説明

抗真菌療法におけるクマリン誘導体の使用

本発明は、皮膚糸状菌症の治療に有用であるクマリン化合物、特にグリコシドクマリン化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物および抗真菌療法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚糸状菌は、皮膚に寄生する病原体である真菌である。皮膚糸状菌は白癬菌属(Trichophyton)、表皮菌属(Epidermophyton)および小胞子菌属(Microsporum)の真菌を含む。よくある皮膚糸状菌症は、爪の感染症と呼ばれる爪真菌症であり、爪が割れたり、はがれたり、厚くなることがある。爪真菌症は、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)が原因であることが最も多いが、エピデルモフィトン・フロッコサム(Epidermophyton floccosum)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)およびトリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)などの他の皮膚糸状菌が原因となることもある。
【0003】
クマリンは、クロメノン環、多くの場合クロメン−2−オンまたはクロメン−4−オン環を含む化合物である。この化合物は天然に生じるが、例えばパーキン(Perkin)またはペクマン(Pechman)合成によって合成することもできる。クマリンそれ自体の構造を以下に示す。
【化1】

選択されたクマリンが抗真菌活性を有することは知られている。例えば、Sardari et al(Bioorg. Med. Chem. 7, 1999, 1933〜1940)は、限られた数のクマリンが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコックス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対して如何に作用するかについて記載している。試験されたクマリンにはエスクレチンとエスクリン(エスクレチンのグリコシド体)があるが、これらが試験した真菌に対して僅かに抗真菌活性を有することが発見された。
【0004】
ワルファリンは別として、臨床現場においてクマリンはこれまで極僅かしか使用されていない。しかし、クリニックで使われてきたクマリンの例はエスクリンであり、痔および直腸の病変の治療用薬(Proctosedyl(登録商標))の一成分として使われているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗真菌剤としての潜在的可能性についてはあまり知られていないにもかかわらず、クマリンが概して活性範囲濃度において不溶性であることと潜在的な安全性および毒性の問題とが組み合わさって、この種の化合物を実践的、直接的に治療に応用することが妨げられている可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つには、エスクリンなどのグリコシドクマリン化合物が爪真菌症およびその他の皮膚糸状菌症の治療に有効であるという発見に基づくものである。理論に束縛されるものではないが、皮膚糸状菌、および皮膚糸状菌が皮膚表面に共に存在することがあるその他の微生物(共生または病原真菌または細菌)は、クマリン化合物に結合しているグリコシド基を代謝し、化合物を、真菌に対して作用する活性核クマリンに転換することができると信じられている。例えば、皮膚糸状菌が、エスクリンの糖基を除去しエスクリンをエスクレチン(これは抗真菌性である)に転換し得る酵素β−グルコシダーゼを産生する(この利用については、K Otsuka, et al.,(1979), Chem Pharm Bull, 27:2042〜2047)ことは立証されている。したがって、この糖基は、ある意味で、プロドラッグ官能基であると見なすことができる。グリコシドクマリンを薬剤として使うことは、非グリコシド形態で使うより望ましいと考えられる。なぜならば、グリコシドクマリンの方が、より可溶性でありしたがって好適な治療用賦形剤に事実上組み入れることができるからであり、また取り扱い上および利用上より安全であると考えられるからである。
【0007】
本発明はまた、ハロゲン化クマリン化合物、例えば7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリンが、低濃度でしか可溶性でないにもかかわらず著しい抗真菌活性を有するという驚くべき発見に基づくものである。
したがって、本発明の第1の態様は、患者の皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延用のクマリン化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。このクマリン化合物は、グリコシドクマリン化合物とすることができる。あるいは、このクマリン化合物は、ハロゲン化クマリン化合物とすることができる。
本発明の第2の態様は、患者の皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延用のクマリン化合物、例えばグリコシドクマリン化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを含む医薬製剤である。
【0008】
本発明のまた別の態様は、皮膚糸状菌症などの真菌感染症の治療、予防、または進行遅延用の薬剤製造を目的とした、クマリン化合物、例えばグリコシドクマリン化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用に関する。
本発明はさらに、皮膚糸状菌症を治療、予防、または進行遅延する方法であって、患者に治療有効量のクマリン化合物、例えばグリコシドクマリン化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の化合物は、遊離酸、遊離塩基、エステルならびにその他の例えばプロドラッグ、塩および互変異性体などの異なる形態で存在することができ、本開示にはこれら化合物のすべての変形形態が含まれる。
本発明の化合物を含有するまたは含有していると主張される偽造製品または詐欺的製品類は、それらが実際にそのような化合物を含有しているかどうかに関係なく、また、そのような化合物が治療有効量含有されているかどうかに関係なく、保護の範囲に含まれる。
【0010】
本発明の化学種または医薬製剤を収容していることを表現するような説明書または指示書を含んだパッケージ類、およびこのような製剤または化学種である製品、またはそれらを含む製品、またはこのような製剤または化学種であるもしくは含んでいると主張される製品も保護の範囲に含まれる。このようなパッケージ類は偽造品または不正品であることもあるが、必ずしもそうであるとは限らない。
本発明の個々の態様、実施形態または実施例に関連して説明される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、矛盾のない限り、本明細書に記載されるその他の任意の態様、実施形態または実施例に当てはまることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】β−グルコシダーゼとエスクリンの添加がトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)NCPF118の増殖に及ぼす影響を明示するヒストグラムである。
【図2】β−グルコシダーゼとエスクリンの添加がトリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)NCPF335の増殖に及ぼす影響を明示するヒストグラムである。
【図3】トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対するエスクレチンの用量依存性抗真菌効果を明示するグラフである。
【図4】エスクレチンに対する、トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118とトリコフィトン・インテルディギターレ(T. interdigitale)NCPF335の古い培養菌の感受性を明示するグラフである。
【図5】トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対するクマリングリコシド(最終濃度5mM)の活性を明示するグラフである。
【図6】トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対するハロゲン化クマリン・アグリコンの活性を明示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
グリコシド/クリコシド化合物
本明細書で使用する用語「クリコシド」または「クリコシド化合物」は交換可能な用語であり、また、加水分解時に糖およびアグリコンを生じる種類の任意の化合物のことを言う。
クマリン
本明細書で使用する用語「クマリン」とは、クロメノン環を含む化合物のことを言う。ある種のクマリン化合物においては、クロメノン環はクロメン−2−オン環であり、また別の種のクマリン化合物においては、クロメノン環はクロメン−4−オン環である。知られているクマリンの多くは前者の種類である。後者の種類のクマリンの例としては、ケルセチンおよびその誘導体が挙げられる。
【0013】
ヒドロカルビル
本明細書で使用する用語「ヒドロカルビル」とは、水素原子と炭素原子からのみなる部分のことを言う。このような部分には、脂肪族部分および/または芳香族部分を含めることができる。この部分は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を含んでよい。ヒドロカルビル基の例としては、C1〜6アルキル(例えばC、C、CまたはCアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル)、アリール(例えばベンジル)またはシクロアルキル(例えばシクロプロピルメチル)で置換されたC1〜6アルキル、シクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、アリール(例えばフェニル、ナフチルまたはフルオレニル)などが挙げられる。
【0014】
アルキル
本明細書で使用する用語「アルキル」および「C1〜6アルキル」とは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する直鎖または枝分れ鎖アルキル部分のことを言う。この用語は、メチル、エチル、プロピル(n−プロピルもしくはイソプロピル)、ブチル(n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどの基のことを言う。特に、前記アルキル部分は1、2、3または4個の炭素原子を有することができる。
【0015】
アルケニル
本明細書で使用する用語「アルケニル」および「C2〜6アルケニル」とは、2、3、4、5または6個の炭素原子と、さらに、妥当であればEまたはZ立体化学の少なくとも1個の二重結合を有する直鎖または枝分れ鎖アルキル部分のことを言う。この用語は、エテニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、および3−ヘキセニルなど基のことを言う。
【0016】
アルキニル
本明細書で使用する用語「アルキニル」および「C2〜6アルキニル」とは、2、3、4、5または6個の炭素原子と、さらに、少なくとも1個の三重結合を有する直鎖または枝分れ鎖アルキル部分のことを言う。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、および3−ヘキシニルなどの基のことを言う。
【0017】
アルコキシ
本明細書で使用する用語「アルコキシ」および「C1〜6アルコキシ」とは、アルキルが直鎖または枝分れ鎖であって、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するような−O−アルキルのことを言う。一実施形態では、アルコキシは1、2、3または4個の炭素原子を有する。この用語は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどの基のことを言う。
【0018】
シクロアルキル
本明細書で使用する用語「シクロアルキル」とは、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する脂環部分のことを言う。この基は、橋かけまたは多環系であってよい。多くの場合、シクロアルキル基は単環式である。この用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチルなどの基のことを言う。
【0019】
アリール
本明細書で使用する用語「アリール」とは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環炭素原子を含む芳香族環系のことを言う。アリールはフェニルであることが多いが、2個以上の環を有し、少なくともその1個が芳香族環である多環系であってもよい。
【0020】
環状基
「環状基」とは、通常5から13個の環形成原子を有する不飽和または一部不飽和であってもよい、ただし通常は飽和の環または環系を意味し、例えば5員環または6員環である。環状基には、カルボシクリル部分およびヘテロシクリル部分が含まれる。
【0021】
カルボシクリル
本明細書で使用する用語「カルボシクリル」とは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環炭素原子を有する飽和(例えば、シクロアルキル)または不飽和(例えば、アリール)環部分のことを言う。特に、カルボシクリルには、飽和または不飽和であってよい3員から10員の環または環系が含まれ、特に5員または6員環が含まれる。炭素環式部分は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリルなどから選択される。
【0022】
ヘテロシクリル
本明細書で使用する用語「ヘテロシクリル」とは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子を有し、それら環原子の少なくとも1個は窒素、酸素、リン、ケイ素および硫黄から選択される飽和(例えば、ヘテロシクロアルキル)または不飽和(例えば、ヘテロアリール)複素環部分のことを言う。特に、ヘテロシクリルには、飽和または不飽和であってよい3員から10員の環または環系が含まれ、特に5員または6員環が含まれる。
【0023】
複素環部分は、例えば、オキシラニル、アジリニル、1,2−オキサチオラニル、イミダゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、チオピラニル、チアントレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H−ピロリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ピロリジジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリダジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、特にチオモルホリノ、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニル、イソクロマニル、クロマニルなどから選択される。
【0024】
ヘテロシクロアルキル
本明細書で使用する用語「ヘテロシクロアルキル」とは、3、4、5、6または7個の環炭素原子と、窒素、酸素、リンおよび硫黄から選択される1、2、3、4または5個の環ヘテロ原子とを有する飽和複素環部分のことを言う。この基は多環系のこともあるが、多くの場合単環式である。この用語は、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリジニルなどの基のことを言う。
【0025】
ヘテロアリール
本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」とは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子を有し、それら環原子の少なくとも1個は窒素、酸素および硫黄から選択される芳香族複素環系のことを言う。この基は、2個以上の環を有し、少なくともその1個が芳香族環である多環系のこともあるが、多くの場合単環式である。この用語は、ピリミジニル、フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリジニル、ベンゾ[b]フラニル、ピラジニル、プリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、フェノチアジニル、トリアジニル、フタラジニル、2H−クロメニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、プテリジニルなどの基のことを言う。
【0026】
ハロゲン
本明細書で使用する用語「ハロゲン」とは、F、Cl、BrまたはIのことを言う。特に、ハロゲンはFまたはClのことがあるが、これらの中でもFはより一般に使われる。
ハロゲン含有部分
本明細書で使用する表現「ハロゲン含有部分」とは、炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分であり、その部分が少なくとも1個のハロゲンを含んでいるような部分のことを言う。この部分はヒドロカルビル、例えば、C1〜6アルキルもしくはC1〜6アルコキシ、またはカルボシクリル例えばアリールであってよい。
【0027】
置換した
部分に関して本明細書で使用する用語「置換した」とは、前記部分の水素原子のうち1個または複数、特に最多5個まで、さらに特に1、2、または3個が、それぞれ独立に、相当する数の前記置換基によって取って代わられていることを意味する。本明細書で使用する用語「場合によって置換した」とは、置換しているまたは未置換であることを意味する。置換基が化学的に存在し得る位置にのみ存在することは当然理解できよう。そして、当業者であれば、個々の置換が可能かどうかについて不当な努力をしなくとも(実験からまたは理論的に)結論を下すことができよう。
【0028】
独立に
2つ以上の部分が「それぞれ独立に」原子または基のリストから選択されるというように記載されている場合、これは、それら部分が同じであってもまたは異なっていてもよいということを意味する。したがって、各部分のアイデンティティは1つまたは複数の他の部分のアイデンティティとは無関係である。
【0029】
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えればその他の各態様の好ましい特徴となる。さらに、各実施形態において明記された特徴を、他の明記された特徴と組み合わせることによってまた別の実施形態が提供されることは理解されよう。
【0030】
化合物
本発明は、クマリン化合物、特に、エスクレチン、ウンベリフェロン、ダフネチン、フラキセチンまたはケルセチンの各誘導体を含めたグリコシドクマリン化合物の使用に関する。好ましくは、クマリン化合物はグリコシドクマリン化合物である。
グリコシド基は、皮膚糸状菌または近接して存在するもしくは同時感染媒体としてのその他の微生物が産生する酵素の基質の役目をすることができる。
【0031】
ある実施形態において、本発明は、式(I)もしくは式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。
【化2】

式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分であるか、
またはRとR、RとR、RとRもしくはR、RとRは、それらが結合している炭素原子と共に、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分によって場合によって置換されている環状基を形成してもよく、
また、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つまたは前記環状基はグリコシド基を含む。
【0032】
前記化合物は、1個または複数(例えば1個または2個)のグリコシド基を含んでいてよいが、一般に、単一のグリコシド基を通例クマリン環の5、6、7または8位に含む。したがって、式(I)の1つの実施形態においては、R、R、RおよびRの少なくとも1つがグリコシド基を含む。1つの特定の実施形態においては、R、RおよびRの少なくとも1つがグリコシド基を含む。RまたはRがグリコシド基を含む化合物について特に言及する。式(II)の場合、グリコシド基は特に3位に存在していてよく、その場合Rがグリコシド基を含む。
【0033】
グリコシド基以外の場合、R、R、R、R、RおよびRは、しばしば互いに独立に、R、−OR、−C(O)R、−C(O)ORおよびRから選択される。式中、
は、独立に、水素、1、2、3、4または5個のRで場合によって置換しているヒドロカルビル、および1、2、3、4または5個のRで場合によって置換している−(CH−ヘテロシクリルから選択され、
は、独立に、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、=NR、−OR、−C(O)R10、−C(O)N(R)R10、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R)R10、−N(R)R10、−N(R)N(R)R10、−N(R)C(O)R10および−N(R)S(O)10から選択され、また
とR10は、それぞれ独立に、水素であるかまたはヒドロカルビルと−(CH−ヘテロシクリルから選択され、ここでヒドロカルビルおよび−(CH−ヘテロシクリルのどちらも、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で場合によって置換されている。上式で、kは1から6の範囲の整数である(例えば、1、2または3)。
【0034】
詳細には、R、R、R、R、RおよびRの1つまたは複数は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、R、−OR、−C(O)Rおよび−C(O)ORから選択することができる(式中、Rは水素であるか、またはヒドロカルビルおよび−(CH−ヘテロシクリルから選択され、ここでヒドロカルビルおよび−(CH−ヘテロシクリルはいずれも、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基によって場合によって置換されている)。この点については、Rは特に水素、またはハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシおよびC1〜6アルコキシから独立に選択される1、2または3個の置換基で場合によって置換されているC1〜6アルキルである。したがって、R、R、R、R、RおよびRの1つまたはそれ以上は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシから独立に選択することができ、ここでC1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシは、例えばハロゲン(例えばフッ素または塩素)、シアノ、アミノ、ヒドロキシおよびC1〜6アルコキシから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で場合によって置換されている。個々の化合物においては、Rは水素、ヒドロキシまたはアセチルであり、Rは水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、フッ素、塩素またはトリフルオロメチルであり、また、R、R、RおよびRの1つはグルコシド基を含み、その他はそれぞれ水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、フッ素、塩素またはトリフルオロメチルから選択される。RとRの1つがグリコシド基を含み、他方がヒドロキシである化合物について特に言及する。
【0035】
先に述べたように、RとR、RとR、またはRとRの1つまたは複数は、それらが結合している炭素原子と共に、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分によって場合によって置換されている環状基を形成してよい。この環状基はカルボシクリル(例えばフェニル)基またはヘテロシクリル(例えばフラニル)基であってよく、それらのいずれも、例えばR、−OR、−C(O)Rおよび−C(O)ORの1つまたは複数によって場合によって置換されていてよい。あるいは、またはさらに、このように形成された環状基はグリコシド基、例えば糖基を含んでいてよい。
【0036】
式(II)の化合物の場合、Rは、1、2、3、4または5個のRで場合によって置換されているフェニルであることが多い。これは特に、Rが通例1,2−ジヒドロキシ−フェン−4−イルであるケルセチンなどの化合物の場合である。Rはグリコシド基を含むことが多く、一方、RとRは−OR、特にヒドロキシであることが多い。式(II)の幾つかの化合物では、RとRは、それぞれ水素である。
【0037】
1個のまたは複数の各グリコシド基は、通例、炭水化物基であり、特に単糖基、二糖基または多糖基であって、種々の異性体の形態、例えばα−D体、α−L体、β−D体、β−L体の形態で存在し得る。
例として、グリコシド基は下記式の1つによって表される基とすることができる。
【化3】


グリコシド基の代表例としては、グルコピラノシド、ガラクトピラノシド、マンノピラノシド、フコピラノシド、アラビノピラノシド、グルコピラノシド、ガラクトピラノシド、グルクロニド、ラクトピラノシド、キシロピラノシド、グルコサミニド、ガラクトサミニド、アロシド、リキソシド、タロシド、トレオシド、リボシド、フルクトシド、ラムノシドおよびグロシドの各基が挙げられる。より詳細には、グリコシド基は、α−D−グルコピラノシド、α−D−ガラクトピラノシド、α−D−マンノピラノシド、α−L−フコピラノシド、α−L−アラビノピラノシド、β−D−グルコピラノシド、β−D−ガラクトピラノシド、β−D−グルクロニド、β−D−ラクトピラノシド、β−D−キシロピラノシド、β−D−グルコサミニド、β−D−ガラクトサミニド、β−D−アロシド、β−D−リキソシド、β−D−タロシド、β−D−トレオシド、β−D−リボシド、β−D−フルクトシド、β−D−ラムノシドおよびβ−L−グロシドの各基から選択される。
【0038】
本発明の化合物の例としては、以下に示す化合物が挙げられる。各化合物は、必要に応じて遊離化合物、酸もしくは塩基付加塩、またはプロドラッグの形態であってよいことは当然理解されよう。
【化4】






または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ。
【0039】
本発明はまた、ハロゲン化クマリン化合物、例えばフッ素化化合物の使用に関する。
1つの実施形態において、本発明は、式(I)もしくは式(II)の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを提供する。
【化5】

式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分であるか、
またはRとR、RとR、RとRもしくはR、RとRは、それらが結合している炭素原子と共に、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分によって場合によって置換されている環状基を形成してもよく、
また、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つまたは前記環状基はハロゲンまたはハロゲン含有部分を含む。
【0040】
前記化合物は、1個または複数(例えば1個または2個)のハロゲンまたはハロゲン含有部分を含んでいてよい。したがって、式(I)の1つの実施形態においては、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがハロゲンまたはハロゲン含有部分を含む。好ましくは、R、R、R、R、RおよびRの1つだけがハロゲンまたはハロゲン含有部分を含む。R、RまたはRが、独立に、ハロゲンまたはハロゲン含有部分を含む化合物に特に言及する。
【0041】
ハロゲン以外では、R、R、R、R、RおよびRは、しばしばそれぞれ独立に、R、−OR、−C(O)R、−C(O)ORおよびRから選択されてよい。式中、
は、独立に、水素、1、2、3、4または5個のRで場合によって置換しているヒドロカルビル、および1、2、3、4または5個のRで場合によって置換している−(CH−ヘテロシクリルから選択され、
は、独立に、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、=NR、−OR、−C(O)R10、−C(O)N(R)R10、−C(O)OR、−OC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R)R10、−N(R)R10、−N(R)N(R)R10、−N(R)C(O)R10および−N(R)S(O)10から選択され、また
とR10は、それぞれ独立に、水素であるかまたはヒドロカルビルと−(CH−ヘテロシクリルから選択され、ここでヒドロカルビルおよび−(CH−ヘテロシクリルのどちらも、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルおよびC1〜6アルコキシから独立に選択される1、2、3、4または5個の置換基で場合によって置換されている。上式で、kは1から6の範囲の整数である(例えば1、2または3)。
1つの実施形態において、前記ハロゲンはFである。
【0042】
さらに別の実施形態においては、ハロゲン含有部分は1、2または3個のハロゲン(例えばFまたはCl)で置換されているC1〜6アルキル(例えばメチル)である。このハロゲン含有部分は、トリフルオロメチル(例えば7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン)またはトリクロロメチルであってよい。
【0043】
本発明の化合物の例としては、以下に示すようなものが挙げられる。必要に応じて、各化合物は遊離化合物、酸付加塩もしくは塩基付加塩、またはプロドラッグの形態をしていてよいことは当然理解されよう。
6−ブロモ−3−ブチリルクマリン
6−ブロモクマリン−3−カルボン酸
6−ブロモクマリン−3−カルボン酸
6,8−ジブロモクマリン−3−カルボン酸
3−クロロクマリン
4−クロロ−3−ニトロクマリン
7−アミノ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
7−アミノ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
2,3,6,7−テトラヒドロ−9−トリフルオロメチル−1H,5H−キノリジノ(9,1−gh)クマリン(クマリン153)
6−ブロモ−3−(2,3−ジクロロフェニルカルバモイル)−クマリン
7−エトキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
7−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
7−(フェニルアセトアミド)−4−(トリフルオロメチル)クマリン
3−アセチル−6−ブロモクマリン
L−アラニン−7−アミド−4−メチルクマリントリフルオロアセテート
6−ブロモクマリン
6−ブロモ−3−シアノクマリン
6−ブロモ−3−シアノ−4−メチルクマリン
6−ブロモ−4−ヒドロキシクマリン
6−ブロモメチル−7−アセトキシクマリン
4−(ブロモメチル)−6,7−ジメトキシクマリン
4−(ブロモメチル)−7−メトキシクマリン
6−ブロモ−4−メチル−3−フェニルクマリン
3−ブチリル−6,8−ジブロモクマリン
【0044】
6−クロロクマリン
6−クロロ−3−シアノクマリン
6−クロロ−3−シアノ−4,7−ジメチルクマリン
6−クロロ−3−シアノ−4−メチルクマリン
6−クロロ−3−シアノ−4,7−ジメチル−3−フェニルクマリン
6−クロロ−4−ヒドロキシクマリン
6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−(メトキシメチル)クマリン
6−クロロ−4−ヒドロキシ−7−メチルクマリン
6−クロロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン
6−クロロ−4−メチル−7−フェニルクマリン
4−クロロ−3−ニトロクマリン
6−(3−クロロプロポキシ)−4−メチルクマリン
3−シアノ−6,8−ジブロモ−4−メチルクマリン
3−シアノ−6,8−ジクロロ−4−メチルクマリン
3−シアノ−6,7−ジクロロ−4−メチルクマリン
3−シアノ−6−フルオロ−4−メチルクマリン
6,8−ジブロモ−4−ヒドロキシクマリン
6,8−ジブロモクマリン−3−カルボン酸
6,8−ジブロモ−4−メチル−3−フェニルクマリン
6,7−ジクロロ−4−ヒドロキシクマリン
6,8−ジクロロ−4−ヒドロキシクマリン
6,7−ジクロロ−4−メチル−3−フェニルクマリン
6,8−ジクロロ−4−メチル−3−フェニルクマリン
エチル6,8−ジブロモクマリンカルボキシレート
6−フルオロ−4−ヒドロキシクマリン
6−フルオロ−4−メチル−3−フェニルクマリン
7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチルフェニル)クマリン
【0045】
先に述べたように、RとR、RとR、またはRとRの1つまたは複数は、それらが結合している炭素原子と共に、ハロゲン、または炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含むハロゲン含有部分によって場合によって置換されている環状基を形成してもよい。この環状基はカルボシクリル(例えばフェニル)基またはヘテロシクリル(例えばフラニル)基であってよく、それらのいずれも、例えばR、−OR、−C(O)Rおよび−C(O)ORの1つまたは複数によって場合によって置換されていてよい。あるいは、またはさらに、このように形成された環状基はグリコシド基、例えば糖基を含んでいてよい。
1つの実施形態において、本発明のハロゲン化クマリン化合物はグリコシド化合物である。
【0046】
必要に応じて、本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態をしていてよい。本明細書で使用する用語「薬学的に許容される」とは、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題もしくは合併症がなく、合理的なベネフィット/リスク比に相応であるような、ヒトまたは動物の組織と接触して使うのに好適である化合物、材料、組成物、および/または剤形のことを言う。この用語には、ヒト用および動物用の両方に対しての容認可能性が含まれる。
薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通例、このような塩は、遊離酸または遊離塩基の形態のこれら化合物を、化学量論量の適切な塩基または酸と水または有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中で混合することによって調製することができるが、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性の媒体が好ましい。好適な塩の一覧表はRemington’s Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., US, 1985, p. 1418に載っている。この開示を参照によって本明細書に組み込む。また、Stahl et al, Eds, “Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use”, Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley-VCH, 2002も参照されたい。
【0047】
したがって、本開示には、開示された化合物の薬学的に許容される塩が含まれ、これら塩においては、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を形成することによって修飾されている。例えば、無機または有機酸または塩基から形成される従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩である。このような酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基を有する塩、ならびにアルギニン、リシンなどのアミノ酸を有する塩が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチルなどのハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、ならびに臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキルなどの化学薬品を使って四級化することができる。
【0048】
本発明には、本発明の活性薬剤種のプロドラッグ、例えば、in vivoで遊離酸に転換し得るカルボン酸のエステルの場合または遊離アミノ基に転換し得る保護アミンの場合のように、1個または複数の官能基が保護されているかまたは誘導体化されているがin vivoでそれらを官能基に転換し得るようなプロドラッグが含まれる。本明細書で使用する用語「プロドラッグ」とは、特に、in vivoで例えば血液中における加水分解によって急速に親化合物に変換されるような化合物を意味する。これについては、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series、Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987、H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985、およびJudkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351〜4367(1996)に徹底的な議論が見られるが、これらの開示を参照によって本明細書に組み込む。
したがって、プロドラッグには、可逆性の誘導体に変態された官能基を有するドラッグが含まれる。通常、このようなプロドラッグは、加水分解によって活性なドラッグに変態される。以下にその例を挙げる。
【0049】
【表1】

プロドラッグにはまた、酸化または還元反応によって活性なドラッグに変換し得る化合物も含まれる。その例としては、酸化的活性化(例えばN−およびO−脱アルキル化、酸化的脱アミノ化、N−酸化、ならびにエポキシ化)および還元的活性化(例えばアゾ基還元、スルホキシド基還元、ジスルフィド基還元、生体内還元アルキル化またはニトロ基還元)が挙げられ得る。
【0050】
プロドラッグの代謝活性化としては、ヌクレオチド活性化、リン酸化活性化および脱炭酸活性化が挙げられる。さらなる情報については、“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, R B Silverman(特に8章、497から546)を参照されたい。この開示を参照によって本明細書に組み込む。
保護基の使用については、‘Protective Groups in Organic Chemistry’, edited by J W F McOmie, Plenum Press(1973)および‘Protective Groups in Organic Synthesis’, 2nd edition, T W Greene & P G M Wutz, Wiley-Interscience(1991)に十分記載されている。
したがって、本開示の化合物の保護誘導体はそれだけでは薬理学的活性を有していないかもしれないが、例えば非経口的にまたは経口的に投与することができ、その後体内で代謝されて薬理学的に活性な本発明の化合物を形成することは、当業者に理解されよう。したがって、このような誘導体は「プロドラッグ」の例となる。記載された化合物のすべてのプロドラッグは、本開示の範囲内に含まれる。
【0051】
本発明の化合物は、種々の異性体または互変異性体の形態で存在することができる。例えば、クマリン環の7位にヒドロキシ基を有する化合物の場合、これらの化合物は、エスクリンの場合について以下に例示したように6,7−または2,6−の形態で存在することができる。
【化6】

このような本発明の化合物のすべての異性体および互変異性体の形態が本発明に包含されることは理解されよう。
【0052】
本開示の化合物は、1個または複数の不斉炭素原子を有していることができ、したがって光学異性および/またはジアステレオ異性を示すことがある。すべてのジアステレオマーは、従来の技術、例えばクロマトグラフィーまたは分別晶出を使って分離することができる。種々の立体異性体は、従来の技術、例えば分別晶出またはHPLC技術を使って、化合物のラセミ混合物または他の混合物を分離することにより単離することができる。あるいは、ラセミ化もしくはエピマー化を生じない条件下で適切な光学活性出発物質を反応させることによって、または例えばホモキラル酸を使って誘導体化し、その後従来の手段(例えばHPLC、シリカを媒体としたクロマトグラフィー)によりジアステレオマー誘導体を分離することによって、所望の光学異性体を作ることができる。すべての立体異性体は本開示の範囲内に含まれる。単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーが開示されている場合、その開示はその他のエナンチオマーまたはジアステレオマーにも適用されるものであり、ラセミ化合物の場合も同様である。この点については、本明細書に列挙される特定の化合物についても言うことができる。
【0053】
本開示の化合物には幾何異性体も存在し得る。本開示は、炭素−炭素二重結合の周りの置換基の配置によって生じる種々の幾何異性体およびそれらの混合物も考慮しており、このような異性体をZ立体配置またはE立体配置の異性体と称する。ここで、語「Z」は炭素−炭素二重結合の同じ側にある置換基を表し、語「E」は炭素−炭素二重結合の反対側にある置換基を表す。
したがって、本開示には、定義された化合物のすべての変形形態、例えば、定義された化合物の任意の互変異性体または任意の薬学的に許容される塩、エステル、酸もしくはその他の変形体およびそれらの互変異性体が含まれ、ならびに投与されると直接または間接的に先に定義されたような化合物を付与することができるか、またはこのような化合物と平衡状態で存在可能な種を付与することができる物質が含まれる。
【0054】
合成
本発明の化合物は天然に存在し得るし、購入することもでき、または当業者に良く知られている手順で、例えばパーキン合成またはペクマン合成によって合成することもできる。
得られる最終生成物または中間体の混合物はいずれも、構成成分の物理化学的差異に基づき、知られた様式で、例えばクロマトグラフィー、蒸留、分別晶出により、またはその状況下で妥当であるかもしくは可能であるならば塩の形成により、純粋な最終生成物または中間体に分離することができる。
【0055】
投与および医薬製剤
本発明の化合物は、当業者に知られている好適な経路であればいかなる経路によっても投与することができる。これらの組成物は、治療すべき疾患および患者ならびに投与経路によって用量を変えて投与することができる。
通例、これらの化合物は局部に投与される。本発明の化合物の局部投与用剤形の代表例としては、散剤、スプレー剤および軟膏剤が挙げられる。この活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要な保存剤、必要となることがある緩衝剤または噴射剤と混合することができる。
個々の患者に対する所望の治療反応性、所望の組成物および所望の投与形態を達成するのに有効であるような一定量の活性化合物を得るために、本発明の医薬組成物に含まれる活性成分の実際の用量レベルは変更することができる。選択される用量レベルは、個々の化合物の活性、投与経路、治療すべき状態の重篤度、および治療を受ける患者の状態および病歴によって決まる。しかし、化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルから始めて、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増やしていくことは当技術分野の技術の範囲内である。
真菌活性の抑制が必要である状態の治療、予防、管理、改善、またはリスクの低減においては、適正な用量レベルは通常約0.1から約100mg/kg日であると考えられる。これら化合物は1日1から4回の投与計画で投与することができる。用法・用量を調整して最適な治療反応性を提供することができる。
【0056】
使用
本明細書で使用するように、用語「皮膚糸状菌症」とは、真菌によって引き起こされる真皮または爪(指の爪、足指の爪、またはヒトでない動物の場合はひづめもしくは鉤爪)の感染症にことを言う。このような真菌としては、白癬菌属菌種(Trichophyton)、表皮菌属菌種(Epidermophyton)および小胞子菌属菌種(Microsporum)が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の化合物は、様々な局部的爪感染症、特に皮膚糸状菌に起因する感染症の治療に有用であると考えられる。感染症には、白癬症、例えば須毛白癬(ひげ)、頭部白癬(頭)、体部白癬(体)、股部白癬(鼠径)、顔面白癬(顔)、手白癬(手)、足部白癬(足)、爪白癬(爪)、でん風(粃糠疹)、異型白癬または黒癬を含めることができる。感染症は、表皮菌属(Epidermophyton)、小胞子菌属(Microsporum)および白癬菌属(Trichophyton)菌種(例えばトリコフィトン・ルブラム(T.rubrum)およびトリコフィトン・インテルディギターレ(T.interdigitale))の真菌由来のものとすることができる。
【0057】
皮膚糸状菌症は、例えば皮膚、層、角質層、爪(指の爪および足指の爪)または毛髪の感染症であってよい。白癬菌属(Trichophyton)、表皮菌属(Epidermophyton)または小胞子菌属(Microsporum)の皮膚糸状菌に起因する皮膚糸状菌症に特に言及する。皮膚糸状菌の代表例としては、エピデルモフィトン・フロッコサム(Epidermophyton floccosum)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・オードアン(Microsporum audouinii)、ミクロスポルム・ジプセーム(Microsporum gypseum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、ミクロスポルム・フェルギネウム(Microsporum ferrugineum)、ミクロスポルム・ジストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・フルブム(Microsporum fulvum)、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス・インテルディギターレ変種(Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale)、トリコフィトン・メンタグロフィテス・ノジュラーレ変種(Trichophyton mentagrophytes var. nodulare)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・スーダネンセ(Trichophyton soudanese)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・ショーンレニイ(Trichophyton schoenlenii)、トリコフィトン・ガリナエ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・クラジェニイ(Trichophyton krajdenii)、トリコフィトン・ヤウンデイ(Trichophyton yaoundei)、トリコフィトン・エキナム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・エリナセイ(Trichophyton erinacei)およびトリコフィトン・ベルコースム(Trichophyton verrucosum)が挙げられる。
【0058】
本発明の1つの実施形態においては、皮膚糸状菌症は爪真菌症である。用語「爪真菌症」には、遠位外側爪下、表在性白色、近位白色爪下、二次性異栄養性、一次性異栄養性、エンドニクス性(endonyx)、カンジダ性(例えば爪甲剥離症および慢性皮膚粘膜疾患)の各爪真菌症、ならびに爪白癬が含まれるがこれに限定されない。
爪真菌症は、腕/脚の急性細菌性蜂巣炎およびその他二次性細菌性感染症などのより重篤な臨床合併症の、重大なリスク因子あると証明されている。したがって、これら感染症の治療も本発明に包含されるものである。爪真菌症は白癬菌属(Trichophyton)の真菌によって生じることがあるがこれに限定されない。例えば、この真菌はトリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)またはトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)である。
以下の実施例は本発明を説明するものである。
【実施例】
【0059】
グリコシドクマリンの合成
EK Lim et al.,(2004), Biotech. Bioeng. 87(636〜637)に記載されている方法に基づく全菌体生体触媒による発酵法を使って、グリコシドクマリンを合成した。選択されたグリコシルトランスフェラーゼを使って、グリコシドを以下のクマリンに結合させた。
エスクレチン
4−(トリフルオロメチル)クマリン
未精製発酵抽出物からのグリコシドを、当業者に知られているHPLC法によって95%純度まで精製した。
【0060】
クマリンの溶解性 − アグリコン対それぞれのグリコシド
エスクリン、エスクレチン、4−(トリフルオロメチル)クマリン、ダフネチン、フラキセチンをSigma-Aldrich社から購入した。
RPMI1640培地およびDMSOへのアグリコンの溶解性を、それぞれのグリコシドの溶解性と比較した。結果を表1に示す。
【表2】

表1の結果は、クマリングルコシドが、それぞれのアグリコンに比べてRPMI1640培地(pH7.0)および0.0〜0.4%(v/v)DMSOに著しく可溶性であること、また、推算分配係数(LogP)に基づき、未試験のクマリングリコシドが、それぞれのアグリコンに比べて理論上より可溶性であることを証明するものである。有機化学および薬化学の分野において、分配係数(a partition coefficient or distribution coefficient)とは、ある化合物が2つの混和しない溶媒の混合物の2相において平衡状態にある場合、その各相の濃度比である。したがって、これらの係数は、これら2つの溶媒における化合物の溶解性の差を知る尺度となる。数値が高ければ高いほど水への溶解性が低いことを示し、マイナスの値を含め数値が低ければ低いほど水への溶解性が高いことを示す。
【0061】
クマリン・アグリコンとそれぞれのグリコシドの抗真菌活性
材料および方法
エスクリン、エスクレチンおよび一定範囲のその他のクマリン、ならびにそれらのグリコシドについて、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)およびその他の爪および皮膚から分離した真菌に対する抗真菌活性を試験した。
30℃で7〜10日間培養しておいた斜面培養菌に脱塩水または0.15%(w/v)NaCl溶液を3ml添加し、滅菌したプラスチック製トランスファーピペットで培養菌の表面をプローブすることによって、実験用接種材料として使う真菌分生子と菌糸断片の懸濁液を調製した。増殖が遅く乏しい臨床分離菌の場合、培養期間を最長18日まで延長して、高密度胞子懸濁液を調製できるように十分増殖させた。得られた懸濁液は、2層の手術用滅菌ガーゼを使ってろ過した。必要に応じて、さらに最大3mlまでの水または0.15%(w/v)NaClを使って、ガーゼについているすべての胞子または小さな菌糸断片を徹底的に洗った。この懸濁液100μlを、530nmで0.14から0.16の範囲の光学密度(0.5から1.5×10プロパギュール/mlに相当)に調整し、2×濃度RPMI1640培地(組織培養および抗菌剤耐性試験に広く使われている化学的に組成が明らかな栄養培地)100μlが添加された滅菌96穴マイクロタイタープレートの穴に添加した。このように調製した接種材料を全実験に使った。さらに、図4に示すようなエスクリンを使った一部の実験に関しては、前記のように調製した標準接種材料(図4では「若い接種材料」と表示してある)を使って得られた結果を、最大9週間培養した接種材料(図4では「古い接種材料」と表示してある)を使った同様の試験で得られた結果と比較した。必要に応じて、プレートに添加する前に、クマリンを2×強度RPMI1640培地予め溶解させた。酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ・クルセイ(Candida krusei)を使った実験を同様の様式で行ったが、これらの場合は、細胞懸濁液のろ過は必要なかった。
【0062】
エスクリンは、2×RPMI1640溶液に容易に溶解する。その他の化合物を可溶化するにはDMSOの存在が必要であった。エスクレチン、ダフネチン、4−(トリフルオロメチル)クマリン、4−(トリフルオロメチル)クマリン−7−0−グルコースおよびシコリインは、1000×最終試験濃度でDMSOに溶解させた。この溶液を2×濃度RPMI1640培地を使って実験で使われる濃度にまで希釈したとき、DMSOの最終濃度は0.05%であった。実際行った幾つかの実験において試したが、この濃度では真菌類への影響は全くなかった。フラキセチンに場合、DMSOの最終濃度は0.2%とする必要があった。しかし、実際行った幾つかの実験において試したが、この濃度でも真菌類の成長への影響は全くなかった。
【0063】
プレートの穴中の既知量のクマリンの原液を追加量の2×RPMI1640培地と混合することによって、プレート上でクマリン溶液の段階希釈液を調製した。クマリンの各濃度は、それぞれ3穴ずつ使って調べた。National Collection of Pathogenic Fungi(ブリストル)から入手したトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)NCPF118およびトリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)NCPF335の観察に関しては、プレートの真菌をBio-Tek Powerwave XS走査プレートリーダーにて30℃でインキュベートし、プレート内の真菌の増殖を、本文に明記したように530nmにおける穴の吸光度(光学密度)を記録して、最長で72時間または96時間2時間間隔で測定した。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ・クルセイ(Candida krusei)の観察も同様の様式で行ったが、インキュベーションの温度および時間は、それぞれ37℃、48時間とした。M. Monod(スイス、ローザンヌ)の所蔵品から入手した臨床分離真菌の観察に関しては、これらの分離菌の比較的遅い増殖に対して、30℃の静置インキュベーターにてインキュベーションを行い、プレートの真菌をBio-Tek Powerwave XS走査プレートリーダーにて24時間間隔で最長168時間手動で測定し、各測定終了ごとに インキュベーターに戻したこと以外は、先に記載した手順で行った。前記した系においてマラセチア・フルフル(Malassezia furfur)はあまり増殖しない。そのため、この生物体については、マラセチア・フルフル(M. furfur)の標準接種材料を等量のエスクレチン溶液と混合し、この混合物をサブロー(Sabouraud’s)寒天培地を入れたペトリ皿に撒いた。37℃で最長96時間のインキュベーションの間、視覚的に増殖をモニターし、クマリンが存在しない場合の増殖と比較した。
【0064】
結果
表2は、試験したクマリン・アグリコンの多くが、0.25〜1mM範囲の濃度においてトリコフィトン種の標準菌株に対して抑制性であったことを示している。
【表3】

【0065】
エスクレチンに対する皮膚糸状菌の臨床分離菌の感受性を表3に示す。
【表4】

【0066】
その他の病原真菌分離菌のエスクレチンに対する感受性を表4に示す。
【表5】

【0067】
図1は、β−グルコシダーゼとエスクリンをトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)NCPF118に添加すると真菌の増殖が著しく抑制されることを明示している。
図2は、β−グルコシダーゼとエスクリンをトリコフィトン・インテルディギターレ(Trichophyton interdigitale)NCPF335に添加すると真菌の増殖が著しく抑制されることを明示している。
図3は、トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対するエスクレチンの用量依存性抗真菌効果を明示している。
図4は、トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118とトリコフィトン・インテルディギターレ(T. interdigitale)NCPF335の古い培養菌においてβ−グルコシダーゼの産生が増大しているため、それらの菌がエスクリンに対してより感受性であることを明示している。
図5は、トリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対するクマリングリコシドの活性を明示している。
図6は、7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリンのアグリコンが、低濃度でしか溶解しないにも関わらず、1〜2mMの濃度においてトリコフィトン・ルブラム(T. rubrum)NCPF118に対して著しく抗真菌性であることを明示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延用のクマリン化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
グリコシドクマリン化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記感染症が、白癬菌属(Trichophyton)、表皮菌属(Epidermophyton)または小胞子菌属(Microsporum)の皮膚糸状菌に起因するものである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記皮膚糸状菌が、エピデルモフィトン・フロッコサム(Epidermophyton floccosum)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・オードアン(Microsporum audouinii)、ミクロスポルム・ジプセーム(Microsporum gypseum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、ミクロスポルム・フェルギネウム(Microsporum ferrugineum)、ミクロスポルム・ジストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・フルブム(Microsporum fulvum)、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス・インテルディギターレ変種(Trichophyton mentagrophytes var. interdigitale)、トリコフィトン・メンタグロフィテス・ノジュラーレ変種(Trichophyton mentagrophytes var. nodulare)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・スーダネンセ(Trichophyton soudanese)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・ショーンレニイ(Trichophyton schoenlenii)、トリコフィトン・ガリナエ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・クラジェニイ(Trichophyton krajdenii)、トリコフィトン・ヤウンデイ(Trichophyton yaoundei)、トリコフィトン・エキナム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・エリナセイ(Trichophyton erinacei)およびトリコフィトン・ベルコースム(Trichophyton verrucosum)からなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記皮膚糸状菌がトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記感染症が爪真菌症である、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
下式(I)もしくは下式(II)を有する前記請求項のいずれかに記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ
【化1】

(式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、または炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分であるか、
またはRとR、RとR、もしくはRとRは、それらが結合している炭素原子と共に、ハロゲン、もしくは炭素、窒素、酸素および硫黄から選択される多価の原子を1から30個含む部分によって場合によって置換されている環状基を形成してもよく、
、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つまたは前記環状基はグリコシド基を含む)。
【請求項8】
、R、RまたはRがグリコシド基を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
単糖、二糖または多糖基であるグリコシド基を含む、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
前記グリコシド基が、グルコピラノシド、ガラクトピラノシド、マンノピラノシド、フコピラノシド、アラビノピラノシド、グルコピラノシド、ガラクトピラノシド、グルクロニド、ラクトピラノシド、キシロピラノシド、グルコサミニド、ガラクトサミニド、アロシド、リキソシド、タロシド、トレオシド、リボシド、フルクトシド、ラムノシドおよびグロシドの各基から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記グリコシド基が、α−D−グルコピラノシド、α−D−ガラクトピラノシド、α−D−マンノピラノシド、α−L−フコピラノシド、α−L−アラビノピラノシド、β−D−グルコピラノシド、β−D−ガラクトピラノシド、β−D−グルクロニド、β−D−ラクトピラノシド、β−D−キシロピラノシド、β−D−グルコサミニド、β−D−ガラクトサミニド、β−D−アロシド、β−D−リキソシド、β−D−タロシド、β−D−トレオシド、β−D−リボシド、β−D−フルクトシド、β−D−ラムノシドおよびβ−L−グロシドの各基から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
以下より選択されるか、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグから選択される、請求項2に記載の化合物。
【化2】





【請求項13】
エスクリンまたはそのプロドラッグである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
ハロゲン化クマリン化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
患者の皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延用のクマリン化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを含む医薬製剤。
【請求項16】
前記クマリン化合物がグリコシドクマリン化合物である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記感染症が請求項3から6のいずれかにおいて定義されるような感染症である、請求項15または16に記載の製剤。
【請求項18】
前記化合物が請求項7から13のいずれかにおいて定義されるような化合物である、請求項16または請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体をさらに含む、請求項15から18のいずれかに記載の製剤。
【請求項20】
皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延用の薬剤製造のための、クマリン化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用。
【請求項21】
前記クマリン化合物がグリコシドクマリン化合物である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記化合物が請求項7から13のいずれかにおいて定義されるような化合物である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記クマリン化合物がハロゲン化クマリン化合物である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
前記感染症が請求項3から6のいずれかにおいて定義されるような感染症である、請求項20から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
治療有効量のクマリン化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを患者に投与することを含む、皮膚糸状菌症の治療、予防、または進行遅延方法。
【請求項26】
前記化合物がグリコシドクマリン化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物がハロゲン化クマリン化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が請求項6から12のいずれかにおいて定義されるような化合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記感染症が請求項2から5のいずれかにおいて定義されるような感染症である、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−539817(P2009−539817A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513756(P2009−513756)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002062
【国際公開番号】WO2007/141513
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508066991)ノバビオティクス・リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVABIOTICS LIMITED
【Fターム(参考)】