説明

抗癌剤に対する癌細胞の感受性を検定する方法

癌患者から生検等により採取した癌細胞に発現している分子を調べることにより、本化合物に対する癌細胞の感受性を調べることができれば、本化合物の抗腫瘍効果が期待できる癌患者のみに、本化合物を投与することが可能となり、治療効果を高め不要な副作用を軽減できることが期待された。詳しくは、「pRB低発現」「p16発現陽性」「cyclinE高発現」という特徴が、癌細胞の本化合物に対する高感受性のマーカーとして有用であることが明らかとなり、癌細胞のこれら性質を調べることにより、本化合物に対する癌細胞の感受性を予め調べることが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗癌剤として有用な式(I)の一般式で表される化合物(以下、本化合物と称す)に対する癌細胞の感受性を予測するための検定方法に関する。

【背景技術】
従来の癌化学療法においては、臓器癌種毎に効果の立証されている抗癌剤を、単剤またはそれらの併用で行ってきた。また、近年の盛んに行われている大規模な無作為比較試験を通して、特定の癌種においては標準治療が確立されている。しかしながら、これらの治療において達成される奏効率は、概して20〜50%程度であり、半数以上の患者においては治療効果を享受できないにも関わらず、副作用の危険性を伴う化学療法を施行するという状況である(JACR Monograph No.7,10−19,2002)。
抗癌剤が効く患者と効かない患者を選別しようという試みは、従来から「薬剤感受性試験」という方法が試されてきた。抗癌剤感受性試験にはSDI法(Jpn J Cancer Res.85:762−765,1994)、CD−DST法(Jpn J Cancer Res.92:203−210,2001)、HDRA法(Clin Cancer Res.1:305−311,1995)などがあり、いずれも患者から癌細胞を採り、抗癌剤を接触させて抗癌剤に対する感受性を調べる方法であることで共通している。しかしながら、これらの方法は、癌細胞を試験管内で生存させておく必要があることや、更に検査結果と臨床効果が必ずしも一致しないという問題などがあり、実施率も0.5%程度にとどまっている(制癌剤適応研究会集計アンケート1996)。
癌細胞に特異的な分子を標的とした分子標的薬剤の中には、ハーセプチンテストなどのように分子診断によって薬剤に対する感受性を予測することに成功している例も報告されている(Clin Cancer Res.7:1669−1675,2001)。しかしながら、その他の薬剤においては単独の標的分子のみでは感受性を予測出来ず、複数の分子が感受性を規定している場合が多いと考えられている(Nat Genet.24:236−244,2000)。近年発展したcDNAマイクロアレイ技術は超多量遺伝子の発現解析を可能とし、感受性規定因子の包括的解析を可能にした。例えば、慢性骨髄性白血病治療薬のグリーベックの場合は、15〜30の遺伝子群の発現解析により治療効果の予測可能であることが、cDNAマイクロアレイ解析の結果から提唱されている(Jpn J Cancer Res.93:849−56,2002)。
今後の癌化学療法で用いられる抗癌剤の開発は、治療前にその感受性を調べる診断法と組み合わせた提供を目指すべきであり、分子診断を可能にするためには開発する薬剤への感受性を予測できる分子を見出すことが重要となる。
【発明の開示】
本発明者らはWO 02/060890、WO 03/099813及びWO 04/011661において、本化合物が、ヒト乳癌細胞株(BSY−1)に対し極めて強い抗腫瘍効果を発現し、ヒト大腸癌細胞株(WiDr)に対しても強い抗腫瘍効果を発現することを見出した。
一方で、本化合物は小細胞性肺癌細胞株(Calu−1)に対しては、上述した癌細胞株と比べて効果が弱いことを見出し、本化合物の抗腫瘍効果が、癌細胞により異なることが明らかとなった。
癌細胞の本化合物に対する感受性と関連する分子を明らかにし、生検等により癌患者から採取した癌細胞で、それら分子の発現を調べることにより、本化合物に対する癌細胞の感受性を予測することができれば、本化合物の抗腫瘍効果が期待できる癌患者のみに、本化合物を投与することが可能となり、治療効果を高め不要な副作用を軽減できることが期待される。
本化合物に対する感受性の高いBSY−1株の分子的特徴を探索するにあたり、本発明者らは乳癌や肺癌において破綻していることが提唱されている細胞周期のG1/S移行を制御する分子群に着目した。癌抑制遺伝子であるp16とpRB、及びそれらと拮抗する、またはそれらを負に制御するcyclin D1とcyclin Eの4分子に関して、蛋白質発現量を調べたところ、BSY−1株にはpRBの発現減少、p16発現陽性、cyclin E高発現という分子的特徴があることを見出した。
BSY−1株、WiDr株及びCalu−1株を含むヒト癌細胞株25株について、pRBの発現減少若しくは変異(以下pRB低発現と称す)、p16発現陽性またはcyclin E高発現という特徴を調べ、これら癌細胞を移植したマウスを用いて本化合物の抗腫瘍効果を比較検討したところ、これら特徴を一つでも有していたヒト癌細胞株の多くが本化合物に対する高い感受性を示したのに対し、有していない癌細胞株のほとんどは低感受性であった。
特にpRB低発現及びcyclin E高発現の特徴を有する7株、p16発現陽性及びcyclin E高発現の特徴を有する6株のうち、4株は本化合物投与により完全な腫瘍の消失を示し、1株は消失はしないまでも長期間にわたる腫瘍縮小の継続を示した。
癌細胞のpRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現という特徴を調べることにより、当該癌細胞の本化合物に対する感受性を予測できることが明らかとなり、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
1.1)pRBの発現が減少している、
2)p16が発現している、
3)cyclin Eの発現が増強している、
4)pRBの発現が減少しかつcyclin Eの発現が増強している、または
5)p16が発現しかつcyclin Eの発現が増強している、の何れか一つを指標とする、下記一般式1で表される化合物に対する癌細胞の感受性を検定する方法。
式(I)

[式中、R
1)水素原子または
2)水酸基

1)水素原子、
2)水酸基または
3)C1−6アルコキシ基

1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
4)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基
5)式(II)

[式中、
A)
nは0ないし4の整数、
Xは
i)−CHRN4−、
ii)−NRN5−または
iii)−O−、
N1及びRN2は同一または異なって、
i)水素原子または
ii)C1−6アルキル基、
N3及びRN4は同一または異なって、
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
iv)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
v)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
vi)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
vii)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
viii)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
ix)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
x)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
xi)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
xii)−NRN6N7(ここにおいて、RN6およびRN7は同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
xiii)RN3及びRN4が一緒になって結合する炭素原子と共に形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基(該非芳香族複素環式基は置換基を有していても良い)、
N5
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
iv)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
v)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
vi)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
vii)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
viii)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
ix)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
x)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基または
xi)RN3及びRN5が一緒になって結合する窒素原子と共に形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基(該非芳香族複素環式基は置換基を有していても良い)、
B)
X、n、RN3、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN1及びRN2は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
C)
X、n、RN2、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN1及びRN3は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基あるいは
D)
X、n、RN1、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN2及びRN3は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基を表す]
または
6)式(III)

[式中、RN8及びRN9は同一または異なって、
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
iv)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
v)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基または
vi)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基を表す]
を表す]
2.R
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基または
4)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基である1に記載の検定方法。
3.Rが下記式(IV)で表される1に記載の検定方法。
式(IV)

[式中、nは0ないし4の整数、
aN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
aN2
1)水素原子
2)N−C1−6アルキルアミノ基、
3)N,N−ジC1−6アルキルアミノ基、
4)エチルメチルアミノ基、
5)ピリジル基、
6)ピロリジン−1−イル基、
7)ピペリジン−1−イル基、
8)モルホリン−4−イル基または
9)4−メチルピペラジン−1−イル基を表す]
4.Rが下記式(V)で表される1に記載の検定方法。
式(V)

(式中、n及びnは同一または異なって、0ないし4の整数、

1)−CHRbN4−、
2)−NRbN5−または
3)−O−、
bN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
bN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
bN4
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
10)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
11)−NRbN6bN7(ここにおいて、RbN6およびRbN7は、同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
12)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
bN5
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
5)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
6)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
7)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
8)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
9)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基または
10)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基を表す]
5.Rが下記式(VI)で表される1に記載の検定方法。
式(VI)

[式中、nは1または2の整数、
cN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
cN5
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基を表す]
6.Rが下記式(VII)で表される1に記載の検定方法。
式(VII)

(式中、n及びnは同一または異なって、0ないし4の整数、

1)−CHRdN4−、
2)−NRdN5−または
3)−O−、
dN2
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
dN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
dN4
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
10)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
11)−NRdN6dN7(ここにおいて、RdN6及びRdN7は同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
12)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
dN5
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
5)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
6)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
7)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
8)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
9)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基または
10)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基を表す]
7.Rが下記式(VII)で表される1に記載の検定方法。
式(VIII)

[式中、nは1ないし3の整数、
eN4
1)アミノ基、
2)N−C1−6アルキルアミノ基、
3)ピロリジン−1−イル基、
4)ピペリジン−1−イル基または
5)モルホリン−4−イル基を表す]
8.Rが下記式(IX)で表される1に記載の検定方法。
式(IX)

[式中、nは1ないし3の整数、
fN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
fN5
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
4)置換基を有していても良い3ないし8員環非芳香族複素環式基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良い5員環ないし14員環ヘテロアラルキル基または
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基を表す]
9.Rが下記式(X)で表される1に記載の検定方法。
式(X)

[式中、nは1ないし3の整数、
gN5
1)水素原子、
2)置換されていてもよいC1−6アルキル基、
3)置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、
4)置換されていてもよいC4−9シクロアルキルアルキル基、
5)置換されていてもよいC7−10アラルキル基、
6)置換されていてもよいピリジル基または
7)置換されていてもよいテトラヒドロピラニル基を表す]
10.一般式(I)で表される化合物が下記化合物の何れか一つの化合物である、1に記載の検定方法。
1)(8E,12E,14E)−7−アセトキシ−3,6,21−トリヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド
2)(8E,12E,14E)−7−((4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド、
3)(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−7−((4−イソプロピルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド及び
4)(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−7−((4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド
11.pRBの発現の減少、p16の発現、またはcyclin Eの発現の増強を、それぞれをコードするmRNA量を測定することにより検定する、1に記載の検定方法。
12.mRNA量を測定する方法が定量的RT−PCR法である、11に記載の検定方法。
13.mRNA量を測定する方法がDNAチップ法である、11に記載の検定方法。
14.pRBの発現の減少、p16の発現、またはcyclin Eの発現の増強を、それぞれの蛋白質量を測定することにより検定する、1に記載の検定方法。
15.蛋白質量を測定する方法がウエスタンブロット法である、14に記載の検定方法。
16.蛋白質量を測定する方法が免疫組織染色法である、14に記載の検定方法。
17.蛋白質量を測定する方法がELISA法である、14に記載の検定方法。
18.pRB、p16またはcyclin E遺伝子の連続した少なくとも15塩基の配列から成るプライマーを含んで成る、12の検定方法に使用するキット。
19.pRB、p16またはcyclin Eに対する抗体を含んで成る、15、16または17に記載の検定方法に使用するキット。
癌細胞のpRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現という特徴を調べることにより、癌細胞の本化合物に対する感受性を予め予見することが可能となり、本化合物の抗腫瘍効果が期待できる癌患者のみに、本化合物を投与することが可能なった。治療効果を高め不要な副作用を軽減できることが期待された。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書中でpRBとは、Genbank Accession No.NM000321に記載の塩基配列でコードされる分子量約110KDaの蛋白質である。pRBをコードするRB遺伝子は、網膜芽細胞腫で変異を起こしている癌抑制遺伝子として単離され(Proc.Natl Acad.Sci.USA 84:9059−9063,1987)、その後種々の悪性細胞での変異が確認されている。
p16とは、Genbank Accession No.HM000077に記載の塩基配列でコードされる分子量約16KDaの蛋白質である。p16は、CDK4及びCDK6と結合し、CDK4/6によるpRBのリン酸化を抑制してpRB活性保持に寄与している(Science 264:436−440,1994)。
cyclin Eとは、Genbank Accession No.M74093に記載の塩基配列でコードされる分子量約52KDaの蛋白質である。細胞周期のG1/S移行時に一過的に発現量が上昇することで細胞周期進行に中心的役割を果たしているが、癌化に伴って発現量の絶対量の上昇及び一過的上昇のパターンの破綻が報告されている(Int.J Cancer 104:369−75,2003)。
また、p16とpRBの発現量の逆相関関係は多くの癌種において報告されていることから、p16の発現陽性とpRBの低発現は同一の事象に起因していると考えられる(EMBO J.14:503−511,1995)。
本化合物は、WO 02/060890、WO 03/099813及びWO 04/011661に記載の方法により製造できる。また、本化合物が抗癌活性を有していることは、WO 02/060890、WO 03/099813及びWO 04/011661に記載されている。
本発明は、癌細胞のpRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現という特徴を調べることにより、本化合物に対する感受性を検定する方法であり、癌細胞は癌組織から採取した細胞であっても、in vitroで培養された細胞であっても許されるが、好ましくは、生検により癌組織から取り出された癌組織の細胞であることが望ましく、更に好ましくは、その癌組織は癌の診断に際して生検により取り出された癌組織であることが望ましい。
本発明の方法により、高感受性と判断された癌細胞が採取された患者に対して、本化合物を投与することにより、本化合物の抗腫瘍効果が期待できる癌患者を選択して、本化合物を投与することが可能なる。これにより、治療効果を高め不要な副作用を軽減できることが期待される。
本発明における癌細胞のpRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現という特徴を調べる方法としては、転写されたmRNAの量を測定しても、または翻訳された蛋白質の量を測定しても良い。mRNA量を測定する方法としては、RT−PCR法・DNAチップ法などが挙げられ、蛋白質量を測定する方法としては、ウエスタンブロット法・免疫組織染色法・ELISA法などが挙げられるが、発現量を測定する方法であれば良く、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
また、突然変異によりこれら蛋白質が変異し(pRBの変異に関しては次の報告が有る:Proc Natl Acad Sci USA 87:6922−6,1990:Proc Natl Acad Sci USA 87:6−10,1990)発現が減少しているのと実質的に同等であることを、該DNA・mRNAの塩基配列や電気泳動度より解析して変異DNA・mRNAを検出した場合(Oncogene8:1913−9,1993)、または変異を識別できる抗体若しくは電気泳動度により変異蛋白質を検出した場合も、本発明に含まれる。
以下に、採取した腫瘍組織からpRB、p16、cyclin Eの発現を測定する方法について詳しく説明するが、培養細胞からも同様の方法により発現を測定できるが、本発明はこれに限られない。
なお、本明細書において引用した文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
1.RT−PCR法:
採取した腫瘍組織から常法(実験医学増刊「PCRとその応用」8:1063−1071,1990)によりmRNAを調製する。調製したmRNAを鋳型にして、RT−PCRによりpRB・p16・cyclin Eの発現量を測定することができる。RT−PCRは、例えばReal Time RT−PCR Core Kit(TaKaRa Code PR032A)を用いて、逆転写反応とそれに引き続くPCR反応(RT−PCR)を行うことが可能である。
mRNAを定量して発現量を測定するために、RT−PCRは定量的なRT−PCRであることが好ましい。定量的なRT−PCRとしては、様々な方法が報告されているが(Genome Res.6:986−994,1996)、好ましくは同じプライマーにより増幅される既知量の競合鋳型RNAを共存させてRT−PCRを行い、両増幅産物の量を比較して定量を行う競合RT−PCRが望ましい。
上記Genbank Accession No.に記載の配列情報を基にpRB・p16・cyclin EをコードするmRNA(標的mRNAと称す)を検出するためのプライマーを作製する。また定量のため、そのプライマーと相補的な配列を有するが、分子量または制限酵素切断部位が標的mRNAとは異なる競合鋳型RNAを作製する。変異が高発する部位(pRBに関しては、Proc Natl Acad Sci USA 87:6922−6,1990;Proc Natl Acad Sci USA 87:6−10,1990に報告)にプライマーを設定することにより、変異蛋白質のみを、または正常蛋白質のみを定量することができる。
腫瘍組織から調製したmRNA試料に、既知量の競合鋳型RNAを希釈したものを加え、プライマーを加えてRT−PCRを行う。生成した増幅産物の分子量または制限酵素消化後の分子量により、生成増幅産物が標的mRNA由来であるか競合鋳型RNA由来であるかを区別し、両増幅産物の量比、及び添加した競合鋳型RNAの量から標的mRNAの定量値を計算する。mRNA量は普遍的に発現が認められるアクチンmRNA、18SrRNA等と比較した相対量として測定することも許される。高感受性及び低感受性の癌細胞のpRB・p16・cyclin EのmRNA量を測定してカットオフ値を決め、カットオフ値との比較で高発現であるか低発現であるかを判断する。
また、標準細胞とは電気泳動度の異なるバンドが現れた場合、または変異蛋白質が検出された場合は、低発現であると判断する。
pRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現の場合に、好ましくはpRB低発現かつcyclin E高発現の場合、またはp16発現陽性かつcyclin E高発現の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。
2.DNAチップ法:
採取した腫瘍組織から、例えば常法(実験医学増刊「PCRとその応用」8:1063−1071,1990)によりmRNAを抽出して、逆転写反応によって蛍光標識し、合成された標識cDNAを癌関連遺伝子のOligonucleotideがスポットしてあるマイクロアレイIntelliGene Human Cancer CHIP Ver.4.0(タカラバイオ株式会社X102)上にハイブリダイズする(Nature genetics supplement 21;10−14;1999)。
その際、腫瘍組織サンプルと正常組織サンプルを別々の蛍光色素で,例えばCy3(赤)とCy5(緑)に標識することによって、どちらのサンプルで遺伝子が増えているかを判定する。コンピュータ解析ソフトにより、正常組織から得られた標識cDNAをハイブリダイズした場合と比較して癌組織の方が多ければ例えば赤、同等ならば例えば黄、少なければ例えば緑として画像表示させることができる。このシグナルの強弱をコンピューター解析ソフトで数値化することで、両者における遺伝子発現比(Cy3=癌組織/Cy5=正常組織)のデーターを算出し、これらの発現比が2倍以上または1/2以下を、好ましくは3倍以上または1/3以下を有意として判定する。
pRBが緑、p16が黄若しくは赤、またはcyclin Eが赤の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。好ましくはpRBが緑かつcyclin Eが赤の場合、またはp16が黄若しくは赤かつcyclin Eが赤の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。
3.ウエスタンブロット法:
以下のウエスタンブロット法、免疫組織染色法及びELISA法に用いる抗pRB抗体・抗p16抗体・抗cyclin E抗体は、市販の抗体を用いることができる。抗pRB抗体は、例えばCell Signaling社からRb Antibody(カタログNo.:9302)を、抗p16抗体は、例えばSanta Cruz社からp16(C−20)(カタログNo.:sc−468)を、抗cyclin E抗体は、例えばBD PharMingen社からPurified anti−human Cyclin E(カタログNo.:554182)を入手できる。
また、抗体は上記Genbank Accession No.に記載の情報を基に作製された抗原を免疫して作製することも可能である。抗原は、上記Genbank Accession No.に記載の配列情報を基にpRB・p16・cyclin E発現ベクターを作製し、該ベクターを導入した発現細胞からpRB−p16・cyclin E蛋白を精製して得ることができる。これら蛋白質は精製が容易となるよう、融合蛋白質として発現させることが好ましい。また別法として、上記Genbank Accession No.に記載の配列情報を基にペプチドを合成し、キャリアー蛋白質と結合させて抗原とすることもできる。それら抗原を動物に免疫し、得られた血清から抗体を精製するか、または得られた抗体産生細胞からハイブリドーマを作製して、その培養液から抗体を精製することができる。
また、pRB・p16・cyclin E、特にpRBの変異を検出するために、例えば、Proc Natl Acad Sci USA 87:6922−6,1990;Proc Natl Acad Sci USA 87:6−10,1990に記載の変異を有する変異蛋白質を発現させ、または変異部位を含むペプチドを合成して、それを動物に免疫し、変異蛋白質に特異的に反応する抗体を得ることができる。または逆に、正常蛋白質を免疫して、正常蛋白質は反応するが変異蛋白質には反応しない抗体も作製可能である。抗体の作製法はMethods in Enzymology 182,p663−679に記載されている。
採取した腫瘍組織より、pRB・p16・cyclin Eを含むSDS−PAGE用サンプルを調整する。具体的には例えば、腫瘍組織を細胞調製液(好ましくは各種プロテアーゼ阻害剤及び10%グリセロールを含む)を用いてホモゲナイズし、等量のSDS−PAGE用サンプルバッファーを混合し97℃で5分の熱処理を行って、SDS−PAGE用サンプルとする。ウエスタンブロット法は、Methods in Enzymology 182,679−688に記載の方法により行うことができるが、具体的には例えば以下の通り行うことができる。
各サンプル一定量をSDS−PAGEにて分画後、Hybond ECL膜にトランスファーし、抗pRB抗体・抗p16抗体・抗cyclin E抗体を反応させた後、酵素標識した二次抗体を反応させ、酵素活性によりHybond ECL膜にトランスファーされたpRB・cyclin E・p16を検出する。好ましくは対照として、pRB・p16・cyclin Eの発現が認められる標準細胞、好ましくは全ての発現が認められるMDA−MB435細胞等を同時にアプライして、MDA−MB435細胞での発現と比較して、高発現であるか低発現であるかを判断する。
また、標準細胞とは電気泳動度の異なるバンドが現れた場合、または変異蛋白質が検出された場合は、低発現であると判断する。
pRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現の場合に、好ましくはpRB低発現かつcyclin E高発現の場合、またはp16発現陽性かつcyclin E高発現の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。
4.免疫組織染色法
免疫組織染色法は、例えば実験医学別冊(ポストゲノム時代の免疫染色、in situハイブリダイゼーション、1997)に記載の方法により行うことができるが、具体的には例えば以下の通り行うことができる。
採取した腫瘍組織に埋包剤を浸透させてブロックを作製した後、2〜8μmの厚さにスライスしてスライドガラスに貼り付けて組織標本を作製する。組織標本に、抗pRB抗体や抗cyclin E抗体、または抗p16抗体を反応させた後、アビジン−ビオチン−酵素抗体法にて染色する(J.Histochem.Cytochem.27;1131−1139,1979)。染色した組織標本中の腫瘍組織のpRB・p16・cyclin Eの染色度を正常組織と比較して、pRB低発現、p16発現陽性あるいはcyclin E高発現を判断する。変異蛋白質が検出された場合は、低発現であると判断する。
pRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現の場合に、好ましくはpRB低発現かつcyclin E高発現の場合、またはp16発現陽性かつcyclin E高発現の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。
5.ELISA法
ELISA法はEd Harlowら(Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory)に記載の方法により行うことができるが、具体的には例えば以下の通り行うことができる。
採取した腫瘍組織より、pRB・p16・cyclin Eを含む画分を調整する。具体的には例えば、腫瘍組織を細胞調製液(好ましくは各種プロテアーゼ阻害剤及び10%グリセロールを含む)を用いてホモゲナイズし、そこに1%NP−40を添加して可溶画分と残渣を得る。可溶画分をそのままELISA法に用いるか、もしくは残渣画分を0.5MのNaClを加え抽出操作を行った後、NaCl濃度を0.1〜0.15Mに下げてからELISA法に用いる。
可溶画分及びNaCl抽出画分を、抗pRB抗体、抗p16抗体、または抗cyclin E抗体がコートされている96穴プレートに添加し抗体と反応させる。コートされた抗体に結合したpRB、p16、またはcyclin Eを、それぞれに対する酵素標識抗体でサンドイッチし、結合した酵素の活性を測定することにより腫瘍組織で発現しているpRB、p16、またはcyclin Eを定量する。
高感受性及び低感受性の癌細胞のpRB・p16・cyclin Eの量を測定してカットオフ値を決め、カットオフ値との比較で高発現であるか低発現であるかを判断する。
pRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現の場合に、好ましくはpRB低発現かつcyclin E高発現の場合、またはp16発現陽性かつcyclin Eが高発現の場合に、該癌細胞が本化合物に対して高感受性であると判断する。
【図面の簡単な説明】
図1は、各ヒト癌細胞株におけるpRB・cyclin E・p16・cyclin D1のウエスタンブロットによる発現量解析結果である。
図2は、SY−1株及びH−526株,H−460株におけるpRB・p16・cyclin Eの免疫組織染色よる発現量解析結果である。
図3は、子宮体癌の臨床標本におけるp16・cyclin Eの免疫組織染色よる発現量解析結果である。
図4は、p16 mRNA量とT/C%、16 mRNA量とp16蛋白の発現量の関連を示したグラフである。
【実施例】
以下に、本発明の有用性を示すための例を示すが、これらは例示的なものであって、本発明は如何なる場合にも以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1]BSY−1株及びWiDr株を含むヒト癌細胞株25株における細胞周期関連分子群の発現解析
WO 02/060890において、下記式IIで表される(8E,12E,14E)−7−アセトキシ−3,6,21−トリヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド(以下、化合物1と称す)に対して強い感受性を示したBSY−1株、及びWO 03/099813において一般式1で表される化合物のうちR1が水酸基である化合物群に対して感受性を示したWiDr株を含む、ヒト癌細胞株25株における細胞周期関連分子群pRB・p16・cyclin E・cyclin D1の発現をウエスターンブロット法にて解析した。

25株のヒト癌細胞株をヌードマウスの体側皮下に移植し、腫瘍体積が100mm以上になった時点で腫瘍を摘出、各種プロテアーゼ阻害剤(Leupeptin,p−APMSF,EDTA,o−NaVO4)及び10%グリセロール含有の細胞調製液を用いてホモゲナイズした。その際、腫瘍サンプル重量あたりの細胞調製液量を一定にした。それぞれの細胞調製液に、等量のSDS−PAGE用サンプルバッファーを混合し、97℃で5分の熱処理を行って、SDS−PAGE用サンプルとした。各SDS−PAGE用サンプルの一定量をSDS−PAGEにて分離し、Hybond ECL膜にトランスファーした後、pRB・cyclin E・p16・cyclin D1に対する抗体を反応させた。その後HRP標識の二次抗体を反応させ化学発光基質(Super Signal;PIERCE社)を加えて、イメージマスターVDS−CL(Amersham Pharmacia)を用いてpRB・cyclin E・p16・cyclin D1のbandを検出した。
各癌細胞株におけるpRB・p16・cyclin E・cyclin D1の発現量を相対的に比較するための対照として、全分子の発現が認められるMDA−MB435細胞をすべてのSDS−PAGEにアプライして同様に検出した。
その結果を図1に示した。強い感受性を示すBSY−1株にpRBの欠失、p16の発現、cyclin Eの高発現という性質が有ることから、これら性質が、in vivoでの本化合物への感受性に関連するか否かについて検討を行った。
図1において、A〜Z、E、A1〜E1およびEの各符号は、各々下記のヒト癌細胞株を示す。

[実施例2]pRB・p16・cyelin E・cyclin D1の発現と本化合物への感受性の相関
実施例1でpRB・p16・cyclin E・cyclin D1の発現を調べた25株のヒト癌細胞株について、代表的な本化合物、下記式IIIで示される[(8E,12E,14E)−7−((4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド](以下、化合物2と称す)に対する感受性を調べた。

培養フラスコ、またはヌードマウスの皮下において増殖させた25種類のヒト癌細胞を、ヌードマウスの体側皮下に移植し、腫瘍体積が100mm以上になった時点で各群の腫瘍体積の平均が均一になるように群分けをし、対照群5匹、化合物2投与群5匹とした。投与群には10mg/kg/dayとなるように5日間静注し、対照群は無処理または媒体投与とした。投与開始日(Day1)からDay5,8,12,15と以下経時的に腫瘍体積を測定し、相対的な腫瘍体積比(T/C%)を求めた。
pRB・p16・cyclin E・cyclin D1の発現と化合物2への感受性の相関を、表1に示した。実施例1で解析したヒト癌細胞株におけるpRB・cyclin E・p16・cyclin D1の発現量を相対的に評価し、発現が認められないものを−、発現量が認められるものをその強度に応じて+〜+++と表記して、腫瘍体積比(T/C%)の結果と並べて示した。また、pRBに関しては、変異型pRBの発現が報告されている小細胞肺癌株・卵巣癌株・前立腺癌株(Oncogene 9,3375−3378,1994;Prostate 21,145−52,1992;Exp Cell Res,233,233−9,1997)に( )を付して記載した。

調べたヒト癌細胞株25株中、ウエスタンブロット法でバンドが検出されない(「−」で表示)、または文献情報で変異や欠失が報告されている(括弧付きで表示)癌細胞株11株がpRB低発現に分類され、このうちの7株(64%)がT/C%≦1%であった。これに対しpRBを発現している14株にはT/C%≦1%となる癌細胞株は無く(p=0.0006)、pRB低発現により化合物2に対する感受性を検定できることが明らかとなった。
またp16発現陽性の癌細胞10株中7株(70%)がT/C%≦1%であるのに対し、p16を発現していない15株にはT/C%≦1%となる癌細胞株は無く(p=0.0002)、pRB低発現と同様、p16発現陽性により化合物2に対する感受性の検定が可能であった。
調べた25の癌細胞株株の中で、11株がpRB低発現(ウエスターンブロット法で検出されなかったか文献情報で変異や欠失が報告されている)に分類され、このうちの9株でp16は発現していた。逆にp16を発現している10株中9株がpRB低発現であり、報告されている通り(EMBO J.14:503−511,1995)、p16発現陽性の癌細胞はpRB低発現の癌細胞とほぼ一致していた。
cyclin E高発現については、高発現(+++)している9株中5株(56%)がT/C%≦1%であるのに対し、高発現していない癌細胞では16株中2株(13%)がT/C%≦1%と、cyclin E高発現の癌細胞は明らかに感受性が高かった(p=0.02)。
完全な腫瘍の消失(T/C%=0%)を見た4株、及び消失はしないまでも長期間にわたる腫瘍縮小の継続を示したNCI−H146を合わせた5株に対する化合物2の効果は、治癒的効果と考えられ、これら全ての株はpRB低発現・p16発現・cyclin E高発現という性質を示した。
そこで、pRB低発現・cyclin E高発現の2つの性質と、化合物2の治癒的効果の相関を見てみると、両方の性質を持つ癌細胞7株中5株(71%)で治癒的効果を示したのに対し、それ以外の癌細胞株18株中には治癒的効果を示した癌細胞株は見出されなかった(p=0.0001)。また、p16発現陽性・cyclin E高発現の両方の性質を持つ癌細胞では、両方の性質を持つ癌細胞6株中5株(83%)で治癒的効果を示し、それ以外の癌細胞株19株中には治癒的効果を示した癌細胞株は見出されなかった(p=0.00002)。cyclin E高発現は、pRB低発現またはp16発現陽性の指標と組み合わせることにより、更に有用な指標となった。
これらの結果より、pRB低発現・p16発現・cyclin E高発現の性質を調べることにより、癌細胞株の化合物2に対する感受性が予見できることが明らかとなった。
[実施例3]代表的な3化合物に対する癌細胞株の感受性検定
WO 02/060890においてBSY−1株に対して高い抗腫瘍活性を示した化合物1、及びWO 03/099813においてWiDr株に対して抗腫瘍活性を示した一般式Iで表される本化合物のうち代表的な化合物(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−7−((4−イソプロピルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド(下記式IV、以下化合物3と称す)、及び(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−7−((4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド(下記式V、以下化合物4と称す)について、ヒト癌細胞株のpRB低発現・p16発現・cyclin E高発現の性質と、感受性の相関について調べた。

培養フラスコ、またはヌードマウスの皮下において増殖させた癌細胞を、ヌードマウスの体側皮下に移植し、腫瘍体積が100mm以上になった時点で各群の腫瘍体積の平均が均一になるように群分けをし、対照群5匹、化合物投与群5匹とした。投与群には10mg/kg/dayとなるように5日間静注し、対照群は無処理または媒体投与とした。投与開始日(Day1)からDay5,8,12,15と以下経時的に腫瘍体積を測定し、相対的な腫瘍体積比(T/C%)を求めた。但し、化合物1の評価の際は原則としてDay15までで実験を終了した。表2には、各癌細胞に対する化合物1,2,4、及び実施例2の化合物2のT/C%を示した。
表2に示す通り、化合物1のT/C%が多少大きな値を示すものの試験した化合物全てで抗腫瘍効果が認められ、各種ヒト癌細胞株のこれら化合物に対する感受性は同じ傾向を示した。化合物1,3,4で化合物2とのT/C%の相関を求めたところ、それぞれ0.724、0.948、0.923と高い相関を示した。このことから、一般式Iで表される化合物間において、各種癌細胞株の感受性が共通していることが示された。

[実施例4]BSY−1株及びH−526株,H−460株におけるpRB・p16・cyclin E発現の免疫組織染色による解析
化合物2に対して治癒するまでの強い感受性を示したBSY−1株、及び治癒には至らないまでも強い感受性を示したH526株、更には感受性が低かったH460株において、細胞周期関連分子群pRB・p16・cyclin Eの発現を免疫組織染色法にて解析した。
上記3株のヒト癌細胞株をヌードマウスの体側皮下に移植し、腫瘍体積が100mm以上になった時点で腫瘍を摘出して、中和した10%ホルマリンにて1日間固定してパラフィン包埋ブロックを作製した。パラフィンブロックを4μmの厚さにスライスしてスライドグラスに貼り付けたものを、免疫組織染色用標本とした。免疫組織染色用標本は、脱パラフィン操作、恒温槽を用いた熱処理で抗原賦活化、内在性ペルオキシダーゼのブロッキングなどの操作を施した後に、pRB・p16・cyclin Eに対する一次抗体と室温で1時間反応させた。ペルオキシダーゼ標識した抗マウスあるいは抗ウサギ二次抗体を反応させて、DABを発色基質としてそのペルオキシダーゼ活性を可視化して顕微鏡下観察した。
その結果を図2示した。ウエスタンブロット法で示された結果と同様の結果が、免疫組織染色においても得られることが明らかとなった。この結果から、臨床において繁用されるパラフィン包埋ブロックの標本を用いても、細胞周期関連分子群pRB・p16・cyclin Eの発現解析が行える可能性が示された。
[実施例5]臨床標本におけるp16・cyclin E発現の免疫組織染色による解析
SuperBioChips Laboratories社より購入したパラフィン包埋の臨床標本(正常組織12、癌組織12)を用いて、免疫組織染色法による細胞周期関連分子群p16・cyclin Eの発現解析を行った。
臨床パラフィン包埋標本を、実施例4と同様にp16・cyclin Eに対する抗体で免疫組織染色を行った。その結果、正常組織において、p16・cyclin Eの過剰発現は観察されなかったのに対し、一部の癌組織においてp16(12例中3例)、cyclin E(12例中1例)の過剰発現が観察された。図3には、p16・cyclin Eの両分子が過剰発現していた子宮体癌の染色結果を示した。この結果から、臨床パラフィン包埋ブロックの標本を用いても、細胞周期関連分子群p16及びcyclin Eが過剰発現している癌組織を選別出来る可能性が示された。
[実施例6]臨床標本におけるp16・cyclin E発現の免疫組織染色−2
実施例5に加え、更に多数の癌種(胃癌・食道癌・肺癌・大腸癌・甲状腺癌・腎癌・乳癌・肝癌・膀胱癌・卵巣癌・膵癌・前立腺癌・子宮内膜癌・胆嚢癌・喉頭癌・子宮頸癌・悪性リンパ腫・悪性メラノーマ、各10サンプルの合計180サンプル)についてパラフィン包埋した臨床腫瘍標本をSuperBioChips Laboratories社より購入し、実施例4、5と同様に、免疫組織染色法による細胞周期関連分子群p16・cyclin Eの発現解析を行った。
臨床パラフィン包埋標本を、実施例4、5と同様に、p16,cyclin Eに対する抗体で免疫組織染色を行ったところ、表2に示したとおり、「p16及びcyclin Eの過剰発現」の特徴が、子宮頸癌において10例中全例で観察されたのを筆頭に、卵巣癌で10例中4例、乳癌で10例中3例において認められた。臨床パラフィン包埋ブロックの標本を用いた「p16及びcyclin Eの過剰発現」の癌組織を選別出来る可能性が確認されると共に、癌種によっては高率で「p16及びcyclin Eの過剰発現」の特徴を持っている可能性があることが示された。

[実施例7]RT−PCRによるp16過剰発現の検出
28株のヒト癌細胞株をヌードマウスの体側皮下に移植し、腫瘍体積が100mm以上になった時点で腫瘍を摘出し、各癌種につき3例の腫瘍をプールした。それらの腫瘍を液体窒素で凍結後、TRIzol試薬(SIGMA社)を用いて全RNAを抽出し、RNeasy mini Kit(OIAGEN社)を用いて精製した。Taqman(R) reverse transcription reagents(ABI社)を用いてcDNAを合成後、プローブとしてp16のTaqman(R) gene expression assays(ABI社)と反応試薬としてTaqman(R) Gold RT−PCR reagentsを用いてSequence detection systems(7900HT、ABI社)で各腫瘍のp16 mRNA量を測定した。得られた数値を18S rRNAの値で補正してp16 mRNAの相対的な量を求めた。
表3に、実施例1においてウエスタンブロット法により求めたp16蛋白の発現量を求め、実施例2において抗腫瘍効果T/C%を求めたヒト癌細胞株について、p16 mRNAの相対的な量をまとめて示した。また、図4にp16 mRNA量とT/C%、16 mRNA量とp16蛋白の発現量の関連をグラフに示した。
表3及び図4に示す通り、p16 mRNAの相対量が0.3以上の高発現癌細胞12株中6株(50%)で、T/C%≦1%であるのに対し、0.3未満の13株中ではT/C%≦1%となる癌細胞株は1株しか存在しなかった(p=0.02)。p16 mRNA量の測定により、「p16過剰発現」の癌をスクリーニングし、化合物2に対する感受性を検定することが可能であることが明らかとなった。
また表3及び図4に示す通り、p16蛋白の発現量とp16 mRNA量の間には相関が認められ、p16蛋白の過剰発現(++)を認めた8株におけるp16の相対的mRNA量が0.5786±0.3259であるのに対し、p16蛋白発現(+)の2株では0.3610、p16蛋白が認められなかった15株では0.2073±0.2424であった。RT−PCR等のp16 mRNAを検出する方法によっても、p16蛋白発現を検出する方法と同様な結果を得ることができると考えられる。

【産業上の利用可能性】
pRB低発現、p16発現陽性またはcyclin E高発現の特徴を調べることにより、本化合物に対する癌細胞の感受性を調べ、本化合物の抗腫瘍効果が期待できる癌患者のみに本化合物を投与すれば、治療効果を高め不要な副作用を軽減することが可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)pRBの発現が減少している、
2)p16が発現している、
3)cyclin Eの発現が増強している、
4)pRBの発現が減少しかつcyclin Eの発現が増強している、または
5)p16が発現しかつcyclin Eの発現が増強している、の何れか一つを指標とする、下記一般式Iで表される化合物に対する癌細胞の感受性を検定する方法。
式(I)

[式中、R
1)水素原子または
2)水酸基

1)水素原子、
2)水酸基または
3)C1−6アルコキシ基

1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
4)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基
5)式(II)

[式中、
A)
nは0ないし4の整数、
Xは
i)−CHRN4−、
ii)−NRN5−または
iii)−O−、
N1及びRN2は同一または異なって、
i)水素原子または
ii)C1−6アルキル基、
N3及びRN4は同一または異なって、
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
iv)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
v)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
vi)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
vii)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
viii)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
ix)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
x)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
xi)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
xii)−NRN6N7(ここにおいて、RN6およびRN7は同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
xiii)RN3及びRN4が一緒になって結合する炭素原子と共に形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基(該非芳香族複素環式基は置換基を有していても良い)、
N5
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
iv)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
v)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
vi)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
vii)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
viii)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
ix)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
x)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基または
xi)RN3及びRN5が一緒になって結合する窒素原子と共に形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基(該非芳香族複素環式基は置換基を有していても良い)、
B)
X、n、RN3、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN1及びRN2は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
C)
X、n、RN2、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN1及びRN3は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基あるいは
D)
X、n、RN1、RN4及びRN5は前記定義の基を表し、RN2及びRN3は一緒になって形成する置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基を表す]
または
6)式(III)

[式中、RN8及びRN9は同一または異なって、
i)水素原子、
ii)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
iii)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
iv)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
v)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基または
vi)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基を表す]
を表す]
【請求項2】

1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基または
4)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基である請求項1に記載の検定方法。
【請求項3】
が下記式(IV)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(IV)

[式中、nは0ないし4の整数、
aN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
aN2
1)水素原子
2)N−C1−6アルキルアミノ基、
3)N,N−ジC1−6アルキルアミノ基、
4)エチルメチルアミノ基、
5)ピリジル基、
6)ピロリジン−1−イル基、
7)ピペリジン−1−イル基、
8)モルホリン−4−イル基または
9)4−メチルピペラジン−1−イル基を表す]
【請求項4】
が下記式(V)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(V)

(式中、n及びnは同一または異なって、0ないし4の整数、

1)−CHRbN4−、
2)NRbN5−または
3)−O−、
bN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
bN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
bN4
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
10)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
11)−NRbN6bN7(ここにおいて、RbN6およびRbN7は、同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
12)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
bN5
l)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
5)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
6)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
7)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
8)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
9)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基または
10)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基を表す]
【請求項5】
が下記式(VI)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(VI)

[式中、nは1または2の整数、
cN1
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
cN5
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基を表す]
【請求項6】
が下記式(VII)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(VII)

(式中、n及びnは同一または異なって、0ないし4の整数、

1)−CHRdN4−、
2)−NRdN5−または
3)−O−、
dN2
1)水素原子または
2)C1−6アルキル基、
dN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
dN4
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC1−6アルコキシ基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
10)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基、
11)−NRdN6dN7(ここにおいて、RdN6及びRdN7は同一または異なって、水素原子またはC1−6アルキル基を表す)または
12)置換基を有していても良い5ないし14員環非芳香族複素環式基、
dN5
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良い不飽和C2−10アルキル基、
4)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
5)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
6)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
7)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
8)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基、
9)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアラルキル基または
10)置換基を有していても良い5ないしl4員環非芳香族複素環式基を表す]
【請求項7】
が下記式(VIII)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(VIII)

[式中、nは1ないし3の整数、
eN4
1)アミノ基、
2)N−C1−6アルキルアミノ基、
3)ピロリジン−1−イル基、
4)ピペリジン−1−イル基または
5)モルホリン−4−イル基を表す]
【請求項8】
が下記式(IX)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(IX)

[式中、nは1ないし3の整数、
fN8
1)水素原子、
2)C1−6アルキル基、
3)C6−14アリール基または
4)C7−10アラルキル基、
fN5
1)水素原子、
2)置換基を有していても良いC1−6アルキル基、
3)置換基を有していても良いC3−8シクロアルキル基、
4)置換基を有していても良い3ないし8員環非芳香族複素環式基、
5)置換基を有していても良いC6−14アリール基、
6)置換基を有していても良い5ないし14員環ヘテロアリール基、
7)置換基を有していても良いC7−10アラルキル基、
8)置換基を有していても良い5員環ないし14員環ヘテロアラルキル基または
9)置換基を有していても良いC4−9シクロアルキルアルキル基を表す]
【請求項9】
が下記式(X)で表される請求項1に記載の検定方法。
式(X)

[式中、nは1ないし3の整数、
gN5
1)水素原子、
2)置換されていてもよいC1−6アルキル基、
3)置換されていてもよいC3−8シクロアルキル基、
4)置換されていてもよいC4−9シクロアルキルアルキル基、
5)置換されていてもよいC7−10アラルキル基、
6)置換されていてもよいピリジル基または
7)置換されていてもよいテトラヒドロピラニル基を表す]
【請求項10】
一般式(I)で表される化合物が下記化合物の何れか一つの化合物である、請求項1に記載の検定方法。
1)(8E,12E,14E)−7−アセトキシ−3,6,21−トリヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド
2)(8E,12E,14E)−7−((4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド、
3)(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−7−((4−イソプロピルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド及び
4)(8E,12E,14E)−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−7−((4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル)オキシ−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド
【請求項11】
pRBの発現の減少、p16の発現、またはcyclin Eの発現の増強を、それぞれをコードするmRNA量を測定することにより検定する、請求項1に記載の検定方法。
【請求項12】
mRNA量を測定する方法が定量的RT−PCR法である、請求項11に記載の検定方法。
【請求項13】
mRNA量を測定する方法がDNAチップ法である、請求項11に記載の検定方法。
【請求項14】
pRBの発現の減少、p16の発現、またはcyclin Eの発現の増強を、それぞれの蛋白質量を測定することにより検定する、請求項1に記載の検定方法。
【請求項15】
蛋白質量を測定する方法がウエスタンブロット法である、請求項14に記載の検定方法。
【請求項16】
蛋白質量を測定する方法が免疫組織染色法である、請求項14に記載の検定方法。
【請求項17】
蛋白質量を測定する方法がELISA法である、請求項14に記載の検定方法。
【請求項18】
pRB、p16またはcyclin E遺伝子の連続した少なくとも15塩基の配列から成るプライマーを含んで成る、請求項12の検定方法に使用するキット。
【請求項19】
pRB、p16またはcyclin Eに対する抗体を含んで成る、請求項15、16または17に記載の検定方法に使用するキット。

【国際公開番号】WO2005/075681
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517829(P2005−517829)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002091
【国際出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(000001915)メルシャン株式会社 (48)
【Fターム(参考)】