説明

抗菌加工方法及び消臭剤

【課題】抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を部屋等の被対象物に固定化可能な抗菌加工方法及び消臭剤を提供する。
【解決手段】抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液10を、超音波振動子11を用いて霧化して飛散させ、飛散したシラン化合物を被対象物の表面に付着させて固定化させる。加熱による気化が困難なシラン化合物を効率的に霧化して飛散させることができ、部屋の天井や壁、床、或いは部屋内に配置されている種々の物の表面に付着させて固定化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌加工方法及び消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々の生活環境への衛生指向が向上しており、食器、眼鏡、流し、台所周り、便器、トイレ周り、浴槽、浴室周り、洗面所周り、被服などへの衛生指向、抗菌指向が高まっている。また、細菌やカビ等の真菌類のみならず、インフルエンザウイルス、ノロウイスル等の病原体ウイルスを簡便に不活性化し、タオルやマスクなど生活環境を取り巻く物品等を抗菌化・抗ウイルス化することで被感染や二次感染のリスクを軽減することも望まれている。
【0003】
このように衛生指向、抗菌指向、抗ウイルス指向の高まりをうけ、抗菌性能の高い抗菌性材料の開発が進められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、布類、木製品、金属類、ゴム類等、種々の材質の表面に固定化可能な抗菌性を有するシラン化合物が開示されている。しかし、固定化には抗菌性を有するシラン化合物を含有する薬液に対象物を浸漬すること、或いは、薬液をスプレーで対象物へ噴霧することが必要である。薬液に対象物を浸漬する場合、対象物が小さな物でなければ薬液に浸漬させることができないので、大きな物や部屋の天井や壁、床等に抗菌性を有するシラン化合物を固定化することができない。また、薬液をスプレーで対象物へ噴霧する場合、部屋の天井や壁、床等に抗菌性を有するシラン化合物を固定化するには、多大な労力を要するとともに、壁等に満遍なく抗菌加工することが困難であった。
【0006】
抗菌性を有するシラン化合物を含有する薬液を加熱し、気化させて部屋全体に固定化することも考えられるが、薬液を加熱すると溶媒の気化に伴うゲル化物を生じるだけであり、抗菌性を有するシラン化合物を部屋全体に固定化させることはできない。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を部屋等の被対象物に固定化可能な抗菌加工方法及び消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る抗菌加工方法は、
抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を、超音波振動子を用いて霧化して飛散させ、
飛散した前記シラン化合物を被対象物の表面に付着させて固定化させる、
ことを特徴とする。
【0009】
また、第4級アンモニウム及びアルコキシシリル基を有する前記シラン化合物を用いることが好ましい。
【0010】
また、下記一般式
【化1】



(式中、Rは炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Rは二価の低級炭化水素基を示し、R、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、このうち少なくとも一つが低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される前記シラン化合物を用いることが好ましい。
【0011】
また、下記一般式
【化2】



(式中、Rは炭素原子数12〜24の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される前記シラン化合物を用いることが好ましい。
【0012】
また、前記シラン化合物としてオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを用いることが好ましい。
【0013】
また、前記オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である前記溶液を用いることが好ましい。
【0014】
また、閉じられた空間内の表面及び/又は前記空間内の物品の表面を抗菌加工してもよい。
【0015】
前記シラン化合物の固定化とともに消臭機能を付加してもよい。
【0016】
また、送風装置を用い、霧化させた前記シラン化合物を飛散させてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る消臭剤は、
抗菌性を有するシラン化合物を含有し、消臭機能を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記シラン化合物が第4級アンモニウム及びアルコキシシリル基を有することが好ましい。
【0019】
また、前記シラン化合物が下記一般式
【化3】



(式中、Rは炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Rは二価の低級炭化水素基を示し、R、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、このうち少なくとも一つが低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
また、前記シラン化合物が下記一般式
【化4】



(式中、Rは炭素原子数12〜24の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される化合物であることが好ましい。
【0021】
また、前記シラン化合物がオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る抗菌加工方法では、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を超音波振動子により霧化している。加熱による気化が困難なシラン化合物を効率的に霧化して飛散させることができ、部屋の天井や壁、床、或いは部屋内に配置されている種々の物の表面に付着させて固定化させることができる。また、上記のような部屋に限らず、ヒトが出入りするような限られた空間、たとえば、電車、自動車、バス等の車体や、特に抗菌化が必要とされる病院内の空間、給食施設、料理等の厨房施設等の空間内の壁面やその内部に配置されている種々の物品に対して容易に抗菌加工することができる。また、本件発明に係る抗菌加工方法によれば、所定の密閉空間内に、抗菌加工すべき物品を多数置いて、一度にこれらの物品を抗菌加工することができる。このように、所定の空間内の内部の大面積の対象物や、その空間内に置かれた様々な形態を有する多数の物品の表面を容易に抗菌加工することができる。更に、上記の抗菌加工をすることができるとともに、消臭・防臭機能も、上記空間内の壁面や物品の表面に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る抗菌加工方法の概念図である。
【図2】実施例1において、Etak0.06体積%溶液で処理したガーゼの表面元素を分析した蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図3】実施例1において、水で処理したガーゼの表面元素を分析した蛍光X線スペクトルを示す図である。
【図4】実施例2において、VAS法による検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(抗菌加工方法)
以下、図1を参照しつつ、本実施の形態にかかる抗菌加工方法について説明する。本実施の形態にかかる抗菌加工方法は、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液10を超音波振動子11により霧化して飛散させる。そして、飛散したシラン化合物を被対象物の表面に付着させて固定化させる方法である。
【0025】
シラン化合物を含有する溶液10が入れられた容器12を用意し、溶液供給管13を介して溶液10を超音波振動子11に滴下する。
【0026】
超音波振動子11は、ピエゾ素子等、電気エネルギーを振動エネルギーに変換する装置であり、20MHz以上の超音波振動を生ずる。この超音波振動子11に溶液10を滴下して接触させると、超音波振動により溶液10が微細化され霧化する。超音波振動子11はシラン化合物を含有する溶液10を加熱することなく霧化できるものであるので、溶媒の気化に伴うゲル化物が生じることはない。
【0027】
霧化して微粒子状になった抗菌性を有するシラン化合物は飛散し、部屋20の壁や天井に到達し付着する。そして、部屋20の壁等に付着した抗菌性を有するシラン化合物は部屋20の壁等の表面上へ共有結合に近い形の反応が生じ固定される。
【0028】
超音波振動子11に直接溶液を滴下・接触させてもよいが、超音波振動子11に振動板を設置し、この振動板に溶液を滴下・接触させてもよい。面積の大きい振動板を設置することで、より多くの溶液を振動板に接触させて、多量の溶液を霧化することができる。
【0029】
また、抗菌性を有するシラン化合物の固定化は超音波振動子11を備える装置を用いてもよく、例えば、超音波加湿器等の超音波霧化器を用いることができる。
【0030】
また、図1に示すように、より大きな部屋等を抗菌加工する場合、扇風機やエアコン等、送風装置15を用いて気化したシラン化合物を飛散させるとよい。送風装置15を用いることにより、送風装置15が起こす気流によって、より離れた被対象物へ気化したシラン化合物を飛散させ、固定化することができる。
【0031】
抗菌性を有するシラン化合物としては、公知のものを挙げることができる。人体への悪影響を及ぼさない限り、特に限定されることはない。特に、シラン化合物として、分子内に、抗菌作用を発揮する第4級アンモニウムと、被対象物の表面に固定化するためのアルコキシシリル基を有している化合物であることが好ましい。
【0032】
更に具体的には下記一般式(1)に示すシラン化合物であることが好ましい。
【化5】


【0033】
一般式(1)中、Rは炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、好ましくは炭素原子数24以下の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Rは二価の低級炭化水素基を示し、R、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜6の低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、このうち少なくとも一つが低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す。
【0034】
より好ましくは、下記一般式(2)で表されるシラン化合物である。
【化6】


【0035】
一般式(2)のRは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい炭素原子数1〜6の低級アルキル基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボニルオキシイオンを示す。
【0036】
上記一般式(1)或いは一般式(2)で表される抗菌性を有するシラン化合物の具体例としては、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(2−トリメチルシリルエチル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジプロピル(4−トリメトキシシリルブチル)アンモニウムアセテート、オクタデシルジメチル(3−トリイソプロポキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリイソプロポキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘプタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘプタデシルジイソプロピル(2−トリエトキシシリルエチル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムアセテート、ペンタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でも、より生体毒性や使用時の環境負荷、廃液の環境負荷の最も少ないオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが好ましい。
【0037】
更に、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液中には、両イオン界面活性剤及び/又は陽イオン界面活性剤を含有していてもよい。これらの界面活性剤を含有することにより、抗菌性を有するシラン化合物が溶液中で安定化し、溶液の白濁、ゲル化を防止することができる。
【0038】
また、溶液中のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの含有量は、0.01体積%以上0.6体積%以下であることが好ましい。溶液中のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの濃度が0.01体積%を下回ると、固定化されるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが少なくなり、被対象物に溶媒ばかりが付着してオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが固定化されず、抗菌作用を奏さないおそれがある。
【0039】
一方、溶液中のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの濃度が0.06体積%あれば、十分な量のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが被対象物に固定化される。また、溶液中のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの濃度が0.6体積%を上回ると、被対象物に十分な量のオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが固定される一方、抗菌加工中において気化したオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが飛散していると、目の粘膜に刺激を与えてしまうおそれがある。
【0040】
以上のように、本実施の形態に係る抗菌加工方法は、超音波振動子を用いて抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を霧化し、被対象物に固定化することができる。抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を霧化して飛散させるため、施工面積が広い被対象物に対して効率的に抗菌加工を行える。これにより、細菌及び真菌類の殺菌又は損傷、或いはこれらの増殖防止、病原体のウイルスの不活化がなされる。
【0041】
被対象物は特に限定されることはなく、抗菌を行いたい種々の被対象物に抗菌加工を施すことが可能である。例えば、一般家屋やホテルの部屋のほか、部屋内にある被服等が挙げられる。また、病院や診療所等の医療施設内にも有効である。更に、道路脇に設置されているサービスエリア等、24時間開いており不特定多数の者が随時利用する場所などにも有効である。更に、戦車や船舶など、清潔に保つことが容易ではない場所にも有効に用い得る。
【0042】
そして、抗菌加工後およそ一ヶ月以上は抗菌性を有するシラン化合物が固定化された状態を維持するため、長期にわたり抗菌効果を奏する。
【0043】
また、水等の溶媒が用いられている場合、これらも霧化して飛散することから、抗菌加工中に加湿も同時に行える。
【0044】
また、抗菌性を有するシラン化合物は、消臭・防臭機能を備えている。このため、抗菌加工とともに、消臭加工、防臭加工も同時に行える。
【0045】
(消臭剤)
上述したように、抗菌性を有するシラン化合物は、消臭機能も併せて備えている。このため、上記の抗菌性を有するシラン化合物を消臭剤として利用できる。例えば、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を調製し、消臭したい場所でスプレー等により噴霧して行うことで消臭することができる。
【0046】
抗菌性を有するシラン化合物、及び、抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液については上記抗菌加工方法と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
なお、抗菌性を有するシラン化合物による消臭メカニズムについては定かではないが、抗菌性を有するシラン化合物が臭いの分子を覆うように結合し、臭いの発生を抑制しているものと考えられる。
【実施例1】
【0048】
抗菌性を有するシラン化合物を調製し、固定化について検証を行った。
【0049】
オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以下、Etakと記す)を水に溶解し、Etak0.06体積%溶液を調製した。
【0050】
Etak0.06体積%溶液を市販のミスト発生装置(加湿器)のタンクに充填し、ミスト発生装置の吹き出し口付近にガーゼを配置した。そして、ミスト発生装置を駆動させてEtak0.06体積%溶液を霧化し、ガーゼにEtakを固定化した。
【0051】
また、参考例として、Etak0.06体積%溶液の代わりに水を用い、上記と同様に行った。
【0052】
それぞれのガーゼを自然乾燥させた後、蛍光X線分析装置により、各ガーゼの表面元素分析を行った。
【0053】
図2に、Etak0.06体積%溶液で処理したガーゼの表面元素を分析した蛍光X線スペクトル、表1にその測定条件等を示す。また、図3に、水で処理したガーゼの表面元素を分析した蛍光X線スペクトル、表2にその測定条件等を示す。
【表1】



【表2】


【0054】
水で処理したガーゼの表面元素分析では、図3及び表2からカルシウム(Ca)のみが検出され、固定化は見られなかった。
【0055】
一方、Etak0.06体積%溶液で処理したガーゼの表面元素分析では、図2及び表1からわかるように、シラン化合物の存在を確認できるSiが検出されている。Etakが気化され、その後接触したガーゼ表面に固定化されていることがわかる。
【実施例2】
【0056】
消臭剤を調製し、消臭効果について官能試験を行った。
【0057】
オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以下、Etakと記す)を水に溶解し、Etak0.03体積%溶液、Etak0.06体積%溶液をそれぞれ調製した。
【0058】
また、部屋干しで臭くなったタオルを3cm×3cmに切断して、複数の試験タオル片を準備した。
【0059】
準備した処理前の試験タオル片のにおいを被験者にかがせた。
【0060】
その後、それぞれの試験片タオルに水、Etak0.03体積%溶液、Etak0.06体積%溶液をそれぞれ1分間噴霧した。それぞれの試験片タオルを乾燥させた後、被験者に臭いをかがせた。そして、VAS(Visual Analogue Scale)法により検証した。なお、被験者は4名である。
【0061】
その結果を図4に示す。Etakを含有する溶液を噴霧した場合では、噴霧前及び水を噴霧したものに比べ、顕著に小さくなっており、Etakが消臭機能を奏することを立証した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明に係る抗菌加工方法は、加熱しても気化しにくい抗菌性を有するシラン化合物を超音波振動子により霧化することができ、大面積の被対象物に固定化させることができる。このため、一般家屋やホテルの部屋、病院や診療所等の医療施設内、サービスエリアなど、様々な場所を全面的に抗菌加工する際に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
10 溶液
11 超音波振動子
12 容器
13 溶液供給管
15 送風装置
20 部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性を有するシラン化合物を含有する溶液を、超音波振動子を用いて霧化して飛散させ、
飛散した前記シラン化合物を被対象物の表面に付着させて固定化させる、
ことを特徴とする抗菌加工方法。
【請求項2】
第4級アンモニウム及びアルコキシシリル基を有する前記シラン化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の抗菌加工方法。
【請求項3】
下記一般式
【化1】



(式中、Rは炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Rは二価の低級炭化水素基を示し、R、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、このうち少なくとも一つが低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される前記シラン化合物を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌加工方法。
【請求項4】
下記一般式
【化2】



(式中、Rは炭素原子数12〜24の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される前記シラン化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の抗菌加工方法。
【請求項5】
前記シラン化合物としてオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の抗菌加工方法。
【請求項6】
前記オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドの濃度が0.01体積%以上0.6体積%以下である前記溶液を用いることを特徴とする請求項5に記載の抗菌加工方法。
【請求項7】
閉じられた空間内の表面及び/又は前記空間内の物品の表面を抗菌加工することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗菌加工方法。
【請求項8】
前記シラン化合物の固定化とともに消臭機能を付加することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗菌加工方法。
【請求項9】
送風装置を用い、霧化させた前記シラン化合物を飛散させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の抗菌加工方法。
【請求項10】
抗菌性を有するシラン化合物を含有し、消臭機能を備えることを特徴とする消臭剤。
【請求項11】
前記シラン化合物が第4級アンモニウム及びアルコキシシリル基を有することを特徴とする請求項10に記載の消臭剤。
【請求項12】
前記シラン化合物が下記一般式
【化3】



(式中、Rは炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Rは二価の低級炭化水素基を示し、R、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、このうち少なくとも一つが低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される化合物であることを特徴とする請求項10又は11に記載の消臭剤。
【請求項13】
前記シラン化合物が下記一般式
【化4】



(式中、Rは炭素原子数12〜24の炭化水素基を示し、R及びRは同一又は異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボキニルオキシイオンを示す)で表される化合物であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の消臭剤。
【請求項14】
前記シラン化合物がオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の消臭剤。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1466(P2012−1466A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136602(P2010−136602)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(509302939)株式会社CampusMedico (1)
【Fターム(参考)】