説明

抵抗膜式タッチパネルの検査・評価装置

【課題】抵抗膜式タッチパネルの応答特性試験を極めて短時間で検査・評価しうる装置を提供する。
【解決手段】(a)検査支持基盤上に、多数の触圧棒が一列に直線状に配置された触圧棒配列かつ、この触圧棒配列が多段に配置された触圧棒多段配列を有し、(b)各触圧棒は、触圧棒多段配列の上部に設置された、プレート板の孔を通して、検査面に下方から上方に向けて突出すように支持基盤上に設置され、(c)被検査試料の検査面が下方に向けて、触圧棒と対向するように配置しうる試料配置手段を有し、(d)各触圧棒は、所定の間隔で打点するようにした制御手段および(e)各触圧棒の接触位置と検査結果とを判定する判断手段を有する抵抗膜式タッチパネルの高速検査・評価装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜式タッチパネルの検査・評価装置に関する。さらに詳しくは、抵抗膜式タッチパネルの特性を、極めて高速でつまり短時間で検査し評価するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗膜式タッチパネル(以下、単に“タッチパネル”と略称することがある。)は、構造が簡単でかつ安価であり、指入力が可能であるため、その生産量が年々増大している。その生産量の拡大に伴い、その品質を確保するための検査方法および手段の改良にせまられている。
タッチパネルの検査・評価の1つとして、ペン入力に対する応答特性試験がある。具体的な検査方法は、所定の位置をペン(触圧棒)で触圧し、それにより検出された電気的位置信号をコンピューターに入力して、算出によりリニアリティーなどを調べることである。
【0003】
タッチパネルの応答特性試験を効率よく、しかも確実に実施するためには、タッチ面の全体に亘って検査すること、触圧棒の往復運動を高速で行うこと、被検査試料の設置と検査を素早く行うことおよび検査機自体が安定して長時間作動することなどが必要となる。
タッチパネルを高速で検査・評価するための装置として特許文献1が提案されている。この装置は、往復運動するシリンダ部材と一体に連動し、被検査試料の平面を所定の間隔で打点する触圧棒と、その触圧ペンが二次元的にマトリックス状に複数個配列されている評価装置である。この評価装置は、被検査試料が固定支持台上に固定され、シリンダ部材を駆動させながら、触圧ペンで試料表面を打点させる方式であり、可成の高速で試験をすることが可能である。
この装置は、シリンダ部材の駆動とシリンダ部材と一体化して連動する触圧ペンの駆動の2つの駆動部分を有し、評価すべき全面を検査するためには、一定の時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-310093号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、抵抗膜式タッチパネルの生産拡大に伴い応答特性試験をより高速で行うことができる装置の開発について研究を進めた。また可動部分が少なくかつ故障の少ない検査・評価装置の開発について研究を進めた。
従来の検査装置では、固定支持盤上に被検査試料(タッチパネル)を、検査面を上にして固定し、その検査面上に触圧棒を移動させながら、検査位置を制御していた。この従来の方式とは異なり、固定支持盤上に複数の触圧棒を上方に向けて一定の配列状態で配置すると共に、この配列された触圧棒群の上に、被検査試料の検査面が対向し接触するように配置した装置は、可動部分が各触圧棒の上下運動のみであり、故障が少なく極めて短時間で検査・評価を実施できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる知見に基づいて達成されたものであり、本発明によれば下記(1)〜(8)のタッチパネルの高速検査・評価装置が提供される。
(1)
(a)検査支持基盤上に、多数の触圧棒が一列に直線状に配置された触圧棒配列かつ、この触圧棒配列が多段に配置された触圧棒多段配列を有し、
(b)各触圧棒は、触圧棒多段配列の上部に設置された、プレート板の孔を通して、検査面に下方から上方に向けて突出すように支持基盤上に設置され、
(c)被検査試料の検査面が下方に向けて、触圧棒と対向するように配置しうる試料配置手段を有し、
(d)各触圧棒は、所定の間隔で打点するようにした制御手段および
(e)各触圧棒の接触位置と検査結果とを判定する判断手段
を有する抵抗膜式タッチパネルの高速検査・評価装置。
【0007】
(2)
前記触圧棒多段配列は、被検査試料の検査面の全面を覆っている前記(1)記載の検査・評価装置。
(3)
前記触圧棒配列は、各触圧棒が一定の等間隔で配置されている前記(1)記載の検査・評価装置。
(4)
前記触圧棒多段配列は、各触圧棒配列が一定の等間隔で配置されている前記(1)記載の検査・評価装置。
(5)
各触圧棒は、各触圧棒配列において、一端から他端へ順次突出すように制御されている前記(1)記載の検査・評価装置。
(6)
各触圧棒配列において、触圧棒はソレノイド方式により上下に作動する前記(1)記載の検査・評価装置。
(7)
各触圧棒配列において、触圧棒はピエゾ方式により上下に作動する前記(1)記載の検査・評価装置。
(8)
各触圧棒配列において、各触圧棒は、3〜15mmの間隔で配置されている前記(1)記載の検査・評価装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の検査・評価装置は、固定支持盤上に多数の触圧棒が配置された触圧棒多段配列が設置され、その上に被検査試料(タッチパネル)が検査面を下方に向けて配置される構造であり、作動部分は事実上各触圧棒の上下往復運動の部分のみである。本発明の装置では、前記触圧棒多段配列の上に被検査試料が配置されると、コンピューターにより制御された順序に従って触圧棒が所定の間隔で検査面を触圧する。前記触圧棒多段配列は、検査面のほぼ全体を覆うことが望ましく、そうすることによって触圧棒やその配列を検査面に沿って移動する必要はない。例えば被検査試料の応答特性試験の場合、10秒以下の短い時間で検査をすることが可能である。しかも可動部分が触圧棒の上下運動のみであるから、故障が少なく消費電力は僅かである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】支持基盤1およびその上部に固定して配置された触圧棒多段配列の上部に設置されたプレート板2を模式的に示した平面図である。
【図2】触圧棒配列の部分断面拡大図を示す。
【図3】被検査試料を配置した状態における断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抵抗膜式タッチパネルの検査・評価装置を図面により説明する。図1は支持基盤1に固定して配置された触圧棒多段配列の上部に設置されたプレート板2を模式的に示した平面図である。本発明の検査・評価装置は、支持基盤1上に触圧棒多段配列が固定され、この触圧棒多段配列は、触圧棒配列が多段で配列されている。
本発明において、触圧棒多段配列とは、多数の触圧棒が一列に直線状に配列された触圧棒配列が、多段で重ねられた状態で配列されたものを言う。触圧棒多段配列は、図1ではプレート板2と支持基盤1との間に配置されており、そのため図面上は示されていない。プレート板2の多数の孔3に対応して触圧棒が配置されている。図1では、説明を簡単にするために、支持基盤1、プレート板2およびプレート板2に設けられた孔の平面図が示されている。図1のプレート板2の多数の孔3の配置の状態から理解されるように、図1の場合、10個の触圧棒が一列(左右横方向)に直線状に配置された触圧棒配列が6段(上下縦方向)で配置されていることを示している。
【0011】
触圧棒多段配列の上面にプレート板2が設けられ、そのプレート板2に開けられた孔3を介して触圧棒の先端部が突出されているようになっている。つまり、プレート板2には触圧棒多段配列に存在する触圧棒の数と同じ数の孔が開けられている(図1では6×10の60個である)。
次にプレート板2について説明する。プレート板2の上面には、被検査試料(タッチパネル)の検査面が密着した状態で設置される。プレート板2のそれぞれの孔3から触圧棒が突出し検査面を押圧する。そのためプレート板2の孔3は、触圧棒が貫通することができるに充分な孔径を有しており、通常は、径が0.7mm〜1.5mm好ましくは0.8mm〜1.2mmが適当である。
因みに、触圧棒の直径は、一般に0.9mm〜1.1mm程度であり、触圧棒の形状は円柱状であって、その最先端(頂部)はフラットでもよく、また半円形乃至ドーム形であってもよい。プレート板2に設けられている孔の位置は、検査面の位置を決める役割を負っている。そのため、プレート板2の孔3の配列位置は、触圧棒多段配列の位置に合致している。プレート板2はタッチパネルのリニアリティーの検査・評価のために、孔3が直線状でかつ等間隔で配置され、また多段配列においても同じ間隔となるように孔が設けられていることが望ましい。最も好ましくは、検査面の全体が覆われるようにかつ縦と横が同じ間隔となるように孔の位置を配列する。隣接する孔の間隔(ピッチ間隔)は3mm〜15mm、好ましくは4mm〜13mmであるのが有利である。このように孔の配列が直線状であり、縦方向および横方向の間隔が一定であるように配列することによって、触圧棒で触圧することにより発生する電気的信号から被検査試料の判別を容易に行うことができる。
【0012】
プレート板2は、平坦で表面が平滑なものが好ましく、プラスチック板または金属板(好ましくはアルミ板)が使用でき、その厚さは1mm〜5mm、好ましくは2mm〜4mmが望ましい。
図2は、触圧棒配列の部分断面拡大図を示す。
図2では、触圧棒配列における隣り合う2つの触圧棒の部分拡大図を示す。
プレート板2の下部には、触圧棒が上下運動し検査面の表面を押圧できるアクチュエーターが設置されている。触圧棒を上下運動させるアクチュエーターは、例えばソレノイド方式(電磁式)やピエゾ素子方式(圧電素子方式)を採用することができる。図2ではソレノイド方式で、触圧棒5を上下運動する態様が示されている。図2では触圧棒5に対応して、ソレノイド6が横方向に配列した状態が示されている。
【0013】
触圧棒5は、検査面へ接触するとき、その接圧が約30g〜250gとなるように設定される。被検査試料(タッチパネル)の検査面とプレート板2の表面とは密着し検査時に移動しないように固定すべきである。被検査試料とプレート板との固定化手段は後で説明する。
1個の触圧棒が検査面に押圧した時の接圧時間は、約0.1秒であれば充分である。従って本発明の装置において、1列が10個の触圧棒配列の場合、1列の検査に要する時間は約1秒である。図1のように6段に配列した場合60個の触圧棒を連続して作動させると約6秒で全面を検査できることになる。仮に100個の触圧棒を設置した場合、約10秒で検査をすることができる。かくして本発明の検査・評価装置は、製品の機能が適格に作動するか否かの判別には極めて短時間で完了することになる。
【0014】
図3は、被検査試料(タッチパネル)を、検査・評価装置に配置した状態における断面図を示す。支持基盤1上に触圧棒多段配列9が固定して載置されている。この触圧棒多段配列9はその上面にプレート板2が固定化されている。図3には、触圧棒多段配列9における触圧棒およびプレート板2における孔は、図面上省略されている。触圧棒は、プレート板2の孔を通して、その先端が被検査試料の検査面へ押圧されるようになっている。プレート板2の上面には、被検査試料がその検査面が密着した状態で重ねられている。
被検査試料8は、支持基盤の端部に設けられた固定台のヒンジ11を介して上下に(矢印方向に)開閉できる試料保持アーム10内に収納されている。図3は、検査・評価装置に、被検査試料8が配置されている状態を示し、被検査試料8は、検査面とプレート板2が密着した状態で水平に設置されている。
【0015】
本発明の検査・評価装置は、図3に示すように、被検査試料が固定して設置されると、機械的に可動する部分は触圧棒の上下運動のみであり、触圧棒多段配列9や被検査試料8は固定されたままである。検査が終了すると試料保持アーム10を矢印方向に開いて被検査試料8を取り出し新しい試料を再び設置すればよい。
図2は、触圧棒配列の部分断面拡大図を示す。図2では隣り合う2つの触圧棒配列とプレート板との位置関係が示されている。図2の触圧棒配列においては触圧棒の上下運動にソレノイド方式(電磁式)を使用した例が示されている。各触圧棒は、それぞれのソレノイドにより電磁的に上下する。触圧棒の上端部はプレート板が配置されそのプレート板の孔を通して触圧棒がプレート板の上面へ突出し、被検査試料の検査面を押圧する構造となっている。前述したように、試料の検査面はプレート板の上面と密接して設置されるが、図2では被検査試料は示されていない。
本発明の検査・評価装置を用いて、被検査試料(タッチパネル)を試験するに当たっては、プレート板2に設けられた孔の位置に対応してX軸およびY軸に基づいて、触圧棒を一端部から他端部へ、また一段目から多段へ連続的に押圧し、得られた電気的位置信号の結果をコンピューターによって算出し、所定の基準値と対比して判別することによって、リニアリティーの適否を評価することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 支持基盤
2 プレート板
3 孔
4 触圧棒配列
5 触圧棒
6 ソレノイド
7 ソレノイド支持体
8 被検査試料
9 触圧棒多段配列
10 試料保持アーム
11 ヒンジ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)検査支持基盤上に、多数の触圧棒が一列に直線状に配置された触圧棒配列かつ、この触圧棒配列が多段に配置された触圧棒多段配列を有し、
(b)各触圧棒は、触圧棒多段配列の上部に設置された、プレート板の孔を通して、検査面に下方から上方に向けて突出すように支持基盤上に設置され、
(c)被検査試料の検査面が下方に向けて、触圧棒と対向するように配置しうる試料配置手段を有し、
(d)各触圧棒は、所定の間隔で打点するようにした制御手段および
(e)各触圧棒の接触位置と検査結果とを判定する判断手段
を有する抵抗膜式タッチパネルの高速検査・評価装置。

【請求項2】
前記触圧棒多段配列は、被検査試料の検査面の全面を覆っている請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項3】
前記触圧棒配列は、各触圧棒が一定の等間隔で配置されている請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項4】
前記触圧棒多段配列は、各触圧棒配列が一定の等間隔で配置されている請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項5】
各触圧棒は、各触圧棒配列において、一端から他端へ順次突出すように制御されている請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項6】
各触圧棒配列において、触圧棒はソレノイド方式により上下に作動する請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項7】
各触圧棒配列において、触圧棒はピエゾ素子方式により上下に作動する請求項1記載の検査・評価装置。

【請求項8】
各触圧棒配列において、各触圧棒は、3〜15mmの間隔で配置されている請求項1記載の検査・評価装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−65502(P2011−65502A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216567(P2009−216567)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(504203354)株式会社タッチパネル研究所 (41)
【Fターム(参考)】