説明

抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法

【課題】抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法を提供する。
【解決手段】血液試料中の他の細胞から目標細胞を識別できるように、血液試料を1または複数の標識剤と合成する工程を含む。血液試料および容量占有セパレータフロートは、透明または半透明な可撓試料管に挿入される。セパレータフロートは、規定の比重と拡張時の試料管の内径よりも小さい断面径を有する。セパレータフロートは、硬質の本体部と管支持部材とを備える。セパレータフロートは、側壁とともに1または複数の分析領域を形成する。血液試料およびセパレータフロートは、試料管内で遠心力が付与され、血液試料中に存在するあらゆる目標細胞が遠心力により分析領域に局在化される。その後、分析領域に存在する血液試料は検査され、目標細胞が存在するかどうか識別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度に基づく流体分離に関し、詳細には、遠心分離によって層状化された流体構成成分の分離および軸方向拡張のための改良型試料管およびフロートを採用した抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
定量バフィーコート(QBC:Quantitative Buffy Coat)分析は、全血を評価するために、臨床試験室において日常的に実施されている。バフィーコートは、非凝固血液を遠心分離または静置したときに赤血球と血漿の層の間に形成される、白血球細胞の一連の薄い明色層である。
【0003】
QBC分析技術では、一般に、抗凝固処理全血を含む微小毛細管の遠心分離を利用して、血液を基本的に6つの層、すなわち(1)濃縮赤血球、(2)網状赤血球、(3)顆粒球、(4)リンパ球/単球、(5)血小板、(6)血漿に分離する。バフィーコートは、上から順番に、血小板、リンパ球、顆粒球および網状赤血球の層よりなる。
【0004】
毛細管の検査に基づいて、QBC分析時に各層の長さまたは高さを求め、細胞計測値に変換することで、各層の定量測定が可能になる。各層の長さまたは高さは、手動読取り装置、すなわち拡大接眼鏡および手動ポインティングデバイスを使用して、または管の長さ方向に沿って光透過率および蛍光発光を測定することにより層を確認する自動光学式走査装置によって光学的に測定することが可能である。広く使用されている一連のQBC計測器が、ニュージャージ州フランクリン・レークスのベクトン−ディッキンソン・アンド・カンパニー(Becton-Dickinson and Company)によって製造されている。
【0005】
バフィーコート層は非常に薄いので、多くの場合、正確な視覚的または光学的測定を行うために、毛細管内にプラスチックシリンダまたはフロートが挿入されて、バフィーコートが毛細管内で拡張される。フロートは、赤血球の密度(1.090g/ml)より小さく、血漿の密度(約1.028g/ml)より大きい密度を有し、管の断面積のほぼすべてを占める。したがって、この容量占有フロートは、通常、濃縮赤血球層上に静止して、より容易かつ正確な測定に向けて、管内のバフィーコート層の軸方向長さを拡張させる。
【0006】
当該技術分野では、血液を分離したり、あるいは血液試料中のバフィーコート層や他の層内の流血中癌や他の希少細胞、生体、粒子または物体(すなわち幹細胞、細胞断片、ウイルス感染細胞、トリパノソーマ等)を識別したりするための改良型試料管、フロートシステムおよび方法が必要とされている。しかしながら、バフィーコートに一般的に存在すると想定される細胞の数は、血液の量に比べて極めて小さく、例えば血液1ミリメートル当たり1から100個の範囲であるため、特に従来のQBC毛細管およびフロートに採用される微小試料サイズでは、測定が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の例示的な実施形態による、全体的にスプール状のセパレータフロートを有する試料管の断面図である。
【図2】本発明の他の例示的な実施形態による、全体的に円錐形の端部を有するセパレータフロートの立面図である。
【図3】本発明の他の例示的な実施形態による、全体的に円錐台形の端部を有するセパレータフロートの立面図である。
【図4】端部が全体的に凸形または円蓋形のさらに他の例示的な実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図5】端部から離間した位置に密封隆起を有するさらに他の例示的な実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図6】本発明のさらに別の例示的な実施形態によるリブ付きセパレータフロートの立面図である。
【図7】本発明のさらに別の例示的な実施形態によるリブ付きセパレータフロートの立面図である。
【図8】本発明のさらに別の例示的な実施形態によるリブ付きセパレータフロートの立面図である。
【図9】全体的に螺旋状の管支持隆起を有する、本発明の他の例示的な実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図10】半径方向に先細りする支持リブを有する本発明のさらに別の実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図11】全体的に先細になった螺旋状の管支持隆起を有する本発明のさらに他の例示的な実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図12】断面径状が丸みを帯びた支持リブを有する本発明の他の実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図13】断面径状が丸みを帯びた、螺旋状の支持隆起を有する本発明の他の実施形態によるセパレータフロートの立面図である。
【図14】本発明の他の例示的な実施形態によるスプライン加工セパレータフロートの立面図である。
【図15】図14の線15−15に沿った拡大断面図である。
【図16】本発明のさらに別のスプライン加工セパレータフロートの実施形態の立面図である。
【図17】本発明によるさらに別のスプライン加工フロートの実施形態の立面図である。
【図18】本発明によるさらに別のスプライン加工フロートの実施形態の立面図である。
【図19】本発明のさらに他のスプライン加工フロートの実施形態の斜視図である。
【図20】支持隆起が、交差する環状リブおよびスプラインを含むさらに他の例示的な実施形態のフロートの斜視図である。
【図21】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図22】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図23】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図24】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図25】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図26】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、全体的に丸形の凸部を有するノブ付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図27】本発明のさらに別の例示的な実施形態による小面状凸部を有するスパイク付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【図28】本発明のさらに別の例示的な実施形態による小面状凸部を有するスパイク付きまたはスタッド付きセパレータフロートの立面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて説明する。なお、各図面の記載は、本発明の好ましい実施形態を例示することのみを目的とし、それを制限することを目的とはしていない。図1は、血液分離管およびフロート・アセンブリ100を示す図で、このアセンブリは、本発明のセパレータフロートまたはボバー(Bobber)110を内部に有する試料管130を備えている。
【0017】
試料管130は、描かれた実施形態では全体的に円筒形であるが、多角形および他の幾何学断面形状を有する管も考えられる。試料管130は、第1の閉鎖端132と、ストッパまたはキャップ140を受ける第2の開放端134とを含む。他の密封手段として、例えばパラフィルム(Parafilm)なども考えられる。代替的な実施形態(不図示)では、試料管を各端部で開放し、各端部が適切な密封装置を受けるようにすることができる。
【0018】
管は、全体的に円筒形として描かれているが、特に射出成形法によって製造する場合は、開放端134に向けて僅かに拡大するように、管130に最小限のテーパーを付けることができる。このテーパまたは抜き勾配は、管を射出成形具から容易に取り除くのに一般に必要なものである。
【0019】
管130は、透明または半透明の材料で形成されている。管130の側壁136は、十分にフレキシブルにまたは変形可能に構成され、遠心分離時には、例えば遠心荷重下での試料の静水圧により、半径方向に拡張する。そして、遠心力が取り除かれると、管側壁136は、実質的に本来のサイズおよび形状に戻る。
【0020】
管は、任意の透明または半透明の可撓性材料(有機および無機)、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン/ブタジエン共重合体(例えば、オクラホマ州バートルズビルのフィリップス66社から入手可能なK−Resin(登録商標))などで形成することが可能である。管は透明であることが好ましいが、試料検体中の対象となる細胞または物体を探す受信計が、管内のこれらの物体を「確認」または検出できるのであれば、管は必ずしも透明でなくてもよい。例えば、バルク試料内で検出できない極めて低放射活性レベルの物体を、以下により詳細に説明するように、本発明の方法により分離して、フロート110により壁付近にトラップした後で、不透明または半透明の壁を通じて検出することが可能である。
【0021】
好ましい実施形態において、管130は、少なくとも約5ミリリットルの血液または試料流体、より好ましくは少なくとも約8ミリリットルの血液または流体、最も好ましくは少なくとも約10ミリリットルの血液または流体を、フロート110と共に収容できるようにサイズ設定される。特に好ましい実施形態において、管130は、約1.5cmの内径138を有し、少なくとも約10ミリリットルの血液をフロート110と共に収容する。
【0022】
フロート110は、本体部112と、フロート110の軸方向の両端にそれぞれ配置された2つの密封リングまたはフランジ114とを含む。フロート110は、1つまたは複数の全体的に硬質の有機または無機材料、好ましくは硬質プラスチック材料、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、ポリアセタール、ポリアセテート、ポリアクリロニトリルおよび他のニトリル樹脂、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリアミド−イミド、ポリアリレート、ポリアリレン酸化物、ポリアリレン硫化物、ポリアリルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメタクリレート、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアロマー、ポリオキサジアゾール、ポリパラキシレン、ポリフェニレン酸化物(PPO)、改質PPO、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオリエチレンの如きフッ素含有重合体、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルの如きポリハロゲン化ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、特殊重合体等で形成され、最も好ましくはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等で形成される。
【0023】
この点において、本発明の目的の1つは、検出または走査法に干渉する材料および/または添加剤の使用を避けることである。例えば、検出を目的として蛍光を利用する場合は、フロート110を構成するのに利用される材料は、対象となる波長に干渉またはバックグラウンド(Background)蛍光を有するものであってはならない。
【0024】
フロート110の本体部112および密封リングまたは支持部材114は、加圧下または遠心力下で、試料管130の内径138より小さい外径118を有するようにサイズ設定される。フロート110の本体部112も密封または支持リング114より小さく設定され、これにより、フロート110と管130の側壁136との間に環状溝150が形成されるようになっている。本体部は、管の断面積の多くを占め、環状の間隙150は、管が曲がってない状態のときにバフィーコート層の細胞成分および関連する目標細胞を収容するのに十分な大きさを有する。寸法118および138は、環状の間隙150が好ましくは約25から250ミクロン、最も好ましくは約50ミクロンの半径方向厚さを有するように、設定される。
【0025】
場合によっては、フロート110の本体部112の外径118は、管130の内径138より小さくてもよいが、この関係は必須ではない。なぜなら管130に遠心力が付与(加圧)されると、管130が拡張して、フロート110が自由に移動できるようになるからである。遠心分離(加圧)工程が終了すると、管130は収縮して、再び密封リングまたは支持隆起(Support Ridges)114を押し付ける。その結果、環状間隙または溝150が形成され、そのサイズが支持隆起または密封リング114の高さによって設定される(すなわち、貯留部(Pool)の深さは、管径に関係なく、支持隆起114の高さと等しくなる)。
【0026】
特に好ましい実施形態において、フロート寸法は、高さ3.5cm、直径1.5cmで、本体部は、血液のバフィーコート層を捕捉するために50ミクロンの間隙を提供するようにサイズ設定される。したがって、バフィーコート層の捕捉に利用可能な体積は約0.08ミリリットルである。バフィーコート層全体は、一般には全血試料の約0.5%より小さいため、好ましいフロートは、8〜10ミリリットルの血液試料において分離されるバフィーコート層の全量を収容する。
【0027】
密封または支持フランジ端部114は、管の内径138にほぼ等しいか、それよりわずかに大きくなるようにサイズ設定される。フロート110は、全体的に硬質で、可撓管壁136を支持することもできる。また、大径部114は、血液構成層の分離を維持するシール機能を提供する。フロートの大径領域114と管の壁136との間に形成されたシールは、流体密封シールを構成する。本明細書に用いられている「シール」という用語は、多くの場合は本発明の目的に適した実質的なシールを提供するもの、すなわちフランジ114と管壁136の間のほぼゼロの隙間またはわずかな干渉を包含することを意図したものである。
【0028】
密封リング114は、最も好ましくは連続隆起で、この場合は、試料をより低速度で遠心分離することができ、分離層のスランピング(Slumping)が抑制される。しかし、代替的な実施形態において、密封隆起は、環状間隙150の内外に流路を提供する1つまたは複数の開口部を有する不連続または分割帯でありうる。密封隆起114は、個別に形成して、本体部112に取り付けるようにしてもよい。しかし、密封隆起114および本体部112は、単一または一体構造を形成するのが好ましい。
【0029】
セパレータフロート110の全体比重は、赤血球の比重(約1.090)と血漿の比重(1.028)との間に設定する必要がある。好ましい実施形態において、上記比重は、約1.089〜1.029の範囲、より好ましくは約1.070〜約1.040の範囲、最も好ましくは約1.05である。
【0030】
フロートの全比重が所望の範囲内にあれば、異なる比重を有する複数の材料でフロートを形成できる。フロート110の全体比重および環状間隙150の体積を、バフィーコート層と共にある程度の赤血球および/または血漿が環状間隙内に保持されるように選択することができる。遠心分離すると、フロート110は、バフィーコート層および目標細胞と同じ軸方向位置を占め、濃縮赤血球層上に浮遊する。バフィーコートは、フロート110と管130の内壁136との間の狭い環状間隙150に保持される。その際に、拡張されたバフィーコート領域を例えば照明および拡大下で検査して、流血中上皮癌もしくは腫瘍細胞または他の目標分析物を識別することができる。
【0031】
1つの好ましい実施形態において、フロート110の密度は、血液試料の顆粒球層に定在するように選択される。顆粒球は、濃縮赤血球層上または真上に存在し、約1.08〜1.09の比重を有する。この好ましい実施形態において、フロートの比重はこの約1.08〜約1.09の範囲にあり、遠心分離するとフロートが顆粒球層内に留まることとなる。顆粒球の量は、患者によって約20倍も変動しうる。したがって、フロートが顆粒球層内に留まるようにフロート密度を選択することは、顆粒球の真上に存在するリンパ球/単球層のいずれかの損失が回避されるため、特に有利である。遠心分離時には、顆粒球層が増加するにつれて、フロートは顆粒球内のより高い位置に留まるようになり、リンパ球と単球をフロートと実質的に同じ位置に維持する。
【0032】
米国特許第6,197,523号に開示されている被験者の血流中の循環上皮癌を検出するための方法は、本件発明の試料管およびフロートシステムを採用するようにモディファイすることが可能である。上記米国特許第6,197,523号は、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれている。
【0033】
本発明の管/フロートシステム100を使用する好ましい例示的な方法においては、抗凝固処理血液の試料が提供される。例えば、標準バキュティナー(Vacutainer:登録商標)、または抗凝固剤が予め仕込まれたタイプの他の同様の血液採取装置を使用して、分析すべき血液を引き込むことができる。
【0034】
目標上皮細胞または他の対象分析物に特有の蛍光標識抗体(Fluorescently Labeled Antibody)を血液試料に添加し、培養することが可能である。例示的な実施形態において、上皮細胞は、蛍光標識が付されたAnti−EpCAM抗体で標識される。Anti−EpCAM抗体は、血流中に通常見いだされる他の細胞に存在しないと想定される上皮細胞特有部位に結合する。アクリジン・オレンジの如き染色剤または着色剤を試料に添加して、それぞれの細胞型に異なる色を帯びさせることにより、照明下でのバフィーコート層の識別を容易にすることができ、また試料の検査時に上皮細胞の形態を強調または明確化することができる。
【0035】
その後、血液は、遠心分離を行うためにアセンブリ100に移送される。フロート110は、血液試料が試料管130内に導入された後に試料管130内に嵌入するようにしても、あるいは試料管130内に予め配置しておくようにしてもよい。その後、試料を含んだ管およびフロートアセンブリ100は、遠心分離にかけられる。この管/フロートシステム100によって血液を遠心分離するのに必要な動作は、従来の場合と顕著に違わないが、上述したように、遠心速度を減速させることが可能で、スランピングの問題を緩和することができる。場合によってはロータにアダプタを利用して、応力による可撓管の破壊を防止することができる。
【0036】
遠心分離が開始されると、生じた水圧が、管の径を拡大するように壁136を変形または屈曲させる。このため、血液成分およびフロート110は、遠心力の下で管130内を自由に移動する。血液試料は、密度に応じて、下から順に濃縮赤血球、網状赤血球、顆粒球、リンパ球/単球、血小板および血漿の6つの異なる層に分離する。画像化の対象とする上皮細胞は、密度により、バフィーコート層、すなわち顆粒球、リンパ球/単球および血小板層に集まる。フロートは、その密度に基づいて、バフィーコート層と同じ軸方向位置を占める。バフィーコート層は、場合によっては少量の赤血球および/または血漿と共に、狭い環状間隙150を占める。
【0037】
遠心分離が終了して遠心力が除かれると、管130は本来の径に戻って、環状間隙150内のバフィーコート層および目標分析物を捕捉または保持する。その後、管/フロートシステム100は顕微鏡または光学式リーダに移送されて、血液試料中の各目標分析物の識別が行われる。
【0038】
図2〜図28は、本発明によるフロートの幾つかの典型的な変形例を示す図である。図2は、図1を参照して示し説明したフロート110と同様のフロート210を示す図である。このフロート210は、本体部212と密封リング214を備えるとともに、その両端部に、先細または円錐形のエンドキャップ部材216を備えている。先細状のエンドキャップ216は、遠心分離時に、フロート210および密封隆起214を通る細胞の流れを促進・誘導するために設けられている。
【0039】
図3は、図2を参照して示し説明したフロート210と同様のフロート310を示す図である。このフロート310は、本体部312と密封隆起314を備え、その両端部に、円錐台形のエンドキャップ部材316を備えている。円錐台形エンドキャップ316は、遠心分離時の細胞流およびフロートの移動を促進するために設けられている。
【0040】
図4は、図2および図3をそれぞれ参照して示し説明したフロート210および310と実質的に同様のフロート410を示す図である。このフロート410においては、全体的に凸形または円蓋形の部材416が密封隆起414を覆う構成となっている。エンドキャップ416は、半球形、半楕円形、または同様に傾斜した形状となっている。ここでも、傾斜端部416は、遠心分離時における密度に応じた細胞およびフロート移動を促進するために設けられている。
【0041】
図2〜図4にそれぞれ示されるエンドキャップ・ユニット216,316,416の幾何学的形状は、例示のみを目的としており、これ以外にも、湾曲面、勾配面および/またはテーパー面を与える他の多くの幾何学的形状(凹形または凸形構成を含む)があり、遠心分離時には、その周囲を血液試料が流れることとなる。考えられるさらなる例示的な形状としては、屋根形(tectiform)およびその切頭形、三面、四面またはそれ以上の面を有する角錐形および切頭角錐形、オジバル(ogival)形およびその切頭形、ならびにジオデシック(Geodesic)形状等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0042】
図5は、図1に描かれている実施形態と同様のフロート510を示す図である。このフロート510においては、端部から軸方向に移動した位置に密封隆起514が配置されている。例示された実施形態では、随意のエンドキャップ部材516が円錐形として表示されている。しかし、エンドキャップ516は、設ける場合には、上述したように、勾配またはテーパ面を与える任意の他の幾何学的形状を用いてもよいことが認識されるであろう。
【0043】
残りの図6〜図28には、全体的に平坦な端部を有するもの、すなわち先細状端部を有していないものが示されているが、例示されている実施形態の各々は、図2〜図5に示される上述のエンドキャップ型のいずれか、または傾斜またはテーパー面を与える他の幾何学的構成を含むように、場合によっては変更できることが認識されるであろう。
【0044】
図6〜図13は、全体的に環状の管支持部材を有する本発明の実施形態を示す図である。図6はリブ付きフロート610を示す図で、このフロート610は、中心本体部612に沿って軸方向に間隔をおいて配置された複数の環状リブまたは隆起620を備えている。このフロートの両端には、随意の端部密封隆起614がそれぞれ配置されている。リブ620および随意の端部密封隆起614は、遠心力が取り除かれたときに管130(図1)との密封係合を提供するようにサイズ設定されている。可撓管は遠心分離時に拡張して、密度に基づく遠心分離処理時に、それらの周囲における流れを可能にする。本体部612は、遠心分離時とリブ614に支持されている間は、管の内径より小さい径を有する。そして、遠心分離処理が終了すると、本体部612と管内壁の間に多数の環状溝650が形成される。
【0045】
図6に例示の実施形態は、連続的なリブを示しているが、支持リブを同様に分断またはセグメント化することにより、隣り合う環状溝650間の流路を拡大できることが認識されるであろう。さらに、変形し得る管を支持し、かつ/または管壁が内方向に崩れるのを防ぐために、多数のリブおよび/または密封隆起が存在していてもよい。
【0046】
図7は、さらなる実施形態に係るフロート710を示す図である。フロート710は、図6に示されるフロート610と同様で、中心本体部712に沿って軸方向に間隔を設けて配置された複数のリブ720を有し、それらリブ720の間には、複数の環状溝750が形成されている。管支持リブ720は、図6の実施形態よりも密集度が低く離れて配置されている。フロートの両端には、随意の密封隆起714が配置されている。ここでも、例示の実施形態は、連続的なリブを示しているが、支持リブを同様に分断または分割して、隣り合う環状溝750間の流路を拡大できることが認識されるであろう。
【0047】
図8は、図6および図7の実施形態と同様のさらなるフロートの実施形態810を示す図であり、上述した図6および図7についての説明は、この図8に対しても同等に適用可能である。しかし、フロート810は、随意的に設けることが可能な密封隆起をその両端に有していないという点において異なっており、リブ820の間隔は、図6および図7に示されるリブ間隔の中間である。
【0048】
図9はさらに別のフロートの実施形態910を示す図で、このフロートは螺旋状支持部材または隆起920を備えている。すなわち、互いに分離した環状帯の代わりに、螺旋状隆起920の複数のターンによって、本体部912上に互いに離間した一連の隆起が形成され、その隆起によって、対応する螺旋溝950が画成されている。螺旋状隆起920は、連続的なものとして示されているが、その代わりに螺旋帯を2つまたはそれ以上の区画に分割または分断して、螺旋状バフィーコート保持溝950の互いに隣り合うターンの間に、流体の流れる流路を設けることができる。フロート910の軸方向の両端部には、必要に応じて密封隆起914が設けられる。
【0049】
図10および図11は、リブ付きおよび螺旋状フロートのさらに別の実施形態1010および1110をそれぞれ示す図である。図10において、本体部1012上の環状支持リブ1020は、半径方向に沿って先細になっている。図11において、本体部1112上に形成された先細の螺旋状支持体1120が存在する。その他の点では、フロート1010および1110は、それぞれ図6および図9を参照しながら説明したものと同様である。支持部材1020および1120は、連続的なものとして示されているが、その代わりに、軸方向の流れを促進するために不連続になっていてもよいし、分割されていてもよい。また、フロート1010および1110の両端の上記密封隆起は、例示の実施形態において省略するようにしても、あるいは必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0050】
図12および図13は、リブ付きおよび螺旋状フロートのさらに別の実施形態1210および1310をそれぞれ示す図である。図示のように、支持部材1220および1320が、それぞれの本体部1212および1312上に形成されている。管支持部材1220および1320は、それぞれ全体的に湾曲したまたは円形の断面輪郭を有する。その他の点では、フロート1210および1310は、それぞれ図6および図9を参照して上述したものと同様である。ここでも、支持部材1220および1320は連続的なものとして示されるが、代替的な実施形態では、不連続または分割されたものであってもよい。図13には、随意の端部密封隆起1314が存在する。また、図12には端部密封隆起が示されていないが、場合によって設けることができる。
【0051】
次に図14および15を参照すると、スプライン加工されたセパレータフロート1410が示されている。このフロート1410は、中心本体部1412の周囲に、放射状(Radially)に間隔を設けて配置された軸方向を向く複数のスプラインまたは隆起1424を有する。フロートの両端には、随意の端部密封隆起1414が配置されている。スプライン1424および随意の端部密封隆起1414は、本体部1412から突出して、可変管(変形可能な管)に係合し、それに対する支持を提供する。端部密封隆起1414を設けた場合には、上述した密封機能が与えられる。管内壁と本体部1412の間には、軸方向凸部1424によって流体保持溝1450が形成されている。例えば本体部が円筒形の場合、凸部1424間における本体部の表面1413を曲面とすることができるが、平坦な表面1413も考えられる。例示の実施形態は、フロートの全軸方向長さに沿って連続したスプライン1424を示しているが、分割したスプラインまたは不連続なスプラインも考えられる。
【0052】
図16は、図14および図15を参照して示し説明したフロート1410と類似のスプライン加工フロートの他の実施形態1610を示す図である。このフロートにおいては、随意の端部密封隆起が設けられていない。
【0053】
図17および図18は、それぞれ代替的なスプライン加工フロート1710,1810の立面図で、それぞれの図14および図16を参照して上記に示し、説明したそれぞれの実施形態と類似しているが、それぞれの本体部1712,1812からそれぞれ突出する軸方向スプライン1724,1824が放射状により散在的に間隔を設けて配置されている。フロート1710は、図18のフロート1810には存在しない随意の端部密封隆起1714を含む。上述のように、それぞれの表面1713,1813は平坦または曲面とすることができる。
【0054】
次に図19を参照すると、本発明のさらなる実施形態によるスプライン加工セパレータフロート1910の斜視図が示されている。軸方向を向く多数のスプライン1924が放射状に間隔を設けて配置され、中心本体部1912から突出して、可撓管に対する支持を提供する。随意の密封端部隆起1914が、フロート1910の両端に配置されている。隣り合うスプライン1924と、本体部1912上の表面1913によって、隣り合うスプライン1924の間に形成された流体保持溝1950が定められる。表面1913は、全体的に平坦なものとして描かれているが、曲面も考えられる。軸方向スプライン1924は、管の長さに沿って連続的なものとして描かれているが、分割されたスプラインまたは不連続なスプラインも考えられる。
【0055】
次に図20を参照すると、本体部2012に対して突出した管支持部材2026を含むさらに他の実施形態2010が示されている。支持手段2026は、環状リングまたはリブ2020と軸方向スプライン2024との交差ネットワークとすることができる。フロートの両端には、随意の端部密封隆起2014が配置されている。支持部材2026および随意の密封隆起2014は、フロートの両端において本体部2012から半径方向に突出して、可変管に係合し、それに対する支持を提供する。端部密封隆起2014を設けた場合には、上述した密封機能が与えられる。隆起状の支持部材2026は、管内壁と本体部2012の間に複数の流体保持窓2050を形成する。本体部が円筒形のときは、窓2050に対応する本体部2012の表面2013を曲面とすることができるが、平坦な表面2013も考えられる。例示されている実施形態は、支持部材2026を連続的な環状リブと軸方向スプラインのネットワークとして示しているが、例えば2つまたはそれ以上の窓2050の間に流路を提供するために、ネットワーク2026の環状および/または軸状部に分断部を含めることもできる。
【0056】
図21〜図26は、試料管の可変壁に対する支持を提供するための複数の凸部を表面に有するいくつかのフロートを示す図である。図21および図22を参照すると、フロート2110および2210は、それぞれ中心本体部2112の表面に間隔を設けて配置された多数の円形突起またはノブ2128を有する。随意の端部密封隆起2114(図21)は、フロート2110の両端に配置されているが、図22のフロート2210には設けられていない。ノブ2128および随意の端部密封隆起2114は、本体2112から半径方向に突出し、環状間隙2150を横切って、可変管壁に係合し、それに対する支持を提供する。端部密封隆起2114が設けた場合には、上述した密封機能が与えられる。凸部間の本体部表面は、例えば本体部が円筒形のときは曲面であってもよく、あるいは平坦部または小面を有していてもよい。
【0057】
図23および図24には、図21および図22を参照して上述したものと実質的に同様であるが、凸部2328が、本体部2312の表面に、千鳥状のパターンではなく整列パターンを形成するフロートの実施形態2310および2410が示されている。図23の実施形態には、随意の端部密封隆起2314が設けられている。
【0058】
次に図25および図26を参照すると、それぞれ図21および図22を参照して上述したものと実質的に同様であるが、凸部2528が、より低い密集度で本体部2512の表面に間隔を設けて配置されているフロートの実施形態2510および2610が示されている。図25の実施形態には随意の端部密封隆起2514が設けられている。
【0059】
図27および図28は、それぞれ中心本体部2712の表面に間隔を設けて配置された多数の隆起小面2728を含むフロートの実施形態2710および2810を示す図である。随意の端部密封隆起2714(図27)は、フロート2710の両端に配置されているが、図28の実施形態には設けられていない。小面2728および随意の端部密封隆起2714は、本体2712から半径方向に突出し、環状間隙を横切って、可変管壁に係合し、それに対する支持を提供し、複数の流体保持窓2750を定める。端部密封隆起2714を設けた場合には、上述した密封機能が与えられる。本体部の表面2713は、凸部2728の間に配置されて、流体保持窓2750を区画する表面を構成するものであるが、この表面2713は、例えば本体部が円筒形のときには、曲面であってもよい。あるいは、表面2713は平坦であってもよい。代替的な実施形態においては、小面2718のサイズ、間隔密度および整列パターンを大きく変更することができる。
【0060】
可撓試料管を支持するものとして円形ノブまたは方形小面を参照しながら図21〜図28の例示的な実施形態を説明したが、任意の幾何学的形状の凸部を利用することができる。凸部の他の幾何学的形状としては、例えば円錐形または円錐台形スパイク、屋根形およびその切頭形凸部、円筒形凸部、角錐形または切頭角錐形凸部、半楕円形凸部や、それらの任意の組合せなども考えられる。同様に、凸部のサイズ、間隔およびパターンを変更することが可能である。試料を画像化する場合は、画像化視野および他の要因に従ってサイズおよび間隔を選択することが可能である。
【0061】
以上、好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明した。当然のことながら、上述した詳細な説明を読み、これを理解すれば、幾つかの修正や変更が思い付くことであろう。本発明は、添付の請求項またはその同等物の範囲内にある限り、それら全ての修正および変更を包含するものであると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法であって、
前記血液試料中の他の細胞から目標細胞を識別できるように、前記血液試料を1または複数の標識剤と組み合わせる工程と、
第1の径を内径とする細長い側壁を有する少なくとも半透明の可撓試料管に、前記血液試料を導入する工程と、
赤血球と血漿の中間の比重を有する容量占有セパレータフロートを、前記試料管に挿入する工程とを有し、
前記セパレータフロートは、硬質の本体部と、前記本体部から突出して前記試料管の前記側壁に係合するとともに前記側壁を支持する1または複数の支持部材とを備え、前記本体部および前記支持部材は、前記試料管が拡張されるときの当該管の第1の内径より小さい外径を有し、前記本体部は、前記側壁の軸方向に沿う部分と共に、その間に環状空間を形成し、前記支持部材は、前記環状空間を横切って、1または複数の分析領域を生成するように構成されており、
当該方法はさらに、
前記試料管内の前記血液試料およびセパレータフロートに遠心力を作用させて、前記分析領域内の前記血液試料中に存在する各目標細胞を遠心力によって局在化させる工程と、
遠心分離後に、前記試料管が前記セパレータフロートを圧迫することを可能にして、前記分析領域内に存在する前記血液試料を検査することにより、そこに含まれる各目標細胞を識別する工程と、を有することを特徴とする抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法。
【請求項2】
前記1または複数の標識剤は蛍光標識リガンドを含み、
前記血液試料を検査する工程では、照明および拡大下で、前記分析領域に存在する前記血液試料を画像化する処理をさらに行うことを特徴とする請求項1に記載の抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法。
【請求項3】
前記血液試料を染色剤と合成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の抗凝固処理全血試料中の循環目標細胞を検出するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−288254(P2009−288254A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208377(P2009−208377)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【分割の表示】特願2004−542039(P2004−542039)の分割
【原出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(501284217)バッテル メモリアル インスティチュート (6)
【出願人】(505411479)
【Fターム(参考)】