説明

抗菌創傷接触層

本発明は、親水コロイド分散を有する製剤と抗菌金属を含む支持体材料とを含む創傷接触層に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌創傷接触層及びその創傷治療のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトのための治療法としては多数の軟膏類及び他の組成物が知られており、数十年にわたり使用されてきた。これらの軟膏は一般的に健康な皮膚又は一部の粘膜、例えば眼などに対する用途の、半固体の組成物である。これらの軟膏又は製剤により通常局所作用が達成されるか、有効薬剤成分が経皮投与されるか、又は皮膚に対する軟化作用が発揮されることになる。
【0003】
さらに、創傷治療のための多数の軟膏が知られている。例えば、特許文献1においては、ゲルとして製剤され、少なくとも1種のゲル形成多糖類及びヘキシレングリコールを含む創傷用軟膏が記載されている。特にゲル形成多糖類としてはカルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムが使用されるべきである。この組成物は抗菌作用を有し、線維形成に対する毒性が無いものであるべきである。
【0004】
さらに、特許文献2においては、例えば創傷治療又は小穴治療の際に用いる、皮膚保護用ペーストが記載されており、該ペーストはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、水、油、及び脂肪酸エステルを含んだゲルとして製剤される。このゲルは少なくとも20重量%の水及び少なくとも45重量%の親水コロイドを含む。
【0005】
さらには、限られた分量の水を吸収し、創傷治療に用いることが出来る親水軟膏が知られている。これらの軟膏は様々なモノグリセリド類、ジグリセリド類、及びトリグリセリド類、並びに非極性油の混合物を含み、例えばいわゆる軟膏圧迫ガーゼ製造のための担体材料上のAtrauman(登録商標)の製品中に加工される。
【0006】
また、無菌創傷被覆材が特許文献3に開示されており、該創傷被覆材は軟膏を含浸した担体材料及びポリビニルピロリドンの水溶性フィルムを有する。該軟膏は親水性又は疎水性軟膏であってもよい。
【0007】
特許文献4からは、滅菌可能なペースト又はクリームが知られており、該ペースト又はクリームはエマルジョン及び水不溶性ゲル形成材料を含み、該水不溶性ゲル形成材料は架橋したカルボキシメチルセルロースとすることができる。該エマルジョンは、順に、油又はろう、水、及び乳化剤を含み、ここで水含有量は少なくとも40重量%に達する。
【0008】
特許文献5からは、創傷治療のための被覆材が知られており、該被覆材は親水コロイド粒子が分散した疎水性エラストマーマトリクスを含む。該マトリクスはさらに55から90重量%の非極性油及び10よりも高いHLB値を有する界面活性剤を含むとされている。
【特許文献1】欧州特許第621 031号
【特許文献2】欧州特許第107 526号
【特許文献3】欧州特許第65 399号
【特許文献4】WO 96/036,315
【特許文献5】WO 01/070,285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
技術的現状に基づき、本発明の目的は、創傷により生じる創傷滲出液を吸収し、有効成分の放出により創傷の治癒過程を最適に補助し得る創傷接触層を提供することである。加えて、創傷により生じる創傷滲出液を吸収し、有効成分を投与し、湿潤な創傷治癒環境を供し得る創傷接触層が提供されるべきである。特に中程度から重度の滲出を伴う創傷に使用され得る創傷被覆材も提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、
a)60から95重量%の親水性基剤を含み、該親水性基剤中に5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が少なくとも0.5から50重量%の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ創傷治療用組成物;及び
b)前記組成物のための抗菌作用を有する金属を含んだ支持体;
を含む創傷接触層によって達成される。
【0011】
以降、全ての含有量情報は、特に断りがない限り、本発明と関連して、前記医薬組成物の総重量に対する重量パーセントとして理解されるべきである。医薬組成物は、本発明と関連して、単相又は多相であり、少なくとも1種の乳化剤の存在によりエマルジョンとして提供される又はエマルジョンを形成し得る親水性基剤として理解されるべきである。これらのエマルジョンは少なくとも1つの水相及び/又はゲル相並びに少なくとも1つの油相を含むエマルジョンであり得る。
【0012】
本創傷接触層の1つの長所は、親水性基剤中に分散した親水コロイドの含有により、前記組成物が極めて速やかに特に大量の液体、例えば創傷滲出液を吸収し得ることである。該親水性基剤は液体と接触後極めて短時間でエマルジョンを形成し、その際、第2のステップにおいて、エマルジョン中の水が該基剤中に分散して分布する親水コロイドにより吸収される。この工程は並行的にも行われ得る。各ケースにおいて、該親水コロイドは形成中のエマルジョンとともに第2の液体リザーバを形成する。前記支持体により、前記創傷接触層は容易に適用され、創傷の領域全体にわたって直接適用し得ることが保証される。ここで前記組成物は前記支持体の少なくとも片面に塗布されるか、又は他のどのような方法によって施されてもよい。該組成物を該支持体の両面に施すか、又は該組成物を該支持体に完全に染み込ませることも出来る。抗菌金属の放出はここで、特に創傷滲出液の吸収によって制御される。前記親水性基剤又は親水コロイドによってより多くの創傷滲出液が吸収される程、より多くの抗菌金属が放出される。従って、前記支持体層は、前記組成物によって制御された方法で放出され得る該金属のための貯蔵所に相当する。
【0013】
前記創傷接触層の第2の好ましい態様においては、前記親水性基剤は10重量%未満を有するか、又はむしろ無水であるべきである。この親水性基剤は従って単相混合物として入手可能で、少なくとも1種の乳化剤の存在により、例えば水が添加された際にエマルジョンを形成し得る。以降、本発明と関連して、これは該親水性基剤が微量の水を含み得るが、水含有量は該親水性基剤の重量に対し最大で1重量%であるべきことを意味する。
【0014】
他の好ましい態様においては、前記組成物はクリームの、クリーム基剤の、又は軟膏の親水性基剤を有する。前記親水性基剤は特に親水性クリーム若しくはクリーム基剤、又は親水性軟膏である。ここ及び本出願の文脈において、軟膏は単相系と理解されるべきであるが、クリームは二層又は多相系である。これらの製剤の正確な区別はさらなる製剤の分類においてもドイツ薬局方DAB9及びその注釈書において提供されており、それに対する参照が本明細書において明示されている。
【0015】
さらに、前記組成物はさらに10から30重量%の非極性脂質を含む親水性基剤を含むこともできる。
【0016】
本発明の範囲において、「脂質」という表現は、脂肪類、油類、ろう類、その他の総称として用いられる。また、「油相」及び「脂質相」という概念は同義のものとして用いられる。脂質類はその極性において他と異なる。水に対する界面張力を脂質又は脂質相の極性の指標として採用することが既に提案されている。これは、当の脂質相の極性が大きいほど、この脂質相と水との間の界面張力が低いことを意味する。本発明によれば、界面張力は特定の油成分の極性の1つの可能な指標として考えられる。界面張力は2相間の界面層中の1メートルの長さを有する仮想の線上に働く力である。この界面張力の物理単位は伝統的に力/長さの関係から算出され、通常mN/mで表される。これは界面層を減ずる傾向を示す時に正符号を有する。逆の場合、これは負の符号を有する。本発明の意味においては、脂質類は特に水に対する界面張力が20mN/m未満である場合は極性であると考えられ、水に対する界面張力が特に30mN/m超である場合は非極性であると考えられる。水に対する界面張力が20から30mN/mの間にある脂質類は一般的に半極性と呼ばれる。
【0017】
非極性脂質類は特に、分岐及び非分岐炭化水素及び炭化水素ろう、特にワセリン、ペトロラタム、パラフィン油、鉱油、及びポリイソブテンの群より選択される脂質類である。
【0018】
非極性脂質成分に加えて、本発明に係る親水性基剤は極性及び半極性脂質類も含み得る。極性又は半極性脂質類は、例えば、脂肪酸トリグリセリド類;脂肪酸ジグリセリド類;脂肪酸モノグリセリド類;又は例えばジグリセリン若しくはトリグリセリンの完全若しくは部分脂肪酸エステル類等のグリセロールオリゴマーの脂肪酸エステル類;の群からのものである。トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドエステル類は、8から24、特に12から18個のC原子の鎖長を有する、飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐のアルカン炭酸類であり得る。前記脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸ジグリセリド類、又は脂肪酸モノグリセリド類は、例えば合成、半合成及び天然の脂肪類又は油類の群から有利に選択され得る。
【0019】
また、極性及び非極性脂質の部分並びに少なくとも0.5−30重量%の乳化剤を含み、非極性脂質類の部分に対する前記親水性基剤における半極性及び極性脂質類の部分が脂質の全含有量において1:1超、特に2:1超、また非常に特別には3:1から10:1の間である混合物は、特に本発明に関連する親水性基剤として考えられる。
【0020】
本発明の組成物は特に、前記組成物の総重量に対し20−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類若しくはトリグリセリド類、及び/又はオリゴマーグリセロールの完全若しくは部分エステル類を含む親水性基剤を有する。該親水性基剤は、該組成物の総重量に対し特に30−70重量%、非常に特別には40−70重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はオリゴマーグリセロールの完全若しくは部分エステル類を含む。ここで、該組成物が10−50重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/又はトリグリセリド類、並びに10−30重量%のオリゴマーグリセロール、特にジグリセリン又はトリグリセリンの部分エステル類を含む場合、特に好都合である。
【0021】
さらなる特に好ましい態様においては、本発明の組成物は、前記組成物の総重量に対し40−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及びトリグリセリド類並びに/又はオリゴマーグリセロール、特にジグリセリン又はトリグリセリンの部分エステル類と、15−30重量%の非極性脂質類と、0.5−30重量%の乳化剤とを含む親水性基剤を有する。
【0022】
乳化剤は本発明と関連して界面活性剤の活性を有する物質として理解されるべきであり、従って水が前記親水性基剤に添加された際に多相性混合物、すなわちエマルジョンが生成し得る。本発明の組成物は特に乳化剤を含み、これにより水が添加された際に前記親水性基剤が油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)、油中ゲル型エマルジョン(G/Oエマルジョン)、水中油型エマルジョン(O/Wエマルジョン)、ゲル中油型エマルジョン(O/Gエマルジョン)、水中油中水型エマルジョン(W/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Gエマルジョン)、水中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中水型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、油中水中油型エマルジョン(O/W/Oエマルジョン)、又は油中ゲル中油型エマルジョン(O/G/Oエマルジョン)を形成し得るべきである。同様に好ましくは、O/Wエマルジョン若しくはW/Oエマルジョン又はO/Gエマルジョン若しくはG/Oエマルジョンを形成し得;またエチレン又はプロピレングリコール類若しくはエチレンプロピレングリコール類を含まない、即ちエチレン、プロピレン、又はエチレンプロピレングリコール単位を含むどのような物質も含まない乳化剤である。
【0023】
本発明の組成物はここで特に0.5−50重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に0.5−40重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤、特に1−20重量%の少なくとも1種の乳化剤、及び非常に特に好ましくは1−10重量%の少なくとも1種の乳化剤を有し得る。
【0024】
本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は従って10重量%未満の水と、5から40重量%の親水コロイドが分散している60から95重量%の親水性基剤を含み、親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種のO/W乳化剤を含む。しかし、非イオン性W/O乳化剤がO/W乳化剤の代わりに使用されてもよい。
【0025】
O/W型の乳化剤が使用される場合、例えば水によって全組成物を創傷から特に簡便に洗い落とし得ることが好都合である。
【0026】
【化1】

【0027】
第10版、Georg Thieme Publisher Stuttgart、ニューヨーク(1997)、1764頁に列挙された定義に従って3から18のHLB値を有する、少なくとも1種の非イオン性乳化剤を含む本発明の組成物を用いることがさらに好ましい。10から15のHLB値を有する非イオン性O/W乳化剤及び3から6のHLB値を有する非イオン性W/O乳化剤が本発明によれば特に好ましい。
【0028】
乳化剤又は乳化剤群、特に非イオン性O/W乳化剤群は:
− 一般式R−O−(CH2−CH2−O)n−Hを有する脂肪アルコールアルコキシレート類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪アルコールプロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から50の数字を表すもの;
− エトキシ化又はプロポキシ化ラノリンアルコール類;
− 一般式R−O−(CH2−CH2−O)n−R’を有するポリエチレングリコールエーテル類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するポリプロピレングリコールエーテル類であって、ここでR及びR’が独立に他の分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−Hを有する脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から40の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−R’を有するエーテル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するエーテル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が互いに独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が互いに独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− エトキシ化又はプロポキシ化の度合いが3から50の間である、飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐の脂肪酸類のポリエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル類又はポリプロピレングリコールグリセリン脂肪酸エステル類;
− 3から100のエトキシ化又はプロポキシ化の度合いを有する、エトキシ化又はプロポキシ化ソルビタンエステル類;
− 3から150の間のエトキシ化又はプロポキシ化の度合いを有する、エトキシ化又はプロポキシ化トリグリセリド類;
− 分岐又は非分岐のアルカン酸又はアルケン酸をベースとしたポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類であって、例えばソルベス型の、5から100のエトキシ化の度合いを特徴とするもの;
の群より有利に選択され得る。
【0029】
本発明の範囲において有利に使用され得る乳化剤は、さらに二炭酸エステル類又は三炭酸エステル類の群からの非イオン性W/O乳化剤である。マロン酸、コハク酸、及びアジピン酸のエステル類は特にこれらの中で適している。さらに、これらの中で特に好ましいのは、二炭酸類のエステル類、特にコハク酸のエステル類であり、これは飽和若しくは不飽和の、及び/若しくは直鎖又は分岐のC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー、特にジグリセリン若しくはトリグリセリンで生成される。飽和し分岐したC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー類との、特にジグリセリン又はトリグリセリンとのコハク酸のエステル類の非イオン性W/O乳化剤は、特に好都合であることが分かった。これらのうち極めて特別に適したものは二炭酸エステル類であり、これはコハク酸及び飽和し、分岐したC8−C24の脂肪アルコール類及びジグリセリンから生成される。このような乳化剤はINCI命名法ではコハク酸イソステアリルジグリセリルと呼ばれ、‘Imwitor(登録商標)780’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコールが含まれていない、即ちエチレングリコールのユニットを何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0030】
特に、イオン性O/W乳化剤も本発明と関連したO/W乳化剤として利用することが出来る。特にイオン性O/W乳化剤は、ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和又は不飽和の脂肪酸のモノグリセリド類及び/又はジグリセリド類のエステル類の群からO/W乳化剤として選択され得る。ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和脂肪酸類、特に乳酸及び/又はクエン酸のモノグリセリド類及び/又はジグリセリド類の部分的に中和されたエステル類はO/W乳化剤として特に好ましい。INCI命名法でグリセリルココエートクエン酸塩乳酸塩と呼ばれる乳酸及び/又はクエン酸のエステル類は、極めて特別に好ましい。これらの乳化剤は、例えば‘IMWITOR(登録商標)380’又は‘IMWITOR(登録商標)377’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコール類が含まれていない、即ちエチレングリコール単位を何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0031】
本発明によると、親水コロイドは、水に可溶性若しくは吸収性であり、及び/又は水で膨潤し、ゲルを形成する、親水性の合成又は天然ポリマー材料であると理解されるべきである。好ましくは、本発明の組成物は、例えばアルギン酸及びその塩並びにその誘導体、キチン又はその誘導体、キトサン又はその誘導体、ペクチン、セルロース又はセルロースエーテル若しくはセルロースエステル等のその誘導体、架橋又は非架橋カルボキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、寒天、グアールガム、又はゼラチンから選択される、合成又は天然ポリマー材料の親水コロイドを含む。セルロース又はその誘導体若しくは塩、アルギン酸又はその誘導体若しくは塩、並びにその混合物は、親水コロイドとして非常に好ましく用いられ得る。
【0032】
前記親水コロイドは、組成物中に繊維の形態並びに粒子及び/又は繊維の形態の両方で分散され得る。該親水コロイドは特に粒子の形態で存在し得る。前記組成物中の親水コロイドの割合は該組成物の総重量に対して5から40重量%に達する。親水コロイドの割合は該組成物の総重量に対して好ましくは5から30重量%の間、さらに好ましくは10から25重量%の間、特に好ましくは15から25重量%の間である。
【0033】
粒子形態で利用可能な親水コロイドであり、該粒子が該親水コロイド粒子に対し10重量%未満の水含有量を有する親水コロイドが、特に好ましい。分子内及び/又は分子間で混ざり合った、又は架橋した親水コロイドも好ましく用いられ得る。これらの親水コロイドは例えば水又は生理食塩水に不溶性であり、即ち、これらの親水コロイドはこれらの液体が添加された際に膨潤し、粒子が組成物内で分散するような内部凝集力を有する。
【0034】
特に好ましい態様によると、本発明の組成物はセルロース誘導体又はその塩、アルギン酸塩又はそれらの誘導体、及びキチン又はその誘導体若しくは塩の群から選択される少なくとも1種の親水コロイドを含有する。該親水コロイドの由来はここでは重要ではなく、即ちこれらの親水コロイドは植物若しくは動物由来の、又は合成的に、例えば微生物学的方法により製造されるものでよい。植物又は動物由来であって化学合成によって修飾された親水コロイドを用いることも可能である。
【0035】
特にセルロースエーテル類及びセルロースエステル類、並びにそれらの塩類は、本発明と関連するセルロース誘導体の群に含まれる。特にセルロースエーテル類として用いられるのはヒドロキシアルキルセルロース類;特に、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシブチルセルロース等の、ヒドロキシ−C1-6−アルキルセルロースであり、非常に好ましくはヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースである。セルロースエステル類として特に用いられるのはカルボキシアルキルセルロース類、特に、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、若しくはカルボキシブチルセルロース又はそれらの塩類等の、カルボキシ−C1-6−アルキルセルロースであり、非常に好ましくはカルボキシメチルセルロース若しくはカルボキシエチルセルロース又はそれらの塩類である。
【0036】
別の好ましい態様によると、前記組成物は少なくとも2種の異なる親水コロイドを含む。ここで、この少なくとも2種の親水コロイドを、セルロース誘導体又はそれらの塩類、特にセルロースエステル類又はそれらの塩類、アルギン酸塩類又はそれらの誘導体、及びキチン又はその誘導体若しくは塩類の群から選択するのが特に好都合であることが分かった。
【0037】
さらに、上記の種類の医薬組成物を含有する創傷軟膏も本発明の目的である。特に60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ創傷軟膏が本発明の目的である。一方で創傷滲出物が特にこの創傷軟膏によって特定の量で吸収され、他方で該液体の貯蔵器を形成する親水コロイドの量が創傷のための湿潤環境を提供することから、この創傷軟膏は特に中程度から重度の滲出性創傷に使用され得る。親水コロイドは創傷軟膏において液体貯蔵器として、また同時に保湿剤として作用する。
【0038】
前記創傷軟膏は特に好ましくは10重量%未満の水を有し、またさらに60から95重量%の親水性基剤を有し、その中に5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は20−35重量%の非極性脂肪類及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。本発明の創傷軟膏は非常に好ましくは10重量%未満の水とともに、60から95重量%の親水性基剤も含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又は一部のグリセロールオリゴマー、特にジグリセリン又はトリグリセリンと、20−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、前記創傷軟膏は無水である。
【0039】
60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含んだ、10重量%未満の水を有する組成物の、創傷を治療するための、特に火傷又は慢性創傷を治療するための創傷軟膏の製造を特に目的とした中間物の製造における使用も、結果として本発明の目的である。
【0040】
本発明のさらなる考えに従うと、支持体及び医薬組成物を含んだ創傷接触層も本発明の目的である。支持体と;60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含んだ、10重量%未満の水を有する組成物と;を含む創傷接触層は本発明の特有の目的である。前記支持体により、前記創傷接触層が直接創傷全体の表面にわたって適用出来るような適用し易い形態を維持することが保証される。前記組成物は該支持体の少なくとも片面に施すか、または別の方法でも施すことが出来る。該組成物を該支持体の両面に施すか、又は該組成物を該支持体に完全に染み込ませることも出来る。
【0041】
周知の創傷接触層に対するさらなる利点は、創傷に適用する際、通常これは手袋を装着した熟練した人員によって行われるが、本発明の創傷接触層は、手袋に接着したり、又はくっ付いたりしない。従ってこれらの創傷接触層は特に安全に扱われる。
【0042】
前記創傷接触層は特に好ましくは担体材料と10重量%未満の水を含んだ組成物を有し、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は20−35重量%の非極性脂肪及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。本発明に係る創傷接触層は非常に好ましくは担体材料と10重量%未満の水を含んだ組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散し、該親水性基剤は50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類の部分エステル類、特にジグリセリン又はトリグリセリンと、20−35重量%の非極性脂肪と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に該組成物は無水である。
【0043】
前記組成物中の脂肪酸グリセリド類の部分により、特に創傷の治癒を促す薬効成分が創傷の周囲の皮膚、いわゆる創傷周辺皮膚に対し提供される。
【0044】
様々な材料が支持体としてここで使用され得る。ポリマーフィルム類又はフォイル類、ポリマー発泡体類、並びに不織布類が織編生地類と同様にこの目的に用いられ得ることが特に見出された。本発明の創傷接触層における支持体は不織布及び編まれた、かぎ針編みされた、又は織られた生地等の織編生地であってもよい。自身の液体を吸収しない疎水性の編まれた、かぎ針編みされた、又は織られた生地は特に好ましく用いられ得る。本発明の創傷接触層は特にポリアミドかぎ針編み層を支持体として含む。
【0045】
織編支持体が用いられる場合、該材料は特に開口部も備え得る。即ち、該支持体は穴部を備え得るか、又は格子状であり得る。該支持体はかぎ針編みされた、織られた、又は編まれた生地であって、該材料が伸長されていない時に最大内側幅が0.3から3.0mm、好ましくは0.5から2.5mm、特に好ましくは0.5から2.0mmの範囲内にある穴を有するものとすることができる。この穴については円形、楕円形、方形、六角形、又は八角形等のどのような形態も想定され得る。これらのかぎ針編み生地は最小20g/m2から最大120g/m2までの単位面積当たり重量を特徴とする。
【0046】
さらに創傷の治癒を促進する少なくとも1種の物質が創傷接触層を通して放出され得る。これには特に殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌効果を有する物質が含まれる。特別な態様においては、該創傷接触層は少なくとも一種の殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌物質を含有する親水コロイドを含む。キトサン、銀、銀錯体類、銀塩類、亜鉛、亜鉛塩類、又は亜鉛錯体類はこれに特に適している。
【0047】
創傷の治癒を促進する薬剤を支持体に直接施すことも出来る。該創傷接触層のさらなる態様においては、支持体として、不織布、又は編まれ、かぎ針編みされ、若しくは織られた生地などの織編生地が特に有利に使用され、抗菌金属、好ましくは銀又は銀塩で被覆される。このような支持体が用いられる場合、前記組成物は該支持体の第1面上の金属又は金属塩に直接施すことが出来る。ここでは、該組成物が無水であれば特に好都合である。
【0048】
前記抗菌金属は前記支持体上の被覆物として施すことも出来、又はその担体上若しくは担体内に浸透させられ若しくは組み込まれる。ここで抗菌金属としては特に銀、銀塩類、又は銀錯体類を用いることが出来る。
【0049】
前記創傷接触層は抗菌金属及び無金属繊維を含む繊維類の繊維混合物から成る不織布材料を支持体として含むことがさらに規定され得る。
【0050】
特に好ましい態様によれば、前記支持体は多層から成り得る。この場合、該支持体の層の1つだけが前記創傷接触層により放出され得る抗菌金属を有し得る。または、同一又は異なる種類の抗菌金属が複数の層に貯蔵され得る。
【0051】
前記創傷接触層は、抗菌金属を24時間で37℃の下100mlの水中において500μg/100cm2未満、特に24時間で37℃の下、100mlの水中において400μg/100cm2未満、特別には24時間で37℃の下、100mlの水中において300μg/100cm2未満で放出することが特に規定され得る。しかし、該創傷接触層は24時間で37℃の下、100mlの水中において2μg/100cm2超を放出することが特に規定され得る。原子吸光分析が銀の放出量の測定に利用される。
【0052】
前記支持体が少なくともその第1面に組成物を含むという事実は、本発明に従うと、該組成物が金属を備えた担体上に直接配置されること、又は連続的若しくは不連続な金属層がまず第1面に施され、次いでそこに該組成物が施されることのいずれかを意味すると理解されるべきである。特に前記創傷被覆材のタンポン挿入が供されるべき場合、該組成物を両面に施すことも望ましくあり得る。この場合、両面に金属付与を施すか、又は該担体中に前記かぎ針編み材料を封入することが好都合である。
【0053】
前記組成物は特に軟膏又はクリームであり得るが、ここで金属を備えた前記支持体と患者の創傷との間の媒介物として働く。このようにして、創傷の金属に対する直接的な接触及び特にそこへの接着も確実に回避され得る。この軟膏又はクリームはさらに創傷周辺皮膚の領域において治療効果を示し得る。創傷接触層が前記組成物によって創傷と接触した際、前記金属、例えば銀は、該組成物の影響下で、特に創傷滲出液を介して創傷被覆材から放出され、該金属が該組成物を介して創傷に到達する。単体の銀が特に該金属として用いられ得る。該金属は前記支持体上に層として配置し得、又は該担体中に浸透され得る。
【0054】
特に好都合なのは組成物、特に軟膏、クリーム、又はクリーム基剤を支持体上に少なくとも50g/m2、特に少なくとも100g/m2、特に好ましくは100から450g/m2、非常に特別に好ましくは100から300g/m2の量で施すことである。
【0055】
本発明はさらにカバー層と創傷接触層とを有する創傷被覆材を含む。ここで該創傷接触層は親水性基剤を含有する組成物又は創傷軟膏を含み、該親水性基剤には親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は少なくとも1種の乳化剤を含む。本発明は特にカバー層と創傷接触層とから成る創傷被覆材を含み、該創傷接触層は10重量%未満の水を含んだ組成物を含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0056】
本発明は特にカバー層と創傷接触層とから成る創傷被覆材を含み、該創傷接触層は支持体と10重量%未満の水を含んだ組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤は0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。
【0057】
本発明のさらなる発展によれば、本発明はカバー層と、吸収層と、創傷接触層とから成る創傷被覆材も含み、ここで該創傷接触層は10重量%未満の水を有する組成物を含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤と共に含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散している。
【0058】
創傷被覆材は特にカバー層としてポリマーフォイル又はポリマーフィルムを有し得る。特に好ましいのは高い水蒸気透過性を有するポリマーフィルム類である。ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルポリアミドコポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートフィルム類は特にこの目的に対し適している。ポリウレタンフィルム、ポリエステルウレタンフィルム、又はポリエーテルウレタンフィルムは特にポリマーフィルムとして好ましい。15から50μm、特に20から40μm、極めて好ましくは25から30μmの厚さを有するポリマーフィルム類も非常に好ましい。前記創傷被覆材の該ポリマーフィルムの水蒸気透過性は好ましくは少なくとも750g/m2/24時間、特に少なくとも1000g/m2/24時間、極めて好ましくは少なくとも2000g/m2/24時間を示す(DIN 13726による測定)。
【0059】
本発明の創傷被覆材はさらにいわゆるアイランドドレッシングとして提供され得る。ここで、前記創傷接触層はカバー層よりも小さい被覆表面を有する。即ち、該創傷接触層はその外周に沿ったカバー層で囲まれている。該カバー層は、患者の皮膚に該創傷被覆材の全体がくっ付くか、接着するように、接着剤を有するか又は粘着性を示すようにすることが出来る。この接着剤の適用は連続又は不連続でもよく、あるいは特定の領域内のみに施し得る。使用される接着剤は通常の接着剤、特にアクリレート系接着剤又はポリウレタン類を基盤とした感圧性接着剤であってもよい。これは好ましくは特にポリウレタン類、特に水性ポリウレタン類に基づくゲル接着剤である。非常に好ましくは特に水性アクリレート類に基づくヒドロゲル接着剤である。
【0060】
本発明のさらなる発展によれば、前記創傷被覆材は表面全体にわたって接着剤で被覆されたカバー層を有し得る。ここで、この接着剤を備えた担体材料の水蒸気透過性は、好ましくは少なくとも1000g/m2/24時間、特に好ましくは少なくとも1200g/m2/24時間、さらに特別に好ましくは少なくとも2000g/m2/24時間に達する(DIN EN 13726による測定)。
【0061】
本発明の創傷被覆材は、例えばいずれかの三角形、円形、楕円形若しくは正方形、長方形又はいずれかの相称型若しくは非相称型等で提供され得る。
【0062】
本発明の創傷被覆材は多様な機能を有するさらなる層を備えることも出来る。本発明のさらなる発展によれば、該創傷被覆材は少なくとも1つのさらなる層を有する。この層は好ましくは雑菌混入からの防護としての放出層であってよく、該被覆材が利用される際に、前記創傷接触層の創傷に置かれる側の面に施される。該創傷被覆材は少なくとももう1つの層を該創傷接触層と前記カバー層との間に有することもできる。このさらなる層は例えば、例えばポリウレタンのような親水性発泡材料の吸収層のような吸収層とすることができる。
【0063】
60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を有する組成物の、特に火傷又は慢性創傷の治療のための創傷接触層又は創傷被覆材の製造のための使用も、従って本発明の目的である。
【0064】
本発明の特別な態様においては、本発明の創傷被覆材は包装内に配置されると規定される。該包装は無菌包装であることが特に規定される。本発明の他の特別な態様においては、上記の種類の創傷接触層及び別の創傷被覆材を含むシステムが単一包装内に配置されることが規定される。このシステムの特に好ましい態様においては、それぞれの個別要素が包装又は無菌包装内に置かれるか、各要素群が包装内の別々の包装にそれぞれ分けて置かれる。各個別包装は無菌個別包装であることも規定され得る。
本発明の他の態様の特徴は、その個々の他の態様に限定されるものではないことがここで強調されるべきである。むしろ態様の組み合わせ又は他の態様の個々の特徴の組み合わせは同様に本発明の態様と考えられ得る。本発明は同様に決して次の図面の説明により限定的に考えられるべきでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明を図面及び実施例を参照しながら説明する。ここで、図1は、創傷接触層の断面を示し、図2は、創傷被覆材の断面を示し、図3は、他の創傷被覆材の断面を示す。
【実施例】
【0066】
【表1】

【0067】
組成物1の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7)を強力な攪拌下、フェーズA中に拡散させる。該軟膏化合物を強力な攪拌下冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は46℃に達する(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0068】
【表2】

【0069】
組成物2の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7)を強力な攪拌下、フェーズA中に拡散させる。該軟膏化合物を強力な攪拌下冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は48℃に達する(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0070】
3)創傷接触層1
この創傷接触層は図1に示す構造を有する。従って、該創傷接触層(10)は、両側又は両面が実施例1の組成物(2a及び2b)で被覆された支持体(1)を有する。この支持体(1)は単体の銀で被覆されたポリアミドかぎ針編み支持体から成り、これは50μmエッジ長のナイロン6トリローバル糸で産生される。原材料(銀被覆無し)は25から30g/m2の間の単位面積当たり重量及びdtex=22/1のスレッドカウントを有する。該材料においては平方メートル当たり11,360から13,640mの糸が存在する。これは表面が1.7m2から2.04m2の間に達することを意味する。前記支持体上の前記銀の層の厚さはおよそ700nmに達する。銀被覆及び銀未被覆の産物間で常法(光学顕微鏡)によって検出可能な三角辺長の相違は無い。銀被覆したかぎ針編み片の単位面積当たり重量はおよそ35±3g/m2である。ここで、単体の銀の含有量はポリアミドかぎ針編み支持体のg当たり約130mgである。これらのような銀被覆かぎ針編み生地はStatex社(ブレーメン)によりShieldex(登録商標)Tulle Type Charmeuseの名称で製造されており、ここで支持体として用いられた。前記組成物は該支持体を完全に被覆し、その適用された量は280g/m2である。前記創傷接触層は良好な凝集を有し、治療対象の創傷に特に良好に適用され得る。
【0071】
4)創傷接触層2(本発明によるものではない)
この創傷接触層も図1に示される構造を有する。この創傷接触層(10)は実施例1に示される成分を含む組成物を有する。支持体(1)はおよそ90g/m2(非伸長時)の単位面積当たり重量の疎水性の100%ポリアミドかぎ針編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ46個の六角形の開口部(図1に示さず)を有する。該開口部の最大内側幅は0.8−1.0mmである。前記組成物の適用重量は240g/m2である。織編支持体の親水性組成物による被覆は該支持体をガイドローラで親水性組成物1の温かい貯留槽(40℃)に通すことにより行われる。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0072】
5)創傷接触層3(本発明によるものではない)
この創傷接触層も図1のような構造を有する。この創傷接触層(10)では、前記組成物は実施例2に示される成分を有する。支持体(1)はおよそ80g/m2(非伸長時)の単位面積当たり重量の疎水性の100%ポリアミドかぎ針編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ40個の六角形の開口部(図1に示さず)を有する。該開口部の最大内側幅は1.2−1.5mmである。前記支持体の適用重量はおよそ330g/m2である。
【0073】
前記織編支持体は該支持体をガイドローラで親水性組成物2の温かい貯留槽(60℃)に通すことにより親水性組成物で被覆される。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆された材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0074】
模擬創傷環境において市販の製品と比較した、本発明の創傷接触層の吸水率の測定:
【0075】
この試験の背景は創傷接触層が創傷上で、例えば中程度の滲出又はひどい滲出を伴う創傷上で、どのように振る舞うかということに関する証拠を得ることにある。
【0076】
a)ゼラチン溶液を次のように生成する:
i)溶液Aの生成:
室温において、0.277gの塩化カルシウム及び8.298gの塩化ナトリウムを1リットルのメスシリンダーに入れ、ここに脱イオン水で1リットルまで満たす。該溶液を該塩類が溶解するまで攪拌する。
【0077】
ii)ゼラチン溶液の生成
ygの上記溶液Aにxgのゼラチン粉末(豚皮由来A型、175ブルーム、GELITAゼラチン、DGF Stoess AG、69402 エーベルバッハ)を室温で添加し、x%のゼラチン溶液を生成する。該ゼラチンは溶液Aへ全て一度に速やかに添加し、全粒子が該溶液で湿るように該溶液を強力に攪拌し、得られた混合物を60℃のウォーターバス中で24時間攪拌する。水が漏れないように注意すべきである。このようにして20%(x=20、y=80)及び35%(x=35、y=75)のゼラチン溶液が生成する。
【0078】
b)24時間後、直径9cmのペトリ皿を30gのまだ温かいゼラチン溶液で満たし、対応する蓋で密閉し、室温に冷やした。得られた固体ゲルを試験片の分析に使用した。
【0079】
c)本発明の創傷接触層を分析するため、片面がゼラチン溶液で満たしたペトリ皿の表面全体上になるようにこれらの試験片を設置し、その後該ペトリ皿を蓋で密閉し、これを室温で24時間置くことによって3×3cm片を分析した。24時間後、液体が吸収された量を該試験片を秤量することにより測定した。ここで、該試験片の重量は全体を測定するように注意が必要である。必要に応じ、ゼラチン表面上に残る残渣を適したスクレーパーを用いて注意深く取り出し、秤量に含めねばならない。結果を表1及び表2に示す。ここで、各試料について3回の測定が行われ、各試験片は別々のペトリ皿内に設置された。
【0080】
分析に供されたのは以下のものである。
試料1:ベータ線(40kGy)によって滅菌された、実施例4の創傷接触層
試料2:ベータ線(40kGy)によって滅菌された、実施例5の創傷接触層
【0081】
【化2】

【0082】
試料4:Physiotulle(登録商標)、Coloplast社
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
表1の結果は中程度から重度の滲出を伴う創傷上の創傷接触層の挙動の見積もりを表す。これによると、実施例5の創傷接触層(試料2)は平均でその自重の158%の液体を24時間で吸収する。これと比較した場合、市販のものはずっと低い吸湿性を示す。数値は平均で、試料4については36%、試料3については15%であった。同様な傾向が表2の結果で示され得る。この試験は軽度からやや重度の滲出を伴う創傷に対する模擬実験に相当する。それによると、実施例5の創傷接触層(試料2)は平均でその自重の115%の液体を24時間で吸収する。これと比較した場合、市販の製品はずっと低い吸湿性を示す。値は平均で、試料4については25%、試料3については19%であった。両試験の結果を互いに比較すると、前記創傷接触層が必要性に基づいた吸湿も示すことをさらに見出すことが出来、これは強い滲出性を示す創傷からはより軽度の滲出性を示す創傷からよりも多くの水分が吸収されるということを意味する。
【0086】
6)創傷被覆材1
本発明の創傷被覆材(20)が所謂アイランドドレッシングとして図2に示されている。該創傷被覆材はカバー層(24)及び創傷接触層(21)から成る。また該創傷接触層は実施例1の組成物(23)で被覆されたポリエステル繊維の疎水性不織布である支持体(22)から成り、該ポリエステル繊維の一部は単体の銀によって被覆されている。前記組成物は該ポリエステル不織布を240g/m2の適用量で完全に覆う(ウォータージェット補強、単位面積当たり重量80g/m2)。該創傷接触層はポリアクリレート接着剤(25)で表面全体を被覆されたカバー層(24)で覆われる。該カバー層は30μm厚のポリウレタンフィルムで、1100g/m2/24時間の水蒸気透過性を有し、該創傷接触層の周縁部全辺を越えて広がり、該創傷接触層が該カバー層の接着性辺縁部(26a、26b)により患者の皮膚に付着し得る。同時に該創傷接触層(22)は前記接着剤(25)によって該カバー層に固定される。
【0087】
7)創傷被覆材2
図3に本発明のさらなる創傷被覆材(30)を示す。これは図2に示す創傷被覆材(20)と比較してさらなる吸収層(37)を有する。このさらなる吸収層(37)は単位面積当たり重量500g/m2、5mm厚の親水性連続気泡ポリウレタン発泡体から成る。該吸収層はアクリレート分散接着剤から形成される接着層(35)によりカバー層に固定されている。該カバー層は25μm厚で1200g/m2/24時間の水浸透率を示すポリウレタンフィルムから成る。前記創傷接触層(31)は支持体(32)から成り、該支持体は創傷に面する側又はその表面が実施例2の組成物(180g/m2)で被覆されている。この支持体(1)は、単体の銀で被覆され、50μmエッジ長のナイロン6トリローバル糸から産生されたポリアミド担体かぎ針編み生地から成る。原材料(銀被覆無し)は25から30g/m2の単位面積当たり重量及びdtex=22/1のスレッドカウントを有する。該材料においては1平方メートルに11,360から13,640mの糸が織り込まれている。これはその表面が1.7m2から2.04m2の間に達することを意味する。前記支持体上の前記銀の層の厚さはおよそ700nmに達する。銀被覆及び銀未被覆の産物間で従来の手段(光学顕微鏡)の使用によって検出可能な三角辺長の相違は無い。銀被覆したかぎ針編み生地の単位面積当たり重量は35±3g/m2である。ここで、単体の銀の含有量はポリアミドかぎ針編み担体のg当たり約130mgである。これらのような銀被覆かぎ針編み生地はStatex社(ブレーメン)によりShieldex(登録商標)Tulle Type Charmeuseの名称で製造されており、ここで支持体として用いられた。前記創傷被覆材は特に重度の滲出を伴う創傷に対する使用に適する。該創傷被覆材は前記組成物中のトリグリセリド類の部分により創傷周辺皮膚を育成し、長期間にわたる使用の際にも創傷にくっつかない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】創傷接触層の断面を示す図である。
【図2】創傷被覆材の断面を示す図である。
【図3】他の創傷被覆材の断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5から40重量%の親水コロイドが分散する60から95重量%の親水性基剤を含み、前記親水性基剤が0.5から50重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む、10重量%未満の水を含んだ、創傷治療のための組成物(2a,2b)と;
b)抗菌作用を有する金属を含んだ前記組成物のための支持体(1)と;
を含む創傷接触層(10、21、31)。
【請求項2】
前記親水性基剤が、10重量%未満の水を含むか又は無水であることを特徴とする請求項1記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項3】
前記親水性基剤が、クリーム、クリーム基剤、又は軟膏であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項4】
前記親水コロイドが、粒子形態であり、前記粒子が前記親水コロイド粒子の重量に対し10重量%未満の水含有量を有することを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項5】
前記親水コロイドが、セルロース又はその誘導体若しくは塩、及びアルギン酸又はその誘導体若しくは塩、の群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項6】
前記親水性基剤が、20から80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、若しくはトリグリセリド類、及び/又はオリゴマーグリセロールの完全若しくは部分エステル類も含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項7】
前記親水性基剤が、10から30重量%のワセリン、ペトロラタム、パラフィン油、又はろう類の群からの非極性脂質類も含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項8】
前記乳化剤が、イオン性O/W乳化剤であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項9】
前記乳化剤が、非イオン性W/O乳化剤であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項10】
前記支持体(1)が、不織の、編まれた、かぎ針編みの、又は織られた生地であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項11】
前記金属が、支持体(1)上の被覆物として施されているか、又は前記支持体内若しくは支持体上に浸透させられ若しくは組み込まれていることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項12】
前記支持体(1)が、抗菌金属含有繊維と無金属繊維との繊維混合物から成る不織布であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項13】
前記支持体(1)が、疎水性の編まれた、かぎ針編みの、又は織られた生地から成ることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項14】
前記支持体(1)が、かぎ針編みポリアミド生地を含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項15】
前記抗菌金属が単体の銀、銀塩、又は銀錯体であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項16】
上記請求項1〜15のうち少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、312)とカバー層(24、34)とから成る創傷被覆材(20、30)。
【請求項17】
前記創傷被覆材がさらに前記創傷接触層(10、21、31)に隣接する吸収層(37)を含むことを特徴とする請求項16記載の創傷被覆材(20、30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−519735(P2009−519735A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544883(P2008−544883)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012100
【国際公開番号】WO2007/068490
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(500038020)パウル ハルトマン アクチェンゲゼルシャフト (64)
【Fターム(参考)】