説明

抗CD20治療用組成物および方法

本発明は、CD20特異的結合分子、特に、抗体またはその抗原結合断片を用いた、異常なB細胞活性の関与する疾患の処置のための材料および方法を提供する。本明細書に開示される組成物は、B細胞悪性疾患および自己免疫疾患のようなB細胞障害の処置および診断のために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、CD20特異的結合分子を用いた、異常なB細胞活性の関与する疾患の処置のための材料および方法を提供する。本明細書に開示される組成物は、B細胞悪性疾患のようなB細胞障害および自己免疫疾患の処置および診断のために有用である。
【背景技術】
【0002】
背景
ヒトの免疫系は、通常の役割として外来物質および病原体による傷害から身体を守っている。免疫系が体を守る一つのやり方は、Bリンパ球またはB細胞と呼ばれる特化した細胞を産生することによる。B細胞は、外来物質または病原体に結合し、また場合によってはその破壊を媒介する抗体を産生する。
【0003】
しかし、場合によっては、ヒトの免疫系、特にヒトの免疫系のBリンパ球は、間違いを犯し、疾患が生じる。B細胞の無制御な増殖が関与する癌は数多くある。外来物質および病原体に結合する代わりに身体の部分に結合する抗体の、B細胞による産生が関与する自己免疫疾患も数多くある。さらに、例えば、T細胞に対するB細胞の不適切な抗原提示、またはB細胞の関与する他の経路を通して、病態にB細胞が関与する自己免疫疾患および炎症性疾患が数多くある。例えば、B細胞欠損性の自己免疫傾向のマウスは、自己免疫性腎臓疾患、血管炎、または自己抗体を発生しない(Shlomchik et al., J. Exp. Med. 1994, 180:1295-306(非特許文献1))。興味深いことに、B細胞を持つが免疫グロブリン産生が欠損したこれらの自己免疫傾向のマウスは、実験的に誘導されると自己免疫疾患を発症し(Chan et al., J. Exp. Med. 1999, 189:1639-48(非特許文献2))、これは自己免疫疾患の発症にB細胞が不可欠の役割を担っていることを示す。
【0004】
B細胞は、その細胞表面にある分子によって同定できる。CD20はモノクローナル抗体によって同定された最初のヒトB細胞系統特異的表面分子であった。グリコシル化されていない疎水性の35 kDaのB細胞膜貫通型リンタンパク質であり、アミノ末端およびカルボキシ末端の両方とも細胞内部にある。Einfeld et al., EMBO J. 1988, 7:711-17(非特許文献3)。CD20は全ての正常な成熟B細胞によって発現されるが、前駆B細胞または形質細胞には発現されない。CD20の天然のリガンドは同定されておらず、B細胞の生物学におけるCD20の機能の理解は、まだ不完全である。
【0005】
特定の抗CD20モノクローナル抗体はB細胞の生存能力および増殖に影響を与え得る。(Clark et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986, 83:4494-98(非特許文献4))。CD20の広範な架橋は、Bリンパ腫細胞株のアポトーシスを誘導することができ(Shan et al., Blood 1998, 91:1644-52(非特許文献5))、細胞表面のCD20の架橋は、例えば、細胞基質のチロシンリン酸化の測定によって検出されるような、シグナル伝達の程度を上昇させ、速度を増加させることが報告されている。(Deans et al., J. Immunol. 1993, 146:846-53(非特許文献6))。したがって、補体およびADCC機序による細胞の枯渇に加えて、インビボにおける特定のCD20モノクローナル抗体によるFc受容体結合は、CD20架橋による悪性B細胞のアポトーシスを促進する可能性があり、これはSCIDマウスモデルにおけるヒトリンパ腫のCD20治療の効果はCD20モノクローナル抗体によるFc受容体結合に依存する可能性があるという理論と一致している(Funakoshi et al., J. Immunotherapy 1996, 19:93-101(非特許文献7))。CD20ポリペプチドに複数の膜貫通ドメインが存在するため(Einfeld et al., EMBO J. 1988, 7:711-17(非特許文献3); Stamenkovic et al., J. Exp. Med. 1988, 167:1975-80(非特許文献8); Tedder et al., J. Immunol. 1988, 141:4388-4394(非特許文献9))、抗体結合後にCD20インターナリゼーションが起こらず、これは、マウスCD20モノクローナル抗体1F5がB細胞リンパ腫の患者に注射され悪性細胞の有意な枯渇および臨床的な部分奏効が得られた時に、B細胞悪性疾患の治療にとっての重要な特徴であると認識された(Press et al., Blood 1987, 69:584-91(非特許文献10))。
【0006】
正常な成熟B細胞もCD20を発現するため、抗CD20治療によって正常なB細胞も枯渇する(Reff et al., Blood 1994, 83:435-445(非特許文献11))。しかし処置が完了した後で、正常なB細胞はCD20陰性のB細胞前駆細胞から再生できる;したがって、抗CD20治療で処置された患者は、有意な免疫抑制を経験しない。
【0007】
CD20は、B細胞リンパ腫および慢性リンパ性白血病(CLL)を含むB細胞起源の悪性細胞によって発現される。CD20は、急性リンパ芽球性白血病のような前B細胞の悪性疾患では発現されない。したがってCD20はB細胞リンパ腫、CLL、および疾患の病因にB細胞が関与している他の疾患の良い標的である。他のB細胞障害には、B細胞が形質細胞に分化する間に自己抗体が産生される自己免疫疾患が含まれる。
【0008】
腫瘍細胞の表面で選択的に発現する分子を標的としたモノクローナル抗体(mAb)の使用は、現在では十分確立した治療戦略であり、少なくとも7つの異なるmAb治療薬が承認され、癌治療に使用されている:リツキサン(登録商標)(RITUXAN)、トラスツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、およびゲムツズマブ・オゾガマイシン。そのようなmAb治療薬は、2つの異なる機序で抗腫瘍活性を媒介する。第1の機序は、腫瘍の増殖に寄与する鍵となる受容体・リガンド/カウンター受容体相互作用のmAbを介した阻害を含み、第2の機序は、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)を媒介する能力のあるFcR+エフェクター細胞のような宿主の免疫系のエフェクター成分、および補体依存性細胞障害(CDC)を媒介する能力のある補体のような液性因子の参加に依存する。後者の場合、mAb治療薬はエフェクター細胞の上のFcγRおよび補体と相互作用する能力を持つ必要がある。EGFRを標的とするパニツムマブを例外として、癌治療に現在使用されている5つの免疫療法mAbはすべて免疫系のエフェクター成分を関与させる能力がある。
【0009】
リツキサンは、癌における臨床使用が承認された最初のmAbであった。リツキサンは、マウス抗CD20 mAbの重鎖および軽鎖の可変ドメインがヒトIgG1の定常領域に融合された組み換えマウスヒトIgG1キメラmAbである。
【0010】
さらに、CD20はB細胞関連疾患の処置のための放射免疫療法薬の標的ともなっている。1つの処置は、B細胞リンパ腫の処置のための放射性核種の形で調製される抗CD20抗体(例、131I-標識抗CD20抗体)、ならびに前立腺癌および乳癌の転移に起因する骨痛の緩和のための89Sr-標識形からなる(Endo, Gan To Kagaku Ryoho 1999, 26:744-748(非特許文献12))。
【0011】
1つの試験では、リツキサンは全身性エリテマトーデス(SLE)の18例の患者(非免疫抑制患者)の処置に関して安全性、忍容性、および予備的臨床有効性が調べられた。処置された18例の患者のうち、6例は100 mg/m2のリツキサンを1回投与(低用量)、6例は375 mg/m2のリツキサンを1回投与(中用量)、および6例は週1回375 mg/m2のリツキサンを4回投与(高用量)された。低用量および中用量でさえ、12例の患者のうちの3例(25%)は2ヶ月後にヒト抗キメラ抗体(HACA)のレベルが上昇していた。
【0012】
したがって、治療のための新規のCD20特異的結合分子、好ましくは免疫抑制されていない患者に投与された時にHACA反応を引き起こさない、または引き起こす可能性が低下している、新規のCD20結合分子を開発する必要がある。さらに、抗体に基づく治療に関しては多数の研究が行なわれてきたが、異常なB細胞活性に伴う疾患を処置する組成物および方法が当技術分野で依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Shlomchik et al., J. Exp. Med. 1994, 180:1295-306
【非特許文献2】Chan et al., J. Exp. Med. 1999, 189:1639-48
【非特許文献3】Einfeld et al., EMBO J. 1988, 7:711-17
【非特許文献4】Clark et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986, 83:4494-98
【非特許文献5】Shan et al., Blood 1998, 91:1644-52
【非特許文献6】Deans et al., J. Immunol. 1993, 146:846-53
【非特許文献7】Funakoshi et al., J. Immunotherapy 1996, 19:93-101
【非特許文献8】Stamenkovic et al., J. Exp. Med. 1988, 167:1975-80
【非特許文献9】Tedder et al., J. Immunol. 1988, 141:4388-4394
【非特許文献10】Press et al., Blood 1987, 69:584-91
【非特許文献11】Reff et al., Blood 1994, 83:435-445
【非特許文献12】Endo, Gan To Kagaku Ryoho 1999, 26:744-748
【発明の概要】
【0014】
本発明は、B細胞癌、関節リウマチ、および紅斑性狼瘡を含むがこれらに限定されない、B細胞が媒介する疾患および状態の診断および処置を必要とする被験体において有用な新規のCD20結合分子に関する。様々な態様において、本発明は、新規の重鎖CDR配列、軽鎖CDR配列、CDR配列を含む新規の可変ドメイン配列、ならびに、CDR、結合ドメインまたはそれらを含む分子を含む新規のCDRまたは可変ドメイン配列、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物およびキットを含む、CD20結合分子を提供する。いくつかの態様では、新規のCDR配列または可変ドメインを含むCD20結合分子は、抗体またはその抗原結合断片である。別の態様では、CD20結合分子は小モジュラー免疫医薬SMIP(small modular immunopharmaceutical)である。いくつかの態様では、抗体またはSMIPはヒト化され、ヒトの配列フレームワークおよび定常領域配列を含む。本発明のCD20結合分子は、細胞上のCD20と結合し、CDCおよびADCC活性を示し、血液、骨髄、およびリンパ節中のCD19+ B細胞を枯渇させ、B細胞リンパ腫の腫瘍増殖を低下させ、および/または播種性リンパ腫の進行および効果を低下させる。本発明のCD20結合分子は、例えば被験体から得られた生物学的試料中で、CD20またはこれを発現する細胞の存在を検出および定量するためにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】初代B細胞に対する抗CD20 SMIPの結合を示す。バッフィコートから単離された初代B細胞は、明記されたように、示された濃度の様々な抗CD20 SMIPとインキュベーションされた。SMIPの結合は標識された抗ヒトIgG-PE抗体(Fc特異的)を用いてフローサイトメトリー(MFI)によって解析された。各SMIPのEc50はしかるべく計算された。
【図2】ヒトB細胞リンパ腫に対する018011(18011または011とも呼ばれるが同じ分子である)のインビトロの増殖抑制効果を示す。
【図3】抗CD20 SMIPの補体依存性細胞障害アッセイを示す。A:Ramos B細胞は10%ヒト血清(Quidel)の存在下で抗CD20 SMIPと37℃で3.5時間インキュベーションされた。細胞死は細胞からのLDHの放出によって測定された(Promegaキット)。B:バッフィコートから単離された初代ヒトB細胞(5X105)は抗ヒトCD55抗体(2μg/ml)と37℃で10分間予備インキュベーションされた。その後、示された濃度の抗CD20 SMIPおよび血清(10%)が添加された。3.5時間のインキュベーション後に、7-AAD染色およびフローサイトメトリー解析によって、細胞死が評価された。
【図4】これらのインビトロ試験は、018011がCD20+ B細胞リンパ腫細胞に用量依存的に結合し、CD20+ B細胞リンパ腫標的細胞に対して、Fcの媒介する細胞性の細胞障害および補体依存性細胞障害の両方をもたらすことを示す。このエフェクター機能の能力の実証は、018011がヒトB細胞リンパ腫の増殖を阻害する能力に対して重要である可能性がある。A. SU-DHL4 B細胞リンパ腫細胞に対する018011の補体依存性細胞障害を示す。B. BJAB B細胞リンパ腫細胞に対する018011の補体依存性細胞障害を示す。
【図5】抗CD20 SMIPの抗体依存性細胞障害アッセイを示す。BJABリンパ腫細胞はCFSEで標識され、SMIPおよび活性化されたヒトPBMCとインキュベーションされた。細胞はPIで染色され、フローサイトメトリーにより解析された。CFSE+細胞についてのみ細胞死の評価がされた。
【図6】A. SU-DHL4 B細胞リンパ腫に対する018011のFcの媒介する細胞性の細胞障害を示す。B. Ramos B細胞リンパ腫に対する018011のFcの媒介する細胞性の細胞障害を示す。
【図7】Ramos B細胞に対するCD20-SMIPのADCCを示す。
【図8】非ヒト霊長類における末梢CD19+ B細胞の枯渇を示す。2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcの両方とも、少なくともリツキサンと同等の、非ヒト霊長類における末梢CD19+ B細胞の効果的な枯渇を示した。
【図9】非ヒト霊長類における骨髄CD19+ B細胞の枯渇を示す。2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcの両方とも、少なくともリツキサンと同等の、非ヒト霊長類における骨髄CD19+ B細胞の効果的な枯渇を示した。
【図10】非ヒト霊長類におけるリンパ節CD19+ B細胞の枯渇を示す。2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcの両方とも、少なくともリツキサンと同等の、非ヒト霊長類におけるリンパ節CD19+ B細胞の効果的な枯渇を示した。
【図11】IV投与後のカニクイザルにおける2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcの薬物動態(PK)解析を示す。2LM 20-4および2LM 20-4 mut FcのPKプロファイルはリツキサンのものと同等だった。
【図12】Balb/cヌードマウスにおいて確立したRamos皮下異種移植片に対する018011およびリツキシマブの効果を示す。
【図13】Balb/cヌードマウスにおいて確立したRamos皮下異種移植片に対する018011およびリツキシマブの生存時間解析を示す。
【図14】nu/nuヌードマウスにおいて確立したRamos皮下異種移植片に対する018011、TRU-015、およびリツキシマブの効果を示す。
【図15】nu/nuヌードマウスにおいて確立したRamos皮下異種移植片に対する018011、TRU-015、およびリツキシマブの生存時間解析を示す。
【図16】018011、TRU-015、およびリツキシマブで処置された、播種性Ramos B細胞リンパ腫を持つScidマウスの生存時間解析を示す。
【図17】播種性疾患を持つScidマウスの骨髄におけるヒトBリンパ腫細胞の検出を示す。
【図18】018011、TRU-015、およびリツキシマブで処置された、播種性WSU-DLCL2びまん性大細胞型リンパ腫を持つScidマウスの生存時間解析を示す。
【図19】Ramos皮下異種移植片の増殖に対する、静脈内または腹腔内投与された018011の効果を示す。
【図20】非照射および照射されたRamos皮下異種移植片に対する018011およびリツキシマブの効果を示す。
【図21】時間を追った平均腫瘍体積を示す。試験0日目に、触知可能なRamos腫瘍を持ったヌードマウスは、各群の平均腫瘍体積が同等になるように、処置群に振り分けられた(n=8/群)。マウスは0、2、4、6、および8日目に100μgのヒトIgG、TRU-015、018008(18008または008とも呼ばれるが同一の分子である)、018011、または2Lm20-4でIV処置された。腫瘍は示された日にカリパスを用いて測定され、腫瘍体積はV=1/2[長さx (幅)2]の公式を用いて計算された。腫瘍体積が指定された制限を超えたために動物が試験から取り除かれたときは、最後の腫瘍体積が繰り越された。結果は、最後の対照マウスが犠牲にされた10日目までのみ示されている。
【図22】早期の時点での個々のマウスの腫瘍体積を示す。マウスは処置およびモニターされ、腫瘍体積は図21の説明に記述されているようにして決定された。結果は、(i)個々のマウスの8日目(すべてのマウスが生存していた最後の時点)の腫瘍体積、または(ii)個々のマウスの0日目に対する8日目の相対的腫瘍体積、で示されている。Dunnettの多重比較事後検定(huIgG処置対照と比較)およびTukeyの多重比較事後検定(他の全ての対比較)による一元配置ANOVAを用いて群間の有意差が決定された。すべての対比較のP値が示されている。
【図23】TRU-015またはHuCD20 SMIPで処置されたマウスの生存パーセントを示す。マウスは処置およびモニターされ、腫瘍体積は図21の説明に記述されているようにして決定された。腫瘍体積は、試験に残っている全てのマウスに触知可能な腫瘍がない期間にモニタリングが週1回に切り替えられたのを除き、週に少なくとも3回(月水金)決定された。腫瘍体積が1500 mm3(または金曜日に1200 mm3)を越えた時に、マウスは犠牲にされた。死亡が発見されたかまたは他の理由で犠牲にされたマウスはなかった。
【図24】時間を追った無腫瘍マウスの割合を示す。マウスは処置およびモニターされ、腫瘍体積は図21の説明に記述されているようにして決定された。触知可能な腫瘍がない場合に、マウスは「無腫瘍」と考えられた。腫瘍体積は、試験に残っている全てのマウスに触知可能な腫瘍がない期間にモニタリングが週1回に切り替えられたのを除き、週に少なくとも3回(月水金)決定された。
【図25】時間を追ったマウスの平均体重を示す。マウスは図21の説明に記述されているようにして処置およびモニターされた。体重は試験の示された日に決定された。
【図26】Ramos B細胞リンパ腫異種移植片から単離された細胞に結合した018011またはリツキシマブのフローサイトメトリー評価を示す。
【図27】ヒトB細胞リンパ腫に対する018011のインビトロの増殖阻害効果を示す。
【図28】Ramos B細胞リンパ腫細胞の活性化誘導性細胞死に対する018011の架橋の効果を示す。
【図29】例示的なヒト化SMIPのいくつかの鍵となる位置のアミノ酸残基をまとめた表を示す。「ヒンジ」カラムに列挙されている残基は、SEQ ID NO: 60の位置220、226、229、および230の残基を示す。「IgG1 Fc」カラムの残基331は、SEQ ID NO: 61の残基331を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
I. 定義
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語がまず定義される。さらなる定義は詳細な説明の中で説明される。
【0017】
本発明の様々な態様にしたがう「CD20結合分子」は本明細書で具体的に例示されたヒト化CD20結合分子のCD20結合部分を含む分子である。本発明で考慮されるCD20結合分子の1つのタイプは、抗体またはそのCD20結合断片である。結合分子は当技術分野の標準的な方法にしたがって、例えば結合親和性を改善するため、特異性を改善するため、免疫原性を減弱させるため、エフェクター機能を変更するため、および/または個体の体内での利用可能性を改善するために、修飾されていても良い。そのような修飾には、例えばアミノ酸配列の修飾、または融合タンパク質としての発現が含まれる。そのような融合タンパク質も、本発明にしたがう結合分子である。本発明の典型的な結合分子は、小モジュラー免疫医薬(SMIP)である。
【0018】
「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたはその断片を指し、抗体の抗原結合断片を含む任意のそのようなポリペプチドを包含する。この用語は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、ヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組み換え、ハイブリッド、変異、移植、およびインビトロで生成した抗体を含むがこれらに限定されない。
【0019】
「抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片も含む。抗原結合断片の例には、Fab断片(VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる);Fd断片(VHおよびCH1ドメインからなる);Fv断片(密な非共有会合をしている1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーを指す);dAb断片(VHドメインからなる);単離されたCDR領域; (Fab')2断片、二価断片(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む)、scFv(短いリンカーで連結されたVLおよびVHドメインの融合を指す)、および抗原結合機能を保持した他の抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。抗体によって特異的に認識され結合される抗原部分は「エピトープ」と呼ばれる。
【0020】
本発明の抗CD20抗体の抗原結合断片は、酵素切断のような従来の生化学的技術、または当技術分野で公知の組み換えDNA技術によって生産できる。これらの断片は、当技術分野で公知の方法によって完全な抗体のタンパク分解性切断によって、または部位特異的変異誘発を用いてベクター中の所望の位置、例えば、Fab断片を生産するためにCH1の後もしくは(Fab')2断片を生産するためにヒンジ領域の後、に停止コドンを挿入することによって、生産できる。例えば、抗体のパパイン消化によって、「Fab」
断片と呼ばれる各々が単一の抗原結合部位を持つ2つの同一の抗原結合断片、および残りの「Fc」断片が生成する。抗体をペプシン処置すると2つの抗原組み合せ部位を持ち、まだ抗原を架橋する能力のあるF(ab')2断片が生成する。単鎖抗体は、VLおよびVHコード領域を、VLおよびVHタンパク質断片を連結するペプチドリンカーをコードするDNAと連結することによって生産できる。
【0021】
「インビトロで作製された抗体」は、可変領域の全体または一部(例、少なくとも1つのCDR)が非免疫細胞選択(例、インビトロファージディスプレイ、タンパク質チップ、または候補配列の抗原結合能力を検定できる他の任意の方法)で作製された抗体を指す。この用語は、免疫細胞におけるゲノム再配列によって作製された配列は含まない。
【0022】
抗原結合断片/ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(VL)および抗体の重鎖可変領域(VH)を含み得る;しかし、両方を含む必要はない。例えば、Fd断片は2つのVH領域を持ち、しばしば完全な抗原結合ドメインの抗原結合機能をいくらか保持している。抗体の抗原結合断片の例には、(1)Fab断片、すなわちVL、VH、CL、およびCH1ドメインを持つ一価断片;(2)F(ab')2断片、すなわちヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価の断片;(3)2つのVHおよびCH1ドメインを持つFd断片;(4)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインを持つFv断片;(5)VHドメインを持つdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546;(6)単離された相補性決定領域(CDR)、および(7)単鎖Fv(scFv)が含まれる。Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子がコードしているが、これらは組み換えDNA法を用いて、VLとVH領域が対になって一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを作製できるようにする合成リンカーによって、つなげることができる。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の方法を用いて得ることができ、断片は完全な抗体と同じやり方で機能が評価される。
【0023】
「ヒト抗体」という用語は、当技術分野で公知のヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に実質的に対応する可変および定常領域を持つ抗体を指し、例えば、Kabat et al.(Kabat, et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)によって記述されたものを含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基を含む可能性がある(例、インビトロの無作為もしくは部位特異的変異誘発またはインビボの体細胞変異によって導入された変異)。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基によって、少なくとも1、2、3、4、5、またはそれ以上の位置が置換されている可能性がある。CDRはKabatまたはChothia C, Lesk AM, Canonical Structures for the hypervariable regions of immunoglobulins, J Mol Biol. 1987 Aug 20;196(4):901-17に定義されているとおりである。CDRは、典型的には配列が超可変的である領域、および/または構造的に定義されたループ、例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services (1991), eds. Kabat et alに記述されるようにKabat CDRは配列の可変性に基づいている、を形成する領域を指すか、または、Chothiaに記述されるような超可変構造ループの位置を指す。例えば、Chothia, D. et al. (1992) J. Mol. Biol. 227:799-817; およびTomlinson et al. (1995) EMBO J. 14:4628-4638を参照されたい。さらに別の標準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されるAbM定義であり、これは結晶構造に基づいて接触性超可変領域を定義している。一般的には、例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains. In: Antibody Engineering Lab Manual (Ed.: Duebel, S. and Kontemann, R., Springer-Verlag, Heidelberg)を参照されたい。Kabat CDRに関して記述された態様は、代わりにChothia超可変ループまたはAbM定義のロープに関して同様に記述された関係を用いて実施できる。
【0024】
「有効量」という用語は、治療のコースに渡って、任意のCD20活性を低下させる、1つもしくは複数の臨床症状を改善する、または所望の生物学的転帰を達成するために十分な用量または量を指す。
【0025】
CD20活性を「阻害する」または「拮抗する」という用語および同種の用語は、CD20特異的結合分子への結合による、CD20の少なくとも1つの活性の低下、阻害、または別なやり方での減弱を指し、ここで低下は同一の分子の非存在下におけるCD20の活性に対する相対的なものである。阻害または拮抗は、CD20の生物活性を完全に除去することを必ずしも意味しない。活性の低下は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上で良い。
【0026】
「単離された」という用語は、その天然の環境が実質的に見られないを分子を指す。例えば、単離されたタンパク質には、それが由来する細胞または組織源からの細胞性の物質または他のタンパク質が実質的に見られない。この用語はまた、単離されたタンパク質が、薬学的組成物のために十分に純粋;または少なくとも70%(w/w)純粋;または少なくとも80%(w/w)純粋;または少なくとも90%純粋;または少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%(w/w)純粋、である調製物も指す。
【0027】
「治療薬」という用語は、医学的障害を処置するまたは処置の助けをする物質である。治療薬には、抗増殖薬、化学療法薬を含む抗癌剤、抗ウイルス薬、抗感染症薬、免疫調節薬、および本発明のCD20特異的結合分子によるCD20活性の低下を補う様式で免疫細胞または免疫応答を調節する同様なものが含まれるが、これらに限定されない。治療薬の非限定的な例および使用は本明細書に記述されている。
【0028】
本明細書で使用されるCD20特異的結合分子の「治療的有効量」は、被験体(例、ヒトの患者)へ単回または複数回投与すると、障害または再発性の障害の少なくとも1つの症状を処置する、予防する、治癒する、遅らせる、重症度を低下させる、および/または軽減する、または処置を施さない場合に期待されるものより被験体の生存期間を延長するために、有効であるCD20特異的結合分子の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に当てはめられる時には、治療的有効量はその単独の成分を指す。組み合せに当てはめられる時には、治療的有効量は、組み合わせてか、順次か、または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合せた量を指す。本発明は、1つまたは複数のCD20特異的結合分子の各々の有効量が、本発明の方法に従って投与される可能性を特に考慮している。
【0029】
「処置」または「処置する」という用語は、治療、防止、または予防的手段を指す。治療的処置は、処置を受ける個体において疾患の少なくとも1つの症状を改善する、または個体において進行性疾患の悪化を遅らせる、またはさらなる関連疾患の発症を防止する可能性がある。処置は、障害または再発性の障害の1つまたは複数の症状を予防する、治癒する、遅らせる、重症度を低下させる、および/または軽減する、または処置を施さない場合に期待されるものより被験体の生存期間を延長するために、医学的障害を持つ、または究極的に障害を獲得する可能性のある被験体へ投与される可能性がある。
【0030】
「ヒトCD20」という用語は、ヒトBリンパ球拘束性分化抗原(Bp35としても知られる)を指す。CD20は初期のプレB細胞発生時に発現され、形質細胞の分化まで残る。CD20分子は細胞周期の開始および分化に必要な活性化過程における段階を調節する可能性があり、通常、腫瘍性B細胞では非常に高レベルで発現される。CD20は「正常な」B細胞および「悪性」B細胞(すなわち衰えない増殖がB細胞リンパ腫に至り得るB細胞)の両方に存在する。
【0031】
II. CD20特異的結合分子
本発明によると、CD20結合分子は初代B細胞ならびにNU-DHL1、Ramos、SU-DHL4、SU-DHL5、およびWSU-DLCL2を含むB細胞リンパ腫細胞株の上のCD20に結合する。様々な態様では、CD20結合分子は図1に示されるEC50と同等のEC50でCD20発現細胞に結合、および/または用量依存的に結合する。様々な態様では、CD20結合分子は:場合によっては少なくとも40%の細胞障害性を持つ、初代B細胞ならびに少なくともRamos、SU-DHL4、およびBJAB細胞における補体依存性細胞障害(CDC);用量依存性で、場合によっては少なくとも40%の細胞障害性を持つ、少なくともRamos、BJAB、およびSU-DHL4細胞における抗体依存性(またはFc依存性)細胞障害(ADCCまたはFcCC);リツキサン(登録商標)よりも長い期間または8日間よりも長くおよび少なくとも10、12、14、16、18、20、または21日間、骨髄およびリンパ節においてCD19+ B細胞の枯渇を維持する;実施例に記述されるようにマウスモデルにおいて確立した異種移植片腫瘍の成長を低下させ、および実施例に記述されるように様々なマウスモデルにおいて播種性リンパ腫の初期段階に投与された時に保護的である、からなる群より選択される1つまたは複数の性質を有する。
【0032】
いくつかの態様では、α-CD20結合分子は小モジュラー免疫医薬(SMIP)である。1つの局面では、本発明はヒト化CD20特異的結合分子を提供する。出願者らは、ヒトおよび家畜を含む哺乳類被験体の処置に有用な57の新規CD20特異的結合分子を提供した。本発明はCD20特異的結合分子をコードする核酸配列も提供する。
【0033】
特定の態様では、本発明のCD20特異的結合分子は、高い結合親和性、低い解離速度を持ち、ヒトCD20に特異的に結合する。
【0034】
特定の態様では、本発明のヒト化CD20特異的結合分子は抗体、特に抗CD20モノクローナル抗体(mAb)、またはその抗原結合断片である。
【0035】
キメラ抗体は異なる抗体に由来する部分を持つ抗体である。例えば、キメラ抗体は2つの異なる抗体に由来する可変領域および定常領域を持つ可能性がある。ドナー抗体は同一または異なる種から得られる可能性がある。特定の態様では、本発明のキメラ抗CD20抗体の可変領域は非ヒト、例えば、マウス(または非ヒトおよびヒトの組み合せ)で、定常領域はヒトである。
【0036】
本発明のヒト化CD20結合分子は、CDR移植ヒト化抗CD20抗体も含む。1つの態様では、ヒト化抗体は本発明のヒト化抗CD20 SMIPの重鎖および/または軽鎖CDR(SEQ ID NO: 1〜59)、ならびにヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖および軽鎖フレームワークおよび定常領域を含む。ヒト化抗体の作製方法は、各々の全体が参照により本明細書に組み入れられるU.S. Pat. No: 5,530,101; 5,585,089; 5,693,761; 5,693,762;および6,180,370に開示されている。
【0037】
完全な抗体の結合特異性を保持した本発明の抗体の抗原結合断片も、本発明に含まれる。抗原結合断片には、本明細書に記述される任意のCD20特異的抗体の部分的もしくは全長の重鎖もしくは軽鎖、可変領域、またはCDR領域が含まれる。
【0038】
いくつかの態様では、本発明のヒト化CD20特異的抗体は、本願の配列リストに例示される任意の結合分子の重鎖CDR3、軽鎖CDR3、または両方を含む。HCDR3およびLCDR3を含む態様では、本願の配列リスト中の同一分子または異なる分子に由来するものであり得る。いくつかの態様では、本発明のヒト化CD20特異的抗体は、本願の配列リスト中に例示される1つの結合分子の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、もしくは6つのCDRすべてを含む、またはHCDR1〜3およびLCDR1〜3は本願の配列リスト中の異なる結合分子に由来し得る。いくつかの態様では、本発明のヒト化CD20特異的抗体は、本願の配列リスト中に例示される1つの結合分子の重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、または両方を含む抗体である。本願の配列リスト中に示される任意のVH、本願の配列リスト中に示される任意のVL、そのようなVHとVLの任意の組み合せ、もしくは本願の配列リスト中に示される任意のVH/VL対を含むヒト化抗CD20抗体、またはそのような抗体の抗原結合部分も本発明に包含される。
【0039】
特定の態様では、本発明のCD20特異的結合分子は、CD20特異的小モジュラー免疫医薬(SMIP)である。
【0040】
本発明のヒト化抗CD20 SMIPは3つのモジュラードメインを持っている:結合ドメイン、ヒンジドメイン、およびエフェクタードメイン。いくつかの態様では、本発明の抗CD20 SMIPの結合ドメインは、VHドメインおよびVLドメインを含む。本発明の抗CD20 SMIPのヒンジドメインは、SMIPの会合、または多量体化の制御もする一方で結合ドメインとエフェクタードメインの間の柔軟な連結を提供することによって2つの相補的な機能を実行する。本発明のヒト化抗CD20 SMIPのエフェクタードメインは、例えば、ヒト抗体Fcドメイン、またはエフェクター機能を持つ非抗体タンパク質を含み得る。エフェクタードメインはどのタイプの免疫細胞が活性化されるかを決定し、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞障害(CDC)の相対活性を含め、採用するエフェクター機能のバランスを調節する。エフェクタードメインはSMIP薬の多量体化を調節するようにも操作できる。
【0041】
本発明のSMIPの結合ドメインは、1つまたは複数の結合領域、例えば、1つまたは複数の免疫グロブリンに由来する可変軽鎖および可変重鎖の結合領域を持つ可能性がある。これらの領域は典型的には、リンカーペプチドによって隔てられており、これはドメインまたは領域接合に適合する当技術分野で公知の任意のリンカーペプチドでよい。例示的なリンカーは、例えばn=1〜5である(Gly4Ser)nのようなGly4Serリンカーモチーフに基づくリンカー、または本願の配列リストに示される任意のリンカーである。本発明の状況では任意の適当なリンカーが使用でき、その例はWO 2007/146968に記述されている。
【0042】
いくつかの態様では、結合ドメインはヒト化単鎖免疫グロブリン由来Fv産物を含み、これにはリンカーによって結合した、少なくとも1つの免疫グロブリン軽鎖可変領域の全体または一部、および少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖可変領域の全体または一部が含まれる。
【0043】
本発明のヒト化抗CD20 SMIPのヒンジ領域は、天然に存在するペプチド、変異もしくは遺伝子操作したペプチド、または人工的なペプチドである可能性がある。例えば、ヒンジ領域は免疫グロブリンヒンジ領域(例、CH1とCH2領域の鎖間免疫グロブリンドメインジスルフィド結合の形成を担う免疫グロブリン重鎖配列の一部)に由来する可能性がある。ヒンジ領域は、古典的にヒンジ機能を持つと見なされている免疫グロブリンポリペプチド鎖領域の断片(例、5〜65アミノ酸、10〜50アミノ酸、15〜35アミノ酸、18〜32アミノ酸、20〜30アミノ酸、21、22、23、24、25、26、27、28、または29アミノ酸)でも良い。ヒンジドメインは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、または可変ドメインのような、隣接する(当技術分野で公知のように、変動する可能性のある、特定の残基を特定のドメインに割付ける構造的基準に従って)免疫グロブリンドメイン中に存在するアミノ酸も含む可能性がある。
【0044】
本発明のヒト化抗CD20 SMIPのヒンジドメインは、ヒトヒンジ領域、すなわち、ヒト抗体の重鎖のヒンジ領域である可能性がある。ヒトヒンジ領域を含む態様では、ヒンジ領域は任意のヒト免疫グロブリンアイソタイプ、例えば、ヒトIgG免疫グロブリン(すなわち、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)に由来して良い。特定の態様では、ヒンジドメインは0または1つのシステイン残基を含む。いくつかの態様では、本発明のヒト化抗CD20 SMIPはSEQ ID NO: 60または63から66のうちのいずれかに示されるヒンジを含む。
【0045】
本発明のヒト化抗CD20 SMIPはエフェクター機能、好ましくはADCCおよび/またはCDCを提供するために十分な、免疫グロブリン定常領域のアミノ酸配列を含む。例えば、エフェクタードメインはヒト免疫グロブリンCH2ドメインの配列を含む可能性があり、またはヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインを含む可能性がある。CH2およびCH3ドメインを含む態様では、ドメインは同一または異なるヒト免疫グロブリンに由来する可能性がある。別の態様では、エフェクタードメインはヒト免疫グロブリンIgE CH3およびCH4領域の配列を含む可能性がある。
【0046】
特定の態様では、本発明のSMIPのCD20結合ドメインは、SEQ ID NO: 1〜59に規定されるVHアミノ酸配列、VLアミノ酸配列、VHおよびVLアミノ酸配列の両方のうち任意のもの、またはVH/VL対を含む可能性がある。特定の態様では、本発明のSMIPのヒンジ領域はSEQ ID NO: 60に規定されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、本発明のSMIPのエフェクタードメインはSEQ ID NO: 60または61に規定されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
特定の態様では、本発明のSMIPのCD20結合ドメインは、ヒト免疫グロブリンフレームワーク配列、ならびにSEQ ID NO: 1〜59から選択されるSMIPのCD20結合ドメインの重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列、軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列、または両方を持つVH領域を含む。特定の態様では、SMIPヒンジドメインはさらにSEQ ID NO: 60を含み、エフェクタードメインはSEQ ID NO: 61を含む。
【0048】
本発明は、CD20特異的結合分子の作製に有用な数多くの重鎖VH、軽鎖VL、およびCDR配列を提供する。例えば、本願の配列リストに示される1つまたは複数のCDRをヒトフレームワークサブ領域(例、完全ヒト型FR1、FR2、FR3、またはFR4)と組み合わせて、CD20特異的結合分子を作製することができる。特定の態様では、本発明の抗CD20特異的結合分子は、軽鎖可変領域由来の3つのCDR、および重鎖可変領域由来の3つのCDRを含み、重鎖CDRと軽鎖CDRは同一の参照配列に由来する。本発明のCDRは任意のタイプの免疫グロブリンフレームワークに移植することができる。
【0049】
本発明は、本願の配列リストに示される配列と実質的に同一または実質的に相同なアミノ酸配列を含むヒト化CD20特異的結合分子、および本願の配列リストに示されるCDR配列(下線付き)と実質的に同一または実質的に相同なCDRを含むヒト化CD20特異的結合分子も提供する。例えば、本願の配列リストに示される配列中、特に1つまたは複数のCDR、フレームワーク領域、または両方で、いくつものアミノ酸またはヌクレオチド塩基が変更される可能性がある。したがって、いくつかの態様では、本発明のCD20特異的結合分子は、SEQ ID NO: 1〜59に規定される配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を持つ。別の態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1〜59に規定される配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。本発明の状況では、任意の適当なリンカーを使用でき、その例はWO 2007/146968に記述されている。
【0050】
本明細書に開示される配列と実質的に同一または相同な(例、少なくとも約85%の配列同一性)配列も、本願の一部である。いくつかの態様では、配列同一性は約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であり得る。または、核酸に関連して、核酸セグメントが相補鎖に選択的なハイブリダイゼーション条件(例、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下でハイブリダイズする場合に、実質的な同一性または相同性が存在する。核酸は細胞全体中、細胞溶解物中、または部分的もしくは実質的に純粋な形で存在する可能性がある。
【0051】
アミノ酸配列に対する変更は、アミノ酸配列をコードする核酸配列を変更することによって作製できる。あるCDRの変種体をコードする核酸配列は、特定の配列に関する本明細書のガイダンスを用いて、当技術分野で公知の方法によって調製できる。これらの方法には、すべて当技術分野で周知の技術である、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介)変異誘発、PCR変異誘発、および以前に調製されたCDRをコードする核酸のカセット変異誘発が含まれるがこれらに限定されない。例えば、部位特異的変異誘発を用いて置換変異体を調製することができる(例えば、両方とも参照により本明細書に組み入れられるCarter et al., (1985) Nucleic Acids Res. 13:4431-4443およびKunkel et al., (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492を参照されたい)。
【0052】
別の局面では、本発明は本発明の抗CD20結合分子をコードする核酸を提供する。いくつかの態様では、核酸はSEQ ID NO: 1〜59のいずれかに規定されるVHもしくはVLアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするか、またはSEQ ID NO: 1〜59のいずれかのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、核酸はSEQ ID NO: 67〜126のいずれか、またはVH領域もしくはVL領域をコードする配列の1つの断片である。
【0053】
III. CD20結合分子の生産
本発明のヒト化CD20特異的結合分子は、例えば、組み換えDNA技術によって調製できる。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片の場合は、抗体または抗体の抗原結合断片の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を運ぶ1つまたは複数の組み換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトし、宿主細胞中で軽鎖および重鎖が発現され、好ましくは、宿主細胞が培養される培地中に分泌されるようにしてその培地から抗体を回収するようにすることができる。SMIPの場合は、SMIPをコードする核酸を宿主細胞に導入し発現することができる。
【0054】
全てが参照により本明細書に組み入れられるSambrook, Fritsch and Maniatis (eds), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989), Ausubel, F. M. et al. (eds.) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989)およびBoss et al.によるU.S. Pat. No. 4,816,397に記述されるような標準的な組み換えDNA方法を用いて、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子、またはSMIPをコードする核酸を得て、これらの遺伝子を組み換え発現ベクターに組み込み、ベクターを宿主細胞に導入することができる。
【0055】
例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片を発現するために、軽鎖および重鎖の可変領域をコードする核酸をまず入手できる。これらの核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、ヒト生殖細胞系の軽鎖および重鎖の可変領域遺伝子の増幅および修飾によって得ることができる。ヒトの重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は当技術分野で公知である。VHおよびVL断片が得られたら、これらの配列を遺伝子操作して、例えば、1つまたは複数のSMIP配列、SMIP配列のVHおよびVL断片、または本明細書に開示されるSMIP配列のCDRをコードするようにできる(例えば、本願の配列リストを参照されたい)。
【0056】
本発明の抗体またはその抗原結合断片を発現するために、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードする1つまたは複数の核酸、またはSMIPの場合には、SMIPをコードする核酸を、核酸が転写および翻訳制御配列と機能的に連結するように発現ベクターに挿入することができる。発現ベクターおよび発現制御配列は、一般的に使用する発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0057】
抗体の重鎖および/または軽鎖遺伝子に加えて、本発明の組み換え発現ベクターはさらに宿主細胞中で抗体鎖(または断片)またはSMIPの発現を制御する調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、または本発明の結合分子をコードする核酸の転写または翻訳を制御する他の発現制御要素(例、ポリアデニル化シグナル)を運ぶ可能性がある。そのような調節配列は当技術分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)を参照されたい)。調節配列の選択を含む発現ベクターのデザインは、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベル等のような因子に依存する可能性があることが当業者には理解されるだろう。哺乳類宿主細胞での発現のための例示的な調節配列には、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)(例、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー、が含まれる。ウイルスの調節要素およびその配列のさらなる記述は、例えば、全てが参照により本明細書に組み入れられるStinskiによるU.S. Pat. No. 5,168,062、Bell et al.によるU.S. Pat. No. 4,510,245、およびSchaffner et al.によるU.S. Pat. No. 4,968,615を参照されたい。
【0058】
本発明の抗体重鎖および/または軽鎖またはSMIPおよび調節配列をコードする配列に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中でベクターの複製を調節する配列(例、複製起点)および選択マーカー遺伝子のようなさらなる配列を運ぶ可能性がある。選択マーカー遺伝子はベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxel et al.によるU.S. Pat. No. 4,399,216、4,634,665、および5,179,017を参照されたい)。例えば、典型的には選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ヒグロマイシン、またはメトトレキセートのような薬剤に対する耐性を与える。他の適当な選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr-の宿主においてメトトレキセート選択/増幅で用いる)およびネオマイシン遺伝子(G418選択)が含まれる。
【0059】
発現のために、抗体重鎖および軽鎖またはSMIPをコードする発現ベクターは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、またはDEAE-デキストラントランスフェクションのような、標準的な技術によって宿主細胞中にトランスフェクトできる。特定の態様では、本発明のCD20特異的結合分子の発現に使用される発現ベクターは、レトロウイルスベクターのようなウイルスベクターである。そのようなウイルスベクターは、安定な細胞株を作製するためにも使用できる(CD20特異的結合分子の連続的供給源として)。
【0060】
本発明の組み換えヒト化抗CD20結合分子の発現のために適当な哺乳類宿主細胞には、PER.C6細胞(Crucell, The Netherlands)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えばR.J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621に記述されるようにDHFR選択マーカーと共に使用する、Urlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記述されるdhfr- CHO細胞を含む)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞、およびSP2細胞が含まれる。また、GnTin(いずれも参照により本明細書に組み入れられるWO9954342およびU.S. Pat. Pub. 20030003097に記述される)を発現する宿主細胞も使用して、発現されたCD20特異的結合分子が上昇したADCC活性を持つようにすることもできる。
【0061】
抗体またはSMIPをコードする組み換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されると、一般的に抗体およびSMIPは、宿主細胞中でタンパク質が発現される、またはより好ましくは宿主細胞が増殖した培養培地中に抗体または抗原結合断片またはSMIPが分泌されるために十分な時間の間、宿主細胞を培養することによって、一般的に産生される。抗CD20結合分子は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培養培地から回収できる。
【0062】
上記の手順のバリエーションが本発明の範囲内であることは理解されるだろう。例えば、組み換えDNA技術を用いて、CD20への結合に不要な軽鎖および重鎖の片方または両方をコードしているDNAの一部または全体を除去することができる。また、1本の重鎖および1本の軽鎖が本発明の抗体であり、他の重鎖および軽鎖がCD20以外の抗原に特異的である、2官能性の抗体を生産することができる(例えば、本発明の抗体を標準的な化学的架橋方法によって第2の抗体に架橋することによる)。
【0063】
SMIPを作製する方法は、全体が参照により本明細書に組み入れられるU.S. Patent Publication No. 2003/0133939、2003/0118592、および2005/0136049に記述されている。特定の態様では、本発明のSMIPは、(1)同種の構造に対する結合ドメイン(例、抗原、カウンター受容体、および同様なもの)、(2)IgG1、IGAもしくはIgEヒンジ領域または0、1、または2つのシステイン残基を持つ変異IgG1ヒンジ領域、ならびに(3)免疫グロブリンCH2およびCH3ドメイン、という特徴を持つ結合ドメイン-免疫グロブリン融合タンパク質である。特定の態様では、結合ドメインはヒンジ領域に1つまたは2つのシステイン(Cys)残基を持つ。特定の態様では、結合ドメインが2つのCys残基を持つ時に、重鎖と軽鎖の間の結合に関与している第1のCysは、欠失したり別のアミノ酸で置換されたりしない。
【0064】
本発明のヒト化抗CD20 SMIPは、US 2007/0213293に記述されるようにCD20抗原に結合する組み換え(マウス/ヒト)単鎖タンパク質であるキメラ抗CD20 SMIP、TRU-015に関連している。TRU-015の結合ドメインは、公に利用できる2H7結合ドメインに基づいている。結合ドメインは、修飾CSSヒンジ領域を通してヒトIgG1のエフェクタードメインCH2およびCH3ドメインに連結している。
【0065】
IV. 治療のための使用
別の局面では本発明は、本発明のヒト化CD20特異的結合分子の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、異常なB細胞活性に関連する疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体の処置方法を提供する。1つの態様では、CD20特異的結合分子はCD20特異的小モジュラー免疫医薬(SMIP)である。
【0066】
「異常なB細胞活性」は、正常、適切、または期待されるコースから逸脱した細胞活性を指す。例えば、異常な細胞活性には、DNAまたは他の細胞成分が傷害を受けたまたは欠損した細胞の不適切な増殖が含まれ得る。異常なB細胞活性には、不適切に高レベルの細胞分裂、不適切に低レベルのアポトーシス、または両方によって引き起こされる、媒介される、またはこれらをもたらす、疾患にその特徴が関連した細胞増殖が含まれる可能性がある。そのような疾患は、例えば、以下にさらに詳しく記述される、癌性または非癌性、良性または悪性の、細胞、細胞群、または組織の単一または複数の局所的異常増殖によって特徴づけられる場合がある。異常なB細胞活性には、自己抗体の産生のような異常な抗体産生、または典型的には正常レベルでは望ましい抗体の過剰産生が含まれる場合がある。異常なB細胞活性は、B細胞の特定の亜集団で発生するが、他の亜集団では起こらないと考えられる。異常なB細胞活性には、T細胞の不適切な刺激、例えば、T細胞に対するB細胞の不適切な抗原提示によるまたはB細胞が関与する他の経路による、も含まれる可能性がある。
【0067】
「異常なB細胞活性に関連する疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体」は、疾患または疾患の症状が、異常なB細胞活性によって引き起こされる、異常なB細胞活性によって増悪する、またはB細胞活性の調節によって緩和する可能性のある、被験体である。そのような疾患の例は、B細胞癌(例、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞骨髄腫)、自己抗体の産生によって特徴づけられる疾患、または不適切なT細胞刺激によって特徴づけられる疾患、例えば、T細胞に対するB細胞の不適切な抗原提示によるまたはB細胞が関与する他の経路による、である。
【0068】
1つの局面では、本発明の方法によって処置される個体は、本明細書に記述されるCD20特異的結合分子を用いた処置に対して、改善した応答を示し、これは他の処置、例えば、RAの治療のためのエンブレル(登録商標)(Amgen/Wyeth)、ヒューミラ(登録商標)(Abbott)、レミケード(登録商標)(Johnson & Johnson/Schering-Plough)、リツキサン(登録商標)(Genentech/Roche)、オクレリズマブ(Genentech/Roche)、オレンシア(登録商標)(BMS)、アクテムラ(登録商標)(Roche/Chugai)、シムジア(登録商標)(UCB Pharma)、ならびに狼瘡(SLE)の治療のためのリツキサン(登録商標)(Genentech/Roche)、オクレリズマブ(Genentech/Roche)、ベリムマブ(HGS)、エプラツズマブ(Immunomedics/UCB)、Humax CD20(登録商標)(Genmab/GSK)、アタシセプト(Zymogenetics)、オレンシア(登録商標)(BMS)、およびアクテムラ(登録商標)(Roche/Chugai)、に対する応答よりも改善している。他の処置よりも改善した応答とは、本発明の方法による処置が、単独または他の薬剤との組み合せで、他の治療よりも良い患者の臨床応答をもたらすことを指す。改善した応答は、当技術分野で周知で本明細書に記述される臨床的基準の比較によって評価することができる。例示的な基準には、B細胞枯渇の持続期間、全般的B細胞数の低下、生物学的試料中のB細胞数の低下、腫瘍サイズの低下、処置後に存在および/または出現する腫瘍の数の低下、および例えば国際予後指標を用いた患者自身および医師によって評価される全般的応答の改善が含まれるがこれらに限定されない。改善は、臨床的基準の1つまたは複数で良い。本発明の方法を用いた改善した応答は、例えば、他の治療の毒性(例、注入に関連した有害事象)および/または不十分な有効性に起因する、以前または現在の治療に対する不十分な応答のためである可能性がある。また、改善した、本発明の結合分子の投与計画またはスケジュールがある可能性がある(例、皮下投与)。
【0069】
例えば、ヒト化CD20 SMIPによる処置では、ヒト化CD20 SMIPによる処置の22日後に、リツキサン(登録商標)と比較して骨髄およびリンパ節においてCD19+ B細胞の有意な低下が見られる。図9および10ならびに実施例4を参照されたい。
【0070】
関節リウマチでは、関節における慢性炎症ならびにその後の軟骨破壊および骨侵食を引き起こす主要な細胞のタイプは、マクロファージ、滑膜線維芽細胞、好中球、およびリンパ球である(Marrack et al., Nat Med. 2001; 7:899-905)。炎症した滑膜組織に浸潤するTおよびBリンパ球は、しばしばリンパ濾胞に類似した構造に編成されることが示されている(Berek & Kim, Semin Immunol. 1997; 9:261-268; Berek & Schroder, Ann N Y Acad Sci. 1997; 815:211-217; Kim & Berek, Arthritis Res. 2000; 2:126-131)。関節リウマチの時に滑膜の濾胞構造から単離されたB細胞の分子解析では、局所の抗原駆動性特異的免疫応答およびリウマチ因子(RF)、すなわち自己反応性の高親和性抗体の産生増加における、B細胞の重要性が示された(Weyand & Goronzy, Ann N Y Acad Sci. 2003; 987:140-149; Gause et al, BioDrugs. 2001; 15:73-79)。RFの陽性は、より攻撃的な関節疾患およびより高頻度の関節外症状発現に関連している(van Zeben et al., Ann Rheum Dis. 1992; 51:1029-1035)。
【0071】
RAにおけるB細胞の病因論に関する証拠は、ヒトキメラ抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブ(リツキサン(登録商標))を用いたB細胞除去を用いた、難治性疾患の患者における臨床試験から、最近得られた(Leandro et al, Ann Rheum Dis. 2002; 61:883-888; Edwards et al., N Engl J Med. 2004; 350:2472-2581)。リツキシマブで処置された全ての群で、有意に高い割合の患者が、ACR基準に従う疾患症状において20パーセントの改善を示した。すべてのACR応答は、リツキシマブ-メトトレキセート群において48週において維持されていた。活動性RAの161例の患者を含めたこの試験では、重篤な感染は対照群の1例(2.5パーセント)およびリツキシマブ群の4例(3.3パーセント)で発生し、B細胞の枯渇はRAにおいて比較的安全な治療法であることが示された。
【0072】
CD20は35 KDの非グリコシル化4回細胞膜貫通埋め込み型リンタンパク質であり、B細胞系統に限定され、プレB細胞、未熟なB細胞、成熟なナイーブおよびメモリーB細胞上で発現されるが、初期プロB細胞および形質細胞上には発現されない。現在では、病原性B細胞およびその前駆体の除去が臨床的改善をもたらすが抗体分泌性形質細胞の除去はもたらさない機序は、依然としてはっきりしない(Cragg et al., Therapy. Curr Dir Autoimmun 2005; 8:140-17410)。B細胞がRA患者の滑膜内のリンパ球凝集体として存在することを考慮すると、抗体産生以外のB細胞の機能も(例えば、サイトカイン産生、抗原提示、T細胞に対する共刺激シグナルの提供)、疾患の病因において重要な役割を果たしている可能性がある(Martin & Chan, Immunity. 2004; 20:517-527)。
【0073】
インビトロの試験では、リツキシマブが3つの可能性のある機序を通してCD20陽性リンパ腫細胞の溶解を誘導することが示唆されている:ADCC、CDC、およびアポトーシスに至る直接のシグナル伝達(Clark & Ledbetter, Ann Rheum Dis 2005; 64:77-8012)。ヒトにおける証拠は、SLEにおけるB細胞の溶解が、おそらくADCCならびにナチュラルキラー細胞およびマクロファージ上のFcγRIIIa(CD16)の結合によるアポトーシスを介して起きることを示唆している。というのは、SLEにおけるB細胞の枯渇およびリンパ腫の臨床応答の程度は、FcγRIIIaの多型に依存するためである(Anolik et al., Arthritis Rheum 2003; 48:455-459)。
【0074】
抗CD20治療は、全身性エリテマトーデス(SLE)を含む他のいくつかの自己免疫障害においても調べられており、その過程で自己免疫におけるB細胞の役割についての新規の洞察を提供している(Eisenberg R., Arthritis Res Ther. 2003; 5:157-159)。リツキシマブの投与を受けているSLE患者の大部分は、完全なB細胞の枯渇および臨床的改善を示す(Anolik et al., Curr Rheumatol Rep. 2003; 5:350-356)。反対に、B細胞枯渇を示さない患者は、処置に応答しない。B細胞数は、通常最初の投与後1〜3ヶ月で最低となり、この枯渇は3〜12ヶ月続く。
【0075】
リツキシマブはキメラ抗体なので、患者は処置後にヒト抗キメラ抗体(HACA)を生じる可能性がある。1つの試験では、リツキシマブで処置された患者の33%が抗HACA力価を有していた(Looney et al., Curr Opin Rheumatol. 2004; 16:180-185)。興味深いことに、この中にはリツキシマブを1回のみ投与された患者が含まれていた。HACAは、より効果の低いB細胞枯渇、および最初の注入の2ヶ月後のリツキシマブのより低い血清濃度と関連していた。
【0076】
リツキシマブ処置は、RAの患者においてすべての末梢血B細胞集団のほぼ完全な枯渇を誘導する(Leandro et al., Arthritis Rheum 2006; 54:613-620)。1例の患者において少なくとも3ヶ月間にわたる循環B細胞の97%の枯渇を達成できなかったことは、処置に対する応答の欠如と関連していた。末梢血のB細胞集団は、メモリーB細胞の増殖というよりもナイーブB細胞の形成に依存していた。B細胞の回復の時点でより早期の疾患の再燃を経験した患者は、より遅く再燃した患者よりも、再増殖時に循環メモリーB細胞の数が多い傾向を示した。したがって、固形組織におけるB細胞のより軽度の枯渇は、RAのより早期の再燃に関連している可能性がある。
【0077】
自己免疫におけるリツキシマブの最近の臨床的成功は、免疫寛容の再確立を期待して、より免疫原性が低く、病的な自己反応性B細胞の全てのクローン性残余物を除去する可能性のある、B細胞を標的とした代わりの治療薬の開発の必要性があることを示す。
【0078】
既存のCD20標的治療で処置した患者に見られる有意な臨床応答にもかかわらず、これらの薬剤の治療効果は持続せず、疾患の再燃の頻度は、特にリンパ腫の患者で、依然として高い。CD20標的治療は正常および形質転換したB細胞の両方を循環血から非常に効果的に枯渇させる。しかし、組織またはリンパ管に埋め込まれたB細胞を除去する能力はより限定的であり、これはおそらく大きな生体分子がこれらの部位に到達する能力が低いため、または組織の微小環境によって標的細胞の抵抗性が上昇しているためだと考えられる。理由はともかく、これらの環境は、見かけ上成功した処置治療計画に引き続いて再出現して疾患の再燃を引き起こし得る、生存B細胞またはリンパ腫細胞の保護された貯蔵所を提供する可能性がある。
【0079】
ヒト化SMIPによる非ヒト霊長類の処置に引き続き組織の切除および解析を行なったところ、対照処置と比較してCD20 SMIPが組織に埋め込まれたB細胞を除去する優れた能力が示された。循環血中からB細胞を除去する明らかな能力と合わせると、これは、本薬で処置された患者は短期的に効果的なB細胞除去にうまく応答し、さらに処置後の有効性は現在のCD20標的治療と比較して有意に長い期間続くことを示唆する。これらの薬剤では、骨髄およびリンパ節組織における枯渇の深さが意味を持つと考えられ、これは、これらの分子が免疫的に活性な当を得たエリアで効率良くB細胞を枯渇することができることを示す。したがって、これらの分子は、有効性を高める必要がある患者を含め、より広い範囲の患者群を処置するための好ましい治療を提供し得る。
【0080】
関連する局面では、本発明の方法で処置された個体にはリツキサンも投与される。1つの態様では、リツキサンは第一選択の処置として投与され、本発明の方法の処置が開始する時にも継続する。別の態様では、本発明の方法の処置が開始した後にリツキサン処置は中止される。
【0081】
「リウマチ性疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体」は、関節、軟骨、筋肉、神経、および腱のようなエリアに影響する関節を起源とする、または筋骨格系の疾患または障害に罹患する被験体または個体である。さらにリウマチ性疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体は、リウマチ性疾患を処置するための治療を以前に受けた可能性があることも考慮される。1つの態様では、リウマチ性疾患には、関節リウマチ、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、レイノー症候群、ライター症候群、サルコイドーシス、脊椎関節症、進行性全身性硬化症、および筋炎が含まれるがこれらに限定されない。
【0082】
「中枢神経系自己免疫疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体」または「中枢神経系障害」は、脳および脊髄を含む中枢神経系、または視神経のようなエリアに影響する疾患または障害に罹患する被験体または個体である。さらに中枢神経系障害を持つまたは疑われる被験体は中枢神経系疾患を処置するための治療を以前に受けた可能性があることも考慮される。1つの態様では、中枢神経系自己免疫疾患には、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、ループス脊髄炎、およびループス脳炎が含まれるがこれらに限定されない。
【0083】
「血管炎」は血管の炎症に関連する疾患または障害を指す。例示的な血管炎障害には、ベーチェット病、中枢神経系血管炎、チャーグ-ストラウス症候群、クリオグロブリン血症、巨細胞性動脈炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎/脈管炎、川崎病、白血球破砕性血管炎、多発性血管炎、結節性多発動脈炎、多発筋痛、多発性軟骨炎、リウマチ性血管炎、高安動脈炎、ヴェゲナー肉芽腫症、肝炎による血管炎、家族性地中海熱、顕微鏡的多発性血管炎、コーガン症候群、ウィスコット-オールドリッチ症候群、および閉塞性血栓性血管炎が含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
本発明で考慮される方法は、B細胞癌(例えば、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、B細胞リンパ腫)、自己抗体産生で特徴づけられる疾患、またはT細胞の不適切なT細胞刺激、例えば、T細胞に対するB細胞の不適切な抗原提示もしくはB細胞の関与する他の経路による、によって特徴づけられる疾患の処置に有用である。
【0085】
B細胞癌には、B細胞リンパ腫(様々な形のホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または中枢神経系リンパ腫など)、白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、へアリー細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病など)、ならびに骨髄腫(多発性骨髄腫など)が含まれる。さらなるB細胞癌には、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)の節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B 細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性度不明のB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、および移植後リンパ球増殖性障害が含まれる。
【0086】
自己抗体の産生で特徴づけられる障害は、しばしば自己免疫疾患と見なされる。自己免疫疾患には:関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、多発性軟骨炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、炎症性筋炎、中毒性表皮剥離症、全身性硬皮症および硬化症、CREST症候群、炎症性腸疾患に伴う応答、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群、(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症性応答の関与する状態、アテローム性動脈硬化、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(SLE)、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、ループス脊髄炎、ループス脳炎、若年発症糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、リウマチ熱、シデナム舞踏病、サイトカインおよびTリンパ球媒介性急性および遅延性過敏症に伴う免疫応答、結核、サルコイドーシス、ヴェゲナー肉芽腫症およびチャーグ-ストラウス疾患を含む肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(過敏性血管炎/脈管炎、ANCA、およびリウマチ性血管炎を含む)、再性不良性貧血、ダイヤモンド-ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免液性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出の関与する疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート-イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶、移植片体宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多発性内分泌腺症、血清陰性脊椎関節症、ライター病、スティッフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性神障害またはIgM媒介性神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性精巣炎および卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、自己免疫性多腺性症候群(多腺性内分泌障害症候群)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれるI型糖尿病、ならびにシーハン病;自己免疫性肝炎、リンパ性間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植性)vs NSIP、ギランバレー症候群、大血管の血管炎(リウマチ性多発性筋痛および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中血管の血管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎を含む)、結節性多発性動脈炎(PAN)、強直性脊椎炎、ベルガー病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン腸症)、クリオグロブリン血症、肝炎に伴うクリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠動脈疾患、家族性地中海熱、顕微鏡的多発性血管炎、コーガン症候群、ウィスコット-オールドリッチ症候群、および閉塞性血栓性血管炎が含まれるがこれらに限定されない。
【0087】
関節リウマチ(RA)は、腫脹、疼痛、および機能損失に至る関節の炎症で特徴づけられる慢性疾患である。長期にわたりRAに罹患する患者は、進行性の関節破壊、変形、能力障害、および早期死亡さえ示す。
【0088】
全身性エリテマトーデス(SLE)は腎臓、皮膚、および関節を含む複数の臓器における血管に対する再発性の損傷によって引き起こされる自己免疫疾患である。SLEの患者においては、T細胞とB細胞の誤った相互作用が細胞核を攻撃する自己抗体の産生をもたらす。SLEの少なくともいくつかの局面には自己抗体が関与しているという一般的な合意がある。B細胞系統を枯渇させ、前駆体から新しいB細胞が作製される時に免疫系のリセットを可能にする新規の治療は、SLE患者において長続きする恩恵の希望を提供すると考えられる。
【0089】
クローン病および関連疾患である潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれる疾患群に属する2つの主なカテゴリーである。クローン病は消化管または胃腸(GI)管の炎症を引き起こす慢性障害である。口から肛門までのGI管のいずれのエリアにも生じる可能性があるが、最も一般的には小腸および/または結腸に影響を与える。潰瘍性大腸炎では、GIの関与は結腸に限定される。多発性硬化症(MS)も自己免疫疾患である。中枢神経系の炎症ならびに脳、脊髄、および体において神経線維を絶縁するミエリンの破壊により特徴づけられる。MSの原因は不明であるが、主に自己免疫性T細胞が疾患の病因に寄与していると広く考えられている。しかし、MSの患者の脳脊髄液中に高レベルの抗体が存在し、疾患の媒介には抗体産生に至るB細胞応答が重要であると予測する理論もある。MSの経過は予測が困難であり、疾患は時には休止状態である、または徐々に進行することがある。いくつかのサブタイプ、または進行パターンが記述されており、これは予後のみならず治療の決定にも関係する。再発寛解型はMSの個体の85%から90%の最初の経過を表す。このサブタイプは予測できない発作(再発)に続く比較的静かで(寛解)疾患の活動の新しい徴候がない何ヶ月から何年という期間によって特徴づけられる。発作の間の欠損は解消するか、永続する可能性がある。欠損が発作と発作の間に常に解消する場合、これは「良性の」MSと呼ばれる。二次進行型というのは最初の再発寛解型MSのうち約80%を表し、明確な寛解期なく起きる急性の発作と発作の間に神経学的低下が現れ始める。この低下には、新しい神経学的症状、認知機能の悪化、または他の欠損が含まれ得る。二次進行型は最も一般的なMSのタイプで、多大な能力障害を引き起こす。一次進行型は、最初のMS症状の後にまったく寛解を経験しない約10%の個体を表す。明らかな発作なしに低下は継続的に起こる。一次進行型サブタイプは、疾患の発症時により高年齢な人に影響する。進行再発型は、MSの発症時から着実な神経学的低下が見られるが、それに重なった発作にも苦しむ。これは全てのサブタイプの中で最もまれなものである。
【0090】
クローン病は好中球抗原に対する抗体、すなわち「核周辺抗好中球抗体」(pANCA)、およびサッカロミセス・セレビシエに対する抗体、すなわち「抗サッカロミセス-レビジエ抗体」(ASCA)によって特徴づけられ得る。潰瘍性大腸炎の患者の多くは血中にpANCA抗体を持つが、ASCA抗体は持たず、一方でクローン病の患者はASCA抗体を示すがpANCA抗体は示さない。クローン病の評価をする1つの方法は、医師によって集められた18の予測因子スコアに基づいたクローン病活動性指数(CADI)を用いることである。CDAIが150以下は鎮静期の疾患に関連する;それを越えると活動性の疾患を示し、450を越える値は極度に重症の疾患で見られる(Best et al., Development of a Crohn’s disease activity index. Gastroenterology 70; 439-444, 1976)。しかし、元の試験以降、200から250の「主観的値」を健康なスコアとして使用する研究者もいる。
【0091】
自己免疫性甲状腺疾患は、甲状腺を刺激して甲状腺機能亢進症(グレーブス病)を引き起こすか、甲状腺を破壊して甲状腺機能低下症(橋本甲状腺炎)を引き起こすかのいずれかをする自己抗体の産生の結果として起きる。甲状腺の刺激は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に結合および活性化する自己抗体によって引き起こされる。甲状腺の破壊は、他の甲状腺抗原と反応する自己抗体によって引き起こされる。
【0092】
シェーグレン症候群は、身体の水分を産生する腺の破壊によって特徴づけられる自己免疫疾患である。
【0093】
免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)は血液の血小板に結合し、それを破壊する自己抗体によって引き起こされる。
【0094】
重症筋無力症(MG)は神経筋接合部に発現されるアセチルコリン受容体に結合し随意筋群の衰弱を引き起こす自己抗体によって特徴づけられる慢性自己免疫性神経筋障害である。
【0095】
乾癬は皮膚の自己免疫性炎症によって特徴づけられ、30%の症例では関節炎も伴う。
【0096】
皮膚筋炎(DM)および多発性筋炎(PM)を含む特発性炎症性疾患(IIM)の処置も考慮される。炎症性筋疾患は、いくつかの分類体系を用いて類別されている。ミラーの分類体系(Miller, Rheum Dis Clin North Am. 1994, 20:811-826)は2つの特発性炎症性筋疾患(IIM)、多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)を同定する。
【0097】
多発性筋炎および皮膚筋炎は、筋肉、およびDMの場合は皮膚の関与した慢性の衰弱させる炎症性疾患である。これらの障害はまれであり、米国では1年当たり成人100万人につき約5から10例、および小児100万人につき0.6から3.2例の年間発症率が報告されている(Targoff, Curr Probl Dermatol. 1991, 3: 131-180)。特発性炎症性筋疾患は、著しい病的状態および死亡率と関連し、罹患した成人の半分までが、著しい機能障害に苦しむと報告されている(Gottdiener et al., Am J Cardiol. 1978, 41:1141-49)。Miller(Rheum Dis Clin North Am. 1994, 20:811-826およびArthritis and Allied Conditions, Ch. 75, Eds. Koopman and Moreland, Lippincott Williams and Wilkins, 2005)はIIMの診断に使用される5群の基準、すなわち特発性炎症性筋疾患基準(IIMC)評価を規定し、これらには筋力低下、変性を示す筋生検の証拠、筋肉関連酵素の血清レベルの上昇、筋疾患の電磁3徴候、皮膚筋炎における発疹の証拠が含まれ、さらに2次的基準として自己抗体の証拠が含まれる。
【0098】
筋関連酵素および自己抗体を含むIIM関連因子には、クレアチニンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素、アルドラーゼ、C反応性タンパク質、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ならびに抗核自己抗体(ANA)、筋炎特異的抗体(MSA)、および抽出核抗原に対する抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0099】
V. 薬学的組成物および投与方法
本発明の別の局面では、本発明のCD20特異的結合分子は、薬学的組成物として投与される。CD20特異的結合分子をヒトまたは試験動物に投与するために、1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアを含む組成物中に結合分子を調合することが好ましい。「薬学的または薬理学的に許容される」というのは、以下に記述するように、当技術分野で周知の経路を用いて投与された時に、アレルギー性、または他の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。「薬学的に許容されるキャリア」には、全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、および同様なものが含まれる。
【0100】
また、化合物は水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成する場合がある。そのような溶媒和物も考慮されている。
【0101】
CD20特異的結合分子組成物は、経口的、局所的、経皮的、非経口的、吸入スプレーにより、経膣的、経直腸的、または頭蓋内注射によって投与できる。本明細書で使用される非経口的という用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、嚢内注射、または注入技術が含まれる。静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内注射による投与、および/または特定の部位における外科的埋め込みも考慮されている。一般に、組成物には発熱物質、およびレシピエントに有害な他の不純物は含まれない。特定の態様では、注射、特に静脈内、が好ましい。
【0102】
本発明の方法で使用されるCD20特異的結合分子を含む本発明の薬学的組成物は、投与経路によって、薬学的に許容されるキャリアまたは添加物を含む可能性がある。そのようなキャリアまたは添加物の例には、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容される界面活性剤、および同様なものが含まれる。使用される添加物は、本発明の剤形によって適切に、上記またはその組み合せから選択されるがこれらに限定されない。
【0103】
薬学的組成物の製剤は、選択される投与経路によって異なる(例、溶液、乳濁液)。例えば、投与される抗CD20抗体(またはSMIPのようなそのCD20結合断片)を含む適切な組成物は、生理的に許容される媒体またはキャリア中で調製できる。溶液または乳濁液では、適当なキャリアには、例えば、水性またはアルコール性/水性溶液、乳濁液または懸濁液(例、生理食塩水および緩衝媒質)が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油が含まれ得る。静脈内媒体には、様々な添加物、保存剤、または液体、栄養素もしくは電解質補給剤が含まれ得る。
【0104】
様々な水性キャリア、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、または水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適当な賦形剤との混和物中に活性化合物を含む可能性がある。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴム;分散剤または湿潤剤は天然に存在するホスファチド、例えばレクチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物、例えばヘプタデカンエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合産物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート、である。水性懸濁液は、1つまたは複数の保存剤、例えばエチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸も含むことがある。
【0105】
CD20特異的結合分子組成物は、保存のために凍結乾燥され、使用前に適当なキャリア中で再生できる。この技術は、従来の免疫グロブリンで有効なことが示されている。任意の適当な凍結乾燥および再生技術が使用できる。当業者には、凍結乾燥および再生は様々な程度の抗体活性の損失を招き得るので、埋め合わせるために使用レベルを調節する必要があり得ることが理解されるだろう。
【0106】
水を添加することにより水性懸濁液を調製するために適当な分散性の粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つまたは複数の保存剤との混和物中の活性化合物を提供することがある。適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、既に上記の記述で例示されている。
【0107】
これらの製剤中のCD20結合分子の濃度は大きく変わる可能性があり、例えば、重量で約0.5%未満、通常は約1%または少なくとも約1%から15または20%にもなり、選択される特定の投与様式に従って、主に液体の体積、粘性等に基づいて選択される。したがって、非経口注射用の典型的な薬学的組成物は、1 ml無菌緩衝水、および50 mgの抗体を含むように作製できる。静脈内注入用の典型的な組成物は、250 mlの無菌リンゲル液、および150 mgの抗体を含むように作製できる。非経口投与用の組成物の実際の調製方法は、当業者に公知または明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980)に、より詳細に記述されている。抗体の有効用量は、1投与につき体重1 kgあたり0.01 mgから1000 mgの範囲内である。
【0108】
薬学的組成物は無菌注射用の水性、油性の懸濁液、分散液、または無菌注射用溶液もしくは分散液の即時調合のための無菌粉末の形態であり得る。懸濁液は、上述の適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術にしたがって調合できる。無菌注射用調製品は、非毒性非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液、の場合がある。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、および同様なもの)、その適当な混合物、植物油、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液を含む、溶媒または分散媒であり得る。さらに、無菌、固定油は、溶媒または懸濁媒として従来から使用されている。この目的では、合成のモノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油が利用できる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤の調製に使用できる。
【0109】
すべての場合において剤形は無菌である必要があり、かつ容易に注射できる程度の液体である必要がある。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合は必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、維持できる。製造および保管の条件下で安定である必要があり、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護しなくてはならない。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様なもの、によってもたらされる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが望ましい。注射用組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされる。
【0110】
投与に有用な組成物は、その有効性を上昇させるために取り込みまたは吸収の増進剤と共に処方できる。そのような増進剤には、例えば、サリチル酸塩、グリココール酸塩/リノール酸塩、グリコール酸塩、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプリン酸塩、および同様なものが含まれる。例えば、Fix(J. Pharm. Sci., 85:1282-1285, 1996)およびOliyai and Stella(Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:521-544, 1993)を参照されたい。
【0111】
さらに、本発明で使用が考慮される組成物の親水性および疎水性の性質は良くバランスがとれているため、インビトロおよび特にインビボでの使用の実用性が増強しているが、そのようなバランスを欠く組成物は実質的に実用性が低下している。特に、本発明で使用が考慮される組成物は、水性媒質中で適切な程度の溶解性を持つために体内での吸収およびバイオアベイラビリティが得られる一方で、脂質中でもある程度の溶解性を持つために化合物は細胞膜を通過して想定作用部位に到達できる。したがって、考慮される抗体組成物は、標的抗原活性の部位に送達される時に、最大の有効性を発揮する。
【0112】
1つの局面では、本発明の方法は、本発明のCD20特異的結合分子を含む薬学的組成物を投与する段階を含む。
【0113】
本発明の方法は、哺乳類被験体に直接または間接的に治療薬を導入するための医学的に許容される手段を用いて実行され、これには注射、経口摂取、鼻腔内、局所、経皮的、非経口、吸入スプレー、経膣的、または経直腸投与が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、および嚢内注射、ならびにカテーテルまたは注入技術が含まれる。皮内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内注射、硬膜外および/または特定の部位における外科的埋め込みも考慮されている。経口または経粘膜投与のための薬学的組成物は、液体または固体の組成物剤形で良い。
【0114】
特定の態様では、薬学的組成物は意図される投与経路に適合するように調合される。非経口、皮内、または皮下適用のための溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストランのような張度の調製のための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような、酸または塩基を用いて調節できる。非経口調製品は、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用バイアル中に納められる可能性がある。
【0115】
皮下適用のために使用される溶液または懸濁液には、典型的には、1つまたは複数の以下の成分が含まれる:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸のような緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストランのような張度の調製のための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような、酸または塩基を用いて調節できる。そのような調製品は、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用バイアル中に納められる可能性がある。いくつかの態様では、CD20結合分子は凍結乾燥した剤形であり、さらに1つまたは複数の以下の賦形剤を含む可能性がある:L-ヒスチジン、L-メチオニン、スクロース、およびポリソルベート80。
【0116】
本発明の薬学的組成物を用いた皮下治療も考慮される。これらの治療は、日毎、週毎、またはより好ましくは2週毎、もしくは月毎に、投与され得る。究極的には、担当医師が静脈内もしくは皮下治療、または小分子を用いた治療の適切な期間、および本発明の薬学的組成物を用いた治療の投与タイミングを決定する。
【0117】
例示的な態様では、体積の制限が小さい(例、1回の注射当たり約1〜1.2 ml)皮下に高用量を供給するために、CD20結合分子の濃度は一般的に100 mg/mlまたはそれ以上である。
【0118】
他の態様では、製剤を体内に送達できる、部位への直接の注射または持続的送達もしくは持続的放出機序により、処置を必要とする癌または罹患組織の部位で投与が行われる。例えば、組成物の持続的送達の可能な、生体分解性マイクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生体分解性ポリマーの構成(例、可溶性ポリペプチド、抗体、または小分子)は、本発明の製剤に含まれ、癌の近くに移植され得る。
【0119】
治療用組成物は、複数の部位で患者に投与される場合もある。複数投与は、同時または連続した期間にわたって投与することができる。
【0120】
CD20特異的結合分子組成物を第2の薬剤と組み合わせて投与することも、本発明では考慮されている。本発明で考慮されている第2の薬剤は、以下のパラグラフにリストされている。
【0121】
第2の薬剤はB細胞関連分子の場合がある。本発明で考慮される他のB細胞関連分子には、CD20ではないB細胞表面分子に結合する結合分子が含まれる。B細胞関連分子には、CD19(Bリンパ球抗原CD19;Bリンパ球表面抗原B4またはLeu-12とも呼ばれる)、CD21、CD22(B細胞受容体CD22、Leu-14、Bリンパ球接着分子、またはBL-CAMとも呼ばれる)、CD23、CD37、CD40(B細胞表面抗原CD40;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5、CD40L受容体、またはBp50とも呼ばれる)、CD80(Tリンパ球活性化抗原CD80;活性化B7-1抗原、B7、B7-1、またはBB1とも呼ばれる)、CD86(Tリンパ球活性化抗原CD86;活性化B7-2抗原、B70、FUN-1、またはBU63とも呼ばれる)、CD137(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9とも呼ばれる)、CD152(細胞障害性Tリンパ球タンパク質4またはCTLA-4とも呼ばれる)、L6(腫瘍関連抗原L6;膜貫通4スーパーファミリーメンバー1、膜成分表面マーカー1、またはM3S1とも呼ばれる)、CD30(リンパ球活性化抗原CD30;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー8、CD30L受容体、またはKi-1とも呼ばれる)、CD50(細胞間接着分子-3(ICAM3)またはICAM-Rとも呼ばれる)、CD54(細胞間接着分子-1(ICAM1)、または主要グループライノウイルス受容体とも呼ばれる)、B7-H1(活性化T細胞、B細胞、および骨髄性細胞によって発現される免疫阻害性受容体のリガンド;PD-L1とも呼ばれる;Dong et al., B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion, Nat. Med. 1999, 5:1365-1369を参照されたい)、CD134(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4、OX40、OX40L受容体、ACT35抗原、またはTAX-転写活性化糖タンパク質1受容体とも呼ばれる)、41BB(4-1BBリガンド受容体、T細胞抗原4-1BB、またはT細胞抗原ILA)、CD153(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー8、CD30リガンド、またはCD30-Lとも呼ばれる)、CD154(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー5、TNF関連活性化タンパク質、TRAP、またはT細胞抗原Gp39とも呼ばれる)、およびToll受容体が含まれるがこれらに限定されない。コンストラクト標的および/または標的抗原の上記リストは、単なる例示であって網羅的なものではない。
【0122】
第2の薬剤として考慮される化学療法剤の例には、ナイトロジェンマスタード(例、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシル);ニトロソウレア(例、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(メチルCCNU));エチレンイミンおよびメチルメラミン(例、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホルアミド(チオテパ)、およびヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン));スルホン酸アルキル(例、ブスルファン);およびトリアジン(例、ダカルバジン(DTIC))のようなアルキル化剤;葉酸アナログ(例、メトトレキセート、トリメトレキセート、およびペメトレキセド(多標的葉酸代謝拮抗剤));ピリミジンアナログ(例、5-フルオロウラシル(5-FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、および2,2’-ジフルオロデオキシシチジン);およびプリンアナログ(例、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2’-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA))のような抗代謝剤;カンプトテシン(CPT)、トポテカン、およびイリノテカンのようなタイプIトポイソメラーゼ阻害剤;エピポドフィロトキシンのような特定の天然産物(例、エトポシドおよびテニポシド);およびビンカアルカロイド(例、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン);アクチノマイシンD、ドキソルビシン、およびブレオマイシンのような抗腫瘍抗生物質;5-ブロモデオキシウリジン、5-ヨードデオキシウリジン、およびブロモデオキシシチジンのような特定の放射線増感剤;シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンのような白金配位複合体;ヒドロキシウレアのような置換尿素;ならびにN-メチルヒドラジン(MIH)およびプロカルバジンのようなメチルヒドラジン誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0123】
化学療法剤、放射線治療薬、ならびに他の活性および補助薬剤の非限定的例は表1にも示されている。
【0124】
(表1)


【0125】
自己免疫疾患の処置のために本発明により考慮される第2の薬剤は、処置される個体の免疫系を抑制または隠す作用を持つ免疫抑制剤も含む可能性がある。免疫抑制剤には、例えば、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、グルココルチコイド、関節炎の処置のための疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、または生体応答修飾物質が含まれる。DMARDと記述される組成物は、RA以外の他の多くの自己免疫疾患の処置にも有用である。
【0126】
例示的なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、バイオックス(登録商標)およびセレブレックス(登録商標)のようなCox-2阻害剤、ならびにシアル酸からなる群より選択される。例示的な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、オキシコドン、塩酸プロポキシフェンのトラマドールからなる群より選択される。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ハイドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレドニゾンからなる群より選択される。例示的な生体応答修飾物質には、細胞表面マーカーに対する分子(例、CD4、CD5、CTLA4等)、アバタセプト、TNFアンタゴニストのようなサイトカイン阻害剤(例、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))、アダリムマブ(ヒューミラ(登録商標))、およびインフリキシマブ(レミケード(登録商標)))、ケモカイン阻害剤ならびに接着分子阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。生体応答修飾物質には、モノクローナル抗体および分子の組み換え型が含まれる。例示的なDMARDには、アザチオプリン、シクロホスファミド、サイクロスポリン、メトトレキセート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金[経口(オーラノフィン)および筋肉内]、ならびにミノサイクリンが含まれるがこれらに限定されない。したがって、例えば、本発明の結合タンパク質は、DMARD、例えば、メトトレキセート(MTX)、スルファサラジン(SSZ)、またはレフルノミド(LEF)、と組み合わせてRAの処置に;DMARD、ステロイド、シクロホスファミド、またはセルセプト(登録商標)と組み合わせて狼瘡(SLE)の処置に;ならびに様々な疾患修飾薬、例えば、インターフェロン(インターフェロンβ-1a(アボネックス(登録商標)およびレビフ(登録商標))もしくはインターフェロンβ-1b(ベタセロン(登録商標)もしくはベタフェロン(登録商標))、酢酸グラチラマー(コパクソン(登録商標))、ミトキサントロン、またはナタリズマブ(タイサブリ(登録商標))、と組み合わせてMSの処置に、使用できる。
【0127】
CD20特異的結合分子組成物および第2の薬剤は、同一の製剤中で同時に投与できると考えられる。または、薬剤は別の製剤中で同時に投与され、同時にというのは互いの投与の30分以内を指す。
【0128】
別の局面では、第2の薬剤はCD20特異的結合分子組成物の投与の前に投与される。前に投与というのは、第2の薬剤が、抗体を用いた処置の前1週間以内で、抗体の投与の30分前までに投与されることを指す。さらに第2の薬剤がCD20特異的結合分子組成物の投与に引き続いて投与されることも考慮される。引き続いての投与は、抗体処置の30分後から抗体投与の後1週間までの投与を指す。
【0129】
CD20特異的結合分子が、サイトカインもしくは増殖因子、または化学療法剤である第2の薬剤と組み合わせて投与される時には、投与には放射線治療薬または放射線治療の使用も含まれると考えられる。CD20特異的結合分子組成物および第2の薬剤の投与と組み合せた放射線治療の必要性は、処置を行なう医師が決定できる。
【0130】
特定の投薬量中のCD20特異的結合分子組成物の量は、治療を投与する個体のサイズ、および処置する疾患の特徴に従って、変わり得る。例示的な処置では、約1 mg/日、約5 mg/日、約10 mg/日、約20 mg/日。約50 mg/日。約75 mg/日、約100 mg/日、約150 mg/日、約200 mg/日、約250 mg/日、約400 mg/日、約500 mg/日、約800 mg/日、約1000 mg/日、約1600 mg/日、または約2000 mg/日を投与する必要があり得る。用量は、患者の体重に基づいて、0.01から50 mg/kgで投与することもできる。関連する態様では、CD20特異的結合分子は、0.015から30 mg/kgの用量範囲で投与できる。さらなる態様では、CD20特異的結合分子は、約0.015、約0.05、約0.15、約0.5、約1.5、約5、約15、または約30 mg/kgの用量で投与される。
【0131】
最初に動物モデル、その後臨床試験における標準的な用量反応試験は、特定の疾患および患者集団のための最適投薬量を明らかにすることができる。
【0132】
特定の態様では、CD20特異的結合分子組成物は、処置後に少なくとも約20%、B細胞集団を低下または削減する。1つの態様では、B細胞集団は少なくとも約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、または約100%低下または削減される。B細胞の枯渇は、B細胞の絶対数が正常範囲の下限より低く低下することと定義される。B細胞の回復は、B細胞の絶対数が、1)被験体のベースライン値の70%、または2)正常範囲、のいずれかに戻ることと定義される。
【0133】
特定の態様では、CD20特異的結合分子組成物の投与は、特定のB細胞サブセットのアポトーシスも増大させる。アポトーシスとは、細胞のプログラムされた細胞死の誘導を指し、DNAの断片化、細胞の収縮、細胞の断片化、膜小胞の形成、またはアネキシンV染色により評価される膜脂質組成の変化によって現われ、評価される。
【0134】
特定の態様では、CD20特異的結合分子組成物の投与は、処置する疾患または障害に所望の臨床効果をもたらす。例えば、関節リウマチに罹患する患者では、本発明のCD20分子の投与は、臨床的に有意な量[例、米国リウマチ学会改善の予備検出(ACR20)を達成]、および/または、圧痛および腫脹関節の20%の改善、および残りのACR尺度の3/5における20%の改善(Felson et al., Arthritis Rheum. 1995, 38:727-35)により患者の状態を改善する。CD20特異的結合分子の投与後のRA患者における改善の生物学的尺度には、タンパク質またはRNAレベルにより測定されるサイトカインレベルの測定が含まれる。関心対象のサイトカインには、TNF-α、IL-1、インターフェロン、Blys、およびAPRILが含まれるがこれらに限定されない。サイトカインの変化はB細胞数の低下または活性化されたT細胞の減少に起因する可能性がある。RA患者においては、骨代謝回転(骨の再吸収または侵食)に関連するマーカーは、CD20特異的結合分子の投与の前後に測定される。関連するマーカーには、アルカリ性ホスファターゼ、オステオカルシン、コラーゲン分解断片、ヒドロキシプロリン、酒石酸耐性酸ホスファターゼ、およびRANKリガンド(RANKL)が含まれるがこれらに限定されない。RAの改善に関連した他の読み出し情報には、C反応性タンパク質(CRP)レベルの測定、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子、CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体ならびにフローサイトメトリーによる全身のB細胞レベルおよびリンパ球数の評価が含まれる。RA患者の滑膜から特定の因子を測定することもでき、これには滑膜生検から得られた滑膜におけるB細胞レベルの評価、RANKLおよび他の骨因子のレベル、ならびに上記に規定されるサイトカインが含まれる。RAのさらなるバイオマーカーにはCRPおよびSAAが含まれる。
【0135】
関連する局面では、他の疾患に対するCD20特異的結合分子処置の効果が、当技術分野でで公知の基準に従って測定される。例えば、CD20特異的結合分子を用いた処置を受けるクローン病患者は、寛解が150ユニットであるクローン病活動性指数(CDAI)において約50から約70ユニットの範囲の改善を達成すると考えられる(Simonis et al, Scand. J Gastroent. 1998, 33:283-8)。150または200のスコアは正常とみなされ、450のスコアは重症な疾患スコアとみなされる。さらに、炎症性腸疾患に罹患する個体において、CD20特異的結合分子の投与が核周辺抗好中球抗体(pANCA)および抗サッカロミセス・セレビシエ抗体(ASCA)の低下をもたらすことが望まれる。
【0136】
さらに、本発明のCD20特異的結合分子を用いた処置を受ける成人および若年性筋炎の患者は、評価のコアセットにおいて改善、例えば、測定するコアセット6項目のうちの3項目が約20%改善し、コア測定で約25%の悪化は2項目まで、を達成すると考えられる(Rider et al., Arthritis Rheum. 2004, 50:2281-90を参照されたい)。
【0137】
さらに、本発明のCD20特異的結合分子を用いた処置を受けるSLE患者は、全身性狼瘡活動性尺度(SLAM)またはSLE疾患活動性指数(SLEDAI)スコアの少なくとも1ポイントの改善を達成すると考えられる(Gladman et al, J Rheumatol 1994, 21:1468-71)(Tan et al., Arthritis Rheum. 1982, 25:1271-7)。>5のSLAMスコア、または>2のSLEDAIスコアは、臨床的に活動性の疾患とみなされる。処置に対する応答は、2つの疾患活動性尺度(SLE疾患活動性指数[SLEDAI]および全身性狼瘡活動性尺度)、ならびに2つの生活の質の尺度(患者の全般評価およびKruppの疲労重症度スケール)(Petri et al., Arthritis Rheum. 2004, 50:2858-68)における改善または安定化と定義できる。SLE患者に対するCD20特異的結合分子の投与が、抗二本鎖DNA抗体の低下をもたらすことが望まれる。または、改善はイギリス諸島狼瘡評価グループ基準(BILAG)を用いて評価しても良い。SLEのさらなるバイオマーカーには、B細胞サブセット(ナイーブ、メモリー、一過性);CD40L;補体、抗ds-DNA、C1Q;尿バイオマーカー(TWEAK、MIF)が含まれる。さらに、分化マーカーに関しては、FcγRIIIステータス(高親和性または低親和性)を用いてB細胞枯渇と有効性を相関させることができる。補体活性化の低下は、安全性の利点も提供する可能性がある(C3a、C4a、Bb結合に基づく)。
【0138】
さらに、本発明のCD20特異的結合分子を用いた処置を受ける多発性硬化症の患者は、Kurtzke拡大障害状態尺度(EDSS)の臨床スコア(Kurtzke, F., Neurology 1983, 33:1444-52)の少なくとも0.5の改善、またはKurtzkeスケールの少なくとも1.0の臨床的疾患の悪化の遅延を達成することが考えられる(Rudick et al., Neurology 1997, 49:358-63)。
【0139】
さらに本発明のCD20特異的結合分子の処置を受けるIIMに罹患する患者は、特発性炎症性筋疾患基準(IIMC)評価に規定される5つの基準のうち少なくとも1つにおける低下を達成すると考えられる(Miller, F.、上記)。さらに本発明のCD20特異的結合分子をIIM患者に投与すると、クレアチニンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素、アルドラーゼ、C反応性タンパク質、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ならびに抗核自己抗体(ANA)、筋炎特異的抗体(MSA)、および抽出核抗原に対する抗体からなる群より選択されるIIM関連因子における低下がもたらされると考えられる。または、Rider et al., Arthritis Rheum. 2004, 50:2281-90に規定される6項目の基準のうちの3項目に合致し、悪化は2項目までの患者は、本発明に従う処置の被験体になり得る。
【0140】
またさらなる態様では、B細胞癌の患者は、本発明のCD20特異的結合分子の処置を受け、当技術分野で周知で一般的に使用される臨床的基準に基づいて、CD20特異的結合分子に対する有益な全般的応答、例えば、腫瘍サイズの低下、腫瘍数の低下、および/または疾病症状の改善、を示す。
【0141】
例えば、米国国立癌研究所(NCI)は癌のいくつかのクラスを、「緩慢性」および「侵攻性」リンパ腫という臨床カテゴリーに分類した。緩慢性リンパ腫には、細胞学的「グレード」に分けられる濾胞細胞リンパ腫、びまん性小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)、リンパ形質細胞様/ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫、およびへアリー細胞白血病が含まれる。侵攻性リンパ腫には、びまん性混合型および大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫/びまん性小非開裂細胞型リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫およびAIDS関連リンパ腫が含まれる。場合によっては、国際予後指数(IPI)が侵攻性および濾胞性リンパ腫の場合に使用される。IPIで考慮すべき因子には、年令(<60歳か、>60歳か)、血清乳酸脱水素酵素(正常か、上昇か)、全身状態(0または1か、2〜4か)(以下の定義を参照されたい)、疾患の病期(IまたはIIか、IIIまたはIVか)、および節外部位の関与(0または1か、2〜4か)が含まれる。2つまたはそれ以上のリスク因子を持つ患者は、5年後の無再燃および全般的生存確率が50%未満である。
【0142】
侵攻性IPIにおける全身状態は、以下のように定義される:グレード説明:0 完全に活動性、制限なしに発病前のすべての動作を実行できる;1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で軽労働や座業、例えば、軽い家事、事務労働、は実行できる;2 歩行可能で身の回りのことはすべてできるが、労働はできず、起きている時間の50%以上は起居している;3 身の回りのことは限定的にしかできず、起きている時間の50%以上は床または椅子についている;4 完全に機能できず、身の回りのこともできず、完全に床または椅子についている;および5 死亡。(The International Non-Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project. A predictive model for aggressive non-Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 329:987-94, 1993を参照されたい。)
【0143】
典型的には、リンパ腫のグレードは、低悪性度リンパ腫は結節性疾患として存在し、しばしば緩慢性または進行が遅いという基準を用いて、臨床的に評価される。中悪性度または高悪性度の疾患は、ずっと侵攻性が強く、大きなかさばる節外腫瘍がある。
【0144】
特に非ホジキンリンパ腫では、腫瘍の進行の測定にAnn Arbor分類システムも使用される。このシステムでは、成人NHLの病期I、II、III、およびIVは、はっきりと定義された全身症状があるか(B)ないか(A)によって、AとBのカテゴリーに分類される。Bの判定は、患者に以下の症状がある場合に与えられる:診断前の6ヶ月以内の10%以上の説明不能の体重減少、38℃以上の説明不能の発熱、および大量の盗汗。病期の定義は次の通りである: I期:単一のリンパ節領域または単一のリンパ節外の臓器または部位の限局的な病変。II期:横隔膜の同じ側の2つまたはそれ以上のリンパ節領域、または単一の関連するリンパ節外の臓器もしくは部位およびその所属リンパ節の限局的病変で、横隔膜の同じ側の他のリンパ節領域の病変がある場合もない場合もある。III期:リンパ節外の臓器もしくは部位の限局的な病変を伴う場合がある横隔膜の両側のリンパ節領域病変、脾臓病変、またはその両方。IV期:1つまたは複数のリンパ節外部位の播種性(多病巣)病変で、関連するリンパ節病変のある場合もない場合もある、または遠隔(非所属)節の病変を伴う孤立性のリンパ節外臓器病変。さらに詳細は、The International Non-Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project: A predictive model for aggressive non-Hodgkin’s lymphoma, New England J. Med. (1993) 329:987-994を参照されたい。
【0145】
1つの局面では、CD20特異的結合分子の治療効果は、奏効のレベルにより決定される、例えば、部分奏効は元のサイズの半分以下までの腫瘍の縮小と定義される。完全奏効は、臨床または放射線評価で確認される、疾患の完全な除去と定義される。1つの態様では、本発明のCD20特異的結合分子の処置を受ける個体は、処置に対して少なくとも部分奏効を示す。
【0146】
国立癌研究所との強力で開発されたNHL評価のCheson基準によると(Cheson et al., J Clin Oncol. 1999, 17:1244; Grillo-Lopez et al., Ann Oncol. 2000, 11:399-408)、完全奏効は、疾患および疾患関連症状の検出可能な臨床的および放射線による証拠が完全に消失し、すべてのリンパ節が正常なサイズに戻り、脾臓のサイズが退縮し、および骨髄にリンパ腫が無くなると、得られる。
【0147】
未確認の完全奏効は、患者の疾患が完全に消失し、脾臓のサイズが退縮するが、リンパ節が75%以上退縮し、骨髄がはっきりしない場合に得られる。未確認の完全奏効は、部分奏効の基準に合致し、これを上回る。全般的奏効は全体的な腫瘍量の少なくとも50%の低下と定義される。
【0148】
他の様々な形態の癌または過剰増殖性疾患で同様な基準は開発されており、当業者は容易に使用することができる。例えば、CLLの評価基準を記述するCheson et al., Clin Adv Hematol Oncol. 2006, 4:4-5;AMLの基準を記述するCheson et al., J Clin Oncol. 2003, 21:4642-9;骨髄異形成症候群の基準を記述するCheson et al., Blood 2000, 96:3671-4を参照されたい。
【0149】
別の局面では、B細胞癌の患者におけるCD20結合分子への治療応答は、治療を受けていない患者に比較した疾患の進行の遅延として明らかになる。疾患の進行の遅延または上記の任意の因子の測定は、骨スキャン、CTスキャン、ガリウムスキャン、リンパ管造影、MRI、PETスキャン、超音波、および同様なものを含む、当技術分野で周知の技術を用いて実行できる。
【0150】
関連する局面では、CD20結合分子処置の有効性を決定するために、個体の生物学的試料中のB細胞の数が測定される。1つの態様では、生物学的試料は、血液、腫瘍生検、リンパ節、扁桃腺、骨髄、胸腺、および他のリンパ球に富む組織から選択される。リンパ球に富む組織は、特にリンパ球細胞が豊富な組織であり、リンパ節および関連臓器(脾臓、骨髄、扁桃腺、胸腺、粘膜リンパ組織)、腫瘍、ならびに炎症部位を含むがこれらに限定されない。
【0151】
本発明の治療薬と組み合わせて従来の治療薬が投与される場合には、投与は修飾できることも明らかであろう。
【0152】
さらに、例えば疾患の症状が再出現する、または治療薬の薬物動態および/または薬力学がそのような再処置を望ましいものとしている場合には、本発明の方法によって処置される個体は再処置される場合があることも考慮される。1つの態様では、本発明のCD20特異的結合分子で処置される個体に別のCD20特異的結合分子が投与される。当技術分野の技量に基づいて、臨床家は、例えば、疾患症状の再出現または個体のB細胞の再処置を要するレベルへの回復に基づいて、いつ再処置が必要かを識別することが出来る。臨床的基準および転帰の他の測定またはマーカーの例は、本明細書にさらに記述されている。本発明の方法によって処置される個体には、処置の維持スケジュールを用いても良く、ここではCD20特異的結合分子の薬物動態/薬力学的特性に基づいて、CD20特異的結合分子の再処置を個体に施す。そのような維持処置は、典型的には最初の処置後約3ヶ月から約2年の間のいつかに投与される。例示的な薬力学データには、本明細書に記述される疾患の改善の生物学的尺度、例えば、血清中のCD20特異的結合分子のレベル、疾患評価の改善(例、ACR、SLAM、またはIPIによる)、サイトカインまたは表面マーカー発現の変化、自己抗体のレベル、および腫瘍サイズの変化、が含まれるがこれらに限定されない。さらに本発明の方法による処置に対する個体の応答に差があるために、CD20特異的結合分子を用いた再処置のタイミングに差が生じ得ることが当技術分野で理解される。
【0153】
さらなる局面として本発明は、本発明の方法を実施するための使用を容易にするように梱包された1つまたは複数の化合物または組成物を含むキットを含む。1つの態様では、そのようなキットには、密封されたボトルまたは器のような容器に梱包され、本方法の実施における化合物または組成物の使用を記述する、容器に貼付されたまたは梱包に入れられたラベルを伴う、本明細書に記述されるCD20特異的結合分子化合物または組成物(例、CD20特異的結合分子を単独または第2の薬剤との組み合せで含む組成物)が含まれる。好ましくは、化合物または組成物は単位投薬量の形態に梱包されている。キットはさらに、特定の投与経路にしたがって組成物を投与する、またはスクリーニングアッセイを実施するために適当な装置を含む場合がある。好ましくは、キットは抗体組成物の使用を記述するラベルを含む。
【0154】
本発明は製造品も含む。そのような製造品には、少なくとも1つのCD20特異的結合分子、任意で薬学的キャリアまたは希釈剤、および本発明にしたがうCD20特異的結合分子の使用方法を記述した少なくとも1つのラベルが含まれる。そのような製造品は、任意で、CD20特異的結合分子と関連して投与するための少なくとも1つの第2の薬剤も含む場合がある。
【0155】
実施例
実施例1:抗CD20 SMIPの初代B細胞への結合
初代ヒトB細胞
初代B細胞に対する抗CD20 SMIPの結合を決定するために、本発明者らは陰性選択B細胞単離キット(StemCell Technologies)を用いてバフィコートから初代B細胞を単離した。採集した細胞を様々な濃度の抗CD20 SMIPと30分間氷上でインキュベートした。その後細胞を0.5% BSA/PBSで洗浄し、抗ヒトIgG-PEで30分間染色し、FacsCaliburのフローサイトメトリー(MFI)により解析した。
【0156】
図1に示されるように、この実施例で解析した全ての抗CD20 SMIP(TRU-015、018008 csc、018008sccp、2LM 19-3 csc、2LM 19-3 sccp、2LM 20-4 csc、2LM 16 csc、2LM 16 scc、2LM 16 sccp、2LM 20-4 sccp、009 csc、009 scc、009 sccp、018011 csc、018011scc、018011 sccp) は、ヒトB細胞上のCD20に対して同等な結合親和性を有していた。
【0157】
(表2)P/S変異SMIPSを用いた初代B細胞上への結合

【0158】
悪性Bリンパ球細胞
抗CD20 018011、TRU-015、およびリツキサン(登録商標)の結合は、5つのヒトB細胞リンパ腫細胞株(BCL)のパネルを用いて調べられた:NU-DHL1、Ramos、SU-DHL4、SU-DHL5、およびWSU-DLCL2。これらの細胞株の各々は、異なる非ホジキンB細胞リンパ腫の患者に由来した。簡単に述べると、濃度を徐々に上げたCD20結合剤は、100,000 BCLと4℃で30分間インキュベートされた。その後細胞を1%BSA含有PBSで2回洗浄し、未結合の抗体を除去した後、FITC標識ヤギ抗ヒト(H+L)2次抗体(100倍希釈)を4℃で30分間添加した。再び細胞を2回洗浄して未結合の2次抗体を除去した後、1%BSA含有1%ホルムアルデヒド(PBS中)に再懸濁した。各試料の蛍光強度はBecton Dickinson FACSORTフローサイトメーターを用いて測定した。結果は蛍光強度の幾何平均(GeoMean)として表現されている。
【0159】
図2は5つの細胞株の結果を示す。018011はこれらの細胞株の各々に対して用量依存的な結合を示した。018008および2Lm20-4も5つの細胞株に結合した(データは示さず)。RamosおよびSWU-DLCL2細胞に対する018011の結合は、実施例5のプロトコールに従って、免疫蛍光(IFA)によって確認した。
【0160】
実施例2:抗CD20 SMIPの補体依存性細胞障害アッセイ
Ramos細胞
ヒト抗CD20 SMIPの補体依存性細胞障害(CDC)のレベルを決定するために、本発明者らは10%ヒト血清(Quidel)の存在下で抗CD20 SMIPとRamos細胞を37℃で3.5時間インキュベートした。細胞死は細胞からのLDH放出を測定することにより評価した(Promegaキット)。
【0161】
図3Aに示されるように、リツキサン(登録商標)、TRU-015、2LM 20-4、018008、および018011はヒトRamos B細胞に対して同等なCDC活性を有していた。
【0162】
(表3)P/S変異SMIPSを用いたRamos細胞に対するCDC

【0163】
初代B細胞
本発明者らはやはり陰性選択B細胞単離キット(StemCell Technologies)を用いてバフィコートから初代B細胞を単離した。5x105 B細胞を抗hCD55抗体(2μg/ml)と37℃で10分間プレインキュベートした。その後抗CD20 SMIPおよび血清(10%:Quidel)を添加した。3.5時間のインキュベーション後、7-AAD染色およびFACs解析によって細胞死を評価した。
【0164】
図3Bに示すように、TRU-015、リツキサン(登録商標)、および2LM20-4は初代B細胞に対して同等なCDC活性を有していた。IgG対照が添加された時には、初代B細胞に対するCDC活性は検出されなかった。
【0165】
SU-DHL4 B細胞およびBJAB細胞
本発明者らは補体の供給源として新鮮なヒト血清を用いて、ヒト化抗CD20 SMIPがSU-DHL4 B細胞リンパ腫細胞に対するCDCを媒介する能力も調べた。ヒト全血を採取し、室温で60分間凝血させた後、チューブを遠心してCDC解析用の血清を採取した。この試験では、CD20特異的TRU-015およびリツキサン(登録商標)は陽性対照として用いられ、HER2特異的トラスツズマブはアイソタイプ適合非結合対照として使用された。
【0166】
SU-DHL4B細胞は、様々な量のCD20結合剤を入れた96ウェルプレートに入れた。健常ボランティアの血液から調製された希釈ヒト補体(1:100)を各ウェルに添加した。試験は最終体積が100μl/ウェルとして3つ組で行われ、培地のみ、細胞のみ、CD20結合剤のみ、および補体のみは全て対照として使用された。37℃で4時間のインキュベーション後に、プレートをインキュベーターから取り出し、22℃に平衡化した(約20〜30分)。
【0167】
LDH放出アッセイ
CYTOTOX-ONE(商標)蛍光分析法は、細胞障害アッセイにおいて非生存細胞の数を見積もる。傷害を受けた細胞膜を持つ細胞から乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を迅速に蛍光測定できる。培養培地中に放出されたLDHは、レザズリンがレゾルフィンに変換される10分間の共役酵素アッセイを用いて測定される。蛍光レゾルフィン産物の生成は、LDHの量に比例している。
【0168】
簡単に述べると、各ウェルに等体積のCYTOTOX-ONE(商標)を添加し、30秒間愛護的に震盪し、さらに22℃で10分間インキュベートした。陽性対照として、各ウェルに2μlの溶解緩衝液(3つ組)を添加して、細胞からの最大LDH放出を生成した。10分間のインキュベート後に、50μlの停止溶液を添加することにより酵素反応を停止し、プレートを愛護的に10秒間震盪した。蛍光は、励起波長560 nm、発光波長590 nmで蛍光光度計を用いて測定した。
【0169】
細胞障害性パーセントは以下の等式によって計算された。

【0170】
図4に示されるように、018011は2人の別々のドナーおよびSU-DHL4 B細胞から得られたヒト補体を用いたCDCを媒介する能力を有していた。このCDC効果は、018011、TRU-015、およびリツキサン(登録商標)の濃度に比例していた。2人のドナーのうちの1人からの補体は、018011のCDC活性を支持する能力がより低く、これはリツキサン(登録商標)のものより低いと考えられた。018011を用いたこの所見の意義ははっきりしない。
【0171】
BJAB細胞を標的細胞集団として使用した同様な試験では、018011およびTRU-015のいずれもBJAB細胞に対して同程度の濃度依存性補体媒介細胞障害を生成した(図4)。
【0172】
実施例3:抗CD20 SMIPの抗体依存性細胞障害(ADCC)アッセイ
いくつかの異なる標的細胞を用いて、抗CD20 SMIPの抗体依存性細胞障害(ADCC)(FcCCとも呼ばれる)のレベルが決定された。
【0173】
BJABリンパ腫細胞
一つの実験では、BJABリンパ腫細胞は0.5μM CFSEで標識された。標識細胞は抗CD20結合剤と15分間インキュベートされ、その後活性化したPBMC(IL-2およびIL-12で事前に一晩刺激された)が添加された。6時間のインキュベーション後に、CFSE標的細胞(CFSE+)はPIで染色され、フローサイトメトリーを用いて細胞死が評価された。
【0174】
図5に示されるように、リツキサン(登録商標)、TRU-015、および2LM20-4は同等なADCC活性を媒介した。51Cr標識BJAB細胞を用いたさらなる実験では、018008および018011のADCC活性が示された(データは示さず)。
【0175】
Ramos B-細胞およびSU-DHL4
エフェクター細胞の調製
PBMNCはLymphoprep(商標)(Axis-Shield PoC AS, Norway)を用いた密度勾配遠心によって単離された。全血は抗凝固剤(ヘパリン)を含むチューブに採取された。血液は等量の0.9% NaClの添加によって希釈され、その後希釈した血液6 mlを15 mlの円錐管中の3 mlのLymphoprep溶液上に重ね、室温にて800 x gで20分間遠心した。界面から回収した単核細胞を洗浄し、ADCCおよびFcCCアッセイに使用した。
【0176】
ADCCプロトコール
エフェクターおよび標的細胞を、96ウェルプレートに50:1の比率で入れ、様々な濃度のCD20結合剤が適切なウェルに添加された。試験は最終体積が100μl/ウェルとして3つ組で行われ、培地のみ、エフェクター細胞のみ、標的細胞のみ、およびCD20結合剤のみが対照として使用された。蛍光シグナルは上記CDCアッセイに記述されているようにして測定された。
【0177】
結果
018011がFc媒介細胞性細胞障害(FcCC)を促進する能力は、CD20+ SU-DHL4およびRamos BCLに対して評価された。この評価ではさらにTRU-015、リツキサン(登録商標)、および抗HER2トラスツズマブ(アイソタイプ適合非結合対照Fcとして使用)が使用された。この評価では正常な健常ドナーから新しく単離されたPBMNCがエフェクター細胞の供給源として使用された。PBMNCはFcCCを媒介する能力のあるFcγR3/CD16+ NK細胞を含んでいる。NK細胞に加えて、PBMNC中の単球もFcγRを発現し、FcCCを生じる能力を持つ。図6はCD20+ SU-DHL4およびRamos Bリンパ腫細胞を用いた実験の結果を示す。CD20結合剤の各々は、ヒトエフェクター細胞を用いて用量依存的にFcCCを媒介する能力があった。
【0178】
さらなるヒトCD20結合分子を用いた同様な実験では、Ramos B細胞に対するADCC活性化が示された(図11)。
【0179】
(表4)ヒト化抗CD20 SMIPのランク

【0180】
実施例4:抗CD20 SMIPの薬物動態および薬力学試験
抗CD20 SMIPの薬物動態および薬力学を調べるために、カニクイザルにおいて26週のIVボーラス薬物動態試験が行われた。以下のようにメス成体カニクイザルが処置された。
【0181】
(表5)

【0182】
試験物質の薬物動態を試験するために、動物群から血液試料、リンパ節生検、および骨髄穿刺液を得た。全血および血清試料は、血液学、フローサイトメトリー、およびPK解析にかけた;リンパ節生検はフローサイトメトリーおよび免疫組織化学解析にかけた;骨髄穿刺液はフローサイトメトリーによって解析した。
【0183】
動物の臨床所見は正常で、試験物質に有害な徴候をと関連するものはなかった。さらに、ヘモグロビンレベル、ならびに血小板、単球、好酸球、および好塩基球の数は試験物質によって影響されなかったことが分かった。
【0184】
末梢血のフローサイトメトリー解析では、10 mg/kg 2LM 20-4(野生型)または2LM 20-4 mut Fcで処置された群が強く長期持続性のCD19+ B細胞の除去を示すことが示された(図8)。2LM 20-4、2LM 20-4 mut Fc、およびリツキサンは末梢CD19+ B細胞の同様な枯渇を示した。
【0185】
骨髄のフローサイトメトリー解析では、2LM 20-4、2LM 20-4 mut Fc、およびリツキサンで処置された群が、8日目に同等の骨髄CD19+ B細胞の枯渇を示すことが示された(図9)。しかし22日目には、リツキサン処置群は、2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcと比較して有意に多くの数のCD19+ B細胞を有していた(図9)。
【0186】
リンパ節のフローサイトメトリー解析では、8日目および22日目のいずれでも、2LM 20-4が2LM 20-4 mut Fcと比較して有効性が高いことが示された(図10)。2LM 20-4はリンパ節のCD19+ B細胞の相対的割合を有意に低下させた。
【0187】
本発明者らは、IV投与後のカニクイザルにおける2LM 20-4および2LM 20-4 mut Fcの薬物動態(PK)データも入手した。2LM 20-4および2LM 20-4のいずれも、10 mg/kgが投与されると遅い排出速度を示し、2LM 20-4の半減期は7.2±0.6日、2LM 20-4 mut Fcの半減期は5.5±2.4日だった(図11)。分布体積は小さく、約40〜70 ml/kgだった。1〜20 mg/kgの用量範囲で非線形PKのいくらかの証拠があった。2LM 20-4および2LM 20-4 mut FcのPKプロファイルはリツキサンおよびTRU-015と同等だった。
【0188】
結論として本発明者らは、ヒト化抗CD20 SMIP、特に2LM 20-4がリツキサンと少なくとも同等のB細胞枯渇有効性を持つことを示した。
【0189】
実施例5:インビボ試験
A. 皮下または全身播種性ヒトB細胞リンパ腫異種移植片に対するCD20特異的018011のインビボ評価
ヌードマウスで増殖したヒトB細胞リンパ腫異種移植片に対する018011の前臨床抗腫瘍有効性が調べられた。018011はマウスにおいて確立した皮下Bリンパ腫異種移植片の増殖を阻害し、確立したB細胞リンパ腫異種移植片の退縮を引き起こした。018011の抗腫瘍活性には明らかな用量反応関係は見られなかった。播種性B細胞リンパ腫のマウスモデルにおいては、疾患過程の初期に投与された場合、018011は全身播種性B細胞リンパ腫を持つscidマウスを後肢麻痺および死亡から保護した。
【0190】
試験および対照分子
CD20結合分子
018011(20 mMリン酸ナトリウム、240 mMスクロース、pH 6.0に3.1 mg/mlで溶解、または10 mMヒスチジン、5%スクロース、pH 6.0中に4.09 mg/mlで溶解)およびTRU-015は-80℃で保管された。リツキシマブ(リツキサン(登録商標))はMedWorld Pharmacy(Chestnut Ridge, NY)から入手した。薬剤は使用前にリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。
【0191】
細胞株
B細胞リンパ腫(BCL)株Ramos(CRL-1596)はAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫株WSU-DLCL2(ACC-575)はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ Braunschweig, Germany)から入手した。細胞はDNA蛍光色素染色アッセイ(Bionique Testing Laboratories, Saranac Lake, NY)によってマイコプラズマの感染がないことが決定された。細胞は10%ウシ胎児血清(FBS)、10 mM HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、1 mMピルビン酸ナトリウム、0.2%グルコース、ペニシリンGナトリウム(100 U/ml)、硫酸ストレプトマイシン(100μg/m)、およびL-グルタミン(2 mM)を添加したRPMI 1640培地中で維持された。使用前に、Lymphoprep(Axis Shield PoC AS, Oslo, Norway)密度勾配を用いた遠心(1000 x gで30分)により生存細胞が単離された。
【0192】
動物
メスBALB/cおよびnu/nu(ヌード)マウス(18〜23 g)ならびにCB17 scidオスマウス(18〜23 g)はCharles River Laboratories, Wilmington, MAから入手した。全てのマウスはマイクロアイソレーターユニットで飼育し、試験中を通して無菌餌および水が自由に与えられた。
【0193】
皮下BCL異種移植片
メス無胸腺(ヌード)マウスにRamosまたはWSU-DLCL2皮下異種移植片が植え込まれた。別のマウス群はRamos BCLの腫瘍移植前に、残存免疫系をさらに抑制するために、全身照射(400ラド)に曝露された。マウスの背側右側面にMatrigel(Collaborative Biomedical Products, Belford, MA、RPMI 1640培地で1:1希釈)に懸濁された1 x 107 Ramos細胞または5 x 106 WSU-DLCL2細胞が注射された。腫瘍が適当な質量(通常>100 mg)に達したら、治療の投与(n=8〜10/処置群)前に、腫瘍質量の均一性を最大化するためにステージ分類された。化合物は無菌生理食塩水中でivまたはipのいずれかで投与された(0.2 ml/マウス)。018011とリツキサン(登録商標)の分子量の差を考慮して、マウスに投与された各薬剤の投与量は、各蛋白質がモルで等量となるように調節された。したがって、投与されたリツキサン(登録商標)の量は、投与された018011の量の約137%だった。腫瘍の長さと幅(cm)は少なくとも週1回測定し、腫瘍の質量は以下のように計算された:腫瘍質量(g)= [0.5 x(腫瘍の幅2)(腫瘍の長さ)]。各処置群の平均(±sem)腫瘍質量が計算され、ANOVAおよびその後、全ての処置群のプールされた分散に基づくt検定の誤差項を用いた片側t検定による媒体処置群との対比較を用いて統計的有意差が検討された。各処置群の腫瘍質量値は、処置の開始後100日目または腫瘍が体重の15%になり施設の規則に従ってマウスが安楽死されるまで、記録された。各試験の終了時に無腫瘍マウスの数が記録された。マウスの生存はプロットされ、腫瘍の質量によって決定された;施設のガイドラインに従って腫瘍質量がマウスの体重の15%に達するまでマウスは殺されなかったが、腫瘍質量が≧1.5 gのマウスは全て生存プロットの計算のためには死亡とみなされた。
【0194】
播種性BCLに対する抗腫瘍有効性の評価
オスscidマウスの尾静脈に0.2 mlの体積中の3 x 106 Ramos細胞または5 x 106 WSU-DLCL2細胞が静脈注射された。薬剤治療の開始前に、3日間(発生モデルと呼ばれる)、6日間(中間モデルと呼ばれる)、または9日間(確立されたモデルと呼ばれる)にわたり細胞の播種および増殖が行われるようにした。指定された日に、播種性疾患を持つマウス(9から13マウス/処置群)に媒体(PBS)、018011、TRU-015、またはリツキサン(登録商標)がiv投与された。播種性疾患を持つマウスは、100日目まで、後肢麻痺または死亡の存在について、毎日モニターされた。後肢麻痺を示すマウスは、施設の規則に従って、CO2窒息により安楽死された。
【0195】
各群について平均生存時間(日±SD)が計算された。群間の生存分布の差は、罹患マウスの生存分布を比較するノンパラメトリック法を用いて決定された。ランク変換手順を用いて多重比較が実行された。ランク変換手順は、生存時間をランクに置き換える段階、および通常のパラメトリックF検定をランクに適用する段階からなる。ランクに対してテューキーの方法を用いて多重比較が実行された。テューキーの方法は、マウス間の生存時間の差を示し、0.05レベルで有意性が報告される。生存曲線は、カプランマイヤー法を用いて作製された(J Am Stat Assoc 1958; 53:457-81)。
【0196】
播種性Ramos BCLの何匹かのscidマウスの大腿骨から骨髄細胞が採取され、対照FITC-標識ラットIgG2A、FITC-標識マウスIgG1、FITC-標識ラット抗マウスCD45、またはFITC-標識マウス抗ヒトCD19(すべてのFITC-標識試薬はBD Pharmingen, San Diego, CAから)とインキュベートすることにより、ヒトCD19またはマウスCD45抗原の発現が評価された。細胞を沈殿物にし、PBS-1%BSAで洗浄し、1%ホルムアルデヒドで固定した。試料はFACSortフローサイトメーター上でヒトCD19発現細胞の有無の解析がされた。ヒトCD19+細胞の数は、CD45共通白血球抗原の発現により同定されるリンパ細胞の前方および側方散乱光の特性に基づいてゲートした細胞集団の総数に対するパーセントとして表示された。
【0197】
この試験に使用された動物は表5にリストされている。
【0198】
(表6)使用したマウスの詳細

【0199】
結果
Ramos皮下異種移植片に対する018011の効果
媒体、018011(4 mg/kg iv)またはリツキサン(登録商標)(5.5 mg/kg iv)は、確立されたRamos異種移植片を持つBalb/cマウスにモルで等量が投与された。時間を追った各マウスの腫瘍質量は図12に(プロットされた結果は2つの別々の試験からプールされたもの)および生存(腫瘍容積<1.5 gに基づく)は図13に示されている。nu/nuマウスを用いて行われた別の試験では、媒体、018011(8 mg/kg ip)、TRU-015(8 mg/kg ip)またはリツキサン(登録商標)(11 mg/kg ip)が確立されたRamos異種移植片を持つnu/nuマウスにモルで等量が投与された。
【0200】
Balb/cマウスで確立されたRamos異種移植片モデルにおいて018011およびリツキサン(登録商標)、ならびにnu/nuマウスで確立されたWSU-DLCL2異種移植片モデルにおいて018011、リツキサン(登録商標)、およびTRU-015の用量反応活性が調べられた(表7)。いずれの試験でも、全ての化合物はip経路の薬剤投与によって隔日(週末を除く)に5回投与された。無腫瘍マウスの数が記録された(Ramos試験では50日目、WSU-DLCL2試験では100日目)。
【0201】
(表7)RamosおよびWSU-DLCL2異種移植片に対する018011、TRU-015、およびリツキシマブの効果

【0202】
scidマウスの播種性リンパ腫に対する018011、TRU-015、およびリツキシマブの効果
018011、TRU-015、およびリツキサン(登録商標)が全身播種性Bリンパ腫を持つCB17 scidマウスの生存を延長する能力が評価された。このモデルでは、CD19+ CD20+ Ramos Bリンパ腫細胞の静脈注射によって、細胞は中枢神経系を含む様々な臓器に広がり、最終的には後肢麻痺および死亡を招く(Clin Can Res 2004; 10:8620-9)。播種性疾患の発生期(初期)(Ramos細胞の播種の3日後に治療開始)、疾患の中間期(腫瘍細胞の播種の6日後に治療開始)、または確立期(後期)(播種の10日後に治療開始)のいずれかに、播種性Ramos Bリンパ腫のscidマウスに化合物がiv投与された。図16に示すように、播種性疾患の発生期(3日目に開始)に等モル量の018011、TRU-015、またはリツキサン(登録商標)(それぞれ2 mg/kg、2 mg/kg、および2.8 mg/kg)を投与すると、播種性疾患の発生に対して有意な保護が得られた。018011、TRU-015、またはリツキサン(登録商標)の投与を播種後10日目まで遅らせると、各々のタンパク質の保護活性は有意に失われた。疾患の確立期には、各化合物は5回(発生期の3用量、中間期の4用量に対して)、発生期の投与の4倍の用量(018011、TRU-015、およびリツキサン(登録商標)がそれぞれ8 mg/kg、8 mg/kg、および11.2 mg/kg)が投与された。このような高用量でより長期の投与でも、確立された疾患における各化合物の活性は、播種モデルの発生期より有意に低かった。これらの結果は、018011、TRU-015、およびリツキサン(登録商標)は、Ramos播種性疾患モデルにおいて確立された疾患よりも発生期の疾患に対してより有効であることを示唆する。
【0203】
Ramos播種性疾患のマウスから採取された骨髄で、播種性のヒトCD19+ Ramos細胞の存在が調べられた。播種性疾患を持つ媒体処置マウスの骨髄由来リンパ系細胞の大部分は、骨髄中のヒトリンパ系細胞の存在を示すヒトCD19抗原を発現していた。播種性疾患過程の初期(BCL播種の3日後に開始)における018011、TRU-015、またはリツキサン(登録商標)処置は、骨髄中のヒトCD19+細胞の割合を<10%に低下させた(図17)。初期処置群のマウスでは後肢麻痺を示すものはなかった。疾患過程の確立期(BCL播種の10日後に開始)に処置されたマウスの骨髄から単離されたリンパ系細胞の30%近くがヒトCD19抗原を発現していた。後期処置群のマウスは、後肢麻痺を経験した。骨髄におけるヒトBリンパ腫細胞の増殖はこれらの疾患マウスにおける疾患の進行度合を示す可能性がある。
【0204】
WSU-DLCL2びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の播種性疾患モデルにおいて018011、リツキサン(登録商標)、およびTRU-015の効果が調べられた。治療用タンパク質は、発生モデルでは腫瘍細胞注射の3日後から開始され合計3用量、確立モデルでは10日後から開始され合計5用量が、iv投与された。タンパク質は等モルの用量で投与された。018011は腫瘍細胞誘導性の後肢麻痺に対して有意に(媒体処置マウスに対してp<0.05)マウスを保護し(図18)、TRU-015の効果は疾患過程(発生期)の初期に投与された時に統計的有意差に近づいた(媒体処置マウスに対してP=0.073)。リツキサン(登録商標)の効果は発生期に有意ではなく、また疾患の確立期に投与された時には3つのタンパク質のいずれも有意ではなかった。これらの結果は、疾患の確立期に投与されたRamos播種モデルで観察されたものと類似していた。
【0205】
Ramos皮下異種移植片に対する静脈内および腹腔内投与された018011の効果
018011(8 mg/kg)の抗腫瘍活性がivおよびip薬剤投与の後で比較された。018011は腫瘍のステージ分類後に隔日に5回投与され(Balb/cマウス)、抗腫瘍活性がモニターされた。いずれの経路の薬剤投与によっても腫瘍の増殖が有意に(p<0.05)阻害された(図19)。ip投与された018011の抗腫瘍活性は、iv投与された018011よりも長期間維持された。この試験は、ipまたはivのいずれかで投与された018011はヒトB細胞リンパ腫異種移植片の増殖の阻害に有効であることを示す。
【0206】
照射および非照射ヌードマウスにおける皮下異種移植片に対する018011およびリツキシマブの効果
ガンマ線照射は先天性免疫系を抑制し、免疫不全ヌードマウスにおける腫瘍異種移植片の確立を促進する。照射が治療用抗体の抗腫瘍活性を媒介する能力のあるエフェクター細胞にも影響を与え得るという可能性を考慮して、Ramos Bリンパ腫異種移植片に対する018011およびリツキサン(登録商標)の抗腫瘍活性は、照射(400ラドと等量の4 Gy)または非照射Balb/cマウスで評価された。Ramos異種移植片は照射および非照射マウスで確立された。018011(8 mg/kg ip)およびリツキサン(登録商標)(11.2 mg/kg ip)はそれぞれ照射および非照射マウスの両方でRamos Bリンパ腫異種移植片の増殖を有意に(媒体処置マウスに対してp<0.05)阻害することができた(図20)。照射マウスでは腫瘍はより速く増殖し、各化合物の阻害効果は非照射マウスで観察されるほど堅牢ではなかった。これらの結果は、宿主の照射が免疫系のエフェクター細胞の機能的完全性に依存する018011またはリツキサン(登録商標)のような免疫療法薬の治療活性に負の影響を与え得ることを示唆する。照射が018011の治療活性に影響を与える機序は調べられていない。
【0207】
結論
018011は前臨床モデルで抗腫瘍剤として活性があった。疾患過程の後期というよりも早期に投与された時に、確立した皮下Bリンパ腫異種移植片の増殖を阻害し、播種性B細胞リンパ腫のマウスを保護した。
【0208】
B. ヌードマウスにおいて確立したRamos腫瘍異種移植片モデルにおけるHuCD20 SMIPの有効性
以下の実験では、ヌードマウスにおいて確立したRamos腫瘍異種移植片のモデルにおけるヒト化CD20特異的SMIP(HuCD20 SMIP)の有効性が試験された。実験は3つ組で行なわれた(本明細書では(A)、(B)、および(C)と呼ばれる)。7.5〜8週齢の無胸腺ヌードFoxn1nuマウス(Harlan Livermore, CA)が使用された。
【0209】
Ramos腫瘍異種移植片の確立および処置群への振り分け
Ramos細胞はバーキットリンパ腫に由来するCD20+ヒトBリンパ芽球細胞株である。500万のRamos細胞がメス無胸腺nu/nuマウスの側面に皮下注射された。腫瘍接種後6日目にはマウスの大部分で触知可能な腫瘍が明らかだった。担癌マウスは、同等な平均腫瘍体積を持つ群(n=8/群;各群にはマウス4匹のケージが2つ)に振り分けられた。振り分けの日が試験の0日目と定義された。腫瘍はカリパスで測定され、腫瘍体積は次の公式を用いて計算された:V = 1/2[長さx(幅)2]。この実験のベースラインの平均腫瘍体積は228 mm3、(A)および(B)、または227 mm3(C)で;ベースライン腫瘍サイズの中央値は228 mm3(A)、233(B)、または225 mm3(C)で;範囲は180〜281 mm3(A)、168〜300 mm3(B)、または157〜300 mm3(C)だった。

【0210】
盲検プロトコール
PBSおよびタンパク質(薬剤)溶液は同様な体積中に調製され、チューブの内容物は取り外し可能なラベル上に記載された。マウスの処置も評価もしない研究者が各チューブにカラーコードを添付し、実験ノートにコードおよびチューブの内容物を記載した。このデザインにより研究者のバイアスは低下するが除去されるわけではない。というのは、試験を実行する研究者らは、特定のマウス群がどの処置を受けているかは知らないが、2つのケージ内の群の全てのマウスが同じ群に属することは知っていたという意味で「部分的に」ブラインドされただけだからである。コードは試験の終わりに明らかにされた;しかし、コードを知っていた研究者は試験結果を暫定的にモニターすることができた。
【0211】
インビボ処置
マウスには0、2、4、6、および8日目に0.2 mlの体積中の100μgのヒトIgG、TRU-015、018008、018011、または2Lm20-4が静脈注射(IV)された。PBSおよび薬剤溶液は、上述のようにカラーコードされていた。
【0212】
モニタリングおよびエンドポイント
マウスは目視検査により毎日モニターされた。体重を決定し、腫瘍は処置群を知らない観察者(上記を参照されたい)によりカリパスを用いて少なくとも週3回(月水金)測定された。腫瘍体積は上述のようにして計算された。全ての群の全てのマウスが生存していた最後の日の腫瘍体積は、以下の公式を用いて0日目に対する相対腫瘍体積としても表された。
【0213】

【0214】
体重と腫瘍のモニター日は、試験に残っているマウスに触知可能な腫瘍がない場合には週1回に変更された。腫瘍が1500 mm3を越えた場合は、マウスは犠牲にされた。腫瘍プロトコールでは、他の記載がない限り死亡はエンドポイントではなく、マウスの「生存」は犠牲にした時点により決定されたことに注意されたい。
【0215】
試験は90日目に終了した。
【0216】
統計解析
全ての統計解析はGraphPad Prismソフトウェアを用いて行われた。8日目の平均腫瘍体積または平均相対腫瘍体積の有意差は、Dunnettの多重比較事後検定(huIgG処置対照と比較)およびTukeyの多重比較事後検定(他の全ての対比較)による一元配置ANOVAを用いて決定された。時間を追ったマウスの生存の有意差は、生存曲線を比較するログランク検定を用いたカプランマイヤー生存解析を用いて決定された。観察期間の最後における無腫瘍マウスの発生率の有意差は、フィッシャーの直接確率検定を用いて決定された。<0.05のp値は有意とみなされた。
【0217】
結果
TRU-015または3つのHuCD20 SMIP(018008,018011、および2Lm20-4)のいずれによる処置も、対照に比較した腫瘍の増殖の減速および/またはベースライン計測と比較した腫瘍体積の低下をもたらした(図21〜23)。huIgG処置群の平均腫瘍体積および平均相対腫瘍体積は、すべてのマウスが生存していた最後の日である8日目に、TRU-015、018008および2Lm20-4((C)のみ)処置群とは有意に異なっていた(図22A〜22B)。huIgG処置群と他の任意のHuCD20 SMIP処置群の間、または2つのHuCD20 SMIP処置群間には、平均腫瘍体積または相対腫瘍体積には有意差はなかった。マウスは8日目から犠牲にされた;したがってその後の時点では、腫瘍体積の比較は行なわれなかった。
【0218】
腫瘍体積が上記の限度に到達した時にマウスは犠牲にされた。死亡しているのが発見されたマウスはなく、極度の体重減少、腫瘍の潰瘍化または運動障害のために犠牲にされたマウスもなかったため、「生存」時間は腫瘍増殖速度のもう1つの尺度である。図23に示され表8にまとめられているように、huIgG対照群の生存時間の中央値は10日だった。これとは対照に、他のマウス群の各々では、対照群と比較して生存時間の中央値は有意に増加した。TRU-015、018008、018011、および2Lm20-4処置群のマウスの生存時間の中央値はそれぞれ、24.0、88.5、20.5、および20.5日(A)、22.0、50.0、11.5、および13.5日(B)、または40.5、52、16、および83日(C)だった。これらの群のうちいずれの2群間にも有意差はなかった(表8)。
【0219】
90日間の観察期間の終了時に8匹のhuIgG処置マウスのうち生存しているものはなかったため、90日目におけるこの群の無腫瘍発生率は0/8だった(図24および表8)。観察期間の終了時の無腫瘍マウスの発生率は、TRU-015処置群では2/8(25%)(A)または1/8(12.5%)(B)および(C);018008群では4/8(50%)(A)、3/8(37.5%)(B)および(C);018011群では1/8(12.5%)(A)および(B)または2/8(25%)(C);ならびに2Lm20-4処置群では1/8(12.5%)(A)および(B)または4/8(50%)(C)だった。huIgG対照群といずれの処置群の間、または任意の他の2つのマウス群の間には、無腫瘍マウスの発生率に有意差はなかった(表8および9)。
【0220】
いずれの処置群でも、明らかな毒性の徴候または体重減少は観察されなかった(図25)。
【0221】
(表8)生存期間の中央値および観察期間終了時の無腫瘍マウスの発生率

aマウスの「生存」は腫瘍の増殖のために犠牲にされた時点によって決定された。死亡が発見されたり他の理由で犠牲にされたマウスはなかった。試験は90日目に終了した。
b各群はHuIgG処置群と比較された。他の比較は以下の表9を参照されたい。
c「無腫瘍」マウスは触知可能な腫瘍を持たなかった。腫瘍細胞の欠如は組織学的に確認されていない。
d太字はHuIgG対照群からの有意差を表す。
【0222】
(表9)TRU-015とHuCD20 SMIP処置群との間の生存曲線および無腫瘍発生率の比較のp値

a群に関する情報は表8の説明を参照されたい。
【0223】
試験0日目に、触知可能なRamos腫瘍を持つヌードマウスは、各群の平均腫瘍体積が同等になるように処置群(n=8/群)に振り分けられた。マウスは100μgのヒトIgG、TRU-015、018008,018011、または2Lm20-4を用いて0、2、4、6、および8日目にIV処置された。腫瘍は示された日にカリパスを用いて測定され、V = 1/2[長さx(幅)2]という公式を用いて計算された。腫瘍体積が指定された限度を越えたために動物が試験から除外されたら、最後の腫瘍体積が繰り越された。結果は、最後の対照マウスが犠牲にされた10日目まで示されている。
【0224】
結果は、(A)8日目(すべてのマウスが生存していた最後の時点)の個々のマウスの腫瘍体積、または(B)0日目に対する8日目の個々のマウスの相対腫瘍体積、で示されている。群間の有意差は、Dunnettの多重比較事後検定(huIgG処置対照と比較)およびTukeyの多重比較事後検定(他の全ての対比較)による一元配置ANOVAを用いて決定された;すべての対比較のP値が示されている。
【0225】
マウスは処置およびモニターされ、腫瘍体積は図21の説明に記述されるようにして決定された。腫瘍体積は試験に残っている全てのマウスに触知可能な腫瘍がない期間にモニタリングが週1回に切り替えられたのを除き、週に少なくとも3回(月水金)決定された。腫瘍体積が1500 mm3(または金曜日に1200 mm3)以上に達した時に、マウスは犠牲にされた。他の理由で死亡が発見されたかまたは犠牲にされたマウスはなかった。
【0226】
C. ヒト化CD20結合分子の腫瘍内蓄積
ヌードマウスで確立された皮下ヒトB細胞リンパ腫異種移植片における018011の腫瘍内蓄積は、間接免疫蛍光解析(IFA)およびフローサイトメトリーにより評価され、CD20特異的抗体治療薬のベンチマークであるリツキサン(登録商標)と比較された。いずれの薬剤も、静脈内に単回投与された。フローサイトメトリーにより評価すると、リツキサン(登録商標)はインビトロでRamosまたはWSDLCL2細胞に、より高い度合いで結合した。この差はIFA解析では明らかではなかった。WSU-DLCL2皮下異種移植片(0.5 mg ivで薬剤投与)のIFA解析では、018011の染色はより腫瘍全体に広がる傾向があり、リツキサン(登録商標)の染色はより点状で018011ほど広がっていないことが示された。Ramos異種移植片で、薬剤が1 mg/マウスの用量で投与され投与後24hまたは96hのいずれかに解析された時にも同様な結果が観察された。異種移植片から単離されたリンパ細胞のフローサイトメトリー解析はこの結果を確認した。
【0227】
試験および対照物質
CD20結合分子
018011(20 mMリン酸ナトリウム、240 mMスクロース、pH 6.0中に3.1 mg/mlで溶解、または10 mMヒスチジン、5%スクロース、pH 6.0に溶解したL37852-001、4.09 mg/ml)は-80℃で保管された。リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、およびセツキシマブ(アービタックス(登録商標))はMedWorld Pharmacy(Chestnut Ridge, NY)から入手した。薬剤は使用前にリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。
【0228】
細胞株
B細胞リンパ腫株Ramos(CRL-1596)はAmerican Type Culture Collection (ATCC, Manassas, VA)から入手した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫株WSU-DLCL2(ACC-575)はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ Braunschweig, Germany)から入手した。すべての細胞株はDNA蛍光色素染色アッセイ(Bionique Testing Laboratories, Saranac Lake, NY)によってマイコプラズマの感染がないことが決定された。各細胞株は10%ウシ胎児血清(FBS)、10 mM HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、1 mMピルビン酸ナトリウム、0.2%グルコース、ペニシリンGナトリウム(100 U/ml)、硫酸ストレプトマイシン(100μg/m)、およびL-グルタミン(2 mM)を添加したRPMI 1640培地中で維持された。使用前に、Lymphoprep(Axis Shield PoC AS, Oslo, Norway)密度勾配を用いた遠心(1000 x gで30分)により生存細胞が単離された。
【0229】
動物
メスBALB/cおよびnu/nu(ヌード)マウス(18〜23 g)はCharles River Laboratories, Wilmington, MAから入手した。全てのマウスはマイクロアイソレーターユニット中で飼育し、試験中を通して無菌餌および水が自由に与えられた。
この試験に使用された動物は表10に示されている。
【0230】
(表10)使用したマウスの詳細

【0231】
免疫蛍光(IFA)
RamosまたはWSU-DLCL2細胞は、ポリDリジン8ウェル培養スライド(BD BioCoat cat# 354632)上に1ウェル当たり500,000細胞を播き、一晩増殖させた。翌日、細胞を5% CO2の存在下で100 nMリツキサン(登録商標)、トラスツズマブ、または018011と37℃で30分間インキュベートした。その後、PBS中の3.75%ホルムアルデヒドおよび0.2 Mスクロースを用いて細胞を固定した。PBSで洗浄(3 x 5分)することにより細胞を再水和させ、PBS中0.1 Mグリシンで10分間インキュベートした。3% BSA/PBSで1時間細胞をブロックした。引き続く全ての段階は暗室で行われた。特異的結合は1% BSA/PBS中で1:100希釈したフルオレセイン(FITC)ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的、を用いて37℃で30分間解析された(Jackson ImmunoResearch Labs cat# 109-095-008)。一部のスライドはR-PE抗マウスCD31(Caltag Laboratories)でも染色された。チェンバーとスライドを分離するために、細胞を曝露しないように注意しながらチェンバーを70% MEOH中に2分間浸した。DAPI対比染色液(DAPI入りProLong抗退色試薬、Invitrogen cat # P36931)を含むマウント培地1滴をカバースリップ付き各チェンバーに添加した。免疫蛍光は蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E400)を用いて評価された。直接の比較を行なうため、全ての画像は同じパラメータ(輝度、コントラスト、40 x倍率等)を用いて撮影された。画像はSpot RT Slider(Diagnostics Instruments, Sterling heights, MI)デジタルカメラを用いて撮影し、Spot Advanced(バージョン4.0.9)デジタルソフトウェアを用いて処理した。
【0232】
皮下異種移植片への腫瘍内蓄積
メス無胸腺(ヌード)マウスの背側右側面にMatrigel(Collaborative Biomedical Products, Belford, MA、RPMI 1640培地で1:1希釈)に懸濁された1 x 107 Ramos細胞が注射された。腫瘍が適当なサイズに達したら、媒体(PBS)、018011、リツキサン(登録商標)、トラスツズマブ(アイソタイプ適合非結合対照として使用)、またはセツキシマブ(アイソタイプ適合非結合対照として使用)がマウスの尾静脈にiv投与された(0.2 ml/マウス)。腫瘍は解析のために24時間または96時間後に切り出された。腫瘍は剖検の時に秤量された。切り出された腫瘍は包埋培地(O.T.C.化合物、Tissue-Tek cat# 4583, Sakura Fintec Torrance, CA)中で即座に凍結され、-80℃で保管された。マイクロトーム(Tissue-Tek Cryo 2000)を用いて4ミクロンの凍結切片が切られた。切片は30分間風乾し、-80℃で保管された。その後、切片はIFAプロトコール(3.1)に従って記述されるようにして固定および処理された。
【0233】
腫瘍組織の消化およびフローサイトメトリー
腫瘍は切り出され、1〜2 mmの小片に細分化された。腫瘍の小片は、腫瘍片に2 mg/mlストック2 mlを37℃で30分添加することにより、4型コラゲナーゼ処置で消化された(Worthington, Lakewood, NJ)。細胞は滴定され、細胞を回収するために遠心され、新しい培養培地中に再懸濁された。018011、リツキサン(登録商標)、またはトラスツズマブによる分散した腫瘍細胞への結合は、実施例1に記述されるようにしてフローサイトメトリーで評価された。
【0234】
結果
皮下異種移植片への腫瘍内蓄積
WSU-DLCL2皮下異種移植片を持つマウス(腫瘍質量は130 mgから270 mgの間)に018011、リツキサン(登録商標)、またはトラスツズマブ(0.5 mg/マウスiv)が投与され、腫瘍は24時間後にIFAのために切り出された。018011の染色はリツキサン(登録商標)より広がる傾向があった。リツキサン(登録商標)の染色はより点状で強く、018011ほど広がっていなかった。切片には血管(CD31)の染色も行われた。いずれの薬剤も血管周囲には蓄積せず、腫瘍中に深くに広がることができた。マウスは0.2 mg/マウスのiv用量の018011およびリツキサン(登録商標)でも処置された。0.2 mg処置群から得られた腫瘍のIFAは、018011およびリツキサン(登録商標)の両方の染色を示したが(データは示さず)、いずれの薬剤も0.5 mg処置群で観察された染色ほど強くもなく広がってもいなかった。
【0235】
Ramos皮下腫瘍を持つマウスは(腫瘍質量は100 mgと400 mgの間)、018011、リツキサン(登録商標)、またはトラスツズマブ(すべてヒトIgG1)を用いて1 mg/マウスiv処置し、腫瘍は薬剤注射の24および96時間後に切り出した。018011の染色強度およびリツキサン(登録商標)の染色強度のいずれも、24時間でも96時間でも同じだった。WSU-DLCL2異種移植片を用いた観察と同様に、018011染色はリツキサン(登録商標)よりも広がっており、リツキサン(登録商標)の染色はより点状で強かった。トラスツズマブのバックグラウンド染色は最小限だった。IFAに使用された各異種移植片組織の一部は、切り出し時に消化され、その後、異種移植片に由来する細胞に結合した018011、リツキサン(登録商標)、またはトラスツズマブの存在がフローサイトメトリーで解析された(図26)。フローサイトメトリーのプロファイルでは、018011とリツキサン(登録商標)の両方が異種移植片に由来する細胞の細胞表面に結合して検出されることが示唆された。018011とリツキサン(登録商標)の結合量は類似していた。018011またはリツキサン(登録商標)のiv注射の96時間後に単離された異種移植片に由来する細胞は、同じ処置の24時間後に単離されたものよりもCD20結合剤のレベルが高かった。両薬剤のiv注射の2時間後に単離された異種移植片に由来する細胞に結合する018011またはリツキサン(登録商標)は検出されなかった(データは示さず)。各薬剤の用量が0.5 mg/マウスivに低下すると、018011の染色強度はリツキサン(登録商標)と比較して、2つの異なる試験においてわずかに増強していたが(投与後24時間に評価)、これはこの試験の条件下では定量できなかった。腫瘍質量は結果を得るために使用したマウスでは290 mgと420 mgの間で、結果を得るために使用したマウスでは820 mgと3000 mgの間だった。したがって、観察された結果は同等だった一方で腫瘍質量は2番目の試験でかなり大きかったので、腫瘍サイズはいずれの薬剤の腫瘍内蓄積にも有意に影響しなかったと考えられる。マウスがより低い用量のいずれかのCD20標的薬で処置された時は(0.05、0.1、または0.2 mg/マウスiv)、018011は検出不能だったが、0.1および0.2 mg用量群ではリツキサン(登録商標)の最低限の染色が観察された(データは示さず)。
【0236】
実施例6. 増殖阻害
増殖阻害アッセイ
生体染色色素MTS(Promega, Madison, WI)を用いてBCLのインビトロ増殖が評価された。この試験は、MTSが生存細胞の完全なミトコンドリアにより着色産物に変換されることに依存し、培養における生存細胞の信頼できる指標である。おおよその最初の播種密度を見積もるために、6つのBCLの各々について検量線(MTSと約2時間インキュベーションした後に得られる着色産物の光学密度に対する細胞数)が確立された。その後、細胞は、細胞株によってウェルあたり10,000から50,000細胞の密度で96マルチウェルディッシュに播種された。播種後、細胞を様々な濃度の018011、TRU-015、またはリツキサン(登録商標)に曝露し、96時間のインキュベーション期間後に各培養における生存細胞数が決定された。
【0237】
フローサイトメトリーで測定されるヨウ化プロピジウム(PI)排除を用いて、018011またはリツキサン(登録商標)の抗ヒトIgG Fc抗体との架橋の効果が評価された。細胞が傷害を受けた細胞の細胞膜はPIが細胞に入り核DNAを染色することを許すが、生存細胞の細胞膜はPIが透過できないため、PIは核DNAを染色しない。このために、徐々に濃度を上げた018011またはリツキサン(登録商標)を含む96ウェルのマイクロタイタープレートに3万のBCLが播種され、1または10μg/mlのヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson Immunoresearch)が添加され、37℃で24時間インキュベートされた。インキュベーション後に、PI排除によりフローサイトメトリーを用いて細胞の生存率が測定された。データ解析はCellQuestプログラム(Becton-Dickinson)を用いて行われた。
【0238】
ヒトBリンパ腫細胞に対する018011の増殖阻害効果
018011が様々なBリンパ腫細胞株の増殖を阻害する能力がインビトロで評価され、リツキサン(登録商標)およびTRU-015と比較された。徐々に濃度を上げた個々のCD20結合剤と共に6つのヒトCD20+ B細胞株が96時間培養され、その後、各々の培養における生存細胞数が数えられた。図27に示すように、018011、TRU-015もリツキサン(登録商標)も、試験した6つのBリンパ腫細胞株のうちの5つでは生物学的に意味のある増殖阻害を直接には引き起こさなかった。例外はSU-DHL4 B細胞株で、この増殖はTRU-015およびリツキサン(登録商標)によって用量依存的に阻害されたが、018011には有意に阻害されなかった。したがって、CD20結合剤のいずれによってもBCLの直接の阻害を保証するために、CD20の発現は必要であるが十分ではない。CD20の表面発現の程度以外の因子が、これらの抗CD20薬に対するBリンパ腫の感受性を支配している。Ramos細胞の表面上の018011またはリツキサン(登録商標)の、抗ヒトIgG Fcとの架橋は、両剤の細胞障害活性を増強した(図28)。
【0239】
すべての出版物、特許、および特許出願は、各々の個々の出版物、特許、および特許出願が特に個々に参照によりその全体が本明細書に組み入れられると示されたのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0240】
配列
イタリック体:リンカー配列
下線:CDR配列
















ヌクレオチド配列














【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームワーク領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒト化CD20結合分子であって、該フレームワーク領域がヒト免疫グロブリンフレームワーク領域であり、
(a)VHドメインアミノ酸配列が、SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされる重鎖CDR3のアミノ酸配列を含む;もしくは
(b)VLドメインアミノ酸配列が、SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされる軽鎖CDR3のアミノ酸配列を含む;もしくは
(c)ヒト化CD20結合分子が(a)のVHアミノ酸配列および(b)のVLアミノ酸配列を含む;もしくは
(d)ヒト化CD20結合分子が(a)のVHアミノ酸配列および(b)のVLアミノ酸配列を含み、該VHおよびVLが同じ参照配列中に見いだされる、
該ヒト化CD20結合分子、または該結合分子のCD20結合断片。
【請求項2】
さらに
(a)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVHドメインアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、VHドメインアミノ酸配列;または
(b)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVLドメインアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、VLドメインアミノ酸配列;または
(c)(a)のVHおよび(b)のVLの両方;または
(d)同じ参照配列中に見いだされる(a)のVHおよび(b)のVL
を含む、請求項1記載のヒト化CD20結合分子。
【請求項3】
さらに
(a)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVHドメインアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、VHドメインアミノ酸配列;または
(b)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVLドメインアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、VLドメインアミノ酸配列;または
(c)(a)のVHおよび(b)のVLの両方;または
(d)同じ参照配列中に見いだされる(a)のVHおよび(b)のVL
を含む、請求項1記載のヒト化CD20結合分子。
【請求項4】
さらに
(a)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVHドメインアミノ酸配列を含む、VHドメインアミノ酸配列;または
(b)SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVLドメインアミノ酸配列を含む、VLドメインアミノ酸配列;または
(c)(a)のVHおよび(b)のVLの両方;または
(d)同じ参照配列中に見いだされる(a)のVHおよび(b)のVL
を含む、請求項1記載のヒト化CD20結合分子。
【請求項5】
抗体またはその抗原結合断片である、請求項1〜4のいずれか一項記載のヒト化CD20結合分子。
【請求項6】
ヒト化小モジュラー免疫医薬(Small Modular Immunopharmaceutical)(SMIP)である、請求項1〜4のいずれか一項記載のヒト化CD20結合分子。
【請求項7】
CD20に特異的に結合する、ヒト化SMIP。
【請求項8】
SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むヒト化CD20結合分子と、同一のエピトープに結合する、競合する、または交差競合する、請求項7記載のヒト化SMIP。
【請求項9】
SEQ ID NO: 60に示されるアミノ酸配列を持つヒンジドメインを含む、請求項6〜8のいずれか一項記載のヒト化SMIP。
【請求項10】
SEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含むエフェクタードメインを含む、請求項9記載のヒト化SMIP。
【請求項11】
以下の性質のうち少なくとも1つを有する、請求項7記載のヒト化SMIP:
(a)ADCC活性;
(b)CDC活性;
(c)異種移植腫瘍の増殖を低下させる;
(d)インビボで播種性リンパ腫の進行を低下させる;
(e)末梢血、骨髄、およびリンパ節においてCD19+ B細胞を枯渇させる。
【請求項12】
前記性質のうち少なくとも3つを有する、請求項11記載のヒト化SMIP。
【請求項13】
検出可能に標識される、請求項1〜6のいずれか一項記載のCD20結合分子、または請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIP。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項記載のCD20結合分子または請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIPを含む、組成物。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項記載のCD20結合分子、請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIP、または請求項14記載の組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか一項記載のCD20結合分子もしくは抗原結合断片または請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIPをコードする、核酸。
【請求項17】
VHドメインをコードし、SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVHアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項16記載の核酸。
【請求項18】
SEQ ID NO: 118〜126のいずれかに記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項17記載の核酸。
【請求項19】
VLドメインをコードし、SEQ ID NO: 1〜59のいずれかに見いだされるVLアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項16記載の核酸。
【請求項20】
SEQ ID NO: 67〜116のいずれかに記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項19記載の核酸。
【請求項21】
発現制御配列に機能的に連結した、請求項16〜20のいずれか一項記載の核酸。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項記載の核酸を含むベクター。
【請求項23】
請求項16〜21のいずれか一項記載の核酸または請求項22のベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
請求項23記載の宿主細胞を培養し、ヒト化CD20結合分子または抗原結合断片を回収する段階を含む、ヒト化CD20結合分子またはその抗原結合断片を生産する方法。
【請求項25】
請求項13記載のCD20結合分子またはヒト化SMIPを試料に接触させ、結合を検出する段階を含む、被験体由来の生物学的試料中のCD20を検出する方法。
【請求項26】
請求項1〜6のいずれか一項記載のヒト化CD20結合分子、請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIP、または請求項14記載の組成物の治療的有効量を被験体に投与する段階を含む、異常なB細胞活性に関連する疾患を持つまたは持つことが疑われる被験体の処置方法。
【請求項27】
異常なB細胞活性に関連する疾患が、関節リウマチ、紅斑性狼瘡、または多発性硬化症である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜6のいずれか一項記載のヒト化CD20結合分子、請求項7〜12のいずれか一項記載のヒト化SMIP、または請求項14記載の組成物の治療的有効量を被験体に投与する段階を含む、必要とする被験体においてB細胞の数を低下させる方法。
【請求項29】
被験体が、関節リウマチ、紅斑性狼瘡、または多発性硬化症に罹患している、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図29−3】
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【図29−4】
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【公表番号】特表2010−531137(P2010−531137A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512214(P2010−512214)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/007464
【国際公開番号】WO2008/156713
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【出願人】(508024120)トルビオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】