説明

抗炎症剤

本発明は、ヒトおよび動物における炎症の治療または予防の分野に関し、様々な炎症状態を、治療または予防するための、医薬組成物および方法に関する。特に、本発明は、シトルリン関連疾患、好ましくは炎症性疾患のような炎症状態を、予防または治療するための、組成物および方法に関する。本発明は、炎症状態の治療および予防に使用するための、シトルリン含有エピトープに対する特異的結合分子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物における炎症の治療または予防の分野に属し、様々な炎症状態を、治療または予防するための、医薬組成物および方法に関する。特に、本発明は、シトルリン関連疾患、好ましくは炎症性疾患のような炎症状態を、予防または治療するための、組成物および方法に関する。本発明は、炎症状態の治療および予防に使用するための、シトルリン含有エピトープに対する特異的結合分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
炎症状態は、慢性であろうと急性であろうと、医療業界における相当な問題を突き付ける。簡潔に述べるならば、慢性的な炎症は、活動性炎症、組織破壊、および治癒の試行は同時に進行する、持続時間の長い(数週間または数ヶ月の)炎症であると考えられる(Robbins Pathological Basis of Disease by R.S. Cortran, V.Kumar and S.L.Robbins, W.B.Saunders Co., p.75, 1989)。慢性炎症は、急性炎症の発症後に続き得るが、例えば、持続感染(例えば、結核、梅毒、真菌症)の結果として、内因性(例えば、血漿脂質)もしくは外因性(例えば、シリカ、アスベスト、タバコのタール、手術用縫合糸)の毒素への遷延性の曝露、または体自身の組織に対する自己免疫反応(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬)のような、時間経過とともに進行する潜行性のプロセスとしても生じ得る。
【0003】
炎症性関節炎は、特に高齢者の増加した先進国において深刻な健康問題である。例えば、炎症性関節炎の一種である慢性関節リウマチ(RA)は、世界の人口の1〜2%が侵されている多系統慢性の再発性炎症性疾患である。
【0004】
多くの器官が侵され得るが、RAは、基本的に、侵された関節の破壊および強直を導くこともある慢性滑膜炎症の重度の形態である(Rob bins Pathological Basis of Disease, by R.S. Cotran, V.Kumar, and S.L. Robbins, W.B.Saunders Co., 1989)。疾患は、関節隙に拡張する様々な投射を形成する滑膜の顕著な厚化、滑膜ライニング(滑膜細胞増殖)の多層化、白血球細胞(「炎症性滑膜炎」と称される、マクロファージ、リンパ球、形質細胞、およびリンパ濾胞)による滑膜の炎症、ならびに滑膜内の細胞壊死によるフィブリンの沈着により病理学的に特徴付けられる。この過程の結果として形成された組織はパンヌスと称され、パンヌスは最終的に関節隙を埋めるまで増殖する。パンヌスは、滑膜炎の進展に不可欠である血管新生の過程を通じて、新しい血管の広範なネットワークを発達させる。パンヌス組織の細胞に由来する、消化酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ストロメリシン))および炎症性プロセスの他の修飾因子(例えば、過酸化水素、スーパーオキサイド、リソソーム酵素、およびアラキドン酸代謝の生産物)の放出は、軟骨組織において進行性の破壊を導く。パンヌスは、関節軟骨に侵潤し、びらん(erosion)および軟骨組織の断片化を導く。結果的に、関与する関節について、線維性強直を有する肋軟骨下のびらんを生じ、最終的に骨性強直を生じる。
【0005】
一般的には、RAは自己免疫疾患であり、その多くの異なる関節刺激が免疫遺伝学的に感受性である宿主における免疫応答を活性化すると考えられている。外因性感染性病原体(Epstein-Barrウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マイコプラズマなど)と、コラーゲン、プロテオグリカン、変更された免疫グロブリン、およびシトルリン化タンパク質のような翻訳後修飾されたタンパク質などの内因性タンパク質との両者は、不適切な宿主の免疫応答を引き起こす病原体として関与している。刺激する病原体に関係なく、自己免疫は疾患の進行に影響を与える。特に、関連する抗原は、抗原提示細胞(滑膜における、マクロファージまたは樹状細胞)により摂取され、処理され、Tリンパ球に提示される。T細胞は、細胞性免疫応答をイニシエートし、形質細胞の増殖およびBリンパ球の形質細胞への分化を刺激する。最終的には、宿主組織に対する不適切な過剰の免疫応答(例えば、II型コラーゲンに対する抗体、自己由来のIgGのFc部分に対する抗体(「リウマチ因子」と称する))、および異なるシトルリン化エピトープに対する抗体(抗CCP)が生じる。このことは、さらに免疫応答を増幅し、軟骨組織の破壊を早める。一度このカスケードがイニシエートされれば、軟骨破壊の多数の修飾因子が関節リウマチの進行に関与する。
【0006】
上述の抗CCP抗体は、RAに特異性が高いことが示された。最近の証拠は、これらの抗体についての血清反応陽性である各個人が既にRAを有しているか、または将来この疾患が進展することを示す。抗CCP抗体の存在(特に、高力価が存在している場合)は、びらん性疾患の転帰の前兆である(Nijenhuis et al., Clin. Chim. Acta, vol 350, 17-34, 2004)。さらに抗CCP抗体は、炎症の局所的な部位において産生されることが示された。RA患者に由来する滑膜材料において見出される総IgGに対する抗CCP抗体の割合は、同じ患者の血清における当該割合よりも顕著に高いことが明らかである(Masson-Bessi鑽e et al., Clin Exp Immunol, vol 119, 544-552, 2000)(Reparon-Schuijt et al., Arthritis Rheum, vol 44、41-47、2001)。
【0007】
滑膜において形質細胞を産生する抗CCPの存在は、炎症部位におけるCCP特異的なB細胞の抗原駆動型の成熟を示す。一度抗CCP抗体が産生されれば、滑膜におけるシトルリン化タンパク質を有する免疫複合体の形成は、炎症過程の進行を引き起こし得る。これらのデータおよびその他のデータは、抗CCP抗体がRAの疾患症状の少なくとも一部を実際に引き起こすという仮説を支持する。RAの病因における抗CCP抗体の役割は、RA患者におけるBリンパ球減少実験の結果により支持される(Cambridge et al., Arthritis Rheum, vol48, 2146-2154, 2003)。
【0008】
進行した関節リウマチを持つ人々の死亡率は、数種のがんの死亡率を超えている。このため、治療法は、不可逆的な関節破壊の可能性を減少させるために設計される積極的な早期の薬物療法に移行している。米国リウマチ学会(Arthritis and Rheumatism 39(5): 713-722, 1996)の最近の推奨事項は、診断が確定し、症状が進行中の全ての患者のための疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)治療の早期開始を含む。抗がん剤は、リウマチの60〜70%の第1選択薬である化学療法薬のメトトレキサートとともに、大半の患者のための第1選択療法となった。重度疾患では、多くの場合、無期限のこの薬剤による毎週の治療を必要とし、メトトレキサート療法にも関わらず症状が進行する患者(患者の50%以上)には、シクロスポリンおよびアザチオプリンのような第2化学療法薬(単独または組み合わせ)が頻繁に採用される。
【0009】
特に、前記滑膜が関与している疾患およびシトルリン関連炎症性疾患などの、炎症性疾患の病理発生を抑制することが可能な炎症性疾患の治療または予防のための化合物が依然として必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のためのp15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0011】
また、本発明は、炎症性疾患を治療または予防するための方法であって、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を含む、治療に有効な量の抗炎症組成物をそれが必要とされる患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の組成物および方法は、シトルリン残基に反応する特異的結合分子の薬学的に受容可能な形態を含む。特に、上記結合分子は、本明細書においてp15およびp17と称したような2つのポリペプチドにおけるシトルリン化されたエピトープに特異的に反応する。
【0013】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明、図面、および実施例を参照すれば明らかになるであろう。加えて、より詳細な具体的手順、装置、または組成物が記載された様々な参考文献が本明細書に明記されており、したがってその全体が参照により組み込まれる。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明は、炎症性疾患の治療または予防に使用するための、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープと特異的に反応する結合分子を提供する。
【0015】
用語「特異的結合分子」は、特異的結合をすることができる分子、好ましくは小分子を示すために本明細書において使用される。この点において、特異的な結合は、分子が選択された標的分子に結合することができるが、同一の条件下において標的分子に関連しない他のものには結合しないことを意味する。例えば、結合分子が、血清アルブミンに結合するが、その他、好ましくは血清中に見出される他の全てのタンパク質に、ほとんどまたは全く結合しないときに血清アルブミンに特異的に結合すると表現する。
【0016】
この文章において、用語「シトルリンに特異的に反応する」または「シトルリン化エピトープに反応する」または「シトルリンエピトープに反応する」は、抗体が、シトルリン残基を含む、ペプチドまたはペプチド様分子のような構造に反応するが、前記抗体が、シトルリン残基の換わりにアルギニン残基を含む同一の構造にほとんど反応しないか、または好ましくは全く反応しないことを意味する。用語、ペプチドまたはペプチド様分子は、好ましくはヒトまたは動物の体に現れるような同一の構成(context)、好ましくは天然ポリペプチドの構成において、本明細書に記載されているような特異的な結合分子との免疫反応性のための正確な構成内にシトルリン残基が存在することができる構造として解釈されるべきである。
【0017】
「特異的結合分子」は分子であってもよく、好ましくは標的化合物に特異的に結合することができる、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質全体、またはそれらの組み合わせ、もしくはその部分であってもよい。特異的結合分子の好ましい例としては、一本鎖可変領域フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、単一ドメイン抗体(sdabs)、または、VHH抗体としても知られるナノボディ(ラクダ由来の単一ドメイン抗体)もしくはVNARと呼ばれるサメIgNAR由来単一ドメイン抗体フラグメント、もしくはそれらの他の活性成分、またはアンチカリン、またはアプタマー(DNAまたはRNA)のようなペプチドもしくは抗体またはその部分である。好ましい実施形態では、特異的結合分子は、抗体またはDNAもしくはRNA形態であるアプタマーのようなアプタマーの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質である。さらに好ましい実施形態では、特異的結合分子は、抗体フラグメント、ナノボディ、単一ドメイン抗体、またはそれらの活性部分を含むような、抗体またはそれらの誘導体を含む。したがって、本発明は、特に上述したような特異的結合分子に関し、前記特異的結合分子はペプチドまたは抗体である。
【0018】
用語「抗体(Antibodies)」または「抗体(antibody)」は、多くの場合「抗原」として表される標的分子に特異的に結合することができる、タンパク質またはポリペプチドを表す。抗体(免疫グロブリンとしても知られる)は、脊椎動物の血液または他の体液に見出され、細菌およびウイルスのような外来の異物を特定および中和する免疫系によって使用されるガンマグロブリンタンパク質である。
【0019】
抗体は、通常、基本的な構造ユニット(それぞれ、2つの大きな重鎖および2つの小さな軽鎖)によって、例えば、1ユニットを有するモノマー、2ユニットを有するダイマー、または5ユニットを有するペンタマーを形成するために作製される。抗体は、B細胞と称される種類の白血球によって生産される。抗体重鎖のいくつかの異なる種類およびいくつかの異なる種類の抗体が存在し、それらの有する重鎖に基づく異なるアイソタイプに分類される。異なる役割を有する5種の異なる抗体アイソタイプが哺乳類で知られており、それらが遭遇した外来の異物の異なる種類のそれぞれについて適切な免疫応答を直接に補助する。ラクダ(例えば、ラマ)およびサメのような数種の動物種は異常な抗体構造を有し得る。
【0020】
全ての抗体の一般的な構造は非常によく似ているが、タンパク質の先端にある小さな領域は、非常に変化に富んでおり、わずかに異なる先端構造を有する数百万の抗体が存在することを可能にする。この領域は可変領域として知られている。これらの変異体のそれぞれは、抗原として知られる異なる標的に結合することができる。抗体のこの豊かな多様性により、免疫系は等しく広い抗原の多様性を認識することが可能となる。抗体によって認識される抗原の独特の部分は、エピトープと称される。これらのエピトープは、生物を構成する異なる数百万の分子中の独特な抗原のみを識別して結合することができる、特異性の高い相互作用によってそれらの抗体に結合する。抗体タグによる抗原の認識は、免疫系の他の部分による攻撃のためである。また、抗体は、例えば、感染症を引き起こす病原体の一部に結合することによって、直接に標的を中和することができる。
【0021】
抗体の多種多様な集団は、異なる抗原結合部位(またはパラトープ)をコードする遺伝子セグメントのセットのランダムな組み合わせによって生成され、その後に抗体遺伝子のこの領域におけるランダムな突然変異が続く。また、抗体遺伝子は、重鎖の基礎を他の重鎖に変更し、抗原特異的可変領域が保持された抗体の異なるアイソタイプを作製する、クラススイッチングと称される過程において再認識される。このことは、単一抗体が、免疫系のいくつかの異なる部分によって、いくつかの異なるアイソタイプで使用されることを可能にする。
【0022】
本明細書において使用される、用語「抗体」は、一本鎖抗体、フラグメント抗原結合領域、組換え産生される抗体、モノクローナル抗体、単一ドメイン抗体などが含まれる。
【0023】
抗体または他の特異的結合分子との関連で、用語「またはそれらの一部」は、抗体または特異的結合分子の特異的な結合部位を構成する、抗体または特異的結合分子の一部を表し、抗体全体または特異的な結合分子のような同一のエピトープにでも反応することができる、抗体または特異的結合分子の一部と解釈し得る。
【0024】
抗体、抗体の特異的結合ドメインを含む融合タンパク質、アプタマー、抗体フラグメント、単一ドメイン抗体フラグメント、アンチカリンような他のタンパク質様結合ドメイン、およびシトルリン化エピトープに特異的に結合する小分子のような、全種類の特異的結合分子およびそれらの誘導体が本発明において使用することができる。しかし、ヒト抗体またはそれらのフラグメントが、本発明の好ましい実施形態である。好ましくは、IgG1重鎖とラムダ軽鎖とを有するIgG1(例えば、IgG1λ)抗体が使用される。しかし、カッパまたはラムダ軽鎖に組み合わせたIgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgEを含む、他のヒト抗体アイソタイプも本発明に包含される。また、動物に由来する抗体の多様なアイソタイプの全てが本発明において使用することができる。抗体は、Fab、F(ab’)2、単鎖Fvフラグメント、または単一ドメインVHH、VH、もしくはVLを含む、全長サイズ抗体または抗体の抗原結合フラグメントとすることができる。
【0025】
「特異的結合分子はシトルリン化エピトープに反応する」は、ペプチドもしくはペプチド核酸またはアプタマーもしくは疑似ペプチド構造のような大きな構造に関連して、シトルリン残基に特異的に反応する特異的結合分子として解釈される。
【0026】
シトルリンは、翻訳の間にタンパク質に組み込まれないアミノ酸である。しかし、それはペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニン残基の翻訳後修飾によって生成され得る。
【0027】
シトルリン化は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によって触媒され、アルギニン残基をシトルリン残基に翻訳後変換することである。ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素は、タンパク質においてアルギニン残基をシトルリン残基に変換することを触媒する。シトルリンについてのtRNAは存在せず、タンパク質中におけるシトルリン残基の存在は、全て翻訳後修飾の結果である。哺乳類(ヒト、マウス、およびラット)における5つのPADアイソタイプ(PAD1〜PAD6、「PAD4」および「PAD5」は同一のアイソタイプに使用される)は、それぞれ同定された別個の遺伝子にコードされている(Vossenaar, et al., Bioessays 25, 1106-1118, 2003)。全てのこれらの酵素は、活性についてCa2+の存在に強く依存しており、遊離のL−アルギニンを遊離のL−シトルリンに変換することはできない。遊離のL−アルギニンは、細菌真核生物においては一酸化窒素合成酵素(EC1.14.13.39)によって、または細菌においてはアルギニンデイミナーゼ(EC3.5.3.6)によって、遊離のL−シトルリンに変換することができる。これらの酵素はCa2+に依存していない。
【0028】
相同性の高いPADの酵素の間の最も顕著な違いは、それらの組織特異的な発現である。表皮におけるPAD1(同義語として、PADI、PADタイプI)は、角化エンベロープの再組織化のために重要である、ケラチノサイト分化の最終段階の間におけるケラチン繊維のシトルリン化に関与している。表皮におけるシトルリン化の他の部位は、PAD3(同義語として、PADIII、PADタイプIII)およびその天然基質であるトリコヒアリンを(THH)を含む毛包である。THHは、毛包内毛根鞘細胞および毛包髄質層、ならびにより少なくは他の特殊な上皮の髄質層の主要な構造タンパク質である。ごく最近同定されたPADアイソタイプ、PAD6(同義語としてePAD)は、初期胚発生に重要な役割を果たすマウス卵母細胞の細胞シートにおいて見出された。そのヒトオーソログの発現は、卵巣、精巣、末梢血白血球に制限されることが見出された(Chavanas et al., Gene vol 330; 19-27, 2004)。当初、このPADアイソタイプは、ePADと称されたが、他のパッドの系統番号に基づいて、このアイソタイプはPAD6(Vossenaar et al., Bioessays vol 25 1106-1118, 2003)に名称が変更された。最も広く発現するアイソタイプであるPAD2(同義語として、PADII、PADタイプII、PAD−H19)は、骨格筋、脳、脾臓、分泌腺、およびマクロファージのような多くの異なる組織に存在する。この広範な発現パターンにも関わらず、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびビメンチンを除いては天然基質として同定されていない。多発性硬化症(MS)の患者では、MBPに対する自己免疫応答が発生している。MBPは、ミエリン鞘に豊富なタンパク質であり、そのシトルリン化は中枢神経系の発生中に起こる。ビメンチンのシトルリン化は、カルシウムイオノフォアに誘導される、ヒトおよびマウスにおけるマクロファージのアポトーシス間に観察され、上述したように、シトルリン化されたビメンチンは、RA特異的な抗Sa自己抗体の標的であることが示された。全て主に細胞質に局在する上述したPADsとは対照的に、PAD4アイソタイプ(同義語として、PADIV、PADタイプIV、HL−60PAD、PAD V、PADタイプV、PADI4)は核内に存在する。PAD4の核局在化シグナルは、タンパク質のN末端領域で見出された。PAD4は、主に末梢血の顆粒球および単球に発現する。核内におけるPAD4の基質は、ヒストンコアタンパク質(H2A、H3、およびH4)、ならびにリボソームアセンブリ、核細胞質間輸送、中心体の複製に機能する核小体タンパク質であるヌクレオホスミン/B23である。
【0029】
本発明に係る特異的結合分子は、それぞれ15kDaおよび17kDaであるそれらの分子量によって特徴付けられる2つのポリペプチドである、p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープに対する。
【0030】
このような特異的結合分子は、特に炎症性疾患の治療または予防に適していることが見出された。
【0031】
本明細書において使用される、「炎症性条件」または「炎症性疾患」は、血管病変、好中球の浮腫および浸潤(例えば、急性炎症反応)、単核球による組織の浮腫、炎症細胞、結合組織細胞、およびそれらの細胞性産物による組織破壊、ならびに結合性組織による修復の試行(例えば、慢性的な炎症反応)により特徴付けられる任意の数の、条件または疾患を表す。
【0032】
このような条件の代表的な例には、シトルリンに関連する炎症性疾患および自己免疫疾患が含まれる。シトルリン関連炎症性疾患は、シトルリンが病気の発症において影響を与える疾患として本明細書において定義される。シトルリンが病気の発症に影響を与えるか否かは、当該分野において利用可能な常用試験を用いて当業者により容易に決定され得る。例えば、これらの疾患は、罹患した、または病気に関連する組織におけるシトルリン化タンパク質の異常なレベルの存在によって特徴付けられ得る。このような特徴付けは、ウエスタンブロットまたはELISAのような免疫学的検査により達成することができ、上記罹患した組織は抗原として使用され、その抗原のシトルリン化は本明細書に記載されたような抗シトルリン抗体を用いて検出し得る。
【0033】
また、当業者は、罹患患者由来の患部組織と健康な組織とにおける、シトルリンのレベルおよび種類を比較するためのマススペック分析のようなプロテオミクスアプリケーションを使用することができる。
【0034】
また、疾患は、ペプチドまたはタンパク質を含むシトルリンに対する免疫応答の存在によって特徴付けられ得る。これは、T細胞またはB細胞によって媒介される、体液性または細胞性免疫応答であり得る。検査のための抗シトルリン抗体は、当該技術分野で記述され、市販されている。
【0035】
したがって、本発明は、シトルリンに関連する炎症性疾患の、治療または予防に使用するための特異的結合分子に関する。
【0036】
このような疾患は、例えば、関節リウマチおよび変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、ならびにレビー小体型認知症を含む炎症性関節炎である。したがって、本発明は、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、およびレビー小体型認知症からなる群から選択される疾患の、治療または予防における使用のための特異的結合分子に関する。
【0037】
特に、本発明は、自己免疫疾患、より具体的には関節リウマチまたは変形性関節症の、治療または予防のための特異的結合分子に関する。
【0038】
多発性硬化症またはMSは、ミエリン鞘の自己免疫性破壊により特徴付けられる中枢神経系の慢性炎症性疾患である。ミエリン鞘の細胞は、約3:1の割合で脂質タンパク質複合体からなる軸索周囲の多重二分子層構造を形成する。2つの主要なタンパク質であるMBPおよびプロテオリピドタンパク質でタンパク質画分の85%を占める。MBPは、高カチオン性タンパク質であり、ホスファチジルセリンのような負に帯電したリン脂質と強い相互作用を形成することができる。健康な成人におけるMBP分子の約18%では、6個(19個中)のアルギニンがシトルリン化される(Wood et al., J Biol Chem, vol264, 5121-5127, 1989, Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18 -24, 1996)。残りのMBP分子はシトルリンを含んでいない。MS患者においてMBP−cit6の割合は全MBPの45%に増加する。MBP−cit6における正の実効電荷(net positive charge)の減少は、MBP分子の部分的なアンフォールディングを引き起こし、リン脂質とのそれらの相互作用を弱める(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Pritzker et al., Biochemistry, vol39, 5374-5381, 2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPより迅速に脂質複合体を形成することができるが、形成された複合体は、非シトルリン化MBPにより形成された複合体の充填された密度ほどではなく形成される(Boggs et al., J Neurosci Res, vol57, 529-535, 1999, Beniac et al., J Struct Biol, vol129, 80-95,2000)。MBP−cit6は、非シトルリン化MBPよりも4倍の速さでカテプシンDによって分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。急性劇症のMS(マールブルグ型)のまれなケースでは、MBPの分子の80%が重度にシトルリン化されるMBPcit18)(Wood et al., Ann Neurol, vol40, 18-24, 1996)。重度にアンフォールドされたMBP−cit18は、通常のMBPよりも45倍の速度でカテプシンDにより分解される(Cao et al., Biochemistry, vol38, 6157-6163, 1999)。抗がん剤タキソールの有効成分であるパクリタキセルの臨床試験が進行中である(O'Connor et al., Ann Neurol, vol46, 470, 1999)。低用量のパクリタキセルは、in vitroにおいてPAD2によるMBPのシトルリン化を抑制することができる(Pritzker et al., Biochim Biophys Acta, vol1388, 154-160, 1998)。パクリタキセルによる治療は、臨床的な症状を和らげ、損傷した鞘の再ミエリン化を誘導し(Moscarello et al., Mult Scler, vol8, 130138, 2002)、脱ミエリン化疾患における候補因子としてPADの潜在的重要性を際立たせた(Moscarello et al., J Neurochem, vol81, 335-343, 2002)。
【0039】
乾癬では、ケラチノサイトは非常に急速に増殖し、約4日間で基底層から表面に移動する。これらの細胞は、厚く、乾燥したパッチまたはプラークに蓄積されるので、皮膚はそれらを充分に迅速に脱落させることができない。通常のケラチノサイトでは、ケラチンK1は、末端の分化の間にPAD1によってシトルリン化される。この過程は、表皮における通常の角化のプロセスに不可欠である、ケラチンフィラメントをコンパクト化する原因となる。乾癬性高増殖性プラークにおけるケラチノサイトは、シトルリン化ケラチンK1を含まない(Ishida-Yamamoto et al., J Invest Dermatol, vol114, 701-705, 2000)。細胞増殖の増大がPADによる適切なシトルリン化を予防するか、またはPADの不活性化がケラチノサイトの過剰増殖および蓄積を可能にするのかは明らかではない。メカニズムは不明であるが、乾癬表皮における異常なシトルリン化は明らかにPAD1に関する。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、水溶液、ゲル、ヒドロゲル、フィルム、ペースト、クリーム、スプレー、軟膏、またはラップからなる群から選択される形態である。さらなる実施形態において、上述の方法は、関節内、腹膜内、腹腔内、局所、直腸、静脈内、経口、眼、または腫瘍の周辺部の切除から選択される経路によって、本明細書に記載された組成物の投与のために使用される。
【0041】
特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は、共溶媒溶液、リポソーム、ミセル、液晶、ナノ結晶、ナノ粒子、エマルジョン、微粒子、微小球、ナノスフェア、ナノカプセル、ポリマーまたはポリマー担体、界面活性剤、懸濁化剤、シクロデキストリンまたはアルブミンのような吸着分子などの錯化剤、表面活性粒子、およびキレート剤からなる群から選択される少なくとも1つの担体を含む。さらなる実施形態では、多糖類は、ヒアルロン酸およびその誘導体、デキストランおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、コハク酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、キトサンおよびその誘導体、[ベータ]−グルカン、アラビノキシラン、カラギーナン、ペクチン、グリコーゲン、フコイダン、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ペントサン、ケラタン、アルギン酸塩、シクロデキストリン、ならびにそれらのエステルおよび硫酸塩を含む塩および誘導体を含む。
【0042】
さらに別の態様において、本発明の方法は、本発明の組成物を標的部位、特に滑膜関節に導くことを含む。
【0043】
本発明のある特定の実施例では、特異的結合分子は、p15および/またはp17に結合するモノクローナル抗体RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107に競合する。
【0044】
モノクローナル抗体RhmAb2.101、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104、RmmAb1.101、RmmAb1.103、およびRmmAb1.104の可変領域の一次mRNA配列が公開され、表1に示すような受入番号でEMBLデータベースに供託した。モノクローナル抗体RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107の可変領域の一次配列は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42として本明細書において開示されている。
【0045】
したがって、本発明は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42にかかる、可変重鎖または軽鎖を含むポリペプチドに関する。また、本発明は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42にかかるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0046】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、R mmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択される抗体である。
【0047】
別の好ましい実施形態では、特異的結合分子は、モノクローナル抗体RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択される抗体に由来するVHおよび/またはVLドメインを含む。
【0048】
本発明の特異的結合分子は、2つの方法で本質的に生成され得る。第1に、それらは本明細書に示されたような、抗体およびその配列に由来し得る。抗体の反応性は、部位特異的突然変異誘発、chainシャフリング、sexual PCR法、または、当業者に知られている抗体の導出および最適化のための他の手段によって改良することもできる。代替的に、特異的結合分子、特に抗体は、本明細書において記載されたような任意の特異的反応性エピトープにパニングすることによって、特に、PAD4をヒストン2A、ペプチド1(配列番号21)、および他の特異的反応性ペプチドで処理することによって得ることができる。
【0049】
本明細書における、用語「由来する」は、特定の抗体における、VHおよび/またはVLドメインの特異的結合特性のために最も重要な残基が識別され、これらの最も重要な残基は、他のペプチドの構成に移行されることを意味する。
【0050】
当業者は本明細書に記載された配列を、例えば、以下の実施例に記載したように、cDNAまたはゲノム配列をクローニングまたは生成するために使用し得る。pcDNA3(In Vitrogen)またはそれらの誘導体のような適切な真核生物の発現ベクターにおけるこれらの配列のクローニング、およびその後のベクターを含む適切な軽鎖と重鎖との組合せを用いた哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)のダブルトランスフェクションは、挙げられた抗体である、RhmAb2.101、2.102、2.103、2.104、2.105、および/または2.107、ならびにRmmAb1.101、1.102、1.103、1.104の発現および分泌をもたらすであろう。
【0051】
また、当業者は、抗体配列の特異的結合ドメインを使用することにより本明細書に記載されたような特異的結合分子の類似体を作製し、融合タンパク質のようなポリペプチドなどの異なる構成においてそれらを発現させることができる。このことは、当技術分野でよく知られている。
【0052】
ヒトおよびマウスのリコンビナント抗シトルリン化モノクローナル抗体は、実施例1および15に記載したようにして得た。モノクローナル抗体は、ヒトIgG1Fc領域(RhmAb2.101、RhmAb2.102、RhmAb2.103、RhmAb2.104、RhmAb2.105とRhmAb2.107)ならびにマウスIgG2aFc領域(RmmAb1.101、RmmAb1.102、RmmAb1.103、およびRmmAb1.104)を用いて得られた。ヒトおよびマウスのリコンビナント抗体ペア(RhmAb2.101およびRmmAb1.102、RhmAb2.102およびRmmAb1.102、RhmAb2.103およびRmmAb1.103、ならびにRhmAb2.104およびRmmAb1.104)は、同一のVHおよびVLドメインを含むが、それぞれヒトIgG1(配列番号14)またはマウスIgG2aのFcドメイン(配列番号20)を含む。これらの3つのマウスおよびヒトモノクローナル抗体ペアは、ウエスタンブロットを用いて分析され、各ペアは、それぞれの抗原について同様の特異性を有することが分かった。
【0053】
マウス抗シトルリン化ペプチドモノクローナル抗体であるRmmAb13.101、RmmAb13.102、およびRmmAb13.103は、商業ソースから得られた(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ13.101、MQ13.102、およびMQ13.103)。
【0054】
抗シトルリン化抗体は、実験モデルにおいて試験され、炎症はマウスに抗コラーゲン抗体を注入することによって誘導した。このモデルは、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)として知られている(Nandakumar and Holmdahl, J Immunol Methods, vol304, 126-136, 2005)。抗コラーゲン抗体は、商業ソース(ModiQuest Research BV Nijmegen、The Netherlands、カタログ番号、MQ18.101)から入手した。
【0055】
マウス抗シトルリン化モノクローナル抗体である、Rm mAb13.101、RmmAb13.102、およびRmmAb13.103は、Kuhnら(J.Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006)、およびHillら(J Exp Med, vol 205, 967-979, 2008)によっても記載されたようにコラーゲン抗体に誘導される関節炎の重症度を増すことが確認された。このことは、図1aおよび1bに示す。
【0056】
さらに、ヒト患者におけるいくつかの研究では、シトルリン化エピトープに対する抗体をRAの発生機序に追加することが示される(Masson- Bessi鑽e et al., J.immunol, vol166, 4177-4184, 2001、Vossenaar and van Venrooij, Arthritis Res Ther, vol6, 107-111, 2004)。このことは、同じ実験の「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」をそれぞれ示す、図1aおよびbに示す。
【0057】
しかし、驚くべきことに、ヒトモノクローナル抗体であるRhmAb2.104およびRhmAb2.105は、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状を軽減するが、一方、RhmAb2.103、RhmAb2.102、およびRhmAb2.107は、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状を消失させた。
【0058】
RhmAb2.103およびRhmAb2.102は同一に実行し、RhmAb2.102を用いて得られた結果のみ図1cおよび1dに示す。RhmAb2.105およびRhmAb2.107を用いて得られた結果は、図10に示される。
【0059】
ヒトモノクローナル抗体であるRhmAb2.101は、適用した用量において、全く関節炎の臨床症状に効果を有しなかった。市販の抗体であるRhmAb2.201(ModiQuest Research B.V., カタログ番号、MQR2.201)は、本実験において不適切な抗体のコントロールとして使用される。この抗体は、シトルリン化エピトープを認識しない。
【0060】
同一の実験が、同等のマウスFcIgG2aモノクローナル抗体である、RmmAb1.101、RmmAb1.102、RmmAb1.103、およびRmmAb1.104を用いて実行され、当該抗体は、それらのヒト対応物と比較して同一のVHおよびVLドメインを含み、それらのヒト対応物として同一のエピトープを認識する。同一の結果が、それらのヒト対応物と同様に得られた。 RmmAb1.102、RmmAb1.103、およびRmmAb1.104は、関節炎の臨床症状を消失(RmmAb1.102、RmmAb1.103)または軽減(RmmAb1.104)したが、一方RmmAb1.101は全く影響を与えなかった。
【0061】
図1eおよび1fは、RhmAb2.102のための臨床用量を評価した独立のCAIA実験を示す。最大の抑制をもたらした最低用量は、0.5mgAb/マウスであり、これは腹腔内注入における28mg/kgに相当する。
【0062】
これらの実験から、RhmAb2.102、RhmAb2.103、RhmAb2.104、RmmAb1.102、RmmAb1.103、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択されたモノクローナル抗体によって認識される特異的エピトープは、炎症性疾患の治療または予防に影響を与えるという結論に達する。
【0063】
これらのモノクローナル抗体によって認識される抗原(antigen)または抗原(antigens)をさらにを解析するために、実施例3において記載されたように、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD酵素)を用いて脱イミノ化した細胞抽出物に対するそれらの反応性について試験した。翻訳後に脱イミノ化された、hPAD2またはhPAD4をトランスフェクトしたCOS−1ライセートを含むウエスタンブロットは、モノクローナル抗体であるRhmAb2.101、RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104とともにインキュベートされた。RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104とともにインキュベートしたストリップ(strip)のみが、約15および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質の二量体との反応性を示した。
【0064】
WO2004/078098は、T細胞の活性化を阻害するための、シトルリン化ペプチド/MHCクラスII複合体に対する特異的な抗体を開示している。これらの抗体は、分離されたペプチドまたはMHCクラスII分子に結合しないが、ペプチドとMHCクラスII分子との複合体にのみに結合する。本明細書において開示された抗体は、本明細書に記載されたように個々のペプチドおよびタンパク質を認識するので、WO2004/078098に記載された抗体とは異なる。さらに、MHCクラスII分子とシトルリン化されたペプチドとの間の複合体はイムノブロットの手順において使用されるSDSゲルの還元条件において全く残存することができないので、抗体は、ペプチドとMHCクラスII分子との間で複合体を形成することができないウエスタンブロットにおいてポリペプチドを認識する。本明細書中で開示されたような結合分子により認識されるエピトープは、したがって、WO2004/078098に開示された抗体と異なる。さらに、本明細書に記載されたような抗体は、具体的にペプチドとMHCクラスII分子との複合体に反応しない。
【0065】
上記の実験および考察は、我々を、炎症性疾患の臨床症状を防ぐための能力と、p15およびp17におけるシトルリン化エピトープの反応性との間に明確な相関関係があるという結論に導いた。
【0066】
実施例5に詳述したように、ヒトモノクローナル抗体RhmAb2.101、RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104と、マウスモノクローナル抗体RmmAb1.101、RmmAb1.102、RmmAb1.103およびRmmAb1.104とを免疫沈降実験において使用した場合も同じ結果が得られた。
【0067】
ヒトPAD2およびPAD4の両者による脱イミノ化COS−1ライセートにおける、RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、およびRmmAb1.103を用いた免疫沈降は、顕著なp15およびp17タンパク質のバンドを示した。これらのバンドは、RhmAb2.104およびRmmAb1.104を用いて免疫沈降を実行した場合には、いくぶん顕著さに欠けるものだった。
【0068】
したがって、p15およびp17タンパク質の認識強度は、これらの抗体の治療特性に相関すると思われる(図1a−d)。
【0069】
抗体が、p15またはp17に反応性であるか否かは、実施例4および5で詳述するように、免疫沈降またはウエスタンブロット分析を行うことにより容易に確立し得る。また、RhmAb2.102、RhmAb2.103、またはRhmAb2.104との競合実験は、実施例6において記載したように脱イミノ化COS−1ライセート、またはウエスタンブロットにおいて精製された脱イミノ化p15および/またはp17タンパク質を含むウエスタンブロット、またはELISAのいずれかを用いて実行することができる。
【0070】
タンパク質p15およびp17は、実施例7に詳述したように、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化時間飛行質量分析法(MALDI−TOF MS)によってさらに特徴付けられる。アフリカミドリザルのゲノムは完全に配列決定されていないので、我々は、MALDI−TOF MSを用いて見出されたペプチドと相同である他の全ての哺乳類ゲノムデータベースをスクリーニングした。高い相同性を有するタンパク質は、ヒストンであることが判明した。このことは、表3(実施例7)に示す。
【0071】
したがって、本発明は、炎症性疾患の治療または予防における使用のための、ヒストンにおけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する結合分子にも関する。
【0072】
PADの酵素作用によるヒストンのシトルリン化は十分に実証されているので、シトルリン化ヒストンはin vitroにおいて非常に容易に製造することができる。このため、これらのシトルリン化ヒストンは、シトルリン化p15およびp17、すなわちヒストンにおけるエピトープに反応する、ペプチドおよび抗体のようなその他の特異的結合分子をスクリーニングおよび選択するための酵素結合アッセイにおける基質としても使用し得る。好ましくは、特異的結合分子は、p15および/またはp17への結合について、抗体であるRhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、およびRhmAb2.105、およびRhmAb2.107 に競合するものから選択される。
【0073】
この文書およびその特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその語形変化は、以下に続く語が含まれる項目を意味するための非限定的な意味で使用されるが、具体的に記載されていない項目が除外されるものではない。また、不定冠詞「a」または「an」による要素表現は、文脈上明確に1つおよび1つの要素のみが存在することが要求される場合を除き、1つ以上の要素が存在している可能性を除外するものではない。このため、不定冠詞は、「a」または「an」は通常「少なくとも1つの」を意味する。
【0074】
脱イミノ化ヒストン(histone)またはヒストン(histones)のいずれがRhmAb2.102およびRhmAb2.104の治療効果に関与するかをさらに解析するために、市販のヒストン(H1、H2A、H2B、H3、およびH4)をヒトペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、EC3.5.3.15)酵素(huPAD2またはhuPAD4)を用いて脱イミノ化した。脱イミノ化だけではなく、脱イミノ化されていないヒストンを、96ウェルELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101、RhmAb2.102、およびRhmAb2.104の連続希釈液とともにインキュベートした。結果は、表6および図2に示す。
【0075】
図2に示す結果から、huPAD4脱イミノ化したヒストン2A(H2A/p4)は、抗体医薬であるRhmAb2.102およびRh mAb2.104によって最も認識されるが、RhmAb2.101によっては最も認識されるわけではなかった(図2a、2b、および2c)。さらに、RhmAb2.102は、RhmAb2.104に比較するとH2A/p4への高い親和性を有している(図2bおよび2c)。これらのデータは、関節炎の臨床症状について、RhmAb2.102は完全に消滅させ、RhmAb2.104は低減させ、RhmAb2.101は全く効果がない、CAIAモデル実験における関節炎の臨床症状におけるこれらの抗体の効果とよく相関する(図1cおよび図1d)。
【0076】
したがって、我々は、H2A/p4またはその構造的模擬体における脱イミノ化エピトープは、RAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。RhmAb2.102は、RhmAb2.104およびRhmAb2.101よりもこれらのヒストンに対する高い親和性を示すので、H3/p2、H4/p2、およびH4/p4における脱イミノ化エピトープについても同様である(図2a、2bおよび2c)。
【0077】
模擬体は、例えば、等価な活性の許容程度を有する分子であり、この場合、RhmAb2.104およびRhmAb2.101よりもRhmAb2.102によって高い親和性で認識されるものを含む。
【0078】
したがって、本発明は上述したように、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aもしくはヒストン4、またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4もしくはH3におけるシトルリン化エピトープに反応する特異的結合分子に関する。
【0079】
RhmAb2.102およびRhmAb2.104によって認識される、H2Aにおける正確なシトルリン化エピトープをさらに特定するために、ヒストン2Aにおける全13の潜在的な脱イミノ化部位を含むビオチン標識化ペプチドを合成した(表4)。これらのペプチドを、96ウェルニュートラアビジンELISAプレートに塗布し、RhmAb2.101、RhmAb2.102、およびRhmAb2.104の連続希釈液とともにインキュベートした。結果を図3に示す。
【0080】
【表6A】

【0081】
【表6B】

【0082】
【表6C】

【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
ペプチド1(AAASGXGKQGGK)は、抗体医薬であるRhmAb2.102およびRhmAb2.104によって認識されるが、RhmAb2.101によっては認識されないことが観察された(表4ならびに図3a、3b、および3c)。RhmAb2.102は、RhmAb2.104と比較した場合にも高い親和性を示した(図3bおよび3c)。
【0086】
RhmAb2.102は、RhmAb2.104およびRhmAb2.101よりも、これらのペプチドに対する高い親和性を示す(図2a、2b、および2c)ので、ペプチド4および6における脱イミノ化エピトープについても同じことが当てはまる(表4)。我々は、それとともに、ペプチド1、4、および6における、脱イミノ化エピトープまたは構造的等価物もしくはそれらの模擬体がRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしていることを示した。この抗体の認識パターンは、H2A/p4の認識パターンに非常に似ている。したがって、我々は、本発明の特異的結合分子は、ペプチド1、4、および6(それぞれ、配列番号21、配列番号24、および配列番号26)に対するそれらの反応性によって定義することもできると結論付けた。これらの各ペプチドは、本発明の抗体のような特異的結合分子を生成するために個々に使用することができる。そのうえ、そのような抗体は、適した反応性について本明細書に開示されたような、任意の他の抗原に対して選択することができる。
【0087】
【表4】

【0088】
ビオチン標識され、シトルリンを含む、フィブリノゲンおよびビメンチンペプチド(表5)についても、抗体医薬との反応性について調べた。ペプチドを96ウェルニュートラアビジン−ELISAプレート上に塗布した。続いて、RhmAb2.101、RhmAb2.102、およびRhmAb2.104の連続希釈液を塗布されたプレートに添加した。結果を表8および図4に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
マウスフィブリノゲンβペプチド(配列番号37)が、RhmAb2.101、RhmAb2.102、およびRhmAb2.104によって認識されることが観察された(図4a、4bおよび4c)。RhmAb2.102は、RhmAb2.104と比較した場合にも高い親和性を示し、RhmAb2.104は、RhmAb2.101よりも若干良い結果であった(図4a、4bおよび4c)。この抗体の認識パターンは、huPAD2およびHuPAD4脱イミノ化ヒトフィブリノゲンをロードしたウエスタンブロットで観察されるパターンに類似している。さらに、RhmAb2.102のみが、マウスビメンチンペプチドを認識した(実施例10)。上述したペプチド以外でも、msFibβ(配列番号37)およびmsVim(配列番号38)ペプチドにおける脱イミノ化エピトープがRAの炎症カスケードに重要な役割を果たしている可能性が非常に高い。しかし、それととも、我々の抗体医薬の抗炎症作用における重要な役割を果たす上で、フィブリノゲンおよびビメンチンにおける他のエピトープも除外されない。
【0091】
したがって、本発明は、ペプチドmsFibβまたはmsVim(配列番号37または配列番号38)におけるエピトープに特異的に反応する、上述したような特異的結合分子、およびそれらの使用にも関する。
【0092】
また、我々は、シトルリン化エピトープが炎症組織で新規に現れることを示した。関節リウマチの実験モデルマウスにおいて、我々は、ヒトモノクローナル抗体102(RhmAb2.102)を用いて、発症したマウスの炎症を起こした前足からシトルリン化ペプチドを免疫沈降可能であることを示すことができた。
【0093】
したがって、典型的なCAIA実験を、0日目に8つの抗コラーゲン抗体(2.8mg/マウス)の混合物を腹腔内注入したマウス(グループあたり3匹)において行った。3日後、マウスに25μgのLPSを含む別の腹腔内注入を行った。スコア付けは上述したように行った。この実験の間、毎日1グループのマウスを犠牲し、足をウエスタンブロット解析および免疫組織化学的手法によってシトルリンの存在について分析した。
【0094】
各グループのマウスについて前足を集めて抽出した。免疫沈降(IP)を、IP毎に20マイクログラムのRhmAb2.102を用いてこれらの抽出を行った。沈殿物について、SDS−PAGE電気泳動を行い、ウエスタンブロット法によりニトロセルロース膜に転写した。前記ブロットを第1に全タンパク質を検出するためにポンソーSで染色した。ポンソーS染色は、各IPについて同量の抗体が使用されたことを確かめるために行われる。明白な抗体の重鎖および軽鎖が同量で観察できた。
【0095】
続いて、ブロット上に存在するシトルリン残基を、Senshuらにしたがって化学的に修飾した(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。化学的修飾は、その後、シトルリン残基の化学修飾を認識する抗体を用いて可視化することができる(Senshu et al, Anal Biochem 203, 94〜100, 1992)。
脱イミノ化フィブリノゲンは、この実験においてポジティブコントロールとして使用した。抽出物を含まない免疫沈降をこれらの実験のネガティブコントロールとして使用した。
【0096】
4日目からは、50、15、および17キロダルトンの分子量を有するタンパク質に対応する位置に顕著なバンドがブロット上に現れた。これらのバンドは、5日目においてより顕著になり、6日目において最も濃くなった。
【0097】
通常の関節炎スコアを有するマウスにおける、実験での関節炎の発症率は100%であり、6日目で5+に達した(図5Aおよび5B)。沈殿するタンパク質の量は、時間経過にともなって増加し、4日目〜6日目に可視化される。RhmAb2.102のシトルリン特異性および抗化学修飾化シトルリン抗体を用いて得られたブロットにおけるシグナルの存在に基づいて、我々は、CAIAを受けたマウスは、それらの炎症化関節において検出可能なレベルのシトルリンを有すると結論付けた。
【0098】
免疫組織化学的分析も同一のマウスの後足を用いて行った。スライドをRhAb2.104を用いてインキュベートした。その結果はウエスタンブロット分析に応じたものであった。修飾されたシトルリンは、4日目〜6日目のサンプルにおいて、約50、15、および17キロダルトンの見かけ上の分子量を有するタンパク質において検出することができた。このことから、シトルリン化エピトープは、炎症性関節、この場合は実験的に誘導された関節炎マウスの後足において、新規に現れ、RhmAb2.102に反応し、免疫沈降することができると結論付けた。
【0099】
上述したようなCAIA実験において、マウスの足における炎症が、未だ存在しないか、非常に軽度のときに、抗シトルリン抗体を抗コラーゲン抗体注入後3日目に注入した。このことは、臨床症状の発生を予防した。したがって、特に予防処置における炎症の治療として有用である。
【0100】
したがって、我々は、RhmAb2.102も一度発生した臨床症状を治すことができるのか研究を必要とした。このことは、全てのマウスの四足全ての平均関節炎スコアが約4の任意スコアに達した抗コラーゲン注射後7日目に動物を処置することにより行った。図6Aおよび6Bに示すように、RhmAb2.102は、観察される腫脹を消滅させるのではなく、存在する炎症/腫脹を安定させた。動物を、プラセボおよびRhmAb2.102処置したマウスの間で炎症スコアが同程度であった後である35日目までの間追跡調査した(図6Bおよび実施例12)。図6Aは、各群の四足の全ての平均炎症スコアを示し、一方図6Bは、35日目において組織学的分析に使用した動物の右後足の平均炎症スコアを示す。
【0101】
7日目におけるRhmAb2.102処置が、永久的な関節の損傷からマウスを保護することができるか否かについて調べるために、全ての動物における右後足の組織学的検査を行った。図7Aは、実験35日目における実験群の間の右後足の肉眼で確認できる炎症が類似していたことを示す。しかし、最も驚くべきことに、関節のびらんについての既知パラメータが減少した。RhmAb2.102を用いて7日目に処置された実験群において、炎症細胞の流入(D)、軟骨の侵食(B)、軟骨PGの枯渇(E)、軟骨細胞死(F)、および骨のびらん(C)のスコアの劇的な減少が観察された場合、RhmAb2.102は、炎症の間の関節損傷を予防することに関して強力な治療可能性を秘めている(実施例12)。したがって、本発明は、そのような処置を必要とする患者に対して、本明細書に記載したような結合分子を投与することによって、関節の損傷を予防または治療するための方法に関する。
【0102】
さらに、CAIA実験を、それぞれ、5日目、6日目、および7日目におけるRhmAb2.102処置の各治療効果を調べるために行った(図8)。この実験において、RhmAb2.102は、炎症部位に迅速に抗体を提供するために静脈内に注入した。この実験には、3日目予防処置群およびコントロール群を含有した。実験手順は、実施例12のように行った。唯一の違いとして、3日目、5日目、および6日目にマウスあたり1mgのRhmAb2.102を注入した。予期したように、3日目のRhmAb2.102は炎症反応を抑制した。5日目、6日目、および7日目のRhmAb2.102の静脈内注入によるマウスの処置は、図6にも見られるように炎症を安定させた(図8)。炎症の徴候は減少しなかったが、関節びらんの全てのパラメータが減少したことは注目に値する。このことは、関節びらんおよび炎症が、別々に処理することができる2つの別の実体であることを示す。
【0103】
次の一連のCAIA実験では、我々は、デキサメタゾンにより炎症レベルを低下させる可能性を調べ、デキサメタゾン処置後の炎症の再発予防は、5日目、6日目、および7日目にRhmAb2.102(図9)をデキサメタゾンと同時に注入することで止まった。
【0104】
デキサメタゾンは、日常的に投与する必要がある一般的な炎症性阻害剤である。一度治療が中断された場合は炎症が再発する。腹腔内へのデキサメタゾン(2mg/kg)の注入と同時に抗コラーゲン抗体の注入後、5日目(図9A)、6日目(図9B)、および7日目(図9C)において、1mgのRhmAb2.102を静脈内に注入した点において実施例12と異なる実験手順を実行した。デキサメタゾンは、足における腫脹が消失するまで2〜3日間連続的に投与した。動物のその他の群は、デキサメタゾンの腹腔内注入のみを受けた。図9に示されるように、RhmAb2.102を受けていないマウスにおいて炎症が再出現した。しかし、非常に対照的に、デキサメタゾンがRhmAb2.102と組み合わされた場合、炎症の再発は非常に穏やかであり、デキサメタゾンのみを処置されたマウスに比較して遅れて発生した。このことは、6日目または7日目に組み合わせたRhmAb2.102/デキサメタゾン処置を開始した場合に最も明らかであった(図9BおよびC)。図9に示される実験は、デキサメタゾンなどの炎症の阻害剤を炎症の再燃を治療するために使用することができ、RhmAb2.102は炎症の再発を予防するため、より重要には組織/関節損傷が生じることを予防するために使用できる、炎症性疾患における新規の治療方法を示す。したがって、本発明は、本明細書に記載したような結合分子とともに炎症の阻害剤の同時投与によって、炎症および関節損傷を治療するための方法に関する。
【0105】
他のCAIA実験において、RhmAb2.101の差別化抗原であるRhmAb2.102との交差反応性が示された2つの新規抗シトルリン抗体(RhmAb2.105およびRhmAb2.107)について、それらの抗炎症効果を試験した。RhmAb2.105、RhmAb2.107、およびRhmAb2.102(ポジティブコントロール)を、別の実験群において抗コラーゲン抗体注入後3日目に静脈内に注入(1mg/マウス)した(図10)。実験手順は実施例12に記載されたように実行した。図10は、各グループの全ての足の平均関節炎スコアを示す。
【0106】
RhmAb2.102が最も高い抗炎症作用を示すことが明らかとなった。RhmAb2.107は、ほとんどRhmAb2.102と同様であり、RhmAb2.105は、以前観察したRhmAb2.104と同様の中間の効果を示した(図1C)。
【0107】
RhmAb2.102に優先的に結合するその他の脱イミノ化タンパク質を質量分析により同定した。さらに、RhmAb2.102に優先的に結合するが、RhmAb2.101に結合しないか、またはあまり結合しない脱イミノ化タンパク質は、追加の質量分析によって同定した。ヒトPAD4脱イミノ化ヒト胚性腎細胞(HEK293細胞)ライセートを、RhmAb2.101またはRhmAb2.102(実施例13)で免疫沈降し、high throughput nano-LC system coupled to an advanced, high-performance LTQ Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass spectrometer (nLC LTQ FTMS ULTRA)を行った(実施例14)。Exponentially Modified Protein Abundace Index (emPAI)と組み合わせたその超高質量分解能、質量精度、および感度の算出は、RhmAb2.102に(優先的に)結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことは、表7(実施例13および14)に示す。
【0108】
このため、本発明は、表7に示すような任意のタンパク質またはポリペプチドに特異的に反応する、炎症性疾患の予防または治療における使用のための結合分子にも関する。
【0109】
要約すると、我々は、本明細書において、p15、p17、特に、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、または表7のタンパク質からなる群から選択されたタンパク質、より具体的には、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38のペプチドからなる群から選択された分子におけるエピトープに特異的に反応する、本明細書に明記されたような炎症性疾患の治療または予防において使用できる結合分子を示した。所定の結合分子が、上記の分子に特異的に反応しているか否かは、RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択される抗体と競合する結合分子の、p15もしくはp17、または上述した任意のシトルリン化エピトープに結合する能力を分析することによって簡単に決定することができる。
【0110】
本発明の結合組成物の効果を示したことで、炎症性疾患は免疫応答を誘発することによっても治療または予防することができ、本発明に係る特異的結合分子は患者自身の体において生成される(in vivo)ことが当業者に明らかである。このような免疫応答は、炎症性疾患の発症を防ぐため(予防、予防ワクチン)、または炎症性疾患の転帰を改善もしくは軽減、すなわち治療するために生じ得る。
【0111】
したがって、本発明は、in vivoにおける免疫応答を誘発することにより炎症性疾患を予防または治療するための方法にも関し、p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択されるエピトープに反応する特異的結合分子が生成される。
【0112】
本発明のワクチンまたは治療は、本発明に係る結合分子に特異的に反応するシトルリン化エピトープを効果的に含み得る。より詳細には、シトルリン化エピトープアは、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aもしくはヒストン4、またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトヒストンH3、もしくは配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38からなる群から選択されたペプチドにおけるシトルリン化エピトープであり得る。
【0113】
したがって、多くのシトルリンに関連する炎症性疾患は、治療または予防することができる。このため、本発明は、上述したような方法にも関し、前記炎症性疾患は、自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、およびレビー小体型認知症からなる群から選択される。関節リウマチなどの自己免疫疾患の予防または治療が特に好ましい。
【0114】
本発明の実施形態は、in vivoにおける免疫応答に関するので、好ましい特異的結合分子は抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを関節炎症状の重症度について8つのモノクローナル抗体の効果を検査するために使用した。平均関節炎スコア(図1a、1c、および1e)および関節炎の発生率は(図1b、1d、および1f)を示した。5〜6匹のマウス群について抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することにより0日目に処置した。図1aおよび図1bに示される実験において使用されるマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1c−fに示される実験において使用されるマウスは、2.4mgの投与を受けた。抗シトルリン抗体またはコントロール抗体(RhmAb2.201)とともにLPS(25μg/マウス)を腹腔内投与によって3日目に投与した。グラフに記載されている場合を除いて、全ての抗体を1mg/マウスで投与した。動物は13日目まで毎日スコアを評価した。抗体RhmAb2.102およびRhmAb2.103は同様に好成績を収め、RhmAb2.102のみ示した。抗体RmmAb1.102およびRmmAb1.103についても同様であり、それらは好成績を収め、RmmAb1.102のみ示した。
【0116】
【図2】酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)をhuPAD2またはhuPAD4を用いて脱イミノ化したヒトリコンビナントヒストン(H1、H2A、H2B、H3、およびH4)についてa)RhmAb2.101、b)RhmAb2.102、およびc)RhmAb2.104の親和性について検査するために使用した。脱イミノ化されたヒストンと同様に脱イミノ化されていないヒストンを96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを抗体の特異的結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温での1時間のインキュベートに続いて、TMB基質とともにするインキュベーションにより行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。H1=リコンビナントヒストン1、H1/p2=huPAD2リコンビナントヒストン1、H1/p4=huPAD4リコンビナントヒストン1など(x軸)。
【0117】
【図3】酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を、ヒトヒストンH2Aに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101、b)RhmAb2.102、およびc)RhmAb2.104の親和性の試験に用いた。ヒストン2Aに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を、同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。コートされたウェルを、10ug/ウェルから0.000128μg/ウェルに至るまでの範囲の連続抗体希釈液を用いて室温で1時間(Z軸)インキュベートした。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温での1時間のインキュベートに続いて、TMB基質とともにするインキュベーションにより行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【0118】
【図4】酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)を、フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含むシトルリンに対する、a)RhmAb2.101、b)RhmAb2.102、およびc)RhmAb2.104の親和性の試験に用いた。フィブリノゲンおよびビメンチンに由来するペプチドを含む、ビオチンおよびシトルリンは、ニュートラアビジンでコートされた96ウェルELISAプレート(0.3μg/ウェル)上に固定化した。CFC−1およびCFC−0を同じ濃度でコートし、特異的な抗シトルリン抗体の反応性について、それぞれ陽性コントロールおよび陰性コントロールとし、コーティングコントロールとした。コートされていないウェルを、各抗体の結合について試験するために使用した。結合した抗シトルリン抗体の検出は、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)を用いて室温での1時間のインキュベートに続いて、TMB基質とともにするインキュベーションにより行った。得られたOD(y軸)は、抗体結合の尺度である。
【0119】
【図5】コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを、足におけるシトルリンの出現を調べるために使用した。3匹のマウスの群について、0日目に腹腔内投与によって2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて処置し、続いて3日目にLPS(25μg/マウス)を追加で腹腔内に注入した。平均関節炎スコアおよび関節炎の発症率は、図5Aおよび5Bにそれぞれ示した。
【0120】
【図6】抗コラーゲン抗体注入後7日目にRhmAb2.102を投与した場合のRhmAb2.102の治療効果を試験テストするために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコア(図6A)および右後足の平均関節炎スコア(図6B)を示す。5匹のマウスの群について、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を用いて腹腔内注入よって処置した。LPS(25μg/マウス)を、3日目に腹腔内注入によって投与し、RhmAb2.102(1mg/マウス)またはプラセボを7日目に同一の経路によって注入した。動物について35日目まで毎日スコアを評価した。RhmAb2.102は存在する炎症を少なくとも安定化することが観察された。
【0121】
【図7】組織学的分析を、ヘマトキシリン/エオシン染色およびサフラニンO染色された、RhmAb2.102またはプラセボを用いて7日目に処置した全てのCAIA動物の右後足の組織スライドで行った(図7)。軟骨の侵食(B)、骨侵食(C)、炎症細胞の流入(D)、軟骨PGの枯渇(E)、および軟骨細胞死(F)のパラメータは、染色された組織スライドにおいてスコアを評価された(0〜3の任意の尺度)。図7Aは、実験最終日(35日目)における実験群の間における右後足の肉眼で確認できる炎症を示す。各点は単一の動物を表す。水平な線は実験群内での平均スコアを示す。RhmAb2.102の注入は、永続的な関節の損傷からマウスを保護すると結論付けることができる。
【0122】
【図8】抗コラーゲン抗体の注入後、3日後、5日後、6日後、および7日後にRhmAb2.102を与えた場合のRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いた。5匹のマウスの群は、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を腹腔内注入によって3日目に投与した。RhmAb2.102(1mg/マウス)について、3日目、5日目、6日目、または7日目に静脈内投与した。動物について19日目まで毎日スコアを評価した。グラフは、各実験群の平均関節炎スコアを示す。RhmAb2.102は、治療開始時のレベルに比較して炎症レベルを少なくとも安定化すると再度結論付けることができる。 菱形:コントロール、丸:7日目、白丸:6日目、四角:5日目、および三角:3日目
【0123】
【図9】デキサメタゾン処理と同時に抗コラーゲン抗体を注入した後、5日目、6日目、および7日目(それぞれ、パネルA、B、およびC)にRhmAb2.102を与えた場合におけるRhmAb2.102の治療効果を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。5匹のマウスの群は、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)腹腔内注入によって3日目に投与した。RhmAb2.102(1mg/マウス)を5日目、6日目、または7日目に第1用量のデキサメタゾンと同時に静脈内に注入し、一方デキサメタゾン(2mg/kg)を肉眼で確認できる腫れが消えるまで2日または3日連続して与えた(腹腔内投与)。その他の動物群は、デキサメタゾンのみの腹腔内注入を受けた。 動物について21日目まで毎日スコアを評価した。グラフは各実験群の平均関節炎スコアを示す。 デキサメタゾンと組み合わせたRhmAb2.102治療は、腫れを劇的に減少させ、RhmAb2.102の投与を受けていないマウスと比較してゆっくりした穏やかな炎症の再発のみをもたらすことを見出した。非常に対照的に、デキサメタゾンのみを動物に投与した場合、炎症性再発は、デキサメタゾン/RhmAb2.102の組み合わせを投与したマウスと比較してはるかに強く迅速であった。 菱形:コントロール、三角:5日目から毎日デキサメタゾンのみ投与、四角:5日目から毎日デキサメタゾンに加えてRhmAb2.102を投与。
【0124】
【図10】抗コラーゲン抗体注入後3日目にRhmAb2.102、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107を投与した場合のRhmAb2.102、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107の抗炎症作用を試験するために、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを使用した。全ての足の平均関節炎スコア(図10A)および後足のみの平均関節炎スコア(図10B)を示す。5匹のマウスの群は、0日目に2.8mgの抗コラーゲン抗体を腹腔内に注入することによって処置した。LPS(25μg/マウス)を腹腔内注入によって3日目に投与した。RhmAb2.102、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107(1mg/マウス)またはプラセボを同日に静脈内投与した。動物について14日目まで毎日スコアを評価した。 RhmAb2.102は、最も高い抗炎症作用をもたらした。後足のみの平均関節炎スコアを調べたとき、RhmAb2.102、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107全ての抗炎症作用に関して同様であった。 菱形:コントロール、三角:RhmAb2.102、四角:RhmAb2.105、丸:RhmAb2.107
【実施例】
【0125】
実施例1:ヒトおよびマウスのリコンビナントモノクローナル抗体。
RA患者のシトルリン化抗原に対するモノクローナル抗体は、記載されたようにファージディスプレイ法によって最初に選択した(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711,2003)。簡潔には、3人のRA患者の自己抗体レパートリを、B細胞レパートリから分離し、抗体フラグメントライブラリを生成するために使用した。これらのライブラリについて、WO98/22503に記載されたように、シトルリン化環状ペプチドCFC1−cycに対する4段階の親和性選択を行った。抗体のクローンは、CFC1−cycへの強い反応性およびシトルリン化されていないCFC0−cycへの反応性の欠如に基づいて選択した(WO98/22503)。
【0126】
Raatsらによって記載された配列をコードする抗体(J Reumatology, vol30、1696-711, 2003)を、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成し、続いてヒトおよびマウスの抗体アイソタイプをコードする哺乳類発現ベクターにクローニングした。ヒト抗体は、アイソタイプIgG1ラムダであり、RhmAb2.101、RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104と命名した。マウス抗体は、アイソタイプIgG2aカッパであり、RmmAb1.101、RmmAb1.102、RmmAb1.103、およびRmmAb1.104と命名した。
【0127】
RhmAb2.101をStemmerらのプロトコル(Gene, vol164, 49-53, 1995)に応じて、クローンRa3の配列(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711, 2003)に基づいて合成した。RhmAb2.101は、生殖系列ファミリーλ1bに由来するVLに組み合わせた生殖系列ファミリー3〜21に由来するVHからなる。RhmAb2.103をStemmerらに従って(Gene, vol164, 49-53, 1995)、クローンA2−2の配列(Raats et al., J Reumatology, vol30, 1696-711, 2003)に基づいて合成した。RhmAb2.103は、生殖系列ファミリーλ1aに由来するVLに結合した生殖系列ファミリー3−23に由来するVHからなる。RhmAb2.104は、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に従って合成した。RhmAb2.104は、生殖系列λ1cに由来するVLに結合した生殖系列4−bに由来するVHからなる。
【0128】
RhmAb2.102は、Stemmerら(Gene, vol164, 49-53, 1995)に応じて合成した。RhmAb2.102は、配列番号9によりコードされた免疫グロブリン軽鎖に結合した配列番号8によりコードされた免疫グロブリン重鎖を含む。配列番号8によってコードされる免疫グロブリン重鎖は、配列番号12に対応するマウスリーダグロブリン、続いて配列番号13に対応する多様な抗体の重鎖、続いて配列番号14に対応する免疫グロブリン定常ドメインヒトIgG1を含む。配列番号9によってコードされる免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12に対応するマウスリーダグロブリン、続いて配列番号15に対応する可変抗体軽鎖、続いて配列番号16に対応する免疫グロブリンヒトラムダ定常ドメインを含む。
【0129】
RmmAb1.102は、Stemmerらに従って(Gene, vol164, 49-53, 1995)合成した。RmmAb1.102は、配列番号11によりコードされた免疫グロブリン軽鎖と結合した、配列番号10によりコードされた免疫グロブリン重鎖を含む。配列番号10によってコードされる免疫グロブリン重鎖は、配列番号12に対応するマウスリーダグロブリン、続いて配列番号19に対応する可変抗体の重鎖、続いて配列番号20に対応する免疫グロブリン定常ドメインマウスIgG2aを含む。配列番号11によってコードされる免疫グロブリン軽鎖は、配列番号12に対応するマウスリーダグロブリン、続いて配列番号17に対応する可変抗体軽鎖、続いて配列番号18に対応する免疫グロブリンマウスカッパ定常ドメインを含む。
【0130】
モノクローナル抗体RhmAb2.101、RhmAb2.103およびRhmAb2.104、RmmAb1.101 RmmAb1.103、およびRmmAb1.104の可変ドメイン(VHおよびVL)の一次mRNA配列を公開し、表1に示したような受入番号でEMBLデータベースに供託した。全長ヒトおよびマウス抗体配列を、抗体RhmAb2.102およびRmmAb1.102について記載されたように、同一のリーダおよび定常ヒトドメインまたは定常マウスドメインを使用して生成した。
【0131】
【表1】

【0132】
シトルリン化フィブリノゲンに対するコントロール抗体であるRmmAb13.101、R mmAb13.102、およびRmmAb13.103、ならびにヒトU1−70kタンパク質のアポトーシス性の40kD切断産物に対するRhmAb2.201は、Modiquest Research BV, Schoutstraat 58, 6525 XV Nijmegen, The Netherlands から市販されている(Cat no, MQ13.101、MQ13.102、MQ13.103、およびMQR2.201)。
【0133】
実施例2:炎症の実験モデル
ModiQuest Research B.V. から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(cat no: MQ18.101)をマウスに関節炎を誘導するため製造規格に従って使用した(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG%20_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物を8週齢のDBJ/J1マウス(5〜6マウス/群)に腹腔内投与した。(図1aおよび1bにおいて使用されるマウスは、1.6mgの抗コラーゲン抗体混合物の投与を受け、一方、図1cにおいて使用されたマウスは2.4mgの投与を受けた)。3日目において、マウスは、1mgの抗シトルリン抗体を混合した25μgLPSを含む、他の腹腔内注入を受けた(特に記載のない限り)。LPSは炎症を引き起こす。実験の13日目まで、マウスはそれらの足における炎症の兆候について毎日スコアを評価された。スコアは表2にしたがって実施した。動物あたりの最大関節炎スコアは8である。
【0134】
マウスモノクローナル抗シトルリン抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102、およびRmmAb13.103について、コラーゲン抗体が誘発する関節炎の重症度を促進することができることを確認した。これらの抗体の混合物はさらに顕著に応答した。このことは、本質的に抗シトルリン抗体が関節炎を強化/誘導することができる早期の結果を確立する(Kuhn et al,. J. Clin. Invest, vol116, 961-871, 2006; Hill et al., J Exp Med, vol205, 967-979, 2008)。これらの結果は、同じ実験でそれぞれ「平均関節炎スコア」および「関節炎の発症率」を示す、図1aおよびbに示される。
【0135】
しかし驚くべきことに、ヒト型モノクローナル抗体RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104は、実験的なCAIAモデルにおける関節炎の臨床症状を軽減または欠失させた(図1cおよび1d)。RhmAb2.102およびRhmAb2.103は関節炎の最高の症状を軽減したが、一方RhmAb2.104は炎症を約50%軽減した。RhmAb2.101は用量試験において全く効果が無かった。
【0136】
【表2】

【0137】
抗コラーゲン抗体注入後3日目における、抗シトルリン抗体を投与するための決定は、約4日目に実験的に誘導される関節炎を有するマウスの足にシトルリン化エピトープが現れることを示す上記された実験データに基づく。
【0138】
実施例3:脱イミノ化細胞抽出物の調製、SDSページ電気泳動、およびウエスタンブロッティング。
COS−1細胞(8・10)を、V−kitとともにAMAXA nucleofection装置(プログラムD−005)を用いて、2μgのhuPAD2またはhuPAD4発現ベクターを用いて一過性にトランスフェクトし、細胞をT75の20ml培地中に播種した。
【0139】
72時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、スピンダウンし、15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMのβ-メルカプトエタノール、100mMのNaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁した。
【0140】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した(sonified)。ライセートを5分間3.000rpmで遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートを、それぞれ10mMおよび5mMの最終濃度で、CaClおよびDTEを追加して37℃で30分から2時間脱イミノ化した。脱イミノ化された細胞ライセートは、−20℃で保存した。
【0141】
10倍のサンプルバッファ(pH6.8の0.25Mトリス、8%SDS、35%グリセロール、2.5%β-メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルー)を脱イミノ化された細胞ライセートに添加し、5分間ボイルした。約5・10細胞に対応するライセートを、SDS−PAGE(15%ゲル)の各レーンにロードして分離し、続いてHybond C extraニトロセルロース膜(Amersham Biosciences)エレクトロブロッティングした。ブロッティングおよびローディングをポンソーS染色によって確認した。
【0142】
実施例4:治療用抗シトルリン抗体はp15およびp17を認識する。
実施例3において作製されたようなブロットについて、細長い形に切断し(cut in strips)、全ての非特異的部位をブロックするために、2時間室温で、5%(w/v)低脂肪粉ミルクのPBS−Tween(洗浄液)を用いてブロックした。それから、ブロットを、洗浄バッファを用いて5回5分間洗浄し、ストリップ(strip)をさらに20μgの抗シトルリン抗体を含む4mlの洗浄バッファを用いて室温で1時間インキュベートした。その後、ストリップを、洗浄バッファを用いて10分間5回洗浄し、洗浄バッファ中のペルオキシダーゼ共役化ウサギ抗ヒトIgG(DAKO)(室温で1時間)(1:2000)とともにインキュベートした。その後、洗浄バッファで10分間3回洗浄し、続いて全ての未結合抗体を洗浄するためにPBSで洗浄した。
【0143】
免疫反応性バンドは、化学発光基質(PIERCE)を用いて可視化し、Kodak BioMax XARオートラジオグラフィーフィルム(Eastman Kodak Company, Rochester, NY, USA)に感光させた。
【0144】
RhmAb2.102、RhmAb2.103、およびRhmAb2.104を用いてインキュベートされたストリップは、約15および17キロダルトンの分子量を有する2量体タンパク質への反応性を示した。
【0145】
実施例5:抗原の免疫沈降
免疫沈降のために、30μLのプロテインA−セファロースファストフロー(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を、330μLの細胞ライセートに添加し、2時間4℃で回転させながらインキュベートした。セファロースビーズに免疫結合したタンパク質を、その後IPP150(pH8の10mMトリス/HCl、150mMのNaCl、0.1%のNP40、0.1%のTween−20)で4回洗浄した。2倍のサンプルバッファ(100mmのTris−HCl、pH6.8の200mmジチオスレイトール、4%SDS、0.2%ブロモフェノールブルー、20%グリセロール)をビーズに添加し、タンパク質について15%SDS−PAGEを実行した。ゲルを、室温で一晩、染色溶液(10%w/vの硫酸アンモニウム、2%w/vのリン酸(85%)、0.1%w/vのCBB G−250、20%v/vのメタノール)中で穏やかに揺らしながら染色した。全ての染色トレイをメタノールの蒸発を防ぐためにパラフィルムで密封した。翌日、ゲルをミリQ水(milli-Q water)中で所望の染色が見えるまでインキュベートすることにより、染色されていないバックグラウンドを脱染色した。ゲルの画像を撮影後に脱染色液(ミリQ水)を2〜3回置換した。
【0146】
ヒトPAD2およびPAD4脱イミノ化COS-1ライセートの両者における、R hmAb2.102、RhmAb2.103、RmmAb1.102、およびRmmAb1.103を用いた免疫沈降は、p15およびp17タンパク質の顕著なバンドを表す。これらのバンドは、免疫沈降がRhmAb2.104およびRmmAb1.104を用いて行ったときにいくらか顕著さが低下した。したがって、p15およびp17タンパク質の認識率は、これらの抗体の治療特性とよく相関している(図1a−d)。
【0147】
実施例6:p15およびp17に対する抗体の競合アッセイ。
p15およびp17に結合するための競合アッセイを、実施例3に記載されたように免疫ブロットにおいて行った。マウスモノクローナル抗体である、RmmAb1.102およびRmmAb1.103を、それぞれ、RhmAb2.102およびRhmAb2.103の存在下および非存在下においてp15およびp17を含むイムノブロットストリップに結合させた。結合は抗マウス共役物を使用して検出した。適切なコントロール実験を共役物がヒト抗体に反応しないことを確認するために行った。RmmAb1.102およびRmmAb1.103のp15およびp17への結合は、それぞれRhmAb2.102およびRhmAb2.103が競合する抗体として使用された場合に減少させることができる。コントロール抗体である、RmmAb13.101、RmmAb13.102、およびRmmAb13.103は、p15またはp17への結合について、RmmAb1.102またはRmmAb1.103と競合しない。
【0148】
これらの知見は、このアッセイを炎症性疾患の臨床症状を抑制することができる抗体の選択のための優れた試験にする。
【0149】
実施例7:p15およびP17の質量分析。
実施例3のSDS−pageゲルのp15およびp17のバンドをゲルから切り出し、MALDI−TOF MSにより分析した。簡潔には、切り出したゲルの一部を、50μlの25mM重炭酸アンモニウムで2回洗浄し、各洗浄工程について30分間インキュベートする。上記したように、30%v/vアセトニトリルを添加して15分間の洗浄を繰り返す。全ての液体を取り除き、25mM重炭酸アンモニウム+25μlのアセトニトリルを添加し、15分間インキュベートした。再度、全ての液体を除去し、ゲルを50μlのアセトニトリルとともに30分間インキュベートした。全ての液体を取り除き、一部を37℃で2時間インキュベートした。脱水後、ゲル片を再度膨潤させるために、5μlのトリプシン溶液(25mM重炭酸アンモニウム/5mMのn−オクチル−β−D−グルコピラノシド中において、〜15ngのトリプシン/μl)を添加し、氷上で1時間インキュベートした。余分なトリプシン溶液を除去し、ゲル片を5μlの25mM重炭酸アンモニウム/5mMのn−オクチル−β−D−グルコピラノシドとともに37℃で14時間インキュベートした。ペプチドを4μlの50%アセトニトリル/0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)/nオクチル−β−D−グルコピラノシドとともに室温で1時間インキュベートすることにより抽出した。サンプルを、超音波水槽中において2分間超音波処理し、液体を新しいチューブに移し、抽出工程を繰り返した。サンプルを真空遠心機で乾燥させ、MALDI−TOF MSを行った。
【0150】
MALDI−TOF MS分析で特定される全ての断片は、ヒストンタンパク質(表3)に起因した。
【0151】
【表3】

【0152】
実施例8:治療用の抗シトルリン抗体はH2A/p4を認識する。
ヒトリコンビナントヒストンH1、H2A、H2B、H3、およびH4(100μg)を53.4mUのhuPAD2またはhuPAD4とともに、またはこれらを含まずに37℃で3時間インキュベートした。脱イミノ化されたヒストンだけではなく、脱イミノ化されていないヒストンを4℃で一晩インキュベートすることにより、96ウェルのELISAプレート(0.3μg/ウェル)上にコートした。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)で5回洗浄し、室温(RT)でPBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに1時間インキュベートすることによりブロックした。PBS−Tでさらに5回洗浄後、PBS−T+1%BSAのRhmAb2.101、RhmAb2.102、またはRhmAb2.104の10μg/ウェルの濃度から開始する連続希釈液とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、ウサギ抗ヒト抗体HRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートし、続いてPBS−Tで5回洗浄し、PBSで3回の洗浄工程を行った。RhmAb2.101およびRhmAb 2.104とともにインキュベートしたウェルを15分間インキュベートし、RhmAb2.102とともにインキュベートしたウェルを、2MのHSOとの反応を停止する前にTMB基質とともに10分間インキュベートした。光学密度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0153】
実施例9:治療用の抗シトルリン抗体はペプチド1を認識する。
96ウェルELISAプレートを4℃で一晩インキュベートすることによりニュートラアビジンでコートした(0.1μg/ウェル)。ウェルをPBS−Tween20(PBS−T)とともに5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温で1時間インキュベートすることによりブロックした。PBS−Tを用いてさらに5回洗浄した後、ウェルを、ヒストン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tを用いて5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101、RhmAb2.102、またはRhmAb2.104の連続希釈液で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tを用いた5回の洗浄およびPBSを用いた3回の洗浄工程に続いて、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルを、2MのHSOを用いて反応を停止する前にTMB基質とともに5分間インキュベートした。光学密度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0154】
実施例10:脱イミノ化されたヒト血漿フィブリノゲンの調製、SDS−PAGE電気泳動およびウエスタンブロッティング、ならびに抗シトルリン抗体による検出。
【0155】
100ugのヒト血漿フィブリノゲンを、100μlの脱イミノ化バッファ(pH7.6のPBS、10mMの塩化カルシウム、5mMのジチオスレイトール)に溶解し、53.4mUのhuPAD2またはhuPAD4とともに37℃で3時間脱イミノ化した。10倍のサンプルバッファ(pH6.8の0.25Mトリス、8%SDS、35%グリセロール、2.5%β−メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルー)を添加し、7.5μgの、脱イミノ化されたフィブリノゲンまたは脱イミノ化されていないフィブリノゲンをSDS−PAGE(12.5%)の各レーンにロードして分離し、Hybond C extraニトロセルロース膜(Amersham Biosciences)にエレクトロブロッティングした。ブロッティングおよびローディングはポンソーS染色により確認した。
【0156】
ブロットを、全ての非結合部位をブロックするために、PBS−Tween(洗浄バッファ)中の5%(w/v)低脂肪粉ミルクを用いて室温で2時間ブロックした。続いてブロットを、洗浄バッファを用いて5回5分間洗浄し、ストリップを20μgの抗シトルリン抗体を含む4mlの洗浄バッファを用いて室温で1時間インキュベートした。その後、ストリップを、洗浄バッファで10分間5回洗浄し、洗浄バッファ(1:2000)中でペルオキシダーゼ共役化ウサギ抗ヒトIgG(DAKO)(室温で1時間)とともにインキュベートした。ストリップをPBSによって2回洗浄後、全ての未結合抗体を洗浄するために、洗浄バッファを用いて10分間3回洗浄した。
【0157】
免疫反応性バンドは、化学発光基質(PIERCE)を用いて可視化し、Kodak BioMaxオートラジオグラフィーフィルム(Eastman Kodak Company, Rochester, NY, USA)に感光させた。
【0158】
RhmAb2.102およびRhmAb2.104を用いてインキュベートしたブロットは、RhmAb2.101を用いたものよりも脱イミノ化ヒト血漿フィブリノゲンとの高い反応性を示した。また、RhmAb2.102は、RhmAb2.104と比較した場合に高い反応性を示した。
【0159】
実施例11:治療用抗シトルリン抗体は、フィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンペプチドを認識する。
【0160】
96ウェルELISAプレートを、4℃で一晩インキュベートすることによりニュートラアビジン(0.1μg/ウェル)でコートした。ウェルをPBS-Tween(PBS−T)で5回洗浄し、PBS−T+1%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて室温で1時間インキュベートすることによりブロックした。PBS−Tを用いてさらに5回洗浄した後、ウェルをフィブリノゲンおよびビメンチン由来シトルリンおよびビオチン含有ペプチド(0.3μg/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。さらにPBS−Tを用いて5回洗浄した後、ウェルを、PBS−T+1%BSA中の10μg/ウェルの濃度から開始するRhmAb2.101、RhmAb2.102、またはRhmAb2.104の連続希釈液で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで5回洗浄し、PBS−Tを用いた5回の洗浄およびPBSを用いた3回の洗浄工程に続いて、ウサギ抗ヒトHRP(1:2000)とともに室温で1時間インキュベートした。ウェルを、2MのHSOを用いて反応を停止する前にTMB基質で5分間インキュベートした。光学密度を450nmで測定し、使用される抗体の親和性の尺度とした。
【0161】
実施例12:RhmAb2.102の治療可能性
ModiQuest Research B.V. から市販されているコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル(cat no: MQ18.101)をマウスにおいて関節炎を誘導するため製造規格に従って使用した(http://www.modiquestresearch.nl/shop/files/18.101-50MG%20_2007.08.22.pdf)。その目的のために、0日目に8つの抗コラーゲン抗体の混合物(2.8mg/マウス)を8週齢のDBJ/J1マウス(5マウス/群)の腹腔内に投与した。3日目、マウスは25μgLPSを含む、他の腹腔内投与を受けた。LPSは炎症を引き起こす。平均関節炎スコアが約4になった7日目において(図6A)、1群について1mgのRhmAb2.102を含む静脈内注入を行った。一方、他の群は、プラセボを含む静脈内注入を受けた。
【0162】
動物の足における炎症症状について毎日スコアを評価した。スコアの評価は表2に従って行った。動物あたりの最大関節炎スコアは8である。RhmAb2.102は炎症を安定させた(図6A)。
【0163】
全ての右後足を組織学的分析のために使用した。組織を4%ホルムアルデヒドで4日間固定し、5%ギ酸で脱灰し、続いて脱水し、パラフィン包埋した。7μmの標準正面セクションを、SuperFrostスライド(Menzel-Glaser, Braunschweig, Germany)にマウントした。ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を関節の炎症を調べるために行った(細胞の流入、図7D)。関節における炎症の程度について、0〜3のスケール(0=細胞なし、1=軽度の細胞充実性、2=中程度の細胞充実性、3=最大細胞充実性)でスコアを評価した。図7Aは35日目における肉眼で確認できる炎症を示す。軟骨基質からのプロテオグリカン(PG)の枯渇を検討するために(図7E)、ファストグリーンを用いた対比染色に続いてサフラニンO(SO)染色した。完全に軟骨が染色された(通常)から軟骨が染色されない(完全なPGs枯渇)までの範囲である0〜3の任意のスケールを用いてPGの枯渇を測定した。軟骨細胞死(図7F)を、軟骨細胞核の損失無しから完全に軟骨表面が空洞であるまでの0〜3の範囲のスケールでスコアを評価した。軟骨および骨侵食(図7BおよびC)を、損傷無しから軟骨または骨の構造の完全な損失までの、スケール0〜3の範囲で類別した。関節における病理組織学的変化を70μm離れた関節の5つの準連続切片においてスコアを評価した。スコアの評価は実験条件について既知の知識なしにブラインドで行った。
【0164】
群間における右後足の肉眼で観察できる炎症は35日目において同じであったが(図6Aおよび7A)、炎症性細胞流入(図7D)、軟骨の浸食(図7B)、軟骨PGの枯渇(図7E)、軟骨細胞死(図7F)、および骨の浸食(図7C)の関節炎についての任意のパラメータを調べた場合、コントロール群と比較してRhmAb2.102の投与を受けた実験群において劇的な減少が観察された。この結果は、RhmAb2.102の治療可能性を強く支持する。
【0165】
実施例13:huPAD4脱イミノ化HEK293細胞抽出物の調製、ならびにRhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いた免疫沈降。
【0166】
HEK293細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、スピンダウンし、5.105細胞を15μlの氷冷溶解バッファ(pH7.4の20mMトリス、10mMのβ-メルカプトエタノール、100mMのNaCl、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁した。
【0167】
細胞サンプルを氷上で15秒間に4回音波処理した。ライセートを3.000rpmで5分間遠心し、上清を清浄なチューブに移した。細胞ライセートをタンパク質2mgあたり1UのヒトPAD4(ModiQuestResearch B.V.; cat no: MQ16.203)、10mMのCaCl、および5mMのDTTを添加することにより37℃で2時間脱イミノ化した。
【0168】
脱イミノ化HEK293ライセートにSDS−Page(12.5%ゲル)電気泳動、それに続くウエスタンブロッティングを実行することにより、ライセートの脱イミノ化を検証した。ウエスタンブロッティングは、抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて免疫染色し、陽性であった。無関係な抗体を用いて処理したブロットは全く染色は認められなかった。
【0169】
その後、免疫沈降(IP)を抗体RhmAb2.101またはRhmAb2.102を用いて脱イミノ化HEK293細胞ライセートについて行った。簡潔には、30μlのプロテインAセファロースファストフローを、1mlのIPP500(pH8.0の10mMトリス/HCl、500mMのNaCl、0.1%のNP40、および0.1%のTween20)で5回洗浄し、20μgのRhmAb2.101または20μgのRhmAb2.102に結合させ、結合させないものをネガティブコントロールとした。プロテインAセファロースビーズ/抗体混合物を一定の回転のもと1時間室温でインキュベートした。1mlのIPP500を用いてビーズを3回洗浄し、1回1mlのIPP150(pH8.0の10mMのトリス/HCl、150mMのNaCl、0.1%のNP40、0.1%のTween−20)で洗浄し、続いて300μl脱イミノ化HEK293細胞ライセートとともに室温で2時間、一定の回転のもとでインキュベートした。HEK293細胞のIP手順が成功したか否か決定するために、少量のビーズをSDS−PAGE電気泳動に使用し、その後ビーズを1mlのIPP150を用いて3回洗浄した。RhmAb2.101、RhmAb2.102、およびコントロールビーズにおける免疫沈降タンパク質を、50μlの抽出バッファ(pH3.0の100mMナトリウムクエン酸)を用いて抽出し、pH9.04の10μl1Mトリス/HClを用いて中和し、nLC LTQ FTMS ULTRA質量分析法(実施例14)まで−20℃で保存した。
【0170】
実施例14:RhmAb2.101およびRhmAb2.102により免疫沈降させたhuPAD4脱イミノ化HEK293細胞タンパク質の質量分析
免疫沈降されたタンパク質からPEG形態を取り除くために、それらを15%SDS−PAGEゲルにロードし、短時間泳動した。実施例7において記載したように、タンパク質についてゲルの切り出し、およびゲル内トリプシン消化を行った。サンプルについてnLC LTQ FTMS ULTRA質量分析を実行する前にそれらを50倍に希釈した。
【0171】
ペプチドおよびタンパク質の同定は、ホモサピエンス分類のNCBInr_20081022データベースを使用して検索プログラムMascotによってデータから抽出した。以下の修飾を検索において許可した。システイン(C)(固定)のカルバミドメチル化(carbamidomethylation)、メチオニン(M)(可変)の酸化、ならにびアスパラギン(N)、アルギニン(R)、およびグルタミン(Q)(可変)の脱アミノ化。脱イミノ化は検索ツールとして使用することができなかった。脱アミノ化および脱イミノ化は、修飾されていないアルギニンと比較した場合に、両者は1ダルトンの質量差をもたらすのでこの問題は除去できる。
【0172】
タンパク質の特性の検証を社内で開発したスクリプトによって行った。簡潔には、ソフトウェアは、独特に同定されたペプチド配列、ペプチドの同一のセットを共有するクラスタタンパク質、および以下の条件を有するタンパク質の検証に基づいてタンパク質の特性を分類する。
【0173】
1本のペプチドを有するタンパク質は、>49のペプチドスコアを有していなければならない。
【0174】
1本以上のペプチドを有するタンパク質は、>29のペプチドスコアを有していなければならない。
【0175】
検証基準の使用について、ペプチドは3つの全てのサンプルで同定された(サンプル1:RhmAb2.101を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル2:Rhm2.102を用いて沈殿させたHEK293細胞、サンプル3:空ビーズを用いて沈殿させたHEK293細胞)。
【0176】
emPAI(Exponentially Modified Protein Abundance Index)を全ての検証タンパク質について算出した。emPAIは、データベースの検索結果に一致するペプチドによるタンパク質範囲に基づいて、混合物中の、おおよその、標識のない、タンパク質の相対的定量を提供する。この手法は、(選択的に)RhmAb2.102に結合する脱イミノ化タンパク質を同定することを可能にする。このことを表7に示す。
【0177】
【表7−1】

【0178】
【表7−2】

【0179】
実施例15:抗炎症抗体のファミリー生成/選択
ヒト由来のscFvライブラリを、Raatsら(2003)に記載された方法と同様に、ヒトヒストン2A、ヒストン4、ペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)、およびCFC−1ペプチドのPAD2−またはPAD4−脱イミノ化形態に対してパニングした(Raats, J.M.H., Wijnen, E.W, Pruijin, G.J.M., Van den Hoogen, F.H.M., and W.J. van Verooij. 2003. J.Rheum. 30, 1696-1711)。
【0180】
CFC−1および/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK:配列番号21)および/またはPAD脱イミノ化ヒストン2aおよび/またはヒストン4とのシトルリン非依存の反応性を示す、選択された抗体は、シトルリン化タンパク質および/またはそれらに由来するペプチドのアレイに対する反応性(実施例14、表7)、ならびにPAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォーム、および脱イミノ化ヒトヒストン由来ペプチドに対する反応性についてスクリーニングした。付随して、RA患者に由来するPAD2およびPAD4脱イミノ化ヒト細胞抽出物および関節液に免疫沈降を行った。
【0181】
続いて、p15および/またはp17のバンドとして免疫沈降された抗体、および/またはシトルリン化エピトープ(PAD2およびPAD4脱イミノ化ヒトヒストンアイソフォーム、および/またはCFC−1、および/またはペプチド1(AAASGXGKQGGK、配列番号21)、および/または表7に挙げられたタンパク質に由来するシトルリン化エピトープ)に対するELISA反応性プロファイルを有する抗体を、ヒトIgG1フォーマットにクローン化した。本明細書において記載したように、CAIAマウスモデルにおける、それらの予防的および治療的抗炎症可能性について全長のヒトIgG抗体を試験した。
【0182】
このスクリーニングの手順では、高頻度でCAIAマウスモデルにおける、予防的および/または治療的抗炎症可能性を有する抗体を得た。
【0183】
上述した方法に従って選択される新規抗体の例は、RhmAb2.105(配列番号39および40)およびRhmAb2.107(配列番号41および42)である。これらの抗体をコードする核酸配列は、配列番号43〜46に挙げる。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4A】

【図4B】

【図4C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する、炎症性疾患の予防または治療に使用するための結合分子。
【請求項2】
ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aもしくはヒストン4、またはヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4もしくはH3におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38からなる群から選択されるペプチドに特異的に反応する、請求項1または2に記載の結合分子。
【請求項4】
シトルリンに関連する炎症性疾患の、治療または予防に使用するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項5】
自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、特発性若年関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、クローン病、およびギランバレー(Guillan Barre)からなる群から選択される疾患の、予防または治療に使用するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項6】
関節リウマチのような自己免疫疾患の予防または治療に使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項7】
抗体またはペプチドである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項8】
モノクローナル抗体RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択される抗体である、請求項7に記載の結合分子。
【請求項9】
p15、p17、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、表7のリストから選択されるタンパク質、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択される分子への結合のための、RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択されるモノクローナル抗体に競合する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項10】
モノクローナル抗体RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択される抗体に由来する特異的結合ドメインを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項11】
抗体またはポリペプチドである、請求項10に記載の結合分子。
【請求項12】
リコンビナントペプチドまたは単鎖抗体である、請求項11に記載の結合分子。
【請求項13】
一本鎖可変領域フラグメント(scFvs)、フラグメント抗原結合領域(Fabs)、単一ドメイン抗体(sdabs)、または、ラクダ由来単一ドメイン抗体もしくはサメIgNAR由来単一ドメイン抗体フラグメント(VNAR)などのVHH抗体もしくはナノボディ、またはアンチカリン、またはアプタマーを含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項14】
炎症性疾患の予防または治療のための方法であって、p15、p17、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択される分子におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する結合分子を含む抗炎症性組成物の、治療上有効な量をそれが必要とされる患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項15】
結合分子が、p15、p17、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、表7のリストから選択されるタンパク質、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択される分子に結合するための、RhmAb2.102、RmmAb1.102、RhmAb2.103、RmmAb1.103、RhmAb2.104、RmmAb1.104、RhmAb2.105、およびRhmAb2.107からなる群から選択されるモノクローナル抗体に競合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42に対応する、可変重鎖または軽鎖を含むポリペプチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリペプチドをコードした核酸。
【請求項18】
In vivoにおいて免疫応答を誘発することによる、炎症性疾患の予防または治療のための方法であって、p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択されるエピトープに反応する特異的結合分子が生成される、方法。
【請求項19】
組成物がそれを必要とする患者に投与される方法であって、上記組成物は、p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択される有効成分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炎症性疾患が、自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、およびダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、およびレビー小体型認知症からなる群から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性疾患が、関節リウマチのような自己免疫疾患である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特異的結合分子が抗体である、請求項18〜21に記載の方法。
【請求項23】
p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択されるシトルリン化エピトープに対して向けられた、i n vivoでの特異的免疫応答を高めることが可能な、炎症性疾患の治療または予防における使用のための組成物。
【請求項24】
p15、p17におけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン2Aにおけるシトルリン化エピトープ、ヒトPAD4脱イミノ化ヒトヒストン4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH4、ヒトPAD2脱イミノ化ヒトヒストンH3、ならびに配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号37、および配列番号38に対応するペプチドからなる群から選択される有効成分を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
炎症性疾患は、自己免疫疾患、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬性関節炎、乾癬、アルツハイマー病、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎、脊椎関節症、ダウン症候群、多系統萎縮症、パーキンソン病、およびレビー小体型認知症からなる群から選択される、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
炎症性疾患は、関節リウマチのような自己免疫疾患である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
特異的結合分子が抗体である、請求項23〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
p15および/またはp17におけるシトルリン化エピトープに特異的に反応する、関節の損傷を予防または治療するための結合分子。
【請求項29】
炎症の阻害剤とともに共同投与される、請求項28に記載の結合分子。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−523555(P2011−523555A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512123(P2011−512123)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056862
【国際公開番号】WO2009/147201
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510320689)
【氏名又は名称原語表記】MODIQUEST B.V.
【住所又は居所原語表記】Heyendaalseweg 135 Nijmegen The Netherlands
【Fターム(参考)】