説明

抗菌性化合物を備えたカテーテル・レセプタクル

カテーテル(130、230)及びレセプタクル(120、220)を含むカテーテル組立品(110、210)が開示されている。レセプタクルは、少なくとも上記カテーテルの一部を収納し、そして、上記カテーテルの取り出しのため、少なくとも1つの開口部(123)を有する。更に、レセプタクルは、少なくとも開口部近辺に、そして少なくともレセプタクルの外表面上に抗菌性化合物(301)を備えており、上記抗菌性化合物は、少なくとも1つの上記開口部を通して上記カテーテル取り出す間、微生物がカテーテルへ移動することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテル及びレセプタクルを含むカテーテル組立品に関し、レセプタクルは少なくともカテーテルの一部を収納し、そして、カテーテルを取り出すための少なくとも1つの開口部を有している。本発明はまた、そのようなカテーテル組立品の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、膀胱ドレナージ用の導尿カテーテルなどの多くの異なった医療用にその用途を見出している。
これらの導尿カテーテルは、高齢者、脳卒中患者、脊髄損傷患者、術後の患者及び閉塞性尿路疾患の患者を含む広範囲の人々に使用されている。導尿カテーテルの挿入及びメンテナンスのための無菌指針の順守にも関らず、カテーテル関連の感染症は主要な問題を引き起こし続けている。カテーテルなどの医療機器が、ヒトの腔部に導入される時、正常なヒトの防御障壁が貫通され、それにより細菌、真菌、ウイルス、又は組織状の若しくは複数の組織細胞の導入を引き起こす。例えば、尿路感染症(UTI)は、間欠的使用のために親水性コーティング剤でコーティングした親水性カテーテルを含む導尿カテーテルの使用に関連した問題である。入院している脊髄損傷患者のほぼ4分の1は、入院中にUTIの症状を発現すると推定されている。UTIのケースでは、グラム陰性桿菌がほぼ60〜70%、腸球菌が約25%、そしてカンジダ種が約10%を占める。日常的に間欠的尿道カテーテル法を実施する人は、しばしばUTI症状を伴った問題を抱えていることはよく知られている。
【0003】
カテーテルを、清潔に、好ましくは無菌条件下で維持するため、それぞれのカテーテルは、普通は製造業者によりレセプタクル内に事前包装されている。
【0004】
更に、使用を容易にするため、そしてカテーテルの清潔性を向上させるため、破裂可能な湿潤液用の小袋又は容器を更に含む組立品が最近開発され、それにより、カテーテルの湿潤化が、外部から供給された水を使用せず、そして、カテーテルの使用目的にいたるまで、その密封条件を解除することなく達成できる。
【0005】
その様な組立品は、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において開示されている。更に、いわゆる「すぐに使える」カテーテルが提案されており、そこでは、カテーテルが前記流体により湿潤、作動条件下で維持されるような方法で湿潤液と一緒にレセプタクル内に配置されている。その様なすぐに使えるカテーテル組立品は、例えば、特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【0006】
更に、カテーテルの無菌性と清潔性を維持するため、カテーテルを細菌感染の予防のために抗菌性化合物でコーティングしてもよい。特許文献6は、例えば、抗菌剤として、少なくとも1つの有機酸(類)の塩、好ましくは、安息香酸塩、又はソルビン酸塩の使用を開示している。記載された化合物は、また、湿潤液で作動させた時、親水性の抗菌性コーティングを行うために、湿潤液での処理により、カテーテルの親水性コーティング表面の低摩擦特性を付与するために使用可能な湿潤液中に組込むことができる。更に、特許文献7は、銀化合物を含むことを特徴とする抗菌性、抗ウイルス性、及び/又は、抗真菌性活性を有する安定化組成物を開示している。光安定化銀組成物は、カテーテル又は類似の医療用機器へ導入することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第97/26937号
【特許文献2】国際公開第01/43807号
【特許文献3】国際公開第98/11932号
【特許文献4】国際公開第00/47494号
【特許文献5】国際公開第98/19729号
【特許文献6】米国特許公開第2006/0240069号
【特許文献7】国際公開第00/09173号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カテーテルの抗菌性コーティング並びに無菌条件下でのメンテナンスにより、細菌の成長を抑制し、細菌感染を防ぐことができるが、カテーテルの尿道への挿入は、ヒト体内への細菌の導入リスクとなり続ける。この原因の1つは、カテーテルをそのレセプタクルから取り出す間、細菌がカテーテルへ移動するかも知れないということである。具体的には、レセプタクルから取り出すことは、カテーテルが取り出される間、レセプタクルの外表面にカテーテルが接触しやすくなり、それ故、レセプタクルからの細菌がカテーテルに接触することを可能とする問題を抱えている。
【0009】
従って、カテーテルの使用の間、細菌感染並びに微生物の成長及び移動に関連した類似の疾患を抑制するための改良された手段の必要性が、尚、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の目的は、上記の関連する欠点が完全に、又は少なくとも部分的に除去された、序論として述べたタイプのカテーテル組立品、及びその製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の第一の態様によると、カテーテルとレセプタクルを含むカテーテル組立品が提供され、ここで、レセプタクルは、カテーテルの少なくとも一部を収納し、そして、カテーテル取り出し用の少なくとも1つの開口部を有している。レセプタクルは、少なくとも、1つの開口部近辺において、及び少なくとも、レセプタクルの外表面上において抗菌性化合物を備えており、ここで、抗菌性化合物は、少なくとも1つの開口部を通してカテーテルを取り出す間、微生物のカテーテルへの移動を抑制する。
【0012】
本発明は、同じく、上記で定義された種類のカテーテル組立品を製造する方法に関する。それ故、本発明の第二の態様によると、カテーテル及びレセプタクルを含むカテーテル組立品の製造方法であって:
レセプタクル内にカテーテルの少なくとも一部を収納し;
カテーテルの取り出し用として、少なくとも1つの開口部を有するレセプタクルを備え;そして
少なくとも、1つの開口部の近辺に、及び少なくとも、レセプタクルの外表面上に抗菌性化合物を有するレセプタクルを備え、ここで、抗菌性化合物は、少なくとも1つの開口部からカテーテルを取り出す間、微生物がカテーテルへ移動することを抑制する;
工程を含む。
【0013】
高分子中に抗菌性化合物を組み入れることは、当業者には公知であり、例えば、米国特許第6716200号は、抗菌性の採尿システムを開示しており、ここで、採尿袋は抗菌剤を含む高分子で作成されている。しかし、この資料の教示によると、抗菌性化合物は、採尿袋及びカテーテルそれ自身に組み込まれているだけであり、本発明の場合のカテーテルが収納されるレセプタクルには組み込まれていない。また、抗菌剤を機材に加える目的はまた、そこに記載された発明は、カテーテルを突き破って採尿袋から尿道へ病原体が移動するの防止することを目的としているので、異なったものである。一方、本発明の目的は、カテーテルがレセプタクルの1開口部、又はその他の開口部を通して取り出されるので、レセプタクルからカテーテルへ細菌が移動することを抑制することである。
【0014】
用語「開口部」は、本出願では、カテーテルが使用時にリリースされ、及び/又は、作動される時、閉鎖配置から、開放配置へ持ち込むことを意図するレセプタクルのいかなる部分をも示すように使用される。
【0015】
微生物の移動が、レセプタクル内に、少なくとも、開口部の近辺に、そして、少なくとも、レセプタクルの外表面に抗菌性化合物を加えるか、又は組み入れることにより避けられる。化合物は、レセプタクル上の細菌の成長、例えば、表面上のコロニー形成を抑制する様に機能する。その結果、レセプタクル開放部又はその他の開放部を通してカテーテルを取り出す間、カテーテルがレセプタクル外表面に接触するので、カテーテルを汚染するリスクは減少し、その結果、細菌感染及び類似の疾患のリスクは軽減される。
【0016】
本発明に基づくカテーテルは、特に、導尿カテーテルとして有用であり、そしてとりわけ、間欠使用を目的とする頓用導尿カテーテルとして有用である。これにより、例えば、日常的に間欠的な尿道のカテーテル治療を実施する患者にとって、UTIによる感染リスクが減少する。
【0017】
更に、カテーテルは、好ましくは、その表面の少なくとも一部の上に、湿潤液での処理によって機器に低摩擦表面特性を付与する親水性表面層を有する。
カテーテルに親水性コーティングを適用することにより、湿潤液が親水性表面に接触する時、低摩擦効果が発揮されることは、当業者に公知である。従って、コーティングは、ヒトの腔部への、例えば、尿道へのカテーテルの挿入を容易にする。
好ましくは、カテーテル組立品は、更に、湿潤液を含む。
【0018】
湿潤液がカテーテル組立品の一部を形成することにより、カテーテルの作動のために更なる湿潤液を必要とせず、それは多くの利点をもたらす。例えば、この特定用途のために適切な湿潤液を見出すことが通常困難な場所において、カテーテルの作動は容易に達成されるであろう。更に、充分に清潔で、そして無菌した流体のみが使用われることが保証され、それによってカテーテルの望ましくない汚染のリスクを低下させるであろう。尚、更に、カテーテルの湿潤は、より簡単でそしてより便利な手法で実施してもよい。
【0019】
適切な湿潤液としては、一般的には、無菌水又は生理食塩水があろう。
付与される湿潤液の量は、好ましくは、ある程度までレセプタクルに満たし、そして、カテーテルの適切な湿潤性が維持されるのを保証するのにに充分な量である。
【0020】
湿潤液は、更に、レセプタクル内に収納中、親水性表面層を湿潤状態で保存し、すぐに使えるカテーテル組立品を供給するために、レセプタクル内のカテーテルの親水性表面を湿潤状態で接触するよう調整され得る。
【0021】
カテーテル組立品は、また、湿潤液がカテーテルの親水性表面から分離されて保たれている保存状態、及び湿潤剤がカテーテルの使用目的の前に親水性表面層と接触している作動状態を示す。
【0022】
それ故、カテーテルは、前者の実施態様によると、製造中、既に、作動されており、そして、その後、作動されたすぐに使える条件下で保存され、然るに、後者の実施態様に基づくカテーテル組立品の湿潤液は、始めは、組立品の保存中、カテーテルの親水性表面層から分離して保存され、そして、使用前に作動のため、親水性表面層へ接触させるようになる。
【0023】
レセプタクルが開かれた後、レセプタクルははぎ取られ、そしてその後、処分され、又は、1つの実施態様によると、カテーテルに接続され、そして採尿袋として使用される。膀胱からの排尿を受けるための容器としてレセプタクルを活用することにより、カテーテルは、ドレナージ中並びにドレナージ後、レセプタクルに接続した状態で維持されるので、漏れをより低下させるのに役立つ。
【0024】
少なくともレセプタクルの一部は、カテーテルの少なくとも挿入可能な長さを収容するのに充分な長さの延長ポケットを形成し得る。
【0025】
更に、少なくとも1つの開口部は、好ましくは、延長ポケット上に、配置されている。
【0026】
尚、更に、レセプタクルにとって好ましいのは、延長ポケットの中間部分が、ヒトの腔部、例えば、尿道へ湿潤カテーテルを挿入中、その誘導、及び保持のための挿入の補助として用いられ得るような位置に、少なくとも2つの開口部を有することである。
【0027】
レセプタクルからのカテーテルの取り出し、及び、例えば、患者の尿道への挿入はを容易にするために、脆弱部分の少なくとも1つは、好ましくは、カテーテルが置かれている延長ポケットのエリアにあるレセプタクル上に配置される。脆弱部分は、例えば、引き裂き、又は捻じれを通して、レセプタクルにおける開口部を提供し、そして、この延長ポケット上での開口部の位置は、使用目的の前のカテーテルの開梱を容易にするために役立つ。
【0028】
最も好ましくは、2つのそのような脆弱部分が提供され、そして、レセプタクルの長さ方向に分離される。延長ポケットの中間部分は、カテーテルが、例えば、尿道へ挿入される時、湿潤状態のカテーテルを導入し、保持するための挿入補助として用い得る。従って、ヒトの腔部へカテーテルを挿入するためにそれを直接取り扱う必要性がなくなり、従って、湿潤手法によりカテーテルの外表面が滑り易くなり、それ故、握るのが困難となり、更に、この段階におけるカテーテルの汚染の可能性が排除され、それにより、カテーテルの清潔性と無菌性が維持される利点もある。
【0029】
少なくとも1つの開口は、好ましくは、引き裂き開口である。
用語「引き裂き開口」は、本出願の文脈においては、広い意味で理解され、本質的に反対方向にレセプタクル材料の引っ張り部分により、引き裂き開口される開口部を意味する。このタイプの開口は、当業者によく知られており、そして、しばしば、多くの異なった理由により有利である。しかしながら、取り出しの間、レセプタクルの非無菌の外表面と接触するかもしれないので、これらの開口は、カテーテルの汚染リスクをもたらす。しかし、本発明は、また、ピーリング開口などのその他のタイプの開口を有するレセプタクルに適用可能であり、そして、有用でもある。
【0030】
レセプタクルは、好ましくは、使用前にカテーテルを曝すために、レセプタクルの開口を容易にするための開口手段を含む。開口手段は、前述のように、1つ又は数個所の脆弱部分を含み、そして、好ましくは、引き裂き線は、1つ又は数個の握りハンドル、例えば、引き抜きタブに接続されている。引き抜きタブは、レセプタクルの引き裂き開口を容易にするため、脆弱部の一方又は両方に配置され得る。
【0031】
レセプタクルは、好ましくは、柔軟性のある合成樹脂材料で成形され、それにより、レセプタクルが折り曲げ可能となる有利性が発生し、カテーテル組立品の詰め込みを容易にする。
【0032】
レセプタクル材料の外表面を抗菌性化合物でコーティングし、又はその中に組み入れる様に調整することは、そこで抗菌性化合物が細菌の成長を抑制するためレセプタクルに加えられる好ましい手法である。カテーテルが1つ又は数個の開口部を通してレセプタクルから取り出される時、レセプタクルからカテーテルへ微生物が移動することを抑制するために、化合物が開口部近辺に存在することが最も重要である。
【0033】
レセプタクル材料中の抗菌性化合物の量は0.1〜20phr(樹脂100部当たりの部)の範囲内であり、そして好ましくは、0.5〜7,5phr、最も好ましくは、約4.5phrであり得る。
【0034】
抗菌性化合物は、好ましくは、有機酸金属塩であり、そして更に、リン酸エステルと亜鉛金属を含んでいてもよい。
【0035】
更に、抗菌性化合物は、1つ又は数個の硝酸銀、酢酸銀、又は乳酸銀を含んでいてもよい。
【0036】
上記の抗菌性化合物、及びレセプタクル材料中のその濃度は、適切な抗菌効果を提供することが証明された。従って、これらの化合物のいずれかを、与えられた範囲内で含有する本発明に基づくカテーテル組立品を使用することにより、カテーテルがレセプタクルから取り出される時、レセプタクルからカテーテルへの微生物の移動が避けられる。
【0037】
本発明の他の態様、利益、及び有利な特徴は、以下の説明及び特許請求範囲から明白であろう。
【0038】
例示目的のため、本発明は、以下に、具体的な実施態様により、より詳細に、添付図を参照して記載され、ここでそれらの図は:
図1は本発明の第一の実施態様に基づく、採尿袋を形成するレセプタクルを備えたカテーテルを示し;
図2は第二の実施態様に基づくカテーテル組立品を示し;
図3aは、抗菌性化合物がレセプタクル材料の外表面上で層を構成するレセプタクルの横断面図を示し;
図3bは、抗菌性化合物がレセプタクル材料中へ組み込まれるレセプタクルの横断面図を示す;
ことを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次の詳細な記述において、本発明の好ましい実施態様が説明されるであろう。しかしながら、異なった実施態様の特徴は実施態様間で交換可能であり、そして、何か他に具体的に指示されない限り、異なった方法で実施態様を組み合わしてもよいことも理解できるであろう。尚、また、明確にするために、図で説明したある部品の寸法は、本発明の現実の実施における対応する寸法と、例えば、カテーテルの長さ、流体コンパートメントなどの実寸法と異なっていてもよい。
【0040】
図1で説明する通り、カテーテル(130)は、フレア状の後方部分(131)、及び後方部分(131)から前方へ突き出す細長いシャフト又はチューブ(132)を含む。開口した内腔(図示されていない)は、後方部分(131)の末端から、細長いチューブ(132)の丸みを帯びた先端(134)のドレナージ用開口部(133)まで延びている。後方部分(131)は、採尿袋、ドレナージチューブなどその他の機器と結合可能なカテーテル(130)のコネクターとして機能する。
【0041】
少なくとも細長いチューブ(132)の一部は、導尿カテーテルの場合、尿道の様な使用者の体の開口部を通して挿入可能な長さを形成する。「挿入可能な長さ」によって、通常、親水性カテーテルの関連では、親水性材料、例えば、PVPでコーティングされ、そして、患者の尿道へ挿入可能な細長いチューブ(132)の長さを意味する。一般的には、これは、女性患者用としては80〜140mmであり、男性患者用としては200〜350mmである。
【0042】
本発明によると、本明細書で開示された実施態様に対して適用可能なものとして、多くの異なったタイプの公知の親水性材料が使用可能である。例えば、カテーテルには親水性のコーティングが提供され得る。ここで親水性高分子のコーティングとしては、ポリビニル化合物、多糖類、ポリウレタン、ポリアクリラート、又はビニル化合物とアクリラート又は無水物との共重合体、特に、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ヘパリン、デキストラン、キサンタンゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ビニルピロリドン及びメチルアクリル酸ヒドロキシエチルの共重合体、又はポリメチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体から選択された材料を含む。好ましい親水性高分子は、ポリビニルピロリドンである。
【0043】
使用にあたっては、カテーテル(130)は湿潤液(150)で湿潤化される。湿潤液(150)は、親水性表面のコーティング部を湿潤化する主要目的にかない、それにより、表面に低摩擦性を付与し、そしてカテーテル(130)が滑り易くなり、そして、例えば、患者の尿道への挿入を容易にする。湿潤液(150)は、好ましくは、水ベースの、即ち、溶媒として水を用いる液体である。更に、流体中に溶解した抗菌性の化合物を付与することも可能である。尚、更に、湿潤性の流体(150)は、また、溶解した親水性高分子、好ましくは、湿潤性の流体(150)が目的とするカテーテルの親水性コーティングに用いたものと同種の親水性高分子を含むことができよう。この場合、湿潤液中の親水性高分子の量は、好ましくは、0〜20質量%の範囲であり、そして最も好ましくは5〜15%、一般的には約10%である。
【0044】
図1に関連して、カテーテル組立品(110)の第一の実施態様がここに説明され、その構造は、米国特許第6409717号で以前に開示された実施態様と一般的に類似しており、該資料は参照することにより、本明細書に取り入れられている。
【0045】
カテーテル組立品(110)は、好ましくは、透明で柔軟性のあるプラスチック材料の湿潤化したレセプタクル又は袋(120)を含む。レセプタクル(120)は、その前方に細長いポケット(121)を有する。その後方部(122)に、レセプタクルは開口部を示す。湿潤化したレセプタクル(120)は、少なくとも、細長いポケット(121)中のカテーテルチューブ(132)の挿入可能な長さを収納するため適用される。
【0046】
カテーテル組立品(110)は、更に、より詳細に前述したタイプの親水性の導尿カテーテル(130)を含む。
【0047】
カテーテル(130)は、いかなる湿潤液をも用いず、パッケージに配置され、ここで、湿潤液は外部から提供される。しかし、好ましくは、カテーテル(130)は、図1の実施態様における様に、湿潤液(150)を更に含む組立品中に配置される。この実施態様において、カテーテル組立品(110)は、レセプタクルの分離されたコンパートメントに配置された湿潤液(150)を含み、それは、組立品(110)の一部を形成する。より具体的には、図1の実施態様において、カテーテル組立品(110)は、更に、湿潤液用容器(140)を含み、ここで、湿潤液(150)は、保存中、カテーテル(130
)の親水性表面から分離して保持される。
【0048】
湿潤液用容器(140)は、カテーテル組立品(110)を作動させるため、開くことができる。それ故、カテーテルの親水性コーティング面と接触できるように、作動は、容器140を開き、そして湿潤液(150)を湿潤レセプタクル(120)内に放出することにより達成される。湿潤液用容器(140)は、押さえる、引き裂く、穴を開ける、捻じるなどの、それ自体、当該分野で公知の方法により開くことができる。
【0049】
湿潤レセプタクル(120)は、好ましくは、カテーテル(130)の周りのシールされたコンパートメント及び少なくとも、湿潤液用容器(140)の一部を形成する。
【0050】
その上更に、湿潤レセプタクル(120)は、好ましくは、使用にあたってカテーテル130を露出するために、レセプタクルを開くのを支援する開放手段を含む。開放手段は、プルタブの様な握りハンドル(124)に接続した引き裂きライン(123)を含んでもよく、それにより引き裂き開放を形成する。ここで、使用者は握りハンドル(124)を引き、それにより、湿潤レセプタクル(120)の側壁を引き裂き開く。追加の、又は代わりの握りハンドルは、引き裂きライン(123)の反対側に配置されてもよい。しかし、代わりの開放手段は、また、異なった方式、位置、引き剥がし結合部などにおいて配置された引き裂きラインなどで実施可能である。
【0051】
最も好ましくは、少なくとも2つの開放部(123、123’)は、細長いポケット(121)の中間部分が、例えば、尿道などのヒトの腔部に挿入中、湿潤化されたカテーテル(130)を誘導し、保持する挿入補助具として使用され得る様に位置付けすることである。図1に例示する実施態様をにおいて、追加の引き裂きライン(123’)は、細長いポケット上で、握りハンドル124’に沿って提供される。脆弱部(123、123’)の面積は、もしレセプタクル(120)が、また、採尿袋として提供される場合、図1においては、好ましくは、制限(129)の下に置かれる。
【0052】
図1の実施態様に記載のカテーテル(130)を湿潤化する方法において、使用者は、始めに、湿潤レセプタクル(120)内で、湿潤液の容器(140)を開くことにより、カテーテル(130)を作動させ、それにより、湿潤液(150)を容器(140)から湿潤レセプタクル(120)の内へ放出する。充分な湿潤期間の後、患者への挿入用のカテーテル(130)を露出するために湿潤レセプタクル(120)は、開放される。
【0053】
図1の実施態様において、湿潤レセプタクル(120)は、また、採尿袋としても働く。この場合、上記で記載した方法と同じ方法で所定期間中カテーテル(130)を湿潤化した後、袋(120)は上下逆に置き、そして、細長いポケット(121)の最先端を引き裂く。それからカテーテルの細長いシャフト(132)は、細長いポケット(121)の前方にある開口部を通して操作し、そして、フレア状の後方部分(131)が、レセプタクルの限界線(129)で開口部と機械的シール結合を形成するまで引き上げる。その後、カテーテル(130)は、患者の尿道内へ挿入される。この様にして開かて、レセプタクル(120)は、膀胱から漏れた尿を受け取るため、カテーテル(120)に結合して保持される。しかし、これは単なる選択であり、そして、採尿袋として働かないパッケージも同様に実施可能である。その様な実施態様は図2に示され、それは、米国特許公開第2005/043715号で議論された実施態様の幾つかの構造と類似し、該資料は参照することにより本明細書に組み入れられている。
【0054】
あるいは、カテーテル組立品(110)は、米国公開特許第2005/043715号でも開示されたように、カテーテル(130)を部分的にだけ囲むパッケージを含み、ここで、該資料は参照することにより本明細書に組み入れられている。また、湿潤液容器(140)を、レセプタクル(120)の分離されたコンパートメントではなく、カテーテル(130)を保持するコンパートメントに統合されるように配置することも可能である。これにより、カテーテル(130)は、製造中にすでに作動され、その後、作動され、すぐに使える条件で維持される。従って、この実施態様において、親水性の表面層は、レセプタクル(120)内に収納中は、湿潤化状態で保たれ、そして、すぐに使えるカテーテル(130)が提供される。この湿潤化状態を保つために、レセプタクル(120)とカテーテル(130)により形成されたコンパートメントは、好ましくは、ガスでシールされ、そして更に、レセプタクル(120)は、好ましくは、ガス不透過性である。使用時に、レセプタクル(120)は、簡単に開かれ、そして、カテーテル(130)は、直ちに患者の体内に導入される。その様な組立品(110)は、例えば、米国特許第6848574号に開示されており、該資料は、参照することにより本明細書に組み入れられている。
【0055】
図2は、湿潤化されたレセプタクル又は袋(220)並びにフレア状の後方部分及び後方部分(231)から前方へ突き出す細長いシャフト又はチューブを含むカテーテル(230)を含むカテーテル組立品(210)を示す。レセプタクル(220)は、その前方の端に細長いポケット(221)を有する。使用にあたって、カテーテル(230)は、湿潤液(250)で湿潤化される。
【0056】
図2の実施態様において、カテーテルは尿道への挿入の前、又は挿入中レセプタクルから取り除かれる。何故ならばレセプタクル(220)は、前述したように、開いた後で使い捨てられ、即ち、レセプタクル(220)は、図1のカテーテル組立品(110)とは対照的に、採尿袋として働かない。しかし、その他の特徴は、図1の実施態様と関連した前記の特徴と類似しており、それが更なる説明を省略する理由でもある。
【0057】
図3a及び3bは、レセプタクル材料(303)の外表面上(302)の層を構成する抗菌性化合物(301)、及びレセプタクル材料(303)中に組み入れられた抗菌性化合物(301)を、それぞれ示している。
【0058】
抗菌性化合物(301)を有するレセプタクル材料(303)を提供するため、これらの例示している、好ましい方法を活用することにより、レセプタクル材料(303)は、細菌の成長を抑制することを可能にする。化合物(301)を、特に、レセプタクル開口部(123、123’)の近辺に加えることにより、カテーテル(120、220)がレセプタクル(110、210)から取り出される時、レセプタクル(110、210)からカテーテル(120、220)への細菌の移動が回避される。
【0059】
レセプタクル材料(303)中の抗菌性化合物(301)は、0.1〜20phr(樹脂100部当たりの部)、好ましくは、0.5〜7.5phr、最も好ましくは4.5phrである。
【0060】
更に、抗菌性化合物(301)は、好ましくは、有機酸金属塩であり、そして、1つの実施態様によると、リン酸エステル及び亜鉛金属を含む。別の実施態様によると、抗菌性化合物(301)は、硝酸銀、酢酸銀又は乳酸銀の内の1つである。
【0061】
本発明は、ここで、異なった実施態様と関連して論じられた。しかし、数種の更なる代替手段が可能であることは、当業者には理解されるであろう。例えば、上記で論じられた異なった実施態様の特徴は、当然、他の多くの方法と組み合わせられるであろう。
【0062】
更に、血管カテーテルなどの導尿カテーテル以外の他のタイプのカテーテルに対して本発明を用いることも可能である。
【0063】
尚、更に、多くの異なった方法で湿潤液容器を配置することも可能である。例えば、容器は分離容器であってもよいが、しかし、組立品の一部を形成するものである。その様な湿潤液容器は、完全にレセプタクルの内側に、部分的にレセプタクルの内側に、又は完全にレセプタクルの外側に配置されてもよい。あるいは、湿潤液容器は、レセプタクルの一体化コンパートメントであってもよい。このコンパートメントは、カテーテルの挿入可能部分を格納するコンパートメントから分離していてもよく、又は、そのコンパートメントと一体化されていてもよい。後者の場合、カテーテルは湿潤化された作動状態で維持される。
【0064】
更に、湿潤液容器は、カテーテルの先端部に近接して、カテーテルの中心部に近接して、又は組立品の適切ないかなる位置に配置されてもよい。湿潤液が、カテーテルの挿入可能部分から分離して配置される場合、分離壁又は結合部は、例えば、破壊可能な又は引き裂き可能な膜壁であってもよい、しかし、様々のタイプの取り外し可能な、又は開くことができるキャップ又は締め具などの別の実施態様も、当然ながら実施可能である。湿潤液容器は、流体容器に捻じれ、圧縮、引っ張りなどを適用することにより、排出するよう配置され得る。好ましくは、湿潤液は、これが目的とする使用などにより、必要でなくても、レセプタクルを破壊、又は破裂することなしで流体を排出し得る。
【0065】
多くの異なった材料は、また、カテーテル組立品の異なった部品に使用できよう。
【0066】
上記で記載されたものと類似の数種の代替手段は、本発明の範囲から逸脱することなしに使用可能であり、そしてその様な全ての変更は、添付の請求範囲で定義される通りに本発明の一部であると見なすべきことは当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一の実施態様に基づく、採尿袋を形成するレセプタクルを備えたカテーテルを示す。
【図2】第二の実施態様に基づくカテーテル組立品を示す。
【図3a】抗菌性化合物がレセプタクル材料の外表面上で層を構成するレセプタクルの横断面図を示す。
【図3b】抗菌性化合物がレセプタクル材料中へ組み込まれるレセプタクルの横断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(130、230)及びレセプタクル(120、220)を含み、該レセプタクルは該カテーテルの少なくとも一部を収納し、そして、上記カテーテルの取り出し用の少なくとも1つの開口部(123)を有し、ここで、上記レセプタクルは、1つの上記開口部の少なくとも近辺に、及びレセプタクルの少なくとも外表面に抗菌性化合物(301)を備えており、少なくとも1つの上記開口部を通して引き出される間、上記抗菌性化合物が、微生物の上記カテーテルへの移動を抑制するカテーテル組立品(110、210)。
【請求項2】
カテーテルが、導尿カテーテルであり、好ましくは間欠的使用を目的とする請求項1に記載のカテーテル組立品。
【請求項3】
更に、湿潤液(150、250)を含む請求項2に記載のカテーテル組立品。
【請求項4】
カテーテルが、少なくともその表面の一部の上に、湿潤液で処理することにより、機器の低摩擦表面特性をもたらす親水性表面層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項5】
レセプタクル中に収納中、湿潤状態で親水性表面層を保存し、すぐに使えるカテーテル組立品を提供するために、前記湿潤液が前記レセプタクル中の前記カテーテルの前記親水性表面層と湿潤状態で接触して配置される請求項4に記載のカテーテル組立品。
【請求項6】
カテーテル組立品は、湿潤液をカテーテルの親水性表面層から分離して保存する状態を示し、そして前記湿潤液を、前記カテーテルの予定した使用の前に、前記親水性表面層と接触させる作動状態を示す請求項4に記載のカテーテル組立品。
【請求項7】
レセプタクルが採尿袋を形成する請求項1〜6のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項8】
レセプタクルの少なくとも一部が、カテーテルの少なくとも挿入可能な長さを収納するに充分な長さの細長いポケット(121、221)を形成する請求項1〜7のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項9】
少なくとも1つの開口部が、細長いポケット上において配置されている請求項8に記載のカテーテル組立品。
【請求項10】
レセプタクルが、細長いポケットの中間部を、ヒトの体腔部、例えば、尿道への挿入中に、湿潤化カテーテルを誘導し、保持するための挿入支援具として使用し得るように置かれた、少なくとも2つの開口部(123、123’)を有する請求項9に記載のカテーテル組立品。
【請求項11】
少なくとも1つの開口が、引き裂き開口である請求項1〜10のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項12】
レセプタクルが、柔軟性のあるプラスチック材料から形成される請求項1〜11のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項13】
抗菌性化合物が、レセプタクル材料(303)の外側表面に層(302)を構成する請求項1〜12のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項14】
抗菌性化合物が、レセプタクル材料中に組み入れられる請求項1〜13のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項15】
レセプタクル材料中の抗菌性化合物の量が、0.1〜20phr(樹脂100部当たりの部)の範囲内であり、好ましくは、0.5〜7.5phr、そして最も好ましくは、約4.5phrである請求項1〜14のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項16】
抗菌性化合物が有機酸の金属塩である請求項1〜15のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項17】
有機酸の金属塩がリン酸エステルと亜鉛金属を含んでいる請求項16記載のカテーテル組立品。
【請求項18】
抗菌性化合物が硝酸銀、酢酸銀又は乳酸銀のうちの1つである請求項1〜17のいずれか1項に記載のカテーテル組立品。
【請求項19】
カテーテルとレセプタクルを含むカテーテル組立品の製造方法であって:
前記レセプタクル中に前記カテーテルの少なくとも一部を収納し;
前記カテーテルの取り出し用に少なくとも1つの開口部を前記レセプタクルに備え;そして
少なくとも1つの前記開口部近辺に、そして、少なくともレセプタクルの外表面上に抗菌性化合物を備え、前記抗菌性化合物が、前記少なくとも1つの開口部を通して前記カテーテルを取り出す間、微生物を前記カテーテルへ移動することを抑制する;
工程を含むカテーテル組立品の製造方法。
【請求項20】
更に、カテーテルに、少なくともその表面の一部の上で、湿潤液で処理することにより、機器の低摩擦表面特性を提供する親水性表面層を備える工程を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
更に、レセプタクル中に収納中、湿潤状態で親水性表面層を保存し、すぐに使えるカテーテル組立品を提供するために、前記湿潤液が前記レセプタクル中の前記カテーテルの前記親水性表面層と湿潤状態で接触して配置される工程を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
更に、カテーテル組立品を、湿潤液がカテーテルの親水性表面層から離れて保存される保存状態を、及び前記湿潤液が前記カテーテルの予定した使用の前に、前記親水性表面層と接触する様な作動状態を示す様に配置する工程を含む請求項20記載の方法。
【請求項23】
レセプタクル中のカテーテルの少なくとも一部を収納し、少なくとも前記レセプタクルの一部が、前記カテーテルの少なくとも挿入可能な長さを収納するに充分な長さの細長いポケットを形成する工程を含む請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
レセプタクルが、カテーテルの取り出し用に少なくとも1つの開口部を備え、少なくと1つの前記開口部が、前記細長いポケット上に配置されている工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの開口部が、細長いポケットの中間部が、尿道への挿入中に、湿潤カテーテルを誘導し、保持するための挿入支援具として使用し得るように位置する請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2010−540136(P2010−540136A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527441(P2010−527441)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063143
【国際公開番号】WO2009/043872
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(501249869)アストラ・テック・アクチエボラーグ (22)
【Fターム(参考)】