説明

抵抗器の製造方法

【課題】本発明は、めっき付着不良の発生を低減することができる抵抗器の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の抵抗器の製造方法は、絶縁基板11の上面の両端部に一対の上面電極13を形成する工程と、前記絶縁基板11の上面において一対の上面電極13間に抵抗体14を形成する工程と、前記抵抗体14に第1のレーザを照射することによりトリミング溝17を形成して抵抗値を調整する工程と、一対の上面電極13と接続されるように絶縁基板11の両端面にめっきすることにより端面電極16を形成する工程とを備え、抵抗値を調整した後、保護膜15を形成する前に、前記第1のレーザのパワーよりも低いパワーでかつ前記第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径の第2のレーザを照射して再調整用トリミング溝17aを形成し、この再調整用トリミング溝17aを前記トリミング溝17と同じ位置に形成するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される微小で低い抵抗値の抵抗器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の抵抗器の製造方法は、図8に示すように、絶縁基板1の上面の両端部に銀系厚膜からなる一対の上面電極2を形成する工程と、前記絶縁基板1の上面において一対の上面電極2間にAgPdからなる抵抗体3を形成する工程と、前記抵抗体3にレーザを照射することによりトリミング溝4を施して抵抗値を調整する工程と、抵抗体3の上にガラスまたは樹脂からなる保護膜5を形成する工程と、一対の上面電極2と接続されるように絶縁基板1の両端面に端面電極6を形成する工程とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−347102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の抵抗器の製造方法において、より低い抵抗値を得るためには、抵抗体3の厚みを厚くする方法と、一対の上面電極2間の距離を短くする方法があるが、微小な抵抗器だと一対の上面電極2間の距離を短くすることが困難であるため、抵抗体3の厚みを厚くするしかなく、この場合、トリミング溝4を形成する際に抵抗体3をレーザで絶縁基板1まで完全に切削するためにはレーザのパワーを上げる必要があるため、抵抗体3の飛散物が多く発生し、これにより、端面電極6にめっきを形成する際、この飛散物にめっきが付着することより、トリミング溝4周辺の保護膜5の上面等へのめっき付着不良が発生する場合があるという課題を有していた。
【0006】
すなわち、トリミング溝4を形成する際、レーザのビーム径を小さくし、パワーを上げて抵抗体3を切削することになるが、この場合、図9に示すように、トリミング溝4周辺に堆積する抵抗体3の飛散物7の厚みが厚くなりその先端部が尖るため、この部分に保護膜5を形成しても、図10に示すように、飛散物7の上方の保護膜5の膜厚が極端に薄くなったり、あるいは、保護膜5を突き破って当該飛散物7が露出したりして、飛散物7がめっきの核になる場合があるからである。なお、図9、図10は、説明を簡単にするために、絶縁基板1、抵抗体3、トリミング溝4、保護膜5の一部分のみを示す。
【0007】
そして、この成長しためっきが実装用はんだと接続したり、トリミング溝4の両側を接続したりして、実装時不良が発生する場合があった。
【0008】
さらに、トリミング溝4周辺に堆積する抵抗体3の飛散物の先端部が尖るようになるのは、微小で低い抵抗値を得ようとするとトリミング溝4の幅も小さくせざるを得ないため、レーザのビーム径を小さくする必要があり、さらに、その厚みが厚くなった抵抗体3を貫通するように切削しようとすると、レーザの照射する角度θを絶縁基板1と略垂直になるようにしてレーザのパワーを集中させなければならないため、抵抗体3の溶融物は横方向にはあまり飛散せず、上方向に多く堆積することになり、この結果、抵抗体3の飛散物はトリミング溝4周囲の近傍にしか固着しないからである。なお、この抵抗体3の飛散物は加熱されていることから絶縁基板1等に強固に接着されるため、軽い超音波洗浄や軽いブラッシングでは、除去しづらいと言う課題を有している。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、めっき付着不良を低減することができる抵抗器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁基板の上面の両端部に一対の上面電極を形成する工程と、前記絶縁基板の上面において一対の上面電極間に抵抗体を形成する工程と、前記抵抗体に第1のレーザを照射することによりトリミング溝を形成して抵抗値を調整する工程と、前記抵抗体を覆うように保護膜を形成する工程と、一対の上面電極と接続されるように絶縁基板の両端面にめっきすることにより端面電極を形成する工程とを備え、抵抗値を調整した後、保護膜を形成する前に、前記第1のレーザのパワーよりも低いパワーでかつ前記第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径の第2のレーザを照射して抵抗体表層部に再調整用トリミング溝を形成し、この再調整用トリミング溝を前記トリミング溝と同じ位置に形成するようにしたもので、この製造方法によれば、より低い抵抗値を得るために抵抗体の厚みを厚くし、第1のレーザのパワーを上げてトリミング溝を形成する場合でも、再調整用トリミング溝によってトリミング溝周辺の抵抗体の尖がって突出した飛散物をなだらかにすることができるため、端面電極にめっきを形成する際、この抵抗体の飛散物を核として成長することを抑制でき、これにより、めっき付着不良の発生を低減することができる。さらに、第2のレーザの照射よってトリミング溝の開口部分の面積が広くなるため、保護膜を形成する際のペーストがトリミング溝内にスムーズに入り込むことができ、これにより、トリミング溝内において気泡がペーストに巻き込まれ難くなり、保護膜にピンホールが発生するのも抑制できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の抵抗器の製造方法は、抵抗値を調整した後に、第1のレーザのパワーよりも低いパワーでかつ前記第1のレーザのビーム径よりも大きな照射径の第2のレーザを照射して抵抗体表層部に再調整用トリミング溝を形成し、この再調整用トリミング溝をトリミング溝と同じ位置に形成するようにしているため、より低い抵抗値を得るために抵抗体の厚みを厚くし、第1のレーザのパワーを上げてトリミング溝を形成する場合でも、再調整用トリミング溝によってトリミング溝周辺の抵抗体の飛散物の形状をなだらかにすることができ、これにより、端面電極にめっきを形成する際、飛散物を核として成長することを抑制できるため、めっき付着不良の発生を低減することができ、さらに、第2のレーザの照射よってトリミング溝の開口部分の面積が広くなるため、保護膜を形成するペーストがトリミング溝内にスムーズに入り込むことができ、これにより、トリミング溝内において気泡がペーストに巻き込まれ難くなるため、保護膜にピンホールが発生するのを抑制できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における抵抗器の断面図
【図2】同抵抗器の製造方法の一部を示す上面図
【図3】同抵抗器の製造方法の一部を示す上面図
【図4】同抵抗器の製造方法の一部を示す上面図
【図5】同抵抗器の他の例を示す断面図
【図6】同抵抗器の主要部を示す断面図
【図7】同抵抗器の主要部を示す断面図
【図8】従来の抵抗器の断面図
【図9】同抵抗器の主要部を示す断面図
【図10】同抵抗器の主要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態における抵抗器について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態における抵抗器の断面図である。
【0016】
本発明の一実施の形態における抵抗器は、図1に示すように、絶縁基板11と、この絶縁基板11の上面の両端部に設けられた一対の接続用電極12と、この一対の接続用電極12それぞれの上面に設けられた一対の上面電極13と、前記絶縁基板11の上面に設けられ、かつ前記一対の上面電極13間に形成された抵抗体14と、少なくとも前記抵抗体14を覆うように設けられた保護膜15と、前記一対の接続用電極12および上面電極13と電気的に接続されるように前記絶縁基板11の両端面に設けられた一対の端面電極16とを備えた構成としている。そして、抵抗体14には、その側面から抵抗体14の中心方向に向かってレーザで切削してL字状のトリミング溝17が形成される。
【0017】
次に、本発明の一実施の形態における微小タイプで低抵抗チップ抵抗器の製造方法について、図1、図2を参照しながら説明する。
【0018】
まず、分割用のスリットである縦溝21aと横溝21bを有し1個の抵抗器に相当する領域が区画されているシート状の絶縁基板21を用意する。そして、このシート状の絶縁基板21は、Al23を96%含有するアルミナで構成されている。また、1個の抵抗器に相当する絶縁基板11の形状は矩形状(上面視にて長方形)となっている。なお、縦溝21aと横溝21bの数は図2に示している数に限られない。また、縦溝21aと横溝21bは分割用のスリットはなくてもよく、この場合は、縦溝21aと横溝21bは分割される箇所、すなわちダイシングやスクライブの中心部に相当する。
【0019】
次に、シート状の絶縁基板21の上面において横溝21bを跨ぐように、Auペーストを印刷、焼成して接続用電極12を形成する。これにより、耐硫化特性を向上させることができる。さらに耐硫化特性を向上させたい場合は、上面電極13を2層にする。なお、接続用電極12は縦溝21aを跨がないようにし、また、対硫化特性を問題にしない場合等は、接続用電極12は必ずしも設ける必要はない。
【0020】
次に、シート状の絶縁基板21の上面における1個の抵抗器を構成するそれぞれの絶縁基板11の上面において、その両端部が縦溝21aと横溝21bの端部にまで至らないようにAg系厚膜材料を印刷、焼成して上面電極13を設ける。このとき、上面電極13は接続用電極12の上面に接続するようにする。なお、絶縁基板11の裏面の両端部にはAgからなる裏面電極を形成してもよい。
【0021】
次に、1個の抵抗器を構成するそれぞれの絶縁基板11の上面において、上面電極13と上面電極13との間を電気的に接続するように、AgPdにガラスフリットを含有させたペーストを印刷、焼成することにより厚み30μm〜40μmの抵抗体14を形成する。なお、抵抗体14として、CuNiを用いてもよく、この場合は、上面電極13としてCu系厚膜材料を使用する。さらに、抵抗体14の上面をプリコートガラスで覆うようにしてもよい。
【0022】
次に、図3に示すように、抵抗体14に第1のレーザを照射することにより、抵抗体14の側面から抵抗体14の中心方向に向かい、さらに電流の流れと平行になるように折り曲がるL字状のトリミング溝17を形成し、抵抗体14の抵抗値を調整する。このとき、抵抗体14を貫通するように切削する。
【0023】
次に、前記抵抗値調整で使用した第1のレーザのパワーよりも低いパワーで、かつ第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径の第2のレーザを照射して、抵抗体表層部に再調整用トリミング溝17aを形成する。そして、この再調整用トリミング溝17aは、図4に示すように、その中心線がトリミング溝17の中心線と同じ位置になるように形成する。すなわち、再調整用トリミング溝17aもL字状になっている。そして、再調整用トリミング溝17aは上面視にてトリミング溝17より幅が広くなっているため、トリミング溝17の周辺のみを確実に切削できる。このように、第2のレーザのビーム径を、第1のレーザのビーム径より大きくしているため、第2のレーザの位置が多少ずれても問題はない。さらに、第2のレーザのパワーを第1のレーザのビームよりパワーを低くしているため、第2のレーザの照射角度がより小さい角度(より斜め)となり、これにより、トリミング溝17周辺に堆積する抵抗体14の飛散物の厚みは薄くなり、その先端部も尖らないため、第2のレーザの照射によるめっき付着不良は発生しにくくなる。なお、図3および図4は、説明を簡単にするために、上面電極13、抵抗体14、トリミング溝17、再調整用トリミング溝17aのみを示す。
【0024】
このとき、第2のレーザは抵抗体14の厚みの略半分の厚みのみを切削するように、そのパワーを調整する。そして、例えば所望される抵抗値が20mΩの場合、トリミング溝17による抵抗値調整でまず19.5mΩに調整した後、再調整用トリミング溝17aで20mΩになるようにする。
【0025】
なお、第1のレーザの照射の前にレジスト膜15aを形成してもよい。このレジスト膜15aは、トリミング溝17の形成箇所を除いて絶縁基板11の略全面に形成する。これにより、抵抗体14の飛散物がスリット内に堆積したり、トリミング溝17周辺に抵抗体14の飛散物が付着したりするのを防止できる。ここで、第1のレーザの照射、第2のレーザの照射を行った後、保護膜15、レジスト膜15aを形成した状態を図5に示す。なお、このレジスト膜15aは、第1のレーザの照射、第2のレーザの照射を行った後に剥離する。
【0026】
次に、少なくとも接続用電極12が露出し、かつ抵抗体14を覆うようにガラスまたはエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、200℃で硬化させることにより保護膜15を形成する。このとき、保護膜15は縦溝21aを跨ぐように帯状に形成してもよい。
【0027】
次に、シート状の絶縁基板21を横溝21bで分割し、短冊状の基板を形成する。その後、この短冊状の基板の両端部に露出した一対の接続用電極12および上面電極13と電気的に接続されるようにAgを印刷、焼成して一対の端面電極16を形成する。
【0028】
次に、前記短冊状の基板を縦溝21aで分割し、複数の個片状の抵抗器を得る。
【0029】
最後に、絶縁基板11の一対の端面電極16の表面に、Niめっき層を形成し、さらにこのNiめっき層を覆うようにSnめっき層を形成することによりめっき層16aを構成する。
【0030】
上記したように本発明の一実施の形態においては、抵抗値を調整した後に、第1のレーザのパワーよりも低いパワーかつ前記第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径の第2のレーザを照射して抵抗体14表層部に再調整用トリミング溝17aを形成し、この再調整用トリミング溝17aをトリミング溝17と同じ位置に形成するようにしているため、より低い抵抗値を得るために抵抗体14の厚みを厚くし、第1のレーザのパワーを上げてトリミング溝17を形成する場合でも、再調整用トリミング溝17aによってトリミング溝17周辺の抵抗体14の尖がって突出した飛散物をなだらかにすることができ、これにより、端面電極16にめっきを形成する際のめっきが飛散物を核として成長することを抑制できるため、めっき付着不良の発生を低減することができるという効果が得られるものである。
【0031】
すなわち、第1のレーザのパワーを上げ、そのレーザの照射する角度θを絶縁基板11と略垂直で照射して抵抗体14を貫通するようなトリミング溝17を形成すると、図6に示すように、トリミング溝17周辺に付着する抵抗体14の飛散物18の厚みが厚くかつ先端部が尖ってしまうが、第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径で、角度θより小さい角度θ0になるように第2のレーザを照射することによって形成された再調整用トリミング溝17aによって、図7に示すように、トリミング溝17周辺に付着した抵抗体14の飛散物18の先端部を削り取ることができる。さらに、第2のレーザのパワーを第1のレーザのパワーよりも低くしているため、トリミング溝17の周辺の抵抗体14の表層のみを切削することになり、抵抗値が大きく変動することもない。そして、抵抗体14の飛散物がめっきの核となり、この核で成長しためっきが実装用はんだと接続したり、トリミング溝17の両側を接続したりして、実装時不良が発生する場合も抑えられる。なお、図6および図7では、説明を簡単にするために、絶縁基板11、抵抗体14、トリミング溝17、再調整用トリミング溝17aの一部分のみを示す。
【0032】
さらに、第2のレーザの照射よってトリミング溝17の開口部分の面積が広くなるため、保護膜15を形成するペーストがトリミング溝17内にスムーズに入り込むことができ、これにより、トリミング溝17内において気泡がペーストに巻き込まれることはないため、保護膜15にピンホールが発生するのを抑制できる。この結果、めっき液のトリミング溝17内への浸入を防ぎ、抵抗値変動の不良を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る抵抗器の製造方法は、めっき付着不良の発生を低減することができるという効果を有するものであり、特に、各種電子機器に使用される低い抵抗値の抵抗器等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0034】
11 絶縁基板
13 上面電極
14 抵抗体
15 保護膜
16 一対の端面電極
17 トリミング溝
17a 再調整用トリミング溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の上面の両端部に一対の上面電極を形成する工程と、前記絶縁基板の上面において一対の上面電極間に抵抗体を形成する工程と、前記抵抗体に第1のレーザを照射することによりトリミング溝を形成して抵抗値を調整する工程と、前記抵抗体を覆うように保護膜を形成する工程と、一対の上面電極と接続されるように絶縁基板の両端面にめっきすることにより端面電極を形成する工程とを備え、抵抗値を調整した後、保護膜を形成する前に、前記第1のレーザのパワーよりも低いパワーでかつ前記第1のレーザのビーム径よりも大きなビーム径の第2のレーザを照射して抵抗体表層部に再調整用トリミング溝を形成し、この再調整用トリミング溝を前記トリミング溝と同じ位置に形成するようにした抵抗器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−211022(P2011−211022A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78355(P2010−78355)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】