説明

抵抗性統合失調症およびその他のCNS疾患の治療

【課題】未治療の統合失調症、治療抵抗性統合失調症、難治性統合失調症、治療抵抗性うつ病、慢性うつ病、再発性うつ病、および抵抗性躁うつ病から選択される症状の患者に対する、単一療法の提供。
【解決手段】クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、酢酸ズクロペンチキソール、デカン酸ズクロペンチキソール、またはこれらの薬学的に許容される塩のようなチオキサンテン類の薬理学的有効量の投与。相当する医薬の製造および使用もあわせて提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗性うつ病、慢性および再発性うつ病および抵抗性躁うつ病疾患の治療方法に関する。本発明は特に、未治療の統合失調症患者、治療抵抗性の統合失調症患者および難治性の統合失調症患者の治療に関する。本発明はまた、その治療法に用いられる手段に関する。
【背景技術】
【0002】
統合失調症は精神科医が扱わねばならない最も衰弱していく病気の一つである。統合失調症は、妄想、幻覚、解体した会話、著しく解体した若しくは緊張病性行動および否定的症候(感情の平坦化、失語、若しくは自発性欠如)で特徴付けられる精神的症状である。統合失調症は、社会的排斥とともに増加する死亡率(一般人の2〜3倍)と並存疾患に関連する重篤な病気である。
【0003】
生涯有病率は高くて1%であり、標的とする集団の定義基準に依存して調査研究の間で一定でない。また、40歳までは加齢に従って増加するがその後は減少することも知られている。病気の経過は2年間に80%の人に起こる再発により特徴付けられる。男性では10代後半から20代初め、女性では20代から30代初めに発症する。NIMHによれば、統合失調症は男性と女性の間に等しい頻度で生じる。
【0004】
米国では、約240万人が統合失調症に罹患しその20〜30%が抗精神病薬に対して無効またはほとんど効果がなく、通常治療抵抗性患者と言われている。このことは48万人から72万人の統合失調症患者が有効な治療法のないまま放置されていることを意味している。これは深刻な悩みに晒されている極めて脆弱な人々である。
【0005】
統合失調症の薬学的管理は、典型的な抗精神病薬(ハロペリドール、クロルプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、トリフルオロペラジン、アミスルプリド、スルピリド等)に基づいているが、これらは運動および錐体外路系の副作用(EPS)を有する。非定型と呼ばれる新しい世代の抗精神病薬、例えばリスペリドン、オランザピン、ケチアピン、ジプラシドンおよびアリピプラゾール等の開発は、これらがEPSを回避し同時により優れた効果を提供すると思われたので、当初は統合失調症管理の飛躍的進歩と考えられた。この新しい非定型薬は、典型的抗精神病薬による治療に抵抗性の統合失調症患者の20〜30%の必要性に対処するのに十分効果的であると思われた。しかしながら、最近の研究では非定型抗精神病薬は典型的抗精神病薬以上に効果的ではないことが結論付けられた。典型的抗精神病薬に対する非定型抗精神病薬の卓越した有効性は一貫性がなく不確実で、また非非定型薬が体重増加をもたらして糖および脂質代謝に影響し心再分極に支障を来たす可能性があり、典型薬に対する非定型薬の安全性の利点も疑問である。
【0006】
治療抵抗性の統合失調症患者に対する適用がある唯一の抗精神病薬はクロザピンである。しかしながら、重篤な副作用のためその使用は制限されている。クロザピンに起こり得る副作用には病気と戦う白血球細胞の減少が含まれ、好中球減少症が3.6%、顆粒球減少症が1%、他に全体の発作率が2.8%、心筋症および致命的な心障害が生じ得る心筋炎、肺塞栓症が含まれる。致命的な副作用の危険性にもかかわらず、クロザピンは米国FDAより、限られた人、即ち抵抗性統合失調症に対して認可された。顆粒球減少症発症の診断のためには注意して定期的に血球数をカウントすることが必須であり、それ故クロザピンの使用は制限される。
【0007】
抗精神病薬による治療が開始されても、副作用に関連する処置や症候への対応が十分でないため、75%の患者が18ヶ月以内に治療を中止してしまう。
本願では、治療抵抗性統合失調症患者、難治性統合失調症患者および未治療の統合失調症患者を以下のとおり定義する。
【0008】
治療抵抗性統合失調症患者とは、6週間の間連続する二つの抗精神病薬を適切な用量で試みたが有意な症状改善の兆候がなく、かつ医薬治療に従う統合失調症患者である。この定義には、PANSS(陽性および陰性統合失調症基準)のような臨床基準上の判定で症候の改善を決定することが含まれる。改善は、適切な用量で6週間治療した後PANSS基準で少なくとも20%の軽減に応答しなければならない。症状改善の欠如はあらかじめ見極められ、履歴情報に文書化すべきでない。治療に対するコンプライアンスは看護婦または介護者のような第三者を通じて文書化すべきである。コンプライアンスの欠如はしばしば統合失調症治療の不満足な結果の理由となる;もしもコンプライアンスが文書化されてなければ治療抵抗性統合失調症の診断を確認することができない。適切な用量はクロルプロマジン400〜700mg/日当量として定義される。
【0009】
難治性統合失調症患者とは、6週間の抗精神病薬治療後に症候の優位な軽減が認められたが、にもかかわらず患者の寛解を妨げる残留症候を示す統合失調症患者である。
未治療の統合失調症患者とは、抗精神病薬による治療を受けたことのない統合失調症患者である。
未治療の統合失調症患者では、
統合失調症の病気の経過は多かれ少なかれ頻発する再発で特徴付けられ、それは精神病症候の急性再燃として定義される:以前の再発の数が高いほど、さらなる再発の危険度も高い。未治療の患者では、長期間再発のない患者の症候の初期の管理がよりよい結果の前兆となる。未治療の患者における再発遅延化の治療は、まだ満たされていない重要な必要性を満たし、統合失調症の長期的経過に影響する。
【0010】
本発明の目的は薬学的治療を提供し、再発を遅延化させ、未治療患者における重要な満たされない必要性に対処することである。
治療抵抗性および難治性統合失調症患者:これらの患者には通常クロザピンが用いられる。しかし、上記のとおりこれは重篤な副作用につながるのでその使用は制限される。クロザピン以外には、治療抵抗性統合失調症患者において統合失調症とは関連しないいくつかの薬物が、補助的に使用されている:
ファモチジン〔N‘-(アミノスルホニル)-3-[[[2-[(ジアミノメチレン)アミノ]-4-チアゾリル]メチル]チオ]プロパニンアミド〕(後記非特許文献1参照)
D−セリン(後記非特許文献2参照)
ガランタミン〔(4aS,6R,8aS)-4a,5,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-3-メトキシ-11-メチル-6H-ベンゾフロ[3a,3,2,ef](2)ベンズアゼピン-6-オール〕(後記非特許文献3参照)
【0011】
単剤療法で使用された場合、その他いくつかの化合物がまた治療抵抗性統合失調症に使用されている:
メルペロン〔4-フルオロ-γ-(4-メチルピペリジノ)-ブチロフェノン〕(後記特許文献1参照)
アムペロジド〔N-エチル-4-(4',4'-ビス(4-フルオロフェニル)ブチル)-1-ピペラジンカルボキサミド〕(後記特許文献2参照)
しかしながら今日までいずれも、例えば米国のFDAのような当局から認可を受けるに至っていない。
【0012】
クロザピンのような薬物治療の試みは治療抵抗性統合失調症患者および難治性統合失調症患者の管理において役割を果たすように見えるけれども、依然としてこの人々には満たされない必要性が存在する。特に、クロザピンよりも好ましくて安全な、薬学上の選択肢が望まれている。
再発性、慢性および抵抗性うつ病および抵抗性そううつ病
主たるうつ病の患者の約20〜30%は、単一の抗うつ薬で適切な量および期間で治療を行っても応答しないとの評価がある。加えて、別の抗うつ薬治療へと転換してもその約半数のみが応答するに過ぎないであろう。
【0013】
通常では完全な応答が得がたいため、管理戦略を確立して進める必要がある。最近の方法には、抗うつ療法の組み合わせ(例えば、セロトニン再取り込み阻害剤とブプロピオン)、増強(例えば、抗うつ剤にリチウム若しくは甲状腺ホルモンの追加)、心理療法若しくは電気ショック療法の追加等がある(非特許文献4参照)。しかしながら、これらの方法をもってしても治療効果が十分でない患者が少なからず存在する。
ここで、再発性うつ病患者、慢性うつ病患者、抵抗性うつ病患者および抵抗性躁うつ病患者を定義する。
【0014】
再発性うつ病患者は、二つ若しくはそれ以上の連続する主たるうつ症状の出現を経験し、かつ少なくとも2ヶ月間主たるうつ疾患といえる適切なうつ症候(DSM-IV)を経験していない患者である。
慢性うつ病患者とは、うつ症候(DSM-IV)が2年若しくはそれ以上続いている患者である。
抵抗性うつ病患者とは、適切な薬学的治療に反応しない患者である。
抵抗性躁うつ病患者とは、適切な薬学的治療に反応しない患者である。
再発性うつ病、慢性うつ病、抵抗性うつ病および抵抗性躁うつ病はそれぞれ対応して定義される。
【0015】
【特許文献1】米国特許公報5221679号(1993)
【特許文献2】米国特許公報5013735号(1993)
【非特許文献1】J.Psychiatry Neurosci., 1994; 19(2),:145-150
【非特許文献2】Am.J.Psychiatry, 1999, 156:1822-1825
【非特許文献3】Am.J.Psychiatry, 2002, 159(7):1244-5
【非特許文献4】Shelton, 2003, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、クロザピンよりも安全で好ましい性質の有効な薬理学上の選択を提供し、治療抵抗性および難治性統合失調症患者における満たされない医療の必要性に向けた薬理学的治療法を提供することである。本発明の別の目的は、未治療の統合失調症患者に対して、症候の初期の管理を提案し再発を遅らせる薬理学的治療法を提供することである。
再発性うつ病患者、慢性うつ病患者、抵抗性うつ病患者および抵抗性躁うつ病患者における満たされない医療の必要性に向けた薬理学的治療法を提供することもまた、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
意外にも、チオキサンテン類に下記の作用のあることが見出された;例えばチオチキセン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、ズクロペンチキソール、酢酸ズクロペンチキソール、デカン酸ズクロペンチキソール、これらの薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび混合物のようなチオキサンテン類が
その単一療法が治療抵抗性うつ病患者に有効であること;
その単一療法が難治性うつ病患者に有効であること;および
その単一療法が未治療うつ病患者の再発を遅らせること。
【0018】
特に、意外にもズクロペンチキソールが、ハロペリドールやリスペリドン、オランザピンおよびクロザピンのような薬物に応答しない治療抵抗性うつ病患者に対して有効であって、そして未治療のうつ病患者にも有効でその再発を遅らせることが見出された。
一方、例えばチオチキセン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、ズクロペンチキソール、酢酸ズクロペンチキソール、デカン酸ズクロペンチキソール、これらの薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび混合物のようなチオキサンテン類が
抵抗性うつ病の患者、
再発性うつ病の患者、
慢性うつ病の患者および
抵抗性躁うつ病の患者において単一療法で有効であることがまた見出された。
本発明によれば、未治療の統合失調症、治療抵抗性統合失調症、難治性統合失調症、治療抵抗性うつ病、慢性うつ病、再発性うつ病、および抵抗性躁うつ病から選択される症状の患者の治療方法が開示され、それは一般式(I)のチオキサンテンの薬理学的な有効量投与を包含する。
【化1】

〔式中、(Ia) R=Cl、R=R=CH
(Ib) R=CF、NR=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル、
(Ic) R=SO(NCH)、NR=4-メチル-1-ピペラジニル、
(Id) R=Cl、NR=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル、
(Ie) R=Cl、NR=4-(2-アセチルオキシエチル)-1-ピペラジニル、
(If) R=Cl、NR=4-(2-デカニルオキシエチル)-1-ピペラジニル〕
必要であれば他の薬剤と組み合わせてもよいが単一療法で可能である。
【0019】
具体的なチオキサンテンとしては、制限はされないが、クロルプロチキセン〔Ia:(3Z)-N,N-ジメチル-3-(2-クロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロパン-1-アミン〕、フルペンチキソール〔Ib:4-[(3Z)-3-(2-トリフルオロメチル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル]-1-ピペラジンエタノール〕、チオチキセン〔Ic:(3Z)-N,N-ジメチル-9-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-プロピリデン]-9H-チオキサンテン-2-スルホンアミド〕、ズクロペンチキソール〔Id:4-[(3Z)-3-(2-クロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル-1-ピペラジンエタノール・二塩酸塩〕、および化合物(Id)のエステル、例えば(Ie:酢酸ズクロペンチキソール)、(If:デカン酸ズクロペンチキソール)およびその薬学的に許容される塩が包含される。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明はチオキサンテン、好ましくはチオチキセン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、ズクロペンチキソール、酢酸ズクロペンチキソールおよびデカン酸ズクロペンチキソールよりなる群から選択される薬物の経口投与により、未治療の統合失調症患者、を治療する方法を提供する。より好ましい態様では、本発明はズクロペンチキソールの経口投与によって、未治療の統合失調症患者、治療抵抗性統合失調症患者および難治性統合失調症患者を治療する方法を提供する。
腸管吸収のための投与は経口と直腸投与により、例えばそれぞれ錠剤と坐剤により可能である。また、経口投与のため、液体製剤、特に水性製剤の提供も本発明の範囲内である。さらなる投与経路は静脈内または筋肉内注射であって生理食塩水のような液体の担体が用いられる。未治療の統合失調症患者、治療抵抗性統合失調症患者、難治性統合失調症患者、および抵抗性うつ病、慢性および再発性うつ病および抵抗性躁うつ病の患者の治療に適した本発明化合物の医薬組成物は、種々の国で指示は異なるが文献に記載され市販されている。
【0021】
ズクロペンチキソールの薬学的に有効な経口の用量は、5mgから400mg、好ましくは20mgから150mgが単一療法として未治療の統合失調症患者、治療抵抗性統合失調症患者、および難治性統合失調症患者に与えられる。
そのような用量で与えると、ズクロペンチキソールは統合失調症の症候、特に陽性の症候および認識障害に対して臨床上有利な効果を発揮する。半年以上そして1年以上のような長期間にわたりズクロペンチキソールを投与しても、陽性の症候上の利益的効果に対して、ズクロペンチキソールの統合失調症の他の側面、例えば認識若しくは陰性症候、興奮の悪化は付随しない。
それが関係する症状に関して、本発明の化合物の治療上の効果は続く実施例によりサポートされる。
【実施例】
【0022】
実施例1 治療抵抗性統合失調症
ケース1:
治療抵抗性統合失調症患者(37歳)に対し、十分な期間と関連する用量でもって、およびコンプライアンスも管理して四種の抗精神病薬の連続的な投与を行ったが応答しなかった。適当な用量と十分な期間、経口のハロペリドール、経口のリスペリドン、経口のオランザピンおよび経口のクロザピンを続いて投与してから経口のズクロペンチキソール単独に切り替えた。治療についてのコンプライアンスは確認した。ズクロペンチキソール投与前、その患者は重篤な衰弱統合失調症症候を示した。ズクロペンチキソール治療の開始後まもなく、統合失調症症候の改善が見られ患者は通常の生活が可能となった。
【0023】
ケース2:
40歳で初めて治療抵抗性統合失調症と診断された女性患者(59歳)。この患者は経口アミスルピリド、経口オランザピン、経口リスペリドンおよび経口クロザピンにより適切な用量で十分な期間治療がなされた。治療へのコンプライアンスも確認された。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「極めて病的」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIおよびPANSSで確認して「非常に改善」と評価された。
【0024】
ケース3:
20歳で初めて治療抵抗性統合失調症と診断された男性患者(29歳)。この患者は、経口オランザピン、経口リスペリドン、経口ロキサピン、および経口クロザピンにより適切な用量で十分な期間治療がなされた。治療へのコンプライアンスも確認された。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「最も極度に病的な患者の範疇」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIおよびPANSSで確認して「非常に改善」と評価された。
【0025】
ケース4:
25歳で初めて治療抵抗性統合失調症と診断された男性患者(46歳)。この患者は、下記の抗精神病薬により適切な用量で十分な期間治療がなされた;経口リスペリドン、経口アリピプラゾール、経口ロキサピンおよび経口オランザピン。治療へのコンプライアンスも確認された。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「重度に病的」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIおよびPANSSで確認して「非常に改善」と評価された。
【0026】
ケース5:
20歳で初めて治療抵抗性統合失調症と診断された男性患者(30歳)。この患者は、経口クロザピン、経口リスペリドン、アリピプラゾール、および経口オランザピンにより適切な用量で十分な期間治療がなされた。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「重度に病的」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIおよびPANSSで確認して「非常に改善」と評価された。
【0027】
実施例2 難治性統合失調症
22歳で初めて難治性統合失調症と診断された男性患者(27歳)。この患者は、経口アリピプラゾール、経口ロキサピン、および経口オランザピンにより適切な用量で十分な期間治療がなされた。治療へのコンプライアンスも確認された。この患者は症候の優位な軽減を示したが、にもかかわらず面倒な後遺症の症状に悩まされていた。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIおよびPANSSで確認して「非常に改善」と評価され、患者に寛解達成を許容した。
【0028】
実施例3 未治療の統合失調症
統合失調症の診断で、未治療の統合失調症患者(19歳)に対し、初めての抗精神病薬による治療として経口のズクロペンチキソール50mg/dayが処方され、成功であることが示された。5年の治療期間の後、その患者は未だ再発していない。
【0029】
実施例4 再発性うつ病
19歳で初めて再発性うつ病と診断された女性患者(48歳)。この患者は、経口フルオキセチン、経口シタロプラム、経口アミトリプチリン、および経口パロキセチンにより適切な用量で十分な期間治療がなされたが、新たなうつの発現を規則的に経験した。治療へのコンプライアンスが確認された。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換し、著しい応答を示した。2年後、患者は未だ再発していない。
【0030】
実施例5 治療抵抗性うつ病
23歳で初めて慢性うつ病と診断された男性患者(33歳)。この患者は、経口セルトラリン、経口パロキセチン、および経口アミトリプチリンにより適切な用量で十分な期間治療がなされたが、十分な応答は得られなかった。それから、経口のズクロペンチキソールへと転換した。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「極めて病的」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、CGIで確認して「非常に改善」と評価され、ハミルトンうつ基準でうつ軽減による顕著な応答を示した。
【0031】
実施例6 治療抵抗性躁うつ病
ケース1:
躁病の状態にあり、治療抵抗性躁うつ病Iと診断された男性患者(39歳)。22歳のときに初めて診断された。この患者は、経口のリチウムおよび経口のラモトリジンにより適切な用量で十分な期間治療がなされたが、満足すべき応答は得られなかった。治療へのコンプライアンスが確認された。それから、経口のズクロペンチキソールが処方された。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「最も極度に病的な患者の範疇」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、「非常に改善」と評価された。
【0032】
ケース2:
うつの兆候があり治療抵抗性躁うつ病IIと診断された女性患者(43歳)。18歳で初めて診断を受けた。この患者は、経口のリチウム、経口セルトラリンおよび経口シタロプラムにより適切な用量で十分な期間治療がなされたが、満足すべき応答は得られなかった。治療へのコンプライアンスが確認された。それから、経口のズクロペンチキソールが処方された。ズクロペンチキソール治療の開始前は当該患者は「極めて病的」と考えられた。ズクロペンチキソールで8週間治療後は、「大いに改善」と評価された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオキサンテンまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは混合物の薬理学的有効量を含む、未治療の統合失調症、治療抵抗性統合失調症、難治性統合失調症、治療抵抗性うつ病、慢性うつ病、再発性うつ病、および抵抗性躁うつ病から選択される症状の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
チオキサンテンが一般式(I)
【化1】

〔式中、(Ia) R=Cl、R=R=CH
(Ib) R=CF、NR=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル、
(Ic) R=SO(NCH)、NR=4-メチル-1-ピペラジニル、
(Id) R=Cl、NR=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル、
(Ie) R=Cl、NR=4-(2-アセチルオキシエチル)-1-ピペラジニル、
(If) R=Cl、NR=4-(2-デカニルオキシエチル)-1-ピペラジニル〕
で表される、請求項1の組成物。
【請求項3】
チオキサンテンがクロルプロチキセン(Ia)である、請求項1の組成物。
【請求項4】
チオキサンテンがフルペンチキソール(Ib)である、請求項1の組成物。
【請求項5】
チオキサンテンがチオチキセン(Ic)である、請求項1の組成物。
【請求項6】
チオキサンテンがズクロペンチキソール(Id)である、請求項1の組成物。
【請求項7】
チオキサンテンが酢酸ズクロペンチキソールおよびデカン酸ズクロペンチキソールより選択されるズクロペンチキソールエステルである、請求項1の組成物。
【請求項8】
経口投与用である、請求項1の組成物。
【請求項9】
直腸投与用である、請求項1の組成物。
【請求項10】
静脈投与用または筋肉内投与用である、請求項1の組成物。
【請求項11】
当該症状が治療抵抗性統合失調症である、請求項1の組成物。
【請求項12】
当該症状が、クロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、ケチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびアリピプラゾーよりなる群から選択される一つ以上の抗精神病薬による治療に対して抵抗性である、請求項11の組成物。
【請求項13】
当該症状が難治性統合失調症患者の統合失調症である、請求項1の組成物。
【請求項14】
当該症状が未治療の統合失調症患者の統合失調症である、請求項1の組成物。
【請求項15】
当該薬理学的有効量が、5mg/dayから400mg/dayの経口ズクロペンチキソールに相当する、請求項1の組成物。
【請求項16】
当該薬理学的有効量が、20mg/dayから150mg/dayの経口ズクロペンチキソールに相当する、請求項15の組成物。
【請求項17】
ズクロペンチキソールまたはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは混合物を含み、5mg/dayから400mg/dayのズクロペンチキソール相当量を投与して、未治療の統合失調症、治療抵抗性統合失調症、難治性統合失調症、治療抵抗性うつ病、慢性うつ病、再発性うつ病、および抵抗性躁うつ病から選択される症状を治療するための医薬組成物。
【請求項18】
ズクロペンチキソール相当量が20mg/dayから150mg/dayである、請求項17の方法。

【公開番号】特開2008−143899(P2008−143899A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314686(P2007−314686)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(507399771)
【氏名又は名称原語表記】Copharm
【Fターム(参考)】