酸置換を内含していること及び好ましくは置換が保存的アミノ酸置換であることを、該発明のさらなる実施形態として理解し考慮すべきである。本書で記述され詳述されている25個以下のアミノ酸残基のアミノ酸配列の全てについて、これらのアミノ酸配列がその範囲内に、もとの配列と90%以上の配列類似性をもつアミノ酸配列を内含していることを、該発明の1つの実施形態として理解し考慮すべきである。(Altchul et al., Nucleic Acids Res. 25;3389−402(1997))。類似の又は相同なアミノ酸は、類似の特性、例えば酸性、塩基性、芳香族、サイズ、正又は負の帯電、極性、非極性を示す、非同一アミノ酸として定義づけされる。
【0122】
アミノ酸類似性又は相同性又は配列同一性百分率は、2つの異なるペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって決定される。抗体配列は、DNA配列決定によって決定された。2つの配列は、通常、その目的で設計されたさまざまなコンピュータプログラムの1つを使用することによって整列させられ、各位置のアミノ酸配列Qが比較される。その後、アミノ酸同一性又は相同性が決定される。その後、アミノ酸類似体百分率を決定するためにアルゴリズムが適用される。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質分子間の微妙な関係の検出に対する感度が大幅に増加していることから、アミノ酸配列Qを比較することが一般に好ましい。タンパク質の比較には保存的アミノ酸置換の存在を考慮することができ、かくして、非同一アミノ酸が類似の物理的及び/又は化学的特性を有する場合でもなおミスマッチが正の評点を生み出すことができる(Altschul et al.,(1997))、前出)。
【0123】
該発明の1実施形態においては、軽鎖及び重鎖の各々の3つの超可変領域は、2つの鎖の間及び複数の鎖の内部及び/又は間での3つの超可変部位の中で互換され得る。
【0124】
本発明に従うと、コンセンサス抗体及びS15、A3R及び/又はD1/D3と実質的に同じ親和力で結合する抗体には、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgM抗体が含まれる。IgGクラスは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む複数のサブクラスを包含する。
【0125】
抗体は、フラグメント、複合体及び多量体といった数多くの形態で提供されうる。本発明に従うと、抗体フラグメントは、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab2及びFd分子を内含する。「フラグメント」という用語には、それらがもとの抗体又はそれより大きいフラグメントの結合特性を保持しているかぎり、Fvsのフラグメント及びFabsのフラグメントといったより小さな抗体フラグメントも同じく内含される。かかるフラグメントの例としては、(1)Fvの重鎖のみのフラグメントを含むミニボディ、(2)抗体重鎖可変領域の小さい分画単位を含むミクロボディ(国際出願第PCT/IL99/00581号)、(3)軽鎖のフラグメントを有する類似のボディ及び(4)軽鎖可変領域の機能的単位を有する類似のボディがあると思われる。構成体には、例えばダイアボディ、トリアボディ及びテトロボディといったような多量体が含まれる。「抗体」という用語は、相反する特定のないかぎり又は当該技術分野における情況及び/又は知識に基づいて相反する指示のないかぎり、これらの分子の全て、ならびにその誘導体、組合せ、修飾、相同体、ミメティック及び変異体を包含するように意図されている。
【0126】
scFvが組織に浸透し、それらのサイズが比較的小さいためにフルサイズの抗体に比べ急速に血液から一掃されるということが立証されてきた(Adams et al., Br. J.Cancer77:1405−12(1988);Hudson, Curr. Opin. Immunol 11(5):548−557(1999);Wu et al., Tumor Targeting 4:47(1999))。かくして、scFvは、体内からの放射性標識のさらに急速な一掃を可能にするべく腫瘍画像形成といったような放射線標識が関与する診断、予後診断又は病期診断において利用されることが多い。一定数の癌ターゲティングscFv多量体が近年、インビボ安定性及び効能についての臨床前評価を受けてきた(Adams et al.(1988)、前出;Wu(1999)、前出)。
【0127】
標準的には、VLのN末端残基に対しポリペプチドリンカーによって、VHドメインのC末端端部が係留状態で、scFv単量体が設計される。任意には、逆の配向が利用される。すなわち、VLドメインのC末端端部が、ポリペプチドリンガーを通してVHのN末端残基につながれる(Power et al., J. Immun. Meth.242:193−204(2000))。ポリペプチドリンカーは標準的に、長さが15アミノ酸前後である。リンカーが約3〜7個のアミノ酸まで削減される場合、scFvsを機能的Fvドメインに折畳むことができず、代りに第2のscFvと会合してダイアボディを形成する。リンカーの長さをさらに3個未満のアミノ酸まで削減することで、リンカー長、組成及びFvドメインの配向に応じて、三量体又は四量体へのscFvの会合が強制される(Powers(2000)、前出)。
【0128】
近年、scFv二量体、三量体及び四量体といったような多価の抗体フラグメントが往々にして標的に対して親抗体の結合よりも高い親和力を提供するということが発見されてきた。このより高い親和力は、腫瘍ターゲティングの利用分野のために薬物動態の改善を含めた潜在的な利点を提供する。付加的には、白血球の係留及びローリングに関与するP−セレクチン及びそのリガンドPSGL−1を研究するうちに、科学者らは、PSGL−1の二量体形態を発現する細胞が、このより高い結合親和力のためより安定したローリング接着を確立するという結論を下した。これらの接着は、よりせん断に強く、少ないローリング速度変動を示した(Ramachandran et al.,PNAS、98(18):10166−71(2001))。
【0129】
これらの多価の形態のより大きな結合親和力は、診断及び治療規制において有益であり得る。例えば、scFvを遮断剤として利用して、標的受容体を結合させかくして「天然の」リガンドの結合を遮断することができる。かかるケースでは、標的に対する天然リガンドの望ましくない結合を可能にしうる解離の確率を低減させるべくscFvと受容体の間により高い親和力を有することが望ましい。さらに、このより高い親和力は、標的受容体が接着及びローリングに関与する場合、又は標的受容体が血小板といったような高いせん断流の部域内に存在する細胞上にある場合に有用でありうる。
【0130】
所望の結合能力をもつ抗体がひとたび選択されかつ/又は開発された時点で、もとの抗体の特性を保持する構成体及びフラグメントを産生することは、本書に提供されている指針を用いる当業者の能力範囲内に充分入るものである。例えば、当初選択された又は開発された抗体の所望の特性を保持する完全抗体分子、Fv、フラグメント、Fab、フラグメント、Fab2フラグメント、二量体、三量体及びその他の構成体を作ることができる。
【0131】
アミノ酸を置換するもののなお抗体の特性を保持することが望まれる場合、保存的アミノ酸置換を行なうことは、充分に当該技術分野の技術範囲内に入る。さまざまな作用物質に対する接合といったような修飾も同様に、抗体に対し、その結合特性を改変させることなく行なうことができる。より安定した抗体を産生するために行なわれるものといったようなその他の修飾も、抗体に対し、その特異性を改変させることなく行なうことができる。例えば、ペプトイド修飾、半ペプトイド修飾、環状ペプチド修飾、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、主鎖修飾及び残基修飾を実施することができる。修飾済み4抗体又はフラグメントをその結合特性が変化したか否かを査定するためにテストすることも又、本明細書の指針に従って当業者の能力範囲内に入る。
【0132】
同様にして、より望ましい特性をもつ分子を得るべく抗体の結合特性を改変することは、本書に提供されている指針を用いて、当業者の能力範囲内に入る。例えば、所望の特性をもつ抗体がひとたび同定された時点で、抗体の変異体を生成するためにランダム又は有向突然変異誘発を使用することができ、これらの変異体を所望の特性についてスクリーニングすることができる。
【0133】
当該技術分野において既知の従来の方法を用いて、当業者であれば同様に、コンセンサス抗体の結合能力をもちかつ/又は硫酸化PSGL−1又は硫酸化GPIbに対し特異的に結合しS15及びA3Rのものと実質的に類似した親和力で結合する付加的な抗体を決定することもできるであろう。例えば、コンセンサス抗体抗体が結合させる分子又は細胞を用いて特定のファージディスプレーライブラリ特に白血病、リンパ腫及び骨髄腫患者から調製されたライブラリをスクリーニングする本書で記述されているバイオパニング方法を用いて、D1及びD3といったような付加的な抗体を単離することができる。
【0134】
本発明に従った抗体は同様に、それに挿入するか又は付着してその調製及び同定ならびに診断を助けることのできるタグをも有することができる。このタグはその後分子から除去できる。有用なタグの例としては、AU1、AU5、BTag、c−myc、FLAG、Glu−Glu、HA、His6、HSV、HTTPHH、IRS、KT3、プロテインC、S−TAG(登録商標)、T7、V5及びVSV−Gがある(Jarvik and Telmer, Ann. Rev. Gen.,32、601−18(1998))。タグは好ましくは、c−myc又はKAKである。
【0135】
本発明は、scFv抗体を提供する。本書で使用されているscFvというのは、同一であっても又は異なるものであってもよいヒト抗体の重鎖の可変領域とヒト抗体の軽鎖の可変領域から成り、かつ該重鎖の該可変領域が軽鎖の可変領域に接続、連結、融合又は共有結合付着されているか又はそれと会合されている分子として定義づけされる。
【0136】
scFv構成体は、抗体の超可変ドメインのうちの単数又は複数のものを取込むscFv分子の多量体(例えば二量体、三量体、四量体など)であり得る。全てのscFv誘導された構成体及びフラグメントは、その他の細胞の利益となるように標的細胞に対し選択的及び/又は特定的に結合する。結合選択性及び/又は特異性は、超可変領域により主として決定される。本発明の抗体は、結合親和力及び特異性及び血中半減期の増大を改善できる多価のFv形態に折畳むように構築することができる。
【0137】
scFvの多価形態は、他の研究者により設計され産生されてきた。1つのアプローチは、リンカーで2つのscFvsを連結することにあった。もう1つのアプローチには、連結のため2つのscFvsの間のジスルフィド結合を用いることが関与している。二量体又は三量体Fvの産生に対する最も単純なアプローチは、Holliger et al., PNAS90:6444−48(1993)及びKortt et al., Protein Eng. 10:423−33(1997)によって報告された。このような1つの方法は、FOS及びJUNタンパク質領域の配列を合計してそれらの間にscFvのC末端でロイシンジッパーを形成することによって、scFvsの二量体を作るように設計された(Kosteliny et al., J. Immunol. 148(5):1547−53(1992);De Kruif et al., J Biol Chem.271(13):7630−34(1996))。もう1つの方法は、scFvのC末端においてストレプトアビジンコーディング配列を付加することによって四量体を作るように設計されたストレプトアビジンは、4つのサブユニットから成り、従って、scFv−ストレプトアビジンが折畳まれた時点で、4つのサブユニットは、四量体を形成するように順応する(Kipriyanov et al., Hum Antibodies Hybridomas 6(3):93−101(1995))。さらにもう1つの方法においては、二量体、三量体及び四量体を作るため、問題のタンパク質内に遊離システインが導入される。遊離システインに問題のタンパク質を架橋するためには、マレイミド基を可変数(2〜4)伴うペプチドベースの架橋剤が使用された。(Cochran et al., Immunity 12(3):241−50(2000))。
【0138】
この系においては、(本書中以上で記述されているような)ファージライブラリを、1つの抗体のFv領域の一価形態へと折畳むことのみできるscFvsを表示するように設計可能である。さらに、同じく本書で上述した構成体は、細菌発現に適している。遺伝子工学処理されたscFvsは、隣接してコードされた15アミノ酸のフレキシブルなペプチドスペーサによってつなぎ合わされた重鎖及び軽鎖可変領域を含む。好ましいスペーサは(Gly4Ser)3(配列番号8)である。そのアミノ酸、成分と合わせてこのスペーサの長さは、かさばらないスペーサを提供し、このためVH及びVL領域は、その標的に対する有効な結合を提供する機能的Fvドメイン内へと折畳むことができる。
【0139】
スペーサの長さを変動させることが、二量体、三量体及びトリアマー(当該技術分野においては往々にしてそれぞれダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディと呼ばれる)を形成するさらにもう1つの好ましい方法である。二量体は、scFvの2つの可変鎖をつなぎ合わせるスペーサを一般的に5〜12個のアミノ酸残基まで短縮する条件の下で形成される。この短縮されたスペーサは、同じ分子からの2つの可変鎖が機能的Fvドメインへと折畳むのを防ぐ。その代りに、該ドメインは、もう1つの分子の相補的ドメインと強制的に対合させられて2つの結合ドメインを作り上げる。好ましい方法においては、ダイアボディ構築のために5つのアミノ酸のみのスペーサ(Gly4Ser)(配列番号19)が使用された。この二量体は、2つの同一scFvsから又は2つの異なるscFvs集団から形成され得、親scFv(s)の選択的及び/又は特異的な増強された結合活性を保持し、かつ/又は増大した結合強度又は親和力を示す。
【0140】
類似の要領で、トリアボディが、scFvの2つの可変鎖をつなぎ合わせるスペーサを一般に5個未満のアミノ酸残基まで短縮するような条件下で形成され、同じ分子からの2つの可変鎖が1つの機能的Fvドメインへと折畳むのを妨いでいる。その代り、3つの別々のscFv分子が会合して三量体を形成する。好ましい方法においては、トリアボディは、このフレキシブルなスペーサを完全に除去することによって得られた。トリアボディは、3つの同一のscFvsから又はscFvsの2つ又は3つの異なる集団から形成され得、親scFv(s)の選択的及び/又は特異的な増強された結合活性を保持し、かつ/又は増大した結合強度又は親和力を示す。
【0141】
テトラボディが、scFvの2つの可変鎖をつなぎ合わせるスペーサを一般に5個未満のアミノ酸残基まで短縮するような条件下で形成され、同じ分子からの2つの可変鎖が1つの機能的Fvドメインへと折畳むのを防いでいる。その代り、4つの別々のscFv分子が会合して四量体を形成する。テトラボディは、4つの同一のscFvsから又はscFvsの2つ又は3つの異なる集団から形成され得、親scFv(s)の選択的及び/又は特異的な増強された結合活性を保持し、かつ/又は増大した結合強度又は親和力を示すはずである。トリアボディ又はテトラボディが、スペーサの長さが一般的に5アミノ酸残基により短かい条件下で形成するか否かは、混合物中の特定のscFv(s)のアミノ酸配列及び反応条件によって左右される。
【0142】
本発明は同様に、X1及びX6が疎水性アミノ酸であり、X2、X3及びX5が任意のアミノ酸である、X1−X2−X3−Pro−X5−X6(配列番号3)というコンセンサス配列を含むポリペプチドをも提供する。該ポリペプチドの1つの実施形態においては、X2はアルギニン、リジンから成る群から選択され、X1及びX6は、ロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン及びイソロイシンから成る群から選択される。ポリペプチドは好ましくは配列番号5を含み得る。代替的には、ポリペプチドは配列番号6を含み得る。本発明に従ったポリペプチドのもう1つの実施形態においては、X2及びX3はアルギニンであり、疎水性アミノ酸X6は好ましくはイソロイシンである。本発明に従ったポリペプチドのもう1つの実施形態においては、X1はロイシン及びメチオニンから成る群から選択され、X2及びX3はアルギニンであり、X5はセリン及びバリンから成る群から選択され、X6はイソロイシンである。本発明のポリペプチドは実質的に円形又はループ状であり得る。
【0143】
本発明は同様に、ポリペプチドがS15と実質的に類似した親和力で結合するPSGL−1に対し特異的に結合するポリペプチドをも提供する。代替的には、又は付加的には、該ポリペプチドは、実質的にA3Rに類似した親和力でGPIbに特異的に結合することができる。
【0144】
本発明はさらに、本発明の抗体及びポリペプチドをコードする組換え型核酸といったような単離又は精製されたポリペプチドを提供する。かかる単離又は精製されたポリペプチドは、原核又は真核生物発現系内で産生され得る。かかる発現系には、発現ベクター及びかかる発現ベクターでのトランスフェクションを受けた宿主細胞が含まれる。抗体の発現を可能にする条件下での組換え型宿主細胞の培養及び組換え型宿主細胞から又は培地からのかかる抗体の単離又は精製を含む、原核生物及び真核生物系内での抗体及びポリペプチドの産生方法は、当該技術分野において周知である。
【0145】
本発明において定義され論述されているような真核生物細胞系というのは、宿主細胞が真核生物である、遺伝子工学方法によりペプチド又はポリペプチドを産生するための発現系のことを意味する。真核細胞発現系は哺乳動物であってもよく、精製後に哺乳動物発現系内で産生されるペプチド又はポリペプチドは好ましくは実質的に哺乳動物汚染物質を含まない。有用な真核発現系のその他の例としては、酵母発現系が含まれる。
【0146】
該発明のペプチド又はポリペプチドの産生用の好ましい原核生物系は、発現ベクター用の宿主としてE.coliを使用する。精製後のE.coli系内で産生されるペプチド又はポリペプチドは、実質的にE.coli汚染タンパク質を含まない。原核生物発現系の使用は、本発明において提供される配列の一部分又は全てのN末端に対するメチオニン残基の添加を結果としてもたらす可能性がある。ペプチド又はポリペプチドの完全な発現を可能にするためのペプチド又はポリペプチド産生後のN末端メチオニン残基の除去は、当該技術分野において既知の通りに実施され得、その一例は適切な条件下でのアエロモナス・アミノペプチダーゼの使用によるものである(米国特許第5,763,215号)。
【0147】
本発明は同様に、硫酸化エピトープを結合させる、例えば抗体又はそのフラグメント又は代替的には小さい無機化合物といったような実体を選択するためのプロセスをも提供する。これらの方法には、硫酸化エピトープを有するペプチドに対してライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメントを固定するためのファージディスプレーライブラリ及び小さい無機化合物を同定するための組合せライブラリ)をパニングすることが関与している。適切なパニング用硫酸化エピトープは、例えばPSGL−1、GPIb、α−2−抗プラスミン;アミノペプチダーゼB;CCケモカイン受容体例えばCCR2、CCR5、CCR3、CXCR3、CXCR4、CCR8及びCCR2b;7−膜内外−セグメント(7TMS)受容体;凝固因子例えば第V、VIII及びIX因子;フィブリノーゲンガンマ鎖;ヘパリン補因子II;セクレトグラニンI及びIIといったセクレトグラニン;ビトロネクチン、アミロイド前駆体、α−2−抗プラスミン;コレシストキニン;α−コリオゴナドトロピン;補体C4;デルマタンスルファートプロテオグリカン;フィブロネクチン又はカストリンに基づくか又はこれらから誘導され得る。かかるペプチドは、任意の位置で硫酸化され得る。好ましくは、ペプチドは、PSGL−1(N末端から位置51のチロシン残基において硫酸化される場合)、GPIb(特に任意276のチロシン残基において、又さらに低いレベルで位置279のチロシン残基において硫酸化される場合)、又はCCR5(特に位置10のチロシン残基で硫酸化される場合)の領域から誘導された又はこの領域に基づく硫酸化エピトープを含む。1実施形態においては、該方法は、固体支持体上にペプチドを固定化する段階を含む。任意には、該方法は、非硫酸化可溶性ペプチド又は交互のチロシン位置で硫酸化された可溶性ペプチドを用いた競合的パニングを含む。小さい無機化合物を同定するための適切な組合せライブラリのパニングは、当然のことながら、これらの方法を実施するのに使用することもできる。
【0148】
本発明の好ましい実施形態においては、硫酸化エピトープを結合させる実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)配列番号7のPSGL−1のペプチドを提供する段階;(c)配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)について選択するべくライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0149】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)PSGL−1(配列番号7)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性未硫酸化PSGL−1ペプチド(配列番号26)の存在下で配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)について選択するべくライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0150】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)PSGL−1(配列番号7)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)の存在下で配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0151】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)PSGL−1(配列番号7)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)又は未硫酸化ペプチド(配列番号26)の存在下で配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0152】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)PSGL−1(配列番号7)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)及び可溶性未硫酸化GPIbペプチド(配列番号43)の存在下で配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0153】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)PSGL−1(配列番号7)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44、50、57及び58又はそれらの組合せから選択)及び/又は未硫酸化PSGL−1ペプチド(配列番号43)の存在下で配列番号7の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号7のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0154】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0155】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性未硫酸化GPIbペプチド(配列番号43)の存在下で配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する選択された実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0156】
本発明の好ましい実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号7、48、49又は59の可溶性硫酸化PSGL−1ペプチドのうちの単数又は複数のものの存在下で配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0157】
本発明のもう1つ実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号7、48、49又は59の可溶性硫酸化PSGL−1ペプチドのうちの単数又は複数のもの及び可溶性未硫酸化PSGL−1ペプチド(配列番号26)の存在下で配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0158】
本発明のもう1つ実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号7、48、49又は59の可溶性硫酸化PSGL−1ペプチドのうちの単数又は複数のもの及び可溶性未硫酸化GPIbペプチド(配列番号43)の存在下で配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0159】
本発明のもう1つ実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)GPIbペプチド(配列番号44)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号7、48、49又は59の可溶性硫酸化PSGL−1ペプチドのうちの単数又は複数のもの及び可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)のうちの単数又は複数のものの存在下で配列番号44の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号44のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0160】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)CCR5(配列番号53)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)配列番号53の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号53のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0161】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)CCR5(配列番号53)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性未硫酸化GPIbペプチド(配列番号43)及び/又は未硫酸化可溶性PSGL−1ペプチド(配列番号26)の存在下で配列番号53の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;(d)配列番号53のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0162】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)CCR5(配列番号53)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)及び/又は可溶性硫酸化PSGL−1ペプチド(配列番号7、48、49及び/又は59)の存在下で配列番号53の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号53のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0163】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)CCR5(配列番号53)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)及び/又は未硫酸化可溶性PSGL−1ペプチド(配列番号26)の存在下で配列番号53の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;及び(d)配列番号53のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0164】
本発明のもう1つの実施形態においては、実体(例えば本発明の抗体又はポリペプチド)を産生するためのプロセスは、(a)ライブラリ(例えば抗体又はそのフラグメント)を提供する段階;(b)CCR5(配列番号53)の固定化されたペプチドを提供する段階;(c)可溶性硫酸化GPIbペプチド(配列番号44及び/又は50)及び/又は未硫酸化可溶性GPIbペプチド(配列番号43)の存在下で配列番号53の固定化されたペプチドに結合する実体(例えばファージ粒子)についてライブラリをパニングする段階;(d)配列番号53のペプチドに結合する実体(例えばscFv抗体を含む抗体又はポリペプチド)を産生する段階を含んで成る。
【0165】
GPIb及びPSGL−1といったようなタンパク質上に存在する硫酸化チロシンエピトープの治療的ターゲティングのための代替的アプローチにおいては、適切な組換えライブラリのスクリーニングにより、小さい無機化合物を同定することができる。かかる化合物は、scFv又はIgGベースの治療薬に比べて一定数の利点を有する可能性がある。例えば、無機化合物は、経口投与可能で、免疫交差反応性の低下を含めて、増強されたバイオセーフティプロフィールを有し得る。それは、特に当初選択された鉛化合物を最適化するよう合理的な薬物設計に従って、標的に向かっての高い選択性を提供することができる。その他の利点としては、より低い生産コスト、より長い貯蔵寿命及びさほど複雑でない規制認可プロセスがある。
【0166】
該発明のエピトープの一定数の実施形態が例えばGPIb及びPSGL−1上で同定されてきたことから、非常に狭い特異性を有するか又は代替的にはかかるエピトープを各々担持する複数の全く異なる標的が関与する再灌流傷害といった疾病状態について複数のチロシンエピトープをターゲティングする無機化合物を同定するために、リガンド駆動型アプローチをとることが可能である。リガンド駆動型アプローチは、治療的介入のための標的を同定するためのスクリーニングプロセスを著しく短縮し、一連の焦点合せされたライブラリで実施可能な鉛最適化での同時標的バリデーションを可能にする。
【0167】
硫酸化チロシンエピトープをターゲティングすることを専門とする無機化合物が、最初に、Y1といった抗体とGPIbの残基硫酸化Tyr276及びAsp−277といったようなその既知の標的の間の3次元相互作用を分析することにより、設計され開発され得る。コンピュータ援用組合せライブラリ設計によって、Y1結合部位を擬態して標的に対する増大した親和力を提供する実体から成る化学物質ライブラリを開発することができる。
【0168】
本発明は同様に、硫酸化エピトープに結合するヒト抗体を同定するためのライブラリを提供する。該ライブラリは、相補的結合のためのさまざまな抗原結合ドメインを含む免疫グロブリン結合ドメインのものであり、ここで該ライブラリは、重鎖CDR3においてのみ多様性を有する。好ましくは、該免疫グロブリン結合ドメインはscFv分子である。同じく好ましくは、免疫グロブリン結合ドメインは、DP32から誘導された重鎖相補性決定領域(CDR)1及び2を有し、より好ましくは、同様にDP32から誘導された軽鎖可変領域をも有する。該ライブラリの免疫グロブリン結合ドメインは、例えば糸状バクテリオファージといったような任意の適切なベクターの表面上で表示され得る。1つの実施形態においては、本発明のライブラリは、硫酸化されたモチーフ又はエピトープについて選択するために使用可能である。
【0169】
本発明の抗体及びその結合フラグメントは、任意には薬学的に有効な担体と共に、薬物、毒素、調合薬及び放射性同位体といったようなさまざまな作用物質と会合、組合せ、融合又は連絡して、抗疾病及び/又は抗癌活性をもつ薬物−ペプチド組成物、融合又は接合体を形成することができる。かかる接合体及び融合体は同様に、診断、予後診断又は病気診断の目的で使用することができる。
【0170】
該発明において有用な担体の例としては、HPMA(親水性重合体)又はその他のあらゆる重合体、例えば親水性重合体ならびにその誘導体、組合せ及び修飾がある。代替的には、大量のドキソルビシンを含有する市販のリポソームであるDoxilといったようなscFvY1分子で修飾されたリポソームといったような装飾されたリポソームを使用することができる。かかるリポソームは、単数又は複数の所望の作用物質を含有するように調製でき、又、高い薬物−抗体比を提供するべく本発明の抗体と混合させることができる。
【0171】
代替的には、抗体又はポリペプチドと作用物質の間の連結は直接連結であってもよい。2つ以上の隣接する分子間の直接連結は、分子内の元素又は元素群の間の化学的結合を介して産生され得る。化学的結合は、例えばイオン結合、共有結合、疎水結合、親水結合、静電結合、又は水素結合であり得る。結合は例えばアミド、炭素−スルフィド、ペプチド及び/又はジスルフィド結合であり得る。抗体を作用物質又はリンカーに付着させるためには、共有結合を形成するべく当該技術分野において既知の通り、アミン、カルボキシ、ヒドロキシ、チオール及びエステル官能基を使用することができる。
【0172】
ペプチドと作用物質の間又はペプチドと担体の間、又は担体と作用物質の間の連結は、リンカー化合物を介したものであり得る。本書で使用されているリンカー化合物は、2つ以上の部分をつなぎ合わせる化合物として定義づけされる。リンカーは、直鎖又は有枝鎖であり得る。有枝リンカー化合物は、2重分枝、3重分枝又は4重分枝化合物で構成されていてよい。本発明において有用なリンカー化合物は、ジカルボン酸、マレイドヒドラジド、PDPH、カルボン酸ヒドラジド及び小型ペプチドを有する群から選択されたものを内含する。
【0173】
本発明に従って有用であるリンカー化合物のより特定的な例としては(a)ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸;(b)マレイミドヒドラジド、例えばN−[マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−l−カルボキシルヒドラジド、及びN−[マレイミドウンデカノイン酸]ヒドラジド;(c)(3−[2−ピリジルチオ]プロピオニルヒドラジド);及び(d)炭素原子数2〜5から選択されたカルボン酸ヒドラジド及びその誘導体、組合せ、修飾及び類似体が含まれる。
【0174】
小型ペプチドリンカーを用いた直接的カップリングを介した連結も同じく有用である。例えば抗癌薬ドキソルビシンの遊離糖とscFvの間の直接的カップリングを小型ペプチドを用いて達成することができる。小型ペプチドの例としては、AU1、AU5、BTag、c−myc、FLAG、Glu−Glu、HA、His6、HSV、HTTPHH、IRS、KT3、プロテインC、S−TAG(登録商標)、T7、V5、VSV−G、及びKAKが含まれる。
【0175】
本発明の抗体及びポリペプチドは、放射性同位体といったような画像形成剤(標示マーカーとも呼ばれる)と結合、接合、複合体形成又はその他の形で会合され得、これらの接合体は診断、予後診断又は病気診断及び画像形成目的で使用可能である。かかる放射線同位体−抗体(又はフラグメント)接合体を有するキットが提供されている。
【0176】
診断、予後診断、病期診断及び画像形成のために有用な放射性同位体の例としては、111インジウム、113インジウム、99mレニウム、105レニウム、101レニウム、99mテクネチウム、121mテルル、122mテルル、125mテルル、165ツリウム、167ツリウム、168ツリウム、123ヨウ素、126ヨウ素、131ヨウ素、133ヨウ素、8lmクリプトン、33キセノン、90イットリウム、2l3ビスマス、77ヨウ素、18フッ素、95ルテニウム、97ルテニウム、103ルテニウム、105ルテニウム、107水銀、203水銀、67ガリウム及び68ガリウムが含まれる。好ましい放射性同位体は、X線又はあらゆる適切な常磁性イオンに対し不透明である。
【0177】
標示マーカー分子は同様に螢光マーカー分子であり得る。螢光マーカー分子の例としては、フルオレセイン、フィコエリスリン又はローダミン又はそれらの修飾又は接合体がある。
【0178】
標示マーカーに接合された抗体及びポリペプチドは、疾病状態の診断、予後診断又は病気診断に使用可能である。その上、本発明は同様に患者由来の細胞を含有する試料を提供し、本発明の抗体と共に患者由来の細胞をインキュベートすることにより、患者由来の腫瘍細胞をパージする方法をも提供する。かかる活動は、インビボ、インビトロ又はエクスビボで実施できる。診断、予後診断又は病気診断がインビボ又はエクスビボで実施される場合、画像形成剤は好ましくは、それが患者に受容できないレベルの危害を加えないという点で、生理学的に受容可能である。受容可能な危害レベルは、疾病の重症度及びその他の選択肢の利用可能性といったような基準を用いて臨床医により決定され得る。
【0179】
かくして、本発明は、画像形成剤又は標示マーカー分子に連結された該発明のペプチドを有する画像形成剤を有する。治療の前、途中又は後で治療の効能をインビトロ分析するためのキットを提供する。該発明はさらに、(a)細胞を組成物と接触する段階;(b)細胞に結合した放射活性を測定する段階ひいては(c)腫瘍を視覚化する段階を有する、癌、より特定的には腫瘍の診断的位置特定及び画像形成のために画像形成剤を使用する方法を提供する。
【0180】
適切な画像形成剤の例としては、FITC、PEなどといった螢光染料、及び緑色螢光タンパク質といったような螢光タンパク質が含まれる。その他の例としては、変色といったような認識可能な変化を生成するべく基質と反応する放射性分子及び酵素が含まれる。
【0181】
1つの例においては、キットの画像形成剤は、FITCといったような螢光染料であり、キットは、癌、より特定的には血液関連癌例えば白血病、リンパ腫及び骨髄腫の治療的効能の分析を提供する。FACS分析は、例えば診断時点、治療中、寛解中及び再発中といった疾症の各病期における画像形成剤により染色された細胞の百分率及び染色の強さを決定するために用いられる。
【0182】
本発明は同様に、患者由来の細胞を含有する試料を提供し、本発明の抗体が患者の細胞に結合するか否かを判定し、かくしてその患者にその疾病のリスクがあること又はその疾病に罹患していることを標示することによる、1人の患者の体内の疾病の診断、予後診断又は病気診断方法をも提供する。かかる活動は、インビボ、インビトロ又はエクスビボで実施可能である。インビボ又はエクスビボで実施される場合、画像形成剤は好ましくは、それが患者に受容できないレベルの危害を加えないという点で、生理学的に受容可能である。受容可能な危害レベルは、疾病の重症度及びその他の選択肢の利用可能性といったような基準を用いて臨床医により決定され得る。
【0183】
癌に関しては、患者の体内の疾病の病期決定には一般に、腫瘍のサイズ、タイプ、場所及び侵襲性に基づいて疾病の分類を決定することが含まれる。腫瘍の特性別に癌を分類するための1つの分類システムは、本書に参考として内含され、癌の病期をT、N及びMのカテゴリ(Tはそのサイズ及び場所に従って原発性腫瘍を表わし、Nは局所リンパ節転移を、又Mは遠位転移を表わす)に分類する「悪性腫瘍のTNM分類」(第6版)(L.H.Sobin Ed)である。さらに、I、II、III及びIVという数字は、病期を表わすために用いられ、各々の数字はTNM因子の考えられる組合せを意味する。例えば、病期Iの乳癌は、腫瘍Nグループにより、T1、N0、M0と定義され、T1は腫瘍の直径が2cm以下であること、N0は局所リンパ節転移が全くないこと、M0は遠位転移が全くないことを表わす。日常的処理及び細胞化学染色の下で観察された形態を用いたフランス−アメリカ−イギリスシステムに基づいて分類される亜型を伴うもう1つのシステムが、AMLの病期診断を行うのに用いられる。
【0184】
さらに、近年提案された世界保健機構(WHO)の造血及びリンパ系組織の腫瘍性疾患の病期診断又は分類には、(AMLに特定的に)従来のFAB型の疾病カテゴリ、ならびに骨髄異形成と結びつけられたAML及び特定の細胞遺伝学的所見と相関関係をもつ付加的な疾病タイプが含まれる。例えば、その他の人々も同じく病理学的分類を提案してきた。例えば、AMLに特定的な1つの提案には、特異的細胞遺伝学的転座と相関関係をもち形態学的評価及び免疫表現型決定により高い信頼性で認識され得、かつ付随する骨髄異形成変化の重要性を取り込んだ疾病型が含まれる。このシステムは、細胞遺伝学的又は分子遺伝学的研究により裏づけされることになり、新しい認識可能な臨床病理学的実体が記述されるにつれて拡張可能と思われる(Arber, Am.J.Clin. Pathol. 115(4):552−60(2001))。
【0185】
本発明の抗体及びポリペプチドは、抗癌剤、抗新生物剤、抗ウイルス剤、抗転移剤、抗炎症剤、抗血栓症剤、抗再狭窄剤、抗凝集剤、抗自己免疫剤、抗接着剤、抗心臓血管症患剤、薬剤又はその他の抗疾病剤と結合、接合又はその他の形で会合され得る。作用物質(剤)というのは、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ、又はその他のあらゆる温血動物を含む(ただしこれに制限されるわけではない)哺乳動物の予防的治療又は診断において有用である作用物質を意味する。
【0186】
かかる作用物質の例としては、アシクロビル、ガンシクロビル及びジドブジンを含む抗ウイルス剤;シロスタゾル、ダルテパリンナトリウム、レビパリンナトリウム、及びアスピリンを含む抗血栓症/再狭窄剤;ザルトプロフェン、プラノプロフェン、ドロキシカム、アセチルサリチル酸17、ジクロフェナク、イブプロフェン、デキシブプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、アムトルメチン、セレコキシブ、インドメタシン、ロフェコキシブ及びニメスリドを含む抗炎症剤;レフルノミド、デニロイキン・ジフチドクス、スブレウム、WinRhoSDF、デフィブロチド及びシクロホスファミドを含む抗自己免疫剤;及びリマプロスト、クロルクロメン及びヒアルロン酸を含む抗接着/抗凝集剤及びその誘導体、組合せ及び修正が含まれるがこれに制限されるわけではない。
【0187】
薬剤の例としては、アントラサイクリン、例えばドキソルビジン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、イダルビシン、デトルビシン、カルミノマイシン、エピルビシン、エソルビシン、モルホリノドキソルビジン、モルホリノダウノルビシン、メトキシモルホリニルドキソルビジン、メトキシモルホリノダウノルビシン及びメトキシモルホリニルドキソルビジン及びその誘導体、組合せ及び修正が含まれる。さらなる薬剤例としては、シスプラチン、タキソール、カリチェアミシン、ビンクリスチン、シタラビン(Ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、フルダラビン、イダルビシン、クロラムブシル、インターフェロンアルファ、ヒドロキシ尿素、テモゾロミド、サリドマイド及びブレオマイシン及びその誘導体、組合せ及び修正が含まれる。
【0188】
癌細胞の成長阻害には例えば、(i)癌性又は転移性成長の予防、(ii)癌性又は転移性成長の減速、(iii)細胞を無傷かつ生きた状態に残しながらの癌細胞の成長プロセス又は転移プロセスの完全な防止、(iv)徴環境と癌細胞の接触の妨害又は(v)癌細胞の殺滅が含まれる。
【0189】
白血病細胞の成長には例えば、(i)白血病性又は転移性成長の予防、(ii)白血病性又は転移性成長の減速、(iii)細胞を無傷かつ生きた状態に残しながらの白血病細胞の成長プロセス又は転移プロセスの完全な防止、(iv)徴環境と癌細胞の接触の妨害又は(v)白血病細胞の殺滅が含まれる。
【0190】
1実施形態においては、本発明は、当該抗体を投与することによりADCCを誘発又は活性化させる方法を提供する。従って、本発明のS15及びA3Rと実質的に同じ親和力と結合する抗体及びコンセンサス抗体は、ADCCを活性化しかつ/又はナチュラルキラー(NK)細胞(例えばCD56+)、γδT細胞及び/又は単球を刺激する可能性があり、このことは細胞溶解を結果としてもたらし得る。一般に、Fc領域を含む抗体又はその抗体の一部分の投与の後、抗体は例えばNK細胞といったエフェクタ細胞上のFc受容体(FcR)に結合し、パーフォリン及びグランザイムBの放出及び/又はFasL発現の誘発をトリガーし、これが次にアポトーシスを導く。
【0191】
標的細胞表面上のFas受容体に対するエフェクタ細胞上で発現されたFasLの結合は、Fas受容体シグナル変換経路の活性化を介して標的細胞のアポトーシスを誘発する可能性がある。1実施形態においては、該発明のコンセンサス配列を含むIgG抗体がエフェクタ細胞上でのFasL発現を誘発する。関与するエフェクタ細胞のタイプ、サイトカイン(IL−2及びG−CSFなど)、インキュベーション時間、細胞の表面上に存在する受容体の数及び抗体親和力を含め、さまざまな因子がADCCに影響を及ぼしうる。
【0192】
本発明の抗体及びポリペプチドが有用な形で連結されうる抗疾病、抗癌及び抗白血病剤の例としては、毒素、放射性同位体及び調合薬がある。
【0193】
毒素の例としては、ゲロニン、シュードモナス外毒素(PE)、PE40、PE38、ジフテリア毒素、リシン又はその誘導体、組合せ及び修正が含まれる。
【0194】
放射性同位体の例としては、位置特定及び/又は治療に用いることのできるガンマ放射体、陽電子放射体及びX線放射体及び治療に使用できるベータ放射体及びアルファ放射体が含まれる。診断に有用であると以前に記述された放射性同位体は、治療のためにも有用である。
【0195】
抗癌又は抗白血病剤の制限的な意味のない例としては、アントラサイクリン、例えばドキソルビジン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、イダルビシン、デトルビシン、カルミノマイシン、エピルビシン、エソルビシン、モルホリノドキソルビジン、モルホリノダウノルビシン、メトキシモルホリニルドキソルビジン、メトキシモルホリノダウノルビシン及びメトキシモルホリニルドキソルビジン及びその誘導体、組合せ及び修正が含まれる。薬剤の例としてはcis−プラチン、タキソール、カリチェアミシン、ビンクリスチン、シタラビン(Ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、ダウノルビシン、イダルビシン、フルダラビン、クロラムブシル、インターフェロンアルファ、ヒドロキシ尿素、テモゾロミド、サリドマイド、及びブレオマイシン、及びその誘導体、組合せ及び修正が含まれる。
【0196】
1つの実施形態においては、本発明の薬学組成物は、本発明のコンセンサス配列のいずれかを含む抗体又はポリペプチド及び薬学的に受容可能な担体を有する。該抗体又はポリペプチドは、細胞ローリング、炎症、自己免疫疾患、転移、腫瘍細胞又は白血病細胞の成長及び/又は複製又は腫瘍患者における腫瘍細胞の、又は白血病患者における白血病細胞の数の増大を阻害するのに有効な量で存在し得る。代替的には、該抗体又はポリペプチドは、腫瘍細胞又は白血病細胞の死亡率を増大させるのに有効な量で存在し得る。同様に代替的には、該抗体又はポリペプチドは、抗疾病剤による損傷に対する罹患した細胞の、抗癌剤による損傷に対する腫瘍細胞の、又は抗白血病剤による損傷に対する白血病細胞の感受性を改変するのに有効な量で存在し得る。さらに代替的には、抗体又はポリペプチドは、腫瘍患者における腫瘍細胞の、又は白血病患者における白血病細胞の数を減少させるのに有効な数で存在しうる。さらに代替的には、抗体又はポリペプチドは、再狭窄を阻害するのに有効な量で存在でき、この場合、コンセンサス抗体は好ましくはA3Rを含む。抗体又はポリペプチドは同様に、HIVの進入を阻害する及び/又はHIV感染を治療するのに有効な量でも存在し得る。代替的には、抗体又はポリペプチドは、特定の細胞又は部位に向かって1つの治療薬を導くためのターゲティング剤として使用可能である。
【0197】
本発明の抗体及びポリペプチドは、それを必要とする患者に対し任意の適切な方法を介して投与することができる。方法例としては、静脈内、筋内、皮下、局所、気管内、髄腔内、腹腔内、リンパ球内、鼻腔内、舌下、経口、直腸、経膣、呼吸、口腔、皮内、経皮又は胸腔内投与が含まれる。
【0198】
静脈内投与のためには、製剤は好ましくは、患者に対し投与される量が、所望の組成物の約0.1mg〜約1000mgの有効量となるような形で調製されることになる。より好ましくは、投与量は、所望の組成物の約1mg〜約500mgの範囲内となる。該発明の組成物は、広い投薬量範囲にわたり有効であり、治療すべき疾病の詳細、患者の体内のペプチド又はポリペプチドベースの医薬組成物の半減期、抗体又はそのフラグメントと複合体化されるあらゆる作用物質及び医薬組成物の物理的及び化学的特性、医薬組成物の投与様式、治療又は診断されるべき患者の詳細、ならびに治療担当医が重要とみなすその他のパラメータといった因子により左右される。
【0199】
経口投与のための医薬組成物は、任意の適切な形態であり得る。例としては、錠剤、液体、エマルジョン、懸濁液、シロップ、丸薬、カプレット及びカプセルがある。医薬組成物を作る方法は、当該技術分野において周知である(例えばRemington,The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro(Ed.)Lippincott, Williams & Wilkins(pub)を参照のこと)。
【0200】
医薬組成物は、時限放出、持続放出、間欠放出又は連続放出を容易にするようにも処方され得る。医薬組成物は同様に、時限、持続、間欠又は連続放出デバイスといったようなデバイスに入れて投与されてもよい。
【0201】
局所投与のための医薬組成物は、クリーム、軟こう、ローション、パッチ、溶液、懸濁液、凍結乾燥物及びゲルといったような適切なあらゆる形態をしていてよい。
【0202】
本発明の抗体及びポリペプチドを有する組成物は、従来の薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、担体などを含むことができる。錠剤、丸薬、カプレット及びカプセルは、ラクトース、でんぷん及びステアリン酸マグネシウムといったような従来の賦形剤を内含し得る。座薬は、ろう及びグリセロールといったような賦形剤を内含し得る。注射溶液は、食塩水といったような無菌で発熱物質を含まない媒質を含み、緩衝剤、安定化剤又は保存剤を内含し得る。従来の腸溶コーティングも使用可能である。
【0203】
本発明の抗体及びポリペプチド及びその薬学組成物は、それを必要とする患者において、疾病を治療する(例えば治療には疾病の影響を改善すること、疾病を予防すること又は疾病の進行を阻害することが含まれ得る)方法において使用可能である。かかる方法には、細胞ローリング、炎症、自己免疫疾患、転移、腫瘍細胞又は白血病細胞の成長及び/又は複製又は腫瘍患者における腫瘍細胞の、又は白血病患者における白血病細胞の数の増大を阻害する段階が含まれる。さらに、かかる方法には、腫瘍細胞又は白血病細胞の死亡率を増大させること、抗疾病剤による損傷に対する罹患細胞の、抗癌剤による損傷に対する腫瘍細胞の、又は抗癌剤による損傷に対する白血病細胞の感受性を改変することが含まれる。かかる方法にはさらに腫瘍患者における腫瘍細胞の、又は白血病患者における白血病細胞の数を減少させる段階も含まれる。かかる方法は同様に、細胞内へのHIVの進入を阻害するか減少させ、かかる阻害の結果としてHIVの複製を遮断しかくしてHIV感染を治療する段階をも含む。かかる方法はさらに、再狭窄といった心臓血管疾患を予防する又は阻害する段階を内含している。
【0204】
本発明はさらに、例えばAML、T−ALL、B−白血病、B−CLL、Pre−B−ALL、多発性骨髄腫、転移、HIV感染、心臓血管疾患又は細胞ローリング、炎症、免疫反応、感染、自己免疫反応、転移といったような細胞機能又は作用が有意な役割を果たすその他の疾病といったようなさまざまな疾病状態の治療用の医薬品の製造において使用するための抗体及びポリペプチドを提供する。かかる医薬品は、本発明の抗体及びポリペプチドを含む。
【0205】
この出願全体を通して、さまざまな刊行物、特許及び特許出願に対する参照が指示されてきた。これらの刊行物、特許及び特許出願の教示及び開示は、本発明が関係する技術の現状をより完全に記述する目的で、本書に参考としてその全体が内含される。
【実施例】
【0206】
実施例
以下の例は、該発明を理解するのを助け該発明をさらに詳しく例示する目的で記されており、いかなる形であれ、その範囲を制限するものとみなされるべきではない。特定の試薬及び反応条件が記述されているものの、本発明の範囲により包含される修正を加えることも可能である。
【0207】
実施例1
当該例は、S15抗体フラグメントの結合能力を含めS15scFv抗体フラグメントの選択、産生及び初期特徴づけを実証している。簡単に言うと、硫酸化PSGl−1を結合させるscFv抗体を同定するために、6つのアミノ酸のランダムCDR3−VHを伴うVH−VLの特異的足場に基づくファージディスプレーライブラリが利用された。scFv抗体は、(未成熟PSGL−1分子のアミノ酸42−58に対応する、すなわちシグナル配列を含む)N末端からC末端まで又はC末端からN末端までの成熟PSGL−1分子のアミノ酸配列l−17を有する合成硫酸化ペプチドに対しパニングすることによって得られた。合成硫酸化ペプチド又はPSGL−1を発現する全細胞に対し結合する特異的ファージクローンを同定し特徴づけするために、フローサイトメトリ、特に螢光活性化細胞選別(FACS)及びELISAが使用された。
【0208】
ファージディスプレーライブラリは、pHENベクター内の組合せファージ抗体ライブラリ(CAT)から単離したクローンの足場から構築された。足場は、VH3(1−3、3−20)及びVL(11−7)を含有していた。該ライブラリは、6アミノ酸という長さのCDR3超可変ループのランダム化によって構築された。(pHEN−Y1内に見られるように2つのEag1部位ではなく)CDR3の5′領域に単一のEag1部位をもつ構成体を提供するため、VLの3′端におけるEag1制限部位は、pHEN−Y1からXma1−Not1フラグメントを切除し、Not1部位のライゲーション部分の突然変異を伴って(配列番号20のオリゴヌクレオチド及び配列番号21のオリゴヌクレオチドをアニールすることによる)新しいフラグメントを挿入することによって、突然変異を受けた。該突然変異は、2つのユニーク部位(Eag1及びXma1)を生成するため及び、同じサイズではあるものの、ランダム化CDR3を伴うPCR産物を導入するために必要とされた。ライゲーションの後、プラスミドは挿入領域で配列決定され、突然変異が確認された。新しいpHEN−Y1−mutはEag1及びXma1で制限され、大きいフラグメントはその後のライゲーションのためのベクターであった。
【0209】
可変CDR3の調製のための鋳型を、配列番号22のオリゴヌクレオチド及び配列番号23のオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって作製した。PCR産物(鋳型A)をSDS−ポリアクリルアミドゲルから単離し、さらなる増幅のために精製した。鋳型Aを、配列番号24及び配列番号23のONでの増幅のために使用、産物を精製し、鋳型Bと呼称した。鋳型Bを配列番号25及び配列番号23のONで増幅し、精製し、Eag1及びXma1制限酵素で制限させた。Eag1及びXma1を伴う制限されたベクターpHEN−Y1−mutを精製し、同じ酵素で制限された最後のPCR産物に対してライゲートさせた。
【0210】
TG1を形質転換するためにライゲーション産物を用いた。3回のライゲーションからの形質転換収量は、2.4×106の独立したコロニー形成単位(CFUs)を生成した。10(13cm)SOBAG(Bacto−寒天15g平板について;1リットルあたり20gのBacto−トリプトン、5gのBacto酵母、8.5mMのNaCl、10mMのMgCl2、0.1Mのグルコース、0.1mg/mlのアンピシリン)平板内での平板固定によりライブラリを増幅した。細菌を、平板からSOBAG培地中に再懸濁させ、20%のグリセロール中で−70℃に保った。増幅されたライブラリの力価は、1.5×109CFU/mlであった。バイオパニング実験を実施するべくファージの形でライブラリをレスキューする目的で、増幅されたライブラリのアリコート(〜108CFU)を、ヘルパーファージM13K07に感染させた。このライブラリは、206又は6.4×107の成員を収納する理論上のライブラリとは異なり、約2.5×106個の成員を収納していた。
【0211】
ファージディスプレーライブラリと共に配列番号7の固定化されたペプチドをインキュベートし、洗浄により未結合ファージを除去し、結合したファージを特異的に溶出することによって、バイオパニングを実施した。溶出したファージクローンを任意には、さらなる結合サイクル及び任意の増幅の前に増幅させ、ペプチドに対し最もよく結合するような抗体フラグメントを担持するファージクローンに有利に特異的配列のプールを富化させた。複数のパニングサイクル後、個々のファージクローンを特徴づけし、クローンの配列を決定した。
【0212】
本発明においては、配列番号7のビオチニル化された硫酸化ペプチドに結合されたストレプトアビジン磁気ビーズと共に溶解した状態でファージディスプレーライブラリをパニングすることにより、S15抗体クローンを同定した。このペプチドは化学的に合成されたもので、第3のチロシン残基の硫酸化を含め、PSGL−1内部のアミノ酸42〜58に見られるきわめて酸性の強い配列に基づいている。合成ペプチドのN末端は、アミノカプロン酸で拡張され、硫酸化エピトープの立体障害を回避するべくカプロンのアミノ基においてビオチニル化されている。配列番号7の合成硫酸化ペプチドを、余剰のペプチドのインキュベーションとそれに続くPBST(PBS+0.005%のTween−20)での洗浄及びPBST−M(5%の低脂肪乳が追加されたPBST)による遮断により、ストレプトアビジン磁気ビーズ(Dynal)上に固定化させた。パニングのために、ペプチド結合ビーズを2×1011個のファージと共にインキュベートさせた。非硫酸化ペプチドに結合するscFvクローンの単離を回避するべく、パニング溶液に対し、ビオチニル化も硫酸化もされていない同じ線形配列(配列番号45)のペプチドを添加した。
【0213】
PBST中での高ストリンジェンシー洗浄液を用いて、3回のパニングサイクル(各々37℃で20分)を実施した。洗浄後、グリシン0.2M(pH2.2)により結合したファージを溶出させ、トリス1M(pH9.1)により中和させた。溶出されたファージを、感染性TG1細菌により増幅させ、ヘルパーファージM13K07によりレスキューした。3回のパニングサイクルの時点で最高5000倍の富化が達成された。第3のパニングサイクルの後、個々のクローンをCDR3領域内でアミノ酸配列について分析した。これらの選択されたクローンのCDR3領域アミノ酸配列(配列番号9、27〜33、35.4)は、表1に列挙されている。
【表1】

【0214】
表1に示されている結果は、強いコンセンサス配列が得られたことを示している(全てのCDR3配列中で第1及び第6位置の疎水性残基、通常は第2位置の塩基性残基及び第4位置のプロリン)。
【0215】
PSGL−1の硫酸化部分に基づいて合成硫酸化ペプチドに対する結合をさらに分析するために、パニングされ選択されたクローンからのファージ(図1)及び非硫酸化scFv上清(図2)を用いたELISA分析を実施した。これらの実験は、両方共以前に同定されPSGL−1に結合することがわかっているscFv抗体V1及びL32の分析を内含していた。Y1は、米国特許出願第10/029,926号及び国際特許出願第PCT/US01/49,440号内で記述されており、L32は、米国出願第10/189,032号に記述されている)。ELISA分析は、「テスト」ウェル中で配列番号7の合成硫酸化ペプチド及び「バックグラウンド」ウェル)中で配列番号26の合成非硫酸化ペプチドを用いて、並行して実施された。メーカーが推奨する通り、NH−CovaLinkTM平板(NUNC)上でペプチドをコーティングした。テストウェル内の対応する系からの結合データから、バックグラウンドウェルから得た結合データを差し引いて、図1及び2に示された結果を生成した。合成硫酸化ペプチドに対する結合についての負の対照(NC)として、無作為に選択したファージクローンを用いた。
【0216】
図1は、テスト対象であるパニングされて選択されたファージクローンの全てが合成硫酸化ペプチドに特異的に結合したことを示している。図2は、3回のパニングサイクル後に選択されたクローン上で発現されたscFvの全てが合成硫酸化ペプチドに特異的に結合したことを示している。
【0217】
表2は、例1の研究において用いられた全てのクローン及びそのCDR3領域のアミノ酸配列の要約を提供している。
【表2】

【0218】
選択されたクローンからのscFvが、PSGL−1を発現するAMLM4細胞系統であるML−2上のPSGL−1に対する結合を評価するため、FACSにより分析された。図3に示されているように、選択されたクローン全てからのscFvならびにL32が異なる感度でML−2細胞上でPSGL−1に対し結合した。
【0219】
パニングされ選択されたクローンからの精製されていないscFv上清を用いたELISA分析が、血小板上で発現される糖タンパク質であるグリコカリシンに対する結合を分析する目的で実施された。図4に示された結果は、配列番号9のCDR3配列を有しS15と呼称されている1つのクローンがその他の選択されたクローン及び以前に同定されたscFvL32に比べて低いグリコカリシンに対する親和力を有していたことを表わしている。
【0220】
考え合わせると、図3及び4に示されている結果は、グリコカリシンに対する結合に基づきS15が、PSGL−1を発現するML−2細胞について高い親和力を、又血小板について低い親和力を表示することを示している。この結論は、図5にその結果が示されている(PSGL−1発現細胞である)顆粒球及び血小板に対するscFv結合のFACS分析により確認された。図5は、S15が顆粒球に対しては強く結合するものの無傷の血小板に対しては弱くしか結合しないことを明確に示している。
【0221】
図6は、scFvの顆粒球/血小板結合比の比較を示している。顕著にも、S15はS11、S9、S1、S20、3.4、3.1、Y1及びL32のものよりも著しく高い顆粒球/血小板結合比を有する。
【0222】
図7は、PSGL−1に対し導かれたマウス抗体であるKPL−1の存在下及び不在下でのML−2細胞上のPSGL−1に対するS15の分析の結果を示す。S15は、KPL−1の不在下で高い親和力でML−2細胞結合したが、かかる結合は基本的に、KPL−1の存在下で除去された。これらの結果は、ML−2、細胞上でPSGL−1細胞を結合させるS15の特異性を確認している。
【0223】
S15を、例2に記述されているさらなる実験のため、プロテインA親和力カラム上で精製した。
【0224】
実施例2
当該例は、類似の要領で精製されたL32及びY1scFvに比べた、特にその結合能力を含めた精製済みS15scFv抗体の特徴づけについて記述している。
【0225】
PBSの存在下でのML−2細胞に対する精製済みS15、Y1及びL32scFvの結合を分析するために、FACS分析を実施した。図8及び9に示された結果は、S15が、L32及びY1と比べてML−2細胞に対する少なくとも100倍大きい結合を示すということを表わしている。
【0226】
50%の血漿中でのML−2細胞に対する精製済みのS15、Y1及びL32 scFvの結合を分析するために、FACS分析を実施した。図10及び11に示されている結果は、S15による結合の絶対値がL32及びY1に比べ著しく(少なくとも10倍)高かったことを表わしている。
【0227】
ML−2細胞に対する精製済みS15scFv結合の用量依存性も同様に分析し、L32及びY1のものと比較した。図12に示されているように、S15の用量応答は、10ナノグラム(ng)においてさえ、L32及びY1のものより著しく大きい。
【0228】
実施例3
この例は、第1のチロシン位置での硫酸化を含むGPIbの残基268〜285に対応する合成ペプチドに対して例1内に記述されたライブラリをパニングすることによって得られたコンセンサス抗体を含む2つの付加的な抗体の同定について記述している。
【0229】
当該例は、D1及びD3の抗体フラグメントの結合能力を含め、D1及びD3scFv抗体フラグメントの選択、産生及び初期特徴づけを実証している。簡単に言うと、硫酸化GPIbを結合させるscFv抗体を同定するために、6個のアミノ酸のランダムCDR3−VHを伴うVH−VLの特異的足場に基づくファージディスプレーライブラリを利用した。scFv抗体は、(未成熟GPIb分子のアミノ酸284−301に対応する、すなわちシグナル配列を含む)N末端からC末端までの成熟GPIb分子のアミノ酸配列268−285(GDEGDTDLY(SO4)DYYPEEDTE(配列番号44)を有する合成硫酸化ペプチドに対しパニングすることによって得られた。合成硫酸化ペプチド又はGPIbを発現する血小板に対し結合する特異的ファージクローンを同定し特徴づけするために、フローサイトメトリ、特に螢光活性化細胞選別(FACS)及びELISAが使用された。
【0230】
使用したファージディスプレーライブラリは例1で記述されている。
【0231】
ファージディスプレーライブラリと共に配列番号4(GDEGDTDLYSDYYPEEDTE)の固定化されたペプチドをインキュベートし、洗浄により未結合ファージを除去し、結合したファージを特異的に溶出することによって、バイオパニングを実施した。溶出したファージクローンを任意には、さらなる結合サイクル及び任意の増幅の前に増幅させ、ペプチドに対し最もよく結合するような抗体フラグメントを担持するファージクローンに有利に特異的配列のプールを富化させた。複数のパニングサイクル後、個々のファージクローンを特徴づけし、クローンの配列を決定した。
【0232】
本発明においては、磁気ビーズに共有結合した配列番号44の化学的に合成した硫酸化ペプチドと共に溶解した状態でファージディスプレーライブラリをパニングすることにより、D1及びD3抗体クローンを同定した。配列番号44の硫酸化ペプチドは、第1のチロシン残基の硫酸化を含め、成熟GPIb内部のアミノ酸268〜285に見られるきわめて酸性の強い配列に基づいている。S44の合成硫酸化ペプチドを、メーカーの指示事項に従ってED/NHSが関与する反応によりアミン−磁気ビーズ(Dynal)に対して共有結合させた。ビーズをPBST(PBS+0.005%のTween−20)での洗浄し、PBST−M(5%の低脂肪乳が追加されたPBST)により遮断させた。パニングのために、ペプチド結合ビーズを2×1011個のファージと共にでインキュベートさせた。非硫酸化ペプチドに結合するscFvクローンの単離を回避するべく、パニング溶液に対し、硫酸化が欠如しているものの同じ線形配列(配列番号43)のペプチドを添加した。
【0233】
PBST中での高ストリンジェンシー洗浄液を用いて、3回のパニングサイクル(各々37℃で20分)を実施した。洗浄後、グリシン0.2M(pH2.2)により結合したファージを溶出させ、トリス1M(pH9.1)により中和させた。溶出されたファージを、感染性TG1細菌により増幅させ、ヘルパーファージM13K07によりレスキューした。3回のパニングサイクルの時点で最高5000倍の富化が達成された。第3のパニングサイクルの後、個々のクローンをCDR3領域内でアミノ酸配列について分析した。これらの選択されたクローンのCDR3領域アミノ酸配列(配列番号11〜16)は、表3に列挙されている。
【表3】

【0234】
表3に示されている結果は、強いコンセンサス配列が得られたことを示している(全てのCDR3配列中で第1及び第6位置の疎水性残基、通常は第2位置の塩基性残基及び第4位置のプロリン)。
【0235】
GPIbの硫酸化部分に基づいて合成硫酸化ペプチドに対する結合をさらに分析するために、パニングされ選択されたクローンからのファージ(図13)を用いたELISA分析を実施した。ELISA分析は、「テスト」ウェル中で配列番号44GPIb硫酸化(GDEGDTDLYSDYYPEEDTE)の合成硫酸化ペプチド、「バックグラウンド」ウェル中で配列番号43(GDEGDTDLYDYYPEEDTE)の合成GPIb非硫酸化ペプチド、そしてPSGL1−1から誘導された硫酸化及び非硫酸化ペプチドとしてそれぞれ配列番号7(QATEYEYLDYSDFLPETE)及び配列番号26(QATEYEYLDYDFLPETE)を用いて並行して実施された。メーカーが推奨する通り、NH−CovakinkTM平板(NUNC)上でペプチドをコーティングした。テストウェル内の対応する系からの結合データから、バックグラウンドウェルから得た結合データを差し引いて、図13に示された結果を生成した。合成硫酸化ペプチドに対する結合についての負の対照(NC)として、無作為に選択したファージクローンを用いた。
【0236】
図13は、選択されたファージクローン各々が、合成硫酸化ペプチドの両方すなわちGPIb及びPSGL−1に特異的に結合したことを示している。クローンは、合成硫酸化ペプチドに対する一定範囲の結合強度を示したが、各々のクローンはGPIb及びPSGL−1の両方に関してほぼ同じ挙動を表示した。
【0237】
選択されたクローンからのscFvを、グリコカリシン(血小板内で発現されたGPIbから誘導された外側膜部分)に対する結合を評価するべくELISAにより分析した。図14に示されているように、scFsD1及びD3は有意な結合を示し、一方D2及びD16は弱い結合を示し、D5及びD9は負の対照と類似していた。
【0238】
選択されたクローンからのscFvs(実験1回につき1μg)をFACSにより分析して、PSGL−1を発現するAMLM4細胞系列であるML−2に対する結合を評価した。表4に示されているように、scFvsの全てがML−2細胞に対し、異なる感度で結合した。D1及びD3は、恐らくはPSGL−1のエピトープとの相互作用を介してML−2に対する最も強い結合を示した。
【表4】

【0239】
実施例4
当該例は、本発明のコンセンサス抗体内に入るCDR3配列を有する複数のscFv抗体の結合を実証している。簡単に言うと、足場としてY1−scFvのCDR3配列を用いて、突然変異体scFvを産生し、血小板及び顆粒球に対する結合に対するこれらの突然変異の効果を査定した。
【0240】
Y1−scFvの重鎖(CDR3H)のCDR3内の部位特異的突然変異誘発を用いて、(配列内に入る付加的なCDR3領域を生成した。これらの付加的なscFvを次にテストして、血小板及び顆粒球に対する相対的結合を見極めた。
【0241】
Y1−scFvは、血小板上に見られる負に帯電したGPIbαエピトープに結合することがわかっている。Y1のCDR3Hを含む6個のアミノ酸配列内には、第2の位置にアルギニン残基すなわち正に帯電したアミノ酸が存在している。GPIbαに対する結合におけるこのアルギニン残基の考えられる静電効果を調べるために、4つの突然変異体scFvsを構築した。突然変異体R2Aのアルギニン残基はアラニンにより置換されている。突然変異体A3Rは、位置3に付加的なアルギニンを有し、アラニンに置き換わっている。突然変異体V5Rは、位置5に付加的なアルギニンを有しバリンに置き換わっている。第4のscFvは、スクランブルされた突然変異体であった。scFv突然変異体は、表5に要約されている。
【表5】

【0242】
血小板に対する結合における4つの突然変異体scFvs及びY1scFvの比較分析が、以下の通り、FACS分析によって実施された。
【0243】
scFvsの混合物400μgでウサギを免疫することにより、抗scFv抗体を生成し、メーカーの指示事項に従って、R−フィコエリスリン接合キット、PhycolinkTM(ProZyme, San Leandro, CA)を用いて標識した。1時間室温で107個の洗浄済み血小板と共にscFvsのアリコート(10μg/mL)をインキュベートした。その後血小板を、1%のBSAを含有するPBS中で洗浄し、1時間室温でR−フィコエリスリン−抗−scFv抗体と共にインキュベートした。その後、血小板を洗浄し、PBS中で再懸濁し、試料(104個の血小板)をFACS(VAC Scan, Becton-Dick-inson, CA)により分析した。
【0244】
図15は、異なるドナーからの血小板を用いた3回の実験からの平均結合+SEMを示している。突然変異体R2Aは、Y1親scFvに比べて、血小板に対する結合を示しておらず、CDR3Hの第2の位置にあるアルギニンが血小板結合機能において1つの役割を果たす可能性があるということを示唆している。突然変異体V5Rは、1〜10μg/mlの濃度範囲内で野生型Y1−scFvに類似した要領で血小板に結合した。しかしながら20μg/mlの濃度では、V5Rの結合は、Y1scFv(図15)に比べて2倍高かった。これとは対照的に、突然変異体A3RscFvは、テストした全ての濃度でY1scFvに比べ9倍高い血小板に対する結合を示し、位置2におけるアルギニン残基に隣接する付加的なアルギニン残基が血小板に対する結合を増大させ得ることを示唆した。第2位置での突然変異体が欠如したアルギンについて予想された通り、スクランブルされたscFvは血小板に結合できなかった(図15)。
【0245】
scFvは同様に、ELISA検定を用いて、精製グリコカリシン及びGPIbα誘導ペプチドに対するその結合能力についても分析された。図16は、2回の実験からの5μg/mlのscFv+STDVの平均的結合としてこれらの結果を示している。突然変異体R2AscFv及びスクランブルされたscFvは、精製GPIbαにもGPIbα誘導ペプチドのいずれにも結合しなかった。V5Rは、V1と類似の要領で精製グリコカリシン及びGPIbα誘導ペプチドに結合した。突然変異体A3Rは、Y1に比べて高いグリコカリシンに対する結合を示した。
【0246】
血小板凝集に対する突然変異体scFvの効果は、以下の通りに実施した研究において評価された。洗浄した血小板をLumiaggregometer(Chronolog, Havertown, PA)内で37℃で500rpmで撹拌した。血小板懸濁液及び懸濁媒質を通した光透過の差異を100%の凝集として考慮した。血小板凝集に対するAb−scFvsの効果を、アゴニストの添加の前に室温で2分間mAb−scFvsのさまざまな濃度でインキュベートし、4分間凝集を記録することによって評価した。
【0247】
血小板凝集に対するA3RscFvの効果は、その増強した血小板結合能力と一貫性あることがわかった。図17は、この突然変異体が、Y1scFvと比べて、洗浄した血小板中のリストセチン誘発されたvWF依存性血小板凝集のさらに有効な阻害を示す、ということを示している(それぞれ0.2μM及び0.8μMのIC50)。
【0248】
合わせて考慮すると、これらの実験は、Y1−CDR3H内の位置2におけるアルギニン残基が血小板GPIbaに対する結合に関連性をもつものであるということを実証している。その上、位置3における付加的なアルギニン残基の付加が血小板結合能力及び抗凝集機能の両方を増大させたことから、かかる結合には静電相互作用が関与し得る。
【0249】
実施例5
A3R及びY1scFvsの生物活性を、高いせん断速度下でポリスチレン表面上の全血血小板の接着及び凝集を臨床的に評価し、かくして生理学的条件を模倣するための新しい方法であるCone and Plate(let)Analyzer(CPA)検定においてさらに査定した(Varon et al.,(1997)Thromb. Res. 85(4):283−294;Shenkman et al.,(2000)Thromb. Res.99(4):353−361)。
【0250】
これらの実験を以下のように実施した。すなわち、血液試料(0.2ml)を非組織培養4ウェルポリスチレン平板(Nunc, Rockilde, Denmark)上に設置し、このシステムのために特定的に指定された回転テフロン(登録商標)コーンを用いて、1300秒-1のせん断で一分間流動に付した。該コーンの直径は14mmで角度は2.45°であり、これが平板表面全体にわたり恒常な流体せん断応力を誘発した。その後ウェルをPBSで徹底的に洗浄し、May-Grunwald染色で染色し、画像分析システム(Galai, Migdal Haemek, イスラエル)に接続された倒置光顕微鏡(日本、東京、オリンパス)で分析した。
【0251】
CPA検定における血小板接着に対する1μM(25μg/ml)及び2μM(50μg/ml)のscFv抗体を評価するために、CPA検定を実施した。図18に示されているように、A3R突然変異体は、対照における13%からそれぞれ1μM及び2μMの濃度での7%及び3%までの表面被覆率の減少を示した。これと比較して、Y1−scFvは表面被覆率に対する効果を全くもたず、両方の濃度において対照の場合と類似であった。これらの結果は、A3R突然変異体が、血小板上のGPIb受容体に対するその結合を介してCPAの流動条件下でポリスチレン表面に対する血小板接着を阻害することを示した。
【0252】
両方の抗体の平均サイズ(AS)はわずかに減少した(データ示さず)。これらの結果は、A3RscFvが、血小板上のGPIb受容体に対する結合を介して流動条件下でポリスチレン表面に対する血小板接着を阻害し得ることを示した。
【0253】
A3Rが硫酸化GPIbを結合させ、小動脈内で発生するか又は動脈狭窄によって作り出されるように高いせん断応力条件下で専ら発生するGPIbとvWFの間の相互作用を防止するという観察事実に基づいて、この抗体は、アテローム性動脈硬化症を防止及び/又は治療するために治療目的で使用することが可能である。
【0254】
実施例6
当該例は、健常な多血小板血漿(PRP)に対するS15、A3R及びY1の結合特性の比較について記述している。
【0255】
血小板に対する異なる濃度でのY1、A3R及びS15の結合を分析するため、2人の健康なドナーから調製されたPRP試料についてFACS分析を実施し、その結果が表6に示されている。
【表6】

【0256】
表6の結果は、1μgの濃度でA3Rが、Y1よりも強い親和力で血小板に結合するS15よりもさらに強い親和力で血小板に結合することを示している。1μgでは、両方のPRP試料の平均幾何平均は、A3Rについては116、S15については26そしてY1については負であった。
【0257】
GPIbを発現するPRP(多血小板血漿)に対する結合を評価するため、選択されたscFv(実験1回につき0.5μg)をFACSにより分析した。表7に示されているように、D1及びD3は、PRPに対する有意な結合を示し、D1は比較的高いレベルで結合した。PRPに対するD1の結合のレベルは、USSN10/611,238の例1でその選択について記述されているscFvS11(LRYPFF)(配列番号31)が示すものと類似であった。
【表7】

【0258】
実施例7
当該例は、顆粒球(G)、リンパ球(L)及び単球(M)を含有する健康な全血細胞に対するS15、A3R及びY1の結合特性の比較について記述している。
【0259】
全血細胞に対する異なる濃度でのY1、A3R及びS15の結合を分析するため、2人の健康なドナーから調製されたヒトの全血試料についてFACS分析を実施し、その結果が表8に示されている。
【表8】

【0260】
表8の結果は、全血細胞に対するS15の親和力がA3R及びY1の結合親和力よりも高いことを表わしている。0.1μgの濃度で、両方の全血試料のS15結合の平均幾何平均は中乃至高であり、一方両全血試料のA3R及びY1の平均幾何平均は、0.5μgで負か又はわずかに正であった。
【0261】
(リンパ球、単球及び血小板上でゲートした)全血に対する結合を評価するため、scFvsD1、D3及びS11(実験1回につき0.5μg)をFACSにより分析した。表9に示されているように、D1は、その他2つのscFvsに比べて、全ての細胞型に対し最高の結合を示した。
【表9】

【0262】
実施例8
この例は、コンセンサス配列を含む抗体の特性をさらに研究するための非ヒトインビボ動物モデル系の開発について記述する。初期の目的は、抗体のうちの1つ(又は複数)が、(a)血小板に結合すると同時に(b)血小板凝集を阻害する能力をもつ非ヒト哺乳動物種を同定することにあった。
【0263】
異なる哺乳動物種から単離された血小板に結合するさまざまなscFv抗体の能力を、FACS分析により決定し、相対的結合結果は表10に要約されている。
【表10】

【0264】
テストされた各々の種において、scFvY1は、コンセンサス配列を含む抗体の中で最も弱い相対的結合を示した。この観察事実は、突然変異体(A3R)及びライブラリ(S15、S11、S1及び01)選択型scFvsが全て、血小板GPIb上で発生するように、硫酸化エピトープについての高い結合能力を有するという結果を裏づけている。
【0265】
例えば、scFvsA3R及びS15は、ヒト及びモルモットの血小板上で(Y1に比べ)5〜9倍大きい結合能力を示し、一方、これらの種に対するS11、S1及びD1の結合能力はY1よりも約25倍大きいものである。
【0266】
scFvsパネルにより結合された非ヒト血小板の種アレイに関しては、S11、S1及びD1は各々、イヌ、モルモット及びウサギ由来の血小板を結合させる。S15は、イヌ(最高の親和力)、モルモット及びブタ由来の血小板を結合させるものの、ウサギ、マウス又はサル(ヒヒ及びカニクイザル)由来の血小板は結合させない。重要なことに、モルモットは、コンセンサス配列を含む抗体全てが血小板を結合できる同定された単一の非ヒト種である。
【0267】
血小板凝集に対する効果
S1、S11及びD1はS15に比べてはるかに高い親和力でモルモット由来の血小板に結合するが、血小板凝集の阻害に関しては、これらのscFvsの全てが類似の能力を示す。
【0268】
モルモット血小板凝集に対するscFvS15の阻害効果(IC5080〜160μg/ml)は、ヒト由来の血小板に対するその阻害効果に比べ約8〜10分の1であることがわかった。これは、モルモット由来の血小板に対するscFvS15抗体の比較的低い結合に起因する可能性がある。
【0269】
ヒト及びイヌ由来の血小板に対するIgG1S15及びIgGY1抗体の結合は、類似であることがわかった。2つの抗体は、同じ濃度でヒト及びイヌ由来の血小板内で血小板凝集を誘発した。
【0270】
モルモットにおけるscFvの薬物動態
モルモットにおけるscFv抗体の薬物動態を査定するために、単一ボーラスとしてモルモットに対し10mg/kgのscFvA3Rを静脈内投与した。異なる時点でのモルモットの血液中のscFvA3RのレベルをELISA検定を用いて決定し、血小板結合したscFvのレベルを、FACS分析を用いて決定した。
【0271】
キシラジン(20mg/kg)と混合したケタミン(50mg/kg)の腹腔内注射で、3匹の雄のモルモット(体重最高500g)を麻酔した。10mg/kg(モルモット一匹につき最高5mg)の割合でボーラス静脈内注射によりscFvA3Rを投与した。0分(抗体投与前)そして抗体投与後3分、10分、20分、30分、60分、90分、120分、180分及び360分の時点で、血液試料を収集した。各々の時点で0.5mlの血液を採取した。抗凝固剤として、3.8%のクエン酸ナトリウムを使用した。15分間3000×gで血液試料を遠心分離することによって血漿を得、−20℃で保管し、10分間150×gで血液試料を遠心分離することによりPRPを得た。抗−scFvPE標識済み抗体を用いてFACS分析により、モルモットのPRP中で、血小板結合したA3RscFvをテストした。特異的ELISAにより、血漿scFcA3R抗体濃度を検定した。
【0272】
ボーラス投与後異なる時点でモルモットの血小板に対して結合したscFv−A3R抗体のレベルを評価するために、FACS分析を使用した。結果(図19)は、10mg/kgのscFv−A3Rのボーラス投与から10分後に、血小板に対して結合したscFvのレベルは最大レベルの40〜80%であり、120分後に最大レベルに達した。血小板に対するscFv−A3R抗体の結合は360分(6時間)の間高レベルにとどまり、ボーラス投与から24時間後までに90%減少した。
【0273】
Try−276に硫酸化チロシンを有するGPIbペプチドでコーティングされた平板を用いる(μM/ウェル)ELISAにより、A3R−scFvの血漿レベルを測定した。ウサギ抗VL(可変光)抗体を添加しその後抗ウサギHRP(Sigma)及び3.3′、5.5′−テトラメチルベンチジン(TMB)(Sigma, St.Louis, MO)基板を添加することにより、結合scFvを検出した。生み出された色の強度を、O.D.450のELISA平板読取り装置(Anthos, Salzburg)によって読みとった。モルモットの血漿又は0.05%Tween20及び20%のスキムミルクを含有するPBSに対し既知の量のこれらの抗体を加えることによって構築された標準曲線から、各試料中のscFvの血漿濃度を計算した。
【0274】
結果は、scFvA3Rの血漿濃度が、ボーラス注入から3分後にピークに達し6時間にわたり漸進的に下降した(図20)ことを示している。モルモットにおけるA3Rの半減期は139±9分であった。
【0275】
要約すると、以上の研究は、標的血小板上の飽和レベルの急速な達成及び比較的長い半減期に基づいて、A3Rが有利な薬物動態プロフィールを有することの予備的標示を提供している。
【0276】
実施例9
BIAcoreバイオセンサーは、表面プラズモン共鳴検出を使用し、2つの相互作用する種の実時間動態分析を可能にする。このシステムは、血小板GPIbから誘導されたポリペプチドであるグリコカリシンに対するscFvsY1、A3R及びS15の結合動態を測定するために使用された。
【0277】
BIAcore3000器具(BIAcore,Uppsale,スウェーデン)を用いて、グリコカリシンに対する抗体の結合親和力を決定した。20μlmin-1の流量で、pH4.6の10mMの酢酸ナトリウム中のCM5チップ(BIAcore)上に、グリコカリシン(固定化されたリガンド)を共有結合により固定化させた。全ての結合実験は、0.005%(v/v)の非イオン洗浄剤、P20(ポリオキシエチレンソルビタン)を含むpH7.4のHBS緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3.4mMのEDTA)中で実施した。平均Ka(会合速度)及びKd(解離速度)動態から、BIA評価3.1ソウトウェア(BIAcore)を用いて、グリコカリシンに対する抗体の結合親和力(KD)を決定した。
【0278】
A3R−scFvは、そのより速い会合速度により示されているように(表11)、Y1−scFvよりも高い親和力(最高7倍)で血小板グリコカリシンに結合する。これらの結果は、無傷の血小板についてのFACS分析から得られた結果と一致している。S15−scFvは同様に、Y1−scFvよりは高いもののA3Rより低い親和力グリコカリシンに結合する。
【表11】

【0279】
実施例10
本例は、チロシン残基において硫酸化を受けるPSGL−1、GPIb及びCCR5の領域に基づいた合成ペプチドに対するコンセンサス配列を含む抗体の直接的結合について記述している。
【0280】
使用された合成ペプチドは以下の通りであった。
【表12】

【0281】
使用されたscFvsは、N06(負の対照、Y1(P03)、S15、S11、S1、S9、s.c.3.1及びS11であった。
【0282】
室温で30分間Sulfo−NHS(3.48mg/ml)及びEDC(3.07mg/ml)で平板を前処理した後、NHCovaLinkTMマイクロタイタ平板(Nunc,Denmark)に対しさまざまな硫酸化及び非硫酸化ペプチドを接着させ、その後水中で1回、0.05%のTweenを含有するPBS中で3回洗浄した。室温で1時間穏やかに振とうすることにより、5%のスキムミルク及び0.05%のTweenを含有するPBS緩衝液で平板を遮断した。合成ペプチド(1ウェルあたり100μM)を添加し、その後、0.05%のTweenを含有するPBS緩衝液で5回洗浄し、平板を室温で乾燥させた。結合のため、室温で1時間インキュベートするよう、平板に対し、プロテインA精製済みscFv抗体(0.5μg/ウェル)を添加した。ELISAのためには、60分間25℃でインキュベートするべく、平板に対し、遮断用緩衝液中のウサギ抗ヒトVLポリクローナル抗体(抗−scFv)を添加した。0.05%のTweenを含有するPBS緩衝液で5回洗浄することにより、余剰の抗−scFvを除去した。室温で1時間インキュベートするため、遮断用緩衝液中のヤギ抗ウサギHRP標識済み抗体を添加し、10回の洗浄により余剰分を除去した。TMB顕色剤を5分間添加し、0.5MのH2SO4(100μl/ウェル)で中和した。450nmの波長でELISA平板読取り装置により呈色反応を読みとった。各試料をデュプリケートで検定し、平均を計算した。
【表13】

【0283】
表12及び図21は、コンセンサス配列を含むテスト対象scFv抗体全てが、第3のチロシン位置において硫酸化されたPSGL−1由来のペプチドに対し有意な形で結合したものの、第1又は第2のチロシン位置で硫酸化されたものには結合しなかったということを表わしている。1本鎖抗体S1、S9及び3.1は、第3のチロシン位置で硫酸化されたPSGL−1由来のペプチドに対する最強の結合を示した。これらの抗体は同様に、第1のチロシン位置で硫酸化されたGPIb由来のペプチドにも結合し、第3のチロシン位置で硫酸化されたGPIb由来のペプチドに対し、scFvsS1、S9及び3.1は最強の結合を、そしてscFvsS15及びS11は中位の結合を示している。第1又は第3のチロシン位置で硫酸化されたCCR5由来のペプチドではなく、第2のチロシン位置で硫酸化されたCCR5由来のペプチドに対するこれらの抗体の有意な結合が同様に観察された。1本鎖抗体S11は、第2のチロシン位置で硫酸化されたCCR5由来のペプチドに対し最強の結合を示した。対照抗体scFvでは、全く結合が見られなかった。
【0284】
第2のチロシン位置で硫酸化されたCCR5由来のペプチドで得られた結果は、少なくともscFvS11そして場合によってはコンセンサス配列を含むその他の抗体がヒト細胞内のHIV感染力の阻害剤としての潜在性を有し得るということを示唆している。
【0285】
実施例11
該発明のコンセンサス配列を含むIgG抗体が、標的細胞特に患者の試料から誘導されたB−CLL細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力をもつことを実証するために研究が実施された。さらに、二次抗ヒトFC抗体とのS15−IgGの超架橋により、アポトーシスメカニズムも細胞の殺滅に貢献することが実証された。
【0286】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)実験は以下の通りであった。すなわち、FICOLL(登録商標)上で、単核エフェクタ及び標的細胞を分離し、その後、細胞膜の脂質領域内部に螢光染料を安定した形で取込むPKH26で標的細胞を標識した。その後細胞を洗浄し、24時間異なる濃度のS15IgG又は対照抗体の存在下で又は不在下で、さまざまなエフェクタ対標的(E:T)比でエフェクタ細胞と共にインキュベートした。死細胞をTOPRO(登録商標)(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)で染色し、ゲートした標的細胞についてFACSにより分析した。
【0287】
健康なドナーからの単核エフェクタ細胞及び3人の患者からのB−CLL標的細胞を24時間S15−IgGの存在下及び不在下でさまざまなE:T比で同時インキュベートし、その後FACS分析を行なった。図22Bは、対照と比較して30〜50%のADCCで、3つの試料すべてにおいてS15IgGがエフェクタ細胞の細胞傷害を媒介したことを示している。
【0288】
S15−IgGADCCは、ナチュラルキラー及び単球性細胞によって媒介される。エフェクタ細胞を、B−CLL細胞のS15IgG媒介されたACCCをもたらすその能力について分析した。市販の磁気ビーズを用いて、正常なドナー及びB−CLL患者の両方からのナチュラルキラー(CD56+)及び単球性(CD14+)細胞を単離した。図23は、正常なドナー及びB−CLL患者由来のNK細胞がADCCをもたらす能力をもち、その結果それぞれ約50%及び35%が殺滅することを示している。正常なドナー及びB−CLL患者の両方からの単球は同様に、ADCCをもたらす能力(約5〜13%)も有している。しかしながら、CD56+NK細胞は、B−CLL細胞のS15IgG媒介ADCCのためのより有意なエフェクタ細胞集団を構成していた。
【0289】
アポトーシス実験は以下の通りであった。FICOLL(登録商標)上で、B−CLL患者由来の単核細胞を分離し、37℃で10分間S15−IgG又は対照抗体の存在下又は不在下で細胞をインキュベートした。その後抗ヒトFc抗体を添加し、37℃で4〜24時間インキュベートした。その後、アポトーシスマーカーAnnexin及びTOPRO(登録商標)で罹病細胞(CD19+,CD5+)を染色し、FACSにより分析した。
【0290】
S15−IgGはアポトーシスを誘発した。FACS分析は、S15−IgGの存在下でインキュベートさせたB−CLL患者由来の単核細胞(CD19+,CD5+)が5時間以内で約10%のアポトーシスを示すということを示した(図24)。S15−IgGを架橋する二次抗体の添加により、5時間以内に付加的な50%のアポトーシスが惹起された(図24)。
【0291】
これは、PSGL−1上の硫酸化エピトープに向けられた抗体の架橋が、原発性B−CLL細胞のアポトーシスに対するシグナルをトリガーするということの強力な証拠となっている。このことは、PSGL1が、架橋効果が例えば単球、CD56+NK−細胞及びγδ+T−細胞といったFc受容体担持細胞によって媒介され得るインビボでのB−CLL細胞内のアポトーシスを誘発するための標的であり得る、ということを暗示している。
【0292】
S15−IgGとは対照的に、B−CLLを含むさまざまなリンパ性悪性疾患の治療のために広く用いられているヒト化抗体リツキンマブは、架橋時点でアポトーシスのいかなる増大も示さなかった(図25)。
【0293】
S15−IgGについて上述したアポトーシス及び架橋効果は、自力ではアポトーシスを誘発しないPSGL−1に対して向けられたマウス抗体KPL1を用いて阻害され得る(データ示さず)。こうして、アポトーシスシグナルがPSGL−1上のエピトープにより媒介されることの確認が得られる。
【0294】
さらに、FACS分析は、S15IgGが正常なB−細胞に対するそのわずかな結合とは対照的に、テスト対象である全てのB−CLL試料に対し結合するということを示した。合わせて考慮すると、該結果により、S15−IgGは、その細胞傷害及びアポトーシス効果がこれらの罹病細胞上で発現されたPSGL−1硫酸化エピトープの特異的認識を介して媒介されると思われることから、B−CLLの治療における治療薬としての前途有望な候補であるということが示唆されている。
【0295】
実施例8
無機化合物ライブラリのスクリーニング。特異的受容体(タンパク質)から誘導された(ペプチドの既知のアミノ酸配列内部の一定の与えられた特異的チロシン残基上で硫酸化された)合成硫酸化ペプチドを、カプロン酸といったような短かいリンカーを介して合成ペプチドにカップリングされるビオチンタグ(ビオチニル化)を用いて調製することができる。同じ合成ペプチドを用いた対照ペプチドを、硫酸化無し及びビオチンタグ(「B」)無しで調製することが可能である。さらに、その他の無関係のタンパク質由来の合成硫酸化ペプチドを、付加的な対照としてビオチンタグ(「C」)を有することなく調製することができる。
【0296】
上述のビオチニル化ペプチド(「A」)をストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズにカップリングし、余剰の未結合ビオチニル化ペプチドを次に洗浄することができる。ビオチン−ストレプトアビジンペプチド接合体(「D」)を、「A」に対して結合する分子について、生理学的条件(37℃、pH7.0〜7.4、塩濃度、伝導度など)下で余剰の非硫酸化対照ペプチド(「B」)が大量に存在する中で小型化合物ライブラリに対しスクリーニングすることができる。次に、カップリングした磁気ビーズを2回緩衝液で洗浄し、毎回遠心分離に付して余剰の未結合分子を除去する。磁気ビーズに結合した分子(「E」)を溶出し、化学的に同定し、さらなるスクリーニングのためにより大量に調製することが可能である。
【0297】
選択された化学化合物(「E」)によるビオチニル化硫酸化ペプチドに対する結合の確認を、さらなるスクリーニングプロセスにより実施することができる。このプロセスには、ビオチニル化されている無関係の硫酸化ペプチドとの競合(プロセス1)か又はビオチニル化ペプチド「A」に対して特異的に結合する抗体又はそのフラグメント(例えばscFv)との競合(プロセス2)が含まれる。
【0298】
無関係のビオチニル化硫酸化ペプチドとの競合による再スクリーニング(プロセス1)。化合物が「A」に対し特異的に結合することを確実にするため、第2ラウンドのスクリーニングを実施することができる。余剰の無関係のビオチニル化硫酸化ペプチド「C」が大量に存在する中で、ビオチン−ストレプトアビジン、ペプチド接合体(「D」)を、選択された化合物「E」で再スクリーニングすることができる。その後、管を遠心分離に付し、ビオチン−ストレプトアビジンペプチド接合体がカップリングされた磁器ビーズを緩衝液で2回洗浄し、余剰の未結合分子を除去するべく毎回遠心分離に付す。磁気ビーズに結合した化合物を化学的同定のために溶出させることができる。「A」に対する選択的結合のバリデーション及びインビトロ及びインビボでの効能試験といったようなさらなる研究のためのより大量の化学化合物を調製することが可能である。
【0299】
特異的scFv抗硫酸化抗体との競合による再スクリーニング(プロセス2)は以下の通りであった。「A」を特異的に認識しこれに結合する特異的scFc抗体が余剰に大量に存在する中での選択された化合物「E」の各々に対するビオチン−ストレプトアビジンペプチド接合体(「D」)の結合と競合することにより、「A」に対する好ましい結合親和力をもつ化合物を再スクリーニングすることができる。「A」に対する選択的結合のバリデーション及びインビトロ及びインビボでの効能試験といったさらなる研究のために、scFv抗体により「A」に対する結合が特異的に阻害される化学化合物を調製することができる。
【0300】
以上の記述及び例は、単に該発明を例示するためだけに記されたものであり、制限するものとして意図されていない。該発明の本質及び内容を取込んだ開示済みの実施形態の修正を当業者が考案する可能性が存在するため、該発明は、添付のクレーム及びその均等の範囲内に入る全てを内含するものとみなされるべきである。
【0301】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【図面の簡単な説明】
【0302】
【図1】図1は、PSGL−1に対する結合を分析するための本発明に従った選択されたクローンのファージELISAからの数値データを描いている。
【図2】図2は、PSGL−1に対する結合を分析するための本発明に従った選択されたクローンのscFvELISAからの数値データを描いている。
【図3】図3は、PSGL−1を発現するML−2に対する結合を分析するためのL32及び本発明に従った選択されたクローン由来のscFvのFACS分析からの数値データを描いている。
【図4】図4は、グリコカリシンに対する結合を分析するためのL32及び本発明に従った選択されたクローン由来のscFvのELISAからの数値データを描いている。
【図5】図5は、血小板及び顆粒球に対する結合を分析するためのL32及び本発明に従った選択されたクローン由来のscFvのELISAからの数値データを描いている。
【図6】図6は、L32及び本発明に従った選択されたクローンの顆粒球/血小板結合比の比較を示す。
【図7】図7は、KPL−1の存在及び不在下でのML−2細胞に対するS15の結合を分析している結果を描いている。
【図8】図8は、PBS中のML−2細胞に対する精製済みscFvsの結合の比較を提供するFACS分析からの数値データを描いている。
【図9】図9は、PBS中のML−2細胞に対する精製済みscFvの結合の比較を提供するFACS分析からの数値データを描いている。
【図10】図10は、50%の血漿中のML−2細胞に対する精製済みscFvsの結合の比較を提供するFACS分析からの数値データを描いている。
【図11】図11は、50%の血漿中のML−2細胞に対する精製済みscFvsの結合の比較を提供するFACS分析からの数値データを描いている。
【図12】図12は、ML−2細胞に対する精製済みscFvsの用量応答のFACS分析を描いている。
【図13】図13は、GP1b及びPSGL−1硫酸化ペプチドに対する選択されたファージクローンの結合を描いている。
【図14】図14は、グリコカルシンに対するscFvsの結合を示している。
【図15】図15は、フローサイトメトリを用いた洗浄済み血小板に対する漸増的濃度でのさまざまなscFvsの結合のグラフである。
【図16】図16は、ELISA検定を介したグリコカルシンに対するさまざまなscFvsの結合を描いている。
【図17】図17は、リストセチンによって誘発される血小板凝集に対するA3RscFvの効果を描いている。
【図18】図18は、CPA検定を用いたポリスチレンに対する血小板接着に対するY1scFv、A3RscFv及び対照PBSの効果を描いている。
【図19】図19は、ポーラス注入法の後のモルモットの血小板に結合したA3RscFvのレベルを描いている。
【図20】図20は、ボーラス注入法の後のモルモットにおけるA3RscFvの血漿濃度を描いている。
【図21】図21は、PSGL−1、GPIb及びCCR5の硫酸化領域に基づくペプチドに対するscFvの直接結合からの数値データを描いている。
【図22】図22は、B−CLL患者試料中のS15IgG誘発されたADCCを描いている。
【図23】図23は、B−CLL患者試料中のS15IgGで誘発されたADCCへの異なるエフェクタ細胞集団の関与を描いている。
【図24】図24は、B−CLL患者試料中でアポトーシスを誘発するS15IgG及びリツキシマブの能力を描いている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1及びX6が疎水性アミノ酸でありX2、X3及びX5が任意のアミノ酸である、
1−X2−X3−Pro−X5−X6
というコンセンサス配列を含む抗体又はそのフラグメント。
【請求項2】
疎水性アミノ酸がロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン及びイソロイシンから成る群から選択されている、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項3】
2が塩基性アミノ酸である、請求項1に記載の抗体又はフラグメント。
【請求項4】
塩基性アミノ酸がアルギニン及びリジンから成る群から選択されている、請求項3に記載の抗体又はフラグメント。
【請求項5】
2及びX3がアルギニンである、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項6】
6がイソロイシンである、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項7】
1がロイシン及びメチオニンから成る群から選択され、X5がセリン及びバリンから成る群から選択されている、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項8】
コンセンサス配列がその超可変領域内にある、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項9】
相補的決定領域(CDR)がコンセンサス配列の少なくとも一部分を含んでいる、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項10】
CDRがその重鎖である、請求項9に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
配列番号9、10、13、14、28及び31から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む1つの重鎖相補性決定領域(CDR)を含んで成る、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項12】
配列番号17及び配列番号18から成る群から選択されたアミノ酸配列を有する1つの重鎖相補性決定領域(CDR)を含んで成る、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項13】
配列番号9、10、13、14、28及び31から成る群から選択された第1の重鎖相補性決定領域(CDR);配列番号17のアミノ酸配列を含む第2の重鎖CDR及び配列番号18のアミノ酸配列を含む第3の重鎖CDRを含んで成る、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項14】
配列番号5、6、55、56、60及び61から成る群から選択された1配列を含んで成る、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項15】
PSGL−1、GPIb及び/又はCCR5の硫酸化エピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項16】
2つ以上のエピトープと交差反応し、各々のエピトープが単数又は複数の硫化チロシン残基を有する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項17】
各エピトープは2つ以上の酸性アミノ酸の少なくとも1つのクラスタを含んで成る、請求項15に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項18】
α−2−アンチプラスミン;アミノペプチダーゼB;CC−ケモカイン受容体;7−膜内外セグメント(7TMS)受容体;凝固因子V、VIII及びIX;フィブリノーゲンガンマ鎖;ヘパリン補因子II、セクトグラニンI及びII;ビトロネクチン、アミオイド前駆体、α−2−アンチプラスミン;コレシストキニン;α−コリオゴナドトロピン;補体C4;デルマタンスルファートプロテオグリカン;フィブロネクチン;及びカストリンから成る群から選択されたタンパク質上に存在する単数又は複数の位置において硫酸化された単数又は複数のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項19】
CC−ケモカイン受容体が、CCR2、CCR5、CCR3、CXCR3、CXCR4、CCR8及びCCR2bから成る群から選択されている、請求項18に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項20】
Pre−B−ALL細胞、CLL細胞、多発性骨髄腫細胞、転移細胞、T−ALL細胞、AML 細胞、血小板、顆粒球、リンパ球及び単球から成る群から選択された少なくとも1つの細胞型上のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項21】
血小板凝集に結合しかつこれを阻害する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項22】
配列番号9、10、28及び31の少なくとも1つを含んで成る、請求項21に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項23】
さらに、脂質、炭水化物、ペプチド、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質及び/又はリポ多糖体分子上のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項24】
請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント及び薬学的に許容可能な担体を含んで成る医薬組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の抗体又はそのフラグメント及び造影剤を含む、診断、予後診断又は病期診断用キット。
【請求項26】
請求項1に記載の抗体又はそのフラグメントをコードする単離又は精製済みDNA配列。
【請求項27】
請求項24に記載の単離又は精製済みDNAを含む発現ベクター。
【請求項28】
請求項27に記載の発現ベクターを含む組換え型宿主細胞。
【請求項29】
該抗体又はそのフラグメントを発現する、請求項28に記載の組換え型宿主細胞。
【請求項30】
該抗体又はそのフラグメントの発現を可能にする条件下で請求項28に記載の組換え型宿主細胞を培養する段階を含む、抗体又はそのフラグメントの産生方法。
【請求項31】
組換え型宿主細胞又はその培地から該抗体又はそのフラグメントを単離又は精製する段階をさらに含んで成る、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1及びX6が疎水性アミノ酸であり、X2、X3及びX5が任意のアミノ酸である、
1−X2−X3−Pro−X5−X6
というコンセンサス配列を含んで成るポリペプチド。
【請求項33】
ポリペプチドが実質的に環状又はループ状である請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
ポリペプチドが硫酸化PSGL−1、GP1b及び/又はCCR5に結合し、ポリペプチドが配列番号5、6、55、56、60又は61のscFv抗体又はそのフラグメントのものと実質的に類似した親和力で結合している、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項35】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、疾病を治療する方法。
【請求項36】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、細胞ローリングを治療する方法。
【請求項37】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、感染症を治療する方法。
【請求項38】
感染症がHIVによりひき起こされている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
投与がHIVの進入を防止する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、炎症を治療する方法。
【請求項41】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、自己免疫疾患を阻害する方法。
【請求項42】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、転移を阻害する方法。
【請求項43】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、腫瘍細胞の成長及び/又は複製を阻害する方法。
【請求項44】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、腫瘍細胞の死亡率を増加させる方法。
【請求項45】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、白血病細胞の成長及び/又は複製を阻害する方法。
【請求項46】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、白血病細胞の死亡率を増加させる方法。
【請求項47】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、B−CLL細胞の成長及び/又は複製を阻害する方法。
【請求項48】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、白血病細胞の死亡率を増大させる方法。
【請求項49】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、抗疾病剤による損傷に対する罹患細胞の感受性を改変する方法。
【請求項50】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、抗癌剤による損傷に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる方法。
【請求項51】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、抗白血病剤による損傷に対する白血病細胞の感受性を増大させる方法。
【請求項52】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、抗白血病剤による損傷に対するB−CLL細胞の感受性を増大させる方法。
【請求項53】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、血小板凝集を阻害する方法。
【請求項54】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、再狭窄を阻害する方法。
【請求項55】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)を惹起する方法。
【請求項56】
ADCCがナチュラルキラー(NK)又は単球細胞から成るエフェクタ細胞により媒介される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、白血病細胞内のアポトーシスを惹起する方法。
【請求項58】
必要としている患者に対し請求項24に記載の医薬組成物を投与する段階を含んで成る、ナチュラルキラー(NK)細胞又はT細胞を刺激する方法。
【請求項59】
疾病を治療するための医薬品の製造における請求項24に記載の医薬組成物の使用。
【請求項60】
患者の体内の疾病を診断、予後診断又は病期診断する方法において、
− 患者由来の細胞を含有する試料を提供する段階、及び
− 請求項1に記載の抗体又はそのフラグメントが患者の細胞に結合するか否かを決定し、かくして該患者に該疾病のリスクがあること又は該患者が該疾病を患っていることを標示する段階、
を含んで成る方法。
【請求項61】
− 患者由来の細胞を含有する試料を提供する段階、及び
− 請求項1に記載の抗体又はそのフラグメントと患者由来の細胞をインキュベートする段階、
を含む、患者由来の腫瘍細胞をパージする方法。
【請求項62】
− パージングがエクスビボで行なわれる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
抗体又はそのフラグメント又はポリペプチドを選択するための方法において、
(a)ファージディスプレーライブラリを提供する段階;
(b)配列番号7、44及び53から成る群から選択されたペプチドを提供する段階;
(c)配列番号7、44、50及び53から成る群から選択されたペプチドに結合するscFv抗体又はそのフラグメントを選択するべくファージディスプレーライブラリをパニングする段階;及び
(d)選択されたscFv抗体又はそのフラグメントを産生する段階、
を含んで成る方法。
【請求項64】
選択されたscFv抗体又はそのフラグメントが、配列番号7、44及び53から成る群から選択されたペプチドを結合させる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ペプチドが固定化されている、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
配列番号26、43、44、48、49、50、51、52、54、57、58及び59から成る群から選択されている少なくとも1つの可溶性ペプチドの存在下でパニングする段階、
を段階(c)がさらに含んで成る、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
選択された抗体又はそのフラグメントが配列番号26、48又は49を結合させない、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
選択された抗体又はそのフラグメントが配列番号43を結合させない、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
選択された抗体又はそのフラグメントが配列番号51、52又は54を結合させない、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
請求項63に記載の方法に従って産生された抗体又はそのフラグメント。
【請求項71】
相補的結合のためのさまざまな抗原結合ドメインを含む免疫グロブリン結合ドメインライブラリにおいて、重鎖CDR3でのみ多様性を有するライブラリ。
【請求項72】
免疫グロブリン結合ドメインがscFv分子である、請求項71に記載のライブラリ。
【請求項73】
免疫グロブリン結合ドメインが、DP32から誘導された重鎖相補性決定領域(CDR)1及び2を含む、請求項71に記載のライブラリ。
【請求項74】
免疫グロブリン結合ドメインがDP32から誘導された軽鎖可変領域を含む、請求項71に記載のライブラリ。
【請求項75】
免疫グロブリン結合ドメインが糸状バクテリオファージ粒子の表面上で表示される、請求項71に記載のライブラリ。
【請求項76】
硫酸化されたエピトープについて選択を行なう方法において、
− 請求項71に記載のライブラリを提供する段階;
− 抗原結合ドメインに結合する硫酸化エピトープについてライブラリをパニングする段階、及び
− 硫酸化エピトープを単離する段階、
を含んで成る方法。
【請求項77】
小分子がPSGL−1、GPIb及び/又はCCR5の硫酸化エピトープに結合する、無機小分子。
【請求項78】
請求項77に記載の無機小分子を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−528711(P2007−528711A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518730(P2006−518730)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/021002
【国際公開番号】WO2005/010153
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505192992)バイオ−テクノロジー・ジェネラル(イスラエル)リミテッド (2)
【Fターム(参考)】