説明

抗菌活性を有するケトライド化合物

本発明は、抗菌活性を有する、下記式(I)


式-I
のケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩に関する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物及び本発明の化合物を用いた微生物感染症の治療又は予防方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、抗菌活性を有する、式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩に関する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物及び本発明の化合物を用いた微生物感染症の治療又は予防方法をも提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
周知ファミリーの抗菌薬であるケトライドは、半合成14員環マクロライド誘導体であって、マクロラクトン環に存在するL-クラジノース成分の代わりに3位にケト官能基が存在することを特徴とする。テリスロマイシン及びセスロマイシンがケトライドの例である。
テリスロマイシンは、米国特許第5,635,485号及びBioorg. Med. Chem. Lett. 1999, 9(21), 3075-3080に記載されている。もう一つのケトライド、セスロマイシン(ABT 773)及びその他はPCT出願第WO 98/09978号、及びJ. Med. Chem. 2000, 43, 1045で開示されている。
米国特許第6,900,183号は、シアノ又はアミノ誘導体で置換されたC-21のラクトンを有する11,12-γラクトンケトライドについて記載している。特許出願、例えばU.S.2004/0077557及びPCT公開WO 02/16380、WO 03/42228、WO 03/072588及びWO 04/16634等は、11,12-γラクトンケトライドを開示している。我々の同時係属PCT出願第WO08/023248号はいくつかのマクロライド及びケトライドを開示している。
側鎖にチアジアゾールヘテロアリールを有する本発明のケトライド化合物は有用な抗菌薬である。本発明の化合物は、マクロライド及びケトライド耐性株を含めたグラム陽性細菌に対して予想外に優れた効力を示した。驚くべきことに、本発明の化合物は、耐性菌感染の治療における優れた経口有効性によって特徴づけられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、下記式I
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、
XはCH又はNである)
のケトライド化合物;及び
その医薬的に許容できる塩に関する。
本発明は、式Iの化合物と、医薬的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、その医薬組成物をも提供する。
本発明は、式Iの化合物を利用する、微生物感染症の治療又は予防方法をさらに提供する。
以下の説明で本発明の1つ以上の実施形態の詳細について述べる。この説明及び特許請求の範囲から本発明の他の特徴、目的及び利点が明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
ある一般的態様では、下記式I
【0007】
【化2】

式-I
【0008】
(式中、
XはCH又はNである)
のケトライド化合物;及び
その医薬的に許容できる塩を提供する。
【0009】
用語の説明:
特に断らない限り、以下の定義を使用する。
本明細書で使用する用語「医薬的に許容できる塩」は、本発明の遊離塩基の所望の薬理活性を有し、かつ生物学的にも他の意味でも望ましくなくない、本発明の遊離塩基の1種以上の塩を意味する。塩は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なしでヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、かつ合理的な利益/危険比で釣り合っている。医薬的に許容できる塩は技術上周知である。例えば、S. M. Bergeらは、医薬的に許容できる塩についてJ. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)(参照によってここに援用する)に詳述している。本発明の化合物の最終単離及び精製中に塩をin situで調製することができ、或いは別に遊離塩基官能を適切な酸と反応させることによって調製することができる。これらの塩は無機若しくは有機酸から得られる。無機酸の例は、塩酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、硫酸又はリン酸である。有機酸の例は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等である。アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン若しくはバリン等の種々のアミノ酸又はその光学活性異性体又はそのラセミ混合物又はそのモノアミノ酸単位から誘導されるジペプチド、トリペプチド及びポリペプチドとの塩も包含される。
他の医薬的に許容できる塩として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、マロン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
適切な塩基と反応させることによって、化合物の酸成分の塩を調製することもできる。これらの適切な塩はさらに無機又は有機塩基の当該塩である。無機塩基は、例えばKOH、NaOH、Ca(OH)2、Al(OH)3である。有機塩基塩は、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、グアニジン等の塩基性アミン、又はピペリジン、ヒドロキシエチルピロリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、モルホリン、ピペラジン、N-メチルピペラジン等のヘテロ環式アミン、又はアルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン等の光学的に純粋なラセミ異性体のような塩基性アミノ酸から得られる。
適切な場合、さらなる医薬的に許容できる塩として、無毒アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、並びにハライド、ヒドロキシド、カルボキシラート、スルファート、ホスファート、ニトラート、低級アルキルスルホナート及びアリールスルホナート等の対イオンを用いて形成されるアミンカチオンの塩が挙げられる。
【0010】
用語「治療的に有効な量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医が探索する組織系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する、活性化合物又は医薬の当該量を意味し、この反応には、治療する疾患又は障害の症状の軽減が含まれる。生物学的又は医学的反応を誘発するために必要な活性化合物又は医薬の特定量は、限定するものではないが、治療する疾患又は障害、投与する活性化合物又は医薬、投与方法、及び患者の状態といったいくつかの因子によって決まるであろう。
用語「治療」は、特に断らない限り、本発明の方法に規定されている、微生物感染症の治療又は予防を包含する。
用語「微生物感染症」は、限定するものではないが、本発明の化合物のような抗生物質を投与することによって治療又は予防し得る、グラム陽性、グラム陰性細菌、好気性、嫌気性細菌、非定型細菌又は原虫によって引き起こされる得る細菌感染症又は原虫感染症を包含する。このような細菌感染症及び原虫感染症並びに該感染症に関連する障害として以下のものが挙げられる:肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎、並びに肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、又はペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus spp.)による感染に関連する乳様突起炎;咽頭炎、リウマチ熱、並びに化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、C群及びG群連鎖球菌、クロストリジウム・ジフテリア(Clostridium diptheriae)、又はアクチノバチルス・ハエモリチカム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関連する糸球体腎炎;マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、又はクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連する気道感染症;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(staphylococci)(すなわち、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(S. hemolyticus)等)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、連鎖球菌C〜F群(微小コロニー連鎖球菌)、緑色連鎖球菌(viridans streptococci)、コリネバクテリウム・ミヌーチシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)、又はバルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henselae)による感染に関連する無併発性皮膚及び軟組織感染症、膿瘍及び骨髄炎、並びに産褥熱;腐生ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)又はエンテロコッカス種(Enterococcus spp.)による感染に関連する無併発性急性尿路感染症;尿道炎及び子宮頚管炎;並びにトラコーマ・クラミジア(Chlamydia trachomatis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、又は淋病双球菌(Neiserria gonorrheae)による感染に関連する性行為感染症;黄色ブドウ球菌(S. Aureus)(食中毒及び毒性ショック症候群)、又はA、B及びC群連鎖球菌による感染に関連する毒性疾患;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連する潰瘍;回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)による感染に関連する全身性熱性症候群;ボレリア・バルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染に関連するライム病;トラコーマ・クラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋病双球菌(Neisseria gonorrhoeae)、黄色ブドウ球菌(S. Aureus)、肺炎球菌(S. Pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(S. Pyogenes)、インフルエンザ菌(H. Influenzae)、又はリステリア種(Listeria spp.)による感染に関連する結膜炎、角膜炎、及び涙嚢炎;マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、又はマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連する播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)疾患;カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)による感染に関連する胃腸炎;クリプトスポリジウム種(Cryptosprodium spp.)による感染に関連する腸内原虫;緑色連鎖球菌(viridans streptococci)による感染に関連する歯原性感染症;百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連する持続性の咳;クロストリジウム・ペルフリゲンス(Clostridum perfringens)又はバクテリオロイデス種(Bacteroides spp.)による感染に関連するガス壊疽;並びにヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)又はクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連するアテローム性動脈硬化症。動物において治療又は予防し得る細菌感染症及び原虫感染症並びに該感染症に関連する障害には以下のものがある:パスツレラ・ヘモリチカ(P. haem.)、パスツレラ・ムルトシダ(P. Multocida)、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)、又はボルデテラ種(Bordetella spp.)若しくはヘモフィラス種(Haemophilus spp.);又は原虫(すなわち、コクシディア(coccidia)、クリプトスポリディア(cryptosporidia)等)による感染に関連するウシ呼吸器疾患;黄色ブドウ球菌(Staph. aureus)、ストレプトコッカス・ウベリス(Strep. uberis)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Strep. agalactiae)、ストレプトコッカス・ジスガラクチアエ(Strep. dysgalactiae)、又はエンテロコッカス種(Enterococcus spp.)による感染に関連する乳牛乳腺炎;A. プレウロ(A. pleuro.)、パスツレラ・ムルトシダ(P. multocida)、又はマイコプラズマ種(Mycoplasma spp.)による感染に関連するブタ呼吸器疾患;フソバクテリウム種(Fusobacterium spp.)による感染に関連するウシ腐蹄病;フソバクテリウム・ネクロホラム(Fusobacterium necrophorum)又はバクテロイデス・ノドサス(Bacteroides nodosus)による感染に関連するウシ毛状疣贅病;モラクセラ・ボビス(Moraxella bovis)による感染に関連するウシ伝染性結膜炎;原虫(すなわち、ネオスポリウム(neosporium))による感染に関連するウシ早発性流産;表皮ブドウ球菌(Staph. epidermidis)、スタフィロコッカス・インテルミディス(Staph. intermedius)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase neg. Staph.)又はパスツレラ・ムルトシダ(P. multocida)による感染に関連するイヌ及びネコにおける皮膚及び軟組織感染症;並びにアルカリゲネス種(Alcaligenes spp.)、バクテロイデス種(Bacteroides spp.)、クロストリジウム種(Clostridium spp.)、ユウバクテリウム(Eubacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、又はプレボテラ(Prevotella)による感染に関連するイヌ及びネコにおける歯又は口腔感染症。
【0011】
本発明の化合物として、
(11S,21R)-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA;及び
(11S,21R)-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリミジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA
が挙げられる。
一実施形態では、本発明は、式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩の調製方法を提供する。
以下のスキームは、本発明の式Iの化合物の製法を示す。全ての出発原料は有機化学の当業者に周知であろう手順によって調製される。
式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩の調製方法は、以下の2工程を含む。
工程I)側鎖合成の手順
【0012】
【化3】

【0013】
スキーム1で詳述するように、2-ピリジン又は2-ピリミジンカルボン酸のアルキルエステル1をメタノール若しくはエタノール若しくは水又はその混合物のような適切な溶媒中、20℃〜100℃の範囲の温度でヒドラジンと反応させて対応する化合物2を与える。化合物(2)をジクロロメタン若しくはジクロロエタン若しくはクロロホルム若しくはテトラヒドロフラン(THF)又はその混合物のような適切な溶媒中、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジン等の有機塩基の存在下で-5℃〜50℃の範囲の温度にて塩化オキサリルのモノエチルエステルで処理した後、必要に応じて溶媒をテトラヒドロフラン若しくは1,4-ジオキサン若しくはトルエン若しくはキシレン又はその混合物のような適切な溶媒に変えて、30℃〜140℃の範囲の温度で反応混合物をローソン試薬(Lawesson's reagent)で処理して対応するヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-カルボン酸アルキルエステル化合物3を与える。メタノール若しくはエタノール若しくはテトラヒドロフラン(THF)若しくは水又はその混合物のような適切な溶媒中、-5℃〜50℃、好ましくは0℃〜35℃の範囲の温度で化合物3を水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素リチウム等の還元剤と反応させて対応するヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-メタノール化合物4を与える。
【0014】
化合物4をジクロロメタン若しくはジクロロエタン若しくはクロロホルム若しくはテトラヒドロフラン(THF)又はその混合物のような適切な溶媒中、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジン等の有機塩基の存在下で-10℃〜40℃の範囲の温度にてアルキル又はアリールスルホニルクロリド、例えばメタンスルホニルクロリド又はp-トリルスルホニルクロリド等と反応させて、ヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-メタノールの対応するアルキル又はアリールスルホン酸エステルを与え、これをさらにアセトン又は2-ブタノン等の適切な溶媒中で40℃〜80℃の範囲の温度にて臭化リチウム又は臭化ナトリウムと反応させて、対応するヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-メチルブロミド化合物5を与える。必要に応じて、ジクロロメタン又はジクロロエタン又はクロロホルム等の適切な溶媒中、-10℃〜40℃の範囲の温度で、ヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-メタノール化合物4をトリフェニルホスフィントリトリルホスフィン等のホスフィン試薬と共に四臭化炭素と反応させてヘテロアリール-1,3,4-チアジアゾリル-メチルブロミド化合物5を調製する。
工程II)ケトライド合成の手順
【0015】
【化4】

【0016】
スキーム2で詳述するように、PCT出願第WO08/023248A2号に記載の手順により調製された(11S,21R)-2’-O-トリエチルシリル-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-12,11-{オキシカルボニル-[(E-アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]}-エリスロマイシンA(6)を、ベンゼン又はトルエン又はキシレン等の適切な溶媒中、18-クラウン-6-エーテル又はテトラブチルアンモニウムブロミド等の相間移動触媒と共に又は無しで、水素化カリウム若しくはカリウムtert-ブトキシド若しくはカリウムヘキサメチルジシラザン塩基等の適切な有機塩基又は水酸化カリウム等の無機塩基の存在下、-10℃〜50℃の範囲の温度で適切な(ピリミジニル/ピリジル)-1,3,4-チアジアゾリル-メチルブロミドと反応させてエーテル化化合物7を与える。
ジクロロメタン又はジクロロエタン又はクロロホルム等の適切な溶媒中、-50℃〜10℃の範囲の温度で、コーリー・キム(Corey-Kim)酸化種を用いて又はデス・マーチン(Dess-Martin)ペルヨージナン試薬と共に標準的条件下で処理することによって化合物7を酸化して、2’-2’-O-トリエチルシリル保護されたケトライド化合物8を与える。次にアセトニトリル又はテトラヒドロフラン又はジオキサン等の適切な溶媒中、0℃〜40℃の範囲の温度で、化合物8をピリジン-フッ化水素、テトラブチルアンモニウムフルオリド、塩酸などのシリル脱保護剤と反応させて、本発明のケトライド化合物9を与える。
【0017】
別の態様では、本発明は、式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩と、医薬的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物をも提供する。本明細書で使用する場合、このような「医薬的に許容できる」成分は、過度の有害な副作用(例えば毒性、刺激、及びアレルギー反応)がなく、合理的な利益/危険比で釣り合っている、ヒト及び/又は動物と共に使用するのに適した成分である。
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、この明細書で前述したように、治療的に有効な量の本発明のケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩と共に医薬的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤と、必要に応じて他の治療成分とを含む。
この発明の目的のため、医薬組成物は、意図した投与経路及び標準的薬務に関して選択された医薬担体との混合物で投与すべき形態で本発明の化合物を含む。使用できる適切な担体は、例えば、剤形のタイプに応じて該薬物を調製するために通常採用される希釈剤又は賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、崩壊剤、表面活性剤及び潤沢剤などである。
患者に有効量の本発明の化合物を与えるためにいずれの適切な投与経路も利用し得る。例えば、経口、直腸内、腟内、非経口(皮下、筋肉内、静脈内)、経鼻、経皮、局所等の投与形態を利用し得る。適切な剤形として、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、分散系、溶液、懸濁液、エマルション、カプセル剤、注射製剤、パッチ、軟膏、クリーム、ローション、シャンプー等が挙げられる。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、患者の微生物感染症の治療又は予防方法であって、前記患者に治療的に有効な量の式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩を投与する工程を含む方法を提供する。
本発明の化合物は、特定のマクロライド耐性株及びケトライド耐性株を含めたグラム陽性細菌に対して予想外に優れた効力を示した。
驚くべきことに、本発明の化合物は、耐性微生物感染症の治療における優れた経口有効性を特徴とする。
疾患の急性又は慢性管理において、式Iのケトライド化合物及びその医薬的に許容できる塩の予防又は治療用量は、処置すべき状態の重症度及び投与経路によって異なるであろう。加えて、用量、及びおそらく投与頻度も個々の患者の年齢、体重及び反応に応じても異なるであろう。一般的に、本発明の化合物について1日の総用量範囲は、本明細書に記載の条件では、約10mg〜約5000mgである。当業者には明らかなように、この範囲外の薬用量を使用する必要がある場合もある。
さらに、臨床医又は治療医師は、個々の患者の反応と関連して、いつどのようにして治療を中断し、調整し、又は終了するかが分かることが知られている。
本明細書で使用する患者という用語は、鳥類、魚類及び哺乳類、例えば、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、子ヒツジ、ラット、マウス及びモルモットを意味するものと解釈される。
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明の例として提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者には一定の修正及び等価物が明白であり、それらは本発明の範囲内に包含されるものとする。
【実施例】
【0019】
以下の実施例は、本発明のいくつかの代表化合物の化学合成について詳述する。手順は例示であり、それら手順が示す化学反応及び条件によって本発明が限定されるものと解釈すべきでない。これらの反応で得られる収率を最適化しようと試みておらず、当業者には、反応時間、温度、溶媒、及び/又は試薬の変更が収率を高め得ることが明白であろう。
【0020】
実施例1:(11S,21R)-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA:
工程1:エーテル化:
水素化カリウム(4.50g,鉱油中30%の懸濁液)の撹拌溶液に、トルエン(500ml)中の18-クラウン-6-エーテル(1.0g)及び(11S,21R)-2’-O-トリエチルシリル-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-12,11-{オキシカルボニル-[(E-アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]}-エリスロマイシンA(25g)を添加した後、2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン(9.78gm)を30℃の温度で加えた。反応混合物を30分間撹拌した。塩化アンモニウム飽和水溶液(100ml)を添加して反応混合物をクエンチした。混合物を酢酸エチル(250ml×2)で抽出した。層を分けた。混ぜ合わせた有機層を真空下でエバポレートして16.0gm(52%)の工程1生成物をオフホワイト固体として得た。
MS=(m/z)=961.3(M+1)
【0021】
工程2:酸化:
ジクロロメタン(200ml)中のN-クロロスクシンイミド(16.62gm)の撹拌溶液にジメチルスルフィド(15.31ml)を-15℃で加えた。反応混合物を-15℃で30分間撹拌した。ジクロロメタン(200ml)に溶かした工程1生成物(16gm)を反応混合物に-40℃で加えた。結果として生じた反応混合物を-40℃の温度で3時間撹拌した。トリエチルアミン(60ml)を加えて30℃で一晩撹拌した。反応混合物を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(200ml)に注ぎ、層を分けた。混ぜ合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、真空下でエバポレートして粗製塊を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(15%アセトン:ヘキサン)を用いて精製して、2’-O-トリエチルシリル保護されたケトライドを工程2化合物としてシリカゲルカラムクロマトグラフィー後に13.55gm(84%)の量で白色泡として得た。
質量:m/z:959.4(M+1)
【0022】
工程3:脱保護:
工程2生成物(13.5gm)と70%HF-ピリジン溶液(0.800ml)のアセトニトリル(150ml)中の混合物をN2雰囲気下で30℃にて2時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(50ml)を加え、それを15分間撹拌した。混合物をその体積の1/4まで真空下でエバポレートした。結果として生じた懸濁液を水(50ml)と撹拌して沈殿させ、固体を吸引ろ過した。湿ったケークを水で洗浄した後、ジエチルエーテルで洗浄した。それを60℃で真空乾燥させて本発明のケトライド化合物を9.5gm(80%)の量でオフホワイト固体として得た。
Mp=208.5℃(DSCによる)
質量:m/z:845.3(M+1)
HPLC純度:保持時間11.92分で94.41%(単一の異性体)(HPLCシステム:カラム:ACE 5 C18、250×4.6mm、移動相:60:40比の0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(酢酸でpHを5.5に調整)とアセトニトリルの混合物、流速:1.0ml/分、波長215nm、実行時間40分、サンプルは1:1のアセトニトリルと水の混合物中1mg/mlで調製した。
【0023】
以下の製法は、実施例1の合成で用いた出発原料の製法を示す。
製法1:2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン:
工程1:ピリジン-2-カルボン酸ヒドラジド:
エタノール(400ml)中のピリジン-2-カルボン酸エチル(90gm)とヒドラジン水和物(60gm)の混合物を80℃で4時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させて粗製塊を得た。この塊をジエチルエーテルと撹拌し、懸濁液をろ過し、湿ったケークを少量のエタノール(50ml)で洗浄して76gmの量(93%)で表題化合物を白色固体として得た。
質量:m/z:138.0(M+1)
工程2:2-(5-エトキシカルボニル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン:
ジクロロメタン(600ml)中のピリジン-2-カルボン酸ヒドラジド(76gm)とトリエチルアミン(155ml)の混合物に塩化オキサリルのモノエチルエステルを0℃で0.5時間にわたって加えた。反応混合物を2時間撹拌した。反応をTLCでモニターした。水(100ml)を添加して反応をクエンチし、層を分けて有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄した。有機層を真空中でエバポレートして粗製塊を110gmの量で得た。テトラヒドロフラン(500ml)中の粗製塊にローソン試薬(Lowesson’s reagent)(208gm)を加え、混合物を60℃で4時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗製塊をジクロロメタンとエーテルの混合物と摩砕した。懸濁液をろ過し、湿ったケークを少量のメタノール(100ml)で洗浄して表題化合物を45gmの量(2工程後に35%)でオフホワイト固体として得た。
質量:m/z:236.0(M+1)
1H NMR:(400 Mhz, CDCl3): 1.36 (t, 3H), 4.32 (q, 2H), 7.52 (m, 1H), 7.91 (m, 1H), 8.28 (d, 1H), 8.60 (d, 1H)。
工程3:2-(5-ヒドロキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン:
エタノール(80ml)中の2-(5-エトキシカルボニル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン(8gm)の混合物に30℃で水素化ホウ素ナトリウム(2.51gm)を分けて加えた。それを30℃で2時間にわたって撹拌した。反応をTLCでモニターした。真空下で溶媒を蒸発させて粗製塊を得た。この粗製塊に水(100ml)を加えてジクロロメタン(200ml×2)で抽出した。混ぜ合わせた有機層を水で洗浄し、真空下で濃縮して表題化合物を6.1gmの量で得た(92%)。それを精製せずにそのまま次反応で使用した。
質量:m/z:194.0(M+1)
1H NMR:(400 Mhz, DMSO d6): 4.88 (d, 2H), 6.24 (br s, 1H, 交換可能), 7.55 (m, 1H), 8.02 (m, 1H), 8.24 (d, 1H), 8.69 (d, 1H)。
工程4:2-(5-メタンスルホニルオキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン:
ジクロロメタン(150ml)中の2-(5-ヒドロキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン(6gm)とトリエチルアミン(13.1ml)の混合物に0℃でメタンスルホニルクロリド(5.31gm)を添加した。反応混合物を0℃で1時間にわたって撹拌した。水を添加して反応をクエンチして層を分けた。水層をジクロロメタンで抽出した。混ぜ合わせた有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄し、真空下でエバポレートして表題化合物を7.5gmの量(88%)で油として得た。
質量:m/z:272.0(M-1)
工程5:2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン:
アセトン(75ml)中の2-(5-メタンスルホニルオキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリジン(7.5gm)と臭化リチウム(3.84gm)の混合物を1時間にわたって還流させながら撹拌した。反応をTLCでモニターした。反応混合物を真空下でエバポレートして粗製塊を得た。粗製塊を氷冷水と撹拌した。固体を吸引ろ過して表題化合物を6.5gmの量(92%)で明るい茶色がかった固体として得た。
質量:m/z:255.0(M+1)
1H NMR:(400 Mhz, DMSO d6): 5.16 (s, 2H), 7.59 (m, 1H), 8.03 (m, 1H), 8.24 (d, 1H), 8.70 (d, 1H)。
【0024】
実施例2:(11S,21R)-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリミジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA。
工程1:エーテル化:
実施例1の工程1に記載の手順を利用し、(11S,21R)-2’-O-トリエチルシリル-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-12,11-{オキシカルボニル-[(E-アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]}-エリスロマイシンA(2.5g)と、2-(3-ブロモメチル-イソオキサゾール-5-イル)-ピリミジンの代わりに2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン(0.9gm)とを用いて、工程1化合物を2.4gm(78.4%)の量で固体として得た。
質量:m/z:962.4(M+1)
工程2:酸化:
実施例1の工程2に記載の手順を利用し、実施例3の工程1化合物(12gm)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー後に工程2生成物としてケトライド化合物を6.4gm(53.5%)の量で白色固体として得た。
質量:m/z:960.3(M+1)
工程3:脱保護:
実施例1の工程3に記載の手順を利用し、実施例2の工程2化合物(6.4gm)を用いて、本発明のケトライド化合物を4.5gm(79.8%)の量でオフホワイト固体として得た。
Mp=158〜160℃
質量:m/z:846.3(M+1)
HPLC純度:保持時間12.83分で93.94%(単一の異性体)(HPLCシステム:カラム:ACE C18、25cm、移動相:65:35比の0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(酢酸でpHを7.0に調整)とアセトニトリルの混合物、流速:1.0ml/分、波長260nm、実行時間50分、サンプルは1:1のアセトニトリルと水の混合物中1mg/mlで調製した。
【0025】
以下の製法は、実施例2の合成で用いた出発原料の製法を示す。
製法2:2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン:
工程1:ピリミジン-2-カルボン酸ヒドラジド:
エタノール(500ml)中のピリミジン-2-カルボン酸エチル(100gm)とヒドラジン水和物(50ml)の混合物を30℃で14時間にわたって撹拌した。懸濁液を吸引ろ過し、湿ったケークを少量のエタノール(25ml)で洗浄した後、ジエチルエーテル(50ml)で洗浄して表題化合物を80gmの量(88%)で白色固体として得た。
質量:m/z:139.0(M+1)
1H NMR:(400 Mhz, DMSO d6): 4.60 (br s, 2H, 交換可能), 7.64 (t, 1H), 8.91 (d, 2H), 10.00 (br s, 1H, 交換可能)
工程2:2-(5-エトキシカルボニル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン:
テトラヒドロフラン(1.5Ltr)中のピリミジン-2-カルボン酸ヒドラジド(50gm)とトリエチルアミン(75ml)の混合物に塩化オキサリルのモノエチルエステル(52.20gm)を10℃〜15℃で0.5時間にわたって加えた。反応混合物を温めて30℃で0.5時間撹拌した。反応混合物にローソン試薬(219gm)を40℃で加えて混合物を4時間にわたって還流させた。反応混合物を30℃に冷まして吸引ろ過した。ろ液を濃縮して得た残留物を酢酸エチル(500ml)と撹拌した。懸濁液を吸引ろ過し、湿ったケークを少量の酢酸エチル(25ml)で洗浄して表題化合物を30gmの量(2工程後に35%)で白色固体として得た。
質量:m/z:237.0(M+1)
1H NMR:(400 Mhz, CDCl3): 1.49 (t, 3H), 4.58 (m, 2H), 7.46 (t, 1H), 8.94 (d, 2H)。
工程3:2-(5-ヒドロキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン:
1%エタノール水溶液(500ml)中の2-(5-エトキシカルボニル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン(30gm)の混合物に25℃〜30℃で水素化ホウ素ナトリウム(5.0gm)を分けて加えた。それを30℃で3時間にわたって撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させて粗製塊を得た。この粗製塊に水( ml)を加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製して表題化合物を15gmの量(60%)で淡黄色固体として得た。
質量:m/z:195.0(M+1)
工程4:2-(5-メタンスルホニルオキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン:
ジクロロメタン(250ml)中の2-(5-ヒドロキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン(15gm)とトリエチルアミン(22ml)の混合物にメタンスルホニルクロリド(7.2ml)を0℃で加えた。反応混合物を0℃で1時間にわたって撹拌した。水を添加して反応をクエンチし、層を分けた。水層をジクロロメタン(200ml×2)で抽出した。混ぜ合わせた有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、水で洗浄し、真空下でエバポレートして表題化合物を20.1gmの量(定量的)で油として得た。
質量:m/z:273.0(M+1)
工程5:2-(5-ブロモメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン:
アセトン(100ml)中の2-(5-メタンスルホニルオキシメチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-ピリミジン(15gm)と臭化リチウム(6.4gm)の混合物を4時間にわたって還流させながら撹拌した。反応混合物を真空下でエバポレートして粗製塊を得た。粗製塊を氷冷水と撹拌して懸濁液を得た。固体を吸引ろ過して表題化合物を9.2gmの量(66%)で明るい茶色がかった固体として得た。
質量:m/z:259.0(M+2)
1H NMR: (400 Mhz, CDCl3): 4.87 (s, 2H), 7.43 (t, 1H), 8.91 (d, 2H)。
【0026】
上述したように、本発明の化合物は抗菌薬として有用である。本発明の化合物は、グラム陽性細菌のマクロライド及びケトライド耐性株に対して活性である。以下の実験を行なって、グラム陽性細菌に対する本発明の化合物の効力を決定した。実験の結果を下表に示す。
生物学的プロトコル;ケトライドの評価
標準的なCLSI寒天希釈法に従って最小阻害濃度(MIC)を決定することによって、本発明のケトライド化合物の抗菌活性を評価した。前培養及び主培養で用いた培地は、それぞれTryptic Soyaブロス(Difco)及びMueller Hinton培地(Difco)であった。ミューラー・ヒントン寒天培地(Mueller Hinton agar)を、連鎖球菌及び肺炎球菌のためには5%ヒツジ血液、またインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のためにはヘモグロビン及びNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)をそれぞれ補充した。一晩培養を緩衝食塩水(pH7.2)で5×106〜107CFU/mlの最終細胞密度まで希釈し、各細菌懸濁液を種々の濃度で抗菌薬を含む一連のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上にレプリケーター(Denleyのマルチポイントイノキュレーター(multipoint inoculator),UK)で塗布した。最終接種菌液は約104CFU/スポットであった。プレートを37℃で18時間インキュベートした。寒天上で目に見える微生物増殖の発生を阻害する抗菌薬の最低濃度としてMICを定義した。
(結果)
【0027】
抗菌活性:マクロライド感受性及び耐性化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)(MIC試験)

注:HLは高レベル耐性である。
【0028】
抗菌活性:マクロライド感受性及び耐性肺炎球菌(S. pneumoniae )(MIC試験)

注:HLは高レベル耐性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I
【化1】

式-I
(式中、
XはCH又はNである)
のケトライド化合物;及び
その医薬的に許容できる塩。
【請求項2】
下記化合物:
(11S,21R)-3-デクラジノシル-11, 12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA;及び
(11S,21R)-3-デクラジノシル-11,12-ジデオキシ-6-O-メチル-3-オキソ-12,11-{オキシカルボニル-[E-アミノ-(2-(ピリミジン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-5-イル-メチル)オキシ-イミノ-メチレン]}-エリスロマイシンA
を含む、請求項1に記載のケトライド化合物。
【請求項3】
治療的に有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物又はその医薬的に許容できる塩を、医薬的に許容できる担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項4】
治療的に有効な量の請求項2に記載の化合物を、医薬的に許容できる担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項5】
微生物感染症の治療又は予防方法であって、治療又は予防が必要な患者に、治療的に有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項6】
微生物感染症の治療又は予防方法であって、治療又は予防が必要な患者に、治療的に有効な量の請求項2に記載の式Iの化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項7】
微生物感染症の治療又は予防方法であって、治療又は予防が必要な患者に、請求項3に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項8】
微生物感染症の治療又は予防方法であって、治療又は予防が必要な患者に、請求項4に記載の組成物を投与する工程を含む方法。

【公表番号】特表2012−528142(P2012−528142A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512505(P2012−512505)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052325
【国際公開番号】WO2010/136971
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(509053444)
【Fターム(参考)】