説明

押出成形装置

【課題】セメント系成形材料を押出すと共に押し出された成形物の表面をロール型と接触させることで表面成形を行うにあたり、ロール型の周面の表面形状にかかわらずこのロール型の表面全体に高い離型性を付与する。
【解決手段】離型油5が貯留される貯留部6と、前記貯留部6に離型油5を供給する供給手段とを具備する。ロール型4として、その周面4aが貯留部6に貯留されている離型油5と接触してから成形物3の表面と接触するように回転するものを設ける。ロール型4の周面4aは貯留部6に貯留されている離型油5と接触することにより、その周面4aの表面形状にかかわらずその全面に亘り離型油5が十分に塗布され、その状態で成形物3と接触して表面成形を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料を押出すと共に押し出された成形物の表面をロール型と接触させることで表面成形を行う押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形体は、住宅等の外装材などといった建材等として広く用いられており、表面に柄、目地等の凹凸模様や塗装が施された多種多様の意匠を有するものが提供されている。これらのセメント系成形体は、通常、セメントや無機フィラーを主成分とする原料スラリーを押出して形成される成形物に、ロール型により柄、目地等の凹凸模様を付与した後、養生、乾燥して得られる。
【0003】
このような押出成形によるセメント系成形体の製造においては、成形物のロール型からの離型性を上げるために、従来、ロール型の周面にフッ素樹脂等のコーティング層が施されているが、それでも離型性は十分とはいえず、更に離型性を向上させるために、ロール型の周面に離型油を滴下するなどして塗布することが行われている。
【0004】
例えば図2に示す例では、セメント系成形材料2を供給装置16の供給流路17から押出部7の流動路8へ流入させた後、押出口9から押し出し、板状等の成形物3に押出成形して、搬送ロール18にて次工程へ搬送するものであり、図示の例では押出部7内の流動路8においてセメント系成形材料2は二つの分岐路8a,8bに分岐して流入した後に合流して押出口9から押し出される際に、セメント系成形材料2が複数の櫛状のピン10を通過することから、成形物3内には幅方向に並ぶ複数の中空部15が形成されるようになっている。このときロール型4が回転しながら成形物3の表面に接触して押圧することから、このロール型4の周面4aの凹凸模様等が転写されるようになっており、また、このロール型4の周面4aには供給ノズル14から離型油5が滴下されるようになっていることから、ロール型4の周面4aと成形物3の表面との離型性を高めている。
【0005】
また、このような離型油5は、フッ素樹脂等のコーティング層と均一に馴染みにくく、折角塗布しても撥ねられたり流れ落ちたりするという問題があるため、ロール型4の周面4aに施されたコーティング層をサンドブラスト処理し、この周面4aに成形物3への模様付けに影響を及ぼさない程度の微細な凹凸を設けて離型油5との馴染みを良くする方法もとられており、またこのような凹凸の摩耗による成形物3のロール型4の周面4aへの付着を防止するためにロール型4の周面4aにブラシを接触させながら回転させることでこのブラシにてロール型4の周面4aにラインを停止することなく微細な凹凸を連続的に形成することも行われていた。
【特許文献1】特開2002−240018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにしてロール型4の周面4aに離型油5を塗布することで、ロール型4への成形物3の付着が防止されてきたものであるが、一方、近年、外装材等のセメント系成形体として、その表面に深い凹凸模様を設けた高意匠性のものが求められるようになってきている。このような深い凹凸をセメント系成形体に設けるためには、上記ロール型4としてもその周面4aに深い凹凸を有するものを用いることが必要となる。
【0007】
しかし、このような深い凹凸を有するロール型4の周面4aには、成形物3が食い込みやすく、その周面4aに高い離型性を付与する必要があるのに対して、このような深い凹凸面に対しては離型油5を全体に亘って塗布することは難しく、またロール型4の周面4aにおける凹凸の突出した部分には離型油5がのりにくくなり、このためロール型4の周面4aに高い離型性を確保することが困難となる場合が生じてきた。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、セメント系成形材料を押出すと共に押し出された成形物の表面をロール型と接触させることで表面成形を行うにあたり、ロール型の周面の表面形状にかかわらずこのロール型の表面全体に高い離型性を付与することができる押出成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セメント系成形材料2を押出すと共に押し出された成形物3の表面をロール型4と接触させることで表面成形を行う押出成形装置1において、離型油5が貯留される貯留部6と、前記貯留部6に離型油5を供給する供給手段とを具備し、前記ロール型4が、その周面4aが貯留部6に貯留されている離型油5と接触してから成形物3の表面と接触するように回転するものであることを特徴とするものである。このため、ロール型4の周面4aは貯留部6に貯留されている離型油5と接触することにより、その周面4aの表面形状にかかわらずその全面に亘り離型油5が十分に塗布され、その状態で成形物3と接触して表面成形を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール型にはその周面の表面形状にかかわらず、ロール型と成形物との間の良好な離型性を持続的に確保することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
図1に示す押出成形装置1は、セメント系成形材料2を供給する供給装置16の末端に設けられる。前記供給装置16は、セメント系成形材料2の流路である供給流路17を有し、スクリューフィーダ等の駆動機構によりセメント系成形材料2を前記供給流路17を通じて連続的に供給するものである。セメント系成形材料2としては適宜の組成のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練することによって調製されるものであり、セメントとしては普通ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、早強セメントなど任意のものを用いることができる。また骨材としては、シリカ、珪石粉、珪砂、フライアッシュ、スラグ、砕石等を用いることができる。繊維としてはポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、パルプ、カーボン繊維、綿、麻、金属繊維等を用いることができる。さらに着色剤としては鉄黒、カーボンブラック、酸化クロム等を用いることができる。
【0013】
押出成形装置1は供給装置16からのセメント系成形材料2の供給を受け、このセメント系成形材料2を押し出して板状等の所定の形状の成形物3に成形する押出部7と、押出部7から押し出された成形物3の表面に凹凸模様を形成するなどの表面成形を行うロール型4と、貯留部6へ離型油5を供給する離型油供給手段とを備えている。
【0014】
図示の例では、押出部7は中空状のセメント系成形体の作製用に形成されており、内部にセメント系成形材料2が流通する流動路8が設けられており、この流動路8の一端は上記供給装置16の供給流路17と連通し、他端は外部に開口する押出口9として形成されている。また図示の例では流動路8は押出部7内で二つの分岐路8a,8bに分岐した後、この分岐路8a,8bが押出口9付近において合流するように形成されている。また二つの分岐路8a,8bの合流位置においては、成形物3に中空部15を形成するための複数のピン10が横一列に櫛状に配列され、押出口9から突出するように設けられている。
【0015】
ロール型4は、押出部7の押出口9側の上方に配設されており、押出部7からの成形物3の押出方向と直交する方向の略水平な回転軸を中心にして図中の矢印のように上側が上流側、下側が下流側に向かうように回転駆動可能に形成されている。図示の例ではロール型4の最下端部が押出口9よりも下流側において上記ピン10の先端付近に配置されるようになっている。また、押出部7には、押出口9よりも下流側において、押出部7の流動路8より下方部分が下流側に突出した突出部11が設けられており、押出口9から押し出された成形物3はこの突出部11とロール型4の周面4aとの間に挟まれた状態で下流側に押し出されるようになっている。これにより、押出口9から押し出されたセメント系成形材料2の成形物3の表面がロール型4の周面4aに押圧されて表面成形がなされるようになっている。このロール型4は、その周面4aに成形物3の表面成形用の凹凸が設けられる。またこの周面4aにフッ素樹脂等からなるコーティング層を設けたり、サンドブラスト加工等により微細な凹凸を設けたりして成形物3との離型性を更に高めるようにしても良い。
【0016】
また、上記押出部7には、離型油5が貯留される貯留部6が設けられる。図示の例では、押出部7の押出口9側部分の上面に、下流側に向けて斜め下方に向かうように形成された弧状の保持面12が形成されており、この保持面12が、上記ロール型4の周面4aと対向すると共に、上流側斜め上方に向かうほど保持面12とロール型4の周面4aとの間の間隔が大きくなるように形成されている。この保持面12とロール型4の周面4aとの間の空間が貯留部6として形成されており、貯留部6の上流側斜め上方の端部は上方に開口し、また下流側斜め下方の端部はロール型4と成形物3とが接触する接触部まで至っている。この貯留部6の両側部は保持板13にて閉塞されており、貯留部6の両側から離型油5が漏出しないようになっている。
【0017】
離型油供給手段としては、貯留部6の上部開口から離型油5を滴下又は流下等して貯留部6へ離型油5を供給するものが設けられる。図示の例では、貯留部6の上部開口の上方に離型油供給手段の供給ノズル14の開口を設け、この供給ノズル14から離型油5を貯留部6の開口へ滴下するようにしている。このとき離型油5としては特に制限されず、例えば灯油等を主成分とする一般的な離型油5を用いることができる。
【0018】
また、押出部7よりも下流側には、押出成形により得られた成形物3を搬送する搬送ロール18等の搬送手段が設けられている。
【0019】
このような押出成形装置1にてセメント系成形材料2の押出成形により成形物3を得るにあたっては、離型油供給手段にて貯留部6へ離型油5を供給すると共に、上記供給装置16にて押出部7へセメント系成形材料2を供給し、且つロール型4を前記セメント系成形材料2の供給量に応じた回転速度で回転させる。
【0020】
セメント系成形材料2は供給装置16の供給流路17から押出部7の流動路8へ流入した後、押出口9から押し出され、板状等の成形物3に押出成形される。ここで、図示の例では押出部7内の流動路8においてセメント系成形材料2は二つの分岐路8a,8bに分岐して流入した後に合流して押出口9から押し出され、このときセメント系成形材料2が複数のピン10を通過することから、成形物3内には幅方向に並ぶ複数の中空部15が形成される。
【0021】
この成形物3は押出口9から押し出された後、その表面がロール型4の周面4aに押圧されて表面成形が施され、このロール型4の周面4aの凹凸模様等が転写される。
【0022】
次いで、成形物3は搬送ロール18等の搬送手段により次工程へ搬送され、切断処理、養生処理、乾燥処理等が施され、セメント成形体が得られる。
【0023】
上記の押出成形において、ロール型4は成形物3の押出速度と連動する回転速度で回転駆動することで成形物3の表面成形を行うが、ロール型4の回転時にはその周面4aがまず貯留部6に貯留されている離型油5と接触して、この周面4aの全体に亘り離型油5が塗布された状態となる。そして続いてこの周面4aが成形物3の表面と接触することとなり、ロール型4の周面4aと成形物3の表面との間には高い離型性が付与されることとなる。また、貯留部6へは離型油供給手段から随時離型油5を供給することができ、離型油5の消費分を補給することができる。
【0024】
このようにしてセメント系成形材料2の押出成形を行うと、ロール型4の周面4aにはその全面に亘り確実に離型油5が塗布された状態で成形物3の表面と接触して表面成形を行うようにすることができ、このロール型4の周面4aに深い凹凸模様が形成されている場合であっても離型油5が行き渡らなかったり離型油5ののりが悪くなる箇所が生じたりすることなく、良好な離型性を確保することができるものである。従って、ロール型4の周面4aの表面形状にかかわらず、ロール型4と成形物3との間の離型性を持続的に確保することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】従来技術の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 押出成形装置
2 セメント系成形材料
3 成形物
4 ロール型
4a 周面
5 離型油
6 貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系成形材料を押出すと共に押し出された成形物の表面をロール型と接触させることで表面成形を行う押出成形装置において、離型油が貯留される貯留部と、前記貯留部に離型油を供給する供給手段とを具備し、前記ロール型が、その周面が貯留部に貯留されている離型油と接触してから成形物の表面と接触するように回転するものであることを特徴とする押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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