説明

折り畳みコンテナ

【課題】 前後壁の折り畳み構造を簡略化すると共に、上下方向の荷重に対する強度を高め、しかも運搬者が確実に両手で持ち運ぶことができるようにする。
【解決手段】 前後壁2・3、左右壁4・5および底壁6を有し、前後壁2・3はその上下両縁寄り部分および高さ中央部分にそれぞれ水平方向に伸びる折り線12〜14が形成されて、前後壁2・3が内方に折り畳み自在となされ、左右壁4・5はその上端寄り部分に折り線15が形成されて内方へ折り曲げ自在となされた折り畳みコンテナであって、前後壁2・3における三本の折り線12〜14のうち、少なくとも一本が熱罫線で形成されており、前後壁2・3の両側端には左右壁4・5の外面における中央方向へ突出した掛止部17が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック段ボールで構成された折り畳み自在なコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック段ボール製の折り畳みコンテナは、横長方形の底板の前後縁に長側面を構成する前後一対の側板が立設され、また前記底板の左右両端に短側面を構成する左右一対の側板が立設され、前後の側板と左右の側板は互いに横断面下向きコ字形のプラスチック製フレーム部材およびコーナー部材によって連結されていた。
【0003】
そして、前記長側面を構成する側板を折り畳み自在とするために、通常、該側板の上下縁寄り部分においては、側板を構成するプラスチック段ボールの内側面のみを残して中空部および外側面を水平に切るハーフカット(半切り)が行われる一方、該側板の高さ中央部分にはプラスチック段ボールの外側面のみを残して中空部および内側面を水平に切るハーフカット(半切り)が行われ、このような合計三本のハーフカットによって前記側板が当該コンテナの内方へ折り畳まれる構造となっていた。
【0004】
また、従来のプラスチック段ボール製の折り畳みコンテナでは、左右の短側面に当該コンテナを持ち運ぶための取っ手が取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2594525号公報
【特許文献2】特許第3333151号公報
【特許文献3】特許第3470815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前項で述べた従来のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナは、長側面を構成する側板を折り畳み自在とするために、該側板の上下縁寄り部分においては、外側からのハーフカットを行い、高さ中央部分では内側からのハーフカットを行う必要があり、そのため当該ハーフカットを実行するためには、それぞれカット刃を有する外側用木型と内側用木型の両方が必要となり、またこれら内外面のハーフカットを行うためにはプラスチック段ボールの一面をカットしてから内外面を逆にしてもう一面をカットするという煩雑な作業を行う必要があった。
【0007】
また前述したように、側板の水平方向に合計三本のハーフカットを行った場合、折れ曲がり易い構造となり、そのため当該コンテナを組み立て状態で中に物品を収容して積み重ねた場合、上下方向からの荷重に対しては、十分な強度が得られないおそれがあった。
【0008】
更に、従来のコンテナでは、左右の短側面に当該コンテナを持ち運ぶための取っ手が取り付けられていたが、コンテナが長尺となる場合には運搬者の両手が左右の取っ手にそれぞれ届かない場合があった。また、このような不都合を解消するために、前後の長側面に取っ手を設けることも考えられるが、この場合、長側面を構成する側板を折り畳んだ際に、その中に取っ手が挟まった状態となることから、長側面を完全に薄く折り畳むことができないという不都合が生じた。
【0009】
また、従来のコンテナでは、左右壁を構成する側板の下端と底板とは嵌合する構造であったため、構造が複雑で製造に手間を要するという問題もあった。
【0010】
本発明の目的は、側板の折り畳み構造を簡略化すると共に、上下方向の荷重に対する強度を高め、しかも運搬者が確実に両手で持ち運ぶことができる折り畳みコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明は、前後壁、左右壁および底壁を有し、前後壁はその上下両縁寄り部分および高さ中央部分にそれぞれ水平方向に伸びる折り線が形成されて、前後壁が内方に折り畳み自在となされ、左右壁はその上端寄り部分に折り線が形成されて内方へ折り曲げ自在となされた折り畳みコンテナにおいて、前後壁における三本の折り線のうち、少なくとも一本が熱罫線で形成されており、前後壁の両側端には左右壁の外面における中央方向へ突出した掛止部が形成されているプラスチック段ボール製折り畳みコンテナである。
【0012】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナについて、前後壁における三本の折り線のうち、上下両縁寄り部分の折り線が前後壁の外側からハーフカットが施されたものであり、高さ中央部分における折り線が内側からV字状に凹んだ熱罫線であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナについて、前後壁における掛止部と左右壁の外面における縁部とが面ファスナで着脱自在となされていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナについて、底壁の両端に左右壁の外面へ突出する起立壁が形成されたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナについて、前後壁がそれぞれ二重構造であって、それらの各内側壁に少なくとも一つの取っ手が取り付けられ、各外側壁には前記取っ手が露出する開口部が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本発明に係る折り畳みコンテナによれば、前後壁における三本の折り線のうち、少なくとも一本が熱罫線で形成されているため、三本の折り線すべてがハーフカットである従来のコンテナに比べて上下方向の荷重に対する強度を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の本発明に係るコンテナは、前後壁における三本の折り線のうち、上下両縁寄り部分の折り線が前後壁の外側からハーフカットが施されたものであり、高さ中央部分における折り線が内側からV字状に凹んだ熱罫線であるため、当該コンテナを製作するにあたっては、前後壁の一側におけるハーフカットを行うための一つの木型のみで済み、従来のように、左右両側をハーフカットするための二つの木型が必要となされず、そのため製造設備並びに製造工程の簡略化を図ることができる。
【0018】
また更に、左右壁は前後壁に設けられた掛止部によって止められる構造となっているため、従来に比べて左右壁の下端部分の構造を簡略化することができる。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、前後壁における掛止部と左右壁の外面における縁部とが面ファスナで着脱自在となされているため、左右壁をより強固に固定することができるという利点がある。
【0020】
請求項4記載の本発明によれば、底壁の両端に左右壁の外面へ突出する起立壁が形成されているため、左右壁の下端部分が当該起立壁によって止められ、これが前後壁の掛止部による掛止と相俟って左右壁による閉止がより強固に行え、しかも左右壁の下端と底壁の上面との間に隙間が発生してもこれが起立壁によって閉止されるという利点がある。
【0021】
請求項5記載の本発明は、前後壁がそれぞれ二重構造であって、それらの各内側壁に少なくとも一つの取っ手が取り付けられ、各外側壁には前記取っ手が露出する開口部が形成された構造であるため、当該コンテナが長尺である場合でも運搬者は前後壁の取っ手を両手で持って確実に持ち運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】

【図1】実施形態に係る折り畳みコンテナの斜視図である。
【図2】同コンテナの前後壁中央部分の横断面図である。
【図3】同コンテナの前後壁における取っ手部分の横断面図である。
【図4】同コンテナの左右壁部分の横断面図である。
【図5】同コンテナの折り畳み途中の状態を示す側面図である。
【図6】同コンテナの折り畳み状態を示す斜視図である。
【図7】同コンテナの折り畳み状態を示す正面図である。
【図8】プラスチック段ボールの他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の折り畳みコンテナ1は、上部が開口した横長箱形であって、断面が連続する方形中空状の一体成形された汎用プラスチック段ボールで構成され、前後壁2・3、左右壁4・5および底壁6を有しており、より詳細には、図2および図3に示すように、前後壁2・3は前記底壁6とつながっている外側壁2A・3Aと該外側壁2A・3Aの内側に隣設された内側壁2B・3Bとからなる二重構造となされている。そして、外側壁2A・3Aおよび底壁6を一連に構成する汎用プラスチック段ボールはその中空部が外側壁2A・3Aおよび底壁6を横断する態様で使用されており、内側壁2B・3Bを構成する汎用プラスチック段ボールは中空部が当該壁の長さ方向に伸びる態様で使用されている。また、底壁6も前後壁2・3の外側壁2A・3Aとつながっている下側壁6Aと該下側壁6A上に重ねられた上側壁6Bとからなる二重構造となされており、更に上側壁6Bの両端には左右壁4・5の外面へ突出する起立壁22が形成されている。なお、底壁6の上側壁6Bを構成する汎用プラスチック段ボールはその中空部が上側壁6Bの長さ方向に伸びる態様で使用されている。
【0025】
図4に示すように、左右壁4・5はその上縁がハーフカットされて折り返され、該部が横断面コ字形のフレーム部材7に嵌め入れられており、また前記前後壁2・3を構成する外側壁2A・3Aおよび内側壁2B・3Bもそれらの上縁が横断面コ字形のフレーム部材8に嵌め入れられており、そして、両フレーム部材7・8の両端はそれぞれコーナー部材9に嵌め入れられてリベット20で結合されている。また、左右壁4・5の内面下縁には帯状体11が一体に付設されている。
【0026】
次に、本実施形態に係る折り畳みコンテナ1の折り曲げ構造について説明すると、図1〜図3および図5に示すように、前後壁2.3の外側壁2A・3Aはその上下両縁寄り部分および高さ中央部分にそれぞれ水平方向に伸びる折り線12・13・14が形成されて、前後壁2・3が内方に折り畳み自在となされ、図1、図4および図6に示すように、左右壁4・5はその上端寄り部分に折り線15が形成されて内方へ折り曲げ自在となされている。
【0027】
そして、図2、図3および図5に示すように、本実施形態では、前後壁2・3の外側壁2A・3Aにおける三本の折り線12・13・14のうち、上下両縁寄り部分の折り線12・14は外側壁2A・3Aの外側からハーフカットが施されたものであり、高さ中央部分における折り線13は外側壁2A・3Aの内側からV字状に凹んだ熱罫線となされている。また、左右壁4・5の折り線15は左右壁4・5の外側からハーフカットが施されたものである。
【0028】
図1、図4および図5に示すように、前後壁2・3の内側壁2B・3Bの両側端には該部から屈曲して左右壁4・5の外面の中央方向へ突出した掛止部17が形成され、掛止部17の内面とこれに対向する左右壁4・5の外面は一対の面ファスナ21によって着脱自在となされている。また図1および図3に示すように、前後壁2・3の内側壁2B・3Bにはそれぞれ一つの取っ手18A・18Bが取り付けられ、一方の取っ手18Aは内側壁2Bの一端寄り部分に位置し、他方の取っ手18Bは内側壁3Bの他端寄り部分に位置し、且つ両取っ手18A・18Bはそれぞれにおける折り線12と折り線13との間に位置している。一方、前後壁2・3の各外側壁2A・3Aには前記取っ手18A・18Bが露出する方形の開口部19が形成されている。なお、本実施形態では、前記掛止部17は、前後壁2・3の内側壁2B・3Bの両側端を熱曲げすることによって形成されているが、本発明はこれに限定されず、掛止部を別部材で作製し、これを前後壁2・3の内側壁2B・3Bの両側端に固定するようにしても良い。
【0029】
次に、本実施形態に係る折り畳みコンテナ1の使用要領につい て説明すると、図1に示すように、当該コンテナ1が組み立てられた状態において、先ず左右壁4・5が掛止されている前後壁2・3の掛止部17における一対の面ファスナ21を外して左右壁4・5をコンテナ内方へ折り畳んだ後、図5に示すように、前後壁2・3における内側壁2B・3Bをコンテナ内方へ折る曲げ、その後、前後壁2・3の外側壁2A・3Aを、その高さ中央の折り線13から折り曲げ、続いて更に上下の折り線12および折り線14から折り曲げることにより、図6および図7に示すように、当該コンテナ1が完全に折り畳まれた状態となる。そして、この場合、前後壁2・3における内側壁2B・3Bに取り付けられた取っ手18A・18Bはそれぞれ外側壁2A・3Aの開口部19内に収容されるため、取っ手18A・18Bが前後壁2・3の折り曲げの妨げになることがない。
【0030】
また、本実施形態の折り畳みコンテナ1では、前述したように、取っ手18A・18Bがそれぞれ前後壁2・3に取り付けられ、従来のように、左右壁4・5に取り付けられていないため、コンテナが長尺となった場合でも運搬者は両手を取っ手18A・18Bに確実に掛けて持ち運ぶことができる。
【0031】
なお、本実施形態のコンテナ1は、全体が汎用プラスチック段ボールで構成されているが、本発明のコンテナはこれに限定されるものでなく、図8に示すように、ハニカム状の芯材31がその両側の外皮シート32で挟止されたような構造のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の折り畳みコンテナは、前述したように、簡単に折り畳むことができ、しかも長さが長尺となる場合でも確実に持ち運ぶことができるため、この種プラスチック段ボール 箱の分野において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 折り畳みコンテナ
2・3 前後壁
2A・3A 外側壁
2B・3B 内側壁
4・5 左右壁
6 底壁
12〜15 折り線
17 掛止部
18A・18B 取っ手
19 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後壁、左右壁および底壁を有し、前後壁はその上下両縁寄り部分および高さ中央部分にそれぞれ水平方向に伸びる折り線が形成されて、前後壁が内方に折り畳み自在となされ、左右壁はその上端寄り部分に折り線が形成されて内方へ折り曲げ自在となされた折り畳みコンテナにおいて、前後壁における三本の折り線のうち、少なくとも一本が熱罫線で形成されており、前後壁の両側端には左右壁の外面における中央方向へ突出した掛止部が形成されている、プラスチック段ボール製折り畳みコンテナ。
【請求項2】
前後壁における三本の折り線のうち、上下両縁寄り部分の折り線が前後壁の外側からハーフカットが施されたものであり、高さ中央部分における折り線が内側からV字状に凹んだ熱罫線である、請求項1記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナ。
【請求項3】
前後壁における掛止部と左右壁の外面における縁部とが面ファスナで着脱自在となされている、請求項1または請求項2記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナ。
【請求項4】
底壁の両端に左右壁の外面へ突出する起立壁が形成された、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナ。
【請求項5】
前後壁がそれぞれ二重構造であって、それらの各内側壁に少なくとも一つの取っ手が取り付けられ、各外側壁には前記取っ手が露出する開口部が形成された、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項記載のプラスチック段ボール製折り畳みコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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