説明

抗血管新生ペプチド

本発明は、単離された抗血管新生ペプチドまたはその抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含む、ペプチドが長さ11ないし40アミノ酸でありおよび抗血管新生活性を有し、ペプチドがアミノ酸配列:X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14を含み、
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X2はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X3はArg、Lys、His、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X6はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Ile、Val、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Asp、Arg、His、Lys、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X11はSer、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X12はTrp、Tyr、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X13はLeu、Ile、Val、Asn、Glnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGlu、Gln、Asp、Asnのうちのアミノ酸残基である、
医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血管新生ペプチド、特に抗血管新生性を有する傾斜ペプチド、および抗血管新生性を有するプロラクチン/成長ホルモンファミリーに由来するペプチドに関する。
【0002】
血管新生は、既存のものからの毛細血管形成の過程であり、正常な増殖および組織修復に必須である。しかし、過剰な血管新生は関節リウマチ、糖尿病性網膜症、またはがん(血管新生関連疾患)といった多数の疾患に関与していることが示されており、および血管新生の阻害剤の使用はこれらの場合での有望な治療処置と思われる(いわゆる抗血管新生療法)。先端技術では、プロラクチンの16kDa N末端断片(16K PRL)が、腫瘍増殖に必須である新たに形成された血管の破壊を目指す抗腫瘍療法のための強力な薬剤であることが示された。ヒトプロラクチン/成長ホルモンファミリーの他のメンバーのN末端16K断片、すなわち16K成長ホルモン(16K hGH)、16K成長ホルモン変異体(16K hGH−V)および16K胎盤ラクトゲン(16K hPL)もまた血管新生を阻害する一方、対照的に、完全長ホルモンは毛細血管形成を刺激する(ストルマン(Struman),I.,他 Proc Natl Acad S(ストルマン(Struman),I.,他 Proc Natl Acad Sci U S A 96:1246−51 (1999))。
【背景技術】
【0003】
血管新生は、増殖および組織修復といった正常な過程の必須な要素である(コンウェイ(Conway),E.M.,他 Cardiovasc Res 49:507−21.(2001))(フォークマン(Folkman),J.Semin Oncol 28:536−42.(2001))。血管新生はまた、一般に血管新生疾患と呼ばれる多数の病理状態の発生に関与する。血管新生疾患に繋がる病理状態の例は、特に、関節炎、糖尿病性網膜症、乾癬、肥満および がん である(カーメリエト(Carmeliet),P.Nat Med 9:653−60 (2003))。後者の場合には、新しい毛細血管の形成は、原発腫瘍の増殖にだけでなく、転移の拡散にも必須である(フィドラー(Fidler),I.J.Nat Rev Cancer 3:453−8 (2003))。
【0004】
近年、血管新生阻害剤の探索が活発に行われている。現在、トロンボスポンジン、血小板第4因子、アンジオスタチン、エンドスタチン、フマギリンおよびサリドマイドを含むいくつかの血管新生阻害剤が研究されている。これらのうちいくつか、たとえばフマギリンおよびサリドマイドは、臨床試験中である。
【0005】
また近年、新規の抗血管新生因子の、プロラクチンの16kDa N末端断片(ヒト16Kプロラクチンまたは16KhPRL)が同定されている。16K hPRLはin vitro および in vivoの両方で抗血管新生性を示すことが明らかにされた(フェラーラ(Ferrara),N.,他 Endocrinology 129:896−900 (1991)、クラップ(Clapp),C.,他 Endocrinology 133:1292−9.(1993)、リー(Lee),H.,他 Endocrinology 139:3696−703 (1998))。16K hPRLは内皮細胞増殖を阻害し、およびそれらのアポトーシスを誘導する(ダンジェロ(D’Angelo),G.,他 Proc Natl Acad Sci U S A 92:6374−8 (1995)、ダンジェロ(D’Angelo),G.,他 Mol Endocrinol 13:692−704 (1999)、マーティニ(Martini),J.F.,他 Mol Endocrinol 14:1536−49.(2000))。実際、BEC(脳内皮細胞)の組み換え16Kプロラクチンでの処理は、BECにおけるDNA断片化を、時間および用量に依存的な形で増加させる(Martini,J.F.,他 Mol Endocrinol 14:1536−49.(2000))。16Kプロラクチンに誘導されるアポトーシスは、カスパーゼ1および3の迅速な活性化、およびBcl−Xのアポトーシス促進形への変換の増加と相関する。さらに、NF−(Bシグナル伝達経路が16KhPRLのBECにおけるアポトーシス作用の媒介に関与することが割り出された。用量依存的な形で、16KhPRLでの処理はIkB−a分解を誘導し、NF−kBの核への移行およびレポーター遺伝子活性化を可能にする。分解不能なI(B−(変異体の過剰発現またはNF−(B阻害剤での処理によるNF−(B活性化の阻害は、16KhPRL誘導性アポトーシスを阻害する。16KhPRLでの処理は、イニシエーターのカスパーゼ8および9およびエフェクターのカスパーゼ3を活性化し、そのすべてが内皮細胞アポトーシスを誘導するのに必須である。カスパーゼカスケードの16KhPRLによる活性化はまた、NF−(B依存性である(タブリュン(Tabruyn)、S.P.、他Mol Endocrinol 17:1815−23(2003))。16K hPRLは、G1−S および G2−M 相の両方で細胞周期停止を誘導することによって増殖を阻害することが示された(タブリュン(Tabruyn)他,Mol Endocrinol,19,1932−1942 (2005))。
【0006】
近年の文献では、16KhPRLによる血管新生の阻害は、皮下に移植されたヒト結腸腫瘍の増殖をマウスにおいて防げることが開示された(ベンツィエン(Bentzien),F.,他 Cancer Res 61:7356−62.(2001))。より近年、16K hPRLの発現をin situで可能にするアデノウイルスベクターが作製された。さらに、16K hPRLが血管新生を網膜症のマウスモデルにおいて防ぐ能力が評価された(レイスラー(Raisler),B.J.,他 Proc Natl Acad Sci U S A 99:8909−14.(2002))。結果は、アデノウイルス媒介遺伝子導入によってin situで産生された16K hPRLがマウス網膜において血管増殖を阻害することを示す(パン(Pan)他,Invest Ophthalmol Vis Sci 45(7): 2413−2419 (2004)。総合すると、これらの結果は、16K hPRLは腫瘍増殖に必須の新たに形成された血管の破壊を通じて作用を行う抗腫瘍療法のための薬剤として使用されうることを示唆した。
【0007】
ヒトプロラクチン/成長ホルモンファミリー(PRL/GHファミリー)の他のメンバーのN末端16K断片、すなわち16K成長ホルモン(16KhGH)、16K成長ホルモン変異体(16KhGH−V)および16K胎盤ラクトゲン(16KhPL)もまた血管新生を阻害する一方、対照的に、完全長ホルモンは毛細血管形成を刺激することが示された(ストルマン(Struman),I.,他 Proc Natl Acad Sci U S A 96:1246−51 (1999))。したがって、16K断片の中で,抗血管新生活性を担う領域を特定すること、およびこれらの領域が完全長タンパク質の中に含まれている際には何故不活性であるのかを理解することが重要と思われた。
【0008】
最先端のポリペプチドの不利益は、より長いポリペプチドは製造が困難でありおよび精製が困難である点であった。さらなる問題は、不安定性および医薬組成物への導入に関する問題によるものであった。
【0009】
本発明の目的は、製造、精製および取り扱いがより容易である、抗血管新生活性を有する有効なペプチドを同定および提供することであった。さらなる目的は、抗血管新生活性を有するそのようなペプチドを含む医薬組成物を提供することであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、単離された抗血管新生ペプチドまたはその抗血管新生ペプチド組み換えタン パク質を含む、ペプチドが長さ11ないし40アミノ酸でありおよび抗血管新生活性を有し、 前記ペプチドがアミノ酸配列:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13 −X14
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X2はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X3はArg、Lys、His、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X6はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Ile、Val、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Asp、Arg、His、Lys、Asnのうちのアミノ酸残基で ある;
X11はSer、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X12はTrp、Tyr、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X13はLeu、Ile、Val、Asn、Glnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGlu、Gln、Asp、Asnのうちのアミノ酸残基である、
(配列番号21)
を含む医薬組成物によって解決された。
【0011】
好ましい一実施形態では、抗血管新生ペプチドは、好ましくは長さ11ないし20アミノ酸であり、11ないし16がより好ましく、および11ないし14が非常に好ましい。抗血管新生ペプチドは、11、12または13アミノ酸残基の短さでありうる。驚くべきことに、発明者らは、そのような低分子ペプチドがなお強力な抗血管新生活性を有することを見出している。これらのペプチドの利点は、それらが抗血管新生活性を有する有効な、また製造、精製および取り扱いがより容易なペプチドである点である。本発明はまた、前記抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を提供する。この場合、組み換えタンパク質の抗血管新生ペプチドの範囲でない部分は、抗血管新生ペプチドのキャリヤーの役割を果たす。抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質の例としては、抗血管新生ペプチドが遺伝子組み換え法によってい融合されたマルトース結合タンパク質MBPを挙げることができる。
【0012】
本発明はしたがって、単離された抗血管新生ペプチドまたはその抗血管新生ペプチド組み換えタンパク質を含む、ペプチドが長さ11ないし40アミノ酸でありおよび抗血管新生活性を有し、ペプチドが下記の アミノ酸 配列の11ないし14の連続する アミノ酸残基を含む:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X2はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X3はArg、Lys、His、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X6はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Ile、Val、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Asp、Arg、His、Lys、Asnのうちのアミノ酸残基で ある;
X11はSer、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X12はTrp、Tyr、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X13はLeu、Ile、Val、Asn、Glnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGlu、Gln、Asp、Asnのうちのアミノ酸残基である (配列番号 21)
医薬組成物を提供する。
【0013】
このことは、抗血管新生ペプチドが14アミノ酸残基よりも短い場合は、ペプチドは、X1−X11、X1−X12、X1−X13、X2−X12、X2−X13、X2−X14、X3−X13、X3−X14およびX4−X14由来の上記の範囲を対象とすることを意味する。
【0014】
別の好ましい実施形態では、ペプチドは下記の通り定義される:
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはPhe、Leuである;
X2はLeuのアミノ酸残基である;
X3はArg、Seのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはIle、Serである;
X6はLeu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Serのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはIle、Leuである;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはLeu、Ileである;
X10はGln、Glu、Argのうちのアミノ酸残基である;
X11はSerのアミノ酸残基である;
X12はTrpのアミノ酸残基である
X13はLeu、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGluのアミノ酸残基である
(配列番号22)。
【0015】
さらに別の好ましい実施形態では、ペプチドは下記の通り定義される:
X1はLeu、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X2はLeuのアミノ酸残基である;
X3はArg、Seのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X5はSer、Ileのうちのアミノ酸残基である;
X6はLeu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Serのうちのアミノ酸残基である;
X8はLeu、Ileのうちのアミノ酸残基である;
X9はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Argのうちのアミノ酸残基である;
X11はSerのアミノ酸残基である;
X12はTrpのアミノ酸残基である
X13はLeu、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGluのアミノ酸残基である
(配列番号23)。
【0016】
これらの配列は、プロラクチン/成長ホルモンファミリーの傾斜ペプチドの配列およびその相同誘導体を含む。好ましくは、ペプチドのアミノ酸配列X1−X14は、少なくとも71%、好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも85%および非常に好ましくは少なくとも92%同一性を、下記の配列のうち一つに対して有し:
a)Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1);
b)Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2);
c)Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3);置換されたアミノ酸残基は相同なアミノ酸残基によって置換される。これらの配列は、プロラクチン/成長ホルモンファミリーの傾斜ペプチドの配列およびその相同誘導体を含む。相同なアミノ酸残基とは、疎水性、極性、電荷、立体構造特性に関して類似の性質を有するアミノ酸残基である。好ましくはペプチドは傾斜ペプチドである。「相同性」の語は下記でさらに説明および定義される。
【0017】
別の好ましい一実施形態では、ペプチドのアミノ酸配列X1−X14は、傾斜ペプチドを表す。好ましくは、傾斜ペプチドの計算平均疎水性が0.1より高く、および傾斜ペプチドが、ペプチドの三次元構造がアルファ−へリックスとして配置されるならばペプチドの計算疎水性アイソポテンシャルが非対称でありおよび計算最小エネルギー立体配座が疎水性/親水性界面方向でありおよび、へリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が30°ないし70°であるという特徴によって定義される。好ましい一実施形態では、傾斜ペプチドの計算平均疎水性が0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.5より高く、より好ましくは0.8より高く、および非常に好ましくは0.9より高い。
【0018】
さらに、傾斜ペプチドのへリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が35°ないし65°、好ましくは40°ないし60°、および非常に好ましくは40°ないし50°であることが好ましい。より近いペプチドのヘリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の角度が45°に向けてより近づく傾向がある、ペプチドの抗血管新生活性がより高くなる。
【0019】
目的はまた、上記に定義される血管新生ペプチドを含むか、または抗血管新生ペプチドをコードするかまたは該血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物によっても解決される。
【0020】
本発明の目的はまた、下記の物質のうち一つ以上を含む医薬組成物によっても解決される:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH,hGH−v) を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL) を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
e)a)からd)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基で置換されているペプチド;
f)a)からe)のペプチド配列のうちいずれか一つを含む組み換えタンパク質;
g)a)からe)のうちいずれか一つの抗血管新生ペプチドをコードするかまたはf)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
a)からd)において配列同一性番号の後の略語はペプチドの起源を示す。
【0021】
目的はまた、上記に定義されるペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドを含む医薬組成物によっても解決される。
【0022】
さらに本発明は、配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド;または
前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む医薬組成物を提供する。驚くべきことに、配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有するペプチドは、組み合わせると、ペプチドが単独で用いられた場合よりも強い抗血管新生作用を有したことが示された。好ましくは、ペプチドは、前記ペプチド配列を含む組み換えタンパク質であるキャリヤータンパク質と融合される。二つの選択肢が可能である:一種類のペプチドを有する組み換えタンパク質が提供するか、または両方の抗血管新生ペプチドを有する組み換えタンパク質がある。後者の場合では、抗血管新生ペプチドは直接隣接して融合されているかまたはリンカー配列によって分離されている。
【0023】
好ましい実施形態では、上記のアミノ酸配列X1−X14、またはペプチド(抗血管新生ペプチド)またはペプチドを含む組み換えタンパク質は、それぞれ三量体構造を形成する。ペプチドまたはペプチドを含む組み換えタンパク質の三量体組織は、それぞれ抗血管新生活性を維持するのに重要である。
【0024】
本発明の目的はまた、
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
c)a)またはb)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%、および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;
d)a)からc)のペプチド配列を含む組み換えタンパク質;
e)a)からc)の抗血管新生ペプチドをコードするかまたはd)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
:の群から選択されるペプチドによっても解決される。
【0025】
hPRL配列では、二種類の傾斜ペプチドが同定されてきた(配列番号3および8)。実施例8.3および8.4に示す通り、16K hPRLの第2の傾斜ペプチド領域も、16K hPRLの抗血管新生活性において役割を果たす。16K PRLは、その二種類の傾斜ペプチド領域中で変異し、およびMBPとの融合中に産生される。このタンパク質は、MBP−16KhPRLmut PO 1+2と呼ばれる。カスパーゼ3の活性化を誘導するMBP−16K hPRLおよびMBP−16KhPRLmut PO +2の能力が、図17のパネルBに示される。ABAE細胞をMBP−16KhPRLmut PO 1+2で処理した場合、MBP−16KhPRLとの比較で、カスパーゼ3の活性化は無くなる。これらの結果は、両方の傾斜ペプチド領域が16K hPRLの抗血管新生活性に必要であることを示す。
【0026】
本発明は、配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド、または前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む組成物をさらに提供する。
【0027】
さらに目的は、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための、上記のペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドの使用によって解決される。
【0028】
目的は、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための、下記の物質のうち一つ以上の使用によって解決される:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH、hGH−v)を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
e)配列 Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met Leu Gly Ser Ala Met Ser (配列番号5)(プリオン)を有するペプチド;
f)配列 Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala (配列番号6)(β−アミロイド)を有するペプチド;
g)配列 Gly Val Phe Val Leu Gly Phe Leu Gly Phe Leu Ala (配列番号7)(SIV融合タンパク質)を有するペプチド;
h)下記の配列のうちいずれか一つを有するペプチド:
Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val (配列番号24)(β−アミロイド)、
Ala Val Gly Ile Gly Ala Leu Phe Leu Gly Phe Leu (配列番号25)(HIV)、
Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly (配列番号26)(Prp106−126(プリオン))、
Phe Ala Gly Val Val Leu Ala Gly Ala Ala Leu Gly (配列番号27)(麻疹ウイルス)、
Phe Ile Gly Ala Ile Ile Gly Ser Val Ala Leu Gly Val Ala Thr Ala Ala Gly (配列番号28)(NDV)、
Phe Leu Gly Phe Leu Leu Gly Val Gly Ser Ala Ile Ala Ser Gly Val Ala (配列番号29)(ラウス肉腫ウイルス)、
Phe Phe Gly Ala Val Ile Gly Thr Ile Ala Leu Gly Val Ala Thr Ser Ala (配列番号30)(センダイウイルス)、
Ser Pro Val Ala Ala Leu Thr Leu Gly Leu Ala Leu (配列番号31)(BLV)、
Gly Pro Val Ser Leu Thr Leu Ala Leu Leu Leu Gly Gly Leu Thr Met Gly (配列番号32)(MLV)、
Gly Ala Ala Ile Gly Leu Ala Trp Ile Pro Tyr Phe Gly Pro Ala Ala Glu (配列番号33)(エボラ)、
Met Leu Leu Gln Ala Phe Leu Phe Leu Leu Ala Gly Phe Ala Ala Lys Ile Ser Ala (配列番号34)(酵母インベルターゼSP)、
Arg Pro Ala Leu Leu Ala Leu Leu Ala Leu Pro Ala (配列番号35)(アポB100SP)、
Val Thr Val Val Leu Trp Ser Ala Tyr Pro Val Val Trp Leu Ile Gly (配列番号36)(1bct 177)、
Gly Ala Gly Ile Val Pro Leu Asn Ile Glu Thr Leu Leu Phe Met Val Leu Asp (配列番号37)(1bct 195)、
Ile Lys Lys Ala Gly Thr Glu Leu Val Asn Phe Leu Ser Tyr Phe Val Glu Leu (配列番号38)(アポA−II)、
Ala Ser Leu Leu Ser Phe Met Gln Gly Tyr Met Lys His Ala Thr (配列番号39)(アポC−III)、
Phe Gly Phe Pro Glu His Leu Leu Val Asp Phe Leu Gln Ser Leu Ser (配列番号40)(CETP)、
Asp Phe Phe Thr Ile Trp Leu Asp Leu Asn Met Phe Leu (配列番号41)(LCAT)、
Phe Leu Glu Leu Tyr Arg His Ile Ala Gln His Gly Phe (配列番号42)(HLP)、
Ile Gly Glu Ala Ile Arg Val Ile Ala Glu Arg Gly Leu (配列番号43)(LPL)、
Gly Leu Phe Gly Ala Ile Ala Gly Phe Ile Glu Asn Gly Trp Glu Gly Met Ile Asp Gly (配列番号44)(インフルエンザHA−2)、
Met Glu Asn Ile Thr Ser Gly Phe Leu Gly Pro Leu Leu Val Leu Gln (配列番号45)(B型肝炎、Sタンパク質)、
Thr Glu Leu Val Asn Phe Leu Ser Tyr Phe Val Glu Leu (配列番号 46) (ヒト・アポA−II サカシンP)、
Val Ile Gly Thr Asn Ala Val Ser Ile Glu Thr Asn Ile Glu (配列番号47)(メルトリン)、
Asp Ser Thr Lys Cys Gly Lys Leu Ile Cys Thr Gly Ile Ser Ser Ile Pro (配列番号 4) (Fertiline)、
Ala Ser Leu Leu Ser Phe Met Gln Gly Tyr Met Lys His Ala Thr (配列番号13)(アポC−III)、
i)a)からh)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;
j)a)からi)のペプチド配列のうちいずれか一つを含む組み換えタンパク質;
k)a)からi)のうちいずれか一つの抗血管新生ペプチドをコードするかまたはj)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
a)からh)での配列識別番号に続く略語は、ペプチドの起源を示す。ペプチドは、下記の従来技術に記載されてきた:配列番号5ないし7、24、25、27ないし43、リンス(Lins),L.他, Proteins 44, 435−447 (2001); 配列番号13、リンス(Lins),L.他, Proteins Eng. 15, 513−520 (2002); 配列番号26、デュピエルー(Dupiereux),I.他, Biochem. Biophys. Res. Commun., 331, 894−901 (2005); 配列番号4、44ないし47、ブラッスール(Brasseur), R. Mol. Membr. Biol. 17, 31−40 (2000)。「血管新生関連疾患」の語は、たとえば関節リウマチ、糖尿病性網膜症またはがんといった疾患のことをいう。
【0029】
本発明は、配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド、または前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたはまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
を含む組成物を提供する。
【0030】
目的はまた、上記に記載のペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドの治療上有効な用量が患者に投与される、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための方法によっても解決される。
【0031】
目的はまた、
a)抗血管新生性を有しおよび11〜20アミノ酸の長さを有する傾斜ペプチド;
b)a)のペプチドを含む組み換えタンパク質;
c)a)のペプチドまたはb)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
:の群から選択される物質を含む医薬組成物によっても解決される。
【0032】
好ましい一実施形態では、ペプチドの計算平均疎水性が0.1より高く、および傾斜ペプチドが、ペプチドの三次元構造がアルファ−へリックスとして配置されるならばペプチドの計算疎水性アイソポテンシャルが非対称でありおよび計算最小エネルギー立体配座が疎水性/親水性界面方向でありおよび、へリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が30°ないし70°であるという特徴によって定義される。
【0033】
別の好ましい一実施形態では、ペプチドの計算平均疎水性が0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.5より高く、さらにより好ましくは0.8より高くおよび非常に好ましくは0.9より高い。
【0034】
さらに、ペプチドのへリックス軸と、疎水性相および親水性相の界面平面との間の計算角度が35°ないし65°、好ましくは40°ないし60°、および非常に好ましくは40°ないし50°であることが好ましい。
【0035】
目的はまた、単離された抗血管新生ペプチドまたは抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、ペプチドが傾斜ペプチドでありおよびプロラクチン(PRL)−成長ホルモンファミリー(GH)のタンパク質に由来する医薬組成物によっても解決される。傾斜ペプチドを定義する特性は、上記に定義されている。代替的な実施形態では、前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたは前記抗血管新生を含む組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、ペプチドが傾斜ペプチドでありおよびプロラクチン(PRL)−成長ホルモンファミリー(GH)のタンパク質に由来する、医薬組成物が提供されている。
【0036】
別の一実施形態では、単離された抗血管新生ペプチドまたは抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)−成長ホルモンファミリー(GH)のタンパク質に由来しおよび下記の配列のうちいずれか一つを有する、医薬組成物が提供されている:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH、hGH−v)を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド。
【0037】
特に好ましい実施形態では、単離された抗血管新生ペプチドまたは抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)タンパク質に由来し、抗血管新生ペプチドまたはその配列がそれぞれ、下記の配列のうちいずれか一つを有する、医薬組成物が提供されている:
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号 3) (hPRL) を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号 8) (hPRL)を有するペプチド。
【0038】
本発明は、二種類の単離された抗血管新生ペプチドまたは前記抗血管新生ペプチドを別々にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)タンパク質に由来しおよび下記の配列を有する、医薬組成物をさらに提供する:
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド。
【0039】
好ましい一実施形態では、上記のペプチドは医薬組成物中に含まれる。そのような医薬組成物は、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のために用いられる。さらに、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための前記ペプチドまたは前記組み換えタンパク質または前記ポリヌクレオチドの使用が提供されている。本発明はまた、ペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドの治療上有効な用量が患者に投与されることを特徴とする血管新生関連疾患の予防および/または治療処置方法も提供する。「血管新生関連疾患」の語は、たとえば関節リウマチ、糖尿病性網膜症またはがんといった疾患をいう。
【0040】
本発明は、PRL/GH16K断片活性を模倣する抗血管新生ペプチドの探索によって達成された。ペプチドの設計は、新規生物活性分子の開発のための強力な手法にあたる。血管新生の分野では、多数の阻害剤が実際自身は抗血管新生性でない内因性分子の、意味不明の断片である;これは、特に、16K hPRL、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)(オライリー(O’Reilly),M.S.,他 Cell 88:277−85.(1997))、アンジオスタチン(プラスミノーゲン断片)( オライリー(O’Reilly),M.S.,他 Cell 79:315−28.(1994))について当てはまる。近年、血管新生を阻害するいくつかの合成ペプチドが同定されている。これらのペプチドは、任意に分子をより短いペプチドへ分解することによって(マエシマ(Maeshima),Y.,他 J Biol Chem 276:31959−68 (2001))、またはファージディスプレイスクリーニングによって(ヘチアン(Hetian),L.,他 J Biol Chem 277:43137−42 (2002))得られている。より低頻度に、より理論的な構造的手法が用いられた(セブチ(Sebti),S.M.およびハミルトン(Hamilton),A.D.Oncogene 19:6566−73 (2000))。この手法を用いて、アンジネックス(Anginex)ペプチドが、いくつかの抗血管新生因子:PF4(血小板第4因子)、IL−8(インターロイキン−8)およびBPI(殺菌性透過性増大タンパク質)について実施された比較構造分析に基づいて設計された(グリフェン(Griffioen),A.W.,他 Biochem J 354:233−42 (2001))。
【0041】
治療上の観点から、ペプチドを用いる利点はむしろ低いと思われる:ペプチドは、より短い半減期およびより弱い活性を示す。しかし血管新生の分野では、いくつかのペプチドの活性は、親分子の活性と類似しおよびより高くさえもあることが示された(グリフェン(Griffioen),A.W.,他 Biochem J 354:233−42 (2001))(セブチ(Sebti),S.M.およびハミルトン(Hamilton),A.D.Oncogene 19:6566−73 (2000))。さらに、ペプチドは、より容易に作製されるという利点を示す。アンジオスタチン、エンドスタチンまたは16K hPRL様の多数の抗血管新生タンパク質断片が通常作製するのが非常に困難なため、これは重要な問題である。
【0042】
傾斜ペプチド(または斜め方向ペプチド[PO])は、分子モデリングによって約15年前に発見された(ブラッスール(Brasseur),R.J Biol Chem 266:16120−7 (1991))。それらは疎水性残基の非対称な分布を有するらせん構造を取る短いタンパク質断片(10から20アミノ酸)である。それらの疎水性勾配を満足するために、これらのペプチドは、脂質/水界面のような疎水性/親水性界面と相互作用する際には斜め方向を取る(ブラッスール(Brasseur),R.Mol Membr Biol 17:31−40 (2000))。この斜角は、それらが入れられた系を不安定化するのを可能にし、およびそれらが属するタンパク質の機能に潜在的な役割を示す(リンス(Lins),L.,他 Protein 44:435−47 (2001))。一方、この不安定化活性を通じて、これらのペプチドの大部分はリポソーム 融合をin vitroで誘導する(マーティン(Martin),I.,他 Biochem Biophys Res Commun 175:872−9 (1991)、ピロット(Pillot),T.,他 J Biol Chem 271:28757−65 (1996)、ピロット(Pillot),T.,他 J Mol Biol 274:381−93 (1997)、リンス(Lins),L.,他 Proteins Eng 15:513−20 (2002))。疎水性分布およびしたがってペプチドの斜め方向を改変する変異は、ペプチドの融合誘発能力を改変する。これらのペプチドのうち一部については、融合誘発が完全長タンパク質について実施されている;結果は、ペプチドの活性およびタンパク質の機能における疎水性勾配の重要性を確認した(ホース(Horth),M.,他 Embo J 10:2747−55 (1991)、タルムド(Talmud),P.,他Protein Eng 9:317−21 (1996)、 Lins,L.,他Protein Eng 15:513−20 (2002))。
【0043】
傾斜ペプチドは、さまざまな機能を示す多数の異なるタンパク質に発見されている。たとえば、傾斜ペプチドは、ウイルス融合タンパク質に(ホース(Horth),M.,他 Embo J 10:2747−55 (1991)、ボネチェ(Voneche),V.,他 J Biol Chem 267:15193−7 (1992)、エパンド(Epand),R.F.,他 Biochem Biophys Res Commun 205:1938−43 (1994))、β−アミロイドペプチドに(ピロット(Pillot),T.,他 J Biol Chem 271:28757−65 (1996))、シグナルペプチド、脂質輸送タンパク質に(ブラッスール(Brasseur),R.,他 Trends Biochem Sci 22:167−71 (1997))、およびプリオンタンパク質に(ピロット(Pillot),T.,他 J Mol Biol 274:381−93 (1997))に見出されている。近年、脂質二重層における傾斜ペプチドの存在が、中性子回折によって実証されている(ブラッドショー(Bradshaw),J.P.,他 Biochemistry 39:6581−5 (2000))。
【0044】
本発明は、抗血管新生療法に使用されうる、16K断片に由来するペプチドを提供する。本発明者らは、傾斜ペプチドの特徴を有する領域が、PRL/GH構造に埋め込まれていて、16K断片では露出され、および16K断片の活性を担うと仮定した。さらに、発明者らは、この領域は活性になるためには適当な方法で提示されなければならないと提案する。そのような方法は、16K hPRLによって達成されうる。この場合には、16K hPRLは完全長hPRLとは異なりおよび三量体構成によって特徴付けられる新しい三次元構造を取る。この構造は、傾斜ペプチド領域の露出を可能にする。別の方法は、この領域をマルトース結合タンパク質(MBP)と融合することである。MBPは、傾斜ペプチド領域の適当な提示を可能にする。いかなる理論にも縛られず、16K hPRLタンパク質断片中の三量体構成はまた、本発明に記載のペプチドにも当てはまる。
【0045】
分子モデリングを用いて、本発明者らはPRL/GH16K断片内に、露出されやすくおよび「傾斜ペプチド」構造を取りやすい領域を同定した。傾斜ペプチド(または斜め方向ペプチド)は、脂質/水界面のような疎水性/親水性界面と相互作用する際に斜め方向を取る短いタンパク質断片(長さ10から20アミノ酸)である。本発明者らは、16Kプロラクチンの傾斜領域を含む合成ペプチドを得て、およびこのペプチドが傾斜ペプチドの性質であるリポソーム融合をin vitroで誘導することを示した。発明者らは、マルトース結合タンパク質(MBP)と融合された16K hPRLの傾斜ペプチドすなわちMPB−PO−PRLをコードする発現ベクターを構築し、およびこの融合タンパク質が16KhPRLの活性と同様の活性で内皮細胞のアポトーシスを誘導することを実証した。対照として、発明者らは未変化のMBPタンパク質、および疎水性分布およびしたがってペプチドの傾き方向を改変すると予測される変異を含む16KhPRLの変異傾斜ペプチドと融合されたMBPすなわちMBP−POmut−PRLを作製した。両方の対照は内皮細胞のアポトーシスの誘導においては不活性であった。同様の結果が、hGHの傾斜ペプチドと融合されたMBPについて得られた。
【0046】
これらの結果に基づいて、発明者らは、傾斜ペプチドは、16K断片内にあり抗血管新生活性を担いうる領域であることを提案する;この領域は完全長ホルモン中に隠れている(およびしたがって不活性である)が、16K断片中では接近できると仮定される。同様の領域は、タンパク質断片でもある血管新生の他の阻害剤の活性を担うことがさらに提案される。発明者らは、MBPおよび機能が血管新生に関係ないタンパク質の公知の傾斜ペプチドβ−アミロイドBタンパク質およびSIVウイルスの融合タンパク質も作製した。これらのうち後者は血管新生も阻害するが、16K断片といった抗血管新生分子由来の傾斜ペプチドから成る融合よりも高濃度で阻害する。
【0047】
本発明は、血管新生を阻害でき、およびがん、網膜症および乾癬といった血管新生関連疾患の処置のために用いられうるペプチドを設計しおよび作製する方法を提供する。治療上の観点から本発明者らは、ここでは、さもなければ作製が困難な抗血管新生断片、すなわちエンドスタチンまたは16K hPRLの活性立体配座における作製のための方法を実証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、血管新生を阻害する能力を有する新規の種類の分子を提供する。これらの分子をここでは「抗血管新生傾斜ペプチド」という。
【0049】
「抗血管新生傾斜ペプチド」の語は好ましくは、PRL/GHファミリーの傾斜領域のアミノ酸で構成されるペプチドをいう。「PRL/GHファミリーの傾斜領域」の語は、hPRL中のPhe80からGlu93までの配列およびhGH、hGH−VおよびhPL中のLeu75からGlu88までの配列をいう。より好ましくは「抗血管新生傾斜ペプチド」の語は図1に示されるペプチドをいう。
【0050】
「抗血管新生ペプチド」の語は、血管新生を阻害できるペプチドをいう(フォークマン(Folkman),J.Semin Cancer Biol 13:159−67 (2003))。ペプチドは、内皮細胞アポトーシスを誘導および/または内皮細胞増殖を阻害および/または内皮細胞移動を阻害できるならば抗血管新生性と考えられる。
【0051】
「傾斜ペプチド」の語は、傾斜していると考えられるペプチドをいう。傾斜ペプチドは、(ブラッスール(Brasseur),R.Mol Membr Biol 17:31−40 (2000))に記載された分子モデリングの手順を用いて検出されうる。要約すると、ペプチドは下記の性質を示すならば傾斜していると考えられる:ペプチドが長さ10から20アミノ酸である;平均疎水性(アイセンバーク(Eisenberg)共通尺度によって計算される)が0.1より高い。配列に沿った疎水性はイエーニッヒ(Jahnig)および疎水性クラスター分析法(ガボリアード(Gaboriaud),C.,他 FEBS Lett 224:149−55 (1987)、ヤーニッヒ(Jahnig),F.Trends Biochem Sci 15:93−5 (1990))といった異なる方法を用いて計算される。ペプチドが(へリックスとして構築される場合、へリックス軸と界面平面との間の角度は30°ないし70°である。最小エネルギー立体配座は疎水性/親水性界面方向である。分子疎水ポテンシャルが計算されおよび疎水性アイソポテンシャルエンベロープは非対称である。傾斜ペプチドの特性は、リポソーム融合をin vitro実験において誘導することである。
【0052】
「抗血管新生傾斜ペプチド」の語も、PRL/GHファミリーの傾斜領域のアミノ酸配列から成るより短いか、より長いか、または改変されたペプチドであるが、傾斜していると考えられる改変されたペプチドも含む。「抗血管新生傾斜ペプチド」という語はまた、傾斜特性が維持される限り、自然発生型および非自然発生型アミノ酸を含むがそれに限らない天然アミノ酸の他の分子との置換を含む、任意のアミノ酸の置換を伴うペプチド下記を含む。
【0053】
本発明は、組み換え技術手法を用いた抗血管新生傾斜ペプチドの作製のための方法をを提供する。1nMないし1μM、より好ましくは20ないし200nMの範囲の濃度で用いられるペプチドは、内皮細胞のアポトーシスを誘発できる。この方法は、たとえば「マルトース結合タンパク質」(MBP)といったキャリヤーポリペプチド/タンパク質と融合される傾斜ペプチドの作製に存在する。
【0054】
血管新生、血管新生条件および血管新生疾患。血管新生を阻害できる本発明のペプチドおよびそれらの医薬組成物および調製物それぞれは、血管新生に関連するか結果として生じるかまたは由来する任意の疾患または状態を予防するかまたは処置するために有用である。そのような疾患は、特に、悪性腫瘍の形成、血管線維腫、動静脈奇形、関節リウマチといった関節炎、アテローム動脈硬化性斑、角膜移植片新血管形成、遅延した損傷治癒、糖尿病性網膜症といった増殖的網膜症、黄斑変性、血友病関節で発生する粒状化といった粒状化、肥大した瘢痕またはケロイド瘢痕といった損傷治癒における不適切な血管新生、血管新生緑内障、眼腫瘍、ブドウ膜炎、癒着不能骨折、Osier−Weber症候群、乾癬、化膿性緑内障、水晶体後繊維増殖症、硬皮症、固形がん、カポジ肉腫、トラコーマ、血管癒着、慢性静脈瘤性潰瘍、白血病、および小胞および黄体嚢胞および絨毛膜がん腫といった生殖障害を含む。
【0055】
それらの抗血管新生活性を考えれば、本発明のペプチドは、腫瘍の血管新生の選択的阻害、腫瘍の大きさの減少および腫瘍の除去を含む、哺乳類の細胞増殖および血管新生に依存する組織を阻害する方法における使用にも適している。血管新生を受けた腫瘍の例は、血管線維腫、動静脈奇形、眼腫瘍、すべての固形がん、カポジ肉腫、トラコーマおよび絨毛膜がん腫を含むがそれらに限定されない
【0056】
本発明のペプチドは、胎盤の脈管構造の発生を評価しおよび/または調節するのに用いてもよい。妊娠の二種類の障害、子癇前症および子宮内成長遅滞は、脈管発生の障害と関係しているため、胎盤血管新生の調節は重要な臨床的意味を有する。妊娠が深刻に危くなる前にこれら障害の発生を予測する臨床試験は存在しない。本発明のペプチドは、避妊薬としても用いられうる。
【0057】
本発明のペプチドの製造
本発明のペプチドは、たとえば、合成でき、精製された完全長ホルモンから調製でき、または組み換え法および本分野で公知である方法を用いて製造されうる。それらの調製のための具体的方法がここで記載されるが、これらのペプチドの製造に適したすべての適当な方法が本発明の範囲内に入ることが意図されることが理解される。
【0058】
一般的に、これらの方法は、本発明のペプチドのそれぞれをコードおよび発現する原核および真核ベクターの構築を可能にする、DNAおよびタンパク質配列決定、クローニング、発現および他の組み換え工学法を含む。
【0059】
一形態では、本発明のペプチドは、ヒト下垂体または血漿からの未変化の成長ホルモンのおよび胎盤ラクトゲンおよび成長ホルモン変異体hGH−Vの単離によって便利に得られる。単離された未変化のホルモンは、さまざまな程度にグリコシル化および切断されうる。
【0060】
別の形態では、ペプチドはBiotechnology and Applied Biochem.,12:436 (1990)に記載の方法にしたがってまたは『分子生物学最新プロトコル』(Current Protocols in Molecular Biology)、アウスベル(Ausubel,F.M.)他編、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons)ニューヨーク(1987)に記載の方法によって、ペプチド合成によって調製されうる。
【0061】
本発明のペプチドは、目的のペプチドをコードする核酸の発現によって、または、核酸によってコードされたより長さの長いポリペプチド切断によって、作製されうる。コードされたポリペプチドの発現は、細菌、酵母、植物、昆虫または哺乳類宿主中において本分野で公知の方法によって行われうる。たとえば16K hPRLは、真核HCT 116細胞中で作製されてきた。16K hPRL(停止140)のためのcDNAコーディングは、哺乳類の発現ベクターpRC CMVへとクローン化されてきた。構築物はHCT116ヒト大腸がん細胞へと転写され、および、16K hPRL(停止140)を発現する安定して形質転換された細胞が得られた。調整された媒体またはこれらの細胞由来の精製された16K hPRL(停止140)は、bFGF誘導ウシ内皮細胞増殖を阻害できた。
【0062】
一実施形態では、本発明で目的のペプチドは、目的の抗血管新生傾斜ペプチド配列の第一のDNAコドンの5位の上流へと挿入されたメチオニンのためのDNAコドンより開始してDNA配列をベクターへとクローン化し、および目的の抗血管新生傾斜ペプチドの最後のアミノ酸に対応するDNAコドンを本分野で公知である融合誘発方法によって停止コドンに改変することによって得られる。宿主細胞は、改変された核酸によってコードされたペプチドの発現を可能にする変換される。別の実施形態では、クローン化されたホルモンDNAは、ホルモンポリペプチドの範囲内でタンパク質分解切断部位を作成するために設計される。次いでポリペプチドは、産生後に宿主中で切断され、目的のペプチドを生成する。融合誘発方法の例は、たとえば、『プロメガ手順および応用ガイド』(Promega Protocols and Applications GWde), プロメガ社(Promega Corp), マディソン, WI, p. 98 (1891)に記載の、または、『分子生物学最新プロトコル』(Current Protocols in Molecular Biology)に記載の方法を含む。
【0063】
ペプチドが原核ベクターを介して合成される場合、好ましくは、抗血管新生傾斜ペプチドをコードするDNA配列はシグナルペプチド配列を含まない。加えて、メチオニン(Met)のためのDNAコドンは、典型的には、コード配列の第一のDNAコドンの5位の上流へと挿入される。
【0064】
本発明のペプチドは、タンパク質および抗血管新生ペプチドとのハイブリッドまたは融合タンパク質として作製されうる。たとえば、16K hPRLの抗血管新生傾斜ペプチドは、マルトース結合タンパク質との融合として作製されてきた。マルトース結合タンパク質と16K hPRLの抗血管新生傾斜ペプチドとの間のフレーム内タンパク質融合が産生されるよう、16K hPRLの抗血管新生傾斜ペプチドをコードするDNA断片がpMAL−C2xプラスミドへとクローン化されてきた。この融合タンパク質は、内皮細胞のアポトーシスを誘導できる。
【0065】
DNAをベクターへとクローン化し、およびポリヌクレオチドを挿入、削除および改変するための、および部位を指示された融合誘発のための方法が、たとえば、上記のプロメガ手順および応用ガイド(Promega Protocols and Applications Guide)に記載されている。細胞またはバクテリアは、特に、熱ショック、電気泳動、リン酸カルシウム沈殿およびリポフェクションを含む公知の方法によって、目的のDNA配列を付加したベクター好ましくは発現ベクターで形質転換されうる。末端のペプチドまたは他のアナログまたは断片は、次いで、たとえば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル透過クロマトグラフィーによって抽出されおよび精製される。しかし、本発明のペプチドを誘導するのに必要な異なる手順、またはこれら手順の組合せ、または等価な手順を行う、本分野で公知の方法および技術が本発明の範囲内にあると考えられる。
【0066】
下記の語は、二つ以上の核酸またはポリヌクレオチドの配列関係を記載するために用いる:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」および「相当な同一性」。「参照配列」は、配列比較の基礎として用いられる定義された配列である;参照配列は、たとえば、配列リスト中に与えられた完全長cDNAまたは遺伝子配列の部分としてのより大きな配列の部分であってもよく、またはあるいは完全なcDNAまたは遺伝子配列を含んでもよい。
【0067】
比較ウィンドウを整列させる配列の最適な配列は、たとえば、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman), Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)のローカル相同性アルゴリズムによって、ニードルマン(Needleman)およびウンスク(Wunsch) J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性配置アルゴリズムによって、またはこれらアルゴリズムのコンピュータ化された実装(ウィスコンシンジェネティクスゼネチックスソフトウェアパッケージ第7版(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0), ジェネティクスコンピューターグループ(Genetics Computer Group), 575 Science Dr., マディソン, ウィスコンシンのGAP, BESTFIT, FASTAおよびFASTA)によって実施してもよい。
【0068】
ポリペプチドに用いられる場合、「実質的な同一性」または「実質的な配列同一性」の語句は、二つのペプチド配列が、最適に整列された場合、たとえばGAPまたはBESTFITプログラムによってデフォルトのギャップ重みを用いて、少なくとも80パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセント配列同一性以上を共有することを意味する。「百分率アミノ酸同一性」または「百分率アミノ酸配列同一性」とは、最適に整列された場合、同一のアミノ酸のほぼ指定の百分率を有する、二つのポリペプチドのアミノ酸の比較をいう。たとえば、「95%アミノ酸同一性」とは、最適に整列された場合、95%アミノ酸同一性を有する、二つのポリペプチドのアミノ酸の比較をいう。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換で異なる。たとえば、電荷または極性といった類似の化学特性を有するアミノ酸の置換は、タンパク質の性質に作用する可能性は低い。例は、アスパラギンに対するグルタミン、またはアスパラギン酸に対するグルタミン酸を含む。
【0069】
ペプチドまたはタンパク質をいう場合、「実質的に精製された」または「単離された」の語句は、本質的に他の細胞成分を含まない化学組成物を意味する。それは乾燥または水溶液でありうるが、好ましくは均一状態である。純度および均一性は典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーといった分析化学法を用いて測定される。調製物中で主な種であるタンパク質は実質的に精製されている。一般的に、実質的に精製または単離されたタンパク質は、調製物中に存在するすべての巨大分子の80%より大を占める。好ましくは、タンパク質は存在するすべての巨大分子の90%より大を占めるように精製される。より好ましくはタンパク質は95%より大へ精製され、および非常に好ましくはタンパク質は本質的な均一性へ精製され、他の巨大分子種は従来の方法によって検出されない。
【0070】
本発明の核酸
ここでまた提供されるのは、本発明のペプチドをコードするDNAまたはRNA配列(ポリヌクレオチド)を含む、単離された核酸である。本発明の核酸は、本発明のペプチドの発現のためのベクターをさらに含みうる。一部の実施形態では、DNAは抗血管新生傾斜ペプチドをコードするcDNA配列を含みうる。遺伝子コードの縮重のため、コードされたアミノ酸配列に変化を結果として生じないヌクレオチド配列における置換を行いうることが当業者に理解される。したがって、ここで定義される「実質的に同一な」配列は本発明の範囲に入りうる。ここに記載の任意のDNA分子の相補鎖の両方が本発明の範囲に含まれることがさらに当業者に理解される。
【0071】
核酸配列について適用されるおよび本文書で用いられる「実質的な同一性」または「実質的な配列同一性」の語句は、ポリヌクレオチドが、少なくとも20個のヌクレオチド位置の比較範囲にわたって、しばしば少なくとも25〜50個のヌクレオチドの範囲にわたって、参照配列と比較して少なくとも85パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90ないし95パーセント配列同一性、およびより好ましくは少なくとも99パーセント配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド配列の特徴を意味し、配列同一性のパーセンテージは比較範囲にわたって参照配列の合計20%未満である欠失または付加を含みうるポリヌクレオチド配列と参照配列を比較することによって計算される。
【0072】
作用薬
本発明の一部の実施形態では、抗血管新生ペプチドに対する受容体の作用薬が提供される。そのような作用薬は、本発明のペプチドの変異体および本発明のペプチドのペプチド、非ペプチド、およびペプチドミメティックアナログを含むがそれらに限定されない。
【0073】
治療手順
血管新生疾患の治療方法のための方法は、本発明のペプチドの一種類以上の血管新生阻害量を患者へ投与することを含む。ここでは、「治療」の語は、血管新生の症状の重症度における防止、改善、または低減をいうことが意図される。同様に、本発明のペプチドの血管新生阻害有効用量は、血管新生の症状の重症度を防止、改善、または低減するのに十分な用量である。
【0074】
本発明のペプチドは、単独で、または互いにまたは他の血管新生阻害剤と組み合わせて投与されうる。典型的には、本発明のペプチドは、一日当たり約8マイクログラムから3,000μg/kg、およびより好ましくは一日当たり約20から1,500μg/kgの量で、好ましくは一日一回または二回投与される。しかし、実質的により低いまたはより高い量を含む他の量もまた投与されうる。本発明のペプチドは、抗血管新生治療を必要とするヒト対象で、筋肉内、皮下、静脈内、腫瘍内、任意の他の許容される投与経路によって投与されうる。眼血管新生疾患の場合には、ペプチドはまた局所的に眼へ投与されうる。
【0075】
網膜の血管新生によって生じる視力の低下を回避するための糖尿病患者の予防および/または治療、避妊用途、および、手術または化学療法の後、悪性腫瘍の再形成を回避するためといったがん患者の長期治療といった、予防または治療の使用の両方が意図されている。
【0076】
一部の患者たとえば糖尿病患者が長年にわたり視力喪失に苦しむことが公知であるため、本ペプチドはこの過程の抑制または遅滞のために適切に利用されうる。この用途に利用されるためには、投与されるべき発明の組成物は一日当たり約12から3,500μg/kg、および好ましくは一日当たり約25から2,700μg/kgの量のペプチドを含みうる。しかし、特定の症例に対して開業医が適するとみなした異なるペプチドの量が投与されうる。より少量が、前眼房への注射によって投与されうる。
【0077】
この用途または任意の他の用途のために、本発明のペプチドは、約10から3,750μg/kg、およびより好ましくは約15から1,600μg/kgの量で投与されうる。任意の投与手段が適している。
【0078】
抗血管新生傾斜ペプチドは、疾患の治療のための他の組成物および手順と組み合わせて用いられうる。たとえば、腫瘍は、従来は、手術、放射線または化学療法で抗血管新生傾斜ペプチドと組み合わせて治療してもよく、および次いで抗血管新生傾斜ペプチドは、微小転移巣の休止状態を延長するためにおよび任意の残存腫瘍を安定させるために、引き続き患者に投与されうる。
【0079】
遺伝子治療
本発明のペプチドをコードする核酸を患者細胞へ、または患者へ遺伝子産物を供給するベクターをin vivoで送る、組み換えDNA法を利用する遺伝子治療もまた本発明の範囲内と考えられる。
【0080】
遺伝子治療法は、ポリペプチドといた遺伝子産物への対象の曝露を、骨格筋、心筋、血管内皮または平滑筋、または固形または循環腫瘍細胞といった目的の組織へ治療遺伝子の発現をターゲッティングすることによって限定する可能性を有する。たとえば、WIPO特許出願公開番号WO93/15609は、カテーテル系を用いて血管壁傷害の範囲への遺伝子の投与による血管組織へのインターフェロン遺伝子の運搬を開示する。別の一例では、プロドラッグを酵素的に変換できるタンパク質をコードするアデノウイルスベクター、「自殺遺伝子」、およびサイトカインをコードする遺伝子が固形腫瘍へ直接に投与される。
【0081】
治療遺伝子を目的の組織へターゲッティングする他の方法は、形質導入ターゲッティング、位置ターゲッティング、および転写ターゲッティングの三つの範疇を含む(総説はたとえば、ミラーMiller 他 FASEB J.9:190−199 (1995)を参照)。形質導入ターゲッティングとは、主に受容体リガンドの選択によって達成される、特定の細胞への選択的進入をいう。ゲノム内の位置ターゲッティングとは、たとえばクロマチンの活性領域といった目的の遺伝子座への、または標的遺伝子といった内因性ヌクレオチド配列との相同組み換えによる組み込みをいう。転写ターゲッティングとは、目的の細胞に合わせた遺伝子発現の高度に特異的な調節を伴う、転写プロモーターの組み込みによって達成される選択的発現をいう。
【0082】
組織特異的プロモーターの例は、肝臓特異的プロモーター(ゾー(Zou)他,Endocrinology 138:1771−1774 (1997));小腸特異的プロモーター(オリベイラ(Oliveira)他,J.Biol.Chem.271:31831−31838 (1996));筋および心臓組織におけるジストロフィンcDNA発現を導くのに用いられているクレアチンキナーゼに対するプロモーター(コックス(Cox)他,Nature 364:725−729 (1993));およびB細胞における自殺遺伝子の発現に対する免疫グロブリン重鎖または軽鎖プロモーター(マクスウェル(Maxwell)他,Cancer Res.51:4299−4304 (1991))を含む。内皮細胞特異的調節領域もまた特徴づけられている(ヤーロウディ(Jahroudi)他,Mol.Cell,Biol.14:999−1008 (1994))。それぞれ肝臓系譜の細胞および肝細胞腫細胞を標的にする、アルブミンまたはアルファフェトプロテインプロモーターの調節下にある単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子を有する広宿主性レトロウイルスベクターが構築されている(フーバー(Huber)他,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:8039−8043 (1991))。そのような組織特異的プロモーターは、レトロウイルスベクター(ハーツォグロー(Hartzoglou)他,J.Biol.Chem.265:17285−17293 (1990))およびアデノウイルスベクター(フリードマン(Friedman)他,Mol.Cell.Biol.6:3791−3797 (1986))に使用でき、およびなお組織特性を維持できる。
【0083】
目的の組織における発現の特異性を助ける他の要素は、分泌リーダー配列、エンハンサー、核局在化シグナル、内浸透圧破壊ペプチド、などを含みうる。好ましくは、これらの要素は、特異性を助ける目的の組織に由来する。
【0084】
本発明の実施に有用なウイルスベクター系は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウス微小ウイルス(MVM)、HIV、シンドビスウイルス、およびラウス肉腫ウイルスおよびMoMLVといったレトロウイルスを含むがそれらに限定されない。典型的には、目的の治療用ポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸は、典型的には随伴するウイルスDNAと共に核酸のパッケージング、感受性宿主細胞の感染、および目的のポリペプチドまたはペプチドの発現を可能にするようなベクターへ挿入される。
【0085】
たとえば、本発明のDNA構築物は、肝細胞のアシアロ糖タンパク受容体に対するリガンドであるアシアロオロムコイドにポリリシン部分で連結されうる(Chem. 263:14621 14624 (1988); WO 92/06180)。
【0086】
同様に、本発明の組み換え構築物をパッケージするのに用いられるウィルスエンベロープは、特異細胞への受容体媒介エンドサイトーシスを可能にする受容体に特異的な受容体リガンドまたは抗体の付加によって改変されうる(たとえば、WO 93/20221, WO 93/14188; WO 94/06923)。本発明の一部の実施形態では、本発明のDNA構築物は、アデノウイルス粒子といったウイルスタンパク質にエンドサイトーシスを容易にするためにリンクされる(クリエル(Curiel)他, Proc. Natl. Acad. Scl. U.S.A. 88:8850 8854 (1991))。他の実施形態では、本発明の分子複合体は、微小管阻害剤(WO 94/06922)、インフルエンザウイルス血球凝集素を模倣する合成ペプチド(プランク(Plank)他, J. Biol. Chem. 269:12918 12924 (1994));およびSV40 T抗原(WO 93/19768)といった核局在化シグナルを含みうる。
【0087】
核酸は、さまざまな方法によってin vivoまたはex vivoで目的の組織に導入することができる。本発明の一部の実施形態では、核酸は、顕微鏡下注射、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム融合または微粒子銃といった方法によって細胞に導入される。別の実施形態では、核酸は目的の組織によって直接的に利用される。他の実施形態では、核酸は、細胞への導入を容易にするためにウイルスベクター系にパッケージされる。
【0088】
本発明の一部の実施形態では、本発明の組成物は患者から外植された細胞または組織にex vivoで投与され、次いで患者に戻される。遺伝子治療構築物のex vivo投与の例は、アクスティアガ(Axteaga)他, Cancer Research 56(5): 1098−1103 (1996); ノルタ(Nolta)他, Proc Nad.Acad. Sci. USA 93(6):2414 9 (1996); コック(Koc)他, Seminars in Oncology 23 (1):46 65 (1996); レーパー(Raper)他, Annals of Surgery 223(2):116 26 (1996); ダレスアンドロ(Dalesandro)他, J Thorac.Cardi.Surg.11(2):416 22 (1996);およびマカロブ(Makarov)他, Proc. Nad.Acad. Sci. USA 93(1):402 6 (1996)を含む。
【0089】
処方および医薬組成物
本発明のペプチドは、たとえば、合成でき、精製された完全長ホルモンから調製でき、または組み換え法および本分野で公知である方法を用いて製造されうる。好ましい一実施形態では、傾斜ペプチドは、組み換え法を用いて、たとえば「マルトース結合タンパク質」(MBP)といったキャリヤーポリペプチド/タンパク質へ融合および作製されうる。たとえば、サソリ毒のペプチドおよびMBPから作製された融合タンパク質が抗原として用いられ、ウサギにおいて抗体の産生に成功した(レグロス(Legros),C.,他 Vaccine 20:934−42 (2001))。これは、これらの融合タンパク質が、A.アウストラリス(Australis)毒に対する効率的な免疫保護を提供するワクチンとして使用に成功しうることを示す。代替的に、傾斜ペプチドは、効率を改善するために、合成されおよびその後にキャリヤー分子と融合されうる。代替的な一実施形態では、本発明のペプチドまたは前記ペプチドを含む組み換えタンパク質はPEG化されている。PEG化とはペプチドまたはポリペプチドとポリエチレングリコールとの複合体化である。PEG化アルファインターフェロンは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)に感染したマウスの治療として用いられている。PEG化インターフェロンの使用は、VEEVへの感染に対して大幅に高まった生存を結果として生じる(ルカツェウスキー(Lukaszewski),R.A.およびブルックス(Brooks),T.J.J Virol 74:5006−15 (2000))。ヒト治療では、PEG化インターフェロンは現在、C型肝炎ウイルスによる慢性感染の効果的な治療法である(ポイナール(Poynard),T.,他 Lancet 362:2095−100 (2003))。
【0090】
ペプチドが傾斜しているかどうか実験的に決定する方法に関して:傾斜ペプチドの特徴は、in vitro実験においてリポソーム融合を誘導することである。この方法は、(マーティン(Martin),I.,他 Biochem Biophys Res Commun 175:872−9 (1991)),(ピロット(Pillot),T.,他 J Biol Chem 271:28757−65 (1996)) ,(ピロット(Pillot),T.,他 J Mol Biol 274:381−93 (1997)),(リンス(Lins),L.,他 Protein Eng 15:513−20 (2002))に記載されている。
【0091】
本発明の組成物は、哺乳類対象、好ましくはヒトへの投与のために許容される本分野で公知の方法による投与のために処方される。本発明の一部の実施形態では、本発明の組成物は、注射によって組織へ直接、または目的の組織へ供給する血管へ、投与されうる。本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は「局所領域的に」、すなわち、膀胱内に、病変内に、および/または局所に投与される。本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は注射、吸入、坐剤、経皮運搬などによって全身的に投与される。本発明の別の実施形態では、組成物は、臓器といった目的の遠隔性の組織への接近を可能にする、カテーテルまたは他の器具を通じて投与される。本発明の組成物はまた、組成物の遅放または徐放を可能にする、デポ型器具、インプラント、またはカプセル化処方で投与されうる。
【0092】
本発明に基づくまたは由来の治療薬を投与するために、適切なキャリヤー、賦形剤および他の薬剤が、改良された移送、運搬、認容などを提供するべく処方に組み込まれうることが理解される。
【0093】
多数の適切な処方が、すべての薬剤師に公知の処方集において見い出されうる:『レミントンの薬学』(Remington’s Pharmaceutical Sciences),
(第15版, マック出版社(Mack Publishing Company), イーストン, ペンシルバニア(1975))、特シブラウグ(Blaug),セイモア(Seymour)によるその第87章。これら処方はたとえば、粉薬、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、無水吸収塩基、水中油または油中水乳液類、乳液カーボワックス(さまざまな分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル類、およびカーボワックスを含む半固体混合物を含む。
【0094】
前記の任意の処方は、処方中の活性薬剤が処方によって不活性化されずおよび処方が生理的に適合する場合、本発明の処置および治療において適当でありえる、
【0095】
有効な治療のために必要な活性成分の量は、投与手段、目的部位、患者の生理的状態、および投与される他の薬剤を含む多くの異なる要因に依存する。したがって、処理用量は安全性および有効性を最適化するために滴定されるべきである。典型的には、in vitroで用いられる用量は、活性成分のin situ投与に有用な量の有用な指針を提供しうる。特定の障害の治療のための有効用量の動物実験は、ヒト用量の別の予測的な指標を提供するであろう。さまざまな考慮事項は、たとえば、グッドマン(Goodman)およびギルマン(Gilman)の治療の薬理学的基礎(Pharmacological Basis of Therapeutics), 第7版(1985), マクミラン出版社(MacMillan Publishing Company), ニューヨーク、および『レミントンの薬学』(Remington’s Pharmaceutical Sciences),第18版, (1990)マッ
ク出版社(Mack Publishing Co), イーストン ペンシルバニアに記載されている。投与のための方法はこれらの中で論じられ、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、経皮、経鼻、イオン導入投与などを含む。
【0096】
本発明の組成物は、投与方法に応じてさまざまな単位用量形態で投与されうる。経口投与に適した単位用量形態は、粉薬、錠剤、ピル、カプセルおよび糖衣剤といった固体剤型、および、たとえばエリキシル、シロップおよび懸濁液といった液体剤型を含む。活性成分は、非経口的に無菌の液体剤型で投与されることもありうる。ゼラチンカプセルは、活性成分、および不活性成分として、たとえばブドウ糖、ラクトース、蔗糖、マンニトール、澱粉、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムなどといった粉末状のキャリヤーを含む。目的の色、味、安定性、緩衝能力、分散または他の公知の目的の性質を提供するために付加されうる追加的な不活性成分の例は、ベンガラ、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白インクなどである。類似の希釈剤は、圧縮錠剤を作るのに用いることができる。錠剤およびカプセルの両方は、長時間にわたって薬剤の連続放出を提供する徐放産物として製造されうる。圧縮錠剤は、任意の不快な味を被覆しおよび錠剤を雰囲気から保護するための糖衣またはフィルムコート、または消化管の選択的分解のための腸溶性コートであってもよい。経口投与のための液体剤型は、患者による認容を高めるために着色剤および調味料を含みうる。
【0097】
本発明の組成物の医薬組成物中の濃度は、広範に、すなわち重量比で約0.1%未満から、通常は少なくとも約2%以上から20%ないし50%、またはそれ以上まで変化しうり、および選択される特定の投与様式にしたがって流体容積、粘度、他によって主に選択される。
【0098】
本発明の組成物はまた、リポソームを介して投与されうる。リポソームは、乳液、泡、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層などを含む。これらの調製物では、運搬すべき本発明の組成物は、単独で、またはたとえば抗体といった目的の標的と結合する分子と、または他の治療用または免疫原性組成物と組み合わせて、リポソームの一部として組み込まれる。このように、本発明の目的の組成物で満たされたかまたは装飾されたリポソームは全身的に運搬でき、または目的の組織へ導くことができ、そこでリポソームを次いで選択された治療用/免疫原性ペプチド組成物を運搬できる。
【0099】
本発明での使用のためのリポソームは、一般に中性および負に荷電するリン脂質およびコレステロールといったステロールを含む標準的な小嚢形成脂質から形成される。脂質の選択は、たとえばリポソームの大きさ、酸不安定および血流中のリポソームの安定性などの考慮事項によって一般に導かれる。たとえば、ショーカ(Szoka)他, Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980), 米国特許第4,235,871号, 第4,501,728号, 第4,837,028号および第5,019,369号中のさまざまなものが、参照により本開示に組み入れられる。
【0100】
本発明の組成物を含むリポソーム懸濁液は、静脈内、局所的、局部になど、とりわけ、投与の方法、運搬中の本発明の組成物、および処置中の疾患の段階にしたがって異なる用量で投与されうる。
【0101】
固体組成物の場合、たとえば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、ブドウ糖、蔗糖、炭酸マグネシウムなどを含む従来の非毒性の固体キャリヤーが用いられうる。経口投与の場合、薬学的に許容可能な非毒性組成物が、以前に記載したそれらキャリヤーといった任意の通常使用される賦形剤、および一般に10ないし95%の活性成分、すなわち本発明の一つ以上の組成物、およびより好ましくは25%ないし75%の濃度で組み入れることによって形成される。
【0102】
エアゾール投与の場合、本発明の組成物は好ましくは、界面活性剤および推進剤とともに細かく分けて供給される。本発明の組成物の典型的な百分率は、重量比で0.01%ないし20%、好ましくは1%ないし10%である。界面活性剤はもちろん非毒性でなければならず、および好ましくは推進剤に可溶性でなければならない。そのような薬剤の代表は、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物を有するカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリック酸およびオレイン酸といった6ないし22個の炭素原子を含む脂肪酸のエステルまたは部分的エステルである。混合または天然グリセリドといった混合エステル類が使用されうる。界面活性剤は、組成物の重量比0.1%ないし20%、好ましくは0.25ないし5%を構成しうる。組成物の残りは通常は推進剤である。キャリヤーも所望の通りたとえば鼻腔内運搬のためのレシチンとともに含まれうる。
【0103】
本発明の組成物は追加的に、本分野で公知の方法によって、デポ型装置、カプセル化された剤型またはインプラント中で運搬されうる。同様に組成物はポンプを介して目的の組織に運搬されうる。
【0104】
本発明の組成物は典型的には症状の発現後に投与されるが、一部の実施形態では処置は予防的でもありうる。典型的には、ポリペプチドの直接的な投与による処置は、症状を低減、予防または改善するのに十分な期間にわたって、毎日、毎週、または、毎月行われる。本発明の核酸による処置は、典型的には数カ月の間隔で行われる。一部の実施形態では、本発明の組成物の投与は子宮内で行われる。
【0105】
本発明の組成物は、上記の通りの包装または容器中での、スポンジ、皮膚用パッチ、皮下用インプラントとして提供された、日、週、月単位といった徐放組成物としてキットで提供されうる。この場合、患者は、組成物の一単位を容器から自由に開放してもよく、キット取り扱い説明書に示すように一単位を塗布する。組成物は、新しい単位などによって、指定された期間の終わりに置換されうる。
【0106】
上記のように、本組成物は注射によって投与されうる。典型的には、ペプチドは、それ自体によって、またはたとえば糖尿病患者の場合インシュリンを含む組成物中で投与されうる。同じことが、組成物の徐放剤型にあてはまる。同様に、本発明のペプチドは、他の薬剤も含む組成物中で投与されうる。そのような症例の一つは、特に、化学療法剤といった異なる制がん剤または造影剤と標的特異的抗体とが、本発明のペプチドも含む組成物中に提供されることがありうるがんの症例である。したがって、他の薬剤およびキャリヤーに対するペプチドの比率は調整されうる。
【0107】
患者に対して運搬されたペプチドのレベルは、免疫測定法によって監視されうる。投与、たとえば筋肉内または皮下投与の後の、本発明のペプチドの血液中のレベルを決定するために、本分野で公知の任意の手順によって、ペプチド配列に特異的な抗体によるプロトコル抗体検定法が実施されうる。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体または16K N末端断片受容体が利用されうる。次いで、血中のペプチドのレベルを患者の罹患する任意の疾患の阻害の進行と相関付ける。
【0108】
下記の実施例は説明を意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0109】
実施例1.PRL/GH16K断片中の傾斜ペプチド領域の同定
所与のタンパク質配列中の傾斜ペプチドの検出を可能にする、分子モデリングの一般的手順が設定された(ブラッスール(Brasseur)、R.Mol Membr Biol 17:31−40(2000))。要約すると、下記の判定基準を用いて傾斜ペプチドがタンパク質配列中に検出される:a)ペプチドが長さ10〜20アミノ酸である、b)ペプチドの平均疎水性(アイセンバーク(Eisenberg),D,ワイス(Weiss),R,テルウィリンジャー(Terwillinger),T 1982,Nature,299,371−374のアイセンバーク(Eisenberg)尺度共通尺度によって計算される)が0.1より高い;c)配列に沿った疎水性がイエーニッヒ(Jahnig)および疎水性クラスター分析法(ガボリアード(Gaboriaud),C.,他 FEBS Lett 224:149−55 (1987)、ヤーニッヒ(Jahnig),F.Trends Biochem Sci 15:93−5 (1990))といった異なる方法を用いて計算される;d)ペプチドが(へリックスとして構築される場合、へリックス軸と界面平面との間の角度が30°ないし70°である;e)最小エネルギー立体配座は疎水性/親水性界面方向である。f)分子疎水ポテンシャルが計算されおよび疎水性アイソポテンシャルエンベロープは非対称である。
【0110】
この手順を用いて、潜在的な傾斜ペプチドがヒトPRL/GH16K断片配列のそれぞれに検出された。このドメインは、斜角特性に関して、4つの16K断片の配列の間で保存されている。
【0111】
図1はAで、hPRLのタンパク質配列を示す。傾斜ペプチド構造を取る可能性の高い領域は太字で強調されている。アルファへリックス領域は長方形の中に示される(キーラー(Keeler),C.,他 J Mol Biol 328:1105−21 (2003))。矢印は、16K断片切断部位の局在を示す。BはPRL/GHファミリーの16K断片中の傾斜ペプチド領域の整列を示す。
【0112】
実施例2:ペプチドの化学合成
2.1.PO−PRL ペプチドの合成
【0113】
16K hPRLの傾斜ペプチド領域に相当するPO−PRLというペプチドが化学的に合成された。その配列はFLSLIVSILRSWNE(配列番号3)である。このペプチドは民営バイオ会社のユーロジェンテック社(Eurogentec S.A.)によって合成された。そのペプチドはN末端がアセチル化およびC末端がアミド化されている。
【0114】
2.2.傾斜ペプチドの生物物理学的特徴づけ:脂質相融合
【0115】
脂質相融合は、脂溶性マーカーR18の蛍光を追跡することによって測定した。リポソームに高い表面密度で組み込まれた場合、R18蛍光は減弱した。標識化および非標識化リポソームの膜融合によるマーカーの希釈に際して、減弱は軽減されおよびR18蛍光が増加する。標識化リポソームはR18を脂質フィルムに混合することによって調製された(表1参照)。標識化および非標識化リポソームは1:4比(w/w)で混合されおよび濃度50μMへ希釈された。蛍光は室温にて(励起λ:560nm、発光λ:590nm)パーキンエルマー(PerkinElmer)LS−50B蛍光測定機で測定される。PO−PRLがリポソーム融合を誘導する能力が、二種類の異なるリポソーム調製物において異なるpHにて分析された(表1)。
【0116】
表1:LUV(大きな一枚膜リポソーム)の組成および調製。LUVは押出によって調製された。要約すると、脂質フィルムを1時間37℃にて水和した。懸濁液を5回の凍結融解サイクルに供し、次いで20バール窒素圧下で2つのポリカーボネートフィルター(孔直径0.08μm)を10回連続通過させた。リン脂質濃度はリン酸量によって測定した(バーレット(Barlett)法)。
【0117】
【表1】

【0118】
下記の緩衝液を使用した:pH8緩衝液(10mMトリス−HCl、pH=8;150mM NaCl; 0.01%EDTA; 1 mM NaN3)、pH6緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、pH=6;150mM NaCl; 0.01%EDTA; 1 mM NaN3)、pH4緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、pH=4;57mM酢酸)
【0119】
下記の濃度のペプチドを使用した:
600μM、ペプチド/脂質モル比(R)0.2に相当
300μM、ペプチド/脂質比(R)0.1に相当
150μM、ペプチド/脂質比(R)0.05に相当
60μM、ペプチド/脂質比(R)0.02に相当
30μM、ペプチド/脂質比(R)0.01に相当。
【0120】
どの実験条件を使用しても(荷電または非荷電リポソーム、pH=4、6または8)、POペプチドはリポソーム融合を脂質相において誘導する。リポソーム融合の誘導は用量依存的である。表2は異なる実験条件における両方のペプチドについての相対融合(15分後)の割合を示す。
【0121】
表2:15分後にPOペプチドによって誘導される相対リポソーム融合。R=ペプチド/脂質比、C=荷電およびUC=非荷電リポソーム。POペプチドによって誘導されたリポソーム融合R=0.2;pH=8、UC)を任意に100%に設定した:
【0122】
【表2】

【0123】
2.3.ペプチドの立体配座
【0124】
溶液中のペプチドの立体配座はフーリエ変換赤外スペクトル法(ATR−FTIR)によって分析される。試料(20μg)をゲルマニウムプレート上に塗布し、および1800ないし1000cm−1でスペクトルを記録する。アミドIバンドに対応する1700−1600cm−1範囲の逆重畳は、ペプチドの二次構造の決定を可能にする(グールマグティグ(Goormaghtigh),E.,他 Biochim Biophys Acta 1422:105−85 (1999))。ペプチドの二次構造を表3に示す。傾斜ペプチドは溶液中ではしばしば(構造である一方、脂質の存在下ではヘリックスである(マーティン(Martin),I.,他 Biochem Biophys Res Commun 175:872−9 (1991))。
【0125】
【表3】

【0126】
実施例3.MBPタンパク質と融合された16KhPRLの傾斜ペプチドの抗血管新生活性の測定
3.1.MBO−PO−PRLおよびMBP−POmut−PRL組み換え融合タンパク質の発現
【0127】
「マルトース結合タンパク質」(MBP)と融合された傾斜ペプチドが組み換えDNA工学手法によって作製された。16K hPRLの傾斜ペプチドを伴うMBPでできた融合タンパク質をコードする遺伝子が下記の通り構築され、およびMPB−PO−PRLと命名された。対照として、疎水性分布を改変する変異が16K hPRLの傾斜ペプチドに導入された。これらの変異は、脂質水界面方向である際のペプチドの斜め方向を改変する。PO配列の改変は、Leu2およびAsn13の、およびVal6およびSer11の順列に存在する。16KhPRLの変異傾斜ペプチドを伴うMBPでできた融合タンパク質をコードする遺伝子が下記の通り構築され、およびMPB−POmut−PRLと命名された。ペプチドの配列は:
16KhPRLのPO:FLSLIVSILRSWNE(配列番号3)
16KhPRLのPOmut:FNSLISSILRVWLE(配列番号10)である。
【0128】
3.2.pMBP−PO−PRLおよびpMBP−POmut−PRL発現ベクターの構築
【0129】
目的のペプチドをコードするオリゴヌクレオチド(ユーロジェンテック社(Eurogentec s.a.)) が、pMAL−c2xプラスミド(ニューイングランド・バイオラブズ社(New England Biolabs Inc.))のMBPコード配列のC末端に挿入された。オリゴヌクレオチドはBamH I および Xmn I 制限部位をそれぞれペプチドコード配列の上流および下流に含むように設計されている。これらの部位は、BamH IおよびXmn Iによって予め消化されたpMAL−c2x プラスミドへペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを挿入することを可能にした。各構造について一つのクローンが選択され、およびそれぞれpMBP−PO−PRLおよびpMBP−POmut−PRLと命名された。配列は配列決定によって検証された。
【0130】
pMBP−PO−PRLおよびpMBP−POmut−PRLプラスミドを構築するのに用いられるオリゴヌクレオチド配列を下記に示す。変異は太字で示す。オリゴヌクレオチドが有するXmnI制限部位の部分は斜体で示す。オリゴヌクレオチドが有するBamHI制限部位の部分は下線で示す:
PO−PRL順方向
5’−TTTCATTTCTGAGCCTGATAGTCAGCATATTGCGATCCTGGAATGAGTGAG−3’,配列番号 17;
PO−PRL逆方向
3’−TAAAGTAAAGACTCGGACTATCAGTCGTATAACGCTAGGACCTTACTCACTCCTAG5’ 配列番号 18;
PO mut−PRL順方向
5’−ATTTCATTTAACAGCCTGATATCCAGCATATTGCGAGTCTGGCTTGAGTGAG−3’
配列番号 19;
PO mut−PRL逆方向
3’−TAAAGTAAATTGTCGGACTATAGGTCGTATAACGCTCAGACCGAACTCACTCCTAG5’
配列番号20;
【0131】
3.3.MBP発現を可能にするベクターの構築
【0132】
MBP対照タンパク質(融合ペプチドを有しない)を作製するために、終止コドンが、MBPコード配列の下流およびペプチド挿入部位の上流に導入された。pMAL−c2x プラスミドをBamHIおよびXmnIによって消化し、およびアニーリングした「終止順方向」(5’−ATTTCATGATGAGGTACCCTCGAGG−3’、配列番号15)および「終止逆方向」(3’−TAAAGTACTACTCCATGGGAGCTCCCTAG−5’、配列番号16)オリゴヌクレオチドとライゲーションした。これらのオリゴヌクレオチドは、終止コドンおよびXhoI制限部位を含む。一つのクローンが、XhoI消化によって選択され、およびpMBPと命名された。配列は配列決定によって検証された。pMBPプラスミドを構築するのに用いられるオリゴヌクレオチド配列中で、XhoIを太字で示す。オリゴヌクレオチドが有するXmnI制限部位の部分は斜体で示す。オリゴヌクレオチドが有するBamHI制限部位の部分は下線で示す。
【0133】
3.4.MBPおよびMBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRL融合タンパク質の発現
【0134】
pMBP−PO−PRL、pMBP−POmut−PRLおよびpMBPの構造で大腸菌(E.coli)TOP10F’細胞を形質転換した。培養はグルコース含有LB培地で実施し、および発現をIPTGの添加によって誘導した。試料をさまざまなインキュベート時間で回収し、およびSDS−PAGEによって分析した。MBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRLおよびMBPタンパク質の溶解度を分析するために、細胞をIPTG誘導の5時間後に回収し、およびフレンチプレスで破壊した。溶解物を遠心分離し、および沈澱および上清を16%SDS−PAGEによって分析した。図2に示す通り、MBP−PO−PRLおよびMBP−POmut−PRLタンパク質は可溶性画分中でほぼ90%まで存在する。記号「F」は融合タンパク質のバンドを示す。産生はSDS−PAGEによって培養45mg/l付近で推定した。同様の結果がMBPについて得られた。図2は、IPTG誘導の5時間後のMBP−POおよびMBP−POmut溶解度の12%SDS−PAGE分析を示す。:
MM:分子量マーカー。
レーン1〜2:MBP−PO−PRL細胞溶解物上清.
レーン3〜4:MBP−POmut−PRL細胞溶解物上清
レーン5〜6:MBP−PO−PRL細胞溶解物沈澱
レーン7〜8:MBP−POmut−PRL細胞溶解物沈澱
1、3、5、7:培養のO.D.=1の150μl相当物が負荷された。2、4、6、8:培養のO.D.=1の300μl相当物が負荷された。
【0135】
3.5.MBPおよびMBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRLタンパク質の精製
【0136】
MBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRLおよびMBPをまずアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。可溶性タンパク質をアミロースアフィニティ樹脂(ニューイングランド・バイオラブズ社(New England Biolabs Inc.))に負荷し、洗浄しおよびマルトースで溶出した。目的のタンパク質を含む画分を回収し、トリス−HCl20mM、pH=7.5に対して透析した。三つの試料を次いで陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。
【0137】
3.6.MBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRLおよびMBPタンパク質の生物活性
【0138】
3.6.1.MBP−PO−PRLはアポトーシスを内皮細胞において誘導する
【0139】
MPB−PO−PRLの内皮細胞アポトーシスに対する作用を測定するため、発明者らMBP−PO−PRL処理細胞のDNA含量を、フローサイトメトリーによって分析している。この目的で、DNAをヨウ化プロピジウムで標識化した。ウシ副腎皮質内皮(BACE)細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)およびml当たり100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含む低グルコースダルベッコ改変イーグル培地(10%FCS培地)に、細胞5X105/100mmプレートの密度で平板播種した。平板播種の24時間後、細胞を目的のタンパク質で18時間処理した。細胞をその後採取し、および固定しおよび氷冷エタノール中で2時間透過処理し、その後遠心分離、およびRNアーゼ(5μg/ml)およびヨウ化プロピジウム(50μg/ml)含有PBS中でインキュベート(37℃にて30分間)した。細胞をコールター・エピックス(Coulter Epics)XLフローサイトメーターを用いて分析した。
【0140】
結果を図3に示す。未処理細胞について得られたグラフは、G1、G0/G1、S、G2/M細胞部分集団を示す非同調細胞培養に典型的である。G1部分集団の位置は棒で示す。G1部分集団の存在は、アポトーシスの顕著な特徴であるアポトーシス体の存在に対応する。G1細胞部分集団の百分率をパネルFに示す。大腸菌(E.coli)の産生した16K hPRLを対照として用いた。結果は、MBP−PO−PRLおよび16KhPRLでの細胞の18時間処理の結果、G1細胞部分集団の百分率がそれぞれ32、9および55、9となり、一方で未処理細胞のG1部分集団の百分率は1%だけであった。MBPまたはMBP−PO−PRLmut処理細胞の値は未処理細胞値と有意差が無い。
【0141】
3.6.2.MBP−PO−PRLはカスパーゼ3活性化を内皮細胞において誘導する
【0142】
MBP−PO−PRLがアポトーシスをBACE細胞において誘導することを確認するため、発明者らはカスパーゼカスケードの活性化を研究した。エフェクタープロテアーゼのカスパーゼ−3の活性化は、アポトーシスシグナル伝達経路の最も一般的な現象の一つである。ウシ副腎皮質内皮(BACE)細胞を、被験タンパク質の漸増濃度で処理した。大腸菌(E.coli)の産生した16KhPRLを対照として用いた。処理の18時間後、細胞を溶解し、およびカスパーゼ3活性を測定した(カスペース(Caspace)アッセイシステム、プロメガ社(Promega)。図4に示す結果は、MBP−PO−PRLはカスパーゼ3活性を用量依存的な形で誘導する一方、MBP−POmut−PRLおよびMBPは全く不活性であったことを示す。濃度40nMでは、MBP−PO−PRLは10nMの大腸菌(E.coli)産生16KhPRLと同等の活性を示した。これらの結果は、MBPと融合された16KhPRL由来傾斜ペプチドはカスパーゼ3活性化を内皮細胞において特異的に誘導できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くす。
【0143】
3.6.3.MBP−PO−PRLは内皮細胞の増殖を阻害する
【0144】
MBP−PO−PRLがABAE(成ウシ大動脈内皮細胞)細胞増殖を阻害する能力をin vitroで試験した。同調ABAE細胞を10%FBS培地ありまたは無しで平板播種し、および16K hPRLまたはMBP−PO−PRLの漸増濃度と共に18時間処理した。最後の3時間、細胞を500,000cpmの[3H]チミジンとインキュベートし、5%トリクロロ酢酸で洗浄し、NaOH中で可溶化し、および計数した。結果はcpmで表し、および棒のそれぞれは平均値±SDを表し、n=3である。増殖は細胞をbFGF50pMおよび1%FCSで処理することによって誘導した。大腸菌(E.coli)産生16K hPRLを対照として用いた。
【0145】
図5に示す通り、MBP−PO−PRLはABAE細胞増殖に対して用量依存性の阻害作用を有する。濃度40nMで、MBP−PO−PRLは10nMの大腸菌(E.coli)産生16KhPRLと同等の活性を示した。MBPまたはMBP−POmut−PRL処理細胞値は、未処理細胞値と有意差が無かった。これらの結果は、MBPと融合された16KhPRL由来傾斜ペプチドは内皮細胞増殖を特異的に阻害できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くす。
【0146】
3.6.4.MBP−PO−PRLはin vitro毛細血管形成を妨げる
【0147】
MBP−PO−PRLが血管新生をin vitroで妨げる能力をさらに分析するため、毛細血管形成を妨げる能力をコラーゲンゲル検定法で分析した。この検定法は下記の通り実施した:細胞20000個を2つのコラーゲンゲル(5容のラット尾コラーゲン、1容の10X M199培地、50 mM NaHCO3)の間に平板播種した。ゲルに目的の組み換えタンパク質を含むかまたは含まない10%FBS培地を重層した。図9に示す通り、コラーゲンゲルに含まれる場合、BACE細胞は毛細血管様構造を形成する(パネルA)一方、10nM 16K hPRLの添加は毛細血管形成を妨げる(パネルB)。40nM MBP−PO−PRL(パネルC)は毛細血管構造を形成するBACE細胞の能力を阻害できる一方、80 nM MBP−POmut−PRL(パネルD)は作用を有しない。
【0148】
3.6.5.MBP−PO−PRLはin vivo毛細血管形成を妨げる
【0149】
MBP−PO−PRLの抗血管新生活性を、初期ニワトリ絨毛尿膜(CAM)検定で試験した。ニワトリCAM検定法は、血管新生をin vivoで試験するための幅広いおよび相対的に迅速な方法である。発生の3日目、ニワトリ受精胚を殻から取り出してペトリ皿に入れ、および37℃にてインキュベートした。7日目に、40μgの組み換えタンパク質および4μgのBSAを含むメチルセルロース(0.5%、シグマ社(Sigma))のディスク(5mm)をニワトリCAM上に置いた。48時間後、白墨汁を絨毛尿膜嚢に注射し、および無血管の範囲を決定した。定量化は、少なくとも7個の卵について無血管範囲を測定することによって実施した。図10に示す通り、無血管範囲は40μgのMBP−PO−PRLを含むメチルセルロースディスク周囲の範囲に存在する一方、対照MBP−POmut−PRLは有意な作用を有しない。これらの結果は、MBP−PO−PRLが血管新生をin vivoで妨げることができることを示す。
【0150】
実施例4.MBPタンパク質と融合された16KhGHの傾斜ペプチドの抗血管新生活性の測定
4.1.MBO−PO−GH および MBP−POmut−GH 組み換え 融合 タンパク質の作製
【0151】
上記と同一の手順を用いて、本発明者らは、MBPおよび16KhGHの傾斜ペプチドから成る融合タンパク質を作製した。対照として、疎水性分布を改変する変異を16KhGHの傾斜ペプチドに導入した。タンパク質名およびペプチド配列を表4に示す。発明者らは、MBP−PO−GH、MBP−POmut−GHがアポトーシスを誘導および内皮細胞の増殖を阻害する能力を上記の通り評価した。結果は、MBPと融合された16KhGH由来傾斜ペプチドは内皮細胞においてアポトーシスを特異的に誘導できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くした。
【0152】
表4:MBPタンパク質と融合された16KhGHの傾斜ペプチドの配列。斜体で、疎水性分布を改変するように設計されている変異ペプチドを示す。
【0153】
【表4】

【0154】
MBP−PO−GH、MBP−POmut−GHおよびMBPタンパク質の生物活性
【0155】
4.2.1.MBP−PO−GHはカスパーゼ3活性化を内皮細胞において誘導する
【0156】
MBP−PO−GHがアポトーシスをBACE細胞において誘導する能力を試験するために、発明者らはカスパーゼカスケードの活性化を研究した。BACE細胞を漸増濃度の被験タンパク質で処理した。大腸菌(E.coli)産生16KhPRLを対象として用いた。処理の18時間後、細胞を溶解しおよびカスパーゼ3活性を測定した(カスペース(Caspace)アッセイシステム、プロメガ社(Promega))。図6に示す結果は、MBP−PO−GHはカスパーゼ3活性を誘導する一方、MBP−POmut−GHおよびMBPは全く不活性であったことを示す。これらの結果は、MBPと融合された16KhGH由来傾斜ペプチドはカスパーゼ3活性化を内皮細胞において特異的に誘導できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くした。
【0157】
4.2.2.MBP−PO−GHは内皮細胞の増殖を阻害する
【0158】
MBP−PO−GHがABAE細胞増殖を阻害する能力をin vitroで試験した。同調ABAE細胞を10%FBS培地有りまたは無しで平板播種し、および漸増濃度の16KhPRLまたはMBP−PO−GHで18時間処理した。最後の3時間、細胞を500,000cpmの[3H]チミジンとインキュベートし、5%トリクロロ酢酸で洗浄し、NaOH中で可溶化し、および計数した。結果はcpmで表し、および棒のそれぞれは平均値± SDを表し、n=3である。増殖は細胞をbFGF50pMおよび1%FCSで処理することによって誘導した。大腸菌(E.coli)産生16K hPRLを対照として用いた。
【0159】
図7に示す通り、MBP−PO−GHはABAE細胞増殖を阻害する。MBPまたはMBP−POmut−GH処理細胞値は、未処理細胞値と有意差が無い。これらの結果は、MBPと融合された16KhGH由来傾斜ペプチドは内皮細胞増殖を特異的に阻害できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くした。
【0160】
4.2.3.MBP−PO−GHはin vitro毛細血管形成を妨げる
【0161】
MBP−PO−GHが血管新生をin vitroで妨げる能力をさらに分析するため、毛細血管形成を妨げる能力をコラーゲンゲル検定法で上記の通り分析した。図11に示す通り、コラーゲンゲルに含まれる場合、BACE細胞は毛細血管様構造を形成する(パネルA)一方、10nM 16K hPRLの添加は毛細血管形成を妨げる(パネルB)。 160 nM MBP−PO−GH(パネルC)は毛細血管構造を形成するBACE 細胞の能力を阻害できる一方、320 nM MBP−POmut−GHは作用を有しない(パネル D)。
【0162】
4.2.4.MBP−PO−PRLおよびMBP−PO−GHはin vivo毛細血管形成を妨げる
【0163】
MBP−PO−GHの抗血管新生活性を、 in vivoでCAM検定法で上記の通り試験した。図12に示す通り、40μgのMBP−PO−GHを含むメチルセルロースディスクの周囲の範囲に無血管範囲が存在する一方、対照MBP−POmut−GHは有意な作用を有しない。これらの結果は、MBP−PO−GHが血管新生をin vivoで妨げることができることを示す。
【0164】
実施例5.MBPタンパク質と融合された16KhPLの傾斜ペプチドの抗血管新生活性の測定
上記と同一の手順を用いて、MBPおよび16K hPLの傾斜ペプチドから成る融合タンパク質を作製した。対照として、疎水性分布を改変する変異を16K hPLの傾斜ペプチドに導入した。タンパク質名およびペプチド配列を表5に示す。MBP−PO−PL、MBP−POmut−PLが内皮細胞においてアポトーシスを誘導する能力を上記の通り評価した。結果は、MBPと融合された16KhPL由来傾斜ペプチドは内皮細胞においてアポトーシスを特異的に誘導できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くした。
【0165】
表5:MBPタンパク質と融合された16KhPLの傾斜ペプチドの配列。斜体で、疎水性分布を改変するように設計されている変異ペプチドを示す。
【0166】
【表5】

【0167】
実施例6.MBPと公知の傾斜ペプチドとの間の融合タンパク質の発現および生物活性
6.1. MBO−PO−SIVおよびMBP−PO−BA組み換え融合タンパク質の作製
【0168】
発明者らは、MBPと、機能が血管新生と関係しない二種類の公知のタンパク質の傾斜ペプチド、すなわちβ−アミロイドタンパク質(ピロット(Pillot), T.他, J Biol Chem 271: 28757−65(1996))およびサル免疫不全ウイルス(SIV)ウイルス(ホース(Horth), M.他, Embo J 10: 2747−55 (1991))との融合タンパク質も作製した。上記と同じ戦略を用いて、MBPおよび傾斜ペプチドから成る融合タンパク質を産生した。タンパク質名およびペプチド配列を表7に示す。融合タンパク質を上記の通り発現および精製した。これらペプチドの内皮細胞においてアポトーシスを誘導する能力を上記の通り評価した。結果は、MBPと融合されたβ−アミロイドタンパク質アミロイドおよびSIV融合タンパク質由来の傾斜ペプチドはアポトーシスを特異的に誘導し内皮細胞の増殖を阻害できることを明瞭に示す。疎水性残基の分布に影響する変異はこの活性を無くした。
【0169】
【表6】

【0170】
6.2.MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BA組み換えタンパク質の生物活性
【0171】
6.2.1.MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAは内皮細胞中のカスパーゼ3活性化を誘導する
【0172】
MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAがBACE細胞においてアポトーシスを誘導する能力を研究するために、発明者らは、カスパーゼカスケードの活性化を研究した。BACE細胞を漸増濃度の被験タンパク質で処理した。大腸菌産生16KhPRLを対照として用いた。処理の18時間後、細胞を溶解しおよびカスパーゼ3活性を測定した(カスペース(Caspace)アッセイシステム、プロメガ社(Promega))。図8に示す結果は、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAがカスパーゼ3活性を誘導することを示す。これらの結果は、MBPと融合された、サル免疫不全ウイルスの融合タンパク質由来の傾斜ペプチドおよびβ−アミロイドタンパク質由来の傾斜ペプチドが、内皮細胞中のカスパーゼ3活性化を特異的に誘導できることを明瞭に示す。
【0173】
6.2.2.MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAは内皮細胞増殖を阻害する
【0174】
ABAE細胞増殖を阻害するMBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAの能力を上記の通り研究した。図13に示す結果は、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAがABAE細胞増殖に対して用量依存性阻害作用を発揮することを示す。濃度160nMで、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAは、10nM大腸菌産生16KhPRLと同等の活性を示す。これらの結果は、MBPと融合された、サル免疫不全ウイルスの融合タンパク質由来の傾斜ペプチドおよびβ−アミロイドBタンパク質由来の傾斜ペプチドが、内皮細胞中のカスパーゼ3活性化を特異的に誘導できることを明瞭に示す。
【0175】
6.2.3.MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAはin vitroの毛細血管形成を妨げる
【0176】
MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAがBACE毛細血管形成をinvitroで阻害する能力を上記の通り研究した。図14に示す通り、コラーゲンゲルに含まれる場合、毛細血管様構造由来のBACE(パネルA)、160 nM MBP−PO−SIV(パネルB)およびMBP-PO−BA(パネルC)は、毛細血管構造形成を阻害できる。これらの結果は、MBPと融合された、サル免疫不全ウイルスの融合タンパク質由来の傾斜ペプチドおよびβ−アミロイドBタンパク質由来の傾斜ペプチドが、毛細血管ゲル形成を妨げることができることを示す。
【0177】
6.2.4.MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAはin vivoの毛細血管形成を妨げる
【0178】
MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAが毛細血管形成をin vivoで阻害する能力を上記の通り研究した。図15に示す通り、無血管範囲は40μgのMBP−PO−SIVまたはMBP−PO−BAを含むメチルセルロースディスク周囲の範囲に存在する。これらの結果は、MBPと融合された、サル免疫不全ウイルスの融合タンパク質由来の傾斜ペプチドおよびβ−アミロイドBタンパク質由来の傾斜ペプチドが、毛細血管新生をin vivoで妨げることができることを示す。
【0179】
実施例7.MBP−PO−PRL、MBP−PO−GHが内皮細胞の生存度を低減する能力は内皮細胞に特異的である
傾斜ペプチドの内皮細胞への作用が細胞特異的かどうかを決定するため、生存度検定を、BACEおよびABAE内皮細胞、および二種類の腫瘍細胞系、B16−F10マウスメラノーマ細胞およびMDA−MB−231ヒト乳がん細胞に対して実施した。生細胞を、細胞内エステラーゼの存在下で検出し、非蛍光カルセインAM(エステル誘導体)の蛍光カルセインへの酵素的変換によって測定する。
【0180】
25000個のBACEまたはABAE細胞を、10%FCS/DMEM培地0.5ml中の24−ウェルプレートに載せ、および組み換えタンパク質で24時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、1μMカルセイン−AMで30分間インキュベートした。次いで蛍光度を535nmにて蛍光測定器で測定した。生存度は蛍光の任意単位として表される。図16に示す通り、40nM MBP−PO−PRLおよび320nM MBP−PO−GHはともに内皮細胞型を減少させる一方、80nM MBP−POmut−PRL、640nM MBP−POmut−GHまたは640nM MBPは作用を示さない。陽性対照として、内皮細胞を10nM 16KhPRLでインキュベートした。
【0181】
MBP−PO−PRLおよびMBP−PO−GHの活性が内皮細胞に特異的であるかどうかを決定するため、B16−F10およびMDA−MB−231細胞系細胞系およびB16−F10細胞を、それぞれ0.5mlの10%のFCS/RPMI培地および10%FCS/DMEM4500培地中の24ウェルプレートに載せた。細胞を組み換えタンパク質またはカンプトテシンで72時間処理した。細胞を洗浄し、カルセイン−AMでインキュベートし、および蛍光を上記の通り決定した。図16に示す通り、10nmの16K hPRL、40nM MBP−PO−PRL、320nM MBP−PO−GHまたは640nM MBPは、B16−F10またはMDA−MB−231細胞生存度に影響を及ぼさない一方、カンプトテシンは影響する。これらの結果は、傾斜ペプチドの細胞生存度を低減する能力が内皮細胞に特異的であることを示す。同様の結果がMBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAでも得られた。
【0182】
実施例8.16KhPRLの傾斜ペプチドの斜角を破壊する変異はその抗血管新生活性を阻害する
8.1.MBP−16KhPRLおよびMBP−16KhPRLmut組み換え融合タンパク質の作製
【0183】
16KhPRLの傾斜ペプチド領域が抗血管新生活性を担うかどうかを決定するため、16KhPRLに変異を導入した。傾斜ペプチド配列FLSLIVSILRSWNE(配列番号3)を配列FNSLISSILRVWLE(配列番号10)で置換した。傾斜ペプチド領域で変異した16KhPRLおよび16KhPRLをMBPと融合させて作製した。傾斜ペプチド領域で変異した16KhPRLをMBP−16KhPRLmutと呼んだ。対照として、我々はMBPと融合した16KhPRLを作製しおよびそれをMBP−16KhPRLと呼んだ。
【0184】
16KhPRLおよび変異16KhPRLコード配列はPCRによる増幅によって得られた。PCRに使用したオリゴヌクレオチドは、XmnIおよびBamHI制限部位をそれぞれ16KhPRLまたは16KhPRLコード配列の上流および下流に含むように設計された。各構造の一つのクローンを選択し、および配列が配列決定によって検証された。組み換えタンパク質を上記の通り作製しおよび精製した。
【0185】
8.2.MBP−16KhPRLおよびMBP−16KhPRLmutの生物活性
【0186】
MBP−16KhPRLおよびMBP−16KhPRLmutがカスパーゼ3活性化を誘導する能力を上記の通り測定した。図17に示す通り、ABAE細胞をMBP−16KhPRLmutで処理した場合、MBP−16KhPRLとの比較で、カスパーゼ3の活性化は用量依存的な形で40〜50%低減された。これらの結果は、傾斜ペプチド領域が16KhPRLの活性に必須であることを示す。
【0187】
8.3.第二の傾斜ペプチド領域で変異したMBP−16KhPRLの作製
【0188】
上記と同一の手順を用いて、第二の傾斜ペプチドがhPRL配列中で同定された。この第二の傾斜ペプチドはPLYHLVTEVRGMQEA(配列番号8)である。
【0189】
16KhPRLのこの第二の傾斜ペプチド領域が16KhPRL抗血管新生活性に関与するかどうかを決定するため、16KhPRLのこの領域に変異を導入した。傾斜ペプチド配列PLYHLVTEVRGMQEA(配列番号8)を配列PQHYLETVVRGMLEA(配列番号9)で置換した。二つの傾斜ペプチド領域で変異した16KhPRLをと融合させて作製した。このタンパク質をMBP−16KhPRLmutPO1+2と呼んだ。
【0190】
MBP−16KhPRLmutPO1+2コード配列は、PCRによる増幅によって得られた。PCRに使用したオリゴヌクレオチドは、XmnIおよびBamHI制限部位をそれぞれ16KhPRLまたは16KhPRLコード配列の上流および下流に含むように設計された。各構造の一つのクローンを選択し、および配列が配列決定によって検証された。組み換えタンパク質を上記の通り作製しおよび精製した。
【0191】
8.4.MBP−16KhPRLおよびMBP−16KhPRLmutPO1+2の生物活性
【0192】
MBP−16KhPRLおよびMBP−16KhPRLmutPO1+2がカスパーゼ3活性化を誘導する能力を上記の通り測定した。図17パネルBに示す通り、カスパーゼ3の活性化は、MBP−16KhPRLとの比較でABAE細胞がMBP−16KhPRLmutPO1+2で処理された場合失われた。これらの結果は、両方の傾斜ペプチド領域が16KhPRLの抗血管新生活性に必要であることを示す。
【0193】
実施例9:16KhRPLは未変性条件で三量体である。
16KhPRLの見かけの分子量(app.M.M.)を未変性および変性条件下で測定した。16KhPRLをタブリュン(Tabruyn),S.P.,他 Mol Endocrinol 17:1815−23 (2003)に記載の通り作製した。図18に示す通り、変性条件下では、SDS−PAGEでの泳動プロファイルから推論した16KhPRLの見かけの分子量は約16000である。還元剤(s−メルカプトエタノール)の添加は泳動を変化させない。未変性条件での16KhPRLの見かけの分子量を測定するため、スーパーロース(Superose)12サイズ排除クロマトグラフィーを実施した。16KhPRLは、我々のカラム較正によると、見かけの分子量46700に相当する主要ピークに溶出する。この16KhPRLの計算分子量は15900であるため、このピークに溶出する16KhPRLはおそらく三量体形である。β−MEの添加はSDS−PAGE実施中の泳動プロファイルを変化させないため、これらの三量体は共有結合していない。イオン性界面活性剤または尿素のような変性剤の使用がこれらの多量体を分離する唯一の方法であるので、多量体が疎水性相互作用によって形成されることを示唆する。結果は16KhPRLが未変性条件で三量体であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、A.hPRLのタンパク質配列(配列番号14)を示す。hPRLタンパク質は二つの傾斜ペプチドを含む:傾斜ペプチド構造を取る可能性が高い領域は太字(1番傾斜ペプチド配列番号3)および斜体(2番傾斜ペプチド配列番号8)で強調されている。アルファへリックス領域は下線で示される(キーラー(Keeler),C.,他 J Mol Biol 328:1105−21 (2003))。B.PRL/GHファミリーの16K断片中の傾斜ペプチド領域の整列。
【図2】図2は、実施例3.4に記載の、IPTG誘導の5時間後のMBP−PO−PRLおよびMBP−POmut−PRL溶解度の12%SDS−PAGE分析を示す。MM:分子量マーカー;レーン1〜2:MBP−PO−PRL細胞溶解物上清;レーン3〜4:MBP−POmut−PRL細胞溶解物上清;レーン5〜6:MBP−PO−PRL細胞溶解物沈澱;レーン7〜8:MBP−Pomut−PRL細胞溶解物沈澱;1、3、5、7:培養のO.D.=1の150μl相当物が負荷された。2、4、6、8:培養のO.D.=1の300μl相当物が負荷された。矢印はMBP−PO−PRLまたはMBP−POmut−PRLタンパク質を示す。
【図3】図3は、実施例3.6.1に記載の、アポトーシスの誘導のフローサイトメトリーによる分析を示す。BACE細胞は、未処理のまま(A)、または10nME.coli産生16K hPRL(B)、40nM MBP−PO−PRL(C)、80nM MBP(D)または80nM MBP−POmut−PRL(E)で処理された。
【図4】図4は、実施例3.6.2に記載の、MBP−PO−PRL、MBP−POmut−PRLおよびMBPタンパク質によるカスパーゼ3の活性化を示す。基礎:未処理のBACE細胞。E.coli 16K hPRL:陽性対照。
【図5】図5は、実施例3.6.3に記載の、MBP−PO−PRLによるABAE細胞増殖の阻害を示す。
【図6】図6は、実施例4.2.1により、MBP−PO−GHがBACE細胞のカスパーゼ3の活性化を誘導することを示す。
【図7】図7は、実施例4.2.2に記載の、MBP−PO−GHによるABAE細胞増殖の阻害を示す。
【図8】図8は、実施例6.2.1により、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAがBACE細胞のカスパーゼ3の活性化を誘導することを示す。
【図9】図9は、MBP−PO−PRLが、実施例3.6.4に記載のコラーゲンゲル検定法において、毛細血管形成をin vitroで阻害することを示す。パネルA:未処理の細胞、パネルB:10nM 16K hPRL、パネルC:40nM MBP−PO−PRL、パネルD:80nM MBP−POmut−PRL。
【図10】図10は、MBP−PO−PRLが、実施例3.6.5に記載のニワトリ絨毛尿膜検定法において、毛細血管形成をin vivoで阻害することを示す。
【図11】図11は、実施例4.2.3に記載により、MBP−PO−GHが、コラーゲンゲル検定法において、毛細血管形成をin vitroで阻害することを示す。パネルA:未処理の細胞、パネルB:10nM 16K hPRL、パネルC:80nM MBP−PO−PRL、パネルD:160nM MBP−POmut−PRL。
【図12】図12は、実施例4.2.4により、MBP−PO−GHが、ニワトリ絨毛尿膜検定法において、毛細血管形成をin vivoで阻害することを示す。
【図13】図13は、実施例6.2.2に記載の、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAによる内皮細胞増殖の阻害を示す。
【図14】図14は、実施例6.2.3により、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAが、コラーゲンゲル検定法において、毛細血管形成をin vitroで阻害することを示す。パネルA:未処理の細胞、パネルB:160nM MBP−PO−SIV、パネルC:160nM MBP−PO−BA。
【図15】図15は、実施例6.2.4により、MBP−PO−SIVおよびMBP−PO−BAが、コラーゲンゲル検定法において、毛細血管形成をin vitroで阻害することを示す。
【図16】図16は、実施例7により、MBP−PO−PRLおよびMBP−PO−GHが、内皮細胞(BACEおよびABAE細胞)の生存度を低減するが、腫瘍状(B16−F10およびMDA−MB−231)細胞は低減しないことを示す。
【図17】図17は、実施例8により、MBPと融合されおよび傾斜ペプチド領域で変異した16K hPRL (MBP−16K hPRLmut)(パネルA)は、MBPと融合された非変異16K hPRL(MBP−16K hPRL)よりも、内皮細胞においてカスパーゼ 3 活性化を誘導する能力が低かった。16K hPRLの両方の傾斜ペプチドの変異は、16 K hPRL活性を完全に廃する(パネルB)(実施例8.3および8.4)。
【図18】図18は、実施例9により、16K hPRLは変性条件では単量体であるが未変性条件では三量体であることを示す。パネルA:16K hPRLの17% ポリアクリルアミド SDS−PAGE。レーン1〜3:(−MEの存在下でのSDS−PAGE。レーン1:精製16KhPRL。レーン2:分子量マーカー。レーン3:この主題とは無関係のタンパク質。レーン4:(−MEの非存在下でのSDS−PAGE:精製16KhPRL。右側に、マーカーの分子量が示される(kDaで)。パネルB:16KhPRLのスーパーロース(Superose)12分子篩での分析サイズ排除クロマトグラフィー。A:デキストランブルー(ピーク1)、二量体(ピーク2)および単量体BSA(ピーク3)、オボアルブミン(ピーク4)およびミオグロビン(ピーク5)を用いたカラムの較正;B:16KhPRL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗血管新生ペプチドまたはその抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含む、ペプチドが長さ11ないし40アミノ酸でありおよび抗血管新生活性を有し、前記ペプチドがアミノ酸配列:
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14を含み、
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X2はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X3はArg、Lys、His、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X6はLeu、Ile、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Ile、Val、Ser、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Asp、Arg、His、Lys、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X11はSer、Thrのうちのアミノ酸残基である;
X12はTrp、Tyr、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X13はLeu、Ile、Val、Asn、Glnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGlu、Gln、Asp、Asnのうちのアミノ酸残基である、
医薬組成物。
【請求項2】
X1はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはPhe、Leuである;
X2はLeuのアミノ酸残基である;
X3はArg、Seのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X5はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはIle、Serである;
X6はLeu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Serのうちのアミノ酸残基である;
X8はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはIle、Leuである;
X9はへリックスの形成に適合する任意のアミノ酸残基、好ましくはLeu、Ileである;
X10はGln、Glu、Argのうちのアミノ酸残基である;
X11はSerのアミノ酸残基である;
X12はTrpのアミノ酸残基である
X13はLeu、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGluのアミノ酸残基である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
X1はLeu、Pheのうちのアミノ酸残基である;
X2はLeuのアミノ酸残基である;
X3はArg、Seのうちのアミノ酸残基である;
X4はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X5はSer、Ileのうちのアミノ酸残基である;
X6はLeu、Valのうちのアミノ酸残基である;
X7はLeu、Serのうちのアミノ酸残基である;
X8はLeu、Ileのうちのアミノ酸残基である;
X9はIle、Leuのうちのアミノ酸残基である;
X10はGln、Glu、Argのうちのアミノ酸残基である;
X11はSerのアミノ酸残基である;
X12はTrpのアミノ酸残基である
X13はLeu、Asnのうちのアミノ酸残基である;
X14はGluのアミノ酸残基である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ペプチドのアミノ酸配列X1〜X14が下記の配列のうちの一つに対して少なくとも71%、好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも85%および非常に好ましくは少なくとも92%同一性を有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の医薬組成物:
a)Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1);
b)Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2);
c)Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3);置換されたアミノ酸残基は相同なアミノ酸残基によって置換されている。
【請求項5】
ペプチドのアミノ酸配列X1〜X14が傾斜ペプチドを表す、請求項1から4のうちいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項6】
傾斜ペプチドの計算平均疎水性が0.1より高く、および傾斜ペプチドが、ペプチドの三次元構造がアルファ−へリックスとして配置されるならばペプチドの計算疎水性アイソポテンシャルが非対称でありおよび計算最小エネルギー立体配座が疎水性/親水性界面方向でありおよび、へリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が30°ないし70°であるという特徴によって定義される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
傾斜ペプチドの計算平均疎水性が0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.5より高く、より好ましくは0.8より高くおよび非常に好ましくは0.9より高い、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
傾斜ペプチドのへリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が35°ないし65°、好ましくは40°ないし60°、および非常に好ましくは40°ないし50°である、請求項5から7のうちいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項9】
下記の物質のうち一つ以上を含む医薬組成物:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH、hGH−v)を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
e)a)からd)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基で置換されているペプチド;
f)a)からe)のペプチド配列のうちいずれか一つを含む組み換えタンパク質;
g)a)からe)のうちいずれか一つの抗血管新生ペプチドをコードするかまたはf)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド;または
前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む医薬組成物。
【請求項11】
ペプチドが傾斜ペプチドに相当する、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
アミノ酸配列X1〜X14、ペプチドまたは組み換えタンパク質がそれぞれ、三量体構造を形成する、請求項1から11のうちいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項13】
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
c)a)またはb)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;
d)a)からc)のペプチド配列を含む組み換えタンパク質;
e)a)からc)の抗血管新生ペプチドをコードするかまたはd)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
:の群から選択されるペプチド。
【請求項14】
配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド、または
前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む組成物。
【請求項15】
ペプチドまたは組み換えタンパク質がそれぞれ、三量体構造を形成する、請求項13に記載のペプチドまたは請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項13から15に記載のペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項17】
血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための、請求項1から16のうちいずれか一つで定義される抗血管新生ペプチドの、または請求項1から16のうちいずれか一つで定義される抗血管新生ペプチドをコードするかまたは抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項18】
血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための、下記の物質のうち一つ以上の使用:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH、hGH−v)を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド;
e)配列 Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met Leu Gly Ser Ala Met Ser (配列番号5)(プリオン)を有するペプチド;
f)配列 Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala (配列番号6)(β−アミロイド)を有するペプチド;
g)配列 Gly Val Phe Val Leu Gly Phe Leu Gly Phe Leu Ala (配列番号7)(SIV融合タンパク質)を有するペプチド;
h)下記の配列のうちいずれか一つを有するペプチド:
Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val (配列番号24)(β−アミロイド)、
Ala Val Gly Ile Gly Ala Leu Phe Leu Gly Phe Leu (配列番号25)(HIV)、
Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly (配列番号26)(Prp106−126(プリオン))、
Phe Ala Gly Val Val Leu Ala Gly Ala Ala Leu Gly (配列番号27)(麻疹ウイルス)、
Phe Ile Gly Ala Ile Ile Gly Ser Val Ala Leu Gly Val Ala Thr Ala Ala Gly (配列番号28)(NDV)、
Phe Leu Gly Phe Leu Leu Gly Val Gly Ser Ala Ile Ala Ser Gly Val Ala (配列番号29)(ラウス肉腫ウイルス)、
Phe Phe Gly Ala Val Ile Gly Thr Ile Ala Leu Gly Val Ala Thr Ser Ala (配列番号30)(センダイウイルス)、
Ser Pro Val Ala Ala Leu Thr Leu Gly Leu Ala Leu (配列番号31)(BLV)、
Gly Pro Val Ser Leu Thr Leu Ala Leu Leu Leu Gly Gly Leu Thr Met Gly (配列番号32)(MLV)、
Gly Ala Ala Ile Gly Leu Ala Trp Ile Pro Tyr Phe Gly Pro Ala Ala Glu (配列番号33)(エボラ)、
Met Leu Leu Gln Ala Phe Leu Phe Leu Leu Ala Gly Phe Ala Ala Lys Ile Ser Ala (配列番号34)(酵母インベルターゼSP)、
Arg Pro Ala Leu Leu Ala Leu Leu Ala Leu Pro Ala (配列番号35)(アポB100SP)、
Val Thr Val Val Leu Trp Ser Ala Tyr Pro Val Val Trp Leu Ile Gly (配列番号36)(1bct 177)、
Gly Ala Gly Ile Val Pro Leu Asn Ile Glu Thr Leu Leu Phe Met Val Leu Asp (配列番号37)(1bct 195)、
Ile Lys Lys Ala Gly Thr Glu Leu Val Asn Phe Leu Ser Tyr Phe Val Glu Leu (配列番号38)(アポA−II)、
Ala Ser Leu Leu Ser Phe Met Gln Gly Tyr Met Lys His Ala Thr (配列番号39)(アポC−III)、
Phe Gly Phe Pro Glu His Leu Leu Val Asp Phe Leu Gln Ser Leu Ser (配列番号40)(CETP)、
Asp Phe Phe Thr Ile Trp Leu Asp Leu Asn Met Phe Leu (配列番号41)(LCAT)、
Phe Leu Glu Leu Tyr Arg His Ile Ala Gln His Gly Phe (配列番号42)(HLP)、
Ile Gly Glu Ala Ile Arg Val Ile Ala Glu Arg Gly Leu (配列番号43)(LPL)、
Gly Leu Phe Gly Ala Ile Ala Gly Phe Ile Glu Asn Gly Trp Glu Gly Met Ile Asp Gly (配列番号44)(インフルエンザHA−2)、
Met Glu Asn Ile Thr Ser Gly Phe Leu Gly Pro Leu Leu Val Leu Gln (配列番号45)(B型肝炎、Sタンパク質)、
Thr Glu Leu Val Asn Phe Leu Ser Tyr Phe Val Glu Leu (配列番号 46) (ヒト・アポA−II サカシンP)、
Val Ile Gly Thr Asn Ala Val Ser Ile Glu Thr Asn Ile Glu (配列番号47)(メルトリン)、
Asp Ser Thr Lys Cys Gly Lys Leu Ile Cys Thr Gly Ile Ser Ser Ile Pro (配列番号 4) (フェルチリン(Fertiline))、
Ala Ser Leu Leu Ser Phe Met Gln Gly Tyr Met Lys His Ala Thr (配列番号13)(アポC−III)、
i)a)からh)のペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;
j)a)からi)のペプチド配列のうちいずれか一つを含む組み換えタンパク質;
k)a)からi)のうちいずれか一つの抗血管新生ペプチドをコードするかまたはj)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号3および配列番号8の配列をそれぞれ有する二種類のペプチド、または
前記ペプチドに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%および非常に好ましくは少なくとも90%同一性を有し、置換アミノ酸残基が好ましくは相同なアミノ酸残基によって置換されているペプチド;または
前記ペプチド配列を別個にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質;または
前記抗血管新生ペプチドをコードするかまたはまたは前記組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
を含む組成物の、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための薬剤の製造のための使用。
【請求項20】
ペプチドまたは組み換えタンパク質がそれぞれ、三量体構造を形成する、請求項17から19のうちいずれか一つに記載の使用。
【請求項21】
請求項1から16のうちいずれか一つに記載のペプチドまたは組み換えタンパク質またはポリヌクレオチドの治療上有効な用量が患者に投与される、血管新生関連疾患の予防および/または治療処置のための方法。
【請求項22】
a)抗血管新生性を有しおよび11〜20アミノ酸の長さを有する傾斜ペプチド;
b)a)のペプチドを含む組み換えタンパク質;
c)a)のペプチドまたはb)の組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド
:の群から選択される物質を含む医薬組成物。
【請求項23】
ペプチドの計算平均疎水性が0.1より高く、および傾斜ペプチドが、ペプチドの三次元構造がアルファ−へリックスとして配置されるならばペプチドの計算疎水性アイソポテンシャルが非対称でありおよび計算最小エネルギー立体配座が疎水性/親水性界面方向でありおよび、へリックス軸と、疎水性相と親水性相との間の界面平面との間の計算角度が30°ないし70°であるという特徴によって定義される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ペプチドの計算平均疎水性が0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.5より高く、より好ましくは0.8より高くおよび非常に好ましくは0.9より高い、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ペプチドのへリックス軸と、疎水性相および親水性相の界面平面との間の計算角度が35°ないし65°、好ましくは40°ないし60°、および非常に好ましくは40°ないし50°である、請求項22から24のうちいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項26】
単離された抗血管新生ペプチド、または抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、前記ペプチドが傾斜ペプチドでありおよびプロラクチン(PRL)−成長ホルモンファミリー(GH)のタンパク質に由来する、医薬組成物。
【請求項27】
単離された抗血管新生ペプチド、または抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)−成長ホルモンファミリー(GH)のタンパク質に由来しおよび下記の配列のうちいずれか一つを有する、医薬組成物:
a)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Gln Ser Trp Leu Glu (配列番号1)(hGH、hGH−v)を有するペプチド;
b)配列 Leu Leu Arg Ile Ser Leu Leu Leu Ile Glu Ser Trp Leu Glu (配列番号2)(hPL)を有するペプチド;
c)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
d)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド。
【請求項28】
単離された抗血管新生ペプチド、または抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)タンパク質に由来し、抗血管新生ペプチドまたはその配列がそれぞれ、下記の配列のうちいずれか一つを有する、医薬組成物:
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号 3) (hPRL) を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号 8) (hPRL)を有するペプチド。
【請求項29】
二種類の単離された抗血管新生ペプチド、または前記抗血管新生ペプチドを別々にまたは組み合わせて含む組み換えタンパク質を含み、抗血管新生ペプチドがプロラクチン(PRL)タンパク質に由来しおよび下記の配列を有する、医薬組成物:
a)配列 Phe Leu Ser Leu Ile Val Ser Ile Leu Arg Ser Trp Asn Glu (配列番号3)(hPRL)を有するペプチド;
b)配列 Pro Leu Tyr His Leu Val Thr Glu Val Arg Gly Met Gln Glu Ala (配列番号8)(hPRL)を有するペプチド。
【請求項30】
抗血管新生ペプチドをコードするかまたは請求項22から29のうちいずれか一つの抗血管新生ペプチドを含む組み換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−509968(P2008−509968A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526451(P2007−526451)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053952
【国際公開番号】WO2006/018418
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507050333)
【出願人】(507050344)ファキュルト ユニヴェルシテール ド サイエンス アグロノミク ド ジャンブルー (1)
【Fターム(参考)】