説明

折り畳みパネルの製造方法

【課題】
解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂をブロー成形することにより製造される表皮つき折り畳みパネルの使用時にヒンジ部を折り曲げると表皮よりも該ヒンジ部の樹脂ヒンジの方が剛性が高いので樹脂ヒンジ近傍が折り曲げ回転の中心となり易く、そのため該表皮は該折り曲げ回転の中心から若干離れるため、曲げられるたびに該表皮は伸縮を強いられ、結果として該ヒンジ部の位置の該表皮の色合いや風合いが変化して外観品質を損なうという点である。
【解決手段】
折り畳みパネルのヒンジとなる予定の個所に紐状体を装着した表皮を分割金型内にセットし、次いでブロー成形後、該紐状体を該表皮から分離させると共に樹脂膜も一緒に該折り畳みパネルから除くか、または該樹脂膜を破断させることでヒンジ部にスリットを形成することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形による表皮付き折り畳みパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の表皮つきの折り畳みパネル(表皮はパネルの反対側なのでこの図では隠れている)、図2は図1のA−A断面を表皮側が上となるように表す。尚、両面に表皮がある折り畳みパネルの場合でも表皮の面積の大きな方の側を表皮側と称することとする。
【0003】
従来、図1、図2に示すような、表皮2が装着された折り畳みパネル1をブロー成形により製造することは特許文献1に開示されているように公知である。
【特許文献1】特開2002−46168
【0004】
しかるに、押出し機のヘッド(図示せず)から分割金型(図示せず)内にパリソン4を垂下してブロー成形する場合、該折り畳みパネル1と一体となっているヒンジ部3の樹脂ヒンジ10は該表皮2と密着しており、該折り畳みパネル1の使用時に該ヒンジ部3を折り曲げると該表皮2よりも該ヒンジ部3の該樹脂ヒンジ10の方が剛性が高いので該樹脂ヒンジ10の近傍が折り曲げ回転の中心となり易く、そのため該表皮2は該折り曲げ回転の中心から若干離れるため、該折り畳みパネル1が折り曲げられるたびに該表皮2は伸縮を強いられ、結果として該ヒンジ部3の位置の該表皮2の色合いや風合いが変化して外観品質を損なう結果となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮付き折り畳みパネルの使用時にヒンジ部を折り曲げると表皮よりも該ヒンジ部の樹脂ヒンジの方が剛性が高いので樹脂ヒンジ近傍が折り曲げ回転の中心となり易く、そのため該表皮は該折り曲げ回転の中心から若干離れるため、曲げられるたびに該表皮は伸縮を強いられ、結果として該ヒンジ部の位置の該表皮の色合いや風合いが変化して外観品質を損なうということが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
折り畳みパネルのヒンジとなる予定の個所に紐状体を装着した表皮を分割金型内にセットし、次いでブロー成形後、該紐状体を該表皮から分離させると共に樹脂膜も一緒に該折り畳みパネルから除くか、または該樹脂膜を破断させることでヒンジ部にスリットを形成することを第1の主要な特徴とする。
【0007】
また、第1の主要な特徴における紐状体が粘着テープであることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、折り畳みパネルのヒンジ部にスリットを形成することで、該折り畳みパネルの使用時に該ヒンジ部を折り曲げても折り曲げ回転の中心は該表皮の位置となって該表皮はほとんど伸縮せず、従って該ヒンジ部の位置の該表皮の色合いや風合いが変化することがないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
見栄えの良い、表皮つきの折り畳みパネルを得るという目的を、折り畳みパネルのヒンジとなる予定の個所に紐状体を装着した表皮を分割金型内にセットし、次いでブロー成形後、該紐状体を該表皮から分離させると共に樹脂膜も一緒に該折り畳みパネルから除くか、または該樹脂膜を破断させてヒンジ部にスリットを形成することによって、ブロー成形の持つ経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0010】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0011】
図3は本発明の1実施例を示す斜視図である。先ず、一組の分割金型(図示せず)内の所定の位置に、不織布あるいは織布、編み物、皮革等で作製された表皮2をセットする。
【0012】
次に、該表皮2のヒンジとなる予定の個所に粘着テープ6を貼着する。該粘着テープ6はポリアミド樹脂等のフィルムの表面に粘着層を設けたものであり、該フィルムの背面には離型剤塗布等の離型処理が施されている。
【0013】
その後、押出し機のヘッド(図示せず)から該分割金型内にポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の半溶融のパリソン4を垂下して後、該分割金型を型締めする。
【0014】
尚、該パリソン4に適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0015】
その後該パリソン4内に圧縮空気を吹き込んでブローアップし、ブロー成形を完了させた後該分割金型を開いて成形品を取り出す。
【0016】
取出された該成形品の断面図(図3のA−A断面を表皮側が上となるように表す)を図4に示す。該折り畳みパネル1の該ヒンジ部3は該表皮2と樹脂膜11の間に該粘着テープ6を挟持している。
【0017】
次に、該粘着テープ6を図4の下方に引張れば、該粘着テープ6が該表皮2から剥がれると共に該樹脂膜11も一緒に引張られて該折り畳みパネル1からむしりとられることになる。該表皮2と該樹脂膜11が除かれた状態の断面図(図3のA−A断面を表皮側が上となるように表す)を図5に示す。該樹脂膜11が除かれた跡はスリット5となる。
【0018】
また、図6は図3のB−B断面を表皮側が上となるように表す。これを該ヒンジ部3に沿って折り曲げたのが図7である。該スリット5のために該ヒンジ部3には従来例のような該樹脂ヒンジ10が存在せず、該折り畳みパネル1の使用時に該ヒンジ部3を折り曲げても折り曲げ回転の中心は該表皮2の位置となるので該表皮2はほとんど伸縮せず、従って該表皮2の色合いや風合いは変化することがない。
【0019】
尚、上記実施例では該分割金型内に該表皮2をセットしてから該粘着テープ6を貼着したが、該分割金型外にて該表皮2に予め該粘着テープ6を貼着したものを該分割金型内にセットしても良い。
【0020】
また、該粘着テープ6の厚さは厚くても薄くても良く、幅は広くても狭くても良く、糸状の細いもの、或いは他の紐状のものでも良い。この場合、該樹脂膜11は除かれずに単に破断するだけになる。
【0021】
尚、上記粘着テープや糸状のもの或いは他の紐状のものを総称して紐状体と呼ぶことにする。該表皮2に他の手段、例えば引掛け等によって該紐状体を装着できるならば、粘着層は無くてもよい。
【0022】
以上、実施例に示したように本発明によると、ヒンジとなる予定の個所に紐状体を装着した表皮を分割金型内にセットし、次いでブロー成形後、該紐状体を該表皮から分離させると共に樹脂膜も一緒に該折り畳みパネルから除くか、または該樹脂膜を破断させることでヒンジ部にスリットを形成するので、該折り畳みパネルの使用時に該ヒンジ部を折り曲げても折り曲げ回転の中心は表皮の位置となって該表皮はほとんど伸縮せず、従って該ヒンジ部の位置の該表皮の色合いや風合いが変化することがないので該折り畳みパネルの外観品質を損なうこともなく、見栄えの良い、表皮つきの折り畳みパネルを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、熱可塑性樹脂をブロー成形することにより製造される自動車用デッキボード等の表皮つき折り畳みパネルに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の表皮つき折り畳みパネルの斜視図(表皮はパネルの反対側なのでこの図では隠れている)
【図2】図1のA−A断面図
【図3】本発明に係る表皮と折り畳みパネルの斜視図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】図3のA−A断面図
【図6】図3のB−B断面図
【図7】本発明に係る折り畳みパネルを折り曲げた状態を概念的に表した側面図
【符号の説明】
【0025】
1 折り畳みパネル
2 表皮
3 ヒンジ部
4 パリソン
5 スリット
6 粘着テープ
10 樹脂ヒンジ
11 樹脂膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形による表皮付き折り畳みパネルの製造方法であって、ヒンジとなる予定の個所に紐状体を装着した表皮を分割金型内にセットし、次いでブロー成形後、該紐状体を該表皮から分離させると共に樹脂膜も一緒に該折り畳みパネルから除くか、または該樹脂膜を破断させることでヒンジ部にスリットを形成することを特徴とする表皮付き折り畳みパネルの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−36893(P2008−36893A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211577(P2006−211577)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】