説明

抗骨粗鬆症剤

【課題】 近年の高齢化社会の重要な問題点として、骨密度が低下し骨がもろくなる骨粗鬆症の発生が挙げられる。骨粗鬆症は、骨の湾曲、痛み、骨折などの症状を伴い、有効な治療方法が求められている。本発明は、セサミンを含有するとともに、安全性が高く、かつ、優れた抗骨粗鬆症効果を有する抗骨粗鬆症剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 セサミン類と、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗骨粗鬆症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の重要な問題点として、骨密度が低下し骨がもろくなる骨粗鬆症の発生が挙げられる。骨粗鬆症は、骨の湾曲、痛み、骨折などの症状を伴い、有効な治療方法が求められている。
骨粗鬆症の治療薬としては活性型ビタミンD3 、女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン、ビスフォスフォネート、ビタミンKなどが挙げられるが、絶大な効果は期待できない。また、骨粗鬆症は、適切な運動や日常摂取する食品に留意して予防することが重要である。上記食品にに関して言えば、カルシウムを多く含む乳製品や魚類の摂取が推奨されている。さらに、カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、カゼインホスホペプチド(腸管からのカルシウム吸収を促進する作用があると言われている)などを含む健康食品の利用も推奨されている。
また、下記特許文献1には、有効成分としてビタミンKと大豆ソフラボンとを含有し、乾燥重量中のビタミンK濃度が100ppm以上、かつ大豆イソフラボン濃度が5000ppm以上である抗骨粗鬆症剤が提案されている。
【0003】
一方、セサミンはゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種であり、ゴマ中には0.5−1%程度含まれている。セサミンには多くの生理活性があることが知られ、例えば、抗酸化作用、抗高血圧作用、抗炎症作用等が公知である。
また、セサミンには骨形成に影響を及ぼすことも知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特許第3250071号明細書
【特許文献2】特開2003−522787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、セサミンを含有するとともに、安全性が高く、かつ、優れた抗骨粗鬆症作用を有する抗骨粗鬆症剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を加えた組成物が、セサミン類のみを用いる場合よりも、顕著に優れた抗骨粗鬆症作用を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
請求項1に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項2に記載の発明は、セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項3に記載の発明は、セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セサミン類に、ビタミンEおよび/またはコエンザイムQ10を配合したので、セサミン類がそもそも有する抗骨粗鬆症作用を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(セサミン類)
本発明に用いることができるセサミン類としては、セサミン及びその類縁体を含むものであり、セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン及びエピセサミンが好ましい。
【0009】
なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ごま油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。
【0010】
(コエンザイムQ10)
コエンザイムQ10は、別名、補酵素Q10、ビタミンQ、ユビキノン及びユビデカレノンとして知られ、商業的に入手可能な化合物である。なお、コエンザイムQ10は、還元型のものが抗骨粗鬆症作用に優れるために好ましい。還元型のコエンザイムQ10を得る方法としては特に限定されず、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法によりコエンザイムQ10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型コエンザイムQ10区分を濃縮する方法などを採用することが出来る。この場合には、必要に応じて上記コエンザイムQ10に対し、水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)等の一般的な還元剤を添加し、常法により上記コエンザイムQ10中に含まれる酸化型コエンザイムQ10を還元して還元型コエンザイムQ10とした後にクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、既存の高純度コエンザイムQ10に上記還元剤を作用させる方法によっても得ることが出来る。
【0011】
(ビタミンE)
本発明でいうビタミンEとは、誘導体類も含むものであり、その例としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。
【0012】
本発明の抗骨粗鬆症剤において、セサミン類を1としたとき(質量基準)、ビタミンEを0.1〜10、コエンザイムQ10を0.1〜10の割合で配合するのが好ましい。
【0013】
なお、セサミン類の1日あたりの摂取量は、通常1〜60mg、好ましくは5〜60mg、コエンザイムQ10の1日あたりの摂取量は、通常1〜300mgの範囲、好ましくは10〜100mg、ビタミンEの1日あたりの摂取量は、通常10mg〜800mgであるので、本発明の抗骨粗鬆症剤のヒト摂取量は、この範囲内におさまるようにするのが望ましい。
【0014】
また本発明の抗骨粗鬆症剤には、その効果を損なわない限り、任意の所望成分を配合することができる。例えば、ビタミンC等のビタミン類やソフトカプセルを調製する時に通常配合される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
【0015】
本発明の抗骨粗鬆症剤は、その形態を特に制限するものではないが、公知の方法によりマイクロカプセル、ソフトカプセル又はハードカプセルに封入してカプセル化することが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。なお、実施例1〜3で使用したコエンザイムQ10は、日清ファルマ株式会社製のコエンザイムQ10であり、ビタミンEは、α−トコフェロールである。
【0017】
実施例1
セサミン類としては、セサミン(竹本油脂製、セサミン:エピセサミン=56:44)を用いた。
セサミンおよびビタミンEをオリーブ油に溶解させ、本実施例の試験試料とした。
【0018】
上記試験試料について、抗骨粗鬆症効果を調べるため、以下の動物実験を行った。
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、前記試験試料を、セサミン摂取量が1mg/kgおよびビタミンEの摂取量が5mg/kgとなるように経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、前記試験試料を含まないオリーブ油をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も併せて、その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例1と比較例とを対比したところ、実施例1はp<0.05の危険率で有意差が認められた。
【0021】
実施例2
実施例1において、セサミンの摂取量を0.5mg/kgとなるようにしたこと以外は、実施例1を繰り返した。その結果、実施例2の骨密度は1.076±0.004mg/mmであった。
【0022】
比較例1
実施例1において、ビタミンEを使用しないこと以外は実施例1を繰り返した。その結果、骨密度は1.011±0.007mg/mmであった。
【0023】
実施例3
実施例1において、ビタミンEの替わりにコエンザイムQ10を使用したこと以外は実施例1を繰り返した。コエンザイムQ10の投与量も実施例1と同じである(5mg/kg)。その結果、骨密度は1.085±0.004mg/mmであった。
【0024】
実施例4
実施例1において、セサミンおよびビタミンEにさらに加えてコエンザイムQ10を使用したこと以外は実施例1を繰り返した。コエンザイムQ10の投与量も実施例1と同じである(5mg/kg)。その結果、骨密度は1.091±0.007mg/mmであった。
【0025】
実施例5
セサミン 0.25g
酢酸トコフェロール 0.25g
コエンザイムQ10 0.1g
無水ケイ酸 20.5g
トウモロコシデンプン 79g
を均一に混合した。この化合物に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通りねつ和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
【0026】
実施例6
セサミン 3.5g
酢酸トコフェロール 0.5g
コエンザイムQ10 0.5g
無水ケイ酸 20g
微結晶セルロース 10g
ステアリン酸マグネシウム 3g
乳糖 60g
を混合し、単発式打錠機にて打錠して経7mm、重量100mgの錠剤を製造した。
【0027】
実施例7
ゼラチン 70.0%
グリセリン 22.9%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
計 100%
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得た。
セサミン/エピセサミン(1:1)混合物 10.8%
α−トコフェロール 20%
コエンザイムQ10 5%
小麦ビーズワックス 30%
パーム油 10%
小麦胚芽油 適宜
計 100%
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の抗骨粗鬆症剤は、医薬、食品、飼料、ペットフードの形態として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類と、ビタミンEとを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤。
【請求項2】
セサミン類と、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤。
【請求項3】
セサミン類と、ビタミンEと、コエンザイムQ10とを含有することを特徴とする抗骨粗鬆症剤。

【公開番号】特開2009−114106(P2009−114106A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287547(P2007−287547)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】