説明

抗菌フィルター及びそれを用いた空気清浄機

【課題】使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能な抗菌フィルター及びそれを用いた空気清浄機を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌フィルター1は、シート状の光源6と、光源6から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含む光触媒層7と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌フィルター及びそれを用いた空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活水準の向上及び快適生活を目指した生活環境の多様化に伴い、衣類や生活資材において健康及び衛生に関する関心が非常に高まっている。このような状況において、特に衣類の分野、中でもマスク等の衛生製品は、殺菌、抗菌、脱臭、防汚性等のニーズが高く、光触媒機能を有する繊維構造物に関するものが求められている。
【0003】
このような要求に応えるための技術が各種検討されており、例えば特許文献1では、光触媒機能を有する繊維にフォトクロミック加工を施すことで、紫外線照射量の変化で製品が変色するようにし、光触媒機能が発揮されている状態を認識できるインジケーター機能と光触媒機能とを兼ね備えた繊維製品を開示している。また、特許文献2及び3では、光触媒を含有するフィルムを用いてハニカム構造体を形成することで、集塵性と消臭等の機能性に優れ、圧力損失が低く、捕集効率の高いフィルターを開示している。また、特許文献4では、無縫製編物製品を、光触媒を含む処理液中に入れて加工処理し、脱水し、乾燥することで、製品全体にムラ無く均一に光触媒を付与し、抗菌性と消臭性に優れ、かつ、柔軟な風合いを保持できる無縫製編物製品の抗菌消臭加工方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−120482号公報
【特許文献2】特開2002−102624号公報
【特許文献3】特開2000−117021号公報
【特許文献4】特開2007−126764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4の技術にあっては、光触媒機能を用いて、抗菌性、消臭性に優れたフィルターを得ることができると考えられるが、以下のように問題点もある。
特許文献1〜4では、光源として太陽光や蛍光灯を用いているため、光触媒機能を活用するに当たり様々な制約がある。例えば、光源が太陽光の場合、夜間には光触媒の作用効果が見込めない(使用時間の制約)。また、光源が蛍光灯の場合、フィルターを蛍光灯の周囲に配置する際に適当なスペースが必要とされる(フィルターの形状の制約)。また、蛍光灯の大きさ(厚さ、長さ)に対応した大きさが必要とされる(フィルターの大きさの制約)。さらに、光源からの光がフィルターに効率よく当たるようにフィルターに対する光の照射面積を確保する必要がある(光の利用効率の制約)。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能な抗菌フィルター及びそれを用いた空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の抗菌フィルターは、シート状の光源と、前記光源から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含む光触媒層と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、シート状の光源と該光源から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含む光触媒層とを有しており、特許文献1〜4のように光源として太陽光や蛍光灯を用いていないので、夜間や室内の光が届きにくい場合であっても光触媒機能を有効に活用することができる。また、本発明の抗菌フィルターは、フィルターの形状や大きさの制約を受けにくく携帯性に優れ、フィルターに対する光の照射面積を十分に確保することができるため光の利用効率に優れる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能となる。
【0009】
また、上記抗菌フィルターにおいては、前記光触媒層が前記光触媒を含有する多孔質の層からなっていてもよい。
【0010】
この構成によれば、シート状の光源と該光源から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒層(光触媒を含有する多孔質の層)とを有しており、特許文献1〜4のように光源として太陽光や蛍光灯を用いていないので、夜間や室内の光が届きにくい場合であっても光触媒機能を有効に活用することができる。また、本発明の抗菌フィルターは、フィルターの形状や大きさの制約を受けにくく携帯性に優れ、フィルターに対する光の照射面積を十分に確保することができるため光の利用効率に優れる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能となる。
【0011】
また、上記抗菌フィルターにおいては、シート状の支持体と、前記光源と前記光触媒層とが積層されてなる積層体を複数回屈曲して形成された複数の山部と谷部を有する第1襞状部材と、が交互に積層されてなる第1ハニカム構造体を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、シート状の支持体と第1襞状部材とが交互に積層されることによりハニカム構造となっているので、平坦なシート構造や襞状(プリーツ状)の構造に比べてフィルターの表面積が大きくなる。また、ハニカム構造における複数の空隙を通って空気が流れるようになり、その結果大量の空気がろ過されるようになる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能となる。
【0013】
また、上記抗菌フィルターにおいては、前記シート状の光源と、前記光触媒層を複数回屈曲して形成された複数の山部と谷部を有する第2襞状部材と、が交互に積層されてなる第2ハニカム構造体を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、シート状の光源と第2襞状部材とが交互に積層されることによりハニカム構造となっているので、平坦なシート構造やプリーツ状の構造に比べてフィルターの表面積が大きくなる。また、ハニカム構造における複数の空隙を通って空気が流れるようになり、その結果大量の空気がろ過されるようになる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能となる。
【0015】
また、上記抗菌フィルターにおいては、前記光源が有機ELパネルからなっていてもよい。
【0016】
この構成によれば、抗菌フィルターの薄型化、軽量化を図ることができるので、抗菌フィルターの用途範囲が拡がる。具体的には、抗菌マスクの一方の側(前面)に抗菌フィルターを配置した場合、抗菌マスク全体としての厚さや重さに違和感なく好適に使用することができる。また、ハニカム構造体を構成する襞状部材に抗菌フィルターを用いた場合、ハニカム構造体全体として薄型化、軽量化を図ることが可能となる。
【0017】
また、上記抗菌フィルターにおいては、前記光触媒が酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持してなるものであってもよい。
【0018】
この構成によれば、可視光(400〜800nm程度の波長領域の光)を用いた場合でも、空気浄化、防汚、抗菌、細菌、脱臭、抗ウイルスなどの光触媒機能を発揮させることが可能となる。ところで、有機EL素子は有機EL素子自身の光で発光層が劣化してしまうことから紫外光を発光することができないので、可視光でも光触媒作用を生じることが望まれていた。これにより、光源として有機ELパネルを用いた場合でも光触媒作用を確実に生じることが可能となる。
【0019】
また、上記抗菌フィルターにおいては、前記光源が可撓性を有していてもよい。
【0020】
この構成によれば、抗菌フィルターが可撓性を有するようになるので、抗菌フィルターの用途範囲が拡がる。具体的には、抗菌マスクの一方の側(前面)に抗菌フィルターを配置した場合、抗菌マスク全体として柔軟性を有するので違和感なく好適に使用することができる。また、ハニカム構造体を構成する襞状部材に抗菌フィルターを用いた場合、襞状部材全体として柔軟性を有するので形成しやすい。
【0021】
本発明の空気清浄機は、前述の第1ハニカム構造体と前記第1ハニカム構造体を収容する筐体と、前記筐体に隣り合う位置に設けられて空気を送る送風ファンと、を有し、前記筐体には前記支持体と前記第1襞状部材とにより形成された空隙が露出するように、前記筐体の一端に前記送風ファンから送られた前記空気が流入する第1開口部が設けられ、かつ、前記筐体の他端に前記空気が流出する第2開口部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記のハニカム構造体と、空気を送る送風ファンと、を備えているため、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機が提供できる。
【0023】
本発明の空気清浄機は、前述の第2ハニカム構造体と前記第2ハニカム構造体を収容する筐体と、前記筐体に隣り合う位置に設けられて空気を送る送風ファンと、を有し、前記筐体には前記シート状の光源と前記第2襞状部材とにより形成された空隙が露出するように、前記筐体の一端に前記送風ファンから送られた前記空気が流入する第1開口部が設けられ、かつ、前記筐体の他端に前記空気が流出する第2開口部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、上記のハニカム構造体と、空気を送る送風ファンと、を備えているため、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機が提供できる。
【0025】
また、上述の空気清浄機は、前記第2ハニカム構造体の前記第2開口部の側において、連続して複数形成された前記空隙のうちの少なくとも一部の空隙を塞ぐように配置された閉塞部材を有していてもよい。
【0026】
この構成によれば、第2開口部の側における複数の空隙のうち少なくとも一部の空隙を塞ぐように配置された閉塞部材によって、第2開口部から流出しようとする空気が塞き止められる。すると、塞き止められた空気が側面に位置する光触媒層からなる第2襞状部材を通過し、閉塞部材の配置されていない空隙から流出するようになる。したがって、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を確実に得ることが可能な空気清浄機が提供できる。
【0027】
また、上述の空気清浄機は、前記筐体の前記第1ハニカム構造体または前記第2ハニカム構造体の収容された側の面が鏡面であってもよい。
【0028】
この構成によれば、筐体の第1ハニカム構造体または第2ハニカム構造体の収容された側の面において光が吸収されずに反射されるようになる。したがって、光の利用効率の向上を図り、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の抗菌フィルターを具備した抗菌マスクを示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る抗菌フィルターを示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る抗菌フィルターを示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る抗菌フィルターを示す模式図である。
【図5】本発明の抗菌フィルターを具備した空気清浄機を示す模式図である。
【図6】本発明の空気清浄機の他の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0031】
(抗菌マスク)
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る抗菌フィルター1を備えた抗菌マスク10の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、抗菌マスク10は、マスク本体11と、耳掛け紐12と、ポケット13と、抗菌フィルター1と、配線14と、電池15と、を具備して構成されている。
【0032】
マスク本体11は、抗菌防臭不織布からなり、例えば口元側不織布と外側不織布、及びこれら不織布の間に挿入された防塵フィルターからなる中間不織布の三層構造からなっている。また、マスク本体11は、襞状に複数折り返されたプリーツ加工が施されており、鼻や口の形状に対応して顔面にフィットするように形成されている。なお、鼻の形状にすきまなくフィットするように、マスク本体11の上辺に沿ってワイヤーが設けられていてもよい。
【0033】
耳掛け紐12は、マスク本体11の両側上下に固定されている。また、耳掛け紐12は、例えばゴム等の弾性部材からなり、顔の大きさに対応して伸びるようになっている。
【0034】
ポケット13は、矩形形状であり、マスク本体11の一方の側(顔面にフィットする側と反対の側)に設けられている。また、ポケット13はその上側が開いており、抗菌フィルター1を入れられるようになっている。つまり、ポケット13は抗菌フィルター1が取り外し可能に開口されている。
【0035】
抗菌フィルター1は、シート状の光源6に光触媒がコーティングされたフィルターである(図2参照)。抗菌フィルター1を構成するシート状の光源6には配線14を介して電池15が接続されており、電源スイッチ(図示略)により適宜光源6を発光させることが可能となっている。
【0036】
なお、本発明にかかる光触媒とは、光(例えば可視光、400〜800nm程度の波長領域の光)を照射することにより光触媒反応を示す物質であり、空気浄化、防汚、抗菌、細菌、脱臭、抗ウイルスなどの機能を発現するものである。
【0037】
図2は、本発明の第1実施形態に係る抗菌フィルター1を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態の抗菌フィルター1は、シート状の光源6と、光源6から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含む光触媒層7と、を有している。つまり、抗菌フィルター1は、光源6の一方の面に光触媒がコーティングされてシート状になっている。
【0038】
シート状の光源6としては、例えばLEDや有機ELパネルを用いることができる。本実施形態では、光源6として有機ELパネルを用いる。これにより、抗菌フィルター1の薄型化、軽量化を図ることができ、抗菌フィルター1の用途範囲が拡がる。具体的には、マスク本体11の一方の側(前面)のポケット13に抗菌フィルター1を入れた場合、抗菌マスク10全体としての厚さや重さに違和感なく好適に使用することができる。
【0039】
光源6から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒としては、例えば、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子や酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持してなるものを用いることができる。本実施形態では、光触媒として酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持してなるものを用いる。これにより、可視光を用いた場合でも、空気浄化、防汚、抗菌、細菌、脱臭、抗ウイルスなどの光触媒機能を発揮させることが可能となる。ところで、有機EL素子は有機EL素子自身の光で発光層が劣化してしまうことから紫外光を発光することができないので、可視光でも光触媒作用を生じることが望まれていた。これにより、光源6として有機ELパネルを用いた場合でも光触媒作用を確実に生じることが可能となる。
【0040】
また、シート状の光源6は可撓性を有している。これにより、抗菌フィルター1が可撓性を有するようになり、抗菌フィルター1の用途範囲が拡がる。具体的には、マスク本体11の一方の側(前面)のポケット13に抗菌フィルター1を入れた場合、抗菌マスク10全体として柔軟性を有するので違和感なく好適に使用することができる。
【0041】
本実施形態の抗菌フィルター1によれば、シート状の光源6の一方の面に光触媒を含む光触媒層7が形成されており、特許文献1〜4のように光源として太陽光や蛍光灯を用いていないので、夜間や室内の光が届きにくい場合であっても光触媒機能を有効に活用することができる。また、本実施形態の抗菌フィルター1は、フィルターの形状や大きさの制約を受けにくく携帯性に優れ、フィルターに対する光の照射面積を十分に確保することができるため光の利用効率に優れる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能となる。
【0042】
また、この構成によれば、光源6が有機ELパネルからなり、抗菌フィルター1の薄型化、軽量化を図ることができるので、抗菌フィルター1の用途範囲が拡がる。具体的には、マスク本体11の一方の側(前面)に抗菌フィルター1を配置した場合、抗菌マスク10全体としての厚さや重さに違和感なく好適に使用することができる。
【0043】
また、この構成によれば、光触媒が酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持してなるものであるので、可視光を用いた場合でも、空気浄化、防汚、抗菌、細菌、脱臭、抗ウイルスなどの光触媒機能を発揮させることが可能となる。ところで、有機EL素子は有機EL素子自身の光で発光層が劣化してしまうことから紫外光を発光することができないので、可視光でも光触媒作用を生じることが望まれていた。これにより、光源6として有機ELパネルを用いた場合でも光触媒作用を確実に生じることが可能となる。
【0044】
また、この構成によれば、光源6が可撓性を有しており、これに伴って抗菌フィルター1が可撓性を有するようになるので、抗菌フィルター1の用途範囲が拡がる。具体的には、マスク本体11の一方の側(前面)に抗菌フィルター1を配置した場合、抗菌マスク10全体として柔軟性を有するので違和感なく好適に使用することができる。
【0045】
なお、上記抗菌マスク10においては、マスク本体11のポケット13に1つの抗菌フィルター1が入っているが、これに限らない。例えば、マスク本体11のポケット13に所定の間隔を空けて複数の抗菌フィルター1が入っていてもよい。これにより、複数の抗菌フィルター1間の所定の間隔から空気が流入するようになる。つまり、抗菌マスク10のポケット13が配置された側から好適に空気を取り入れることが可能となる。
【0046】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る抗菌フィルター2を示す模式図である。図3は、図2に対応した、第2実施形態における抗菌フィルター2の概略構成を示した断面図である。図3に示すように、本実施形態の抗菌フィルター2は、光触媒層が光触媒を含有する多孔質の層からなる点で、上述の第1実施形態で説明した抗菌フィルター1と異なっている。その他の点は第1実施形態と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の抗菌フィルター2は、シート状の光源6と、光源6から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含有する多孔質の層(光触媒層)9と、を有している。つまり、抗菌フィルター2は、光源6の一方の面に接着剤8を介して光触媒層9が貼り合わされてシート状になっている。
【0048】
光触媒層9は、多孔質の繊維状の母材(通気性基材)に光触媒をコーティングあるいは浸透させたものである。通気性基材としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維などの合成繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、活性炭素繊維などの無機繊維、木材パルプ、麻パルプなどの天然繊維を用いることができる。
【0049】
このような材料から形成される光触媒層9は、可撓性を有している。そして、可撓性を有する光源6と一体化されることにより、抗菌フィルター2全体として柔軟性を有するようになる。
【0050】
本実施形態の抗菌フィルター2によれば、シート状の光源6の一方の面に接着剤8を介して光触媒層9が貼り合わされており、特許文献1〜4のように光源として太陽光や蛍光灯を用いていないので、夜間や室内の光が届きにくい場合であっても光触媒機能を有効に活用することができる。また、本実施形態の抗菌フィルター2は、フィルターの形状や大きさの制約を受けにくく携帯性に優れ、フィルターに対する光の照射面積を十分に確保することができるため光の利用効率に優れる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得ることが可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る抗菌フィルター3を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態の抗菌フィルター(第1ハニカム構造体)3は、シート状の支持体31と、光源6と光触媒層7とが積層されてなる積層体を複数回屈曲して形成された複数の山部と谷部を有する第1襞状部材32と、が交互に積層されてなる構造となっている。つまり、抗菌フィルター3は、平坦な支持体31と襞状の積層体(第1襞状部材32)とが複数交互に重ね合わせられてハニカム状に形成されている点で、上述の第1実施形態で説明した抗菌フィルター1と異なっている。その他の点は第1実施形態と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
なお、本発明に係るハニカム状とは、開口を有するセル壁からなる構造体の形状である。ハニカムの具体例としては、コルゲートハニカム、六角形セルからなるヘキサゴンハニカム、菱形セルからなるハニカム、正方形セルからなるハニカム、三角形セルからなるハニカム、及び中空円筒状セルを集合してなるハニカムが挙げられる。本実施形態では、抗菌フィルター3の形状がコルゲートハニカム状になっている。
【0053】
第1ハニカム構造体3には、支持体31と第1襞状部材32とにより連続した複数の空隙17が形成されている。空隙17は、第1ハニカム構造体3の両端において開口されている。このような空隙17を通って、空気が流れたり、光が入射したりするようになっている。
【0054】
本実施形態の抗菌フィルター3によれば、シート状の支持体31と第1襞状部材32とが交互に積層されることによりハニカム構造となっているので、平坦なシート構造や襞状(プリーツ状)の構造に比べてフィルターの表面積が大きくなる。また、ハニカム構造における連続した複数の空隙17を通って空気が流れるようになり、その結果大量の空気がろ過されるようになる。したがって、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の抗菌フィルター3においては、シート状の支持体31と、光源6と光触媒層7とが積層されてなる積層体と、が交互に積層されることによりハニカム構造となっているが、これに限らない。例えば、シート状の支持体31に替えてシート状の光源6を、第1襞状部材32に替えて光触媒層9を複数回屈曲して形成された第2襞状部材33を、用い、シート状の光源6と第2襞状部材33が交互に積層されることによりハニカム構造となっていてもよい。以下、抗菌フィルター(第2ハニカム構造体)4とする。
【0056】
(空気清浄機)
図5は本発明の第3実施形態に係る抗菌フィルター(第1ハニカム構造体)3を備えた空気清浄機20の概略構成を示す模式図である。図5(a)は空気清浄機20の概略構成を示す斜視図、図5(b)は空気清浄機20における空気の流れを示す模式図である。図5に示すように、空気清浄機20は、第1ハニカム構造体3と、筐体21と、送風ファン22と、を具備して構成されている。なお、図5(a)においては、送風ファン22の図示を省略している。
【0057】
筐体21は、第1ハニカム構造体3を収容するものである。筐体21には、第1ハニカム構造体3の空隙17が露出するように、その一端において第1開口部21aが設けられ、かつ、他端において第2開口部21bが設けられている。
【0058】
また、筐体21の内面(第1ハニカム構造体3の収容された側の面)は、鏡面となっている。これにより、筐体21の内面において光が吸収されずに反射されるようになる。したがって、光の利用効率の向上を図り、光触媒機能を有効に活用することが可能となる。
【0059】
図5(b)に示すように、送風ファン22は筐体21に隣り合う位置に設けられている。送風ファン22は、モーター(図示略)の駆動によりファンが回転することで、所定の量の空気を所定の風速で筐体21内部に送り出す機能を有するものである。送風ファン22から送り出される空気は、第1開口部21aに流入し、筐体21内部に設けられた第1ハニカム構造体3の空隙17を通って第2開口部21bから流出するようになっている。
【0060】
本実施形態の空気清浄機20によれば、第1ハニカム構造体3と、空気を送る送風ファン22と、を備えているため、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機20が提供できる。
【0061】
また、この構成によれば、筐体21の内面において光が吸収されずに反射されるようになる。したがって、光の利用効率の向上を図り、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機20が提供できる。
【0062】
なお、本実施形態の空気清浄機20においては、筐体21内部に第1ハニカム構造体3が収容されて構成されているが、これに限らない。例えば、筐体21内部に第2ハニカム構造体4が収容されて構成されていてもよい。
【0063】
この構成によれば、第2ハニカム構造体4と、空気を送る送風ファン22と、を備えているため、使用時間、フィルターの形状や大きさ、光の利用効率などの制約を解消し、光触媒機能を有効に活用して優れた抗菌性、消臭性を得るとともに、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を得ることが可能な空気清浄機20Aが提供できる。
【0064】
また、図6に示すように、空気清浄機20Aにおける筐体21内部の第2ハニカム構造体4に形成された複数の空隙17のうちの少なくとも一部の空隙17が塞がれていてもよい。
【0065】
図6は、上述の空気清浄機20Aと異なる形態の空気清浄機20Bの概略構成を示す模式図である。図6(a)は空気清浄機20Bの概略構成を示す斜視図、図6(b)は空気清浄機20Bにおける空気の流れを示す模式図(図6(a)のA−A線に沿った断面図)である。図6(a)は、図5(a)に対応した、空気清浄機20Bの概略構成を示した斜視図である。図6に示すように、本実施形態の空気清浄機20Bは、筐体21内部の第2ハニカム構造体4に形成された複数の空隙17のうちの少なくとも一部の空隙17が塞がれている点で、上述の空気清浄機20Aと異なっている。その他の点は空気清浄機20Aと同様であるので、図5と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0066】
図6(a)に示すように、空気清浄機20Bは、第2ハニカム構造体4と、筐体21と、送風ファン22と、空隙17を塞ぐ閉塞部材23と、を具備して構成されている。この閉塞部材23は、第2ハニカム構造体4の第2開口部21bの側において、連続して複数形成された空隙17のうち少なくとも一部の空隙17を塞ぐように配置されている。本実施形態では、閉塞部材23は隣り合う空隙17が連続して塞がれないように交互に配置されている。
【0067】
図6(b)に示すように、送風ファン22から送り出される空気は、第1開口部21aに流入する。そして、一部の空気が筐体21内部に設けられた第1ハニカム構造体3の空隙17を通って第2開口部21bの側における複数の空隙17のうち一部の空隙17を塞ぐように交互に配置された閉塞部材23で塞き止められる。すると、塞き止められた空気が進路を変えて光触媒層9からなる第2襞状部材33を通り抜ける。そして、通り抜けた空気が第2開口部21bの側における空隙17(閉塞部材23の配置されていない空隙17)から流出するようになっている。
【0068】
この構成によれば、第2開口部21bの側における複数の空隙17のうち少なくとも一部の空隙17を塞ぐように配置された閉塞部材23によって、第2開口部21bから流出しようとする空気が塞き止められる。すると、塞き止められた空気が側面に位置する光触媒層9からなる第2襞状部材33を通過し、閉塞部材23の配置されていない空隙17から流出するようになる。したがって、優れた集塵性、低圧力損失、高い捕集効率を確実に得ることが可能な空気清浄機20Bが提供できる。
【符号の説明】
【0069】
1,2…抗菌フィルター、3…第1ハニカム構造体(抗菌フィルター)、4…第2ハニカム構造体(抗菌フィルター)、6…光源、7,9…光触媒層、8…接着剤、17…空隙、20,20A,20B…空気清浄機、21a…第1開口部、21b…第2開口部、22…送風ファン、23…閉塞部材、31…支持体、32…第1襞状部材、33…第2襞状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の光源と、
前記光源から発せられる所定の波長の光を吸収する光触媒を含む光触媒層と、
を有することを特徴とする抗菌フィルター。
【請求項2】
前記光触媒層が前記光触媒を含有する多孔質の層からなることを特徴とする請求項1に記載の抗菌フィルター。
【請求項3】
シート状の支持体と、
前記光源と前記光触媒層とが積層されてなる積層体を複数回屈曲して形成された複数の山部と谷部を有する第1襞状部材と、
が交互に積層されてなる第1ハニカム構造体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌フィルター。
【請求項4】
前記シート状の光源と、
前記光触媒層を複数回屈曲して形成された複数の山部と谷部を有する第2襞状部材と、
が交互に積層されてなる第2ハニカム構造体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌フィルター。
【請求項5】
前記光源が有機ELパネルからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗菌フィルター。
【請求項6】
前記光触媒が酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持してなるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗菌フィルター。
【請求項7】
前記光源が可撓性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗菌フィルター。
【請求項8】
請求項3に記載の第1ハニカム構造体と
前記第1ハニカム構造体を収容する筐体と、
前記筐体に隣り合う位置に設けられて空気を送る送風ファンと、を有し、
前記筐体には前記支持体と前記第1襞状部材とにより形成された空隙が露出するように、前記筐体の一端に前記送風ファンから送られた前記空気が流入する第1開口部が設けられ、かつ、前記筐体の他端に前記空気が流出する第2開口部が設けられていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項9】
請求項4に記載の第2ハニカム構造体と
前記第2ハニカム構造体を収容する筐体と、
前記筐体に隣り合う位置に設けられて空気を送る送風ファンと、を有し、
前記筐体には前記シート状の光源と前記第2襞状部材とにより形成された空隙が露出するように、前記筐体の一端に前記送風ファンから送られた前記空気が流入する第1開口部が設けられ、かつ、前記筐体の他端に前記空気が流出する第2開口部が設けられていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項10】
前記第2ハニカム構造体の前記第2開口部の側において、連続して複数形成された前記空隙のうちの少なくとも一部の空隙を塞ぐように配置された閉塞部材を有することを特徴とする請求項9に記載の空気清浄機。
【請求項11】
前記筐体の前記第1ハニカム構造体または前記第2ハニカム構造体の収容された側の面が鏡面であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269280(P2010−269280A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124999(P2009−124999)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】