説明

抗菌性ナノファイバー

【課題】それ自体抗菌能を有し、抗菌剤を添加しなくても抗菌性を発現し得る抗菌性ナノファイバーを提供すること。
【解決手段】電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーからなり、ポリマーの最小単位の25℃における結合エネルギーに対するポリマーの最小単位に含まれる電子求引性基および/または電子求引性原子団の25℃における結合エネルギーの比が0.13以上であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満である抗菌性ナノファイバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性ナノファイバーに関し、さらに詳述すると、それ自体抗菌能を有し、抗菌剤を添加しなくても抗菌性を発現し得るナノファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌加工を施した繊維製品や樹脂成形品などが注目され、例えば、抗菌性を付与した衣類、医療用品、日用品などが市販されている。
このような抗菌製品を構成する樹脂としては、ポリアミド(特許文献1,2,4参照)、ポリアクリロニトリル(特許文献3〜5参照)、ポリエステル(特許文献4参照)、ポリ乳酸(特許文献6参照)、ポリ塩化ビニリデン(特許文献7,8参照)、ポリスチレン(特許文献8〜11参照)など種々のものが用いられている。
【0003】
これら従来の抗菌製品では、樹脂に抗菌性を付与するための抗菌加工が必要とされる。
この抗菌加工に用いられる抗菌物質としては、従来、銅、銀、亜鉛等の金属イオンを有する無機系抗菌剤;塩化ベンザルコニウム、有機シリコン系、第4級アンモニウム塩等の有機系抗菌剤などが汎用されている。
しかし、無機系抗菌剤は、合成樹脂に添加すると成形時の熱や照射される光の影響で変形し、製品価値が著しく低下してしまうという欠点があり、一方、有機系抗菌剤は、耐候性・耐薬品性が悪く、急性経口毒性が高いという欠点がある。
【0004】
さらに、特許文献1の技術では、ポリマーアロイを調製する工程、溶融紡糸してポリマーアロイ繊維を得る工程、ポリマーアロイ繊維から海成分を除去する工程が必要であり、その製造工程が非常に複雑である。
特許文献2のナノファイバーは、静電紡糸で得ることができるため、繊維自体の製造工程は簡潔である。しかし、この場合も、抗菌、消臭効果を発現するために、光触媒を担持する工程が別途必要となる。
また、特許文献3〜11のその他の抗菌製品においても、繊維や粒子、シートなどに抗菌剤を付与する工程が別途必要となる。
このように、いずれの技術においても、繊維やフィルムの成形工程とは別に抗菌剤や光触媒を付与する工程が必須となるため、手間とコストがかかる。
【0005】
この点、特許文献12および13には、抗菌剤を添加しなくとも、それ自体抗菌性を有するポリ乳酸繊維が開示されている。
しかし、これらのポリ乳酸繊維の抗菌性は、ミクロンオーダーの繊維表面に存在する乳酸モノマーによるものであると推測され、繊維に抗菌成分を添加したものと変わりはない。
【0006】
一方、ポリウレタン繊維からなる繊維製品は、衛生製品などとして従来広く用いられている。
例えば、特許文献14(米国特許第4,043,331号明細書)には、静電紡糸法で得られる繊維径0.1〜25μmのポリウレタン繊維からなる救急用創傷包帯が開示されている。
また、特許文献15(特開2006−501373号公報)には、静電紡糸法で得られる繊維径3〜3000nmの脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン繊維を含んで構成される不織繊維集成体が開示され、この繊維集成体が、医療用包帯等の衛生製品に好適であることが開示されている。
【0007】
しかし、これらのポリウレタン繊維からなる衛生製品においても、繊維自身に抗菌性がないため、その使用にあたっては、医療現場などで消毒薬にて処理する必要があり、また、その保管時にも、無菌状態を保つ工夫が必要とされる。
このため、抗菌性を付与することも行われているが、繊維に抗菌能を持たせる場合には、上述した各種樹脂と同様、手間やコストがかかるという欠点がある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−36376号公報
【特許文献2】特開2007−15202号公報
【特許文献3】特開平6−2272号公報
【特許文献4】特開平9−31847号公報
【特許文献5】特開平9−286817号公報
【特許文献6】特開2000−248422号公報
【特許文献7】特開平11−279417号公報
【特許文献8】特開2002−69747号公報
【特許文献9】特開平7−179694号公報
【特許文献10】特開平10−140472号公報
【特許文献11】特開平12−80560号公報
【特許文献12】特開2001−40527号公報
【特許文献13】国際公開第2001/049584号パンフレット
【特許文献14】米国特許第4,043,331号明細書
【特許文献15】特開2006−501373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、それ自体抗菌能を有し、抗菌剤を添加しなくても抗菌性を発現し得る抗菌性ナノファイバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーからなる繊維において、ポリマーの最小単位の結合エネルギーに対するポリマーの最小単位に含まれる電子求引性基および/または電子求引性原子団の結合エネルギーを所定の範囲とするとともに、平均繊維径をナノファイバーの領域である1nm以上1000nm未満とすることで、繊維自体が優れた抗菌能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
1. 電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーからなり、前記ポリマーの最小単位の25℃における結合エネルギーに対する前記ポリマーの最小単位に含まれる前記電子求引性基および/または電子求引性原子団の25℃における結合エネルギーの比が0.13以上であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満であることを特徴とする抗菌性ナノファイバー、
2. 酸塩基滴定法を用いた表面官能基測定において、前記ポリマーから成形した所定質量のフィルムの官能基に対する、このフィルムと同質量の前記ナノファイバーの官能基の比が、1.3以上である1の抗菌性ナノファイバー、
3. 前記電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーのみからなる1または2の抗菌性ナノファイバー、
4. 前記ポリマーが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、またはポリスチレン系樹脂である1〜3のいずれかの抗菌性ナノファイバー、
5. 前記ポリマーが、非水溶性ポリマーである4の抗菌性ナノファイバー、
6. 前記ポリウレタン系樹脂が、エステル系ポリウレタン樹脂である4の抗菌性ナノファイバー、
7. 前記平均繊維径が、1〜300nmである6の抗菌性ナノファイバー、
8. 前記ポリアミド系樹脂が、赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1が、1.2〜1.8を満たす4の抗菌性ナノファイバー、
9. 前記比A2/A1が、1.3〜1.6を満たす8の抗菌性ナノファイバー、
10. 静電紡糸法で得られた1〜9のいずれかの抗菌性ナノファイバー、
11. ポリアミド系樹脂を蟻酸に溶かして調製した溶液を、静電紡糸して得られる8の抗菌性ナノファイバー、
12. 抗菌繊維製品用である1〜11のいずれかの抗菌性ナノファイバー、
13. 1〜11のいずれかの抗菌性ナノファイバーを含んで構成される繊維構造物、
14. 抗菌性ナノファイバー以外の抗菌剤を含まない13の繊維構造物、
15. 1〜11のいずれかの抗菌性ナノファイバーのみから構成される繊維構造物、
16. 不織布である13〜15のいずれかの繊維構造物、
17. 電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーを有機溶媒に溶かして調製した溶液を、静電紡糸法により紡糸することを特徴とする1の抗菌性ナノファイバーの製造方法、
18. 前記電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーがポリアミド系樹脂であり、前記有機溶媒が蟻酸である17の抗菌性ナノファイバーの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のナノファイバーは、それ自体抗菌能を有しているため、別途、抗菌加工を施す必要がない。
このため、本発明のナノファイバーおよびこれからなる繊維構造物は、抗菌剤などの薬剤を用いる必要がないので、肌に直接触れる衣料や衛生製品等に用いた場合でも安全である。
また、本発明のナノファイバーを用いてなる医療用包帯は、消毒薬や抗菌性化合物を含ませなくとも、無菌状態で保管でき、使用時および保管時の取扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る抗菌性ナノファイバーは、電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーからなり、ポリマーの最小単位の25℃における結合エネルギーに対するポリマーの最小単位に含まれる電子求引性基および/または電子求引性原子団の25℃における結合エネルギーの比が0.13以上であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満であるものである。
【0014】
ここで、電子求引性とは、分子の特定の位置における電子密度を減弱させる性質をいい、本発明の電子求引性基とは、そのような性質を持つ置換基を意味し、電子求引性原子団とは、ポリマーの主鎖を構成する原子団であって、そのような性質を持つものを意味する。
この電子求引性は、誘起効果(I効果)や、メソメリー効果(M効果)等が複合的に作用し、さらに共役系(芳香環)の存在や置換基のトポロジーによって現れ方が変わってくるものであるが、本発明においては、誘起効果で電子求引性を示す(−I効果)置換基や原子団、メソメリー効果で電子求引性を示す(−M効果)置換基や原子団、それらの複合効果により電子求引性を示す置換基や原子団を有するポリマーであればよい。
【0015】
このような電子求引性の置換基や原子団としては、例えば、アルデヒド、アミド、ウレタン、ケトン(カルボニル)、チオ、チオエステル、カルボン酸(カルボキシル)、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、ニトリル(シアノ)、ニトロ、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アミン(アミノ)、スルホニル、イソシアネート、カルボジイミド、ホルミル、アリール(フェニル、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントリレン等)、ヘテロアリール(ピロリル、チオフェニル、ピリジル等)、エチレン(ビニル)、アセチレン、アゾ、ヒドラジノ、ヒドラジド、イミドなどが挙げられる。
【0016】
本発明のナノファイバーを構成するポリマーは、当該ポリマーの最小単位の25℃における結合エネルギーに対する当該ポリマーの最小単位に含まれる電子求引性基および/または電子求引性原子団の25℃における結合エネルギーの比が0.13以上のものである。
ここで、結合エネルギーとは、分子内の各共有結合に対し、その結合を切断するのに必要なエネルギーを割りあてたものである。二原子分子では、その解離熱(原子化熱)から直接結合エネルギーが求められる。しかし、多原子分子では、全体としての解離熱は求められるが、個々の結合の解離エネルギーは分子構造等によって異なるため、単純には求めることができない。そこで、同等の結合をもつ多原子分子では、便宜的に各結合解離エネルギーの平均をとって、これを結合エネルギーとしているが、本発明でいう結合エネルギーもこの各結合解離エネルギーの平均値を意味する。一般的な共有結合の結合エネルギーを表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
本発明における結合エネルギー比は、ポリマーの最小単位構造に含まれる電子求引性基(電子求引性原子団)が持つ結合エネルギー(25℃)の総和を電子求引性基の結合エネルギーとし、ポリマーの最小単位構造が持つ結合エネルギー(25℃)の総和を総結合エネルギーとした場合に、電子求引性基の結合エネルギー/総結合エネルギーで求められるものである。
この結合エネルギー比が0.13未満であると、繊維自身が抗菌性を発現しなくなる。一方、その上限については、0.13以上であれば繊維自身が抗菌性を発現し、ポリマーに多数の電子求引性置換基を導入することなどにより、その値は適宜調整できるため特に限定されるものではない(ただし、1未満である)。抗菌効果とポリマーの製造コストなどを総合的に勘案した場合、上限は0.8以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の抗菌性ナノファイバーの平均繊維径は、ナノファイバーの領域である1nm以上1000nm未満であるが、より高い抗菌性を発揮させることを考慮すると、その上限は、800nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、500nm以下がより一層好ましい。また、その下限は1nm以上であれば特に限定されるものではないが、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。
【0020】
さらに、本発明では、酸塩基滴定法を用いた表面官能基測定において、ナノファイバーを構成するポリマーから成形した所定質量のフィルムの官能基に対する、このフィルムと同質量のナノファイバーの官能基の比が1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
このような条件を満たすナノファイバーは、繊維表面の官能基量が多いため、より優れた抗菌性を発揮し得る。
【0021】
本発明のナノファイバーを構成する電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられ、特に、非水溶性ポリマーが好適である。
【0022】
(1)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知の各種ポリエステル系樹脂を用いることができるが、本発明においては、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン系脂肪族ポリエステル、微生物産生脂肪族系ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエイト、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族系ポリエステルといったいわゆる生分解性プラスチックと一般に呼ばれるものが好適である。
【0023】
ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルとしては、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸等のオキシ酸の重合体、およびこれらの共重合体などのポリラクチド類が挙げられ、具体例としては、ポリ乳酸、ポリ(α−リンゴ酸)、ポリグリコール酸、グリコール酸−乳酸共重合体などが挙げられ、特に、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルが好適である。
ポリカプロラクトン系脂肪族ポリエステルは、ε−カプロラクトンの開環重合により得ることができ、水不溶性高分子でありながら、多くの菌により分解されるものであって、一般式:−(O(CH25CO)n−で表される脂肪族ポリエステルである。このようなポリカプロラクトン系脂肪族ポリエステルの市販品としては、例えば、日本ユニカー株式会社販売の「トーン」(商品名)がある。
微生物産生脂肪族系ポリエステルは、生体由来の融点をもつ熱可塑性ポリマーである。具体的には、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシプロピオン酸)共重合体、ポリ(ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシ吉草酸)共重合体などが挙げられる。
【0024】
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、アミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミンと、ジカルボン酸とを重縮合または共縮重合して得られるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロン612等や、芳香族ジアミンとジカルボン酸とを共重合して得られるパラ系全芳香族ポリアミド、メタ系全芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0025】
ポリアミド系樹脂を用いる場合、当該樹脂の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1が、1.2〜1.8を満たすものが好ましく、1.2〜1.6を満たすものがより好ましく、1.3〜1.6を満たすものがより一層好ましい。
このようなポリアミド系樹脂を用いることで、ナノファイバーの抗菌性をより一層高めることができる。
【0026】
(3)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知の各種ポリウレタン系樹脂を用いることができるが、分子内に電子求引性基(原子団)をより多く存在させることを考慮すると、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂が好ましく、特に、エステル系ポリウレタン樹脂が好適である。
エーテル系ポリウレタン樹脂としては、分子内にエーテル結合を有するものであれば任意であり、エーテル結合を有する高分子ジオールと、有機ジイソシアネートとを原料として得られたものを用いることができる。
エステル系ポリウレタン樹脂としては、分子内にエステル結合を有するものであれば任意であり、エステル結合を有する高分子ジオールと、有機ジイソシアネートとを原料として得られたものを用いることができる。
なお、エステル系ポリウレタン樹脂を用いる場合、ナノファイバーの平均繊維径を300nm以下とすることで、その抗菌性をより一層高めることができる。
【0027】
エーテル結合を有する高分子ジオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、エチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのランダムおよびブロックポリマー等が挙げられる。これらの高分子ジオールは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
エステル結合を有する高分子ジオールとしては、例えば、コハク酸、マロン酸、グルタール酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸等の二塩基酸の1種または2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シリコーンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロへキサン等のグリコール類の1種または2種以上との重縮合で得られるポリエステルジオール;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られる、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール;ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート,ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート等の有機カーボネートの1種または2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオールの1種または2種以上とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートジオール;ポリエーテルエステルジオール等が挙げられる。これらの高分子ジオールは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
以上の高分子ジオールの中でも、二塩基酸とグリコール類との重縮合で得られるポリエステルジオールが好適である。
【0029】
高分子ジオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、本発明においては、400〜5000であることが好ましく、800〜3500であることがより好ましい。なお、数平均分子量は、JIS K 1557に従い、水酸基価より算出できる。例えばこの水酸基価が280.5mgKOH/gの場合、数平均分子量は400であり、水酸基価が22.44mgKOH/gの場合、数平均分子量は5000である。
【0030】
一方、有機ジイソシアネートとしては、公知の脂肪族、脂環族および芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下にて溶解または液状を示すものを全て用いることができる。このようなジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(TODI)等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
上記ジイソシアネートの中でも特に、MDI、HMDIが好ましい。
【0031】
本発明のポリウレタン系樹脂は、従来公知の方法により得ることができ、例えば、溶媒の存在下または非存在下で、上述した高分子ジオールと有機ジイソシアネートとから調製したイソシアネート末端プレポリマーに、多官能性活性水素原子を有する鎖伸長剤、および必要に応じて単官能性活性水素原子を有する末端封止剤を反応させる手法が挙げられる。
ここで、有機ジイソシアネートは、高分子ジオールに対してモル比で1.2〜3.5倍程度過剰に用いることが好ましく、1.5〜2.5倍過剰に用いることがより好ましい。
【0032】
上記反応に用いられる多官能性活性水素原子を有する鎖伸長剤としては、有機ジイソシアネートと反応し得る2個の活性水素原子を有する低分子量ジオール、低分子量ジアミン、水などが挙げられる。特に、分子量が500以下の低分子量化合物を用いると、得られるポリウレタンに適度な耐熱性を付与することができ、好適である。
本発明において、鎖伸長剤の使用量は、過剰の有機ジイソシアネートを封止するのに必要量使用し、特に、0.8〜1.3当量%とすることが好ましい。0.8当量%未満では、過剰の有機ジイソシアネートが経時的に反応する虞があり、分子量の増大や溶液粘度の著しい上昇を招く場合がある。また、1.3当量%超では、過剰な鎖伸長剤の添加により黄変が生じたり、粘度の経時的低下が起こったりする場合がある。
【0033】
ここで、低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、作業性や、得られる繊維に適度な物性を与え得る点から、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、反応性、および得られるポリウレタンの物性の面から、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとを併用することがより好ましい。
なお、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを併用する場合、それらの使用量は、低分子量ジオールの全質量に対して5〜50質量%とすることが好ましく、10〜30質量%とすることがより好ましい。5質量%未満では、十分な柔軟性、紡糸性を有するポリウレタンが得られない場合があり、50質量%超では、反応性が低下し、十分な弾性回復率、圧縮永久歪みを有するポリウレタンが得られない場合がある。
【0034】
低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ブタンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン等のジアミン類;ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、β−アミノプロピオン酸ヒドラジド等のヒドラジド類などが挙げられる。
なお、低分子量ジオールと低分子量ジアミンとを併用することもできる。
【0035】
必要に応じて加えられる末端封止剤としては、例えば、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−イソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン等のジアルキルアミン;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルキルアルコールなどが挙げられる。
この末端封止剤の使用量は、例えば低分子ジアミンに対して1〜10質量%とすることが好ましい。1質量%未満であると、得られるポリウレタン中のハードセグメントが多くなり、粘度安定性が低下する虞がある。10質量%超ではポリウレタンの粘度安定性は良いが、重合度が低下する虞がある。
【0036】
また、末端封止剤として、紡糸性を阻害しない範囲内で水酸基および/またはアミノ基などの官能基を有し、平均官能基数(分子中の活性水素原子の数)が3〜6である多官能活性水素化合物を用いてもよい。この多官能活性水素化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール(以上3価)、ペンタエリスリトール(4価)、ソルボース(5価)、ソルビトール(6価)、1,3,5−トリアミノベンゼン(3価)等が挙げられる。特に、官能基数が3の化合物は、最終的に得られるポリウレタンの弾性(柔軟性)に大きな影響を与えないことから好適であり、中でも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンが好ましい。
この多官能性活性水素化合物の使用量は、鎖伸長剤および多官能性活性水素化合物中に存在する全活性水素に対して、多官能性活性水素化合物が5当量%以内であることが好ましい。5当量%超では、ポリウレタンの十分な柔軟性を有するポリウレタンが得られない場合があり、そのような低柔軟性のポリウレタンでは紡糸性が安定しない虞がある。特に好ましくは、3当量%以下である。
なお、ポリウレタンの弾性(柔軟性)を低下させることを目的とする場合、官能基数が4以上の化合物を用いてもよい。
【0037】
上述したプレポリマー合成および/またはウレタン化反応に溶媒を用いる場合、その溶媒は反応に悪影響を与えない不活性溶媒であれば任意である。このような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が挙げられる。なお、紡糸溶液に用いる溶媒を反応溶媒としてもよい。
【0038】
本発明において、ナノファイバーを構成するポリウレタン中の窒素含有率は2.0〜3.5質量%が好ましい。窒素含有率が2.0質量%未満では、イソシアネートとの反応に係わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が低下する場合があり、窒素含有率が3.5質量%超では、(芳香族)イソシアネート化合物に起因するポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、弾性回復率が低下する場合がある。
【0039】
なお、本発明において、エステル系ポリウレタン樹脂は、市販品を使用することもできる。このような市販のポリウレタン樹脂としては、例えば、ラックスキン(登録商標)U−2216(樹脂固形分30%、希釈溶液ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、セイコー化成(株)製)、レザミン(登録商標)ME44ELP(樹脂固形分30%、希釈溶剤DMF、MEK、大日精化工業社製)、ミラクトラン(登録商標)P26SRNAT(日本ポリウレタン工業(株)製)、ミラクトラン(登録商標)P22SRNAT(日本ポリウレタン工業(株)製)等が挙げられる。
【0040】
(4)ポリアクリロニトリル系樹脂
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、ポリアクリルニトリル、アクリロニトリルを主成分(50質量%以上)とし、残部が少なくとも1種のその他のエチレン系不飽和化合物から得られた重合体が挙げられる。
その他のエチレン系不飽和化合物としては、アクリロニトリルと共重合し得る公知の各種不飽和化合物が挙げられ、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびこれらの塩類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸およびこれらの塩類;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和アルデヒド類;メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等の不飽和ニトリル類;グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート等の架橋性ビニル化合物などが挙げられる。
【0041】
(5)ポリアミドイミド系樹脂
ポリアミドイミド系樹脂としては、無水トリメリット酸と芳香族ジアミンとの反応によって得られた各種ポリアミドイミド樹脂を用いることができる。市販品としては、トーロン(登録商標)4000T(ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)、バイロマックス(登録商標)(東洋紡(株)製)等が挙げられる。
(6)ポリアクリル酸系樹脂
ポリアクリル酸系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル等のポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチル,ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリレート、ポリ−α−ハロアクリレート、ポリ−α−シアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
(7)ポリ塩化ビニル系樹脂
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
(8)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン等が挙げられる。
【0042】
なお、本発明のナノファイバーは、上述のポリマーのみからなるものでもよいが、各種の特性を付与する目的で従来公知の添加剤を、適宜な量で配合してもよい。
添加剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤;ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、セミカルバジド系化合物等の安定剤;硫酸バリウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等の無機微粒子;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、オルガノシロキサン等の粘着防止剤;顔料、光沢剤、染色増強剤、ガス変色防止剤、充填剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、表面処理剤、つや消し剤、着色剤、防カビ剤、軟化剤、離型剤、発泡剤、増量剤、増核剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の抗菌性ナノファイバーは、上述したポリマーを、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などの各種紡糸法により紡糸して得ることができる。
本発明においては、特に、1nm以上1000nm未満の範囲で比較的そろった繊維径に調製し得る静電紡糸法を用いることが好適である。また、この方法は、ナノファイバー層を直接繊維構造物層に積層させる場合に繊維構造物への熱の影響が少ないという利点もある。
【0044】
静電紡糸法は、電界中で、帯電した静電紡糸用ドープ(樹脂溶液)を曳糸しつつ、その電荷の反発力によりドープを破裂させ、樹脂からなる極微細な繊維状物を形成する方法である。
静電紡糸を行う装置の基本的な構成は、静電紡糸用ドープを排出するノズルを兼ね、ドープに数千から数万ボルトの高電圧で印加する一方の電極と、その電極に対向する他方の電極とからなる。一方の電極から吐出あるいは振出されたドープは、対向する2つの電極間の電界中で高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がりや膨張によってナノファイバーになり、他方の電極表面上に堆積し、ナノファイバー(不織布)が得られる。
【0045】
静電紡糸用ドープの調製に用いられる溶媒としては、各種ポリマーをそれぞれ溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル等や蟻酸、乳酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
これらの中でも、ポリアミド樹脂を紡糸する場合、ナノファイバーの抗菌能をより向上し得るという点から、蟻酸を含む溶媒が好ましく、蟻酸単独溶媒がより好ましい。
ポリウレタン樹脂溶液の調製用の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0046】
本発明のナノファイバーは、不織布、フェルト、紙、シート状物などの繊維から構成される繊維構造物として取り扱うことができる。この場合、公知の手法により、繊維径が1μm以上の繊維と混紡またはカバーリングしてもよい。
ナノファイバー繊維構造物の厚みは、1μm以上が好ましい。厚みが1μm未満であると、ハンドリング性および加工性が低下する場合があるので、厚みを出すために1μm以上の繊維との複合繊維構造物にしてもよい。
【0047】
以上で説明した本発明のナノファイバーおよびこれを含んで構成される繊維構造物は、それ自体抗菌能を有しているため、例えば、払拭シート、マスク、フィルタ、濾過材、有害物質除去製品、手袋、雑巾、ワイパ、マット、カーシート、天井材、壁紙、オムツ、病院用ガウン、医療従事者用衣服、シーツ、包装材、芯地、育苗ポット、育苗マット、土木建築材、パンティーストッキング,靴下,タイツなどのレッグ関連商品、ブリーフ,トランクス,肌着,ガードル,ブラジャー,スパッツ,水着,手袋など肌に直接装着するインナー類、セーター,ベスト,トレーニングウェア,レオタード等の中衣類、スキー,野球等の各種スポーツ関連衣類、パジャマ,ガウン,シーツ,布団生地,タオルケット等の寝装類などに好適に使用できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例における評価項目は下記手法にて実施した。
【0049】
[1]平均繊維径
試料表面を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「S−4800I」、または日本電子データム(株)製「JSM−6701F」)により撮影倍率5000倍で撮影して得た写真から、無作為に20箇所を選んで繊維径を測定した。全ての繊維径の平均値(n=20)を求めて平均繊維径とした。
[2]不織布の厚み
デジタルシックネスゲージ((株)テクロック製「SMD−565」)を用いて、測定力1.5Nにより、無作為に試料上の5箇所を選んで厚みを測定した。全ての厚みの平均値(n=5)を求めて、不織布の厚みとした。
[3]不織布の目付
試料の質量を測定し、平方メートル当たりに換算した。
[4]抗菌性能測定試験(菌数測定法)
繊維製品衛生加工協議会が策定した抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに記載された以下の菌数測定法を採用した。
黄色ぶどう球菌を試験菌体とし、これを予め普通ブイヨン培地で106〜107個/mlになるように培養調整し、試験菌懸濁液とした。この懸濁液0.2mlを減菌処理したネジ付きバイアル瓶中の試料0.4gに均一に接種し、36〜38℃で18時間静置培養後、容器内に減菌緩衝生理食塩液を20ml加え、振幅30cmで手により25〜30回強く振とうして試験中の生菌を液中に分散させた後、減菌緩衝生理食塩液で適当な希釈系列を作り、各段階の希釈液1mlをシャーレ2枚に入れ、さらに標準寒天培地約15ml入れた。これを36〜38℃で24〜48時間培養した後、生育コロニー数を計測し、その希釈倍率に応じて試料中の生菌数を算出した。そしてその効果の判定は、増殖値が1.5を超える場合、試験成立を判定した。また、下記式により静菌活性値Sおよび殺菌活性値Lを求めた。
静菌活性値S=B−C
殺菌活性値L=A−C
A:標準布の試験菌接触直後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
B:標準布の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
C:抗菌加工試料の18時間培養後の3検体の生菌数の常用対数値の平均値
【0050】
[5]表面官能基測定試験(滴定法)
試料3gに0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液50mlを入れ、一日振とうした。その後、振とうした溶液20mlを取り出し、フェノールレッド10滴を加え、0.01Nの塩酸水溶液にて滴定し、試料と反応した水酸化ナトリウムの当量を下記式により求めた。
水酸化ナトリウム消費量(meq/g)=((A−B)×0.01×1×(50/20))/C
A:0.01N塩酸水溶液ブランク滴定量
B:0.01N塩酸水溶液滴定量
C:試料質量
[6]赤外吸収スペクトル測定
赤外吸収スペクトルは、FT−IR装置に島津製作所(製)FT−IR−8900を、ATRアタッチメントにMIRacle(1回反射水平形ATR装置)を用いて測定した。
プリズムは、ゲルマニウムプリズムを用い、入射角は45°、分解能16cm-1、積算回数50回で測定した。
ポリアミド繊維におけるアミド結合のC=O基(1640cm-1)に由来するピークのベースライン(100%T)からの高さA2と、アミド結合のNH基(1550cm-1)に由来するピークの同じくベースラインからの高さA1との比A2/A1(カルボニル基/アミノ基)を算出した。
[7]高分子ジオールの数平均分子量
JIS K 1557に従い水酸基価を求め、下記式により数平均分子量を算出した。
数平均分子量(Mw)=OHモル数×56.1×1000/OH価
[8]ポリウレタン中の窒素含有量(N質量%)
合成組成から、下記式により窒素含有量を算出した。
窒素含有量(N質量%)=(有機ジイソシアネートのモル数×2×14/全質量)×100
【0051】
[実施例1]ポリ乳酸
ポリ乳酸樹脂(LACEA H280、三井化学(株)製)10質量部とジメチルホルムアミド(以下、DMFという)45質量部とを混合し、60℃に加熱してポリ乳酸樹脂をDMFに溶解し、ポリ乳酸含有溶液(固形分18質量%)55質量部を得た。
このポリ乳酸含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧20KV、(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径3μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は15g/m2であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0052】
結合エネルギー比
ポリ乳酸の電子求引性基の結合エネルギー、総結合エネルギーおよび結合エネルギー比は、以下の計算により求めた。
ポリ乳酸の最小単位構造は、(O−CH(CH3)−C=O)である。
この最小単位構造には、C−Oが1個、C−Hが4個、C−Cが2個、C=Oが1個存在する。
上記表1より、25℃において、C−Oの結合エネルギーは329kJ/mol、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/molである。
したがって、総結合エネルギーは、
329×1+416×4+357×2+804=3511kJ/mol
となる。
一方、上記最小単位構造中、電子求引性基(原子団)は、C−OとC=Oであるから、電子求引性基の結合エネルギーは、
329×1+804×1=1133kJ/mol
となる。
したがって、結合エネルギーの比は、1133/3511=0.32である。
【0053】
[実施例2]ナイロン66
ナイロン66(アミラン(登録商標)CM3001−N、東レ(株)製)10質量部を、蟻酸57質量部に室温(25℃)で溶解し、ナイロン66含有溶液(固形分15質量%)67質量部を得た。
このナイロン66含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧50KV(室温下、大気圧)の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は、250nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は2.0g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.7であった。
【0054】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×22+357×10+804+273×2+391×2=14854となる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804+273×2+391×2=2132となる。
したがって、結合エネルギーの比は、2132/14854=0.14である。
【0055】
[実施例3]ナイロン6
ナイロン66をナイロン6(A1030BRT、ユニチカ(株)製)に変更した以外は、実施例2と同様にしてナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は3.5g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.7であった。
【0056】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×10+357×5+804+273+391=7413となる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804+273+391=1468となる。
したがって、結合エネルギーの比は、1468/7413=0.20である。
【0057】
[実施例4]ナイロン66
ナイロン66(アミラン(登録商標)CM3001−N、東レ(株)製)100質量部を蟻酸570質量部に室温(25℃)で溶解し、ナイロン66含有溶液(紡糸溶液)670質量部を得た。
この紡糸溶液を、吐出先端内口径0.5mm、印加電圧50KV(室温下、大気圧)の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は2.0g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.5であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図2に、赤外吸収スペクトルを図10に示す。
【0058】
[実施例5]ナイロン66
印加電圧を70KV(室温下、大気圧)に変更した以外は、実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は100nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は1.5g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.5であった。
【0059】
[実施例6]ナイロン66
紡糸溶液の調製を50℃で行った以外は実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は80nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は1.1g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.6であった。
【0060】
[実施例7]ナイロン6
ナイロン66をナイロン6(A1030BRT、ユニチカ(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は250nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は3.5g/m2であった。
この不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.3であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0061】
[実施例8]ナイロン9T
ナイロン66をナイロン9T(ジェネスタ(登録商標)N1000、(株)クラレ製)に変更した以外は、実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は5.0g/m2であった。
得られた不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.3であった。
【0062】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×18+357×12+804+273×3+391×2+588×3=15941となる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804+273×3+391×2+588×3=4169となる。
したがって、結合エネルギーの比は、4169/15941=0.26である。
【0063】
[実施例9]ナイロン610
ナイロン66をナイロン610(アミラン(登録商標)CM2001、東レ(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は5.0g/m2であった。
得られた不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.3であった。
【0064】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×28+357×13+804+273×3+391×2=18694kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804+273×3+391×2=2405kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、2405/18694=0.13である。
【0065】
[実施例10]芳香族ポリアミド
ナイロン66をメタ系全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(登録商標)、帝人(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様にしてナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は200nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは50μmであり、目付は3.0g/m2であった。
得られた不織布の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.4であった。
【0066】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×16+357×13+804×2+273×5+391×3+588×12+329×2=23157kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×2+273×5+391×3+588×12+329×2=11860kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、11860/23157=0.51である。
【0067】
[実施例11]エステル系ポリウレタン
アジピン酸(和光純薬工業(株)製)およびエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を1:1.2のモル比で混合し、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートの存在下、140〜220℃で脱水エステル化反応を行い、ポリエステルジオール(数平均分子量1950)を得た。
このポリエステルジオール69.4質量部と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという、ミリオネート(登録商標)MT、日本ポリウレタン工業(株)製)25質量部とを、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間攪拌しつつ反応させた後、低分量ジオールである1,4−ブタンジオール5.6質量部をさらに注入し、エステル系ポリウレタンを得た。
このエステル系ポリウレタンを、40℃,相対湿度80%の部屋で5日間固相反応させた後、ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)400質量部を加え、60℃で溶解させて、エステル系ポリウレタン含有溶液を500質量部得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N2.7質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液(紡糸溶液)を、シリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は15g/m2であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0068】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×130+357×68+804×21+273×2+391+588×6+329×30=109575kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×21+273×2+391+588×6+329×30=31219kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、31219/109575=0.28である。
【0069】
[実施例12]エステル系ポリウレタン
実施例11と同様にして得られたポリエステルジオール160質量部と、MDI37.1質量部とを混合し、窒素ガス気流中、65℃で90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)450質量部を加え、プレポリマー溶液を調製した。
次に鎖伸長剤であるエチレンジアミン(和光純薬工業(株)製)3.8質量部と、末端封止剤であるジ−n−ブチルアミン(昭和化学工業(株)製)0.5質量部とを、DMAc200質量部に溶解したアミンの混合溶液を、15℃に温調されたプレポリマー溶液に滴下しながら加えてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.0質量%であった。
得られたエステル系ポリウレタン含有溶液に、さらにDMAc491質量部を添加し、固形分15質量%の紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は10g/m2であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図5に示す。
なお、結合エネルギー比は、実施例11と同一である。
【0070】
[実施例13]エステル系ポリウレタン
ポリエステルジオールとして、アジピン酸とプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製)とから実施例11と同様にして得られたポリエステルジオール(数平均分子量1950)170質量部を用い、鎖伸長剤としてエチレンジアミン3.6質量部を用いた以外は、実施例12と同様にしてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)861.2質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N2.8質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液を用い、実施例12と同様にして紡糸溶液を調製し、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は10g/m2であった。
【0071】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×150+357×78+804×21+273×2+391+588×6+329×30=121465kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×21+273×2+391+588×6+329×30=31219kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、31219/121465=0.26である。
【0072】
[実施例14]エステル系ポリウレタン
ポリエステルジオールとして、コハク酸(昭和化学工業(株)製)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業(株)製)とから実施例11と同様にして得られたポリエステルジオール(数平均分子量1950)160質量部を用いた以外は、実施例12と同様にしてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.0質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液を用い、実施例12と同様にして紡糸溶液を調製し、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は10g/m2であった。
【0073】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×170+357×88+804×21+273×2+391+588×6+329×30=133355kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×21+273×2+391+588×6+329×30=31219kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、31219/133355=0.23である。
【0074】
[実施例15]エステル系ポリウレタン
ポリエステルジオールとして、マレイン酸(和光純薬工業(株)製)とエチレングリコールとから実施例1と同様にして得られたポリエステルジオール(数平均分子量1950)160質量部を用いた以外は、実施例11と同様にしてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.0質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液を用い、実施例12と同様にして紡糸溶液を調製し、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は10g/m2であった。
【0075】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×94+357×50+804×29+273×2+391+588×20+329×42=106785kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×29+273×2+391+588×20+329×42=49831kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、49831/106785=0.47である。
【0076】
[実施例16]エステル系ポリウレタン
ポリエステルジオールとして、ポリ−ε−カプロラクトンジオール(数平均分子量2000、プラクセル(登録商標)220、ダイセル化学工業(株)製)160質量部を用いた以外は、実施例12と同様にしてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.0質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液に、さらにDMAc1162.6質量部を添加し、固形分10質量%の紡糸溶液を調製した。この紡糸溶液を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は150nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は5g/m2であった。
【0077】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×190+357×98+804×19+273×2+391+588×6+329×18=139689kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×19+273×2+391+588×6+329×18=25663kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、25663/139689=0.18である。
【0078】
[実施例17]エステル系ポリウレタン
ポリエステルジオールであるジエチルカーボネート(日本ポリウレタン工業(株)製)と1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業(株)製)とから実施例11と同様にして得られたポリエステルジオール(数平均分子量2000)160質量部を用いた以外は、実施例12と同様にしてエステル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.0質量%であった。
このエステル系ポリウレタン含有溶液に、さらにDMAc1162.6質量部を添加し、固形分10質量%の紡糸溶液を調製した。この紡糸溶液を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は150nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は5g/m2であった。
【0079】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×160+357×68+804×16+273×2+391+588×6+329×45=122970kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×16+273×2+391+588×6+329×45=32134kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、32134/122970=0.26である。
【0080】
[実施例18]エステル系ポリウレタン
実施例11で得られたアジピン酸およびエチレングリコールからなるポリエステルジオール(数平均分子量1950)100質量部と、MDI28.9質量部とを、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間攪拌しつつ反応させた後、低分量ジオールである1,4−ブタンジオール5.9質量部をさらに注入し、エステル系ポリウレタンを得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N2.4質量%であった。
このエステル系ポリウレタンを、40℃,相対湿度80%の部屋で5日間固相反応させた後、DMF764質量部を加え、60℃で溶解させて、エステル系ポリウレタン含有溶液(固形分15質量%)898質量部を得た。
このエステル系ポリウレタン含有溶液(紡糸溶液)を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は550nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは20μmであり、目付は7g/m2であった。
なお、結合エネルギー比は、実施例11と同一である。
【0081】
[実施例19]エステル系ポリウレタン
[1]両末端OH基プレポリマーの合成
アジピン酸およびエチレングリコールから、数平均分子量を1000にとどめた以外は実施例11と同様にして得られたポリエステルジオール46.5質量部と、MDI22.7質量部とを、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間攪拌しつつ反応させた後、低分子量ジオールである1,4−ブタンジオール27.6質量部をさらに注入し、両末端OH基プレポリマーを合成した。
[2]両末端NCO基プレポリマーの合成
実施例11のアジピン酸およびエチレングリコールから得られたポリエステルジオール(数平均分子量1950)66質量部と、MDI29.1質量部とを仕込み、紫外線吸収剤(2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール:20質量%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50質量%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30質量%)の混合物2.2質量部を添加し、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間撹拌し、両末端NCO基プレポリマーを得た。
[3]ポリウレタンナノファイバーの製造
得られた両末端NCO基プレポリマーと両末端OH基プレポリマーとを1:0.302の質量比で撹拌翼を有する容量2200mLのポリウレタン反応機に連続的に供給した。供給速度は両末端NCO基プレポリマー14.47g/分、両末端OH基プレポリマー6.87g/分、反応機内での平均滞留時間は約1時間、反応温度は約190℃であった。この反応混合物を250℃で溶融混練(滞留時間50秒)して押出し、エステル系ポリウレタンを得た。なお、エステル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.2質量%であった。
このエステル系ポリウレタンを用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは20μmであり、目付は4g/m2であった。
【0082】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
OH基プレポリマーの総結合エネルギーは、
416×82+357×44+804×13+273×2+391+588×6+329×18=70659kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×13+273×2+391+588×6+329×18=20839kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、20839/70659=0.29である。
NCO基プレポリマーの総結合エネルギーは、
416×130+357×68+804×21+273×2+391+588×6+329×30=109575kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×21+273×2+391+588×6+329×30=31219kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、31219/109575=0.28である。
NCO基プレポリマーとOH基プレポリマーとの比が1:0302であるので、ポリマーの結合エネルギー比は、
(0.28+0.29×0.302)/1.302=0.28である。
【0083】
[実施例20]エーテル系ポリウレタン
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000、PTMG1000、保土ヶ谷化学工業(株)製)42質量部とMDI25質量部とを、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間攪拌しつつ反応させた後、低分量ジオールである1,4−ブタンジオール5.6質量部をさらに注入し、ポリエーテル系ポリウレタンを得た。
このポリエーテル系ポリウレタンを、40℃,相対湿度80%の部屋で5日間固相反応させた後、DMF327.4質量部を加え、60℃で溶解させて、エーテル系ポリウレタン含有溶液400質量部を得た。なお、エーテル系ポリウレタン中の窒素量は、N3.7質量%であった。
このエーテル系ポリウレタン含有溶液(紡糸溶液)を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は15g/m2であった。
【0084】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×18+357×11+804+273×2+391+588×6+329×2=17342kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804+273×2+391+588×6+329×2=5927kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、5927/17342=0.34である。
【0085】
[実施例21]ポリアクリロニトリル
ポリアクリロニトリル(バレックス(登録商標)1000S、三井化学(株)製)10質量部と、DMF40質量部とを室温(25℃)で溶解させて、ポリアクリロニトリル含有溶液(固形分20質量%)50質量部を得た。
このポリアクリロニトリル含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均不織繊維径は100nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は2g/m2であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0086】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×3+357×2+273×3=2781kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
273×3=819kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、819/2781=0.29である。
【0087】
[実施例22]ポリアミドイミド
ポリアミドイミド(トーロン(登録商標)4000T、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)10質量部とDMF40質量部とを室温(25℃)で溶解させて、ポリアミドイミド含有溶液(固形分20質量%)50質量部を得た。
このポリアミドイミド含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均不織繊維径は800nmであり、繊維径5μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は25g/m2であった。得られた不織布の電子顕微鏡写真を図7に示す。
【0088】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×7+357×7+804×3+273×4+391+588×3=11070kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×3+273×4+391+588×3=5659kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、5659/11070=0.51である。
【0089】
[実施例23]ポリ塩化ビニリデン
ポリ塩化ビニリデン(サランラップ(登録商標)、旭化成ホームプロダクツ(株))25質量部を、テトラヒドロフラン75質量部に室温(25℃)で溶解させて、ポリ塩化ビニリデン含有溶液(固形分25質量%)100質量部を得た。
このポリ塩化ビニリデン含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧50KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均不織繊維径は800nmであり、繊維径5μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は25g/m2であった。得られた抗菌不織布の電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0090】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C−Clの結合エネルギーは327kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×2+357+327×2=1843kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
327×2=654kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、654/1843=0.35である。
【0091】
[実施例24]ポリスチレン
ポリスチレン(SGP10,PSジャパン社製)18質量部を、DMF82質量部に室温(25℃)で溶解させて、ポリスチレン含有溶液(固形分18質量%)100質量部を得た。
このポリスチレン含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧25KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均不織繊維径は800nmであり、繊維径3μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は25g/m2であった。得られた抗菌不織布の電子顕微鏡写真を図9に示す。
【0092】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×8+357×5+588×3=6877kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
588×3=1764kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、1764/6877=0.26である。
【0093】
[比較例1]ポリ乳酸(フィルム)
実施例1で調製したポリ乳酸含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0094】
[比較例2]ポリ乳酸(マイクロファイバー)
ポリ乳酸樹脂(LACEA H280、三井化学(株)製)10質量部を、200℃に保った8ノズルの紡糸ヘッド2台に導入した。導入したポリ乳酸樹脂をヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルタでろ過後、径0.8mm、1ホールのノズルから2g/分の速度で、長さ6mの紡糸筒内に吐出させ、600m/分の速度で紙管に巻き取り、平均繊維径70μmの繊維を得た。
【0095】
[比較例3]ナイロン66(フィルム)
実施例2で調製したナイロン66含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行った。その後、フィルムを水洗し、60℃の真空乾燥機にて3時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0096】
[比較例4]ナイロン6(フィルム)
ナイロン66をナイロン6に変更した以外は、比較例3と同様にして、厚み100μmのフィルムを得た。
【0097】
[比較例5]ナイロン6(マイクロファイバー)
ナイロン6(A1030BRT、ユニチカ(株)製)100質量部を押出機で溶融押出しし、紡糸温度250℃で紡糸し、平均繊維径1.5μmの繊維を得た。
この繊維の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.1であった。
【0098】
[比較例6]ナイロン66(マイクロファイバー)
ナイロン66(アミラン(登録商標)CM3001−N、東レ(株)製)100質量部を押出機で溶融押出しし、紡糸温度290℃で紡糸して平均繊維径1.5μmの繊維を得た。
この繊維の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.1であった。
【0099】
[比較例7]ナイロン9T(フィルム)
ナイロン66をナイロン9T(ジェネスタ(登録商標)N1000、(株)クラレ製)に変更した以外は、比較例3と同様にして、厚み100μmのフィルムを得た。
【0100】
[比較例8]ナイロン610(フィルム)
ナイロン66をナイロン610(アミラン(登録商標)CM2001、東レ(株)製)に変更した以外は、比較例3と同様にして、厚み100μmのフィルムを得た。
【0101】
[比較例9]芳香族ポリアミド(マイクロファイバー)
湿式紡糸により得られたメタ系全芳香族ポリアミド繊維(コーネックス(登録商標)、帝人(株)製)の綿レギュラータイプをそのまま用いた。平均繊維径は約10μmであった。
この繊維の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.0であった。
【0102】
[比較例10]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例11で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0103】
[比較例11]エステル系ポリウレタン(マイクロファイバー)
実施例18のエステル系ポリウレタン90質量部を200℃に保った8ノズルの紡糸ヘッド2台に導入した。導入したエステル系ポリウレタンをヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルタでろ過後、径0.7mm、1ホールのノズルから2g/分の速度で、長さ6mの紡糸筒内に吐出させ、600m/分の速度で紙管に巻き取り、平均繊維径40μmの繊維を得た。
【0104】
[比較例12]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例13で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0105】
[比較例13]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例14で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0106】
[比較例14]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例15で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0107】
[比較例15]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例16で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0108】
[比較例16]エステル系ポリウレタン(フィルム)
実施例17で調製したエステル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0109】
[比較例17]エーテル系ポリウレタン(ナノファイバー)
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1950、PTMG2000、保土ヶ谷化学工業(株)製)69.4質量部とMDI25質量部とを、窒素ガスでシールされた系中、80℃で1時間攪拌しつつ反応させた後、低分量ジオールである1,4−ブタンジオール5.6質量部をさらに注入し、エーテル系ポリウレタンを得た。
このエーテル系ポリウレタンを、40℃,相対湿度80%の部屋で5日間固相反応させた後、DMF500質量部を加え、60℃で溶解させて、エーテル系ポリウレタン含有溶液600質量部を得た。
このエーテル系ポリウレタン含有溶液(紡糸溶液)を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は500nmであり、繊維径1μm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は15g/m2であった。
【0110】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/mol、C−Oの結合エネルギーは329kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×186+357×74+804×2+273×2+391+588×6+329×24=117763kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×2+273×2+391+588×6+329×24=13969kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、13969/117763=0.12である。
【0111】
[比較例18]エーテル系ポリウレタン(フィルム)
比較例17で調製したエーテル系ポリウレタン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0112】
[比較例19]エーテル系ポリウレタン(マイクロファイバー)
ポリエステルジオールを、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1950、PTMG2000、保土ヶ谷化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例12と同様にして、エーテル系ポリウレタン含有溶液(固形分24質量%)851.4質量部を得た。
このエーテル系ポリウレタン含有溶液を4ホールノズルより220℃の不活性ガス中に押出し、仮撚装置により合着させた後、給油し、巻取り速度600m/分の速度で紙管に巻き取り、平均繊維径40μmの繊維を得た。
なお、結合エネルギー比は、比較例17と同一である。
【0113】
[比較例20]エーテル系ポリウレタン(ナノファイバー)
比較例17で調製したエーテル系ポリウレタン含有溶液90質量部と、DMF510質量部とを混合し、60℃でエーテル系ポリウレタンを溶解させて、エーテル系ポリウレタン含有溶液(固形分15質量%)600質量部を得た。
このエーテル系ポリウレタン含有溶液(紡糸溶液)を用い、実施例11と同様の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。
得られた不織布の平均繊維径は300nmであり、繊維径1000nm以上の繊維は観察されなかった。また、不織布の厚みは100μmであり、目付は10g/m2であった。
【0114】
[比較例21]ポリアクリロニトリル(フィルム)
実施例21で調製したポリアクリロニトリル含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0115】
[比較例22]ポリアミドイミド(フィルム)
実施例22で調製したポリアミドイミド含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0116】
[比較例23]重合脂肪酸系ポリアミド(ナノファイバー)
重合脂肪酸系ポリアミド(PA102A、富士化成工業(株)製)40質量部を、トルエン80質量部およびメタノール80質量部に室温(25℃)で溶解させて、重合脂肪酸系ポリアミド含有溶液(固形分20質量%)200質量部を得た。
この重合脂肪酸系ポリアミド含有溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧50KV(室温下、大気圧)の条件で静電紡糸を行い、ナノファイバー不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径は800nmであり、繊維径5μm以上の繊維は観察されなかった。
この繊維の赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1は1.25であった。
【0117】
結合エネルギー比
上記表1より、25℃において、C−Hの結合エネルギーは416kJ/mol、C−Cの結合エネルギーは357kJ/mol、C=Oの結合エネルギーは804kJ/mol、C−Nの結合エネルギーは273kJ/mol、N−Hの結合エネルギーは391kJ/mol、C=Cの結合エネルギーは588kJ/molである。
総結合エネルギーは、
416×68+357×37+804×2+273×2+391×2+588×2=45609kJ/molとなる。
電子求引基の結合エネルギーは、
804×2+273×2+391×2+588×2=4112kJ/molとなる。
したがって、結合エネルギーの比は、4112/45609=0.09である。
【0118】
[比較例24]重合脂肪酸系ポリアミド(フィルム)
比較例23で調製した重合脂肪酸ポリアミド含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0119】
[比較例25]ポリ塩化ビニリデン(フィルム)
実施例23で調製したポリ塩化ビニリデン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0120】
[比較例26]ポリスチレン(フィルム)
実施例24で調製したポリスチレン含有溶液を、ナイフコーターにてガラス板上にキャストし、60℃の真空乾燥機にて10時間乾燥を行い、厚み100μmのフィルムを得た。
【0121】
上記各実施例および比較例で調製した繊維(不織布)、フィルムについて、結合エネルギー比、抗菌性試験結果、表面官能基量およびその比(ファイバー/フィルム)を表2および表3にまとめて示す。
【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
表2に示されるように、実施例1〜24で得られた不織布は、ナノファイバーで構成されているとともに、原料ポリマーの結合エネルギー比が0.13以上であるため、いずれも優れた抗菌性を有していることがわかる。
これに対し、表3に示されるように、原料ポリマーの結合エネルギー比が0.13以上であっても、フィルム(比較例1,3,4,7〜10,12〜16,21,22,24〜26)や、マイクロファイバー不織布(比較例2,5,6,11)の場合は、抗菌性を発揮しないことがわかる。
また、ナノファイバー(不織布)であっても、結合エネルギー比が0.13未満(比較例17,20,23)の場合は、抗菌性を発揮しないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施例1で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例4で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例7で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】実施例11で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】実施例12で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】実施例21で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】実施例22で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】実施例23で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】実施例24で得られたナノファイバー不織布の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図10】実施例4で得られた不織布の赤外吸収スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーからなり、
前記ポリマーの最小単位の25℃における結合エネルギーに対する前記ポリマーの最小単位に含まれる前記電子求引性基および/または電子求引性原子団の25℃における結合エネルギーの比が0.13以上であり、
平均繊維径が1nm以上1000nm未満であることを特徴とする抗菌性ナノファイバー。
【請求項2】
酸塩基滴定法を用いた表面官能基測定において、前記ポリマーから成形した所定質量のフィルムの官能基に対する、このフィルムと同質量の前記ナノファイバーの官能基の比が、1.3以上である請求項1記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項3】
前記電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーのみからなる請求項1または2記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、またはポリスチレン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項5】
前記ポリマーが、非水溶性ポリマーである請求項4記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項6】
前記ポリウレタン系樹脂が、エステル系ポリウレタン樹脂である請求項4記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項7】
前記平均繊維径が、1〜300nmである請求項6記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項8】
前記ポリアミド系樹脂が、赤外吸収スペクトルにおける1550cm-1付近のピークの高さA1と、1640cm-1付近のピークの高さA2との比A2/A1が、1.2〜1.8を満たす請求項4記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項9】
前記比A2/A1が、1.3〜1.6を満たす請求項8記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項10】
静電紡糸法で得られた請求項1〜9のいずれか1項記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項11】
ポリアミド系樹脂を蟻酸に溶かして調製した溶液を、静電紡糸して得られる請求項8記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項12】
抗菌繊維製品用である請求項1〜11のいずれか1項記載の抗菌性ナノファイバー。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の抗菌性ナノファイバーを含んで構成される繊維構造物。
【請求項14】
抗菌性ナノファイバー以外の抗菌剤を含まない請求項13記載の繊維構造物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項記載の抗菌性ナノファイバーのみから構成される繊維構造物。
【請求項16】
不織布である請求項13〜15のいずれか1項記載の繊維構造物。
【請求項17】
電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーを有機溶媒に溶かして調製した溶液を、静電紡糸法により紡糸することを特徴とする請求項1記載の抗菌性ナノファイバーの製造方法。
【請求項18】
前記電子求引性基および/または電子求引性原子団を有するポリマーがポリアミド系樹脂であり、前記有機溶媒が蟻酸である請求項17記載の抗菌性ナノファイバーの製造方法。

【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−274512(P2008−274512A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243373(P2007−243373)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】