説明

抗炎症剤

【課題】炎症性疾患を治療する医薬を製造するための3-アミノカプロラクタム誘導体を提供する。
【解決手段】一般式(I):


[式中、Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり;又は、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基である。]で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患を予防又は治療する医薬を製造するための3-アミノカプロラクタム誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、生理的な宿主防御の重要な成分である。しかしながら、一時的又は空間的に不適当な炎症反応が、明らかな白血球成分を有する疾患(例えば、自己免疫疾患、喘息又はアテローム性動脈硬化症)を含む幅広い疾患において、また白血球(例えば骨粗鬆症又はアルツハイマー病)に関連すると典型的には考えられてこなかった疾患において、役割を果たしている、ことはますます明らかである。
【0003】
ケモカインは、生理的及び病理的条件において、白血球輸送の調節に関連するインターロイキン-8に相同性を有するシグナル分子の大ファミリーである。ケモカイン系は、ケモカインシグナリングに関連する50を越えるリガンド及び20を越える受容体とともに、骨髄から周辺への複雑な免疫調節プロセスを介して白血球を取り扱った後、二次的リンパ器官に戻るために必要な情報密度を有する。しかしながら、ケモカイン系の複雑性は、ケモカイン受容体遮断薬を介して炎症反応を調節するための隠れた薬理学的アプローチを第一に有する。どのケモカイン受容体(複数)が阻害されて、所定の炎症性疾患に治療的利点を生じるかについて決定するのは困難であることが判っている。
【0004】
ごく最近では、幅広い範囲のケモカインによりシグナリングを遮断する薬剤のファミリーが同時に記載されている:Reckless他, Biochem J. (1999) 340: 803-811。かかる第一の薬剤、すなわち「ペプチド3」と称されるペプチドは、5つの異なったケモカイン以外の他の非改変の走化性因子(例えば、fMLP又はTGF-β)に反応して転移しながら、5つの異なったケモカインによって誘導される白血球転移を阻害することが見出された。このペプチド及びそのアナログ、例えばNR58-3.14.3 (すなわち、配列番号1 c(DCys-DGln-DIle-DTrp-DLys-DGln- DLys-DPro-DAsp-DLeu-DCys)-NH2)は、総括的に、「広域スペクトルケモカイン阻害剤」(BSCI)と称される。その後、Grainger他, Biochem. Pharm. 65 (2003) 1027-1034は、BSCIが、動物の疾患モデルの範囲で潜在的に有用な抗-炎症活性を有することを示している。興味深いことに、複数のケモカインの同時遮断薬は、急性又は慢性毒性とは明らかに関連しない。これは、このアプローチが、ステロイドに同様な有用性を有するが副作用の減少した、新規の抗-炎症性医薬品を開発するための有用なストラテジーであることを示唆している。
【0005】
しかしながら、ペプチド及びペプトイド誘導体、例えばNR58-3.14.3は、in vivoで使用するためには最適ではないかもしれない。それらは、合成に非常に費用がかかり、比較的望ましくない薬物動態学的及び薬理学的性質を有する。例えば、NR58-3.14.3は、経口的には生物利用可能性でなく、静脈注射後30分未満の半減期で血漿から除去される。
【0006】
ペプチド3及びNR58-3.14.3の抗-炎症性を保持する新規調製物を同定するために2つの並行ストラテジーが採用されてきたが、医薬としての使用のための性質を改善してきた。第一に、ペプチドアナログのシリーズが開発されてきた、その中には、NR58-3.14.3よりも長い血漿半減期を有し、かつ相当安く合成ができるものがある。第二に、鍵ファーマコアを特定し、元のペプチドの有利な性質を保持する小さな非-ペプチド性構造を設計するために、詳細な構造:ペプチドの活性分析が行われてきた。
【0007】
第二のアプローチは、アルカロイドヨヒンビンの16-アミノ及び16-アミノアルキル誘導体並びにN-置換3-アミノグルタルイミドの範囲を含む、ペプチドの抗-炎症性を保持した数個の構造的に異なった一連の化合物を与えた。(参照: Fox他,J Med Chem 45 (2002) 360-370: WO 99/12968 and WO 00/42071。)これらの化合物の全ては、非-ケモカイン化学誘導物質を越える選択性を保持する広域-スペクトルケモカイン阻害剤であり、多数のそれらは、in vivoで急性炎症を阻害することが判っている。
【0008】
これらの化合物中の最も強力かつ選択的なものは、(S)-3-(ウンデク-10-エノイル)-アミノグルタルイミド(NR58,4)であり、in vitroでケモカイン-誘導転移を5nMのED50で阻害した。しかしながら、更なる研究は、アミノグルタルイキド環が血清中で酵素的開環を受ける、ことを明らかにした。従って、適用によっては(例えば、治療下での炎症が慢性であるよう適用、例えば自己免疫疾患)、これらの化合物は、最適な性質を有さないことがあり、抗-炎症性に類似の性質を有するより安定な化合物が好ましい。
【0009】
かかる安定なアナログを特定するアプローチとして、(S)-3-(ウンデク-10-エノイル)-アミノグルタルイミドの様々な誘導体が血清中の安定性について試験されてきた。このような1つの誘導体、すなわち6-デオキソアナログである(S)-3-(ウンデク-10-エノイル)-テトラヒドロピリジン-2-オンは、37℃で少なくとも7日間、ヒト血清中で完全に安定であるが、親分子と比べて相当効力が減少する。3-アミノカプロラクタムのアミド誘導体は、当該分野で既に開示されている。例えば、以下である。
【0010】
日本特許出願第09087331号は、アミドアルキル側鎖が2〜30個の炭素原子を含んでもよい3-アミノカプロラクタムアミド誘導体を記載する。これらの化合物は、油-ゲル化剤として提供されていきた。
【0011】
米国特許第6,395,282号明細書は、グラム陰性菌の自己インデューサーに結合された担体分子を含む免疫原性コンジュゲートを記載する。自己インデューサーは、アミドアルキル側鎖が最高34個の炭素原子を含んでもよい3-アミノカプロラクタムアミド誘導体であり得る。しかしながら、治療的使用は、コンジュゲートについてのみ開示され、単離されたアミド誘導体については開示されていない。
【0012】
Weiss他による文献 (Research Communications in Psychology, Psychiatry and Behavior (1992), 17(3-4), 153-159)は、一連の3-アミノカプロラクタムアミド誘導を開示し、他の文献は、3-ヘキサンアミド-DL-ε-カプロラクタム及び3-ドデカンアミド-DL-ε-カプロラクタムを開示する。これらの化合物は、in vitro活性のみを有し、顕著なin vivo効果を有さないものとして示されている。
【0013】
言い換えれば、いくつかの3-アミノカプロラクタムのアルキルアミド誘導体は、当該分野では明らかに公知であるが、3-アミノカプロラクタムアミド誘導体の具体的な医薬用途については記載されていない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、炎症性疾患を治療する医薬を製造するための、下記一般式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に従う化合物例の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ラクタム環の3位の炭素原子は、非対称でよく、従って、本発明に従う化合物は、2つの可能なエナンチオマー、すなわち「R」及び「S」配置を有する。本発明は、2つのエナンチオマー及びこれらの形態の全ての組み合わせを含み、ラセミ体である「RS」混合物も含む。簡単にするために、構造式に特定の配置が示されていない場合には、2つのエナンチオマー及びそれらの混合物が示されていると理解されたい。
【0019】
好ましくは、本発明のこの局面に従って使用される一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、一般式(I'):
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、Xは、上記と同一の意味を有する。]
で表される化合物となる。
【0022】
好ましくは、一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその薬学的に許容される塩は、Yの環又は環(複数)がα-炭素の結合角を本質的に四面体型(すなわち、sp3ハイブリッド角)に束縛するようなものである。「α-炭素」は、(アミドカルボニルに対して)2-位又は(スルホンアミドスルホニル基に対して)1-位のいずれかにある。
【0023】
任意の置換基R1は、シクロ-基Yの環又は環(複数)上の任意の許容される位置での置換基でよい。特に、本発明は、「α-炭素」がシクロ基の2つの部分であり、それ自身置換される化合物を含む、ことに留意されたい。(R1)nの定義は、無置換の本発明の化合物(すなわち、R1=水素原子)、一置換の本発明の化合物(すなわち、R1は水素原子でなくかつn=1)及び多置換の化合物(すなわち、少なくとも2つのR1基が水素原子でなくかつn=2以上)を含む。
【0024】
本発明はまた、活性成分として、下記一般式(I):
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0027】
好ましくは、本発明のこの局面に従って使用される一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、一般式(I'):
【0028】
【化4】

【0029】
[式中、Xは、上記と同一の意味を有する。]
で表される化合物になる。
【0030】
薬学的に許容される塩とは、特に無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩及び硝酸塩、又は有機酸例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、パモン酸及びステアリン酸、の付加塩を意味する。それらが使用されるときに、塩基例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから形成される塩も本発明の範囲内にある。薬学的に許容される塩の他の例として、「Salt selection for basic drugs」, Int. J. Pharm. (1986), 33, 201-217を参照されたい。
【0031】
医薬組成物は、固体形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、ゼラチンカプセル、リポソーム又は座薬にあってもよい。好適な固体支持体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストラン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン及びワックスである。他の好適な薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体は、当業者に公知であろう。
【0032】
本発明従う医薬組成物は、液体形態、例えば溶液、エマルション、懸濁液又はシロップでも提供できる。好適な液体支持体は、例えば水、有機溶媒例えばグリセロール又はグリコール、及び水中の様々な割合のそれらの混合物でよい。
【0033】
本発明はまた、下記一般式(I):
【0034】
【化5】

【0035】
[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物及びその塩を提供する。
【0036】
好ましくは、本発明のこの局面で使用される一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、一般式(I'):
【0037】
【化6】

【0038】
[式中、Xは、上記記載と同一の意味である。]
で表される化合物になる。
【0039】
好ましくは、本発明で用いられる一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその塩は、Yの環又は環(複数)がα-炭素の結合角を本質的に四面体型(すなわち、sp3ハイブリッド角)に束縛するようなものである。
【0040】
特に、本発明の任意の局面に従う、好ましい一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその塩は、以下からなる群より選ばれる:
(S)-3-(シクロへキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(1'-メチルシクロヘキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(シクロヘキセ-1'-エンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(trans-4'-ペンチルシクロヘキセン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(4'-ペンチル[2,2,2]ビシクロ-オクタン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム; (S)-3-(1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(1'-アダマンタニルメタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3'-クロロ-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3',5'-ジメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3',5',7'-トリメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
及びその塩。
【0041】
最も好ましい化合物は、(S)-3-(1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム及びその塩である。
【0042】
本発明はまた、例示された化合物のスルホンアミドアナログ、すなわち当該化合物のスルホニル-アミノ-カプロラクタム等価物、を提供する。
【0043】
上記の先行技術の考察で述べたように、3-アミノカプロラクタムの特定のアルキルアミド誘導体は、(抗-炎症性の文脈での医薬組成物として又は医薬用途として如何なるものが記載されているか現在知られていないとしても)それ自体化合物として公知である。
【0044】
本発明は、水和物形態又は溶媒和形態である、定義された化合物、組成物及びその使用を含む。
【0045】
本明細書に記載の3-アミノカプロラクタムのアミド誘導体は、機能性BSCIである。それらは、本明細書で提供される簡便な合成経路を用いて比較的安価に合成できる;ヒト血清中で安定であり、よって優れた薬物動力学的性質を有する:それらは、経口的に生物学的利用可能である;それらは、in vitroで非常に強力な広域-スペクトルケモカイン阻害剤であり、非-ケモカイン化学誘導物質を越える優れた選択性を有する;それらは、齧歯類炎症モデルにおいて、in vivoで非常に強力かつ有効な抗-炎症剤である;その投与は、最大の治療効果を達成するために必要な用量において、極めて急性の毒性に関連しない。総合すれば、これらの性質は、α-アミノビシクロラクタムのアミド及びスルホンアミド誘導体が、先に記載の化合物を越える有利な抗-炎症性医薬を提供する。
【0046】
先行技術と比較すると、本発明の改善は、3-アミノカプロラクタム部分に、1以上のアルキル/アルケニル環を有する側鎖を提供して、側鎖のα-炭素の結合角を束縛することである。本発明の化合物は、直鎖アレイル(alleyl)鎖(アルキルアミド又はアルキルスルホンアミドのいずれか)を有する化合物よりも顕著に優れている。
【0047】
先行技術のペプチド(例えば、NR58-3.14.3)は、以下の欠点を有する:(a) それらは、高価でかつ固相合成(少なくとも長鎖のペプチド)を必要とする、及び (b) それらは、腎臓を介して非常に速く除去される、及び (c) それらは、一般的に効力が低い。
【0048】
先行技術のアミノグルタルイミドは、安価であるが、腎臓を介して速くは除去されず、BUTがより強いが代謝性安定性を示さない。
【0049】
本明細書に記載の改善、α-アミノビシクロラクタムは、安価で、腎臓で除去されず、更により強力で代謝的に安定でもある。
【0050】
本発明によれば、一般式(I)もしくは(I')又はその薬学的に許容される塩、又はそれを活性成分として含む医薬組成物又は医薬によって予防又は治療される炎症性疾患は、に以下を含む:
−自己免疫疾患、例えば多発性硬化症;
−卒中、冠動脈疾患、心筋梗塞症、不安定狭心症、アテローム性動脈硬化症又は血管炎、例えばベーチェット症候群、巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェグナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス血管症候群、紫斑病性腎炎及び川崎病を含む血管性疾患;
−ウイルス感染又は複製、例えば、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、リスザルヘルペスウイルス)、サイトメガロウイルス (CMV)もしくはレンチウイルスを含むウイルスに因る感染又はウイルスの複製;
−喘息;
−骨粗鬆症(低骨密度);
−腫瘍成長;
−リウマチ様関節炎
−例えば腎臓移植患者における、臓器移植拒絶及び/又は遅延グラフトもしくは臓器機能;
−TNF-αレベルの上昇によって特徴づけられる疾患;
−乾癬;
−皮膚損傷;
−細胞内寄生虫によって起こる疾患、例えばマラリア又は結核症;
−アレルギー;及び
−アルツハイマー病。
【0051】
本発明によれば、更なる炎症性疾患は以下を含む:
−ALS;
−線維症(特に肺線維症、但し、肺での線維症に特に限定されない);
−接着形成(特に腹膜及び骨盤領域);
−抗原誘導再生反応;及び
−免疫反応抑制。
【0052】
これらの臨床的症候は、炎症性疾患又はTNFαレベルの上昇によって特徴づけられる疾患の一般的定義に含まれる。
【0053】
法律的に可能な場合には、本発明はまた、本明細書で請求する化合物、組成物又は医薬の抗-炎症量の患者への投与による、(任意の薬剤に対する逆の炎症反応を含む)炎症性疾患の症状の治療、緩和又は予防の方法を提供する。
【0054】
本発明に従う医薬の投与は、局所的、経口的、非経口的経路により、筋肉内注射等によって実行できる。
【0055】
本発明に従う医薬に予想される投与量は、使用される活性化合物の種類によって、0.1 mg〜1O g含まれる。
【0056】
本発明によれば、一般式(I)又は(I')の化合物は、本明細書に以下に記載するプロセスを用いて調製できる。
【0057】
一般式(I)又は(I')の化合物の調製
一般式(I)又は(I')の全ての化合物は、当業者に公知の一般的な方法に従って容易に調製できる。しかしながら、以下の好ましい合成経路を提案する。
【0058】
【化7】

【0059】
図式1で示される反応は、クロロホルム又はジクロロメタン中で実行できる。最も好ましい反応溶媒は、ジクロロメタンである。
【0060】
上記の反応は、好ましくは、塩基、例えばNa2CO3の存在下で実行する。
【0061】
上記の反応は、周囲温度(約25℃)以上、一般的には20〜50℃の温度で実行できる。
【0062】
定義
用語「約」は、考慮している値の前後の一定間隔を意味する。本特許出願で用いる「約X」とは、XマイナスXの10%〜XプラスXの10%の間隔、好ましくはXマイナスXの5%〜XプラスXの5%の間隔を意味する。
【0063】
本明細書における数値範囲の使用は、明らかに、本発明の範囲内に当該範囲内の各々の整数を全て含み、所定の範囲の最も広い範囲内の上限及び下限の数の全ての組み合わせを含むことを意図する。よって、例えば、明確に例示していようといまいと、(特に)式Iの点から特定される1〜20個の炭素原子の範囲は、1〜20の全ての整数を含み、上限及び下限の数の各々の組み合わせの全ての部分的範囲を含む意図である。
【0064】
本明細書で用いる用語「含む」は、含む(comprising)及び成る(consisting of)の意味するものと読む。従って、本発明が、ある化合物を「活性成分として含む医薬組成物」に関する場合、この用語は、他の活性成分が存在してもよい組成物、及び定義された1つの活性成分のみからなる組成物の両方をカバーする意図である。
【0065】
本明細書で用いる用語「ペプチド部分」とは、以下の20種の天然タンパク新生アミノ酸残基を含む意図である。
【0066】
【表1】

【0067】
修飾及び非天然アミノ酸残基、並びにペプチド-模倣体も、「ペプチド部分」の定義に包含されると意図する。
【0068】
他に特定しない場合には、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野内の当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。同様に、本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、全ての特許及び全ての他の文献は、(法律的に許される場合には)参照として組み込まれている。
【0069】
以下の実施例は、上記の手法を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0070】
出発化合物の合成のための一般的手法
(R)及び(S)-3-アミノ-カプロラクタムの塩酸塩、及び(R,R)及び(S,S)-3-アミノ-カプロラクタムのヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレートを、文献に従って合成した(Boyle他, J. Org. Chem.,(l979), 44, 4841-4847; Rezler他, J Med. Chem. (1997), 40, 3508-3515参照)。
【0071】
実施例 1: (S)-3-(シクロヘキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S,S)-3-アミノ-カプロラクタム ヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレート 2 (5 mmol) 及びNa2CO3 (15 mmol) の水溶液(25 ml)を、シクロヘキサンカルボニルクロリド(5 mmol)のジクロロメタン (25 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、ラクタム(540 mg, 45%)を得た;
【0072】
【表2】

【0073】
実施例 2: (S)-3-(1'-メチルシクロへキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S,S)-3-アミノ-カプロラクタム ヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレート 2 (5 mmol) 及びNa2CO3 (15 mmol) の水溶液(25 ml)を、1-メチルシクロヘキサンカルボニルクロリド(5 mmol)のジクロロメタン(25 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、ラクタム(540 mg, 43%)を得た;
【0074】
【表3】

【0075】
実施例 3: (S)-3-(シクロヘキセ-1'-エンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S,S)-3-アミノ-カプロラクタム ヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレート 2 (5 mmol) 及びNa2CO3 (15 mmol) の水溶液(25 ml)を、シクロヘキセ-1-エン-1-カルボニルクロリド(5 mmol)のジクロロメタン(25 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、ラクタム(431 mg, 36%)を得た;
【0076】
【表4】

【0077】
実施例 4: (S)-3-(trans-4'-ペンチルチクロへキサン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S,S)-3-アミノ-カプロラクタム ヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレート 2 (7 mmol) 及びNa2CO3 (21 mmol) の水溶液(25 ml)を、trans-4'-ペンチルシクロへキサン-1-カルボニルクロリド(6 mmol)のジクロロメタン(25 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、ラクタム(977 mg, 53%)を得た;
【0078】
【表5】

【0079】
実施例 5: (S)-3-(4'-ペンチル[2,2,2]ビシクロ-オクタン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S,S)-3-アミノ-カプロラクタム ヒドロ-ピロリジン-5-カルボキシレート 2 (5.5 mmol) 及びNa2CO3 (16.5 mmol) の水溶液(25 ml)を、trans-4'-ペンチルシクロへキサン-1-カルボニルクロリド(4.4 mmol)のジクロロメタン(25 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、ラクタム(868 mg, 57%)を得た;
【0080】
【表6】

【0081】
実施例 6: (S)-3-(1'-アダマンタンカルボ二ル)アミノ-カプロラクタム:
(S)-3-アミノ-カプロラクタム塩酸塩 2 (1 mmol) 及びNa2CO3 (3 mmol) の水溶液(15 ml)を、1-アダマンタンカルボ二ルクロリド(1 mmol)のジクロロメタン(15 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を2時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をCH2Cl2/へキサンから再結晶して精製し、(S)-3-(1'-アダマンタンカルボ二ル)アミノ-カプロラクタム(171 mg, 59%)を得た;
【0082】
【表7】

【0083】
実施例 7: (S)-3-(1'-アダマンタニルメタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S)-3-アミノ-カプロラクタム塩酸塩 2 (4 mmol) 及びNa2CO3 (12 mmol) の水溶液(50 ml)を、1-アダマンタンカルボ二ルクロリド(4 mmol)のジクロロメタン(50 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を2時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、(S)-3-(1'-アダマンタニルメタンカルボニル)アミノ-カプロラクタムを得、EtOAcから再結晶して白結晶(688 mg, 56%)を得た;
【0084】
【表8】

【0085】
実施例 8: (S)-3-(3'-クロロ-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S)-3-アミノ-カプロラクタム塩酸塩 2 (3 mmol) 及びNa2CO3 (9 mmol) の水溶液(15 ml)を、3-クロロ-1-アダマンタンカルボ二ルクロリド(3 mmol)のジクロロメタン(15 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、(S)-3-(3'-クロロ-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム(621 mg, 64%)を得た;
【0086】
【表9】

【0087】
実施例 9: (S)-3-(3',5'-ジメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S)-3-アミノ-カプロラクタム塩酸塩 2 (1 mmol) 及びNa2CO3 (3 mmol) の水溶液(15 ml)を、3,5-ジメチル-1-アダマンタンカルボ二ルクロリド(1 mmol)のジクロロメタン(15 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をへキサンから再結晶して精製し、(S)-3-(3',5'-ジメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム(200 mg, 63%)を得た;
【0088】
【表10】

【0089】
実施例 10: (S)-3-(3',5',7'-トリメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム:
(S)-3-アミノ-カプロラクタム塩酸塩 2 (1 mmol) 及びNa2CO3 (3 mmol) の水溶液(15 ml)を、3,5,7-トリメチル-1-アダマンタンカルボニルクロリド(1 mmol)のジクロロメタン(15 ml)溶液に周囲温度で加え、反応を12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2 x 25 ml)で抽出した。併せた有機層をNa2CO3で乾燥し、減圧した。残渣をEtOAc/へキサンから再結晶して精製し、(S)-3-(3',5',7'-トリメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム(188 mg, 56%)を得た;
【0090】
【表11】

【0091】
本発明の生成物の薬理学的試験
MCP-1誘導白血球転移の阻害
アッセイ原理
本発明の化合物の生物活性は、ボイデン(Boyden)チャンバー及び関連トランスウェル転移アッセイ、アガロース存在下-転移アッセイ及び直接画像化チャンバー例えばダン(Dunn)チャンバーに限定されない、in vitroでの任意の広範な白血球転移の機能アッセイを用いて証明することができる。
【0092】
例えば、ケモカイン(他の走化性因子ではなく)に対する白血球転移の阻害を証明するために、Neuroprobe (Gaithersburg, TVfD5 USA) 製の96-ウェル型マイオクロトランスウェルアセイ系を使用した。基本的に、本アッセイは、多孔性膜によって分離されている2つのチャンバーからなる。走化性因子を、下方コンパートメントに置き、細胞を上方コンパートメントに置いた。37℃で一定期間のインキュベーション後に、細胞を走化性因子の方向へ移動し、下方コンパートメント内の細胞数は、(一群の対照と比べて)走化性因子活性に比例した。
【0093】
本アッセイは、様々な異なった白血球群で用いられる。例えば、調製されたばかりのヒト末梢血の白血球を用いることができる。あるいは、当業者に周知の方法、例えば密度勾配遠心沈殿法又は磁性ビーズ分離法を用いて、多形核細胞又は白血球もしくは単核白血球を含む白血球のサブセットを調製してもよい。あるいは、単球モデルとしてのTHP-1細胞又は野生型T細胞のモデルとしてのジャーカット細胞に限定されない、ヒト末梢血の白血球のモデルとして広く評価されてきた不死性細胞株も使用できる。
【0094】
本アッセイの条件の範囲は、ケモカイン-誘導白血球転移の阻害を証明できるが、具体例をここに示す。
【0095】
材料
トランスウェル転移系は、Neuroprobe, Gaithersburg, MD, USAにより製造された。使用したプレートは、ChemoTxプレート (Neuroprobe 101-8) 及び30μl透明プレート (Neuroprobe MP30)である。ゲイ平衡塩類溶液(Geys' Balanced Salt Solution)は、Sigma (Sigma G-9779)から購入した。脂肪酸を含まないBSAをSigma (Sigma A-8806)から購入した。MTTすなわち3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドをSigma (Sigma M-5655)から購入した。フェノールレッドを含まないRPMI-1640をSigma (Sigma R-8755)から購入した。THP-1細胞株 (European Cell culture Collection) を白血球細胞集団として使用した。
【0096】
試験プロトコール
MCP-1誘導白血球転移について本化合物を試験するために、以下の手法を使用した。
【0097】
第一に、上方コンパートメントに置くことになる細胞懸濁液を調製した。遠心分離(770 x g; 4分)によりTHP-1細胞をペレット化し、1 mg/ml BSA (GBSS + BSA)を含むゲイ平衡塩類溶液で洗浄した。この洗浄を反復し、そして、例えば標準的な血球計算器を用いてカウントするための少量の体積のGBゲイ平衡塩類溶液SS + BSA中に再懸濁する前に細胞を再ペレット化した。
【0098】
次いで、細胞が4.45 x 106細胞/ml GBSS + BSAの最終濃度になるように、存在する細胞数によってGBSS + BSAの体積を調整した。これは、プレートの上方チャンバー内に置くことになる溶液の各25μl中に100,000 THP-1細胞が存在する、ことを裏付けた。
【0099】
MCP-1誘導転移を阻害する能力を単一の化合物について試験するために、2ロットの細胞を調製する必要がある。4.45 x 106細胞/mlのTHP-1細胞の懸濁液を2ポットに分割した。1ポットには、好適なビヒクル (例えば、1% DMSO以下の中で、1μM) 中の、好適な最終濃度で試験下の阻害剤を添加した。第二のポットには、GBSS + BSAの同一の体積、及び好適なビヒクル(例えば1% DMSO以下)を対照として働くように加えた。
【0100】
次いで、下方コンパートメントに置くことになる走化性因子を調製した。MCP-1をGBSS + BSAで希釈し、25 ng/mlの最終濃度を得た。細胞懸濁液として、これを2つのポットに分割した。1つのポットには、試験化合物を、細胞懸濁液に加えたのと同一の最終濃度で加えた。一方、他のポットには、GBSS + BSAの同一体積及び好適なビヒクル(例えば、1% DMSO以下)を加えた。
【0101】
下方コンパートメント用のMCP-1溶液中の最終濃度及び上方コンパートメント内の細胞最終濃度を確立するときに、試験化合物を添加するために加えられるべき液体の体積を考慮する必要があることに留意されたい。
【0102】
下のウェル用の走化性因子溶液及び上方チャンバー用の細胞溶液を調製した後直ちに、転移チャンバーを組み立てる必要がある。29μlの好適な走化性因子溶液を、チャンバーの下のウェルに置いた。少なくとも3点の決定因子の各条件でアッセイを実行する必要がある。全ての下方チャンバーを満たした後、直ちに、製造者の教示に従って、チャンバーに多孔性膜を適用した。最後に、好適な細胞溶液の25μlをそれぞれの上方チャンバーに適用した。蒸発を防ぐために装置全体にプラスチック製の蓋を置いた。
【0103】
この組み立てられたチャンバーを37℃、5% CO2で2時間インキュベートした。GBSS + BSAでの細胞懸濁液は、チューブ内で同一条件下でもインキュベートした:これらの細胞は、各条件下で、下方チャンバーに移動した細胞数を決定するための標準曲線を作成するために使用した。
【0104】
インキュベーションの最後に、液状の細胞懸濁液を上方チャンバーからゆっくりと除き、20μlの氷冷20 mM EDTAのPBS溶液を上方チャンバーに加え、装置を4℃で15分間インキュベートした。この手法は、膜の下側に細胞を接着させ、下方チャンバーに落とした。
【0105】
このインキュベーション後に、フィルターにGBSS + BSAを注意深く流し、EDTAを洗い流した後、フィルターを除いた。
【0106】
各条件下で下方チャンバーに移動する細胞数は、直接的なカウント、蛍光又は放射活性マーカーによる標識を含む多数の方法によって、又はバイタル色素の使用によって決定することができる。典型的には、我々は、バイタル色素MTTを使用した。3μlのストックMTT溶液を各ウェルに加えた後、細胞内のデヒドロゲナーゼ酵素が、溶解性MTTを、分光光度法で定量できる不溶性青色ホルマザン生成物に変換する時間である1〜2時間、37℃でプレートをインキュベートした。
【0107】
並行して、8-ポイント標準曲線を作成した。それぞれの上方チャンバーに加えた細胞数(100,000)から始めて、GBSS + BSAでの2-倍の希釈系列におとし、細胞をプレートに25μl加え、3μlのMTTストック溶液も加えた。
【0108】
このインキュベーションの最後に、沈殿したホルマザン生成物を妨げないように注意して、下方チャンバーから液体を注意深く除いた。短時間空気乾燥した後、青色色素を溶解するために各下方チャンバーに20μlのDMSOを加え、96-ウェルプレートリーダーを用いて595 nmの吸収を決定した。次いで、各ウェルの吸収を標準曲線に挿入し、各下方チャンバー内の細胞数を見積もった。
【0109】
MCP-1刺激転移は、MCP-1が25 ng/mlで存在する下方コンパートメントに到達した平均細胞数から、MCP-1を加えていないウェル内の下方コンパートメントに到達した平均細胞数を差し引くことにより決定した。
【0110】
試験物質の効果は、試験物質の様々な濃度の存在下又は非存在下で起こったMCP-1-誘導転移を比較することにより計算した。典型的には、転移阻害は、化合物の存在によって妨害された総MCP-1-誘導転移のパーセンテージとして表した。ほとんどの化合物では、用量-反応グラフは、異なった化合物濃度の範囲(活性の低い化合物の場合には、典型的には、1 nM〜1μM以上の範囲)で起こるMCP-1-誘導転移の阻害を決定することにより作製した。次いで、各化合物の阻害活性を、MCP-1-誘導転移を50%減少させるために必要な化合物濃度として表した(ED50濃度)。
【0111】
結果
実施例1〜8及び10の化合物を試験し、本試験で100 nM以下のED50を有することが判った。
【0112】
エナンチオ選択性
2種のアミノカプロラクタム群のメンバーの(S)-及び(R)-エナンチオマーを合成し、生物活性がエナンチオ選択性を示した否かを決定した。
【0113】
MCP-1-誘導THP-1細胞転移の阻害剤としての各々の化合物の用量-反応曲線は、トランスウェル転移アッセイを用いて決定することができる。
【0114】
In vivoでの抗-炎症剤としての本発明の化合物の適用に関して、2つのエナンチオマーのラセミ混合物又は純粋な(R)-エナンチオマーよりも、化合物の純粋な(S)-エナンチオマーを使用することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患を治療する医薬を製造するための、下記一般式(I):
【化1】

[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基から選ばれる。]
で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
炎症性疾患を治療する医薬を製造するための、下記式(I'):
【化2】

[式中、Xは上記と同一の意味を有する。]
で表される化合物の使用。
【請求項3】
活性成分として、下記式(I):
【化3】

[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基(例えば、1〜4のアミノ酸残基のペプチド基)から選ばれる。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
活性成分として、下記式(I'):
【化4】

[式中、Xは上記と同一の意味を有する。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項5】
下記式(I):
【化5】

[式中、
Xは、-CO-Y-(R1)n、又はSO2-Y-(R1)nであり;
Yは、シクロアルキルもしくはポリシクロアルキル基(例えば、アダマンチル、アダマンタンメチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、シクロプロピル基)であり; 又はYは、シクロアルケニル又はポリシクロアルケニル基であり;
各R1は、独立に、水素原子、及び1〜20個の炭素原子(例えば5〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、9〜20個の炭素原子、10〜18個の炭素原子、12〜18個の炭素原子、13〜18個の炭素原子、14〜18個の炭素原子、13〜17個の炭素原子)のアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、アルキニル又はアルキルアミノ基から選ばれ;
あるいは、各R1は、独立に、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、オキシアルキル、アミノ、アミノアルキル及びアミノジアルキル基から選ばれ;並びに、
nは、1〜mの任意の整数であり、ここでmは、シクロ基Y上で許容される置換基の最大数である;
あるいは、R1は、ペプチド結合によって結合された1〜4個のペプチド部分を有するペプチド基から選ばれる。]
で表される化合物。
【請求項6】
下記一般式(I'):
【化6】

[Xは上記と同一の意味を有する。]
で表される化合物。
【請求項7】
Yの環又は複数の環が、α-炭素原子の結合角を本質的に四面体型(すなわち、SP3ハイブリッド結合)に束縛する、請求項1〜6のいずれか1項記載の、化合物、組成物、又は一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
前記化合物が以下:
(S)-3-(シクロへキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(1'-メチルシクロヘキサンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(シクロヘキセ-1'-エンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(trans-4'-ペンチルシクロヘキセン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(4'-ペンチル[2,2,2]ビシクロ-オクタン-1-カルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(1'-アダマンタニルメタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3'-クロロ-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3',5'-ジメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
(S)-3-(3',5',7'-トリメチル-1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム;
及びそのスルホニルアナログ;並びにその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる、請求項1記載の使用、請求項3記載の医薬組成物、又は請求項5記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、(S)-3-(1'-アダマンタンカルボニル)アミノ-カプロラクタム又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の使用、請求項3記載の医薬組成物、又は請求項5記載の化合物。
【請求項10】
前記炎症性疾患が、自己免疫疾患、血管疾患、ウイルス感染又は複製、喘息、骨粗鬆症(低骨密度)、腫瘍成長、リウマチ様関節炎、臓器移植拒絶及び/又は遅延グラフト又は臓器機能、TNF-αレベルの上昇によって特徴付けられる疾患、乾癬、皮膚損傷、細胞内寄生虫によって引き起こされる疾患、アレルギー、アルツハイマー病、抗原誘導再生反応、免疫反応抑制、多発性硬化症、ALS、線維症及び接着形成からなる群より選ばれる、請求項1、2、8及び9のいずれか1項記載の式(I)又は(I')の化合物の使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物、組成物又は医薬の抗-炎症量の、患者への投与による、(任意の薬剤に対する逆炎症反応を含む)炎症性疾患の症状の治療、緩和又は予防方法。
【請求項12】
前記置換基R1が直鎖のアルキル基でない、請求項1〜11のいずれか1項記載の、化合物、組成物、一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用、又は治療方法。
【請求項13】
前記置換基R1が分枝のアルキル基である、請求項1〜11のいずれか1項記載の、化合物、医薬組成物、一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用、又は治療方法。
【請求項14】
前記置換基R1がアルキル基でない、請求項1〜11のいずれか1項記載の、化合物、医薬組成物、一般式(I)もしくは(I')の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用、又は治療方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−140444(P2012−140444A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37773(P2012−37773)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2007−525348(P2007−525348)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】