説明

抗菌組成物、抗菌ブラシフィラメントおよびその製造方法

開示されているのは、ブラシフィラメントを作製するための抗菌組成物を製造する方法である。本方法は、以下の順番で、(1)ポリマーを機械的に粉砕して、ポリマーパウダーを得る工程と、(2)工程(1)で得たポリマーパウダーを、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーを含む抗菌剤とブレンドして、抗菌組成物を得る工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、歯ブラシ、化粧ブラシ、絵筆および民生または工業用その他ブラシを作製するためのブラシフィラメント(brush filament)ならびにかかるフィラメントの製造方法、特に、歯ブラシ、化粧ブラシ、絵筆および民生または工業用その他ブラシを作製するための抗菌ブラシフィラメントならびにかかるフィラメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、様々なタイプのブラシを作製するのに用いるブラシフィラメントは、合成材料および獣毛から作製される。例えば、ナイロン66、ナイロン610およびナイロン612は、歯ブラシフィラメントを作製するのに用いられることが多い。さらに、PET、PTTおよびPBT等のポリエステルも、歯ブラシのための歯ブラシフィラメントを作製するのに用いられる。
【0003】
しかしながら、これらのブラシフィラメント自体は、抗菌活性を有していない。歯ブラシを使って、放置すると、細菌およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)真菌が、口内および口から悪臭を引き起こす可能性があり、かつ/またはブラシフィラメントの表面で成長するであろう。その後歯ブラシを使うと、これらの細菌が、口に直接取り入れられて、口中に傷がある場合は特に、口腔衛生を保つには有害である。科学者は、1本の歯ブラシに10,000,000を超える細菌を見つけている。2009年6月8日のDental Health Magazineに報告されているように、この膨大な数は、大きくは変わらない。
【0004】
現在のブラシフィラメント材料に、抗菌および衛生維持機能を持たせるために、抗菌剤をこれらのポリマー材料に添加することがよく行われている。国際公開第2009/026725号パンフレットは、作用の異なる抗菌機構を有する少なくとも2つの抗菌剤を含む抗菌組成物が開示された。文献にはまた、上述の抗菌組成物およびポリマー担体を含む抗菌マスターバッチも開示されている。しかしながら、上述の抗菌マスターバッチは、歯ブラシフィラメントを作製するには望ましくない。なぜならば、かかる抗菌マスターバッチから作製されたブラシフィラメントは、実際に使用している間に変色や黄変の問題があるからである。一方、抗菌剤は、米国および欧州の食品接触使用要件に合格せず、口と直接接触する歯ブラシフィラメントを作製するのに用いることはできない。
【0005】
国際公開第2008/151948号パンフレットにも、1つ以上の抗菌銀添加物と1つ以上の湿潤性添加剤とを含む抗菌ポリオレフィンおよびポリエステル組成物が開示された。しかしながら、上述のポリオレフィンおよびポリエステル組成物は、いずれも歯ブラシフィラメントを作製するのに望ましくない。なぜならば、かかるポリオレフィンおよびポリエステル組成物から作製されたフィラメントにも、実際に使用している間に変色や黄変の問題があり、抗菌効果の期間が短いという問題があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、歯ブラシフィラメントまたは化粧ブラシフィラメントを作製するのに用いることのできる抗菌組成物が、当該技術分野においては緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されているのは、以下の順番で、(1)ポリマー樹脂を機械的に粉砕して、ポリマーパウダーを得る工程と、(2)工程(1)で得たポリマーパウダーを、抗菌剤とブレンドして、抗菌組成物を得る工程とを含み、抗菌剤が、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーである抗菌組成物を製造する方法である。
【0008】
同じく、本明細書に開示されているのは、上記した方法に記載されたとおりに製造された抗菌組成物およびその組成物から作製されたブラシフィラメントである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示されている「範囲」という用語は、下限と上限を選択することにより定義される。選択された下限および上限は、特定の範囲の境界を定義する。このようにして定義することのできる範囲は全て含まれ、結合可能である。例えば、最小範囲値は、1および2と定義され、最大範囲値は、3、4および5と定義されると、以下の範囲が全て予想できる。すなわち、1〜3、1〜4、1〜5、2〜3、2〜4および2〜5。
【0010】
本明細書の1つの態様は、抗菌組成物を製造する方法を提供するものであり、本方法は、以下の順番で、
(1)ポリマーを機械的に粉砕して、ポリマーパウダーを得る工程と、
(2)工程(1)で得たポリマーパウダーを、抗菌剤とブレンドして、抗菌組成物を得る工程とを含み、抗菌剤が、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーである抗菌組成物を製造する方法である。
【0011】
本明細書において、抗菌組成物に用いるポリマーは従来のものである。それは、任意の従来のポリマーであってよい。本発明による好ましい実施形態において、ポリマーは、ナイロン(例えば、PA612、PA610、PA1010および/またはPA66)、ポリエステル(例えば、PBT、PTT、PET)またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせである。好適なポリマーは、Sorona(登録商標)ポリマー等、DuPont Company,Wilmington,DE USAより購入することにより入手可能である。
【0012】
Sorona(登録商標)は、DuPontにより開発されたバイオ系ポリマー材料である。その主成分は、コーン等の農作物の発酵により生成されるため、生物再生される。
【0013】
本明細書による好ましい実施形態において、ポリマーの量は、組成物の総重量を基準として、60〜95重量%、好ましくは、65〜90重量%、より好ましくは、70〜90重量%、最も好ましくは、80〜90重量%を占める。
【0014】
本明細書において、機械的粉砕工程は従来のものである。それは、流動床ジェットミリング、水平ディスクジェットミリング、循環ジェットミリング、対向ジェットミリング、インパクトターゲットジェットミリング、ボールミリングおよびこれらの組み合わせ等、当該技術分野で一般的に用いられるポリマーパウダーを粉砕するための従来の技術であってよい。
【0015】
本明細書において、ポリマーパウダーの粒子サイズは、上述の機械的粉砕工程により得られた任意の粒子サイズまたは粒子サイズ分布であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、ポリマーパウダーの粒子サイズは、0.1〜100ミクロン、好ましくは、0.1〜50ミクロン、より好ましくは、0.5〜30ミクロン、最も好ましくは、1〜15ミクロンである。典型的に、ポリマーパウダーの粒子サイズD50は、1〜10ミクロン、好ましくは、1.5〜8ミクロン、より好ましくは、1.5〜7ミクロン、最も好ましくは、2〜5ミクロンである。
【0016】
本明細書において、抗菌剤は、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーである。本明細書において、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体の充填量。所望の抗菌有効性が達成できる限りは、当該技術分野に知られた任意の充填量であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体の充填量は、ホスフェートまたはガラスマイクロパウダーの重量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは、0.2〜2重量%、より好ましくは、0.3〜1重量%を占める。
【0017】
本明細書において、ホスフェートは従来のものである。それは、一般的に用いられる任意のホスフェート抗菌剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、ホスフェートは、立方晶系結晶リン酸ジルコニウム、層状リン酸ジルコニウムまたはリン酸ナトリウムから選択される。
【0018】
本明細書において、ガラスマイクロパウダーは、一般的に用いられる任意のガラスマイクロパウダーである。本明細書による好ましい実施形態において、ガラスマイクロパウダーの平均粒子サイズは、0.1〜30ミクロン、好ましくは、1〜10ミクロン、より好ましくは、2〜5ミクロンである。
【0019】
本明細書において、ガラスのタイプは知られている。当該技術分野で一般的に用いられる任意のガラスであってよい。本明細書による好ましい実施形態において、ガラスは、可溶性ホウケイ酸ナトリウムガラスである。
【0020】
本明細書において、抗菌剤は、HKH National Engineering Research Center of Plastics Co.,Ltd.,製KHFS−Z25、Ishizuka Glass Co.,Ltd.,製WPA5、Shanghai Runhe Nano Materials Sci.&Tech.Co.,Ltd.,製RHA、Ciba Specialty Chemicals製B6000およびB7000等の商業的に入手可能な製品であってよい。
【0021】
本明細書において、抗菌剤の量は、特定の用途に応じて調節することができる。本明細書による好ましい実施例において、抗菌剤の量は、ポリマー100重量部を基準として、2〜40重量部、好ましくは、5〜35重量部、より好ましくは、6〜30重量部、最も好ましくは、10〜20重量部である。
【0022】
本明細書において、ブレンドは、これらに限られるものではないが、押出し、バンブリー、オープンミリングおよび混合等といったポリマーおよび無機添加剤をブレンドする任意のプロセスとすることができる。本明細書による好ましい実施例において、ブレンドプロセスは溶融押出しである。
【0023】
本明細書において、必要であれば、これらに限られるものではないが、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、衝撃改質剤、可塑剤、着色剤および充填剤をはじめとする添加剤を抗菌剤に添加してもよい。
【0024】
本明細書において、酸化防止剤は、一般的に用いられる任意の好適な酸化防止剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキルパラ−キノン、チオエーテル、サリチル酸フェニル、スルフヒドリルチオエーテル、チオプロピオネート、有機リン化合物、ジチオスルホネート、アミダート、ヒドラジン、芳香族アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
本明細書において、帯電防止剤は、当該技術分野で一般的に用いられる任意の帯電防止剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、帯電防止剤は、第四級アンモニウム塩、エトキシル化アミン、脂肪族エステルおよびスルホネートワックスならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
本明細書において、潤滑剤は、当該技術分野で一般的に用いられる任意の潤滑剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、潤滑剤は、脂肪族エステル(例えば、脂肪酸モノグリセリド)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
本明細書において、可塑剤は、当該技術分野で一般的に用いられる任意の可塑剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、可塑剤は、テレフタレートエステル、フタレートエステル、脂肪族ジカルボキシレートエステル、ホスフェートエステル、塩素化パラフィンワックスおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
本明細書において、着色剤は、当該技術分野で一般的に用いられる任意の着色剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、着色剤は、染料、顔料、着色化学物質およびこれらの組み合わせによるものとすることができる。
【0029】
本明細書において、充填剤は、任意の充填剤であってよいが、好ましくは、炭酸カルシウム、円形または非円形断面を有するガラスファイバー、ガラスシート、ガラスビーズ、カーボンファイバー、タルクパウダー、マイカ、サテライト、か焼クレイ、か焼カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本明細書の他の態様は、本明細書に記載した方法により製造される抗菌組成物を提供するものである。抗菌組成物は、高抗菌効率という利点を有し、変色の問題がない。
【0031】
本明細書はまた、歯ブラシ、化粧ブラシ、絵筆および民生または工業用その他ブラシを作製するのに用いられるブラシフィラメントも提供する。ブラシフィラメントは、本明細書に記載した抗菌組成物を含む。
【0032】
従って、ブラシフィラメントを形成するのに用いられるポリマーは知られている。かかるポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ナイロン(例えば、PA612、PA610、PA1010および/またはPA66)、ポリエステル(例えば、PBT、PTT、PETおよび/またはSorona(登録商標)ポリマー)またはこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書による好ましい実施形態において、歯ブラシフィラメントを形成するのに用いられるポリマーは、抗菌組成物に含まれるポリマーと同じである。
【0033】
本明細書において、抗菌組成物の量は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%、より好ましくは、1〜10重量%、最も好ましくは、3〜5重量%を占める。
【0034】
本明細書において、ブラシフィラメントを形成するのに用いられるポリマーの量は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、80〜99.9重量%、好ましくは、85〜99.9重量%、より好ましくは、90〜99.9重量%、最も好ましくは、95〜97重量%を占める。
【0035】
本明細書において、必要であれば、これらに限られるものではないが、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、衝撃改質剤、可塑剤、着色剤および充填剤をはじめとする他の添加剤もブラシフィラメントに添加してもよい。
【0036】
本明細書において、酸化防止剤は、一般的に用いられる任意の酸化防止剤であってよい。好ましくは、酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキルパラ−キノン、チオエーテル、サリチル酸フェニル、スルフヒドリルチオエーテル、チオプロピオネート、有機リン化合物、ジチオスルホネート、アミダート、ヒドラジン、芳香族アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
本明細書において、帯電防止剤は、第四級アンモニウム塩、エトキシル化アミン、脂肪族エステルおよびスルホネートワックスならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
本明細書において、潤滑剤は、脂肪族エステル(例えば、脂肪酸モノグリセリド)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
本明細書において、可塑剤は、テレフタレートエステル、フタレートエステル、脂肪族ジカルボキシレートエステル、ホスフェートエステル、塩素化パラフィンワックスおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
本明細書において、着色剤は、当該技術分野で一般的に用いられる任意の着色剤であってよい。本明細書による好ましい実施形態において、着色剤は、染料、顔料、着色化学物質、これらの組み合わせによるものとすることができる。
【0041】
本明細書において、充填剤は、任意の充填剤であってよいが、好ましくは、炭酸カルシウム、円形または非円形断面を有するガラスファイバー、ガラスシート、ガラスビーズ、カーボンファイバー、タルクパウダー、マイカ、サテライト、か焼クレイ、か焼カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
本明細書において、ブラシフィラメントを製造する方法は従来のものである。本明細書による好ましい実施形態において、フィラメントを作製するプロセスには、溶液紡糸、融解紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸等が含まれる。
【0043】
本明細書において、歯ブラシ、絵筆、化粧ブラシ、ブラシペン、ペンキブラシ等といった特定のツールに用いることができる限りは、ブラシフィラメントの断面形状は、特に制限されない。典型的に、ブラシフィラメントの断面は、円形、楕円、四角形、矩形、三角形、ダイアモンド等である。
【0044】
本明細書において、ブラシフィラメントは、一端または両端が、平坦端部または鋭端部であってよい。
【0045】
本明細書による好ましい実施形態において、ブラシフィラメントは、PBTおよびクレイ添加剤を含み、ブラシフィラメントは、従来のプロセスにより作製された、通常のブラシフィラメントの外観または波形の外観を有する。
【0046】
本明細書による好ましい実施形態において、ブラシフィラメントの一端または両端は化学的にティッピングされている。化学的ティッピング(chemical tipping)プロセスは、当該技術分野において従来のものである。当業者であれば、本発明の記載を専門的知識と組み合わせることにより、ブラシフィラメントの一端または両端をどのようにしてティッピングするか直接的に知ることができる。本明細書による他の好ましい実施形態において、本明細書において参考文献として援用される米国特許第6,764,142B2号明細書および第6,090,488号明細書に開示されたティッピングプロセスを参考にする。本明細書による好ましい実施形態において、ブラシフィラメントとしては、PET、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、熱可塑性エラストマー(熱可塑性ポリエステルポリエーテルエラストマー、例えば、DuPont Company,Wilmington,DE USAより入手可能なHytrel(登録商標)熱可塑性エラストマー、および熱可塑性加硫物、例えば、同じく、DuPont Companyから入手可能なEPTV)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
本明細書はまた、抗菌剤を含む抗菌フィラメントを提供するものであり、抗菌剤は、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーであり、抗菌フィラメントの抗菌効果は99%を超える。
【0048】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌剤は、本明細書の前部において述べたものと同じである。
【0049】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌フィラメントとしては、ポリマー、例えば、これらに限られるものではないが、PET、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、熱可塑性エラストマー(熱可塑性ポリエステルポリエーテルエラストマー、例えば、DuPontより購入したHytrelおよび熱可塑性加硫物、例えば、DuPontより購入したEPTV)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌フィラメントは、食品接触用途の要件に適合する、好ましくは、食品接触使用のFDAの要件および/またはEPAの要件に適合する。
【0051】
本明細書において、別記しない限り、抗菌効果とは、菌類および細菌に対する全体的な抗菌効果のことを指す。本明細書による好ましい実施形態において、抗菌効果は、ASTM E2149−2001に従って試験される。本明細書による他の好ましい実施形態において、抗菌効果は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して試験される。
【0052】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌フィラメントの抗菌効果は、99%を超える、好ましくは、99〜99.99%である。
【0053】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌組成物の黄色度指数は、40以下、好ましくは、30以下、より好ましくは、25以下、最も好ましくは、10〜25である。
【0054】
本明細書による好ましい実施形態において、抗菌フィラメントは、本明細書に記載した方法により製造した抗菌組成物から作製される。
【0055】
本明細書において、ブラシフィラメントは、様々なタイプのブラシ、歯ブラシ、化粧ブラシ、絵筆および民生または工業用その他ブラシを作製するのに用いることができる。
【0056】
本発明を、以下の実施例により詳細にさらに例示する。単位は全て重量パーセンテージである。これらの実施例は、例示の目的で提供されており、本発明の範囲を決して限定しない。
【実施例】
【0057】
試験方法:
黄色度指数(YI)は、HunterLab分光光度計(Eutin Holdingsより購入したLabScan XE)により測定した。
【0058】
実施例1:抗菌組成物の製造
20kgのナイロン612(DuPontより購入)を、薄く切り、メカニカルミル(Shanghai Xichuang Powder Equipment Co.,Ltd.,のJCW616超微細ハンマーミル、3000rpm)によりパウダー(粒子サイズD50=3ミクロン)へと粉砕した。次に、HKH National Engineering Research Center of Plastics Co.,Ltd,China製抗菌パウダーKHFS−Z25を2kg、上述したパウダーに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100で、周囲温度で混合した。得られた混合抗菌パウダーを、2軸押出し機(ZSK70,W&P)でブレンドおよびペレット化して、白色の均一な抗菌組成物を得た。ブレンド温度は、230〜250℃であった。得られた抗菌組成物の黄色度指数は10であった。
【0059】
実施例2
実施例1で得られた抗菌組成物を、5重量%の割合に従って、ナイロン612チップに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100)で混合した。次に、得られた混合物を、単軸押出し機(Donglong Plastics Machinery Co.,Ltd.,ChinaのSJ30)から直接220〜240℃で溶融紡糸した。冷却、伸張および加熱硬化後、抗菌フィラメントが得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、これらの細菌に対して99.99%に達した。
【0060】
比較例1
機械的粉砕工程を省いた以外は、実施例1と実質的に同じ方法で、抗菌組成物を製造した。得られた抗菌組成物の黄色度指数は50であった。抗菌フィラメントは、実施例2と同じ方法により、上記したとおり製造した抗菌組成物から得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、それぞれ、94%、94%および73%であった。
【0061】
実施例3:抗菌組成物の製造
10kgのSorona(登録商標)(DuPont製)を、薄く切り、メカニカルミル(Shanghai Xichuang Powder Equipment Co.,Ltd.,のJCW616超微細ハンマーミル、3000rpm)によりパウダー(粒子サイズD50=2ミクロン)へと粉砕した。次に、Ciba Specialty Chemicals,Chinaのガラスパウダーの抗菌パウダーB7000を2kg、上述したパウダーに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100)で、周囲温度で混合した。得られた混合抗菌パウダーを、2軸押出し機(ZSK70,W&P)でブレンドおよびペレット化して、白色の均一な抗菌組成物を得た。ブレンド温度は、250〜260℃であった。得られた抗菌組成物の黄色度指数は25であった。
【0062】
実施例4
実施例3で得られた抗菌組成物を、3重量%の割合に従って、Sorona(登録商標)ポリマーペレットに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100)で混合した。次に、得られた混合物を、単軸押出し機(Donglong Plastics Machinery Co.,Ltd.,ChinaのSJ30)から直接250〜270℃で溶融紡糸した。冷却、伸張および加熱硬化後、抗菌フィラメントが得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、全ての細菌に対して99.99%に達した。
【0063】
比較例2
機械的粉砕工程を省いた以外は、実施例3と実質的に同じ方法で、抗菌組成物を製造した。得られた抗菌組成物の黄色度指数は64であった。抗菌フィラメントは、実施例4と同じ方法により上記したとおり製造した抗菌組成物から得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、それぞれ、90%、90%および25%であった。
【0064】
実施例5:抗菌組成物の製造
25kgのナイロン1010(DuPont Xingda Filaments Co.,Ltd.in Wuxiより供給)を、薄く切り、メカニカルミル(Shanghai Xichuang Powder Equipment Co.,Ltd.,のJCW616超微細ハンマーミル、3000rpm)によりパウダー(粒子サイズD50=5ミクロン)へと粉砕した。次に、Shanghai Runhe Nano Materials Sci.&Tech.Co.,Ltd.,の抗菌パウダーRHAを5kg、上述したパウダーに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100)で、周囲温度で混合した。得られた混合抗菌パウダーを、2軸押出し機(ZSK70,W&P)でブレンドおよびペレット化して、白色の均一な抗菌組成物を得た。ブレンド温度は、230〜250℃であった。得られた抗菌組成物の黄色度指数は19であった。
【0065】
実施例6
実施例5で得られた抗菌組成物を、3重量%の割合に従って、ナイロン1010チップに加え、ミキサー(KAYATA,Chinaより購入したSFS100)で混合した。次に、得られた混合物を、単軸押出し機(Donglong Plastics Machinery Co.,Ltd.のSJ30)から直接220〜280℃で溶融紡糸した。冷却、伸張および加熱硬化後、抗菌フィラメントが得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、全ての細菌に対して99.7%に達した。
【0066】
比較例3
機械的粉砕工程を省いた以外は、実施例5と実質的に同じ方法で、抗菌組成物を製造した。得られた抗菌組成物の黄色度指数は60であった。抗菌フィラメントは、実施例6と同じ方法により上記したとおり製造した抗菌組成物から得られた。抗菌試験を、得られた抗菌フィラメントに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)に対して、「Shake Flask Method」(ASTM E2149−2001)により実施した。抗菌効率は、これらの細菌に対して、それぞれ、99%、99%および70%であった。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の順番で、
(1)ポリマーを機械的に粉砕して、ポリマーパウダーを得る工程と、
(2)工程(1)で得た前記ポリマーパウダーを、抗菌剤とブレンドして、抗菌組成物を得る工程とを含み、前記抗菌剤が、銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体が充填されたホスフェートまたはガラスマイクロパウダーである、抗菌組成物を製造する方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、ナイロンポリエステルまたはこれらの組み合わせである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械的粉砕工程が、流動床ジェットミリング、水平ディスクジェットミリング、循環ジェットミリング、対向ジェットミリング、インパクトターゲットジェットミリング、ボールミリングまたはこれらの組み合わせにより実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーパウダーの粒子サイズD50が、1〜10ミクロンである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銀、亜鉛または銀−亜鉛複合体の前記充填量が、前記ホスフェートまたは前記ガラスマイクロパウダーの重量を基準として、0.1〜5重量%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ホスフェートが、立方晶系結晶リン酸ジルコニウム、層状リン酸ジルコニウムおよびリン酸ナトリウムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガラスマイクロパウダーの平均粒子サイズが、0.1〜30ミクロンである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗菌剤の量が、前記ポリマー100重量部を基準として、2〜40重量部である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を用いて製造された抗菌組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の前記抗菌組成物を含むブラシフィラメント。
【請求項11】
前記ブラシフィラメントが、PBTおよびクレイ添加剤を含み、波形の外観を有する請求項10に記載のブラシフィラメント。
【請求項12】
前記ブラシフィラメントの一端または両端が、化学的にティッピングされている請求項11に記載のブラシフィラメント。
【請求項13】
前記ブラシフィラメントがポリマーを含み、前記ポリマーが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612およびナイロン11からなる群から選択されるナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエステルである請求項10に記載のブラシフィラメント。
【請求項14】
抗菌効果oが、99%を超える請求項9に記載の抗菌組成物。

【公表番号】特表2013−508513(P2013−508513A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535451(P2012−535451)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054029
【国際公開番号】WO2011/056536
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(508073900)デュポン シンダ フィラメンツ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】