説明

抗菌・消臭組成物およびこれを用いた抗菌・消臭方法

【課題】不快臭を消臭する消臭効果と不快臭発生原因を抑える抗菌効果とを併せ持ち、不快臭の発生を抑えることができ、なおかつ、不快臭を消臭できる抗菌・消臭組成物および抗菌・消臭方法を提供する。
【解決手段】抗菌性無機金属含有成分(A)と、窒素含有高分子(B)と、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンまたは糖アルコール(C)とを含有する抗菌・消臭組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・消臭組成物およびこれを用いた抗菌・消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌を訴求した商品は、世界的規模の感染症の流行等にも伴い、近年、高い関心が向けられている。一方、住宅の高気密化と生活者の清潔意識の変化に伴って、空間の臭気に対する消費者の意識が高まっている。
一般に家庭における不快臭としては、トイレ空間の糞尿由来臭、台所の生ゴミ臭、リビングの煙草臭、玄関の靴臭、寝具など布製品の臭い、生活者の汗や体臭等、多種多様な臭気が挙げられるが、これらはいずれも通常の生活の中で生じる生活臭である。
これら生活臭の多くには、微生物が関与している。例えば、台所の生ゴミ臭は、微生物が食物を栄養源として繁殖し、食物を腐敗させた腐敗臭である。また、トイレ空間のこもった臭いは、飛び散った尿を栄養源として微生物が繁殖する際に発生するアンモニア臭がその原因のひとつである。さらには、布製品の悪臭は、布製品に付着した皮脂を微生物が分解して中鎖アルデヒドを発生させることが原因の一つである。
【0003】
従来から、このような不快な臭気成分を消すために、様々な消臭剤や住居用洗剤等が提案されている。その中で、既に発生してしまった臭いに対しては、物理的方法及び化学的手法が提案されている。
物理的方法としては、(方法1)窓の開閉による換気、空調設備による強制換気等が挙げられる。その他、(方法2)活性炭等の吸着力を利用して不快成分を吸着消臭する吸着剤や、シクロデキストリンに代表される、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンの包接力を利用した消臭剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、化学的手法としては、(方法3)各種、芳香・消臭剤等の薬剤処理法や、(方法4)マスキング法がある。
(方法3)としては、酸、アルカリ、酵素等により消臭(臭気成分を化学的中和あるいは分解)する方法が一般的である。例えば、特許文献2には特定の酵素を含有することにより便器などの悪臭を除去する技術が開示されている。また、特許文献3には、ケイ酸金属塩または含アルミニウムケイ酸金属塩を有効成分とし、酸化・還元反応と吸着作用の相乗効果により消臭すると考えられる消臭剤組成物が開示されている。
(方法4)は、一般家庭で最も実施されている方法であり、消臭剤自身の有する香気等によって不快臭をマスクすることにより消臭するものである。
【0005】
また、近年、無機系抗菌剤も近年注目されている。銀の抗菌作用はよく知られており、銀含有成分については広く開発されている(例えば、特許文献4〜特許文献5参照)。
【特許文献1】特表2002−504837号公報
【特許文献2】特表平11−504977号公報
【特許文献3】特開昭63−220874号公報
【特許文献4】特開平11−279453号公報
【特許文献5】特開平6−247817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまでの不快臭を消臭する提案(方法1〜方法4)は、臭いを消臭するのみ提案であった。また、従来の無機系抗菌剤では、不快臭の原因である臭いの発生に関与する微生物の増殖を十分に抑えることができず、不快臭の発生を十分に抑えることはできなかった。
【0007】
そこで、本発明においては、不快臭を消臭する消臭効果と不快臭発生原因を抑える抗菌効果とを併せ持ち、不快臭の発生を抑えることができ、なおかつ、不快臭を消臭できる抗菌・消臭組成物を提供することを課題とする。
また、本発明においては、本発明の抗菌・消臭組成物を用いて、効果的に抗菌・消臭できる抗菌・消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、微生物が悪臭を発生させることが悪臭の主な原因であることに着目し、抗菌性無機金属含有成分と特定の高分子とを含有する組成物とすることにより、悪臭を発生させる微生物の活動を抑制して不快臭の発生を抑えることができ、なおかつ、不快臭を消臭できる抗菌効果および消臭効果を有する組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。つまり、以下の手段を提案する。
【0009】
本発明の抗菌・消臭組成物は、抗菌性無機金属含有成分(A)と、窒素含有高分子(B)と、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンまたは糖アルコール(C)とを含有することを特徴とする。
本発明の抗菌・消臭組成物においては、前記(B)が塩基性ポリアミノ酸を含有するものとすることができる。
また、本発明の抗菌・消臭組成物においては、前記(A)が、銀、銅、亜鉛から選択される少なくとも1種の抗菌性無機金属を含有するものとすることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の抗菌・消臭方法は、上記のいずれかに記載の抗菌・消臭組成物を、噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の最大粒径が300μm以下となるように噴霧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、不快臭を消臭する消臭効果と不快臭発生原因を抑える抗菌効果とを併せ持つ抗菌・消臭組成物を提供できる。
また、本発明の抗菌・消臭組成物を用いて、効果的に抗菌・消臭できる抗菌・消臭方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪抗菌・消臭組成物≫
本発明の抗菌・消臭組成物は、抗菌性無機金属含有成分(A)と、窒素含有高分子(B)と、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンまたは糖アルコール(C)を含有する。
以下、詳細に説明する。
【0013】
<抗菌性無機金属含有成分:(A)成分>
本発明の(A)成分としては、抗菌性を有する無機金属を含有する成分であれば特に限定されないが、好ましくは固体状であり、抗菌性無機金属の酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩あるいは金属そのものを担体に担持した粒子状のもの等が好ましく選ばれる。
ここで、担体の具体例としては、リン酸塩類(リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジリコニウム等)、無機化合物(ゼオライト、粘土鉱物、シリカゲル等)等が挙げられる。これらの担体は、単独または2種以上を用いてもよい。中でも、金属酸化物の担体に抗菌性無機金属酸化物を担持させたものが、担持強度の点から、より好ましい。
【0014】
(A)成分中の抗菌性無機金属としては、抗菌性を有する金属であれば特に限定されないが、抗菌性に優れる銀、亜鉛、銅等が好ましく選ばれる。さらに好ましいものとして、抗菌性の効果の点から、銀が選ばれる。これら抗菌性無機金属は、単独または2種以上を用いてもよい。
【0015】
本発明の最も好ましい抗菌性無機金属酸化物と担体との組合せは、コロイド状アルミナシリカに酸化銀を担持させたものである。(A)成分の具体例としては、例えば、(触媒化成工業(株)製)、商品名「ATOMY BALL−S」、「ATOMY BALL−L」、「ATOMY BALL−UA」のナノ粒子銀系無機抗菌剤などを使用することができる。
なお、(A)成分は、一種または2種以上を混合して用いることができる。また、(A)成分の組成物中の含有量としては、例えば、抗菌性無機金属として銀を含む(A)成分の場合、銀元素濃度に換算して0.0001質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは、0.0001〜0.005質量%である。組成物中に抗菌性無機金属として銀を0.0001質量%以上含有することで抗菌能力が得られる。また、組成物中の銀の含有量が0.005質量%以下であれば、充分な抗菌能力が得られ、しかも、経済的にも許容される。
【0016】
また、(A)成分が粒子状である場合の組成物中における分散粒子の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、さらには、1〜100nmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径とは、数平均粒子径であり、光散乱法により測定されるものである。分散粒子の平均粒子径が500nm以下であれば粒子の分散状態が安定なものになり、さらに100nm以下であれば粒子の分散状態がより安定なものとなる。また、分散粒子の粒子径が小さいほど、菌と分散粒子との接触が容易となる観点から抗菌性に有利に作用する。
【0017】
また、本発明の(A)成分は、上記のものに限定されるものではなく、例えば、溶剤に溶解可能な抗菌性無機金属を含有する成分であってもよい。溶剤に溶解可能な抗菌性無機金属としては、溶剤である水に可溶な亜鉛化合物が挙げられる。亜鉛化合物としては、具体的には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛等を用いることができ、中でも硫酸亜鉛を用いることが好ましい。また、抗菌性無機金属として硫酸亜鉛を含む(A)成分の場合、組成物中における硫酸亜鉛の含有量は、無水物換算で0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0018】
<窒素含有高分子:(B)成分>
本発明の(B)成分としては、窒素含有高分子であれば特に限定されないが、例えば、ビニルピロリドン、エチレンイミン、アクリルアミド、および塩化ジメチルジアリルアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上を重合させてなるホモポリマーやコポリマー、またはアクリル酸および/またはその塩とアクリルアミドとのコポリマー、またはポリ(メタ)アクリルアミドの部分加水分解物(「ポリ(メタ)アクリルアミド」はポリアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを示す。)等が挙げられる。また、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドのコポリマーの他、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン化セルロース、ポリアミノ酸などの塩基性高分子も挙げられる。これらの(B)成分は、1種または2種以上を用いることができるが、2種以上混合して用いるのが、抗菌・消臭の観点から好ましい。
【0019】
これら(B)成分の中では、(A)成分を安定的に配合でき、着色や沈降を生じない塩基性ポリアミノ酸がより好ましい。塩基性ポリアミノ酸を構成するモノマーとしては、リジン、ヒスチジン、アルギニンなどが挙げられる。さらに好ましいものとして、抗菌効果の点から、ポリリジンが選ばれる。
ここで塩基性高分子とは、側鎖あるいは構成モノマー単位中に、アミノ基等を有しており、水溶液にしたときに塩基性を示し、酸性下でカチオン性を示すものをいう。
【0020】
ポリリジンは、必須アミノ酸であるL−リジンの重合体である。ポリリジンには、α-ポリリジンやε-ポリリジンがあるが、L−リジンが直鎖状に結合した下記一般式(1)に示されるε-ポリリジンを用いることが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
本発明において、ε―ポリリジンは何れの方法によって得られたものであってもよく、具体的には例えば、特許第1245361号に記載のストレプトマイセス・アルプラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを、グリセリン5質量%、酵母エキス0.5質量%、硫酸アンモニウム1質量%、リン酸水素二カリウム0.08質量%、リン酸二水素カリウム0.136質量%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05質量%、硫酸亜鉛・7水和物0.004質量%、硫酸鉄・7水和物0.03質量%、pH6.8に調整した培地にて培養し、得られた培養物から分離・採取することによって得られたε-ポリリジンを用いることができる。
【0023】
また、ε―ポリリジンは、ペプチド合成に常用される固相法などを用いて、容易に合成することが可能であり、市販のペプチドシンセサイザーなどによっても合成できる。さらに、ε―ポリリジンは、リジンのペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を利用する遺伝子工学的手法を用いて、微生物細胞、植物細胞、動物細胞において大量に生産することが可能である。ここで得られた粗合成ペプチドは、ゲル濾過、順相、逆相HPLC、イオン交換カラム精製など、通常の蛋白質・ペプチドの精製に用いられる手段により、更に高純度化することが可能である。
【0024】
また、本発明で用いる(B)成分の数平均分子量は、通常500〜100,000であり、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。具体例として、例えば、ε―ポリリジンであるチッソ社製ポリリジン(数平均分子量約4000、25%水溶液)が挙げられる。
【0025】
本発明で(B)成分として用いる塩基性高分子は、水溶液中で塩基性を示し、酸性下でカチオン性を示すものであり、(A)成分に加えることで抗菌効果を向上する。特に、塩基性ポリアミノ酸であるε―ポリリジンは、高い除菌性能を有し、食品添加物であると同時に、食品の防腐剤として用いられており、(B)成分として非常に好ましく使用できる。
(B)成分の組成物中の含有量は、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.005〜1質量%、さらに好ましくは0.005〜0.5質量%である。(B)成分の組成物中の含有量を0.001質量%以上にすることにより抗菌効果が充分に得られ、上限値の10質量%以下とすることにより、抗菌・消臭組成物を使用した後のシンク、壁、床等の表面上で、べたつき等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0026】
本発明で用いる(A)成分および(B)成分は、悪臭を発生させる微生物の活動を抑制することができるものであり、特に、布製品に付着した皮脂を分解して中鎖アルデヒドを発生させる微生物の活動を効果的に抑制することができる。布製品に付着した皮脂を分解して中鎖アルデヒドを発生させる微生物としては、例えば、表皮ブドウ球菌が挙げられる。
【0027】
<α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンまたは糖アルコール:(C)成分>
本発明の(C)成分としては、例えば、デキストリン、クラスターデキストリン、α‐シクロデキストリン及びその誘導体、β‐シクロデキストリン及びその誘導体、γ‐シクロデキストリン及びその誘導体などのα−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカン、またはソルビトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトールなどの糖アルコールを挙げることができる。なお、これらの(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0028】
(C)成分の具体例としては、クラスターデキストリン(商品名:江崎グリコ株式会社製)や、デキストリンであるサンデック♯30(商品名:三和澱粉工業株式会社製)、デキストリンであるサンデック♯150(商品名:三和澱粉工業株式会社製) 、デキストリンであるサンデック♯300(商品名:三和澱粉工業株式会社製)、デキストリンであるサンデック♯185N(商品名:三和澱粉工業株式会社製)、α−シクロデキストリン (水澤化学工業株式会社製) 、D−ソルビトール液(東和化成工業社製)が挙げられる。
【0029】
(C)成分の組成物中の含有量は、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。(C)成分は、布製品の悪臭であり、既に発生してしまっている中鎖アルデヒドに化学的に作用して消臭することができるものである。
【0030】
(C)成分の組成物中の含有量を0.01質量%以上にすることにより、例えば、本発明の抗菌・消臭組成物を布製品の消臭として塗布した場合に、布製品に発生している中鎖アルデヒドの消臭効果が充分に得られる。なお、(C)成分は、悪臭である中鎖アルデヒドを持続的に消臭できる効果があることから、布製品表面に残存させることが好ましく、この点においても(C)成分の組成物中の含有量を上記の範囲とすることが好ましい。
また、(C)成分の組成物中の含有量を上限値である20質量%以下にすることで、例えば、本発明の抗菌・消臭組成物を布製品の消臭として塗布した場合に、布製品の表面上に粉ふきやべたつき等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0031】
<その他の任意成分>
本発明の抗菌・消臭組成物には、通常添加される添加剤等を使用することができる。例えば、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分の他、以下に例示する界面活性剤、溶剤、香料、pH調整剤や、その他公知の水溶性高分子、安定化剤、天然抽出物、色素などを任意に配合することができる。
【0032】
〔界面活性剤〕
洗浄あるいは起泡等の目的により、界面活性剤を適宜配合することができる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、通常使用されるものを用いることができる。
具体例としては、陰イオン性界面活性剤では、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられ、対イオン(陽イオン)は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルカノールアミンイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
両性界面活性剤では、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。
界面活性剤は、単独または2種以上を用いてもよい。
【0033】
〔溶剤〕
本発明の抗菌・消臭組成物には、成分の溶解等の目的により、溶剤を適宜配合することができる。溶剤の具体例としては、水の他、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、アルキルグリセリルエーテル、フェノキシエタノール等が挙げられる。上述した溶剤の中でも特に、布製品や家具などの抗菌・消臭の対象物に組成物を塗布したことによるシミ発生等の悪影響のなさの点から、水以外の溶剤としてはエタノールが好ましい。水以外の溶剤の含有量としては、5〜60質量%が好ましく、さらに、10〜30質量%が好ましい。溶剤は、単独または2種以上を用いてもよい。
【0034】
〔香料〕
本発明の抗菌・消臭組成物には、賦香等の目的により、香料を適宜配合することができる。香料成分は、特に限定するものではないが、具体例としては、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料および植物からの天然香料を挙げることができる。香料成分は、単独または2種以上を用いてもよく、通常複数が用いられる。
【0035】
〔pH調整剤〕
本発明の抗菌・消臭組成物には、pH調整等の目的により、pH調整剤を適宜添加することができる。pH調整剤は、特に限定するものではないが、具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クエン酸及びその塩、安息香酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、塩酸、硫酸及びその塩、リン酸及びその塩などが挙げられる。中でも特に、布製品や家具などの抗菌・消臭の対象物に組成物を塗布したことによる粉ふき等の悪影響のなさの点から、水酸化カリウム、安息香酸が好ましい。
【0036】
≪抗菌・消臭方法≫
本発明の抗菌・消臭組成物は、適切な容器に収容されて製品とされる。ここで用いられる容器としては、抗菌・消臭組成物を抗菌・消臭の対象物に噴霧可能な噴霧装置を備える容器であることが望ましい。また、本発明の抗菌・消臭組成物の使用方法は、特に限定されるものではなく、例えば、任意の方法により抗菌・消臭の対象物に噴霧する方法などによって用いることができる。ここで用いられる噴霧装置としては、トリガー式スプレーヤーにより噴霧する方式のもの、泡状もしくは霧状のエアゾールより噴霧する方式のものなどが挙げられる。さらに好ましくは霧状トリガー式スプレーヤー、霧状エアゾール、霧状ディスペンサー等が挙げられ、特に霧状トリガー式スプレーヤーが好ましい。
【0037】
また、本発明の抗菌・消臭組成物を噴霧する方法においては、噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の最大粒径が、望ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特には100μm以下とする。噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の最大粒径を300μm以下にすることにより、抗菌・消臭組成物が素早く乾くため好ましい。また、300μm以下にすることにより、噴霧後の抗菌・消臭組成物の凝集を防ぎ、均一に噴霧することができる。なお、抗菌・消臭組成物の粒径が小さい程、速乾性が良好であるので、その観点では下限値を規定する技術的意義はないが、最小粒径は10μm以上、好ましくは15μm以上、特には30μm以上であることが好ましい。噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の最大粒径が10μm以上であることにより、噴霧後の舞い上がりを効果的に防ぎ、不要部分への余分な噴霧を防ぎ、効率よく噴霧することができる。
【0038】
なお、噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の粒径は東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製の粒度分布測定装置(LDSA−1300A:商品名)を用いて、以下の条件で測定することができる。
使用レンズ:300mm
焦点距離:30cm
噴霧距離:10cm
解析モデル式:ロジン・ラムラー式
【0039】
また、噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の粒径は、例えば、噴霧装置を変更すること、スプレーであればノズル部分の口径をかえること、圧力弁により噴霧圧量を調整すること等、エアゾールであれば、ガス圧を調整すること等の方法により調整できる。
【0040】
なお、本発明の抗菌・消臭組成物は、上述したように、抗菌・消臭の対象物に霧状トリガー式スプレーヤーにより噴霧する方法によって用いることができるが、ボトル口より洗浄剤を吐出する方法や、抗菌・消臭組成物を含浸させた不織布等のシートにより抗菌・消臭の対象物に塗布する方法等を用いてもよい。
【0041】
また、本発明の抗菌・消臭組成物の使用場所は、特に限定されるものではなく、例えば、トイレ、浴室、キッチン、洗面所等で使用される。また、本発明の抗菌・消臭組成物によって抗菌・消臭する対象物としては、例えば、不快な臭いのする空気や、不快な臭いのする場所にある寝具・カーテンなどの布製品、家具などを挙げることができ、特に、寝具・カーテンなどの布製品からの中鎖アルデヒドに起因する悪臭の消臭、中鎖アルデヒドを発生させる微生物の抗菌に効果的に使用される。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下に示す「%」は、特に断りがない限り純分換算の「質量%」である。
【0043】
(実施例1〜11)(比較例1〜4)
抗菌・消臭組成物の調製に使用した原料を以下に列挙する。
原料(メーカ、商品名):
(A)成分
銀ナノコロイド:「ATOMYBALL UA」、銀ナノコロイド含有量*1:1.5質量%、Ag含有量*2:0.0686質量%、(触媒化成社製)
なお、上記および以下に示す表1および表2において、符号*1で示す銀ナノコロイド含有量とは、乾燥・強熱残分の固形分換算値(140℃、2時間)を意味する。また、上記の符号*2で示すAg含有量の測定方法を以下に示す。
*2:Ag含有量の測定方法
ATOMYBALL UAの原液を硝酸(試薬特級、和光純薬工業)および蒸留水で0.1M硝酸水溶液となるように希釈し、測定試料を作成した。一方、銀イオン標準溶液(1000ppm溶液、和光純薬工業)を測定試料と同様の操作で0.1M硝酸水溶液となるように希釈し、1ppmおよび0.01ppmの標準溶液を作成した。そして、測定試料と標準試料の銀濃度を誘導結合プラズマ原子発光分析装置(Perkin Elmer社製(Optima5300 DV)を用いて測定し、得られた測定試料の発光強度を、標準溶液を用いた検量線法によりAg濃度に換算して定量値を得た。
【0044】
(B)成分
ポリリジン:(チッソ社製)
(C)成分
デキストリンA:「クラスターデキストリン」DE値*3:5%未満(江崎グリコ社製)
デキストリンB:「サンデック♯300」DE値*3:26〜30%(三和澱粉工業社製)
デキストリンC:「サンデック♯185N」DE値*3:16〜21%(三和澱粉工業社製)
α-シクロデキストリン:DE値*3:5%未満(水澤化学社製)
ソルビトール:「D−ソルビトール液」(東和化成工業社製)
*3:DE値(Dextrose Equivalent)
澱粉糖類の加水分解率の指標となる単位で下式によって求められる。
DE値 = 直接還元糖(グルコース換算)÷固形分×100
【0045】
エタノール:試薬(関東化学)99.5V/V%
安息香酸:(伏見製薬社製)
水酸化ナトリウム:(日本曹達社製)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル:「レオコールSC−120」(ライオン社製)
【0046】
<評価方法>
調製した抗菌・消臭組成物を用いて、抗菌試験、消臭試験、実使用における防臭試験を以下に示す方法にて実施した。
【0047】
〔抗菌試験〕
JIS Z 2801に準拠し実施した。
試験菌:大腸菌、黄色ブドウ球菌
テストピース:抗菌・消臭組成物2.0mLを塗布した5cm×5cmのタイル
「試験方法」
培養した試験菌を1/500NBの液体培地によって懸濁して2.5〜10×10個/mLの濃度に調整した菌液0.4mLを、滅菌シャーレに入れたテストピース上にのせ、4cm×4cmの強化ポリエチレンフィルム(ストマッカーフィルム400型、オルガノ製)を密着させ、温度35±1℃、湿度90%以上の条件で24時間培養して生菌数を測定し、除菌活性値を求めた。
(評価基準)
○ 除菌活性値が2以上
△ 除菌活性値が1以上2未満
× 除菌活性値が1未満
【0048】
〔消臭試験〕
[中鎖アルデヒド臭抑制試験]
450mLのガラスビン内に、5cm×5cmの綿布(かなきん3号)を入れ、1%ノナナール/エタノール水溶液1mLを垂らし、抗菌・消臭組成物1mLを入れて、密閉して室温にて2時間放置後、フタを開放し、ビン内の臭気強度を6段階臭気強度表示法によりパネラー5名で評価し、その平均により中鎖アルデヒド臭抑制効果を、下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:効果がある(6段階臭気強度平均値:2未満)
△:効果がややある(6段階臭気強度平均値:2以上4未満)
×:効果がほとんどない(6段階臭気強度平均値:4以上)
【0049】
〔実使用における防臭試験〕
60名の主婦に霧スプレー容器(ライオン(株)製エフイン500ナチュラルセットウォーター容器)に入れた抗菌・消臭組成物を2週間使用してもらい、布製品の防臭効果について、「効果がある」、「どちらともいえない」、「効果がない」の3段階評価をしてもらった。
(評価基準)
○:効果がある(3段階評価にて効果があると回答した割合が50%以上)
△:やや効果がある(3段階評価にて効果があると回答した割合が30%以下)
×:効果がほとんどない(3段階評価にて効果があると回答した割合が10%以下)
【0050】
なお、上記霧スプレー容器で噴霧した場合の粒径の測定を以下の方法により行った。
(粒径測定)
東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製の粒度分布測定装置LDSA−1300A(商品名)を用いて、以下の条件で測定した。
使用レンズ:300mm
焦点距離:30cm
噴霧距離:10cm
解析モデル式:ロジン・ラムラー式
測定結果は下記の通りであった。
最小粒径:15μm
最大粒径:250μm
以上の方法により得られた各評価結果を表1および表2に示す。表3および表4には、任意成分の一つである香料組成物の組成(質量%)を示す。
【0051】
表1より、実施例1〜実施例11では、抗菌試験、消臭試験、実使用における防臭試験の結果に×の評価がなく、消臭効果と抗菌効果とを併せ持つことが確認できた。また、抗菌性無機金属含有成分(A)として銀ナノコロイドを用いた実施例1〜実施例7、実施例9〜実施例11では、抗菌試験、消臭試験、実使用における防臭試験の結果に△および×の評価がなく、より優れた抗菌効果が得られることが確認できた。
これに対し、表2に示すように、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカン(C)を含まない比較例1、2、4では、消臭効果の評価が×となった。さらに、窒素含有高分子(B)も含まない比較例2では、抗菌効果および実使用における防臭試験の評価も×となった。また、抗菌性無機金属含有成分(A)を含まない比較例3では、抗菌効果および実使用における防臭試験の評価が×となった。また、抗菌性無機金属含有成分(A)として硫酸亜鉛を用いた比較例4では、抗菌効果の評価が△となり、実使用における防臭試験の評価が×となった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性無機金属含有成分(A)と、窒素含有高分子(B)と、α−1,4−グルコシド結合を有する高分子水溶性グルカンまたは糖アルコール(C)とを含有することを特徴とする抗菌・消臭組成物。
【請求項2】
前記(B)が塩基性ポリアミノ酸を含有することを特徴とする請求項1に記載の抗菌・消臭組成物。
【請求項3】
前記(A)が、銀、銅、亜鉛から選択される少なくとも1種の抗菌性無機金属を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌・消臭組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の抗菌・消臭組成物を、噴霧直後の抗菌・消臭組成物の粒子の最大粒径が300μm以下となるように噴霧することを特徴とする抗菌・消臭方法。

【公開番号】特開2007−332130(P2007−332130A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52911(P2007−52911)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】