説明

抗体産生細胞の同定

本発明は、選択された抗原、特に高収率抗体産生細胞に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するための自動化されたホモジニアスなアッセイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に抗体を産生するための改善された方法に関し、より詳しくは抗体を得るためのホモジニアスなアッセイを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体を産生するための選択リンパ球抗体方法(SLAM)は、in vivoの免疫反応の間に生成された高親和性の抗体をあらゆる種から単離できるようにすることにより、ハイブリドーマ技術及び細菌により発現される抗体ライブラリーの両方の限界を克服するものである(Babcookら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.、93巻、7843〜7848頁)。SLAMは、望ましい特異性又は機能を有する抗体を産生している単一のリンパ球をリンパ系細胞の大集団の中で同定できるようにし、抗体の特異性をコードする遺伝情報をリンパ球から取り出せる(rescued)ようにしている。選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞は、適合された溶血プラークアッセイ法を用いて検出される(Jerne及びNordin、1963年、Science、140巻、405頁)。このアッセイでは、赤血球を選択された抗原でコーティングし、抗体産生細胞の集団及び補体の供給源とともにインキュベートする。単一の抗体産生細胞を、溶血プラークの形成により同定する。溶解した赤血球のプラークを倒立顕微鏡を用いて同定し、プラークの中心にある目的の単一の抗体産生細胞を顕微操作技術を用いて取り出し、当該細胞からの抗体遺伝子を逆転写PCRによりクローンする。望ましい機能の単一の抗体産生細胞を検出するための他の方法は、WO第92/02551号に既に記載されている。
【0003】
上記に記載した溶血プラークアッセイでは、典型的には、抗原をビオチン化する必要があるビオチン/ストレプトアビジンカップリング系により、赤血球を抗原でコーティングする。したがって、この方法は、純粋な形態で入手できる抗原、及びエピトープの提示に影響を及ぼさないでビオチン化することができる抗原に限定される。この方法は、広範囲の抗原に対する抗体の単離を明らかに排除する。例えば、多くのタンパク質、特に、タイプIIIタンパク質などの細胞表面に発現されるタンパク質を精製するのは困難である。多くのタンパク質、例えば、その活性部位にリジン基を含むタンパク質は、ビオチン化で、その高次構造及び望ましいエピトープの提示が変化する。
【0004】
腫瘍細胞等の細胞の表面上に発現されるタンパク質などの、未知の抗原に対する抗体を産生することも、望ましいことがある。プラークアッセイで、抗原でコーティングした赤血球の代わりに腫瘍細胞を直接使用することは、抗体産生細胞を含むプラークを同定するために細胞の溶解が起こる必要を考慮すると実現は困難である。細胞の溶解は、細胞タイプ、抗原及び抗体の濃度に依存する。望ましい抗原でコーティングされている赤血球は、大量の使用可能な抗体と結合し、補体の存在下で容易に溶解する。腫瘍細胞などの他の細胞タイプは、それ程容易に溶解せず、特にその表面の抗原の利用性が非常に低いことがあり、そのために抗体の結合が低い場合には、それ程容易に溶解しないであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗体を産生するための改善された方法を提供することにより、より詳しくは抗体を得るためのホモジニアスなアッセイを提供することにより、これらの問題点を是正するものである。この改善されたアッセイには、上記に記載した方法をしのぐ多くの利点があり、未知の抗原、細胞表面抗原、及び望ましいエピトープの提示を変更しなければビオチン化できない抗原を含む、任意の抗原に結合する抗体の同定を可能にしている。その結果、従来のプラークアッセイでは以前は同定不可能であった結合特異性を有する抗体を、現在、産生することができる。さらに、このアッセイは、溶血プラークアッセイよりも容易であり、抗体産生細胞をより速やかに同定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、抗体産生細胞により産生される抗体に結合する標識された抗体の存在下で、抗体産生細胞の集団を抗原の供給源とインキュベートすることにより、抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を得ることが可能であることを、実証した。驚くべきことに、非結合の標識を除去する洗浄ステップを必要としないで抗原に結合する抗体を産生する細胞と、そうでない細胞と区別することは可能である。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
a)抗体産生細胞の集団を準備するステップと、
b)前記抗体産生細胞の集団を、選択された抗原及び標識された抗−抗体抗体とインキュベートするステップであって、前記抗−抗体抗体が、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、産生しない細胞とを区別することができるステップと、
c)選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するステップと
を含む、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するための、ホモジニアスなアッセイが提供される。本明細書で用いる「抗体」とは、IgGクラスのメンバー(例えば、IgG1)などの、あらゆるリコンビナントの又は天然に存在する免疫グロブリン分子を含み、ポリクローナル、モノクローナル、2価、3価、若しくは4価の抗体、ヒト化若しくはキメラの抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、Fab’及びFab’フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されたフラグメント、抗イディオタイプの(抗−Id)抗体、並びに上記の何れかのエピトープ結合性フラグメントを含む。ヒト化抗体は、1つ又は複数の非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、米国特許第5585089号を参照されたい)。
【0008】
本明細書で用いる「抗体産生細胞」とは、Bリンパ球、形質細胞、形質芽細胞、活性化B細胞、又は記憶B細胞など、抗体を分泌することができるあらゆる細胞を意味する。本発明で用いるための抗体産生細胞は、抗原で免疫化された動物、又は疾患の結果として抗原に対する免疫反応を発症させた動物のいずれかから得ることができる。本発明で用いるための他の抗体産生細胞は、あらゆる形質転換した細胞、特に免疫グロブリン遺伝子又はその部分を発現するあらゆる哺乳動物の細胞を含むことができる。一実施形態では、哺乳動物の細胞はリコンビナントの抗体を発現する。特別な例では、本発明で用いるための抗体産生細胞の集団は、様々な結合特異性を有するある範囲の抗体を産生する。
【0009】
本発明のアッセイは、全て同じ抗体を産生する抗体産生細胞の集団から高収率の抗体産生細胞を同定するために用いることもできる。本明細書で用いる「高収率」は、特異性のわかっている抗体を産生するが、最も効率的に抗体を産生する細胞を同定することが望ましい抗体産生細胞を意味する。高収率の細胞を同定することにより、その細胞を単離し、クローン化して再生することが可能になる。一例では、高収率の抗体産生細胞は、ハイブリドーマ細胞である。別の一例では、高収率の抗体産生細胞は、形質転換された細胞、特に、免疫グロブリン遺伝子又はその部分を発現する哺乳動物の細胞である。このような哺乳動物の細胞の例には、それだけには限定されないが、NS0、CHO、COS、及び293細胞が含まれる。他の哺乳動物の細胞には、HeLa、C127、3T3、HEK293、BHK、及びBowesメラノーマ細胞が含まれる。最も好ましいのは、安定して形質移入された哺乳動物の細胞系である。或いは、リコンビナントの抗体を発現するために、他の宿主細胞を用いることができる。宿主細胞の代表例には、例えば、大腸菌(E.Coli)、連鎖球菌(Streptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)、放線菌(Streptomyces)、及び枯草菌(Bacillus subtilis)の細胞などの細菌の細胞、酵母菌、アスペルギルス(Aspergillus)細胞などの真菌の細胞、ショウジョウバエ(Drosophia)S2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9の細胞などの昆虫の細胞、並びに植物の細胞が含まれる。
【0010】
本明細書で用いる「抗原」は、タンパク質、糖タンパク質、及び炭水化物を含む、抗体が認識することができるあらゆる既知の又は未知の物質を意味する。好ましくは、これらの抗原には、ホルモン、サイトカイン、及びそれらの細胞表面の受容体、細菌の若しくは寄生性の細胞膜又はそれらの精製された構成成分、並びにウィルスの抗原などの、生物学的に活性なタンパク質が含まれる。一例では、抗原は、天然の供給源からの直接的な精製、又はリコンビナントの発現及び、当該抗原の精製のいずれかにより得られる純粋な形態で入手可能である。精製した抗原は、アッセイに組み込むために、赤血球、又はビーズなどのあらゆる他の粒子とカップリングさせることが好ましい。別の一例は、抗原は精製するのが難しいものであり、そのような抗原には、それだけには限定されないが、受容体、特にタイプIIIタンパク質などの細胞表面に発現されたタンパク質が含まれる。別の一例は、抗原上の望ましいエピトープの提示が、ビオチン化の際に変更されるものであり、これには、それだけには限定されないが、その活性部位領域にリシンを含むタンパク質が含まれる。別の一例は、抗原は細胞の表面上で、天然に又はリコンビナントのいずれかで、発現されることがあるものである。そのような細胞には、それだけには限定されないが、哺乳動物の細胞、免疫調節性の細胞、リンパ球、単球、多形体、T細胞、腫瘍細胞、酵母菌細胞、細菌の細胞、感染性物質、寄生体、植物細胞;NS0、CHO、COS、293細胞などの形質移入された細胞が含まれ得る。一例では、前記の細胞の表面上に発現される抗原は、上記の抗原など、精製することが困難な抗原、又はビオチン化で望ましいエピトープを喪失する抗原である。
【0011】
別の一例では、抗原は、哺乳動物の細胞、免疫調節性の細胞、リンパ球、単球、多形体、T細胞、腫瘍細胞、酵母菌、細菌の細胞、感染性物質、寄生体、及び植物細胞など、抗体を単離することが望ましい細胞又は細胞の集団である。一実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。
【0012】
本明細書で用いる「ホモジニアスなアッセイ」とは、アッセイの全構成成分を結合して、非結合の標識された抗−抗体抗体を除去する必要なしに抗体産生細胞を同定するアッセイを意味する。「標識された抗−抗体抗体」とは、これらの抗体の結合特異性とは関係なしに、抗体産生細胞が産生した抗体の任意の領域に結合する標識された抗体を意味する。好ましくは、前記抗−抗体抗体はある1つの種に由来し、抗体産生細胞は別の種に由来する。好ましくはこれらの抗体は、抗体産生細胞が産生した抗体のFc部分に結合する。
【0013】
標識された抗−抗体抗体は、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、そうでない細胞とを区別することができる。好適な標識は当技術分野ではよく知られており、それだけには限定されないが、化学発光、酵素及び蛍光の標識を含むことができる。標識が、蛍光標識であることが好ましい。抗−抗体抗体にコンジュゲートしている蛍光標識は、それだけには限定されないが、Aqua、Texas−Red、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、カスケードブルー、Cy5、及びフィコエリスリンを含むあらゆる蛍光標識であることができる。蛍光コンジュゲートがFITCであることが好ましい。したがって、本発明によるアッセイの1つの特定な例では、抗体産生細胞はウサギ由来であり、標識した抗−抗体抗体は蛍光標識したヤギ抗ウサギ抗Fc抗体である。
【0014】
本発明のアッセイでは、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞は、当該細胞を取り囲む標識した抗−抗体抗体の濃度の上昇を検出することにより、産生しない細胞と区別される。これは、標識した抗−抗体抗体、及びその結果この抗体により取り囲まれた抗体産生細胞を視覚化することにより実現されることが好ましい。一例では、これは顕微鏡を用いて実現される。標識を、水銀蒸気UVランプ及び用いられるコンジュゲートに適切なフィルターセットを有する倒立顕微鏡を用いて検出することが好ましい。フィルターセットは、フルオレセインフィルターセットであることが好ましい。したがって、標識が蛍光標識である一例では、選択した抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を、この細胞の周囲における蛍光の局所的な増大により同定する。
【0015】
本発明は、
a)抗体産生細胞の集団を準備するステップと、
b)前記抗体産生細胞の集団を、選択された抗原及び標識された抗−抗体抗体とインキュベートするステップであって、前記抗−抗体抗体は、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、産生しない細胞とを区別することができるステップと、
c)選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するステップと、
d)同定された抗体産生細胞を単離するステップと、任意選択で
e)それから抗体を合成するステップと
を含む、選択された抗原に結合する抗体を生産する方法も提供する。
【0016】
所望により、ステップ(d)及び(e)を1回より多く繰り返して、1つより多くの抗体産生細胞を単離し、1より多くの抗体を合成することができる。したがって、本発明は、上記の方法により同定される少なくとも1つの抗体産生細胞に、及び前記細胞から合成される少なくとも1つの抗体に拡張される。
【0017】
本明細書に記載するホモジニアスなアッセイを用いて同定される抗体産生細胞は、当技術分野ではよく知られている顕微操作技術を用いてアッセイから直接単離される。画像化及び単離は、別々に、又は一体型のシステムを用いて行うことができる。最も好ましくは、一体型のシステムにより、目的の抗体産生細胞を検出し、単離する。最も好ましい一実施形態では、一体型のシステムにより、目的の抗体産生細胞を検出し、単離し、この抗体産生細胞は高産生株である。高産生株は、同一の抗体で形質移入した他の抗体産生細胞に比べてより大量の抗体を発現する抗体産生細胞を含む。
【0018】
抗体は、単離された抗体産生細胞から、直接的又は間接的のいずれかで合成することができる。直接的な合成は、単離した抗体産生細胞を好適な培地で培養することにより実現することができる。間接的な合成は、抗体又はその部分をコードする遺伝子を単離し、当技術分野ではよく知られている方法を用いて宿主細胞でそれを発現することにより実現することができる。抗体遺伝子を含むベクターは、宿主細胞中に形質移入され、宿主細胞は、望ましい特異性を有する抗体又は抗体フラグメントが宿主細胞で産生されるように好適な培地で培養される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明で用いるための抗体産生細胞は、選択された抗原で免疫化された動物、又は疾患の結果として抗原に対する免疫反応を発症させた動物のいずれかを含む、あらゆる好適な供給源から得ることができる。
【0020】
動物は、免疫反応を生成するのに適する、当技術分野ではよく知られているあらゆる技術を用いて、選択された抗原で免疫化することができる(「実験免疫学のハンドブック」(Handbook of Experimental Immunology)、D.M.Weir(編集)、4巻、英国、Oxford、Blackwell Scientific Publishers、1986年を参照されたい)。抗体産生細胞を得るために、ヒト、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、又はブタなどの温血動物の多くを免疫化することができる。しかし、マウス、ウサギ、及びラットが一般的に好ましい。
【0021】
多数の抗体産生細胞が免疫化した動物の脾臓及びリンパ節で見出すことができ、免疫反応が生成され動物を屠殺した後直ちに、脾臓及びリンパ節を取り出す。当技術分野ではよく知られている技術を用いて、抗体産生細胞の単一細胞の懸濁液を調製する。抗体産生細胞は、疾患の経過中に細胞を生成した動物からも得ることができる。例えば、癌などの未知の原因の疾患を有するヒトからの抗体産生細胞を得ることができ、それを用いて、疾患の過程に影響を持ち、又は疾患の原因に関与する物質又は身体の構成成分の同定をもたらすことができる抗体の同定を助けることができる。同様に、抗体産生細胞は、マラリア又はAIDSなど、既知の原因の疾患を有する対象から得ることができる。これらの抗体産生細胞は、血液又はリンパ節に、及び、他の疾患又は正常の組織に由来することができる。
【0022】
抗体産生細胞は、in vitroでの免疫化などの培養技術によっても得ることができる。このような方法の例は、C.R.Reading、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、121巻、18〜33頁(J.J.Langone、H.H.van Vunakis(編集)、ニューヨーク、Academic Press Inc.)に記載されている。抗体産生細胞は、従来のハイブリドーマ技術により産生される大変初期のモノクローナル又はオリゴクローナルの融合培養物からも得ることができる。
【0023】
抗体産生細胞の集団は、他の細胞に対する抗体産生細胞の大きさ又は密度に基づいた方法により、アッセイで用いるために増やすことができる。Percollを使用して密度により細胞を分離する例は、van Mourik及びW.P.Zeizlmaker、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、121巻、174〜182頁(J.J.Langone、H.H.van Vunakis(編集)、ニューヨーク、Academic Press Inc.)が記載している。ウシ血清アルブミンの様々な密度の溶液のグラジエントを用いて、密度に応じて細胞を分離することもできる(N.Moav及びT.N.Harris、J.Immunol.、105巻、1512頁、1970年;Raid,D.J.、「細胞免疫学において選ばれた方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」、B.Misheli及びS.Shiigi(編集)、W.H.Freeman and Co.、San Francisco、1987年を参照されたい)。分離が、Ficoll−Hypaque(スウェーデン、Uppsula、Pharmacia)で遠心分離することにより実現することが好ましい。望ましい抗体産生細胞が最も増やされた分画は、望ましい結合特異性を有する抗体を含むことができる集団を選択するためのELISAベースのアッセイを用いて、予備的手順で決定することができる。或いは、又はさらに、望ましい抗体が最も増やされた分画は、機能上のアッセイにより決定することができる。
【0024】
アッセイでは、望ましい結合特異性を有する抗体を産生すると思われる抗体産生細胞の集団を好適な培地に懸濁してから、アッセイに組み入れる。アッセイに好適な培地は、少なくとも細胞の完全性及び細胞の構造を短期間維持するための最低限の要件を提供するもの、例えば等張のバッファーである。このような培地は、Roswell Park Memorial Institute培地(RPMI)+10%ウシ胎児血清、50μM 2−β−メルカプトエタノール、2mMグルタミン、20mM Hepes、並びに1xペニシリン及びストレプトマイシンを含む、免疫細胞培地であることが好ましい。
【0025】
このような条件下で、抗体産生細胞は抗体を産生し分泌する。抗体産生細胞は、培地内で、個々の又は少量の抗体産生細胞の選択が可能になる密度に希釈される。どの細胞がアッセイにより示される活性の原因であるかが明確ではない場合は、又は活性を確認するために、選択した細胞を、望ましい結合特異性を有する抗体を産生するその能力について再試験することができる。
【0026】
アッセイで用いるための抗原は、上記したように、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、及び、腫瘍細胞若しくは表面上に抗原を発現する形質移入された細胞などの細胞全体を含む、それに対して抗体を産生することができるあらゆる物質であることができる。一例では、抗原は既知であり、純粋な形態で入手可能であり、アッセイに組み入れるために赤血球、又はビーズなどの他の粒子の表面上にコーティングされている。抗原で粒子をコーティングするための幾つかの方法は、当業者であれば知っている。これらには、塩化第2クロム又は水溶性のカルボジイミドが含まれる。一実施形態では、ビオチン/ストレプトアビジンカップリング系を用いて、抗原を赤血球に結合させるが、その方法は、WO第92/02551号に詳しく記載されている。
【0027】
別の一例では、抗原は市販のビーズ(例えば、New England Biolabsから得られるようなもの)に結合している。抗原は幾つかの異なる方法を用いて、好ましくは活性化されたビーズに直接コンジュゲートすることにより、又はビオチンを介してストレプトアビジン結合ビーズにコンジュゲートすることができる。これらのビーズは、取り扱いを容易にするために、磁性であることが好ましい。
【0028】
別の一例では、特に抗原がビオチン化で望ましいエピトープを喪失する場合には、抗原は、抗原に結合するポリクローナル抗体により粒子の表面に結合している。抗原−ポリクローナル抗体−粒子のコンジュゲートを調製するために、ポリクローナル抗体を、ストレプトアビジン結合ビーズ対するビオチンを介するなど任意の適切な方法を用いて、ビーズなどの粒子の表面に最初にコンジュゲートさせる。ポリクローナル抗体−粒子コンジュゲートを、次いで過剰の抗原とインキュベートして、ポリクローナル抗体を抗原に結合させる。抗原−ポリクローナル抗体−粒子コンジュゲートを、次いで、例えば遠心分離により非結合の抗原から分離し、アッセイに組み入れる。コンジュゲートで用いるためのポリクローナル抗体は、任意の適切な種で、免疫原として望ましい抗原を用いて、当技術分野では周知のあらゆる適切な方法を用いて産生することができる。ポリクローナル抗体は、Fab’、F(ab’)、又はFabフラグメントなど、全IgG又はそのフラグメントであることができる。フラグメントは、当技術分野では周知のあらゆる方法を用いて、例えばペプシン又はパパイン消化により産生することができる。重要なのは、コンジュゲートで用いるポリクローナル抗体は、抗体産生細胞が産生した抗体を検出するためにアッセイで用いられる標識した抗−抗体抗体によって認識されないことである。例えば、抗体産生細胞がウサギ由来である場合は、標識した抗−抗体抗体は、抗ウサギ抗Fc抗体であることができ、コンジュゲートで用いるポリクローナル抗体は、ヤギなど、ウサギ以外の種に由来する抗体でなければならず、又は、この抗体がウサギ由来である場合は、それはFc領域を欠くフラグメント、例えばFab’、F(ab’)、又はFabフラグメントでなければならない。
【0029】
別の一例で、特に抗原を精製するのが困難である場合や、ビオチン化で望ましいエピトープを失う場合は、抗原は細胞の表面上で発現される。そのような細胞は、その表面に抗原を天然に発現する細胞であってもよく、又はその表面に抗原を発現する形質移入された細胞であってもよい。そのような細胞には、それだけには限定されないが、哺乳動物の細胞、免疫調節性の細胞、リンパ球、単球、多形体、T細胞、腫瘍細胞、酵母菌、細菌の細胞、感染性物質、寄生体、植物細胞;NS0、CHO、COS、293細胞などの形質移入された細胞が含まれ得る。NS0、CHO、COS、及び293細胞などの細胞の形質移入は、電気穿孔法及びヌクレオフェクションを含む、当技術分野では周知のあらゆる方法により実現することができる。
【0030】
さらなる一例では、抗原の供給源は、それに対する抗体を単離するのが望ましいあらゆる細胞である。そのような細胞には、それだけには限定されないが、哺乳動物の細胞、免疫調節性の細胞、リンパ球、単球、多形体(polymorphs)、T細胞、腫瘍細胞、酵母菌、細菌の細胞、感染性物質、寄生体、及び植物細胞が含まれ得る。
【0031】
抗体産生細胞及び抗原は、例えば下記の実施例で記載するように実験的に決定することができる好適な濃度でアッセイに組み込まれる。抗体産生細胞の密度は、それら細胞が良好に分離され望ましい特異性の抗体を産生する抗体産生細胞の同定及び単離を可能にするほど十分に低い。抗原は過剰に存在し、抗原は抗体産生細胞の10〜1000倍過剰であることが好ましい。
【0032】
選択された抗原に結合する抗体を同定するために、標識した抗−抗体抗体をアッセイに組み入れる。この抗体は、その結合特異性に関係なく、抗体産生細胞が産生した全ての抗体に結合する。そのような抗体は、当業者であれば容易に産生し、又は市販で容易に入手できる。抗−抗体抗体が抗−Fc抗体であることが好ましい。本発明の一実施形態では、抗体産生細胞はウサギ由来であり、標識した抗−Fc抗体はヤギ抗ウサギ抗Fc抗体である。
【0033】
抗−抗体抗体にコンジュゲートしている標識は、当技術分野で知られているあらゆる適切な方法によりアッセイで検出できるあらゆる標識である。多くの様々なコンジュゲート、例えば化学発光、酵素及び蛍光の標識が、抗体を標識するために入手可能である。このような抗体は、当業者であれば容易に生産し、市販で容易に入手できる。標識が顕微鏡により検出できるものであることが好ましい。一般に、本明細書に記載する本発明の様々な態様では、用いる標識が蛍光標識であることが好ましい。特定の蛍光標識は、顕微鏡により視覚化できるものであり、それだけには限定されないが、Aqua、Texas−Red、FITC、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、カスケードブルー、Cy5、及びフィコエリスリンを含むことができる。好ましい前記の標識は、蛍光コンジュゲートであるFITCである。
【0034】
標識した抗−抗体抗体は、アッセイでは、選択した抗原に結合する抗体を産生する細胞と、そうでない細胞とを区別することができる濃度で用いられる。最適の濃度は、標識した抗−抗体抗体の濃度を変化させることにより、当業者であれば実験的に決定することができる。一例では、標識した抗体は蛍光標識した抗体であり、蛍光が検出できないほど低くなく、高バックグラウンドの蛍光が存在するほど高くない濃度で用いられる。蛍光標識した抗−抗体抗体は、その結果、過剰なバックグラウンドの蛍光をもたらさずに抗体産生細胞が産生した抗体全てに結合するほどに過剰であることが好ましい。
【0035】
選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するために、抗体産生細胞の集団、抗原、及び標識した抗−抗体抗体を含むアッセイ混合物を、上記に記載した培地でインキュベートして結合を起こさせる。最適のインキュベート時間及び温度は、当業者が実験的に決定することができる。インキュベートは、スライドガラスなどのあらゆる適切な容器で、例えば約4℃と約37℃の間の適切な温度で、例えば約5分と約5時間の間のあらゆる適切な長さの時間行う。アッセイ混合物のインキュベートを、スライドガラス上で、37℃で、最高1時間行うことが好ましい。
【0036】
標識した抗−抗体抗体を、当技術分野では周知のあらゆる好適な方法を用いて検出する。標識した抗−抗体抗体を、顕微鏡を用いて検出することが好ましい。抗−抗体抗体が蛍光標識とコンジュゲートし、蛍光を、適切なフィルターセットを有する水銀蒸気UVランプを装着した倒立顕微鏡を用いて視覚化することがより好ましい。フィルターセットがフルオレセインフィルターセットであることが好ましい。
【0037】
選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞は、細胞の周囲の標識した抗−抗体抗体の濃度の上昇により同定される。抗原に結合しない抗体を産生するこれらの抗体産生細胞は、高濃度の標識した抗−抗体抗体によって取り囲まれることはない。高収率の抗体産生細胞は、抗−抗体抗体濃度の局在する増大が最も速やかに現れた細胞として同定される。
【0038】
次いで、抗体産生細胞を、微小ガラスピペット及びマイクロマニピュレーターなどの標準の顕微操作技術を用いて、アッセイから直接単離することができる。抗体産生細胞を単離するのに、コロニーピッカーを用いてもよい。抗体産生細胞を単離する一手段は、自動化された様式で行われるが、その際コロニーピッカーが用いられる。コロニーピッカーは当技術分野ではよく知られている。一実施形態では、ピッキングロボット及び一体型カメラシステム、例えばGloPixシステム又はClonePixシステム(英国、Genetix)などのコロニーピッカーが用いられる。最も好ましくは、ClonePix FL、又はAvisoからのAndromeda Cell Celectorが用いられる。
【0039】
ソフトウェアにより、蛍光の出力による細胞の選択が可能になっている。好ましい一例では、抗体の産生は、検出される蛍光に比例する。したがって、画像化の後に手動で、又は自動化された様式のいずれかで、例えば、カメラシステムを搭載したコロニーピッカー、又は上述のGloPix又はClone Pixシステムなどの市販のシステムを用いて、高発現株を選択し単離することができる。カメラ出力のコンピュータ分析を行うことができ、重要な抗体産生細胞の同等物、例えば高産生株を、後のピッキング用に保存してもよい。或いは、同等のデータを保存して、又は保存せずに、細胞をすぐにピッキングしてもよい。コンピュータが、画像システムの出力に操作可能に接続していることが好ましい。
【0040】
検出器であることができる画像システムは、それだけには限定されないが、デンシトメトリー、分光光度法、又は蛍光などの手段を用いることができる。蛍光を用いるのが好ましい。例えば、抗体産生細胞を、例えばFITCで蛍光標識した抗−Fc抗体を用いて検出する。
【0041】
したがって、
a)抗体産生細胞の集団を準備するステップと、
b)前記抗体産生細胞の集団を、選択された抗原及び標識された抗−抗体抗体とインキュベートするステップであって、前記抗−抗体抗体は、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、産生しない細胞とを区別することができるステップと、
c)画像システムを組み合わせて用いて、選択された抗原に結合する抗体を産生することができる抗体産生細胞を同定するステップと、
d)ピッキングロボットで前記細胞を単離するステップと
を含む、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するための、自動化されたホモジニアスなアッセイが提供される。
【0042】
好ましい一実施形態では、画像システム及びピッキングロボットは一体化している。別の一実施形態では、画像システム及びロボットは分かれているが、例えばケーブル、赤外線装置により、又はCD、DVD、若しくはフロッピー(登録商標)ディスクにより操作可能に接続している。一実施形態では、画像システムが目的とする抗体産生細胞の候補(coordinates)を捕らえ、次いで、目的とする細胞を単離するために画像化用容器(例えば、培養皿又はプレート)をコロニーピッカーに移動する。
【0043】
抗体は、単離した抗体産生細胞から直接的に又は間接的に合成することができる。直接的な合成は、単離した抗体産生細胞を好適な培地で培養することにより実現することができる。アッセイを用いて高収率の抗体産生細胞を同定する場合は、この高収率の細胞をクローニングにより複製する好適な条件下で細胞を培養する。
【0044】
間接的な合成は、抗体、又はその部分をコードする遺伝子を単離することにより、それを宿主細胞で発現させることにより実現することができる。全遺伝子をクローニングすることができ、或いは、抗体の望ましい特異性を付与する可変部又はその部分をクローニングし、リコンビナントの抗体を産生するために用いることができる。リコンビナントの抗体は、いくつかの様々な形態をとることができ、完全な免疫グロブリン、キメラの抗体、ヒト化抗体、及び、Fv、Fab、Fab’、及びF(ab’)フラグメントなどの抗原結合性フラグメント、並びに単鎖Fvフラグメントなど、それらのあらゆる誘導体を含む。これらの抗体分子を作り出すための方法は、当技術分野ではよく知られている(例えば、Boss、米国特許第4816397号;Shrader、WO第92/02551号;Wardら、1989年、Nature、341巻、544頁;Orlandiら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86巻、3833頁;Morrisonら、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81巻、6851頁;Riechmannら、1988年、Nature、322巻、323頁;Birdら、1988年、Science、242巻、423頁を参照されたい)。これらの抗体分子を産生するための入手可能な発現システムのタイプには、細菌の、酵母の、昆虫の、及び哺乳動物の発現システムが含まれ、そのための方法は、当技術分野ではよく知られている(Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、216巻、165〜181頁)。
【0045】
本発明により得られた抗体は、さらなる修飾なしに、又は、所望により、あらゆる適切な診断上又は治療上の目的で1つ又は複数のレポーター分子又はエフェクター分子とのコンジュゲートを含む再なる修飾をして用いてもよい。
【0046】
本発明の各実施形態の好ましい特徴は、必要な変更を加えた他の実施形態の各々に対するのと同様である。それだけには限定されないが本明細書に引用される特許及び特許出願を含む全ての出版物は、各々の個々の出版物が、完全に説明されているように本明細書に参照として援用されることが、具体的且つ個々に示されるように、本明細書に参照として援用される。
【0047】
本発明を、次に、以下の実施例を参照にして記載するが、以下の実施例は、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈してはならない。
【0048】
以下の実施例は、限定的なものとしてではなく、例示として提供される。以下の略語は、実施例で用いられるものである。
ICM−免疫細胞培地(RPMI+10%ウシ胎児血清、2−β−メルカプトエタノール50μM、グルタミン2mM、hepes20mM、並びに1xペニシリン及びストレプトマイシン)
RPMI−Roswell Park Memorial Institute培地
PBS−リン酸緩衝食塩水
【実施例】
【0049】
(実施例1)
抗原をコーティングしたヒツジ赤血球(SRBC)を用いた特異的な抗体産生性B細胞の同定
SRBCの抗原のコーティング
SRBC(TCS Biosciencesから入手)のコーティングは、ビオチン化抗原をビオチンでコーティングしたSRBCの表面に結合させるストレプトアビジンにより行った。抗原をコーティングしたSRBCは、使用日に調製し、免疫細胞培地中に5%(v/v)で貯蔵した。
【0050】
抗原特異的抗体分泌性B細胞の同定
アッセイ混合物をICMに置いた。アッセイ混合物は、ELISA陽性の集団からのB細胞を10〜1000個含むウサギB細胞10μl、抗原をコーティングしたSRBC(5%v/v)10μl、及びヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch)20μlを各実験に対して様々な濃度で(1:100、1:200、1:400、及び1:800)含んでいた。実験は、蛍光のバックグラウンドが過剰ではなく、抗体産生細胞の同定に必要とされるヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートの最適濃度を決定するように設定した。
【0051】
次いで、このアッセイ混合物を、Sigmacote(登録商標)で処理した「チャンバー」スライド上にスポットし(1スポットあたり2〜3μl)、ライトパラフィン油で満たした。スライドを、20〜30分間37℃でインキュベートし、水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いて試験した。抗原に特異的なIgG抗体を分泌するB細胞(形質細胞)を、前記細胞の周囲における蛍光の集中的増大により同定した。図1を参照されたい。この方法を用いると、ヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートの最適濃度は、1:400であることが見出された。混合物中の他のB細胞は、抗原特異的抗体を分泌せず、周囲の蛍光を示さなかった。表面上に抗原が存在しないSRBC対照では、B細胞に局在する蛍光は観察されなかった。
【0052】
次いで、蛍光の焦点中に存在するB細胞を、標準の顕微操作装置を用いて(Eppendorf Transferman and CellTram Vario)、Eppendorfチューブ中に回収し、その後抗体の重鎖及び軽鎖の可変部を、PCRにより単離した。
【0053】
(実施例2)
抗原をコーティングしたビーズを用いた特異的抗体産生B細胞の同定
全ての実験で、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ(New England Biolabs)1μMを使用した。
【0054】
ビーズ単一層の最適密度の決定
ビーズストックのアリコートを、マグネットを使用してPBSで3回洗浄して保存剤を除去し、同体積の免疫細胞培地(ICM)、(RPMI+10%ウシ胎児血清、50μM2−β−メルカプトエタノール、2mMグルタミン、20mM Hepes;及び1xペニシリン及びストレプトマイシン)に再懸濁した。
【0055】
ビーズの2倍の連続希釈液をICMで調製し、これを使用して、ビーズをSigmacoteで処理したスライド上にスポットし(1スポットあたり2〜3μl)、ライトパラフィン油を重層したときに平らな単一層を産生するビーズ密度の希釈度を決定した。洗浄したビーズの最終希釈度は、1/8が最適であると決定した。
【0056】
抗原のビーズ上への装填及び抗原特異的B細胞の同定
ストレプトアビジンでコーティングしたビーズの50μlアリコートを洗浄し、PBS 50μlに再懸濁した。各アリコートを、0.1μgから25μgまでの範囲の様々な量の貯蔵ビオチン化抗原(1mg/ml)でインキュベートした。これらを、時々手で振とうしながら、室温で1時間インキュベートした。次いで、ビーズを、マグネットを使用してPBSで洗浄し、ICM50μlに再懸濁した。
【0057】
次いで、抗原を装填したビーズ20μlを、ELISA陽性B細胞40μl、ICM60μl、及び1/400希釈のヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch)40μlと混合した。
【0058】
次いで、この混合液を、Sigmacoteで処理した「チャンバー」スライド上にスポットし(1スポットあたり2〜3μl)、ライトパラフィン油で満たした。スライドを、37℃で20〜30分間インキュベートし、水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いて試験した。
【0059】
抗原に特異的なIgG抗体を分泌するB細胞(形質細胞)を、B細胞の周囲における蛍光の集中的な増大により同定した。図2を参照されたい。この方法を用いて、ビーズストック50μlあたりビオチン化抗原1μgが、この特定の抗原のシグナル生成に最適であることが決定された。混合物中の他のB細胞は、抗原特異的抗体を分泌せず、周囲の蛍光を示さなかった。対照では、ビーズを別の無関係の抗原でコーティングした場合、B細胞の局在する蛍光は観察されなかった。
【0060】
蛍光の焦点中に存在するB細胞を、次いで、標準の顕微操作装置を用いて(Eppendorf Transferman and CellTram Vario)、Eppendorfチューブ中に回収し、その後1つの細胞からの抗体の重鎖及び軽鎖の可変部を、引き続きPCRにより単離した。リコンビナントのキメラのIgG(ヒト定常部)を、CHO細胞における一過性の発現により産生した。製造元の指示に従い(In Vitrogen、カタログ番号18324)リポフェクタミン法を用いて、CHO細胞の形質移入を行った。IgGの抗原への特異的な結合をELISAにより確認した(図3)。
【0061】
(実施例3)
COS−1細胞上の抗原の表面発現を用いた特異的な抗体産生B細胞の同定
COS−1細胞上の抗原の一過性の発現
選択された抗原を一過性に発現するCOS−1細胞を、免疫細胞培地に懸濁した。細胞密度を、1mlあたり2x10細胞に変更した。
【0062】
抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞の同定
アッセイ混合物をICMに置いた。アッセイ混合物は、ELISA陽性B細胞40μl、1:400希釈のヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch)40μl、及びCOS−1細胞懸濁液40μlを含んでいた。
【0063】
このアッセイ混合物を、次いで、Sigmacoteで処理した「チャンバー」スライド上にスポットし(1スポットあたり2〜3μl)、ライトパラフィン油で満たした。スライドを、40分間37℃でインキュベートし、水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いて試験した。
【0064】
抗原に特異的なIgG抗体を分泌するB細胞(形質細胞)を、B細胞の周囲における蛍光の焦中的な増大により同定した。図4を参照されたい。混合物中の他のB細胞は、抗原に特異的な抗体を分泌せず、周囲の蛍光を示さなかった。表面上に抗原の存在しないCOS−1細胞対照では、B細胞の局在する蛍光は観察されなかった。
【0065】
蛍光の焦点中に存在するB細胞を、標準の顕微操作装置を用いて(Eppendorf Transferman and CellTram Vario)、Eppendorfチューブ中に回収し、その後抗体の重鎖及び軽鎖の可変部を、PCRにより単離した。
【0066】
(実施例4)
チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(CHO)細胞上における抗原の表面発現を用いる、特異的抗体産生B細胞の同定
CHO細胞上の抗原の一過性発現
選択された抗原を一過性に発現するCHO細胞を、免疫細胞培地に懸濁した。細胞密度を、1mlあたり2x10細胞に変更した。
【0067】
抗原に特異的抗体を分泌するB細胞の同定
アッセイ混合物をICMに置いた。アッセイ混合物は、ELISA陽性B細胞40μl、1:400希釈のヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch)40μl、及びCHO細胞懸濁液40μlを含んでいた。
【0068】
このアッセイ混合物を、次いで、Sigmacoteで処理した「チャンバー」スライド上にスポットし(1スポットあたり2〜3μl)、ライトパラフィン油で満たした。スライドを、40分間37℃でインキュベートし、水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いて試験した。
【0069】
抗原に特異的なIgG抗体を分泌するB細胞(形質細胞)を、B細胞の周囲における蛍光の集中的な増大により同定した。図5を参照されたい。混合物中の他のB細胞は、抗原に特異的な抗体を分泌せず、周囲の蛍光を示さなかった。表面上に抗原の存在しないCHO細胞対照では、B細胞の局在する蛍光は観察されなかった。
【0070】
蛍光の焦点中に存在するB細胞を、次いで、標準の顕微操作装置を用いて(Eppendorf Transferman and CellTram Vario)、Eppendorfチューブ中に回収し、その後抗体の重鎖及び軽鎖の可変部を、PCRにより単離した。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ウサギB細胞、抗原でコーティングしたヒツジ赤血球、及びヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートを含むホモジニアスな蛍光アッセイを示す図である。水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いてアッセイを視覚化した。倍率x8。(a)アッセイの位相画像。(b)アッセイの蛍光画像。抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞の周囲に局在する蛍光。
【図2】ウサギB細胞、抗原でコーティングした磁気ビーズ、及びヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートを含むホモジニアスな蛍光アッセイを示す図である。水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いてアッセイを視覚化した。倍率x20。(a)アッセイの位相画像。(b)アッセイの蛍光画像。抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞の周囲に局在する蛍光。
【図3】CHO細胞で産生された抗体の特異的な抗原の結合のELISAによる検出を示す図である。
【図4】ウサギB細胞、その表面上に抗原を発現する形質移入されたCOS−1細胞、及びヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートを含むホモジニアスな蛍光アッセイを示す図である。水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いてアッセイを視覚化した。倍率x8。(a)アッセイの位相画像。(b)アッセイの蛍光画像。抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞の周囲に局在する蛍光。
【図5】ウサギB細胞、その表面上に抗原を発現する形質移入されたCHO細胞、及びヤギ抗−ウサギIgG Fc特異的FITCコンジュゲートを含むホモジニアスな蛍光アッセイを示す図である。水銀蒸気UVランプ及びフルオレセインフィルターセットを装着した倒立顕微鏡を用いてアッセイを視覚化した。倍率x8。(a)アッセイの位相画像。(b)アッセイの蛍光画像。抗原に特異的な抗体を分泌するB細胞の周囲に局在する蛍光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)抗体産生細胞の集団を準備するステップと、
b)前記抗体産生細胞の集団を、選択された抗原及び標識された抗−抗体抗体とインキュベートするステップであって、前記抗−抗体抗体は、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、産生しない細胞とを区別することができるステップと、
c)画像システムを組み合わせて用いて、選択された抗原に結合する抗体を産生することができる抗体産生細胞を同定するステップと、
d)ピッキングロボットで前記細胞を単離するステップと
を含む、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するための、自動化されたホモジニアスなアッセイ。
【請求項2】
前記抗原が赤血球にカップリングされている、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記抗原がビーズにカップリングされている、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記抗原がポリクローナル抗体を介してビーズにカップリングされている、請求項3に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記ポリクローナル抗体が抗体フラグメントである、請求項4に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記ポリクローナル抗体が抗体Fab、Fab’、又はF(ab’)フラグメントである、請求項5に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記抗原が細胞の表面で発現される、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記細胞が形質移入された細胞である、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項10】
前記抗原が感染性物質である、請求項1から9までに記載のアッセイ。
【請求項11】
前記標識された抗−抗体抗体が抗−Fc抗体である、請求項1から10までに記載のアッセイ。
【請求項12】
前記標識された抗−抗体抗体が蛍光コンジュゲートで標識されている、請求項1から11までに記載のアッセイ。
【請求項13】
前記蛍光標識された抗−抗体抗体がFITCで標識されている、請求項12に記載のアッセイ。
【請求項14】
前記FITCで標識した抗−抗体抗体が抗−Fc抗体である、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項15】
前記抗体産生細胞が、B細胞、形質細胞、形質芽細胞、活性化B細胞、又は記憶B細胞である、請求項1から14までに記載のアッセイ。
【請求項16】
前記抗体産生細胞が、抗体を発現するように操作されている、ハイブリドーマ細胞又は哺乳動物の細胞である、請求項1から15までに記載のアッセイ。
【請求項17】
請求項1から16までに記載のアッセイにより同定される、抗体産生細胞。
【請求項18】
a)抗体産生細胞の集団を準備するステップと、
b)前記抗体産生細胞の集団を、選択された抗原及び標識された抗−抗体抗体とインキュベートするステップであって、前記抗−抗体抗体は、選択された抗原に結合する抗体を産生する細胞と、産生しない細胞とを区別することができるステップと、
c)選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するステップと、
d)同定した前記抗体産生細胞をピッキングロボットで単離するステップと、任意選択で
e)それから抗体又は抗体フラグメントを合成するステップと
を含む、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体を産生するための方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法により単離された抗体産生細胞。
【請求項20】
請求項18に記載の方法により得られた抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−501973(P2008−501973A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526553(P2007−526553)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002305
【国際公開番号】WO2005/121789
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】