説明

押し込み型管内検査カメラ装置

【課題】装置全体をコンパクト化して、取り扱いを容易化するとともに、構成の簡素化と動作の安定化並びにローコスト化が図れる押し込み型管内検査カメラ装置を提供する。
【解決手段】環状の巻枠部11aおよび円形の開口部11bを有する有底筒状の本体フレーム11と、映像信号の伝送線路および電源供給線路を内包し、巻枠部11aの内周部に巻装されて、開口部11bから出し入れされる、弾発性を有するハードケーブル12と、巻枠部11aの内周部に巻装されたハードケーブル12を本体フレーム11の開口部11bから巻枠部外部に導出するケーブルフックを構成するケーブルガイド17とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管、下水管、ガス管などの検査に適用して好適な押し込み型管内検査カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管、下水管、ガス管などを検査対象とする管内検査カメラ装置として、弾発性を有するハードケーブルの先端にカメラヘッドを取り付けて、ハードケーブルにより、検査対象管内へカメラヘッドを挿入し、カメラヘッドにより管内を撮影する、ハードケーブルカメラと称される押し込み型管内検査カメラ装置が存在する。
【0003】
この押し込み型管内検査カメラ装置は、剛性をもつ所定長のハードケーブルを、例えば巻装した状態で収納し、検査時に必要とされる量を引き出すことのできるケーブル収納機構と、カメラヘッドで撮影した画像をモニタ画面に表示する表示機構を備えて構成される。
【0004】
上記ケーブル収納機構は、剛性をもつ弾発力の大きいハードケーブルを扱うことから、大径の巻き取りドラムを回転させることによって、ハードケーブルを出し入れさせる構造としている。この構造は、巻き取りドラムを回転自在に支持する巻き取りドラムの回転支持機構と、巻き取りドラムとは独立した表示機構と、ハードケーブルに内包される映像信号および電源の各伝送線路を表示機構の制御回路および電源供給回路に回路接続するためのスリップリングとを備えることから、装置全体の構成が大型化し、回路および構成が煩雑であるとともに、長期使用による回路接続の不安定要因が付纏うという問題があった。
【0005】
上記したケーブル収納機構と表示機構とを備えた管内検査カメラ装置として、従来では、カメラヘッドの構造に特徴をもつハードケーブルカメラシステムが存在する(特許文献1参照)。また、ハードケーブルを巻装した状態で繰り出し可能に収納する技術として、ケーブル取り出し機構に特徴をもつ光ファイバーケーブルの巻枠構造(ドロップ箱)が存在する(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−028722号公報
【特許文献2】特開2008−171003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の押し込み型管内検査カメラ装置においては、ハードケーブルを巻装する回転ドラムを具備する構成であることから、装置全体の構成が大型化し、回路および構成が煩雑であるとともに、スリップリングが介在することによる長期使用に対しての回路接続上の不安定要因が付纏うという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解消し、装置全体をコンパクト化して、取り扱いを容易化するとともに、構成の簡素化と動作の安定化並びにローコスト化が図れる押し込み型管内検査カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状の巻枠部および円形の開口部を有する有底筒状の本体フレームと、映像信号の伝送線路を内包し、前記巻枠部の内周部に巻装されて、前記開口部から出し入れされる、弾発性を有するハードケーブルと、前記ハードケーブルの先端部に取着され、前記伝送線路に回路接続されたカメラヘッドと、前記本体フレームに取り付けられ、前記ハードケーブルの基端部において前記伝送線路に回路接続された表示モニタと、前記巻枠部に設けられ、前記巻枠部の内周部に巻装された前記ハードケーブルを前記開口部から前記巻枠部外部に導出するケーブルガイドとを具備した押し込み型管内検査カメラ装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の押し込み型管内検査カメラ装置によれば、装置全体をコンパクト化して、取り扱いを容易化できるとともに、回路を含む構成の簡素化と動作の安定化並びに製品の低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の構成を示す斜視図、図2は同平面図、図3は同側面図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置1は、環状の巻枠部11aおよび円形の開口部11bを有する有底筒状の本体フレーム11と、映像信号の伝送線路および電源供給線路を内包し、巻枠部11aの内周部に巻装されて、開口部11bから出し入れされる、弾発性を有するハードケーブル12と、このハードケーブル12の先端部に取着され、上記伝送線路に回路接続されたカメラヘッド13と、本体フレーム11に取り付けられ、ハードケーブル12の基端部において上記伝送線路に回路接続された表示モニタ15と、本体フレーム11の巻枠部11aに設けられ、巻枠部11aの内周部に巻装されたハードケーブル12を本体フレーム11の開口部11bから巻枠部外部に導出するケーブルガイド(ケーブルフック)17とを具備して構成される。
【0012】
上記図1に示した押し込み型管内検査カメラ装置1は、図2に示すように、本体フレーム11の内底面11cの巻枠部11aで囲われた中央部分(巻枠部11aの中央部)に形成された空きスペース11sに、表示モニタ15が固定して設けられている。この表示モニタ15には、本体フレーム11の巻枠部11aに巻装されたハードケーブル12に内包された映像信号伝送線路および電源伝送線路の各一端側が接栓15eを介してプラグイン接続される。なお、ハードケーブル12に内包された上記各伝送線路の他端側はカメラヘッド13の接栓にプラグイン接続される。
【0013】
本体フレーム11の環状の巻枠部外周面には、上記表示モニタ15のモニタ画面15aと上下方向を一致させ、上部に可搬用把持部23を取付可能にしている。本体フレーム11の外底面11eには、図2および図3に示すように、上部に2個、下部に1個の固定脚19が設けられている。さらに、本体フレーム11の外底面11eには、押し込み型管内検査カメラ装置1の使用時において、表示モニタ15のモニタ画面15aを斜め後方に傾斜させるスタンド(回動脚)20がヒンジ部21のヒンジ中心を回動支点に、外底面11eと略平行する折り畳み位置と、図3に示す立脚位置との間を回動可能に設けられている。このスタンド(回動脚)20を立脚状態にすることにより、表示モニタ15のモニタ画面15aが設置面(EF)に対し所定の角度で斜め後方に傾斜し、モニタ画面15aの視認を容易にしている。この図3に示す構成例では、表示モニタ15の箱形筐体の一部が、本体フレーム11の外底面11eから露出した状態で本体フレーム11に取り付けられており、外底面11eから露出した筐体の側面に複数の接栓(コネクタ)が設けられている。ここでは、外部電源供給用の接栓15f、および映像信号出力用の接栓15gが設けられている。なお、外部電源供給用の接栓15fには外部電源の出力端が電源ケーブルを介してプラグイン接続され、映像信号出力用の接栓15gには図示しない外部機器(例えば画像記録装置)が伝送ケーブルを介してプラグイン接続される。表示モニタ15は、上記接栓15fに供給された外部電源により充電制御される充電用バッテリーを有し、電池電源による動作を可能にしている。
【0014】
ケーブルガイド17は、本体フレーム11の開口部11bの開口縁に設けられ、巻枠部11aに巻装されたハードケーブル12の導出ガイドとして機能するもので、ハードケーブル12と摺接する湾曲部を有し、本体フレーム11の開口部11bから内方に向かって突出しているとともに、先端部がハードケーブル12の導出方向と交差する方向に向かって突出した、ハードケーブル12のケーブルフックを構成している。
【0015】
このケーブルガイド17は、図4(a)および同図(b)に示すように、所定径の金属棒を折り曲げ加工して形成され、取付部17aと湾曲部(フック形状部)17bを有し、その先端部が、本体フレーム11の底部方向に所定の傾斜角を有して突出している。図4に示すケーブルガイド17は、ハードケーブル12の直径に近いφ6mmの金属棒を折り曲げ加工して形成され、先端部を、開口部11bの開口面に対し、本体フレーム11の底部方向に30°の傾斜角を有して突出させた構成例を示している。なお、ここでは、ケーブルガイド17の取付部17aに止めねじが貫通する取付孔を設け、取付部17aを巻枠部11aの開口端部に止めねじで締め付け固定することによって、ケーブルガイド17を本体フレーム11の開口部11bの開口縁に取り付けており、ケーブルガイド17の取り外しを可能にしている。このケーブルガイドの他の構成例については図面を参照して後述する。
【0016】
この本体フレーム11の開口部11bの開口縁に設けられたケーブルガイド17は、巻枠部11aの内周部に巻装されたハードケーブル12を開口部11bから巻枠部外部に導出する導出時(引き出し時)に、図5に示すように、開口部11bから引き出されるハードケーブル12に係合し、このケーブルフックの係合作用により、後続するハードケーブル12の開口部11bからの飛び出しを防止している。具体的には、開口部11bの開口縁において、巻枠部11aに巻装された一周分のハードケーブル12が開口部11bに引き出される度に、開口部11bに引き出されたハードケーブル12が、図4(a)に示すケーブルガイド17の湾曲部(フック形状部)17bに係合して引っ掛かり、この係合によって、巻枠部11aの内周部に巻装されている、後続するハードケーブル12が、当該ケーブルの弾発作用で連続して開口部11bから弾けるように飛び出し、不要に導出されてしまう不具合を防止している。
【0017】
上記構成の押し込み型管内検査カメラ装置1において、同装置の非使用時は、ハードケーブル12がカメラヘッド13を含め巻枠部11aに収納されている。
【0018】
この押し込み型管内検査カメラ装置1を用いて、検査対象管内を検査する際は、本体フレーム11の巻枠部11aに収納されたハードケーブル12の先端に取り付けられたカメラヘッド13をハードケーブル12とともに開口部11bから引き出し、引き出したカメラヘッド13をハードケーブル12を操作しながら検査対象管内に挿入する。ハードケーブル12を操作しながらカメラヘッド13およびハードケーブル12を検査対象管内に押し込み、検査対象管内をカメラヘッド13で撮影する。カメラヘッド13で撮影した管内の映像信号はハードケーブル12に内包された伝送線路を介して表示モニタ15に入力され、これによってカメラヘッド13で撮影した管内の映像がモニタ画面15aに表示される。
【0019】
この管内検査時に、ハードケーブル12を必要量、巻枠部11aから引き出し、管内に挿入してゆくが、ケーブルガイド17が設けられていないとき、ケーブル引き出し時において、巻枠部11aに巻回されている、まだ導出を必要としない後続のハードケーブル12が、同ケーブルの弾発力により円形の開口部11bから弾けるように飛び出してくる。この不具合に対して、本体フレーム11の開口部11bの開口縁に上記したケーブルガイド17を設けることにより、ケーブルガイド17の湾曲部(フック形状部)17bがハードケーブル12の開口部11bからの引き出し部分に係合し、この係合により、巻枠部11aの内周部に巻装された、まだ収納状態にある後続のハードケーブル12が、当該ケーブルの弾発作用で開口部11bから飛び出し、不要に導出されてしまう不具合を防止している。すなわち、上記したケーブルガイド17は、巻枠部11aに巻装されたハードケーブル12のケーブルフックを構成し、ハードケーブル12の一時的ストッパの役目を果たすもので、円環状の巻枠部11aを設けた本体フレーム11の1箇所に固定しておくことで、ハードケーブル12を開口部11bから出し入れする際に、1周中に1度、必ずハードケーブル12を引っ掛け、これによって後続するハードケーブル12の飛び出しを防止することができる。また、開口部11bから導出したハードケーブル12を巻枠部11aに収納(巻装)する際、手持ちのハードケーブル12を撓らせることで簡単に引っ掛けを解除できるため、ケーブルの収納作業性を円滑に行うことができる。
【0020】
これにより、巻枠部11aに巻装されたハードケーブル12が開口部11bから飛び出す不具合を防止して、巻枠部11aに巻装されたハードケーブル12を常に必要量だけ開口部11bから導出でき、管内検査作業を円滑かつ安全に実施することができる。
【0021】
検査対象管内の検査が終了した後は、作業者が上記ハードケーブル12をケーブルガイド17から外して、開口部11bから引き出したハードケーブル12を手作業により巻枠部11aの内周面に巻装してゆく。この際、ケーブルガイド17に係合されたハードケーブル12の係合解除は、ハードケーブル12をケーブルガイド17の先端から外すのみでよく、容易に係合状態を解除できる。
【0022】
図6および図7と、図8は、それぞれ、本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置1におけるケーブルガイド機構の他の第1、第2の構成例を示している。
【0023】
図6および図7に示す他の第1のケーブルガイド機構は、ケーブルガイドを、本体フレーム11に回動可能に軸支し、本体フレーム11の底部方向に突出する先端部の傾斜角を調整可能にしたもので、多角軸A1および環状溝A2を有するケーブルガイド17Aと、本体フレーム11に固定して設けられ、環状溝A2に嵌合してケーブルガイド17Aを本体フレーム11に回動可能に軸支する軸支部21と、本体フレーム11に固定して設けられ、多角軸A1に所定の圧接力で面接触して、ケーブルガイド17Aを多段階で回動位置規制する押圧ばね(板ばね)22とを具備して構成される。このケーブルガイド機構は、本体フレーム11の底部方向に突出するケーブルガイド17Aの先端部の傾斜角を、多段階で切替えることができるとともに、開口部11bから導出されたハードケーブル12を巻枠部11aに収納(巻装)する際に、フック部を開口部11bの開口縁から退避させることができる。
【0024】
図8に示す他の第2のケーブルガイド機構は、ケーブルフックを構成するケーブルガイドを、本体フレーム11と一体に形成したもので、開口部11bの開口縁から開口部11bの内方に向け突出した板状部によりフック形状のケーブルガイド17Bを構成している。
【0025】
上記した本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置は、ハードケーブルを巻装する回転ドラム、およびスリップリング機構を不要にした構成であることから、装置全体をコンパクト化して、取り扱いを容易化できる。さらに、有底筒状の本体フレームに、該フレームの外周に沿う環状の内周部を巻枠とする巻枠部を設けた構成であることから、弾発性を有するハードケーブルの収納部をコンパクトに構成でき、かつ、巻枠部の内周部に巻装されたハードケーブルの導出時における後続ケーブルの開口部からの飛び出しを防止するケーブルガイドを開口部の開口縁に備えた構成であることから、巻枠部に巻装されたハードケーブルを常に必要量だけ開口部から導出でき、管内検査作業を円滑かつ安全に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の構成を示す斜視図。
【図2】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の構成を示す平面図。
【図3】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の構成を示す側面図。
【図4】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置のケーブルガイド構造を示す図。
【図5】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置のケーブルガイド構造を示す図。
【図6】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の他の第1のケーブルガイド構造を示す平面図。
【図7】上記図5に示すケーブルガイド構造を示す側面図。
【図8】上記実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の他の第2のケーブルガイド構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1…押し込み型管内検査カメラ装置、11…本体フレーム、11a…巻枠部、11b…開口部、11c…内底面、11e…外底面、12…ハードケーブル、13…カメラヘッド、15…表示モニタ、17,17A,17B…ケーブルガイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の巻枠部および円形の開口部を有する有底筒状の本体フレームと、
映像信号の伝送線路を内包し、前記巻枠部の内周部に巻装されて、前記開口部から出し入れされる、弾発性を有するハードケーブルと、
前記ハードケーブルの先端部に取着され、前記伝送線路に回路接続されたカメラヘッドと、
前記本体フレームに取り付けられ、前記伝送線路に回路接続された表示モニタと、
前記巻枠部に設けられ、前記巻枠部の内周部に巻装された前記ハードケーブルを前記開口部から前記巻枠部外部に導出するケーブルガイドと、
を具備したことを特徴とする押し込み型管内検査カメラ装置。
【請求項2】
前記ケーブルガイドは、前記開口部の開口縁に設けられ、前記ハードケーブルと摺接する湾曲部を有するフック形状であることを特徴とする請求項1に記載の押し込み型管内検査カメラ装置。
【請求項3】
前記ケーブルガイドは、前記本体フレームの前記開口部から内方に向かって突出しているとともに、その先端部が前記ハードケーブルの導出方向と交差する方向に向かって突出していることを特徴とする請求項2に記載の押し込み型管内検査カメラ装置。
【請求項4】
前記ケーブルガイドは、前記先端部が、前記本体フレームの底部方向に所定の傾斜角を有して突出し、前記巻枠部の内周部に巻装された前記ハードケーブルを前記開口部から前記巻枠部外部に導出する導出時に、前記ハードケーブルに係合して、前記巻枠部の内周部に巻装された前記ハードケーブルの前記開口部からの飛び出しを防止していることを特徴とする請求項3に記載の押し込み型管内検査カメラ装置。
【請求項5】
前記ケーブルガイドは、前記先端部の前記傾斜角を調整可能に、前記本体フレームに軸支されていることを特徴とする請求項4に記載の押し込み型管内検査カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−96719(P2010−96719A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269977(P2008−269977)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】