説明

抗PSGL−1抗体並びにその同定及び使用方法

本発明は、高い親和性及び特異性でヒトPセレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL−1)と結合し、白血球、リンパ球、及び内皮細胞上で発現されるPSGL−1に対するセレクチン結合もケモカイン結合も阻止する、従って、これらの細胞の遊走及び/又はローリングを抑制する抗体及びその結合断片、そのような抗体及びその結合断片を求めてスクリーニングする方法、並びに、その治療用途を対象としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PSGL−1に結合する抗体及びその抗原結合性フラグメント、炎症性及び血栓性の状態の治療におけるその使用方法、並びに、PSGL−1抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セレクチン及びP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)
体は、感染及び外傷に応答して、一連の多段階の接着及びシグナル伝達事象を介して炎症反応を制御する[1−3]。このプロセスを開始するために、循環白血球は、流れのずり応力の下、第一に血管壁に接着しなければならない。セレクチンは、白血球を内皮細胞、血小板、又は、他の白血球上で繋ぎ止める及び転がすことによって特徴づけられるこの第1の接着ステップを媒介する[4、5]。Pセレクチンは、活性化の血小板及び内皮細胞上で発現され、大部分の白血球上でリガンドに結合する。Lセレクチンは、大部分の白血球上で発現され、一部の内皮細胞上及び他の白血球上でリガンドに結合する。Eセレクチンは、サイトカインにより活性化される内皮細胞上で発現され、同様に、大部分の白血球上でリガンドに結合する。セレクチン及びそのリガンドの発現はしっかりと制御され、炎症反応を開始及び停止している。これらの分子の不適正な発現は、多くの炎症性及び血栓性障害において、白血球により媒介される組織損傷に寄与する[6]。
【0003】
3種類のセレクチン全てが、NH末端C型レクチンドメイン、EGF様ドメイン、変化する一連のショートコンセンサスリピート、膜貫通ドメイン、及び、短い細胞質側末端を有した1型膜糖タンパク質である。セレクチンは、特異的な複合糖質リガンドとのレクチンドメインの相互作用を介して細胞間接着を媒介する。セレクチンは、四糖シアリルルイスX(sLe、NeuAcα2,3Galβ1,4[Fucα1,3]GlcNAc)、及び、その異性体シアリルルイスa(sLe;NeuAcα2,3Galβ1,3[Fucα1,4]GlcNAc)に対して低い親和性で結合する。Eセレクチンを除いて、P及びLセレクチンも、ヘパラン硫酸等のシアル酸及びフコースを欠く特定の硫酸化炭水化物に結合する[4、5、7]。セレクチンは、いくつかの糖タンパク質にのみ、より高い親和性又は結合力で結合する。ほとんどが、多数のSer/Thrが結合したオリゴ糖(O−グリカン)及び反復ペプチドモチーフを有した糖タンパク質のムチンである[4、5]。P及びEセレクチンのレクチンドメインに結合されたsLeの結晶構造は、フコースと、1つのCa2+イオンと、そのCa2+を配位させるものを含めたいくつかのアミノ酸との相互作用のネットワークを示した[8]。シアル酸及びガラクトースも、レクチンドメインと相互作用する。マウスにおける遺伝子コード化α1,3フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−TVII)の標的破壊は、セレクチンにより媒介された白血球の輸送を有意に減らす。Fuc−TVII及びFuc−TIVのどちらに対する遺伝子の破壊も、これらの相互作用を完全に除去し[9、10]、全ての生理学的に関連するセレクチンリガンドはα1,3が結合されたフコースを要するということを示している。
【0004】
PSGL−1は、白血球上のPセレクチンに対する特異的な糖タンパク質リガンドである。
【0005】
PSGL−1(CD162)は、Pセレクチンに対する特異的なリガンドであると示されてきた。リガンドブロッディング及びアフィニティークロマトグラフィーを使用した初期の研究は、Pセレクチンがヒト骨髄性細胞における単一の糖タンパク質に優先的に結合することを示した[11]。糖タンパク質(今はPセレクチン糖タンパク質リガンド−1又はPSGL−1として知られている)は、還元及び非還元の条件下でのSDS−PAGEによって、2つの120−kDサブユニットを有した、ジスルフィドが結合されたホモ二量体であると示された。ペプチドN−グリコシダーゼFを用いた消化は、PSGL−1がPセレクチンに結合するには必要とされていないN−グリカンを多くとも2つ又は3つ有することを実証した[11]。シアリダーゼを用いた処理は、α2,3結合されたシアル酸がPセレクチン結合に必要とされることを示し、PSGL−1は機能的なシアル酸付加されたO−グリカンを発現することを示した。糖タンパク質は、sLe抗原を含有し、さらに、糖タンパク質をO−シアロ糖タンパク質エンドペプチダーゼでの切断に影響されやすくするシアル酸付加されクラスター化されたO−グリカンを多く有するとわかった[12]。O−シアロ糖タンパク質エンドペプチダーゼを用いた無処置の骨髄性細胞の処理は、全体のsLe表面発現に影響を及ぼすことなく、Pセレクチンに対する高親和性の結合部位を除去する[12、13]。PSGL−1における抗体ブロッキング調査及び遺伝子削除は、PSGL−1が白血球上のP及びLセレクチンに対する優性リガンドであることを実証している。PSGL−1のN−末端ドメインを模倣する合成グリコスルホペプチドを用いた調査は、Pセレクチンが、コア−2 O−グリカン上に、硫酸化チロシン残基、隣接するペプチド決定基、並びに、フコース、ガラクトース、及びシアル酸の残基を含有する3つに分かれたドメインの認識を介して立体特異的な様式でPSGL−1のアミノ末端に結合することを示した[14、15]。PSGL−1由来のグリコスルホペプチドと複合体を形成したPセレクチンの結晶構造は、広く浅い結合面を明らかにした[8]。sLeとのCa2+依存的相互作用は、硫酸化チロシン及び他のアミノ酸とのCa2+非依存的接触によって増大された。これは、Pセレクチンが、sLeのみに対するよりもPSGL−1に対してより高い親和性で結合する理由を説明している。
【0006】
PSGL−1の一次構造
cDNAコード化PSGL−1は、固定化されたPセレクチン上で作動されたCOS細胞を使用した発現クローニングによってヒトHL−60細胞ライブラリーから単離された[16]。COS細胞におけるPSGL−1の機能発現は、α1,3フコシルトランスフェラーゼを用いた同時形質移入を必要とし、表面糖タンパク質のα1,3フコシル化もα2,3シアル酸付加もPセレクチンへの結合に必要とされるという初期の観察を確証した[17]。PSGL−1の推定アミノ酸配列(SEQ ID番号:1)は、対の塩基性アミノ酸変換酵素によって切断されるプロペプチド、NH末端シグナルペプチドを有した、402個のアミノ酸の1型膜タンパク質を明らかにしている。成熟タンパク質の細胞外ドメインは、残基42にて始まり、ムチンの特徴を有しており、セリン、スレオニン、及びプロリンに富み、15個の十量体の繰返しを含んでいる。残基46、48、及び51の3つのNH末端チロシンは、チロシン硫酸化を好むアニオン性コンセンサス配列に位置している。単一の細胞外システインが、69個の残基の細胞質ドメインが続く膜貫通ドメインの接合部に位置する。マウスPSGL−1に対するcDNAは、ヒトタンパク質に類似のサイズのタンパク質を明らかにしている。マウスPSGL−1は、膜貫通ドメインの付近に、シグナルペプチド、プロペプチド、及び、単一のシステインも有している[18]。さらに、マウスPSGL−1は、3つではなく2つのチロシンを有したアニオン性のNH末端配列を有している。マウス及びヒトの膜貫通並びに細胞質ドメインの配列は大いに保存され、重要な機能を意味している。マウスの細胞外ドメインは、セリン、スレオニン、及びプロリンに富んでいるけれども、10個の十量体の繰返しのみを有しており、ヒトのタンパク質とは配列類似性をほとんど共有していない。単一のエクソンは、ヒトPSGL−1遺伝子においてもマウスPSGL−1遺伝子においてもオープンリーディングフレームをコード化する[18、19]。大部分のヒト白血球におけるPSGL−1の配列は、HL−60細胞及び他の細胞系由来のタンパク質には存在しないさらなる十量体の繰返しを有している[19、20]。ヒトPSGL−1は硫酸化される[21〜23]が、硫酸が、O−グリカンではなくチロシン残基上に排他的に存在する[24、21]。硫酸化は、SEQ ID番号:1の残基46、48、及び51の3つのクラスター化されたチロシンのうち1又は複数のチロシンの上で生じる[22、23]。硫酸の酵素による除去[21]、硫酸合成の阻害[22、23]、3つのクラスター化されたチロシンを含有するNH2末端断片のタンパク分解性の除去[25]、又は、チロシンのフェニルアラニンとの置換[22、23、26]によって、PセレクチンへのPSGL−1の結合が除去される。PSGL−1の他の構造的特徴も、Pセレクチンへの最適な結合に対して重要であり得る。チロシンを取り囲む酸性の残基は、硫酸化チロシンの不足において十分ではないけれども、結合を好む場合がある。
【0007】
L及びEセレクチンに結合するPSGL−1
PSGL−1は、Lセレクチンにも[27〜29]Eセレクチンにも[16、30〜32]結合するとして示されてきた。LセレクチンへのPSGL−1の結合は、mAb PL1によって[27〜29、33]、NH末端のクラスター化されたチロシンの酵素による除去によって[29]、又は、硫酸合成の防止によって[29]阻止される。これらの結果により、L及びPセレクチンが、硫酸化チロシンも1又は複数のO−グリカンも必要とするPSGL−1における類似のNH末端領域に結合することが示唆される。Lセレクチンは、リンパ節高内皮性細静脈(HEV)上、及び、一部の活性化された内皮細胞上で発現されたムチンのグループに結合する。これらのムチンは、CD34、GlycCAM−1、及び、ポドカリキシンを含む。PSGL−1は、P又はLセレクチンとははるかに異なってEセレクチンに結合する。コア−2、シアル酸付加及びフコシル化されたO−グリカンは、Eセレクチンに結合するために必要とされる[34]が、硫酸化チロシンは必要とされない[22、23、34]。Pセレクチンが結合する時よりも低い親和性ではある[30]が、EセレクチンもPSGL−1のNH末端領域に結合する[30、35]。抗PSGL−1mAb PL1は、EセレクチンへのPSGl−1の結合に対して影響をほとんど有さないか又はまったく有さない。このデータ及び他のデータによって、EセレクチンはPSGL−1上の1又は複数の依然として特徴づけられていない部位にも結合することが示されている[35、36]。マウスにおけるPSGL−1の遺伝子削除は、インビトロ及びインビボでのEセレクチンに対する白血球のつなぎを弱める[37]。これは、P及びLセレクチン上のデータと組み合わされ、PSGL−1が3つのセレクチン全てに対する生理学的に関連がある糖タンパク質リガンドであることを確立している。
【0008】
PSGL−1の組織分布
ノーザンブロット解析によって、PSGL−1に対するmRNAが多くのヒト及びマウスの器官において発現されることが示されたが、発現された特定の細胞は示されなかった[16、18]。抗PSGL−1mAb PL1又はPL2を用いた多数のヒト組織のフローサイトメトリーによる免疫細胞化学的解析によって、PSGL−1コアタンパク質は主として造血細胞において発現されることが明らかになった[20、38]。骨髄では、成熟の多くの段階にて骨髄性細胞上で発現されるが、赤血球細胞、巨核球、又は血小板では発現されない。PSGL−1は、実質的には全ての白血球上で発現されるが、B細胞では低いレベルで発現される。Pセレクチンは、全ての骨髄性細胞上のPSGL−1に結合する[20]が、しかし、T細胞のサブセット上でだけPSGL−1に結合し[20、39]、これらのほとんどが記憶細胞であり[40]、大部分はγ/σ細胞であり得る[41]。PSGL−1は、循環樹状細胞上で、樹状細胞由来の組織の単球上で、及び、リンパ器官における一部の樹状細胞上で発現され、これらの細胞内でのタンパク質の機能はまだ知られていない。PSGL−1は、一部のCD34幹細胞上でも発現され[38]、そこでPセレクチンに結合することができる[42]。PSGL−1タンパク質は、ファロピーオ管を裏打ちする上皮細胞上でも、慢性炎症の部位の一部の上皮細胞内においても[38]、並びに、上皮細胞及び腸粘膜裏打ちの固有層内においても発現される[126]。Pセレクチンは、ブタの精子の表面上に存在し、そこで、ブタの卵母細胞の透明帯上のPSGL−1に関連され得るPセレクチンリガンドに結合することが報告された[43]。
【0009】
PSGL−1−セレクチン相互作用は、水力学的な流れの下での白血球の繋ぎ止め及びローリングを媒介する。
【0010】
セレクチンとのPSGL−1の相互作用における機能的な有意性が同定されてきた。水力学的な流れの下で、セレクチン−リガンドの相互作用は、繋ぎ止めを促進するよう迅速に形を成し、次に、ローリングを促進するよう迅速に分離しなくてはならない。セレクチン−リガンドの結合は、ずり応力が分離の速度を有意に早めないように機械的強度を有さなくてはならない[1]。白血球上には比較的少ないPSGL−1のコピーがあり[13、20]、PSGL−1は、ごくわずかのsLe含有グリカンの合計のみを細胞表面上に示す[12]。しかし、PSGL−1は、未処置の白血球上のPセレクチンに対する唯一の高親和性リガンドであり[20]、PSGL−1は、Pセレクチンへの白血球の接着を媒介するのに必要不可欠なリガンドである。抗PSGL−1mAb PL1は、流れの下、Pセレクチン上でのヒト好中球、好酸球、及び単核細胞の繋ぎ止め及びローリングを阻止する[20、44]。PL1は、静的条件下での、Pセレクチンへの好中球及び単核白血球の接着も無効にする[20、45、46]。マウスPSGL−1のNH末端エピトープに対するPL1 mAbは、流れの下で、Pセレクチン上でのマウス骨髄性細胞の繋ぎ止め及びローリングを阻止するとして示されてきた[47]。このように、PセレクチンとのPSGL−1の相互作用は、ずり応力下での、活性化された内皮細胞に対する白血球の接着も血小板に対する白血球の接着も媒介する。PSGL−1がPセレクチンに対する白血球の接着を媒介するのに必要なものは、おそらく、他のリガンドの関連するその優れた結合親和性をある程度もたらす。細胞表面上のPSGL−1の向きもPセレクチンの向きも、水力学的な流れの下、その相互作用を最適化することもできる。PセレクチンもPSGL−1も非常に拡張されたタンパク質であり、そのNH末端結合ドメインを細胞表面の多糖外被のほとんどを超えて突出する[13、26]。PSGL−1上のO−グリカンのほとんどが、主として、原形質膜を超えてNH末端領域を拡張するよう機能することができる。形質移入されたCHO細胞上で発現される場合、より少ないショートコンセンサスリピートを有する短縮されたPセレクチンコンストラクトは、流れの下、好中球の繋ぎ止め及びローリングを媒介することにおいて、野生型Pセレクチンよりもはるかに効果が低い[36]。PSGL−1は、微絨毛の先端上でも濃縮される[20、48]。このように、PSGL−1及びPセレクチンの長さも表面分布も、迅速で特異的な相互作用を高めることができるが、並列する細胞表面間での非特異的な反発を最小限にする。好中球の活性化後、PSGL−1は、極性細胞のウロポッド(uropod)に対する細胞骨格依存的再分布を受ける[48〜50]。この再分布は、Pセレクチンへの接着を弱めること、及び、インテグリンまで接着の制御を移すことに付随する[49、50]。PSGL−1のように、Lセレクチンも、微絨毛の先端上で濃縮される[51]。白血球は、Lセレクチンを使用して、接着性白血球上を転がる[52]か、又は、白血球集合を開始する[53]。白血球−白血球の相互作用は、ずり応力下での、P又はEセレクチン表面への白血球における第2の繋ぎ止め、血管壁に対する白血球の漸増が拡大する有望な機構を生じる[27、54]。流れる白血球は、精製されたPSGL−1上を転がり、この相互作用は、Lセレクチンに対するPL1及びmAbによって阻止される[27]。さらに、PL1は、接着性好中球上の好中球のLセレクチン依存的ローリング[27]、及び、撹拌された好中球のLセレクチン依存的集合[33]を有意に抑制する。これらのデータは、PSGL−1が、少なくともいくつかの条件の下、Lセレクチンにとって重要なリガンドであることを示唆している。しかし、白血球−白血球の接触に関与するLセレクチンリガンドがPSGL−1の他にある[27、54、55]。PSGL−1は、Eセレクチンに十分に結合するヒト白血球のライセートにおけるたった少数の糖タンパク質のうちの一つであり得る[33、56]。組換えPSGL−1で被覆された微粒子も、ずり応力の下、固定化されたEセレクチン上を転がる[35]。しかし、PSGL−1がEセレクチンへの白血球の接着に対していかなる重要な機能も有しているかどうかは明らかではなく、それはこれから実証されることになるであろう。PL1は、流れの下、Eセレクチン上の転がる好中球の蓄積を部分的に減らす[36]。しかし、この効果は、好中球間のLセレクチン−PSGL−1の相互作用の抑制を介して間接的に生じ、従って、Eセレクチンへの好中球の第2の繋ぎ止めを減らす[36]。PL1は、流れる白血球のPセレクチンへの第一次繋ぎ止めを遮断するが、Eセレクチンへの繋ぎ止めは遮断しない[36、54]。FTVIIを形質移入されたヒトK562細胞は、PSGL−1の非存在下でEセレクチン上を転がる[57]。逆に、PSGL−1を発現するが比較的わずかな総sLe量を発現する好酸球は、PセレクチンよりもEセレクチン上ではるかに低い効率で係留し転がる[44、58]。共に、これらのデータは、流れの下白血球の結合を媒介するためには、EセレクチンがPSGL−1以外のリガンドに結合しなくてはならないことを示唆している。
【0011】
PSGL−1を介したシグナル伝達
白血球漸増の多段階モデルにおいて、内皮細胞又は血小板上を転がる白血球は、インテグリン依存的な安定した接着及び他の応答を生じるよう白血球を刺激する局部的に現れたケモカイン及び脂質オータコイドに直面する。しかし、シグナルは、接着分子を介して直接送ることもできる[3]。白血球上でのPSGL−1へのPセレクチンの結合がシグナルを生じ、そのシグナルが、大部分のエフェクター応答を誘発するために他のアクチベーター由来のシグナルと統合されなければならないということが、利用可能なデータによって示唆される[3]。最もよく調査された例において、単球は転写因子NFkBを固定化し、細胞が、固定化されたPセレクチン及び血小板活性化因子に付着するが個々の分子には付着しない場合に、サイトカインTNFα及び単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を合成する[45]。単球は、Pセレクチン及び血小板由来のケモカイン、RANTESに曝露される場合に、異なる特性のサイトカインを分泌するが、個々のタンパク質に曝露される場合には分泌しない[46]。いくつかの条件の下、PSGL−1及び従来のアクチベーターに対する受容体を介した協同的シグナル伝達は、他の白血球応答も生じ得る[3、59]。PセレクチンへのT細胞の接着が、pp125接着斑キナーゼ(FAK)のチロシンリン酸化を誘発すると報告されたが、この事象におけるPSGL−1の役割は直接検査されなかった[60]。pp125FAKは、ヒト骨髄系細胞においては検出されなかった[61]。しかし、二価mAbs又は固定化されたPセレクチンとのPSGL−1の結合は、ヒト好中球における他のタンパク質の迅速なチロシンリン酸化を誘発する[62]。これらは、PSGL−1結合によって活性化される、ERKファミリーのマイトジェン活性化プロテインキナーゼを含む。mAbsとのPSGL−1の結合は、好中球がIL−8を分泌するよう刺激するのに十分である。この分泌は、チロシンキナーゼ阻害剤によって遮断され、PSGL−1を介して伝播されるチロシンリン酸化が生理学的に重要であり得ることを示唆している[62]。Lセレクチンの架橋結合も、骨髄系細胞内にもリンパ系細胞内にもシグナルを迅速に伝える[63−68]。このように、白血球−白血球の相互作用中のPSGL−1へのLセレクチンの結合は、白血球漸増の最も早い段階の間に、双方向性の潜在的に協同的なシグナルを伝えることができる。
【0012】
PSGL−1−セレクチン相互作用の生理学的及び病理学的機能
最近のインビボでの研究は、PSGL−1が生理学的に重要なセレクチンリガンドであるというインビトロでの実験からの予測を確信させた。抗PSGL−1mAbsは、インビボで後毛細管の細静脈において発現されたPセレクチン上でのヒトの白血球のローリングもマウスの白血球のローリングも抑制する[47−69]。マウスPSGL−1のNH−末端セグメントに対して作られたポリクローナル抗体は、遅延型過敏モデルにおいてヘルパーT1リンパ球の漸増を特異的に抑制する[47]。マウスPSGL−1のNH−末端領域に対するmAbも、化学的に刺激された腹膜内への好中球の蓄積を抑制する[47]。抑制の程度は、Pセレクチンに対してmAbを用いて観察された程度に匹敵する。より完全な抑制は、PSGL−1に対するmAbとPセレクチンに対するmAbとの併用で観察され、PSGL−1が少なくとも1つの他の分子と相互作用することを示唆している。PSGL−1へのLセレクチンの結合が白血球−白血球相互作用を媒介するというインビトロでの証拠を考慮に入れると、明白な候補はLセレクチンである。PSGL−1は、P及びLセレクチン両方を介した接着性相互作用を促進するため、P及びLセレクチンが前に関係づけられた種々の炎症性及び血栓性障害において病理学的な白血球漸増に寄与することはほぼ確かである[6]。これは、PSGL−1の可溶型であるPSGL−1に対するmAb、及び、PSGL−1機能の他の阻害剤が、そのような条件において潜在的に有用な抗炎症の薬物であることを示唆している。この概念を支持するとして、組換え可溶性PSGL−1の注入が、虚血及び再灌流に晒されたラットの腎臓における白血球の浸潤及び柔組織のダメージを強力に抑制する。PSGL−1のNH−末端領域のタンパク質除去は、その保護効果を抑止する[70]。これは、可溶性のPSGL−1がこのモデルにおいてPセレクチンへの白血球の接着、及び、おそらくLセレクチンへの白血球の接着を遮断することを意味している。他の病理学的状態において、可溶性のPSGL−1は、白血球の表面上のPSGL−1がEセレクチンに対して優性のリガンドでない場合でさえも、効果的なEセレクチン阻害剤でもあり得る。P及びEセレクチンを遮断するmAbの使用は、感染及び変化した血液生成に対して上げられた感受性を示したダブルP/E−/−ノックアウトマウスにおけるデータによって支持することはできない[71]。
【0013】
抗PSGL−1抗体の開発及びPSGL−1上でのその結合エピトープの特徴づけ
ヒトPSGL−1に対する機能遮断マウスモノクローナル抗体がいくつか開発されてきた。PL1と名付けられたマウスモノクローナル抗体は、ヒト好中球からのPSGL−1によるマウスの免疫化によって標準的な雑種細胞技術を使用して開発された[34]。PL1は、オーバーラップ八量体ペプチドがPSGL−1の残基19−77をスパニングした直線的なエピトープマッピングを使用して、未変性ヒトタンパク質の残基49−62を包囲する14アミノ酸エピトープ(SEQ ID番号:1)に結合するとして示された。PL1は、静的な接着アッセイにおいて及び流れの下、Pセレクチンへの白血球の接着を遮断するとして示された[20]。KPL−1と名付けられた別の抗ヒトPSGL−1抗体が、PSGL−1の組換え型によるマウスの免疫化によって開発された。KPL1は、フローアッセイにおいてPセレクチンと精製されたCD4T細胞と好中球との相互作用を抑制し、Lセレクチンを形質移入されたリンパ系細胞とPSGL−1を発現するCOS細胞との相互作用を抑制したが、Eセレクチン上でのPセレクチン又は好中球の相互作用を遮断しなかった[72]。KPL1は、後に、PL1の結合ドメインによって包囲された17塩基長の合成ペプチドに結合するとして示された[73]。RR2r3s4−1と名付けられた別の抗体は、酵母細胞表面ディスプレイの非免疫ライブラリーから同定されたPSGL−1結合剤のプールから単離された単鎖Fv由来の完全にヒトの抗体として操作された[74、125]。RR2r3s4−1は、流れの下、好中球の接着を遮断し、ヒトPSGL−1に特異的であるが、マウスのPSGL−1には特異的ではないと示された。
【0014】
最近の研究によって、セレクチンとのその結合と共に、PSGL−1がケモカインとも相互作用して第2のリンパ器官へのT細胞のホーミングを促進するという二重機能の役割をPSGL−1が果たすことも示された[75−76]。
【0015】
ケモカイン
ケモカインは、分子量が6から14kDに及ぶ70〜125個のアミノ酸から成る非常に塩基性のタンパク質である[77、78]。現在まで、50個を超えるケモカインが同定されてきた。ケモカインのスーパーファミリーは、C、CC、CXC、及び、CX3Cメンバーと呼ばれる、N末端領域に位置したシステイン残基の配置に基づき下位分類され、CはN末端領域におけるシステイン残基の数を表し、Xは最初の2つのシステイン間の介在するアミノ酸の数を示している[77、79、80]。CXCサブファミリーは、これらのケモカインの一次アミノ酸配列における第1のシステイン残基に先行するトリプレットアミノ酸モチーフ(Glu−Leu−Arg)の有無に基づき、ELR+型及びELR型にさらに分類される場合がある。このモチーフの存在は、CXCケモカインのこのサブセットに血管新生機能を与え、一方、血管新生のSDF−1[82]を除いて、ELRケモカインは血管新生抑制の特性を有する[81]。一般に、ケモカインは、異なるクラスの白血球を引きつけ:CCケモカインは、1又は複数のクラスの単核細胞、好酸球、及び好塩基球を引きつけ;ELR+CXCケモカインは好中球を引きつけ;ELR−CXCケモカインはリンパ球を引きつけ;Cケモカイン(リンホタクチン)はT細胞を引きつけ、CX3Cケモカイン(フラクタルカイン)は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、及び単球に作用する[83]。ケモカインは、種々の細胞型によって恒常的に又は炎症性の刺激に応じて産生される。ケモカインは、その発現パターン及び免疫系の機能に基づき、恒常性と炎症性のカテゴリーに大まかに分けることができる[78、80]。恒常性ケモカインは、一般に、「恒常的に」発現されるケモカインであり、恒常性リンパ球及び樹状細胞(DC)の輸送、並びに、リンパ組織の器官形成に関与する。「炎症性」ケモカインは、炎症誘発性刺激によって上方制御され、自然免疫応答及び適応免疫応答を組織化するのに寄与する。大部分のケモカインが可溶型で存在し、一部のケモカインが細胞表面上のグルコサミノグリカン部分と付随することができるけれども、ケモカインのうち2つ、すなわち、CX3CL1(フラクタルカイン)及びCXCL16は、それらを産生する細胞の膜上に付着する天然のムチンストーク(stalk)を有している[84、85]。その「ケモカイン」ドメインは、ムチンストークのN末端に位置しており、メタロプロテイナーゼの切断によって遊離され得る。CX3CL1及びCXCL16の可溶性で遊離されたケモカインドメインは他の分泌されたケモカインと同様に機能するけれども、その膜結合型は、白血球−内皮細胞接着及び血管外遊走を媒介することにおいて重要な役割を果たす。ケモカインは、Gタンパク質が結合した細胞表面受容体に結合することによってその生物学的効果を働かせる。6個のCXC受容体(CXCR1−6)、11個のCC受容体(CCR1−11)、1個のCX3C(CX3CR1)、及び、1個のC受容体(XCR1)を含めた19個のケモカイン受容体がこれまでクローン化されてきた[80、86]。ケモカインと受容体との相互作用は、選択性の点から広く変わる。CXCL12(SDF−1)とのCXCR4の相互作用、CXCL13(BCA−1)とのCXCR5の相互作用、CXCL16とのCXCR6の相互作用、CCL20(LARC)とのCCR6の相互作用、及び、CCL25(TECK)とのCCR9の相互作用等、一部のケモカインは1つの受容体のみに結合し、逆もまた同じである。しかし、一部のケモカインは2個以上の受容体に結合し、多くの受容体が2個以上のケモカインを認識するため、ケモカインと受容体との相互作用において重複性もある。例えば、ケモカインCCL5(RANTES)は、少なくともCCR1、CCR3、及びCCR5に結合し、CCR3もCXCL11(エオタキシン)、CCL24(エオタキシン−2)、CCL26(エオタキシン−3)、CCL8(MCP−2)、CCL7(MCP−3)、及び、CCL13(MCP−4)に結合するとして示されてきた。さらに、ケモカイン受容体様タンパク質のうちの2つ、ケモカインに対するダッフィ抗原受容体(DARC)及びD6は、等しい親和性ではあるが、活性化されることなく、CXC及びCCケモカインのうちの多くに無差別に結合し[87−89]、おそらく、炎症性ケモカインを隔離するシンクとして作用する。
【0016】
白血球の輸送及びホーミング
ケモカインは、免疫系恒常性において、並びに、活性化依存的及び組織選択的なエフェクター及びメモリーリンパ球の輸送において、リンパ球の再循環を制御する。リンパ組織及び非リンパ組織に対するリンパ球のホーミング、並びに、第2のリンパ器官間の再循環は、異なる部位に存在するケモカインに決定的に依存する。(CCR7に結合する)CCL19及びCCL21、並びに、(CXCR5に結合する)CXCL13は、リンパ管、高内皮細静脈(HEV)、及び、第2のリンパ器官において発現され、これらの器官への抗原提示細胞(APC)、T細胞、及びB細胞の移行を促進する[90]。末梢組織における常在のDC前駆物質は微生物又は細胞片を貧食し、病原体又は抗原によって活性化される。これらの細胞は、次に、成熟し始めてCCR7を発現する。CCR7は、CCR7リガンドに応じてこれらの細胞がリンパ管を介して流入領域リンパ節内に移動すること、及び、T細胞に対する処理された抗原エピトープを示すT細胞領域を浸潤することを可能にする。DCとは対照的に、B細胞及び未処理のT細胞は、HEVを介してリンパ節に入る。HEVの内皮細胞によって産生されるCCR7のリガンドCCL19及びCCL21は、管腔側まで経細胞輸送され、リンパ節のT細胞領域までのリンパ球の血管外遊走を誘発する[91]。成熟した指状嵌入DCによって産生されるCCL19は、その同族抗原の探索において、リンパ器官における未処理のT細胞によるDCの「走査」を促進する。B細胞はCXCR5を発現し、リガンドCXCL13は、リンパ節における濾胞性ストロマ細胞によって産生される。T細胞によって活性化されたB細胞は、濾胞において増殖し、胚中心(GC)を生じる。CXCR5を発現する活性化されたT細胞も、濾胞に入ってT−B相互作用に関与することができる。さらに、CCL19及びCCL21は、リンパ器官の異なる微小環境内でのリンパ球の適切な位置決めの原因である。例えば、DC及びストロマ細胞によって発現されるCCL19及びCCL21は、第2のリンパ器官のT細胞領域内にT細胞を保持する。一方、濾胞において濾胞性DC及びストロマ細胞によって発現されるCXCL13は、B細胞及びT細胞のサブセットの一部をB細胞領域内に引きつける。さらに、CCR7並びにCXCR5リガンドに応答するB細胞の能力は、脾臓において濾胞とT細胞領域との境界にあるB細胞の位置を制御し、そこでは、未処理の成熟したB細胞が隣接する領域において新たに活性化されたT細胞と相互作用する[92、93]。非活性のB細胞及びT細胞は、従って、輸出リンパ管を介して第2のリンパ器官を離れる。
【0017】
炎症
炎症性疾患の主要な特徴は、内皮及び基底膜に渡った循環から患部組織内への白血球の遊走である。血管外遊走の機構は、上記のように、炎症部位にて産生される炎症誘発性メディエーターのファミリーであるケモカイン(化学誘引物質サイトカイン)によって誘発される。遊走過程の一部として、循環白血球は第一に、内皮の管腔側に付着しなければならない。現在のパラダイムによると、この相互作用は、連続して起こる白血球と内皮接着分子との結合を含む。第一に、セレクチン及びその糖タンパク質並びに炭水化物のカウンターリガンドが、白血球の繋ぎ止め及びローリングを媒介する。次に、免疫グロブリン様の細胞間接着分子を含めた白血球のインテグリン及びそのリガンドが、安定した白血球の接着を媒介する。ケモカインは、白血球細胞表面上のインテグリンを活性化することによって、安定した接着において役割を果たす。白血球は、化学誘引物質の勾配によって、内皮を渡って、及び、細胞外マトリックスを通って組織内に遊走するよう方向づけられる。
【0018】
炎症反応を導く事象は、炎症細胞による損傷部位の認識、特定の白血球のサブポピュレーションにおける漸増、やっかいな感染菌の除去、損傷を受けた細胞/組織の「デブリードマン」、及び、傷の修復によって特徴づけられる。ケモカインは、損傷を受けたか又は感染した組織内への炎症細胞の浸潤及び活性化を促進することによって、多くの急性及び慢性の炎症状態の処理に関与し制御するとして示されてきた[94]。
【0019】
CCL3(MIP−1α)及びCCL5(RANTES)を含めたCCケモカインのうちいくつかのケモカインは、敗血症において発現され、器官特異的な白血球の流入及び活性化を媒介することによって炎症誘発性の効果を及ぼす[95、96]。CXCケモカインのメンバーは、全身性炎症反応の原因に結びつけられる[97、98]。細菌性肺炎において、CXCケモカインによって媒介された好中球の誘発は、侵入する微生物の排除にとって有利及び必要である[98]。この概念を裏づけるために、KC、ヒトCXCL1(GRO−α)のマウス相同体の過剰発現が、特に肺において、クレブシエラ肺炎に対する抵抗力を増す[99]。喘息において、小さな気道の粘膜下層は、単核の好酸球及びマスト細胞によって浸潤され、粘液腺の肥厚化及び上皮下線維症を引き起こす。アレルギー性気管支炎及び喘息患者の動物モデルは、肺炎症を制御することにおいてケモカインにとって重要な役割を意味する[100]。CCL2、CCL11、CCL17、及びCCL22の産生における動態学は、これらのケモカインに対する受容体を発現する特定の白血球のサブセットにおける気道内での漸増と相関する[101]。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺における好中球、マクロファージ、及び、IFN−γ産生CD8+T細胞の漸増を有した慢性炎症によって引き起こされる気流の制限の前進的発達によって特徴づけられる。COPD患者において、CXCL8及びCXCL10のレベルは増え、好中球、及び、IFN−γを産生するCD8+T細胞による浸潤の程度と相関する。肺浸潤T細胞は、CXCR3、CXCL10に対する受容体を発現し[102]、CXCR3が慢性的に炎症性の肺内への病原性Th1細胞の漸増を媒介することができるということを示唆している。CXCL10の中和も、アレルギー性気管支炎を抑制するようにみえる[103]。このように、多くの他のケモカインに加えて、CXCR3及びそのリガンドは、必ずしもTh1応答によって支配されているというわけではない肺炎症に関与する。粥状動脈硬化は、炎症性疾患として広く受け入れられており[104]、ケモカインは、白血球の漸増、血管新生において、並びに、より興味深いことに、血管平滑筋細胞の増殖及び粥腫内へのその遊走において重要な役割を果たしている[105]。動脈硬化病変は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、及びCXCL8を含めた多くのケモカインを発現する。動脈硬化病変内のケモカインの細胞源は複数あり、内皮細胞、平滑筋細胞、及び、浸潤性白血球を含む。粥状動脈硬化におけるCCL2/CCR2ケモカイン−受容体対の関与を裏づける圧倒的な証拠がある。CCL2は、単球の漸増に必要不可欠であり、血管新生作用を有し、平滑筋細胞の増殖及び遊走も引き起こす。血漿コレステロール、高血圧、及び、糖尿病等の粥状動脈硬化を促進するとして知られる多くの要因が、アテローム性の病変によってケモカインの放出を刺激する。内皮細胞への白血球の接着も、粥状動脈硬化の発症過程においてケモカイン放出を増やす。従って、ケモカイン及び受容体は、動脈硬化病変の形成及び発達を回避するための重要な分子標的になる。ヒトにおいて、コード領域内のCX3CR1の遺伝子多型性は、粥状動脈硬化に対する保護を個体に与える[106、107]。CX3CR1におけるM280の変異は、この変異受容体を形質移入された細胞がCX3CR1のリガンドCX3CL1に対して著しく減った応答を示すため、CX3CR1の機能を失う[108]。ApoE遺伝子導入マウス、粥状動脈硬化モデルがCX3CR1−/−マウスと交雑させられた場合、動脈硬化病変の重症度は、より低いマクロファージ浸潤を有して有意に減った。これは、粥状動脈硬化の進行に寄与することにおいて機能的なケモカイン受容体の重要性における優れた例を提供している。関節リウマチ(RA)は、軟骨破壊及び骨リモデリングに付随した、関節の滑液空間における混成のTh1型炎症細胞の浸潤(Th1細胞、好中球、単球)によって特徴づけられる[109]。炎症性の関節において産生されたケモカインは、活性RAを誘導及び維持するために内皮バリアーを渡って白血球を引きつける[110、111]。CXCケモカインの間で、高濃度のCXCL8、CXCL5、CXCL1は、RA患者の血清、滑液、及び滑膜組織において検出される[109、110]。これらのケモカインは、好中球を引きつけ、血管新生を促進する[109、110]。主に単球を引きつけるCCケモカインCCL2,CCL3、及びCCL5の大量の産生もRAにおいて見られる[109、110]。一方、リウマチ性滑膜において発現されたCXCL12は、RA部位にて増加したレベルのCXCR4を発現するCD4メモリーT細胞を漸加する[111]。CXCL12は、T細胞が活性化誘導アポトーシスを受けるのを阻止し、従って、リウマチ性滑膜におけるT細胞の蓄積をさらに増やす。興味深いことに、CXCL12は、血流からリウマチ領域内へのDCの遊走を誘発することができ、有害な自己免疫性応答を増幅することにおけるその潜在的な役割を意味している。中枢神経系(CNS)の慢性炎症性脱髄障害としての多発性硬化症(MS)は、自己ミエリン関連抗原に対して向けられた自己免疫性応答によって引き起こされると考えられている。MS患者のCNS病変における免疫細胞の浸潤は、CD4、CD8T細胞、及びマクロファージから成る[112]。多くのケモカインが、MS患者のCNSにおける活性病変において検出され、再発性患者の脳脊髄液は、上昇したレベルのCCL3を含有している[113、114]。MSにおいて、浸潤性マクロファージはCCR2及びCCR5を発現し、活性病変におけるT細胞及び反応性星状細胞は、CXCR3及びCCR5を発現する[115、116]。類似のケモカイン発現パターンが、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、MSにより関連した動物モデルにおいて見られる。EAEでは、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、及びCXCL10の増加した発現が、疾患の重症度と相関する[117]。選択されたケモカインに対する中和抗体は、EAEの発症を抑制するか、又は、その重症度を下げる[118、119]。より決定的なケモカインとEAEとの相互関係は、CCR1及びCCR2が欠損したマウスを用いた実験によって確立され、疾患の発症率及び重症度における減少が明白に実証された[120、121]。ケモカインとクローン病との関連も確立された。ケモカインCCL−19及びCCL−21の発現は、クローン病を有する患者由来の結腸組織、二次リンパ組織、及び、腸間膜リンパ節において上方制御されると示されてきた[122、123]。さらに、CCR7受容体も、T細胞と相互作用して活性化及び増殖する、これらの患者の結腸組織における樹状細胞上で上方制御される。ケモカイン及びケモカイン受容体のこの増加された発現は、結腸組織における樹状細胞の保持を増やし、クローン病において自己免疫性炎症を維持する腸壁において三次リンパ組織を形成する[122、123]。
【0020】
明らかに、炎症の領域における細胞内への、ケモカインにより媒介された白血球の遊走、及び、炎症の領域内の細胞へのそのPセレクチンにより媒介された接着及びローリングを阻止し、免疫原性を減らしたヒト(及び霊長類)適合性モノクローナル抗体の開発は、大いに価値があるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、Pセレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)を認識し(すなわち、それに結合し)、そこに対するP及びLセレクチンの結合もケモカインの結合も阻止する、精製された抗体(キメラ、ヒト、又は、ヒト化の抗体を含む)及びその抗原結合性フラグメント、並びに、そのような抗体及びその抗原結合性フラグメントを求めてスクリーニングする方法、及び、その治療用途を対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の抗体又は抗体断片は、IgG、IgG、IgG、IgGというクラスの免疫グロブリンを含み得るか、又は、IgG/Gキメラであり、好ましくは、(Kが100nM以下である)高い親和性でPSGL−1に結合し、好ましくは、ヒト定常部を含み、好ましくは、PSGL−1へのPセレクチン及び/又はLセレクチンの結合を競合的に抑制し、且つ、PSGL−1へのケモカインの結合を競合的に抑制する。さらに、抗PSGL−1抗体又はその抗原結合性フラグメントは、好ましくは、C1Qと相互作用することによって、古典経路を介して補体を活性化せず、好ましくは、Fc受容体に結合しない。本発明は、特に、炎症状態に対する治療において本明細書に記述及び同定されたそのような抗PSGL−1抗体又は抗体断片を使用することを課題としており、炎症は、それに限られないが、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、小腸炎)、関節炎(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、移植片拒絶、移植片対宿主病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、皮膚炎、腎炎、エリテマトーデス、強皮症、鼻炎、アナフィラキシー、糖尿病、多発性硬化症、粥状動脈硬化、血栓症、アレルギー反応、及び、甲状腺炎のうちの一つ等の状態と付随している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】抗体PL1、KPL1、及びSwlK1が結合するケモカイン結合エピトープを包含する、SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜62(PSGL−1)及びその一部を示している。
【図2】PL1抗PSGL−1抗体及びSelK1抗PSGL−1抗体に対するオンレート並びにオフレートの表面プラズモン共鳴分析のグラフを示している。ヒト抗PSGl−1抗体(SelK1)及びPL1の結合を、緩衝剤を欠く抗体を導入した100分間、BIACOREチップに共有結合したヒトPSGL−1に対して25nMで分析した。PL1は、PSGL−1に対する高速のオン/オフ動態学を示した。SelK1は、非常に遅いオンレート及びほぼ検出不可能なオフレートを有し、PSGL−1に対する抗体の高い親和性を示した。
【図3】抗PSGL−1抗体の流れ抑制分析のテーブルを示している。ヒトPセレクチンを、活性化された内皮細胞に類似の密度でチップ上に被覆し、固定されるヒト好中球を、抗PSGL−1抗体を有して、又は、抗PSGL−1抗体を有さずに、血流をシミュレートする流れによるストレス下で導入した。検査した抗PSGL−1抗体(KPL1、PK1、hPL1−Agg、及びSelK1の抗PSGl−1抗体)の中で、SelK1が、最も低い濃度で抑制し、2nMの濃度で好中球の接着の実質的に100%を阻止した。
【図4】GP1、GSP−1、及びGSP−6ペプチドに結合した抗体KPL1、SelK1、hPL1、及び、PL1における相対的な結合のグラフを示している。
【図5】PSGL−1糖模倣体に対するいくつかのケモカインの表面プラズモン共鳴結合分析のグラフを示している。グリコスルホペプチドGSP−6及びGSP−1、並びに、グリコペプチドGP−1を、BIACOREチップに共有結合させ、種々のケモカインを導入し、結合反応単位を測定した。検査した全てのケモカイン(CCL27、CCL28、CCL19、及びCCL21)がPSGL−1に結合し、白血球の走化性を媒介するケモカインにPSGL−1は結合するよう機能していることを示した。
【図6】抗PSGL−1抗体による、PSGL−1に対するケモカインCCL27の結合の抑制を示したグラフである。PSGL−1に対するケモカインCCL27結合の抑制を測定するために、グリコスルホペプチドGSP−6及びGSP−1、並びに、グリコペプチドGP−1を、BIACOREチップに共有結合させ、抗PSGL−1抗体(SelK1抗ヒトPSGL−1抗体、KPL1、及びPL1)の存在下又は非存在下でCCL27を添加し、反応単位を測定した。SelK1は、CCL27がPSGL−1模倣体に結合するのを阻止することにおいて最も効果的な抗PSGL−1抗体であった。
【図7】PSGL−1を有する白血球細胞に対する炎症細胞型の接着及び走化性を抑制することにおけるSelK1抗PSGL−1抗体の二重機能を示した概略図である。
【図8】SelK1抗体の重鎖のアミノ酸配列(SEQ ID:番号2)及び対応するコ―ド化核酸配列(SEQ ID番号:3)における、シグナルペプチド、VH鎖、ヒンジ部分、並びに、CH1、CH2、及びCH3鎖の位置を示している。
【図9】SelK1抗体の軽鎖のアミノ酸配列(SEQ ID番号:4)及び対応するコード化核酸配列(SEQ ID番号:5)におけるシグナルペプチド、VL鎖、及びCL鎖の位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、Pセレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)を認識し(すなわち、それに結合し)、そこに対するPセレクチン及びLセレクチンの結合もケモカインの結合も阻止する、精製された抗体(キメラ、ヒト、又は、ヒト化の抗体を含む)及びその抗原結合性フラグメント、並びに、そのような抗体及びその抗原結合性フラグメントを求めてスクリーニングする方法、及び、その治療用途を対象としている。
【0025】
特に、本発明は、PSGL−1に対する精製された抗体(又はその断片)、そのような抗PSGL−1抗体(又はその断片)を産生する宿主細胞、白血球、リンパ球、及び内皮細胞のセレクチンにより媒介された接着並びにケモカインにより媒介された走化性を阻止することにおいて二重の機能を有する抗PSGL−1抗体(又はその断片)を同定するスクリーニングアッセイ、並びに、そのような抗体(又はその抗原結合性フラグメント)を使用した治療法を対象としている。本開示は、特に、SelK1抗体を含めた、(ヒトを含めた)霊長類PSGL−1に対する新規の抗体、及び、その抗原結合性フラグメントを提供している。本発明の好ましい抗体は、霊長類(特にヒト)のPSGL−1に特異的に結合する能力、及び、1又は複数のPSGL−1の活性をインビトロ及び/又はインビボで抑制する能力を持つ。
【0026】
抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質のファミリーに属し、その基本的な建築ブロック、免疫グロブリンフォールド又はドメインは、免疫系及び他の生物学的認識系の多数の分子において種々の形態で使用される。典型的な免疫グロブリンは4つのポリペプチド鎖を有し、可変の領域として知られる抗原結合領域、及び、定常部として知られる不変の領域を含有している。
【0027】
未変性の抗体及び免疫グロブリンは、通常、2つの同じ軽(L)鎖及び2つの同じ重(H)鎖で構成された約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変わる。各重軽鎖も、定期的に間隔があけられた鎖内のジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、1つの末端にて可変部ドメイン(VH)を有し、多くの定常部ドメインが続いている。各軽鎖は、1つの末端にて可変部ドメイン(VL)を有し、もう一方の末端にて定常部ドメインを有している。軽鎖の定常部ドメインは、重鎖の第1の定常部ドメインと整列し、軽鎖の可変部ドメインは、重鎖の可変部ドメインと整列している。
【0028】
重鎖の定常部ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。少なくとも5つの主要な免疫グロブリンのクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちいくつかのクラスは、例えばIgG、IgG、IgG、及びIgG、並びに、IgA及びIgA等のサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖の定常部ドメインは、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、及び、ミュー(μ)とそれぞれ呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常部ドメインのアミノ配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。異なる免疫グロブリンのクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置はよく知られている。
【0029】
抗体の可変部ドメインの状況における「可変」という用語は、可変部ドメインの特定の部分が配列において抗体間で大規模に異なるという事実を意味している。可変部ドメインは、結合のためにあり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を決定する。しかし、可変性は、抗体の可変部ドメインを介して均等に分布されてはいない。軽鎖の可変部ドメインにおいても、重鎖の可変部ドメインにおいても、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、高頻度可変領域としても知られる、1つの鎖あたり3つのセグメントに集中している。以下でさらに説明されるように、本発明の抗体であるSelK1における1つの実施形態において、可変性重鎖の3つのCDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)は、それぞれSEQ ID番号:6〜8である。同様に、SelK1における1つの実施形態において、可変性軽鎖の3つのCDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)は、それぞれSEQ ID番号:9〜11である。
【0030】
可変部ドメインのうちより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。未変性の重鎖及び軽鎖の可変部ドメインはそれぞれ、βシート構造を大部分は用いた4つのFR領域を含み、βシート構造は3つのCDRによって接続され、βシート構造を接続し、いくつかの場合にはβシート構造の一部を形成するループを形成している。各軽及び重鎖のCDRは、FR領域によって近くに共に維持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。定常部ドメインは、抗体を抗原に結合することに直接関与していないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与等、種々のエフェクター機能を示している。
【0031】
本発明に使用するのに熟慮された抗体は、従って、免疫グロブリン全体、Fv、Fab、及び類似の断片等の抗体断片、可変部ドメインの相補性決定領域(CDR)を含む単鎖抗体を含めた種々の形状のうちどれでもありえ、その全てが本明細書において使用された場合「抗体」という広い用語に該当する。好ましい実施形態では、以下で説明される治療方法の状況においても、スクリーニング方法の状況においても、本明細書において熟慮される本発明の抗原又はエピトープに対して免疫特異的である抗体又はその断片が使用される。
【0032】
「抗体断片」という用語は、全長の抗体の一部、通常、抗原結合領域又は可変領域を表している。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及び、Fvフラグメントが含まれる。抗体のパパイン消化によって、それぞれが単一の抗原結合部位を有した、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同じ抗原結合性フラグメントが産生され、さらに、その容易に結晶化する能力のためにそう呼ばれる残存する「Fc」フラグメントが産生される。ペプシン処理によって、抗原を架橋する能力を持つ2つの抗原結合性フラグメントを有したF(ab’)フラグメント、及び、(pFc’)と名付けられた残存する他のフラグメントが生じる。さらなるフラグメントは、抗体断片から形成された、二重特異性抗体、直鎖抗体、単鎖抗体分子、及び、多重特異性抗体を含み得る。本明細書において使用された場合、抗体に関する「機能的な断片」は、Fv、F(ab)、及び、F(ab’)のフラグメントを表している。
【0033】
抗体断片は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30個、35、40、45、若しくは50個、又はそれ以上のアミノ酸ほどの小ささであり得る。一般に、本発明の抗体断片は、SEQ ID番号:1のアミノ酸42又は62内に位置するエピトープに特異性を用いて結合し、そこに対するP及び/又はLセレクチン並びに少なくとも1つのケモカインの結合を阻止する抗体に関して類似の又は免疫学的な特性を有する限り、いかなるサイズの上限も有することができる。
【0034】
本明細書のどこか他の箇所で注目されているように、本明細書において熟慮される抗体断片は、本明細書に記述されたPSGL−1アミノ酸結合エピトープのうち全て又はその一部に選択的に結合するといったある能力を保持する。特に、本発明の抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントは、SEQ ID番号:1に明記された配列のアミノ酸残基42乃至62を含んだ配列のうちの1又は複数のアミノ酸残基を含んだエピトープに結合する能力を持つ。いくつかのタイプの抗体断片は、以下のように定められる。
【0035】
Fabは、抗体分子のうち一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントである。Fabフラグメントは、パパイン酵素を用いた抗体全体の消化によって産生し、未変化の軽鎖及び1つの重鎖の一部を生じることができる。
【0036】
Fab’は、ペプシンを用いて抗体全体を処理し、還元が続くことによって獲得し、未変化の軽鎖及び重鎖の一部を生じることができる抗体分子のフラグメントである。2つのFab’フラグメントが、1つの抗体分子あたり得られる。
【0037】
Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1又は複数のシステインを含んだ重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端でのわずかな残基の追加によってFabフラグメントとは異なる。
【0038】
F(ab’)は、還元が続くことなく、ペプシン酵素を用いて抗体全体を処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである。F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によって共に保持された2つのFab’フラグメントの二量体である。
【0039】
Fvは、完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、密接した非共有結合での会合における1つの重鎖可変部ドメイン及び1つの軽鎖可変部ドメインの二量体(VH−VL二量体)から成る。各可変部ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体の表面上で抗原結合部位を画定するのはこの構成においてある。共同で、6個のCDRが抗原結合特異性を抗体に与える。しかし、単一の可変部ドメイン(又は、抗原に対して特異的なCDRを3つのみ含むFvの半分)でさえも、結合部位全体と比較して低い親和性ではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0040】
単鎖抗体(SCA)は、遺伝的に融合された単鎖分子として、適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有した遺伝子改変分子として本明細書において定められている。そのような単鎖抗体は、「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片とも呼ばれる。一般に、Fvポリペプチドは、抗原結合に対してsFvが所望の構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。
【0041】
本発明の抗体又は抗体断片は、IgG、IgG、IgG、IgGというクラスの免疫グロブリン、又は、IgG/Gキメラを含むことができ、好ましくは、(例えば、Kが100nM以下である)高い親和性でPSGL−1に結合し、好ましくは、ヒト定常部を含み、好ましくは、PSGL−1へのPセレクチン及び/又はLセレクチンの結合を競合的に抑制し、且つ、PSGL−1へのケモカインの結合を競合的に抑制する。さらに、抗PSGL−1抗体又はその抗原結合性フラグメントは、好ましくは、C1Qと相互作用することによって、古典経路を介して補体を活性化せず、好ましくは、エフェクター機能を発現せず、好ましくは、Fc受容体に結合しない。本発明は、特に、炎症状態に対する治療において本明細書に記述及び同定されたそのような抗PSGL−1抗体又は抗体断片を使用することを課題としており、炎症は、(それに限られないが)炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、小腸炎)、関節炎(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、移植片拒絶、移植片対宿主病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、皮膚炎、腎炎、エリテマトーデス、強皮症、鼻炎、アナフィラキシー、糖尿病、多発性硬化症、粥状動脈硬化、血栓症、アレルギー反応、及び、甲状腺炎のうち少なくとも1つと付随している。
【0042】
上記のように、PSGL−1は、P、L、及びEセレクチンとして同定される構造的に関連するセレクチン受容体に結合することによって、炎症及び血栓部位に対する白血球及びリンパ球の漸増において重要な役割を果たしている。PSGL−1は、好中球及び単球を含めた白血球上、並びに、一部の内皮細胞上で恒常的に発現される。ケモカインは、上記のように、インテグリンの活性化を介した、白血球及びリンパ球のホーミング並びに安定した接着の原因である。白血球の接着におけるその役割に加えて、(上記の)最近の研究によって、PSGL−1は、そのN末端ドメイン上の硫酸化チロシンモチーフを介してケモカインと相互作用することが示された。
【0043】
PSGL−1への既知の抗体PL1及びKPL1の結合は、PSGl−1のN末端ドメインにおけるチロシンの硫酸化とは無関係であり、PSGL−1の残基42〜62にてプロペプチドの遠位の領域を重複するとして特徴づけられ示されてきた(図1)。これらの残基は、ケモカインが結合するのに必要不可欠な3つの流酸化チロシン残基を含有する残基46〜53にてケモカイン結合エピトープも包囲する。
【0044】
上記のように、単鎖Fvs抗体から開発されたヒトPSGL−1に対する完全にヒトのIgG1抗体から以前に引き出された抗ヒトPSGL−1抗体であるRR2r3s4−1(「RR」)が、酵母細胞ディスプレイライブラリーから単離された[74、124、125]。RR抗体は、トリプトファン蛍光消光滴定によって、1nMのKを有するとして示された。インビトロアッセイにおいて、RRはヒト好中球に結合することが実証され、ローリングアッセイにおいて、RRは、3.3nMの濃度で、Pセレクチン上でのヒト好中球のローリングを抑制するとして示された。拮抗アッセイにおいて、RRは、ヒトPSGL−1に特異的であり、マウスPSGL−1に結合しないと示された。
【0045】
本発明では、RRの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の部分を、コンセンサスヒトIgG定常部ドメインのヒンジ領域及び組み込まれた1アミノ酸置換に連結することによって再度操作し、補体結合を不活化した。結果として生じる抗ヒトPSGL−1抗体は、本明細書において、SelK1と呼ばれる。
【0046】
表面プラズモン共鳴(BIACORE)を使用して、SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜60(露出されたPSGL−1のN末端)[14]の模倣体である、グリコシル化された硫酸化18アミノ酸ペプチド、GSP−6への結合に対して、SelK1抗体が検査された。(以下でより詳細に説明される)GSP−6並びにその誘導体GSP−1及びGP−1は、米国特許第7,223,845号の図1A〜1B及び図3A(GSP−1)に示されている。その動態学は、PL1[20]と呼ばれる別の抗PSGL−1抗体に比較された。SelK1抗体は、PL1よりもはるかに遅いオンレート、及び、ほぼ検出可能ではないオフレートでGSP−6に結合した(図2)。これらの特徴は、本明細書においてどこか他の箇所で記述されたクローン病及び他の炎症が関連した疾患を治療するためのこの抗体の治療用途に対する慢性投与と一致している。
【0047】
SelK1抗体は、次に、インビトロでのローリングアッセイにおいて、Pセレクチン上での好中球のローリングを阻止するその能力に対して検査された。このアッセイでは、固定化ヒト好中球が転がり、血管においてずり応力をシミュレートする流れの下、活性化された内皮細胞上で見られる密度に類似の密度でプレート上に被覆されたPセレクチンに係留する[20]。SelK1が40nMから2nMに及ぶ濃度で流れの中に導入された場合、好中球のローリング及び繋ぎ止めは完全に阻止された(図3)。SelK1も、マウスモノクローナル抗PSGL−1抗体PL1及びKPL1、並びに、hPL1−Aggと名付けられたヒト化PL1に比較された。SelK1が、このアッセイにおいて好中球の接着を阻止することにおいて検査されたものの最も効果的な抗PSGL−1抗体であったことを結果は示している。
【0048】
PSGL−1のN末端ペプチド断片の硫酸化された型(GSP−1)及び硫酸化されていない型(GP−1)への結合を測定することによって、SelK1抗体を、GSP−6及びGSP−6の修飾型に特異性を有して結合するその能力に対して検査し、PSGl−1、KPL1、及びPL1に対する2つのマウスモノクローナル抗体と比較した。SelK1とマウスモノクローナル抗体との結合を、BIACORE分析において測定した。SelK1は、GSP−6及びGSP−1に結合したが、GP−1には結合せず、結合活性のためにN末端ペプチドの硫酸化を抗体が必要としていることを示している。KPL1抗体は、GSP−6、GSP−1、及びGP−1に結合し、結合のためのペプチドの硫酸化を必要としていないことを示している。PL1及びhPL1(PL1のヒト化型)の結合は、硫酸化を必要としているようには見えないが、弱く結合するGP−1及びGSP−1上の単一のα−GalNAcよりも大きなオリゴ糖を必要としている可能性があるということにおいてより複雑であった(図4)。
【0049】
ケモカイン結合に関して、理論によって結びつけられることを望むことなく、上記のように、PSGL−1へのケモカイン結合は、クローン病及び他の炎症性疾患において炎症反応を誘起するリンパ球のホーミングにおいて重要な役割を果たすということが信じられている。これを調査するため、BIACOREアッセイを使用して、前述したPSGL−1のペプチド断片へのケモカイン結合を阻止するその能力に対して、SelK1抗体を検査した。この方法を可能にするために、まず、BIACOREチップに結合されたPSGL−1ペプチド糖模倣体(glycomimetics)GSP−6、GSP−1、及びGP−1にいくつかのケモカイン(CCL27、CCL28、CCL19、及びCCL21)が結合することを実証した(図5)。GP1はCCL27に対して、他の検査したケモカインよりも低い親和性で結合したけれども、GSP−6、GSP−1、及びGP−1は、検査した全ケモカインに結合した。
【0050】
GSP−6、GSP−1、及びGP−1に対するCCL27の結合を阻止するための、SelK1抗体を含めた抗PSGL抗体の能力を検査した。ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンにより被覆されたBIACOREチップに結合させ、ケモカインを添加して結合を測定した。抗PSGL−1抗体を添加し、ケモカイン結合に対する効果を評価した。結果は、GSP−6及びGSP−1に対するケモカイン(例えばCCL27)の結合をSelK1抗体が阻止したことを実証した(図6)。この新規の結果は、PSGL−1に対するケモカインの結合を抑制すること、及び、PSGL−1に対するPセレクチンの結合を阻止すること両方によるこの抗体の二重機能を実証している。SelK1抗体はCCL27/GP1結合に対する効果を有さず、それは、PSGL−1のN末端ペプチドにおける硫酸化していない模倣体GP−1にはSelK1抗体は結合しないという観察と一致していた。KPL−1はGP−1に結合し、結果として、このマウスモノクローナル抗体は、GSP−6及びGSP−1に加えてGP−1に対するCCl27を阻止することが検証された。PL1は、検査したケモカインの結合に対して効果を有さなかった。これらの結果は、(図7に例示されているように)PSGL−1に対するPセレクチン(及びLセレクチン)の結合、並びに、PSGL−1に対するケモカインの結合を阻止することにおける二重機能の特性をSelK1抗体が有し、従って、本明細書においてどこか他の箇所で熟考されているクローン病及び他の炎症性疾患の新規の治療処置として使用することができるということを実証している。
【0051】
このように、本発明は、高い特異性及び親和性で、(SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜62内に位置する)PSGL−1のN末端エピトープに選択的に結合し、PSGL−1に対するセレクチン(特にPセレクチン及びLセレクチン)の結合もケモカイン(例えば、ケモカインCCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28)の結合も実質的に阻止することにおいて二重機能を有する、従って、炎症性及び血栓性の障害を治療することに対して新規の治療学を表す抗体及びその抗原結合性フラグメントを対象としている。本明細書において使用される場合、「実質的に阻止する」という用語は、エピトープ結合抗体又は断片が使用されない場合の対照において観察されたレベルの少なくとも75%以下でセレクチン及びケモカインがPSGL−1に結合することを意味している。本発明は、さらに、これらの二重機能の抗体を使用した治療法、並びに、これらの使用に対するこれらの抗体を含んだ製薬上及び治療上の組成物を対象としている。
【0052】
SelK1抗体(及びシグナルペプチド配列)に対する完全なアミノ酸配列、並びに、SelK1のアミノ酸配列をコード化するDNA配列は、図8(A、B)及び図9に示されている。図8A及び8Bには、SelK1の重鎖の可変要素(VH)、ヒンジ部分、及び、重鎖の3つの定常部ユニット(CH1、CH2、及びCH3)に対するアミノ酸配列及び核酸配列(それぞれ、SEQ ID番号:2及びSEQ ID番号:3)が示されている。図9には、SelK1の軽鎖の可変要素(VL)及び軽鎖の定常部ユニット(CL)に対するアミノ酸配列及び核酸配列(それぞれ、SEQ ID番号:4及びSEQ ID番号:5)が示されている。
【0053】
本発明は、好ましい実施形態において、本明細書において実質的に列挙された配列を有した抗体を対象としている。上記のように、各抗体は、重鎖及び軽鎖における可変の主張部分のそれぞれにおいて3つのCDR(相補性決定領域)を有している。例えば、SelK1抗体を含む本発明の好ましい実施形態において、CDRH1はSEQ ID番号:6を含み、CDRH2はSEQ ID番号:7を含み、CDRH3はSEQ ID番号:8を含み、CDRL1はSEQ ID番号:9を含み、CDRL2はSEQ ID番号:10を含み、さらに、CDRL3はSEQ ID番号:11を含む。
【0054】
「実質的に列挙された」という表現は、VL又はVHドメインにおける特定のCDRが、本明細書において列挙された配列のうち特定された領域と同じであるか又はその領域に非常に類似していることを意味している。例えば、そのような置換は、CDR(H1、H2、H3、L1、L2、又はL3)の配列におけるほぼ5個のアミノ酸全てに対する1つ又は2つの置換、追加、又は削除を含み得る。配列は、配列の10〜20残基毎に、置換された、削除された、又は、追加された核酸コドン又はアミノ酸残基を1個以下有する場合に「実質的に同じ」である。
【0055】
本発明は、SelK1抗体の6CDRと比較して、6CDRにおいて1、2、3、4、5、6、7、又は、8〜10個のアミノ酸置換を含んだ抗体をさらに含む。置換は、好ましくは、保存的置換であるが、100nM以下のKでPSGL−1に結合する抗体を依然として生じる他の20個の自然発生アミノ酸のうちどれでもあり得る。本発明は、そのようなSelK1の抗体変異体をコード化する核酸、並びに、そのような核酸を含んだベクター及び宿主をさらに含む。
【0056】
SEQ ID番号:12は、完全な重鎖配列(SEQ ID番号:3)を、コード化のための隣接するベクター配列と共にコード化するDNA配列を示している。SEQ ID番号:13は、完全な軽鎖核酸コード化配列(SEQ ID番号:5)を、コード化のための隣接するベクター配列と共にコード化するDNA配列を示している。
【0057】
本発明は、一実施形態において、ヒトPSGL−1に特異的に結合する抗体を熟慮している。そのような抗体におけるCDRは、本明細書において示されたVH及びVLの特定の配列に限定されず、PSGL−1に対するPセレクチン及びケモカインの結合を阻止する能力を保持するこれらの配列の変異体を含み得る。そのような変異体は、当業者によって、当技術分野において良く知られた技術を使用して作製することができる。例えば、アミノ酸の置換、削除、又は追加を、本明細書においてどこか他の箇所で説明されているように、FR及び/又はCDRにおいて行うことができる。FRにおける変化は、通常、抗体の安定性及び免疫原性を改善するよう設計されるけれども、CDRにおける変化は、一般に、抗体のその標的に対する親和性を高めるよう設計される。FRの変異体は、自然発生の免疫グロブリンアロタイプも含む。そのような親和性増加の変化は、CDRを変えて抗体のその標的に対する親和性を検査することを含むルーチン的な技術によって経験的に決定することができる。
【0058】
例えば、保存的なアミノ酸置換を、開示されたCDRのうちいかなるCDR内でも行うことができる。種々の変更を、Antibody Engineering,2nd ed.,Borrebaeck,Ed.,Oxford University Press(1995)に記載された方法に従って行うことができる。これらの変更には、それだけに限られないが、配列内での同じか又は機能的に同等のアミノ酸残基をコード化する種々のコドンの置換(「保存的な置換」)によって変えられ、従って、「サイレントな」変化を生じるヌクレオチド配列が含まれる。例えば、保存的に置換することができる非極性のアミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及び、メチオニンが含まれる。保存的に置換することができる極性が中性な(polar neutral)アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及び、グルタミンが含まれる。保存的に置換することができる正の電荷を帯びた(塩基性の)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及び、ヒスチジンが含まれる。保存的に置換することができる負の電荷を帯びた(酸性の)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。配列内のアミノ酸に対する置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することもできる。
【0059】
本発明の抗体における誘導体及び類似体は、組換え及び合成の方法を含めた当技術分野において良く知られた種々の技術によって作製することができる(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、及び、Bodansky et al.,The Practice of Peptide Synthesis,2nd ed.,Spring Verlag, Berlin,Germany(1995))。
【0060】
CDR配列がSelK1の可変領域のCDR配列とは非実質的にのみ異なる抗体も、本発明の範囲内に包含される。上記のように、一般的にアミノ酸は、類似の電荷、疎水性、又は、立体化学的な特徴を有した関連のあるアミノ酸によって置換される。そのような置換は、当業者の通常の技量内にある。さらに、当業者は、逆に抗体の結合特性に影響を及ぼすことなく、FRにおいて変更を行うことができるということを理解するであろう。FRに対する変更には、それだけに限らないが、非ヒト由来のものをヒト化する、又は、Fc受容体結合等のエフェクター機能を変え得る定常部のクラス若しくはサブクラスを変える、特定のアミノ酸残基を変える等、抗原接触に重要な、若しくは、結合部位を安定化することに対して重要な特定のフレームワーク残基を操作することが含まれる。
【0061】
上記のように、本発明の抗体は、PSGL−1に対するケモカインの結合も阻止する。本発明の抗体によって阻止されるとして本明細書において熟慮されるケモカインの例には、それだけに限らないが、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、XCL1、XCL2、及び、XCL3が含まれる。
【0062】
本発明の一態様において、本明細書において熟慮される二重機能の抗PSGL−1抗体は、白血球、リンパ球、又は内皮細胞の接着を含む(ヒトを含めた)霊長類における多くの炎症性及び血栓性障害の治療に使用することができ、その障害には、それだけに限らないが、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、小腸炎)、関節炎(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、移植片拒絶、移植片対宿主病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、皮膚炎、腎炎、エリテマトーデス、強皮症、鼻炎、アナフィラキシー、糖尿病、多発性硬化症、粥状動脈硬化、血栓症、アレルギー反応、甲状腺炎、及び、腫瘍転移が含まれる。「霊長類」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト、サル、並びに、チンパンジー、ゴリラ、及びオランウータン等の類人猿を表している。
【0063】
本明細書において使用される場合、PSGL−1に対する抗体の「親和性」は、そのK又は解離定数によって特徴づけられる。強い親和性は低いKによって表され、弱い親和性は高いKによって表される。それ自体では、本発明の抗体は、好ましくはK≦100nM又は≦50nMによって、より好ましくはK≦25nMによって、さらにより好ましくはK≦10nMによって、さらにより好ましくはK≦5nMによって表される親和性を有する。
【0064】
抗体又は抗体断片の「相同体」は、本明細書において使用される場合、関連するタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列が、所与の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%同じであることを意味している。例えば、そのような配列は様々な種由来の変異体であり得るか、又は、相同配列は組換えで作製することができる。前記配列は、切断、削除、アミノ酸置換、又は追加によって所与の配列から引き出すことができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えばAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)、Needleman et al.,J.Mol.Biol.48:444−453(1970);Meyers et al., Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988);又は、Tatusova et al.,FEMS Microbiol.Lett.174:247−250(1999)に記載されたベーシックローカルアライメントツール(BLAST)等の標準的な整列アルゴリズム、並びに、他の整列アルゴリズム及び当技術分野の方法によって決定される。
【0065】
「単離された」又は「精製された」という用語は、その固有の環境から実質的に遊離の分子を表している。例えば、単離されたタンパク質は、そのタンパク質が由来する細胞物質又は細胞若しくは組織源由来の他のタンパク質から実質的に遊離である。前記用語は、単離されたタンパク質が少なくとも70〜80%(w/w)純粋である;少なくとも80〜90%(w/w)純粋である;少なくとも90〜95%純粋である;又は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%(w/w)純粋である調製も表している。一部の実施形態において、単離された分子は、医薬組成物にとって十分に純粋である。
【0066】
抑制活性は、PSGL−1抑制物質によるPSGL−1の活性の減少を、同じ抑制物質の非存在下でのPSGL−1の活性と比較して表している。中和抗体は、1又は複数のPSGL−1活性を減らすことができる。例えば、活性(例えば、白血球の接着及び走化性)の減少は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上である。
【0067】
「PSGL−1抑制物質」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば中和抗体等、PSGL−1の活性、発現、処理、又は細胞表面局在化を抑制する能力を持ついかなる媒介物も含む。そのような抑制物質は、PSGL−1の生物学的活性を「抑制する」、「中和する」、又は「減らす」と言われている。
【0068】
モノクローナル抗体の調製は、従来の、当業者には良く知られたものである。モノクローナル抗体は、種々の確立した技術によって雑種細胞培養物から単離及び精製することができる。そのような単離技術は、プロテインAセファロースを有したアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、及び、イオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0069】
インビトロ及びインビボでのモノクローナル抗体の操作方法は、当業者には良く知られている。例えば、本発明によって使用されることになるモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Nature 256,495:1975)によって最初に記載された雑種細胞法によって作製することができるか、又は、例えば米国特許第4,816,567号に記載された組換え法によって作製することができる。
【0070】
別の方法は、組換え手段によってモノクローナル抗体をヒト化して、例えば、ヒト又は霊長類特異的及び認識可能な配列を含有する抗体を作製することを含む。
【0071】
高い親和性でヒトPSGL−1又はそのエピトープに結合する本発明の抗体を作製する方法は、DNAコンストラクトを細胞に形質移入するステップであって、前記コンストラクトが、本発明の中和PSGL−1特異的抗体の少なくとも一部をコード化するDNA配列を含む、ステップ、抗体タンパク質が前記細胞によって発現されるような条件下で前記細胞を培養するステップ、及び、前記抗体タンパク質を単離するステップを含み得る。
【0072】
好ましくは、定常部は、どこか他の箇所で注目されたように、野生型免疫グロブリン重鎖Fc領域のエフェクター機能と比較して、エフェクター機能を調節する(すなわち、減らすか又は高める)ように修飾された。種々の実施形態において、例えば、IgG定常部は、エフェクター機能を減らしたか、又あるいは、エフェクター機能を増やした。Fcエフェクター機能は、例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、食作用、補体依存性細胞傷害、及び、半減期又はクリアランス速度の機能を含む。FcドメインのIgGアミノ酸配列は、Fcガンマ受容体への結合(従って、ADCC若しくは食作用の機能)に影響を及ぼすよう、又は、補体系との相互作用(補体依存性細胞傷害の機能)を変えるよう変えることができる。
【0073】
一実施形態において、当該抗体は、少なくとも1つのFc受容体に対して低い親和性を有するか又は親和性を有さない定常部又はFc部分を含む。別の実施形態では、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1Qに対して低い親和性を有するか又は親和性を有さない。一般に、抗体のエフェクター機能は、Fc受容体等のエフェクター分子に対する抗体の親和性を変えることによって変えることができる。結合親和性は、一般に、エフェクター分子の結合部位を修飾することによって変えられる。Fc受容体等のエフェクター分子との相互作用を変えるIgG修飾の開示は、例えば米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号において見ることができる。
【0074】
本発明の抗体タンパク質は、当技術分野において良く知られた技術を使用して作製することができる。例えば、本発明の抗体タンパク質は、細胞において組換えで作製することができる(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.,1989、及び、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989を参照)。
【0075】
組換え生産に対して、抗体タンパク質をコード化するポリヌクレオチド配列が、ベクター等の適切な発現媒体内に挿入され、前記ベクター等の適切な発現媒体は、挿入されたコード配列の転写及び翻訳にとって必要な要素を含有する。発現媒体は、次に、そのペプチドを発現することになる適した標的細胞内に形質移入される。当技術分野において既知の形質移入技術は、それだけに限らないが、リン酸カルシウム沈殿(Wigler et al.,Cell 14:725(1978))、及び、電気穿孔(Neumann et al.,EMBO J.1:841(1982))を含む。好ましくは真核細胞を含めた種々の宿主発現ベクターシステムを利用して、本明細書において記述された抗体タンパク質を発現させることができる。
【0076】
本開示は、さらに、開示された抗体をコード化する単離された核酸を提供する。当該核酸は、DNA又はRNAを含むことができ、全体的に又は部分的に合成又は組換えであり得る。本明細書において列挙されたヌクレオチド配列に対する参照は、特定された配列を有したDNA分子を包含し、文脈上別の解釈が必要とされない限り、Tに対してUが置換された特定された配列を有するRNA分子を包含する。
【0077】
別の実施形態では、本発明の核酸分子は、本明細書において開示された配列と少なくとも80%同じヌクレオチド配列も含む。さらに熟慮されることは、配列が少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.5%本明細書において開示された配列と同じである、及び/又は、高い若しくは中程度のストリンジェンシーの条件下で、本発明の配列とハイブリッドを形成する実施形態である。同一性パーセントは、目視検査及び数学的算定によって決定することができる。
【0078】
「高いストリンジェンシー」を含めたストリンジェンシーは、本明細書において使用される場合、例えばDNAの長さに基づき当業者によって容易に決定される条件を含む。一般的に、そのような条件は、42℃での50%ホルムアミド、6xSSC(又は、例えば、42℃での50%ホルムアミドにおけるスターク溶液(Stark’s solution)等の他の類似のハイブリダイゼーション溶液)及び約68℃での0.2xSSC、0.1%SDS洗浄ステップを有したハイブリダイゼーション条件として定められる。プローブの長さ等の要因に従い必要に応じて温度及び洗浄剤の塩濃度を調整することができるということを、当業者は認識するであろう。
【0079】
「中程度のストリンジェンシー」は、本明細書において使用される場合、例えばDNAの長さに基づき当業者によって容易に決定することができる条件を含む。基本的な条件は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,1:1.101−104,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)によって規定されており、ニトロセルロースフィルター5xSSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)に対する予洗液の使用、42℃での50%ホルムアミド、6xSSC(又は、例えば、42℃での50%ホルムアミドにおけるスターク溶液等の他の類似のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーションの条件、及び、60℃、0.5xSSC、0.1%SDSの洗浄条件を含む。
【0080】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、実質的に同種の抗体のポピュレーションから得られた抗体を表しており、すなわち、そのポピュレーションを含む個々の抗体は、微量で存在する場合がある起こり得る自然発生の変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一のエピトープの部位に対して作られている。さらに、一般的に異なる決定因子(エピトープ)に対して作られた異なる抗体を含む従来のポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、単一の決定因子に対して作られている。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていない雑種細胞培養によって合成されるということにおいて有利である。「モノクローナル」モディファイヤーは、実質的に同種の抗体のポピュレーションから得られるとして抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法による抗体の作製も要するとして解釈されるべきではない。
【0081】
モノクローナル抗体は、本明細書において特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定種から引き出されたか若しくは特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は類似し、1又は複数の鎖の残りが別の種から引き出されたか若しくは特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は類似している「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号)。
【0082】
抗体断片を作製する方法も当技術分野において知られている(例えば、全内容を本明細書に援用するHarlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1988を参照)。本発明の抗体断片は、抗体のタンパク質加水分解によって、又は、大腸菌における前記断片をコード化するDNAの発現によって調製することができる。抗体断片は、上記のように、抗体全体のペプシン又はパパイン消化という従来の方法によって得ることができる。例えば、ペプシンを用いた抗体の酵素による切断によって抗体断片を作製して、5S断片を示したF(ab')を提供することができる。この断片は、チオール還元剤、及び、任意選択でジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に対してブロッキング基を使用してさらに切断し、3.5SFab’一価の断片を作製することができる。あるいは、ペプシンを使用した酵素による切断は、2つの一価Fab’フラグメント及びFcフラグメントを直接生成する。これらの方法も、例えば、全内容を本明細書に援用する、米国特許第4,036,945号及び米国特許第4,331,647号並びにそこに含まれた参考文献に記載されている。
【0083】
一価の軽−重鎖断片を形成するための重鎖の分離等、抗体を切断する他の方法、さらなる断片の切断方法、又は、他の酵素的、化学的、若しくは遺伝学的技術も、未変化の抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り使用することができる。例えば、Fv断片は、VH及びVL鎖の会合を含む。この会合は非共有結合的であり得るか、又は、可変性の鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結するか、若しくは、グルタルアルデヒド等の化学薬品によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって接続されたVH及びVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合性タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVH及びVLドメインをコード化するDNA配列を含んだ構造遺伝子を構築することによって調製される。前記構造遺伝子は発現ベクター内に挿入され、後に大腸菌等の宿主細胞内に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを用いて単一のポリペプチド鎖を合成する。抗体断片の別の形状は、単一のCDRをコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、抗原認識及び結合に関与している場合が多くある。CDRペプチドは、関心のある抗体のCDRをコード化する遺伝子をクローン化するか又は構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体作製細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。
【0084】
本発明は、完全にヒトの抗体及びヒト化された形状の(例えば霊長類又はマウス等の)非ヒト抗体を含めた、操作された抗体を熟慮する。そのようなヒト化された抗体は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有する、その断片(Fv、Fab、Fab’、 F(ab')、又は、抗体の他の抗原結合性サブシーケンス等)である。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有したマウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種のCDRからの残基と置換されるヒトの免疫グロブリンである。
【0085】
操作された抗体の作製において、本発明の抗体分子をコード化するDNA配列は、確立された標準的な方法によって合成的に調製される。例えば、ホスホアミジン(phosphoamidine)法に従って、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNAシンセサイザーにおいて合成され、精製され、アニールされ、適したベクターにおいて連結されてクローン化される。
【0086】
DNA配列は、次に、いかなるベクターでもあり得る組換え発現ベクター内に挿入することができ、好都合に組換えDNA手順を受けさせることができる。ベクターの選択は、導入されることになる宿主細胞に依存することが多くある。従って、ベクターは、例えばプラスミド等、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の実在物として存在するベクターでありえ、その複製は、染色体複製とは無関係である。あるいは、ベクターは、宿主細胞内に導入された場合に、宿主細胞のゲノム内に組み込まれて、組み込まれた1又は複数の染色体と共に複製されるベクターであり得る。
【0087】
ベクターにおいて、タンパク質をコード化するDNA配列は、適したプロモーター配列に動作可能に接続されるべきである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示すいかなるDNA配列でもありえ、宿主細胞と類似又は異種のタンパク質をコード化する遺伝子から引き出すことができる。哺乳類細胞におけるコードDNA配列の転写を導くための適したプロモーターの例は、SV40プロモーター、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、又は、アデノウイルス2主要後期プロモーターである。昆虫の細胞に使用するのに適したプロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである。酵母の宿主細胞に使用するのに適したプロモーターは、酵母解糖系遺伝子若しくはアルコール脱水素酵素遺伝子由来のプロモーター、又は、TPI1若しくはADH2−4cプロモーターを含む。糸状菌宿主細胞に使用するのに適したプロモーターは、例えば、ADH3プロモーター又はtpiAプロモーターである。
【0088】
DNAコード配列は、ヒト成長ホルモンターミネーター等の適したターミネーターにも、又は、(真菌宿主に対して)TPI1若しくはADH3プロモーターに動作可能に接続することができる。ベクターは、(例えばSV40又はタイトルアデノウイルス5Elb領域由来の)ポリアデニル化シグナル、(例えばSV40エンハンサー等の)転写エンハンサー配列、及び、(例えばアデノウイルスVA RNAをコード化するもの等の)転写エンハンサー配列等の要素をさらに含むことができる。
【0089】
組換え発現ベクターは、ベクターが問題の宿主細胞において複製するのを可能にするDNA配列をさらに含むことができる。(宿主細胞が哺乳類細胞である場合の)そのような配列の例は、SV40複製開始点である。ベクターは、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子、又は、例えばネオマイシン、ヒドロマイシン、若しくはメトトレキサート等の薬剤に対する抵抗力を与えるもの等、その産物が宿主細胞における欠陥を補完する遺伝子等の選択可能なマーカーも含むことができる。
【0090】
タンパク質、プロモーター及びターミネーターをそれぞれコードするDNA配列を連結するため、並びに、複製に必要な情報を含有する適したベクター内にそれらを挿入するために使用される手順は、当業者にはよく知られている。
【0091】
本発明の組換えタンパク質を得るために、コードDNA配列は、有用に第2のペプチドコード配列及びプロテアーゼ切断部位コード配列と融合させ、その融合タンパク質をコード化するDNAコンストラクトを与えることができ、プロテアーゼ切断部位コード配列は、HBPフラグメントと第2のペプチドコードDNAとの間に置かれ、組換え発現ベクター内に挿入されて、組換え宿主細胞において発現される。一実施形態において、前記第2のペプチドは、それだけに限られないが、グルタチオンS還元酵素、ウシチモシン、細菌チオレドキシン、又は、ヒトユビキチン天然若しくは合成変異体、又は、そのペプチドを含む群から選択される。別の実施形態では、プロテアーゼ切断部位を含むペプチド配列は、アミノ酸配列IEGR、エンテロキナーゼを有した、アミノ酸配列DDDDK、トロンビンを有した、アミノ酸配列LVPR/GS又はアクロモバクターリティカスを有した、アミノ酸配列XKX、切断部位を有した第Xa因子であり得る。
【0092】
発現ベクターが導入される宿主細胞は、ペプチド又は全長タンパク質を発現する能力を持ついかなる細胞でもありえ、好ましくは、無脊髄動物(昆虫)細胞、又は、例えばアフリカツメガエル卵母細胞若しくは哺乳類細胞等の脊髄細胞、特に、昆虫及び哺乳類細胞等、真核細胞である。適した哺乳類株化細胞の例には、それだけに限らないが、HEk293(ATCC CRL−1573)、COS(ATCC CRL−1650)、BHK(ATCC CRL−1632、ATCC CCL−10)、又は、CHO(ATCC CCL−61)株化細胞が含まれる。哺乳類細胞に形質移入する、及び、細胞内に導入されたDNA配列を発現する方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0093】
あるいは、(酵母細胞を含めた)真菌細胞を、宿主細胞として使用することができる。適した酵母細胞の例には、サッカロミセス菌種又はシゾサッカロミセス菌種、特に、サッカロミセス・セレビシアの菌株の細胞が含まれる。他の真菌細胞の例は、例えば、アスペルギルス菌種又はニューロスポラ菌種等の糸状菌、特に、コウジカビ又はクロコウジカビの菌株の細胞である。タンパク質の発現に対するアスペルギルス菌種の使用は、例えば欧州特許第238 023号において記載されている。
【0094】
細胞を培養するために使用される培地は、血清添加培地若しくは適切な補給物を添加した無血清培地等の哺乳類細胞を増殖するのに適したいかなる従来の培地、又は、昆虫、酵母、若しくは真菌の細胞を増殖するのに適した培地でもあり得る。適した培地は、商業的供給業者から入手可能であるか、又は、発表されたレシピに従って調製することができる。
【0095】
細胞によって組換えで作製されたタンパク質は、次に、遠心分離又は濾過により培地から宿主細胞を分離するステップ、例えば硫酸アンモニウム等の塩の手段により上澄み又は濾液のタンパク質性構成成分を沈殿させるステップ、例えばHPLC、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の種々のクロマトグラフィー手順による精製を含む従来の手順によって培地から除去することができる。
【0096】
本発明の抗体は、好ましくは、補体を不活化する1又は複数の修飾を含む。「補体活性」という用語は、補体系、個々の補体経路関連分子、並びに、これらの分子をコード化する遺伝子の活性化と付随する生化学的及び生理学的活性を広く包含している。従って、補体活性は、例えば、補体経路分子をコード化する遺伝子の構造及び発現、補体経路分子の(例えば、酵素的又は制御的)生化学的活性、補体系の活性を開始するか又はそこから生じる細胞活性、並びに、補体経路分子に対する血清自己抗体の存在を含む。SelK1において、補体を不活化するための好ましい修飾は、重鎖定常部CH2内の(SEQ ID番号:2の)位置341におけるLysのAlaとの置換である。同じ位置でのLysに対する他の置換は、例えば、gly、leu、trp、tyr、pro、thr、ser、met、asp、asn、glu、gln、phe、ile、val、thr、及び、cysのうちどれも含むことができ、補体を不活化することにおいて効果的である。
【0097】
「補体経路関連分子」、「補体経路分子」、及び「補体経路関連タンパク質」という用語は、互換的に使用され、活性化された補体系によって媒介される、活性化された補体系に応じた、又は、活性化された補体系によってトリガされる補体活性及び下流細胞活性において役割を果たす種々の分子を表しており、補体経路のイニシエーター(すなわち、補体系の活性化を直接又は間接的にトリガする分子)、補体活性化の間に産生されるか又は役割を果たす分子(例えば、C3、C5、C5b−9、B因子、MASP−1、及びMASP−2等の補体タンパク質/酵素)、補体受容体又は補体阻害剤(例えば、クラスタリン、ビトロネクチン、CR1、若しくはCD59)、並びに、活性化された補体系によって制御及びトリガされる分子(例えば、膜侵襲複合体−抑制因子、MACIF)を含む。このように、上記の補体タンパク質に加えて、補体経路関連分子は、例えば、(CR1又はCD35とも名付けられた)補体受容体1型、(CR2又はCD21とも名付けられた)補体受容体2型、補体調節タンパク質(MCP又はCD46)、及び、C4bBP等のC3/C5コンバターゼ制御因子(RCA);ビトロネクチン、(「SP40,40」とも名付けられた)クラスタリン、CRP、CD59、及び、ホモロガス制限因子(HRF)等のMAC制御因子;Igカッパ、Igラムダ、又はIgガンマ等の免疫グロブリン鎖;C1インヒビター;並びに、CR3、CR4(CD11b/18)、及びDAF(CD55)等の他のタンパク質も含む。
【0098】
上記の方法のいずれによっても提供される本発明の抗体は、好ましくは、病態の治療に対する薬物又は組成物の製造に使用され、本明細書において熟慮されているように、炎症反応を抑制することが必要とされる。
【0099】
本明細書において記述されている炎症反応若しくは疾患の予防及び/又は治療に対する薬物若しくは組成物を製造することに対して、抗体、該抗体の機能的に活性な断片又は変異体を使用することが本発明の重要な目的である。
【0100】
一実施形態において、本発明は、クローン病若しくは潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の予防及び/又は治療に使用される能力を持つ治療上の薬物又は組成物の製造に関する。個人にとって有害でありえ、従って、有利に抑えられる炎症反応の他の例は、それだけに限られないが、広範囲の外傷と付随する状態、例えば結核菌による感染と付随する例えばIV型遅延型過敏症等の慢性炎症、全身性炎症反応症候群、多臓器不全、関節リウマチ、又は、本明細書において記述される他の状態を含む。
【0101】
特発性回腸炎のSAMP−1/Yitマウスモデルは、ヒトクローン病にぴったりと似ている。PSGL−1の治療的抑制は、このモデルにおいて回腸炎をユニークに回復させるが一方、ここのセレクチンの遮断は回復させない。このモデルにおけるTNFの抑制は、治療効果は抗GSGL−1[127]ほど強力であるようには見えないけれども、抗PSGL−1と類似の方法で回腸炎の重症度を下げる。従って、SAMP−1モデルは、ヒトクローン病を、その病態生理学においてだけでなく治療的介入に対するその応答においても、ぴったりと写しているように思われる。この証拠は、ヒト(及び他の霊長類)においてPSGL−1結合活性を抑制する治療物質がクローン病、並びに、本明細書においてどこか他の箇所でも説明された他の炎症性疾患の治療としても効果的であるという結論を裏づけている。
【0102】
本発明による薬物の医薬組成物において、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている、医薬組成物を調合するための確立された方法のいずれによっても抗体は組み立てることができる。前記組成物は、一般的に、局所又は全身注入又は点滴に適した形状でありえ、それ自体、滅菌水、等張生理食塩水、又はグルコース溶液を用いて調合することができる。前記組成物は、当技術分野において良く知られた従来の滅菌技術によって無菌化することができる。結果として生じる水溶液は、使用するために包装するか、又は、無菌状態の下で濾過して凍結乾燥することができ、凍結乾燥された標本は、投与に先立ち無菌の水溶液と組み合わされる。前記組成物は、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の緩衝剤、浸透圧調整剤等、近似の生理的条件に対して必要とされる場合に薬剤的に受け入れられる補助剤を含有し得る。タンパク質の濃度は、例えば、約0.01重量%未満から15〜20重量%程、又はそれ以上と広範囲に変わり得る。前記組成物の単位用量は、例えば、約1μgから約1000mgの抗体又は抗体断片を含み得る。
【0103】
抗体又は抗体断片は、局所的に若しくは注入によって投与することができる。投与量は、治療されることになる特定の状態及び特定の個人に従い医師によって処方される。投与量及び頻度は、担当した医師によって決定されるパラメーターに従い注意深く順応及び調整される。好ましい投与経路は、皮下、静脈内、筋肉内、気管内、膀胱内、気管内、又は腹腔内注射でありえ、24乃至48時間あたりか又は1週間あたりで、14日毎、4週間毎に、例えば、1kgの体重あたり0.1〜1000mg、とりわけ1mgから100mg、特に1〜10mgという範囲で与えることができる。前記用量を、カテーテルを介して、又は、個々のボーラスで連続的に投与することができる。本発明の抗体は、1kgの体重あたり、1μg/kgから10μg/kg、10μg/kgから100μg/kg、100μg/kgから1mg/kg、1mg/kgから10mg/kg、10mg/kgから50mg/kg、又は、10mg/kgから100mg/kgという効果的な量で投与することができる。
【0104】
本明細書に記述される抗体を含む本発明に使用される薬物の組成物は、抗炎症薬等、治療されることになる特定の状態及び特定の個人に従い医師によって常に処方される他の治療化合物によってさらに補うことができ、前記薬剤は、治療されることになる特定の状態及び特定の個人に従い医師によって処方される。
【0105】
PSGL−1は、白血球の血小板及び/又は微小胞の接着、ローリング、漸増、集合;サイトカインの白血球分泌;凝固の促進;並びに、炎症、血栓症、凝固、免疫応答、及びシグナル伝達における他の態様において機能的な重要性を有している。PSGL−1は、腫瘍転移にも関与している。本明細書において記述される中和抗体は、これらのPSGL−1活性のうち1又は複数の活性を、例えば、インビボ又はインビトロで抑制する。従って、本明細書において記述される中和抗体を用いたPSGL−1の抑制は、炎症、血栓症、凝固、T細胞応答と付随する種々の障害の治療においてだけでなく、例えば、免疫及び心血管系の障害の治療においても有用である。
【0106】
上記のように、本発明の一実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患の治療に使用される。炎症性腸疾患(「IBD」)は、消化管における2つの慢性の特発性炎症性疾患:潰瘍性大腸炎(「UC」)及びクローン病(「CD」)を記述するために使用される集合名である。UC及びCDは、その重複した臨床的、病因学的、及び病原的な特徴のため、共に考慮される。しかし、治療上及び予後上の観点から、それらを区別することは有用である。
【0107】
IBDは、世界中で発生し、二百万という数の人を苦しめているとして報告されている。発病は、全ての年齢で実証されてきたが、IBDは、青年期において優位に始まる。3つの最も一般的なIBDの主症状は、下痢、腹痛、及び発熱である。下痢は、軽症から重症までに及ぶ場合があり、緊急性及び頻度を伴う場合が多くある。UCにおいては、下痢は通常血性であり、粘液及び化膿性物質も有する場合がある。貧血及び体重減少は、さらなる一般的なIBDの徴候である。不安症及びうつ病を含めた、心理的な問題の増加する発生率における報告は、おそらく、壮年期の人々に発生する衰弱性疾患であることが多い疾患の驚くべく二次的効果ではない。
【0108】
一連の研究、放射線学、及び内視鏡的な評価は、IBDの診断を引き出すため、及び、疾患の程度及び重症度を評価するために組み合わされる。それでも、CD、並びに、過敏性腸症候群、感染性下痢、直腸出血、放射線大腸炎等、他のタイプの腸の炎症状態からUCを区別することは、小腸及び大腸の粘膜が類似の方法で多数の異なる傷害に反応するため困難である。他のタイプの腸の障害が除外されると、疾患の進行に基づいて最後の診断が行われる場合が多くある。しかし、UC及びCD、特に結腸のCDとの重複する特徴のため、多くの患者において、大腸炎は未定のものとして依然として考慮されなければならない。
【0109】
UC及びCDの主な初期症状は、慢性の反復性下痢、血性下痢、反復性臍疝痛、嘔気、体重減少、いかなる明白な説明も必要ない一般的な炎症の証拠(発熱、上昇した赤血球沈降速度、白血球増加、血小板増加、及び、タンパク異常血症又は貧血)である。これらの症状の中で、下痢及び貧血は、UCのさらに多い特徴であり、痛み及び体重減少、並びに、顕著な炎症の証拠は、CDにおいてより一般的である。患者の病歴及び理学的検査は役立ち得るけれども、診断の最終的な確証は、内視鏡的、組織学的、及び、小腸に関しては放射線学的にも伝統的に行われてきた。
【0110】
本明細書において記述されるPSGL−1特異的抗体は、別の分子に連結させることができる。例えば、抗体を別のペプチド若しくはタンパク質、毒素、放射性同位体、細胞傷害性薬物、又は、細胞分裂阻害剤に連結させることができる。前記抗体は、化学的架橋によって、又は、組換え法によって共有結合的に連結させることができる。前記抗体は、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号;又は、第4,179,337号に明記された方法で、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又は、ポリオキシアルキレン等、種々の非タンパク質性ポリマーのうちの一つに連結させることもできる。前記抗体は、ポリマーへの共有結合によって化学的に修飾して、例えば、その安定性を上げるか又は半減期を増やすことができる。好例となるポリマー、及び、それらのポリマーを付着する方法も、米国特許第4,766,106号;第4,179,337号;第4,495,285号;及び、第4,609,546号に示されている。
【0111】
前記抗体は、検出可能なラベルを用いてタグを付けることもできる。検出可能なラベルは、その化学的性質によって、分子相互作用の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを提供する分子である。抗体を含めたタンパク質は、(例えば、発色団、フルオロフォア、又は放射性同位体によって)直接、又は、(例えば、着色された、発光の、又は、蛍光性の産物を生じる反応を触媒することによって)間接的に検出することができる分子に共有結合的又は非共有結合的に結合した場合に、検出可能なラベルを有している。検出可能なラベルには、例えば、同様に従来化学を使用して抗体に付着することができる、131I若しくは99Tc、重金属、又は、ユーロピウム等の蛍光基質等、放射標識が含まれる。検出可能なラベルには、西洋わさびペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ等の酵素ラベルも含まれる。検出可能なラベルは、さらに、例えばラベルされたアビジン等の特定の同族の検出可能な成分への結合を介して検出することができるビオチン等の化学成分を含む。
【0112】
本発明は、それだけに限られないが、PSGL−1に対する、特にそのアミノ酸42〜62のエピトープの一部に対するセレクチンの結合もケモカインの結合も阻止する抗PSGl−1抗体及びその結合断片等の物質を求めてスクリーニングする方法も対象としている。
【0113】
上記のように、本発明は、PSGL−1に対する抗体、そのような抗PSGL−1抗体を生成する宿主細胞、そのような抗PSGL−1抗体の生成をコード化するDNAを含有するベクター、及び、セレクチンにより媒介された白血球の接着もケモカインにより媒介された白血球の走化性も阻止する二重機能の抗PSGL−1抗体を同定する方法を対象としている。
【0114】
一実施形態において、本発明は、ヒトPSGL−1(SEQ ID番号:1)のアミノ酸42〜62を含むポリペプチドの少なくとも一部に特異的に結合し、P又はLセレクチンのうち少なくとも1つがそこに結合するのを阻止する、及び、(それだけに限らないが、CCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28を含めた)少なくとも1つのケモカインがそこに結合するのを阻止する、従って、セレクチンにより媒介される白血球の接着及びケモカインにより媒介される白血球の走化性を阻止することにおいて二重機能を示す抗体を同定する方法を対象としている。
【0115】
好ましい実施形態におけるスクリーニング方法は、PSGL−1に対するセレクチン及びケモカインの結合を測定するため、並びに、白血球又はリンパ球の付着性及びPSGL−1に対するケモカインの結合により媒介される走化性を無効にするブロッキング抗PSGL−1抗体を同定するために使用することができるインビトロでのアッセイを含む。それだけに限らないが、PSGL−1に結合して、そこに存在する、PSGL−1未変性タンパク質の残基42〜62によって包含されたP及びLセレクチン及びケモカインに対する結合エピトープを阻止する抗体を同定する本明細書において記述されるアッセイ等の一連のアッセイを用いて、試験抗PSGl−1抗体は二重機能能力を求めてスクリーニングすることができる。以前に同定された抗PSGL−1抗体は、PSGL−1に対するP及びLセレクチンの結合を阻止するが、Eセレクチンの結合は阻止せず、活性化された内皮細胞に対する好中球の結合を阻止するとして示されてきたが、ケモカインの結合又は走化性を阻止するとは示されてこなかった。PSGL−1の42〜62ドメイン以外のエピトープに対する非ブロッキングマウスモノクローナル抗体、例えば、未変性タンパク質の残基188〜258に結合するPL2は、そのようなアッセイにおける対照として使用することができる。
【0116】
前記スクリーニング方法の1つのステップにおいて、セレクチンに対するPSGL−1の結合を阻止するとして、及び、セレクチン又は活性化された内皮細胞に対する好中球の結合を阻止するとして示されてきたPSGL−1に対する試験抗体が同定される。これらの試験抗体は、PSGL−1に対する例えばCCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28等の1又は複数のケモカインの結合を阻止する、及び、そのようなケモカインによって媒介される好中球又はリンパ球の走化性を阻止するその能力を決定するためにさらにスクリーニングされる。セレクチン及びケモカインの標的も機能も阻止するという二重機能を有するとして同定された試験抗体は、本発明の抗体、又は、本発明の方法に使用される抗体を含む。
【0117】
本発明の一実施形態では、P及びLセレクチンに対するPSGL−1の結合を阻止する抗体が第一に同定される。例えば、合成型、組換え型、若しくは、可溶型のP、E、若しくはLセレクチンを使用してELISAが行われるか、又は、レクチンドメインを包含したそれぞれの一部を、マイクロタイターウェルにおいて、増加する部位の密度で固定化することができる。PSGL−1の残基42〜62を有する組換え又は可溶のPSGL−1、融合タンパク質、又はその断片を、例えばFITC等の適したレポーターでラベルし、前記ウェルに添加して、インキュベートし、洗浄して、セレクチンに対するPSGL−1の結合を測定することができる。試験抗体は、PSGL−1の添加に先立ちアッセイに添加され(又は、ウェルへのその添加に先立ちPSGL−1と組み合わされ)、既知の非ブロッキング対照抗体を含有するウェル、抗体を有さないウェル、又は、非セレクチンタンパク質で被覆されたマイクロタイターウェルからのシグナルが、PSGL−1試験抗体混合物を有したウェルから測定されたシグナルに比較される。試験抗体は、好ましくは、次のステップまで進められることになるPSGL−1結合を75〜100%効果的に阻止するべきである。
【0118】
さらに別の実施形態では、その細胞表面上でPSGL−1を発現するヒト好中球又は前骨髄球性HL−60細胞を前記ウェルにおいてインキュベートし、P、E、又はLセレクチンに対するその接着を、例えば、以下に記述される方法を使用して測定することができる。ヒト好中球は、密度勾配遠心分離によって、ヘパリン処置された全血から単離することができる。ヒトPSGL−1を発現する末梢血白血球由来のヒトHL−60細胞を、ATCC(例えばATCC CCL 240)から得ることができる。そのような細胞は、マイクロタイターウェルに添加して、候補抗体の存在下又は非存在下で(例えば30分間等)十分な時間インキュベートし、洗浄して、次に、ミエロペルオキシダーゼアッセイを用いて定量化することができる。ミエロペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)技術(例えば、Suzuki et al.,Anal Biochem 1983を参照)を使用して測定される。好中球は、0.05モル/Lのリン酸カリウム緩衝液、pJ6.0中0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの添加によって可溶化される。抽出物の試料が、次に、0.08モル/Lのリン酸カリウム緩衝液、pH5.4、0.5モル/Lの過酸化水素、及び、0.16ミリモル/LのTMBを含有したマイクロタイターウェルに添加される。前記試料は、37℃で振盪されながら20分間インキュベートされる。吸光度が650nmで測定される。結合した細胞の数は、ミエロペルオキシダーゼ活性の検量線対細胞の数から引き出される。PSGL−1に対する非ブロッキング抗体と比較した場合にP又はLセレクチンに対する好中球の接着を有意に阻止する抗体が、次の試験ステップに進められる。別の実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はCOS−7細胞にP、L、又はEセレクチンDNAを形質移入して、そのようなセレクチンをその細胞表面上で発現するようにさせることができる。そのような細胞は、好中球又はHL−60細胞を添加することができる適した培地内のマイクロタイタープレートの上に蒔いて単層として培養される。好中球又はHL−60細胞を、候補抗体とプレインキュベートし、マイクロタイターウェルに添加することができる。非ブロッキング抗体対照と比較した場合にミエロペルオキシダーゼアッセイによって測定される好中球又はHL−60細胞の接着を有意に阻止する試験抗体は、次のステップに進められる。
【0119】
本発明のさらに別の実施形態において、例えば以下で示される方法において、生理的な血流をシミュレートする流れの条件の下、試験抗体は、PSGL−1に結合する及びPセレクチンの機能を阻止するその能力を求めてスクリーニングすることができる。生理的な流れの条件は、平行板の幾何学を有したフローチャンバーを使用してインビトロで生じられる(例えば、Lawrence et al;1987 Blood)。ヒト臍帯静脈内皮細胞が、フローチャンバー内に置くことができるディッシュ内で培養される。単離された好中球は、カルシウム及びマグネシウムを有した緩衝された生理食塩水で希釈され、所望の壁ずり応力を生じる速度でチャンバーを介して灌流される。ヒスタミン又はトロンビン等の刺激は、実験の間に内皮細胞が刺激されるように、この供給液に直接添加することができる。好中球と内皮単層との相互作用は、位相差ビデオ顕微鏡によって観察され、デジタル画像処理システムを用いて定量化される。転がる及びしっかりと付着する好中球は、3つのフィールドのそれぞれに対して、当業者には知られた方法を使用してカウントされ、その時点の値を与えるよう平均される。流れ下での粘着性を阻止する抗PSGL−1抗体を求めてスクリーニングするために、抗PSGL−1mAb及び非ブロッキング対照抗PSGL−1抗体を、種々の濃度で好中球の懸濁液に添加して内皮細胞層上を灌流させることができる。流れ下で好中球の接着を有意に阻止するPSGL−1に対する試験抗体は、スクリーニング方法の次のステップに進められる。
【0120】
残基42〜62の一部によって包含されるPSGL−1エピトープにセレクチンが結合するのを阻止することにおいて効果的であるとして同定される試験抗体が、PSGL−1に対するケモカインの結合又は走化性を阻止するその能力を求めてさらにスクリーニングされる。アッセイに使用されるケモカイン、特に、CCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28は、商業的に得るか、又は、tBoc(第三ブチルオキシカルボニル)固相化学を用いて化学的に合成し、高速液体クロマトグラフィーによって精製して、その質量を、エレクトロスプレー質量分析によって確かめることができる。この方法で調製された合成ケモカインは、アッセイに使用することができる。ケモカインは、ケモカインの脱保護及び再折りたたみ前のケモカインのN末端に対するビオチンアミドヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの結合によって、ビオチン化することもできる。ビオチン化されたケモカインは、例えばFITC又は蛍光検出に適した他のフルオロフォア等の蛍光レポーターに結合されたストレプトアビジンの添加によってラベルすることができる。例えば、ビオチン化されたケモカインは、走化性アッセイに先立ち、適した緩衝剤においてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)−ストレプトアビジンと混ぜ合わせて、30分間プレインキュベートすることができる。
【0121】
一実施形態において、試験抗体は、ドットブロットアッセイを使用することによって、PSGL−1に対するケモカイン結合を阻止する能力を求めてスクリーニングすることができる。そのようなアッセイでは、例えばCCL19、CCL21、CCL27、及び/又はCCL28等のケモカインは、1つのドットあたり25〜400ngで反復されるドットで、ニトロセルロース膜上でドットブロットされる。組換えヒトPSGL−Igは、商業的に得ることができるか、又は、組換え型のPSGL−1及びヒトIgGをコード化するベクターを形質移入された細胞発現系から調製することができる[20]。そのようなベクターは、ヒトIgGに融合された未変性PSGL−1又はその断片を含有する場合があるが、SEQ ID番号:1の残基42〜62によって包含される、セレクチン及びケモカインに対する機能的なエピトープを含有したN末端ドメインを少なくとも含有していなくてはならない。膜は、トリス緩衝された生理食塩水中5%BSAで2時間遮断され、次に、試験抗体の存在下又は非存在下で50ug/mlのPSGL−1−IgGを用いて、又は、例えばPL2等の無機能ブロッキング対照抗PSGL−1抗体を用いて2時間インキュベートされる。その膜は洗浄され、検出及び分析のために、例えばFITC等のフルオロフォア、又は、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ等の発色性薬剤でラベルされた抗ヒトIgGの添加によって結合が検出される。対照非ブロッキング抗体と比較した場合に示されたケモカインに対するPSGL−1−IgGの結合を有意に阻止する試験抗体は、本発明において熟慮される成功した二重機能ブロッキング抗体であると考慮される。
【0122】
別の実施形態では、PSGL−1に対するケモカイン阻止抗体がケモカインにより媒介される走化性を阻止することができるかどうかを決定するさらなるステップ、細胞結合及び走化性のアッセイを、白血球又はリンパ球を用いて行うことができる。ヒト好中球は、デキストラン沈降、低張溶解(hypotonic lysis)、及び、フィコールパック密度勾配遠心分離によって、ヘパリン処置された血液から単離される[20]。リンパ球は、表在性の頸部、上腕、鼠径、腸間膜、及び、腋窩のリンパ節から引き出された単細胞浮遊物として単離することができる。細胞は、次に、例えばRPMI培地等の適した培地においてステンレス綱のふるいを通過することによって解離することができる(75)。細胞は、適したフルオロフォアでラベルされた細胞特異的抗体を用いてラベルすることができ、例えば、好中球は抗CD43−FITCを用いてラベルすることができるか、又は、リンパ球は抗CD4−FITC若しくは抗CD8−FITCを用いてラベルすることができる。細胞結合アッセイは、FAC分析を使用して行うことができる。そのようなアッセイにおいて、ラベルされた好中球又はリンパ球は、FAC分析に対して例えばフィコエリトリンで適切にラベルされた、例えばCCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28を含めた1又は複数のケモカインと混ぜ合わされ、さらに、PSGL−1に対する抗体、又は、PSGL−1に対する非ブロッキング対照抗体と混ぜ合わされる。対照非ブロッキング抗体と比較した場合に示されたケモカインに対する好中球又はリンパ球の結合を有意に阻止する試験抗体は、本発明によって熟慮される成功した二重機能ブロッキング抗体であると考慮される。
【0123】
PSGL−1に対する抗体を、ケモカインにより媒介される走化性を阻止するその能力を求めてスクリーニングするアッセイにおけるさらに別の実施形態において、例えばCCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28等のケモカインを含有する走化性緩衝剤(chemotaxis buffer)を、トランスウェルプレートの下部チャンバーに添加することができる。関心のある細胞、一般的には適切にラベルされた好中球又はリンパ球は、37℃に予熱された走化性緩衝剤中に、1ミリリットル(100μl)あたり10×10生細胞の濃度で再懸濁され、上部のトランスウェルチャンバーに添加された後、37℃で2〜3時間のインキュベートが続く。抗体抑制アッセイにおいて、50μlの抗PSGL−1抗体又はPSGL−1に対する対照非ブロッキング抗体を上部のトランスウェルチャンバーにまず添加し、続いて1ミリリットルあたり20×10生細胞濃度の50μlの細胞を添加することができる。下部チャンバーまで遊走する細胞は、フローサイトメトリーによって定量化される。対照と比較した場合に白血球又はリンパ球の遊走を有意に阻止するPSGL−1に対する試験抗体は、本発明によって熟慮される成功した二重機能ブロッキング抗体であると考慮される。本明細書において使用される方法の個々の構成要素の例は、例えば、Moore等[20、30]及びVeerman等[75]に示されている。前記方法によって同定されるそのような抗体は、PSGL−1に対するセレクチン結合もケモカイン結合も阻止することにおける二重機能、並びに、セレクチン及びケモカインに対するPSGL−1結合によって媒介される細胞接着及びホーミングの機能的な阻止を実証し、従って、本明細書において熟慮される治療上の処置のために本発明に従って使用することができる抗体を同定するか、又は、そのような抗体の特性が有用性を有するいかなる他の使用若しくは処置も同定している。
【0124】
PSGL−1の残基42〜62を含むエピトープに対するセレクチンの結合を阻止する試験抗体を同定するために試験抗体をスクリーニングする方法の別の実施形態では、一実施形態において、当業者には知られた方法を使用した組換えPSGL−1又はヒトエピトープ膜から精製されたPSGL−1を使用して、又は、PSGL−1の残基42〜62エピトープを含有したIg融合タンパク質、若しくは、PSGL−1をコード化及び発現するcDNAを形質移入されたCOS細胞を使用してELISAが行われる。そのような形状のPSGL−1又はPSGL−1含有断片は、マイクロタイターウェルにおいて増加する部位の密度で固定化され、適切にラベルされたセレクチン及びケモカインを用いて探索することができる。セレクチンは、免疫グロブリンに融合されたP又はLセレクチンのレクチン及びEFGドメインを含む融合タンパク質の組換え型(Ig融合タンパク質)として発現し、二価型のセレクチンを生成することができる。そのようなセレクチンは、例えばFITC等の適したレポーターでラベルすることができる。マイクロタイターウェルは、候補(試験)抗PSGL−1抗体又は非ブロッキング(対照)抗体の存在下若しくは非存在下でインキュベートすることができる。インキュベーションの後、前記ウェルを洗浄し、セレクチンに対するPSGL−1の結合を相対蛍光単位として測定することができる。試験抗体は対照抗体に比較され、P及びLセレクチンに対するPSGL−1結合の75〜100%を効果的に阻止するはずである。PSGL−1に結合し、そこに対するP又はLセレクチンの結合を阻止する抗体を、PSGL−1に対するケモカインの結合を阻止することにおける効果に対してさらに検査することができる。
【0125】
本発明におけるスクリーニング方法の別の実施形態は、SEQ ID番号:1の残基42〜62を含むPSGl−1エピトープに対するセレクチンの結合及びケモカインの結合を阻止する抗体を求めて同時にスクリーニングすることを熟慮する。一実施形態では、当業者による組換えPSGL−1若しくはヒト抗中球の膜から精製されたPSGL−1、又は、PSGL−1の残基42〜62を含有する融合タンパク質を使用してELISAが行われる。そのようなPSGL−1又はPSGL−1エピトープは、マイクロタイターウェルにおいて増加する部位の密度で固定化され、適切にラベルされたセレクチン及びケモカインを用いて探索することができる。セレクチンは、免疫グロブリンに融合されたP又はLセレクチンのレクチン及びEFGドメインを含む融合タンパク質の組換え型(Ig融合タンパク質)として発現し、二価型のセレクチンを生成することができる。そのようなセレクチンは、例えばFITC等の適したレポーターでラベルすることができる。さらに、例えばCCL19、CCL21、CCL27、及びCCL28等のケモカインを、当業者によって合成し、そのN末端にてビオチンに結合させることができる。ビオチン化されたケモカインは、適した蛍光レポーターに結合されたストレプトアビジンの添加によってラベルすることができ、前記適した蛍光レポーターの発光スペクトルは、DAPI等のFITC、Cy3、Cy5、又は、他のそのような色素から変えられる。マイクロタイターウェルは、候補抗PSGL−1抗体又は非ブロッキング抗体(対照)の存在下若しくは非存在下でインキュベートすることができる。適切にラベルされたセレクチン及びケモカインは、マイクロタイターウェルに同時に添加され、インキュベートされる。インキュベーションの後、前記ウェルを洗浄し、セレクチン及びケモカインに対するPSGL−1の結合を相対蛍光単位(RFU)として測定することができる。試験抗体は対照抗体に比較され、セレクチン及びケモカインに対するPSGL−1結合の75〜100%を阻止する抗体が、二重機能のPSGL−1ブロッキング抗体と名付けられ、本明細書に記述される本発明の治療上の処置に使用するのに熟慮される。
【0126】
本明細書及び特許請求の範囲に使用される成分、反応条件等の量を表す全ての数は、「約」という用語によって全ての例において変えられるとして理解されるべきである。従って、逆の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に明記された数値的パラメーターは、本発明によって得られると考えられる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0127】
本発明は、本明細書に記述される方法及び組成物における特定の実施形態又は例による範囲において限定されるべきではなく、それは、そのような実施例又は例が、本発明における一態様の1つの例として意図され、いかなる機能的に同等の実施形態も本発明の範囲内にあるためである。実際、本発明の方法及び組成物における種々の変更が、本明細書において示され記述されたものに加えて、前述の説明から当業者には明らかになるはずである。
【0128】
本明細書において引用された、米国若しくは外国の特許、又は、公開された米国若しくは外国の出願若しくは出版物を含めた参考文献のそれぞれは、その全内容を本明細書において援用する。
【0129】
本出願は、2008年5月15日に出願した米国仮特許出願第61/127,791号に基づく優先権を主張するものであり、全内容を本出願において援用する。
【参考文献】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞における、Pセレクチン又はLセレクチンにより媒介される接着、並びに、ケモカインにより媒介される遊走を抑制する方法であって:
SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜62の少なくとも一部を含んだヒトPSGL−1の硫酸化N末端部分に高い親和性で結合する、PSGL−1に特異的なモノクローナル抗体又はその結合断片を提供するステップ;並びに
前記抗体又はその結合断片を、PSGL−1を有するヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞に曝露するステップであり、前記抗体又はその結合断片が、前記ヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞上の前記ヒトPSGL−1の硫酸化N末端部分に結合し、前記ヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞上の前記ヒトPSGL−1に対するPセレクチンの結合を阻止し、前記ヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞上の前記ヒトPSGL−1に対する少なくとも1つのケモカインの結合を阻止し、それによって、前記ヒトの白血球、リンパ球、又は内皮細胞の接着も走化性遊走も抑制するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
前記抗体又はその結合断片が、アミノ酸配列SEQ ID番号:6、SEQ ID番号:7、及びSEQ ID番号:8を有した可変の重鎖CDR、並びに、アミノ酸配列SEQ ID番号:9、SEQ ID番号:10、及びSEQ ID番号:11を有した可変の軽鎖CDRを含み、さらに、IgG定常鎖を含む定常鎖を含み、C1Qと相互作用することによって古典経路を介して補体を活性化しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、100nM以下のKでPSGL−1に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PSGL−1を含む炎症過程から生じる炎症状態に対する処置を必要とする対象を処置する方法であって:
ヒトPSGL−1に結合し、ヒトPSGL−1に対するPセレクチン又はLセレクチン結合を競合的に阻止する、及び、ヒトPSGL−1に対するケモカイン結合を競合的に阻止し、前記対象における前記炎症状態を緩和することにおいて効果的な量の二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片を前記対象に投与するステップを含み、前記炎症状態が、炎症性腸疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、皮膚炎、腎炎、エリテマトーデス、強皮症、鼻炎、アナフィラキシー、糖尿病、多発性硬化症、粥状動脈硬化、血栓症、アレルギー反応、及び、甲状腺炎のうちの少なくとも1つである、方法。
【請求項5】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、ヒトモノクローナル抗体若しくはその断片、又は、ヒト化モノクローナル抗体若しくはその断片である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、非経口的に、静脈内に、皮下に、又は、噴霧形状で前記対象に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、約0.1〜100mg/kgの量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、100nM以下のKでPSGL−1に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその結合断片が、SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜62のうち少なくとも硫酸化部分に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその抗原結合性フラグメントが、C1Qと相互作用することによって古典経路を介して補体を活性化しない、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又はその抗原結合性フラグメントが、Fc受容体に結合しない、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記二重機能の抗PSGL−1抗体又は抗原結合性フラグメントが、補体の活性化又はFc受容体の結合によって定められるエフェクター機能を発現しない、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
薬剤的に受け入れられるキャリア又は媒体に配置される抗体を含む組成物であって、前記抗体又はその結合断片は、非常に親和性で特異的な抗PSGL−1抗体であり、アミノ酸配列SEQ ID番号:6、SEQ ID番号:7、及びSEQ ID番号:8を有した可変の重鎖CDR、並びに、アミノ酸配列SEQ ID番号:9、SEQ ID番号:10、及びSEQ ID番号:11を有した可変の軽鎖CDRを含み、さらに、IgG定常鎖を含む定常鎖を含み、C1Qと相互作用することによって古典経路を介して補体を活性化しない、組成物。
【請求項14】
Pセレクチン糖タンパク質リガンド−1に特異的に結合する抑制化合物を求めてスクリーニングする方法であって:
(a)SEQ ID番号:1のアミノ酸42〜62のうち少なくとも硫酸化部分を含む結合エピトープを有したポリペプチド、融合タンパク質、又は、タンパク質断片を提供するステップ;
(b)前記ポリペプチド、融合タンパク質、又は、タンパク質断片を試験化合物と組み合わせて、前記試験化合物に曝露された前記ポリペプチド、融合タンパク質、又は、タンパク質断片を含む処置エピトープを形成するステップ;
(c)前記処置エピトープをPセレクチン及びLセレクチンのうち少なくとも1つに接触させ、同時又は別々に、少なくとも1つのケモカインに接触させるステップ;並びに、
(d)前記処置エピトープに対する、前記Pセレクチン及びPセレクチンのうち少なくとも1つの結合、並びに、前記少なくとも1つのケモカインの結合を評価するステップ;
を含む方法。
【請求項15】
前記試験化合物が、ヒトモノクローナル抗体若しくはその断片、又は、ヒト化抗体若しくはその断片である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合エピトープが、白血球、リンパ球、又は内皮細胞の表面上で発現されるポリペプチドの一部を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記Pセレクチン又はLセレクチンの結合、及び、前記少なくとも1つのケモカインの結合が、前記結合エピトープ以外の部位にてPSGL−1に結合する対照PSGL−1結合抗体の存在下でのその結合よりも少なくとも75%少ない場合に、前記試験化合物は、前記処置エピトープに対して実質的に阻止された結合を有するとして決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記Pセレクチン及びLセレクチンのうち少なくとも1つ、並びに、前記少なくとも1つのケモカインが前記処置エピトープに結合するのを実質的に阻止されたとして決定される場合に、さらなる評価に対して前記試験化合物を選択するステップ(e)をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
白血球、リンパ球、又は内皮細胞が前記試験化合物に曝露された後、前記白血球又はリンパ球における、セレクチンにより媒介される接着及びケモカインによる媒介される走化性を測定するさらなるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法によって選択される、抗体又はその結合断片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−524858(P2011−524858A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509761(P2011−509761)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/044188
【国際公開番号】WO2009/140623
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510301345)セレクシーズ ファーマスーティカルズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】