説明

抵抗型酸素センサ素子

【課題】 内燃機関から排出された気体の酸素濃度を安定して検出することができる抵抗型酸素センサ素子を提供する。
【解決手段】 絶縁基板1の一方の主面側に一対の酸素分圧検出電極2とCeOを含有する酸素分圧検出層3とが形成され、他方の主面上にヒータ電極4とヒータ保護層5とを有し、絶縁基板中に含まれるSi量が基板の重量に対して15ppm以下でかつ、酸素分圧検出電極2に含まれるSi量が酸素分圧検出層3の重量に対して1重量%以下であることにより、酸素分圧検出層の抵抗値の経時変化を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の空燃比の計測に用いられる抵抗型酸素センサ素子に関するものであり、特に、酸素センサ素子に形成される酸素分圧検出層の抵抗値の経時変化を小さくすることを可能とした抵抗型酸素センサ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい場合、つまり、燃料の濃度が高い場合には、排気ガス中の酸素量が、理論空燃比の場合の酸素量に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(燃料の濃度が低い)場合には、排気ガス中の酸素量は増加する。このため、排気ガス中の酸素量あるいは酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するための酸素センサとしては、固体電解質を用いた酸素センサや、抵抗型の酸素センサが知られている。固体電解質を用いた酸素センサは、基準極および測定極間での酸素分圧の違いを起電力として検出することによって酸素濃度を測定する。このため、この方式の酸素センサでは、測定極および基準極を排気ガスおよび空気にそれぞれ曝す必要がある。従って、酸素センサ自体の構造が複雑になるとともに、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も複雑化してしまう。また、構造が複雑になるために、酸素センサを小型化し難いという問題も生じる。
【0005】
これに対して、抵抗型酸素センサは、排気ガスに接するように設けられた酸素分圧検出層の抵抗率の変化を検出する。排気ガス中の酸素分圧が変化すると、酸化物半導体中の酸素空孔濃度が変動するので、酸素分圧検出層の抵抗率が変化する。従って、この抵抗率の変化を検出することにより、酸素濃度を測定することができる。抵抗型酸素センサは、基準極を必要としないため、酸素センサ自体の構造を簡単にすることができる。また、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も簡単にすることができる。
【0006】
こうした抵抗型酸素センサに用いられる酸素分圧検出層には、酸化セリウムなどのn型酸化物半導体を用いた多孔質膜が用いられる。n型酸化物半導体は、電子伝導性を有しており、多孔質状に連鎖した粒子間を電子が移動する。また、抵抗型酸素センサは内燃機関から排出される高温の気体に直接さらされる為、その酸素分圧検出層は、高温下で絶縁性をもつ、アルミナなどの耐熱基板上に形成されている。
従来、こうした酸化セリウムなどのn型酸化物半導体を用いた多孔質膜を用いた抵抗型酸素センサ素子については、その検出精度を向上させるために種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1では、セリウムを含む酸化物にジルコニウムを添加することにより、酸素分圧検出層の電子伝導度が上がり、検出精度が向上するとしている。
また、特許文献2では、酸素分圧検出層が、アルミナを含むアルミナ含有層を含んでおり、検出電極をこのアルミナ含有層に接触するように設けることにより、検出精度が向上するとしている。
【0007】
一方、特許文献3には、アルミナの含有量が99.99重量%以上のアルミナ粉末を用いることにより、高温での焼成を必要とせずにアルミナ質焼結体が得られること、及びこのアルミナ質焼結体を基板とし、これに固体電解質体を設けたガスセンサ素子は、固体電解質に亀裂を生ずることがなく、耐久性に優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3870261号公報
【特許文献2】特開2007−327941号公報
【特許文献3】特開2001−348265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、内燃機関の空燃比の計測に用いられる抵抗型酸素センサ素子についてさらに検討したところ、抵抗型酸素センサを用いて内燃機関から排出される気体の酸素濃度を検出する場合、酸素分圧検出層の抵抗値が時間の経過と共に変化し、安定した抵抗値を得ることができない場合があることが判明した。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、内燃機関の空燃比の計測に用いられる抵抗型酸素センサ素子において、酸素センサ素子に形成される酸素分圧検出層の抵抗値の経時変化を小さくすることを可能とした抵抗型酸素センサ素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する為に、実験を重ねた結果、抵抗型酸素センサ素子に用いられる、アルミナからなる絶縁基板及び電極に含まれるSiに起因することが判明した。
すなわち、アルミナからなる基板上に形成した酸素分圧検出層は、高温下に長時間曝されることになるため、アルミナからなる基板に含まれるSiが酸素分圧検出層に拡散することになる。Siが酸素分圧検出層に拡散すると、多孔質状に連鎖したn型酸化物半導体粒子間にSiが析出し、電子の移動経路を阻害することになり、酸素分圧検出層の抵抗値を安定して得ることができない。
また、酸素分圧検出電極、及びヒータ電極、アルミナからなるヒータ保護層を形成させる部材にSiが含有した場合には、それぞれをアルミナ基板上で焼成させる工程で、それぞれに含まれるSiがアルミナ基板の表面に拡散し、上記同様の結果をもたらす。
【0011】
上記特許文献3の発明は、アルミナ基板中のSiの濃度が限定されたものであるが、該文献では、SiOがアルミナ基板の緻密化を阻害するものとして書かれており、基板に含有するSiが抵抗型酸素センサにおける酸素分圧検出層の特性に影響することなどは、全く考慮されていない。また、アルミナ基板以外の、素子を形成する部材におけるSi含有量については全く考慮されていない。さらに、特許文献3には、固体電解質を用いた酸素センサについては記載があるが、n型酸化物半導体からなる酸素分圧検出層を備えた抵抗型酸素センサについては記載がない。
【0012】
本発明は、前述の知見に基づき更に実験を重ねた結果、抵抗型酸素センサ素子に用いられる、アルミナからなる絶縁基板に含まれるSi量をSiO換算で15ppm以下とし、酸素分圧検出電極の各部に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下とすれば、抵抗型酸素センサ素子が長時間高温下に曝された場合や、センサ素子を作製する工程で、アルミナからなる絶縁基板あるいは酸素分圧検出電極から、酸素分圧検出層へのSiの拡散を抑制することができ、それにより、Siの拡散によって引き起こされるn型半導体酸化物からなる酸素分圧検出層の抵抗値の変動を抑制することができることが確認された。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
アルミナ焼結体からなる絶縁基板と、
該絶縁基板の一方の主面側に形成された一対の酸素分圧検出電極と、
前記一方の主面側に前記一対の電極と接するように形成されたCeOを含有する酸化物半導体からなる酸素分圧検出層と、
前記絶縁基板の他方の主面上に形成されたヒータ電極と、
前記他方の主面側に、前記ヒータ電極を被覆するように形成されたAlを主成分とする焼付け膜からなるヒータ保護層とを有し、
前記絶縁基板中に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、基板の重量に対して15ppm以下でかつ、前記酸素分圧検出電極に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、前記酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下であることを特徴とする、内燃機関の空燃比の計測に用いられる抵抗型酸素センサ素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抵抗型酸素センサ素子は、絶縁基板中に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、基板の重量に対して15ppm以下でかつ、酸素分圧検出電極に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下とすることにより、抵抗値の経時変化を小さくし、内燃機関から排出された気体の酸素濃度を安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の抵抗型酸素センサ素子を模式的に示す断面図
【図2】本発明の抵抗型酸素センサ素子の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により、本発明の抵抗型酸素センサ素子について説明する。
図1は、本発明の抵抗型酸素センサ素子を模式的に示す断面図であり、図2は、本発明の抵抗型酸素センサ素子の分解斜視図である。
図1、2に示すとおり、本発明の抵抗型酸素センサ素子は、アルミナ焼結体からなる絶縁基板1と、該絶縁基板1の一方の主面側に形成された一対の酸素分圧検出電極2と、前記一方の主面側に前記一対の電極2に接するように形成された酸素分圧検出層3とを有し、また、絶縁基板1の裏面側には、酸素分圧検出部を昇温させるためのヒータ電極4及びヒータ保護層5が設けられている。
【0017】
アルミナ焼結体からなる絶縁基板1は、900℃においても高絶縁性を保持し、かつ機械的強度が保たれるものである。
本発明では、後述する実施例及び比較例の記載から明らかなように、得られる抵抗値の経時変化をなくして、安定した抵抗値を得るためには、アルミナ焼結体からなる絶縁基板中に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、基板の重量に対して15ppm以下であることが必要である。
【0018】
酸素分圧検出電極2は、導電性を有する材料から形成されており、好ましくは白金を主体とするものであるが、基板との十分な密着性が確保され、酸素分圧に依存しない高い電子伝導性を有し、高温酸素雰囲気下で安定であり、かつ三相界面で酸化物イオン空孔の生成消滅が生じるものであれば選択は任意に可能である。また、対向電極構造としては抵抗値を低減するため、櫛型に形成されていることが好ましい。
本発明では、後述する実施例及び比較例の記載から明らかなように、得られる抵抗値の経時変化をなくして、安定した抵抗値を得るためには、該酸素分圧検出電極に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、前記酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下であることが必要である。
【0019】
酸素分圧検出層3を構成する酸化物半導体は、多孔質構造を有し、雰囲気の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、酸化物半導体層中の酸素空孔濃度が変化し、酸素分圧検出層の抵抗率が変化するので、この抵抗率の変化を前述の酸素分圧検出電極2で計測することにより、酸素濃度を検出することができる。
酸素分圧検出層としては、例えば、酸化セリウムや、酸化セリウムと酸化ジルコニウムの複合体を用いることができる。セリウムに加えてジルコニウムを含む酸化物を用いることにより、特許文献1に記載されているように検出精度が向上する。酸素分圧検出層は、典型的には、主として酸化セリウムを(つまり50mol%以上)含んでいる。
また、多孔質構造を構成する粒子径は、平均粒径を200nm以下にすることにより抵抗型酸素センサの応答性を改善することができ、好ましくは30〜50nmである。また、細孔径は、10〜100nmに分布をもち、好ましくは細孔径の平均値が100nmである。さらに、細孔容積は、0.1cm/g以上1cm/g以下で、好ましくは約0.5cm/gである。
【0020】
ヒータ電極4は、抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の発熱素子である。ヒータ電極から引き延ばされた電極に電圧を印加すると、所定の形状に形成された発熱体に電流が流れて発熱体が発熱し、そのことによって加熱が行われる。熱は、絶縁基板1を介して酸素分圧検出層3に伝達される。ヒータ電極によって酸素分圧検出層を昇温させて酸素分圧検出層3を速やかに活性化させることにより、内燃機関の始動時における検出精度を向上させることができる。
また、ヒータ保護層5は、前述のヒータ電極4を保護するために設けられるものであり、アルミナペースト等を用いて形成できる。
【0021】
なお、以上の説明では、セリアを含有する酸化物半導体からなる酸素分圧検出層とは異なる面に搭載される、ヒータ電極4、及びヒータ保護層5については、Si含有量を特に限定していないが、それぞれを、アルミナ焼結体からなる絶縁基板1に約1400℃で焼き付ける工程において、Siが揮発し、その蒸気が絶縁基板表面を汚染する可能性があるため、当然ヒータ電極4、及びヒータ保護層5のいずれにおいても、使用する部材中のSi含有量はともに50ppm以下であることが望ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
アルミナ純度が99.95重量%でSi含有量がSiOとして換算した場合に15ppmのアルミナ基板1上に、SiOを36ppm含有し90重量%の固形分を持つ白金ペーストを用いて、スクリーン印刷法によって酸素分圧検出電極パターンを印刷した後、1400℃で焼成して酸素分圧検出電極2を形成した。
アルミナ基板1を挟むような形で一対の酸素分圧検出電極2の酸素分圧検出層形成部の裏面に、白金ペーストを用いてスクリーン印刷法によってヒータ電極パターンを印刷した後、1400℃で焼成してヒータ電極4を形成した。
ヒータ電極4を被覆するように、ヒータ電極の上部に、アルミナ純度が99.9重量%以上のアルミナ粉末から調製したアルミナペーストを用いて、スクリーン印刷法によりヒータ保護層パターンを印刷した後、1400℃で焼成してヒータ保護層5を形成した。
酸素分圧検出電極パターン2の上部に、Si含有量がSiOとして換算した場合に10ppmの酸化セリウムペーストを用いて、スクリーン印刷方によって酸素分圧検出層パターンを印刷した後、1050℃で焼成して酸素分圧電出層3を形成した。これら一連の工程を経て抵抗型酸素センサ素子を作製した。
酸素分圧検出電極を形成する前のアルミナ基板重量、酸素分圧検出電極形成後のアルミナ基板重量、酸素分圧検出電極及び酸素分圧検出層を形成した後のアルミナ基板重量、それぞれの値から算出したアルミナ基板、酸素分圧検出電極、酸素分圧検出層の重量はそれぞれ、0.4g、0.025g、0.0001gであった。前記白金ペーストに含まれる10重量%の溶媒成分は、酸素分圧検出電極を焼成する工程で全て揮発するため、焼成後の酸素分圧検出電極のSiO含有量を計算すると40ppmであった。前記のSi含有量、及び重量値をもとに、酸素分圧検出層の重量に対する酸素分圧検出電極に含まれるSiO重量を換算したところ、1.00重量%であった。表1これらの一覧を示す。
【0024】
一対の酸素分圧検出電極2に、スポット溶接によって白金線を接続した抵抗型酸素センサ素子を、管状炉に設置し、白金線の一端を管状炉の外に引き出し、デジタルマルチメータに接続した。管状炉内を大気雰囲気のまま500℃に昇温させた後、管状炉内に水素を0.1体積%含有した窒素ガスを導入して5分待機した後に、抵抗型酸素センサ素子の酸素分圧検出層3の抵抗値の変化を30分間測定した。抵抗値測定開始1秒後、酸素分圧検出層3の抵抗値は、650Ωを示し、30分経過後の抵抗値は640Ωを示した。酸素分圧検出層3が示した、測定1秒後と測定30分経過後に示した抵抗値の対数の比は1.00であり、抵抗値の対数の変化率は0%であった。なお、上記測定中の管状炉内の酸素分圧をジルコニア酸素濃度計にて測定したところ、測定中の酸素分圧は一定して1×10−20atmあり、酸素分圧の変動は見られなかった。
【0025】
(比較例1)
実施例1で酸素分圧検出電極の作製に用いた白金ペーストに、SiOを350ppm含有した純度が99.5重量%のアルミナ粉末を、ペースト中の白金重量に対して30重量%添加して、白金ペースト全体にSiO換算で140ppmのSiを含有した白金ペーストを調製した。このように調製した白金ペーストを用いて酸素分圧検出電極を形成した以外は、実施例1で使用したものと同一の、アルミナ基板、白金ペースト、酸化セリウムペースト、アルミナペーストを用いて、実施例1と同一の工程で、ヒータ電極、酸素分圧検出層、ヒータ保護層を形成し、抵抗型酸素センサ素子を作製した。
電極を形成する前のアルミナ基板重量、電極形成後のアルミナ基板重量、電極及び酸素分圧検出層を形成した後のアルミナ基板重量、それぞれの値から算出したアルミナ基板、酸素分圧検出電極、酸素分圧検出層の重量はそれぞれ、0.4g、0.025g、0.0001gであった。前記白金ペーストに含まれる10重量%の溶媒成分は酸素分圧検出電極を焼成する工程で全て揮発するため、焼成後の酸素分圧検出電極のSiO含有量を計算すると107ppmであった。前記の使用した部材中のSi含有量、及び重量値から、酸素分圧検出層の重量に対する酸素分圧検出電極に含まれるSiO重量を換算したところ、2.75重量%であった。
【0026】
一対の酸素分圧検出電極2に、スポット溶接によって白金線を接続した抵抗型酸素センサ素子を、管状炉に設置し、水素を0.1体積%含有した窒素ガスを炉内に導入し、実施例1と同一の温度条件の下で、酸素分圧検出層の抵抗変化を測定した。素子温度500℃において、測定開始1秒後の抵抗値は、10100Ωを示したが、測定開始から30分後には960Ωまで低下した。測定開始1秒後、30分後それぞれの抵抗値の対数比は0.74となり、対数比で26%の変動が確認された。なお、上記測定中の管状炉内の酸素分圧をジルコニア酸素濃度計にて測定したところ、測定中の酸素分圧は一定して1×10−20atmであり、酸素分圧の変動は見られなかった。
【0027】
(比較例2)
アルミナ純度が99.6重量%で、Si含有量が0.2重量%(2000ppm)のアルミナ基板上に、実施例1と同様の工程で、酸素分圧検出電極、ヒータ電極、ヒータ保護層、酸素分圧検出層を形成し、抵抗型酸素センサ素子を作製した。
一対の酸素分圧検出電極2に、スポット溶接によって白金線を接続した抵抗型酸素センサ素子を、管状炉に設置し、水素を0.1体積%含有した窒素ガスを炉内に導入し、実施例1と同一の温度条件の下で、酸素分圧検出層の抵抗変化を測定した。500℃で測定した抵抗値において、測定開始1秒後の抵抗値は、15000Ωを示したが、測定開始30分後の抵抗値は770Ωを示した。測定開始1秒後、30分後それぞれの抵抗値の対数比は、0.69であり、対数比で31%の変動が確認された。なお、上記測定中の管状炉内の酸素分圧をジルコニア酸素濃度計にて測定したところ、測定中の酸素分圧は一定して1×10−20atmであり、酸素分圧の変動は見られなかった。
【0028】
(比較例3)
アルミナ純度が99.9重量%で、Si含有量が90ppmのアルミナ基板上に、実施例1と同様の工程で、酸素分圧検出電極、ヒータ電極、ヒータ保護層、酸素分圧検出層を形成し、抵抗型酸素センサ素子を作製した。
一対の酸素分圧検出電極2に、スポット溶接によって白金線を接続した抵抗型酸素センサ素子を、管状炉に設置し、水素を0.1体積%含有した窒素ガスを炉内に導入し、実施例1と同一の温度条件の下で、酸素分圧検出層の抵抗変化を測定した。500℃で測定した抵抗値において、測定開始1秒後の抵抗値は、5800Ωを示したが、測定開始30分後の抵抗値は820Ωを示した。測定開始1秒後、30分後それぞれの抵抗値の対数比は、0.77であり、対数比で23%の変動が確認された。なお、上記測定中の管状炉内の酸素分圧をジルコニア酸素濃時計にて測定したところ、測定中の酸素分圧は一定して1×10−20atmであり、酸素分圧の変動は見られなかった。
【0029】
(比較例4)
実施例1で酸素分圧検出電極の作製に用いた白金ペーストに、SiOを350ppm含有した純度が99.5重量%のアルミナ粉末を、ペースト中の白金重量に対して17重量%添加して、白金ペースト全体にSiO換算で93ppmのSiを含有した白金ペーストを調製した。このように調製した白金ペーストを用いて酸素分圧検出電極を形成した以外は、実施例1で使用したものと同一の、アルミナ基板、白金ペースト、酸化セリウムペースト、アルミナペーストを用いて、実施例1と同一の工程で、ヒータ電極、酸素分圧検出層、ヒータ保護層を形成し、抵抗型酸素センサ素子5を作製した。
酸素分圧検出電極を形成する前のアルミナ基板重量、酸素分圧検出電極形成後のアルミナ基板重量、酸素分圧検出電極及び酸素分圧検出層を形成した後のアルミナ基板重量、それぞれの値から算出したアルミナ基板、酸素分圧検出電極、酸素分圧検出層の重量はそれぞれ、0.4g、0.025g、0.0001gであった。前記白金ペーストに含まれる10重量%溶媒成分は酸素分圧検出電極を焼成する工程で全て揮発するため、焼成後の酸素分圧検出電極のSiO含有量を計算すると79ppmあった。前記の使用した部材中のSi含有量、及び重量値から、酸素分圧検出層の重量に対する酸素分圧検出電極に含まれるSiO重量を換算したところ、1.98重量%であった。
【0030】
一対の酸素分圧検出電極2に、スポット溶接によって白金線を接続した抵抗型酸素センサ素子を、管状炉に設置し、水素を0.1体積%含有した窒素ガスを炉内に導入し、実施例1と同一の温度条件の下で、酸素分圧検出層の抵抗変化を測定した。素子温度500℃において、測定開始1秒後の抵抗値は、1600Ωを示したが、測定開始から30分後には870Ωまで低下した。測定開始1秒後、30分後それぞれの抵抗値の対数比は0.92となり、対数比で8%の変動が確認された。なお、上記測定中の管状炉内の酸素分圧をジルコニア酸素濃度計にて測定したところ、測定中の酸素分圧は一定して1×10−20atmであり、酸素分圧の変動は見られなかった。
【0031】

【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
上記実施例及び比較例での実験結果から、絶縁基板のSi含有量は、SiOとして換算した場合に重量比で15ppm以下とし、かつ酸素分圧検出電極に含まれるSiO含有量が酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下であれば、抵抗型酸素センサ素子における酸素分圧検出層の抵抗値は経時で変化することなく安定して得られ、気体の酸素分圧を安定して検出できることが示された。
【符号の説明】
【0034】
1:絶縁基板
2:酸素分圧検出電極
3:酸素分圧検出層
4:ヒータ電極
5:ヒータ保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ焼結体からなる絶縁基板と、
該絶縁基板の一方の主面側に形成された一対の酸素分圧検出電極と、
前記一方の主面側に前記一対の電極と接するように形成されたCeOを含有する酸化物半導体からなる酸素分圧検出層と、
前記絶縁基板の他方の主面上に形成されたヒータ電極と、
前記他方の主面側に、前記ヒータ電極を被覆するように形成されたAlを主成分とする焼付け膜からなるヒータ保護層とを有し、
前記絶縁基板中に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、基板の重量に対して15ppm以下でかつ、前記酸素分圧検出電極に含まれるSi量が、SiOとして換算した場合に、前記酸素分圧検出層の重量に対して1重量%以下であることを特徴とする、内燃機関の空燃比の計測に用いられる抵抗型酸素センサ素子。



【図1】
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【図2】
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