説明

抗体遺伝子導入および抗体ポリペプチド産生のためのRNAトランススプライシングの使用

本発明は、高発現されるプレmRNAを標的としかつ抗体ポリペプチドのコード配列を含むRNAトランススプライシングを介して、新規の核酸分子を作製する方法および組成物を提供する。本発明の組成物は、豊富に発現されるか、腫瘍特異的である標的前駆体メッセンジャーRNA分子(標的プレmRNA)と相互作用しかつトランススプライシング反応に介在して、抗体ポリペプチドをコードすることができる新規のキメラRNA分子(キメラRNA)の作製をもたらすように設計された、プレトランススプライシング分子(PTM)を含んでなる。本発明は、例えば、感染性病原体、癌細胞、移植抗原、関節リウマチなどの治療に有効な薬剤である、抗体ポリペプチドをコードしかつその産生をもたらすキメラRNA分子のin vivo産生を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願
本出願は、米国仮特許出願第60/617,012号(2004年10月8日出願)および米国仮特許出願第60/629,821号(2004年11月9日出願)の優先権を主張し、これらの開示は本明細書に参照によりその全てが援用される。
【0002】

本発明は、豊富に発現され、および/または腫瘍特異的もしくは腫瘍に関連するプレmRNAを標的とし、かつ抗体ポリペプチドのコード配列を含有する新規の核酸分子を、RNAのトランススプライシング(trans-splicing)を介して作製する方法および組成物を提供する。本発明の組成物が含有するプレトランススプライシング分子(PTM)は、豊富に発現される標的前駆体メッセンジャーRNA分子(標的プレmRNA)と相互作用しかつトランススプライシング反応に介在し、抗体ポリペプチドをコードすることができる新規のキメラ分子(キメラRNA)の作製をもたらすように設計されている。本発明の目的は、抗体ポリペプチドをコードし、かつ産生するキメラRNA分子を生理学的および/または臨床的に有効なレベルでin vivo 産生する方法を開発することである。この抗体ポリペプチドは、例えば、感染病原体、癌細胞、移植抗原、関節リウマチなどに対して有効である。本発明の方法および組成物を用いて、様々な異なる免疫原/抗原に対する免疫を与えることができる。そのような免疫原/抗原としては、限定はされないが、ウイルスなどの感染病原体(例えば、HIV)、 細菌、菌類または寄生体などにコードされる免疫原/抗原が挙げられる。標的プレmRNAは、豊富にある転写物であり、例えば、アルブミンまたはカゼインなどをコードする転写物であり得る。標的プレmRNAはまた、腫瘍特異的および/または腫瘍関連転写物であり得る。さらに、PTMにコードされる抗体は、腫瘍特異的および/もしくは腫瘍関連 抗原または自己免疫疾患に発現される抗原を標的としうる。
【0003】
また、本発明を用いて、例えば細胞培養中にて豊富に発現されるプレmRNAを標的とすることによってin vitroにて生理学的および/または臨床的に有効量の抗体ポリペプチドまたはポリペプチドを製造することができる。
【0004】
本発明の組成物はさらに、本発明のPTMを発現することができる組換えベクターシステムおよび上記PTMを発現する細胞を含む。本発明の方法は、PTMの一部分が、豊富に発現されるプレmRNAの一部分にトランススプライスされて抗体ポリペプチドを発現しうるキメラRNA分子を生成する条件のもとで、本発明のPTMを、豊富に発現されたプレmRNAと接触させるステップを包含する。本発明の方法および組成物を用いて、特異的な分子、受容体および/または細胞型を標的とすることができる。
【背景技術】
【0005】
RNAスプライシング
染色体中のDNA配列は、コード領域(エキソン)を含みかつ一般に介在非コード領域(イントロン)も含むプレmRNA中に転写される。イントロンは、シススプライシングと呼ばれる正確なプロセスでプレmRNAから除かれる(Chowら, 1977, Cell 12:1-8;およびBerget, S.M.ら, 1977, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:3171-3175)。スプライシングはいくつかの小核のリボ核タンパク質粒子(snRNP)と多数のタンパク質因子との配位相互作用として起こり、その場合、これらは集合してスプライセオソームとして知られる酵素複合体を生成する(Mooreら, 1993, in 「The RNA World」, R.F. GestlandおよびJ.F. Atkins編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.);Kramer, 1996, Annu. Rev. Biochem., 65:367-404;StaleyおよびGuthrie, 1998, Cell 92:315-326)。
【0006】
ほとんどの場合、スプライシング反応は同じプレmRNA分子内で起こり、これはシススプライシングと呼ばれる。2つの独立した転写されたプレmRNA間のスプライシングはトランススプライシングと呼ばれる(図1参照)。トランススプライシングはトリパノソーマ属で最初に発見され(SuttonおよびBoothroyd, 1986, Cell 47:527;Murphyら, 1986, Cell 47:517)、次に線形動物(KrauseおよびHirsh, 1987, Cell 49:753)、扁形動物(Rajkovicら, 1990, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 87:8879;Davisら, 1995, J. Biol. Chem. 270:21813)および植物ミトコンドリア(Malekら, 1997, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 94:553)で発見された。寄生虫(Trypanosoma brucei)では、全てのmRNAがトランススプライシングによりそれらの5'末端にスプライスリーダー(SL)RNAを獲得する。5'リーダー配列はまた、線虫(Caenorhabditis elegans)のいくつかの遺伝子へもトランススプライスされる。この機構は単一共通配列を多くの異なる転写物へ付加するのに適している。
【0007】
スプライスリーダー・トランススプライシングの機構は、従来のシススプライシングの機構とほぼ同じであって、2つのリン酸基転移反応を介して進行する。最初の反応で、2'-5'ホスホジエステル結合が形成して「Y」型の分岐中間体を生じ、これはシススプライシングにおける投縄型中間体と同じである。第2の反応であるエキソン連結反応は通常のシススプライシングの場合のように進行する。さらに、トランススプライシング反応を触媒する3'スプライス部位の配列とsnRNPのいくつかはシススプライシングに関与するそれらの対応物と非常によく似ている。
【0008】
トランススプライシングはまた、1つのプレmRNAのイントロンが第2のプレmRNAのイントロンと相互作用して、2つの通常のプレmRNAの間のスプライス部位の組換えを促進するという異なるプロセスも意味する。このタイプのトランススプライシングは、トランスジェニックマウスにおける、内因性定常領域と連結したヒト免疫グロブリン可変領域配列をコードする転写物を説明するために仮定された(Shimizuら, 1989, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 86:8020)。さらに、c-mybプレRNAのトランススプライシングが実証されており(Vellard, M.ら, Proc. Nat'l. Acad. Sci., 1992 89:2511-2515)、そしてさらに最近、お互いにトランススプライスされたクローンSV40からのRNA転写物が培養細胞および核抽出物中に検出された(Eulら, 1995, EMBO. J. 14:3226)。しかし、哺乳動物プレmRNAの天然トランススプライシングは稀な事象であると考えられる(Flouriot G.ら, 2002 J. Biol. Chem;Finta, C.ら, 2002 J. Biol Chem 277:5882-5890)。
【0009】
In vitroトランススプライシングがスプライシングの機構を試験するためのモデル系としていくつかのグループにより利用されてきた(Konarska & Sharp, 1985, Cell 46:165-171;Solnick, 1985, Cell 42:157;ChiaraおよびReed, 1995, Nature 375:510;PasmanおよびGarcia-Blanco, 1996, Nucleic Acids Res. 24:1638)。お互いに塩基対合し得るRNA間では適当に効率的なトランススプライシング(類似したシススプライシングの30%)が達成されるものの、塩基対合により係留されていないRNAのスプライシングは10のファクターだけさらに減少した。他のin vitroトランス−スプライシング反応として、基質間の明らかなRNA-RNA相互作用を必要としないものがChiara & Reed(1995, Nature 375:510), Bruzik J.P. & Maniatis, T.(1992, Nature 360:692)ならびにBruzik J.P.およびManiatis, T.,(1995, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 92:7056-7059)により観察された。これらの反応は比較的低い頻度で起こり、特殊なエレメント、例えば下流5'スプライシング部位またはエキソンのスプライシングエンハンサーを必要とする。
【0010】
複数のタンパク質が前駆体mRNAと結合して次いでRNAを正しく切断しかつ接合することに関わるスプライシング機構に加えて、第3の機構はイントロン自体によるRNAの切断および連結に関わり、それ故に触媒RNA分子またはリボザイムと呼ばれる。個々の「ハイブリダイゼーション」領域をリボザイム中に遺伝子操作で作ることにより、特定のRNA分子に対するリボザイムの切断活性が標的化される。標的RNAとハイブリダイズすると、リボザイムの触媒領域は標的を切断する。かかるリボザイム活性は、外来の異常なRNAの産生により特徴づけられるヒト疾患の治療のためなどに、標的RNAをin vivo不活性化または切断するのに有用でありうることが示唆されている。かかる場合には、小RNA分子を標的RNAとハイブリダイズするように設計して、標的RNAとの結合により標的RNAの翻訳を阻害させるかまたはヌクレアーゼの活性化を介してRNAの破壊を起こさせる。アンチセンスRNAの使用も、特定のRNAを標的化しかつ破壊する代替的な機構として提案されている。
【0011】
テトラヒメナ(Tetrahymena)のグループIリボザイムを用いて、標的化トランススプライシングが大腸菌(E. coli)(Sullenger B.A.およびCech. T.R., 1994, Nature 341:619-622)、マウス繊維芽細胞(Jones, J.T.ら, 1996, Nature Medicine 2:643-648)、ヒト繊維芽細胞(Phylacton, L.A.ら Nature Genetics 18:378-381)およびヒト赤血球前駆体(Lanら, 1998, Science 280:1593-1596)において実証された。RNAを改変する臨床関連技法の総括については、SullengerおよびGilboa, 2002 Nature 418:252-8を参照されたい。本発明は、標的とするmRNAのコード配列を再プログラムまたは改変するための、自然の哺乳動物スプライシング機構、すなわち、スプライセオソームが介在する標的化トランス−スプライシングに関する。
【0012】
米国特許第6,083,702号、第6,013,487号および第6,280,978号は、標的前駆体mRNAと接触させることによりトランス−スプライシング反応に介在して新規のキメラRNAを作製するための、PTMの一般的な使用を記載している。
【0013】
抗体
治療用抗体は、疾患標的に対して高特異的であるように設計された、遺伝子操作された抗体である(BrekkeおよびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62)。病原体の感染または疾患標的(例えば、細菌、ウイルスもしくは腫瘍細胞標的)の除去、弱毒化、または予防するための治療形態である。
治療用抗体の使用は、典型的な抗体または免疫グロブリンの構造に基づく。抗体は、定常(Fc)領域と抗原に結合する二つの可変(Fab)領域を含む。かかる可変(Fab)領域は、二対のポリペプチド鎖(重鎖および軽鎖)で形成される。重鎖および軽鎖ポリペプチドのN末端は、抗原に結合する、抗体の可変部分を形成する。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原結合領域(Fv)の形成に関連する。可変領域は、問題の特異的抗原に対する結合に関与し、そして定常領域は、生物学的エフェクター反応(例えば、補体結合など)に関与する。定常領域は抗原結合に必要ではないが、抗体分子から分離して、生物学的に活性な (すなわち、結合性)可変領域を生じ得る。一本鎖抗体は、個々の可変領域を、単一ポリペプチド鎖に組み込むことによって作製することができる。結果として、一本鎖抗体は、対応する断片と同様の結合特異性および親和性を有する。
【0014】
FabおよびFv部分は、潜在的な治療標的に結合するが、Fc部分は、免疫系の潜在的なエフェクター分子(例えば、補体系および細胞上のFc受容体)に結合し得る。抗体は、様々な病原体および疾患抗原を認識できる高特異的分子であるため、疾患(例えば、癌、自己免疫疾患および感染)と戦う強力な物質として開発されている。
【0015】
3つの作用機構に基づく治療用抗体の機能:特定分子の作用をブロッキングすること、特定の細胞を標的とすること、およびシグナル伝達分子として機能すること(BrekkeおよびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62)。抗体は、可溶性因子(例えば、サイトカイン)を標的とするように設計でき、それらが細胞標的に到達すること、可溶性因子の効果をブロッキングしたりすることができる (Brekke およびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62)。抗体はまた、特定の細胞型の受容体を標的とするように、また様々なエフェクター部分(例えば、毒素)を特定の細胞集団に送達し、特定の細胞傷害効果を生じるように設計することができる (BrekkeおよびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62)。最後に、可変部分は、シグナル伝達物質(例えば、細胞集団または架橋性細胞表面受容体の活性化におけるアゴニスト)として作用するように設計できる (BrekkeおよびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62).
血清療法は、様々な感染疾患(例えば、炭疽病、天然痘、髄膜炎および疫病を治療するために用いられている)。特異的抗体によって、細菌毒素に対して防御することができるということは、1890年代より公知である。細菌標的および毒素に対する特異的抗体が受動免疫 により作用し、被験体に防御を付与する。受動免疫は、疾患に対する抗体が、生来的に (胎盤を介して胎児に与えられる)または人工的に(抗血清の投与によって)獲得される免疫系である。受動免疫は、抗微生物剤(例えば、抗生物質)を投与するよりも有利である。それは、受動免疫は、毒性が低く、または標的に対して高特異的活性であるためである(BrekkeおよびSandlie. Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty first century. 2003, Nature Reviews Drug Discovery 2:52-62)。治療用抗体は、血清として投与、またはin vivoにて発現させることができる。
【0016】
治療用抗体遺伝子導入の分野の最近の総説では、当該分野の前臨床結果は有望なものであるが、全体的な抗体の血清レベルは最高であっても、動物モデルにおいて低い治療効果であったことが示されている(Bakker, J.M., Bleeker, W.K.およびParren, P.W.H.I. Therapeutic antibody gene transfer: an active approach to passive immunity. 2004, Molecular Therapy 10: 411-416)。著者らによって示された主な関心事は、治療上有効な血漿レベルを生じさせる能力である。別の関心事は、ウイルスベクターが長期にわたる副作用を有するか否かということである。それは、ウイルスベクターが送達された際に、遺伝子発現を制御することができないためである。血漿中の抗体の濃度は、異なる用途によって様々であるが、3〜30 μg/mlを超える濃度が一般的に必要とされる。呼吸器合胞体ウイルスに対して幼児を防御するためには、40 μg/mlの濃度を要すると報告されている (Zaaijer, H.L.ら、 Ther. Drug Monitor. 24: 444-445, 2002)。
【0017】
1 μg/ml の血漿レベルは、マウス1日あたり約25 μg/kg の免疫グロブリン産生に相当すると推測される (Bakker, J.M., Bleeker, W.K.およびParren, P.W.H.I. Therapeutic antibody gene transfer: an active approach to passive immunity. 2004, Molecular Therapy 10: 411-416)。マウス(4日間)と比較してヒト(21日間)では半減期が長いため、ヒトにおける免疫グロブリンの血漿レベルは高いと予想される。
【0018】
当該分野では未だに、in vivo(被験体)において抗原性ペプチドを含むPTMおよびタンパク質を有効な血清濃度で産生するための方法の開発が要求されている。かかる有効な血清濃度とは、障害および疾患(例えば、感染、癌、関節リウマチなど)の治療において、PTMを安全に、効率的に、かつ効果的に使用することができる濃度である。本発明は、一本鎖抗体をコードする遺伝子配列を導入し、それらをスプライシングしてプレmRNA標的を豊富に発現させることによって、上記要求に応える。遺伝子(例えば、アルブミン、カゼインまたは腫瘍特異的タンパク質)の豊富な発現により、特定の標的(例えば、感染性微生物、癌細胞または自己抗原を発現する細胞)に対して有効である免疫グロブリン分子のレベルを生じる。特に、アルブミン mRNAの効力を例示すると、アルブミンは、ヒトでは血清タンパク質の54%を占め、かつ33〜50mg/mlの濃度を有する(AndersonおよびAnderson. Molec. Cell Proteomics 2002 1:845)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明は、標的化トランス−スプライシングによって、新規な治療および予防的核酸分子を作製するための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、標的プレmRNA分子(以後、「プレmRNA」と称する)と相互作用するように設計されたプレ-トランス−スプライシング分子(以後、「PTM」と称する)を含み、抗体ポリペプチドをコードする配列を含む新規キメラRNA分子を生じるトランス−スプライシング反応を媒介する。本発明方法は、本発明のPTMと標的プレmRNAを、PTMの一部分が標的プレmRNAにトランス−スプライスされ、抗体ポリペプチドをコードする配列を含むキメラmRNAを形成する条件下にて接触させることを含む。本発明のPTMは一般的に、トランス−スプライシング反応により得られた抗体ポリペプチドをコードする配列を含むキメラmRNAが、翻訳され、抗体ポリペプチドを産生するように操作されている。標的プレmRNAは、豊富に発現された転写物(例えば、アルブミンまたは腫瘍関連もしくは腫瘍特異的抗原)であり得る。本明細書中に引用される全ての参考文献の開示内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、スプライセオソームが介在するRNAトランススプライシング用に設計されたプレ-トランススプライシング分子(PTM)を含んでなる新規の組成物、および抗体ポリペプチドをコードする配列を含む新規のキメラRNA分子を作製するための、上記分子の使用に関する。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗体ポリペプチドおよび組換えタンパク質をコードし、かつそれらを産生するキメラRNA分子のin vivo産生に用いることができる。これら抗体ポリペプチドおよび組換えタンパク質は、例えば、感染病原体、癌細胞、移植抗原などに対して有効である。さらなる実施形態においては、本発明を用いて、例えば、細胞培養でキメラRNAを生産しかつ翻訳することにより、in vitroで抗体ポリペプチドを生産することができる。
【0022】
スプライセオソームが介在するトランススプライシングに使用する本発明のPTMは、(i)標的プレmRNAと特異的に結合するように設計された1以上の標的結合ドメイン、(ii)3'スプライスアクセプター部位および/または5'スプライスドナー部位を含む3'スプライス領域;および(iii)抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。PTMはさらにブランチポイント、ピリミジントラクトおよびスプライス部位と標的結合ドメインを分離する1以上のスペーサー領域を含んでもよい(図2参照)。
【0023】
本発明の方法は、本発明のPTMを、PTMの一部分が、豊富に発現された、または腫瘍特異的もしくは腫瘍に関連するプレmRNAの一部分へトランススプライシングされて抗体ポリペプチドをコードする配列を含む新規キメラRNA分子を生成する条件下で、豊富に発現されるプレmRNA標的または腫瘍特異的もしくは腫瘍に関連するプレmRNA標的と接触させるステップを包含する(図3、4a、4bを参照)。
【0024】
豊富に発現されるプレmRNAとしては、アルブミンをコードするRNAを一次標的として選択することができる、その理由はこれが豊富に発現されるプレmRNAであるからである。しかしまた、豊富に発現される他の転写物、例えば、限定されるものでないが、ヒトおよび他の動物の乳に豊富に発現される乳房組織中のカゼイン転写物を選択してもよい。豊富に発現される転写物の他の例としては、ミオシンおよびフィブロインをコードする転写物が挙げられる。
【0025】
アルブミンプレmRNAを選んでもよく、その理由は、アルブミンの血清濃度が十分に高い、すなわち45〜50mg/mlの範囲にあるからである(例えば、図6を参照)。例えば、抗体配列をアルブミンプレmRNAへトランススプライシングすると、血液中に発現される抗体ポリペプチド分子が高濃度になりうる。アルブミンプレmRNA標的の中程度の5%変換であってもなお、血液中で有意に高い抗体濃度、すなわち、生理学的または治療的濃度の産生をもたらしうる。
【0026】
本発明のPTMをコードする核酸分子は、主要な標的細胞(すなわち、肝細胞;アルブミン産生の主要な部位)に送達され、その後核酸分子が発現され、トランス−スプライシング反応を媒介することができるPTMを形成する。標的細胞は、豊富に発現された標的によって様々である(例えば、筋細胞とミオシン転写物)。
【0027】
本発明の別の実施形態において、腫瘍特異的または腫瘍関連のコード転写物を、標的として選択する。特異的にまたは優先的に癌細胞と関連する抗原は、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)とみなす。このような抗原としては、特定のタイプの癌と関連している糖タンパク質、リポタンパク質および他の型の高分子(例えば、ヒトメラノーマ関連抗原、ヒト神経芽腫抗原、ヒト乳癌関連抗原、ヒト卵巣癌関連抗原、ヒト肉腫関連抗原、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン抗原または悪性腫瘍に関連する他の抗原)が挙げられる(Rosenberg, Serologic Analysis of Human Cancer Antigens, Academic Press, New York, 1980.)。
【0028】
特に、TAAは、腫瘍特異的抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプ(非ホジキンリンパ腫関連)、TCR (T細胞非ホジキンリンパ腫関連)、p21/ras変異体(膵臓癌、 結腸癌および肺癌関連)、p53変異体(結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌および頭頸部癌関連)、 p210/ber−abl融合産物(慢性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病関連)であり得る。さらに、TAAは、発症時の抗原、例えば、MART 1/melan A (メラノーマ関連)、MAGE−1およびMAGE−3 (メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌および胃癌関連)、GAGEファミリー(メラノーマおよびテロメラーゼ関連(多くの癌に関連する))であり得る。また、TAAは、ウイルス抗原、例えば、ヒトパピローマウイルス(子宮頸癌および陰茎癌関連)およびEpstein Barウイルス(バーキットリンパ腫、上咽頭癌および移植後移植後リンパ増殖性疾患関連)に見出されるものであり得る。さらに、TAAは、組織特異的自己抗原、例えば、チロシナーゼ(メラノーマ関連)、gp100 (メラノーマ関連)、前立腺酸性フォスファターゼ(前立腺癌関連)、前立腺特異的抗原(前立腺癌関連)、前立腺特異的膜抗原(前立腺癌関連)、サイログロブリン(甲状腺癌関連)およびα−フェトプロテイン(肝臓癌関連)であり得る。そしてさらに、TAAは、過剰発現した自己抗原、例えば、Her−2/neu (乳癌および肺癌関連)、癌胎児性抗原(結腸直腸癌、肺癌および乳癌関連)、Muc−1(結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌および 肺癌関連)ならびにテロメラーゼ(多数の腫瘍に関連する、Nairら、2000, Nature Med. 6 :1011−1017を参照)であり得る。TAAの他の例としては、サイクリン依存性キナーゼ 4 (メラノーマ細胞)、β-カテニン(メラノーマ細胞)およびカスパーゼ-8 (扁平上皮癌細胞)が挙げられる。潜在的なTAAの非限定的なリストについては、例えば、Fong & Engleman, 2000, “Dendritic cells in canncer immunotherapy,” Annu. Rev. Immunol. 18:245 273を参照。
【0029】
本発明の別の実施形態において、PTMは、ウイルスまたは酵母プレmRNA標的を含む、ウイルスまたは酵母感染細胞と接触させる。例えば、本発明のPTMを用いて標的とされるウイルスプレmRNAとしては、限定はされないが、アデノウイルス、アストロウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ミオウイルス、ノーウォークウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、パポバウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびラブドウイルスが挙げられる。
【0030】
PTMにコードされる抗体は、標的プレmRNA産物、すなわち、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に対して特異的であり得る。特に、トランス−スプライシングの結果として産生される抗体は、同一または別の細胞においてPTMによって標的化された転写物にコードされるタンパク質に対して特異的である。
【0031】
あるいは、PTMによってコードされる抗体は、同一または別の腫瘍細胞において別のプレmRNAによって産生された別のタンパク質に対して特異的であり得る。特に、PTMは、ある腫瘍特異的または腫瘍関連転写物を標的とするが、PTMによってコードされる一本鎖抗体は、別の腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に対して特異的である。両実施形態における目的は、特異的エピトープに対する抗体の結合によって、細胞を殺すことである。
【0032】
一本鎖抗体産生のための本発明のトランス−スプライシングの使用に加えて、ビシストロン性PTMもまた、本発明に従って使用することができる。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)に由来する2A自己切断型オリゴペプチド(Fangら、 Nature Biotechnol 23: 584, 2005)または内部リボゾーム侵入部位(IRES) (Martienz-Salas E, Curr Opin Biotechnol, 10:458, 1999)のいずれかから成るビシストロン性PTMを用いて、全軽鎖および全重鎖を同時に発現させることができる。図6に示したように、ビシストロン性PTMは、モノシストロン性PTMと類似するが、2A FMDV自己切断型オリゴペプチドまたは脳心筋炎(EMCV) IRES のいずれかを含み、重鎖の高レベルの発現を誘導するものは除く。
【0033】
プレ-トランススプライシング分子の構造
本発明は、標的化トランススプライシングを介して新規キメラ核酸分子を作製するのに使用する組成物を提供する。本発明のPTMは、(i)PTMの豊富に発現されたプレmRNA標的との結合を標的化する1以上の標的結合ドメイン、(ii)3'スプライスアクセプター部位および/または5'スプライスドナー部位を含む3'スプライス領域;ならびに(iii)抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。抗体ポリペプチドは、単鎖構造を有してもよいし、或いは変異体(例えば、細胞内抗体(intrabody)もしくは触媒抗体(abzyme)、または抗体にさらなる機能を与える配列)であっても良い。あるいは、抗体ポリペプチドは、F(ab)、H鎖および/またはL鎖であってもよい。
【0034】
本発明のPTMはまた、次の特徴の少なくとも1つを含んでもよい:(a)標的イントロンの3'または5'スプライスシグナルに密接したイントロン配列を標的化する結合ドメイン、(b)ミニイントロン、ならびに(c)ISAR(イントロンスプライシングアクチベーターおよびリプレッサー)コンセンサス結合部位。本発明のPTMはさらにRNAスプライス部位を標的結合ドメインから分離する1以上のスペーサー領域を含んでもよい。
【0035】
PTMの一般設計、構築および遺伝子工学、ならびにスプライセオソームが介在する細胞内トランススプライシング反応を首尾よく媒介するPTMの能力の実証は、米国特許第6,083,702号、第6,013,487号および第6,280,978号、ならびに米国特許出願第09/756,095号、第09/756,096号、第09/756,097号、第09/838,858号、第10/076,248号および第09/941,492号に詳しく記載されていて、それらの開示は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0036】
PTMの標的結合ドメインは、PTMに標的プレmRNA(例えば、アルブミン、カゼインまたは他の標的プレmRNA)との結合アフィニティを付与する。本明細書に使用される標的結合ドメインは、結合の特異性を付与してアルブミンプレmRNAをPTMの直ぐ近くの場所に固着させるいずれかの分子、すなわち、ヌクレオチド、タンパク質、化合物などとして定義され、それによって、核のスプライセオソームプロセシング機構はPTMの一部分を標的mRNAの一部分にトランススプライシングできるようになる。
【0037】
PTMの標的結合ドメインは、標的プレmRNAの標的化領域と相補的かつアンチセンス方向である複数の結合ドメインを含有しうる。その標的結合ドメインは数千個までのヌクレオチドを含みうる。本発明の好ましい実施形態においては、その結合ドメインは少なくとも10〜30個、数百個またはそれ以上のヌクレオチドを含みうる。PTMの特異性は、標的結合ドメインの長さを増加することにより有意に増加させることができる。例えば、標的結合ドメインは数百個以上のヌクレオチドを含みうる。絶対的な相補性は好ましいが、必要でない。本明細書で使用される、RNAの一部分との配列「相補性」は、標的プレmRNAとハイブリダイズして安定な二重鎖を形成しうるのに十分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度と核酸の長さの両方に依存しうる(例えば、Sambrookら, 1989, 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。一般に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、それが含有するRNAとの塩基ミスマッチは多いが、それでも安定な二重鎖を形成しうる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の安定性を決定する標準手順を用いることにより、二重鎖の許容されるミスマッチの程度または長さを確認することができる。
【0038】
結合はまた、他の機構、例えば、三重らせん形成、アプタマー相互作用、抗体相互作用またはタンパク質/核酸相互作用(その場合、PTMは、特定のRNA結合タンパク質、すなわち、特定の標的プレmRNAと結合したタンパク質を認識するように遺伝子操作で作製される)などを介して達成することができる。
【0039】
PTM分子はまた、3' スプライシング領域を含み、かかる領域は、3' スプライス受容AG部位および/または5'スプライスドナー部位を含む。3'スプライシング領域はさらに、ブランチポイントおよびポリピリミジントラクトを含み得る。RNAスプライシングに用いた5'スプライスドナー部位と3' スプライシング領域の共通配列は当該分野で周知である(Mooreら、 1993, The RNA World, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p. 303-358を参照)。さらに、5' ドナースプライス部位および3' スプライス領域として機能を保持する改変された共通配列を、本発明の実施に用いることができる。簡潔にいうと、5' スプライス部位の共通配列は、AG/GURAGU (A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリンおよび/=スプライス部位)である(配列番号1)。3'スプライス部位は、3つの別個の配列エレメント:ブランチポイントまたはブランチ部位、ポリピリミジントラクトおよび3' 共通配列 (YAG)からなる。哺乳動物のブランチポイント共通配列は、YNYURAC (Y=ピリミジン、N=任意のヌクレオチド)である(配列番号2)。下線部Aは、ブランチ形成部位である。ポリピリミジントラクトは、ブランチポイントとスプライス部位受容体との間に配置され、異なるブランチポイントの利用および3' スプライス部位の認識に重要である。近年、ジヌクレオチドAUから始まり、ジヌクレオチドACで終了するプレmRNAイントロンが、同定され、U12イントロンと呼ばれている。U12イントロン配列およびスプライス受容体/ドナー配列として機能する任意配列もまた、本発明方法のPTMを作製するために用いることができる。
【0040】
RNAスプライス部位を標的結合ドメインより分離する1以上のスペーサー領域もまた、PTMに含めることができる。スペーサー領域は、(i)非スプライスPTMの翻訳をブロックするストップコドン、および/または(ii)標的プレmRNAへのトランス−スプライシングを増強する配列、などの特徴を含むように設計できる
抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列はまた、本発明のPTMに含める。本発明のPTMは、エキソン配列を含み、標的プレmRNAへとトランススプライシングされた場合に、機能的抗体ポリペプチドをコードすることができるキメラRNAの形成を生じる。エキソン配列は、免疫グロブリン遺伝子、例えば、全長重鎖、κ軽鎖およびλ軽鎖をコードするものに由来し得る。エキソン配列は、Fab、FvまたはFc断片を含むことができる。抗体ポリペプチドは、一本鎖抗体(SCA)、すなわち、ポリペプチド単鎖として存在する抗体を含み、重鎖、軽鎖および/またはその両方を含みうる。さらに好ましくは、抗体ポリペプチドは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が結合し(直接またはペプチドリンカーによって)、連続的ポリペプチドを形成している単鎖Fv 抗体である。このような一本鎖抗体ポリペプチドは、抗原結合部分を含み、抗体「定常」領域、例えば、Fc部分を欠いている。抗原結合部分は、天然の全長抗体の構造に実質的に類似している3次元構造に折りたたまれており、このことは当業者に公知である(例えば、米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号を参照)。
【0041】
別の実施形態において、免疫グロブリン分子は、小さな免疫グロブリン形態(例えば、(Fab)2、Fab、sFvおよびCH2-欠失ドメイン)で構成されていても良く、それによってその抗体は、無傷の免疫グロブリンよりも速く血流中を流れることができる。小さな免疫グロブリン形態は、正常組織に対する腫瘍の割合(比率)が大きくなければならない。このことは、癌治療において重要な要素である。
【0042】
PTMによってコードされるポリペプチドに対する免疫応答の可能性を最小限にするために「ヒト化」された抗体ポリペプチド配列が、ヒトへの投与には好ましい。ヒト化抗体を製造するために、非ヒト免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子由来の配列を、ヒト由来の対応する配列で置換する。
【0043】
別の実施形態において、抗体分子を操作して、間隙または酵素活性部への結合が比較的容易ではない標的に対して効率的に結合することができる。これは、抗体の最小の機能単位(例えば、ヒト抗体の重鎖(Hv)または軽鎖(Lv)の可変領域に相当する)をコードすることによって達成することができる。このような立体構造は、2つの異なる標的が2つの異なる治療効果を有するように、二重の標的特性を有する単一分子中で操作されることを可能にする。小さな抗体はまた、組織透過性を改善する。これは癌のような疾患において重要ことである。
【0044】
様々な疾患標的(病原性微生物、例えば、HIVまたは肝炎などのウイルス、細菌、菌類および寄生虫による感染に関連する抗原)に特異的な抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、PTMに含めることができる。さらに、PTMは、腫瘍特異的抗体または、例えば、Her2/Neu、CEA、MUC1、TRP-1、TRP-2およびMARTI/MelanAなどの腫瘍関連抗原に特異的な抗体をコードする配列を含んでも良い。
【0045】
さらに、コードされる抗体ポリペプチドは、組織特異的自己抗原に特異的であってもよい。例えば、既知の抗原または感染性微生物の抗原と自己抗原との間のエピトープ模倣物を用いて、抗体ポリペプチドおよびそれらポリペプチドをコードするPTMを設計してもよい。本発明の特定の実施形態において、例えば、ライム病のスピロヘータ病原菌とLFA-1間の自己免疫疾患に関連する抗体ポリペプチドを用いて、防御免疫応答を誘導することができる。抗体ポリペプチドはまた、癌治療に使用するための腫瘍抗原に関連する組織特異的自己抗原に特異的なものであってもよい。
【0046】
本発明のPTMを操作して、単一エキソン配列、複数のエキソン配列、あるいは、目的の抗体ポリペプチドをコードするエキソン配列の完全なセットを含有させることができる。PTMに用いられる配列の数と同一性は、トランススプライシング反応のタイプ、すなわち、起こりうる5'エキソン置換、3'エキソン置換または内部エキソン置換に依存しうる(図7を参照)。
【0047】
本発明のある実施形態においては、非特異的トランススプライシングを防止する「安全性」もスペーサー、結合ドメイン、またはPTMのいたるところに組み込まれる。これはPTMの3'および/または5'スプライス部位のエレメントを比較的弱い相補性によりカバーして非特異的トランススプライシングを防止するPTMの領域である。PTMは、PTMの結合/標的化部分がハイブリダイゼーションすると、3'および/または5'スプライス部位のカバーが外されて完全に活性化するように設計される。
【0048】
かかる「安全性」配列は、1以上のシス配列の相補性伸張部(または核酸の第2の、別の鎖でありうる)を含み、これはPTMブランチポイント、ピリミジントラクト、3'スプライス部位および/または5'スプライス部位(スプライシングエレメント)の片側または両側と結合するか、またはスプライシングエレメント自体の部分と結合しうる。この「安全性」結合は、スプライシングエレメントが活性になるのを防止する(すなわち、U2 snRNPまたは他のスプライシング因子がPTMスプライス部位認識エレメントと結合することをブロックする)。「安全性」の結合は、PTMの標的結合領域の標的プレmRNAとの結合により破壊され、こうしてPTMスプライシングエレメントを曝しかつ活性化しうる。
【0049】
ステム-ループ構造を形成することができるヌクレオチド配列も本発明のPTMに含まれうる。
【0050】
本発明はさらに、PTMのコード領域を操作してミニイントロンを含有させたPTM分子を提供する。ミニイントロンのPTMのコード配列中への挿入は、エキソンの解像度を増加しかつPTMドナー部位の認識を促進するように設計される。PTMのコード領域中に挿入されるミニイントロン配列としては、小さい天然のイントロン、あるいは、合成ミニイントロンを含む任意のイントロン配列が挙げられ、それには、5'コンセンサスドナー部位、ならびにブランチポイント、3'スプライス部位およびいくつかの場合にはピリミジントラクトを含む3'コンセンサス配列が含まれる。
【0051】
ミニイントロン配列は好ましくはほぼ60〜150ヌクレオチドの長さであるが、もっと長いミニイントロン配列も使用することができる。本発明のある好ましい実施形態においては、ミニイントロンは内因性イントロンの5'および3'端末を含む。本発明の好ましい実施形態においては、5'イントロン断片はほぼ20ヌクレオチドの長さでありかつ3'端末はほぼ40ヌクレオチドの長さである。
【0052】
本発明の特定の実施形態においては、次の配列を含む528ヌクレオチドのイントロンを利用することができる。該イントロン構築物の配列は次の通りである。
【0053】
5'断片配列:(配列番号3)
Gtagttcttttgttcttcactattaagaacttaatttggtgtccatgtctctttttttttctagtttgtagtgctggaaggtatttttggagaaattcttacatgagcattaggagaatgtatgggtgtagtgtcttgtataatagaaattgttccactgataatttactctagttttttatttcctcatattattttcagtggctttttcttccacatctttatattttgcaccacattcaacactgtagcggccgc
3'断片配列:(配列番号4)
Ccaactatctgaatcatgtgccccttctctgtgaacctctatcataatacttgtcacactgtattgtaattgtctcttttactttcccttgtatcttttgtgcatagcagagtacctgaaacaggaagtattttaaatattttgaatcaaatgagttaatagaatctttacaaataagaatatacacttctgcttaggatgataattggaggcaagtgaatcctgagcgtgatttgataatgacctaataatgatgggttttatttccag
さらに本発明の他の特定の実施形態においては、コンセンサスISAR配列が本発明のPTM中に含まれる(Jonesら, NAR 29:3557-3565)。タンパク質はISARスプライシングアクチベーターおよびリプレッサーコンセンサス配列と結合し、この配列はU1SnRNPによる5'スプライス部位認識に必要であるウリジン-リッチ領域を含む。18ヌクレオチドISARコンセンサス配列は次の配列を含む: GGGCUGAUUUUUCCAUGU(配列番号5)。本発明のPTM中に挿入されるとき、ISARコンセンサス配列はイントロン配列の5'ドナー部位の密接した近位のPTMの構造中に挿入される。本発明のある実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から100ヌクレオチド内に挿入される。本発明の好ましい実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から50ヌクレオチド内に挿入される。本発明のさらに好ましい実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から20ヌクレオチド内に挿入される。
【0054】
本発明の組成物はさらに、操作してシス作用性リボザイム配列を含ませたPTMを含む。かかる配列を含ませるのは、トランススプライシングの非存在のもとでのPTM翻訳を低下させたりまたは特定の長さもしくは定義された端末をもつPTMを産生させたりするために設計される。PTM中に挿入しうるリボザイム配列としては、シス作用性(自己切断性)RNAスプライシング反応に介在することができる任意の配列が挙げられる。かかるリボザイムとしては、限定されるものでないが、ハンマーヘッド、ヘアピンおよび肝炎デルタウイルスリボザイムが挙げられる(Chowら 1994, J Biol Chem 269:25856-64を参照)。
【0055】
本発明のある実施形態においては、スプライシングエンハンサー、例えば、エキソンスプライシングエンハンサーと呼ばれる配列も合成PTMの構造に含まれうる。トランス作用性スプライシング因子、すなわち、セリン/アルギニン-リッチ(SR)タンパク質はかかるエキソンスプライシングエンハンサーと相互作用してスプライシングをモジュレートすることが示されている(Tackeら, 1999, Curr. Opin. Cell Biol. 11:358-362;Tianら, 2001, J. Biological Chemistry 276:33833-33839;Fu, 1995, RNA 1:663-680を参照)。核局在化シグナルもPTM分子中に含まれうる(DingwellおよびLaskey、1986、Ann .Rev. Cell Biol. 2:367-390;DingwellおよびLaskey、1991、Trends in Biochem. Sci. 16:478-481)。かかる核局在化シグナルを用いて、トランススプライシングが起こる核中への合成PTMの輸送を促進することができる。
【0056】
さらなる特徴、例えば、RNA発現/安定性を改変するポリアデニル化シグナル、またはスプライシングを促進する5'スプライス配列、さらなる結合領域、「安全性」-自己相補性領域、さらなるスプライス部位、または分子の安定性をモジュレートしかつ分解を防止する保護基をPTM分子に加えることができる。さらに、停止コドンをPTM構造中に含ませて無スプライスPTMの翻訳を阻止してもよい。また、さらに、エレメント、例えば、3'ヘアピン構造、環状RNA、ヌクレオチド塩基修飾、または合成類似体をPTM中に組み込んで、核局在化およびスプライセオソーム組込み、ならびに細胞内安定性を促進または助長することができる。
【0057】
スプライセオソームが介在するトランススプライシング反応用に設計された上記PTM分子に加えて、核酸分子も、リボザイムが介在する(グループIおよびグループII)またはtRNAエンドヌクレアーゼが介在するトランススプライシング反応用に設計することができる。
【0058】
特異的PTMをin vitroで合成する時(合成PTM)、かかるPTMを塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖において修飾し、例えば、分子の安定性、標的mRNAとのハイブリダイゼーション、細胞中への輸送などを改善することができる。例えば、全電荷を低下させるPTMの修飾により、分子の細胞取込みを促進することができる。さらに、ヌクレアーゼまたは化学的分解に対する感受性を低下させるように修飾を施すことができる。核酸分子を、他の分子、例えばペプチド(例えば、in vivoで宿主細胞レセプターを標的化するために)、または細胞膜(例えば、Letsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6553-6556;Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652;PCT公開公報W0 88/09810、1988年12月15日)または血液脳関門(例えば、PCT公開公報W0 89/10134、1988年4月25日を参照)を横切る輸送を容易にする薬剤、ハイブリダイゼーションをトリガーする切断剤(例えば、Krolら, 1988, BioTechniques 6:958-976を参照)またはインターカレーション剤(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549)と結合するように合成してもよい。この目的では、核酸分子を他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションがトリガーする架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションがトリガーする切断剤などと結合させてもよい。
【0059】
PTMはまた、抗体ポリペプチドの配列に加えて、コードされた抗体の作用を増強しうる所定のサイトカインまたは因子の配列をコードしてもよい。抗体配列はまた、別の生物学的に活性な分子(例えば、毒素)をコードする配列と融合していてもよい。
【0060】
細胞内安定性および半減期を増加する手段として、核酸分子に対する様々な他の周知の修飾を導入することができる。このような修飾としては、限定されるものでないが、リボヌクレオチドの隣接配列の、核酸分子の5'および/または3'端末への付加が挙げられる。安定性の増加が所望されるいくつかの状況では、2'-O-メチル化などの修飾されたヌクレオシド間結合を有する核酸が好ましい。修飾されたヌクレオシド間結合を含有する核酸は、当技術分野で周知の試薬と方法を用いて合成することができる(Uhlmannら, 1990, Chem. Rev. 90:543-584;Schneiderら, 1990, Tetrahedron Lett. 31:335およびそれらの引用文献を参照)。
【0061】
本発明のPTMは、細胞内のその安定性を増加させる方法で修飾されていることが好ましい。RNA分子は細胞リボヌクレアーゼによる切断に感受性があるので、競合性インヒビターとして、RNA結合配列の作用を模倣するがヌクレアーゼ切断に対する感受性の低い化学修飾されたオリゴヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチドの組み合わせ)を用いることが好ましい。さらに、ヌクレアーゼ分解を防止するために、合成PTMを高い安定性を有するヌクレアーゼ耐性環状分子として作ることができる(Puttarajuら, 1995, Nucleic Acids Symposium Series No. 33:49-51;Puttarajuら, 1993, Nucleic Acid Research 21:4253-4258)。他の修飾、例えば、結合を促進する、細胞取込みを促進する、薬効薬理もしくは薬物動態を改善する、または他の薬学的に望ましくある特徴を改善する修飾が必要なこともありうる。
【0062】
合成PTMの構造に対してなしうる修飾としては、限定されるものでないが、次を使用する主鎖修飾が挙げられる:
(i)ホスホロチオアート(XまたはYまたはWまたはZ=S、あるいはOとしての残部をもつ2以上の任意の組み合わせ)。例えばY=S(Stein, C. A.ら, 1988, Nucleic Acids Res., 16:3209-3221)、X=S(Cosstick, R.ら, 1989, Tetrahedron Letters, 30, 4693-4696)、YおよびZ=S(Brill, W. K.-D.ら, 1989, J. Amer. Chem. Soc., 111:2321-2322);(ii)ホスホン酸メチル。例えばZ=メチル(Miller, P. S.ら, 1980, J. Biol. Chem., 255:9659-9665);(iii)ホスホロアミダイト(Z=N-(アルキル)2、例えばアルキルはメチル、エチル、ブチル、Z=モルホリンまたはピペラジン)(Agrawal, S.ら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7079-7083)(XまたはW=NH)(Mag, M.ら, 1988, Nucleic Acids Res., 16:3525-3543);(iv)リン酸トリエステル(Z=O-アルキル、例えばアルキルはメチル、エチル、他)(Miller, P. S.ら, 1982, Biochemistry, 21:5468-5474);および(v)リン非含有連鎖(例えばカルバマート、アセトアミダート、酢酸エステル)(Gait, M. J.ら, 1974, J. Chem. Soc. Perkin I, 1684-1686;Gait, M. J.ら, 1979, J. Chem. Soc. Perkin I, 1389-1394)。
【0063】
さらに、糖修飾を本発明のPTMに組み込むことができる。かかる修飾としては、次の使用が挙げられる:(i)2'-リボヌクレオシド(R=H);(ii)2'-O-メチル化ヌクレオシド(R=OMe)(Sproat, B. S.ら, 1989, Nucleic Acids Res., 17:3373-3386);および(iii)2'-フルオロ-2'-リボキシヌクレオシド(R=F)(Krug, A.ら, 1989, Nucleosides and Nucleotides, 8:1473-1483)。
【0064】
さらに、PTMになしうる塩基修飾としては、限定されるものでないが、次の使用が挙げられる:(i)5-位置で置換された(例えばメチル、ブロモ、フルオロ他)またはカルボニル基をアミノ基と置換した(Piccirilli, J. A.ら, 1990, Nature, 343:33-37)ピリミジン誘導体;(ii)特異的窒素原子を欠く(例えば、7-デアザアデニン、ヒポキサンチン)または8-位置が官能基化された(例えば、8-アジドアデニン、8-ブロモアデニン)プリン誘導体(総括はJones, A. S., 1979, Int. J. Biolog. Macromolecules, 1:194-207を参照)。
【0065】
さらに、PTMは反応性官能基、例えば:(i)ソラレン(Miller, P. S.ら, 1988, Nucleic Acids Res., Special Pub. No. 20, 113-114)、フェナントロリン(Sun, J-S.ら, 1988, Biochemistry, 27:6039-6045)、マスタード(Vlassov, V. V.ら, 1988, Gene, 72:313-322)(共試薬の必要なまたは不必要な不可逆性架橋剤);(ii)アクリジン(インターカレーション剤)(Helene, C.ら, 1985, Biochimie, 67:777-783);(iii)チオール誘導体(タンパク質との可逆性ジスルフィド生成)(Connolly, B. A.,およびNewman, P. C., 1989, Nucleic Acids Res., 17:4957-4974);(iv)アルデヒド(シッフ塩基の生成);(v)アジド、ブロモ基(UV架橋);または(vi)エリプチシン(光分解性架橋)(Perrouault, L.ら, 1990, Nature, 344:358-360)と共有結合していてもよい。
【0066】
本発明のある実施形態においては、オリゴヌクレオチド模倣物は、その糖とヌクレオシド間の連鎖(すなわちヌクレオチド単位の主鎖)を新規の基により置換されている。例えば、天然オリゴヌクレオチドより高いアフィニティでDNAおよびRNAと結合することが示されているかかるオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる(総括については、Uhlmann、E. 1998、Biol. Chem. 379:1045-52を参照)。従って、PNAを合成PTM中に組み込んで、標的プレmRNAに対するそれらの安定性および/または結合アフィニティを増加させることができる。
【0067】
本発明の他の実施形態においては、PTMは親油基または細胞による取込みを改善できる試薬と共有結合していてもよい。例えば、PTM分子は、次の基または試薬と共有結合していてもよい:(i)コレステロール(Letsinger, R. L.ら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556);(ii)ポリアミン(Lemaitre, M.ら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 84:648-652);PTMを細胞に送達する効率を改善する他の可溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)。さらに、上記の同定された修飾の組合わせを利用して安定性およびPTMの標的細胞中への送達を増加させてもよい。本発明のPTMを、標的細胞内で新規キメラRNAを産生するように設計した方法で使用することもできる。
【0068】
本発明の方法は、当業者が利用するいずれの形態であってもよいPTM、例えばRNA分子、またはDNAベクター(RNA分子に転写される)を標的細胞へ送達する方法を含むものであり、その場合、上記PTMは標的プレmRNAと結合しかつトランススプライシング反応に介在して、抗体ポリペプチドを発現するキメラmRNAの生成をもたらす。
【0069】
トランススプライシング分子の合成
本発明の核酸分子はRNAもしくはDNAまたは誘導体もしくはそれらの修飾されたバージョンであって、一本鎖または二本鎖であってよい。核酸は、PTM分子、リボザイムまたはt-RNAエンドヌクレアーゼに基づく核酸分子、またはPTM分子、リボザイムまたはt-RNAエンドヌクレアーゼに基づく核酸分子をコードする核酸分子であって、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオシドから構成されようとも、またリン酸ジエステル連鎖または修飾された連鎖から構成されようとも、上記核酸分子を意味する。用語「核酸」はまた、具体的には、5種の生物に存在する塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基から構成される核酸も含む。さらに、本発明のPTMは、PTMの安定性を増強するように設計されたDNA/RNA、RNA/タンパク質またはDNA/RNA/タンパク質キメラ分子も含みうる。
【0070】
本発明のPTMは核酸分子を合成するための当技術分野で公知の任意の方法により調製してもよい。例えば、市販される試薬および合成機を用いて当技術分野で周知の方法により化学的に核酸を合成することができる(例えば、Gait, 1985, Oligonucleotide Snthesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, Englandを参照)
あるいは、合成PTMは目的のPTMをコードするDNA配列のin vitro転写により作製することができる。かかるDNA配列を様々なベクター中へ、好適なRNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7、SP6、またはT3ポリメラーゼプロモーターの下流に組み込むことができる。コンセンサスRNAポリメラーゼプロモーター配列としては次が挙げられる:
T7: TAATACGACTCACTATA[G]GGAGA(配列番号6)
SP6:ATTTAGGTGACACTATA[G]AAGNG(配列番号7)
T3: AATTAACCCTCACTAAA[G]GGAGA(配列番号8)。
【0071】
[ ]内の塩基は転写中にRNAに組み込まれる第1塩基である。下線は効率的な転写に必要な最小配列を示す。
【0072】
RNAは、SPS65およびBluescript(Promega Corporation, Madison, WI)などのプラスミドを用いるin vitro転写を介して、高収率で産生させることができる。さらに、Q-β増幅などのRNA増幅法を利用して目的のPTMを産生させることができる。
【0073】
PTMは当技術分野で周知のいずれかの好適な手段により精製することができる。例えば、PTMをゲル濾過、アフィニティまたは抗体相互作用、逆相クロマトグラフィまたはゲル電気泳動により精製してもよい。勿論当業者は、精製法が精製すべき核酸のサイズ、電荷および形状に部分的に依存しうることを理解している。
【0074】
本発明のPTMは、化学的、in vitro、またはin vivoのいずれで合成しようとも、修飾または置換されたヌクレオチドの存在のもとでPTMの安定性、標的プレmRNAへの取込みまたは結合を増加するように合成することができる。さらに、PTMの合成後に、PTMをペプチド、化学剤、抗体、または核酸分子を用いて修飾して、例えば、PTM分子の物理的性質を増強することができる。かかる修飾は当業者には周知である。
【0075】
PTMをコードする核酸分子を利用する場合には、当技術分野で公知のクローニング技法を用いて核酸分子の発現ベクター中へのクローニングを行うことができる。利用しうる組換えDNA技法の技術分野で公知の方法は、Ausubelら(編), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。
【0076】
目的のPTMをコードするDNAを、DNAの複製を大規模で提供しかつPTMの転写を指令するために必要なエレメントを含有する様々な宿主ベクター系中に遺伝子組換えすることができる。かかる構築物を用いて患者の標的細胞にトランスフェクトすることと、内因的に発現されるプレmRNA標的と相補的な塩基対を生成するのに十分な量のPTMの転写が得られ、それによって複合した核酸分子間のトランススプライシング反応を促進することができる。例えば、細胞により取込まれてPTM分子の転写を指令するように、ベクターをin vivoで導入することができる。かかるベクターは、転写されて所望のRNA、すなわち、PTMを産生し得る限り、エピソームのまま残ってもまたは染色体に組み込まれてもよい。かかるベクターは、当技術分野で標準の組換えDNA技法により構築することができる。
【0077】
目的のPTMを含むベクターは、哺乳動物細胞における核酸の複製および発現に使用されるプラスミド、ウイルス(非ウイルス性送達系を含む)、または当技術分野で公知の他のベクターであってもよい。PTMをコードする配列の発現を、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞において作用することが当技術分野で公知のいずれのプロモーター/エンハンサー配列により調節してもよい。かかるプロモーター/エンハンサーは誘導性または構成的であってもよい。かかるプロモーターとしては、限定されるものでないが、次が挙げられる:SV40初期プロモーター領域(Benoist, C.およびChambon, P. 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復配列中に含有されるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42)、ウイルスのCMVプロモーター、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βプロモーター(Hollenbergら, 1994, Mol. Cell. Endocrinology 106:111-119)など。
【0078】
いずれのタイプのプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組織部位中に直接導入しうる組換えDNA構築物を調製してもよい。あるいは、所望の標的細胞に選択的に感染するウイルスベクターを用いてもよい。本発明の実施に用いるベクターとしてはいずれかの真核生物の発現ベクター、限定されるものでないが、ウイルス発現ベクター、例えばレトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのクラス由来のウイルス発現ベクターが挙げられる。
【0079】
PTMはまた、RNA分子として直接送達することもできる。
【0080】
いくつもの選択系を利用してもよく、限定されるものでないが、tk-、hgprt-またはaprt-欠乏細胞における、それぞれ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼタンパク質の発現に対する選択が挙げられる。また、抗代謝性耐性を選択の基礎として、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)(メトトレキセート耐性を付与する);キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)(ミコフェノール酸耐性を付与する);ネオマイシン(ネオ)(アミノグリコシドG-418耐性を付与する);およびハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(ハイグロ)(ハイグロマイシン耐性を付与する)を用いることができる。本発明のある好ましい実施形態においては、細胞培養を低い比のベクター対細胞にて形質転換し、いずれの細胞においても単一ベクター、または限られた数のベクターだけが存在しうるようにする。
【0081】
トランススプライシング分子の使用と投与
本発明の組成物および方法は、抗体ポリペプチドを発現する配列を含有する新規キメラRNA分子を作製するように設計される。具体的には、二重トランススプライシング反応、3'エキソン置換および/または5'エキソン置換を含んでなるスプライセオソームが介在する標的化したトランススプライシングを用いて、かかるキメラRNAを作製することができる。さらに、リボザイムまたはt-RNAが介在する標的化トランススプライシング反応を用いてキメラRNAを作製することもできる。
【0082】
様々な送達系が公知であり、本発明の組成物を細胞中に導入するのに利用することができ、上記送達系としては、例えば、リポソーム内封入、微小粒子、マイクロカプセル、組成物を発現することができる組換え細胞、レセプターが介在するエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスまたは他のベクターの一部分としての核酸の構築、裸の(naked)DNAの注入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムが介在するトランスフェクションなどが挙げられる。
【0083】
PTMおよび送達系は、通常の投与方法、例えば静脈内または門脈内注入により動物またはヒトに投与することができる産物を構成しうる。本発明の特定の実施形態においては、キメラRNA分子を循環全体に分布させうるが、アルブミンプレmRNA標的を発現する肝細胞において活性でありうる。PTMはそのRNA型、すなわち、アルブミンプレmRNA中の標的化配列と結合するPTMの結合ドメインにおいて作用しうる。トランススプライシング後に、特異的抗体の配列を含むPTMのコードドメインは、アルブミン標的の規定された配列に挿入またはトランススプライシングされ、肝細胞より分泌され得る抗体ポリペプチドを含む産物を発現するキメラmRNAを生じる。分泌シグナル配列を組み込み、分泌を増加させることができる。
【0084】
アルブミン遺伝子は肝臓中に高度に発現されて、それによって標的化する豊富な標的プレmRNAを生じる。アルブミンを標的化することにより、産物の血清濃度を、生理学的に有意に、臨床的および/または治療的レベルで発現させることができる。アルブミンは、45〜50mg/mlのオーダーの血清濃度を有する。中度のトランススプライシング効率5%が得られれば、大量の発現される産物をin vivoで生産することができる。アルブミンの血漿濃度45mg/mlとさらに中度のトランススプライシング効率1%を基準にすると、産物2.5mg/mlが作製できる。抗体またはポリペプチド断片を含有する産物は一般に、被験体の血清中におよそ500μg/mlの濃度で存在し、これは所望される治療上の量を有意に超える。ヒトにおいては、治療用抗体レベルは、血清1mlにつき3〜30μgの範囲であり得る。得られた抗体レベルが非常に高い場合、投与量を減らして血清濃度を下げても良い。
【0085】
腫瘍特異的抗原、感染症病原体および生物製剤(biodefense agents)(例えば、炭疽菌、インフルエンザ、天然痘、SARS、関節リウマチおよび癌)は、患者の診断および治療についての有効な標的であり、腫瘍形成および正常な発生におけるシグナル変換受容体または細胞接着分子として重要な機能を有し得る。本発明の組成物は、腫瘍特異的抗原の使用により癌細胞を特異的に標的とするように用いることができる。PTMを操作して腫瘍特異的抗原に抗体が結合した際に、細胞特異的な細胞死を生じるようにできる。
【0086】
また、本発明の組成物および方法を用いて、宿主に免疫を与えることができる。特に、二重-トランス−スプライシング反応、3' エキソン置換および/または5' エキソン置換を含む標的化トランス−スプライシングを用いて、標的プレRNAとPTM間のキメラRNAを形成することができ、かかるキメラRNAは、目的の抗体ポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。
【0087】
本発明の組成物および方法を用いて、抗体ポリペプチドをコードする核酸を個々の細胞に提供することができ、細胞におけるかかるポリペプチドの発現が防御免疫応答を誘導する。具体的には、組成物および方法を用いて、免疫を増強しうる目的の抗体ポリペプチドをコードする配列を、個々の細胞に提供し、防御免疫応答(例えば、GM-CSF)を誘導することができる。
【0088】
本明細書中で用いられる場合、「防御免疫応答の誘導」なる用語は、宿主において天然または人工的に、特定の病原体または癌細胞から宿主を防御するように与えられる、抗体もしくは細胞が介在する免疫応答またはその両方を含む、免疫系反応の誘導を含むように広く用いられる。防御的免疫応答の誘導はまた、組織特異的自己抗原(Pardoll, D.M. 1999, PNAS 96:5340-5342)に対する自己免疫応答の誘導を含む。この用語は、特定の病原体による感染、または癌より生じる宿主の症状または状態の完全な予防を示すだけでなく、そのような症状または状態の発症を検出可能なほど遅らせること、特定の病原体による感染の程度もしくは度合いを検出可能なほど低減すること、疾患または癌細胞の存在により生じる症状もしくは状態の重篤度を検出可能なほど低減することなども示す。目的の抗体ポリペプチドを含む本発明による組成物は、宿主の感染に関連する一以上の臨床徴候を低減するのに十分な用量および期間、投与すべきである。
【0089】
本発明の組成物および方法を用いて様々な疾患および障害を緩和および/または治療することができる。例えば、PTMを被験体に投与して、例えば、HIV、RSV、A型、B型もしくはC型肝炎、クラスIIもしくはIV病原体またはいずれかの微生物によって引き起こされる他の感染性疾患を治療および/または改善することができる。さらに、PTMを、癌、自己免疫疾患、関節リウマチおよび移植片を有する被験体に投与しても良い。治療には、疾患に伴ういずれかの症状または、病理学に関連する臨床徴候を改善することを含む。
【0090】
さらに、本発明方法のPTMを含む細胞をさらに操作して、免疫細胞をPTMを含む細胞へとすることを容易にし得るサイトカイン/成長因子を発現させることができる。このようなサイトカイン/成長因子は、当業者に周知であり、例えば、顆粒球/マクロファージ刺激細胞成長因子(GMCSF)、インターロイキン、または同様の作用分子が挙げられる。特定の実施形態において、PTMは、抗体ポリペプチドおよびサイトカイン成長因子の両方をコードし得る。
【0091】
好ましい実施形態において、宿主細胞への遺伝子送達および遺伝子発現によって、PTMをコードする配列を含む核酸を投与して、PTM機能を促進させる。本発明の本実施形態において、核酸は、PTM産生を促進することによって、効果を介在する。当該分野で利用できる宿主細胞への遺伝子送達方法はいずれも、本発明に従って用いることが可能である。遺伝子送達方法の一般的な総括については、Strauss, M. and Barranger, J.A., 1997, Concepts in Gene Therapy, by Walter de Gruyter & Co., Berlin; Goldspielら、 1993, Clinical Pharmacy 12:488-505; WuおよびWu, 1991, Biotherapy 3:87-95; Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 33:573-596; Mulligan, 1993, Science 260:926-932;ならびにMorganおよびAnderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; 1993, TIBTECH 11(5):155-215を参照。例示的方法を、以下に示す。
【0092】
PTMの宿主細胞中への送達は直接(その場合、宿主を直接PTMまたは核酸分子をコードするPTMに曝す)であってもよく、または間接(その場合、宿主細胞を最初にPTMまたはPTMをコードする核酸分子によりin vitroで形質転換し、次いで宿主中に移植する)であってもよい。これらの2方式の手法は、それぞれin vivoまたはex vivo遺伝子導入として公知である。
【0093】
特定の実施形態においては、核酸を直接in vivo投与し、そこで発現させてPTMを産生させる。これは当技術分野で公知の多数の方法のいずれかにより実施することができ、例えば、上記核酸を適当な核酸発現ベクターの一部分として構築してそれを細胞内に投与する方法、例えば、欠陥のあるまたは弱毒化したレトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを用いる感染による方法(例えば、米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接注入による方法、または微小粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont, Bio-Rad)、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくトランスフェクト剤を用いるコーティング、リポソーム内封入、微小粒子、またはマイクロカプセルの使用による方法、または上記核酸を、核に進入することが公知のペプチドと連結して投与する方法、上記核酸をレセプターが介在するエンドサイトーシスに関わるリガンドと連結して投与する方法(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)がある。
【0094】
特定の実施形態においては、PTMを含有するウイルスベクターを用いることができる。例えば、レトロウイルスウイルスベクターを用いてもよく、その場合、このレトロウイルスウイルスベクターはウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みに必要でないレトロウイルス配列を欠失するように改変しておく(Millerら、1993、Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。あるいは、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターを細胞または組織への遺伝子送達用に利用することができる(アデノウイルスに基づく遺伝子送達の総括については、KozarskyおよびWilson、1993、Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503を参照)。
【0095】
本発明の好ましい実施形態においては、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてPTMをコードし得る核酸分子を送達することができる。ベクターは、所望の発現レベルに応じて、選択したプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントをベクター中に挿入できるように設計される。
【0096】
細胞中への遺伝子送達についての他の手法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムが介在するトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法により、遺伝子を組織培養中の細胞に導入することに関わる。通常、導入の方法は細胞への選択マーカーの導入を含む。次いで細胞を選択環境下に置いて、導入された遺伝子を取込んで発現しているこれらの細胞を単離する。得られる組換え細胞を宿主に当技術分野で公知の様々な方法により送達することができる。好ましい実施形態においては、遺伝子送達用に利用される細胞は宿主の細胞にとって自己である。
【0097】
本発明はまた、有効量のPTMまたはPTMをコードする核酸および生理学的または製薬上許容される担体を含む組成物も提供する。特定の実施形態においては、用語「製薬上許容される」は、連邦または州政府の規制当局により承認されているかまたは米国薬局方、または動物における、およびさらに特にヒトにおける使用について一般的に認知されているその他の薬局方に記載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。好適な担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical sciences」に記載されている。
【0098】
従って、当技術分野で標準の多数の方法を使用することができ、それらの方法には、限定されるものでないが、キメラmRNAの存在を検出および/または可視化することにより、キメラmRNA発現の生成を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーション、および逆転写PCR他)他が含まれる。
【0099】
特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物を治療を必要としている領域、すなわち肝臓組織または腫瘍組織に局所的に投与することが望ましい。これは、例えば、限定されるものでないが、手術中の局所注入、例えば手術後の創傷包帯との連結、注入、カテーテル、内視鏡、坐剤、または植込錠(この植込錠は多孔質、非多孔質、またはゼラチン状材料であって、シアラスチック膜などの膜、または繊維を含む)を使う局所施用である。その他の除放性薬物送達系、例えばナノ粒子、マトリックス、例えば除放性ポリマー、およびハイドロゲルを用いてもよい。
【0100】
PTMは、標的細胞において所望される効果を生じるのに有効な量だけ投与されるだろう。PTMの有効な投与量は、生物学的半減期、バイオアベイラビリティおよび毒性などのパラメーターに関わる当業者に周知の方法によって、決定することができる。本発明の組成物の有効量は、治療される疾患/病状の重篤度によって変わり、標準の臨床技法により決定することができる。かかる技法には、標的タンパク質の発現レベルが減少しているかを確認するためのサンプルの分析が含まれる。さらに、in vitroアッセイを任意に用いて最適な投与範囲を確認するのを助けることができる。
【0101】
以下の実施例は本発明を例示することを意味するものであって、本発明の範囲を限定することを意図しないしまたはそう解釈してはならない。
【実施例】
【0102】
実施例1:in vivoでトランススプライスされたアルブミン-HPV-16抗E7 一本鎖抗体(mAlb-HPV-16抗E7 scFv)cDNA
図8に示したアルブミン標的化計画を、16型ヒトパピローマウイルス(HPV-16)抗E7 一本鎖抗体のin vivo産生について評価した。この概念はHPV-16抗E7 scFv 配列のアルブミンプレmRNA標的への標的化トランススプライシングに関わる。アルブミンを標的として選んだ理由は、肝臓内のその高い発現は、豊富なトランススプライシング標的としての高アルブミンプレmRNA濃度を与えるからである。本研究は、HPV-16抗E7 scFvのin vivo発現、分泌および機能に与えるアルブミン配列の効果を評価した。
【0103】
マウスアルブミン-HPV-16抗E7 scFv(mAlb-HPV16抗E7 scFv)ポジティブ対照cDNA(図9)を構築して最終トランススプライスされた産物を模倣し、そしてCos-7およびHepa1-6(マウス肝細胞腫細胞)細胞中の発現、プロセシングおよび分泌について試験した。トランススプライスされたcDNA発現プラスミドは、長い合成相補的オリゴヌクレオチドおよびアルブミンをコードするエキソン1とHPV-16抗E7 scFv配列から成るPCR産物を用いて構築した。マウスアルブミンエキソン1のコード配列は、次の長いオリゴヌクレオチド、
フォワードプライマー(配列番号9):gctagcATGAAGTGGGTAACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGTCTCCGGCTCTGCTTTTTCCAGGGGTGTGTTTCGCCGAGAAGCAC[AGGTCCAACTGCAGGAGTCAGGGgctgagc]、および
リバースプライマー(配列番号10):[gctcagCCCCTGACTCCTGCAGTTGGACC]TGTGCTTCTCGGCGAAACACACCCCTGGAAAAAGCAGAGCCGGAGACGAAGAGGAGGAGGAGAAAGGTTACCCACTTCATgctagc
を用いて組み立てた(小文字のヌクレオチドは、クローニングに使用するNheIおよびBlpI制限酵素切断部位を含み;下線を引いたヌクレオチドはマウスアルブミンエキソン1配列を含み、その中で大部分はシグナルペプチドをコードし;そして[ ]で囲ったヌクレオチドは部分的HPV-16抗E7 scFv配列を含む)。
【0104】
HPV-16抗E7 scFvコード配列は、cDNAクローンおよび次のプライマー、
Sca1(5'-gctagcATGGCCCAGGTCCAACTGCAGG)(配列番号11)およびSca5(5'-aagctt[TCA] CTTGTCGTCATCGTCTTTGTAGTCCCGTTTTATTTCCGCTTGGTCCCAGC)(配列番号12)を用いてPCR増幅した(小文字のヌクレオチド、クローニング用のNheIおよびHindIII制限酵素切断部位;[ ]で囲ったヌクレオチド、停止コドン;ならびに下線を引いたヌクレオチド、FLAGタグ)。PCR産物をBlpIおよびHindIII制限酵素を用いて消化した。得られる産物をアニーリングしたオリゴ断片と最初にライゲートし、次いでpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)中にライゲートした。PTMカセット配列の真正性は配列決定により確証した(図10)。
【0105】
実施例2:Hepa1-6およびCos-7細胞におけるアルブミン-HPV-16抗E7 scFv抗体の産生、発現および分泌
アルブミンエキソン1配列(7ヌクレオチド)のHPV-16抗E7scFvの発現およびプロセシングに与える効果を、トランススプライスされたcDNAプラスミドならびに対照プラスミド(FLAGタグ無しのトランススプライスされたcDNAに類似)をマウス肝細胞腫、Hepa1-6およびCos-7細胞中にトランスフェクトすることにより評価した。トランスフェクション後48時間に、培地を採集し、FLAGアフィニティカラム(Sigma、Cat#FLAGIPT-1)を通過させて、ウェスタンブロットによりHPV-16抗E7 scFvの発現について抗FLAGM2モノクローナル(Sigma、Cat#F3165)抗体を用いて分析した。
【0106】
アルブミントランススプライシング計画はキメラmRNAおよびタンパク質の産生をもたらす。最終トランススプライシング産物はアルブミン標的mRNA由来の7ヌクレオチドまたは2アミノ酸を含有する。ヒト施用については、免疫反応を防止するために最終生成物中のアルブミン配列を除去することが所望される。図11に図解した1つの例示の計画においては、タンパク質をin vivoで発現するために利用されている「Furin」様エンドペプチダーゼ(またはプロタンパク質コンバターゼ)切断部位をPTMがコードするように遺伝子操作する(Fuller RS, Brake AJ, Thorner J, Science, 246: 482-486, 1989;Bresnahan PA, Leduc R, Thomas L, Thorner J, Gibson HL, Brake AJ, Barr PJ, Thomas G., J Cell Biol. 111:2851-2859, 1990;van de Ven WJ, Voorberg J, Fontijn R, Pannekoek H, van den Ouweland AM, van Duijnhoven HL, Roebroek AJ, Siezen RJ, Mol Biol Rep. 14:265-75, 1990;Duckert P, Brunak S, Blom N. Protein Eng Design & Selection. 17:107-112, 2004)。他の例においては、PTMを、タンパク質自身の自然の分泌シグナル、すなわち「プレ-プロ」シグナル(もしそれがあれば)を含むように設計しうる。この計画は、野生型タンパク質と類似した作用の部位へ最終トランススプライスされたタンパク質の認識、プロセシングおよび分泌を促進する内因性自然細胞機構の利点を生かすように設計される。例えば、PTMのアルブミンプレmRNA標的へのトランススプライシングは、粗面小胞体におけるシグナルペプチド切断に加えて他の細胞コンパートメントにおけるいくつかの翻訳後修飾を経て、最終的にエンドペプチダーゼ切断を受け、そして成熟した全てプロセシングされた生物学的活性のある野生型と同じタンパク質の放出をもたらすキメラmRNAおよびプレ-プロ-タンパク質を産生する(図12)。
【0107】
cDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした細胞由来の上清または全細胞ライセートからの全タンパク質ほぼ10μgを12% SDS-PAGE上で分析し、ナイロン膜上に移し、そして抗FLAG抗体を用いて調べた。ウェスタンの結果は、Hepa1-6およびCos-7細胞の両方において、FLAG-標識したcDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした細胞中で、成熟タンパク質について予測されたサイズ30kDaのHPV-16抗E7 scFvが産生することを実証した(図13レーン3および6、左パネル)。他方、模倣物においておよびFLAGタグのないcDNA構築物を受容した細胞において、かかる産物は検出されなかった(図13レーン1-2および5-6、左パネル)。さらに、細胞ライセート中にタンパク質は検出されず(図13)、大部分のタンパク質が正常にプロセシングされて分泌されたことを示した。
【0108】
実施例3:トランススプライスされたアルブミンHPV-16抗E7 scFvタンパク質は機能的に活性である
アルブミン配列のHPV-16抗E7scFv機能に与える効果を、子宮頚癌細胞におけるHPV-16 E7発現をダウンレギュレートする能力により評価した。HPV-16 E7 腫瘍性タンパク質ポジティブである子宮頚癌細胞、SiHa、(ATCC # HTB-35)をmAlb-HPV-16抗E7 scFvc DNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。E7腫瘍性タンパク質を発現しない整合する対照細胞、C-33A(ATCC # HTB-31)もmAlb-HPV-16抗E7 scFv cDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。細胞を5日間増殖し、相対的な生存細胞数を比色(MTT)アッセイにより測定した。
【0109】
HPV-16ポジティブ子宮頚癌細胞、SiHaの場合、mAlb-HPV-16抗E7 scFvは、C-33A HPV-ネガティブ細胞におけるほぼ<10%抑制と比較して、細胞増殖を〜75%だけ抑制し、これによってトランススプライスされたアルブミンHPV-16抗E7 scFv抗体の機能性を実証した(図14)。これらの結果は、最終トランススプライシング産物中のアルブミン配列がHPV-16抗E7 scFv機能に対して大きな有害効果を与えないことを確証しただけでなく、本発明の組成物が機能性抗体ポリペプチドおよび/または治療タンパク質のin vivo産生に対して有効である証拠も提供する。
【0110】
この研究に用いたHPV-16抗E7 scFvPTM発現カセットの構造を図15Aに図解する。PTMカセットを構成するのは、マウスアルブミンイントロン1と相補的な279nt結合ドメインを含むトランススプライシングドメイン(TSD)、24ヌクレオチドスペーサー領域、コンセンサス酵母ブランチポイント(BP)などの強い3'スプライスエレメント、最適化されたポリピリミジントラクト、スプライスアクセプター部位(CAGジヌクレオチド)、および続くHPV-16抗E7 scFv用のコード配列(図13)の大部分である。PTMカセットはまた、トランススプライスされたタンパク質の検出を支援するためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルとFLAGタグも含有する。全カセットをサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(Invitrogen)を含有するpcDNA3.1ベクター主鎖中にクローニングした。加えて、ベクター主鎖をさらにベクターアンピシリン遺伝子とPTM3'スプライス部位との間の機能未知のシススプライシングを低減するために、Maz4(転写一時停止部位)配列を含むように改変した。
【0111】
上記の機能性PTMと同一であるがアクセプター部位に点突然変異(CAG>CAT)を有するスプライス変異体(スプライシング能力の無い変異体)も構築した(図15Aおよび15B)。スプライス変異体をネガティブ対照として用いた。in vitroにおける原理証明の研究のために、エキソン1、イントロン1およびエキソン2から成るマウスアルブミンミニ遺伝子標的プレmRNAを用いた。プレmRNA標的の模式図を図15Cに図解する。
【0112】
PTMが介在するトランススプライシングおよびマウスアルブミン-HPV-16抗E7 scFvキメラmRNAの産生を、Hepa1-6細胞をマウスアルブミンミニ遺伝子標的プラスミドならびにHPV-16抗E7 scFv PTM(機能性PTM)を用いてまたはスプライス変異体(スプライス無能PTM)を用いて同時トランスフェクトすることおよび模倣トランスフェクションにより評価した。これらの細胞から単離した全RNAをRT-PCRによりマウスアルブミンエキソン1(AlbA1TSF2:ACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGT)(配列番号13)およびHPV-16抗E7scFvPTM(sca3:AGTAAGCAAACCAGTAGCCGTC)(配列番号14)特異的プライマー(図15Aおよび15Cに示したプライマー結合部位)を用いて分析した。これらのプライマーは標的と機能性PTMの両方を受容した細胞においてのみ予想404bp産物を産生し(図16、レーン1)、これはcDNA対照(図16、レーン2)およびプラスミドDNA(図16、レーン6)で観察された類似サイズバンドと同時移動した。スプライス変異体でトランスフェクトした細胞(図16、レーン3)または模倣トランスフェクション(図16、レーン4)ではRT-PCR産物が検出されなかった。PCR産物を精製して直接配列決定し、これらの細胞中のPTMおよび標的プレmRNAの予想スプライス部位に対する正確なトランススプライシングを確認した(図16、下側パネル)。従って、以上の結果は本発明の方法を用いて効率的なHPV-16抗E7 scFvのin vitroトランススプライシングを提供できることを確立した。
【0113】
実施例4:マウスにおける、内因性マウスアルブミンプレmRNA標的へのin vivoトランススプライシングおよびHPV-16抗E7scFvの産生
PTMの内因性マウスアルブミン標的へのトランススプライシングおよびHPV-16抗E7 scFvタンパク質の産生を実証するために、次の実験を実施した。100μgのmAlb-HPV16抗E7 97C2(PTM単独)、70μgのPTM+35μgのミニ遺伝子標的(プレmRNA濃度を増加させるための追加標的プラスミド)またはトランススプライスされたmRNAを模倣する100μgの対照cDNA(mAlb-HPV16抗E7 scFv)プラスミドを、正常なC57BL/6マウスに尾静脈を経由して水圧をかけて注入した。血清サンプルを8、16および24時間の時点に採取してウェスタンブロットにより分析した。ほぼ25〜100μl血清を、FLAGアフィニティカラムを通過させ、次いでサンプルを12%SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜上に移し、そして抗FLAGM2モノクローナル抗体を用いて調べた。タンパク質を、化学発光キット(Invitrogen、Cat# WB7103)を用いて可視化した。
【0114】
ウェスタンブロット結果は、cDNA対照発現プラスミドによる注入後、早くも8時間にマウスの循環中にHPV-16抗E7 scFvの出現を示し(図17A、レーン3および4)、そのレベルは24時間に有意に低下した(図17A、レーン7および8)。効率的なトランススプライシングおよび予想30kDa HPV16抗E7 scFvの産生は、標的とPTMの両方を受容したマウスにおいても検出された(図17B、レーン3〜5、左パネル)。他方、模倣処置したマウスにおいてかかるバンドは検出されなかった(図17B、レーン1〜2、左パネル)。最後に、PTM(内因性標的を標的化する)だけを受容したマウスも30kDa HPV16抗E7 scFvの存在を示した(図17C、レーン1〜2)。これらの結果は明らかに、(a)マウスアルブミンPTMのマウスアルブミン標的プレmRNAへの有効かつ正確なトランススプライシング、(b)トランススプライシングを介するHPV16抗E7 scFvの産生を示す。さらに、以上の結果は、治療抗体ポリペプチドおよびそのフラグメントのin vivo生産をするための本発明の標的化計画をさらに確証するものである。
【0115】
実施例5:二重鎖抗体生産
また、本発明のPTMカセットを用いて軽鎖と重鎖の両方を含有する抗体を産生させることができる。図6に図解したビシストロンPTMカセットは、図15Aに示したHPV-16 E7 scFv PTMと類似するが、ただし、このカセットは一本鎖抗体配列のコーディングドメインの後に、口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2A自己切断オリゴペプチド(Fangら, Nature Biotechnol, 23: 584, 2005、本開示は本明細書に参照により援用される)または脳心筋炎ウイルス(ECMV)内部リボソーム侵入部位(IRES)(Martienz-Salas, Curr Opin Biotechnol, 10:458, 1999、本開示は本明細書に参照により援用される)配列、それに続く、第2鎖の高レベルの翻訳を誘導するための全長コード配列を含有しうることである。第2トランスジーンを発現するための2Aオリゴペプチドおよび/またはIRES配列の使用は公知である(Fangら, Nature Biotechnol, 23: 584, 2005;Martienz-Salas, Curr Opin Biotechnol, 10:458, 1999)。さらに、一本鎖および第2鎖(別のPTM)をコードするPTMも、二重鎖抗体を作製するために利用することができる。
【0116】
本発明はまた、本発明の組成物の1以上の成分を詰めた1以上の容器を含んでなるパックまたはキットも提供する。上記パックまたはキットは、製薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局により指示された様式の、ヒトに投与するための製造、使用または販売の当局による認可を示す通知書を含んでもよい。
【0117】
本発明は本明細書に記載の特定の実施形態または実施例によりその範囲を制限されるものでない。実際、本明細書に記載に加えて、以上の明細書および添付図面から本発明の様々な変更が当業者には明らかであろう。かかる改変は添付せる請求の範囲内に包含されると考えられる。様々な参考文献が本明細書に引用されているが、これらの開示は全て本明細書に参照によりその全てが組み入れられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】シス対トランススプライシング反応の模式図を示す。
【図2】プレ-トランススプライシング分子(PTM)の模式図を示す。
【図3】標的5'スプライス部位とPTM3'スプライス部位の間のトランススプライシング反応および3'エキソン置換の模式図を示す。
【図4a】標的プレmRNAとヒト免疫グロブリン重鎖をコードする配列を含むPTMとの間のスプライシング反応の模式図を示す。
【図4b】図4bは、標的プレmRNAとヒトIg Fv断片をコードする配列を含むPTMとのスプライシング反応の模式図を示す。
【図5】図5は、アルブミンプレmRNAと、単鎖モノクローナル抗体をコードする配列を含むPTMとのトランス−スプライシングの模式図を示す。
【図6】図6は、全抗体産生のためのビシストロンPTMの模式図を示し、PTMカセットは、結合ドメイン、短スペーサー、BP、PPTを含むトランススプライスドメイン(TSD)、全軽鎖に対するコード配列、口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2A自己プロセシングペプチドまたは脳心筋炎(ECMV)内部リボゾーム侵入部位(IRES)、続いて重鎖の全長コード配列が含まれる。略語:BD、結合ドメイン;BP、ブランチポイント;PPT、ポリピリミジントラクト;3’ss、スプライス部位。
【図7】色々なトランススプライシング反応の模式図を示す。(a)標的5'スプライス部位とPTMの3'スプライス部位の間のトランススプライシング反応、(b)標的3'スプライス部位とPTMの5'スプライス部位の間のトランススプライシング反応、および(c)二重トランススプライシング反応による内部エキソンの置換であって、その場合、PTMは3'と5'スプライス部位を保持する。BD、結合ドメイン;BP、ブランチポイント配列;PPT、ポリピリミジントラクト;およびss、スプライス部位。
【図8】トランススプライシングが介在するHPV-16 E7の一本鎖抗体作製計画に応用した本発明を示す。
【図9】マウスアルブミンエキソン1‐HPV16抗E7scFv cDNAの模式図を示す。
【図10】トランススプライスされたマウスアルブミン-HPV16抗E7 scFv mRNAのヌクレオチド配列を示す。
【図11】さらなるエンドペプチダーゼ切断部位を含有するPTMの模式図を示す。PTM構造は、さらなるエンドペプチダーゼ切断部位または自然の「プロ」ペプチド配列を有することを除くとscFv PTMに類似している。
【図12】最終生成物中のアルブミン配列を除去するためのトランススプライシング計画の模式図を示す。Ex1、アルブミンのエキソン1;CS、さらなる切断部位。
【図13】Hepa1-6細胞中のHPV16抗E7 scFvの産生を表すSDSゲルを示す。マウスアルブミン-HPV16抗E7 scFv cDNA(トランススプライスされたmRNAと同一)をHepa1-6およびCos-7細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に上清と細胞ライセートを調製し、抗FLAG M2 モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。矢印は、予想される〜30kDaマウスアルブミン-HPV16抗E7 scFvを示す。
【図14】トランススプライスされたmAlb-HPV16抗E7 scFvが細胞中で機能することを示す。HPV-ポジティブ子宮頚癌細胞、SiHa、または整合するHPV-ネガティブ細胞を、mAlb-HPV16抗E7 scFv発現cDNAプラスミドを用いてトランスフェクトした。細胞を5日間増殖し、MTTアッセイを用いて細胞生存について試験した。
【図15】in vitro POP研究に使用した、HPV16抗E7 scFv PTM(A)、スプライス変異体(B)およびマウスアルブミンのミニ遺伝子標的(C)の模式図を示す。PTMカセットは、マウスアルブミン・イントロン1特異的結合ドメイン(BD)を含むトランススプライシングドメイン、短いスペーサー、コンセンサス配列ブランチポイント(BP)、最適化ポリピリミジントラクト(PPT)、3'アクセプター部位(CAG)、と続くHPV16抗E7 scFv配列のコード配列の大部分から成る。PTM発現はCMVプロモーターにより駆動される。3'末端において、PTMはまた、FLAGエピトープと続くウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH pA)も含有する。スプライス変異体は機能性PTMを同一であるが、アクセプター部位(CAG>CAT)に点突然変異を有する。ss、3'スプライス部位;矢印はトランススプライシングアッセイに用いたプライマーを示す。
【図16】細胞における、HPV16抗E7 scFv PTMのマウスアルブミン・エキソン1への正確なトランススプライシングを示す。
【図17A】mAlb-HPV16抗E7 scFv cDNAを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析を示す。25μl血清をFLAGアフィニティカラムを通過させ、ウェスタンブロットにより抗FLAG M2モノクローナル抗体を用いて分析した。
【図17B−C】HPV16抗E7 scFv PTMを単独で注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析を示す。50〜100μl血清をFLAGアフィニティカラムを通過させ、ウェスタンブロットにより抗FLAG M2モノクローナル抗体を用いて分析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体ポリペプチドをコードする核酸分子を含む細胞であって、
上記核酸分子は、
上記抗体ポリペプチドをコードする核酸分子と細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされる抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
を含んでなり、そして
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識される、上記細胞。
【請求項2】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物である、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物である、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物である、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖、Ig軽鎖、Ig Fv断片、Ig Fab断片、Ig Fc断片、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
抗体ポリペプチドが、一本鎖抗体である、請求項1に記載の細胞。
【請求項9】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖およびIg軽鎖を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項10】
抗体ポリペプチドが、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に特異的である、請求項1に記載の細胞。
【請求項11】
抗体ポリペプチドが、微生物または自己抗原関連抗原に特異的である、請求項1に記載の細胞。
【請求項12】
微生物関連抗原が、ウイルスおよび酵母抗原からなる群から選択される、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
核酸分子がさらに、サイトカインまたは成長因子をコードする配列を含む、求項1に記載の細胞。
【請求項14】
抗体ポリペプチドをコードする核酸分子であって、
上記核酸分子は、
上記抗体ポリペプチドをコードする核酸分子と細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされる抗体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
を含んでなり、そして
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識される、上記核酸分子。
【請求項15】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項17】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項18】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項19】
標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項20】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖、Ig軽鎖、Ig Fv断片、Ig Fab断片、Ig Fc断片、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項21】
抗体ポリペプチドが、一本鎖抗体である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項22】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖およびIg軽鎖を含む、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項23】
抗体ポリペプチドが、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に特異的である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項24】
抗体ポリペプチドが、微生物または自己抗原関連抗原に特異的である、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項25】
微生物関連抗原が、ウイルスおよび酵母抗原からなる群から選択される、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項26】
核酸分子がさらに、サイトカインまたは成長因子をコードする配列を含む、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項27】
抗体分子をコードするキメラRNA分子を細胞内で産生する方法であって、
細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAを、抗体ポリペプチドをコードしかつ核スプライシング成分により認識される核酸分子と接触させるステップを含んでなり、
上記核酸分子は、
抗体ポリペプチドをコードする核酸分子と上記細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされるヌクレオチド配列;
を含んでなり、
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識される、上記方法。
【請求項28】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖、Ig軽鎖、Ig Fv断片、Ig Fab断片、Ig Fc断片、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
抗体ポリペプチドが、一本鎖抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖およびIg軽鎖を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
抗体ポリペプチドが、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に特異的である、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
抗体ポリペプチドが、微生物または自己抗原関連抗原に特異的である、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
微生物関連抗原が、ウイルスおよび酵母抗原からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
核酸分子がさらに、サイトカインまたは成長因子をコードする配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
抗体ポリペプチドを細胞内で産生する方法であって、
細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAを核酸分子と接触させて抗体ポリペプチドをコードするキメラRNA分子を産生するステップを含んでなり、
上記核酸分子は、
上記核酸分子と上記細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされるヌクレオチド配列;
を含んでなり、
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識される、上記方法。
【請求項41】
上記キメラRNA分子が細胞により翻訳されて抗体ポリペプチドを産生する、細胞。
【請求項42】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖、Ig軽鎖、Ig Fv断片、Ig Fab断片、Ig Fc断片、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
抗体ポリペプチドが、一本鎖抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
抗体ポリペプチドが、Ig重鎖およびIg軽鎖を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
抗体ポリペプチドが、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に特異的である、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
抗体ポリペプチドが、微生物または自己抗原関連抗原に特異的である、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
微生物関連抗原が、ウイルスおよび酵母抗原からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
核酸分子がさらに、サイトカインまたは成長因子をコードする配列を含む、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B−C】
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【公表番号】特表2008−515435(P2008−515435A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535850(P2007−535850)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/036215
【国際公開番号】WO2006/083331
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(508009998)バークシス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】