説明

抗A型インフルエンザウイルス中和抗体およびその使用

本発明は、赤血球凝集素に結合しA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプおよびグループ2サブタイプを中和する、抗体およびその抗原結合断片に関する。また、本発明は、かかる抗体および抗体断片をコードする核酸と、かかる抗体および抗体断片を産生する不死化B細胞および培養された単一血漿細胞と、かかる抗体および抗体断片に結合するエピトープと、にも関する。さらに、本発明は、スクリーニング方法、ならびにA型インフルエンザウイルス感染の診断、治療、および予防における、該抗体、抗体断片、およびエピトープの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれ2008年7月25日および2009年5月27日に出願された、米国仮出願第61/083,838号および第61/181,582号の優先権の利益を主張し、それらの開示は、参照することにより、それらの全体が本明細書に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
A型インフルエンザウイルスに対する中和抗体応答は、所与のウイルスサブタイプに対して特異的であると考えられている。赤血球凝集素(HA)によって定義される、16個のA型インフルエンザサブタイプがある。この16個のHA、つまりH1〜H16は、2つのグループに分類することができる。グループ1は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、およびH16のサブタイプからなり、グループ2には、H3、H4、H7、H10、H14、およびH15のサブタイプが含まれる。トリには全てのサブタイプが存在するが、ヒトではほとんどH1、H2、およびH3のサブタイプが疾患を生じさせる。H5、H7、およびH9のサブタイプは、ヒトにおいて孤発型の重度の感染を生じさせており、新たな世界的流行を発生し得る。H1およびH3ウイルスは絶え間なく進化して新たな変異体を生成する(抗原連続変異と呼ばれる現象)。その結果、過去のウイルスに応答して産生された抗体は、新たな連続変異ウイルスに対する防御が乏しいか、または全くない。その結果、出現することが予測されるH1およびH3ウイルスに対する新たなワクチンを毎年産生しなければならず、このプロセスは非常に費用がかかり、また常に効率的であるとは限らない。H5インフルエンザワクチンの産生にも同様のことが当てはまる。実際、ベトナムまたはインドネシアのA型インフルエンザウイルス分離株に基づく現在のH5ワクチンが、将来のH5ウイルスの世界的流行を防御するかどうかは、定かではない。
【0003】
これらの理由から、全てのA型インフルエンザウイルスサブタイプ、ならびにそれらの例年の変異体を中和することができる、広範に中和する抗体を誘発するワクチンを有することが非常に望ましいであろう(Gerhard et al.,2006により概説)。さらに、広範に中和するヘテロサブタイプ抗体は、予防的または治療的設定において使用され得る。
【0004】
A型インフルエンザウイルスを認識する抗体は、特徴付けられている。M2(感染細胞上には発現するが、感染性ウイルス上には発現しない不変の低分子タンパク質)に対する抗体は、おそらく感染細胞をNK細胞または細胞傷害性T細胞による破壊の標的とすることによって、生体内で何らかの防御効果を示している。しかし、HAが中和抗体の主要な標的である。それは宿主由来の酵素によって切断されて、ジスルフィド結合によって結合されたままである2つのポリペプチドを生成する、約500個のアミノ酸の大きな外部ドメインからなる。より大きなN末端断片(HA1、320−330個のアミノ酸)は、受容体結合部位およびウイルス中和抗体によって認識されるほとんどの決定因子を含有する、膜遠位球状ドメインを形成する。より小さなC末端部分(HA2、約180個のアミノ酸)は、球状ドメインを細胞膜またはウイルス膜に固定するステム様構造を形成する。サブタイプ間の配列相同性の程度は、HA2ポリペプチド(51%〜80%の相同性)においてよりも、HA1ポリペプチド(サブタイプ間で34%〜59%の相同性)においての方が小さい。最も保存された領域は、切断部位周辺、特に融合ペプチドと称されるHA2のN末端の11個のアミノ酸の配列であり、これは、全てのA型インフルエンザウイルスのサブタイプの間で保存される。この領域の一部は、HA前駆体分子(HAO)内で表面ループとして曝露されるが、HAOがHA1/HA2に切断されるとアクセス不可能になる。要約すれば、異なるHAサブタイプ間、特にHA1−HA2接合領域およびHA2領域において、保存される領域が存在する。しかしながら、これらの領域は、中和抗体にはアクセスされにくい可能性がある。
【0005】
2つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプを中和させる抗体を識別することにはあまり成功しておらず、それらの中和の幅は限られており、それらの力価は低い。Okunoらは、インフルエンザウイルスA/Okuda/57(H2N2)でマウスを免疫化し、HA2の保存されている立体構造エピトープに結合し、動物モデルにおいて生体内および生体外でグループ1のH2、H1、およびH5サブタイプのA型インフルエンザウイルスを中和するモノクローナル抗体(C179)を単離した(Okuno et al.,1993;Smirnov et al.,1999;Smirnov et al.,2000)。
【0006】
近年、Gioiaらは、従来の季節性インフルエンザワクチンを受けた数人の血清中におけるH5N1ウイルス中和抗体の存在について記載した(Gioia et al.,2008)。著者らは、その中和活性はノイラミニダーゼ(N1)に対する抗体のためであると示唆している。しかしながら、モノクローナル抗体は単離されておらず、標的エピトープも特徴付けられなかった。血清抗体が他のA型インフルエンザウイルスのサブタイプを中和し得るかは明らかではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
数十年におよぶ研究にもかかわらず、A型インフルエンザウイルス感染を広範に中和または抑制するか、またはA型インフルエンザウイルスに起因する疾患を低減させる、市販の抗体は存在しない。したがって、複数のA型インフルエンザウイルスのサブタイプに対して保護する新規抗体を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、HAと結合し、2つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプの感染を中和する自然発生のヒトモノクローナル抗体による季節性インフルエンザワクチンを接種された人からの単離物、および本発明における抗体が結合する新規エピトープに一部基づく。したがって、本発明の1つの態様では、本発明は、グループ1およびグループ2のサブタイプから選択される2つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプへの感染を中和させる抗体および抗原結合断片を含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、本発明は、グループ1およびグループ2のサブタイプであるA型インフルエンザ感染を中和する抗体またはその抗原結合断片を含む。本発明の別の実施形態において、本発明は、配列番号1〜6または17〜22うちのいずれか1つと少なくとも95%の配列相同性を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)配列を含む抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体はA型インフルエンザウイルス感染を中和する。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明は、配列番号1または配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1と、配列番号2または配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2と、配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とを含み、該抗体はA型インフルエンザウイルスを中和する。本発明のさらに別の実施形態において、本発明は、配列番号4または配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1と、配列番号5または配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2と、配列番号6または配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とを含む、抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体はA型インフルエンザウイルスを中和する。
【0011】
本発明のまた別の実施形態において、本発明は、抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含有する軽鎖可変領域、または配列番号33のアミノ酸配列を含有する重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号29のアミノ酸配列を含有する重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、該抗体は、A型インフルエンザウイルスを中和する。本発明はさらに、抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体はFI6変異体1またはFI6変異体2である。
【0012】
本発明のまた別の実施形態において、本発明は、抗体またはその抗原結合断片を含み、A型インフルエンザウイルスにおけるグループ1およびグループ2のサブタイプへの感染を中和し、該抗体またはその断片は、不死化B細胞クローンにより発現される。
【0013】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子を含む。さらに別の態様において、本発明は、本発明における核酸分子を含むベクター、または本発明における抗体またはその抗原結合断片を発現する細胞を含む。また別の態様において、本発明は、本発明の抗体または抗原結合断片に結合するエピトープを含む、単離または精製された免疫原性ポリペプチドを含む。
【0014】
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片、本発明の核酸分子、または本発明の核酸分子を含むベクター、本発明の抗体または抗体断片を発現する細胞、または本発明の免疫原性ポリペプチドと、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と、を含む、医薬組成物をさらに含む。本発明はまた、第1の抗体またはその抗原結合断片と、第2の抗体またはその抗原結合断片と、を含む医薬組成物を含み、該第1の抗体は本発明の抗体であり、該第2の抗体はA型インフルエンザ感染を中和する抗体または抗原結合断片である。
【0015】
(i)A型インフルエンザ感染の治療のための薬物の製造における、(ii)ワクチンにおける、または(iii)A型インフルエンザ感染の診断における、本発明の抗体、またはその抗原結合断片、本発明の核酸、本発明の核酸を含むベクター、本発明のベクターを含む細胞、本発明の抗体またはその抗体断片に結合するエピトープを含む、単離または精製された免疫原生ポリペチド、または本発明の医薬組成物の使用は、本発明の範囲内であることが企図される。さらに、本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用であって、該ワクチンの抗原が正しい立体構造の特定のエピトープを含有していることを確認することにより、A型インフルエンザのワクチンの品質を監視するための使用も、本発明の範囲内であることが企図される。
【0016】
別の態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の減少、またはA型インフルエンザウイルス感染への危険性の低下の1つの方法を含み、その方法は、それらを必要とする対象に本発明の抗体または抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、(i)治療における、(ii)A型インフルエンザウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(iii)ワクチンとしての、または(iv)A型インフルエンザウイルス感染を中和することが可能なリガンドのスクリーニングにおける、使用のための、本発明の抗体またはその抗原結合断片に特異的に結合するエピトープを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、季節性A型インフルエンザワクチンを接種された人からの、広範でA型インフルエンザウイルスの異なるサブタイプを中和する自然発生のヒト抗体および本発明の抗体が結合する新規エピトープ、の発見および単離に一部基づいている。少数または1つの抗体のみがA型インフルエンザウイルスを中和するために必要であるため、そういった抗体が望ましい。また、そういった抗体によって認識されるエピトープは、広範で季節性および世界的流行候補株である異なるサブタイプに対する保護を誘発するワクチンの一部であり得る。
【0019】
したがって、一態様において、本発明は、グループ1およびグループ2における少なくとも2つのA型インフルエンザを中和する抗体およびその抗原結合断片を提供する。一実施形態において、本発明は、抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片はA型インフルエンザのグループ1およびグループ2のサブタイプへの感染を中和する。
【0020】
本発明における別の態様としては、A型インフルエンザウイルスのサブタイプのHAに対して広範の特異性を保持する、中和抗体およびその抗原結合断片を提供する。一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、グループ1およびグループ2から選択されるA型インフルエンザウイルスの2つ以上のサブタイプの間で保存されるHAのステム領域内においてエピトープと特異的に結合する。別の実施形態においては、本発明の抗体または抗原結合断片は、配列番号37、38、39、または40のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に結合する。
【0021】
ヒトモノクローナル抗体,不死化されたB細胞クローンまたは本発明の抗体を分泌するトランスフェクトされた宿主細胞、および本発明の抗体をコードする核酸もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0022】
本明細書で使用される、「抗原結合断片」、「断片」、および「抗体断片」という用語は、抗体の抗原結合活性を保持する本発明の抗体のいずれの断片をも意味するために同義に使用される。例示的な抗体断片は、これらに限定されないが、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、またはscFvを含む。本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗体およびその抗原結合断片の双方を含む。
【0023】
本明細書で使用される「広範囲な特異性」という用語は、A型インフルエンザウイルスの1つ以上のグループ1サブタイプおよび1つ以上のグループ2サブタイプと結合および/または中和する本発明の抗体または抗原結合断片を意味するために使用される。
【0024】
本明細書で使用される「中和抗体」という用語は、病原体が宿主において感染を開始/および持続させる能力を中和する、すなわち、それらの予防、阻止、低減、遅延、または妨害する抗体である。本明細書で使用される「中和抗体」および「中和する抗体」という用語は、本明細書において同義に使用される。これらの抗体は、適切な処方で、予防薬もしくは治療薬として、能動ワクチン接種と対合して、または本明細書に記載されるような診断ツールまたは生成ツールとして、単独または組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明の抗体または抗原結合断片は、グループ1(H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、およびH16およびそれらの変異体)の1つ以上のA型インフルエンザウイルス、およびグループ2(H3、H4、H7、H10、H14およびH15およびそれら変異体)サブタイプの1つ以上のA型インフルエンザウイルスを中和する。一実施形態において、例示的なグループ1サブタイプは、H1、H2、H5、H6、およびH9を含み、また、例示的なグループ2サブタイプはH3 およびH7を含む。
【0026】
本発明の抗体および抗体断片は、A型インフルエンザウイルスサブタイプの様々な組み合わせを中和する能力を持つ。一実施形態において、抗体は、A型インフルエンザウイルスのH1およびH3サブタイプ、またはH2およびH3サブタイプ、またはH3およびH5サブタイプ、またはH3およびH9サブタイプ、またはH1およびH7サブタイプ、またはH2およびH7サブタイプ、またはH5およびH7サブタイプ、またはH7およびH9サブタイプを中和することができる。
【0027】
別の実施形態において、本発明の抗体および抗体断片は、A型インフルエンザウイルスのH1、H2およびH3サブタイプ、またはH1、H3およびH5サブタイプ、またはH1、H3、およびH9サブタイプ、またはH2、H3、およびH5サブタイプ、またはH2、H3、およびH9サブタイプ、またはH3、H5、およびH9サブタイプ、またはH1、H2、およびH7サブタイプ、またはH1、H5、およびH7サブタイプ、またはH1、H7、およびH9サブタイプ、またはH2、H5、およびH7サブタイプ、またはH2、H7、およびH9サブタイプ、またはH5、H7、およびH9サブタイプ、またはH1、H3、およびH7サブタイプ、またはH2、H3、およびH7サブタイプ、またはH3、H5、およびH7サブタイプ、またはH3、H7、およびH9サブタイプを中和することができる。
【0028】
さらに別の実施形態においては、抗体は、A型インフルエンザウイルスのH1、H2、H3、およびH7サブタイプ、またはH1、H3、H5、およびH7サブタイプ、またはH1、H3、H7、およびH9サブタイプ、またはH2、H3、H5、およびH7サブタイプ、またはH2、H3、H7、およびH9サブタイプ、またはH3、H5、H7、およびH9サブタイプ、またはH1、H2、H3、およびH5サブタイプ、またはH1、H2、H3、およびH9サブタイプ、またはH1、H3、H5、およびH9サブタイプ、またはH2、H3、H5、およびH9サブタイプ、またはH1、H2、H5、およびH7サブタイプ、またはH1、H2、H7、およびH9サブタイプ、またはH1、H5、H7、およびH9サブタイプ、またはH2、H5、H7、およびH9サブタイプを中和することができる。
【0029】
別の実施形態においては、本発明の抗体は、A型インフルエンザウイルスのH1、H2、H3、H5およびH7サブタイプ、またはH1、H2、H3、H7およびH9サブタイプ、またはH1、H3、H5、H7およびH9サブタイプ、またはH2、H3、H5、H7およびH9サブタイプ、またはH1、H2、H3、H5およびH9サブタイプ、またはH1、H2、H5、H7およびH9サブタイプ、またはH1、H2、H3、H5、H7およびH9サブタイプを中和することができる。さらに別の実施形態においては、本発明の抗体および抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスのH6サブタイプを中和することに加え、1つ以上の上記の組み合わせを中和する。
【0030】
本発明の抗体および抗原結合断片は、高中和能力を有する。A型インフルエンザウイルスを50%中和するのに必要とされる本発明の抗体の濃度は、例えば約50μg/mlまたはそれ以下となり得る。一実施形態において、A型インフルエンザウイルスを50%中和するのに必要とされる本発明の抗体濃度は、約50、45、40、35、30、25、20、17.5、15、12.5、11、10、9、8、7、6、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5μg/mlまたは約1μg/ml以下である。別の実施形態において、A型インフルエンザウイルスを50%中和するのに必要とされる、本発明の抗体の濃度は、約0.9、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.075、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.008、0.006、0.004、0.003、0.002μg/mlまたは約0.001μg/ml以下である。これは、A型インフルエンザウイルスを50%中和するのに、低濃度の抗体しか必要とされないことを意味する。特異性および力価は、当業者に知られている標準的な中和アッセイを使用して測定することができる。
【0031】
本発明の抗体
本発明は、特にHAに対し広範な特異性を有し、グループ1からの1つ以上のA型インフルエンザウイルスサブタイプおよびグループ2からの1つ以上のA型インフルエンザウイルスのサブタイプを中和する抗体を提供する。本発明の抗体は、グループ1およびグループ2から選択されるA型インフルエンザウイルスの2つ以上のサブタイプの間で保存されるHA領域においてエピトープと結合する。
【0032】
一実施形態において、本発明は、A型インフルエンザウイルスのグループ1およびグループ2サブタイプのHAステム領域内において保存されたエピトープと結合し、ウイルス複製または拡散を妨害する抗体、例えば、単離された抗体または精製された抗体、を提供する。本発明はまた、サブタイプグループ1およびグループ2におけるHAステム領域内で、保存されたエピトープと特異的に結合し、細胞へのウイルス侵入を阻止する抗体、例えば、単離された抗体または精製された抗体、を提供する。いずれの理論にも束縛されるものではないが、1つの例示的実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスのステム領域において保存されたエピトープに結合し、融合ステップの阻害により細胞へのウイルス侵入を阻止する。エピトープまたはタンパク質の抗原決定因子は、抗体の結合部位(またはパラトープ)により、特異的に識別さる分子部分に対応する。したがって、エピトープは、それらの操作認識のために、相補的パラトープを要する関連実体である。タンパク質の異なる変異体間で保存されているエピトープは、同じパラトープが、これらの異なる変異体を、分子の同部との接触により特異的に認識することを意味する。
【0033】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、例えば、ヒトモノクローナル抗体、または組換え抗体であり得る。本発明はまた、本発明の抗体の断片、特に、抗体の抗原結合活性を保持する断片を提供する。特許請求の範囲を含む本明細書は、いくつかの箇所において、抗原結合断片(複数可)、抗体断片(複数可)、変異体(複数可)および/または抗体の誘導体(複数可)について明示的に言及する場合があるが、「抗体」または「本発明の抗体」という用語は、すべての分類の抗体、すなわち、抗体断片(複数可)、抗体断片(複数可)、変異体(複数可)、および抗体の誘導体(複数可)を含むことを理解されたい。
【0034】
一実施形態において、本発明の抗体および抗体断片は、グループ1およびグループ2の、2つ以上のA型インフルエンザウイルスサブタイプの組み合わせを中和する。例示的なA型インフルエンザウイルスサブタイプは、これらに限定されないが、H5N1(A/Vietnam/1203/04)、H1Nl(A/New Caledonia/20/99)、H1Nl(A/Salomon Island/3/2006)、H3N2(A/Wyoming/3/03)およびH9N2(A/chicken/Hong Kong/G9/97)を含む。別の実施形態においては、抗体は、3、4、5、6、7、またはそれより多いA型インフルエンザウイルスサブタイプグループ1およびグループ2の組み合わせを中和する、および/またはそれらに特異的である。
【0035】
例示的実施形態において、本発明は、A型インフルエンザウイルスのサブタイプH1およびH3(例えば、H1N1およびH3N2);またはH1、H3、H5、およびH9(例えば、H1N1、H3N2、H5N1およびH9N2)に特異的な抗体またはそれらの抗体断片を含む。さらに別の実施形態においては、抗体またはそれらの抗体断片は、H1、H3、H5、H7およびH9(例えば、HINl、H3N2、H5N1、H7N1、H7N7、H9N2)に対し、特異的である。他の例示的A型インフルエンザウイルスサブタイプの組み合わせは、本出願で前記されている。
【0036】
例示的本発明の抗体における、重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列の配列番号および、それらをコードする核酸配列の配列番号は、表1に列記される。
【0037】
【表1】

【0038】
一実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、配列番号13、33、29または35のいずれかに記載されている配列と約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%相同であるアミノ酸配列番号を有する重鎖可変領域を含む。別の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、配列番号14または30に記載されている配列と約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%相同であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0039】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体における重鎖可変領域は、配列番号15、34、31または36のいずれかに記載されている配列と約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%相同である配列を有する核酸によってコードされ得る。別の実施形態においては、本発明の抗体における軽鎖可変領域は、配列番号16または32に記載されている配列と約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%相同である配列を有する核酸にコードされ得る。
【0040】
抗体重鎖のCDRは、それぞれ、CDRH1、CDRH2およびCDRH3として言及される。同様に、抗体軽鎖のCDRは、それぞれ、CDRL1、CDRL2およびCDRL3として言及される。CDRのアミノ酸の位置は、IMGT番号付け体系にしたがって次のように定義される、CDR1-IMGTは位置27から38、CDR2-IMGTの位置は56から65およびCDR3-IMGTの位置は105から117である。
【0041】
表2は、本発明の例示的な抗体の重鎖と軽鎖の6つのCDRのアミノ酸配列における配列番号をそれぞれ提供する。
【0042】
【表2】

【0043】
一実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、配列番号1〜6または17〜22のうちのいずれか1つと少なくとも95%の配列相同性を有する配列を伴う、少なくとも1つのCDRを含む。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、FI6変異体1、FI6変異体2、FI28変異体1、またはFI28変異体2からの1つ以上(すなわち、1つ、2つ、または3つ全て)の重鎖CDRを含有する重鎖を含有する抗体を提供する。例示的実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、配列番号17または配列番号1のアミノ酸配列を伴う重鎖CDR1、配列番号18または配列番号2のアミノ酸配列を伴う重鎖CDR2、および配列番号19または配列番号3のアミノ酸配列を伴う重鎖CDR3を含む。ある実施形態において、本明細書に提供されている抗体または抗体断片は、重鎖を含み、重鎖は(i)配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2および配列番号3のCDRH3、または(ii)配列番号17のCDRH1、配列番号18のCDRH2および配列番号19のCDRH3を含む。
【0045】
FI6変異体1、FI6変異体2、FI28変異体1、またはFI28変異体2からの1つ以上(すなわち、1つ、2つ、または3つ全て)の軽鎖CDRを含有する軽鎖を含有する抗体もまた提供される。例示的実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、配列番号4または配列番号20のアミノ酸配列を伴う軽鎖CDR1と、配列番号5または配列番号21のアミノ酸配列を伴う軽鎖CDR2と、配列番号6または配列番号22のアミノ酸配列を伴う軽鎖CDR3と、を含む。ある実施形態において、本明細書に提供されている抗体は、軽鎖を含み、軽鎖は、(i)配列番号4のCDRLl、配列番号5のCDRL2および配列番号6のCDRL3、または(ii)配列番号20のCDRLl、配列番号21のCDRL2および配列番号2のCDRL3、を含む。
【0046】
一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、表2に列記される抗体FI6変異体1のすべてのCDRを含み、A型インフルエンザウイルス感染を中和する。別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、表2に列記される抗体FI6変異体2のすべてのCDRを含み、A型インフルエンザウイルス感染を中和する。別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、表2に列記される抗体FI28変異体1のすべてのCDRを含み、A型インフルエンザウイルス感染を中和する。さらなる別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、表2に列記される抗体FI28変異体2のすべてのCDRを含み、A型インフルエンザウイルス感染を中和する。
【0047】
本発明の例示的抗体は、これらに制限されないが、FI6変異体1、FI6変異体2、FI28変異体1またはFI28変異体2を含む。
【0048】
本発明は、本発明の抗体と同じエピトープに結合する抗体、またはその断片、または本発明の抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその断片、をさらに含む。本発明の抗体はまた、本発明の抗体からの1つ以上のCDRと、同じエピトープに対する別の抗体からの1つ以上のCDRとを含む、ハイブリッド抗体分子を含む。一実施形態において、かかるハイブリッド抗体は、本発明の抗体からの3つのCDRと、同じエピトープに対する別の抗体からの3つのCDRとを含む。例示的なハイブリッド抗体は、i)本発明の抗体からの3つの軽鎖CDRおよび同じエピトープに対する別の抗体からの3つの重鎖CDR、またはii)本発明の抗体からの3つの重鎖CDRおよび同じエピトープに対する別の抗体からの3つの軽鎖CDRを含む。
【0049】
変異抗体も本発明の範囲内に含まれる。したがって、本出願に記載する配列の変異形もまた本発明の範囲内に含まれる。このような変異形は、免疫応答の最中に生体内で体細胞変異が起こること、または不死化B細胞クローンの生体外での培養、により生成される天然の変異形を含む。代替として、変異形は、上述した遺伝暗号の縮重によって生じ得るか、または転写もしくは翻訳におけるエラーによって産生され得る。
【0050】
向上した親和性および/または力価を有する抗体配列のさらなる変異形は、当技術分野において知られている方法を使用して得ることができ、本発明の範囲内に含まれる。例えば、アミノ酸置換を、さらに向上した親和性を持つ抗体を得るために使用することができる。代替として、ヌクレオチド配列のコドン最適化を、抗体を産生するための発現系において翻訳の効率を向上させるために使用することができる。さらに、本発明の核酸配列のうちのいずれかに進化分子工学法を適用することにより、抗体特異性または中和活性のために最適化された配列を含むポリヌクレオチドも本発明の範囲内である。
【0051】
一実施形態において、変異抗体の配列は、本出願に記載する配列と70%以上(すなわち、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%以上)のアミノ酸配列同一性を共有し得る。いくつかの実施形態において、かかる配列同一性は、参照配列(すなわち、本出願に示した配列)の全長に関して算出される。いくつかのさらなる実施形態において、本明細書に参照される同一性の割合(%)は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)によって指定される初期パラメータ[Blosum 62マトリックス、ギャップオープンペナルティ=11およびギャップ伸長ペナルティ=1]を使用して、BLASTバージョン2.1.3を用いて決定される。
【0052】
別の態様において、本発明はまた、本発明の抗体の一部または全ての軽鎖および重鎖ならびにCDRをコードする核酸配列も含む。本発明はまた、本発明の例示的抗体の一部または全ての軽鎖および重鎖ならびにCDRをコードする核酸配列も含む。表1は、本発明の例示的抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸配列の配列番号を提供する。例えば、本明細書に提供されている核酸配列は、配列番号15(FI6変異体1重鎖可変領域をコードする)、配列番号34(FI6変異体2重鎖可変領域をコードする)配列番号16(FI6変異体1およびFI6変異体2軽鎖可変領域をコードする)、配列番号31(FI28変異体1重鎖可変領域をコードする)、配列番号36(FI28変異体2重鎖可変領域をコードする)配列番号32(FI28変異体1および変異体2軽鎖可変領域をコードする)。
【0053】
表3は、本発明の例示的な抗体のCDRへコードする核酸配列の配列番号を提供する。遺伝暗号の冗長性に起因して、同じアミノ酸配列をコードするこれらの配列の変異形が存在するであろう。
【0054】
【表3】

【0055】
一実施形態において、本発明に従う核酸配列は、本発明の抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含む。別の実施形態において、本発明の核酸配列は、本発明の抗体の重鎖CDRまたは軽鎖CDRをコードする核酸の配列を有する。例えば、本発明に従う核酸配列は、配列番号7〜12、15、16、34、23〜28、31、32、または36の核酸配列と少なくとも75%相同である配列を含む。
【0056】
本発明による核酸配列を含むベクター、例えば、発現ベクターが本発明の範囲内にさらに含まれる。かかるベクターで形質転換された細胞も本発明の範囲内に含まれる。かかる細胞の例は、これらに限定されないが、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞、または植物細胞を含む。一実施形態において、細胞は哺乳類細胞、例えば、ヒト、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞である。
【0057】
また、本発明は、これらに限定されないが、FI6変異体1、FI6変異体2、FI28変異体1およびFI28変異体2から構成される群より選択されるモノクローナル抗体を含む、本発明の抗体に結合する能力を持つエピトープに結合するモノクローナル抗体にも関する。
【0058】
モノクローナルおよび組換え抗体は、個々のポリペプチドまたはそれらが向けられる他の抗原の識別および精製に特に有用である。本発明の抗体は、それらが、免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)において試薬として用いられ得るという点で、付加的な有用性を有する。これらの用途において、抗体は、放射性同位元素、蛍光分子、または酵素等の分析的に検出可能な試薬で標識することができる。また、抗体は、抗原の分子的識別および特徴付け(エピトープマッピング)のためにも使用され得る。
【0059】
本発明の抗体は、治療部位への送達のために薬物に連結することができるか、またはA型インフルエンザウイルスに感染した細胞等の目的の細胞を含む部位の画像化を容易にさせるように、検出可能な標識に連結することができる。薬物および検出可能な標識に抗体を連結するための方法は、当技術分野において知られており、検出可能な標識を使用して画像化するための方法も同様である。標識された抗体は、様々な標識を用いて、様々なアッセイにおいて用いられ得る。本発明の抗体および目的のエピトープ(A型インフルエンザウイルスエピトープ)間の抗体―抗原複合体の形成の検出は、抗体に検出可能な物質を付着させることによって容易にすることができる。適切な検出手段は、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光体、化学発光物質、色素原、酵素基質または補助因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、色素等の標識の使用を含む。適切な酵素の例は、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み、適切な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含み、発光物質の例は、ルミノールであり、生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、ならびに適切な放射性物質の例は、125I、131I、35S、またはHを含む。かかる標識された試薬は、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、例えば、ELISA、蛍光免疫測定法等の様々な既知のアッセイにおいて使用され得る。(例えば、米国特許第3,766,162号、米国特許第3,791,932号、米国特許第3,817,83号、および米国特許第4,233,402号を参照のこと)。
【0060】
本発明による抗体は、細胞毒、治療薬、または放射性金属イオンもしくは放射性同位元素等の治療部分に共役され得る。放射性同位元素の例としては、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212、Bi−213、Pd−109、Tc−99、In−111等が挙げられるが、これらに限定されない。かかる抗体共役体は、所与の生物学的応答を改変するために使用することができるが、薬物部分は、古典的な化学治療薬に制限されると解釈されるものではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を持つタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、またはジフテリア毒素等の毒素を含み得る。
【0061】
かかる治療部分を抗体に共役する技術は周知である。例えば、Arnon et al.(1985)”Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,ed. Reisfeld et al.(Alan R.Liss,Inc.),pp.243−256;ed. Hellstrom et al.(1987)“Antibodies for Drug Delivery,”in Controlled Drug Delivery,ed.Robinson et al.(2d ed;Marcel Dekker,Inc.),pp.623−653;Thorpe(1985)”Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review,”in Monoclonal Antibodies'84:Biological and Clinical Applications,ed.Pinchera et al.pp.475−506(Editrice Kurtis, Milano, Italy,1985);”Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy,”in Monoclonal Antibodies or Cancer Detection and Therapy,ed.Baldwin et al.(Academic Press,New York,1985),pp.303−316、およびThorpe et al.(1982)Immunol.Rev.62:119−158を参照されたい。
【0062】
代替として、抗体、またはその抗体断片は、米国特許第4,676,980号記載のように、第2の抗体、またはその抗体断片に共役させて、抗体異種共役体を形成することができる。さらに、リンカーを、標識および本発明の抗体間で使用することができる(例えば、米国特許第4,831,175号)。抗体、またはその抗原結合断片は、放射性ヨード、インジウム、イットリウム、または当技術分野において既知の他の放射性粒子で直接標識され得る(例えば、米国特許第5,595,721号)。治療は、同時に投与またはその後投与される共役抗体と非共役抗体の治療の組み合わせから成り得る(例えば、国際公開第52031号、国際公開第52473号)。
【0063】
本発明の抗体はまた、固体支持体にも付着され得る。さらに、本発明の抗体またはその機能的抗体断片は、ポリマーへの共有結合性共役により化学修飾することで、例えば、循環半減期を増大することができる。ポリマーの例、およびそれらをペプチドに付着させる方法は、米国特許第4,766,106号、米国特許第4,179,337号、米国特許第4,495,285号および米国特許第4,609,546号に示される。いくつかの実施形態におおいて、ポリマーはポリエキシエチレン化されたポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)から選択され得る。PEGは、室温で水溶性であり、一般式:R(O−−CH−−CHO−−Rを有し、Rは、水素、またはアルキル基もしくはアルカノール基等の保護基であることができる。一実施形態において、保護基は、1から8個の炭素を有し得る。さらなる実施形態において、保護基はメチルである。記号nは、正の整数である。一実施形態において、nは1から1,000の間である。別の実施形態において、nは2から500の間である。一実施形態においては、PEGは、1,000から40,000の平均分子量を保持する。さらなる実施形態においては、PEGは2,000から20,000の平均分子量を保持する。さらなる実施形態においては、PEGは3,000から12,000の平均分子量を保持する。一実施形態では、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を保持する。別の実施形態において、PEGは、末端ヒドロキシ基を有する。さらに別の実施形態において、このヒドロキシル基は、阻害剤の遊離アミノ基と反応するように活性化される末端ヒドロキシ基である。しかしながら、反応基の型および量は、本発明の共有結合的に共役されたPEG/抗体を達成するために変化し得ることが理解される。
【0064】
また、水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。それらは、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)等を含む。一実施形態において、POGが用いられる。いずれの理論にも束縛されるものではないが、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格は、例えば、動物およびヒトにおいて、モノ−、ジ−、トリグリセリド中に自然に発生する骨格と同じであるため、この分岐は、必ずしも体内において異質の物質であるとは見なされない。いくつかの実施形態において、POGは、PEGと同程度の分子量を有する。循環半減期を増大させるために使用され得る別の薬物送達系は、リポソームである。リポソーム送達系を調製する方法は、Gabizonら(1982)、Cafiso(1981)、および(1980)に考察される他の薬物送達系は当技術分野において知られており、例えば、Poznanskyら(1980)およびPoznansky(1984)に記載される。
【0065】
本発明の抗体は、精製された形態で提供される。典型的には、抗体は、他のポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在し、例えば、組成物の90(重量)%未満、通常60%未満、およびさらに通常50%未満が他のポリペプチドで構成される。
【0066】
本発明の抗体は、非ヒト(異種)宿主、例えばマウスにおいて免疫原性であり得る。具体的には、抗体は、非ヒト宿主において免疫原性であるが、ヒト宿主においては免疫原性でないイディオトープを有し得る。ヒトが使用するための本発明の抗体は、マウス、ヤギ、ウサギ、ラット、非霊長類哺乳類等の宿主から容易に単離することができないもの、およびヒト化によって、または異種マウスから概して得ることができないものを含む。
【0067】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgMつまり、α、γまたはμ重鎖)であることができるが、概してIgGである。IgGアイソタイプ内で、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスであり得る。本発明の抗体は、κまたはλ軽鎖を有し得る。
【0068】
抗体の産生
本発明による抗体は、当技術分野において知られているいかなる方法でも作成可能である。例えば、ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法論が周知である(Kohler,G.およびMilstein,C,1975;Kozbar et al.1983).一実施形態において、国際公開第2004/076677号に記述される代替的なEBV不死化方法が使用される。
【0069】
国際公開第2004/076677号に記述される方法を使用して、本発明の抗体を産生するB細胞は、多クローン性B細胞活性化因子の存在下においてEBVで形質転換することができる。EBVによる形質転換は標準的な技術であり、多クローン性B細胞活性化因子を含むように容易に適合することができる。
【0070】
細胞増殖および分化の付加的な刺激薬を、任意で、効率をさらに増強させるために形質転換ステップ時に添加することができる。これらの刺激薬は、IL−2およびIL−15等のサイトカインで有り得る。一態様において、不死化効率をさらに向上させるために、不死化ステップの最中にIL−2が添加されるが、その使用は必須ではない。
【0071】
次いで、これらの方法を使用して産生した不死化B細胞を、当技術分野において既知の方法を使用して培養し、抗体をそこから単離することができる。
【0072】
英国特許出願第0819376.5号に記載されている方法を使用して、マイクロウェル培養プレートにおいて単一血漿細胞を培養することも可能である。抗体は、培養されている単一血漿細胞から単離可能である。さらに、当技術分野において知られている方法を使用して、単一血漿細胞の培養物からRNAを抽出し、単細胞PCRを行うことができる。抗体のVHおよびVL領域をRT−PCRにより増幅し、配列決定を行い、発現ベクター中にクローン化し、次いで、HEK293T細胞または他の宿主細胞中にトランスフェクトする。発現ベクターにおける核酸のクローン化、宿主細胞のトランスフェクション、トランスフェクトした宿主細胞の培養、および産生された抗体の単離は、当業者に知られている任意の方法を使用して行うことができる。
【0073】
抗体は、所望される場合、濾過、遠心分離、およびHPLCまたは親和性クロマトグラフィ等の種々のクロマトグラフ法を使用してさらに精製され得る。製薬等級抗体を産生するための技術を含む、抗体、例えばモノクローナル抗体を精製する技術は、当技術分野において知られている。
【0074】
本発明の抗体の断片は、ペプシンもしくはパパイン等の酵素での消化を含む方法によって、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断によって、抗体から得ることができる。代替として、抗体の断片は、重鎖または軽鎖の配列の一部のクローニングおよび発現によって得ることができる。抗体「断片」は、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片を含み得る。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖から派生する一本鎖Fv断片(scFv)も包含し、例えば、本発明は、本発明の抗体からのCDRを含むscFvを含む。また、重鎖または軽鎖単量体および二量体、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体ならびに単鎖抗体、例えば、重鎖および軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結される一本鎖Fvも含む。
【0075】
本発明の抗体断片は、単価または多価相互作用を与え、および上記された様々な構造に含有され得る。例えば、scFv分子は、三価の「トリアボディ(triabody)」または「テトラボディ(tetrabody)」を作成する、または合成され得る。scFv分子は、Fc領域のドメインを含み得、その結果二価ミニボディ(bivalent minibodies)をもたらす。さらに、本発明の配列は、多選択性分子の1つの構成要素で有り得、そこにおいて本発明の配列が本発明のエピトープを標的とし、および他の分子部位が他の標的へ結合する。例示的分子は、これらに限定されないが、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、二重特異性scFv、および2重特異性抗体(ディアボディ)を含む(HolligerおよびHudson,2005,Nature Biotechnology9:1126−1136)。
【0076】
分子生物学の標準的な技術を、本発明の抗体または抗体の断片をコードするDNA配列を調製するために使用することができる。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全にまたは部分的に合成され得る。部位特異的変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を必要に応じて使用することができる。
【0077】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子またはその断片をコードするDNA配列の発現のために使用され得る。FabおよびF(ab’)断片、および、特にFv断片および単鎖抗体断片、例えば、一本鎖Fvs等の抗体断片の発現のために、細菌、例えば大腸菌、および他の微生物系が部分的に使用され得る。真核生物、例えば哺乳類宿主細胞発現系は、完全な抗体分子を含む、より大きな抗体分子の産生のために使用され得る。適切な哺乳類宿主細胞は、CHO、HEK293T、PER.C6、NS0、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞を含む。
【0078】
また、本発明は、本発明による抗体分子を産生するための過程も提供し、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現をもたらすのに適した条件下で、本発明の核酸にコードするベクターを含む宿主細胞を培養することと、抗体分子を単離することとを含む。
【0079】
抗体分子は、重鎖または軽鎖ポリペプチドのみを含み得、その場合においては、重鎖または軽鎖ポリペプチドコード配列のみを、宿主細胞を形質移入するために使用する必要があるだけである。重鎖および軽鎖の両方を含む産物を産生するためには、細胞系は、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターの2つのベクターを形質移入され得る。代替として、単一のベクターが使用され得、該ベクターは、軽鎖および重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0080】
代替として、本発明による抗体は、i)細胞内で本発明による核酸配列を発現すること、およびii)発現された抗体産物を単離することによって産生され得る。加えて、方法は、iii)抗体を精製することを含み得る。
【0081】
形質転換されたB細胞、培養された単一血漿細胞およびトランスフェクトしたHEK293T細胞のスクリーニング
形質転換されたB細胞および培養された単一血漿細胞は、所望の特異性または機能を有する抗体の産生のためにスクリーニングされ得る。
【0082】
スクリーニングステップは、免疫測定法、例えばELISA、組織または細胞(形質移入された細胞を含む)の染色、中和アッセイ、または所望の特異性または機能を識別するための当技術分野において知られている多くの他の方法のうちの1つによって行われ得る。アッセイは、単純抗原認識に基づいて選択し得るか、または、例えば、抗原結合抗体だけではなく中和抗体を選択し、標的細胞の特徴、たとえば、それらのシグナリングカスケード、それらの形、それらの増殖速度、他の細胞に影響するそれらの能力、他の細胞もしくは他の試薬または条件の変化による影響に対するそれらの応答、それらの分化状態等を変化させることができる抗体を選択する等のような、所望の機能にさらに基づいて選択され得る。
【0083】
個々の形質転換されたB細胞クローンは、陽性形質転換されたB細胞培養から産出され得る。陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するクローニングステップは、限界希釈法,顕微操作、細胞分類による単細胞沈着、または当技術分野において知られている別の方法を使用して行われ得る。
【0084】
培養された単一血漿細胞からの核酸は、当技術分野において知られている方法を使用して、HEK293T細胞内、または、他の宿主細胞内で単離、クローンおよび発現可能である。
【0085】
本発明の不死化B細胞クローンまたはトランスフェクトされたHEK293T細胞は、例えば、モノクローナル抗体源として、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸(DNAまたはmRNA)源等として、研究のために等、種々の方法で使用することができる。
【0086】
本発明は、サブタイプグループ1およびグループ2から選択された、少なくとも2つの異なるA型インフルエンザウイルスサブタイプを中和する抗体を産出する、不死化Bメモリー細胞または宿主細胞のトランスフェクションを含む組成物を提供する。
【0087】
エピトープ
上記のように、本発明の抗体は、それらが結合するエピトープをマッピングするために使用することができる。本発明者は、HAに見出されるエピトープに向けられるA型インフルエンザウイルス感染を中和する抗体を発見した。一実施形態において、抗体は、A型インフルエンザウイルスのサブタイプグループ1およびグループ2の間で保存されている、HAのステム領域において1つまたはそれ以上のエピトープに向けられる。本発明の抗体が結合するエピトープは、直線的(連続的)または立体構造的(非連続的)で有り得る。一実施形態において、本発明の抗体および抗体断片は、本明細書で考察されるように配列号37、38、39または40を含むポリペプチドの領域へ結合する。
【0088】
本発明の抗体によって認識されるエピトープは、多くの用途があり得る。精製された形態または合成形態でのエピトープおよびそのミモトープは、免疫学的応答を惹起するために(つまり、ワクチンとして、または他の使用のために抗体を産生するため)、またはエピトープもしくはそのミモトープと免役反応する抗体に対して血清をスクリーニングするために使用することができる。一実施形態において、かかるエピトープもしくはミモトープ、またはかかるエピトープもしくはミモトープを含む抗原は、免疫反応を向上させるためのワクチンとして使用され得る。本発明の抗体および抗体断片はまた、ワクチンの品質を監視する方法においても使用することができる。具体的には、抗体は、ワクチン中の抗原が正しい立体構造の正しい免疫原性エピトープを含有していることを確認するために使用することができる。
【0089】
また、エピトープは、該エピトープに結合するリガンドのスクリーニングにおいても有用であり得る。これらに限定されないが、ラクダ、サメおよび他の種由来の抗体、抗体の断片、ペプチド、ファージディスプレイ技術の産物、アプタマー、アドネクチン、または他のウイルスもしくは細胞タンパク質の断片を含むかかるリガンドは、エピトープをブロックし、したがって感染を予防することができる。このようなリガンドは、本発明の範囲内に包含される。
【0090】
組換え発現
また、本発明の不死化B細胞クローンまたは培養された血漿細胞は、その後の組換え発現のための抗体遺伝子のクローニングのために核酸源としても使用し得る。組換え源からの発現は、例えば、安定性、再現性、培養の容易さ等の理由で、B細胞またはハイブリドーマからの発現よりも、医薬目的上より一般的である。
【0091】
したがって、本発明は、組換え細胞を調製するための方法を提供し、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンまたは培養された単一血漿細胞から1つ以上の核酸(例えば、重鎖および/または軽鎖遺伝子)を得るステップと、(ii)該核酸を発現ベクターへ挿入するステップと、(iii)宿主内における目的の抗体の発現を可能にするように、ベクターをトランスフェクトするステップとを含む。
【0092】
同様に、本発明は、組換え細胞を調製するための方法を提供し、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンまたは培養された単一血漿細胞から核酸を配列決定するステップと、(ii)ステップ(i)からの配列情報を使用して、発現宿主内における目的の抗体の発現を可能にするように、その宿主内に挿入するために核酸を調製するステップとを含む。制限酵素部位を導入するため、コドン使用頻度を変更するため、ならびに/または転写および/もしくは翻訳制御配列を最適化するために、ステップ(i)と(ii)の間で核酸を操作することができるが、その必要はない。
【0093】
また、本発明は、トランスフェクトされた宿主細胞を調製する方法を提供し、目的の抗体をコードする1つ以上の核酸で宿主細胞をトランスフェクトするステップを含み、該核酸は、本発明の不死化B細胞クローンまたは培養された血漿細胞から得た核酸である。したがって、最初に、該核酸を調製し、次いで、宿主細胞をトランスフェクトするためにそれを使用する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0094】
次いで、本発明のこれらの組換え細胞は、発現および培養目的で使用することができる。それらは、大規模の薬剤生産のための抗体の発現に特に有用である。また、それらは、医薬組成物の活性成分としても使用することができる。任意の適切な培養技術を使用することができ、その技術には、静置培養、ローラーボトル培養、腹水、中空糸型バイオリアクターカートリッジ、モジュラーミニファーメンター、攪拌槽、マイクロキャリア培養、セラミック中子灌流等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
B細胞または血漿細胞から免疫グロブリン遺伝子を得る、および配列決定するための方法は、当技術分野において既知である(例えば、Chapter 4 oiKuby Immunology,4th edition,2000を参照)。
【0096】
トランスフェクトされた宿主細胞は、酵母および動物細胞、特に、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、NSO細胞、PER.C6(Jones et al 2003)またはHKB−11(Cho et al.2001、Cho et al.2003)細胞等のヒト細胞、骨髄腫細胞(米国特許第5,807,715号、米国特許第6,300,104号等))、ならびに植物細胞を含む真核細胞であり得る。好適な発現宿主は、特に、それ自体ではヒトにおいて免疫原性ではない糖鎖構造を用いて、本発明の抗体をグリコシル化することができる。一実施形態において、発現宿主細胞は無血清培地で成長することができる。さらなる実施形態において、宿主細胞は、動物由来産物が存在しない培養物中で成長することができる。トランスフェクトされた宿主細胞は、細胞系を得るために培養され得る。
【0097】
本発明は、目的の抗体をコードする1つ以上の核酸分子(例えば、重鎖および/または軽鎖遺伝子)を調製するための方法を提供し、(i)本発明により、不死化B細胞クローンの調製または血漿細胞を培養するステップと、(ii)目標の抗体をコードする核酸をB細胞クローンまたは培養された該単一血漿細胞から得るステップを含む。本発明はまた、目的の抗体をコードする核酸配列を得るための方法を提供し、(i)本発明により、不死化B細胞クローンを調製または血漿細胞を培養するステップと、(ii)目的の抗体をコードするB細胞クローンまたは培養された血漿細胞から核酸を配列決定するステップと、を含む。
【0098】
また、本発明は、目的の抗体をコードする核酸分子を調製する方法も提供し、本発明の形質転換B細胞クローンまたは培養された血漿細胞から核酸を得るステップを含む。したがって、最初に、B細胞クローンまたは培養された血漿細胞を得、次いで、B細胞クローンまたは培養された血漿細胞から核酸を得る手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって異なる時間に行うことができる。
【0099】
本発明は、(例えば医薬用途のために)抗体を調製するための方法を提供し、(i)目的の抗体を発現する選択したB細胞クローンまたは培養された血漿細胞から1つ以上の核酸(例えば、重鎖および軽鎖遺伝子)を得るステップおよび/または配列決定するステップと、(ii)核酸を挿入するか、または核酸を使用して、発現ベクターを調製するステップと、(iii)目的の抗体を発現する宿主細胞をトランスフェクトするステップと、(iv)目的の抗体が発現される条件下で、トランスフェクトされた宿主細胞を培養または継代培養するステップと、任意に、(iv)目的の抗体を精製するステップとを含む。
【0100】
また、本発明は、抗体を調製する方法も提供し、目的の抗体が発現される条件下で、発現宿主細胞集団を培養または継代培養するステップと、任意に、目的の抗体を精製するステップとを含み、該発現宿主細胞集団は、(i)上記のように調製されたBメモリーリンパ球の集団により産生される目的の抗体を発現する選択したB細胞をコードする核酸を提供すること、(ii)発現ベクター内に核酸を挿入すること、および(iii)該ベクターを目的の抗体を発現することができる該発現宿主細胞内でトランスフェクトすること、(iv)目的の抗体を産生するために、該挿入した核酸を含むトランスフェクトされた該宿主細胞を培養または継代培養すること、とによって調製されている。したがって、最初に、組換え発現宿主を調製し、次いで、抗体を発現するためにそれを培養する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって非常に異なる時間に行うことができる。
【0101】
医薬組成物
本発明は、本発明の抗体および/もしくは抗体断片、ならびに/またはかかる抗体をコードする核酸、ならびに/または本発明の抗体により認識されるエピトープを含有する医薬組成物を提供する。また、医薬組成物は、投与を可能にするように、薬学的に許容可能な担体も含有し得る。担体は、それ自体が、組成物を受け取る個人に有害である抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性であるべきではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子等の大型かつ代謝速度が遅い巨大分子であり得る。
【0102】
薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩等の鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩等の有機酸の塩を使用することができる。
【0103】
治療用組成物中の薬学的に許容可能な担体は、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール等の液体をさらに含有し得る。加えて、湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝物質等の補助物質がかかる組成物中に存在し得る。かかる担体は、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁液として医薬組成物を製剤化することが可能である。
【0104】
本発明の範囲内で、好適な投与形態は、例えば、注射または注入による、例えば、ボーラス投与または持続注入による非経口投与に適した形態を含み得る。製品が注射または注入のためのものである場合、それは、油性または水性媒体中での懸濁液、溶液または乳濁液の形態を取り得、そしてそれは、懸濁剤、防腐剤、安定剤および/または分散剤等の製剤化剤を含有し得る。代替として、抗体分子は、使用前の適切な滅菌液との再構成のために、乾燥状態であり得る。
【0105】
製剤化され次第、本発明の組成物は、対象に直接投与することができる。一実施形態において、組成物は、ヒト対象への投与に適合されることが好ましい。
【0106】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、局所、皮下、鼻腔内、腸内、舌下、膣内または直腸経路を含むが、これらに限定されないあらゆる経路によって投与され得る。また、本発明の医薬組成物を投与するためにハイポスプレーも使用され得る。典型的には、治療用組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注入物質として調製され得る。また、注入前に、液体媒体中の溶液または懸濁液に適した固形も調製され得る。
【0107】
組成物の直接的な送達は、概して、注射、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内送達によって達成されるか、または組織の間質腔に送達される。また、組成物は、病変内にも投与することができる。投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画であってもよい。既知の抗体ベースの医薬品は、例えば、医薬品を毎日、毎週、毎月等送達すべきかどうか等の投与頻度に関する手引きを提供する。また、頻度および用量は、症状の重症度にも依存し得る。
【0108】
本発明の組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注入物質として調製され得る。また、注入前に、液体媒体中の溶液または懸濁液に適した固形も調製することができる(例えば、防腐剤を含有する滅菌水との再構成のために、シナジス(Synagis(登録商標))およびハーセプチン(Herceptin(登録商標))等の凍結乾燥された組成物)。組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリームまたは粉末として調製され得る。組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤もしくはカプセルとして、スプレーとして、またはシロップ(任意に、香味づけたもの)として調製され得る。
【0109】
組成物は、微粉末またはスプレーを使用して、例えば、肺内投与のために吸入剤として調製され得る。組成物は、坐薬または腟坐薬として調製され得る。組成物は、経鼻、経耳または経眼投与のために、例えば、ドロップとして調製され得る。組成物は、組み合わされた組成物が、患者への投与直前に再構成できるように設計されたキット形態であり得る。例えば、凍結乾燥された抗体は、滅菌水または滅菌緩衝液を有するキット形態で提供することができる。
【0110】
組成物中の有効成分は抗体分子、抗体断片、またはその変異体および誘導体であることが理解されよう。したがって、それは、胃腸管における分解に影響されやすい。したがって、組成物が胃腸管を用いた経路によって投与されるのであれば、組成物は、分解から抗体を保護するが、それが胃腸管から吸収され次第、抗体を放出する薬物を含有する必要がある。
【0111】
薬学的に許容される担体についての徹底的な議論は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition、ISBN:0683306472において入手可能である。
【0112】
本発明の医薬組成物は、通常、5.5から8.5の間のpHを有し、いくつかの実施形態において、6から8の間であり得、さらなる実施形態においては7であり得る。緩衝液の使用によりpHを維持することができる。組成物は、無菌であり得るか、および/または発熱物質を含み得ない。組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、密封容器中に供給される。
【0113】
医薬組成物は、本発明の1つ以上の抗体および/もしくは本発明の抗体に結合するエピトープを含むポリペプチドの有効量、つまり、所望の疾患または状態を治療する、寛解させる、もしくは予防するのに十分な、または検出可能な治療効果を呈するのに十分な量を含む。また、治療効果は、身体症状の軽減も含む。任意の特定の対象に対する正確な有効量は、対象のサイズおよび健康、状態の性質および程度、ならびに治療学または投与のために選択された治療学の組み合わせに依存する。所与の状況に対する有効量は、日常的な実験によって決定され、臨床従事者の判断内にある。本発明の目的で、有効用量は、概して、投与される個人において、本発明の組成物の約0.01mg/kgから約50mg/kg、または約0.05mg/kgから約10mg/kgである。既知の抗体ベースの医薬品は、この点における手引きを提供し、例えば、ハーセプチン(Herceptin(登録商標))は、21mg/ml溶液の静脈内注入によって投与され、初期負荷用量は体重1kgあたり4mgであり、毎週の維持量は体重1kgあたり2mgであり、リツキサン(Rituxan(登録商標))は、375mg/mを毎週投与される。
【0114】
一実施形態において、組成物は、1つより多くの(例えば、2つ、3つ、等)の本発明の抗体を含み、相加的または相乗的な治療効果を提供することができる。さらなる実施形態において、組成物は、1つ以上の(例えば、2つ、3つ、等)の本発明の抗体および、A型インフルエンザウイルスに対する1つ以上の(例えば、2つ、3つ、等)の追加の抗体とを含むことができる。例えば、1つの抗体は、1つのHAエピトープに結合し、別の抗体はHA上の異なるエピトープへ結合、またはノイラミニダーゼおよび/または基質タンパク質上のエピトープへ結合し得る。さらに、A型インフルエンザワクチンまたはA型インフルエンザウイルスとは別の特異性を持つ抗体と共に、本発明の抗体を投与することも本発明の範囲内に含まれる。本発明の抗体は、インフルエンザワクチンまたはA型インフルエンザウイルスとは別の特異性を有する抗体と、組み合わせて/同時に、またはそれらから別時に、投与可能である。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、2つ以上の抗体を含有する医薬組成物を提供し、そこで第1の抗体は本発明の抗体であり、HAエピトープに対し特異的であり、第2の抗体はノイラミニダーゼエピトープ、第2のHAエピトープおよび/またはマトリックスエピトープに対し特異的である。例えば、本発明は、2つ以上の抗体を含有する医薬組成物を提供し、そこで、第1の抗体はA型インフルエンザウイルスHAのステムにおけるエピトープに対し特異的であり、および第2の抗体はノイラミニダーゼエピトープ、第2のHAエピトープ(例えば、HAの球状部領域におけるエピトープ、第2のHAステムにおけるエピトープ)、および/またはマトリックスエピトープに対し特異的である。ステムにおける、またはA型インフルエンザウイルスHAの球状部領域における第2のエピトープは、1つ以上のA型インフルエンザウイルスサブタイプ間で保存され得るが、そうである必要はない。
【0116】
さらに別の実施形態において、本発明は、2つ以上の抗体を含有する医薬組成物を提供し、そこで、第1の抗体はノイラミニダーゼエピトープに対し特異的であり、第2の抗体は第2のノイラミニダーゼエピトープ、HAエピトープおよび/またはマトリックスエピトープに対し特異的である。
【0117】
さらなる別の実施形態において、本発明は、2つ以上の抗体を含有する医薬組成物を提供し、第1の抗体はマトリックスエピトープに対し特異的であり、第2の抗体は、第2のマトリックスエピトープ、HAにおけるエピトープおよび/またはノイラミニダーゼに対し特異的である。
【0118】
本発明のA型インフルエンザウイルス標的タンパク質に対し特異的な例示的抗体は、これらに限定されないが、FI6変異体1、FI6変異体2、FI28変異体1またはFI28変異体2を含む。
【0119】
一実施形態において、本発明は、抗体FI6変異体1またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体FI6変異体2またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、抗体FI28変異体1またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、抗体FI28変異体2またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0120】
本発明の抗体は、例えば、放射線療法、化学療法化合物等の他の治療学とともに投与する(組み合わせてまたは別個に)ことができる。一実施形態において、治療化合物はタミフル等の抗ウイルス化合物を含む。かかる併用療法は、単独で投与する場合に、個々の治療薬と比較して治療効果の相加的または相乗的向上を提供する。本明細書で使用される「相乗作用」という用語は、各それぞれの活性薬剤の個々の効果の和よりも大きい2つ以上の活性薬剤の併用効果を説明するために使用する。したがって、2つ以上の薬剤の併用効果が活性またはプロセスの「相乗的阻害」をもたらす場合、それは、活性またはプロセスの阻害が、各それぞれの活性薬剤の阻害効果の和よりも大きいことを意図する。本明細書で使用される「相乗的治療効果」という用語は、2つ以上の治療の組み合わせで観察された治療効果を指し、治療効果(多数のパラメータのいずれかによって測定されたような)は、それぞれ個々の治療で観察される個々の治療効果の和よりも大きい。
【0121】
抗体は、A型インフルエンザウイルス治療に対して以前に反応を示さなかった、つまり、抗インフルエンザ治療に対して抵抗性を示したそれらの患者に投与され得る。かかる治療は、抗ウイルス剤を用いた以前の治療を含み得る。これは、例えば、A型インフルエンザウイルスの抗ウイルス耐性株による感染に起因し得る。
【0122】
一実施形態において、本発明の抗体を含む本発明の組成物において、抗体は、組成物中の総タンパク質の少なくとも50重量%(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%以上)を占める。かかる組成物において、抗体は精製された形態である。
【0123】
本発明は、医薬品を調製する方法を提供し、(i)本発明の抗体を調製するステップと、(ii)精製した抗体を1つ以上の薬学的に許容される担体と混合するステップとを含む、方法である。
【0124】
また、本発明は、医薬品を調製する方法も提供し、抗体を1つ以上の薬学的に許容可能な担体とを混合するステップを含み、抗体は、本発明の形質転換されたB細胞から得られたモノクローナル抗体である。したがって、最初に、モノクローナル抗体を得、次いで、医薬品を調製する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって非常に異なる時間に行うことができる。
【0125】
治療目的のために抗体またはB細胞を送達することの代替案として、核酸が原位置で対象内に発現され、所望の治療効果を提供できるように、目的のモノクローナル抗体(またはその活性断片)をコードする核酸(典型的には、DNA)を対象に送達することが可能である。適切な遺伝子治療法および核酸送達ベクターは、当技術分野において既知である。
【0126】
本発明の組成物は、免疫原性組成物、およびいくつかの実施形態においては、本発明の抗体に認識されたエピトープを含有する抗体を含むワクチン組成物で有り得る。本発明によるワクチンは、予防のため(つまり、感染を防止するため)または治療のため(つまり、感染を治療するため)のいずれかであり得る。一実施形態において、本発明は、配列番号37、38、39または40のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むワクチンを提供する。
【0127】
組成物は、特に複数回投与形式でパッケージされる場合に、抗菌薬を含み得る。組成物は、界面活性剤、例えば、Tween80等のTween(ポリソルベート)を含むことができる。界面活性剤は、通常、例えば、<0.01%の低濃度で存在する。組成物はまた、浸透圧を与えるためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)も含み得る。10±2mg/ml NaClの濃度が典型的である。
【0128】
さらに、組成物は、特に、それらが凍結乾燥される場合か、またはそれらが、凍結乾燥された材料から再構成された材料を含む場合に、例えば、約15〜30mg/ml(例えば、25mg/ml)で、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)を含む。凍結乾燥のための組成物のpHは、凍結乾燥前に約6.1に調製され得る。
【0129】
また、本発明の組成物は、1つ以上の免疫調節剤も含み得る。一実施形態において、免疫調節剤のうちの1つ以上は、アジュバントを含む(複数可)。
【0130】
本発明のエピトープ組成物は、A型インフルエンザウイルス感染に効果的に対処するために、細胞媒介免疫応答および体液性免疫応答の両方を誘発することができる。この免疫学的応答は、持続性(例えば、中和)抗体および、A型インフルエンザウイルスへの曝露後に急速に応答することができる細胞媒介の免疫との両方を誘発し得る。
【0131】
医学的治療および用途
本発明の抗体および抗体断片、または誘導体およびその変異体は、A型インフルエンザウイルス感染の治療、A型インフルエンザウイルス感染の予防またはA型インフルエンザウイルス感染の診断のために使用され得る。
【0132】
診断方法は、抗体または抗体断片を試料と接触させることを含む。かかる試料は、例えば、鼻腔、洞、腔、唾液腺、肺、肝臓,膵臓、腎臓、耳、眼、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳または皮膚から取った組織試料であり得る。また、診断方法は、抗原/抗体複合体の検出も含む。
【0133】
したがって、本発明は、治療における使用のための(i)本発明による抗体、抗体断片、またはその変異体および誘導体、(ii)本発明による不死化B細胞クローン、(iii)本発明の抗体に結合する能力を持つエピトープ、または(iv)本発明の抗体に結合するエピトープに結合する能力を持つ、好ましくは抗体であるリガンドを提供する。
【0134】
本発明はまた、本発明による抗体、抗体断片、もしくはその変異体および誘導体、または、本発明の抗体に結合するエピトープに結合する能力を持つ、好ましくは抗体であるリガンドを患者に投与することを含む、患者を治療する方法も提供する。一実施形態において、該方法は、対象のA型インフルエンザウイルス感染を減少させる。別の実施形態において、該方法は、対象におけるA型インフルエンザウイルス感染を阻止、そのリスクを低減、または感染を遅延させる。
【0135】
本発明はまた、A型インフルエンザウイルス感染の予防または治療のための薬物製造における、(i)本発明による抗体、抗体断片、もしくはその変異体および誘導体、(ii)本発明による不死化B細胞クローン、(iii)本発明の抗体に結合する能力を持つエピトープ、または(iv)本発明の抗体に結合する能力を持つエピトープに結合する、好ましくは抗体であるリガンドの使用も提供する。
【0136】
本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の予防または治療のための薬物として使用するための組成物を提供する。また、患者の治療および/または患者の診断のための薬物の製造における、本発明の抗体および/またはかかる抗体が結合するエピトープを含むタンパク質の使用も提供する。本発明はまた、本発明の組成物を対象に投与するステップを含む、対象を治療するための方法も提供する。いくつかの実施形態において、対象はヒトであり得る。治療処置の有効性を確認する一方法は、本発明の組成物の投与後に、疾患症状をモニターすることを包含する。治療は、単回投与計画または複数回投与計画であることができる。
【0137】
一実施形態において、本発明による抗体、抗体断片、不死化B細胞クローン、エピトープまたは組成物は、かかる治療を必要とする対象へ投与される。かかる対象は、これに限定されないが、特にA型インフルエンザウイルス感染の危険性のある者であり、例えば、免疫不全者を含む。本発明の抗体または抗体断片は、受動免疫または能動ワクチン接種において使用可能である。
【0138】
抗体およびその断片は、本発明において記述したように、A型インフルエンザウイルス感染の診断のためのキットにおいても使用され得る。さらに、本発明の抗体へ結合可能なエピトープは、防御的抗A型インフルエンザウイルス抗体の存在を検出することによりワクチン摂取手順の効率を監視するためのキットにおいて使用し得る。また、本発明において記述したように、抗体、抗体断片、またはその変異体および誘導体は、所望の免疫原性でのワクチン製造をモニターするためのキットにおいても使用され得る。
【0139】
また、本発明は、医薬品を調製する方法を提供し、モノクローナル抗体を1つ以上の薬学的に許容可能な担体と混合するステップを含み、モノクローナル抗体は、本発明のトランスフェクトされた宿主から得られたモノクローナル抗体である。したがって、最初に、モノクローナル抗体を得て(例えば、それを発現するおよび/またはそれを精製する)、次いで、それを医薬担体と混合する手順は、異なる場所(例えば、異なる国)で異なる人々によって非常に異なる時間に行うことができる。
【0140】
本発明の形質転換されたB細胞または培養されている血漿細胞から始めて、継代培養、クローニング、サブクローニング、配列決定、核酸調製等の種々のステップを、各ステップでの任意の最適化と伴い、形質転換されたB細胞または培養されている血漿細胞によって発現される抗体を永続化させるために行うことができる。好適な実施形態において、上記の方法は、抗体をコードする核酸に適用される最適化の技術(例えば、親和性成熟または最適化)をさらに含む。本発明は、そのようなステップ時に使用および調製される全ての細胞、核酸、ベクター、配列、抗体等を包含する。
【0141】
これらの全ての方法において、発現宿主内で使用される核酸は、ある種の核酸配列を挿入、欠失または修正するように、操作され得る。かかる操作からの変更は、制限酵素部位を導入するため、コドン使用頻度を変更するため、転写および/または翻訳制御配列を追加または最適化するため等の変更を含むが、これらに限定されない。また、コードされたアミノ酸を変化させるために、核酸を変更することも可能である。例えば、それは、抗体のアミノ酸配列に1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個等)のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を導入するために有用であり得る。このような点突然変異は、エフェクター機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原性等を修飾することができるか、共有結合基(例えば、標識)の付着のためにアミノ酸を導入することができるか、またはタグ(例えば、精製目的で)を導入することができる。突然変異は、特異的部位に導入することができるか、または、ランダムとその後の淘汰(例えば、分子進化)により導入することができる。例えば、本発明の抗体のCDR領域、重鎖可変領域、または軽鎖可変領域のうちのいずれかをコードする1つ以上の核酸に、無作為にまたは方向付けをもって変異を導入して、コードしたアミノ酸に異なる特性をもたらすことができる。かかる変化は反復プロセスの結果であり得、そこでは最初の変化が保持されて、他のヌクレオチドの位置で新しい変化が導入される。さらに、独立したステップにおいて達成される変化を組み合わすことができる。コードされたアミノ酸にもたらされる異なる特性は、これに限定されないが、親和性の増大を含む。
【0142】
一般
本明細書で用いられている「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」および「成る(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみから成るか、または、例えばX+Y等、何らかの付加的なものを含み得る。
【0143】
「実質的に」という用語は「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合もあり得る。必要であれば、「実質的に」という用語は本発明の定義から省略され得る。
【0144】
数値xに関連する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0145】
本明細書で用いる「疾患」という用語は、概して、正常機能を損ない、そして、典型的には、特徴的な徴候および症状によって顕在化し、ヒトもしくは動物の正常機能を損なわせる、ヒトもしくは動物の体の、またはその一部の異常な状態を反映するという点で、「障害」および「状態」(医学的状態等の状態)という用語と同義であり、それらと互換的に使用されることが意図されている。
【0146】
本明細書で用いる場合、患者の「治療(treatment)」への言及は、予防、予防法および治療(therapy)を含むことを意図する。本明細書で用いられる「対象」または「患者」という用語は、ヒトを含む全ての哺乳類を意味し、互換的に使用される。対象の例としては、ヒト、雌ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、およびウサギが挙げられる。一実施形態において、患者はヒトである。
【実施例】
【0147】
実施例
以下の実施例において、本発明の例示的な実施形態を提供する。以下の実施例は、単なる例示目的として、本発明を使用する当業者の補助となるように提示される。実施例は、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0148】
例1. 血漿細胞からのA型インフルエンザウイルスを広範に中和する抗体の産生および特徴付け
季節性インフルエンザワクチン(H1およびH3HAを含有する)に応答してヘテロサブタイプ抗体を産出する個人を識別するために、ワクチンまたは非関連であるH5 HA(A/VN/1203/04)に結合する抗体を分泌する能力を促進されてから7日目に採取された、循環血漿細胞によるELISPOTによりスクリーニングを行った。特筆すべきことに、H5特異的な血漿細胞を試験された5人中4人のドナーが検出不可能であったが、1人のドナーでは、IgGを分泌している血漿細胞の14%がH5に対する抗体を産出し、57%がワクチンに対して抗体を産出した。CD138血漿細胞は、磁性マイクロビーズを使用し、続いてFACSAriaを使用して細胞分類することにより、ワクチン接種後から7日目に採取された抹消血単核球細胞(PBMC)から単離された。限られた数の血漿細胞が、マイクロウェル培養皿に播種された。培養上清は、抗原組換えH5またはH9 HAおよび無関係な抗原破傷風トキソイドを使用した3つの平行線定量ELISA法において試験された。スクリーニングされた4,928の培養上清検体中、12がH5 HAと結合したがH9 HAには結合せず、25がH9 HAと結合したがH5 HAには結合せず、54がH5およびH9の双方と結合した。最も高いODシグナルを伴う54の培養物のいくつかを、RT−PCRに供し、2対のVHおよびVL遺伝子が回収された。
【0149】
VHおよびVL遺伝子は、発現ベクターへクローン化され、および組換え抗体が、HEK293T細胞をトランスフェクトすることによって産生された。2つのモノクローナル抗体、FI6およびFI28、は大部分のV、DおよびJ遺伝子断片(IGHV3−30*01、IGHD3−9*01、IGHJ4*02およびIGKV4−1*01)を共有したが、N領域、IGKJ使用頻度および体細胞変異のパターンにおいて異なっており、したがって、クローン的には関連しない。
【0150】
組換え抗体の特異性は、異なったサブタイプに属するHAの一パネルを使用したELISA法により調査された。著しくも、FI6は、グループ1(H1、H5およびH9)およびグループ2(H3およびH7)を含む、試験された全てのA型インフルエンザにおけるHAサブタイプと結合したが、B型インフルエンザウイルスからのHAとは結合しなかった。一方、FI28は、3つのグループ1 HA(H1、H5およびH9)とのみ結合した。
【0151】
【表4】

【0152】
2つの抗体のVHおよびVL配列における相同性を鑑みて、FI6、FI28、および7I13(H鎖と同様のV、DおよびJ要素を使用するhCMV特異性抗体)のHおよびL鎖を使用して、シャッフリング実験を行った。H7への結合にはFI6 HおよびL鎖が対になることを要したが、H5への結合はFI6およびFI28 L鎖がシャッフルされた時も維持された。さらに、H5との結合は、FI6のH鎖が非関連7I13 L鎖と対になった時観察された。一方、H5との結合は、相同7113H鎖がFI6L鎖と対になった時は観察されなかった。いずれの理論にも束縛されるものではないが、これらの結果は、H5結合に対する主な貢献はH鎖によるものであるが、H7結合はFI6のHおよびL鎖の正確な対を要することを示している。
【0153】
FI6およびFI28は、次に、A型インフルエンザサブタイプにおけるグループ1およびグループ2を中和する能力を、偽型ウイルス(表5)および伝染性ウイルス(表6)を使用して試験した。著しくも、FI6は、抗原性の異なる分岐群0、1、2.1、2.2および2.3、および2つのH7鳥分離株に属する、6つのH5分離株を含む、試験された全ての偽型ウイルスを中和した。さらに、FI6は、2つのH3N2ウイルスおよび、近年大流行したH1Nl分離株A/CA/04/09までの数十年範囲で4つのH1Nlウイルス(表6)を含む、試験された全ての感染性ウイルスを中和した。FI28は全てのH5偽型ウイルスを中和したが、試験された全てのH7偽型ウイルスおよび感染性ウイルスを中和しなかった。偽型ウイルスにおける中和力価は、感染性ウイルスにおける力価よりも高かった。
【0154】
【表5】

【0155】
【表6】

【0156】
例2. FI6およびFI28抗原性結合部位
抗体FI6およびFI28が結合する抗原性部位を識別するため、我々は、第一に、HAステム領域における保存された領域にマップされたマウスモノクロナール抗体である、C179の結合を阻止する能力を試験した(Y.Okuno, et al,J Virol 67,2552(1993))。FI6およびFI28の双方が、組換えH5VN/1203/04HAとC179の結合を完全に阻止し、それらが重複するエピトープを認識することを示唆している。一方、FI6およびFI28は、HAの球状部領域において異なるエピトープを認識するH5N1免疫ドナーから単離された、H5特異性抗体の一群と競合しなかった(C.P.Simmons et al,PLoS Med 4,el78(2007);S. Khurana et al,PLoS Med 6,el000049(2009))。エスケープ変異体の選択によるFI6エピトープをマップする試みは失敗したが、それはそのエピトープが、ウイルス適応性の損傷無しには、容易には変異可能ではないことを示唆している。
【0157】
我々は、次に、HA AAHSf/1194/04の線状および環状ペプチドライブラリを使用した、ペプチドをベースとしたマッピング、ならびにPepscan Presto BVシステムを使用したヘリックススキャンを行った(Lelystad,The Netherlands)。この分析は、FI6の結合領域を特定し、HA2融合ペプチドFGAIAG(H3番号付けでは、アミノ酸3〜8、配列番号37)、HA2ヘリックスAペプチドDGVTNKVNS(アミノ酸46〜54、配列番号38)、HA2ヘリックスBペプチドMENERTLDFHDSNVK(アミノ酸102〜116、配列番号39)、およびHA1 C末端ペプチドLVLATGLRNSP(アミノ酸315〜325、配列番号40)を含む。この抗体は、HA1 C末端ペプチドおよびHA2ヘリックスBペプチドと反応しなかったため、FI28の結合領域は、FI6のものとは異なる。
【0158】
参考文献
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米国特許第4,233,402号
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプおよびグループ2サブタイプの感染を中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、赤血球凝集素のステム領域内のエピトープに特異的に結合し、前記エピトープは、グループ1およびグループ2から選択されるA型インフルエンザウイルスの2つ以上のサブタイプの間で保存される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体または抗体断片は、配列番号37、38、39、または40のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
A型インフルエンザウイルスの50%中和に必要とされる抗体の濃度は、20μg/ml以下である、請求項1、2、または3に記載の抗体。
【請求項5】
A型インフルエンザウイルスの50%中和に必要とされる抗体の濃度は、4μg/ml以下である、請求項1、2、または3に記載の抗体。
【請求項6】
前記グループ1サブタイプは、H1、H2、H5、またはH9である、請求項1、2、もしくは3に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記グループ2サブタイプは、H3またはH7である、請求項1、2、または3に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体または抗体断片は、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のサブタイプのA型インフルエンザウイルスの感染を中和する、請求項1、2、または3に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体は、サブタイプ(i)H1およびH3、(ii)H1およびH7、(iii)H3およびH5、(iv)H3およびH9、(v)H5およびH7、(vi)H7およびH9、(vii)H1、H3、H5、およびH7、または(viii)H1、H3、H5、H7、およびH9のA型インフルエンザウイルスの感染を中和する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1〜6または17〜22のうちのいずれか1つと少なくとも95%の配列相同性を有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)配列を含む、A型インフルエンザウイルスを中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1または配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1と、配列番号2または配列番号 18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2と、配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3と、を含み、A型インフルエンザウイルスを中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号4または配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1と、配列番号5または配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2と、配列番号6または配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3と、を含み、A型インフルエンザウイルスを中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
CDRH1に対して配列番号1、CDRH2に対して配列番号2、およびCDRH3に対して配列番号3、あるいはCDRH1に対して配列番号17、CDRH2に対して配列番号18、およびCDRH3に対して配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項11または12に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
CDRL1に対して配列番号4、CDRL2に対して配列番号5、およびCDRL3に対して配列番号6、あるいはCDRL1に対して配列番号20、CDRL2に対して配列番号21、およびCDRL3に対して配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項11、12、または13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
配列番号13、33、29、または35のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
配列番号14または配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1〜15のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、A型インフルエンザウイルスを中和する、抗体またはその抗原結合断片
【請求項18】
前記抗体は、FI6変異体1またはFI6変異体2である、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体は、ヒト抗体、モノクローナル抗体、精製された抗体、単離された抗体、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、またはscFvである、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
前述の請求項のうちのいずれか1項に記載の抗体と同一エピトープに結合する、抗体またはその抗原結合断片であって、A型インフルエンザウイルスを中和する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
A型インフルエンザウイルス感染の治療のための、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
前述の請求項のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む、核酸分子。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号7〜12、15、16、34、23〜28、31、32、または36のうちのいずれか1つの核酸配列と少なくとも75%相同である、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
請求項22または23に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項25】
請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を発現するか、または請求項24に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項26】
請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片に結合するエピトープを含む、単離または精製された免疫原性ポリペプチド。
【請求項27】
請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項22もしくは請求項23に記載の核酸、請求項24に記載のベクター、請求項25に記載の細胞、または請求項26に記載の免疫原性ポリペプチドと、薬学的に許容される希釈剤または担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項28】
第1の抗体またはその抗原結合断片と、第2の抗体またはその抗原結合断片と、を含む医薬組成物であって、前記第1の抗体は、請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体であり、前記第2の抗体は、A型インフルエンザウイルス感染を中和する、医薬組成物。
【請求項29】
(i)A型インフルエンザウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(ii)ワクチンにおける、または(iii)A型インフルエンザウイルス感染の診断における、請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項22もしくは請求項23に記載の核酸、請求項24に記載のベクター、請求項25に記載の細胞、請求項26に記載の免疫原性ポリペプチド、または請求項27もしくは請求項28に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
抗A型インフルエンザウイルスワクチンの抗原が正しい立体構造の特定のエピトープを含有していることを確認することにより、前記ワクチンの品質を監視するための、請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項31】
A型インフルエンザウイルス感染を低減させるか、またはA型インフルエンザウイルス感染の危険性を低下させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項32】
(i)治療における、(ii)A型インフルエンザウイルス感染の治療のための薬物の製造における、(iii)ワクチンとしての、または(iv)A型インフルエンザウイルス感染を中和することが可能なリガンドのスクリーニングにおける、使用のための、請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片に特異的に結合する、エピトープ。

【公表番号】特表2011−528901(P2011−528901A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519252(P2011−519252)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006616
【国際公開番号】WO2010/010466
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(511017287)インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシン (4)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR RESEARCH IN BIOMEDICINE
【Fターム(参考)】