説明

抗疲労組成物

【課題】 新規な組成物、より詳しくは、医薬組成物、食品組成物、抗疲労組成物を提供する。
【解決手段】 (i)パンテチン類、および(ii)エゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物。
パンテチン類とエゾウコギまたはその抽出物を併用すると、運動負荷後の血中乳酸濃度を著しく低下させた。したがって、パンテチン類およびエゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物は、疲労・倦怠感、筋力低下、けがの予防、持久力低下、筋肉痛、肩こり・腰痛、眼精疲労などを効能・効果、適応症とする組成物として有用であり、本発明の組成物は、医薬組成物、食品組成物、さらには抗疲労組成物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な組成物、より詳しくは、医薬組成物、食品組成物、抗疲労組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンテチンは、血清総コレステロール低下作用、血清中性脂肪低下作用、血清HDL−コレステロール増加作用等が知られ、パントテン酸欠乏症の予防および治療、消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦などのパントテン酸の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、高脂血症、弛緩性便秘、ストレプトマイシンおよびカナマイシンによる副作用の予防および治療、急・慢性湿疹、血液疾患の血小板数および出血傾向の改善のうち、パントテン酸の欠乏または代謝障害が関与すると推定される場合に用いられている(非特許文献1参照)。
エゾウコギは、ロシア、中国(黒龍江流域)、日本(北海道東部)を原産地とするウコギ科に属する落葉潅木であり、その学名はAcanthopanax senticosus Harmsである。エゾウコギには、抗疲労作用、抗ストレス作用などが知られている(非特許文献2参照)。
【0003】
【非特許文献1】財団法人日本医薬情報センター編 医療薬 日本医薬品集 2002(第25版) 株式会社じほう 1582頁
【非特許文献2】「薬用ハーブの機能研究 45のメディカルハーブの成分と機能性最新レポート」 株式会社健康産業新聞社 1999年10月8日 38−43頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な組成物、より具体的には、医薬組成物、食品組成物、抗疲労組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、パンテチン類とエゾウコギまたはその抽出物を併用すると、運動負荷後における血中乳酸値を著しく低下させることを見出した。したがって、パンテチン類、およびエゾウコギまたはその抽出物を含む組成物が、疲労・倦怠感等に有用な抗疲労組成物となりうることを新たに見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明はパンテチン類、およびエゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物に関するものであり、以下の発明に関する。
(1)(i)パンテチン類、および(ii)エゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物。
(2)1日当たりの投与(服用)量として、(i)パンテチン類を1〜2000mg、およびエゾウコギまたはその抽出物を5〜10000mg(植物の重量換算)含有する組成物。
(3)パンテチン類がパンテチンである上記(1)または(2)記載の組成物。
(4)エゾウコギまたはその抽出物がエゾウコギの根またはその抽出物である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
(5)エゾウコギまたはその抽出物が水抽出エキス、エタノール抽出エキスまたは含水エタノール抽出エキスである上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の組成物。
(6)パンテチンおよびエゾウコギ抽出物を含有する組成物。
(7)医薬用である上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の組成物。
(8)食品用である上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の組成物。
(9)抗疲労用である上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の組成物。
(10)剤形が経口投与製剤である上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
後期実施例から明らかなように、パンテチン類とエゾウコギまたはその抽出物を併用すると、運動負荷後における血中乳酸値を有意に低下させた。したがって、パンテチン類とエゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物は、疲労・倦怠感等に有用な抗疲労組成物として有用であり、本発明の組成物は医薬、食品として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかるパンテチン類は、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。パンテチン類としては、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル、ベンゾイルパントテニルエチルエーテル、ジカルボエトキシパントテン酸エチルエステル、パンテテイン、パンテチン、ホスホパンテテイン、パントテン酸、パントテン酸の塩などを挙げることができる。パントテン酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明において、パンテチン類としては、パンテチン、パントテン酸、パントテン酸の塩が好ましく、パントテン酸の塩と
しては、パントテン酸カルシウムが好ましい。
【0009】
本発明にかかるエゾウコギは、ロシア、中国(黒龍江流域)、日本(北海道東部)を原産地とするウコギ科に属する落葉潅木であり、その学名はAcanthopanax senticosus Harmsである。本発明にかかるエゾウコギは、エゾウコギを構成する全てまたはエゾウコギを構成する一部(例えば、根、幹、樹皮、枝、葉、花、種子、種皮など)をそのまま、または必要に応じて、小片、小塊等に切断もしくは破砕して用いることができ、または粉末に粉砕して用いることもできる。さらに、生のままでも乾燥したものでも用いることができる。
エゾウコギの抽出物とは、上述のエゾウコギを構成する全てまたは一部に適当な浸出剤を加えて浸出した液(浸出液)、浸出液を濃縮した液、またはこれらの液を乾燥したものを挙げることができる。具体的には、エキス、チンキ、乾燥エキスなどを挙げることができる。抽出物の調製は、一般にエキスやチンキなどを製する際に用いられる冷浸法、温浸法やパーコレーション法などの公知の方法により行えばよい。浸出剤としては、水、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、またはこれら2種以上の混合物等を挙げることができる。中でも、浸出剤として、水、エタノール、含水エタノールが好ましい。得られた浸出液や浸出液の濃縮液は、さらに凍結乾燥、噴霧乾燥や減圧留去などの公知の方法により、乾燥粉末としてもよい。本発明においては、エゾウコギの根、茎、枝および/または葉を用いることが好ましく、エゾウコギの根、茎、枝および/または葉の抽出物がより好ましい。
【0010】
本発明の組成物には、パンテチン類、エゾウコギまたはその抽出物以外に、さらに以下に示す成分を配合してもよい。配合可能な成分としては、ビタミンA、β−カロチン、肝油、ビタミンC、アスコルビン酸カルシウム、ビタミンD、ビタミンE、コハク酸トコフェロールカルシウム、葉酸、ビオチン等のビタミン剤、ヘプロニカート、グルクロン酸、グルクロノラクトン、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、アスタキサンチン、ユビキノン、セサミン、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム、L−カルニチン、dl−塩化カルニチン、γ−オリザノール等の代謝性成分、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム等のカルシウム剤、硫酸鉄、クエン酸鉄、還元鉄、フマル酸第一鉄等の鉄剤、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等の亜鉛剤、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム剤、グルタミン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン等のアミノ酸、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等のカフェイン類、イカリソウ、オウギ、オウセイ、カイクジン、カシュウ、カンゾウ、クコ、ケイヒ、ゴウカイ、ゴミシ、コロハ、サンヤク、ジオウ、シゴカ、シカシャ、シャクヤク、ジョテイシ、センボウ、タイソウ、トウキ、トウジン、トウチュウカソウ、トシシ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンニク、バクモンドウ、ハゲキテン、ビャクジュツ、ホコツシ、ヤクチニン、リュウガンニク、ロクジョウ、エキナセア、ガルシニアカンボジア、キャッツクロー、ギンコビローバ、グレープシード、セイヨウサンザシ、セントジョーンズワート、アンジェリカ、ノコギリヤシ、パッションフラワー、バレリアン、ブラックコホシュ、ブルーベリー、ルイボスティー、松樹皮等の抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキスなど)、キチン、キトサン、大豆イソフラボン、ローヤルゼリー、プロポリス、コエンザイムQ10等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。これらの成分は、単一成分を配合してもよく、2種以上のものを組み合わせて配合してもよい。
【0011】
本発明の組成物は、経口または非経口的に投与することができる。非経口的に投与する製剤としては、注射剤、硬膏剤、酒精剤、エキス剤、坐剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、点鼻剤、吸入剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等を挙げることができる。また、経口的に投与する製剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤、舐剤、シロップ剤等を挙げることができる。本発明においては、経口投与製剤が好ましい。本発明の組成物は、必ずしも医薬として用いられるべきものではなく、飲料や固形物などの食品として用いてもよい。
【0012】
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。製剤添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、乳化剤、安定化剤等を挙げることができる。
【0013】
本発明の組成物における、パンテチン類、およびエゾウコギまたはその抽出物(植物の重量換算)の配合比は、1:0.01〜1:10000が好ましく、1:1〜1:1000が好ましい。
【0014】
本発明の組成物の投与(配合)量は、性別、年齢、症状、投与方法、投与回数、投与時期等により適宜検討を行い、適当な投与量を決めればよい。例えば、経口投与の場合、パンテチン類については、1日当たり1〜2000mg投与(配合)することが好ましく、5〜1000mg投与(配合)することがさらに好ましい。エゾウコギまたはその抽出物(植物の重量換算)については、1日当たり5〜10000mg投与(配合)することが好ましく、10〜5000mg投与(配合)することがさらに好ましい。本発明の効果をより高めるために、さらにバリン、ロイシン、イソロイシン等の分岐鎖アミノ酸を配合することが好ましく、配合する場合、バリン、ロイシン、イソロイシンの配合比を、1:2:1に近い配合にしたものをさらに好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、運動負荷後における血中乳酸値の低下作用を示すことから、その効能・効果、適応症としては、疲労・倦怠感、筋力低下、けがの予防、持久力低下、筋肉痛、肩こり・腰痛、眼精疲労などを挙げることができる。
【0016】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
【実施例】
【0017】
1.抗疲労試験
8週齢の雄性Crj:Wistarラット(SPF)(日本チャールズ・リバー株式会社)10匹を1群に分けた。下表(表1)の組成となるように注射用水に検体を懸濁させ、1日1回ラットに5ml/kg経口投与した。なお、エゾウコギエキスは、松浦薬業株式会社製のエゾウコギの根から得られたもの(植物重量換算25:1)を用いた。
【0018】
表1

【0019】
検体投与7日目に、強制走行装置(TREDMILL TK−175、有限会社ユニコム)を用いて運動負荷を行った。強制走行装置のベルトの傾斜角を0度に設定し、ラットを装置内に入れた後、走行の馴化のためベルトの回転を緩やかに上昇させ、約2分後に15m/分の速度に上げた後、5分間隔で4m/分ずつスピードを漸増させ、30分間走行させた。 運動負荷の直前および直後に、ラットの尾静脈より血液5μlを採取し、採血液について、簡易血中乳酸測定器「ラクテート・プロTM」にて血中の乳酸濃度を測定した。結果を下表(表2)に示した。ただし、正常対照群には運動負荷を実施しなかった。
【0020】
表2

【0021】
結果から明らかなように、本発明にかかる検体Cを投与した群は、運動負荷後の血中の乳酸濃度が著しく低減し、パンテチン類とエゾウコギまたはその抽出物の併用は、優れた抗疲労効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の組成物は、実施例から明らかなように、運動負荷後の血中乳酸濃度を著しく低下させた。したがって、本発明の組成物は、疲労・倦怠感、筋力低下、けがの予防、持久力低下、筋肉痛、肩こり・腰痛、眼精疲労などを効能・効果、適応症とする組成物として有用であり、本発明の組成物は、医薬組成物、食品組成物、さらには抗疲労組成物として有用なものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)パンテチン類、および(ii)エゾウコギまたはその抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
1日当たりの投与(服用)量として、(i)パンテチン類を1〜2000mg、およびエゾウコギまたはその抽出物を5〜10000mg(植物の重量換算)含有する組成物。
【請求項3】
パンテチン類がパンテチンである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
エゾウコギまたはその抽出物がエゾウコギの根またはその抽出物である請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
エゾウコギまたはその抽出物が水抽出エキス、エタノール抽出エキスまたは含水エタノール抽出エキスである請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
パンテチンおよびエゾウコギ抽出物を含有する組成物。
【請求項7】
医薬用である請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
食品用である請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
抗疲労用である請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
剤形が経口投与製剤である請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。


【公開番号】特開2006−16359(P2006−16359A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197476(P2004−197476)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】