説明

抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫の応答性を評価するための方法及び組成物

抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫の応答性を予測又は評価するために有用な方法及びキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年11月7日出願の米国特許仮出願番号第60/986277号の優先権を主張し、該出願はその全体を引用により本願発明に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、抗CD40抗体による治療へのB細胞リンパ腫の応答性を予測し、評価、評価を補助する分野に一般的に関する。
【発明の背景】
【0003】
CD40は腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのI型膜貫通タンパク質である。CD40は、B細胞の増殖及び分化、免疫グロブリン・イソタイプの切り替え、細胞の生存に含まれる重要な分子である。受容体シグナル伝達はCD40リガンド(CD40L又はCD154)にCD40が結合することによって開始され、それは活性型CD4+T細胞上に初期に発現する。
【0004】
正常細胞において、CD40は、造血前駆体、上皮及び内皮細胞、及び全ての抗原提示細胞(樹状細胞、活性化Bリンパ球、及び活性化単球)を含む、高い増殖能を有する細胞に発現される。CD40は、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を含む数種類のB細胞血液悪性腫瘍に、高度に発現される。B細胞悪性腫瘍におけるCD40発現の高い発現は、それを抗体に基づく癌治療のための魅力的な潜在的な腫瘍標的とする。また、CD40は、大多数の膀胱癌において、及び頭頚部癌、腎細胞癌、卵巣及び肺癌を含む他の充実性腫瘍のかなりのパーセントにおいて発現する。
【0005】
抗CD40抗体及びB細胞血液悪性腫瘍を治療するためのその使用は記載されている。米国特許第6946129号;6843989号;6838261号;WO2000/075348;US2002−0197256;WO2006/128103;及びWO2007/075326を参照されたい。ヒト化抗CD40抗体が、直接的信号伝達を介して、血液腫瘍細胞株のサブセットにおいてCD40陽性細胞の成長阻害とアポトーシスを誘発することが示されている。WO2006/128103;WO2007/075326。さらにまた、ヒト化抗CD40抗体は、免疫エフェクター機能を介して腫瘍細胞を殺し、それは抗体依存性細胞障害(ADCC)及び抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を含む。インビボでは、多発性骨髄腫(MM)と非ホジキンリンパ腫(NHL)の異種間移植モデルを使用して、抗CD40抗体は、腫瘍成長を抑制し、重症複合型免疫不全(SCID)マウスの生存を高める。いくつかのモデルのリツキシマブ(ジェネンテック社)に対する抗CD40抗体の比較は、抗CD40抗体の抗腫瘍活性が少なくともリツキシマブと同じくらいに効果的であることを明らかにした。
【0006】
シアトルジェネティクスは、2004年に、再発した難治性多発性骨髄腫(MM)患者において、単剤多回投与試験のヒト化抗CD40抗体による第1相臨床試験を始めた。続いて、再発した非ホジキンリンパ腫(NHL)及び慢性リンパ球性リンパ腫(CLL)患者において、第I相試験を開始した。これらの第1相試験の結果は、安定した疾患及び減少したMタンパク質を有するミエローマ患者、部分及び完全寛解のNHL患者、安定した疾患を有するCLL患者において抗腫瘍活性の証拠を示した。再発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫における抗CD40抗体の第II相試験は2006年12月に開始した。
【0007】
抗CD40抗体は増殖阻害及びCD40陽性細胞のアポトーシスを誘導することができること及び様々な種類のB細胞リンパ腫患者における抗腫瘍活性を有しうることが示されているが、全てのBリンパ腫細胞が細胞死を仲介する抗CD40抗体に対して感受性であるとは限らない。抗CD40抗体療法に対するB細胞リンパ腫患者の応答性に関する1又は複数の予測マーカーを同定することについての要求が残っている。
【0008】
特許出願及び刊行物を含む本願明細書における全ての引例は、それらの全部について引用したものとする。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、抗CD40抗体による治療に対するある種のB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測、評価又は評価の補助をするための方法及び組成物を提供する。
【0010】
一態様において、本発明は、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を評価又は評価の補助をするための方法であって、患者由来のB細胞リンパ腫試料における表2−4、6、7及び13の何れかの少なくとも1のマーカー遺伝子の測定された発現レベルを、対照標準レベルと比較することを含む方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測する方法又は治療/応答性を監視するための方法であって、患者由来のB細胞リンパ腫試料における表2−4、6、7及び13の何れかの少なくとも1のマーカー遺伝子の測定された発現レベルを、対照標準レベルと比較することを含む方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測、評価又は評価の補助をするための方法であって、
(a)前記患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料における1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを測定する工程であって、前記1又は複数のマーカー遺伝子がIFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7からなる群から選択される工程;
(b)工程(a)から前記1又は複数のマーカー遺伝子の測定された発現レベルに基づいて抗CD40抗体治療に対して、患者が応答しそうかどうかを予測する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、グループから少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13又は14のマーカー遺伝子の発現レベルが測定され、予測、評価又は評価の補助に使用される。いくつかの実施態様において、予測、評価または評価の補助は、1又は複数のマーカー遺伝子の測定された発現量を対照標準レベルと比較することによって決定される。いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に、増加または減少された腫瘍容積を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における対応するマーカー遺伝子の測定された発現量に基づいて決定される値または範囲である。
【0013】
別の態様において、本発明は、B細胞リンパ腫を有する患者のための個人用のゲノミクス・プロフィールを調製する方法であって、
(a)前記患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料における1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記1又は複数のマーカー遺伝子がIFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1、PUS7及びBCL6からなる群から選択される工程;および
(b)工程(a)から得られた1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルをまとめた報告書を作成する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施態様において、グループから少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14又は15のマーカー遺伝子の発現レベルが測定され、個人用ゲノミクス・プロフィールの報告書の作成のために使用される。いくつかの実施態様において、報告書は、患者用の抗CD40抗体治療の推奨事項を含む。いくつかの実施態様において、推奨事項は、マーカー遺伝子の測定された発現量を対照標準レベルと比較することによって決定される。いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に、増大または減少された腫瘍容積を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料中の対応するマーカー遺伝子の測定された発現量に基づいて決定される値または範囲である。
【0014】
別の態様において、本発明は、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測、評価又は評価の補助をするための方法であって、(a)前記患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料における1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを測定することであって、前記1又は複数のマーカー遺伝子がIFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7からなる群から選択される工程;(b)工程(a)のマーカー遺伝子の測定された発現レベルに基づいて感受性インデックス値(SI)を、以下の式:

によって計算する工程を含んで成り、
ここで、表13に示す正の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子及び負の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルが測定され;上式中、(i)βは測定される各マーカー遺伝子のための係数値であり;(ii)pは、測定されるマーカー遺伝子の数であり;(iii)χは、患者の試料の、測定された各マーカーの発現レベルについて、変換され正規化された発現レベルであり;及び(iv)μ及びσは、測定される各マーカー遺伝子のための平均と標準偏差であり;ここで、β及びμ及びσはBリンパ腫細胞を含む患者試料から決定される。いくつかの実施態様において、感受性インデックスのゼロと同等またはゼロを超える値は、患者が抗CD40抗体治療に応答する可能性が高いことを示し、感受性インデックスのゼロ未満の値は抗CD40抗体治療に反応する可能性が低いことを示す。いくつかの実施態様において、少なくとも3、少なくとも4か、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13又は14のマーカー遺伝子の発現レベルが測定され、感受性インデックス算出のために使用される。いくつかの実施態様において、IFITM1、RGS13、CD79B、CD22、BTG2、CD44、EPDR1及びUAP1の発現レベルが測定され、感受性インデックス算出のために使用される。
【0015】
別の態様において、本発明は、方法をB細胞リンパ腫を有する患者を治療する方法であって、有効量の抗CD40抗体を患者に投与し、患者のB細胞リンパ腫の応答が本願明細書に記載の方法によって評価することを含む方法を提供する。別の態様において、本発明は、B細胞リンパ腫を有する患者を治療する方法であって、
a)患者由来のB細胞リンパ腫試料における表2−4、6、7及び13の何れかの少なくとも1のマーカー遺伝子の測定された発現レベルを、対照標準レベルと比較し、患者のB細胞リンパ腫が抗CD40抗体治療に適しているかを評価すること;及び患者に抗CD40抗体の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、患者由来のB細胞リンパ腫試料における表8又は表9の1又は複数の対照標準遺伝子の測定された発現量である。
【0017】
いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、異なるB細胞リンパ腫試料におけるマーカー遺伝子の測定された発現量である。いくつかの実施態様において、異なるB細胞リンパ腫試料は、抗CD40抗体誘導細胞死に対して耐性があるBリンパ腫細胞を含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、マーカー遺伝子の測定された発現量および/または対照標準レベルは正規化される。
【0019】
いくつかの実施形態では、患者由来のB細胞リンパ腫における表2−4、6、7及び13の何れかの、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20遺伝子の測定された発現レベルが、1又は複数の対照標準レベルと比較される。
【0020】
いくつかの実施態様において、発現量は、mRNA発現(例えばリアルタイム定量的逆転写PCR(qRT−PCR))を検出することによって及び/又はタンパク質発現(例えば免疫組織化学(IHC))を検出することによって測定される。
【0021】
いくつかの実施態様において、測定されるマーカー遺伝子は1又は複数のCD40リガンド下方制御遺伝子(例えばVNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB及びPOU2AF1)を含む。いくつかの実施態様において、測定されるマーカー遺伝子は、B細胞受容体シグナル伝達経路の1又は複数の遺伝子を含む(例えばCD22、RGS13及びMEF2B)。
【0022】
いくつかの実施態様において、VNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB、POU2AF1、CD22、RGS13及びMEF2Bから成る群から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13又は14の遺伝子の、患者由来のB細胞リンパ腫試料における発現レベルが測定され、1又は複数の対照標準レベルと比較される。
【0023】
いくつかの実施態様において、VNN2とEPDR1、RGS13とEPDR1、CD22とEPDR1、LRRC8AとPRPSAP2、CD40とIGF1R、IFITM1とBTG2、SMN1とLMO2、PRKCAとYIPF3から成る群から選択される1又は複数の遺伝子ペアの発現レベルが、B細胞リンパ腫試料において比較される。いくつかの実施態様において、発現量は、B細胞リンパ腫試料において、1又は複数の遺伝子ペアVNN2とEPDR1、RGS13とEPDR1、CD22とEPDR1、LRRC8AとPRPSAP2、CD40とIGF1R、IFITM1とBTG2、SMN1とLMO2、PRKCAとYIPF3の間で比較され、遺伝子ペアのlog2−スケール発現のための符号付きT値の合計として算出した感受性インデックスを、抗CD40抗体治療に対するB細胞リンパ腫の応答を評価するために使用する。
【0024】
いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)であって、ろ胞性リンパ腫、再発ろ胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、脾臓周縁帯リンパ腫及びびまん性大B細胞リンパ腫を含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は、緩慢性リンパ腫、侵攻性リンパ腫及び高度侵攻性リンパ腫からなる群から選択される。
【0025】
更なる態様において、本発明は、表2−4、6、7及び13の何れかの少なくとも1つのマーカー遺伝子の測定された発現レベルのための試薬を含むキットを提供する。いくつかの実施態様において、キットは、表2−4、6、7及び13の何れかの少なくとも1つのマーカー遺伝子のPCRによる増幅のためのプライマーの1対を少なくとも含む。例えば、表10に記載のフォワード及びリバースプライマーが使用されてもよい。キットは、表8の対照標準遺伝子を増幅するための一対のプライマーを更に含んでもよい。キットは、増幅された遺伝子産物を検出するためのプローブを取り付けた表面、例えばマイクロアレイを更に含んでもよく、本発明は当該表面を意図して含むものである。いくつかの実施態様において、キットは、qRT−PCRによって、表2−4、6、7及び13の何れかの1つのマーカー遺伝子の発現レベルを検出するための1対のプライマー及びプローブを少なくとも含む。キットは、qRT−PCRによって、表8の対照標準レベルを検出するための1対のプライマー及びプローブを1更に含んでもよい。例えば、表10に示すプライマーとプローブ・セットを、qRT−PCRによって遺伝子の発現レベルを検出するために使用してもよい。いくつかの実施態様において、キットは、特にマーカー遺伝子によってコードされる1又は複数のタンパク質を認識する1又は複数の抗体を含む。キットは、本明細書に記載の方法の何れかを実施するための他の試薬及び/又は指示書を更に含んでも良い。
【0026】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の一、いくつか、又は複数は組合わせられて、本発明の他の実施形態を形成することが理解される。本発明のこれらの及び他の態様は、当業者にとって明確なものとなる。
【0027】
(詳細な説明)
本発明は、特定の遺伝子(例えば表2−4、6、7と13において示される遺伝子)が抗CD40誘導細胞死に対して耐性化しているBリンパ腫細胞と抗CD40抗体誘導細胞死に対して感受性があるBリンパ腫細胞との間で差別的に発現されるという発見に基づく。実施例2に記載されている臨床試験からのデータは、表13において示される14の遺伝子の発現量が抗CD40Ab.1治療への応答に高度に相関することを示す。感受性があるBリンパ腫細胞と耐性化しているBリンパ腫細胞との間で差異的に発現する遺伝子のいくつかは、CD40リガンドの下方制御経路遺伝子であり;いくつかは、B細胞受容体シグナル伝達経路にある。したがって、これらの差別的に発現された遺伝子の一つ以上の発現量が、抗CD40抗体を有する治療にB細胞リンパ腫を有する患者の反応の評価を評価するかまたは補助して、抗CD40抗体を有する治療に患者の反応を予測して、と、患者の治療/反応を監視するために使われることができる。
【0028】
A.一般的技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を使用し、それは当技術分野の範囲である。このような技術は、例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版 (Sambrook等, 1989); 「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait等, 1984); 「Animal Cell Culture」(R. I. Freshney等, 1987); 「Methods in Enzymology」 (Academic Press, Inc.); 「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubel等, 編, 1987, 及び定期的更新); 「PCR: The Polymerase Chain Reaction」, (Mullis等, 編, 1994)のような文献に十分に説明されている。
【0029】
本発明において使用されるプライマー、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、当分野で知られている標準技術を使用して生成することができる。
【0030】
他で定義しない限り、技術的及び科学的用語は、本発明の分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), 及びMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は本願に使用される用語の多くについて、当業者の一般的な手引きを提供する。
【0031】
B. 定義
本願明細書において使用する場合、「B細胞リンパ腫を有する患者」及び「B細胞リンパ腫患者」なる用語は、ある種のB細胞リンパ腫と診断されている患者又はある種のB細胞リンパ腫の可能性があると診断されている患者を指す。
【0032】
本出願中で用いられる「バイオマーカー」又は「マーカー」なる用語は一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、抗CD40抗体に基づく治療レジメに対する哺乳動物細胞又は組織の感受性を予測するものであるか、又は予測するために使用できる(又は予測を補助する)か、ある実施形態では個体の応答性を予測するために使用できる(又は予測を世除する)。
【0033】
本明細書中で用いる「試料」なる用語は、例えば物理学的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する対象とする被検体から得られる、又は対象とする被検体由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」なる表現及びこの変形は、特徴付けられている細胞実体及び/又は分子実体を含むことが予測される、又はそうであることが知られている対象の被検体から得た任意の試料を指す。
【0034】
「組織又は細胞の試料」は、被検体又は患者の組織から採取された類似の細胞の集まりを意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存されていた臓器や組織の試料又は生検又は吸引による固形組織;血液又はいずれかの血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液などの体液;被検体の妊娠期又は発生期の任意の時期の細胞であってもよい。また、組織試料は原発性又は培養した細胞又は細胞株であってもよい。場合によっては、組織又は細胞の試料は罹患組織/臓器から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝血物質、バッファー、固定液、栄養分、抗生物質など天然の組織にはもともと混在していない化合物を含んでもよい。
【0035】
本明細書中の組織試料の「切片」とは、組織試料の一部又は一片、例えば組織試料から切り出した組織又は細胞の一スライスを意味する。本発明が、組織試料の同じ切片が形態学的及び分子的レベルで分析されるか、又はタンパク質及び核酸の両方に関して分析される方法を含む場合に、組織試料の複数の切片が採取され、本発明に係る分析に供されてもよいと理解される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「B細胞リンパ腫試料」又は「Bリンパ腫細胞を含む試料」はB細胞リンパ腫の1タイプと診断された被験者又は患者由来のBリンパ腫細胞を含む組織又は細胞試料である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「評価を補助する」ための方法は、臨床的判断(例えば、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫の応答性)をすることを助ける方法を指し、確定的な評価に関して決定的であってもなくてもよい。
【0038】
「患者」又は「個体」は哺乳類であり、より好ましくはヒトである。哺乳類は、ヒト、霊長類、家畜、スポーツ動物、齧歯類及びペット類(例えば、イヌ及びネコ)を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用する場合、「対照標準値」は絶対的値;相対的値;上限及び/又は下限値を有する値;値の範囲;平均値(average value);中央値;平均値(mean value);又は特定の対照又は基線値に比較した値であってもよい。
【0040】
本明細書で用いる「アレイ」又は「マイクロアレイ」なる用語は、ポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)及び抗体のようなハイブリダイズ可能なアレイ・エレメントの基質上での規則正しい整列を指す。基質は、ガラススライドなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えでありうる。
【0041】
本明細書中で用いる「増幅」は通常、所望の配列の複数のコピーを生産する方法を指す。「複数のコピー」は少なくとも2のコピーを意味する。「コピー」が、鋳型配列に対して相補的な又は同一な完全な配列を必ずしも意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体、例えばデオキシイノシン、意図的配列変化(鋳型に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含んでなるプライマーにより導入された配列変化など)及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
【0042】
第一試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量が、第二試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量の少なくともおよそ1.5X、1.75X、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X又は10Xである場合に、第一試料における遺伝子又はバイオマーカーの発現/量は、第二試料におけるレベル「より多い」レベルである。発現レベル/量は、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピーを含め、当分野で公知の任意の好適な基準に基づいて決定されてもよい。発現レベル/量は、質的におよび/または量的に決定されてもよい。
【0043】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成応答によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後になされる修飾(一又は複数)、例えば標識との結合を含みうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体担体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有する有機キャップ基部分又はアミンで置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み得、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0044】
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
【0045】
「プライマー」は、一般に、標的配列とハイブリダイズすることによって、興味の試料中に存在する可能性がある標的に結合して、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、一般に遊離した3’−OH基を有する短い単鎖のポリヌクレオチドである。
「プライマーの対」は、特異的な標的遺伝子の部分を増幅するために使用することができる5’プライマー及び3’プライマーを指す。
【0046】
一般的に「3’」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド3’(下流)の領域又は位置を指す。一般的に「5’」なる用語は、同じポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの他の領域又は位置からポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド5’(上流)の領域又は位置を指す。
【0047】
「遺伝子増幅」なる語句は、遺伝子又は遺伝子断片の複数のコピーが特定の細胞又は細胞系統において形成されるプロセスを意味する。複製された領域(増幅されたDNAのストレッチ)は、しばしば「アンプリコン」と称される。通常は、生成されるメッセンジャーRNA(mRNA)の量、即ち遺伝子発現レベルも、発現された特定遺伝子の作成されたコピー数に比例して増加する。
【0048】
「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む検出する任意の手段を含む。
【0049】
本明細書中で用いる「予測」なる用語は、患者が薬剤又は一連の薬剤に対して有利又は不利に応答する可能性を意味する。一実施態様では、予測はその応答の程度に関する。一実施態様では、予測は、例えば特定の治療的薬剤による治療、及び疾患再発のない一定期間の後に患者が生存しているか改善しているかどうか、及び/又はその可能性に関する。本発明の予測方法を用いて任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、ステロイド治療などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうか、又は治療投薬計画の後に患者が長期に生存しているかどうかを予測する際の有用なツールである。
【0050】
本明細書中で用いる「長期の」生存なる用語は、治療的治療の後、少なくとも1年、5年、8年又は10年の生存を指す。
【0051】
「患者応答」は、限定するものではないが以下のものを含む患者に利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価できる。(1) 緩徐化及び完全な停止を含む、ある程度の疾患進行の阻害、(2) 疾患発症及び/又は症状の数の減少、(3) 損傷サイズの減少、(4) 近接する末梢器官及び/又は組織への疾患細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(5) 疾患の拡がりの阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止)、(6) 疾患と関係する一又は複数の症状の、ある程度の軽減、(7) 治療後の疾患がない期間の増加、及び/又は(9) 治療後の特定の時点での死亡率の減少。
【0052】
「抗体」なる用語は広義な意味で使われ、モノクローナル抗体(例えば完全長モノクローナル抗体)、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性又は機能をしめす限り抗体断片を特異的にカバーする。
【0053】
「抗体断片」は完全長抗体の部分、通常はその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0054】
「Fv」は、完全な抗原−認識及び−結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0055】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団由来の抗体を称する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一であるか及び/又は同じエピトープに結合する。そのようなモノクローナル抗体は、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を典型的には含み、標的結合ポリペプチド配列は複数のポリペプチド配列由来のポリペプチド配列を結合する単一の標的の選択を含む方法によって得られる。例えば、選択方法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのようなプールの様な複数のプールからの単一のクローンの選択であってもよい。選択された標的結合配列は、例えば標的の親和性を改良するために、標的結合配列をヒト化するために、細胞培養における生産を改良するために、インビボの免疫原性を減じるために、多特異性抗体を作成するために更に変更できること、変更された標的結合配列を含む抗体は同様に本発明のモノクローナル抗体であることを理解するにちがいない。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を基本的に含むポリクローナル抗体調製物とは反対に、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例、Kohler等, Nature, 256:495 (1975); Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981)、組換えDNA法(参照、例えば米国特許第4,816,567号)、ファージディスプレイ技術(参照、例えば Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991); Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597(1991); Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004); Lee等, J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004); Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004); 及びLee等、 J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004))、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン配列遺伝子座又は遺伝子の部分又は全てを有する動物におけるヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(参照、例えば WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993); Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993); 米国特許出願第5,545,806号; 5,569,825号; 5,591,669号(全てGenPharm); 5,545,807号; WO1997/17852;米国特許出願第5,545,807号;5,545,806号; 5,569,825号; 5,625,126号; 5,633,425号;及び5,661,016号; Marks等, Bio/Technology, 10: 779-783 (1992); Lonberg等, Nature, 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996);及びLonbergとHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995))を含む様々な技術によって作ることができる。「モノクローナル抗体」は、また、Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol.Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することができる。
【0056】
本明細書のモノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体を含む。「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。本明細書で使用する場合、ヒト化抗体はキメラ抗体のサブセットである。
【0057】
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、FR領域は結合親和性を改良する1又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。FRのこれらのアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖で6以下であり、L鎖で3以下である。ヒト化抗体は、場合により免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0058】
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、及び/又はヒト抗体をつくるための任意の公知技術を使用して作成されたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。
【0059】
「親和性成熟」抗体は、その1又は複数のCDR/HVRに1又は複数の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を改良するものと成っている。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の又はピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier他、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0060】
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化により生成される免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列のFc領域または変異体Fc領域でありうる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界はまちまちであるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、約Cys226または約Pro230に位置するアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで延びていると定義される。免疫グロブリンのFc領域は、通常、2つの定常ドメイン、1つのCH2ドメインおよび1つのCH3ドメインを含み、場合によってはCH4ドメインを含む。ここで使用する「Fc領域鎖」という表現は、Fc領域の2つのポリペプチド鎖のうちの1つを意味する。
【0061】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0062】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原−担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は同第5821337号又はPresta米国特許第6737056号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代替として、又は付加的に、興味の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, PNAS(USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0063】
「治療すること」または「処置」または「寛解」は、治療的処置を表し、この目的は標的とした病態または疾患を治癒しない場合に衰退(減少)させる、又は症状の再発を予防することである。本発明の方法に従って本発明のヒト化CD40結合抗体の治療的有効量を投与した後、患者のB細胞悪性腫瘍がうまく「治療」されれば、患者は特定の疾患の1または複数の兆候および症状が観察可能におよび/または測定可能に減少または消失する。例えば、癌細胞数の有意な減少または癌細胞の消失;腫瘍の大きさの減少;腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);ある程度の腫瘍成長の阻害;緩解期の延長、および/または特定の癌が関与する一またはそれ以上の症状のある程度の除去;罹患率および死亡率の減少、および生活の質の改善がある。更に疾患の兆候または症状の減弱は患者が感じ得るものである。癌のすべての兆候の消失と定義される完全応答、腫瘍の大きさが好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上減少する部分的な応答を、治療により達成しできる。更に、患者の疾患が安定しているならば、患者も治療されたと考える。ある基準では、発明の抗体により末梢血のB細胞が95%より多く枯渇され、B細胞は基線の25%に戻る。好ましい実施態様では、抗CD40抗体による治療は、治療後3か月、好ましくは6か月、より好ましくは1年、さらにより好ましくは2年又は2年以上に癌患者に癌の進行がないほどに有効である。疾患の改善および治療の成功を評価するこれらのパラメーターは医師などの適切な当業者に知られた常法によって容易に測定可能である。
【0064】
ここで使用される「非ホジキンリンパ腫」又は「NHL」という用語は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を意味する。ホジキンリンパ腫は、ホジキンリンパ腫にリード・シュテルンベルク細胞が存在し、非ホジキンリンパ腫に上記細胞が存在しない点で非ホジキンリンパ腫とは一般に区別できる。
【0065】
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。
治療剤の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び個体の体重、並びに個体に所望の応答を誘発する抗体の能力のような因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は治療剤の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の患者に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0066】
「ハウスキーピング遺伝子」なる用語は、活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードする一群の遺伝子を指す。これらの遺伝子は一般的に、すべての細胞型において同じように発現される。
【0067】
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。遺伝子発現分析又はプロトコルの実施態様に関し、遺伝子発現分析又はプロトコルの結果を用いて、特定の治療投薬計画を実行するかどうかを決定してもよい。
【0068】
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブ又は抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0069】
本明細書で用いられる「a」、「an」および「the」には、明らかな記載がない限り単数形又は複数形を意味しうる(すなわち、1又は複数を意味する)。
【0070】
C.本発明の方法
本発明は、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答を評価するか又は応答を補助する方法を提供する。更に、本発明はB細胞リンパ腫を有する患者における抗CD40抗体治療への応答を予測するか又は治療/応答を監視する方法提供する。本発明は、抗CD40抗体による治療に適しているB細胞リンパ腫を有する患者を選択し、抗CD40抗体治療によってフォーローアップする方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料において表2−4、6、7及び13の何れかの1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを決定すること;及び前記1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルの測定値に基づいて抗CD40抗体治療に対する患者の応答を予測するか、評価するかまたは評価の補助することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料において表2−4、6、7及び13の何れかの1又は複数のマーカー遺伝子の測定された発現レベルをそれぞれのマーカー遺伝子の対照標準レベルと比較することを含む。
【0071】
本発明の方法は、抗CD40抗体による治療のためのB細胞リンパ腫を有する患者を同定するために臨床医にとって有用であり、抗CD40抗体治療の展開経過の間の患者選択、特定の治療レジメにより個々の患者を治療する場合の成功の可能性を予測すること、疾患の進行を評価し監視すること、治療の有効性を監視すること、及び個々の患者の予後を推定することを補助する。これらの実施態様の何れもが本発明に含まれる。
【0072】
いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)であって、ろ胞性リンパ腫、再発ろ胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、脾臓周縁帯リンパ腫及びびまん性大B細胞リンパ腫を含むが、これに限定されるものではない。
【0073】
いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は緩慢性である。いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は侵攻性である。いくつかの実施態様において、B細胞リンパ腫は高度侵攻性である。いくつかの実施態様において、緩慢性B細胞リンパ腫は、ろ胞性リンパ腫、周縁帯リンパ腫または小リンパ球性リンパ腫である。いくつかの実施態様において、緩慢性B細胞リンパ腫はろ胞性リンパ腫である。
【0074】
(マーカー遺伝子)
対照標準レベルに比較したB細胞リンパ腫試料における1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルは、抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫の応答を予測するか、評価するか又は評価の補助するために本発明の方法において使用することができる。
【0075】
抗CD40抗体耐性NHL細胞株と比較して、感受性NHL細胞株において差異的に発現する遺伝子を表2−4、6及び7に示す。「抗CD40抗体感受性細胞」は、実施例1において記載するように、試験される抗CD40抗体によって細胞生存度の減少において0.4μg/ml未満のIC25値を有する細胞である。「抗CD40耐性細胞」は、実施例1において試験されるように細胞生存度の減少において1μg/mlより大きいIC25値を有する細胞である。表2−4、6及び7の遺伝子のいくつかは、CD40リガンド下方制御経路にあり(例えば、VNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB及びPOU2AF1);表のいくつかの遺伝子は、B細胞受容体シグナル伝達経路(例えば、CD22、RGS13及びMEF2B)にある。更に、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1と及びPUS7(表13)の発現レベルの関連は、実施例2に記載されている臨床試験によって確認された。これらの遺伝子の1又は複数の発現レベルが、本発明の方法において使われる。いくつかの実施態様において、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、又は少なくとも30の遺伝子の発現レベルが、本発明の方法で使われる。
【0076】
いくつかの実施態様において、VNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB、POU2AF1、CD22、RGS13及びMEF2Bからなる群から選択される1又は複数の遺伝子の発現レベルが、測定および/または使用される。 いくつかの実施態様において、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7からなる群から選択される1又は複数の遺伝子の発現レベルが、測定および/または使用される。いくつかの実施態様において、これらの遺伝子の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13または14の発現レベルが、測定および/または使用される。いくつかの実施態様において、CD22、CD40とBCL6の発現量が、測定されておよび/または使われる。いくつかの実施態様において、CD40、RGS13、CD22、BTG2、IGF1R及びCD44の発現量が、測定および/または使用される。いくつかの実施態様において、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7の発現レベルが、測定および/または使用される。いくつかの実施態様において、表7又は表13の遺伝子の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または15の発現レベルが、測定および/または使用される。
【0077】
表2−4、6、7及び13に特定される遺伝子(配列を含む)は当分野で知られているものである。例えば、ヒト遺伝子のGenBank受託番号の例は、VNN2 (NM_004665; NM_078488; AJ132100; D89974; BC064641; CR609799; BC126145; BC126147; 及び AB026705); RGS13 (NM_002927; NM_144766; BT006929; BC056866; AY562947; CR536532; CR610389; CR599001; BC016667; AF493935; BC036950; 及び AF030107); CD22 (NM_001771; AK026467; BC109306; BC109307; AK225694; AK225625; X52785; 及び X59350); LRRC8A (AY143166; BC051322; AK123611; AY358286; NM_019594; XM_026998; AK001199; AB037858; CR619692; CR619448; AK024649; BC000775; AK027495; 及び AK074723); CD40 (NM_001250; NM_152854; BC064518; AY225405; CR619622; CR608994; CR605787; AB209660; AK222896; AJ300189; BT019901; 及びBC012419); IFITM1 ( NM_003641; BC000897; BT007173; BT009859; CR456894; CR541874; CR604902; X57351; X84958; NM_006435; BC009696; X02490;及びJ04164); SMN1 (NM_000344; BC062723; CR611445; CR593735; BC000908; NM_022874; BC015308; 及びU18423); PRKCA (NM_002737; AB209475; BC109274; BC109273; AF035594; BC053321; BX648954; AK125425; BC062759; BC071767; BC103691; BC101403; BC107592; AY633609; BC122530; BC015855; AF086287; AF035595; M22199;及びX52479); EPDR1 (DQ914439; AY027862; NM_017549; AJ250475; AF202051; CR624676; CR596656; NM_016616; BC000686; BC018299; AF305596;及びBC036816); PRPSAP2 (NM_002767; AB007851; BX648850; AK126398; CR457082; BC101672; BC101670;及びBC106050); IGF1R (NM_000875; NM_015883; AY429545; CR624013; BC078157; BC088377; BC107089; BC111046; BC113610; BC113612; BC010607; X04434 M24599;及びU09023); BTG2 (NM_006763; CR606002; CR604962; CR595352; CR591042; BC105948; BC105949; U72649;及びY09943); LMO2 (BC042426; NM_005574; BC073973; AK127915; CR625714; CR614368; CR604507; AF257211; BC034041; BC035607;及びX61118); YIPF3 (AL050274; AK000946; CR533541; CR623137; CR622890; CR622532; CR621993; CR619816; CR619437; CR619054; CR618212; CR616987; CR616384; CR615623; CR615153; CR615118; CR612415; CR611748; CR611260; CR610983; CR610470; CR607768; CR606024; CR603408; CR603202; CR602267; CR601987; CR599615; CR598162; CR597677; CR596581; CR596249; CR595236; CR592266; CR590752; CR590349; NM_015388; AK021433; AK021655; AK022757; BC019297;及びAF162672);及びBCL6 ( NM_001706; NM_138931; BX649185; U00115; BC142705; BC146796; BC150184; AL713713; AK090890; AL832990; 及びZ21943)である。
【0078】
表2−4、6、7及び13に引用した遺伝子のいくつかの核酸配列は図6(6−1から6−35)に示す。
【0079】
(対照標準レベル)
B細胞リンパ腫試料における1又は複数のマーカー遺伝子の測定された発現量は、比較対照レベルと比較される。いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、異なる種類のB細胞リンパ腫の間で、例えば抗CD40抗体に感受性があるB細胞リンパ腫と抗CD40抗体に対して耐性があるB細胞リンパ腫との間において変化しない発現レベルの遺伝子の発現レベルである。いくつかの実施態様において、表8に示す1又は複数のハウスキーピング遺伝子の発現レベルが、対照標準レベルとして使用される。いくつかの実施態様において、表9に示す1又は複数のハウスキーピング遺伝子の発現レベルが、対照標準レベルとして使用される。
【0080】
いくつかの実施態様において、マーカー遺伝子の測定された発現量は、対照標準レベルを使用して正規化される。いくつかの実施態様において、マーカー遺伝子の正規化発現レベルは、マーカー遺伝子と対照標準発現レベルの比率として、又はマーカー遺伝子と対照標準発現レベルとの間の差異として、それぞれオリジナル又は対数スケールで算出される。
【0081】
表8及び表9の対照標準遺伝子は、表4のマーカー遺伝子に対して特異的正規化相対物として選択された。対照標準遺伝子は、B細胞リンパ腫試料における高い平均発現及び低分散について選択された。加えて、対照標準遺伝子は、生物学的に異なった細胞株の発現測定値間の分散に比較して、個々の細胞株の繰り返された発現測定値間の類似分散を有するように選択された。加えて、対照標準遺伝子は、表4の1又は複数のマーカーと低い統計的関連性を有するように選択された。
【0082】
いくつかの実施態様において、対照標準レベルは、異なるB細胞リンパ腫試料におけるマーカー遺伝子の測定された発現レベルである。いくつかの実施態様において、異なるB細胞リンパ腫試料は、抗CD40抗体誘導細胞死に対して耐性があるBリンパ腫細胞を含む。
【0083】
いくつかの実施態様において、対照標準レベルは抗CD40抗体治療後に増加した腫瘍量を有する患者および/または抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料の対応するマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定される。いくつかの実施態様において、対照標準レベル決定のための患者由来の試料は、抗CD40抗体治療への応答が予測または評価される患者由来の試料と同じ種類のBリンパ腫細胞を含む。いくつかの実施態様において、同じ方法(例えばqRT−PCR)および/または試薬(例えばプライマーとプローブ)が、試料のマーカー遺伝子の発現レベルを測定するために、及び対照標準試料の対応するマーカー遺伝子の発現レベルを測定するために用いられる。







【0084】
(発現レベルの測定)
本願明細書において開示される方法は、対照標準レベルに相対して、リンパ腫試料(例えばB細胞リンパ腫試料)における1又は複数のこれらのマーカー遺伝子の発現レベルを調べる方法を提供する。方法及びアッセイは、表2−4、6、7及び13の何れかにリスト化した1又は複数のもののようなマーカー遺伝子の発現を調べることを含む。発現レベルは、mRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルで測定されることができる。
【0085】
本発明は、哺乳類の組織または細胞試料(例えばB細胞リンパ腫を伴う細胞および/または組織)から発現レベルを測定する方法を提供する。例えば、患者試料を得るために、H&E染色が実施され、組織を大きく切り出すために腫瘍含有を多くするガイドとして使われる。試料は、外科的切除、吸引または生検を含むが、これに限定されるものではなく、公知技術の種々の手順によって得られることができる。試料は新しくてもよいし冷凍されていてもよい。いくつかの実施態様において、試料は、固定されパラフィン等に包埋される。方法において、哺乳類の組織または細胞試料を得て、1又は複数のバイオマーカーの発現のために調べられる。本方法は、mRNA発現を検出するアッセイ、酵素活性の存在を検出する酵素性アッセイ、及び免疫組織化学アッセイを含む種々なアッセイ形式において実行されることができる。前記組織または細胞のこのようなバイオマーカーの発現の測定は、このような組織または細胞は抗CD40抗体による治療に対して感受性/応答性がよいことを予測する。
【0086】
後述するように、試料におけるさまざまなバイオマーカーの発現は、多くの方法によって分析されることができるものであり、その多くは従来技術であって当業者に理解されるものであり、インサイツ・ハイブリダイゼーション、ノザン解析、mRNAのPCR解析、免疫組織化学的及び/又はウエスタン解析、定量的な血液に基づくアッセイ(例えば、血清ELISA)(例えば、タンパク質発現のレベルを調べるために)、及び/又は生化学的酵素活性アッセイを含むがこれに限定されるものではない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えばAusubel等編(1995)Current Protocols In Molecular Biology, ユニット2(ノザンブロッテイング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR)にある。試料の特定のバイオマーカー(例えば表2−4、6、7及び13にリストされるもの)の検出に関する下のプロトコルは、例示を目的として提供する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の方法には、更に、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞の試料中の表2−4、6、7及び13の何れかに挙げた遺伝子のmRNAなどのmRNAの存在及び/又は発現を調べるプロトコルが含まれる。いくつかの実施形態において、試料の様々なバイオマーカーの発現は、組織又は細胞の試料中の表2−4、6、7及び13の何れかのmRNAなどのmRNAを調べるか又は検出するマイクロアレイ技術によって分析することができる。核酸マイクロアレイを用いて、試験およびコントロールの組織試料から得た試験およびコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列および各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において発現されうる選択した遺伝子を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術および演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開第01/75166号を参照(例えば米国特許第5700637号、同第5445934号および同第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラスまたは他の基質上で染みつけられるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色およびアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイおよびオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70mer)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0088】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25mer)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターンおよびシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンドおよび非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値または特異的強度の値を決定する。プローブは、GenBankおよび他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコールを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイに結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄および染色プロトコールを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0089】
いくつかの実施態様において、試料の様々なバイオマーカーの発現は遺伝子の欠損又は遺伝子の増幅を調べることによって評価してもよい。遺伝子の欠損又は増幅は、当分野で公知の様々なプロトコルの何れか一つ、例えば、慣例的なサザンブロット、mRNAの転写を定量化するノザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201 5205 (1980))、ドットブロット(DNA分析)、又は適切に標識したプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション(例えばFISH)、適切に標識したプローブを用いた細胞遺伝学的方法又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって、測定できる。例として、これらの方法を用いて、表2−4、6、7及び13の何れかに挙げた遺伝子の欠損又は増幅を検出してもよい。
【0090】
いくつかの実施態様において、試料の様々なバイオマーカーの発現は相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識化リポプローブ、ノザンブロット及び関連技術)によって及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、表2−4、6、7及び13の何れかに挙げた1又は複数の遺伝子に特異的なプライマーのような相補的プライマーを使用するRT−PCRおよび、他の増幅型の検出法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
【0091】
哺乳動物由来の組織又は細胞の試料は、例えばノーザン、ドットブロットまたはPCR分析を用いて、表2−4、6、7及び13の何れかに挙げた遺伝子のmRNAについて都合よくアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、1又は複数のバイオマーカーの発現はRT-PCRによってアッセイされてもよい。いくつかの実施形態において、RT-PCRは定量的RT-PCR(qRT-PCR)であってもよい。いくつかの実施形態において、RT-PCRはリアルタイムRT-PCRである。いくつかの実施形態において、RT-PCRは定量的リアルタイムRT-PCRである。定量的PCRアッセイのようなRT-PCRアッセイは当分野でよく知られている。本発明の例示的な実施形態において、生物学的試料においてmRNAを検出するための方法は、少なくとも1のプライマーを使用する逆転写によって試料からcDNAを産生すること;cDNAを増幅し、センス及びアンチセンスプライマーとしてポリヌクレオチドを使用して、それについてcDNAを産生すること;及び興味の増幅されたcDNAの存在を検出することを含む。いくつかの実施態様において、リアルタイムRT−PCRは定量的RT−PCRであってもよい。いくつかの実施態様において、リアルタイムRT−PCRは、TaqMan試薬(アプライドバイオシステムズ)を使用して行うことができる。いくつかの実施態様において、リアルタイムRT−PCRは、TaqMan試薬(アプライドバイオシステムズ)及びABIプリズム7700配列検出システム(アプライドバイオシステムズ)を使用して行うことができる。リアルタイムRT−PCRは、Taqポリメラーゼが5’−3;エキソヌクレアーゼ活性を有するという原理と、切断に応じてのみ蛍光シグナルを放出するという問題があった二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドを、蛍光共鳴エネルギーの原理に基づいて組合わせる。例えば、Overbergh, L.等, J. Biomolecular Techniques 14(1): 33-43 (2003)を参照。加えて、このような方法は、生物試料の表2−4、6,7及び13の何れかに挙げた遺伝子のmRNAのようなmRNAのレベルを決定することを可能にする1又は複数の工程を含むことができる(例えば、アクチン・ファミリーの一員のような「ハウスキーピング」遺伝子及び/又は表8又は表9に挙げた1又は複数の遺伝子の比較対照mRNA配列を同時にレベルを調べることによって)。qRT−PCRを行うために使用できるプライマーとプローブの例は、表10に提供される。
【0092】
いくつか実施態様において、試料における表2−4、6、7及び13の何れかに挙げた遺伝子によってコードされたタンパク質の発現は、免疫組織化学及び染色プロトコルを用いて試験される。組織切片の免疫組織化学染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法または蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。
【0093】
試料の調整では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織または細胞試料を用いてもよい。試料の例として、組織生検、血液、肺吸引、痰、リンパ液などが含まれるが、これらに限定するものではない。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引または生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。
【0094】
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」第3版(1960) Lee G. Luna, HT (ASCP)編集, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel編集、Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさおよび用いる固定液に応じて固定の時間を決定することも理解するであろう。例として、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液またはパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
【0095】
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィンまたは他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」を参照)。使用されうるパラフィンの例として、パラプラスト、BroloidおよびTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライドおよび/またはポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
【0096】
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレンおよび段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0097】
いくつかの実施態様において、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色および/または蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイおよび間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えば表1−4、6及び7に挙げた1又は複数の遺伝子によってコードされたタンパク質又はその断片)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体または蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと応答するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
【0098】
一般的に、免疫組織化学に使用する一次および/または二次抗体は、検出可能な部分に標識される。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、Hおよび131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)コロイド金粒子。
(c)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体および/または上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4275149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、またはエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0099】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'−テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼを有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
【0100】
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4275149号及び同第4318980号を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0101】
上記の試料調整手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
【0102】
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3’−ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
【0103】
いくつかの実施形態において、発現を検出するためのIHC分析に用いられる抗体は、表2−4、6及び7の何れかにリストした遺伝子によってコードされた1又は複数のタンパク質のような1又は複数の興味のバイオマーカーに主に結合するように生成された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。抗体は様々な販売元からなど、当分野で容易に入手可能であり、また、当分野で公知の慣例的な技術を用いて生成されうる。
【0104】
調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。一例として、染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい。

【0105】
代替的な方法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で前記バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は多くの方法、例えば血漿又は血清を含む多種多様な組織および試料を検定するためのウェスタンブロッティングおよびELISA手順によって行ってもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4016043号、同第4424279号および同第4018653号参照。これらには、単一の部位および2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
【0106】
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0107】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料および標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、2〜40分又はより便利であるならば一晩)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
【0108】
いくつかの実施形態において、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているかまたは標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量およびレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体または放射性核種含有分子(すなわち放射性同位体)および化学発光分子である。
【0109】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法およびEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子または生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、組織又は細胞試料の選択されたバイオマーカーの発現は、機能的又は活性に基づくアッセイにより調べることができる。例えば、バイオーマーカーが酵素ならば、組織又は細胞試料の所与の酵素活性の存在を測定又は検出する公知のアッセイを実施してもよい。
【0111】
1又は複数のバイオマーカーの発現レベルを評価する上記の方法の何れかにおいて、標的分子を含む試料は公知技術の方法によって得られることができ、それは興味の疾患の特定の種類及び位置について適切なものである。組織生検は、疾患組織の標本片を得るために多くの場合用いられる。あるいは、細胞は、興味の疾患細胞を含むことが知られているか又は考えられている組織/液体の形態で間接的に得ることができる。例えば、疾患病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は、痰、肋膜体液又は血液から入手してもよい。遺伝子または遺伝子産物は、疾患組織から又は他の体試料(例えば尿、痰または血清)から検出できる。疾患試料中の標的遺伝子ないし遺伝子産物の検出のための上記に記載の同じ技術を他の体試料に応用できる。このような体試料のスクリーニングによって、これらの疾患の診断を簡単かつ迅速に行うことができる。加えて、治療の経過は、標的遺伝子ないし遺伝子産物についてこのような体試料を試験することによって、より容易に監視することができる。
【0112】
疾患細胞の組織調製物を濃縮する方法は公知技術である。例えば、組織は、パラフィン切片又はクリオスタット切片から単離してもよい。また、興味の細胞は、フローサイトメトリー又はレーザー捕獲顕微解剖によって正常細胞から切り離してもよい。正常細胞から疾患を分離するためのこれら並びに他の技術は公知技術である。疾患組織が正常細胞と非常に混濁している場合、特性遺伝子発現プロフィールの検出はより難しいが、混入及び/又は偽陽性/陰性の結果を最小化する技術が公知である。そのいくつかを以下に記述する。例えば、試料は、対象とする疾患細胞と結合するが対応する正常細胞とは結合しない、又はその逆も可であることがわかっているバイオマーカー(突然変異を含む)の存在について評価してもよい。
【0113】
組織または細胞試料が、組織または細胞試料が抗CD40抗体による治療に感受性があることを示しているバイオマーカの1又は複数を発現するという判定の後で、抗CD40抗体の有効量を、哺乳類を苦しめているB細胞リンパ腫のような疾患を治療するために、ヒトのような哺乳類に投与できることが考えられる。本願明細書に記載のさまざまな病的状態の哺乳類、例えばヒトの診断は、熟練した臨床医によってなされることができる。
【0114】
(発現レベルを比較し、抗CD40抗体治療に対するB細胞リンパ腫の応答性を予測、評価又は評価の補助をすること)
本願明細書に記載の方法は、マーカー遺伝子の測定された発現レベルと対照標準レベルとを比較する手順を含む。対照標準レベルは、マーカー遺伝子と異なる対照標準遺伝子の測定された発現レベル又は異なる試料の同じマーカー遺伝子の測定された発現レベルであってもよい。
【0115】
いくつかの実施態様において、患者由来のB細胞リンパ腫試料のマーカー遺伝子の測定された発現レベルは、試料の対照標準遺伝子の測定された発現レベルと比較される。いくつかの実施態様において、対照標準遺伝子の発現レベルは、抗CD40抗体感受性及び耐性細胞(例えば、表8または表9の遺伝子)を含む様々な種類のBリンパ腫細胞の中で実質的に変化しない。いくつかの実施態様において、対照標準の測定された発現レベルに対するマーカー遺伝子の測定された発現レベルの比率が算出され、比率が抗CD抗体治療に対するB細胞リンパ腫の応答を評価するためか又は評価の補助のために使用できる。
【0116】
いくつかの実施態様において、患者由来のB細胞リンパ腫試料のマーカー遺伝子の測定された発現レベルは、対照標準試料のマーカー遺伝子の測定された発現レベルと比較される。いくつかの実施態様において、対照標準試料は、抗CD40抗体に耐性があるか又は応答しないBリンパ腫細胞を含む。例えば、比較は、患者由来の試料及び対照標準試料におけるマーカー遺伝子の測定された発現レベル間の相違の大きさを決定するために行われる(例えば、患者由来の試料と対照標準試料のマーカー遺伝子の発現レベル間の倍またはパーセンテージ相違を比較する)。抗CD40抗体に対して耐性があるか又は応答しないBリンパ腫細胞を含む対照標準試料におけるマーカー遺伝子の発現と比較して、患者由来の試料におけるマーカー遺伝子の増加又は減少した発現は、抗CD40抗体による治療に対してB細胞リンパ腫の応答性を示唆するか又は示す。耐性細胞と比較して、抗CD40抗体感受性細胞における増加又は減少した発現を有するマーカー遺伝子について記載する表4を参照されたい。例えば、VNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB、POU2AF1、CD22、RGS13及びMEF2Bは、耐性細胞と比較して、抗CD40抗体感受性細胞において通常過剰発現する。いくつかの実施形態では、患者の由来の試料の発現レベルの増加の倍数は、対照標準試料の発現レベルの少なくとも約1.5X、1.75X、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X又は10Xの何れかである。いくつかの実施態様では、患者の由来の試料の発現レベルの減少の倍数は、対照標準試料の発現レベルの少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8の何れかである。
【0117】
いくつかの実施態様では、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7からなる群から選択される1又は複数のマーカー遺伝子の発現量は、対照標準レベルと比較される。
【0118】
いくつかの実施態様では、対照標準レベルと比較した1又は複数のIFITM1、CD79B、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1及びPUS7の増大した発現レベルは、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答しそうにないことを示唆する。いくつかの実施態様では、対照標準レベルは、アゴニスト抗CD40抗体治療後に増大した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルによって決定される値または範囲である。
【0119】
いくつかの実施態様では、対照標準レベルと比較した1又は複数のCD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD22、BTG2及びUAP1の増大した発現は、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答しそうなことを示す。いくつかの実施態様では、対照標準レベルは、アゴニスト抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルによって決定される値または範囲である。
【0120】
いくつかの実施態様では、発現レベルBCL6が測定されて、対照標準レベルと比較される。BCL6の発現レベルが、抗CD40抗体治療に対する患者の応答性を予測するか、評価するか、評価することを補助するために使用される。実施例2に示すように、BCL6発現はアゴニスト抗CD40抗体治療後に増加した腫瘍を有する患者で低い傾向がある。いくつかの実施態様では、アゴニスト抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍容量を有する患者由来の試料におけるBCL6の発現レベルによって測定された対照標準レベルと比較したBCL6の増加した発現は、アゴニスト抗CD40抗体治療に反応する可能性が低いことを示唆する。
【0121】
いくつかの実施態様では、表7のマーカー遺伝子の発現レベルを測定し、表7の遺伝子ペア1−8のlog2−スケール発現のための符号付きt値の合計を決定し、−4より大きい感受性インデックスはB細胞リンパ腫が抗CD40抗体治療に対する応答性があることを示唆または示す。いくつかの実施態様では、感受性インデックスは、−3より大きいか、−2より大きいか、−1より大きいか又は0より大きい。いくつかの実施態様では、感受性インデックスは−4と20との間である。いくつかの実施態様において、感受性インデックスは0と20との間である。
【0122】
いくつかの実施態様では、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7の1又は複数の発現レベルが測定され、感受性インデックスがマーカー遺伝子の測定された発現レベルは基づいて算出される。例えば、以下の方程式が、感受性インデックス(SI)を決定するために用いられることができる:

ここで、表13に示す正の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子及び負の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルが測定され;
式中、(i)βは測定される各マーカー遺伝子のための係数値であり;(ii)pは、測定されるマーカー遺伝子の数であり;(iii)xは、測定された各マーカーの発現レベルに対し、患者の試料ための変換し正規化された発現レベルであり;及び(iv)μ及びσは、測定される各マーカー遺伝子のための平均と標準偏差であり;ここで、β及びμ及びσはBリンパ腫細胞を含む患者試料から決定される いくつかの実施態様では、感受性インデックスのための0と同等か0を超える値は患者が抗CD40抗体治療に応答しそうであることを示し、感受性インデックスのための0と同等か0を超える値は患者が抗CD40抗体治療に応答しそうにないことを示す。実施例2には、どのように対照標準試料と新規試料のパラメータを分析し決定するかについて詳細に記載した。いくつかの実施態様では、IFITM1、RGS13、CD79B、CD22、BTG2、CD44、EPDR1及びUAP1が測定されて、感受性インデックス算出のために使われる。いくつかの実施態様では、等しい数の正に相関するマーカー遺伝子と負に相関するマーカー遺伝子が測定されて、感受性インデックス算出のために使われる。
【0123】
感受性インデックスを決定する方法は、公知技術である。Zhou H. and Hastie T. (2005) Regularization and variable selection via the elastic net; J. R. Statist. Soc. B. 67(2). pp. 301-320; Friedman J., Hastie T. and Tibshirani R. 2008. Regularization Paths for Generalized Linear Models via Coordinate Descent. Technical Report, Department of Statistics, Stanford University (World Wide Web-stat.stanford.edu/~hastie/Papers/glmnet.pdf) R package glmnet; R Development Core Team (2008). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. ISBN 3-900051-07-0, URL World Wide Web at R-project.org.を参照されたい。
【0124】
比較は、問題の遺伝子マーカーについての計測値及び対照標準値の種類に対して適切な任意の従来の方法で実施することができる。比較する手順は手動でもよいし、又は自動でもよい。いくつかの実施態様において、測定された発現レベルは、正規化された値である。例えば、発現レベルは、実施例2に記載されている、変換され正規化されたアッセイ値において、方程式に基づいて正規化されることができる。当業者にとって明らかであるように、反復測定値はマーカー遺伝子および/または対照標準遺伝子の発現レベルとされてもよい。いくつかの実施態様では、反復した測定が計測値のために考慮される。反復測定値は、「計測値」として、計測値の平均か中央値により考慮される。従来技術で公知の統計分析は、比較される2値間の相違の重要性を確認するために用いてもよい。
【0125】
(抗CD40抗体治療)
本発明で同定されるマーカー遺伝子が、1又は複数の抗CD40抗体による治療に対するB細胞リンパ腫の応答性を予測するか、評価するかまたは、評価の補助するために使われることができる。抗CD40抗体は、1又は複数のアゴニスト抗体(すなわち、CD40に結合して刺激する)であってもよい。例えば、刺激性抗体は、以下のような異なる種類のものでもよい:(1)CD40による刺激性のシグナルを送るが、CD40とCD40Lとの間の相互作用を増大させないもの(例えば、米国特許第5182368号に記載されているG28−5抗体及びG28−5に由来する抗体;及びPCT WO 96/18413)または、CD40とCD40Lとの間の相互作用を減少させるもの(例えば、米国特許第5674492号に記載されている抗体HuCD40−M2とHuCD40−M3とヒト化抗体);及び(2)CD40による刺激性シグナルを送り、CD40とCD40Lの間の相互作用を増加させることができるもの、例えばS2C6(Francisco et al., 2000, Cancer Res. 60: 3225-31)及びS2C6由来の抗体。また、アゴニスト抗体は米国特許第7288251号に記載されている。抗CD40抗体は、1又は複数のアンタゴニスト抗体(すなわち、CD40に結合しCD40Lによって誘発される活性を阻害する)であってもよい。アンタゴニスト抗CD40抗体の例は、米国特許公開番号2007/0110754に記載されているヒト抗体CHIR-12.12及びWO 97/31025に記載されている抗CD40抗体を含む。
【0126】
本明細書に記載のアッセイ/方法に基づく治療の候補として患者が同定されたあと、本発明の方法はB細胞リンパ腫を有する患者に対する抗CD40抗体の有効量を投与することを更に含むことができる。1又は複数の抗CD40抗体が投与されてもよい。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、以下の治療薬の1又は複数とともに投与される:リツキシマブ、ジェムザール及びICE。例えば、抗CD40抗体は、リツキシマブ療法と併用して、リツキシマブ更にジェムザールと共に;リツキシマブ更にICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド)(R−ICE)とともに;またはリツキシマブさらに化学療法と共に、患者に投与されることができる;。
【0127】
本明細書において使用する場合、「併用」投与は、同時投与および/または異なる時間における投与を含む。併用投与は同一の製剤としての投与(すなわち、異なる薬は同じ組成物に存在する)または別々の組成物としての投与、異なる投薬頻度または間隔における投与、及び同じ経路または異なる経路を用いた投与を含む。
【0128】
抗CD40抗体または機能的断片が、非応答であるかまたは以下の薬の何れか一つによる治療に対し不十分な応答を有するか(リツキシマブ(ジェネンテク);オクレリズマブ(ジェネンテック社);イブリツモマブ・チウキセタン(ゼバリンTM、バイオジェンIdec);トシツモマブ(ベキサール(登録商標)、GlaxoSmithKline);HuMAX−CD20TM(GenMab);IMMU−106(ヒト化抗CD20a.k.ahA20または90Y-hLL2、Immunomedics); AME-133(Applied Molecular Evolution/Eli Lilly); gentuzumab ozogamicin(MylotargTM、ヒト化抗CD33抗体、ワイエス/PDL);アレムツズマブ(カンパスTM、抗CD52抗体、Schering Plough/Genzyme); epratuzumab(IMMU-103TM、ヒト化抗CD22抗体(Immunomedics)))、又はこれらの薬による治療の後で再発したNHLをもつ患者の治療のために使われることができる。
【0129】
以下の文献は、リンパ腫とCLL、それらの診断、治療及び治療有効性を測定するための標準医学的手順を記載する。Canellos GP, Lister, TA, Sklar JL: The Lymphomas. W.B.Saunders Company, Philadelphia, 1998; van Besien K and Cabanillas, F: Clinical Manifestations, Staging and Treatment of Non-Hodgkin's Lymphoma, Chap. 70, pp 1293-1338, in: Hematology , Basic Principles and Practice, 3rd ed. Hoffman et al. (editors). Churchill Livingstone, Philadelphia, 2000; and Rai, K and Patel, D:Chronic Lymphocytic Leukemia, Chap. 72, pp 1350-1362, in: Hematology , Basic Principles and Practice, 3rd ed. Hoffman et al. (editors). Churchill Livingstone, Philadelphia, 2000.
【0130】
治療に用いられる抗CD40抗体は、キメラ、ヒト化及びヒト抗体を含む。本願明細書に記載されているか又は公知技術の任意のアゴニストまたはアンタゴニスト抗体が、治療において用いられることができる。例えば、WO2006/128103に記載されているヒト化抗CD40抗体が抗CD40抗体治療のために使用されることができ、これらの抗体とそれらのアミノ酸配列は本願明細書に引用により援用される。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の治療で使用される抗CD40抗体はBリンパ腫細胞上で発現するCD40(例えばヒトCD40)に結合し、Bリンパ腫細胞のアポトーシスを誘発する。また、抗CD40抗体は免疫エフェクタ機能(例えばADCC、CDCおよび/またはADCP)を経て生体内でBリンパ腫細胞を殺す特性を有することができる。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、約1x10−8より高くないか又は1x10−9より少しも高くないのKd値を有するCD40に結合する。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、CD40と結合して、CD40(すなわちアゴニスト抗体)を刺激する。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、CD40に対するCD40リガンドの結合性を、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも75%増加させる。CD40に対するCD40リガンドの結合性の増加を測定する方法が米国特許第6838261号(その開示は本願明細書に引用により援用される)において開示される。いくつかの実施態様において、抗CD40は、WO00/75348(WO00/75348の表3と4に示されている抗体を含む)に記載されているマウスのモノクローナル抗体S2C6に由来するヒト化抗体である。いくつかの実施態様において、抗CD40抗体は、配列番号1に示されている重鎖アミノ酸配列及び配列番号2において示されている軽鎖アミノ酸配列を含む(例えば抗CD40Ab.1)。
【0131】
D.キット
上に記載又は示唆された適用における使用のために、キット又は製造品が本発明により提供される。当該キットは、本願明細書に記載のマーカー遺伝子の発現レベルを検出するために特異的な少なくとも1の試薬を含んでもよく、更に本願明細書に記載の方法を実施するための指示書を更に含んでもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はその任意の特異的な部分を特異的に増幅できるプライマー及びプライマー対、本発明の核酸分子又はその任意の部分に選択的に又は特異的にハイブリダイズできるプローブを含む組成物及びキットを提供する。プローブは、例えばラジオアイソトープ、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素のような検出可能なマーカーで標識されてもよい。当該プローブ及びプローブは、表1−4、6、7及び13に挙げた遺伝子に対応するポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質を発現する細胞を検出する方法として、試料中のポリヌクレオチド、例えば表1−4、6、7及び13に挙げた遺伝子に対応するポリヌクレオチドの存在を検出するために使用できる。当業者に理解されるように、非常に多くの異なったプライマー及びプローブが本願明細書において提供する配列に基づいて調製されることができ、mRNAの存在及び/又はレベルを増幅、クローン化及び/又は測定するために効果的に使用されうる。
【0133】
いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20のマーカー遺伝子の発現レベルを検出するための試薬を含む。キットは、更に対照標準値を作成する時に有用な対照標準試料を含む。マーカー遺伝子は、VNN2、MEF2C、LTB、KCNN3、NCF1、BCL6、IGJ、ELTI1902、PNOC、CSF2RB、POU2AF1、CD22、RGS13、MEF2B、LRRC8A、CD40、IFITM1、SMN1、PRRCA、EPDR1、PRPSAP2、IGF1R、BTG2、LMO2、YIPF3、CD79B、CD44、CTSC、UAP1及びPUS7を含むが、これらに限定されるものではない。マーカー遺伝子のmRNA発現レベルの検出のための試薬は、1つのマーカー遺伝子のmRNA産物を増幅するために特異的な少なくとも1ペアのプライマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プライマーのペアはmRNA配列の3’終端を上的としてもよい(例えば、通常は全ての転写変異体に共通である3’UTRでのmRNAを標的とする)いくつかの実施形態では、キットは増幅された核酸の検出のための捕獲プローブのための表面又は基質(例えば、マイクロアレイ)を更に含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、キットはqRT-PCRを使用する1つのマーカー遺伝子の発現レベルを検出するために特異的なプライマーの少なくとも1つのペアー及びプローブを含む。qRT-PCRで使用できるプライマー及びプローブのセットの例を表10に示す。IFITM1を検出するために、配列番号27、28と29、配列番号60、61と62、及び配列番号93、94と95に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。CD40を検出するために、配列番号24、25と26、配列番号57、58と59、配列番号90、91と92に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。RGS13を検出するために、配列番号114、115と116、配列番号126、127と128に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。VNN2を検出するために、配列番号30、31と32、配列番号63、64と65、及び配列番号96、97と98に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。LMO2を検出するために、配列番号12、13と14、配列番号45、46と47、及び配列番号78、79と80に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。CD79Bを検出するために、配列番号141、142と143、配列番号150、151と152、及び配列番号159、160と161に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。CD22を検出するために、配列番号15、16と17、配列番号48、49と50、及び配列番号81、82と83に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。BTG2を検出するために、配列番号9、10と11、配列番号42、43と44、及び配列番号75、76と77に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。IGF1Rを検出するために、配列番号6、7と8、配列番号39、40と41、及び配列番号72、73と74に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。CD44を検出するために、配列番号174、175と176、配列番号180、181と182、及び配列番号186、187と188に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。CTSCを検出するために、配列番号165、166と167、配列番号168、169と170、及び配列番号171、172と173に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。EPDR1を検出するために、配列番号21、22と23、配列番号54、55と56、配列番号87、88と89、配列番号129、130と131、配列番号132、133と134、配列番号135、136と137に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。UAP1を検出するために、配列番号138、139と140、配列番号147、148と149、及び配列番号156、157と158に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。PUS7を検出するために、配列番号177、178と179、配列番号183、184と185、及び配列番号189、190と191に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。BCL6を検出するために、配列番号102、103と104、及び配列番号108、109と110に示すプライマー及びプローブのセットが使用されうる。
【0135】
マーカー遺伝子のタンパク質発現レベルを検出するための試薬は、マーカー遺伝子によってコードされたタンパク質に特異的に結合する抗体を含みうる。
【0136】
キットは、バイアル、チューブ及びその類のような1又は複数の容器をしっかりと収納できるような区分化された入れ物を含む。各容器は本方法で使用される別々の要素の1つを含むものである。例えば、容器の一つは検出可能であるか又は検出可能であってもよい標識されたプローブを含みうる。当該プローブはマーカー遺伝子に特異的な抗体又はポリヌクレオチドであってもよい。標的核酸を検出するために核酸ハイブリダイゼーションを使用するキットにおいて、キットは、標的核酸配列の増幅のための核酸を含む容器、酵素、蛍光、又はラジオアイソトープ標識のようなレポーター分子に結合した例えばアビジン又はストレプトアビジンのようなビオチン結合タンパク質等のレポーター手段を含む容器を有する。
【0137】
本発明のキットは、上記の容器及び、バッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ及び使用のための指示書を有するパッケージ封入物を含むような商業及び使用者の立場から望ましい材料を含む1又は複数の容器を基本的には含む。ラベルは特異的療法又は非特異的療法の適用のために使用される組成物を表示するために容器の上にあってもよく、上記のようなインビボ又はインビトロのどちらに向けたものかを表示してもよい。
【0138】
キットは、組織又は細胞試料を調製するため、及び試料由来の核酸(例えばmRNA)を調製するための指示書と材料のセットを更に含んでも良い。
【0139】
本発明は、本発明の方法の実施において使用するために適した様々な組成物であって、キットで使用されてもよいものを提供する。例えば、本発明は当該方法において使用することができるアレイのような表面を提供する。いくつかの実施態様では、本発明のアレイは本発明の突然変異を検出するために有用な核酸分子の個々又は収集物を提供する。例えば、標的核酸を含む試料にハイブリダイズする一連の別々に配置された個々の核酸オリゴヌクレオチド又は核酸オリゴヌクレオチドの組合せのセットを含み、このようなハイブリダイゼーションが本発明の突然変異の有無を示す。
【0140】
いくつかの技術は、核酸をガラスのような固形基質に取り付けることが知られている。ある方法は、合成される核酸分子にアミン基、アミン基の誘導体または正電荷をもつ別の基のような固形基質に取り付けることができる部分を含む修飾塩基またはアナログを組み込むことである。合成された生成物は次に、固形基質(例えばガラススライド)に接触させられ、固形基質は、増幅産物上の反応基と共有的にリンクを形成するアルデヒド又は他の反応基でコートされており、ガラススライドに共有結合する。他の方法は、world wide web at cmt.corning.com and cmgm.stanford.edu/pbrown1で開示されるような、公知記述であるアミノプロピルシルカン界面化学を使用しするものである。
【0141】
反応基に後に変換されるかもしれないオリゴヌクレオチドに対する基の付加は、また、従来技術において知られている方法を使用することが可能である。オリゴヌクレオチドのヌクレオチドに対する任意の付加はオリゴヌクレオチドの部分になり、次にそれはマイクロアレイの固体表面に取り付けられてもよい。増幅された核酸は、固形基質に対する付加の前又は後に、必要に応じておよび/または使用する技術が認めるならば、例えば断片への切断または検出可能な標識の付加よって更に修飾されてもよい。
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上記の一般的説明を想定すれば、さまざまな他の実施態様が実施されてもよいと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】BASSO_GERMINAL_CENTER_CD40_DN 遺伝子セット内の遺伝子のエンリッチメントプロット。上段のプロットは、緩和されたt検定(表2)から、順位化遺伝子全体のエンリッチメントスコア配布を表す。下段のプロットは、signal2noiceとして知られている、順位化リストメトリックに関して、エンリッチメントの分布を示す。概して、これらのプロットは、遺伝子セットが抗CD40Ab.1感受性細胞の中で強くエンリッチメントされることを明らかに示す。
【図2】VNN2(CD40L−下方制御遺伝子)は抗CD40Ab.1に対して感受性があるNHL細胞において過剰発現し、感受性及び耐性の2クラス間の区別をする。棒グラフはmRNA発現量を表し、線グラフはIC25値を表す。
【図3】図3A−3C。RGS13、CD22、及びMEF2B胚中心Bマーカーは抗CD40Ab.1に対して感受性がある及び中間のNHL細胞において過剰発現し、感受性及び耐性の2クラス間の区別を相当な精度で区別することができる。棒グラフはmRNA発現量を表し、線グラフはIC25値を表す。
【図4】NHL細胞株全体の抗CD40Ab.1感受性インデックススコアリング。ステップワイズ・リニア・モデリング及び遺伝子ペア・スコアリングは、mRNA発現データに基づいて各細胞株に適用した。第1y軸は、x軸上のNHL細胞株に対してプロットした、抗CD40Ab.1感受性インデックスを示し、第2y軸は抗CD40Ab.1 IC25値を示す。高い抗CD40Ab.1感受性インデックス(>−4)は、感受性がある細胞株の増大した確率を表す。
【図5】抗CD40Ab.1感受性を有するCD40特性遺伝子の相関関係。
【図6】図6−1から6−35。表7と表10にリスト化した遺伝子のためのジーンバンク配列。VNN2(図6−1:配列番号258),RGS13(図6−2:配列番号259),CD22(図6−3及び6−4:配列番号260),LRRC8A(図6−5:配列番号261),CD40(図6−6:配列番号262),IFITM1(図6−7:配列番号263),PRKCA(図6−8から6−10:配列番号264),BCL6(図6−11及び6−12:配列番号265),EPDR1(図6−13:配列番号266),PRPSAP2(図6−14:配列番号267),IGF1R(図6−15から6−18:配列番号268),BTG2(図6−19及び6−20:配列番号269),LMO2(図6−21:配列番号270),YIPF3(図6−22:配列番号271),SMN1(図6−23:配列番号272),CD79B(図6−24:配列番号273),CD44(図6−25及び6−26:配列番号274),CTSC(図6−27:配列番号275),UAP1(図6−28:配列番号276),PUS7(図6−29及び6−30:配列番号277),RGS13(図6−31:配列番号278),CD22(図6−32及び6−33:配列番号279),SMN1(図6−34:配列番号280),及びYIPF3(図6−35:配列番号281)のmRNAをコードする核酸配列。
【図7】臨床試験001の21人の患者についての、多変量感受性インデックスと腫瘍の生成物の直径合計(SPD)測定値のパーセント変化の相関。SPDパーセント変化は、治験期間開始前SPDに対して最終観察時点までの最小のSPDを比較することによって決定される。正の変化は腫瘍容積の増大を示し、負の変化は腫瘍容積の減少を示す。感受性インデックス算出のために使用する重み付け(係数)を、表14に示す。より大きな多変量感受性インデックス値は最終観察時点までのSPD減少と相関する(スピアマンのRho=−0.58;P=0.006)。
【図8】26人のDLBCL患者の、BCL6発現及びSPD測定値のパーセント変化の相関。SPDパーセント変化は、治験期間開始前SPDと最終観察時点までの最小のSPDを比較することによって決定される。正の変化は腫瘍容積の増大を示し、負の変化は腫瘍容積の減少を示す。
【実施例】
【0143】
(実施例1.抗CD40抗体治療に対するNHL患者の応答性について予測遺伝子マーカーの同定)
材料と方法
細胞生存率測定
NHL細胞は、2%のFBSを添加したRPMI1640中の1500−5000細胞/ウェルの50ulを384枚のウェルプレートにまいて、連続的濃度の架橋結合した抗CD40Ab.1または対照抗体(抗−gD5B6で処理された。架橋結合するために、細胞に加える前に室温で30分間培地において1:4の割合で、抗CD40Ab.1または抗gDは、ヤギ抗ヒトFcK断片特異的抗体のF(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)と共にインキュベートした。96時間のインキュベーション後、細胞生存度は、製造業者の指示書に従ってCellTiter-Glo発光細胞生存率測定(プロメガ、マディソン、WI)を使用して数値を求めた。各データポイントは、4重で実施された。
【0144】
XLfitは、IC50、IC25及び最大阻害を算出するために用いた。データは3回の独立した実験の平均として表わされる。抗CD40Ab.1に対する感受性は、3つのカテゴリーに分けられた:IC25とIC50値に基づいて感受性、中間体及び耐性。
【0145】
(抗体)
抗CD40Ab.1は、CD40に対するヒト化IgG1 mAbである。それは、遺伝的に改変されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生され、分泌される。実施例で使用され、抗CD40Ab.1と呼ばれる抗CD40Ab.1は、以下のアミノ酸配列を有する:
【0146】
重鎖(配列番号1)。イタリック体下線ASN294残基は、炭水化物部分の位置を特定する。
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYSFT GYYIHWVRQA PGKGLEWVAR 50
VIPNAGGTSY NQKFKGRFTL SVDNSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCAREG 100
IYWWGQGTLV TVSSASTKGP SVFPLAPSSK STSGGTAALG CLVKDYFPEP 150
VTVSWNSGAL TSGVHTFPAV LQSSGLYSLS SVVTVPSSSL GTQTYICNVN 200
HKPSNTKVDK KVEPKSCDKT HTCPPCPAPE LLGGPSVFLF PPKPKDTLMI 250
SRTPEVTCVV VDVSHEDPEV KFNWYVDGVE VHNAKTKPRE EQYNSTYRVV 300
SVLTVLHQDW LNGKEYKCKV SNKALPAPIE KTISKAKGQP REPQVYTLPP 350
SREEMTKNQV SLTCLVKGFY PSDIAVEWES NGQPENNYKT TPPVLDSDGS 400
FFLYSKLTVD KSRWQQGNVF SCSVMHEALH NHYTQKSLSL SPG 443
【0147】
軽鎖(配列番号2)。
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRSSQSLV HSNGNTFLHW YQQKPGKAPK 50
LLIYTVSNRF SGVPSRFSGS GSGTDFTLTI SSLQPEDFAT YFCSQTTHVP 100
WTFGQGTKVE IKRTVAAPSV FIFPPSDEQL KSGTASVVCL LNNFYPREAK 150
VQWKVDNALQ SGNSQESVTE QDSKDSTYSL SSTLTLSKAD YEKHKVYACE 200
VTHQGLSSPV TKSFNRGEC 219
【0148】
(遺伝子発現プロフィールの生成及び解析)
全RNAは、mirVanaTM miRNA単離キット(Ambion、オースティン、TX)で抽出され、Affymetrix HGU133P2全体ゲノム発現マイクロアレイを使用してアッセイされた。生データはAffymetrixスキャナを使用して抽出され、結果として生じるセル・ファイルはR Bioconductorパッケージ(bioconductor.orgのワールドワイド・ウェブ)のデフォルトのgcRMAを使用して処理された。有意に差異的に発現する遺伝子は、抗CD40Ab.1感受性及び生存度クラス全体について相違のための緩和されたt検定を使用して同定された。更なるパラメータはLIMAパッケージ及びt−統計値、p値、調製されたp値及びB−統計値が各遺伝子のために算出された。プローブは、各遺伝子に対してマップされ、遺伝子マッピングに対する1:1プローブが感受性の測定値に最も強く相関するプローブを使用した下流の解析のために選択された。耐性群に対して、感受性又は中間体を分類する場合、アッセイに含める遺伝子の節約的なセットを同定するために、定量的段階的線形モデリングは、標的経路の定性分析と組合せられた。更なる詳細及び結果を結果(表7)に示す。
【0149】
遺伝子セットエンリッチメント解析は、Gene Pattern(www.genepattern.org)の中のGSEAモジュールを利用することによって決定された。遺伝子の予め特定したクラスを、そのメンバーが表現型全体の調和した方法でかなり差異的に発現される場合、エンリッチメントスコアとして判決する。正規化されたエンリッチメントスコアは、エンリッチメントスコアを取り出して遺伝子セット内の遺伝子の数を調整することによって算出される。名目p値は、感受性ラベルと耐性ラベルとを入れ替えて、ヌル分布を与える正規化されたエンリッチメントスコアを再計算することによって決定する。
【0150】
(ステップワイズ・リニア・モデリングを使用して同定される抗CD40Ab.1感受性インデックス)
標的遺伝子がインデックスへの算入のために選択される工程の順序で、各標的遺伝子をその対応する逆相関(反相関)ペア遺伝子(表7)と共に示す。最初の3つのメイン遺伝子(表7のVNN2、RGS13、CD22)は、感受性及び中間体細胞株における差異的過剰発現の優位な構成要素をモデル化するために、表2−4(工程1)から選択された。これらの3つの遺伝子の発現は、+0.77以上の相関係数を有し非常に相関している。それらの類似性のために、単一のペア遺伝子EPDR1は、耐性細胞株における過剰発現と対比して測定するために表2−4から選択された。当該反相関ペア遺伝子をアッセイに含むことは、感受性と耐性の両方がペアの1アームの高い発現を伴うという点で、自己正規化を提供する。この機構によって、アッセイは任意のクラスを定めるために低い全mRNAアッセイ・レベルに依存しないで、むしろ、それらの反相関ペアに対するメイン遺伝子の相対的発現のパターンによってそれぞれ記載される(すなわち、倍率変化推定に対応する符号付きlog2スケールにおける符号付きt−スコアの合計)。工程2−5において、遺伝子の更なるペアは、前工程において同定される遺伝子のための符号付きt−値の累積和の調整の後、有意な相関を有するそれらの新しいリストからIC25まで作用機構に基づいて選択された。このステップワイズ手順は、遺伝子の各々の新規なペアが更なる予測力を感受性インデックスに加えることを必要とする。工程5の後、どんな遺伝子ペアも、IC25予測のために必要とされなかった。工程6において、単一の更なるペアは、遺伝子の前の7ペアに基づいて累積的インデックスの調整後、最大阻害で細胞生存度を予測するその能力のために加えられた。BCL6は、作用機構の論理的根拠に基づく対応するペアのない単体として加えられた:それは現在最終的な感受性インデックスに取り入れられない。それは遺伝子ペア1−8のlog2−スケール発現のための符号付きt値の合計によって与えられる。それは、明白に、臨床経験に基づくインデックスに組み込まれることができる。耐性群に対して、感受性又は中間体を分類する場合、予備的カットオフは、全体的に正しい分類比を最大にするように、感受性インデックスのために選択された。選択されたプローブに基づく代替の分類規則は、臨床応用のために後に最適化されることができる。
【0151】
(結果と解析)
抗CD40抗体の作用機序の理解をするために、及び抗CD40抗体療法に対するNHL患者の応答性のための1又は複数の予測マーカーを同定するために、31のNHL細胞株のパネルに渡って抗CD40Ab.1の活性を試験して、抗CD40抗体の力価に応答する細胞生存度を評価した。この実験から表1において強調したIC25値は、抗CD40抗体感受性化の10の細胞株は<0.4μg/mlの濃度において細胞生存度の減少があり(「感受性」細胞株として定義される)、および13の細胞株は1μg/mlの濃度に上げても細胞生存度の減少がなかった(「耐性」細胞株として定義する)ことを明らかにした。8の細胞株は、>0.4と<0.8間とのIC25を有しており、ここについて「中間体」細胞株とする。
【0152】
表1は、インビトロでNHL細胞株全体について抗CD40Ab.1 IC25感受性データを提供する。各細胞株の特異的なリンパ腫サブタイプ、IC25値及び分類データを、各細胞株について示す。DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、FL(ろ胞性リンパ腫)、MCL(マントル細胞リンパ腫)、ALCL(未分化大細胞リンパ腫)。

【0153】
インビトロで抗CD40Ab.1活性を予測する遺伝子を同定するために、RNAは、細胞分割のログ・ステージで細胞株から調製し、Affymetrix HGU133P2 マイクロアレイを使用して遺伝子発現プロファイリングに供した。感受性と耐性細胞株との間で差異的に発現する遺伝子は緩和されたt検定によって決定され、有意差は≦0.05の調整されたP値カットオフを使用して決定された(表2)。表2において、調整されたp値≦0.05(5%のFDR)でフィルターをかけた遺伝子リストは、110のユニークな遺伝子に結果としてなった。プローブID、遺伝子記号及び説明を示す。加えて、全NHL細胞株に渡ってIC25値と相関した有意な遺伝子はスピアマンの順位相関係数によって決定され、遺伝子は≦−0.57または≧0.57のrho値を使用してフィルターをかけた(表3)。表3において、≦−0.57又は≧0.57でフィルターをかけた遺伝子のリストは、130のユニークな遺伝子に結果としてなった。また、プローブID、遺伝子記号及び説明を示す。各々または両方の方法論によって同定されたユニークな遺伝子を合わせた表を、表4に提示する。表4において、log(2)倍率変化であって、正の倍率変化は抗CD40Ab.1感受性に対するNHL細胞株の感受性クラスの増加した発現を表わし、負の倍率変化は抗CD40Ab.1感受性に対するNHL細胞株の耐性クラスの増加した発現を表わす。遺伝子は、195のユニークな遺伝子を表す。プローブID、遺伝子記号及び説明についても示す。






















【0154】
表4の高度に発現する遺伝子は、抗CD40活性のバイオロジーに関連しない可能性がある共制御された遺伝子であってもよい。従って、感受性と耐性細胞との間で差異的に発現される遺伝子の生物学的機能を理解するために、我々は、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を実施した。この解析において、セットの遺伝子のための平均t−統計値を算出することによって問題に対処し、そして平均t−統計値を、同一サイズの遺伝子のランダムなセットのために算出した平均統計値と比較する。低いp値は、遺伝子のセットと統計値を作成するために使用された試料の分類との間にいくらかの相関があることを示す。従って、遺伝子セット解析は、非常に差異的に発現した遺伝子の特性の概要と解釈することができる。表5は、抗CD40Ab.1の感受性vs.耐性NHL細胞株の遺伝子セットのエンリッチメント解析を提供する。エンリッチ化遺伝子セット、遺伝子セットごとの遺伝子の数、正規化されたエンリッチメントスコア(NES)、および名目p値(NOMp−値)を表示する。より高いNES及びより低いNOMp値において、所見が有意である可能性がより高い。

【0155】
生物学上適切であった遺伝子セットを同定するGSEAの、B細胞受容体シグナル伝達(BCR)に関係する遺伝子セット及び胚中心起源(表5)の遺伝子は、エンリッチ化された。第一の関心は、BASSO_GERMINAL_CENTER_CD40_DN遺伝子セットによって測定されるCD40シグナル伝達に関係する遺伝子の観察である(図1)。Basso et al., Blood 104:4088-96, 2004.この遺伝子セットは、Ramos細胞株のCD40Lによって抑制されると報告されている遺伝子を指す。差異的に発現した遺伝子リストのランク及び調整されたp値を、この遺伝子セットに関して表6に表示する。表6において、感受性と耐性細胞株との間で差異的に発現した遺伝子は遺伝子についてエンリッチ化され、それはCD40Lを下方制御するものとして知られている。順位化遺伝子は、緩和されたt検定に由来する(表2)。全体で70の遺伝子は、この表に示されている上位11を有するこの遺伝子セットの部分であった。表6に示す遺伝子は、抗CD40 Ab.1感受性細胞株において過剰発現した。2つの信号伝達経路がNF−кB転写の軸で収束し、両方の経路がB細胞を活性化するために相乗効果を与えることができるので、BCR及びCD40L遺伝子を有する遺伝子の部分的な重なりが期待される。次に、CD40L誘発遺伝子が、抗CD40Ab.1に対する感受性NHL細胞株と耐性NHL細胞株との間を区別することが出来るかを確認した。表2及び3の差異的に発現した遺伝子リストの範囲内のCD40L遺伝子の中で、VNN2は感受性細胞株と耐性細胞株について最も正確な区別を与えた(図2)。

【0156】
差異的に発現された遺伝子の更なる検査が、胚中心B(GCB)細胞を示す遺伝子CD22、RGS13及びMEF2B(表2と図3、4、6)のような遺伝子が抗CD40 Ab.1感受性細胞株において過剰発現することを明らかにした。CD40サイン遺伝子は、図5に示すように抗CD40.Ab.1感受性と相関した。特に、RGS13は、細胞株全体について、緩和されたt検定(表2)及びスピアマンの順位相関係数(表3)による最高ランクの遺伝子のうちの1つであり、感受性と耐性との間、同様に中間体と耐性クラスとを区別できる単一遺伝子として、感受性vs.耐性について96%の正確性、中間体vs.耐性について81%、及び感受性/中間体vs.耐性について87%という は高い正確性を有する。
【0157】
最適な分類正確性を得るために、遺伝子サインまたはメタ遺伝子、分類子が必要とされるであろう。従って、最も正確な分類に寄与することができる遺伝子を同定するために、組合せた際に抗CD40Ab.1感受性に関して細胞株全体に最もあり得る分類を与える遺伝子のペアを同定するためにアルゴリズムを作成した。従って、この目的を達成するためにステップワイズ・リニア・モデリングを実施し、最後の遺伝子選択は表7に示した。表7において、各々の標的遺伝子を、前述のように、標的遺伝子がインデックスへの算入のために選択される工程の順に、その対応する逆に相関している(反相関)ペア遺伝子に共に示す。基本的に遺伝子ペア1−8のlog2スケールについての符号付きt−スコアである感受性インデックスを計算した場合に、遺伝子ペアのこの選抜は抗CD40Ab.1(図4)に対する感受性、中間体及び耐性の堅固な分類を明らかにした。

【0158】
全体的に、CD40LはB細胞を活性において重要な役割を果たし、B細胞の展開及び増殖、及びIgクラス切り替えに結果としてなり、またCD40Lシグナル伝達経路はナイーヴ及びメモリーB細胞を含むプレ−及びポスト−GCB−細胞内で活性である。従って、それは抗CD40Ab.1に対する感受性を提示しているNHL細胞は、遺伝子発現プロファイリングによる起源がGCB−細胞と類似しており、高度に発現されたCD40L下方制御された遺伝子を有し、耐性細胞とは対照的に、抗CD40Ab.1に対する感受性を測定するGCBとCD40経路活性化状況との間の関係を表す。
【0159】
更に予想分類子を確認するために、異種間移植モデルを治療法(例えば複合治療)で調査するために用いる。リアルタイム定量的RT−PCR(qRT−PCR)が、遺伝子発現レベルを測定するために使われる。予想分類子を確認した後に、免疫組織化学(IHC)アッセイは、選択されたマーカーの小さいグループ(例えばVNN2とRGS13)のために発現される。選択されたマーカー遺伝子は、臨床試験試料において更に試験される。
【0160】
qRT−PCR及びIHCは、臨床試験試料における選択されたマーカー遺伝子の発現レベルを測定するために行われる。抗CD40治療に応答する再発したびまん性大B細胞リンパ腫を有する患者由来の試料の発現レベルは、治療に応答しない患者由来の試料の発現レベルと比較した。
【0161】
(実施例2)
臨床試験における抗CD40Ab.1による治療への応答性に関するマーカーの同定
臨床試験001(第II相)
全体の反応速度及び再発したDLBCLを有する患者の抗CD40Ab.1の毒性プロフィールを測定するための多施設、第II相、非盲検試験。腫瘍試料は、病理学確認とCD40発現のために中央研究室によって評価された。適格患者は診断でデノボまたは転換されたDLBCLを有しており、緩慢性リンパ腫の病歴がある場合は除外された。要求される前治療は、リツキシマブによる組合せ化学療法、適格であるならば自己由来の幹細胞移植からなる。患者は、5週(サイクル1)にわたって、抗CD40Ab.1の6回のIV注入を、投与量(日1に1mg/kg;日4に2mg/kg;日8に4 mg/kg)及びその後8mg/kg/wkにより受けた。応答している患者及びSD(安定した疾患)を有する患者は、疾患の進行または多くとも最高12サイクルまで治療を続ける資格があった。患者が抗CD40Ab.1による治療を受ける前に、腫瘍組織は患者から取り出された。例えば、試料は、ルーチンのリンパ腫診断の部分として取り出された。
【0162】
臨床試験002(第I相)
多施設、マルチドース、第I相試験を、CD40Ab.1の再発したNHLを有する患者の静脈内抗安全性、薬物動態学的特性、免疫原性と抗腫瘍活性をテストするために実施した。NHLの複数の組織学的亜型を有する患者が本試験に含まれ、びまん性大B細胞(DLBCL;14)、濾胞性(FCL;9)、マントル細胞(MCL;9)、周縁帯(MZL;2)及び小リンパ球で(SLL;1)を含む。日1と日4に1mg/kgの抗CD40Ab.1、続いて週2−5の間に4つのコホートに対して最高投与量3、4、6、又は8mg/kgの漸増投与の投与スケジュールにより治療された。続いて、急速投与スケジュールは1つのコホートで試験された(サイクル1の間、投与されるトータル抗CD40Ab.1は40%増加)。応答患者及びSD(安定した疾患)患者は、抗CD40Ab.1のコホート特異的な最大量の4回の連続的な週ごとの注入からなる、第2サイクルに適格である。8人のDLBCL患者はサイクル1を終えて、37.5%の客観的な反応速度及び2SDで少なくとも3mg/kgの抗CD40Ab.1の最高投与量を受けた(すなわち、1CR及び2PR)。
更なる客観的反応は、1人のMCL(CR)患者と1人のMZL(PR)患者において見られた。これらの5人の患者の応答期間の中央値は、まだ到達されなかった(範囲8−37週)。抗Cd40Ab.1による治療を受ける前に、腫瘍組織は患者から取り出された。例えば、試料は、ルーチンのリンパ腫診断の一部として取り出された。
【0163】
(臨床試料調整及びqRT−PCR)
上記第I相及び第II相臨床試験由来のホルマリン固定されてパラフィン包埋された(FFPE)アーカイブの腫瘍組織は、適切なIRB承認と患者の同意を得て臨床検査所から得られた。腫瘍組織に由来する4−6ミクロン切片はガラススライドにマウントし、各ケースにつき1つのスライドは標準病理学実験室プロトコルを使用してH&E染色に供した。委員会が証明した病理学者が腫瘍内容についてH&Eスライドに印をつけ、FFPE組織のためのAmbion RecoverAllTM全核酸隔離キットを使用してRNA抽出のために残りの腫瘍含有領域を切り出すためのガイドとして使用した(Cat. No. AM1975; Applied Biosystems/Ambion, Austin, TX)。
【0164】
試料につき450ngの全RNAは、Applied BiosystemsのHigh Capacity Reverse Transcription cDNA合成キット(Cat.No.4368814;Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、全反応量20uLにおいて逆転写された。37℃における短縮された60分RT反応を除いて、製造者の推奨に従った。5ngの全RNA相当cDNA(100%のcDNAを合成効率とみなす)産物は、各PCRアッセイのための15uLの量のアプライドバイオシステムの2Xのユニバーサル・マスター・ミックス(UNGなし)とよく混合した。全増幅は、2ステップ(95℃15秒、60℃1分)PCR増幅手順を使用して384ウェルのプレートの三組において行われた。反応は、検証済みABI7900リアルタイムPCRシステムにおいて40サイクルまで実施された。使用するプライマーとプローブの配列を表10に示す。








【0165】
(データ処理)
qRT−PCRの生の結果は、正規化、変換及びインピュテーションにより、下記の説明に従って、予め前処理され、感受性インデックスは感受性インデックス及び分類子の下で記載されているように計算された。スピアマンの順位相関係数が、相関推定及び対応するP値のために使われた。多変量の感受性インデックスのために、プローブを選択し、係数はZhou et al.,Statist.Soc.B.67:301-320,2005によって記載されて、Friedman, Hastie and Tibshirani, Regularization Paths for Generalized Linear Models via Coordinate Descent.(スタンフォード大学統計学部テクニカル・レポート(www-stat.stanford.edu/~hastie/Papers/glmnet.pdf.))に実装されているように、ラッソ(L1)とリッジ(L2)の罰則付き回帰のelastic net blendを使用して推定した。Χテストが、分類変数の中の関連のためのテストに使われた。
【0166】
(正規化、変換及びインピュテーション)
以下は、アッセイ・データとモデル・パラメータのための定義である:

試料の対照標準(例えばインデックス係数及び分類子カットオフに適合させるために用いる)について、平均及び標準偏差モデル・パラメータは、(下の対照標準セットモデルパラメータの式に関連する)対照標準セットデータを使用して計算される。新規な試料(例えばインデックスとクラスが計算されることになっている単一の新規な試料)について、モデルパラメータは対照標準セット、l、から取り出されなければならず、それは新規な試料が抽出された集団の代表例となるように選択される。例えば、アッセイが使用される治療の各指標及びラインに対する臨床対照標準セットが維持されてもよい。対照標準セットモデルパラメーター及び変換され正規化されたアッセイ値のための式を以下にしめす。

対照標準セットモデルパラメーター

モデルパラメーター

変換され正規化されたアッセイ値
中間値

変換され正規化され帰属されたアッセイ値

【0167】
(感受性インデックス及び分類子)
以下はアッセイデータとモデルパラメータのための定義である:

対照標準モデルパラメーター及び感受性インデックス及び分類子を計算するための式を以下に示す。

対照標準セットモデルパラメータ
プローブ平均及び標準偏差

インデックス及び分類子

【0168】
(臨床試験001結果)
下記の表11は、臨床試験001由来の臨床サンプル及びアッセイ化標本を説明する試料を提供する。24人のDLBCL患者由来の29の保存FFPE腫瘍標本が、qRT−PCR処理のために提出された。3人の患者は複数の標本を有しており、全24人の患者には少なくとも一つの標本に対し有用なqRT−PCR結果があった。これら24の中で、21が治験期間開始前及び最終観察時までの少なくとも1回の観察の両方の、腫瘍の生産物直径の合計(SPD)を有していた。

【0169】
表12は、感受性インデックスに貢献するメイン及びペア遺伝子間のペアワイズ・スピアマンの順位相関係数をまとめたものである。平均して、感受性インデックスの自己正規化及び読取を下方制御発現経路に対する上方制御発現経路の比率と仮定すると(対数基準2スケール)、細胞株発現試料に基づいて、患者の特定グループにおいて低い発現がある遺伝子は対応するペアの比較的高い発現を有すると期待されるはずである。この最初の臨床試料のペア間の相互関係の大きさは、統計学的に有意で、全体的に顕著な高さであり、−0.67(P=0.0004)のより低い相関推定相互関係を有する。これらのテストは、アッセイ標的配列がこの臨床集団由来の腫瘍試料においてインビトロで発現され、アッセイが保存されたFFPE組織試料において発現を検出することを独立に確認するものである。

【0170】
表13は、最終観察時点における各プローブそれぞれと腫瘍SPDにおける最大の減少(又は最小の増加)との関係をまとめている。順位相関係数は治験開始前から最終観察時点の測定値の差異に基づいているので、正の相関はプローブの高い発現が平均して腫瘍増加に関係することを意味し;および負の相関はプローブの高い発現が平均して腫瘍減少に関係することを意味する。特に、全てのメイン−ペアプローブの対は、SPDと逆方向の関係がある。P値は、この試料における有望な傾向と整合している。全てのP値は、0.5以下にある(真の相関がない場合は50%が記載される)。全ての範囲は、DLBCL患者試料(N=21)から置き換えて標本抽出する5000回の繰り返しに基づいてブートストラップ第95パーセンタイル信頼区間として計算した。サンプルサイズが増加する場合は、より狭い範囲で可能である。モデル構築あるいは照合がこれらの結果を作成するために必要とされなかったので、それらは強健な傾向を含み、これらのqRT−PCRプローブ測定が、概して、抗CD40Ab.1により治療される患者の腫瘍SPDの減少と相関することを確認するものである。

【0171】
多変量の感受性インデックスは、表12及び13のプローブの加重平均である。細胞株における重み付けが患者の腫瘍標本の最適な重み付けを反映するとは期待されなかったので、細胞株の重量は1と−1に(符号付き、等しい加重平均に対応する)制限された。ここで、符号は細胞株のIC25による、抗CD40Ab.1に対する耐性と各々のプローブとの間の相関に合致した。臨床集団ごとに、新しい重み付けが必要である。21の試料だけに基づいた予備的解析として、14プローブのうちベスト8について選択し、加重を推定するために、罰則付き多変量回帰手法を使用することを選択した。それらの重み付け(係数)を表14に示し、結果として生じる感受性インデックスと治験期間開始前からのSPD変化との間の相関を図7に図示する。より大きい多変量の感受性インデックス値は、最終観察時点までのSPD減少と相関する(スピアマンのRho=−0.58、P=0.006)。表13、14及び15の全ての範囲は、DLBCL患者試料(N=21)から置き換えて標本抽出する5000回の繰り返しに基づいてブートストラップ第95パーセンタイル信頼区間として計算した。サンプルサイズが増加する場合は、より狭い範囲で可能である。

【0172】
臨床試験001由来の26試料を使用して、μ及びσの得られた値の範囲を表15に示す。

【0173】
(臨床試験002結果)
生のqRT−PCR結果は、アーカイブ標本を有する10人患者について成功裏に作成された。それらの10人の患者について、診断、治療群、多変量感受性インデックス、臨床応答及び治験開始前からのSPD変化を表16に示す。多変量の感受性インデックス加重は21人の臨床試験001患者(表14)から取られ、その結果これらの患者はセットされる非常に小さい検証セットを構成する。 感受性インデックス≧0を有する4人患者のうちの2人は抗CD40Ab.1暴露後腫瘍収縮を示し、感受性インデックス<0を有する6人の患者のうちの4人は腫瘍増加又はPDの最大応答を示した(SPDは2人の患者について入手出来なかったが、最高の臨床効果の結果がこの患者について入手できた)。

【0174】
(BCL6)
qRT−PCRアッセイは、BCL6遺伝子の第15プローブを含む。現在、多変量の感受性インデックスで使われていないが、それは以前に抗CD40Ab.1に対する応答性の潜在的予測因子として同定された。図8に示すように、合わせたDLBCL患者試料(P=0.25、N=26)のSPD変化は有意に相関しないが、腫瘍増加があった患者においてBCL6が低下する傾向がある(rho=−0.23)。
【0175】
前述の本発明はより明確な理解を目的として、図と例を用いて若干詳細に記載されているが、明細書の記載及び実施例は本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD40抗体治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測するための方法であって、
(a)前記患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料における1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを測定する工程であって、前記1又は複数のマーカー遺伝子がIFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7からなる群から選択される工程;及び
(b)工程(a)から前記1又は複数のマーカー遺伝子の測定された発現レベルに基づいて抗CD40抗体治療に対して患者が応答する可能性があるかについて予測する工程
を含む方法。
【請求項2】
測定された発現レベルが正規化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗CD40抗体治療はアゴニスト抗CD40抗体による治療であり、対照標準レベルと比較した、1又は複数のIFITM1、CD79B、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1及びPUS7の増大した発現は、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答する可能性が低いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に増大した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対照標準レベル決定用の患者由来の試料は、抗CD40抗体治療に対する応答性が予測される患者由来の試料と同タイプのBリンパ腫細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗CD40抗体治療はアゴニスト抗CD40抗体による治療であり、対照標準レベルと比較した、1又は複数のCD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD22、BTG2及びUAP1の増大した発現は、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答する可能性が高いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対照標準レベル決定用の患者由来の試料は、抗CD40抗体治療に対する応答性が予測される患者由来の試料と同タイプのBリンパ腫細胞を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アゴニスト抗CD40抗体は、CD40を刺激し、CD40とCD40リガンドとの間の相互作用を促進する、請求項3から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
アゴニスト抗CD40抗体は、配列番号1に示す重鎖アミノ酸配列と配列番号2に示す軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アゴニスト抗CD40抗体は、CD40を刺激し、CD40とCD40リガンドとの間の相互作用を促進あるいは阻害しない、請求項3から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13又は14のマーカー遺伝子の発現レベルが測定される、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
IFITM1、RGS13、CD79B、CD22、BTG2、CD44、EPDR1及びUAP1の発現レベルが測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
B細胞リンパ腫がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
B細胞リンパ腫が非ホジキンリンパ腫である、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
非ホジキンリンパ腫が、ろ胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周縁帯リンパ腫又は小リンパ球性リンパ腫である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Bリンパ腫細胞はホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料である、請求項1から16に記載の方法。
【請求項18】
1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルが1又は複数のマーカー遺伝子のRNA転写産物のレベルによって測定される、請求項1から17に記載の方法。
【請求項19】
RNA転写産物はqRT-PCRによって測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルは、1又は複数のマーカー遺伝子のタンパク質発現レベルによって測定される、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
BCL6の発現レベルを測定することを更に含む、請求項1から20の何れか一項に記載の方法であって、対照標準レベルと比較したBCL6のより高い発現レベルは、患者が抗CD40抗体治療に対して応答する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項22】
対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、BCL6の発現レベルに基づいて決定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
B細胞リンパ腫を有する患者のための個人用のゲノミクス・プロフィールを調製する方法であって、
(a)IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1、PUS7及びBCL6からなる群から選択される1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを前記患者から得られたBリンパ腫細胞を含む試料において測定する工程;および
(b)工程(a)から得られた1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルをまとめた報告書を作成する工程を含む方法。
【請求項24】
発現レベルが正規化されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14又は15のマーカー遺伝子の発現レベルが測定される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
IFITM1、RGS13、CD79B、CD22、BTG2、CD44、EPDR1及びUAP1の発現レベルが測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
報告書は、患者用の抗CD40抗体治療の推奨事項を含む、請求項23から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
抗CD40抗体治療はアゴニスト抗CD40抗体による治療であり、対照標準レベルと比較した、1又は複数のIFITM1、CD79B、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1及びPUS7の増大した発現は、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答する可能性が低いことを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に増大した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対照標準レベル決定用の患者由来の試料は、個人用ゲノミクス・プロフィールが調整される患者由来の試料と同タイプのBリンパ腫細胞を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗CD40抗体治療はアゴニスト抗CD40抗体による治療であり、対照標準レベルと比較した、1又は複数のCD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD22、BTG2及びUAP1の増大した発現は、前記患者がアゴニスト抗CD40抗体治療に応答する可能性が高いことを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
対照標準レベルは、抗CD40抗体治療後に減少した腫瘍量を有する患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料における、対応するマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対照標準レベル決定用の患者由来の試料は、個人用ゲノミクス・プロフィールが調整される患者由来の試料と同タイプのBリンパ腫細胞を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アゴニスト抗CD40抗体は、CD40を刺激し、CD40とCD40リガンドとの間の相互作用を促進する、請求項28から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
アゴニスト抗CD40抗体は、配列番号1に示す重鎖アミノ酸配列と配列番号2に示す軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
アゴニスト抗CD40抗体はCD40を刺激し、CD40とCD40リガンドとの間の相互作用を促進あるいは阻害しない、請求項28から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
B細胞リンパ腫がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項23から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
B細胞リンパ腫が非ホジキンリンパ腫である、請求項23から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
非ホジキンリンパ腫が、ろ胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周縁帯リンパ腫又は小リンパ球性リンパ腫である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
Bリンパ腫細胞はホルマリン固定されパラフィン包埋された生検試料である、請求項23から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルが1又は複数のマーカー遺伝子のRNA転写産物のレベルによって測定される、請求項23から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
RNA転写産物はqRT-PCRによって測定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルは、1又は複数のマーカー遺伝子のタンパク質発現レベルによって測定される、請求項23から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
抗CD40抗体治療に対するB細胞リンパ腫を有する患者の応答性を予測する方法であって、
(a)患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料において、IFITM1、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD79B、CD22、BTG2、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、UAP1及びPUS7から成る群から選択される少なくとも2つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定する工程、
(b)以下の式

によって、工程(a)におけるマーカー遺伝子の測定された発現レベルに基づいて感受性インデックス値(SI)を計算する工程であって、
表13に示す正の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子及び負の相関値を有する少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルが測定される工程;
を含んでなり、
(i)βは測定された各マーカー遺伝子のための係数値であり;(ii)pは測定されたマーカー遺伝子の数であり;(iii)χは患者由来の試料の、測定された各マーカーの発現レベルについて、変換され正規化された発現レベルであり;及び(iv)μ及びσは測定された各マーカー遺伝子の平均及び標準偏差であり;ここで、β、μ及びσは臨床試験由来のBリンパ腫細胞を含む患者試料から測定されたものであり;
感受性インデックスのゼロ以上の値は患者が抗CD40抗体治療に対し応答する可能性が高いことを示し、又は感受性インデックスのゼロ未満の値は抗CD40抗体治療に対し応答する可能性が低いことを示す、方法。
【請求項45】
少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13又は14のマーカー遺伝子の発現レベルが測定され、感受性インデックス計算のために使用される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
IFITM1、RGS13、CD79B、CD22、BTG2、CD44、EPDR1及びUAP1の発現レベルが測定され、感受性インデックス計算のために使用される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
β、μ及びσは抗CD40抗体治療に対する応答性を予測される患者由来の試料と同タイプのBリンパ腫細胞を有する患者試料から測定された、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料において、IFITM1、CD79B、IGF1R、CD44、CTSC、EPDR1、PUS7、CD40、RGS13、VNN2、LMO2、CD22、BTG2及びUAP1からなる群から選択される少なくとも1つのマーカー遺伝子の発現レベルを測定するための試薬を含むキット。
【請求項49】
試薬が、qRT-PCRによって各マーカー遺伝子の発現レベルを検出するために特異的な少なくとも1対のプライマー及びプローブを含む、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
測定される1又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて、B細胞リンパ腫を有するヒト患者が抗CD40抗体治療に応答する可能性が高い場合を評価するための指示書を更に含む、請求項48又は49に記載のキット。
【請求項51】
前記1対のプライマー及びプローブが配列番号27、28及び29;配列番号60、61及び62;配列番号93、94及び95;配列番号24、25及び26;配列番号57、58及び59;配列番号90、91及び92;配列番号114、115及び116;配列番号126、127及び128;配列番号30、31及び32;配列番号63、64及び65;配列番号96、97及び98;配列番号12、13及び14;配列番号45、46及び47;配列番号78、79及び80;配列番号141、142及び143;配列番号150、151及び152;配列番号159、160及び161;配列番号15、16及び17;配列番号48、49及び50;配列番号81、82及び83;配列番号9、10及び11;配列番号42、43及び44;配列番号75、76及び77;配列番号6、7及び8;配列番号39、40及び41;配列番号72、73及び74;配列番号174、175及び176;配列番号180、181及び182;配列番号186、187及び188;配列番号165、166及び167;配列番号168、169及び170;配列番号171、172及び173;配列番号21、22及び23;配列番号54、55及び56;配列番号87、88及び89;配列番号129、130及び131;配列番号132、133及び134;配列番号135、136及び137;配列番号138、139及び140;配列番号147、148及び149;配列番号156、157及び158;配列番号177、178及び179;配列番号183、184及び185;及び配列番号189、190及び191から成る群から選択される、請求項49に記載のキット。
【請求項52】
患者由来のBリンパ腫細胞を含む試料においてBCL6の発現レベルを測定するための試薬を更に含む、請求項48から51の何れか一項に記載のキット。
【請求項53】
試薬が、qRT−PCRによってBCL6の発現レベルを検出するための少なくとも1対のプライマー及びプローブを含む、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
前記1対のプライマー及びプローブが配列番号102、103及び104又は配列番号108、109及び110である、請求項53に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図6−8】
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【図6−9】
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【図6−10】
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【図6−11】
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【図6−12】
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【図6−13】
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【図6−14】
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【図6−15】
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【図6−16】
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【図6−17】
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【図6−18】
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【図6−19】
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【図6−20】
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【図6−21】
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【図6−22】
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【図6−23】
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【図6−24】
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【図6−25】
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【図6−26】
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【図6−27】
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【図6−28】
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【図6−29】
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【図6−30】
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【図6−31】
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【図6−32】
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【図6−33】
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【図6−34】
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【図6−35】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−504102(P2011−504102A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533308(P2010−533308)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082920
【国際公開番号】WO2009/062125
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】