説明

抗菌ペプチド

本発明は、様々なグラム陽性菌の生育および/または増殖を抑制するのに有効な新規抗菌ペプチドを提供する。特に、このペプチドは、一般的な口腔病原体であり、かつ虫歯の原因因子であるミュータンス連鎖球菌に対して有効である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、2007年1月16日に提出された米国特許出願第60/880,783号の恩典およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府支援研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する声明
本研究は、米国国立衛生研究所の助成金番号第MD01831号によって部分的に支援を受けた。米国政府は本研究において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、抗菌化合物の分野に関係する。特に、本発明は、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)および他の細菌に対して有効な新規抗菌ペプチドの同定に関係する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
抗菌ペプチド(AMP)は、最近、薬物耐性株が含まれる広い細菌種スペクトルに対するその強健な殺傷(killing)活性により、可能性がある抗生物質代用物として最先端に現れた。AMPは、単細胞型および多細胞型の生命体において発見されている生得の免疫に関する遺伝的に一般的な分子である(Tossi et al. (2000) Biopolymers 55:4-30(非特許文献1);Diamond (2001) Biologist (London) 48:209-212(非特許文献2);Lehrer and Ganz (2002) Curr. Opin. Immunol 14:96-102(非特許文献3);Brogden et al. (2003) Int. J. Antimicrob. Agents 22:465-478(非特許文献4))。それらは、ペプチド配列および翻訳後修飾(直線状、環状等)が劇的に異なりうるが、AMPの大部分は、脂質膜の破壊によって細菌を死滅させるように見えるがこの機構の詳細は広く多様であるように見える(Shai (2002) Biopolymers 66:236-248(非特許文献5);Brogden (2005) Nat. Rev. Microbiol. 3:238-250(非特許文献6))。これまでの知見から、多くのAMPにおいて見いだされる芳香族Trpおよび陽イオン性Arg残基の有意な関与が含まれる、AMP機能における一般的な疎水性および陽イオン性の特徴の不可欠な役割が示されている(Chan et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 51(4):1351-1359(非特許文献7);Wei et al. (2006) J. Bacteriol. 188:328-334(非特許文献8))。この小さい大きさにもかかわらず(ほとんどのAMPはアミノ酸50個未満である)、二次構造もまた、活性において重要な役割を果たすように見える。一定の直線状AMPは、細菌膜を模倣する疎水性環境(洗浄剤または脂質小胞などの)との相互作用によってαヘリックスまたはβストランドコンフォメーションをとることができ、これらのコンフォメーション変化が抗菌機能にとって必要であることを示唆している(Kiyota et al. (1996) Biochemistry 35:13196-13204(非特許文献9);Wei et al. (2006) J. Bacteriol. 188:328-334(非特許文献8);Wimmer et al. (2006) Biochemistry 45:481-497(非特許文献10))。さらに、膜活性なαヘリックス(および他の構造)の形成は、残基の両親媒性な空間的配置を、すなわちペプチドの表面にわたる疎水性勾配を必要とするように見える(Kiyota et al. (1996) Biochemistry 35:13196-13204(非特許文献9);Shai (1999) Biochim Biophys Acta 1462:55-70(非特許文献11);Lee (2002) Curr Pharm Des 8:795-813(非特許文献12))。
【0005】
これまで、抗菌ペプチドの合理的設計は、既存の天然の配列を多様にすること、または大きい組み合わせライブラリから新規ペプチドを開発することに主に重点が置かれている(Kiyota et al. (1996) Biochemistry 35:13196-13204(非特許文献9);Blondelle and Lohner (2000) Biopolymers 55:74-87(非特許文献13);Hong et al. (2001) Peptides 22:1669-1674(非特許文献14);Sawai et al. (2002) Protein Eng. 15:225-232(非特許文献15))。これらの努力によって、AMP構造-活性に関する貴重な情報がもたらされた。
【0006】
ミュータンス連鎖球菌は、一般的な口腔内病原菌であり、かつ虫歯の原因因子であるが、それらを除去または撲滅するための一定の努力にもかかわらず、歯の表面において持続し、繁殖さえする。ミュータンス連鎖球菌は、食事の糖の存在下で歯の表面に持続的に定着して、専用の機械的除去(歯磨き)および一般的な殺菌努力(Keene and Shklair (1974) J. Dent. Res. 53:1295(非特許文献16))にもかかわらず、口腔内微生物叢(歯垢として知られる)において留まりうることから、この生物に対する新しい治療物質が非常に必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tossi et al. (2000) Biopolymers 55:4-30
【非特許文献2】Diamond (2001) Biologist (London) 48:209-212
【非特許文献3】Lehrer and Ganz (2002) Curr. Opin. Immunol 14:96-102
【非特許文献4】Brogden et al. (2003) Int. J. Antimicrob. Agents 22:465-478
【非特許文献5】Shai (2002) Biopolymers 66:236-248
【非特許文献6】Brogden (2005) Nat. Rev. Microbiol. 3:238-250
【非特許文献7】Chan et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 51(4):1351-1359
【非特許文献8】Wei et al. (2006) J. Bacteriol. 188:328-334
【非特許文献9】Kiyota et al. (1996) Biochemistry 35:13196-13204
【非特許文献10】Wimmer et al. (2006) Biochemistry 45:481-497
【非特許文献11】Shai (1999) Biochim Biophys Acta 1462:55-70
【非特許文献12】Lee (2002) Curr Pharm Des 8:795-813
【非特許文献13】Blondelle and Lohner (2000) Biopolymers 55:74-87
【非特許文献14】Hong et al. (2001) Peptides 22:1669-1674
【非特許文献15】Sawai et al. (2002) Protein Eng. 15:225-232
【非特許文献16】Keene and Shklair (1974) J. Dent. Res. 53:1295
【発明の概要】
【0008】
本発明は、新規抗菌ペプチドの発見に関係する。一定の態様において、このペプチドは、グラム陽性菌、特に口腔のグラム陽性菌(例えば、ミュータンス連鎖球菌)に対して有意な活性を示す。このペプチドは、様々な抗菌組成物の製剤において、および/または虫歯の発生の予防もしくは低減において有効である。
【0009】
したがって、一定の態様において、本発明は、以下のアミノ酸モチーフまたは以下のアミノ酸モチーフの円順列を含む、抗菌ペプチドを提供する:

式中、nは1〜5の範囲でありかつ0.1単位ずつ増加することができ;H1、H2、H3、H4、およびH5は、独立して選択される疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸であり;C1、C2、C3、C4、およびC5は、独立して選択される非荷電アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、または陰性荷電アミノ酸であり;前記ペプチドはαヘリックスを形成し;ならびに前記ペプチドは培養においてミュータンス連鎖球菌を死滅させるかまたはその生育および/または増殖を抑制するのに有効である。一定の態様において、C1、C2、C3、C4、およびC5は、独立して選択される陽性荷電アミノ酸、または陰性荷電アミノ酸である。一定の態様において、非荷電アミノ酸は、S、T、およびY(またはそれらの類似体、誘導体、もしくは保存的置換)からなる群より独立して選択され、および/または陽性荷電アミノ酸は、K、R、およびH(またはそれらの類似体、誘導体、もしくは保存的置換)からなる群より独立して選択され、および/または陰性荷電アミノ酸は、N、Q、DおよびE(またはそれらの類似体、誘導体、もしくは保存的置換)から独立して選択され、および/または疎水性アミノ酸もしくは親水性アミノ酸は、L、I、V、W、およびF(またはそれらの類似体、誘導体、もしくは保存的置換)を用いることからなる群より独立して選択される。一定の態様において、ペプチドは、生理的pHで少なくとも+3の正味の陽電荷を有する。一定の態様において、nは1.1であり;かつペプチドはモチーフ

を含み、式中H6は、独立して選択される疎水性アミノ酸である。例示的なn=1.1のペプチドには、

が含まれるがこれらに限定されるわけではない。一定の態様において、nは1.4であり;かつペプチドは、モチーフ

を含み、式中H6およびH7は、独立して選択される疎水性アミノ酸であり、かつC6およびC7は、独立して選択される陽性荷電アミノ酸または陰性荷電アミノ酸である。例示的なn=1.4のペプチドには、

が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0010】
一定の態様において、抗菌ペプチド(AMP)は、二つを除く全てのアミノ酸がArgもしくはTrp、またはその誘導体もしくは類似体であり;ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸が、LysもしくはPhe、またはその誘導体もしくは類似体であり;かつN末端残基が、Argまたはその誘導体もしくは類似体である、7個の連続したアミノ酸を含むペプチドである。様々な態様において、二つを除く全てのアミノ酸はArgまたはTrp(またはその誘導体もしくは類似体)であり;ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸は、LysまたはPhe(またはその誘導体もしくは類似体)であり;かつN末端残基はArg(またはその誘導体もしくは類似体)である。一定の態様において、ペプチドは、

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
荷電残基の大多数(半数より多く)が、酸性pHで陽電荷を運ぶHisまたはその誘導体もしくは類似体である、アミノ酸約7〜約11個の長さの範囲の両親媒性ヘリックスペプチドを含む、酸で活性化される抗菌ペプチド(AMP)も同様に提供され、、前記ペプチドは、中性pHで実質的に抗菌活性を有しないが、酸性pHでミュータンス連鎖球菌に対して抗菌活性を有する。一定の態様において、荷電残基は全て、酸性pH(例えば、pH 6またはそれより低い)で陽電荷を運ぶHisまたはその誘導体もしくは類似体である。一定の態様において、ペプチドは、HHとFFの交互の反復を含む。一定の態様において、ペプチドは、一つまたは双方の末端においてアミノ酸配列KLLK(SEQ ID NO:166)を含む。一定の態様において、一つまたは双方の末端におけるKLLK(SEQ ID NO:166)は、リンカー(例えば、GAT、SEQ ID NO:167)によって前記末端と接続される。一定の態様において、ペプチドは、アミノ酸配列

を含む。酸で活性化される例示的なAMPには、

が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0012】
一定の態様において、本発明は、殺傷ライブラリ#7のAMPを提供する。そのようなペプチドには、

が含まれる。
【0013】
一定の態様において、本発明は、β欠失ライブラリAMPを提供する。
そのようなペプチドには、

が含まれる。
【0014】
一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドは、第二の抗菌ペプチド(AMP)に付着して、それによって複合抗菌ペプチド(compound antimicrobial peptide)を形成する。二つのペプチドは、直接もしくはリンカーを通して化学的に結合させることができ、またはペプチドリンカーを伴って、もしくはペプチドリンカーを伴わずに融合タンパク質として発現させる(もしくは合成する)ことができる。一定の態様において、第二の抗菌ペプチドは、nが1〜5の範囲でありかつ0.1単位ずつ増加することができ;H1、H2、H3、H4、およびH5が、独立して選択される疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸であり;かつC1、C2、C3、C4、およびC5が、独立して選択される中性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、もしくは陰性荷電アミノ酸である、以下のアミノ酸モチーフまたは以下のアミノ酸モチーフの円順列

を含むペプチドであるか;あるいは二つを除く全てのアミノ酸が、ArgもしくはTrp、またはその誘導体もしくは類似体であり;ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸が、LysもしくはPhe、またはその誘導体もしくは類似体であり;かつN末端残基がArgまたはその誘導体もしくは類似体である、7個の連続したアミノ酸を含むペプチドである。一定の態様において、第二の抗菌ペプチドは、表6、表10、表11、または表12に記載されるペプチドである。
【0015】
一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドまたは複合AMPはさらに、カルボキシル末端において遊離アミン(例えば、アルギニンもしくはリジンによって、またはアミド化された非陽イオン性残基によって提供される)を含む。一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドまたは複合AMPはPEG化されている。一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドまたは複合AMPは、一つまたは複数の保護基(例えば、アセチル、アミド、および炭素3〜20個のアルキル基、Fmoc、Tboc、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボン酸基(carboxylic group)、9-フロレンカルボン酸基、9-フルオレノン-1-カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4-メチルトリチル(Mtt)、4-メトキシトリチル(Mmt)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、4-メチルベンジル(MeBzl)、4-メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)、1-(4,4-ジメンチル-2,6-ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、t-ブトキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t-ブトキシメチル(Bum)、t-ブトキシ(tBuO)、t-ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)等)を有する。一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドまたは複合AMPは、天然に存在する全てのアミノ酸を含む。一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドは、一つまたは複数の「D」アミノ酸および/または一つまたは複数のβアミノ酸を含む。一定の態様において、本明細書において記述される任意のペプチドまたは複合AMPは、検出可能な標識(例えば、酵素標識、蛍光標識、比色分析用標識(colorimetric label)、スピン標識、放射性標識等)によって標識されている。
【0016】
同様に、本明細書において記述される抗菌ペプチドまたは複合AMPの任意の一つまたは複数と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的製剤が提供される。一定の態様において、製剤は単位投与製剤である。一定の態様において、賦形剤は口腔粘膜への投与に関して許容される。
【0017】
一定の態様において、本発明は、本明細書において記述される抗菌ペプチドまたは複合AMPの任意の一つまたは複数を含む、ヘルスケア製品、例えば家庭、旅行、仕事、歯科診療所、病院等において用いるための処方製品または一般用製品を提供し、ここで、前記抗菌ペプチドおよび/または複合AMPは、練り歯磨き、マウスウォッシュ、歯の美白用細片もしくは溶液、コンタクトレンズの保存、湿潤、もしくは洗浄用溶液、デンタルフロス、つまようじ、歯ブラシの毛(toothbrush bristle)、口腔スプレー、口腔ロゼンジ、鼻内スプレー、口腔および/または鼻内適用のためのエアロゾル化器(aerosolizer)、および創傷包帯からなる群より選択される製品に含まれる。
【0018】
同様に、細菌(または他の病原体)の生育および/または増殖を抑制する方法も提供される。方法は典型的には、細菌または他の病原体に、本明細書において記述される抗菌ペプチドおよび/または複合AMPの一つまたは複数を、細菌または他の病原体の生育および/または増殖を抑制するのに十分な量で接触させる段階を伴う。一定の態様において、量は、細菌を死滅させるのに十分な量である。一定の態様において、細菌はグラム陽性菌である。一定の態様において、細菌は、グラム陽性口腔細菌(例えば、連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.))である。一定の態様において、接触させる段階は、粘膜表面(例えば、口腔粘膜、鼻粘膜等)に接触させることを含む。
【0019】
虫歯の形成を抑制するための方法も同様に提供される。方法は典型的には、歯および/または口腔粘膜に、本明細書において記述される抗菌ペプチドおよび/または複合AMPの一つまたは複数を、ミュータンス連鎖球菌の生育および/または増殖を抑制するのに十分な量で接触させる段階を含む。一定の態様において、接触させる段階は、練り歯磨き、マウスウォッシュ、美白用細片または溶液、ロゼンジ、エアロゾル、および綿棒からなる群より選択される組成物を歯および/または口腔粘膜に接触させることを含む。
【0020】
一定の態様において、本発明のペプチドおよび/または本明細書における一般式は、ペプチド

を明白に除外する。
【0021】
定義
本明細書において用いられる「ペプチド」という用語は、典型的には2〜約50残基の長さの範囲のアミノ酸残基のポリマーを指す。一定の態様において、ペプチドは約2、3、4、5、7、9、10、または11残基〜約50、45、40、45、30、25、20、または15残基の長さの範囲である。一定の態様において、ペプチドは、約8、9、10、11、または12残基〜約15、20、または25残基の長さの範囲である。一定の態様において、ペプチドを含むアミノ酸残基は「L型」アミノ酸残基であるが、様々な態様において、「D」アミノ酸をペプチドに組み入れることができると認識される。ペプチドにはまた、天然に存在するアミノ酸ポリマーのみならず、一つまたは複数のアミノ酸残基が、天然のアミノ酸に対応する人工の化学類似体である、アミノ酸ポリマーも含まれる。さらに、この用語は、ペプチド連結または他の「改変された連結(modified linkage)」(例えば、ペプチド結合がαエステル、βエステル、チオアミド、ホスホンアミド、カルボメート(carbomate)、ヒドロキシレート等によって置き換えられている場合(例えば、Spatola, (1983) Chem. Biochem. Amino Acids and Proteins 7:267-357を参照されたい)、アミドが飽和アミンによって置き換えられている場合(例えば、参照により本明細書に組み入れられるSkiles et al.、米国特許第4,496,542号、およびKaltenbronn et al., (1990) Pp. 969-970 in Proc. 11th American Peptide Symposium, ESCOM Science Publishers, The Netherlands等を参照されたい))によって接続されたアミノ酸にも適用される。
【0022】
本明細書において用いられるように、「残基」という用語は、天然、合成、または修飾アミノ酸を指す。様々なアミノ酸類似体には、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン(β-アミノプロピオン酸)、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2'-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、n-エチルグリシン、n-エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、n-メチルグリシン、サルコシン、n-メチルイソロイシン、6-n-メチルリジン、n-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。これらの修飾アミノ酸は例証であって、限定であるとは意図されない。
【0023】
「βペプチド」は、α炭素(標準的な20個の生物学的アミノ酸の場合のように)よりむしろβ炭素に結合したアミノ基を有する「βアミノ酸」を含む。唯一の一般的に天然に存在するβアミノ酸はβ-アラニンである。
【0024】
ペプトイド、またはN-置換グリシンは、ペプチド模倣体の特定のサブクラスである。それらは、その天然のペプチド相当物(counterpart)に密接に関連するが、その側鎖がα炭素(天然のアミノ酸の場合のように)よりむしろ分子の骨格に沿って窒素原子に付属するという点において化学的に異なる。
【0025】
本明細書においてペプチドに適用される「従来の」および「天然の」という用語は、天然に存在するアミノ酸

のみで構築されるペプチドを指す。本発明の化合物は、それが天然に存在するペプチドの生物活性および/または特異性に関連する生物活性(例えば、抗菌活性)を誘発すれば、天然ペプチドに「対応する」。誘発された活性は、天然のペプチドの活性と同じ、それより大きい、またはそれより小さくてもよい。一般的にそのようなペプトイドは、N-置換グリシン誘導体が、親水性、疎水性、極性等において当初のアミノ酸と類似している場合に、天然のアミノ酸がN-置換グリシン誘導体によって置き換えられている、本質的に対応するモノマー配列を有すると考えられる。このように、例えば、以下のペプチド対は、「対応する」と見なされると考えられる:

。これらの例において、「Val*」は、N-(プロパ-2-イル)グリシンを指し、「Phe*」は、N-ベンジルグリシンを指し、「Ser*」は、N-(2-ヒドロキシエチル)グリシンを指し、「Leu*」は、N-(2-メチルプロパ-1-イル)グリシンを指し、および「Ile*」は、N-(1-メチルプロパ-1-イル)グリシンを指す。対応は正確である必要はない:例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)グリシンを、Ser、Thr、Cys、およびMetの代わりに用いてもよく;N-(2-メチルプロパ-1-イル)グリシンを、Val、Leu、およびIleの代わりに用いてもよい。上記のIIIaおよびIIIbにおいて、Ser*は、構造的な差にもかかわらず、ThrおよびSerを置換するために用いられることに注意されたい:Ser*における側鎖は、Serの側鎖より長い一つのメチレン基であり、ヒドロキシ置換部位におけるThrとは異なる。一般的に、任意の極性アミノ酸を置換するためにN-ヒドロキシアルキル置換グリシン、任意の芳香族アミノ酸(例えば、Phe、Trp等)に取って代わるためにN-ベンジルまたはN-アラルキル置換グリシン、任意の非極性アミノ酸(例えば、Leu、Val、Ile等)に取って代わるためにN-ブチルグリシンなどのN-アルキル置換グリシン、および任意の塩基性極性アミノ酸(例えば、LysおよびArg)に取って代わるためにN-(アミノアルキル)グリシン誘導体を用いてもよい。
【0026】
「複合抗菌ペプチド」または「複合AMP」は、共に接続している二つまたはそれより多いAMPを含む構築物を指す。AMPは直接またはリンカーを通して接続させることができる。それらは、化学的に結合させることができ、または直接接続している場合もしくはペプチドリンカーを通して接続している場合には、融合タンパク質を含みうる。
【0027】
一定の態様において、本明細書において記述される任意の配列を含むアミノ酸の保存的置換が企図される。様々な態様において、異なる残基1個、2個、3個、4個、または5個が置換される。「保存的置換」という用語は、分子の活性(例えば、抗菌活性および/または特異性)を実質的に変更しないアミノ酸置換を反映するために用いられる。典型的に、保存的アミノ酸置換は、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を有するもう一つのアミノ酸の代わりに一つのアミノ酸を用いることを伴う。以下の6群はそれぞれ、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0028】
一定の態様において、本明細書において記述される任意の配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%または90%、より好ましくは少なくとも95%または98%の配列同一性を妥協する(compromising)抗菌ペプチドも同様に企図される。「同一」または「同一」のパーセント(%)という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いて測定して、または肉眼的検分によって、最大に一致するように比較および整列させた場合に、同じである、または同じであるアミノ酸残基の明記された百分率を有する二つまたはそれより多い配列を指す。本発明のペプチドに関して、配列同一性は、ペプチドの完全長にわたって決定される。配列比較に関して、典型的には一つの配列は、それに対して試験配列を比較する参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピューターに入力して、必要であれば小配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較して試験配列に関する配列同一性(%)を計算する。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 85:2444の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実践(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または肉眼的検分によって行うことができる。
【0029】
ペプチドの抗菌活性に関して用いる場合の「特異性」という用語は、ペプチドが、他の関連種と比較した場合に特定の微生物種の生育および/または増殖を優先的に抑制する、および/または特定の微生物種を死滅させることを示す。一定の態様において、優先的な抑制または殺傷は、標的種に関して少なくとも10%大きい(例えば、LD50が10%低い)、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、または50%大きい、より好ましくは少なくとも2倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍大きい。
【0030】
本明細書において用いられる状態を「処置する」または「処置」は、状態を予防する、状態の発生の開始もしくは速度を遅くする、状態を発生するリスクを低減する、状態に関連する症状の発生を予防もしくは遅らせる、状態に関連する症状を低減するもしくは終わらせる、状態の完全もしくは部分的後退を生成する、またはそのいくつかの組み合わせを指してもよい。
【0031】
本明細書において用いられるように抗菌ペプチド(AMP)またはAMPモチーフに関連して用いる場合の「本質的にからなる」という用語は、ペプチドもしくはライブラリによって包含されるペプチド、またはその変種、類似体、もしくは誘導体が、参照されるペプチドと実質的に同じまたはそれより大きい抗菌活性および/または特異性を保有することを示す。一定の態様において、実質的に同じまたはそれより大きい抗菌活性は、特定の細菌種(例えば、ミュータンス連鎖球菌)に対して参照ペプチドの抗菌活性の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%を示す。
【0032】
様々な態様において、表1において示されるアミノ酸の略記を本明細書において用いる。
【0033】
(表1)アミノ酸の略記

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリからの代表的なペプチドに関するαヘリックスのホイール状の突起を示す。残基に、N末端からC末端まで連続的に番号をつけ、疎水性残基には影を付ける。
【図2】図2Aおよび2Bは、バイナリ-αヘリックスおよびバイナリ-RWの融合ペプチドの比較殺傷動態を図示する。ミュータンス連鎖球菌に、25μg/mlのバイナリ-αヘリックス融合ペプチド(図2A)またはバイナリ-RW融合ペプチド(図2B)または親AMPを負荷(challenge)して、添加後の様々な時点で生存CFUを播種した。0分目での試料は、ペプチド処置の前に播種した。データ点は全て、少なくとも3回の独立した実験結果の平均値±標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
様々な態様において、本発明は、抗菌活性を有する新規ペプチドの発見に関する。一定の態様において、ペプチドは、ミュータンス連鎖球菌、および一定の他の種(例えば、真菌[例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)等]、グラム陰性菌[例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等]、およびグラム陽性菌[例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Straphylococcus aureus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)等])を死滅させる、および/またはそれらの生育および/または増殖を抑制するのに有効である。
【0036】
ミュータンス連鎖球菌は、口腔において見いだされる病原体であり、かつ虫歯の形成に関与する主要な原因因子であり、これは世界中で最も流行して費用のかかる細菌感染症の一つである(例えば、National Institutes of Health (2000) Oral health in America: a report of the Surgeon General, Department of Health and Human Services, National Institute of Dental and Craniofacial Research, National Institutes of Health, Bethesda, MD; Washington State Department of Health (2002) Infectious Diseases - Dental Caries, Washington State Department of Health, Olympia, WA;Loesche (1986) Microbial Rev., 50:353-380;Anderson and Shi (2006) Pediatr. Dent. 28:151-153; discussion 192-198等を参照されたい)。米国において、特に恵まれない人々およびマイノリティ集団における虫歯処置の高い財政的負担と共に、口腔連鎖球菌(ミュータンス連鎖球菌が含まれる)が心疾患などのより重篤な臨床的結末に直接関与する可能性がある(Doyuk et al. (2002) J. Infect 45:39-41;Nakano et al. (2006) J. Clin. Microbiol., 44:3313-3317)ことを示す証拠は、この病原体に対するさらなる治療薬を開発する重要性を強調する。
【0037】
本発明の抗菌ペプチド(AMP)は、多数の状況において有用である。例えば、ペプチドは、ミュータンス連鎖球菌および他の株または種を含む感染症を抑制または消失させるために全身または局所投与されうる。一定の態様において、抗菌ペプチドを様々なヘルスケア製品にも同様に組み入れることができる。例えば、口腔の細菌定着または再定着を低減または予防して、それによって、虫歯形成の発生率および/または程度を低減するために、ペプチドを練り歯磨きまたはマウスウォッシュに組み入れることができる。様々な態様において、AMPを類似の目的のためにデンタルフロスに組み入れることができ、または歯および口腔粘膜を拭うために用いられる綿棒において提供することができる。
【0038】
一定の態様において、細菌定着および/または製品の分解を抑制するために、保存剤の成分としてAMPを製品に組み入れることができる。
【0039】
これらの用途は例証であって、限定であるとは意図されない。本明細書において提供される開示を用いて、当業者は、ペプチドを、表面上での微生物の生育を妨げるような物質表面の処理が含まれるがこれらに限定されるわけではない用途のために、抗菌調製物における活性成分として、ヒトの食事および動物飼料における添加剤として、衛生ケア製品、消毒剤、洗浄剤、殺生物剤等として用いることができることを認識するものと考えられる。
【0040】
I.抗菌ペプチド
ランダムペプチドの大きい組み合わせライブラリの合成を回避するために、いくつかの小さい構造的に多様なペプチドライブラリを合理的に設計した後、これらのライブラリをミュータンス連鎖球菌殺傷能に関してスクリーニングすることによって、抗ミュータンス連鎖球菌活性を有する合成ペプチドを産生した。一定の態様において、それぞれのライブラリは、規定の大きさおよび構造フレームワークのペプチドに限定され、それぞれのライブラリ内の配列を、多様な生化学特徴を有するペプチドを生成するために増加するように多様化した。これらの特徴には、芳香族疎水性残基含有量、正味の陽電荷、および予測される両親媒性αヘリックス形成特徴が含まれた。いくつかの活性な両親媒性配列から残基を系統的に欠失させることによって一つのライブラリを構築した(例えば、実施例4を参照されたい)。もう一つのライブラリは、ヒスチジン(His)を置換することによって作製した。酸で活性化されるこれらのペプチドは、pH 6.0未満で活性となるように設計された(例えば、実施例2を参照されたい)。
【0041】
抗ミュータンス連鎖球菌特徴を示すペプチドの有効性をさらに改善するために、各ライブラリからの最も殺菌性のペプチドを、様々な組み合わせで一つの分子として、各抗菌領域の間に可動性(flexible)ペプチドリンカーを伴うおよび伴わずに合成して、融合ペプチドを生成した。これらの融合ペプチドの多くは、当初の非連接分子(non-conjoined molecule)と比較して増強された殺傷活性を有した。
【0042】
したがって、本明細書において提示される結果は、新規抗菌ペプチドおよび小さい合理的に設計されたライブラリを用いてさらなる抗菌ペプチドを同定する新規方法を提供する。興味深いことに、本研究に由来する最も活性が強いペプチドは、いくつかのグラム陽性口腔内細菌に対して選択的であるように見える。ミュータンス連鎖球菌は通常、インビボでバイオフィルム状態で生育することから、本発明者らは、本明細書において記述されるペプチドが、インビトロでスライドガラス上で生育したミュータンス連鎖球菌のバイオフィルムに対して活性を有することも発見するように迫られた(データは示していない)。
【0043】
例示的なペプチドを表6に示す(バイナリライブラリ、αヘリックスライブラリおよびRWライブラリ)。様々な態様において、本発明は、ペプチドのコンカテマー(例えば以下の式Iに示されるように、全体または画分)、ならびに直接接続された、ペプチドリンカーを通して接続された、または化学的に結合された二つのペプチドを含むキメラを企図する。
【0044】
一定の態様(例えば、バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリ)において、抗菌ペプチドは、式Iのアミノ酸モチーフまたはアミノ酸モチーフの円順列を含む:

式中、nは1〜5の範囲でありかつ0.1単位ずつ増加することができ;H1、H2、H3、H4、およびH5は、独立して選択される疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸であり;C1、C2、C3、C4、およびC5は、独立して選択される陽性荷電アミノ酸または陰性荷電アミノ酸であり、および/または一定の態様において中性アミノ酸であり;ならびに前記ペプチドは培養においてミュータンス連鎖球菌を死滅させる、またはその生育および/または増殖を抑制するのに有効である。一定の態様において、前記ペプチドはαヘリックスを形成する。一定の態様において、前記ペプチドは、アミノ酸配列

を除外する。
【0045】
式Iにおいて、nは、モチーフが部分的に反復される可能性があることを認識するために0.1単位ずつ増加するように表される。これを表2において説明する。
【0046】
(表2)nが0.1ずつ増加するとモチーフがどのように部分的に反復されるかの例示

【0047】
HまたはC残基の上付き文字は、新しい残基が付加される(nが増加する)毎に増加して、新しい疎水性残基(H)が他の疎水性残基から独立して選択されること、および新しい荷電残基または中性残基(C)が他の荷電残基または中性残基から独立して選択されることを示している。
【0048】
一定の態様において、本発明は、式Iによって包含されるペプチドの円順列を企図する。モチーフの円順列は単純に、モチーフが任意の残基で始まりうることを示している。これは、モチーフの二つの端部を接続させて(アミノ末端をカルボキシル末端に接続させる)、環状化ペプチドを異なる位置で開環することと同等である。当然のこととして、円順列ペプチドはこのようにして作製される必要はなく、単に円順列ペプチドは、この操作によって産生された配列またはモチーフと同等のアミノ酸配列またはモチーフを有するにすぎない。
【0049】
表3は式Iの様々な円順列を例示する。
【0050】
(表3)式Iの例示的な円順列(CP)

【0051】
一定の態様において、非荷電S、T、Y;陽性K、R、H;または陰性N、Q、D、E残基を利用することによって、Cの位置で電荷が多様化される。一定の態様において、疎水性の多様性は、L、I、V、W、およびFアミノ酸を用いることによって制御される。
【0052】
一定の態様において、表6において示されるバイナリライブラリペプチドには、nが1.1である式Iに従うペプチドが含まれ、一方、αヘリックスライブラリペプチドには、nが1.4である式Iに従うペプチドが含まれる。
【0053】
同様に、RWライブラリペプチドが提供される(例えば、表6を参照されたい)。様々な態様において、RWライブラリペプチドは、アミノ酸7、8、9、10、または11個のペプチドであり、そのうちのアミノ酸2個を除く全てが、任意の組み合わせで配置されたArg(R)またはTrp(W)(またはその類似体もしくは誘導体)である。ArgでもTrpでもない非RW残基は、LysもしくはPhe、またはその誘導体もしくは類似体である。一定の態様において、ペプチドは、アミノ酸2個を除く全てが(任意の組み合わせで配置された)ArgまたはTrpである7残基ペプチドである。ArgでもTrpでもない二つの残基は、LysもしくはPhe、またはその類似体もしくは誘導体である。様々な態様において、RWライブラリペプチドのN末端残基は、アルギニンである。
【0054】
一定の態様において、本発明のペプチドには、酸で活性化されるペプチド(例えば、実施例2を参照されたい)、殺傷ライブラリ#7のペプチド(例えば、実施例3を参照されたい)、およびβ欠失ライブラリ(例えば、実施例4を参照されたい)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。殺傷ライブラリ#7およびβ欠失ライブラリ内のペプチドは、上記と類似の、疎水性および荷電アミノ酸の交互のクラスタの配列フレームワークから構築された。殺傷ライブラリ#7に関して、アミノ酸の最大数は、一定の態様において、C末端がアミド化されている場合には9に限定された(例えば、表11を参照されたい)。β欠失ライブラリ(例えば、表12を参照されたい)に関して、本発明者らは、配列の大きさを15残基から7残基まで多様化したが、全ての配列は、同等の両親媒性および疎水性特徴に限定された(データは示していない)。
【0055】
ヒスチジン残基は、6.0に近い側鎖pKaを有し、したがってpH 6.0およびそれ未満で陽電荷を運ぶが中性pHでは陽電荷を運ばない。本発明者らは、この特徴を考慮に入れて、ペプチドはpH 6.0より上では不活性のままであるが、両親媒性でヘリックス形成性の配置(抗ミュータンス連鎖球菌活性に至る)によって低pH環境(う食病変においてミュータンス連鎖球菌により作り出される環境など)がもたらされるように、酸活性化ライブラリを構築した。42。したがって、一定の態様において、活性な抗菌ペプチドは、荷電残基の大部分が、酸性pHで陽電荷を運ぶHisまたはその類似体もしくは誘導体である、アミノ酸約7〜約11個の長さの範囲の、酸で活性化される両親媒性ヘリックスペプチドを含む。ペプチドは典型的には、中性pHでほとんどまたは実質的に全く抗菌活性(例えばミュータンス連鎖球菌に対して)を有しないが、酸性pH(例えば、約pH 6もしくはそれより低い、例えば約pH1.4〜約6、約pH 2、約pH 3、約pH 4、もしくは約pH 5〜約pH 6、または約pH 6.5)で抗菌活性(例えばミュータンス連鎖球菌に対して)を有する。一定の態様において、これらのペプチドにおける全ての荷電残基は、陰性pHで陽電荷を運ぶHisまたはその誘導体もしくは類似体である。酸で活性化される一定のペプチドは、HHとFFの交互の反復単位を含む。一定の態様において、ペプチドはさらに、一つまたは双方の末端におけるアミノ酸配列KLLK(SEQ ID NO:166)またはその保存的置換を含む。一定の態様において、ペプチドはさらに、KLLK(SEQ ID NO:166)がリンカー(例えば、GAT(SEQ ID NO:167))によって末端と接続している、一つまたは双方の末端におけるアミノ酸配列KLLK(SEQ ID NO:166)またはその保存的置換を含む。酸で活性化される様々なペプチドは、アミノ酸配列

を含む。酸で活性化される多数のAMPを実施例2において例示する(例えば、表10を参照されたい)。
【0056】
様々な態様において、本明細書において記述される任意のペプチドは、天然に存在するアミノ酸、または天然に存在するアミノ酸の誘導体および類似体が含まれる天然に存在しないアミノ酸を含みうる。さらに、様々なペプチドには、L型アミノ酸、D型アミノ酸、および/またはβアミノ酸が含まれる。
【0057】
同様に、本明細書において明白に例示されるD型、L型、およびβペプチド配列のほかに、本発明はまた、これらのペプチドのそれぞれのレトロ(retro)型およびレトロインベルソ(retro-inverso)型を企図することが認識されると考えられる。レトロ型では、配列の方向が逆転する。インバース型では、構成要素アミノ酸のキラリティが逆転する(すなわち、L型アミノ酸はD型アミノ酸となり、D型アミノ酸はL型アミノ酸となる)。レトロインベルソ型では、アミノ酸の順序およびキラリティの双方が逆転する。このように、例えば、ペプチド

のレトロ型は、配列

を有する。B-36ペプチドが全てのLアミノ酸を含む場合、インバース型は、全てDアミノ酸を含み、レトロインベルソ(レトロインバース)型は、全てD型アミノ酸を含むSEQ ID NO:28の配列を有する。
【0058】
様々な態様において、本明細書において記述される任意のペプチドは、一つまたは複数の保護基を有することができる。このように、例えば、カルボキシル末端をアミド化することができる。様々な態様において、一定の末端および/または側鎖は一つまたは複数のブロッキング基を持つ。C末端、N末端、および/または内部残基を本明細書において記述される一つまたは複数のブロッキング基によってブロックすることができる。
【0059】
多数の保護基がこの目的のために適している。そのような基には、アセチル、アミド、およびアルキル基が含まれるがこれらに限定されるわけではなく、アセチルおよびアルキル基は特にN末端の保護にとって好ましく、アミド基はカルボキシル末端の保護にとって好ましい。一定の態様において、保護基には、脂肪酸、プロペオニル、ホルミル等におけるアルキル鎖が含まれるがこれらに限定されるわけではない。一定の好ましいカルボキシル保護基には、アミド、エステル、およびエーテル形成保護基が含まれるがこれらに限定されるわけではない。一つの態様において、アセチル基を用いてアミノ末端を保護することができ、アミド基を用いてカルボキシル末端を保護することができる。これらのブロッキング基は、ペプチドのヘリックス形成傾向を増強する。一定の特に好ましいブロッキング基には、様々な長さのアルキル基、例えば式CH3-(CH2)n-CO-を有する基が含まれ、式中nは約1〜約20の範囲であり、好ましくは約1〜約16または18であり、より好ましくは約3〜約13、および最も好ましくは約3〜約10の範囲である。
【0060】
他の適した保護基には、Fmoc、t-ブトキシカルボニル(t-BOC)、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボン酸基、9-フロレンカルボン酸基、9-フルオレノン-1-カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4-メチルトリチル(Mtt)、4-メトキシトリチル(Mmt)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、4-メチルベンジル(MeBzl)、4-メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)、1-(4,4-ジメンチル-2,6-ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t-ブトキシメチル(Bum)、t-ブトキシ(tBuO)、t-ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0061】
保護/ブロッキング基は、本発明のペプチドを含む適切な残基にそのような基を結合させる方法と同様に、当業者に周知である(例えば、Greene et al., (1991) Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley & Sons, Inc. Somerset, N.J.を参照されたい)。一つの態様において、例えば、ペプチドが無水酢酸を用いる樹脂上に存在する場合、アセチル化が合成の際に行われる。アミドの保護は、合成にとって適当な樹脂を選択することによって達成されうる。例えば、本明細書において記述されるペプチドの合成は、固相支持体上でリンクアミド樹脂を用いて行うことができる。合成完了後、AspおよびGluなどの酸性の二官能アミノ酸、ならびに塩基性アミノ酸Lysにおける半永続的な保護基、Tyrのヒドロキシルを同時に除去することができる。酸性処置を用いてそのような樹脂から放出されたペプチドは、N末端がアセチルとして保護されて、カルボキシルがNH2として保護されて、および他の保護基の全てが同時に除去されて溶出される。
【0062】
様々な態様において、本発明はまた、本発明の様々な保護された、または保護されないL型ペプチド、D型ペプチド、βペプチド、レトロペプチド、インバースペプチド、および/またはレトロインベルソペプチドのPEG型も企図する。PEG化は、ペプチドの生物学的適合性を改善するために、および/または血清半減期を改善するために用いることができる。ペプチドをPEG化する方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第7,256,258号、第6,552,170号、および第6,420,339号、ならびにその中で引用されている参考文献を参照されたい)。
【0063】
バイナリの場合、本明細書において記述される殺傷ペプチド#7、β欠失、およびαヘリックスライブラリの結果は、最大のミュータンス連鎖球菌活性が、高い相対的疎水性と+3より大きい正味の陽電荷の双方を有するペプチドにおいて起こることを示した。その特性がいずれか一つの形質によって支配されるペプチドの場合、中間レベルの活性が観察された。これらの結果は、陽イオン性の両親媒性特徴を有するほとんどの合成および天然のAMPに関して公知である結果と一貫し、これらのライブラリにおけるB-33、α-7、および他の活性な配列が、他のAMPと類似のように挙動する可能性があることを示唆しており;すなわち両親媒性は、膜の相互作用、ヘリックス遷移、および細胞殺傷を促進するが、ペプチドの陽電荷は、陰イオン性の細菌膜に対するAMPの誘引を提供する(Hancock and Lehrer (1998) Trends Biotechnol., 16:82-88;Shai (1999) Biochim Biophys Acta 1462:55-70)。これらの結果はまた、高い<ヘリックス>値が、それ自身、陽イオン性の両親媒性AMPに関する抗ミュータンス連鎖球菌活性の増加に相関しない可能性があることを示している。しかし、pH 6.0では、酸活性化ライブラリ内のいくつかのペプチドは、強い両親媒性のヘリックス形成特徴を有し、これは増加した相対的His含有量およびミュータンス連鎖球菌に対する活性と相関するように見える。
【0064】
RWライブラリの場合、バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリの場合と同様に、ほとんどの疎水性および陽イオン性配列は、最も活性であった(2C-3、2C-4)。他のライブラリにおけるペプチドと比較して長さおよび周期性の差にもかかわらず、RWペプチドは、初回のペプチド結合または膜挿入における改善から、増強された活性を獲得することができる。特定の理論に拘束されないが、ArgおよびTrpに富むペプチドはその低い<ヘリックス>値にもかかわらず、膜の相互作用によって安定なヘリックス様の両親媒性の配置を形成すると考えられ、これはTrpのH電子とArg官能基の間の静電気的結合によって安定化される(例えば、Mecozzi et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:10566-10571;Jing et al. (2003) J. Pept. Res. 61:219-229を参照されたい)。このように、RWライブラリペプチドの独自の配列特性によって、それらは抗菌活性に対して非常に助けとなる二次構造を得ることができる。
【0065】
様々な態様において、本発明は、直接接続するまたはリンカー(例えば、ペプチドリンカー、または他のリンカー)を通して接続する本発明の二つまたはそれより多い異なるペプチドの組み合わせを含むコンカテマーを企図する。このように、化学結合体が、融合タンパク質と共に企図される。本明細書において提供されるこれらの結果は、融合ペプチド、すなわち一つの直線状分子として合成されるAMPダイナー(dinner)が、しばしばその親ペプチドと比較して殺傷動態を増加させたことを示している。いくつかの融合ペプチドは、束状のAMPに関して記述されているように、膜表面で1分子あたりのヘリックス形成単位の数を増加させることによって機能する可能性がある(例えば、Sal-Man et al. (2002) Biochemistry 41:11921-11930を参照されたい)。さらに、他の研究は、両親媒性および推定のヘリックス形成AMPがN末端付加をより認容するようであることを証明しているが(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:3833-3838;Szynol et al. (2006) Chem Biol Drug Des 67:425-431)、本明細書において提示される結果は、構成要素の配置の効果(融合ペプチドサブユニットがCまたはN末端に置かれる)は、(FBα-12およびFB§-20のMICと比較して)予測することが難しい可能性があることを示唆している。
【0066】
全体的に、本明細書において提供される結果は、本明細書において提供される方法を用いてライブラリから容易に単離することができる比較的高い疎水性および陽電荷を有するAMPに対して、ミュータンス連鎖球菌が感受性があることを示している。さらに、これらのライブラリ内のおよびライブラリ間で活性な配列を連接することによって構築された融合ペプチドは、これらのペプチドの殺傷動態を改善する。
【0067】
本明細書において提供されるAMPは、たとえ感染症が抗生物質耐性株によって引き起こされる場合であっても、通常、無菌的な粘膜表面での微生物感染症に対して有効であると考えられている。AMPは、任意の数の従来の方法によって局所に送達されうる。または、それらは例えば経口投与または注射によって全身に送達されうる。本明細書において提供される合理的に設計されたAMPは低分子であり(ほとんどがアミノ酸20個未満)、したがって、有意により長く(アミノ酸30〜40個)構築および精製することがより難しい他の合成AMPと比べて、改善した高い収率で容易に化学合成される。提供されるAMPはまた、例えばD異性体アミノ酸を組み入れること、PEG化すること、および天然に存在しないアミノ酸を用いること等によって、プロテアーゼ耐性に関して容易に調整することができる。
【0068】
II.ペプチドの調製
ペプチドの調製
本発明において用いられるペプチドは、標準的な化学ペプチド合成技術を用いて化学合成することができ、または特にペプチドが「D」アミノ酸残基を含まない場合には、ペプチドを組換えによって発現させることができる。「D」ポリペプチドが、組換えによって発現される場合、宿主生物(例えば、細菌、植物、真菌細胞等)を、一つまたは複数のアミノ酸がD型のみで生物に提供される環境で培養されうる。次に、そのようなシステムにおいて組換えによって発現されたペプチドは、それらのDアミノ酸を組み入れる。
【0069】
一定の態様において、Dアミノ酸を認識する改変アミノアシル-tRNAシンテターゼを用いて、組換えによって発現されたペプチドにDアミノ酸を組み入れることができる。
【0070】
一定の態様において、ペプチドは、当業者に公知である多数の液相または固相ペプチド合成技術によって化学合成される。配列のC末端アミノ酸を不溶性の支持体に付着させた後、配列における残りのアミノ酸を連続的に付加する固相合成は、本発明のポリペプチドの化学合成にとって好ましい方法である。固相合成技術は当業者に周知であり、例えばBarany and Merrifield (1963) Solid-Phase Peptide Synthesis; pp. 3-284 in The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A.;Merrifield et al. (1963) J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2156、およびStewart et al. (1984) Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chem. Co., Rockford, Illによって記述されている。
【0071】
一つの態様において、ペプチドは、ベンズヒデリルアミン樹脂(Beckman Bioproducts、NH2 0.59 mmol/g樹脂)を固相支持体として用いる固相ペプチド合成法によって合成されうる。COOH末端アミノ酸(例えば、t-ブチルカルボニル-Phe)を、4-(オキシメチル)フェナセチル基を通して固相支持体に付着させる。これは、従来のベンジルエステル連結より安定な連結であるが、完成したペプチドはなおも水素添加によって切断されうる。水素供与体としてギ酸を用いる水素移動型還元をこの目的のために用いることができる。ペプチド合成および合成されたペプチドの分析に関する詳細なプロトコールは、Anantharamaiah et al. (1985) J. Biol. Chem., 260(16):10248-10255を伴うミニプリント補遺(miniprint supplement)において記述される。
【0072】
ペプチド、特にDアミノ酸を含むペプチドの化学合成において、合成は通常、望ましい完全長の産物のほかに多数の切断型ペプチドを産生する。このように、ペプチドは典型的には、例えばHPLCを用いて精製される。
【0073】
Dアミノ酸、βアミノ酸、非天然アミノ酸等を、化学合成において適切に誘導体化されたアミノ酸残基を単に用いることによって、ペプチドにおける一つまたは複数の位置に組み入れることができる。固相ペプチド合成のための修飾残基は、多数の供給元から市販されている(例えば、Advanced Chem Tech, Louisville;Nova Biochem, San Diego;Sigma, St Louis;Bachem California Inc., Torrance等を参照されたい)。D型および/またはそうでなければ修飾アミノ酸は、望ましければペプチドにおける任意の位置で完全に省略されてもまたは組み入れられてもよい。このように、例えば一定の態様において、ペプチドは1個の修飾アミノ酸を含みうるが、他の態様において、ペプチドは少なくとも2個、一般的に少なくとも3個、より一般的に少なくとも4個、最も一般的に少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、または全ての修飾アミノ酸さえ含む。一定の態様において、本質的にあらゆるアミノ酸がD型アミノ酸である。
【0074】
先に示したように、本発明のペプチドまたは融合タンパク質はまた、組換えによって発現させることもできる。
【0075】
一定の態様において、本発明の抗菌ペプチドは、組換え発現系を用いて合成される。一般的にこれは、望ましいペプチドまたは融合タンパク質をコードするDNA配列を作製すること、DNAを特定のプロモーターの制御下の発現カセットの中に位置付けること、ペプチドまたは融合タンパク質を宿主において発現させること、発現されたペプチドまたは融合タンパク質を単離すること、および必要であれば、ペプチドまたは融合タンパク質を再生することを伴う。
【0076】
本明細書において記述されるペプチドまたは融合タンパク質をコードするDNAは、例えば、適切な配列のクローニングおよび制限処理、または直接化学合成が含まれる、先に記述された任意の適した方法によって調製されうる。
【0077】
この核酸は、適切な発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)を含有する、および任意で一つまたは複数の選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含有する適切なベクターに容易にライゲーションされうる。
【0078】
本発明のペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配列は、大腸菌(E.coli)、他の細菌宿主、酵母、真菌、および昆虫細胞(例えば、SF3)、COS、CHO、およびHeLa細胞株ならびに骨髄腫細胞株などの様々な高等真核生物細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない、多様な宿主において発現させることができる。組換え型タンパク質遺伝子は典型的には、それぞれの宿主に関して適切な発現制御配列に機能的に連結されると考えられる。大腸菌の場合、これにはT7、trp、またはλプロモーターなどのプロモーター、リボソーム結合部位、および好ましくは転写終了シグナルが含まれうる。真核細胞の場合、制御配列にはプロモーター、しばしばエンハンサー(例えば、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルス等に由来するエンハンサー)およびポリアデニル化配列が含まれてもよく、かつスプライスドナーおよびアクセプター配列が含まれてもよい。
【0079】
本発明のプラスミドを、大腸菌のための塩化カルシウム形質転換、および哺乳動物細胞のためのリン酸カルシウム処置または電気穿孔などの周知の方法によって、選ばれた宿主細胞に移入することができる。プラスミドによって形質転換された細胞を、amp、gpt、neoおよびhyg遺伝子などのプラスミド上に含有される遺伝子によって付与される抗生物質に対する耐性によって選択することができる。
【0080】
発現された後、組換え型ペプチドまたは融合タンパク質を硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等が含まれる当技術分野において標準的な技法に従って精製することができる(一般的に、R. Scopes, (1982) Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y.;Deutscher (1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y.を参照されたい)。少なくとも約90〜95%均一である実質的に純粋な組成物が好ましく、98%〜99%またはそれより高い均一性が最も好ましい。
【0081】
当業者は、化学合成、生物学的発現、または精製の後、本発明のペプチドまたは融合タンパク質が、望ましい本来のコンフォメーションとは実質的に異なるコンフォメーションを保有してもよいことを認識するものと考えられる。この場合、ペプチドまたは融合タンパク質を変性および還元させ、次に分子を好ましいコンフォメーションにリフォールドさせることが必要である可能性がある。タンパク質を還元および変性させる方法、ならびにリフォールディングを誘導する方法は、当業者に周知である(例えば、Debinski et al. (1993) J. Biol. Chem., 268:14065-14070;Kreitman and Pastan (1993) Bioconjug. Chem., 4:581-585;およびBuchner, et al., (1992) Anal. Biochem., 205:263-270を参照されたい)。Debinski et al.は、例えばグアニジン-DTEにおける封入体タンパク質の変性および還元を記述している。次に、タンパク質を酸化グルタチオンおよびL-アルギニンを含有する酸化還元緩衝液においてリフォールドさせる。
【0082】
当業者は、ペプチドおよび/または融合タンパク質タンパク質に改変を行うことができ、それでもそれらの生物活性を減損させないことを認識するものと考えられる。ターゲティング分子のクローニング、発現、または融合タンパク質への取り込みを促進するために、いくつかの改変を行ってもよい。そのような改変は当業者に周知であり、これには例えば開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されたメチオニン、または都合よく位置する制限部位、終止コドン、もしくは精製配列を作製するためにいずれかの末端に置かれたさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)が含まれる。
【0083】
複合ペプチド調製物
一定の態様において、本発明は、共に接続している二つまたはそれより多い抗菌ペプチド(AMP)を含む「複合」抗菌ペプチドを用いることを企図する。ペプチドは、直接またはリンカーを通して接続させることができる。様々な態様において、AMPを化学的に結合させるか、またはそれらを直接連結させるもしくはペプチドリンカーを通して連結させる場合、複合AMPを融合タンパク質として発現させることができる。
【0084】
典型的に、複合AMPには、第二のAMPに付着させた、本明細書に記述の少なくとも一つのAMPが含まれると考えられる。第二のAMPは、本明細書において記述されるAMP、または当業者に公知の他のAMPでありうる。多数の異なるAMPが当業者に公知である(例えば、特定のAMPの開示に関して、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,271,239号、第7,223,840号、第7,176,276号、第6,809,181号、第6,699,689号、第6,420,116号、第6,358,921号、第6,316,594号、第6,235,973号、第6,183,992号、第6,143,498号、第6,042,848号、第6,040,291号、第5,936,063号、第5,830,993号、第5,428,016号、第5,424,396号、第5,032,574号、第4,623,733号を参照されたい)。
【0085】
一定の態様において、複合AMPは、互いに付着した本発明の二つまたはそれより多いAMPを含む。
【0086】
一つの態様において、AMPは、互いに化学的に結合される。分子を化学的に結合させる手段は当業者に周知である。ペプチドは典型的には、多様な官能基、例えばカルボン酸(COOH)または遊離アミン(-NH2)基を含有し、それらは適した官能基を互いに結合させる反応にとって利用可能である。
【0087】
または、さらに反応性の官能基を曝露または付着するように、ペプチドを誘導体化することができる。誘導体化は、Pierce Chemical Company, Rockford Illinoisから入手可能な分子などの多数の任意のリンカー分子の付着を伴いうる。
【0088】
本明細書において用いられるように、「リンカー」は、二つの分子を接続させるために用いられる分子である。リンカーは典型的には、双方の分子(例えば、AMP)に対して共有結合を形成することができる。適したリンカーが当業者に周知であり、これには直鎖もしくは分岐鎖炭素リンカー、複素環炭素リンカー、またはペプチドリンカーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。一定の態様において、リンカーは、その側鎖(例えば、システインに対するジスルフィド連結を通して)を通して構成要素アミノ酸に接続させることができる。しかし、一定の好ましい態様において、リンカーは、末端アミノ酸のアミノ基およびカルボキシル基のα炭素に接続されると考えられる。
【0089】
一つの分子(例えば、AMP)上の基と反応する一つの官能基と、他の分子(例えば、異なるAMP)上で反応性であるもう一つの基とを有する二官能リンカーを用いて、望ましい結合体を形成することができる。または、誘導体化は、官能基を提供するために行われる。このように、例えばペプチド上で遊離のスルフヒドリル基を生成するための技法も同様に公知である(米国特許第4,659,839号を参照されたい)。
【0090】
様々な分子をペプチドまたはタンパク質に付着させるための多くの技法およびリンカー分子が公知である(例えば、欧州特許出願第188,256号;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,699,784号;第4,680,338号;第4,569,789号;および第4,589,071号;ならびにBorlinghaus et al. (1987) Cancer Res. 47:4071-4075を参照されたい)。
【0091】
AMPを直接連結させるかまたはペプチドリンカーによって接続させる場合、それらは、標準的な化学ペプチド合成技術を用いて合成することができる。双方の成分が比較的短い場合、キメラ部分を一つの近接するポリペプチドとして合成することができる。または、分子を個別に合成した後、一つの分子のアミノ末端を他の分子のカルボキシル末端と縮合させ、それによってペプチド結合を形成することによって融合させることができる。または、AMPをそれぞれ、ペプチドスペーサー分子の一つの端部で縮合させて、それによって近接する融合タンパク質を形成することができる。
【0092】
一定の態様において、複合AMPは、組換えDNA手法を用いて融合タンパク質として合成される。一般的に、これは、融合タンパク質をコードするDNA配列を作製すること、特定のプロモーターの制御下の発現カセットの中にDNAを位置付けること、宿主においてタンパク質を発現させること、発現されたタンパク質を単離すること、および必要であればタンパク質を再生することを伴う。融合タンパク質を生成する方法は当業者に公知である。
【0093】
様々な態様において、ペプチドリンカーを用いてAMPのそれぞれを接続させる。様々な態様において、ペプチドリンカーは比較的短く、典型的にはアミノ酸約10個未満、好ましくはアミノ酸約8個未満、より好ましくはアミノ酸約3〜約5個である。適した例示的なリンカーには、PSGSP(SEQ ID NO:106)、ASASA(SEQ ID NO:107)、またはGGG(SEQ ID NO:108)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。一定の態様において、(GGGGS)3(SEQ ID NO:29)などのより長いリンカーを用いることができる。
【0094】
一定の態様において、本発明は、AMPの特異性を改善するために、本発明のAMPまたは複合AMPをターゲティング部分(例えば、細菌特異的ペプチドまたは抗体)に付着させることを企図する。例示的な抗体および/またはペプチドターゲティング部分は、例えば、米国特許出願公開第2004/0137482号として公開された米国特許出願第10/706,391号等において記述される。
【0095】
ターゲティング部分を、AMPもしくは複合AMPに化学的に結合させることができ、または例えば複合AMPの製作に関して先に説明したように、キメラ部分を融合タンパク質として発現させることができる。
【0096】
ペプチドの標識
様々な態様において、本明細書において記述される抗菌ペプチドおよび/または本明細書において記述される複合AMPは、検出可能な標識によって標識されている。本発明において用いるための適した検出可能な標識には、分光光度、光化学、生化学、免疫化学、電気、光学、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物が含まれる。本発明における有用な標識には、標識されたストレプトアビジン結合体による染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、量子ドット等、例えばMolecular Probes, Eugene, Oregon, USAを参照されたい)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般的に用いられる他の酵素)、および金コロイド(例えば、大きさが直径40〜80 nmの金粒子は高い効率で緑色の光を散乱する)、着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズなどの比色分析用標識が含まれるがこれらに限定されるわけではない。そのような標識を用いることを開示する特許には、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号が含まれる。
【0097】
一定の態様において、蛍光標識は、低いバックグラウンドで非常に強いシグナルを提供し、放射活性を必要としないことから、蛍光標識が好ましい。それらはまた、迅速な走査技法を通して高い解像度および感度で光学的に検出可能である。
【0098】
使用することができる適した色素原には、色を観察することができるように、または特定の波長もしくは波長範囲の放射線によって照射した場合に光を放出する、例えば蛍光を発するように、特有の波長範囲で光を吸収する分子および化合物が含まれる。
【0099】
望ましくは、蛍光標識は、約300 nmを上回る、好ましくは約350 nm、およびより好ましくは約400 nmを上回る光を吸収して、通常、吸収された光の波長より約10 nm高い波長で放射すべきである。結合した色素の吸収および放出特徴は、非結合色素とは異なりうることに注意すべきである。したがって、色素の様々な波長範囲および特徴を参照する場合、これは使用される色素を示し、任意の溶媒において結合されずに特徴付けされる色素を示すのではないと意図される。
【0100】
検出可能なシグナルはまた、化学発光および生物発光源によって提供されうる。化学発光源には、化学反応によって電子的に励起されるようになった後に、検出可能なシグナルとして役立つ、または蛍光アクセプターに対してエネルギーを供与する光を放出することができる化合物が含まれる。または、生物発光を提供するために、ルシフェリンをルシフェラーゼまたはルシゲニンと共に用いることができる。
【0101】
スピン標識は不対電子スピンを有するレポーター分子によって提供され、これを電子スピン共鳴(ESR)分光法によって検出することができる。例示的なスピン標識には、有機フリーラジカル、遷移金属錯体、特にバナジウム、銅、鉄、およびマンガン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。例示的なスピン標識には、酸化窒素フリーラジカルが含まれる。
【0102】
標識は、AMPに直接、またはリンカー部分を通して付着させることができる。一般的に、標識またはリンカー-標識付着部位は、どの特定の位置にも限定されない。例えば、標識をアミノ酸側鎖に付着させてもよく、または典型的にはペプチドの活性および/または特異性を妨害しない任意の位置で末端残基のアミノもしくはカルボキシル末端に付着させてもよい。
【0103】
蛍光標識は、一つの種の有機分子に限定されず、無機分子、有機および/または無機分子の多分子混合物、結晶、ヘテロポリマー等を含むことが認識されると考えられる。このように、例えばシリカシェルに封入されるCdSe-CdSコアシェルナノ結晶を、生物学的分子に結合するために容易に誘導体化することができる(Bruchez et al. (1998) Science, 281:2013-2016)。同様に、高度に蛍光性の量子ドット(硫化亜鉛でキャップしたセレン化カドミウム)は、超感受性生物学的検出において用いるために生体分子に共有結合的に結合されている(Warren and Nie (1998) Science, 281:2016-2018)。
【0104】
III.製剤
薬学的製剤
本発明の方法を行うために、一つまたは複数の活性物質(例えば、抗菌ペプチド(AMP)または本明細書において記述される複合抗菌ペプチド)を、それを必要とする哺乳動物に、例えば微生物感染症に罹病している哺乳動物に投与する、または微生物感染症を予防するためおよび/または虫歯の発生もしくは重症度を予防もしくは低減するために予防的に投与する。
【0105】
活性物質は、「本来の」型で投与することができ、または塩、エステル、アミド、プロドラッグ、もしくは誘導体が薬理学的に適している、すなわち本発明の方法において有効である限り、望ましければ塩、エステル、アミド、プロドラッグ、誘導体等の剤形で投与することができる。活性物質の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、および他の誘導体は、合成有機化学の当業者に公知の標準的な技法を用いて調製することができ、例えばMarch (1992) Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceによって記述される。
【0106】
そのような誘導体を製剤化する方法は、当業者に公知である。例えば、多くの送達物質のジスルフィド塩が、参照により本明細書に組み入れられるPCT出願公開WO 00/059863において記述される。同様に、治療ペプチド、ペプトイド、または他の模倣体の酸性塩を、適した酸との反応を典型的には伴う従来の手法を用いて遊離の塩基から調製することができる。一般的に、薬物の塩基型を、メタノールまたはエタノールなどの極性の有機溶媒に溶解して、それに酸を付加する。得られた塩は沈殿するか、またはより極性の低い溶媒を加えることによって溶液から生じうる。酸付加塩を調製するための適した酸には、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等、ならびに無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の双方が含まれるがこれらに限定されるわけではない。酸付加塩は、適した塩基による処置によって遊離の塩基に再度変換されうる。本明細書における活性物質の一定の特に好ましい酸付加塩には、塩酸または臭化水素酸を用いて調製されうる塩などのハロゲン化物の塩が含まれる。逆に、本発明の活性物質の塩基性塩の調製は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン等などの薬学的に許容される塩を用いて同様に調製される。特に好ましい塩基性塩にはアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩および銅塩が含まれる。
【0107】
エステルの調製は典型的には、活性物質の分子構造内に存在するヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基の官能化を伴う。一定の態様において、エステルは典型的には、遊離のアルコール基、すなわちRがアルキル、好ましくは低級アルキルである式RCOOHのカルボン酸に由来する部分、のアシル置換誘導体である。エステルを、望ましければ通常の水素分解または加水分解技法を用いることによって、遊離の酸に再度変換することができる。
【0108】
アミドは、当業者に公知の、または適切な文献において記述される技術を用いて調製することができる。例えば、アミドを、適したアミン反応物質を用いてエステルから調製してもよく、またはアンモニアもしくは低級アルキルアミンとの反応によって無水物もしくは酸塩化物から調製してもよい。
【0109】
様々な態様において、本明細書において同定される活性物質は、感染症(例えば、微生物感染症)、一つまたは複数の本明細書において記述される病態/適応(例えば、アテローム性動脈硬化症および/またはその症状)の予防的および/または治療的処置のために、エアロゾルまたは経皮によるなどの、非経口、局所塗布、経口、鼻内(またはそうでなければ吸入)、直腸内、または局所投与にとって有用である。薬学的組成物は、投与方法に応じて、多様な単位投与剤形で投与することができる。適した単位投与剤形には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ、坐剤、パッチ、鼻内スプレー、注射剤、埋め込み型徐放性製剤、脂質複合体等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0110】
本発明の活性物質はまた、薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、薬理学的組成物を形成することができる。薬学的に許容される担体は、例えば組成物を安定化させるように、または活性物質の吸収を増加もしくは減少させるように作用する一つまたは複数の生理的に許容される化合物を含有しうる。生理的に許容される化合物には、例えばグルコース、ショ糖、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、脂質などの保護および取り込み増強剤、活性物質のクリアランスもしくは加水分解を低減させる組成物、または賦形剤、他の安定化剤、および/または緩衝剤が含まれうる。
【0111】
錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ等の調製において特に有用である他の生理的に許容される化合物には、結合剤、希釈剤/増量剤、崩壊剤、潤滑剤、懸濁剤等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0112】
一定の態様において、経口投与剤形(例えば、錠剤)を製造するために、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デンプン、マンニトール等)、任意で崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン等)、結合剤(例えば、α-デンプン、アラビアゴム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリン等)、および任意で潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)を例えば、活性成分または成分(例えば、活性なペプチドおよびサリチルアニリド)に加えて、得られた組成物を圧縮する。必要であれば圧縮された生成物を、例えば味を隠すために、または腸で溶解するようにもしくは徐々に放出するように公知の方法によってコーティングする。適したコーティング材料には、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびEudragit(Rohm & Haas, Germany;メタクリル酸-アクリル酸コポリマー)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0113】
他の生理的に許容される化合物には、微生物の成育または作用を防止するために特に有用である湿潤剤、乳化剤、分散剤、または保存剤が含まれる。様々な保存剤が周知であり、これには例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が含まれる。当業者は、生理学的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体の選び方が、例えば活性物質の投与経路および活性物質の特定の物理化学的特徴に依存することを認識するものと考えられる。
【0114】
一定の態様において、賦形剤は無菌的であり、一般的に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。錠剤およびカプセル剤などの様々な経口投与剤形の賦形剤の場合、無菌性は必要ない。USP/NF標準で通常十分である。
【0115】
治療的応用において、本発明の組成物は、感染症に罹病しているもしくは感染のリスクを有する患者に対して、または虫歯、または微生物感染症を特徴とする歯もしくは口腔粘膜の他の病態を予防するために予防的に、疾患および/またはその合併症を予防、および/または治癒、および/または少なくとも部分的に予防もしくは停止させるのに十分な量で、例えば局所投与、または口腔もしくは鼻腔に投与される。これを達成するために妥当な量は、「治療的有効量」として定義される。この用途のために有効な量は、疾患の重症度、および患者の全身健康状態に依存すると考えられる。患者によって必要とされるおよび容認されるように、用量および投与回数に応じて、組成物の1回または複数回投与を行ってもよい。いずれにせよ、組成物は、患者を有効に処置する(患者における一つまたは複数の症状を改善する)ために、本発明の製剤の活性物質の十分量を提供すべきである。
【0116】
活性物質の濃度は、広く異なっていてよく、かつ選択される特定の投与様式および患者の必要性に従って、活性成分の活性、体重等に主に基づいて選択されると考えられる。しかし、濃度は典型的には、約0.1または1 mg/kg/日〜約50 mg/kg/日の範囲の用量、時にそれより高い用量を提供するように選択されると考えられる。典型的な用量は、約3 mg/kg/日〜約3.5 mg/kg/日、好ましくは約3.5 mg/kg/日〜約7.2 mg/kg/日、より好ましくは約7.2 mg/kg/日〜約11.0 mg/kg/日、および最も好ましくは約11.0 mg/kg/日〜約15.0 mg/kg/日の範囲である。一定の好ましい態様において、用量は、約10 mg/kg/日〜約50 mg/kg/日の範囲である。一定の態様において、用量は、約20 mg〜約50 mgの範囲の1日2回経口投与である。そのような用量は、特定の被験者または被験者の群における治療および/または予防レジメンを最適にするために多様化させてもよいことが認識されると考えられる。
【0117】
一定の態様において、本発明の活性物質は、口腔に投与される。これは、ロゼンジ、エアロゾル、スプレー、マウスウォッシュ、コーティングされた綿棒等を用いることによって容易に達成される。
【0118】
一定の態様において、本発明の活性物質は、局所、例えば皮膚表面に、局所病変または創傷に、手術部位等に投与される。
【0119】
一定の態様において、本発明の活性物質は、当業者に周知の標準的な方法に従って全身(例えば、経口または注射剤として)投与される。他の好ましい態様において、物質はまた、通常の経皮的薬物送達系を用いて、すなわち活性物質が典型的には、皮膚に貼付される薬物送達デバイスとして役立つ層状構造内に含有されている経皮「パッチ」を用いて、皮膚を通して送達することができる。そのような構造において、薬物組成物は典型的には、層の中にまたは上部支持層の下にある「リザーバー」の中に含有される。この文脈において「リザーバー」という用語は、皮膚の表面に送達するために最終的に利用可能な「活性成分」の量を指すことが認識されると考えられる。このように、例えば、「リザーバー」には、パッチの支持層表面の接着剤、または当業者に公知である多様な異なる任意のマトリクス製剤における活性成分が含まれてもよい。パッチは、一つのリザーバーを含有してもよく、または多数のリザーバーを含有してもよい。
【0120】
一つの態様において、リザーバーは、薬物送達の際にシステムを皮膚に貼付するために役立つ薬学的に許容される接触接着材料のポリマーマトリクスを含む。適した皮膚接触接着材料の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、薬物含有リザーバーおよび皮膚接触接着剤は、離れた別個の層として存在し、接着剤はリザーバーの下にあり、リザーバーは、この場合、先に記述したポリマーマトリクスであってもよく、液体もしくはハイドロゲルリザーバーであってもよく、または何らかの他の形をとっていてもよい。これらの層状物における支持層は、デバイスの上部表面として役立ち、好ましくは「パッチ」の一次構造要素として機能し、デバイスにその柔軟性の多くを提供する。支持層に関して選択される材料は好ましくは、活性物質および存在する他の任意の材料に対して実質的に不透過性である。
【0121】
局所送達のための他の製剤には、軟膏、ゲル、スプレー、液剤、およびクリームが含まれるがこれらに限定されるわけではない。軟膏は、典型的にはワセリンまたは他のワセリン誘導体に基づく半固体調製物である。選択された活性物質を含有するクリームは、しばしば水中油型または油中水型のいずれかである典型的に粘性の液体または半固体乳剤である。クリーム基剤は典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、および水相を含有する。時に「内部」相とも呼ばれる油相は、一般的にワセリンおよびセチルまたはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールを含み、水相は通常、必ずしもそうではないが、油相の容積を上回り、一般的に湿潤剤を含有する。クリーム製剤における乳化剤は一般的に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性の界面活性剤である。当業者に認識されると考えられるように、用いられる特定の軟膏またはクリーム基剤は、最適な薬物送達を提供する基剤である。他の担体または媒体に関して、軟膏基剤は、不活性で、安定で、非刺激性であり、および非感作性であるべきである。
【0122】
先に示したように、様々な口腔および舌下製剤も同様に企図される。
【0123】
一定の態様において、本発明の一つまたは複数の活性成分は、例えば希釈のために用意された保存容器(例えば、予め測定された容積)における、または一定容積の水、アルコール、過酸化水素、または他の希釈剤に付加するために用意された可溶性のカプセルにおける、「濃縮剤」として提供されうる。
【0124】
本発明は、ヒトにおける使用に関して記述しているが、これは同様に動物、例えば獣医学での使用にとっても適している。このように、一定の好ましい生物には、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、有蹄類、ウサギ目等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0125】
前述の製剤および投与法は例証であって、これに限定されないことが意図される。本明細書において提供される開示を用いて、他の適した製剤および投与様式を容易に考案することができることが認識されると考えられる。
【0126】
ヘルスケア製品製剤
一定の態様において、本発明の抗菌ペプチド(AMP)および/または複合AMPの一つまたは複数は、ヘルスケア製剤、例えば家庭、旅行、仕事、歯科診療所、病院等において用いるための処方製品または一般薬製品に組み入れられる。そのような製剤には、練り歯磨き、マウスウォッシュ、歯の美白用細片もしくは溶液、コンタクトレンズの保存、湿潤、もしくは洗浄用溶液、デンタルフロス、つまようじ、歯ブラシの毛、口腔スプレー、口腔ロゼンジ、鼻内スプレー、口腔および/または鼻内適用のためのエアロゾル化器、および創傷包帯(例えば絆創膏)等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0127】
そのような健康製品の製剤は当業者に周知であり、本発明のAMPおよび/または複合AMPは、有効量(例えば、虫歯の形成を抑制するための予防量等)がそのような製剤に単純に加えられる。
【0128】
例えば、練り歯磨き製剤は当業者に周知である。典型的に、そのような製剤は、研磨剤および界面活性剤;フッ化物などのう食予防剤;ピロリン酸四ナトリウムおよびメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーなどの歯石制御成分;pH緩衝剤;乾燥を防止して、口当たりを増加させるための湿潤剤;ならびに軟度および形状を提供するための結合剤の混合物である(例えば、表4を参照されたい)。結合剤は、練り歯磨きからの液相の分離を防止するために、固相を液相の中に適切に懸濁させ続ける。それらはまた、特にチューブから歯ブラシに押し出した後の歯磨き剤に形(body)を提供する。
【0129】
(表4)練り歯磨きの典型的な組成

フッ化物源は、1000〜15000 ppmのフッ素を提供する。
【0130】
表5は、製剤において用いられる典型的な成分の一覧であり、最終的な組み合わせは、成分の適合性および費用、地域の習慣、ならびに製品において送達される望ましい利益および品質などの要因に依存すると考えられる。本発明の一つまたは複数のAMPおよび/または複合AMPを、そのような製剤に単純に加えてもよく、または他の成分の一つもしくは複数の代わりに用いてもよいことが認識されると考えられる。
【0131】
(表5)典型的な成分の一覧

【0132】
米国特許第6,113,887号において記述される一つの例示的な製剤は、(1)ピリジニウム化合物、四級アンモニウム化合物およびビグアニド化合物からなる群より選択される水溶性の殺菌剤を、組成物の総重量に基づいて0.001重量%〜5.0重量%の量で;(2)そのヒドロキシエチルセルロース部分における平均分子量が1,000,000またはそれより高く、0.05〜0.5 mol/グルコースの陽イオン化度を有する陽イオン改変ヒドロキシエチルセルロースを、組成物の総重量に基づいて0.5重量%〜5.0重量%の量で;(3)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびアルキロールアミド化合物からなる群より選択される界面活性剤を、組成物の総重量に基づいて0.5重量%〜13重量%の量で;ならびに(4)非シリカ型のつや出し剤を、組成物の総重量に基づいて5重量%〜50重量%の量で含む。一定の態様において、本発明のAMPおよび/または複合AMPは、殺菌剤の代わりに、または殺菌剤と併用して用いることができる。
【0133】
同様に、マウスウォッシュ製剤もまた当業者に周知である。このように、例えばフッ化ナトリウムを含有するマウスウォッシュは米国特許第2,913,373号、第3,975,514号、および第4,548,809号、ならびに米国特許出願公開第2003/0124068号A1、第2007/0154410号A1等において開示されている。様々なアルカリ金属化合物:安息香酸ナトリウム(WO 9409752);アルカリ金属ハイポハライト(hypohalite)(米国特許出願公開第20020114851号A1);二酸化塩素(CN 1222345);アルカリ金属ホスフェート(米国特許出願公開第2001/0002252号A1、米国特許出願公開第2003/0007937号A1):硫酸/炭酸塩(JP 8113519);塩化セチルピリジウム(CPC)(例えば、米国特許第6,117,417号、米国特許第5,948,390号、およびJP 2004051511を参照されたい)を含有するマウスウォッシュも同様に公知である。高級アルコール(例えば、米国特許出願公開第2002/0064505号A1、米国特許出願公開第2003/0175216号A1);過酸化水素(例えば、CN 1385145を参照されたい);CO2気泡(例えば、JP 1275521およびJP 2157215を参照されたい)を含有するマウスウォッシュも同様に公知である。一定の態様において、これらおよび他のマウスウォッシュ製剤はさらに、本発明のAMPまたは複合AMPの一つまたは複数を含みうる。
【0134】
コンタクトレンズの保存、湿潤、もしくは洗浄用溶液、デンタルフロス、つまようじ、歯ブラシの毛、口腔スプレー、口腔ロゼンジ、鼻内スプレー、ならびに口腔および/または鼻内適用のためのエアロゾル化器等も同様に当業者に周知であり、本発明の一つまたは複数のAMPおよび/または複合AMPを組み入れるために容易に適合させることができる。
【0135】
前述のヘルスケア製剤および/または装置は例証であって、これに限定されないことを意味する。本明細書において提供される開示を用いて、本発明のAMPおよび/または複合AMPを、他の製品に容易に組み入れることができる。
【0136】
IV.キット
もう一つの態様において、本発明は、哺乳動物における感染症を抑制するための、および/または虫歯の処置および/または予防のためのキットを提供する。キットは典型的には、本明細書において記述される活性物質(すなわち、抗菌ペプチドまたは複合抗菌ペプチド)の一つまたは複数を含有する容器を含む。一定の態様において、活性物質は、単位投与製剤(例えば、坐剤、錠剤、カプレット、パッチ等)において提供することができ、および/または任意で一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と合わせてもよい。
【0137】
一定の態様において、キットは、本明細書において記述されるヘルスケア製品製剤(例えば、練り歯磨き、マウスウォッシュ、歯の美白用細片もしくは溶液、コンタクトレンズの保存、湿潤、もしくは洗浄用溶液、デンタルフロス、つまようじ、歯ブラシの毛、口腔スプレー、口腔ロゼンジ、鼻内スプレー、口腔および/または鼻内適用のためのエアロゾル化器等)の一つまたは複数を含む。
【0138】
さらに、キットには任意で、方法を実践するための、または本発明の「治療薬」もしくは「予防薬」を用いるための説明書(すなわち、プロトコール)を提供するラベルおよび/または説明材料が含まれる。好ましい説明材料は、感染症を抑制または予防するために、および/または虫歯の形成を抑制するために治療的または予防的に本発明の一つまたは複数の活性物質を用いることを記述する。説明材料はまた、任意で好ましい用量/治療レジメン、適応外等を教示してもよい。
【0139】
説明材料は典型的には、書面または印刷された材料を含むが、それらはそのようなものに限定されない。そのような説明書を保存して、それらを末端ユーザーに伝達することができる任意の媒体が本発明によって企図される。そのような媒体には、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。そのような媒体には、そのような説明材料を提供するインターネットサイトに対するアドレスが含まれてもよい。
【0140】
実施例
以下の実施例は、特許請求される本発明を説明するために提供されるものであり、限定するためのものではない。
【0141】
実施例1
ミュータンス連鎖球菌に対する新規合成抗菌ペプチド
一般的な口腔病原体であって、虫歯の原因因子であるミュータンス連鎖球菌は、不断の除去および撲滅努力にもかかわらず、歯の表面で持続して生育さえする。本研究において、本発明者らは、異なる生化学特徴を有するペプチドのコレクションを生成するために、各ライブラリ内の疎水性および電荷を増加するように多様化させた、いくつかの構造的に多様なペプチドライブラリを構築およびスクリーニングすることによって、この細菌に対する多数の合成抗菌ペプチドを生成した。これらのライブラリから、本発明者らは、ミュータンス連鎖球菌に対して強健な殺傷活性を有する多数のペプチドを同定した。それらの有効性をさらに改善するために、各ライブラリからの最も殺菌性のペプチドを、それぞれの抗菌領域の間に可動性ペプチドリンカーを伴っておよび伴わずに、様々な組み合わせで一つの分子として合成した。これらの「融合」ペプチドの多くは、当初の非連接分子の活性と比較して増強された殺傷活性を有した。本明細書において提示する結果は、生化学的に拘束された(biochemically constrained)ペプチドの小さいライブラリを用いて、そのいくつかが機能的なう食予防剤となりうる、ミュータンス連鎖球菌に対する抗菌ペプチドを生成できることを例証する。
【0142】
材料および方法
細菌株
ミュータンス連鎖球菌の臨床分離株(isolate)UA140(32)、UA159(1)、T8(33)、ATCC 25175、GS5(Kuramitsu and Ingersoll (1977) Infect Immun., 17:330-337)、および以下(表9を参照されたい)に記載される全てのグラム陽性株を、使用前に脳心臓注入液またはTodd-Hewitt (TH)ブロス(Difco)において嫌気性条件下で37℃で終夜生育させた(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:3651-3657)。ベイヨネラ・アティピカ(Veillonella atypica)PK1910を、ベイヨネラ培地において生育させた(Egland et al. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 101:16917-16922)。株は全て、80%N2、10%CO2、および10%H2の嫌気性雰囲気において生育させた。
【0143】
ペプチドの合成および精製
ペプチドを、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相法を用いてApex 396ペプチドシンセサイザー(AAPPTec, Louisville, KY)において合成した。全てのアミノ酸、適切に置換された樹脂(Anaspec)、および試薬(Fisher)のペプチド合成等級を購入した。直線状ペプチドの一般的合成は、以下の技法を伴った:25%ピペリジンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液0.6 mlを、第一のアミノ酸をローディングしてある樹脂に加えて、27分間撹拌後、ジクロロメタン(1 mlによって1回洗浄)、およびN-メチルピロリドン(各0.8 mlによって7回洗浄)の洗浄サイクルを行った。結合させるために5 M過剰のFmoc-保護アミノ酸、N-ヒドロキシベンゾトラゾール、HBTU(O-ベンゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロ-ホスフェート)およびジイソプロピルエチル-アミン(10 M過剰)のDMF溶液(0.1 ml)およびN-メチルピロリドン(0.2 ml)を加えて、反応混合物を45分間撹拌した。最後のアミノ酸を樹脂に結合させた後、保護されたペプチドをトリフルオロ酢酸-チオアニソール-水-1,2-エタンジチオール(10 ml:0.5 ml:0.5 ml:0.25 ml)1 mlによって室温で2時間かけて樹脂から切断して、DMF、メタノール、およびジクロロメタンによって連続的に洗浄し、真空で終夜乾燥させた。
【0144】
分析的および調整的逆相高速液体クロマトグラフィー(ACTA purifier; Amersham)をSource 15RPCカラムによって行い、H2Oおよび0.1%トリフルオロ酢酸を有するCH3CNによって既に記述されたように直線勾配で溶出した(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:3833-3838)。ペプチドを全て>90%まで精製した(データは示していない)。ペプチド質量を、H2O:CH3CNの1:2混合物に溶解した試料において行ったマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析によって確認した。測定は直線モードで行い、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸マトリクス(Voyager system;ABI)によって行った。観察された質量は、全ての場合において計算値に対応した(データは示していない)。
【0145】
ペプチド特徴の推定
ペプチドの残基あたりの平均疎水性(<H>)を、//us.expasy.org/tools/pscale/Hphob.Fauchere.htmlで入手可能なFauchere and Pliska(Fauchere and Pliska (1983) Eur. J. Med. Chem. 18:369-375)のスケールを用いて計算した。この方法は、宿主-ゲストシステムにおいて個々のアミノ酸の膜親和性を記述する実験的証拠との一致により、AMPの疎水性を計算するために選択された(Thorgeirsson et al. (1996) Biochemistry 35:1803-1809)。残基あたりのαヘリックス形成性向(<ヘリックス>)の平均値を、標的細胞の表面でAMPが遭遇する環境などの、非極性の膜環境における個々のアミノ酸のヘリックス性向を定義するLiuおよびDeberによって開発されたスケールを利用して推定した(Lehrer and Ganz (2002) Curr. Opin. Immunol. 14:96-102)。
【0146】
MICアッセイ
抗菌生育阻害アッセイは、既に記述されたように(Qi et al. (2005) FEMS Microbial Lett. 251:321-326)、無菌的な96ウェルプレートを用いてTHまたはベイヨネラ培地の最終容積100μlにおいて行った。簡単に説明すると、細菌細胞を600 nmでの吸光度が0.75〜0.8(1×108 CFU/mlに相当)となるまで終夜生育させた後、ブロスにおいて1×105 CFU/mlに希釈して、プレートに分注した。次に、ペプチド保存液(溶解度に応じて、5〜20 mg/mlの水溶液またはメタノール溶液)をプレートの最初の列に加えて、500μg/mlまたは512μg/mlを得た後、プレートにわたって連続1:2倍希釈を行って、500〜1.95μg/mlまたは512〜2μg/mlの範囲のペプチドを含有するウェルを得た。メタノール単独を、溶媒の効果に関する対照に加えた。次に、プレートを嫌気性条件で振とうせずに37℃で16〜20時間インキュベートして、肉眼によって検分した後に最後の透明なウェルに存在するペプチド濃度としてMICを決定した。5%(容積/容積)までのメタノールは、抗菌的ではないことが見いだされた(データは示していない)。全ての細菌に関して1試料あたり3個ずつMICを決定した。
【0147】
抗菌動態の査定
融合および親ペプチドに関する殺傷動態の決定を、本質的に既に記述されたとおりに(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:1480-1488)行った。簡単に説明すると、培地によって希釈した終夜UA159培養物(0.5×106〜1×106 CFU/ml)に、濃度25μg/mlのペプチドを負荷して、表記の時間間隔で(「0分」は未処置試料を示す)、試料10μlアリコートを採取して、生存CFUを、増殖培地に希釈すること(1:50倍)によってレスキューした後、定量のためにTH寒天プレート上に広げた。最初の実験が少数の生存菌(<3,000 CFU/ml)を示唆した場合には、1 ml試料全体を小分けせずに播種した。ペプチドの存在下での生存CFU/mlの平均数を、インキュベーション時間に対して記録することによって、動態を決定した(アッセイは全て独立して3〜5回繰り返した)。表8に関して、殺菌までの時間(TC)の値は、ペプチド処置培養の生存CFU/mlのレベルが、未処置試料から回収されたミュータンス連鎖球菌のCFU/mlのレベルより3 log10超減少するために必要な時間として定義した。
【0148】
結果
拘束されたペプチドライブラリの設計
本発明者らは、拘束された予測コンフォメーションフレームワーク内で、増加するように多様化した疎水性および陽イオン性の特徴の勾配を含有する一連の低分子ペプチドライブラリが、ミュータンス連鎖球菌に対して活性を有するAMPを含有するという仮説を立てた。三つのライブラリをこの研究のために開発した:バイナリライブラリ、αヘリックスライブラリ、およびRWライブラリ。バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリ内のペプチドを、いくつかの公表されたAMP両親媒性配列鋳型(Blondelle and Lohner (2000) Biopolymers 55:74-87;Zelezetsky et al. (2005) Peptides 26:2368-2376)から開発された、両親媒性のαヘリックス配列配置フレームワーク

(式中、Hは疎水性残基であり、Cは荷電残基である))から設計して、ヘリックス-ホイール状突起(Schiffer and Edmundson (1967) Biophys J., 7:121-135)および平均ヘリックス性向<ヘリックス>を用いてバリデーションを行った(表6)。図1は、各ライブラリからの二つの代表的な突起を示す。バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリ内のペプチドの長さはそれぞれ、アミノ酸11個および14個に限定され、膜貫通孔を形成するために必要な推定最少残基数に近かった(Shai (2002) Biopolymers 66:236-248)。この構造フレームワーク内から、より疎水性の低い/芳香族の、または陽性荷電の残基を置換することにより、段階的にベースライン配列

内の疎水性/芳香族および陽イオン性成分を低減させることによって、バイナリライブラリを構築した(B-33は、代わりの命名法S6L3-33によって公表されている[Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:3651-3657])。ペプチド32個のこのライブラリ内の電荷および疎水性(<H>)の得られた勾配を表6に示す。αヘリックスライブラリをバイナリライブラリより長く(アミノ酸11個に対して14個)なるように、バイナリライブラリと類似の方法で設計して、疎水性および電荷を、αヘリックスライブラリ全体を通して増加するように多様化させた(表6)。
【0149】
(表6)ミュータンス連鎖球菌の臨床分離株に対するバイナリライブラリ、αヘリックスライブラリ、およびRWライブラリのペプチドの配列および抗菌活性



a アステリスクは、アミド化されたC末端を示す。
b 調べた全てのミュータンス連鎖球菌分離株からのMIC範囲または値。
c 既に記述されたように計算したpH 7.0での電荷(Zhang et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:35714-35722)。
【0150】
多くの天然に存在するAMPは、多数のArgおよびTrp残基を含有し(Chan et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 51(4):1351-1359)、これまでの報告は、これらのアミノ酸の多くが合成組み合わせ、または類似の方法によって生成されたヘキサマーAMPにおいて出現することを示している(Blondelle and Houghten (1996) Trends Biotechnol., 14:60-65;Chan et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 51(4):1351-1359)。したがって、本発明者らは、表6において示されるように、塩基性(ArgまたはLys)およびTrp残基の順、ならびに塩基性 対 疎水性残基の比率を多様化させたArgおよびTrpに富む(RおよびW)ヘプタマーを含有するRWライブラリを構築した。これらの配列は、その低い<ヘリックス>値において反映されるように、従来のαヘリックスコンフォメーションを形成するようには設計されなかった。
【0151】
バイナリライブラリペプチドの活性
バイナリライブラリを、臨床分離株のコレクションに対してMICアッセイによってミュータンス連鎖球菌活性に関して評価した(表6)。最低のMIC(範囲、8〜24μg/ml)を示した二つのペプチド、すなわちB-33およびB-34はまた、バイナリライブラリにおいて最も疎水性が高く陽イオン性であった。同様に、活性であるが、B-33またはB-34より程度が低い、B-37、B-38、B-41、B-53、B-54、B-57、およびB-58ペプチドは、少なくとも+3の正味の電荷および<H>値0.55未満を保有した。対照的に、疎水性値が0.55未満のペプチドは、B-61およびB-62(MIC範囲、16〜32μg/ml)の二つを例外として、抗菌性ではなかった。特に、これらの二つのペプチドはそれぞれ、一つのみの芳香族残基を有するが、その持続的な活性に関与する可能性がある正味の電荷+6を有した。
【0152】
MICの結果は、正味の陽電荷およびいくつかの疎水性含有量が、活性なペプチドを設計するための不可欠なパラメータであるという考え方と一貫している(Chan et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 51(4):1351-1359;Deslouches et al. (2005) Antimicrob. Agents Chemother. 49:316-322)。したがって陰性荷電残基を特にペプチドの中心領域に加えることは、おそらく細菌表面に対するペプチドの誘引にとって必要な陽電荷が中断することにより、AMP活性(例えば、B-43)を完全に破壊するように見える。データは、興味深い二つの例外を示しており、B-49およびB-50は、強い陽イオン性の特徴がないにもかかわらず、弱く活性である。これらのペプチドに関する例外的に高い<H>の値(したがっておそらく宿主の膜に急速に分配される)が、この矛盾を説明する可能性がある。このライブラリからのより活性なペプチド3個、すなわちB-33、B-34、およびB-38を、さらなる増強のために選択した。興味深いことに、本研究全体を通して認められるように、ミュータンス連鎖球菌のいずれの株も、調べたAMPに対してより感受性または抵抗性でないように見えた(データは示していない)。
【0153】
αヘリックスライブラリペプチドの活性
表6において示されるように、αヘリックスライブラリペプチドの多くが、MICによって評価した場合にミュータンス連鎖球菌に対して強健な活性を有した:低い正味の陽電荷または<H>値を有するペプチド二つのみ(それぞれ、α-4およびα-8)が不活性であった。多くのαヘリックスライブラリペプチドが、ミュータンス連鎖球菌に対して等しく強健な殺傷活性を示したが、α-11のみをさらなる改変のために選択した。
【0154】
RWライブラリペプチドの活性
表6において示されるように、本発明者らは、2C-3および2C-4が、RW(ArgおよびTrpに富む)ライブラリからのミュータンス連鎖球菌に対して最も活性なペプチドであることを観察した(MIC範囲、4〜8μg/ml)。これらのデータは、強健な抗菌活性にとって疎水性アミノ酸 対 荷電アミノ酸(荷電残基としてアミド化C末端Pheが含まれる)のほぼ1:1の比率が必要であることを示しており、これはTrp/Argに富むAMPを調べたBlondelleおよび他の研究者によって観察された報告された比率4:3と類似である(Blondelle et al. (1996) Antimicrob. Agents Chemother. 40:1067-1071;Shai (2002) Biopolymers 66:236-248)。低い疎水性対荷電アミノ酸比(より低い<H>値に反映される)を有するRWライブラリペプチドは、2C-3または2C-4ほど活性ではなかった。その低いMICのために、これらのペプチドをさらなる増強のために選択した。
【0155】
融合AMPの設計
これまでの研究から、連接した直線状ダイマーまたはペンタマーの束として様々な配置でAMPを合成することによって、一つの構成要素のAMP単独の活性と比較してペプチド活性を増加させることができることが示されている(Devi et al. (1998) J. Biomol. Struct. Dyn. 15:653-651;Sal-Man et al. (2002) Biochemistry 41:11921-11930)。同様に、本発明者らは、二つのAMPを共に、頭と尾とを一つの融合直線状ペプチド分子として合成することによって、表6に示したミュータンス連鎖球菌活性配列の活性を改善することができるという仮説を立てた。本発明者らのこれまでの研究において、ペプチドドメインの間のリンカー領域は、抗菌活性に対して影響を有することが注目された(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:1480-1488)。したがって、ミュータンス連鎖球菌に対してより大きい活性を有するペプチドを生成しようとして、本発明者らは、構成要素AMPの配置およびそれぞれの間のリンカー領域の配列(またはリンカーなし)が異なる融合ペプチドライブラリ(表7)を合成した。
【0156】
バイナリ-αヘリックスの組において、B-33およびB-38を、NまたはC末端でα-11と共に合成した。直線状配列内で機能的に独立したペプチド領域の分離において有効であることが既に示されており(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:1480-1488)、モデル膜におけるペプチドの二次構造遷移にとって不可欠である可能性がある(Tack et al. (2002) Eur. J. Biochem. 269:1181-1189)トリGlyリンカーを使用して、二つのAMPドメインを分離した。融合ペプチドのRW-RWの組は、その間に様々なリンカー領域を伴って、または伴わずに、直線状のホモダイマーとして2C-3および2C-4を含有した。表7において示される最後の群(バイナリ-RWの組)において、2C-4をNまたはC末端でB-33、B-34、またはB-38と共に合成した後、またGlyリンカー領域によって分離した。これらの配置によって、本発明者らは、抗ミュータンス連鎖球菌活性に及ぼすAMPサブユニットの配置(融合ペプチド内のNまたはC末端)と共にリンカー組成物の重要性(および存在)を調べることができた。
【0157】
融合AMPの抗菌活性
MICによって、融合AMPがミュータンス連鎖球菌に対してその親AMPとほぼ等しいか、またはより活性が低いことが明らかとなった(表7)。例外には、B-33またはα-11と比較して低減されたMIC範囲を有するFBα-20、および親ペプチドB-33と比較してわずかに低減されたMIC範囲を有するFBRW-22が含まれた。全体的に、これらのデータは、AMPを融合させることによって、最も良くてごくささやかなMICの改善が起こるにすぎないことを示している。しかし、MICアッセイは、比較可能なペプチドの間の殺傷速度の劇的な差をあいまいにすることがあり(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:1480-1488)、融合AMPを十分に評価するためにはペプチド殺傷動態のより詳細な分析が必要であることを示唆している。
【0158】
(表7)融合ライブラリペプチドの配列および活性

a アステリスクはアミド化されたC末端を示す。
b 調べた全てのミュータンス連鎖球菌分離株からの、少なくとも3回の独立した試行によるMIC範囲または値。
【0159】
ミュータンス連鎖球菌に対する融合AMPの殺傷動態を時間-殺傷アッセイによって分析した。図2Aにおいて示されるように、融合ペプチドFBα-21は、B-34またはo-11のいずれと比較しても殺傷動態の明白な増加を有した:30分後に、融合ペプチド処置培養物からは、親ペプチド処置試料より2 log10超減少したCFU/mlが回収された。この傾向は、全てのFBαペプチドの代表であった(データは示していない)。
【0160】
全てのバイナリ-RWライブラリの結合体(FBRW-14およびFBRW-23を例外として)に関して、殺傷動態の増加も同様に顕著であった(図2B);2C-4に対するNまたはC末端でのバイナリライブラリAMPとの融合ペプチドは、いずれかの親ペプチドによって処置した試料と比較して、処置後30分で3 log10を超えるミュータンス連鎖球菌の殺傷レベルの改善において等しく有効であった。結果は、連接されたAMPドメインが、ミュータンス連鎖球菌に対する増強された殺傷効果を発揮している可能性があり、これは短期間のペプチド曝露後に最もよく観察されることを示している。
【0161】
表8において示されるように、本発明者らはまた、いくつかのRW-RWの融合ペプチドに関して殺傷動態の増加を観察した。リンカー領域を伴わない2C-4ホモダイマー(FRW-8)によって処置した試料において、ミュータンス連鎖球菌の生存数CFU/mlは、50分までに未処置試料(殺菌活性までの時間またはTcとして定義される)の生存数より3 log10超減少したが、2C-4は、Tc 220分を有した。この傾向は、リンカーを伴わない2C-3ホモダイマー(FRW-2)に曝露した試料を、その親ペプチド(2C-3)によって処置した試料と比較した場合にも、より程度は低いが存在した。興味深いことに、可動性アミノ酸リンカー領域(PSGSP(SEQ ID NO:106)、ASASA(SEQ ID NO:107)、またはGGG(SEQ ID NO:108)のいずれか)を2C-3ドメインの間に付加しても、殺傷動態の改善が起こらなかったが(FRW-3から-5に関してTc>250分)、2C-4ホモダイマーFRW-9およびFRW-11はそれぞれ、ASASA(SEQ ID NO:107)およびGGG(SEQ ID NO:108)リンカー領域の存在にもかかわらず、親2C-4 AMPと比較して増加した殺菌速度を有した(表8)。これらの結果は、ミュータンス連鎖球菌に対するRWに基づくペプチド活性が、リンカー領域を伴わずにペプチドを共に合成することによって増強されうるが、リンカー領域を利用する場合、2C-4は、可動性アミノ酸(PSGSP、SEQ ID NO:106を除く)リンカー領域との結合によって改善されうるが、2C-3は改善されないことから、増加した動態が、おそらく配列依存的、およびしたがって二次構造依存的であることをデータは示している。
【0162】
(表8)親RWおよび融合FRWライブラリペプチドの殺菌動態

a Tc、回収可能なCFU/mlの3 log10を死滅させるために必要な時間。
【0163】
他の口腔細菌に対するペプチドの活性
最善の抗ミュータンス連鎖球菌活性を有する(MICによって測定した)ペプチドの組を、いくつかの通常の共生口腔内連鎖球菌株およびラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)ならびに口腔のグラム陰性生物V.アティピカに対するこれらのAMPの活性を調べるために選択した(表9)。MICの結果は、これらの配列が、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、L.カゼイ、およびストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)に対して活性であるが、ミュータンス連鎖球菌について認められる結果より低い程度であったことを示している。調べたペプチドは全て、典型的にはストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)に対してごく弱く活性であった。V.アティピカは試験した他の細菌よりα-11に対してより感受性であるように見えたが、RWライブラリペプチド2C-3および2C-4に対してより耐性であった。
【0164】
(表9)非ミュータンス連鎖球菌口腔分離株に対する選択されたペプチドのMIC

【0165】
考察
米国において、特に恵まれないおよびマイノリティ集団における虫歯の処置に関連する高い財政的負担(Anderson and Shi (2006) Pediatr. Dent., 28:151-153; discussion 192-198;National Institutes of Health (2000) Oral health in America: a report of the Surgeon General, Department of Health and Human Services, National Institute of Dental and Craniofacial Research, National Institutes of Health, Bethesda, MD; Washington State Department of Health (2002) Infectious Diseases - Dental Caries, Washington State Department of Health, Olympia, WA)は、より有効な抗ミュータンス連鎖球菌治療を追加した歯科衛生レジメンによって緩和されうる。したがって、本明細書において紹介される結果は、小さい合理的に設計されたライブラリをスクリーニングすることによって、ミュータンス連鎖球菌に対して強健な活性を有するペプチドを同定することができることを示唆している。興味深いことに、本研究に由来する最も活性なペプチドは、他のグラム陽性口腔細菌に対しても何らかの活性を有するように見えるが、これらの配列の疎水性および両親媒性特徴が一般的な抗グラム陽性細菌活性を示すか否かを十分に評価するためにはより多くのデータが必要である。ミュータンス連鎖球菌は通常、インビボでバイオフィルム状態において生育することから、本発明者らは、表9における全てのペプチドがショ糖の存在下でスライドガラス上で生育させたインビトロミュータンス連鎖球菌バイオフィルムに対して活性を有することを発見するように迫られた(データは示していない)。
【0166】
バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリに関して、結果は、最大のミュータンス連鎖球菌活性が、高い相対的疎水性および+3より多い正味の陽電荷の双方を有するペプチドにおいて起こったことを示している。その特性がいずれかの一つの形質によって支配されるペプチドに関して中間レベルの活性が観察された。これらの結果は、陽イオン性の両親媒性特徴を有するほとんどの合成および天然AMPに関して知られている結果と一貫し、これらのライブラリにおけるB-33、α-7、およびその他の活性なペプチド配列がこの構造クラス内の他のAMPと類似のように挙動する可能性があることを示唆しており、すなわち両親媒性は膜の相互作用、ヘリックス遷移、および細胞殺傷にとって必要であるが、ペプチドの陽電荷は陰イオン性の細菌膜に対するAMPの誘引にとって必要であると考えられる(Jing et al. (2003) J. Pept. Res. 61:219-229;Shai (2002) Biopolymers 66:236-248)。これらの結果はまた、高い<ヘリックス>値が、それ自身、陽イオン性の両親媒性AMPに関して増加した抗ミュータンス連鎖球菌活性に相関しない可能性があることを示している。
【0167】
RWライブラリに関して、バイナリライブラリおよびαヘリックスライブラリの場合と同様に、最も疎水性が高くおよび陽イオン性の配列(2C-3および2C-4)は、最も活性であった。他のライブラリにおけるペプチドと比較して長さおよび周期性の差にもかかわらず、RWペプチドは、最初のペプチド結合または膜挿入の改善により増強された活性を得ることができると考えられている。これは、ArgおよびTrpに富むペプチドがその低い<ヘリックス>値にもかかわらず、TrpのH電子とArg官能基の間の静電気的結合によって安定化される膜相互作用によって、安定なヘリックス様の両親媒性の配置を形成することを示す証拠によって支持される(Jing et al. (2003) J. Pept. Res. 61:219-229;Mecozzi et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:10566-10571)。このように、RWライブラリペプチドの独自の配列特性によって、抗菌活性の非常に助けとなる二次構造が得られる可能性がある。
【0168】
興味深いことに、本発明者らの結果は、融合ペプチド、一つの直線状分子として合成されたAMPダイマーがしばしば、その親ペプチドと比較して殺傷動態の増加を有することを示している。いくつかの融合ペプチドは、束状のAMPに関して記述されているように(Sawai et al. (2002) Protein Eng. 15:225-232)、膜表面での単位分子あたりのヘリックス形成単位の数を増加させることによって機能する可能性がある。データは、AMPセグメントの間のリンカー領域の影響に関して明確ではないが、リンカー領域は個々のペプチドに異なるように影響を及ぼす可能性があるように見える(表7および8におけるFRW-3およびFRW-9に関する結果を参照されたい)。AMP活性に及ぼすリンカー組成物の影響を直接調べるために研究が進行中である。その上、本発明者らの結果は、構成要素の配置の効果(融合ペプチドサブユニットがCまたはN末端に存在する)を予測することが難しいことを示唆しているが(FBα-12およびFBα-20のMICを比較して)、他の研究は、両親媒性および推定のヘリックス形成AMPがN末端付加をより認容するようであることを証明しており、その理由はなお不明である(Eckert et al. (2006) Antimicrob. Agents Chemother. 50:1480-1488;Szynol et al. (2006) Chem. Biol. Drug Des., 67:425-431)。
【0169】
結論として、本発明者らの結果は、ミュータンス連鎖球菌が、本発明者らの拘束されたライブラリから容易に単離される比較的高い疎水性および陽イオン電荷を有するペプチドに対して感受性があるように見えることを示している。さらに、これらのライブラリ内およびライブラリ間からの活性な配列を連接することによって構築された融合ペプチドは、これらのペプチドの殺傷動態を改善した。
【0170】
実施例2
酸活性化ライブラリペプチドの活性
ヒスチジン残基は、6.0に近い側鎖pKaを有し、したがってpH 6.0およびそれ未満で陽イオン電荷を運ぶが、中性pHでは運ばない。本発明者らは、この特徴を考慮に入れて、ペプチドは約pH 6.0より上では不活性のままであるが、両親媒性でヘリックス形成性の配置(抗ミュータンス連鎖球菌活性に至る)によって低pH環境(う食病変におけるミュータンス連鎖球菌によって作製される環境など)がもたらされるように、酸活性化ライブラリを構築した。この仮説を確認すると、このライブラリにおける配列の大多数は、pH 4.9でミュータンス連鎖球菌に対して強い抗菌活性を有するが、pH 7.4では不活性であることが見いだされた(表10)。このライブラリからのペプチドは、この試験中、さらなる増強に関しては選択されなかった。
【0171】
(表10)ミュータンス連鎖球菌に対する酸活性化ライブラリペプチドのMIC

* アミド化されたC末端を示す。
【0172】
実施例3
殺傷ペプチドライブラリ#7の活性
殺傷ライブラリ#7(表11)内のペプチドを、本明細書において記述される他のライブラリと比較して、低分子、疎水性、および弱い陽イオン性の特徴を有するように設計した。ミュータンス連鎖球菌に対するMIC試験から、このライブラリ内の配列の多くが不活性であるか、または弱い活性であることが明らかとなった。S6L1-5は、中等度の活性を示した。このライブラリ内のペプチドはさらなる試験のために選択されなかった。
【0173】
(表11)殺傷ペプチドライブラリ#7

* アミド化されたC末端を示す。
【0174】
実施例4
β欠失ライブラリペプチドの活性
このライブラリ内で見いだされる疎水性および陽イオンペプチドを、疎水性および電荷パラメータを一般的に安定に保持しながら物理的な大きさの勾配を与えるために、アミノ酸15個から7個へと系統的に短くした。本発明者らは、このライブラリ内の配列のいくつかが、MICによって評価した場合に強健な抗ミュータンス連鎖球菌活性を有することを観察した(表12)。活性配列には多様な大きさのペプチドが含まれたが、本発明者らのデータは、活性にとって少なくとも9残基が必要であることを示している。本発明者らはまた、このライブラリにおけるペプチドが一般的に、調べたグラム陰性菌である緑膿菌に対して活性ではないが、いくつかの他のグラム陽性菌に対しては活性を有することも見いだした。これらのペプチドはこの試験中、さらなる増強のためには選択されなかった。
【0175】
(表12)β欠失ライブラリ



【0176】
本明細書において記述される実施例および態様は説明する目的のために限られ、それに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲に含まれると理解される。本明細書において引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的に関してその全内容が参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸モチーフまたは以下のアミノ酸モチーフの円順列を含む、抗菌ペプチド:

式中、nは、1〜5の範囲であり、かつ0.1単位ずつ増加することができ;
H1、H2、H3、H4、およびH5は、独立して選択される疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸であり;
C1、C2、C3、C4、およびC5は、独立して選択される非荷電アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、または陰性荷電アミノ酸であり;
前記ペプチドはαヘリックスを形成し;
前記ペプチドはアミノ酸配列

を除外し;かつ
前記ペプチドは、培養においてミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)を死滅させるかまたはその生育もしくは増殖を抑制するのに有効である。
【請求項2】
C1、C2、C3、C4、およびC5が、独立して選択される陽性荷電アミノ酸または陰性荷電アミノ酸である、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項3】
非荷電アミノ酸が、S、T、およびYからなる群より独立して選択される、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項4】
陽性荷電アミノ酸が、K、R、およびHからなる群より独立して選択される、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項5】
陰性荷電アミノ酸が、N、Q、D、およびEからなる群より独立して選択される、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項6】
疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸が、L、I、V、W、およびFを用いることからなる群より独立して選択される、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項7】
非荷電アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、または陰性荷電アミノ酸が、S、T、Y、K、R、H、N、Q、D、およびEからなる群より独立して選択され;かつ
疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸が、L、I、V、W、およびFを用いることからなる群より独立して選択される、
請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項8】
カルボキシル末端において遊離アミンをさらに含む、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項9】
カルボキシル末端において、アルギニンまたはリジンによって提供される遊離アミンを含む、請求項8記載の抗菌ペプチド。
【請求項10】
カルボキシル末端において、アミド化された非陽イオン性残基によって提供される遊離アミンを含む、請求項8記載の抗菌ペプチド。
【請求項11】
PEG化されている、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項12】
一つまたは複数の保護基を有する、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項13】
アセチル、アミド、および炭素3〜20個のアルキル基、Fmoc、Tboc、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボン酸基(carboxylic group)、9-フロレンカルボン酸基、9-フルオレノン-1-カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4-メチルトリチル(Mtt)、4-メトキシトリチル(Mmt)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、4-メチルベンジル(MeBzl)、4-メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)、1-(4,4-ジメンチル-2,6-ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、t-ブトキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t-ブトキシメチル(Bum)、t-ブトキシ(tBuO)、t-ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)からなる群より選択される一つまたは複数の保護基を有する、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項14】
天然に存在する全てのアミノ酸を含む、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項15】
一つまたは複数の「D」アミノ酸を含む、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項16】
一つまたは複数のβアミノ酸を含む、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項17】
生理的pHで少なくとも+3の正味の陽電荷を有する、請求項1記載の抗菌ペプチド。
【請求項18】
nが1.1であり;かつ
以下のモチーフを含む、請求項1記載の抗菌ペプチド:

式中、H6は、独立して選択される疎水性アミノ酸である。
【請求項19】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18記載の抗菌ペプチド:


【請求項20】
アミド化されている、請求項19記載の抗菌ペプチド。
【請求項21】
nが1.4であり;かつ
以下のモチーフを含む、請求項1記載の抗菌ペプチド:

式中、H6およびH7は、独立して選択される疎水性アミノ酸であり、かつC6およびC7は、独立して選択される陽性荷電アミノ酸または陰性荷電アミノ酸である。
【請求項22】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項22記載の抗菌ペプチド:


【請求項23】
アミド化されている、請求項22記載の抗菌ペプチド。
【請求項24】
検出可能な標識によって標識されている、請求項1、19、または22のいずれか一項記載の抗菌ペプチド。
【請求項25】
酵素標識、蛍光標識、比色分析用標識(colorimetric label)、スピン標識、および放射性標識からなる群より選択される検出可能な標識によって標識されている、請求項24記載の抗菌ペプチド。
【請求項26】
第二の抗菌ペプチドに付着して、それによって複合抗菌ペプチド(compound antimicrobial peptide)を形成する、請求項1、19、22、または41のいずれか一項記載の抗菌ペプチド。
【請求項27】
複合抗菌ペプチドが融合タンパク質である、請求項26記載の抗菌ペプチド。
【請求項28】
第二の抗菌ペプチドが、
nが、1〜5の範囲であり、かつ0.1単位ずつ増加することができ;
H1、H2、H3、H4、およびH5が、独立して選択される疎水性アミノ酸もしくは親水性アミノ酸であり;かつ
C1、C2、C3、C4、およびC5が、独立して選択される中性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、または陰性荷電アミノ酸である、
以下のアミノ酸モチーフまたは以下のアミノ酸モチーフの円順列

を含むペプチドであるか;あるいは
前記第二の抗菌ペプチドが、
二つを除く全てのアミノ酸が、ArgもしくはTrp、またはその誘導体もしくは類似体であり;
ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸が、LysもしくはPhe、またはその誘導体もしくは類似体であり;かつ
N末端残基がArgまたはその誘導体もしくは類似体である、
7個の連続したアミノ酸
を含むペプチドである、
請求項26記載の抗菌ペプチド。
【請求項29】
第二の抗菌ペプチドが、表6に記載されるペプチドである、請求項26記載の抗菌ペプチド。
【請求項30】
二つを除く全てのアミノ酸が、ArgもしくはTrp、またはその誘導体もしくは類似体であり;
ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸が、LysもしくはPhe、またはその誘導体もしくは類似体であり;かつ
N末端残基がArgまたはその誘導体もしくは類似体である、
7個の連続したアミノ酸
を含む、抗菌ペプチド。
【請求項31】
二つを除く全てのアミノ酸がArgまたはTrpであり;
ArgでもTrpでもない二つのアミノ酸がLysまたはPheであり;かつ
N末端残基がArgである、
請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項32】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30記載の抗菌ペプチド:


【請求項33】
PEG化されている、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項34】
一つまたは複数の保護基を有する、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項35】
アセチル、アミド、および炭素3〜20個のアルキル基、Fmoc、Tboc、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボン酸基、9-フロレンカルボン酸基、9-フルオレノン-1-カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4-メチルトリチル(Mtt)、4-メトキシトリチル(Mmt)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、4-メチルベンジル(MeBzl)、4-メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)、1-(4,4-ジメンチル-2,6-ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、t-ブトキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t-ブトキシメチル(Bum)、t-ブトキシ(tBuO)、t-ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)からなる群より選択される一つまたは複数の保護基を有する、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項36】
天然に存在する全てのアミノ酸を含む、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項37】
一つまたは複数の「D」アミノ酸を含む、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項38】
一つまたは複数のβアミノ酸を含む、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項39】
検出可能な標識によって標識されている、請求項30記載の抗菌ペプチド。
【請求項40】
酵素標識、蛍光標識、比色分析用標識、スピン標識、および放射性標識からなる群より選択される検出可能な標識によって標識されている、請求項39記載の抗菌ペプチド。
【請求項41】
荷電残基の大多数が、酸性pHで陽電荷を運ぶHisまたはその誘導体もしくは類似体である、アミノ酸約7〜約11個の長さの範囲の両親媒性ヘリックスペプチドを含む、酸で活性化されるペプチドであって、中性pHでは実質的に抗菌活性を有しないが、酸性pHでミュータンス連鎖球菌に対して抗菌活性を有する、酸で活性化されるペプチド。
【請求項42】
全ての荷電残基が、酸性pHで陽イオン電荷を運ぶHisまたはその誘導体もしくは類似体である、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項43】
酸性pHが、pH 6であるかまたはそれより低い、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項44】
HHとFFの交互の反復を含む、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項45】
一つまたは双方の末端においてアミノ酸配列KLLK(SEQ ID NO:166)を含む、請求項41または44記載の抗菌ペプチド。
【請求項46】
一つまたは双方の末端において、リンカーによって該末端と接続しているアミノ酸配列KLLK(SEQ ID NO:166)を含む、請求項41または44記載の抗菌ペプチド。
【請求項47】
リンカーがGAT(SEQ ID NO:167)である、請求項26記載の抗菌ペプチド。
【請求項48】
アミノ酸配列

を含む、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項49】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項41記載の抗菌ペプチド:


【請求項50】
一つまたは複数の保護基を有する、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項51】
アセチル、アミド、および炭素3〜20個のアルキル基、Fmoc、Tboc、9-フルオレンアセチル基、1-フルオレンカルボン酸基、9-フロレンカルボン酸基、9-フルオレノン-1-カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4-メチルトリチル(Mtt)、4-メトキシトリチル(Mmt)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、4,4-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、4-メチルベンジル(MeBzl)、4-メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)、1-(4,4-ジメンチル-2,6-ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-DiCl-Bzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、t-ブトキシカルボニル(Boc)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t-ブトキシメチル(Bum)、t-ブトキシ(tBuO)、t-ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)からなる群より選択される一つまたは複数の保護基を有する、請求項41記載の抗菌ペプチド。
【請求項52】
以下からなる群より選択されるペプチドを含む、抗菌ペプチド:


【請求項53】
以下からなる群より選択されるペプチドを含む、抗菌ペプチド:


【請求項54】
請求項1〜53のいずれか一項記載の抗菌ペプチド;および
薬学的に許容される賦形剤
を含む、薬学的製剤。
【請求項55】
単位投与製剤である、請求項54記載の薬学的製剤。
【請求項56】
賦形剤が、口腔粘膜に対する投与に関して許容される、請求項54記載の薬学的製剤。
【請求項57】
請求項1〜54のいずれか一項記載の抗菌ペプチドを含む、ヘルスケア製品であって、該抗菌ペプチドが、練り歯磨き、マウスウォッシュ、歯の美白用細片もしくは溶液、コンタクトレンズの保存、湿潤、もしくは洗浄用溶液、デンタルフロス、つまようじ、歯ブラシの毛(toothbrush bristle)、口腔スプレー、口腔ロゼンジ、鼻内スプレー、口腔および/または鼻内適用のためのエアロゾル化器(aerosolizer)、および創傷包帯からなる群より選択される製品に含まれている、ヘルスケア製品。
【請求項58】
細菌の生育および/または増殖を抑制するのに十分な量で、請求項1〜53のいずれか一項記載のペプチドを細菌に接触させる段階を含む、細菌の生育および/または増殖を抑制する方法。
【請求項59】
量が細菌を死滅させるのに十分な量である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
細菌がグラム陽性菌である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
細菌がグラム陽性口腔細菌である、請求項58記載の方法。
【請求項62】
細菌が連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.)である、請求項60記載の方法。
【請求項63】
細菌がミュータンス連鎖球菌である、請求項60記載の方法。
【請求項64】
接触させる段階が、粘膜表面に接触させることを含む、請求項58記載の方法。
【請求項65】
接触させる段階が、口腔粘膜に接触させることを含む、請求項58記載の方法。
【請求項66】
ミュータンス連鎖球菌の生育および/または増殖を抑制するのに十分な量で、請求項1〜53のいずれか一項記載のペプチドを歯および/または口腔粘膜に接触させる段階を含む、虫歯の形成を抑制する方法。
【請求項67】
接触させる段階が、練り歯磨き、マウスウォッシュ、美白用細片または溶液、ロゼンジ、エアロゾル、および綿棒からなる群より選択される組成物を歯および/または口腔粘膜に接触させることを含む、請求項58記載の方法。
【請求項68】
感染症を抑制するための薬剤の製造における、請求項1〜53のいずれか一項記載の抗菌ペプチドの使用。
【請求項69】
虫歯の形成を抑制するための薬剤の製造における、請求項1〜53のいずれか一項記載の抗菌ペプチドの使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−516688(P2010−516688A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546483(P2009−546483)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/051101
【国際公開番号】WO2008/140834
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(509199889)シー3 ジャン インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】