説明

折り畳み式電子機器

【課題】平行2軸ヒンジの幅を最小限に抑えながらも、筐体どうしの捻り方向のガタツキを抑えることのできる折り畳み式電子機器を提供する。
【解決手段】第1筐体10と、第2筐体20と、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ機構30と、を具え、該ヒンジ機構は、互いに平行な第1ヒンジ軸31と第2ヒンジ軸32を具える一対の平行2軸ヒンジ34,35であって、各平行2軸ヒンジの第1ヒンジ軸を第1筺体、第2ヒンジ軸を第2筺体に連結してなる一対の平行2軸ヒンジと、両平行2軸ヒンジを連結する連結杆36と、を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の筐体をヒンジ機構により互いに開閉可能に連結してなる折り畳み式電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
折り畳み式電子機器として、互いに平行な2つのヒンジ軸を有する平行2軸ヒンジにより、一対の筐体を互いに開閉可能に連結した電子機器が提案されている(例えば特許文献1)。
例えば、図8に示すように、一対の筺体(100)(101)を互いに平行な2本のヒンジ軸(103)(104)を有する平行2軸ヒンジ(102)(102)により連結し、各筺体(100)(101)をヒンジ軸(103)(104)を中心として回転させることで、一方の筺体(100)に対して他方の筺体(101)を相対的に開閉可能としている。
【0003】
折り畳み式電子機器は、図8に示すように、第1筐体(100)及び第2筺体(101)に夫々タッチパネルアッセンブリ(120)を構成するスクリーン(121)を具え、第1筺体(100)を第2筺体(101)に対して相対的に開き方向となる開状態に移動させることで、スクリーン(121)が同一平面となるようにしている。
【0004】
各筺体(100)(101)を開状態としたときに、両スクリーン(121)(121)に跨って1つの画像を表示でき、表示される画像が連続性を維持できるように、各スクリーン(121)(121)は、開状態で対向する筐体(100)(101)の端面まで設けることが望まれている。
【0005】
一方、スクリーン(121)は厚みを有しており、また、電子機器自体に薄型化の要請があるから、スクリーン(121)の下方にヒンジ軸を通すことのない構造が望まれている。
【0006】
そこで、図8に示すように、平行2軸ヒンジ(102)(102)を筺体(100)(101)の両側に配置することが提案されているが、筐体(100)(101)には、平行2軸ヒンジ(102)(102)から突設されたヒンジ軸(103)(104)を筐体(100)(101)に取り付けるために、少なくとも平行2軸ヒンジ(102)以上の幅Wをスクリーン(121)(121)の左右に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−249209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平行2軸ヒンジ(102)(102)のヒンジ軸(103)(104)の筐体(100)(101)への侵入長さが短いと、筐体(100)(101)を開閉したときに、対向するヒンジ軸どうしの軸芯がズレて、筐体(100)(101)の捻り方向に力が作用し、ガタツキが生じることがある。
【0009】
また、平行2軸ヒンジ(102)(102)を夫々スクリーン(121)の左右に設けるために、筺体(100)(101)に幅広の領域Wを設けることは、電子機器のデザインに大きな制約を課すこととなる。さらには、筐体(100)(101)が拡幅して電子機器の大型化に繋がることがある。
【0010】
本発明の目的は、平行2軸ヒンジの幅を最小限に抑えながらも、筐体どうしの捻り方向のガタツキを抑えることのできる折り畳み式電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る折り畳み式電子機器においては、
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ機構と、
を具え、
該ヒンジ機構は、
互いに平行な第1ヒンジ軸と第2ヒンジ軸を具える一対の平行2軸ヒンジであって、各平行軸ヒンジの第1ヒンジ軸を第1筺体、第2ヒンジ軸を第2筺体に連結してなる一対の平行2軸ヒンジと、
両平行2軸ヒンジを連結する連結杆と、
を具える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る折り畳み式電子機器によれば、平行2軸ヒンジどうしを連結杆によって互いに回転できないように連結しているから、平行2軸ヒンジどうしは、夫々対向するヒンジ軸が捻れ方向にズレることはなく、互いに平行な状態を維持できる。このため、平行2軸ヒンジから突設されるヒンジ軸は、夫々その突出量を短くすることができ、筐体への侵入長さも可及的に短くできる。
従って、筐体は、スクリーン左右の幅を短くでき、筐体に対するスクリーンの割合を大きくすることができる。
これにより、デザイン上の制約も小さくできるから、電子機器のデザインバリエーションに自由度をもたせることができる。
【0013】
また、上記連結杆を例えば電子機器の閉状態における両筐体の厚さと略一致する板状に構成することで、連結杆は、本の背の如き外観とすることができ、折り畳み式電子機器のデザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の折り畳み式電子機器の閉状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態の折り畳み式電子機器の開状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の折り畳み式電子機器の開状態の平面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態のヒンジ機構の斜視図である。
【図5】図5は、第2筐体からバックキャビネットを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、開状態の折り畳み式電子機器を裏返し、第2筐体を分解した状態を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は、スライド部材に対する第2筐体の取り付け状態を説明し、図7(b)は、スライド部材に対する第2筐体の付勢状態を説明する図である。
【図8】図8は、背景技術にて説明する折り畳み式電子機器の開状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である折り畳み式電子機器(1)は、図1乃至図3に示す如く、第1筐体(10)と第2筐体(20)とを開閉可能に連結して構成され、図1に示す閉状態と図2及び図3に示す開状態との間で開閉が可能である。
【0016】
なお、以下の記載では、「開状態」とは、両筐体(10)(20)を相対的に開いて、両筐体(10)(20)に装着されるタッチパネルアセンブリ(60)(60)を構成するスクリーン(61)(61)を同一方向へ向けて略同一平面上で並べた状態(図2及び図3参照)、「閉状態」とは、両筐体(10)(20)を互いにスクリーン(61)(61)が接近する方向に閉じて、スクリーン(61)(61)どうしを対向させた状態である(図1参照)。
【0017】
図1及び図6に示す如く、第1筐体(10)と第2筐体(20)は、ヒンジ機構(30)により連結して構成される。ヒンジ機構(30)は、筐体(10)(20)の一端側の左右に夫々配備された平行2軸ヒンジ(34)(35)を、連結杆(36)によって連結して構成することができる。
平行2軸ヒンジ(34)(35)と連結杆(36)は溶接、ネジ止め、接着等の要領で連結することができ、また、平行2軸ヒンジ(34)(35)と連結杆(36)を一体に形成することもできる。
【0018】
平行2軸ヒンジ(34)(35)及び連結杆(36)に強度を具備するために、平行2軸ヒンジ(34)(35)及び連結杆(36)は金属から構成することが望ましい。
【0019】
図4に示すように、平行2軸ヒンジ(34)(35)には夫々内向きに第1ヒンジ軸(31)及び第2ヒンジ軸(32)が平行2軸ヒンジ(34)(35)に対して回動可能に突設されており、第1ヒンジ軸(31)は第1筐体(10)に、第2ヒンジ軸(32)は第2筐体(20)に夫々固定されている。
第1ヒンジ軸(31)及び第2ヒンジ軸(32)どうしを夫々結ぶ軸線A1、A2は互いに平行である。
なお、平行2軸ヒンジ(34)(35)にヒンジ軸(31)(32)を固定して、ヒンジ軸(31)(32)を筐体(10)(20)に対して回動可能となるように配備することもできる。
【0020】
第1ヒンジ軸(31)と第2ヒンジ軸(32)は、カム等(図示せず)により連繋し、筺体(10)(20)の相対的な回転角度に拘わらず、連結杆(36)が両筺体(10)(20)の開き角度に対して中間の角度を維持できるようにすることがより望ましい。
【0021】
平行2軸ヒンジ(34)(35)は連結杆(36)によって互いに回転方向にズレることはなく、また、連結杆(36)の長さ方向の間隔も維持されているから、平行2軸ヒンジ(34)(35)の各ヒンジ軸(31)(32)は、筐体(10)(20)への侵入長さDが、筐体(10)(20)を夫々脱落することなく支持できる長さ以上であれば足り、平行2軸ヒンジ(34)(35)の全体的な幅を、図3に示すように、図8に比して可及的に短くすることができる。
【0022】
これにより、タッチパネルアッセンブリ(60)(60)の左右両側の幅Wを可及的に短くすることができ、筺体(10)(20)の幅を狭くできるから、デザインのバリエーションも増大できる。
特に、筺体(10)(20)の左右の幅Wを短くしても、平行2軸ヒンジ(34)(35)はスクリーン(61)(61)の左右に設けることができるから、両スクリーン(61)(61)を開状態において各筺体(10)(20)の対向する端部まで設けることができ、これらスクリーン(61)(61)を1つの画面として活用できる利点がある。
【0023】
然して、両筺体(10)(20)は、各平行2軸ヒンジ(34)(35)の夫々対向する第1ヒンジ軸(31)を第1筺体(10)、対向する第2ヒンジ軸(32)を第2筺体(20)に嵌めることにより、相対的に開閉可能に連結することができる。
【0024】
上記のように、ヒンジ軸(31)(32)は、夫々連結杆(36)により互いに連結された平行2軸ヒンジ(34)(35)から突設され、捻り方向の力に強く、各ヒンジ軸(31)(32)の軸線A1、A2は平行な状態を維持できるから、平行2軸ヒンジ(34)(35)の筺体(10)(20)への侵入長さDが短くても、捻り方向にガタツくことを防止できる。
【0025】
また、連結杆(36)を例えば電子機器(1)の閉状態における両筐体(10)(20)の厚さと略一致する板状に構成することで、連結杆(36)を本の背の如き外観とすることができ、折り畳み式電子機器(1)のデザイン性を向上させることができる。
【0026】
なお、両平行2軸ヒンジ(34)(35)のヒンジ軸(31)(32)を直接筺体(10)(20)に取り付けた場合、閉状態と開状態との間で筺体(10)(20)を相対的に開閉したときに、筺体(10)(20)の端面どうしが衝突することがある。特に、上記のようにスクリーン(60)を筺体(10)(20)の端面まで拡大して配置した場合には、スクリーン(60)どうしが擦り合って傷等の原因となる虞がある。
【0027】
このため、図5及び図6に示す如く、一方のヒンジ軸(図示及び以下では第2筺体(20)に連結される第2ヒンジ軸(32))は、筺体(図示及び以下では第2筺体(20))に対してスライド可能な左右一対のスライド部材(41)を介して、筺体に接続することが望ましい。
【0028】
スライド部材(41)は、一端が平行2軸ヒンジ(34)(35)の各第2ヒンジ軸(32)に嵌装され、長手方向に伸び、他端近傍に第2ヒンジ軸(32)と平行な軸部材(42)を突設して構成することができる。
スライド部材(41)は、第2筺体(20)の両側に形成された溝(23)にスライド可能に嵌まっており、第2筺体(20)に対して第2ヒンジ軸(32)方向に往復移動可能となっている。
また、前記軸部材(42)は、溝(23)の側面に形成された長孔状の軸受け(29)に係合しており、スライド部材(41)は、第2筐体(20)に対して軸部材(42)回りの回転を許容されている。
【0029】
図6に示す如く、第1筐体(10)はフロントキャビネット(11)とバックキャビネット(12)とを互いに接合して構成され、第2筐体(20)はフロントキャビネット(21)とバックキャビネット(22)とを互いに接合して構成されている。
【0030】
図6の如く、帯板部材(45)には、スライド部材(41)(41)の突出方向へ左右一対の舌片(46)(46)が突設され、両舌片(46)(46)と第2筐体(20)のフロントキャビネット(21)との間には、それぞれトーションバネからなる左右一対の第1スプリング(43)(43)が介在している。
なお、図5及び図6には、第1スプリング(43)の自由状態(43a)と、第1スプリング(43)が帯板部材(45)の舌片(46)と第2筐体(20)のフロントキャビネット(21)との間に圧縮されて介在している圧縮状態(43b)とを、それぞれ実線で描いている。
【0031】
また、図6の如く第2筐体(20)のフロントキャビネット(21)には、左右一対のコイルバネからなる第2スプリング(44)(44)が設置され、各第2スプリング(44)の一方の端部が第2筐体(20)のフロントキャビネット(21)に連結されると共に、各第2スプリング(44)の他方の端部が各スライド部材(41)に連結されている。
【0032】
この結果、図7(a)(b)に模式的に示すように、第1スプリング(43)と第2スプリング(44)が第2筐体(20)をスライド部材(41)に対して付勢し、第1スプリング(43)によって、軸A3回りに第2筐体(20)の開き方向と同じ回転方向(時計方向)に回転させる付勢力Tが得られると共に、第2スプリング(44)によって第2筐体(20)をヒンジ軸A2に接近させる方向の付勢力Fが得られる。
【0033】
従って、図7(a)に示すデフォルト状態から、図7(b)の如くスライド部材(41)に対して第2筐体(20)がヒンジ軸A2から離間すると共に、軸A3回りに閉じ方向に回転して、第1スプリング(43)と第2スプリング(44)が弾性変形したとき、第1スプリング(43)の付勢力Tと第2スプリング(44)の付勢力Fによって、第2筐体(20)は、図7(a)に示すデフォルト状態へ向けて付勢されることになる。
【0034】
上記折り畳み式電子機器(1)においては、図1に示す閉状態で、第2筐体(20)の内面を第1筐体(10)の内面と僅かな隙間をおいて対向させると共に、第2筐体(20)をヒンジ機構(30)に対して最接近させたデフォルト状態が設定される一方、図2に示す開状態では、第1筐体(10)の内面と第2筐体(20)の内面を同一平面上に揃えると共に、第2筐体(20)をヒンジ機構(30)に対して最接近させたデフォルト状態が設定される。
従って、図1に示す閉状態では、第2筐体(20)を第1筐体(10)上に正確に重ね合わせることができ、図2に示す開状態では、第1筐体(10)のスクリーン(61)と第2筐体(20)のスクリーン(61)とを僅かな間隔Gをおいて接近させて、両スクリーン(61)(61)に跨って1つの大きな画像を表示したときの画像の連続性を良好なものとすることができる。
【0035】
さらに、第1筐体(10)と第2筐体(20)の開閉過程では、第1筐体(10)に対するスライド部材(41)の回動と、スライド部材(41)に対する第2筐体(20)の回転及び往復移動とによって、デフォルト状態からのずれを吸収すると共に、第1スプリング(43)及び第2スプリング(44)によってデフォルト状態へ戻す付勢力を発生させるので、両筐体(10)(20)の端部どうしを無理なく当接させてスムーズな開閉動作を実現することができる。
【0036】
なお、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、第1筐体(10)と第2筐体(20)とを入れ替えた構成、即ち第1筐体(10)にスライド部材(41)を連結した構成に本発明を実施することも可能である。
【0037】
勿論、開状態で両筐体(10)(20)を同一平面上で互いに最接近させるような上記実施の形態に限らず、単に開状態で両筐体(10)(20)の表面を同一面上に揃えるだけのヒンジ機構の構成に本発明を実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、平行2軸ヒンジの幅を最小限に抑えながらも、筐体どうしの捻り方向のガタツキを抑えることのできる折り畳み式電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0039】
(1) 折り畳み式電子機器
(10) 第1筐体
(20) 第2筐体
(30) ヒンジ機構
(31) 第1ヒンジ軸
(32) 第2ヒンジ軸
(34) 平行2軸ヒンジ
(35) 平行2軸ヒンジ
(36) 連結杆
(41) スライド部材
(60) タッチパネルアセンブリ
(61) スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジ機構と、
を具え、
該ヒンジ機構は、
互いに平行な第1ヒンジ軸と第2ヒンジ軸を具える一対の平行2軸ヒンジであって、各平行2軸ヒンジの第1ヒンジ軸を第1筺体、第2ヒンジ軸を第2筺体に連結してなる一対の平行2軸ヒンジと、
両平行2軸ヒンジを連結する連結杆と、
を具えることを特徴とする折り畳み式電子機器。
【請求項2】
前記連結杆は、両筺体を閉じ方向に回転させたときに、両筐体の厚さと略一致する幅を有する板状体である請求項1に記載の折り畳み式電子機器。
【請求項3】
前記第1ヒンジ軸又は第2ヒンジ軸は、一方の筺体に対してスライド可能に配備されたスライド部材に連結される請求項1又は請求項2に記載の折り畳み式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83315(P2013−83315A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223923(P2011−223923)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】