説明

抵抗素子内蔵配線板

【課題】配線層と同じ材料からなる下層電極と、配線層とは異なる金属にて形成された上層電極からなる抵抗電極の上層電極端部の線幅細り及び断線不良を無くし、かつ抵抗電極と抵抗体との接続信頼性に優れた抵抗素子内蔵配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】抵抗素子内蔵配線板100は、絶縁層11上に配線層21と、配線層21と同じ材料からなる下層電極21aと、配線層21とは異なる金属にて形成された上層電極31とで構成された抵抗電極30aと、抵抗電極30a間に抵抗体41とが形成されたもので、前記抵抗体が形成される側と反対側の上層電極31の端部幅が100μm以上確保されており、上層電極31の端部の線幅細り、断線不良を起き難くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される配線回路基板に関し、詳しくは、抵抗素子を備えた抵抗素子内蔵配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高密度実装化とともに、用いられる配線板の小面積化が進んでいる。従来、配線板表面に実装されていた抵抗素子やコンデンサ素子など受動素子は、配線板の小面積化によって、その実装面積を確保することが困難になり、配線板小型化の障壁となっている。これを打破するための技術としては、配線板内部に設置する受動素子内蔵配線板が期待されている。なかでも抵抗素子は、印刷抵抗体として、配線板の内層に形成する方法が開発されつつある。
【0003】
積層プレス方式(ラミネ−ト方式)により配線層を多層化し、内層配線層に印刷抵抗体を設けて多層配線板を形成する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
配線板は、導体回路からなる配線層と、絶縁層とを積層し、絶縁層を貫通する導体層を介して導通された配線回路を形成したものである。複数の導体層による層構成の場合は、多層配線板であり、導体回路パターンおよび抵抗素子、キャパシタ等受動素子をそれぞれ有する配線層を層構成に用いて受動素子内蔵配線板としている。
【0004】
従来の抵抗内蔵配線板について図を用いて説明する。
図7(a)は、従来の抵抗内蔵配線板の一例を示す模式平面図を、図7(b)は、図7(a)の抵抗内蔵配線板をA−A’線で切断した模式構成断面図である。
抵抗内蔵配線板300は、ベースとなる絶縁層111上に配線層121と抵抗素子電極121aが形成されており、抵抗素子電極121a間に抵抗体141が形成されたものである。
抵抗素子電極121a上には耐酸化性の金属層131が形成されており、抵抗体141と抵抗素子電極121a間の電気的な接続信頼性を向上させている。
金属層131として、銀めっき層を用いた印刷抵抗プリント配線板が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記抵抗内蔵配線板300の金属層131は、抵抗素子電極121aと抵抗体141との接触抵抗の低下を目的とするために配線層121および抵抗素子電極121aより、耐酸化性の高い、貴な金属である。
このように異種の金属が接している部分は、抵抗体形成後の酸処理もしくは酸化処理において、電池の作用で卑な金属つまり配線層121が積極的に溶出する。配線層の線幅が100ミクロン程度と細い場合、溶出量が導体回路に対し相対的に大きくなり、配線層121の線幅細り不良もしくは断線不良が起きるという問題点がある。
【0006】
図7(a)に示すように、金属層131の領域と配線層121との境界部において、配線層121の線幅が金属層131の領域の幅より同等もしくは小さい場合は、特に溶出量が大きくなる。
【0007】
また、抵抗素子電極121aに施す金属めっきとして配線金属との酸化還元反応を利用した置換型のめっきを用いた場合、めっき領域近傍の配線層121が多く溶出するため、前述と同様の配線層121の線幅細り不良もしくは断線不良が起きるという問題を有している。
【特許文献1】特開昭61−7696号公報
【特許文献2】特開平11−4056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み考案されたものであり、配線層と同じ材料からなる下層電極と、配線層とは異なる金属にて形成された上層電極からなる抵抗電極の上層電極端部の線幅細り及び断線不良を無くし、かつ抵抗電極と抵抗体との接続信頼性に優れた抵抗素子内蔵配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を達成するために、本発明では、絶縁層上に少なくとも配線層と、抵抗電極と、該抵抗電極間に抵抗体とが形成されてなる抵抗素子内蔵配線板であって、
前記抵抗電極は、配線層と同じ材料からなる下層電極と、配線層とは異なる金属にて形成された上層電極とで構成されており、前記抵抗体が形成される側と反対側の前記上層電極の端部は、100μm以上の幅を有していることを特徴とする抵抗素子内蔵配線板としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抵抗電極は下層電極と上層電極とで構成されており、抵抗体は配線層とは異なる金属にて形成された上層電極に接続されているため、抵抗体と抵抗電極の接続信頼性に優れ、かつ上層電極の端部の電極幅が100μm以上確保されているため、線幅細り不良、断線不良の起き難い抵抗素子内蔵配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態につき説明する。
図1(a)は、本発明の抵抗素子内蔵配線板の一実施例を示す模式平面図を、図1(b)は、図1(a)の抵抗素子内蔵配線板をA−A’線で切断した模式構成断面図を、図2(a)は、本発明の抵抗素子内蔵配線板の一実施例を示す模式平面図を、図2(b)は、図2(a)の抵抗素子内蔵配線板をA−A’線で切断した模式構成断面図をそれぞれ示す。
【0012】
抵抗素子内蔵配線板100は、絶縁層11上に配線層21と、配線層21と同じ材料からなる下層電極21aと、配線層21とは異なる金属にて形成された上層電極31とで構成された抵抗電極30aと、抵抗電極30a間に抵抗体41とが形成されたもので、前記抵抗体が形成される側と反対側の上層電極31の端部幅が100μm以上ある場合の事例である。
このことから、上層電極31の端部は下層電極21aの任意の場所に設定してやればよい。
ここで、抵抗電極30aの電極幅が200μm以上あるため、抵抗測定用パッドとしても使用可能である。
【0013】
抵抗素子内蔵配線板200は、絶縁層11上に配線層21と、配線層21と同じ材料からなる下層電極21bと、配線層21とは異なる金属にて形成された上層電極32とで構成された抵抗電極30bと、抵抗電極30b間に抵抗体41とが形成されたもので、下層電極21bと上層電極32との電極幅が配線層の線幅と同じ100μm以下の場合の事例で、上層電極32の端部の幅を100μm以上確保するために、配線層21と下層電極21bとの間に直径200μm以上の円形状の補助電極21cを設けて、上層電極32の端部を補助電極21cの100μm以上の幅を有する領域に形成することにより、上層電極
32の端部の電極幅を100μm以上確保するようにしたものである。
また、補助電極21cの電極径が200μm以上あるため、絶縁層を介して他の配線層と電気的接続を行うための層間接続用ランドとしても使用可能である。
【0014】
以下、抵抗素子内蔵配線板100及び抵抗素子内蔵配線板200の作製方法について説明する。
図3(a)及び(b)は、絶縁層11上に配線層21と同じ材料からなる下層電極21aが形成された配線基板51aを、図4(a)及び(b)は、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21aと配線層とは異なる金属にて形成された上層電極31とからなる抵抗電極30aとが形成された配線基板51bを、図5(a)及び(b)は、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21bと、補助電極21cとが形成された配線基板52aを、図6(a)及び(b)は、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21bと補助電極21cの一部に配線層とは異なる金属にて形成された上層電極32とからなる抵抗電極30bとが形成された配線基板52bをそれぞれ示す。
【0015】
抵抗素子内蔵配線板100の作製法について説明する。
まず、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法にてパターニング処理して、ガラスエポキシ等からなる絶縁層11上に配線層21及び一辺が200μm以上の四角形状の下層電極21aを形成し、絶縁層11上に配線層21と下層電極21aとが形成された配線基板51a作製する(図3(a)及び(b)参照)。
【0016】
次に、下層電極21a上に配線層21とは異なる金属をめっきして、上層電極31を形成し、下層電極21aと上層電極31とからなる抵抗電極30aが形成された配線基板51bを作製する(図4(a)及び(b)参照)。
ここで、上層電極31は0.1μm以上の銀めっき層で、置換型無電解めっきにて形成するのが望ましい。
【0017】
次に、配線基板51bの抵抗電極30a間に公知のスクリーン印刷法、インクジェット法にて抵抗ペーストを塗布後、乾燥及び焼成して抵抗体41を形成し、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21aと上層電極31とからなる抵抗電極30aと、抵抗体41とが形成された抵抗素子内蔵配線板100を得る(図1(a)及び(b)参照)。
さらに必要に応じて、上記の工程を繰り返すことにより多層の抵抗素子内蔵配線板を得ることができる。
【0018】
抵抗素子内蔵配線板100の抵抗電極30aは下層電極21aと上層電極31とで構成されており、抵抗体41は配線層21とは異なる金属にて形成された上層電極31にて接続されているため、抵抗体41と抵抗電極の30aとの接続信頼性に優れ、かつ上層電極の端部の幅が100μm以上確保されているため、線幅細り不良、断線不良の起き難い抵抗素子内蔵配線板を提供することができる。
また、抵抗電極30aの電極幅が200μm以上あるため、抵抗測定用パッドとしても使用可能である。
【0019】
抵抗素子内蔵配線板200の作製法について説明する。
これは配線層21及び下層電極21bの電極幅が100μm以下の事例である。
まず、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法にてパターニング処理して、ガラスエポキシ等からなる絶縁層11上に配線層21、下層電極21b及び200μm以上の円形状の補助電極21cを形成し、絶縁層11上に配線層21と下層電極21bと補助電極21cが形成された配線基板52a作製する(図5(a)及び(b)参照)。
【0020】
次に、下層電極21bと100μm以上の幅が確保できる領域の補助電極21c上に配
線層21とは異なる金属をめっきして、上層電極32を形成し、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21bと補助電極21cの一部に上層電極32が形成された抵抗電極30bと、補助電極21cとが形成された配線基板52bを作製する(図6(a)及び(b)参照)。
ここで、上層電極32は0.1μm以上の銀めっき層で、置換型無電解めっきにて形成するのが望ましい。
【0021】
次に、配線基板52bの抵抗電極30b間に公知のスクリーン印刷法、インクジェット法にて抵抗ペーストを塗布後、乾燥及び焼成して抵抗体41を形成し、絶縁層11上に配線層21と、下層電極21bと補助電極21cの一部に上層電極32が形成された抵抗電極30bと、抵抗体41とが形成された抵抗素子内蔵配線板200を得る(図2(a)及び(b)参照)。
さらに必要に応じて、上記の工程を繰り返すことにより多層の抵抗素子内蔵配線板を得ることができる。
【0022】
抵抗素子内蔵配線板200の抵抗電極30bは、下層電極21aと補助電極21cの一部に上層電極32が形成された上層電極32とで構成されており、抵抗体41は配線層とは異なる金属にて形成された上層電極32にて接続されているため、抵抗体41と抵抗電極30bとの接続信頼性に優れ、かつ上層電極の端部の電極幅が100μm以上確保されているため、線幅細り不良、断線不良の起き難い抵抗素子内蔵配線板200を提供することができる。
また、補助電極21cは絶縁層を介して他の配線層と電気的接続を行うための層間接続用ランドとしての機能も有しており、多層の抵抗素子内蔵配線板を作製する際の層間接続用ランドとして使用できる。
【0023】
上記抵抗素子内蔵配線板100及び抵抗素子内蔵配線板200は、絶縁層上に配線層と、抵抗電極と、抵抗体とを配置した事例について説明したが、これはあくまでも一例であって、多層化した抵抗素子内蔵配線板も作製可能で、抵抗素子内蔵配線板としては、特に層数に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の抵抗素子内蔵配線板の一実施例を示す模式平断面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した抵抗素子内蔵配線板の模式構成断面図である。
【図2】(a)は、本発明の抵抗素子内蔵配線板の他の実施例を示す模式平断面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した抵抗素子内蔵配線板の模式構成断面図である。
【図3】(a)は、絶縁層上に配線層と下層電極とが形成された配線基板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した配線基板の模式構成断面図である。
【図4】(a)は、絶縁層上に配線層と、下層電極と上層電極とからなる抵抗電極とが形成された配線基板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した配線基板の模式構成断面図である。
【図5】(a)は、絶縁層上に配線層と下層電極と補助電極とが形成された配線基板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した配線基板の模式構成断面図である。
【図6】(a)は、絶縁層上に配線層と、下層電極と補助電極の一部に形成された上層電極とからなる抵抗電極と、補助電極とが形成された配線基板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した配線基板の模式構成断面図である。
【図7】(a)は、従来の抵抗内蔵配線板の一例を示す模式平面図である。(b)は、(a)をA−A’線で切断した抵抗内蔵配線板の模式構成断面図である。
【符号の説明】
【0025】
11、111……絶縁層
21、121……配線層
21a、21b……下層電極
21c……補助電極
31、32……上層電極
30a、30b……抵抗電極
41、141……抵抗体
51a、51b、52a、52b……配線基板
100、200……抵抗素子内蔵配線板
121a……抵抗素子電極
131……金属層
300……抵抗内蔵配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に少なくとも配線層と、抵抗電極と、該抵抗電極間に抵抗体とが形成されてなる抵抗素子内蔵配線板であって、
前記抵抗電極は、配線層と同じ材料からなる下層電極と、配線層とは異なる金属にて形成された上層電極とで構成されており、前記抵抗体が形成される側と反対側の前記上層電極の端部は、100μm以上の幅を有していることを特徴とする抵抗素子内蔵配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−299847(P2007−299847A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125173(P2006−125173)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】