説明

抵抗計

【課題】セットキーを設けることなく、誤操作による最高測定用電圧の出力を回避する。
【解決手段】目盛板21における抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に注意喚起マーク24が表記され、処理部は、電圧選択スイッチ6によって複数の測定用電圧のうちの最高測定用電圧が選択されている状態において測定スイッチ7が操作されたときに、電圧生成部に対して最高測定用電圧を出力させる電圧出力処理の実行に先立ち、メータ部3に対して予め規定された時間だけ注意喚起マーク24を指針22で指し示させる注意喚起処理を実行し、注意喚起処理の終了後に、電圧出力処理、および測定された抵抗値をメータ部3の抵抗目盛23上において指針22で指し示させる抵抗値指示処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指針、および指針で指し示される抵抗目盛が表面に表記された目盛板を有するメータ部を備えた抵抗計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の抵抗計として、下記の非特許文献1に開示された種々の抵抗計(絶縁抵抗計)が知られている。これらの抵抗計のうちの第4頁に記載されている抵抗計(型名:240684)は、アナログ絶縁抵抗計であって、メータ部、ロータリースイッチで構成された電圧選択スイッチ、測定スイッチおよびセットキーがパネル面に配設されている。
【0003】
この抵抗計では、電圧選択スイッチを操作することにより、測定対象体の絶縁抵抗を測定する際に印加する測定用電圧を、複数の測定用電圧(例えば、DC125V,DC250V,DC1000V)のうちから選択可能となっている。この測定用電圧のうちの最も高い測定用電圧(DC1000V。以下、この電圧を「最高測定用電圧」ともいう)は、高耐圧の測定対象体(言い換えれば、絶縁抵抗値の高い測定対象体)に印加されるべき測定用電圧である。このため、誤操作により、低耐圧の測定対象体(絶縁抵抗値の低い測定対象体)に誤って最高測定用電圧を印加したときには、この測定対象体を破損させる虞がある。
【0004】
この抵抗計では、この誤操作を回避すべく、最高測定用電圧については、他の測定用電圧とは異なり、電圧選択スイッチでDC1000Vを選択した状態で測定スイッチを押しただけでは出力されずに、電圧選択スイッチでDC1000Vを選択し、かつセットキーを押して保護機能を解除した後でなければ、測定スイッチを押したとしても電圧が出力されないように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】横河電機株式会社ホームページ/絶縁抵抗計、[平成23年4月15日検索]インターネット<https://www.yokogawa.co.jp/ftp/dist/ks/catalog/ja/BUMY_06.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の絶縁抵抗計には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この絶縁抵抗計では、電圧選択スイッチおよび測定スイッチの他に、セットキーをパネル面に配設する必要がある。したがって、この絶縁抵抗計には、同じ大きさのパネル面(つまり、同じ大きさの筐体)にするためには、セットキーの設置スペース分だけ、他の部品(電圧選択スイッチおよび測定スイッチなど)のための設置スペースが減少することから、この他の部品のうちの少なくとも1つをより小型のものに変更せざるを得ないため、操作性の低下を招く虞があるという解決すべき課題が存在している。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、セットキーを設けることなく、誤操作による最高測定用電圧の出力を回避し得る抵抗計を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の抵抗計は、複数の測定用電圧のうちから測定対象体に印加する測定用電圧を選択するための電圧選択スイッチと、測定スイッチと、前記電圧選択スイッチによって選択されている前記測定用電圧を出力する電圧生成部と、前記測定用電圧、および当該測定用電圧の印加時に前記測定対象体に流れる測定電流に基づいて当該測定対象体の抵抗値を測定する測定部と、抵抗目盛が表記された目盛板、および当該目盛板上で移動させられる指針を有して、前記測定部によって測定された前記抵抗値を前記抵抗目盛上において前記指針で指し示すメータ部と、前記測定スイッチの操作期間中に前記電圧生成部に対して前記測定用電圧を出力させる電圧出力処理、および前記測定部によって測定された前記抵抗値を前記メータ部の前記抵抗目盛上において前記指針で指し示させる抵抗値指示処理を実行する処理部とを備えている抵抗計であって、前記目盛板における前記抵抗目盛の表記領域から外れた位置に注意喚起マークが表記され、前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記複数の測定用電圧のうちの最高測定用電圧が選択されている状態において前記測定スイッチが操作されたときに、前記電圧生成部に対して前記最高測定用電圧を出力させる前記電圧出力処理の実行に先立ち、前記メータ部に対して予め規定された時間だけ前記注意喚起マークを前記指針で指し示させる注意喚起処理を実行し、当該注意喚起処理の終了後に、当該電圧出力処理および前記抵抗値指示処理を実行する。
【0009】
また、請求項2記載の抵抗計は、請求項1記載の抵抗計において、前記注意喚起マークは、前記抵抗目盛における下限端側の前記外れた位置に表記されている。
【0010】
また、請求項3記載の抵抗計は、請求項1または2記載の抵抗計において、前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時、および前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧の次に高い測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時に、共通の前記注意喚起マークを前記指針で指し示させる。
【0011】
また、請求項4記載の抵抗計は、請求項1または2記載の抵抗計において、前記注意喚
起マークは、前記指針の移動方向に沿って並設された第1注意喚起マークと第2注意喚起マークとで構成され、前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時には、前記第1注意喚起マークを前記指針で指し示させ、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧の次に高い測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時には、前記第2注意喚起マークを前記指針で指し示させる。
【0012】
また、請求項5記載の抵抗計は、請求項1から3のいずれかに記載の抵抗計において、前記処理部は、前記注意喚起処理の終了後における前記電圧出力処理についての実行の完了後の予め規定された時間内に、前記電圧選択スイッチに対する操作が行われることなく、前記測定スイッチの操作が再度開始されたときには、前記注意喚起処理を実行することなく、新たな前記電圧出力処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の抵抗計によれば、電圧選択スイッチによって最高測定用電圧が選択されている状態において測定スイッチが操作されたときに、最高測定用電圧の測定対象体への出力に先立ち、指針が抵抗目盛表記の領域から外れた位置に移動することと、この外れた位置に表記されている注意喚起マークを指し示すという一般的な抵抗計では通常採用されていない動作を実行することで、作業者に対して最高測定用電圧を測定用電圧とした抵抗の測定であることを十分に認識させることができることから、セットキーを設けることなく、誤操作による最高測定用電圧の出力を確実に回避することができる。
【0014】
また、請求項2記載の抵抗計によれば、注意喚起処理において、指針が、その初期位置(抵抗目盛の∞を指し示す位置)から最も離れた位置である抵抗目盛における下限端(0Ω)側の外れた位置に表記された注意喚起マークまで長い距離に亘って移動させられるため、作業者に対して一層効果的に注意を喚起することができる。
【0015】
また、請求項3または4記載の抵抗計によれば、最高測定用電圧の測定対象体への出力に先立ち、作業者に対して高電圧の測定用電圧(最高測定用電圧または次に高い測定用電圧)を測定用電圧とした抵抗の測定であることを十分に認識させることができる結果、誤操作による高電圧の測定用電圧の出力を確実に回避することができる。さらに、請求項4記載の抵抗計によれば、異なる高電圧の測定用電圧のいずれが出力されるのかを確実に認識させることができる。
【0016】
また、請求項5記載の抵抗計によれば、測定用電圧として最高測定用電圧が出力されることを作業者が十分に認識しているときのような注意喚起処理の実行が不要な場合には、注意喚起処理を実行することなく、新たな電圧出力処理を開始することができるため、最高測定用電圧を測定用電圧とした測定対象体についての抵抗値の測定を連続して実施する際における作業時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】絶縁抵抗計1の構成図である。
【図2】絶縁抵抗計1における筐体2の構成を説明するための正面図である。
【図3】抵抗目盛23の下限端側の外れた位置に配設された注意喚起マーク24を指針22が指し示しているときのメータ部3の正面図である。
【図4】指針22が測定対象体13の絶縁抵抗を指し示しているときのメータ部3の正面図である。
【図5】絶縁抵抗計1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】抵抗目盛23の上限端側の外れた位置に配設された注意喚起マーク24を指針22が指し示しているときのメータ部3の正面図である。
【図7】抵抗目盛23の下限端側の外れた位置に配設された最高測定用電圧(1000V)用およびその次に高い測定用電圧(500V)用の共通の注意喚起マーク24を指針22が指し示しているときのメータ部3の正面図である。
【図8】抵抗目盛23の下限端側の外れた位置に配設された注意喚起マーク24,25のうちの注意喚起マーク25を指針22が指し示しているときのメータ部3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、抵抗計の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本例では、抵抗計の一例として、絶縁抵抗計1を例に挙げて説明する。
【0019】
最初に、絶縁抵抗計1の構成について、図1,2を参照して説明する。
【0020】
絶縁抵抗計1は、一例として、筐体2、メータ部3、テストリード4(以下、「接地側テストリード4」ともいう)、テストリード5(以下、「電線側テストリード5」ともいう)、電圧選択スイッチ6、測定スイッチ7、電圧生成部8、測定部9、基準電源部10、切換スイッチ11および処理部12を備え、測定対象体13の抵抗値(絶縁抵抗の抵抗値)を測定可能に構成されている。
【0021】
図2に示すように、筐体2は、合成樹脂材料を用いて箱体に形成されている。また、筐体2は、その正面2aがパネル面(操作面)に形成されて、メータ部3、電圧選択スイッチ6および測定スイッチ7が、正面2aに配設されている。
【0022】
この絶縁抵抗計1は小型化が図られているため、同図に示すように、正面2aは、メータ部3、電圧選択スイッチ6、測定スイッチ7、および電圧選択スイッチ6の周辺に表記された測定用電圧の電圧値などを示す文字によって、殆どの領域が占められている。また、筐体2は、その上面(同図中の上側面)に接地側テストリード4および電線側テストリード5が接続されるコネクタ14,15が配設されている。
【0023】
メータ部3は、図2に示すように、1つの目盛板21、1本の指針22および駆動回路(不図示)を備えている。目盛板21の表面には、円弧状の抵抗目盛23が表記されている。なお、このメータ部3は、指針22が不図示の支点を中心として振れ動く構成(回動する構成)を採用しているため、この指針22の移動軌跡に対応させて抵抗目盛23を円弧状に形成しているが、メータ部3として、指針が直線的に移動する構成のメータを採用することもできる。この構成のメータでは、図示はしないが、抵抗目盛は、指針の直線的な移動軌跡に対応させて直線状に表記される。
【0024】
また、メータ部3では、図2に示すように、目盛板21における抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に、注意喚起マーク24が表記されている。この場合、抵抗目盛23の表記領域とは、上記した初期位置(抵抗目盛23の∞を指し示す位置)に位置する状態の指針22(実線で表記されている指針)と、抵抗目盛23の0を指し示す位置に位置する状態の指針22(一点鎖線で表記されている指針)とで挟まれる扇状の領域をいうものとする。
【0025】
本例では、注意喚起マーク24は、図2に示すように、一例として帯状に形成されて、抵抗目盛23の下限端(0Ω)側における抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に表記されている。また、本例では、抵抗目盛23の仮想延長線上(仮想の延長円弧上)に位置するように、注意喚起マーク24を配置しているが、これに限定されるものではない。例えば、同図に示す位置よりも上側(上記した仮想延長線の上側)に配置することもできるし、同図に示す位置よりも下側(上記した仮想延長線の下側)に配置することもできる。また、本例では一例として、目盛板21には、この注意喚起マーク24と共に、その近傍に、後述する最高測定用電圧を示す「1000V」の文字が表記されている。
【0026】
駆動回路は、測定部9から出力される制御信号(一例として制御電流)S1の電流値、または基準電源部10から出力される制御信号(一例として制御電流)S2の電流値に応じた角度だけ指針22を目盛板21の表面上で移動させる(本例では、回動させる)。本例では一例として、駆動回路は、図2において実線で示される指針22の位置を指針22の初期位置(抵抗目盛23の∞を示す位置)として、同図において破線や一点鎖線で示すように、各制御信号S1,S2の電流値に応じた振れ角θだけ指針22を左方向(反時計方向)に移動させると共に、制御信号S1,S2が入力されている間、移動させた位置に維持させる。
【0027】
電圧選択スイッチ6は、一例としてロータリースイッチで構成されて、図2に示すように、筐体2の正面2aにおける電圧選択スイッチ6の周囲に表記された「OFF」および各電圧を示す文字(本例では一例として、「125V」,「250V」および「1000V」の各文字)を指し示すスイッチ位置に設定可能に構成されている。本例では、電圧選択スイッチ6は、「OFF」を指し示すスイッチ位置に設定されたときには、絶縁抵抗計1の各構成要素に対する不図示の電源(例えば、電池)からの作動用電圧の供給を停止させる。一方、電圧選択スイッチ6は、各電圧を示す文字を指し示すスイッチ位置に設定されたときには、電源から各構成要素への作動用電圧の供給を開始させると共に、設定されたスイッチ位置を示す選択信号S3を生成して処理部12に出力する。
【0028】
測定スイッチ7は、一例としてプッシュスイッチで構成されて、測定スイッチ7に対する操作(例えば押下)の開始に合わせて制御信号S4の出力を開始すると共に、操作の停止に合わせて制御信号S4の出力を停止する。この構成により、測定スイッチ7は、操作されているときにのみ、制御信号S4を出力する。
【0029】
電圧生成部8は、一例として、複数の直流電圧(本例では、125V,250V,1000V(本例での最高測定用電圧))のうちの任意の1つの直流電圧を発生させる直流電源で構成されている。また、電圧生成部8は、コネクタ14に接続されて、発生させている直流電圧をコネクタ14を経由して接地側テストリード4に測定用電圧V1として出力する。また、電圧生成部8は、処理部12から出力される制御信号S5により、上記した直流電圧のいずれか1つを選択して測定用電圧V1として出力する出力状態、または測定用電圧V1の出力を停止する停止状態に制御される。また、電圧生成部8は、測定用電圧V1の出力状態のときには、出力している測定用電圧V1の電圧値に比例した電圧値の電圧信号Svを生成して測定部9に出力する。
【0030】
測定部9は、コネクタ15を介して電線側テストリード5に接続されて、測定用電圧V1の印加に起因して、電圧生成部8、コネクタ14、接地側テストリード4、測定対象体13、電線側テストリード5およびコネクタ15を経由して測定部9に至る電流経路に流れる測定電流I1を入力して、その電流値を測定する。また、測定部9は、電圧生成部8から電圧信号Svを入力すると共に、この電圧信号Svに基づいて測定用電圧V1の電圧値を測定する。また、測定部9は、測定した測定電流I1の電流値および測定用電圧V1の電圧値に基づいて、測定対象体13の抵抗値に反比例した電流値の制御信号S1を生成して出力する(つまり、測定対象体13の抵抗値を測定する)。
【0031】
基準電源部10は、一例として定電流源で構成されて、予め規定された電流値の制御信号S2を生成して出力する。この場合、制御信号S2の電流値は、メータ部3の指針22を注意喚起マーク24の位置まで移動させる電流値に規定されている。切換スイッチ11は、測定部9から出力される制御信号S1および基準電源部10から出力される制御信号S2を入力すると共に、処理部12から出力される制御信号S6によって切換状態が制御されて、制御信号S1,S2のうちの制御信号S6によって指定された一方をメータ部3に出力する。
【0032】
処理部12は、一例として、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)で構成されて、電圧選択スイッチ6から出力される選択信号S3および測定スイッチ7から出力される制御信号S4に基づいて、測定スイッチ7の操作期間中に電圧生成部8に対して測定用電圧V1を出力させる電圧出力処理、切換スイッチ11に対する制御を行って測定対象体13の抵抗値をメータ部3の抵抗目盛23上において指針22で指し示させる抵抗値指示処理、および切換スイッチ11に対する制御を行ってメータ部3の注意喚起マーク24を指針22で指し示させる注意喚起処理を含む測定処理50(図5参照)を実行する。
【0033】
次に、絶縁抵抗計1による測定対象体13の両端間の絶縁抵抗についての測定動作について図面を参照して説明する。
【0034】
まず、接地側テストリード4および電線側テストリード5が測定対象体13の各端部に接続され、この接続状態において、電圧選択スイッチ6に対する操作が行われて、電圧選択スイッチ6が「OFF」を指し示すスイッチ位置から各電圧を示す文字を指し示すスイッチ位置のうちの任意の1つのスイッチ位置に設定される。一例として、この測定対象体13は、測定用電圧V1として1000Vを印加して、その絶縁抵抗を測定すべき対象物であるため、電圧選択スイッチ6は、「1000V」の文字を指し示すスイッチ位置に設定される。絶縁抵抗計1では、この電圧選択スイッチ6が「OFF」を指し示すスイッチ位置以外のスイッチ位置に設定されたことにより、電池から絶縁抵抗計1内の各構成要素への作動用電圧の供給が開始される。また、電圧選択スイッチ6は、設定されたスイッチ位置を示す選択信号S3の処理部12への出力を開始する。
【0035】
電圧生成部8は、作動用電圧の供給の停止状態から作動用電圧が開始されることにより、測定用電圧V1の出力を停止する初期状態に移行する。また、測定部9は、作動用電圧の供給が開始されることにより、作動状態に移行して、測定電流I1の電流値および測定用電圧V1の電圧値の測定を開始すると共に、この電流値および電圧値に基づく制御信号S1の生成を開始する(測定対象体13についての絶縁抵抗の測定を開始する)。
【0036】
この場合、絶縁抵抗計1では、電圧生成部8が初期状態にあるため、測定用電圧V1が測定対象体13に印加されず、これにより、測定電流I1も生じていない。このため、測定部9は、測定対象体13の抵抗値が無限大であることを示す電流値(ほぼゼロ)の制御信号S1を生成して出力する。
【0037】
また、基準電源部10は、作動用電圧の供給が開始されることにより、予め規定された電流値の制御信号S2を生成して出力する動作を開始する。また、処理部12は、作動用電圧の供給が開始されることにより、まず、切換スイッチ11に対して制御信号S6を出力して、メータ部3と測定部9とを接続する状態に切換スイッチ11を移行させる処理(抵抗値指示処理)を実行する。
【0038】
これにより、測定部9から切換スイッチ11を介してメータ部3に、電流値がほぼゼロの制御信号S1が出力されるため、メータ部3では、駆動回路がこの制御信号S1に基づいて作動して、図2において実線で表記される初期位置(抵抗目盛23の∞を指し示す位置)に指針22を移動させる。
【0039】
次いで、処理部12は、図5に示す測定処理50を開始する。この測定処理50では、処理部12は、まず、電圧選択スイッチ6から出力されている選択信号S3を入力して記憶する(ステップ51)。次いで、処理部12は、測定スイッチ7からの制御信号S4の出力の有無を検出することにより、測定スイッチ7に対する操作が開始されたか否かを検出する(ステップ52)。
【0040】
この状態において、測定スイッチ7に対する操作が開始されたときには、測定スイッチ7は制御信号S4の処理部12への出力を開始するため、処理部12は、この制御信号S4の出力を検出して、記憶している選択信号S3で示されるスイッチ位置が最高測定用電圧(本例では1000V)を示すスイッチ位置であるか否か(電圧選択スイッチ6が最高測定用電圧に設定されているか否か)を判別する(ステップ53)。
【0041】
上記したように、電圧選択スイッチ6は1000Vに設定されているため、処理部12は、選択信号S3で示されるスイッチ位置が最高測定用電圧(本例では1000V)を示すスイッチ位置であると判別して、予め規定された時間長(例えば数秒(本例では一例として3秒))の注意喚起期間の計測を開始する(ステップ54)と共に、メータ部3の指針22を注意喚起マーク24の位置まで指針22を移動させる注意喚起処理を実行する(ステップ55)。
【0042】
この注意喚起処理では、処理部12は、具体的には、切換スイッチ11に対して制御信号S6を出力することにより、メータ部3と基準電源部10とを接続する状態に移行させる制御を実行する。これにより、基準電源部10から切換スイッチ11を介してメータ部3に、メータ部3の指針22を注意喚起マーク24の位置まで移動させる電流値に規定されている制御信号S2が出力される。このため、メータ部3では、駆動回路がこの制御信号S2に基づいて作動して、図3に示すように、注意喚起マーク24の位置まで指針22を移動させる。
【0043】
つまり、この絶縁抵抗計1では、このように電圧選択スイッチ6が最高測定用電圧(本例では1000V)に設定されている状態において、測定スイッチ7に対する操作が開始されたときに、測定用電圧V1として最高測定用電圧を測定対象体13に出力する前に(最高測定用電圧の測定対象体13への印加に先立ち)、指針22が注意喚起マーク24へ移動させられて、注意喚起マーク24を指し示す。したがって、この絶縁抵抗計1では、注意喚起マーク24が指針22によって指し示されることにより、作業者に対して、最高測定用電圧が測定用電圧V1として測定対象体13に出力される旨の注意が喚起される。また、この絶縁抵抗計1では、注意喚起マーク24と共に1000Vの文字が表記されているため、最高測定用電圧として1000Vが出力されることが示される。
【0044】
また、処理部12は、指針22が注意喚起マーク24を指し示している状態(注意喚起処理の実行状態)において、注意喚起期間の計測開始からの時間が予め規定された時間長に達したか否か(注意喚起期間が終了したか否か)を検出しつつ(ステップ56)、測定スイッチ7に対する操作が停止したか否か(測定スイッチ7からの制御信号S4の出力が停止したか否か)を検出する(ステップ57)。
【0045】
この注意喚起処理の実行状態において、測定スイッチ7に対する操作が停止されたとき(測定スイッチ7から処理部12への制御信号S4の出力が停止したとき)には、処理部12は、電圧生成部8に対して測定用電圧V1の出力を開始させる電圧出力処理を実行することなく(電圧生成部8を出力状態に移行させることなく)、メータ部3と測定部9とを接続する状態に移行させる制御信号S6を切換スイッチ11に対して出力することにより、注意喚起処理を停止させて(ステップ58)、測定処理50を終了させる。
【0046】
切換スイッチ11によってメータ部3と測定部9とが接続され、かつ測定対象体13に測定用電圧V1が印加されていない状態では、上記したように、測定部9から切換スイッチ11を介してメータ部3に、電流値がほぼゼロの制御信号S1が出力される。このため、メータ部3では、指針22が図2において実線で示される初期位置に駆動回路によって移動させられる。つまり、絶縁抵抗計1は初期の状態に移行する。
【0047】
一方、注意喚起処理の実行状態において、測定スイッチ7に対する操作が停止されない状態(測定スイッチ7から処理部12への制御信号S4の出力が継続している状態)で、注意喚起期間の計測開始からの時間が予め規定された時間長に達したとき(注意喚起期間が終了したとき)には、処理部12は、メータ部3と測定部9とを接続する状態に移行させる制御信号S6を切換スイッチ11に対して出力することで、メータ部3に対して抵抗値を表示させる(抵抗値を指針22で指し示させる)抵抗値指示処理を実行する。また、処理部12は、電圧出力処理を実行することにより、最高測定用電圧である1000Vを測定用電圧V1として出力させる制御信号S5を電圧生成部8に対して出力する(ステップ59)。
【0048】
これにより、電圧生成部8が出力状態に移行し、電圧生成部8から測定対象体13に対する測定用電圧V1(1000V)の印加が開始されて、この測定用電圧V1の印加によって測定対象体13に測定電流I1が流れる。また、電圧生成部8から測定部9に対して出力される電圧信号Svの電圧値は、測定用電圧V1の電圧値に比例した電圧値となる。測定部9は、この測定電流I1を入力して、その電流値を測定すると共に、この電圧信号Svを入力して、測定用電圧V1の電圧値を測定する。また、測定部9は、測定した測定電流I1の電流値および測定用電圧V1の電圧値に基づいて、測定対象体13の抵抗値に反比例した電流値の制御信号S1を生成して出力する。
【0049】
また、測定部9から出力されるこの制御信号S1は切換スイッチ11を介してメータ部3に出力される。このため、メータ部3では、図4に示すように、指針22が測定対象体13の抵抗値を示す位置まで駆動回路によって移動させられる。これにより、絶縁抵抗計1では、測定対象体13の抵抗値(絶縁抵抗の抵抗値)についての表示が開始される(抵抗値の測定が開始される)。
【0050】
処理部12は、測定スイッチ7に対する操作が停止したか否か(測定スイッチ7からの制御信号S4の出力が停止したか否か)を検出しつつ(ステップ60)、切換スイッチ11に対する上記の制御信号S6の出力を継続することで、抵抗値指示処理(抵抗値の表示)の実行状態を維持する。
【0051】
この状態において、測定スイッチ7に対する操作が停止されたとき(測定スイッチ7から処理部12への制御信号S4の出力が停止したとき)には、処理部12は、測定用電圧V1の出力を停止させる制御信号S5を電圧生成部8に対して出力して、電圧出力処理を終了させる(ステップ61)。これにより、電圧生成部8による測定対象体13への測定用電圧V1の印加が停止させられる。
【0052】
また、処理部12は、電圧出力処理の終了(測定対象体13への測定用電圧V1の印加の停止)に合わせて、予め規定された時間長(例えば数分(本例では一例として5分))の待ち期間の計測を開始する(ステップ62)。また、処理部12は、待ち期間の計測の開始からの時間がこの予め規定された時間長に達したか否か(待ち期間が終了したか否か)を検出しつつ(ステップ63)、測定スイッチ7からの制御信号S4の出力の有無を検出することにより、測定スイッチ7に対する操作が開始されたか否かを検出する(ステップ64)。また、処理部12は、このステップ64において、電圧選択スイッチ6からの選択信号S3を検出しつつ、電圧選択スイッチ6に対する操作が行われたか否かについても検出する。
【0053】
この状態において、処理部12は、測定スイッチ7に対する操作の開始を検出する前に、待ち期間が終了したことを検出したときには、測定処理50を終了させる。また、処理部12は、電圧選択スイッチ6に対する操作が行われたことを検出したときにも、測定処理50を終了させる。
【0054】
一方、処理部12は、待ち期間の終了前に、ステップ64において測定スイッチ7に対する操作の開始を検出したときには、ステップ59に移行して、抵抗値指示処理および電圧値出力処理を再度実行することにより、メータ部3に対して抵抗値の表示を開始させると共に、電圧生成部8に対して最高測定用電圧である1000Vを測定用電圧V1として出力させる。これにより、最高測定用電圧である1000Vを測定用電圧V1とした状態での測定対象体13についての新たな抵抗値の測定が開始される。
【0055】
この新たな抵抗値の測定の開始に際しては、予め規定された上記の時間長の待ち期間内(直前の抵抗値の測定から比較的短時間内)での測定スイッチ7に対する操作開始に対応したものであることから、作業者は最高測定用電圧である1000Vを測定用電圧V1とした抵抗値の測定であることを十分に認識していると考えられる。このため、絶縁抵抗計1では、再度の注意喚起処理の実行を省略することにより、新たな抵抗値の測定の開始までの時間が短縮されている。
【0056】
これにより、絶縁抵抗計1では、最高測定用電圧である1000Vを測定用電圧V1とした絶縁抵抗の測定を、同じ測定対象体13に対して繰り返し実行したり、また異なる測定対象体13に対して連続して実行したりする場合において、最初の絶縁抵抗の際には、注意喚起処理を実行して、作業者に対して、最高測定用電圧が測定用電圧V1として測定対象体13に出力される旨の注意を喚起すると共に、その後の一連の絶縁抵抗の測定においては、注意喚起処理を省略することで、絶縁抵抗の測定に要する時間が大幅に短縮されている。
【0057】
なお、この絶縁抵抗計1では、電圧選択スイッチ6が、最高測定用電圧以外の測定用電圧(本例では、125Vまたは250V)を指し示すスイッチ位置に設定されている状態で、処理部12が上記の測定処理50を開始したときには、ステップ53において、選択信号S3で示されるスイッチ位置が最高測定用電圧を示すスイッチ位置ではないと判別して、注意喚起期間の計測および注意喚起処理を実行することなく、ステップ59に移行する。
【0058】
この場合、処理部12は、ステップ59において、メータ部3と測定部9とを接続する状態に移行させる制御信号S6を切換スイッチ11に対して出力することで、メータ部3に対して絶縁抵抗表示を開始させる抵抗値指示処理を実行すると共に、電圧選択スイッチ6によって選択された測定用電圧を測定用電圧V1として出力させる制御信号S5を電圧生成部8に対して出力する電圧出力処理を実行する。
【0059】
これにより、絶縁抵抗計1では、電圧生成部8が出力状態に移行して、測定対象体13に対する測定用電圧V1(125Vまたは250V)の印加を開始し、測定部9が、測定した測定電流I1の電流値および測定用電圧V1の電圧値に基づいて、測定対象体13の抵抗値に反比例した電流値の制御信号S1の生成を開始し、メータ部3では、指針22が測定対象体13の抵抗値を示す位置まで駆動回路によって移動させられる。これにより、絶縁抵抗計1では、測定対象体13についての抵抗値の表示(測定)が開始される
【0060】
このように、この絶縁抵抗計1では、目盛板21における抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に注意喚起マーク24が表記され、電圧選択スイッチ6によって複数の測定用電圧(125V,250V,1000V)のうちの最高測定用電圧(1000V)が選択されている状態において測定スイッチ7の操作が開始されたときに、処理部12が、電圧出力処理(電圧生成部8による最高測定用電圧の出力)および抵抗値指示処理(メータ部3での指針22による測定対象体13についての抵抗値の指示)の実行に先立ち、メータ部3に対して予め規定された時間(注意喚起期間)だけ注意喚起マーク24を指針22で指し示させる注意喚起処理を実行し、この注意喚起処理の終了後に電圧出力処理および抵抗値指示処理を実行する。
【0061】
したがって、この絶縁抵抗計1によれば、指針22が抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に移動することと、この外れた位置に表記されている注意喚起マーク24を指し示すという一般的な絶縁抵抗計では通常採用されていない動作を、最高測定用電圧の測定対象体13への出力に先立って実行することで、作業者に対して最高測定用電圧を測定用電圧V1とした絶縁抵抗の測定であることを十分に認識させることができることから、セットキーを設けることなく、誤操作による最高測定用電圧の出力を確実に回避することができる。
【0062】
また、この絶縁抵抗計1では、注意喚起マーク24は、抵抗目盛23における下限端(0Ω)側の外れた位置に表記されている。したがって、この絶縁抵抗計1によれば、注意喚起処理において、指針22が、その初期位置(抵抗目盛23の∞を指し示す位置)から最も離れた位置である抵抗目盛23における下限端(0Ω)側の外れた位置に表記された注意喚起マーク24まで長い距離に亘って移動させられるため、作業者に対して一層効果的に注意を喚起することができる。
【0063】
また、この絶縁抵抗計1では、注意喚起処理の終了後における電圧出力処理についての実行の完了後の待ち期間内に、電圧選択スイッチ6に対する操作が行われることなく、測定スイッチ7の操作が再度開始されたときには、処理部12は、注意喚起処理を実行することなく、新たな電圧出力処理を実行する。この場合、直前の電圧出力処理の完了後における待ち期間内(直前の測定対象体13の抵抗値の測定の完了から比較的短時間内)における測定スイッチ7に対する操作開始は、作業者が測定用電圧V1として最高測定用電圧が出力されることを十分に認識した上での操作開始であると考えられる。
【0064】
したがって、この絶縁抵抗計1によれば、このように測定用電圧V1として最高測定用電圧が出力されることを作業者が十分に認識しているときのような注意喚起処理の実行が不要な場合には、注意喚起処理を実行することなく、新たな電圧出力処理を開始することができるため、最高測定用電圧を測定用電圧V1とした測定対象体13についての抵抗値の測定を連続して実施する際における作業時間を大幅に短縮することができる。
【0065】
なお、最高測定用電圧を測定用電圧V1とした測定対象体13についての抵抗値の測定を連続して実施する際における作業時間が長くなるものの、より安全性を高めるため、測定スイッチ7に対する操作開始が行われる度に、処理部12が常に注意喚起処理を実行する構成を採用することもできる。
【0066】
また、上記の絶縁抵抗計1では、指針22の初期位置から最も離れた位置である抵抗目盛23における下限端側の外れた位置に、注意喚起マーク24を表記するより好ましい構成を採用しているが、この構成に代えて、図6に示すように、抵抗目盛23における上限端(∞)側の外れた位置に注意喚起マーク24を表記する構成を採用することもできる。この構成においては、指針22の初期位置からの移動方向が上記した絶縁抵抗計1と逆になる。このため、基準電源部10から出力する制御信号S2の極性を逆にして、メータ部3に供給するように構成する。
【0067】
この構成を採用した絶縁抵抗計1でも、指針22が抵抗目盛23の表記領域から外れた位置に移動することと、この外れた位置に表記されている注意喚起マーク24を指し示すという一般的な絶縁抵抗計では通常採用されていない動作を、最高測定用電圧の測定対象体13への出力に先立って実行するため、作業者に対して最高測定用電圧を測定用電圧V1とした抵抗値の測定であることを十分に認識させることができる結果、誤操作による最高測定用電圧の出力を確実に回避することができる。
【0068】
また、絶縁抵抗計によっては、最高測定用電圧である1000V以外に、500Vの測定用電圧を測定対象体13に対して出力(印加)し得る構成を採用しているものがある。この場合、500Vは、最高測定用電圧の次に高い測定電圧であり、測定対象体13への印加に際しては、1000Vのときと同様にして十分に注意する必要がある。
【0069】
このため、このような構成の絶縁抵抗計においては、図7に示すように、最高測定用電圧(1000V)用およびその次に高い測定用電圧(500V)用の注意喚起マークを共通の1つの注意喚起マーク24としてメータ部3に表記する構成を採用することもできる。この場合、共通となる注意喚起マーク24には、「1000V」の文字および「500V」の文字を併記することもできる。この構成においては、電圧選択スイッチ6によって最高測定用電圧(1000V)が選択されている状態において、処理部12が注意喚起処理を実行したとき、および次に高い測定用電圧(この例では500V)が選択されている状態において、処理部12が注意喚起処理を実行したときに、注意喚起マーク24が指針22によって指し示される。
【0070】
この構成によれば、1つの注意喚起マーク24をメータ部3に表記させるだけでよいため、抵抗目盛23の表記領域から外れた位置におけるスペースに余裕のないメータ部3を採用する絶縁抵抗計であっても、高電圧の測定用電圧(最高測定用電圧または次に高い測定用電圧)を測定用電圧V1とした絶縁抵抗の測定であることを十分に認識させることができる結果、誤操作による高電圧の測定用電圧の出力を確実に回避することができる。
【0071】
また、最高測定用電圧である1000V以外に、500Vの測定用電圧を測定対象体13に対して出力(印加)し得る構成の絶縁抵抗計においては、上記した図7に示す構成に代えて、図8に示すように、1000V用の注意喚起マーク24(第1注意喚起マーク)と共に500V用の注意喚起マーク25(第2注意喚起マーク)を、抵抗目盛23の表記領域から外れた位置(この例では、一例として、抵抗目盛23の下限端(0Ω)側における抵抗目盛23の表記領域から外れた位置)に指針22の移動方向に沿って並設する(並べて表記する)こともできる。この場合、注意喚起マーク24には「1000V」の文字を併記し、注意喚起マーク25には「500V」の文字を併記することもできる。このような絶縁抵抗計では、電圧選択スイッチ6によって最高測定用電圧(この例では1000V)が選択されている状態において、処理部12が注意喚起処理を実行したときには、注意喚起マーク24が指針22によって指し示され、次に高い測定用電圧(この例では500V)が選択されている状態において、処理部12が注意喚起処理を実行したときには、図8に示すように、注意喚起マーク25が指針22によって指し示される。
【0072】
この構成を採用した絶縁抵抗計では、図示はしないが、基準電源部10は、指針22を注意喚起マーク24の位置まで移動させる電流値の制御信号(第1制御信号)と、指針22を注意喚起マーク25の位置まで移動させる電流値の制御信号(第2制御信号)とを生成し得る構成とし、処理部12が、電圧選択スイッチ6から出力される選択信号S3で示されるスイッチ位置に基づいて、注意喚起処理の際に基準電源部10を制御して、この2つの制御信号のうちの選択信号S3で示されるスイッチ位置に対応する制御信号を出力させる。
【0073】
この構成を採用した絶縁抵抗計によれば、上記した絶縁抵抗計1と同様にして、最高測定用電圧の測定対象体13への出力に先立ち、作業者に対して高電圧の測定用電圧(最高測定用電圧または次に高い測定用電圧)を測定用電圧V1とした絶縁抵抗の測定であることを十分に認識させることができる結果、誤操作による高電圧の測定用電圧の出力を確実に回避することができると共に、異なる高電圧の測定用電圧のいずれが出力されるのかを確実に認識させることができる。
【0074】
また、抵抗計の一例として、絶縁抵抗計1を例に挙げて説明したが、電圧選択スイッチ6で測定用電圧V1を選択すると共に、測定スイッチ7の操作によって、選択された測定用電圧V1を測定対象体13に出力することにより、測定対象体13の抵抗値を測定する抵抗計である限り、絶縁抵抗計1以外の抵抗計に適用してもよいのは勿論である。
【0075】
また、上記の絶縁抵抗計1や抵抗計では、メータ部3に抵抗目盛23のみが表記された抵抗測定専用の構成を採用しているが、接地側テストリード4および電線側テストリード5間に発生する電圧を測定する機能を有する抵抗計に適用することもできる。
【符号の説明】
【0076】
1 絶縁抵抗計
3 メータ部
6 電圧選択スイッチ
7 測定スイッチ
9 測定部
8 電圧生成部
10 基準電源部
21 目盛板
22 指針
23 抵抗目盛
24 注意喚起マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定用電圧のうちから測定対象体に印加する測定用電圧を選択するための電圧選択スイッチと、
測定スイッチと、
前記電圧選択スイッチによって選択されている前記測定用電圧を出力する電圧生成部と、
前記測定用電圧、および当該測定用電圧の印加時に前記測定対象体に流れる測定電流に基づいて当該測定対象体の抵抗値を測定する測定部と、
抵抗目盛が表記された目盛板、および当該目盛板上で移動させられる指針を有して、前記測定部によって測定された前記抵抗値を前記抵抗目盛上において前記指針で指し示すメータ部と、
前記測定スイッチの操作期間中に前記電圧生成部に対して前記測定用電圧を出力させる電圧出力処理、および前記測定部によって測定された前記抵抗値を前記メータ部の前記抵抗目盛上において前記指針で指し示させる抵抗値指示処理を実行する処理部とを備えている抵抗計であって、
前記目盛板における前記抵抗目盛の表記領域から外れた位置に注意喚起マークが表記され、
前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記複数の測定用電圧のうちの最高測定用電圧が選択されている状態において前記測定スイッチが操作されたときに、前記電圧生成部に対して前記最高測定用電圧を出力させる前記電圧出力処理の実行に先立ち、前記メータ部に対して予め規定された時間だけ前記注意喚起マークを前記指針で指し示させる注意喚起処理を実行し、当該注意喚起処理の終了後に、当該電圧出力処理および前記抵抗値指示処理を実行する抵抗計。
【請求項2】
前記注意喚起マークは、前記抵抗目盛における下限端側の前記外れた位置に表記されている請求項1記載の抵抗計。
【請求項3】
前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時、および前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧の次に高い測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時に、共通の前記注意喚起マークを前記指針で指し示させる請求項1または2記載の抵抗計。
【請求項4】
前記注意喚起マークは、前記指針の移動方向に沿って並設された第1注意喚起マークと第2注意喚起マークとで構成され、
前記処理部は、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時には、前記第1注意喚起マークを前記指針で指し示させ、前記電圧選択スイッチによって前記最高測定用電圧の次に高い測定用電圧が選択されている状態での前記注意喚起処理の実行時には、前記第2注意喚起マークを前記指針で指し示させる請求項1または2記載の抵抗計。
【請求項5】
前記処理部は、前記注意喚起処理の終了後における前記電圧出力処理についての実行の完了後の予め規定された時間内に、前記電圧選択スイッチに対する操作が行われることなく、前記測定スイッチの操作が再度開始されたときには、前記注意喚起処理を実行することなく、新たな前記電圧出力処理を実行する請求項1から4のいずれかに記載の抵抗計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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