説明

抵抗膜方式タッチパネルを備えた入力装置、および、そのタッチ位置検出方法

【課題】抵抗膜方式タッチパネルに異物の挟み込みが起きた場合でも、ユーザの実際のタッチ位置を求める技術を提供する。
【解決手段】本発明の入力装置は、入力抵抗膜方式のタッチパネルを備える入力装置であって、タッチパネルへのタッチを、タッチ位置とともに検出して、そのタッチが、異物によるものか否かを判定する。タッチが異物によるものと判定した場合、そのタッチ位置を異物位置として記憶する。また、そのタッチが異物によるものと判定した後に、検出したタッチ位置を、先に記憶した異物位置を用いて補正して、ユーザの実際のタッチ位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの電子機器の操作パネルに抵抗膜方式タッチパネルが用いられている。抵抗膜方式タッチパネルは、一般的に、フィルムとガラスの各々対向する面に透明導電物質(例えば、インジウム錫酸化物)の膜(以下では「抵抗膜」という)が形成されている。そして、両抵抗膜は、通常、所定の間隔で離れており、指やペンでタッチ(押下)することで接触し通電する構造となっている。
【0003】
このような抵抗膜方式タッチパネルは、例えば、特許文献1に記載されているように、抵抗膜の両端に直流電圧を印加して抵抗膜上のタッチ位置の電位を検出して、タッチされた座標位置を算出する。
【0004】
【特許文献1】特開平4−364512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抵抗膜方式タッチパネルには、パネル面を支持するためのアッパーカバー(枠)が取り付けられるため、パネル面とアッパーカバー(枠)の間には隙間ができやすい。このため、その隙間にごみ等の異物が挟み込まれることがしばしば起こる。
【0006】
異物の挟み込みが起こると、ユーザがパネル面上(抵抗膜上)の1点を適切にタッチしたとしても、異物の位置とユーザのタッチ位置の2点で同時にタッチされていることになる。従って、従来の抵抗膜方式タッチパネルでは、ユーザの実際のタッチ位置を特定することができない。
【0007】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルに異物の挟み込みが起きた場合でも、ユーザの実際のタッチ位置を求める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願発明の入力装置は、抵抗膜方式のタッチパネルを備える入力装置であって、前記タッチパネルへのタッチを、タッチ位置とともに検出するタッチ位置検出手段と、前記タッチが、異物によるものか否かを判定する異物判定手段と、前記タッチが異物によるものと判定した場合、前記タッチ位置を異物位置として記憶する異物位置記憶手段と、前記タッチが異物によるものと判定した後に、検出したタッチ位置を、前記異物位置を用いて補正して、ユーザの実際のタッチ位置を算出するユーザタッチ位置算出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の入力装置によれば、抵抗膜方式タッチパネルに異物の挟み込みが起きた場合でも、ユーザの実際のタッチ位置を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置100の概略構成図である。図示するように、車載用ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、車速センサ6と、ジャイロセンサ7と、GPS受信装置8と、を備えている。
【0012】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば、各種センサ(6、7)やGPS受信装置8から出力される情報を基にして現在地を検出する。また、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3から読み出す。また、読み出した地図データをグラフィック展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2に表示する。また、記憶装置3に記憶されている地図データを用いて、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、音声入出力装置4やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0013】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、CRTや液晶ディスプレイなどで構成される。
【0014】
音声入出力装置4は、マイクロホンを備え、ユーザが発話した音声を取得し、演算処理部1に送信する。また、演算処理部1で生成したユーザへのメッセージを音声信号に変換し出力する。
【0015】
入力装置5は、ユーザからの指示を受け付けるユニットである。入力装置5は、ディスプレイ2の表示面に貼られた透過性のタッチパネル51と、その他のハードスイッチ(例えば、電源ボタン、スクロールキー、縮尺変更キー、等)で構成される。
【0016】
タッチパネル51は、抵抗膜方式のタッチパネルであり、ユーザによってタッチされたタッチパネル上の位置を演算処理部1に出力する。具体的には、タッチパネル51は、透明導電物質を成膜させたフィルムとガラスが各々対向するように配置させた構成からなる。フィルムとガラスは、スペーサにより所定の間隔で離された状態で保持され、ユーザにタッチパネル上をタッチされると、その押下位置で接触して通電する。このとき、タッチパネル51は、通電した位置に応じて異なる電圧信号を演算処理部1に出力する。
【0017】
以上のような構成からなるタッチパネル51は、ユーザにタッチされたタッチパネル上の位置を示す電圧信号(例えば、X軸方向の位置を示す電圧信号と、Y軸方向の位置を示す電圧信号)を、演算処理部1に出力することができる。ただし、タッチパネル上の2点が同時にタッチされた場合、タッチパネル51は、タッチされた2点の中点の位置を示す電圧信号を、演算処理部1に出力する構成となっている。
【0018】
車速センサ6、ジャイロセンサ7、及び、GPS受信装置8は、車載用ナビゲーション装置100で現在地(自車位置)を検出するために使用される。車速センサ6は、車輪の円周と計測される車輪の回転数の積から距離を測定し、さらに対となる車輪の回転数の差から移動体が曲がった角度を計測する。ジャイロセンサ7は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出するものである。GPS受信装置8は、GPS衛星からの信号を受信し、移動体とGPS衛星間の距離とその距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで、移動体の現在位置、進行速度を測定する。また、GPS受信装置8は、GPS衛星から受信した信号から、現在時刻を特定するデータを抽出することで、現在時刻を取得する。
【0019】
記憶装置3は、CD−ROMやDVD−ROMやHDDやICカードといった記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、ナビゲーション処理に必要な地図データや、タッチパネル51にされたタッチの位置を特定するためのタッチ位置特定データ200等が記憶されている。
【0020】
タッチ位置特定データ200の概略データ構造を図2に示す。タッチ位置特定データ200は、タッチパネル51が出力している電圧信号から、タッチパネル51にされたタッチの位置を特定するためのデータを格納している。タッチ位置特定データ200は、図示するように、タッチパネル51が出力している電圧信号(X軸方向の位置を示す電圧信号と、Y軸方向の位置を示す電圧信号の組み合わせ)ごとのレコード240からなる。各レコード240には、タッチパネル51が出力している出力電圧信号(X座標)210と出力電圧信号(Y座標)220とに、タッチ位置230が対応付けて格納されている。出力電圧信号(X座標)210は、タッチパネル51を構成するフィルム側の抵抗膜から出力されたX軸方向の位置を示す電圧信号を特定するデータである。出力電圧信号(Y座標)220は、タッチパネル51を構成するガラス側の抵抗膜から出力されたY軸方向の位置を示す電圧信号を特定するデータである。タッチ位置230は、タッチパネル51にされたタッチの位置を特定するデータであり、例えば、「位置(**,**)」、「非タッチ状態」といった文字列である。なお、タッチ位置230が「非タッチ状態」とは、タッチパネル51上のどの位置にもタッチがされていない状態を示す。
【0021】
図3は、演算処理部1の機能ブロック図である。図示するように、演算処理部1は、主制御部101と、入力受付部102と、表示処理部103と、タッチ位置検出部104と、異物判定部105と、補正モード切替部106と、タッチ位置補正部107と、を有する。
【0022】
主制御部101は、演算処理部1の各部を統括して制御する処理を行う。
【0023】
入力受付部102は、入力装置5(タッチパネル51)に入力されたユーザからの要求を受け付け、その要求内容を解析する。入力受付部102は、解析結果に応じたデータを主制御部101に通知する。例えば、入力受付部102は、車載用ナビゲーション装置100に電源を供給する要求、電源を切断する要求、等の要求を受け付け、主制御部101に通知する。また、入力受付部102は、車載用ナビゲーション装置100が有する各種機能の設定における入力データを受け付け、主制御部101に通知する。
【0024】
表示処理部103は、ディスプレイ2に、地図等を表示させる。具体的には、表示処理部103は、ディスプレイ2に表示させるための描画コマンドを生成して通知する。なお、表示処理部103は、地図をディスプレイ2に表示させる際には、表示が要求された領域(例えば、車載用ナビゲーション装置100の現在位置付近の領域)にある地図データを記憶装置3から抽出し、指定された縮尺、描画方式で、道路、その他の地図構成物、現在位置、目的地、推奨経路のための矢印といったマークを描画するように地図描画コマンドを生成する。また、表示処理部103は、ディスプレイ2に表示させた地図上に、自車両の現在位置を示すマークや、各種設定画面や、推奨経路、等を表示させる。
【0025】
タッチ位置検出部104は、タッチパネル51上においてタッチされている位置を検出する。具体的には、タッチ位置検出部104は、タッチ位置特定データ200を参照して、タッチパネル51が出力している電圧信号(出力電圧信号(X座標)210及び出力電圧信号(Y座標)220)に対応する、タッチ位置230を特定することにより、タッチ位置を検出する。
【0026】
例えば、タッチパネル51が出力している電圧信号に対応するタッチ位置230が「位置(**,**)」であれば、タッチ位置検出部104は、タッチパネル51はタッチされていると判定して、タッチ位置(**,**)を主制御部101に通知する。一方、タッチパネル51が出力している電圧信号に対応するタッチ位置230が「非タッチ状態」であれば、タッチ位置検出部104は、タッチパネル51はタッチされていないと判定して、その旨を主制御部101に通知する。
【0027】
異物判定部105は、タッチパネル51に対してされているタッチが、ユーザによるタッチか、異物の挟み込みによるタッチか、を判定する。具体的には、異物判定部105は、同一の位置へのタッチ状態の継続時間が所定時間(例えば、2分)を超えたときに、そのタッチを異物の挟み込みによるタッチと判定する。一方、同一の位置へのタッチ状態の継続時間が所定時間以下のとき、そのタッチをユーザによるタッチと判定する。
【0028】
なお、異物判定部105は、タッチ位置検出部104が検出した電圧信号に変化が生じたときから、次に電圧信号が変化するまでの経過時間を求めることにより、タッチ状態の継続時間を求めることができる。また、異物判定部105は、異物によるタッチがされていると判定した場合、そのときタッチ位置検出部104が検出しているタッチ位置を、異物の位置(Xhold,Yhold)としてメモリに記憶しておく。
【0029】
補正モード切替部106は、異物判定部105がタッチパネル51に対してされているタッチが、異物の挟み込みによるタッチであると判定した場合には、検出したタッチ位置を補正して、ユーザの実際のタッチ位置を求める補正モードに切り替える。具体的には、補正モード切替部106は、以降のタッチパネル51に対するユーザのタッチ位置を補正する指示を、後述するタッチ位置補正部107に通知する。また、これとともに、補正モード切替部106は、表示処理部103に補正モード用の画像をディスプレイ2に表示させる。例えば、補正モードでは、ディスプレイ2に表示させるアイコン(ボタンを含む)のサイズを通常モードより大きくしたり、表示させるアイコン同士の間隔を通常モードより長くする。これは、補正モードでは、タッチ位置を求める際にタッチ位置の補正を行うため、実際にされているタッチ位置と求めたタッチ位置とに誤差が生じやすいからである。また、補正モードでは、ユーザに補正モードで動作していることを通知するためのデータ(例えば、「補正モードで動作中!」等の文字列)をディスプレイ2に表示させるようにしてもよい。
【0030】
タッチ位置補正部107は、補正モードにおいて、検出されたタッチ位置を補正して、ユーザの実際のタッチ位置を特定する。具体的な補正方法については、図4を参照して説明する。図示するように、ディスプレイ2にはタッチパネル51を支持するためのアッパーカバー(枠)52が取り付けられている。タッチパネル51とアッパーカバー(枠)52との間には、隙間400が生じるため、その隙間400にゴミ等の異物410が挟み込まれやすい。異物が挟み込まれると、その異物がタッチパネル51を常にタッチしている状態となる場合があり、それ以降、ユーザによるタッチがタッチパネル51にされても、タッチ位置検出部104が検出するタッチ位置(Xsence,Ysence)は、異物の位置(Xhold,Yhold)と実際にタッチされたタッチ位置(Xreal,Yreal)との中点の位置となる。この性質を利用して、タッチ位置補正部107は、タッチ位置検出部104が検出したタッチ位置(Xsence,Ysence)を中心点として、異物判定部105が判定した異物の位置(Xhold,Yhold)の点対称の位置を、実際にユーザにタッチされたタッチ位置(Xreal,Yreal)として特定する。より具体的には、タッチ位置補正部107は、実際にユーザにタッチされたタッチ位置(Xreal,Yreal)を、例えば、以下の計算式(式1、式2)により求める。
【0031】
(式1):Xreal=2・(Xsence−Xhold)+Xhold
(式2):Yreal=2・(Ysence−Yhold)+Yhold
【0032】
以上のような機能を有する演算処理部1は、例えば、図5に示すようなハードウェア構成で実現される。
【0033】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス712で接続した構成としてある。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)701と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)702と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)703と、メモリ間及びメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)704と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ705と、グラフィックイメージデータを蓄積するVRAM(Video Random Access Memory)706と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット707と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器708と、シリアル信号をバス712に同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)709と、パラレル信号をバスに同期させてバス712にのせるPIO(Parallel Input/Output)710と、パルス信号を積分するカウンタ711と、を有する。
【0034】
次に、上記構成からなる車載用ナビゲーション装置100の特徴的な動作について説明する。図6は、車載用ナビゲーション装置100の演算処理部1が行うタッチ位置特定処理を示すフローチャートである。
【0035】
演算処理部1の主制御部101は、車載用ナビゲーション装置100の電源が投入されたときに、タッチ位置特定処理を開始する。電源の投入は、入力装置5に備わる電源ボタン(図示せず)がユーザにより操作されることで行われる。
【0036】
電源投入後、タッチ位置検出部104は、タッチパネル51に対するタッチ状態を検出する(ステップS101)。具体的には、タッチ位置検出部104は、記憶装置3に格納されているタッチ位置特定データ200を参照して、タッチパネル51が出力している電圧信号(出力電圧信号(X座標)210と、出力電圧信号(Y座標)220)に対応するタッチ位置230を特定する。
【0037】
特定した結果、タッチ位置230が「タッチパネル51上をタッチされていない(非タッチ状態)」ことを示す状態であれば(ステップS101;No)、タッチ位置検出部104は、ステップS101の処理を繰り返す。ここで、ステップ101の処理を繰り返す時間間隔は、予め定められている(例えば、数msec)。一方、特定した結果、タッチ位置230が「タッチパネル51上をタッチされている」ことを示す状態であれば(ステップS101;Yes)、タッチ位置検出部104は、タッチ位置(例えば、座標)を主制御部101に通知して、処理をステップS102に移行する。
【0038】
なお、ステップS101において、タッチ位置検出部104が検出したタッチパネル51の出力電圧信号が「タッチパネル51上をタッチされている」ことを示す状態に変化する毎に、異物判定部105は、CPU701内部のカウンタを利用して、そのタッチ状態の継続時間を求める。
【0039】
続いて、主制御部101は、タッチ位置検出部104から通知されたタッチ位置が、異物の位置と一致するか否か判別する(ステップS102)。具体的には、主制御部101は、異物の位置を示す異物検出位置データ300と、タッチ位置検出部104から通知されたタッチ位置とを比較して、両位置が一致或いはほぼ一致する場合に、ステップS101で検出したタッチ位置と異物の位置が一致すると判定する。
【0040】
なお、異物検出位置データ300については後述する。
【0041】
ここで、ステップS101で検出したタッチ位置と、異物の位置が一致すると判定した場合(ステップS102;Yes)、異物の挟み込みによるタッチと異なるタッチがユーザによりなされたわけではないと判定して、主制御部101は、処理をステップS101に戻す。一方、ステップS101で検出したタッチ位置と、異物の位置が一致しないと判定した場合(ステップS102;No)、異物の挟み込みによるタッチと異なるタッチがユーザによりなされたと判定して、主制御部101は、処理をステップS103に移行する。
【0042】
ステップS103において、主制御部101は、その時点における設定が補正モードであるか否かを判別する(ステップS103)。具体的には、主制御部101は、RAM702に格納されている補正モードを識別するデータを参照して、補正モードであるか否かを判別する。
【0043】
ここで、補正モードであると判定した場合、主制御部101は、処理をステップS108に移行する。一方、補正モードではない(通常モードである)と判定した場合、主制御部101は、処理をステップS104に移行する。
【0044】
ステップS104では、異物判定部105は、ステップS101でタッチ位置検出部104がタッチパネル51上をタッチされていると判定したタッチが、ユーザによるタッチか、異物の挟み込みによるタッチか、を判定する(ステップS104)。具体的には、異物判定部105は、タッチパネル51上における同一の位置へのタッチ状態の継続時間が、所定時間(例えば、2分)を超えているか否かを判別する。所定時間を超えている場合(ステップS104;Yes)、異物判定部105は、異物の挟み込みによるタッチと判定して、処理をステップS105に移行する。
【0045】
ステップS105では、異物判定部105は、ステップS101でタッチ位置検出部104が検出したタッチ位置を、異物の位置(Xhold,Yhold)としてRAM702に記憶する(ステップS105)。具体的には、異物判定部105は、異物検出位置データ300をRAM702に作成して、ステップS101でタッチ位置検出部104が検出したタッチ位置を、異物検出位置データ300に格納する。
【0046】
なお、異物検出位置データ300の概略データ構造を図7に示す。異物検出位置データ300には、図示するように、異物の位置を特定するX座標(Xhold)310とY座標(Yhold)320とが対応付けて格納される。
【0047】
続いて、補正モード切替部106は、通常モードから補正モードに切り替える処理を行う(ステップS106)。具体的には、補正モード切替部106は、以降にタッチパネル51にされるユーザのタッチ位置を補正する指示を、タッチ位置補正部107に通知する。これとともに、補正モード切替部106は、表示処理部103に補正モード用の画像をディスプレイ2に表示させる。
【0048】
例えば、通常モードにおいて、表示処理部103は、図8(A)に示すような「行き先の設定」を行うための設定画面をディスプレイ2に表示させているとする。このとき、設定画面に表示させるボタン(お気に入りボタン210、名称からボタン220、施設からボタン230、等)のサイズは通常のサイズA(例えば、10ミリ)とし、表示させるボタン同士の間隔は通常の間隔B(例えば、5ミリ)とする。ステップS106において、補正モードに切り替えられると、表示処理部103は、図8(B)に示すような設定画面をディスプレイ2に表示させる。例えば、設定画面に表示させるボタンのサイズは補正モード用のサイズA’(サイズAより大きいサイズであり、例えば、15ミリ)とし、表示させるボタン同士の間隔を補正モード用の間隔B’(間隔Bより長い間隔であり、例えば、8ミリ)とする。また、補正モードにおいては、表示処理部103は、ユーザに補正モードで動作していることを通知するためのお知らせ欄240を、設定画面に表示させる。
【0049】
補正モードに切り替えられた後、主制御部101は、ステップS101に戻り処理を続行する。
【0050】
一方、ステップS104において、同一の位置へのタッチ状態の継続時間が所定時間以下であると判定された場合(ステップS104;No)、異物判定部105は、ステップS101でタッチ検出部104が検出したタッチが、ユーザによるタッチであると判定して、処理をステップS107に移行する。
【0051】
続いて、タッチ位置検出部104は、ステップS101において検出したタッチパネル51へのタッチ位置を、補正せずにそのまま、ユーザによるタッチ位置(Xreal,Yreal)として特定する(ステップS107)。そして、特定したユーザによるタッチ位置(Xreal,Yreal)を、主制御部101に通知し、処理をステップS109に移行する。
【0052】
一方、ステップS102において補正モードであると判定された場合のステップS108では、タッチ位置補正部107は、ステップS101で検出したタッチ位置を補正して、実際のユーザのタッチ位置を特定する(ステップS108)。具体的には、タッチ位置補正部107は、ステップS101でタッチ位置検出部104が検出したタッチ位置(Xsence,Ysence)を中心点として、異物検出位置データ300に格納されている異物の位置(Xhold,Yhold)の点対称の位置を、実際にユーザにタッチされたタッチ位置(Xreal,Yreal)として特定する。すなわち、ステップS108における処理により、ステップS101でタッチ位置検出部104が検出したタッチ位置(Xsence,Ysence)を、実際にユーザにタッチされたタッチ位置(Xreal,Yreal)に補正することができる。
【0053】
続いて、タッチ位置補正部107は、ステップS108において特定した実際のユーザのタッチ位置(Xreal,Yreal)を、主制御部101に通知する。
【0054】
ステップS107或いはステップS108において、タッチ位置(Xreal,Yreal)が通知された主制御部101は、そのタッチ位置(Xreal,Yreal)へのタッチによるユーザの要求を特定する(ステップS109)。具体的には、予め記憶装置3に格納されているタッチ位置と要求との対応関係を示すデータを参照して、タッチ位置(Xreal,Yreal)に対応するユーザの要求を特定する。そして、主制御部101は、特定された要求に応じて処理を実行する。
【0055】
ユーザの要求を特定後、タッチパネル51による入力受付モードである間、主制御部101は、ステップS101に戻って、処理を続行する。
【0056】
なお、タッチ位置特定処理中に、ディスプレイ2の隙間400に挟み込まれた異物410が除去されたときには、ユーザの指示に基づいて、補正モードを解除して通常モードに戻すことができるようにしてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態の一例について説明した。上記実施形態によれば、本発明の車載用ナビゲーション装置100は、タッチパネル51とアッパーカバー(枠)51の隙間400に、異物の挟み込みが起きた場合においても、その異物の位置を検出しておき、ユーザによって新たに別のタッチがされた実際の位置を特定することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。
【0059】
例えば、本発明は、車載用ナビゲーション装置100への適用に限定されず、抵抗膜方式タッチパネルを備える任意の装置に適用できる。
【0060】
また、本発明の表示処理部103は、異物が挟み込まれた位置をユーザに通知するための画面をディスプレイ2に表示させてもよい。具体的には、表示処理部103は、異物検出位置データ300に格納されている異物の位置(Xhold,Yhold)の方向を指し示す画像を、ディスプレイ2の異物の位置(Xhold,Yhold)付近の予め定めた位置に表示する。この画面をみたユーザは、異物の位置を容易に知ることができ、異物を除去する作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】タッチ位置特定データの構成例を示す図である。
【図3】演算処理部の機能構成を示す図である。
【図4】異物が挟み込まれているときに、ユーザの実際のタッチ位置を算出する方法を説明するための説明図である。
【図5】演算処理部のハードウェア構成を示す図である。
【図6】タッチ位置特定処理のフロー図である。
【図7】異物検出位置データの構成例を示す図である。
【図8】(A)通常モード時の設定画面の画面表示例である。(B)補正モード時の設定画面の画面表示例である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・記憶装置、4・・・音声入出力装置、5・・・入力装置、6・・・車速センサ、7・・・ジャイロセンサ、8・・・GPS受信装置、51・・・タッチパネル、52・・・アッパーカバー(枠)、100・・・車載用ナビゲーション装置、101・・・主制御部、102・・・入力受付部、103・・・表示処理部、104・・・タッチ位置検出部、105・・・異物判定部、106・・・補正モード切替部、107・・・タッチ位置補正部、200・・・タッチ位置特定データ、300・・・異物検出位置データ、400・・・隙間、410・・・異物(ゴミ)、510・・・お気に入りボタン、520・・・名称からボタン、530・・・施設からボタン、701・・・CPU、702・・・RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜方式のタッチパネルを備える入力装置であって、
前記タッチパネルへのタッチを、タッチ位置とともに検出するタッチ位置検出手段と、
前記タッチが、異物によるものか否かを判定する異物判定手段と、
前記タッチが異物によるものと判定した場合、前記タッチ位置を異物位置として記憶する異物位置記憶手段と、
前記異物位置を記憶した場合、その後に前記タッチ検出手段で検出したタッチ位置について、前記異物位置を用いて補正して、ユーザの実際のタッチ位置を算出するユーザタッチ位置算出手段と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記異物判定手段は、
前記タッチ位置検出手段が検出したタッチ位置が、所定の時間以上変動しない場合には、前記タッチが異物によるものと判定し、所定の時間内に変動した場合には、当該タッチがユーザによるものと判定する、
ことを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記ユーザタッチ位置算出手段は、
前記異物位置を記憶した場合、その後に前記タッチ検出手段で検出したタッチ位置を中心点として、前記異物位置の点対称の位置を、ユーザの実際のタッチ位置とする、
ことを特徴とする入力装置。
【請求項4】
抵抗膜方式のタッチパネルを備える入力装置におけるタッチ位置検出方法であって、
前記入力装置は制御部を備え、
前記制御部が、
前記タッチパネルへのタッチを、タッチ位置とともに検出するタッチ位置検出ステップと、
前記タッチが、異物によるものか否かを判定する異物判定ステップと、
前記タッチが異物によるものと判定した場合、前記タッチ位置を異物位置として記憶する異物位置記憶ステップと、
前記異物位置を記憶した場合、その後に前記タッチ検出手段で検出したタッチ位置を、前記異物位置を用いて補正して、ユーザの実際のタッチ位置を算出するユーザタッチ位置算出ステップと、
を行うことを特徴とするタッチ位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−140351(P2009−140351A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317489(P2007−317489)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】