説明

抗菌活性を有するB型ランチビオティック型化合物の使用

本発明は、対象の下部腸または結腸の微生物感染症の処置または予防の方法であって、対象にB型ランチビオティックを投与する段階を含む方法を提供する。特に、本発明は、クロストリジウム ディフィシレ感染症の処置または予防の方法を提供する。B型ランチビオティックは、メルサシジン、アクタガルジン、プランタリシン、プラノスポリシン、ルミノコクシン、抗生物質10789、ミチガニンおよびハロデュラシン、ならびにその誘導体および変異体からなる群より選択される化合物を含みうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年7月18日提出のGB特許出願第0714030.4号に関連し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防における、B型ランチビオティック、ならびにその誘導体および変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)感染症は、院内での下痢の最も重要な原因である。C.ディフィシレは、健常成人の3%および乳児の66%までの腸内に正常に存在する、胞子形成性の嫌気性細菌である。この生物は、腸の正常な細菌群によって抑制されているため、健常な個人で問題となることはほとんどない。しかし、治療または予防のいずれかによる広域抗生物質の使用は腸内の細菌のバランスを乱し、胞子として存在する耐性C.ディフィシレを急速に増殖させ、クロストリジウム ディフィシレ関連下痢(CDAD−抗生物質関連下痢としても公知)、結腸管腔の感染症、偽膜性結腸炎および極度の例では死亡を引き起こす毒素を産生させる。
【0004】
現在のところ、CDADの処置用に2つの一般に認められた治療法、すなわちバンコマイシンおよびメトロニダゾールがある。いずれの薬剤も高率(15〜20%)の症状再発を伴い、これはおそらく両剤が腸内菌叢を正常に回復させないためであり、改善された特性を有する薬剤が強く必要とされている。加えて、バンコマイシンは他の多剤耐性病原体に対する「最後の手段」の処置としても用いられ、この抗生物質に対する一般的耐性を増大させることを恐れて、多くの臨床医はバンコマイシンを長期処方することをいやがる。
【0005】
ランチビオティックは、抗生物質活性および他の活性を有し、グラム陽性菌によって産生されるペプチドである。ランチビオティックは、他の修飾残基の中でも、チオエーテルアミノ酸であるランチオニンおよびメチルランチオニンを含み、これらはペプチド鎖を架橋して多環式構造とする。ランチビオティックは2つのファミリー、すなわちA型およびB型に分類される。A型ランチビオティックは一般に、細菌および他の原形質膜に細孔を形成することができる伸長両親媒性物質である。例はナイシンおよびサブチリンである。これに対して、B型ランチビオティックは球形で、高次構造的に規定されたペプチドである。例はメルサシジンおよびアクタガルジンである。さらなる例を以下の表1に示す。
【0006】
ランチビオティックは、クロストリジウム ディフィシレを含む細菌により産生される狭域活性の抗生物質ペプチド群である。構造的には、ランチビオティックは、ヒドロキシル含有残基であるセリンおよびトレオニンの脱水に主に関与し、任意にこれらの脱水残基にシステインが環化してチオエーテル架橋を形成する、高度の翻訳後修飾によって特徴づけられる。
【0007】
(表1) ランチビオティックの分類

【0008】
加えて、リケニシジンはB型ランチビオティックとして分類してもよい。
【0009】
HG Sahl et al, Ann. Rev. Microbiology 1998, 52, 41(非特許文献1)(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に従っての分類。
【0010】
ランチビオティックの様々な中間型も存在し、その生体作用が他のペプチドとの相乗作用に依存するいくつかの物質が含まれる。後者の群の例にはサイトライシンおよびスタフィロコクシンが含まれる。
【0011】
ナイシンは最も詳しく特徴づけられているA型ランチビオティックで、数カ国で食品添加物として認可されている(Turtell and Delves-Broughton, International acceptance of nisin as a food preservative. Bull. Int. Dairy Fed. 1988, 329, 20-23(非特許文献2))。ナイシンはクロストリジウム属を含むグラム陽性菌に選択的である。この狭域抗菌活性は、原理的には、ナイシンをCDADの処置用薬剤として非常に適したものとするであろう。残念ながら、ナイシンは腸酵素により容易に代謝され、感染部位へのその送達が問題となっている。
【0012】
完全なまま結腸に送達されるようにナイシンを製剤するいくつかの試みが記載されている(米国特許第5,985,823号、1999(特許文献1);T. Ugurlu et al. Eur. J. Pharm. Biopharm. 2007, 67, 202(非特許文献3))が、ナイシンの酵素切断に対する固有の易損性が問題として残っている。
【0013】
このため、ナイシンおよび他のランチビオティックを経口投与で有効とするために、カプセル封入して腸の特定の領域を標的とさせる必要があるとの示唆がなされた(Rea et al. J. Med. Microbiol. 2002, 56, 940(非特許文献4))。したがって、バクテリオシンを肛門経路で浣腸剤として投与すべきと示唆されている(同書)。
【0014】
発明者らは以前に、抗生物質として用いるためのメルサシジン化合物を同定し、合成した(国際公開公報第2007/036706号(特許文献2))。発明者らは、同じく抗生物質として用いるためのアクタガルジン化合物も同定し、合成した(PCT/GB2007/000138 - 国際公開公報第2007/083112号(特許文献3))。
【0015】
シンナマイシンおよびデュラマイシン産生を担う遺伝子クラスターの同定、ならびにそれらの改善された産生法が報告されている(それぞれ国際公開公報第02/088367号(特許文献4)および国際公開公報第2004/033706号(特許文献5)参照)。
【0016】
抗生物質の分野において、耐性、生体適合性、毒性などの問題を克服するために、新しい抗生物質化合物の提供が継続して必要とされている。したがって、ランチビオティックの生成法、およびランチビオティックの変異型(天然型と比べて異なる活性特性を有しうる)の産生が望まれている。
【0017】
クロストリジウム ディフィシレ感染症の処置のために、抗菌剤が特に下記の1つまたは複数を有することが望ましいと考えられる:クロストリジウム ディフィシレに対する良好なインビボ活性;腸内菌叢において通常見いだされるほとんどの他の生物に対する比較的低い活性;全身または腸における毒性がほとんど、またはまったくない;および経口投与した際の比較的低い吸収(それにより全身効果を最小限にする)。
【0018】
しかし、今日まで、対象の細菌感染症の処置または予防において用いるための、インビトロで抗菌活性を有するランチビオティックの適合性を示すインビボ実験データが不足していた。特に、結腸の細菌感染症を処置するための、ランチビオティック化合物の活性、およびインビボでのそれらの使用に関するデータはほとんどない。発明者らは、処置または予防におけるその使用がこれまで示唆されたことがなかった複数のB型ランチビオティック化合物のインビボ活性を確立した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5,985,823号、1999
【特許文献2】国際公開公報第2007/036706号
【特許文献3】PCT/GB2007/000138 - 国際公開公報第2007/083112号
【特許文献4】国際公開公報第02/088367号
【特許文献5】国際公開公報第2004/033706号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】HG Sahl et al, Ann. Rev. Microbiology 1998, 52, 41
【非特許文献2】Turtell and Delves-Broughton, International acceptance of nisin as a food preservative. Bull. Int. Dairy Fed. 1988, 329, 20-23
【非特許文献3】T. Ugurlu et al. Eur. J. Pharm. Biopharm. 2007, 67, 202
【非特許文献4】Rea et al. J. Med. Microbiol. 2002, 56, 940
【発明の概要】
【0021】
発明の開示
本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防における、B型ランチビオティック、またはその誘導体もしくは変異体の使用を提供する。感染症は胃腸管、好ましくは腸、最も好ましくは結腸の感染症でありうる。特に、本発明の一つの局面において、細菌感染症の処置法が提供される。好ましくは、感染症はクロストリジウム感染症、好ましくはウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、破傷風菌(Clostridium tetani)またはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)感染症、最も好ましくはC.ディフィシレ感染症である。これらの方法は、A型ランチビオティックであるバンコマイシンまたはメトロニダゾールを用いての処置法に対する新しく有用な代替法を提供する。
【0022】
本発明は、腸、結腸の細菌感染によって引き起こされる疾患の処置法も提供する。この方法を用いて、偽膜性結腸炎またはCDADを処置してもよい。好ましくは、感染症はクロストリジウム感染症、好ましくはウェルシュ菌、クロストリジウム ディフィシレ、破傷風菌またはボツリヌス菌感染症、最も好ましくはC.ディフィシレ感染症である。
【0023】
本発明は、対象の処置または予防の方法であって、B型ランチビオティックを対象に投与する段階を含む方法も提供する。好ましくは、B型ランチビオティックを経口投与する。
【0024】
本明細書に記載のB型ランチビオティック、ならびにその誘導体および変異体は、C.ディフィシレに対して選択的でありうる。これらの化合物は、バンコマイシンまたはメトロニダゾールと比べて、他の共生腸内細菌叢、特にビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属に対して低い活性を有しうる。
【0025】
本明細書に記載の化合物はC.ディフィシレに対してバンコマイシンと類似の活性を有し、対象の微生物感染症の処置または予防の方法において、バンコマイシンの新しく有用な代替物を提供する。
【0026】
本明細書に記載のB型ランチビオティックはナイシンと比べて酵素分解に対する高い安定性を有しうる。特に、化合物はナイシンと比べて腸液に対する改善された安定性を有しうる。B型ランチビオティック構造は、A型化合物よりも小型で、A型の長い直鎖特性を有していない。したがって、これらはタンパク質分解に対する易損性が低く、したがって下部腸管の細菌感染などの感染部位に到達しやすいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、人工胃液(SGF)中のランチビオティック、メルサシジンおよびナイシンの安定性を示す図である。(b)は、人工胃液(SGF)中の化合物VIおよびVIIの安定性を示す図である。
【図2】(a)は、人工腸液(SIF)中のランチビオティック、メルサシジンおよびナイシンの安定性を示す図である。(b)は、人工腸液(SIF)中の化合物VIの安定性を示す図である。
【図3】C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおけるバンコマイシン、化合物IVおよび化合物VIのインビボでの有効性を示す図である。
【図4】C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおける化合物VIIのインビボでの有効性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防における、B型ランチビオティック、ならびにその誘導体および変異体の使用に関する。特に、本発明は、クロストリジウム感染症、最も好ましくはクロストリジウム ディフィシレ感染症の処置のための、これらの化合物の使用を提供する。B型ランチビオティックの使用に言及する場合、そのような使用は、文脈からそうではないことが明らかでない限り、誘導体または変異体の使用も含む。
【0029】
C.ディフィシレ感染症の発症および再発は、主に正常な腸内菌叢の不均衡によると考えられる。CDAD(C.ディフィシレ関連下痢)処置用の理想的な治療薬剤は、したがって、C.ディフィシレの死滅に対して高度に選択的であるが、正常な健康状態の腸内菌叢で優位を占める生物、特にビフィドバクテリウム属およびバクテロイデス属に対して低い活性を有することになろう。そのような薬剤は、治療中に腸内菌叢をその正常な平衡状態に回復させ、それによってCDADの再発のリスクを低下させることになる。
【0030】
CDADに対して現在用いられている治療薬のバンコマイシンおよびメトロニダゾールはいずれも、高用量で日常的に用いられ、健康な腸内菌叢に含まれる生物に対して著しい活性を有する。C.ディフィシレ感染症を過去に発症したことがある個人でCDADが高頻度に再発するのは、腸内菌叢が治療過程において正常に回復することができなかったためであると広く信じられている。
【0031】
本明細書に記載の化合物は、腸内菌叢存在下で病原微生物に対して改善された選択性で用いうる。本明細書に記載の化合物は、クロストリジウム ディフィシレに対してバンコマイシンおよびメトロニダゾールと同様の効果で用いうる。
【0032】
本明細書に記載のB型ランチビオティック、ならびにその誘導体および変異体は、ナイシンなどのA型ランチビオティックと比べて、胃腸管で見いだされるものなどの分解酵素に対する改善された安定性も有しうる。したがって、活性化合物の局所バイオアベイラビリティは、化合物が分解酵素によって分解されないため、感染部位で高くなりうる。腸管内での化合物の濃度を高めることは、化合物の滞留時間が短くなりうる下痢を有する対象の処置において特に重要である。
【0033】
C.ディフィシレ感染症処置のための好ましい投与法は、経口経路による投与である。胃腸管における著しい吸収または代謝がなければ、これは確実に薬物の最大達成可能濃度を感染部位、特に腸管に送達する。分子量>1,000ダルトンのペプチドおよび関連物質の経口吸収は一般に低いが、ペプチダーゼ酵素による代謝は一般に速く、事実、食物の通常の消化の基本的部分を構成する。ペプチドの胃腸における酵素消化に対する感受性は、人工胃液USP(SIF、食塩水中のペプシン、pH1.2)および人工腸液USP(SIF、リン酸2水素カリウム水溶液中のパンクレアチン、pH6.8)中のそれらの安定性を測定することによってインビトロで確実に推定することができる。
【0034】
B型ランチビオティックはA型ランチビオティックよりもはるかに構造的に小型で、チオエーテルおよび他の化学的架橋によって安定化された、基本的に球状の三次構造を有する。したがって、B型ランチビオティックは、代謝酵素の標的となりにくく、保護製剤の必要なく下部腸管に到達する可能性が高い。
【0035】
B型ランチビオティック、特にメルサシジンおよびアクタガルジンは、C.ディフィシレ、MRSAおよびVREなどの重要な耐性病原体を含むグラム陽性菌に対しても活性を有する。メルサシジンおよびアクタガルジンの抗菌活性は主に、細菌の細胞壁合成における重要な生合成中間体であるリピドIIを結合するそれらの能力に由来すると考えられる。リピドII結合は臨床的に重要な抗菌メカニズムであり、バンコマイシンなどの他の卓越した抗生物質によっても利用されている。同様に、ランチビオティックのB型群の一部はシンナマイシン、デュラマイシンおよびアンコベニンなどのペプチドである。これらの化合物はアクタガルジンおよびメルサシジンと比べて弱い抗菌活性を有することに注目されており、これらの主たる生体作用は酵素阻害剤としてであろうと考えられる。
【0036】
本発明は、他の共生腸内菌叢存在下でC.ディフィシレの増殖を選択的に阻害する方法を提供する。本発明において用いる化合物は、好ましくは、腸内菌叢の非病原性要素に対して低い効力を有する。腸内菌叢はビフィドバクテリウム属および/またはバクテロイデス属を含みうる。腸内菌叢はビフィドバクテリウム アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)NCTC 11814、ビフィドバクテリウム ロングム(Bifidobacterium longum)NCTC 11818、バクテロイデス フラギリス(Bacteroides fragilis)NCTC 9343およびバクテロイデス シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)NCTC 10582からなる群より選択される1種または複数種の生物を含みうる。
【0037】
本発明において用いる化合物は、バンコマイシンと比べて、腸内菌叢存在下でC.ディフィシレの増殖を選択的に阻害しうる。好ましくは、本発明において用いる化合物は腸内菌叢の生物に対して、バンコマイシンのその生物に対する阻害活性よりも低い阻害活性を有する。腸内菌叢の生物に対する化合物の阻害活性を最小阻害濃度(MIC)で評価する場合、本発明において用いる化合物は、その生物に対するバンコマイシンのMICの2倍以上、4倍以上、8倍以上、16倍以上、または32倍以上のMICを有しうる。
【0038】
好ましくは、本発明において用いる化合物は、2、3、4、5またはそれ以上の腸内菌叢の非病原性生物に対し、バンコマイシンの活性と比べて低い活性を有する。
【0039】
好ましくは、本発明において用いる化合物は、C.ディフィシレに対し、バンコマイシンの活性に匹敵する、またはそれ以上の活性を有する。C.ディフィシレに対する化合物の阻害活性を最小阻害濃度(MIC)で評価する場合、本発明において用いる化合物は、C.ディフィシレに対するバンコマイシンのMICの1/16未満、1/8未満、1/4未満、1/2未満のMICを有しうる。化合物はバンコマイシンの活性と同等、またはそれ以上の活性を有しうる。
【0040】
本発明は、別の活性化合物、好ましくは本明細書における使用について記載されていない化合物での処置によって根絶されなかった感染症の処置にも関する。他の活性化合物はバンコマイシンまたはメトロニダゾールでありうる。
【0041】
本発明は、微生物感染症の処置の方法であって、処置を必要としている対象に、B型ランチビオティックの有効量を第二の活性物質との組み合わせで投与する段階を含む方法も提供する。第二の活性物質はもう一つのB型ランチビオティックであってもよい。または、第二の活性物質はもう一つの抗菌物質または第二の症状もしくは処置すべき状態の原因を処置することが意図されるもう一つの物質であってもよい。
【0042】
第二の活性物質は、特にC.ディフィシレ関連下痢の処置中の、嫌気性腸ミクロフローラの要素の回復に関連する化合物または組成物であってもよい。第二の活性物質はトレバマー(GT160-246)であってもよい。
【0043】
さらなる局面において、方法は、処置法における同時、別々または逐次使用のための組み合わせ製剤としての、B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を提供する。
【0044】
追加の局面において、方法は、対象の微生物感染症の処置または予防用の治療法における同時、別々または逐次使用のための組み合わせ製剤としての、B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を提供する。
【0045】
本明細書に記載の化合物を薬学的組成物中で用いてもよい。したがって、B型ランチビオティックを、薬学的に許容される担体も含む組成物中で投与してもよい。組成物は遅延または持続放出組成物であってもよい。
【0046】
本発明は、C.ディフィシレ胞子の増殖を制限する方法であって、C.ディフィシレ胞子の懸濁液をB型ランチビオティックと接触させる段階を含む方法も提供する。胞子は懸濁液中であってもよい。方法はインビトロでの方法であってもよい。
【0047】
本発明は、C.ディフィシレ胞子の発芽を制限する方法であって、C.ディフィシレ胞子の懸濁液をB型ランチビオティックと接触させる段階を含む方法も提供する。胞子は懸濁液中であってもよい。方法はインビトロでの方法であってもよい。
【0048】
本発明は、プロテアーゼ含有培地、特にパンクレアチン含有培地中で細菌増殖、好ましくはC.ディフィシレ増殖を阻害する方法であって、培地中の細菌を本明細書に記載の化合物または組成物と接触させる段階を含む方法を提供する。好ましくは、培地は腸液培地である。好ましくは、方法はインビトロでの方法である。この場合、培地は人工腸液であってもよい。腸抽出物を用いてもよい。
【0049】
C.ディフィシレは臨床分離株である菌株であってもよい。
【0050】
B型ランチビオティック
本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防における、B型ランチビオティック、またはその誘導体もしくは変異体の使用を提供する。
【0051】
本発明の方法において用いるのに適したB型ランチビオティック化合物はリピドIIと結合する。
【0052】
本発明において用いる天然のB型ランチビオティックには、メルサシジンおよびアクタガルジンファミリーのメンバーが含まれる。本発明の方法において用いるのに好ましい化合物を以下に記載する。
【0053】
B型ランチビオティックの誘導体および変異体、ならびにこれらの化合物の修飾型も、本明細書に記載の方法において用いてもよい。これらの化合物は合成、半合成(例えば、発酵生成物の化学修飾により)、またはそれらを産生する生物に対する遺伝子変化により生成することができる。場合によっては、B型ランチビオティックは3つの経路すべてによって変更されることもあり、後者2つが特に興味深い。例えば、アミノ酸の修飾を用いて、活性、ならびにバイオアベイラビリティ、生体分布または親B型ランチビオティック自体への耐性メカニズムを克服する能力などの性質が改善された変異体を生成することができよう。変化したアミノ酸は、化学的手段によるペプチドの修飾を可能にする反応性側鎖を導入するためにも有用でありうる。
【0054】
一つの態様において、B型ランチビオティックはアクタガルジンもしくはメルサシジン、またはその変異体および誘導体である。
【0055】
一つの態様において、B型ランチビオティックはアクタガルジン、またはその変異体および誘導体である。
【0056】
一つの態様において、B型ランチビオティックはメルサシジン、またはその変異体および誘導体である。
【0057】
アクタガルジン
本発明において用いるために、式(I)のアクタガルジン化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される:

式中、AはLeu;Val;またはIleアミノ酸側鎖であり;BはLeu;Val;またはIleアミノ酸側鎖であり;Xは-NR1R2または-OHであり;かつY、Z、R1およびR2は以下に定義するとおりである。
【0058】
または、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の構造は下記のとおりに都合よく表しうる:

式中、
X1は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
X2は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
Xは-OHまたは-NR1R2であり、ここでR1は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル基を表し、かつR2は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル基を表すか、あるいはR1およびR2は窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むか、あるいはR1およびR2は独立に下記を表すか:
(1)水素;
(2)式-(CH2)n-NR11R12の基、ここでnは2から8の整数を表し、かつR11およびR12は独立に水素もしくは(C1-C4)アルキルを表し、またはR3およびR4は一緒になって-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)2-S-(CH2)2-もしくは-(CH2)5-なる基を表し;
あるいはR1およびR2は隣接する窒素原子と一緒になって、下記から選択される置換基により4位で置換されていてもよいピペラジン部分を表し:
(a)(C1-C4)アルキル;
(b)(C5-C7)-シクロアルキル、
(c)ピリジル、
(d)-(CH2)p-NR13R14、ここでpは1から8の整数を表し、かつR5およびR6は独立に水素または(C1-C4)アルキルを表し;
(e)ピペリジニル;
(f)置換ピペリジニル、ここで置換ピペリジニルは(C1-4)アルキルであるN-置換基を有し;
(g)ベンジル;および
(h)置換ベンジル、ここでフェニル部分はクロロ、ブロモ、ニトロ、(C1-C4)アルキルおよび(C1-C4)アルコキシから選択される1または2つの置換基を有し;
Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基であり;
Yは-S-または-S(O)-である。これらの化合物の変異体および生物活性誘導体も、本発明の方法において用いてもよい。
【0059】
基-NH2であるZに関して、この部分は前述の化合物の1位におけるアラニン残基のN末端を表すことが理解されるであろう。アミノ酸残基である基Zに関して、この部分はアミド結合により1位のアミノ酸に連結された、当技術分野においてXaa(0)と都合よく呼ぶアミノ酸を表すことが理解されるであろう。-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9である基Zに関して、これらの基は1位のアミノ酸のN末端の修飾を表すことが理解されるであろう。
【0060】
前述の化合物(I)の表示において、アミノ酸残基は適当な3文字コードで示されることが理解されるであろう。Abuは、構造式から明らかであるとおり、4-アミノ酪酸由来のアミノ酸残基を表す。
【0061】
-NR1R2である基Xに関して、この部分はアミド結合により19位のアラニンに連結された置換基を表すことが理解されるであろう。-OHである基Xに関して、これは遊離カルボキシル末端(-COOH)を有する19位のアラニンを表すことが理解されるであろう。
【0062】
アミノ酸残基であるZへの言及は、R6がアミノ酸残基のアミノおよび側鎖官能基を表す、基-NR5COR6への言及であることも理解されるであろう。例えば、アミノ酸残基グリシンについて、R6は-CH2NH2である。典型的には、アミノ酸残基に関して、R6はアミノ置換基を有し、さらに適宜置換されていてもよい、C1-7アルキル基である。
【0063】
X1およびX2がそれぞれValおよびIleであり、かつYが-S(O)-である式(I)の化合物について、化合物はアクタガルジン誘導体と呼んでもよい。X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであり、かつYが-S-である場合、化合物はデオキシアクタガルジンB誘導体と呼んでもよい。X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであり、かつYが-S-であり、Zが-NH2であり、Xが-OHである場合、化合物はデオキシアクタガルジンである。X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであり、かつYが-S-であり、Zが-NH2であり、Xが-NHCH2CH2OHである場合、化合物はデオキシアクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミドと呼んでもよい。
【0064】
好ましい化合物
本発明において用いるための好ましい式(I)のアクタガルジン化合物を以下に記載する。
【0065】
好ましいX1およびX2
好ましくは、X1はLeuであり、かつX2はValもしくはIleであるか;またはX1はValであり、かつX2はValもしくはIleである。最も好ましくは、X1はLeuであり、かつX2はValであるか;またはX1はValであり、かつX2はIleである。
【0066】
好ましいR
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は置換されていてもよいか、または適宜さらに置換されていてもよい。しかし、いくつかの態様において、これらの基は無置換であるか、または適宜さらに置換されていない。
【0067】
好ましいX
R1およびR2は両方とも水素であってもよく、すなわちXは-NH2であってもよい。R1またはR2がアルキル基である場合、アルキル基はC1-7アルキル基、最も好ましくはC1-4アルキル基であってもよい。R1またはR2アルキル基は好ましくは完全飽和である。
【0068】
R1またはR2は1、2、3、4、5、6または7個の炭素原子を有していてもよい。R1およびR2がアミドの窒素原子と一緒になって、1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含む複素環基を表す場合、好ましくはヘテロ原子は複素環の隣接する位置ではない。
【0069】
R1およびR2はいずれも1つまたは複数のヒドロキシル置換基を有していてもよい。それらの間に、R1およびR2は2つ以上のヒドロキシル置換基を有していてもよい。好ましくは、R1は1、2または3個のヒドロキシル置換基を有する。
【0070】
R1およびR2は同じであってもよい。
【0071】
好ましくはR1はアルキル基である。好ましくはR2は水素である。
【0072】
R1およびR2がヒドロキシル置換基を有するヘテロアルキル基である場合、ヒドロキシル置換基はヘテロアルキル基の炭素原子上の置換基である。
【0073】
R1およびR2が2つ以上のヒドロキシル置換基を有するアルキルまたはヘテロアルキル基である場合、各ヒドロキシル置換基はアルキルまたはヘテロアルキル基の異なる炭素原子上の置換基である。
【0074】
一つの態様において、R1およびR2アルキル基は非環式である。一つの態様において、R1およびR2アルキル基は直鎖である。
【0075】
一つの態様において、R1およびR2は置換されているか、または適宜さらに置換されている。置換基は下記からなる群より選択される1つまたは複数の基であってもよい:カルボキシ、エステル、アシルオキシ、アミド、アシルアミド、ならびにアリールおよびヘテロアリール。好ましくは、置換基は下記からなる群より選択される1つまたは複数の基である:カルボキシ、エステル、アシルオキシ、アリールおよびヘテロアリール。
【0076】
好ましくはR1またはR2は独立に下記の置換基:

の1つであり、ここで、*は窒素原子への結合点を示す。
【0077】
加えて、または代わりに、R1またはR2は下記の置換基:

の1つから独立に選択してもよく、ここで*は窒素原子への結合点を示す。
【0078】
一つの態様において、R1は前述の置換基群のいずれかに示す置換基から独立に選択される。この態様において、R2は好ましくは水素である。
【0079】
または、R1およびR2は窒素原子と一緒になって、すなわちXは、下記の群:

より選択される置換基であってもよく、ここで、*はC末端のカルボニル炭素への結合点を示す。
【0080】
加えて、または代わりに、R1またはR2は下記の置換基:

から独立に選択してもよく、ここで*は窒素原子への結合点を示す。
【0081】
好ましくは、R1は-CH2CH2OHである。
【0082】
(e)ピペリジニルおよび(f)置換ピペリジニル基は、好ましくは4位にそれらの窒素原子を有する。
【0083】
N-置換基は下記から選択してもよい:
(d)-(CH2)p-NR13R14、ここでpは1から8の整数を表し、R13およびR14は独立に水素または(C1-C4)アルキルを表す;および
(f)置換ピペリジニル、ここで置換ピペリジニルは(C1-4)アルキルであるN-置換基を有する。
【0084】
N置換基が-(CH2)p-NR13R14である場合、R13およびR14は好ましくは(C1-C4)アルキル、より好ましくは(C1-C2)アルキル、例えば、メチルであってもよい。整数pは好ましくは1から4、例えば3である。
【0085】
N置換基が置換ピペリジニルである場合、N-置換基は好ましくは(C1-C2)アルキル、例えば、メチルである。前述のとおり、Nは好ましくは4位にある。
【0086】
本発明において用いるのに特に好ましい化合物は、R1が少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルまたはヘテロアルキル基を表し、かつR2が水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル基を表すか、あるいはR1およびR2が窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むものである。
【0087】
好ましいZ
一つの態様において、Zは-NH2、アミノ酸または-NR5COR6である。好ましくは、Zは-NH2、またはアミノ酸である。一つの態様において、Zは-NR5COR6であり、R5は水素である。
【0088】
Zは-NH2であってもよい。
【0089】
Zがアミノ酸残基である場合、アミノ酸残基は、好ましくは遺伝コードによってコードされる天然アミノ酸残基またはそのD-イソ型、より好ましくはIle-、Lys-、Phe-、Val-、Glu-、Asp-、His-、Leu、Arg-、Ser-およびTrp-の群より選択されるアミノ酸残基である。一つの局面において、アミノ酸残基はIle-、Lys-、Phe-、Val-、Glu-、Asp-、His-、Leu-、Arg-およびSer-の群より選択してもよい。そのような変異体は、米国特許第6,022,851号に記載のとおり、Zが-NH2である化合物への残基の化学的付加によって生成してもよく、この特許の内容は参照により本明細書に組み入れられる。アミノ酸の化学的付加によってアミノ酸はL-またはD-配置になりうることが理解されるであろう。
【0090】
アミノ酸残基は、例えば、セリン、システインおよびトレオニン残基の翻訳後修飾中に生成される残基などの、修飾天然アミノ酸であってもよい。本発明の化合物内の残基は下記の群:

に示す脱水アミノ酸から選択してもよい。
【0091】
これらの構造の第二のものは、ジヒドロアミノ酪酸残基と呼んでもよい。加えて、アミノ酸残基は下記の群:

に示す環式残基から選択してもよい。
【0092】
理解されるであろうとおり、これらの環式構造の合成は典型的に、セリン、トレオニンまたはシステイン残基側鎖の、典型的であるが、本質的ではない、隣接アミノ酸残基のアミドカルボニルとの環化を含む。
【0093】
したがって、前述の構造は、隣接するアミノ酸などの隣接する基の一部を含む。または、隣接する基はセリン、トレオニンまたはシステイン残基と一緒になって残基のN末端のアミド結合を形成する基から誘導してもよい。これを、セリン残基のN末端のアミド結合を通じて隣接する基と連結されているセリン残基から誘導されるオキサゾリンアミノ酸残基についての下記の例:

において逆合成的に示す。
【0094】
アステリスク(*)は隣接する基のカルボニル炭素に由来するオキサゾリンの炭素原子の位置を示す。逆合成は例示のために示すにすぎず、前述の翻訳後修飾アミノ酸残基は別の前駆体から調製してもよい。
【0095】
アミノ酸残基は非天然または異常天然アミノ酸であってもよい。アミノ酸はセレノセリン、アミノ酪酸、アミノイソ酪酸、ブチルグリシン、シトルリン、シクロヘキシルアラニン、ジアミノプロピオン酸、ホモセリン、ヒドロキシプロリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、ペニシラミンピログルタミン酸、サルコシン、スタチン、テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、およびチエニルアラニンからなる群より選択してもよい。LまたはD型を選択してもよい。
【0096】
アミノ酸はα-、β-、またはγ-アミノ酸であってもよい。アミノ酸のアミノ基はモノまたはジアルキル化されていてもよい。Zがアミノ酸である場合、アミノ酸のアミノ基は修飾されていてもよい。したがって、N末端は-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7および-NR5C(NR8)NR6R7から選択される基であってもよく、ここでR3、R4、R5、R6、R7およびR8は上で定義したとおりである。
【0097】
Zがアミノ酸残基である場合、アミノ酸残基は保護アミノ酸残基であってもよい。アミノ基のそのような保護基はFmoc、Boc、Ac、BnおよびZ(またはCbz)からなる群より選択してもよい。側鎖も適宜保護してもよい。側鎖保護基は、側鎖に対して適宜、Pmc、Pbf、OtBu、Trt、Acm、Mmt、tBu、Boc、ivDde、2-ClTrt、tButhio、Npys、Mts、NO2、Tos、OBzl、OcHx、Acm、pMeBzl、pMeOBz、OcHx、Bom、Dnp、2-Cl-Z、Bzl、For、および2-Br-Zからなる群より選択してもよい。
【0098】
天然および非天然アミノ酸と、それらの保護体、ならびに保護基脱保護法は周知である。多くはMerck Novabiochem(商標)のカタログ'Reagents for Peptide and High-Throughput Synthesis' (2006/7)(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に概説されている。
【0099】
R3およびR4の1つは、置換されていてもよい、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される基であってもよい。
【0100】
R3およびR4は両方とも水素であってもよい。
【0101】
Zが-NH2である、すなわちR3およびR4が両方とも水素である場合、この基は保護型であってもよい。保護基はFmoc、Boc、Ac、BnおよびZ(またはCbz)からなる群より選択してもよい。保護型に関して以下に記載するものなどの、別の保護基を用いてもよい。
【0102】
好ましくは、R5は水素である。
【0103】
好ましくは、Zは-NH2、アミノ酸または-NR5COR6である。Zが-NR5COR6である場合、好ましくはR5は水素であり、R6はヒドロキシル基で置換されているアラルキル基であり、最も好ましくはアラルキル基は基のアルキル部分で置換されている。R6は-CH(OH)Ph(すなわち、Zはマンデリル基で修飾されている)であってもよい。
【0104】
好ましい構造
好ましくは、B型ランチビオティックは下記の群より選択されるアクタガルジン化合物である:
化合物II:アクタガルジン
化合物III:デオキシアクタガルジンB
化合物V:Phe(O)デオキシ-アクタガルジンB
化合物VI:アクタガルジンN-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物VII:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物VIII:デオキシ-アクタガルジンB N-[4-ブタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物IX:デオキシ-アクタガルジンB(3-アミノ-1,2-プロパンジオール)モノカルボキサミド
化合物X:デオキシ-アクタガルジンB(2-アミノ-1,3-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物XI:デオキシ-アクタガルジンB[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]モノカルボキサミド
化合物XII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-2-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物XIII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-3-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物XIV:(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XV:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVI:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVII:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVIII:(L)-イソロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XIX:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XX:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXI:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXII:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXIII:デオキシアクタガルジンB(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
【0105】
加えて、または代わりに、本発明の第一の局面の好ましい化合物は下記の化合物から選択してもよい:
化合物L:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]モノカルボキサミド
化合物LI:デオキシ-アクタガルジンB(L-セリンメチルエステル)モノカルボキサミド
化合物LII:デオキシアクタガルジンB(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
化合物LIII:デオキシ-アクタガルジンB(2-ヒドロキシピペラジン)モノカルボキサミド
【0106】
加えて、または代わりに、本発明の第一の局面の好ましい化合物は下記の化合物から選択してもよい:
化合物LX:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXI:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXII:(L)-イソロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXIII:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXIV:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXV:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物LXVI:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
【0107】
最も好ましい化合物は下記である:
化合物I:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物III:アクタガルジン N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
【0108】
変異体
本発明において用いる化合物には式(I)の化合物の変異体が含まれる。
【0109】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から5つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0110】
式(I)の化合物について、アミノ酸は好ましくは式(I)の化合物の2、3、4、5、8、10、11、13、15、16または18位から選択される位置にある。
【0111】
置換は1つのアミノ酸の別の天然アミノ酸によるものであってもよく、保存的または非保存的置換であってもよい。保存的置換には以下の表に示すものが含まれ、ここで2つ目のカラムの同じブロック、好ましくは3つ目のカラムの同じ行のアミノ酸は互いに置換されてもよい。

【0112】
または、アミノ酸は前述の修飾、非天然または異常アミノ酸の1つで置換されていてもよい。
【0113】
式(I)の化合物の変異体には、チオニン架橋に関与するトレオニン由来残基(Abu)、例えば、7位の残基がセリン由来残基(Ala)で置き換えられている化合物が含まれうる。同様に、チオニン架橋に関与するセリン由来残基(Ala)、例えば、1位の残基がトレオニン由来残基(Abu)で置き換えられている。したがって、本発明において用いる変異体には、ベータ-メチルランチオニン架橋がランチオニン架橋の代わりとなっている化合物が含まれ、逆もまた同じである。1、2または3つの架橋がこの様式で置換されていてもよい。
【0114】
本発明において用いる化合物の変異体には、チオニン架橋以外の架橋をさらに、または代わりに有する化合物が含まれてもよい。代わりの架橋には、適当な場合には、ジスルフィド架橋、ならびにアミドおよびエステル架橋(それぞれ、いわゆるマクロラクタムおよびマクロラクトン変異体)が含まれる。
【0115】
誘導体
本発明において用いる化合物の誘導体(変異体を含む)は、本発明の化合物の1つまたは複数のアミノ酸側鎖が、例えば、エステル化、アミド化または酸化により修飾されているものである。
【0116】
本発明の化合物の誘導体は、式(I)のアクタガルジン化合物のカルボキシ官能基の1つにおけるモノアミド誘導体であってもよい。誘導体には、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基、例えば、アクタガルジンの残基Glu11のものが-COOHからR9が水素、(C1-C4)アルキルまたは(C1-C4)アルコキシ(C2-C4)アルキルである基-COOR9に修飾されている化合物が含まれうる。または、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基、例えば、残基Glu11のものが-COOHからR1およびR2がC末端アミド置換基に関して上で定義された基-CONR1R2に修飾されている。
【0117】
本発明の化合物のN末端誘導体は、N末端アミノ基-NH2が代わりに、R10がC1-4アルキルを表す-NHR10である誘導体であってもよい。
【0118】
化合物(I)を下記の架橋と共に示す:架橋1-6、ランチオニン(Ser-Cys);架橋7-12、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys);および架橋9-17、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys)。これらの架橋の1、2または3つはチオニンスルホキシド架橋であってもよい。
【0119】
化合物(I)は架橋14-19、ベータ-メチルランチオニンスルホキシド(Thr-Cys)と共にも示される。化合物(I)の誘導体において、架橋の1、2、3または4つは存在しなくてもよい。
【0120】
好ましくは、少なくとも1つまたは複数のチオニンまたはチオニンスルホキシド架橋が存在する。
【0121】
アクタガルジン化合物の合成
発明者らは以前にアクタガルジン化合物、ならびにその誘導体および変異体の調製法を記載してきた。発明者らの同時係属中の以前の出願であるPCT/GB2007/000138(国際公開公報第2007/083112号)はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。この文書中に記載の化合物を本発明において用いる化合物の出発原料として用いてもよく、または本発明の方法において用いてもよい。
【0122】
本明細書に記載の化合物を、本発明において用いる他の化合物の合成用の出発原料として用いてもよい。
【0123】
本発明において用いるアクタガルジン化合物は、公知のアクタガルジン化合物から調製してもよい。好ましくは、本発明のアクタガルジン化合物はアクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンBから調製する。これらのランチビオティックは「親ランチビオティック」または「ランチビオティック出発原料」と呼んでもよい。
【0124】
アクタガルジン化合物は、核酸の発現により、例えば、LanA遺伝子などの適当なランチビオティック遺伝子を、必要があれば前駆体ポリペプチドのアクタガルジン化合物への変換に必要な関連クラスター遺伝子と共に担持する宿主細胞において、組換え発現ベクター中に担持される前駆体ポリペプチドをコードする発現構築物の形で産生してもよい。変異体アクタガルジン化合物は、当技術分野においてそれ自体は公知のLanA遺伝子の適当な改変により産生してもよい。
【0125】
LanO遺伝子はアクタガルジン遺伝子クラスターの一部として同定されており、アクタガルジン化合物のデオキシ型を酸化してYが-S(O)-であるアクタガルジンとする原因タンパク質をコードすると考えられる。この遺伝子の改変により、別の架橋構造を有する誘導体化合物の産生が可能となりうる。LanO遺伝子の改変により、宿主細胞中で産生される化合物の酸化(Y=-S(O))および還元(Y=-S-)型の相対レベルを変えることも可能となる。
【0126】
LanM遺伝子もアクタガルジン遺伝子クラスターの一部として同定されており、前駆体ポリペプチドのランチビオティック化合物への変換に必要なタンパク質をコードすると考えられる。この遺伝子および改変タンパク質をコードする他の遺伝子の調節により、別の架橋構造を有する誘導体化合物の産生が可能となりうる。これらの遺伝子の調節により、リーダー配列などのアクタガルジン化合物のN末端に結合しているアミノ酸配列を有する、または保持する化合物の産生も可能となりうる。
【0127】
典型的には、細胞培養によって産生される化合物は遊離アミンN末端(すなわち、Zが-NH2である)および遊離カルボン酸C末端(すなわち、Xが-OHである)を有することになる。これらの末端を、以下に詳細に記載するとおり、誘導体化してもよい。アクタガルジン化合物が修飾N末端を有する場合、出発原料は典型的には遊離アミンN末端を有することになる。細胞培養によって産生される化合物は修飾N末端を有しうることが理解されるであろう。したがって、出発原料として用いる化合物には、Zが-NHR3であり、ここでR3は式(I)の化合物に従って規定される化合物が含まれうる。
【0128】
本発明が、X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであるアクタガルジン化合物出発原料から誘導される化合物の使用に関する場合、宿主細胞はいかなるそれ以上の改変もないA.リグリアエ(A. liguriae)NCIMB 41362でありうる。
【0129】
宿主細胞が出発原料化合物の混合物、例えば、Yが-S-または-S(O)-であるものを産生する場合、生成物をHPLCなどの標準の分離技術を用い、例えば、アクタガルジンおよびAla(0)-アクタガルジン生成のために米国特許第6,022,851号に記載のとおりに単離してもよい。
【0130】
適当なランチビオティック遺伝子を有する宿主細胞の培養後、本発明において用いるB型ランチビオティック化合物を宿主細胞培養物から回収し、任意に修飾してもよい。回収および/または修飾した化合物を薬学的組成物の形で、任意に薬学的に許容される塩の形で製剤してもよい。
【0131】
アクタガルジンは、クロマトグラフィ手段による培地の他の成分からの分離などの、当技術分野において標準の技術により培地から回収してもよい。そのような手段には、疎水性樹脂の使用、逆相クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィおよびHPLCが含まれる。
【0132】
または、ランチビオティック出発原料、またはその変異体および誘導体を、化学的ペプチド合成、例えば、固相ペプチド合成(SPPS)によって得てもよい。そのような技術は当技術分野において周知である。しかし、ランチビオティック出発原料は好ましくは細胞培養によって得る。
【0133】
本発明において用いる化合物は実質的に単離された型であってもよい。単離化合物は、化合物の誘導元のポリペプチドなどの、化合物が関連する材料を含まない、または実質的に含まない、単離された型の、上で定義したものである。化合物は当然のことながら希釈剤または補助剤と共に製剤され、それでもなお実際上は単離されていてもよい。
【0134】
本発明において用いる化合物は実質的に精製された型であってもよく、その場合、一般には製剤中に化合物を含むことになり、ここで製剤中の化合物の90%よりも多く、例えば、95%、98%または99%は本発明の化合物である。
【0135】
本発明において用いるC末端修飾アクタガルジン化合物を、カルボキシルC末端を有するランチビオティック出発原料を2から6倍モル過剰の適当なアミン基と、ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒中、典型的には0℃から室温までの間の温度および適当な縮合剤存在下で反応させることにより調製してもよい。縮合剤の代表例は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド誘導体、DPPAなどのホスホアジデートまたはPyBop(商標)、HATUもしくはTBTUなどのベンゾトリアゾール系カップリング試薬である。
【0136】
Zがアミノ酸または-NR5COR6である本発明において用いる化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティック出発原料から、ジシクロヘキシルカルボジイミド、DPPAなどのホスホアジデートまたはPyBop(商標)、HATUもしくはTBTUなどのベンゾトリアゾール系カップリング試薬などの縮合剤存在下、適当なカルボン酸とのカップリング反応により調製してもよい。反応を促進するために、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの有機アミン塩基を一般に加える。
【0137】
または、ペンタフルオロフェニルエステルなどの、あらかじめ生成した適当な酸の活性化誘導体を、ランチビオティックN末端と反応させるための試薬として用いてもよい。HOBtなどの触媒を加えて、反応を促進してもよい。溶媒は典型的にはDMFである。
【0138】
ランチビオティックに結合するカルボン酸がカップリング反応に干渉しうるさらなる官能基を含む場合、当業者には公知の適当な保護基を用いてもよい。例えば、ランチビオティックのN末端に結合するアミノ酸誘導体のために、FmocまたはtBoc保護基を用いてもよい。
【0139】
Zが-NR3R4である本発明の化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティックから、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドまたは酢酸などの有機溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムまたはナトリウムトリアセトキシボロヒドリドなどの適当な還元剤存在下、アルデヒドまたはケトンとのカップリング反応により調製してもよい。そのような還元剤は溶液中またはポリスチレンなどの適当な樹脂に結合して用いてもよい。反応条件、用いるアルデヒドまたはケトンおよび反応中に用いる試薬の比率に応じて、N末端のモノ-およびジ-アルキル化の両方が可能である。または、反応を還元剤なしで行ってもよい。その場合、Zが-N=R9である本発明の化合物を得ることができる。
【0140】
Zが-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7または-NR5C(NR8)NR6R7である本発明において用いる化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティック出発原料から、適当に活性化された置換基試薬とのカップリング反応により調製してもよい。したがって、Zが-NR5C(O)OR6である化合物を、ClC(O)OR6などを用いて調製してもよい。同様に、Zが-NR5SO2R6である化合物をClSO2R6を用いて調製してもよい。活性化置換基試薬は保護基で保護された追加の官能基を含んでいてもよい。保護基は、適宜、カップリング反応後に除去してもよい。
【0141】
本発明において用いるアクタガルジン化合物をN末端およびC末端の両方で修飾してもよい。これらの化合物は、C末端またはN末端のいずれかで修飾されている出発原料から調製してもよい。次いで、他方の末端を修飾して本発明において用いる化合物を提供してもよい。したがって、置換の順序はN末端修飾と、続くC末端修飾を特徴とすることができ、逆も同じである。位置選択性の問題が生じる場合、例えば、C末端置換基がアミノ基を特徴とする場合、適当な保護戦略を用いてもよい。
【0142】
したがって、化合物のN末端がアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6、-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9である(本発明の化合物に関して前に定義したとおり)ランチビオティック出発原料を、C末端でアミノアルコールと等しく結合させてもよい。
【0143】
発明者らは、アミノアルコールを親ランチビオティックのカルボキシルC末端に結合させるために用いるカップリング条件下で、グルタミン酸などの側鎖アミノ酸残基のカルボキシル基も修飾されうることを観察した。アミノ酸のC末端および側鎖がいずれも修飾される、そのような化合物も本発明において用いられる。側鎖が修飾されて得られる生成物の量を変えるために、反応条件の適当な操作を用いてもよい。または、保護および脱保護戦略を用いて、側鎖が修飾されないようにしてもよい。適当なアミノ酸残基側鎖保護基は周知で、前述の保護基が含まれる。
【0144】
トレオニン残基がデヒドロブチリンアミノ酸残基で置換されたアクタガルジンの変異体を、トレオニン残基の化学的脱水によって調製してもよい。例えば、トレオニン残基をCuCl存在下、EDCで処理してもよい。同様の反応がナイシンのトレオニン残基の脱水について以前に記載されている(Fukase, K et al Bull. Chem. Soc. Jpn. 1992, 65, 2227-2240参照)。セリン残基からデヒドロアラニン残基を調製するために、この方法を適合させてもよい。
【0145】
代わりの架橋を有する誘導体を、適当なアミノ酸残基の環化により調製してもよく、例えば、システイン残基の側鎖をジスルフィド架橋形成のために用いてもよい。マクロラクタム化、マクロラクトン化およびジスルフィド架橋形成技術はペプチド合成の当業者には周知である。
【0146】
反応生成物をLC-MSによって同定してもよい。反応の進行をHPLCにより追跡してもよい。HPLCを用いて出発原料の消費、生成物の出現および副生成物または分解産物(あれば)の生成を追跡してもよい。
【0147】
生成物および出発原料をNMR分光法で分析してもよい。そのような技術は発明者らがアクタガルジン化合物、変異体および誘導体の調製に関して以前に記載している。生成物ランチビオティック型化合物の構造を、COSY、HMBC、TOCSY、HSQCおよびNOESY、ならびにNOE技術などの標準の技術を用いて確認してもよい。
【0148】
メルサシジン
本発明において用いるために、式(II)のメルサシジン化合物が提供される:

式中、Zは以下の定義のとおりである。
【0149】
または、式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩の構造は下記のとおりに都合よく表しうる:

式中、Zは式(I)の化合物の基Zに従って定義される。Dhaはデヒドロアラニン残基である。これらの化合物の変異体および生物活性誘導体も、本発明の方法において用いてもよい。
【0150】
Zが-NH2である場合、化合物はメルサシジンである。
【0151】
好ましい化合物
本発明において用いるための好ましい式(II)のメルサシジン化合物を以下に記載する。
【0152】
好ましいR
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は置換されていてもよいか、または適宜さらに置換されていてもよい。
【0153】
好ましいZ
好ましいZは、式(I)のアクタガルジン化合物について記載したものと同じである。
【0154】
一つの態様において、Zはアミノ酸または-NH2である。
【0155】
最も好ましくは、Zは-NH2である。
【0156】
好ましい構造
好ましくは、B型ランチビオティックは下記の群より選択されるメルサシジン化合物である:
化合物I:メルサシジン
【0157】
変異体
本発明において用いる化合物には式(II)の化合物の変異体が含まれる。
【0158】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0159】
式(II)の化合物について、アミノ酸は好ましくは式(II)の化合物の3、5、6、7、8、9、10、11、14、16、17または19位から選択される位置にある。
【0160】
置換は1つのアミノ酸の別の天然アミノ酸によるものであってもよく、式(I)の化合物の変異体に関して記載したとおり、保存的または非保存的置換であってもよい。または、アミノ酸は前述の修飾、非天然または異常アミノ酸の1つで置換されていてもよい。
【0161】
本発明の方法において用いる好ましいメルサシジン変異体には、以下の表2に示すメルサシジンの3、5、6、7、8、9、10、11、14または16位への修飾を含む化合物が含まれる。
【0162】
(表2) メルサシジン変異体

【0163】
上表において、数字は成熟メルサシジンペプチド配列の番号付けを表し、文字は1文字アミノ酸コードであり、かつDhaはデヒドロアラニンであり、Dhbはデヒドロブチリンである。これらの修飾アミノ酸残基がある場合、これはそれぞれセリンおよびトレオニン残基の翻訳後修飾によるものである。
【0164】
メルサシジン変異体は、2つ以上の前述の修飾、例えば、2または3つなどの1から4つの修飾の組み合わせを含んでいてもよい(残りの残基は野生型メルサシジン配列のものである)。したがって、前述の修飾の任意の1つを含む変異体は、2、3もしくは4つの変化の組み合わせからなるか、または単一の位置変化からなる変異体であってもよい。
【0165】
発明者らは以前に、F3Wなる変化は、メルサシジン自体よりも強力な、一連の微生物に対する活性を有するメルサシジン変異体(「メルサシジンF3W」)を提供すると報告した。したがって、メルサシジン変異体はF3Wを、1、2または3つの他の変化と共に含んでいてもよい。そのようなメルサシジンには、メルサシジンF3W G8A、メルサシジンF3W G9A、メルサシジンF3W G9H、メルサシジンF3W V11I、メルサシジンF3W V11L、メルサシジンF3W L14I、メルサシジンF3W L14M、メルサシジンF3W L14V、メルサシジンF3W Dha16GおよびメルサシジンF3W Dha16Dhbが含まれる。
【0166】
式(II)の化合物の変異体には、N末端領域の7員チオニン環を欠く化合物が含まれる。そのような変異体には、1位にシステイン残基以外の残基を有する化合物、または2位にトレオニン以外の残基を有する化合物が含まれる。他の変異体は、2位のトレオニン残基がセリン残基で置換されている、N末端領域のチオニン環を有していてもよい。したがって、ベータ-メチルランチオニン架橋はランチオニン架橋の代わりとなる。
【0167】
式(II)の化合物の変異体には、チオニン架橋に関与するトレオニン由来残基(Abu)、例えば、4位または13位の残基がセリン由来残基(Ala)で置き換えられている化合物が含まれうる。したがって、本発明において用いる変異体には、ベータ-メチルランチオニン架橋がランチオニン架橋の代わりとなっている化合物が含まれる。1、2または3つの架橋がこの様式で置換されていてもよい。
【0168】
もう一つの変異体は、20位のアミノビニル-システインアミノ酸残基(Avi-Cys)のシステイン残基による置換を含む。この残基がシステイン残基である場合、C末端はカルボン酸(-COOH)末端であってもよい。または、C末端は、R1およびR2が式(I)のアクタガルジン化合物に関して定義されている、基-CONR1R2であってもよい。
【0169】
本発明において用いるメルサシジン化合物の変異体には、架橋がチオニン架橋以外である化合物が含まれてもよい。代わりの架橋には、適当な場合には、ジスルフィド架橋、ならびにアミドおよびエステル架橋(それぞれ、いわゆるマクロラクタムおよびマクロラクトン変異体)が含まれる。
【0170】
好ましい変異体
好ましくは、B型ランチビオティックは下記の群より選択されるメルサシジン変異体化合物である:
化合物IV:F3Wメルサシジン
【0171】
誘導体
本発明において用いる化合物には式(II)の化合物の誘導体が含まれる。
【0172】
本発明において用いる化合物の誘導体(変異体を含む)は、本発明の化合物の1つまたは複数のアミノ酸側鎖が、例えば、エステル化、アミド化または酸化により修飾されているものである。
【0173】
誘導体には、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基が前述の式(I)の化合物に関する説明のとおりに修飾されている化合物が含まれてもよい。例えば、メルサシジンの残基Glu17が-COOHからR9が水素、(C1-C4)アルキルまたは(C1-C4)アルコキシ(C2-C4)アルキルである基-COOR9に修飾されていてもよい。または、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基、例えば、残基Glu17のものが-COOHからXと同じである基CONR1R2に修飾されている。
【0174】
化合物(II)を下記の架橋と共に示す:架橋1-2、ベータ-メチルランチオニン(Cys-Thr);架橋4-12、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys);架橋13-18、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys)。これらの架橋の1、2または3つはチオニンスルホキシド架橋であってもよい。
【0175】
化合物(II)は架橋15-19、(Thr-S-CHOH-NH-Ile)と共にも示される。化合物(II)の誘導体において、架橋の1、2、3または4つは存在しなくてもよい。
【0176】
好ましくは、少なくとも1つまたは複数のチオニンまたはチオニンスルホキシド架橋が存在する。
【0177】
メルサシジン化合物の合成
メルサシジン化合物の合成は発明者らによってその同時係属中の出願である国際公開公報第2007/036706号に記載されている。この文書中に記載の化合物を本発明において用いる化合物の出発原料として用いてもよく、または本発明の方法において用いてもよい。
【0178】
メルサシジンF3W、メルサシジンG8AおよびメルサシジンF3W G8Aも、2005年3月21日に提出され、2004年3月26日に提出の第0406870.6号からの優先権を主張している、国際公開公報第2005/093069号(PCT/GB2005/001055)に記載されており、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0179】
したがって、メルサシジンおよびその変異体は、mrs遺伝子クラスターがゲノム中に挿入されている宿主細胞、例えば、細菌宿主細胞を培養することによって生成してもよく、ここで該細胞はメルサシジンまたはメルサシジン変異体を産生する。好ましくは、mrs遺伝子クラスターはSigH欠損である。修飾mrs遺伝子クラスターを有する形質転換宿主細胞の構築は発明者らが以前に記載している。
【0180】
変異体メルサシジン化合物を、mrs遺伝子クラスターの修飾により生成してもよい。特に、メルサシジンをコードするmrsA遺伝子を、それ自体は当技術分野において公知の方法を用いての指定部位突然変異誘発により、例えば、Szekat et al, (2003) Appl. Env. Microbiol. 69, 3777-3783によって開示されたとおりに修飾してもよい。
【0181】
メルサシジン遺伝子クラスターの一部として同定されているmrsM遺伝子は、mrsA遺伝子の翻訳生成物を翻訳後修飾して、成熟シンナマイシンのランチオニン残基を誘導する原因となるタンパク質をコードすると考えられる。この遺伝子の修飾は代替架橋構造を有する誘導体化合物の生成を可能にしうる。
【0182】
典型的には、細胞培養によって産生される化合物は遊離アミンN末端(すなわち、Zが-NH2である)を有することになる。メルサシジンまたはその変異体のN末端を誘導体化する技術および戦略は、アクタガルジンのN末端の誘導体化に関して前述したものと同じである。したがって、修飾N末端および/または修飾C末端を有する化合物をメルサシジン化合物から調製してもよい。
【0183】
メルサシジン化合物の合成において適当な保護基戦略を用いてもよい。そのような技術も、アクタガルジンに関して前述した。メルサシジンに関して、例えば、17位のグルタミン酸アミノ酸残基の側鎖を保護し、その間にN末端を修飾してもよい。次いで、必要があれば保護基を除去してもよい。
【0184】
化合物を、アクタガルジンに関して前述した方法を用いて、単離、精製および同定してもよい。
【0185】
他のB型ランチビオティック
他のB型ランチビオティックの誘導体および変異体、ならびにこれらのB型ランチビオティックの修飾型も本発明において用いるのに適している。同じく、これらの化合物の薬学的に許容される塩も本発明において用いるのに適している。特に好ましい例には、プランタリシン、プラノスポリシン、ルミノコクシン、抗生物質10789、ミチガニンおよびハロデュラシンである。
【0186】
本発明において用いるのに適したB型ランチビオティックのもう一つの例はリケニシジンである。本発明の一つの態様において、リケニシジンは前述の好ましい例と一緒に用いてもよい。
【0187】
以下に引用する文書はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0188】
プランタリシン
プランタリシン化合物の合成および同定はTurner et al [Eur. J. Biochem. 1999, 264, 833]に記載されている。プランタリシンCは下記のとおりに都合よく表しうる:

式中、Ala残基は白丸で示し、Abu残基は「m」なる文字で示し、チオニン架橋の硫黄原子は黒丸で示している。Dhaはデヒドロアラニン残基である。
【0189】
プランタリシンC化合物のNおよびC末端を、前述のアクタガルジン化合物のNおよびC末端(N末端はZで表し、C末端はXで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。同様に、プランタリシンCの誘導体および変異体も本発明において用いるのに適している。
【0190】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0191】
プランタリシンCについて、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の1、2、3、4、5、6、8、9、10、11、14、17、19、20、21、22、24または25位から選択される位置にある。
【0192】
プラノスポリシン
プラノスポリシン化合物の合成および同定はCastiglione et al (Biochemistry 2007, 46, 5884-5895)に記載されている。プラノスポリシンは下記のとおりに都合よく表しうる:

式中、Dhaはデヒドロアラニン残基であり、Dhbはデヒドロブチリン残基である。
【0193】
プラノスポリシン化合物のNおよびC末端を、前述のアクタガルジン化合物のNおよびC末端(N末端はZで表し、C末端はXで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。同様に、プラノスポリシンの誘導体および変異体も本発明において用いるのに適している。
【0194】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0195】
プラノスポリシンについて、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の1、2、4、5、6、10、12、13、14、15、17、20、23または24位から選択される位置にある。
【0196】
ルミノコクシン
ルミノコクシン化合物の合成および同定はDabard et al [Appl. Environ. Microbiol. 2001, 67, 4111参照]に記載されている。ルミノコクシンは下記のとおりに都合よく表しうる:

式中、TはDhb残基を示し、線はチオニン(1)およびメチルチオニン(2)架橋を表す。
【0197】
ルミノコクシンAまたはB化合物のNおよびC末端を、前述のアクタガルジン化合物のNおよびC末端(N末端はZで表し、C末端はXで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。同様に、ルミノコクシンAまたはBの誘導体および変異体も本発明において用いるのに適している。
【0198】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0199】
ルミノコクシンAについて、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の1、2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21位から選択される位置にある。
【0200】
ハロデュラシン
ハロデュラシン化合物の合成および同定はMcClerren et al [Proc. Nat. Acad. Sci. 2006, 103, 17243]に記載されている。ハロデュラシンαは下記のとおりに都合よく表しうる:


【0201】
ハロデュラシン化合物のNおよびC末端を、前述のアクタガルジン化合物のNおよびC末端(N末端はZで表し、C末端はXで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。同様に、ハロデュラシンの誘導体および変異体も本発明において用いるのに適している。ハロデュラシンαは1-8ジスルフィド架橋を有する。これはチオニン架橋で置き換わってもよい。
【0202】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0203】
ハロデュラシンについて、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の2、3、4、5、6、9、10、11、12、13、14、15、16、19、21、22、24、25、26または28位から選択される位置にある。
【0204】
抗生物質107891
抗生物質107891化合物の合成および同定は国際公開公報第2006/080920号に記載されている。国際公開公報第2006/080920号に記載の化合物も本明細書において用いられる。したがって、本発明において用いるかは下記のとおりに表す抗生物質107891化合物である:

式中、XはH、F、Cl、BrおよびIからなる群より選択され;Y1-5はそれぞれS、S-O-、S=O、O--S=OおよびO=S=Oからなる群より独立に選択され;かつR1-8はそれぞれH、OH、アルキルおよびアリールからなる群より独立に選択される。
【0205】
抗生物質107891のN末端を、前述のアクタガルジン化合物のN末端(N末端はZで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。同様に、抗生物質107891の誘導体および変異体も本発明において用いるのに適している。
【0206】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0207】
抗生物質107891 A1について、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の1、2、4、5、6、9、10、11、13、14、15、17、19または22位から選択される位置にある。
【0208】
本発明において用いる変異体は、C末端のアミノビニル-システインアミノ酸残基(Avi-Cys)のシステイン残基による置換を含む。この残基がシステイン残基である場合、C末端はカルボン酸(-COOH)末端であってもよい。または、C末端は、R1およびR2が式(I)のアクタガルジン化合物に関して定義されている、基-CONR1R2であってもよい。
【0209】
ミチガニン
ミチガニン化合物の合成および同定はHoltsmark et al [APPL. ENVIRON. MICROBIOL. 2006, 72, 5814]に記載されている。ミチガニンAは下記のとおりに都合よく表しうる:


【0210】
ミチガニン化合物のNおよびC末端を、前述のアクタガルジン化合物のNおよびC末端(N末端はZで表し、C末端はXで表している)と同様の様式で官能基化してもよい。
【0211】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0212】
ミチガニンについて、アミノ酸は好ましくは上に示す式の化合物の1、3、4、5、6、8、9、11、12、13、14、16、17、19または21位から選択される位置にある。
【0213】
リケニシジン
リケニシジン化合物の合成および単離はRey et al [Genome Biology 2004, 5, R77]に記載されている。リケニシジンはメルサシジンの相同体である。
【0214】
リケニシジン化合物のNおよびC末端を、前述のメルサシジン化合物のNおよびC末端と同様の様式で官能基化してもよい(適当な場合)。
【0215】
本明細書に記載の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から10のアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。
【0216】
一般的好み
前述のB型ランチビオティックそれぞれについて、ランチオニン架橋を酸化してもよい。適当な場合には、Abu残基を有する架橋をAla残基で置換してもよく、逆も同じである。
【0217】
前述の置換は1つのアミノ酸の別の天然アミノ酸によるものであってもよく、式(I)の化合物の変異体に関して記載したとおり、保存的または非保存的置換であってもよい。または、アミノ酸は前述の修飾、非天然または異常アミノ酸残基の1つで置換されていてもよい。
【0218】
一般合成
前述の各B型ランチビオティックを、上で引用したそれぞれの出版物に記載の調製に従って調製してもよい。そのような化合物は、典型的には、遊離アミンN末端および遊離カルボキシC末端を有する。
【0219】
官能基化されたNおよび/またはC末端を有するB型ランチビオティック化合物に言及する場合、そのような化合物は、適宜、親B型ランチビオティックの遊離アミンおよび/または遊離カルボキシ末端を誘導体化することによって調製してもよい。アクタガルジンNおよびC末端の官能基化に関して前述した方法は、本明細書に記載のB型ランチビオティックに対しても適用可能である。
【0220】
適当な場合には、B型ランチビオティック内のアミノ酸残基の側鎖官能基を、Nおよび/またはC末端の官能基化の前に保護してもよい。これらの保護基は官能基化が完了した後に除去してもよい。保護基戦略は上のアクタガルジンに関して論じており、以下にもより詳細に論じる。
【0221】
他の型の包含
前述の化合物に含まれるのは、周知の異性体、塩、溶媒和物、保護型およびプロドラッグである。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及は、アニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、その塩または溶媒和物、ならびに通常の保護型も含む。同様に、アミノ基への言及は、プロトン化型(-N+HR1R2)、アミノ基の塩または溶媒和物、例えば、塩酸塩、ならびにアミノ基の通常の保護型を含む。同様に、ヒドロキシル基への言及も、アニオン型(-O-)、その塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の通常の保護型を含む。
【0222】
例えば、グルタミン酸(Glu)のカルボン酸含有側鎖は、本発明において用いる化合物中の残基としての特徴となり、これへの言及はカルボキシレート型を含む。Zが-NH2である場合、この基への言及はこのアミノ基のプロトン化型を含む。同じく、-OHとしてのXへの言及は、アクタガルジンの19位のアラニンアミノ酸残基のカルボキシレート型への言及を含む。
【0223】
異性体、塩、溶媒和物、保護型、およびプロドラッグ
異性体
特定の化合物は、シスおよびトランス型;EおよびZ型;c、t、およびr型;エンドおよびエキソ型;R、S、およびメソ型;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(-)型;ケト、エノール、およびエノレート型;シンおよびアンチ型;向斜および背斜型;αおよびβ型;アキシアルおよびエカトリアル型;舟型、椅子型、ねじれ型、エンベロープ型、および半椅子型;ならびにその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の特定の幾何、光学、鏡像異性、ジアステレオマー、エピマー、立体異性、互変異性、配座、またはアノマー型で存在してもよく、以下、総称して「異性体(isomers)」(または「異性体(isomeric forms)」)と呼ぶ。
【0224】
例えば、本明細書に記載のアミノ酸残基は特定の立体異性型の任意の1つで存在してもよい。同様に、R1およびR2基は特定の立体異性型の任意の1つが存在する場合、そのような型で存在してもよい。同様に、基R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は特定の立体異性型の任意の1つが存在する場合、そのような型で存在してもよい。
【0225】
本発明で使用する化合物がジヒドロアミノ酪酸残基を含む場合、残基はシスまたはトランス型のいずれかで存在してもよい。
【0226】
化合物が結晶型である場合、これはいくつかの異なる多形型で存在してもよい。
【0227】
互変異性体について以下に論じるものを除き、本明細書において用いられる「異性体」なる用語から特に除外されるものは、構造(structural(またはconstitutional))異性体(すなわち、単に空間における原子の位置によるのではなく、原子間の連結において異なる異性体)であることに留意されたい。例えば、メトキシ基、-OCH3への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基、-CH2OHへの言及と解釈されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及と解釈されるべきではない。しかし、構造のクラスへの言及は、そのクラスに属する構造異性体を適切に含むこともある(例えば、C1-7アルキルはn-プロピルおよびイソ-プロピルを含み;ブチルはn-、イソ-、sec-、およびtert-ブチルを含み;メトキシフェニルはオルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0228】
前述の除外は互変異性体、例えば、下記の互変異性対におけるような、例えば、ケト型、エノール型、およびエノラート型に関するものではない:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/aci-ニトロ。
【0229】
「異性体」なる用語に特に含まれるものは、1つまたは複数の同位体置換を有する化合物であることに留意されたい。例えば、Hは1H、2H(D)、および3H(T)を含む任意の同位体であってもよく;Cは12C、13C、および14Cを含む任意の同位体であってもよく;Oは16Oおよび18Oを含む任意の同位体であってもよく;他も同様である。
【0230】
特に記載がない限り、特定の化合物への言及は、そのラセミおよび他の混合物を含む(全体または部分的)、すべてのそのような異性体を含む。そのような異性体の調製(例えば、不斉合成)および分離(例えば、分別晶出およびクロマトグラフィ手段)の方法は、当技術分野において公知であるか、または本明細書において教示する方法、もしくは公知の方法を、公知の様式で適合させることにより容易に得られる。
【0231】

特に記載がない限り、特定の化合物への言及は、例えば、以下に論じるとおり、そのイオン、塩、溶媒和物、および保護型、ならびにその異なる多形型も含む。
【0232】
活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容される塩を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。薬学的に許容される塩の例は、Berge, et al., ''Pharmaceutically Acceptable Salts'', J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に記載されている。
【0233】
例えば、化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性でありうる官能基(例えば、-COOHは-COO-でありうる)を有する場合、塩を適当なカチオンと生成しうる。適当な無機カチオンの例には、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類イオン、ならびにAl3+などの他のカチオンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。適当な有機カチオンの例には、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの適当な置換アンモニウムイオンの例は下記から誘導されるものである:エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸。一般的な4級アンモニウムイオンの例はN(CH3)4+である。
【0234】
化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性でありうる官能基(例えば、-NH2は-NH3+でありうる)を有する場合、塩を適当なアニオンと生成しうる。適当な無機アニオンの例には、下記の無機酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸。適当な有機アニオンの例には、下記の有機酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸。適当な高分子アニオンの例には、下記の高分子酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース。
【0235】
溶媒和物
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。「溶媒和物」なる用語は、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)および溶媒の複合体を指すために、通常の意味で本明細書において用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などと都合よく呼んでもよい。
【0236】
保護された型
化学的に保護された型の活性化合物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。本明細書において用いられる「化学的に保護された型」なる用語は、1つまたは複数の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている、すなわち、保護された、または保護基(マスクされた、もしくはマスク基、またはブロックされた、もしくはブロック基としても公知である)の型である化合物に関する。反応性官能基を保護することにより、保護された基に影響をおよぼすことなく、他の非保護反応性官能基に関与する反応を行うことができ;保護基は、通常はその後の段階で、分子の残りの部分に実質的に影響をおよぼすことなく除去しうる。例えば、''Protective Groups in Organic Synthesis'' (T. Green and P. Wuts; 3rd Edition; John Wiley and Sons, 1999)参照。
【0237】
例えば、アミン基を上のZが-NH2である場合に前述したとおりに保護してもよい。加えて、アミン基をアミドまたはウレタンとして、例えば、下記として保護してもよい:メチルアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz);t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec);または、適当な場合には、N-オキシド(>NO・)。
【0238】
例えば、カルボン酸基を上のアミノ酸残基に関連して前述したとおりに保護してもよい。例えば、カルボン酸基をエステルとして、例えば、下記として保護してもよく:C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;もしくはC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル);またはアミドとして、例えば、メチルアミドとして保護してもよい。
【0239】
例えば、ヒドロキシル基をエーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、例えば、下記として保護してもよい:t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)。
【0240】
例えば、アルデヒドまたはケトン基をそれぞれアセタールまたはケタールとして保護してもよく、ここでカルボニル基(>C=O)は、例えば、1級アルコールとの反応によってジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒドまたはケトン基は酸存在下、大過剰の水を用いて、加水分解により容易に再生される。
【0241】
プロドラッグ
プロドラッグの型の活性化合物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。本明細書において用いられる「プロドラッグ」なる用語は、代謝(例えば、インビボで)されると所望の活性化合物を生じる化合物に関する。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、または活性化合物よりも活性が低いが、好都合な取り扱い、投与、または代謝特性を提供しうる。
【0242】
例えば、いくつかのプロドラッグは活性化合物のエステル(例えば、生理的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝中に、エステル基(-C(=O)OR)は切断されて活性薬物を生じる。そのようなエステルは、例えば、親化合物の任意のカルボン酸基(-COOH)のエステル化によって生成してもよく、適当な場合には、親化合物中に存在する任意の他の反応性基を事前に保護し、続いて必要があれば脱保護する。そのような代謝的に不安定なエステルの例には、RがC1-20アルキル(例えば、-Me、-Et);C1-7アミノアルキル(例えば、アミノエチル;2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル;2-(4-モルホリノ)エチル);およびアシルオキシ-C1-7アルキル(例えば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;例えば、ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1-アセトキシエチル;1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル;1-(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル;1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0243】
さらに適当なプロドラッグ型には、ホスホネートおよびグリコレート塩が含まれる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、亜リン酸クロロジベンジルと反応させ、続いて水素化して、ホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を生成することにより、ホスホネートプロドラッグとすることができる。そのような基は代謝中にホスファターゼ酵素によって切断されて、ヒドロキシ基を有する活性薬物を生じることができる。
【0244】
同様に、いくつかのプロドラッグは酵素的に活性化されて、活性化合物、またはさらなる化学反応後に活性化合物を生じる化合物を生じる。例えば、プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシド結合体であってもよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0245】
薬学的に許容される塩
「薬学的に許容される塩」は、塩基が化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生理的に許容される、酸付加塩であってもよい。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸と形成されるものが含まれる。
【0246】
塩にはアルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などの塩基性塩も含まれる。
【0247】
加えて、または代わりに、塩はN-メチル-D-グルカミン、L-アルギニン、L-タイシン(L-tysine)、コリン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのいずれか1つと形成してもよい。
【0248】
定義
アルキル:本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、1から20個の炭素原子を有し(特に記載がない限り)、飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよい、炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。
【0249】
ヘテロアルキル:本明細書において用いられる「ヘテロアルキル」なる用語は、N、S、またはOヘテロ原子で置き換えられた1つまたは複数の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0250】
アルキル基の文脈において、接頭辞(例えば、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書において用いられる「C1-4アルキル」なる用語は、1から4個の炭素原子を有するアルキル基に関する。アルキル基群の例には、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、およびC1-20アルキルが含まれる。最初の接頭辞は他の制限に応じて変動しうることに留意されたく;例えば、不飽和アルキル基について、最初の接頭辞は少なくとも2でなければならず;環式アルキル基について、最初の接頭辞は少なくとも3でなければならず;他も同様である。
【0251】
(無置換)飽和アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0252】
(無置換)飽和直鎖アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0253】
(無置換)飽和分枝アルキル基の例には、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)、およびネオ-ペンチル(C5)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0254】
シクロアルキル:本明細書において用いられる「シクロアルキル」なる用語は、シクリル基でもあるアルキル基;すなわち、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、この炭素環は飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよく、この部分は3から20個の環原子を含む、3から20個の炭素原子を有する(特に記載がない限り)。好ましくは、各環は3から7個の環原子を有する。シクロアルキル基群の例には、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが含まれる。
【0255】
ヘテロシクリル:本明細書において用いられる「ヘテロシクリル」なる用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、この部分は3から20個の環原子を有し(特に記載がない限り)、そのうち1から10個は環ヘテロ原子である。好ましくは、各環は3から7個の環原子を有し、そのうち1から4個は環ヘテロ原子である。
【0256】
本文脈において、接頭辞(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子またはヘテロ原子のいずれであろうと、環原子の数、または環原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書において用いられる「C5-6ヘテロシクリル」なる用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。ヘテロシクリル基群の例には、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが含まれる。
【0257】
単環式ヘテロシクリル基の例には、下記から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0258】
置換(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例には、環式型の糖類、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノースなどのフラノース(C5)、ならびにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースなどのピラノース(C6)から誘導されるものが含まれる。
【0259】
R1およびR2はアミド結合の窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有するヘテロシクリル基を表しうる。ヘテロシクリル基は前述のN1の例から選択される基でありうる。ヘテロシクリル基は1つまたは複数のさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロシクリル基は前述のN2、N1O1、N1S1、N2O1およびN1O1S1の例から選択される基でありうる。
【0260】
アリール:本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分を指し、該化合物は1つの環、または2つ以上の環(例えば、縮合環)を有する。
【0261】
ヘテロアリール:本明細書において用いられる「ヘテロアリール」なる用語は、N、S、Oヘテロ原子であるが、それらに限定されるわけではない原子で置き換えられた1つまたは複数の炭素原子を有するアリール基を指す。この場合、基は「C5-20ヘテロアリール」基と都合よく呼んでもよく、ここで「C5-20」は、炭素原子またはヘテロ原子のいずれであろうと、環原子を示す。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有し、そのうちの0から4個は環ヘテロ原子である。
【0262】
アラルキル:本明細書において用いられるアラルキルなる用語は、1つまたは複数、好ましくは1つの、上で定義したアリール基で置換されている、上で定義したアルキル基を指す。
【0263】
ヘテロアラルキル:本明細書において用いられる「ヘテロアラルキル」なる用語は、1つまたは複数、好ましくは1つの、上で定義したアリール基で置換されている、上で定義したアルキル基であって、アルキルおよび/またはアリール基の1つまたは複数の炭素原子が、N、S、Oヘテロ原子であるが、それらに限定されるわけではない原子で置き換えられている基を指す。
【0264】
C5-20アリール:本明細書において用いられる「C5-20アリール」なる用語は、C5-20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られ、5から20個の環原子を有する一価の部分に関し、該環の少なくとも1つは芳香環である。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有する。
【0265】
環ヘテロ原子を持たないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例には、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0266】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基には、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14ヘテロアリールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0267】
前述の基は、単独またはもう一つの置換基の一部のいずれであろうと、それら自体がそれら自体および下記の追加の置換基から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0268】
ハロ:-F、-Cl、-Br、および-I。
【0269】
ヒドロキシル:-OH。
【0270】
エーテル:-OR、ここでRはエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0271】
ニトロ:-NO2
【0272】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0273】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここでRはアシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例には、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0274】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0275】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここでRはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例には、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0276】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびにR1およびR2がそれらが結合している窒素原子と一緒になって、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルにおけるような複素環式構造を形成するアミド基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0277】
アミノ:-NR1R2、ここでR1およびR2は独立にアミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、もしくはC5-20アリール基、好ましくはHもしくはC1-7アルキル基であるか、または、「環式」アミノ基の場合、R1およびR2はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、4から8個の環原子を有する複素環を形成する。アミノ基の例には、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。環式アミノ基の例には、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特に、環式アミノ基はそれらの環上で、ここで定義する任意の置換基、例えば、カルボキシ、カルボキシレートおよびアミドにより置換されていてもよい。
【0278】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここでR1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基、最も好ましくはHであり、R2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例には、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが含まれるが、それらに限定されるわけではない。R1およびR2は一緒になって、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジル:

におけるような環式構造を形成してもよい。
【0279】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、ここでR2およびR3は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例には、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHCONHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0280】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここでRはアシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例には、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0281】
チオール:-SH。
【0282】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここでRはチオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例には、-SCH3および-SCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0283】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R、ここでRはスルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基。またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホキシド基の例には、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0284】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R、ここでRはスルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホン基の例には、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0285】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0286】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここでR1はアミノ基について定義したアミノ置換基であり、かつRはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例には、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0287】
前述のとおり、上に挙げた置換基を形成する基、例えば、アルキル、ヘテロシクリルおよびアリールは、それら自体置換されていてもよい。したがって、前述の定義は置換されている置換基を対象とする。
【0288】
B型ランチビオティック化合物の使用
本発明は、対象の微生物感染症を処置または予防するための、B型ランチビオティックの使用を提供する。対象の処置または予防の方法において用いる薬剤を製造するための、B型ランチビオティックの使用も提供される。
【0289】
本発明は、対象の下部腸または結腸の微生物感染症を処置または予防するためのB型ランチビオティックを提供する。
【0290】
本発明は、対象の下部腸または結腸の細菌感染症を処置または予防するための薬剤の調製におけるB型ランチビオティックの使用も提供する。
【0291】
B型ランチビオティックを経口投与することが好ましい。
【0292】
本発明の方法において用いる最も好ましいB型ランチビオティックは式(I)のアクタガルジン化合物および式(II)のメルサシジン化合物である。
【0293】
感染症および疾患
本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防における、B型ランチビオティック、およびその薬学的組成物の使用に関する。B型ランチビオティック化合物および組成物はヒトまたは動物の対象に投与してもよい。動物の対象は哺乳動物、または他の脊椎動物であってもよい。
【0294】
「微生物感染症」なる用語は、宿主動物の病原性微生物による侵入を指す。これは、動物の体の中または上に通常存在する微生物の過剰な増殖を含む。より一般的には、微生物感染症は、微生物集団の存在が宿主動物に損害を与える、任意の状況でありうる。したがって、動物は、動物の体の中もしくは上に過剰な数の微生物集団が存在する時、または微生物集団の存在が動物の細胞もしくは他の組織に損害を与える時に、微生物感染症を「患っている」。
【0295】
本発明は、クロストリジウム ディフィシレ、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)またはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症の処置または予防にも関する。好ましくは、本発明はクロストリジウム ディフィシレ感染症に関する。
【0296】
本発明は、別の活性化合物、好ましくはB型ランチビオティックではない化合物での処置によって根絶されなかった感染症の処置にも関する。他の活性化合物はバンコマイシンでありうる。
【0297】
本発明において用いるB型ランチビオティック化合物を、別の活性化合物での処置によって根絶されなかった感染症を有する対象に投与する場合、B型ランチビオティックを他の活性化合物の最後の投与の1日、1週間または1ヶ月、2ヶ月または3ヶ月以内に投与してもよい。好ましくは、他の活性化合物はバンコマイシンである。
【0298】
B型ランチビオティック化合物および組成物を、菌血症(カテーテル関連菌血症を含む)、肺炎、皮膚および皮膚構造感染症(手術部位感染症を含む)、心内膜炎ならびに骨髄炎の全身処置のために用いてもよい。これらおよび他のそのような処置は、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌などの原因微生物を対象としてもよい。本発明の化合物またはその組成物を、ざ瘡、すなわちプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)ざ瘡を含む皮膚感染症の局所処置のために用いてもよい。化合物およびその組成物を、結膜炎などの眼感染症の処置において用いてもよい。
【0299】
化合物を、創傷または熱傷における皮膚の感染症の処置または予防において用いてもよい。加えて、本発明において用いるための本明細書に記載の化合物および組成物を、予防法において用いてもよい。これは感染症のリスクが高い対象(例えば、病院に入院中の患者)またはそのような感染症の保菌者であるリスクが高い医療専門家もしくは他の介護者において実施してもよい。
【0300】
最も好ましくは、化合物および組成物を、多剤耐性C.ディフィシレを含むクロストリジウム ディフィシレによって引き起こされるもの(偽膜性結腸炎)などの腸重複感染を処置するために用いてもよい。化合物または組成物は経口投与してもよい。ヘリコバクター ピロリに関連する腸感染症も処置してもよい。
【0301】
本発明は、CDADを処置するための方法も提供する。処置終了までのCDAD症状の完全な鎮静とは、1日に便通(有形または無形にかかわらず)3回未満までの回復と、発熱、WBC(白血球)数上昇、または腹痛を伴わないことと定義しうる。
【0302】
薬学的組成物
本発明のB型ランチビオティック型化合物は、薬学的に許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、着香剤、および甘味剤を含むが、それらに限定されるわけではない、当業者には周知の1つまたは複数の他の薬学的に許容される成分と共に製剤してもよい。製剤は他の活性物質、例えば、他の治療または予防薬をさらに含んでいてもよい。したがって、本発明は、上で定義した薬学的組成物、および薬学的組成物の調製法であって、少なくとも1つの上で定義した活性化合物を1つまたは複数の当業者には周知の他の薬学的に許容される成分、例えば、担体、補助剤、賦形剤などと共に混合する段階を含む方法をさらに提供する。分離した単位(例えば、錠剤など)として製剤する場合、各単位はあらかじめ決められた量(用量)の活性化合物を含む。
【0303】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、当該対象(例えば、ヒト)の組織と接触して用いるのに適し、妥当な損益比に見合った、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、補助剤、賦形剤なども、製剤中の他の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0304】
組成物を、任意の適当な投与経路および投与手段のために製剤してもよい。薬学的に許容される担体または希釈剤には、経口、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)投与に適した製剤中で用いられるものが含まれる。製剤は、単位剤形で都合よく提示してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製してもよい。そのような方法は、活性成分を1つまたは複数の補助成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般に、製剤は活性成分を液体担体もしくは微粒子状固体担体または両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要があれば、生成物を成形することにより調製する。
【0305】
固体組成物のために、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを含む、通常の非毒性固体担体を用いてもよい。上で定義した活性化合物は、例えば、ポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセリドなどを担体として用いて、坐剤として製剤してもよい。液体の薬学的に投与しうる組成物は、例えば、上で定義した活性化合物および任意の薬学的補助剤を、水、食塩水水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの担体中に溶解、分散などして、それにより溶液または懸濁液を生成することにより調製することができる。望まれる場合には、投与する薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどの、少量の非毒性補助物質を含んでいてもよい。そのような剤形の実際の調製法は、当業者には公知であるか、または明らかであり;例えば、''Remington: The Science and Practice of Pharmacy'', 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins参照。投与する組成物または製剤は、任意の事象において、処置中の対象の症状を軽減するのに有効な量の活性化合物を含むことになる。
【0306】
0.25から95%の範囲の活性成分を含み、残りは非毒性担体からなる剤形または組成物を調製してもよい。
【0307】
経口投与のために、投与の好ましい方法、薬学的に許容される非毒性組成物を、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどの、通常用いられる任意の賦形剤を組み込むことにより生成する。そのような組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形を取る。そのような組成物は、1%〜95%の活性成分、より好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の活性成分を含んでいてもよい。
【0308】
非経口投与は一般に、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射により特徴づけられる。注射剤は、液剤もしくは懸濁剤、注射前に液体中の液剤もしくは懸濁剤とするのに適した固体剤形、または乳剤のいずれかとして、通常の剤形に調製することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。加えて、望まれる場合には、投与する薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウムなどの、少量の非毒性補助物質を含んでいてもよい。
【0309】
局所投与のために、薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適当な軟膏またはゲル剤に製剤してもよい。本発明の化合物の局所投与のために、担体には、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。または、薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適当なローション剤またはクリーム剤に製剤することもできる。適当な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0310】
そのような非経口または組成物中に含まれる活性化合物のパーセンテージは、その特定の性質、ならびに化合物の活性および対象の必要性に強く依存する。しかし、0.1重量%から10重量%の活性化合物のパーセンテージを用いることができ、組成物が後で前述のパーセンテージに希釈される固体である場合には、より高くなるであろう。好ましくは、組成物は溶液中に0.2〜2重量%の活性物質を含むことになる。
【0311】
本発明において用いる他の組成物には遅延放出製剤が含まれ、ここでB型ランチビオティックは小腸および大腸への特異的送達、より好ましくは結腸への特異的送達を可能にする様式で製剤される。これは経口で服用される遅延放出製剤を用いることによって達成することができる。
【0312】
活性成分が主に結腸で放出されるような、化合物の遅延放出製剤を提供するための手段について、当技術分野において多くの教示がある。一般に、そのような手段は、1つまたは複数のコーティングにより胃腸環境からの活性成分の保護を提供する。例えば、EP-0572942は、任意に1つまたは複数の賦形剤と組み合わせ、pHとは無関係に成分の放出を遅延させる中間層、およびpH依存性の様式で溶解する外層でコーティングした、活性成分の中核を含む遅延放出組成物を記載しており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0313】
外層は、アセトフタル酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ポリフタル酸ビニルアルコール、ポリアクリレートまたはポリメタクリレートなどのポリマーであってもよい。コーティングは5未満のpHでほとんど、またはまったく溶解しないが、より中性またはアルカリ性pH、例えば、7.5以上で溶解する。このコーティングは活性成分をその胃腸通過中に保護する。
【0314】
中間層は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、多糖などの疎水性ゲル化ポリマーなどの材料である。
【0315】
代替アプローチは国際公開公報第91/07949号に記載されており、これも2つの保護層を用いる。この参照文献中、中間層は、ガラス状またはゴム状アミロースなどの無定形アミロースである。この層は、結腸で見られるミクロフローラの酵素作用によって分解される。次いで、フィルム形成セルロース材料またはアクリルポリマー材料の外層を加えて、アミロース層の保護を提供する。この外層はpHに無関係の様式で溶解する。アミロースは好ましくは、ガラス転移温度、Tgが17℃以上、好ましくは30℃以上で、分子量が少なくとも20,000、例えば、少なくとも100,000ダルトンのガラス状アミロースである。
【0316】
フィルム形成セルロースは、例えば、好ましくは分子量が42,0000から280,000ダルトンの範囲の、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチル1-ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2-ヒドロキシセルロース、2-ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどであってもよい。アクリルポリマー材料には、好ましくは分子量が15,000から250,000ダルトンの範囲の、アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ならびにそのコポリマーが含まれる。
【0317】
国際公開公報第91/07949号(その開示は参照により本明細書に組み入れられる)に従い、アミロースコーティングは、例えば、1mmの球体の活性成分中核の周り5から50μMの厚さであってもよく、外部コーティングも同様のサイズ範囲であってもよい。アミロースおよびフィルム形成材料の混合物を含むコーティングも記載されている。
【0318】
前述のものを含む、本発明の遅延放出組成物は、対象の体内で放出される活性成分のかなりの部分(例えば、各単位剤形の少なくとも50%)を結腸で放出させることになる。
【0319】
例えば、遅延放出組成物は、0.1N HCl中、20℃で3時間後に活性成分の20%未満、好ましくは10%未満の放出を示すが、pH7.0以上(例えば7.5)および/または糞便のミクロフローラによる嫌気性微生物消化(例えば、国際公開公報第91/07949号の実施例4(d)に記載の消化条件を用いて)に曝露した場合、24時間以内に活性成分の50%よりも多く、好ましくは75%よりも多くの放出を示すことになる。
【0320】
薬学的組成物の組成は、胃腸管を通過すると変化しうることが理解されるであろう。例えば、着香化合物は、計画された送達メカニズムによって、組成物から流出することもある。
【0321】
さらに、適当な担体、補助剤、賦形剤などに関する教示は、標準の薬学の教科書、例えば、''Remington: The Science and Practice of Pharmacy'', 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994において見いだすことができる。
【0322】
作用部位への投与および送達
本明細書に記載の化合物を経腸(経口)、非経口(筋肉内または静脈内)、直腸、鼻、膣または局部(局所)投与することができる。これらは液剤、散剤(錠剤、マイクロカプセル剤を含むカプセル剤)、軟膏(クリーム剤またはゲル剤)、または坐剤の形で投与することができる。この型の製剤用の可能な補助剤は薬学的に通例の液体もしくは固体充填剤および増量剤、溶媒、乳化剤、滑沢剤、矯臭剤、着色剤ならびに/または緩衝剤である。
【0323】
本明細書に記載の化合物および組成物は、好ましくは経口投与する。簡単に言うと、経口投与した化合物または薬学的組成物は、口腔から食道、次いで胃へと通過しうる。胃から、化合物または薬学的組成物は小腸、次いで結腸を含む大腸へと移動しうる。本発明の方法において用いるB型ランチビオティックは、これらの胃腸領域のそれぞれにおいて安定でありうる。本発明において用いるB型ランチビオティックを用いて、結腸の感染症、特にC.ディフィシレ感染症を処置してもよい。結腸は盲腸から直腸におよぶ大腸の部分である。
【0324】
本明細書に記載のB型ランチビオティック、ならびにその誘導体および変異体は、ナイシンなどの抗生物質と比べて、胃腸管で見られるものなどの分解酵素に対して改善された安定性を有しうる。特に、本明細書に記載の化合物は、ナイシンなどの抗生物質と比べて、腸液に対して改善された安定性を有しうる。本明細書に記載の化合物は、パンクレアチンに対して改善された安定性を有しうる。
【0325】
パンクレアチンへの言及は膵臓の外分泌細胞によって産生される1つまたは複数の消化酵素の混合物への言及である。パンクレアチンは典型的にはプロテアーゼ、リパーゼおよびアミラーゼの1つまたは複数を含む。パンクレアチンはトリプシン(膵臓においてトリプシノーゲンとして生成)およびキモトリプシン(膵臓においてキモトリプシノーゲンとして生成)からなる群から1つまたは複数の酵素を含んでいてもよい。
【0326】
本発明の方法がインビトロ法におけるパンクレアチンの使用を指す場合、パンクレアチンはヒトの対象または動物の対象、例えば、ブタが供給源(ブタパンクレアチン)であってもよい。
【0327】
したがって、本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防の方法であって、対象にB型ランチビオティックを投与する段階を含み、ここでB型ランチビオティックを続いて腸液環境などのパンクレアチン含有環境に曝露する方法を提供する。腸液環境はパンクレアチン酵素に加えて他の分解酵素を含んでいてもよい。
【0328】
本発明において用いるB型ランチビオティックは、胃液環境において安定でありうる。安定性は、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも60分、少なくとも120分、または少なくとも180分間の曝露後に人工胃液から回収されるB型ランチビオティックの比率に関して規定してもよい。安定なB型ランチビオティックは、元々人工胃液で処理したB型ランチビオティックの量の少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、または少なくとも99モル%で液から回収されうる。
【0329】
加えて、または代わりに、安定性は、胃液への曝露の前後の基準微生物に対するB型ランチビオティックの活性に関して規定してもよい。微生物はM.ロイタス(M.Leutus)であってもよい。液から回収した安定なB型ランチビオティックは、曝露前のB型ランチビオティックと比べて、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の活性を保持しうる。胃液は人工胃液でも胃腸抽出液でもよい。
【0330】
本発明において用いる化合物は、腸液環境において安定でありうる。安定性は、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも60分、少なくとも120分、または少なくとも180分間の曝露後に人工腸液から回収されるB型ランチビオティックの比率に関して規定してもよい。安定なB型ランチビオティックは、元々人工腸液で処理したB型ランチビオティックの量の少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、または少なくとも99モル%で回収されうる。
【0331】
加えて、または代わりに、安定性は、腸液への曝露の前後の基準微生物に対するB型ランチビオティックの活性に関して規定してもよい。微生物はM.ロイタスであってもよい。液から回収した安定なB型ランチビオティックは、曝露前のB型ランチビオティックと比べて、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の活性を保持しうる。胃液は人工腸液でも胃腸抽出液でもよい。
【0332】
本発明において用いるB型ランチビオティック化合物は、好ましくは、化合物が経口投与された対象の胃腸管内であまり吸収または代謝されない。特に、化合物は対象の胃または小腸内で吸収または代謝されない。
【0333】
本明細書に記載のB型ランチビオティックの腸液による酵素分解に対する安定性は非常に有利である。前述のとおり、腸液中で安定でないナイシンなどの化合物は、作用部位への送達中に分解されないように高度の製剤を必要とし、かつ作用部位で分解されない。
【0334】
タイミング
細菌感染症を処置するのに有効な時間は1日から1年の範囲である。特定の場合には、処置は数週間もしくは数ヶ月の間でありえ、または必要があれば個々の患者の生涯にわたって延長されることもある。例えば、処置期間は少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも30日、少なくとも45日、少なくとも90日、または少なくとも180日でありうる。最終的に、細菌の非増殖型がもはや検出されない時間まで処置を延長することが最も望ましい。
【0335】
化合物または組成物の投与を必要に応じて繰り返してもよい。化合物または組成物を1日に1、2、3、4または5回投与してもよい。または、投与を1日1回、もしくは2日に1回繰り返してもよく、または3日に1回、もしくは1週間に1回繰り返すこともできる。処置法の範囲内で、投与頻度のタイミングは、必要がある場合には処置期間中に変更してもよい。
【0336】
化合物または組成物の用量を静脈内投与する場合、4から24時間、8から24時間、または15から24時間にわたって投与してもよい。用量を2、4、5、6、7、8、9、10、12、14、20、24、48、または72時間にわたり静脈内注入によって投与してもよい。
【0337】
適当な用量の選択およびスケジュール決定における因子は、前述のとおり、得られる結果である。例えば、細菌感染症処置のために最初は比較的高用量が必要とされるであろう。その後の用量が初期用量よりも高くなることもある。最も有効な結果を得るために、化合物は一般には感染の最初の徴候、診断、外観、または出現から可能なかぎりすぐに、または感染の緩解期の間に投与する。
【0338】
用量
対象の処置または予防において、化合物または組成物の有効量をその対象に投与する。
【0339】
「有効」量とは、感染症または感染に関連する疾患を処置または予防するのに必要な活性成分の量を意味する。微生物感染によって引き起こされる、または微生物感染が原因となる状態の処置または予防的処置のために、本発明を実施するのに用いる化合物の有効量は、投与様式、対象の年齢、体重、および全身の健康に応じて変動する。最終的に、主治医が適当な量および投与法を決定することになる。そのような量を「有効」量と呼ぶ。
【0340】
投与する化合物の有効量は、最終的に、特定の対象(例えば、ヒト患者または動物モデル)における疾患の重症度および対象の全般的状態を考慮に入れて、医師の自由裁量となる。適当な用量範囲は、典型的には、0.1〜1,000mg/kg、例えば、0.2から100mg/kg、または1から50mg/kg、または5から25mg/kgの範囲となり、医師が適当と認める用量が投与される。これらは、本発明の化合物の少なくとも有効1日量、例えば、30〜3,000、好ましくは50〜1,000mgを含む用量単位で都合よく投与する。
【0341】
好ましくは、投与する化合物の有効量は、患者ごとに1日あたり約100から約2,000mgである。
【0342】
そのような化合物の毒性および治療上の有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療上有効な用量)をもとめるための、生物検定または実験動物において標準の薬学的方法により決定することができる。毒性と治療上の有効性との間の用量比が治療指数で、LD50/ED50の比で表すことができる。大きい治療指数を示す化合物が、本発明において用いるのに好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非感染細胞への損傷の可能性を最小限とし、それによって副作用を低減するために、そのような化合物を患部組織に標的指向させる送達系を設計するよう注意すべきである。
【0343】
検定および動物試験から得たデータを用いて、ヒトで用いるための一連の用量を処方することができる。そのような化合物の用量は、好ましくは、毒性がほどんど、またはまったくない、ED50を含む循環濃度の範囲内である。用量は、用いる剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。本発明の方法において用いる任意の化合物について、治療上有効な用量を最初は生物検定および動物試験から推定することができる。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0344】
用量は、化合物を作用部位に送達するために用いる製剤の型、感染の程度および疾患の重症度、ならびに対象が下痢を有するかどうか、またその程度によって影響を受ける、製剤が腸を通過する移行時間に応じて調節しうることが理解されるであろう。
【0345】
患者群
本発明は、対象の下部腸または結腸の微生物感染症の処置または予防の方法であって、対象にB型ランチビオティックを投与する段階を含み、ここで対象は選択した患者群に含まれる方法も提供する。患者群は、特定の活性物質に対して耐性の微生物感染症を有する対象を含むこともある。好ましくは、微生物感染症はバンコマイシン処置に対して耐性である。対象は、B型ランチビオティックではない活性物質での処置に対して耐性の微生物感染症を有していてもよい。
【0346】
好ましくは、対象はB型ランチビオティックによる処置の前に少なくとも1時間、2時間、24時間、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月または3ヶ月の間活性物質の投与を受けていた対象である。好ましくは、対象はB型ランチビオティックによる処置の前に少なくとも1ヶ月または2ヶ月の間活性物質の投与を受けていた。
【0347】
同時投与
本発明において用いる組成物は、異なるB型ランチビオティック化合物、異なる抗菌物質、または第二の症状もしくは処置すべき状態の原因を処置することが意図されるもう一つの物質を含む、第二の活性物質を含んでいてもよい。
【0348】
第二の活性物質の使用は、B型ランチビオティックをより効果的に用いることを可能にし、ここで第二の活性物質はB型ランチビオティックと共に投与する。
【0349】
好ましくは、組成物は、正常な健康状態の腸内菌叢で優位を占める生物、特にビフィドバクテリウム属およびバクテロイデス属に対して活性を有する追加の活性物質を含まない。
【0350】
一つの態様において、第二の活性物質はトレバマー(GT160-246)である。トレバマーはC.ディフィシレ細胞毒A/Bに結合し、C.ディフィシレ関連下痢の処置中に嫌気性腸ミクロフローラの要素の回復に関連する(Louie et al, Proceedings of 14th European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Prague Congress Centre, Prague, Czech Republic, May 1-4, 2004参照)。
【0351】
様々な抗菌物質を本発明において用いる化合物と共に用いることができる。これらには、キノロン、テトラサイクリン、糖ペプチド、アミノグリコシド、β-ラクタム、リファマイシン、クーママイシン、マクロライド、ケトライド、アザライド、およびクロラムフェニコールが含まれる。特定の態様において、前述のクラスの抗生物質は、例えば、下記の1つでありうる:
【0352】
β-ラクタム抗生物質:イミペネム、メロペネム、ビアペネム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフィキシム、セフィネノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリル、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セフィネタゾール、セフォキシチン、セフォテタン、アズトレオナム、カルモナム、フロモキセフ、モキサラクタム、アミジノシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、ベンジルペニシリン、カルフェシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペライリン、スルベニシリン、テモシリン、チカルシリン、セフジトレン、SC004、KY-020、セフジニル、セフチブテン、FK-312、S-1090、CP-0467、BK-218、FK-037、DQ-2556、FK-518、セフォゾプラン、ME1228、KP-736、CP-6232、Ro 09-1227、OPC-20000およびLY206763。
【0353】
マクロライド:アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、ロキタマイシン、ロサラミシン、ロキシスロマイシン、およびトロレアンドマイシン。
【0354】
ケトライド:ABT-773、テリスロマイシン(HMR 3647)、HMR3562、HMR3004、HMR3787、ABT-773、CP-654,743、C2-フルオロケトライド、A1957730、およびTE802。
【0355】
キノロン:アミフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、オキソリニン酸、ペフロキサシン、ロソクサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、クリナフロキサシン、PD131628、PD138312、PD140248、Q-35、AM-1155、NM394、T-3761、ルフロキサシン、OPC-17116、DU-6859a、およびDV-7751a。
【0356】
テトラサイクリン:クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリン。
【0357】
糖ペプチド:バンコマイシンおよびその誘導体。
【0358】
アミノグリコシド:アミカシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、メオマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、およびリンコマイシン。
【0359】
リファマイシン:リファマイシンSV、リファマイシンO、リファブチン、リファンピシン、リファンピン、およびリファリジル。
【0360】
第二の抗菌物質の代わりに、組成物はメルサシジン変異体で処置すべき状態のさらなる症状または原因を処置することが意図される第二の物質を含んでいてもよい。例えば、組成物は鎮痛剤、例えば、非ステロイド性抗炎症化合物を含んでいてもよい。特に、組成物が皮膚感染症の処置用である場合、組成物は皮膚の炎症処置用の、ステロイドなどの皮膚科用物質を含んでいてもよい。皮膚科適用において有用でありうる他の物質には、レチノイド、過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤および抗真菌剤が含まれる。
【0361】
本発明のこれらの局面において、第二の活性物質と組み合わせる化合物は、アクタガルジン、デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]、メルサシジンおよびメルサシジンF3Wを含む、前述の本発明において用いる化合物の任意の1つであってもよい。
【0362】
第二の活性物質を対象に、同時、別々または逐次投与してもよい。
【0363】
「同時」投与とは、B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を対象に、同じ投与経路による1回の投与で行うことを意味する。
【0364】
「別々」の投与とは、B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を対象に、同時に行う2つの異なる投与経路で投与することを意味する。これは、例えば、一方の物質を注入により投与し、他方を注入中に経口投与する場合に起こりうる。
【0365】
「逐次」とは、第一の投与物質の活性が、第二の物質を投与する時点で対象中に存在し、かつ進行中であることを条件として、2つの物質を異なる時点で投与することを意味する。例えば、第二の活性物質を投与する時点で対象の微生物感染が低減しているように、B型ランチビオティックをまず投与してもよい。または、第二の活性物質をまず投与してもよい。
【0366】
一般に、逐次投与は、2つの物質の2番目を1番目の物質の48時間以内、好ましくは12、6、4、2または1時間以内などの24時間以内に投与するように行う。
【0367】
物質をそれらの望ましい投与経路のために適切に製剤することになる。物質または物質を含む薬学的組成物を対象に、全身/末梢または局所(すなわち、所望の作用部位)のいずれかにかかわらず、任意の好都合な投与経路で投与してもよい。
【0368】
本発明の化合物の調製法
B型ランチビオティック化合物の実験的合成
一連のB型ランチビオティック化合物を、以下に詳細に記載するとおりに調製した。アクタガルジンなどの親ランチビオティックは、これらの化合物について前述した方法に従って得た。
【0369】
アクタガルジン
親ランチビオティック、ならびに基X1、X2、ZおよびXが下記のとおりである、以下のアクタガルジン化合物を調製した。


【0370】
親ランチビオティック、ならびに基X1、X2、Zと、R1およびR2が下記のとおりである、以下の化合物も調製した。

【0371】
アステリスクは、窒素原子が19位のアラニン残基にアミド結合により連結されている点を示す。アミノ酸残基である基Zに関して、この部分はアミド結合により1位のアミノ酸に連結された、当技術分野においてXaa(0)と都合よく呼ぶアミノ酸を指すことが理解されるであろう。
【0372】
化合物VI〜XIII、XXIIIおよびL〜LIIIの調製
一般法1
無水ジメチルホルムアミド(2ml)中のランチビオティック(例えば、アクタガルジン、アクタガルジンB、またはデオキシ-アクタガルジンB)(200mg、108nmol)、適当なアミノアルコール(330nmol)およびジイソプロピルエチルアミン(410nmol)の溶液に、無水ジメチルホルムアミド(1.5ml)中のヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBop(商標))(125mg、258nmol)の溶液を分割して加えた。混合物をHPLCで分析して反応の進行を追跡し、すべての出発原料が消費されるまでPyBop(商標)溶液の一定量を追加した。この段階のHPLC分析は様々な量(5〜20%)のジアミドも示した。反応完了後、混合物を30%アセトニトリル/20mM Kpi水性リン酸緩衝液、pH7(10ml)で希釈し、モノアミドを調製用HPLCで表1に記載の条件を用いて精製した。適当な画分をそれらの元の量の25%まで濃縮し、あらかじめコンディショニングしたC18 Bond Elutカラム(500mg)に添加することにより脱塩し、このカラムはその後カラムの2倍量の30、40、70および90%水性メタノールで連続溶出することにより洗浄した。適当な画分を蒸発させて、所望の生成物を白色固体で得た。試料をLC-MSで下記の条件を用いて分析した。
【0373】
化合物VI:アクタガルジンN-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとエタノールアミンとのカップリングから得た。収量11mg、収率53%。[M+2H 2+]計算値966.5、実測値966.1。
【0374】
化合物VII:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとエタノールアミンとのカップリングから得た。収量18mg、収率85%。[M+2H 2+]計算値979.0、実測値980.2。
【0375】
化合物VIII:デオキシ-アクタガルジンB N-[4-ブタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとブタノールアミンとのカップリングから得た。収量9mg、収率43%。[M+2H 2+]計算値972.50、実測値979.9.2。
【0376】
化合物IX:デオキシ-アクタガルジンB(3-アミノ-1,2-プロパンジオール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのカップリングから得た。収量18mg、収率87%。[M+2H 2+]計算値973.5.0、実測値973.9。
【0377】
化合物X:デオキシ-アクタガルジンB(2-アミノ-1,3-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと2-アミノ-1,3-プロパノールとのカップリングから得た。収量20mg、収率96%。[M+2H 2+]計算値973.5、実測値973.9
【0378】
化合物XI:デオキシ-アクタガルジンB[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンとのカップリングから得た。収量13mg、収率69%。[M+2H 2+]計算値988.5、実測値988.6
【0379】
化合物XII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-2-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと1-アミノ-2-プロパノールとのカップリングから得た。収量16mg、収率78%。[M+2H 2+]計算値965.5、実測値965.6
【0380】
化合物XIII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-3-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと1-アミノ-3-プロパノールとのカップリングから得た。収量19mg、収率87%。[M+2H 2+]計算値965.5、実測値965.3
【0381】
化合物XX:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとN-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]とのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値995.5、実測値995.8。
【0382】
化合物XXI:デオキシ-アクタガルジンB(L-セリンメチルエステル)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとL-セリンメチルエステルとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値987.5、実測値986.9。
【0383】
化合物XXII:デオキシアクタガルジンB(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値980、実測値979.8。
【0384】
化合物XXIII:デオキシ-アクタガルジンB(2-ヒドロキシピペラジン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと2-ヒドロキシピペラジンとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値978.5、実測値977.7。
【0385】
化合物XIV〜XXII、およびLX〜LXVIの調製
一般法2:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンBについて例示
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-トリプトファン-O-ペンタフルオロフェニルエステル(80mg、135nmol)を無水ジメホルムアミド(1ml)中の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(18mg、135nm)の溶液に加えた。次いで、混合物を無水ジメチルホルムアミド(0.5ml)中のデオキシアクタガルジンB(50mg、27nmol)の溶液に加えた。混合物を室温で15分間放置し、その後すべての出発原料が消費された。水(0.05ml)およびピペリジン(0.1ml)を加え、混合物を室温で1時間放置した。反応混合物を30%水性メタノール中で希釈し、得られた白色懸濁液を1gのC18固相抽出カートリッジに添加した。材料を40%、50%、60%および70%水性メエタノールの画分で溶出した。60%画分を蒸発乾固させて、黄褐色固体を得た。収量=35mg(63%)[M+2H 2+]計算値1030.0、実測値1030.1
【0386】
化合物XV:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(50mg)とエタノールアミンとのカップリングから得た。収量23mg、収率45%。[M+2H 2+]計算値1051.5、実測値1051.8
【0387】
(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB
この化合物を、一般法2に従い、デオキシアクタガルジンBとN-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-フェニルアラニン-O-ペンタフルオロフェニルエステルとのカップリングから得た。収量65%。[M+2H 2+]計算値1010.5、実測値1011.0
【0388】
化合物XIV:(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(50mg)とエタノールアミンとのカップリングから得た。収量23mg、収率45%。[M+2H 2+]計算値1032.0、実測値1032.2
【0389】
化合物XXIV〜XXXの調製
これらの化合物を発明者らが以前に記載したとおりに調製した。
【0390】
したがって、無水ジメチルホルムアミド(0.8ml)中のデオキシ-アクタガルジンB(20mg、11nmol)、適当なアミン(11nmol)およびジイソプロピルエチルアミン(7.2μl、70nmol)の溶液に、無水ジメチルホルムアミド(1.0ml)中のヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBop)(70mg、134nmol)の溶液200μlを加えた。混合物をHPLCで分析して反応の進行を追跡し、すべての出発原料が消費されるまでPyBop溶液の一定量を追加した。この段階のHPLC分析は様々な量(5〜20%)のジアミドも示した。反応完了後、混合物を30%アセトニトリル/20mM Kpi水性リン酸緩衝液、pH7(10ml)で希釈し、モノアミドを調製用HPLCで表4に記載の条件を用いて精製した。適当な画分をそれらの元の量の25%まで濃縮し、あらかじめコンディショニングしたC18 Bond Elutカラム(500mg)に添加することにより脱塩し、このカラムはその後カラムの2倍量の30、40、70および90%水性メタノールで連続溶出することにより洗浄した。適当な画分を蒸発させて、所望の生成物を白色固体で得た。
【0391】
化合物XXVIII:デオキシ-アクタガルジンB N-[3-ジメチルアミノプロピル]モノカルボキサミド
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシアクタガルジンBと3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンとのカップリングから得た。収量18mg、収率85%。[M+2H 2+]計算値979.0、実測値980.2。
【0392】
化合物XXIX:デオキシ-アクタガルジンB N-[1-(1-メチル-4-ピペリジニル)ピペラジン]モノカルボキサミド
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシアクタガルジンBと4-(ピペリジノ)ピペラジンとのカップリングから得た。収量8mg、収率37%。[M+2H 2+]計算値1019.5、実測値1020.0;[M+3H 3+]計算値680.0、実測値680.0。
【0393】
化合物XXX:デオキシ-アクタガルジンB[1-(3-ジメチルアミノプロピル)ピペラジン]モノカルボキサミド
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシアクタガルジンBと1-(3-ジメチルアミノプロピル)ピペラジンとのカップリングから得た。収量10mg、収率46%。[M+2H 2+]計算値1013.5、実測値1014.0。
【0394】
化合物VおよびXXXI〜XXXVの調製
これらの化合物を発明者らが以前に記載したとおりに調製した。
【0395】
したがって、無水ジメチルホルムアミド(0.4ml)中の適当なFmoc保護アミノ酸(34nmol)の溶液を、無水ジメチルホルムアミド(0.4ml)中のヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBop)(11.4mg、22nmol)およびジイソプロピルエチルアミン(11μl、68nmol)の溶液で処理した。次いで、混合物を無水ジメチルホルムアミド(0.5ml)中のデオキシ-アクタガルジンB(2mg、11nmol)の溶液に加えた。混合物を室温で1時間放置し、その後の分析用HPLC(30〜65%アセトニトリル/20mM Kpi水性リン酸緩衝液、pH7)は出発原料の完全な変換を示した。反応混合物を40%水性メタノール(20ml)で希釈し、カラムの2倍量の100%メタノールと、続いてカラムの2倍量の水で洗浄することによりあらかじめコンディショニングしたC18 Bond Eluteカラム(500mg)に混合物を通過させた。カラムをカラムの2倍量の40、50、60、70、80、90および100%水性メタノールで連続溶出した。画分をHPLCで分析し、Fmoc保護カップリング生成物を含む画分を蒸発乾固させた。残渣をジメチルホルムアミド(1ml)に溶解し、ピペリジン(50μl)を加えて、Fmoc保護基を除去した。反応の進行をHPLCで監視し、出発原料が完全に消費された後、溶液を30%水性メタノール(20ml)中で希釈した。次いで、混合物を前述のとおりC18 Bond Elutカートリッジ(500mg)を通して溶出し、適当な画分の蒸発後に得られた生成物を調製用HPLCで下記の条件を用いてさらに精製した。適当な画分をそれらの元の量の25%まで濃縮し、あらかじめコンディショニングしたC18 Bond Elutカラム(500mg)に添加することにより脱塩し、このカラムはその後カラムの2倍量の30、40、70および90%水性メタノールで連続溶出することにより洗浄した。適当な画分を蒸発させて、所望の生成物を白色固体で得た。
【0396】
化合物XXXI:D-Ala(O)デオキシ-アクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびFmoc-D-アラニンから収率74%で得た。[M+2H 2+]計算値972.5、実測値973.0。
【0397】
化合物XXXI:L-Ile(O)デオキシ-アクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびFmoc-L-イソロイシンから収率27%で得た。[M+2H 2+]計算値993.5、実測値993.8。
【0398】
化合物XXXIII:L-Val(O)デオキシアクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびFmoc-L-バリンから収率55%で得た。[M+2H 2+]計算値986.5、実測値985.9。
【0399】
化合物V:L-Phe(O)デオキシアクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびFmoc-L-フェニルアラニンから収率22%で得た。[M+2H 2+]計算値1010.5、実測値1010.9。
【0400】
化合物XXXIV:L-Lys(O)デオキシアクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびビス(Fmoc)-L-リジンから収率45%で得た。[M+2H 2+]計算値1001.0、実測値1001.6。
【0401】
化合物XXXV:L-Trp(O)デオキシアクタガルジンB
この化合物を、前述の方法に従い、デオキシ-アクタガルジンBおよびFmoc-L-トリプトファンから収率55%で得た。[M+2H 2+]計算値1030.0、実測値1029.9。
【0402】
高性能液体クロマトグラフィ
HPLC分析を、Hewlett Packard 1050シリーズHPLC装置を用い、下記のパラメーターで実施した。

【0403】
高性能液体クロマトグラフィ-質量分析(HPLC-MS)
HPLC-MS分析を、Micromass(商標) Platform LCに連結したHewlett Packard(商標) 1050シリーズHPLC装置(MassLynx(商標)バージョン3.5ソフトウェアで操作)を用い、表3に含まれるパラメーターで実施した。
【0404】
(表3)ランチビオティック(例えば、アクタガルジン、アクタガルジンB、またはデオキシアクタガルジンB)および誘導体化した産物の調整的HPLC条件

【0405】
その最良の様式を含む、本発明の実験の基礎を、添付の図面を参照しながらここで詳細に記載するが、図面は例示のためにすぎない。
【0406】
メルサシジン
メルサシジンおよびF3Wメルサシジンを、発明者らが以前に記載した方法に従って調製した。詳細については国際公開公報第2007/036706号を参照されたい。
【0407】
実施例1. B型ランチビオティックのC.ディフィシレに対する活性
化合物IからVIIを、クロストリジウム ディフィシレの12の臨床分離株に対してスクリーニングした。試験は嫌気性条件下、Wilkins-Chalgren Anaerobe Agar中で行い、MIC(最小阻害濃度−細菌の可視増殖を完全に阻止する物質の最低濃度と定義)を各化合物についてもとめた。
【0408】
表4に示すとおり、すべてのクロストリジウム ディフィシレ菌株は化合物IからVIIにより4g/ml以下の濃度で阻害された。表2にはバンコマイシンのMIC値も示している。化合物IからVIIはバンコマイシンと類似のインビトロ効力を有する。このデータは、クロストリジウム ディフィシレの一般的感受性により、この細菌はB型ランチビオティックを用いる治療法の可能な標的生物となることを示している。
【0409】
(表4) B型ランチビオティックのC.ディフィシレに対する活性

化合物
I メルサシジン
II アクタガルジン
III デオキシアクタガルジンB
IV F3Wメルサシジン
V Phe(O)デオキシアクタガルジンB
VI アクタガルジンN-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
VII デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
Vanc. バンコマイシン
Metro. メトロニダゾール
【0410】
加えて、化合物LからLIIIを、クロストリジウム ディフィシレの4つの分離株に対してスクリーニングした。MICデータを以下の表4Aに示す。
【0411】
(表4A) B型ランチビオティックのC.ディフィシレに対する活性

【0412】
実施例2. B型ランチビオティックの他の腸生物に対する活性
いくつかのB型ランチビオティック誘導体(化合物II、IVおよびVI)の、腸内菌叢の一部として一般に出現するいくつかの種に対する活性を測定し、バンコマイシンと比較した(表5)。化合物はビフィドバクテリウム属およびバクテロイデス属に対して低い効力を有することが判明し、したがってこれらの化合物はバンコマイシンとは異なり、治療的用量レベルで腸内菌叢に対してあまり影響をおよぼさないであろうとはっきり想定することができる。
【0413】
(表5) 腸内菌叢中の一般的な生物に対するB型ランチビオティックの活性

【0414】
実施例3. 人工胃および腸液中でのB型ランチビオティックの安定性
A型ランチビオティックはアミノ配列中に直鎖(非環化)部分を有する。そのような直鎖部分は酵素分解に対して易損性で、したがってA型ランチビオティックは速やかに消化される。
【0415】
本明細書に記載のB型ランチビオティックは、ナイシンなどのA型ランチビオティックと比べて酵素分解に対する高い安定性を有する可能性がある。
【0416】
ナイシンおよびメルサシジンを、胃および腸内での酵素消化に対するそれらの感受性について試験した。SGFおよびSIFは人工胃液および人工腸液のための標準USP溶液に基づいており、それらの活性をウシ血清アルブミンに対して確認した(Hilger et al, 2001)。化合物をSGFまたはSIF中、37℃でインキュベートし、それらの濃度を分析用HPLC(210nmでUV検出)で定量した。各化合物の分解の可能性を、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)に対するインビトロ抗菌活性を測定することでも定量的に追跡した。
【0417】
図1(a)は、人工胃液中のナイシンおよびメルサシジンの濃度を示している。図1(b)は人工胃液中の化合物VIおよびVIIの濃度を、時間の関数として示している。どの化合物もSGF中で認めうる分解を示さなかった。
【0418】
対照的に、図2(a)はナイシンがSIF中で速やかに分解され、半減期が約15分であったことを示している。この媒質中でのナイシンの急速な分解は、化合物を注意深く製剤することにより分解酵素から保護することができない限り、結腸感染を処置するためのナイシンの臨床上の有用性が非常に限られるとの知見を裏付けるものである。図2(a)はメルサシジンがSIF中で基本的に安定であり、これらの化合物にとって、代謝的不安定は結腸のC.ディフィシレ感染症を処置する上でそれらの有効性に影響をおよぼす因子とはならないであろうことも示している。アクタガルジンおよびデオキシアクタガルジンBもSGFおよびSIF中で同様に安定であることが判明した。HPLCから得た濃度データはM.ルテウスに対するインビトロ活性によって実証され、実験経過中にメルサシジンおよびデオキシアクタガルジンBの活性は未変化で保持された。
【0419】
図2(b)は化合物IVもSIF中で基本的に安定であることを示している。
【0420】
実施例4. B型ランチビオティックの殺胞子活性
個人が広域抗生物質での処置後にいったん感染に対して感受性になると、経口-糞便経路によるC.ディフィシレのコロニー形成が起こる。C.ディフィシレによる環境汚染は病院では非常に一般的で、院内でC.ディフィシレの伝染性の菌株が大規模に伝播し;医療従事者がその手および器具上の細菌を患者間に伝達することもある。C.ディフィシレによって形成される熱耐性胞子は環境中に数ヶ月または数年にもわたって残存することができる。感染は、胃の酸性環境でも影響されずに移動することができる胞子の経口摂取によって起こり、いったん結腸に入ると栄養型に変わる。
【0421】
したがって、C.ディフィシレ胞子を死滅させる、またはその発芽を防止することができる物質は非常に興味深い。B型ランチビオティックのC.ディフィシレ胞子に対する効果を調べるために、胞子の懸濁液を抗生物質(100g/ml)に曝露し、適当な時点で一定量を取り出した。各一定量中の胞子をろ過し、Brazierの寒天上に播種した。生菌数を記録し、表6にまとめている。
【0422】
(表6) C.ディフィシレ胞子に対する100g/mlの抗生物質の活性

【0423】
表6の結果は、C.ディフィシレ感染症の処置において用いられる現行の臨床薬剤であるバンコマイシンおよびメトロニダゾールは、胞子の生存力にあまり効果がないことを示している。これとは対照的に、B型ランチビオティックのメルサシジンおよびデオキシアクタガルジンBは100g/mlで、C.ディフィシレ胞子が発芽して新しい栄養細胞を形成するのを不活化または防止する。これらのランチビオティックの胞子に対する活性は、繰り返すC.ディフィシレ感染の予防において大きな価値があろう。
【0424】
実施例5. C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおけるB型抗生物質のインビボでの有効性
C.ディフィシレ感染症の処置における2つのB型ランチビオティックのインビボでの有効性を、CDADの標準的動物モデル、すなわちハムスターにおけるクリンダマイシン誘導性盲腸炎において評価した(図3)。6匹の動物の4群にC.ディフィシレ菌株VPI 10463の細胞約107個を投与し、24時間後に10mg/kgのリン酸クリンダマイシンを皮下投与した。さらに24時間後、4群を媒体、バンコマイシン、化合物IVまたは化合物VIのいずれかにより50mg/kg/日で1日3回処置した。
【0425】
前述の方法は試験動物でC.ディフィシレ感染症を誘導し、このうち媒体のみで処置した動物はすべて3日以内に死亡した。これとは対照的に、バンコマイシン、化合物IVまたは化合物VIで処置した動物はすべて全5日間の投与期間中生存し、これらの化合物の保護効果を示した。
【0426】
実施例6:B型抗生物質のインビボでの安定性
腸クロストリジウム ディフィシレ感染症を経口投与した非吸収抗生物質で処置するためには、化合物が、感染部位、典型的には結腸において高濃度を達成しうるように、消化酵素および腸内菌叢による代謝に対して抵抗性であることが非常に重要である。胃液および腸液のインビトロモデルは化合物の胃腸での安定性を早期に示すことができるが、インビボ実験は化合物が感染部位に到達したという、より直接的な証拠を提供しうる。
【0427】
雄Sprague-Dawleyラットに化合物VIIを100mg/kgで経口投与した。糞尿を48時間にわたり2バッチ(投与後24時間と48時間)で回収した。血液試料を最初の24時間の様々な時点で採取した。
【0428】
親化合物についての様々な生物試料の分析により、化合物VIIの少なくとも35%は糞便中に未変化で排出されることが示され、B型ランチビオティックの高い結腸濃度が得られることが明らかとなった。経口投与後に血漿または尿から回収された材料はなく、この結果は低い胃腸吸収と一致していた。
【0429】
実施例7. C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおけるB型抗生物質のインビボでの有効性
C.ディフィシレ感染症の処置における化合物VIIのインビボでの有効性を、ハムスターにおけるクリンダマイシン誘導性盲腸炎において評価した(図4)。6匹の動物群に10mg/kgのリン酸クリンダマイシンを皮下投与した。24時間後、終夜培養したBHI培養液を56℃で10分間加熱し、胞子を遠心分離により回収し、ペレットを同量のPBSに再懸濁することにより調製した、C.ディフィシレ630の胞子約104個を動物に経口接種した。さらに24時間後、4群を媒体、バンコマイシン、または化合物VIIのいずれかにより50mg/kg/日で1日3回、5日間処置した。図4は、化合物VIIで処置した場合、感染マウスは6匹すべてが試験期間中を通して生存したことを示している(バンコマイシンの結果は図4には示していない。比較結果は図3参照)。
【0430】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物において様々な改変および変更を加えうることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であることを条件として、本発明の改変および変更を対象とすることが意図される。
【0431】
引用文献
下記の引用文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の下部腸または結腸の微生物感染症の処置または予防の方法であって、対象にB型ランチビオティックを投与する段階を含む方法。
【請求項2】
B型ランチビオティックを経口投与する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微生物感染症が細菌感染症である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
細菌感染症がクロストリジウム感染症である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
クロストリジウム感染症がウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、破傷風菌(Clostridium tetani)またはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)感染症である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
クロストリジウム感染症がクロストリジウム ディフィシレ感染症である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
B型ランチビオティックがメルサシジン、アクタガルジン、プランタリシン、プラノスポリシン、ルミノコクシン、抗生物質10789、ミチガニンおよびハロデュラシン、ならびにその変異体および誘導体からなる群より選択される化合物である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
B型ランチビオティックがメルサシジンおよびアクタガルジン、ならびにその変異体および誘導体からなる群より選択される化合物である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
B型ランチビオティックが式(I)のアクタガルジン化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項8記載の方法:

式中、
X1は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
X2は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
Xは-OHまたは-NR1R2であり、ここでR1は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル基を表し、かつR2は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル基を表すか、あるいはR1およびR2は窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むか、あるいはR1およびR2は独立に下記を表すか:
(1)水素;
(2)式-(CH2)n-NR11R12の基、ここでnは2から8の整数を表し、かつR11およびR12は独立に水素もしくは(C1-C4)アルキルを表し、またはR3およびR4は一緒になって-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)2-S-(CH2)2-もしくは-(CH2)5-なる基を表し;
あるいはR1およびR2は隣接する窒素原子と一緒になって、下記から選択される置換基により4位で置換されていてもよいピペラジン部分を表し:
(a)(C1-C4)アルキル;
(b)(C5-C7)-シクロアルキル、
(c)ピリジル、
(d)-(CH2)p-NR13R14、ここでpは1から8の整数を表し、かつR5およびR6は独立に水素または(C1-C4)アルキルを表し;
(e)ピペリジニル;
(f)置換ピペリジニル、ここで置換ピペリジニルは(C1-C4)アルキルであるN-置換基を有し;
(g)ベンジル;および
(h)置換ベンジル、ここでフェニル部分はクロロ、ブロモ、ニトロ、(C1-C4)アルキルおよび(C1-C4)アルコキシから選択される1または2つの置換基を有し;
Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基であり;
Yは-S-または-S(O)-である。
【請求項10】
B型ランチビオティックが、1、2、3または4つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、請求項8に記載の式(I)のアクタガルジン化合物の変異体である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
B型ランチビオティックが式(II)のメルサシジン化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項8記載の方法:

式中、Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基である。
【請求項12】
B型ランチビオティックが、1、2、3または4つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、請求項10に記載の式(II)のメルサシジン化合物の変異体である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
B型ランチビオティックがF3W置換を有する式(II)のメルサシジン化合物の変異体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
B型ランチビオティックを対象に1日に化合物約100mgから約2,000mgの用量で投与する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
感染症がB型ランチビオティックではない活性化合物の対象への投与によって根絶されなかったものである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
B型ランチビオティックを対象に活性化合物の最後の投与の2ヶ月以内に投与する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
活性化合物がバンコマイシンである、請求項14または請求項15記載の方法。
【請求項18】
B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を対象に投与する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
B型ランチビオティックおよび第二の活性物質を同時、別々または逐次投与する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
第二の活性物質が嫌気性の腸ミクロフローラの1種または複数種の要素の回復に関連する化合物または組成物である、請求項18または請求項19記載の方法。
【請求項21】
B型ランチビオティックが腸液中で安定である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
安定なB型ランチビオティックが人工腸液への少なくとも15分間の曝露後に液から少なくとも80モル%で回収されうる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
対象のクロストリジウム ディフィシレ感染症の処置または予防の方法であって、バンコマイシンと比べて腸内菌叢存在下でクロストリジウム ディフィシレに選択的なB型ランチビオティックを対象に投与する段階を含む方法。
【請求項24】
B型ランチビオティックが腸内菌叢の生物に対してバンコマイシンの最小阻害濃度の2倍以上の最小阻害濃度を有する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
生物がビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
対象の下部腸または結腸の細菌感染症を処置または予防するための薬剤の調製におけるB型ランチビオティックの使用。
【請求項27】
対象の下部腸または結腸の細菌感染症を処置または予防する際に使用するB型ランチビオティック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−533695(P2010−533695A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516581(P2010−516581)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002463
【国際公開番号】WO2009/010763
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508215762)ノヴァクタ バイオシステムズ リミティッド (6)
【Fターム(参考)】