説明

押出機の口金

【課題】成型巻芯の表面に貼着させた未加硫ゴムの巻き始端およびその近傍が膨張しても、その膨張部分が、口金に接触することに起因する、成型巻芯上の未加硫ゴムの表面形状不良の発生を防止して、製品タイヤの品質を向上することができる口金を提供する。
【解決手段】押出機10の先端に取付けられて、生タイヤの成型巻芯50上に巻き取られる未加硫ゴム40を所定の横断面形状に成形する口金30であって、回転駆動される前記成型巻芯50の周面に近接させて対向配置される前記口金30の、成型巻芯50の回転方向後方側に位置するリップ部分32の成型巻芯50への対向面33を、回転方向後方側に向けて成型巻芯50から次方に離隔する傾斜面もしくは湾曲面としてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出機の先端に取付けられて、生タイヤの成型巻芯上に、直接的もしくは間接的に巻き取られる未加硫ゴムを所定の横断面形状に成形するとともに、回転駆動される前記成型巻芯の周面に近接させて対向配置される口金に関するものであり、とくに、成型巻芯上に巻き付けた未加硫ゴムの巻き始端と巻き終端との突き合わせ接合部分での、表面形状不良の発生を防止して、製品タイヤの品質を向上させる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
成型ドラム、ハードコアもしくは台タイヤなどの、生タイヤの成型巻芯の周面に近接させて対向配置されるこの種の口金は、図4に概略断面図で示すような未加硫ゴムの押出し貼着装置において、押出機61の先端に、図ではギアポンプ62を介して間接的に取付けて使用に供されるものである。
図示の口金63は、押出機61内での、スクリュー64による混錬溶解後にギアポンプ62で定量送給される未加硫ゴムを、所要の横断面形状に成形するとともに、口金63から押出された未加硫ゴム65を、図に、矢印で示す方向に回転駆動される成型巻芯66の表面上に、たとえば直接的に貼り付けるべく機能する。
【0003】
ここで、成型巻芯66の表面に向けて口金63から押出された未加硫ゴム65は、成型巻芯66の回転により、成型巻芯66の全周にわたって貼着され、成型巻芯66上の、未加硫ゴム65の巻き始端65aと、口金63から押出された直後の巻き終端とを突き合わせ接合させた後に、未加硫ゴム65の、口金63からの押出しを停止するとともに、口金63を成型巻芯66の表面から離隔させることで、成型巻芯66上の所定の領域に円環状に貼着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、口金63から押出された未加硫ゴム65は、ダイスウェル現象により膨張することから、成型巻芯66の表面に貼着されて成型巻芯66の回転とともに一回転した、未加硫ゴム65の巻き始端65aおよびその近傍部分は、口金63の、成型巻芯66の回転方向前方側の巻芯対向面63aと、成型巻芯66の表面との間を通過したときよりも膨張して厚くなる。
【0005】
このため、従来の口金63では、図5(a)〜(c)に、巻き始端65aの、巻き終端65bへの突き合わせ接合工程を拡大断面図で示すように、口金63の、成型巻芯66の回転方向後方側の巻芯対向面63bに到達した、成型巻芯66上の巻き始端65aが、口金63の、成型巻芯66の回転方向後方側の巻芯対向面63bの角部で削られて、未加硫ゴム65の巻き始端65a近傍の外表面に、図5(b)、(c)に例示するような、いわゆるバリ67などの表面形状不良が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、成型巻芯の表面に貼着させた未加硫ゴムの巻き始端およびその近傍が膨張しても、その膨張部分が、口金に接触することに起因する、成型巻芯上の未加硫ゴムの表面形状不良の発生を防止して、製品タイヤの品質を向上することができる口金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の押出機の口金は、押出機の先端に取付けられて、生タイヤの成型巻芯上に巻き取られる未加硫ゴムを所定の横断面形状に成形する口金であって、回転駆動される前記成型巻芯の周面に近接させて対向配置される前記口金の、成型巻芯の回転方向後方側に位置するリップ部分の成型巻芯への対向面を、回転方向後方側に向けて成型巻芯から次方に離隔する傾斜面もしくは湾曲面としてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の押出機の口金によれば、回転駆動される成型巻芯の周面に近接させて対向配置される口金の、成型巻芯の回転方向後方側に位置するリップ部分の成型巻芯への対向面を、回転方向後方側に向けて成型巻芯から次方に離隔する傾斜面もしくは湾曲面としたことによって、成型巻芯上に貼着された未加硫ゴムの巻き始端が、成型巻芯の回転とともに一回転して、口金の、成型巻芯の回転方向後方側に位置するリップ部分に到達したときに、膨張により厚くなったその巻き始端およびその近傍の進行が、前記傾斜面もしくは湾曲面よって円滑に案内されることになるので、未加硫ゴムの巻き始端近傍の外表面に、いわゆるバリなどの表面形状不良が生じなくなる。
【0009】
また、口金の、回転方向後方側のリップ部分の成型巻芯への対向面を、円滑な傾斜面もしくは湾曲面としたことから、未加硫ゴムの巻き始端と巻き終端との突き合わせ接合の際に、膨張により厚くなった未加硫ゴムの巻き始端近傍の、厚くなった厚み分が、口金のその円滑な傾斜面で次第に押し込まれつつ、その巻き始端を、口金から押出された直後の未加硫ゴムの巻き終端に突き合わせ接合することになるので、接合された両端の相互に、厚みの相違による段差が形成されることなしに、未加硫ゴムの巻き始端と巻き終端とを滑らかに接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一の実施形態の口金を用いた、未加硫ゴムの押出し貼着装置を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す口金および、それの変形例を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示す装置での、未加硫ゴムの巻き始端と巻き終端との突き合わせ接合工程を示す拡大断面図である。
【図4】従来の口金を用いた、未加硫ゴムの押出し貼着装置を示す概略断面図である。
【図5】図4に示す装置での、未加硫ゴムの巻き始端と巻き終端との突き合わせ接合工程を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に示す未加硫ゴムの押出し貼着装置は、押出機10と、押出機10の先端に、定量押出し用のギアポンプ20を介して取り付けた口金30と、口金30を経て押出されたリボン状の未加硫ゴム40を表面に巻き取る成型巻芯50とから構成してなる。
【0012】
ここで、口金30は、押出機10からギアポンプ20を経て送給された未加硫ゴムを、成型巻芯50に向けて吐出する際に、それを所要の横断面形状に成形するため、口金30の押出し口31は、たとえば、扁平な矩形や平行四辺形、六角形などの所要の形状に形成してなる内輪郭横断面形状を有する。
【0013】
そして、図2に口金30を拡大断面図で示すように、口金30のその押出し口31の周縁の、成型巻芯50の回転方向後方側に位置するリップ部分32の成型巻芯50への対向面33を、図2(a)に示すように、回転方向後方側に向けて成型巻芯50から次方に離隔する向きに湾曲する湾曲面とする一方で、回転方向の前方側に位置するリップ部分34の成型巻芯50への対向面35を、成型巻芯50の表面に対して略平行な平坦面とする。
なお、巻芯50の回転方向後方側のこの巻芯対向面33は、図2(b)に示すように、回転方向後方側に向けて成型巻芯50から次方に離隔する向きに傾斜する傾斜平坦面とすることもできる。
【0014】
またここで、口金30を取付けた押出機10には、未加硫ゴムの供給ホッパー11を設けるとともに、押出機10内に、供給ホッパー11とギアポンプ20とを連通させる内部流路12を設け、そして、この内部流路12の内側にスクリュー13を配設する。そしてこの押出機10の、未加硫ゴムの押出し方向の前方側に、図ではその押出し方向と直交する向きで相互に噛み合う一対のギアを具える、定量押出用のギアポンプ20を取付ける。
【0015】
ところで、口金30の押出し口31に近接させて配置した、たとえば、成型ドラム、ハードコアもしくは台タイヤ等の成型巻芯50は、図示しないモータ等により回転駆動されて、図に示すところでは、時計回りと逆向き(図に矢印で示す向き)に回転される。なおここで、口金30は、この成型巻芯50の回転中心と略同じ高さの位置に、それの押出し口31を、成型巻芯50の表面に対面させて配置する。
【0016】
かかる、未加硫ゴムの押出し貼着装置では、供給ホッパー11から、押出機10内に供給された未加硫ゴムは、内部流路12内で、スクリュー13によって混錬攪拌された後に、ギアポンプ20により、先端の口金30に向けて定量送給される。
なおここで、押出機10とギアポンプ20との間に、図示しないストレーナを配設することができ、この場合には、未加硫ゴムがストレーナを通過する際に、未加硫ゴムに混入した異物を除去することができる。
【0017】
このようにして口金30に到達した未加硫ゴムは、口金30の横断面内輪郭形状に応じた所要の横断面形状を有する、リボン状の未加硫ゴム40とされて、成型巻芯50に向けて押出され、成型巻芯50の表面に貼着される。その際に、口金30の、成型巻芯50の回転方向前方側に位置するリップ部分34の上述した平坦面状の対向面35は、口金30から押出されたこの未加硫ゴム40を、成型巻芯50側に押圧してそこに貼着させるべくも機能する。
【0018】
そして、成型巻芯50の表面に貼着されたリボン状の未加硫ゴム40の巻き始端41は、成型巻芯50の回転とともに一回転して口金30の押出し口31に向かって接近し、口金30から押出されたリボン状未加硫ゴム40の巻き終端に突き合わせ接合されるが、未加硫ゴム40の巻き始端41およびその近傍は、多くの場合、膨張して厚くなっているため、図3(a)〜(d)に、巻き始端41の、巻き終端42への突き合わせ接合工程を拡大断面図で示すように、口金30に到達した巻き始端41は、口金30の、回転方向後方側に位置するリップ部分32に擦れることになる。
【0019】
この場合、この発明の口金30では、成型巻芯50の回転方向後方側に位置するリップ部分32の巻芯対向面33を、回転方向後方側に向けて成型巻芯50から次方に離隔する、図2(a)に示すような湾曲面、もしくは図2(b)に示すような傾斜面とすることにより、巻き始端41およびその近傍が、口金30のその対向面33に接触しても、その巻き始端41等の前方側への進行が、湾曲面等によって十分円滑に案内されることになり、巻き始端41等に対する掻き除け等の発生が有効に防止されるので、巻き始端41およびその近傍の外表面に、いわゆるバリ等の表面形状不良を発生することを有効に防止することができる。
【0020】
また、膨張により厚くなった未加硫ゴム40の巻き始端41の近傍の、厚くなった厚み分は、図3(b)、(c)に示すように、口金30の円滑な、図では湾曲面状の対向面33で次第に押し込まれ、その後、巻き始端41と巻き終端42とが突き合わせ接合されることになるため、未加硫ゴム40の巻き始端41と巻き終端42との接合部分の外表面を滑らかに形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 押出機
11 供給ホッパー
12 内部流路
13 スクリュー
20 ギアポンプ
30 口金
31 押出し口
32 回転方向後方側のリップ部分
33、35 成型巻芯への対向面
34 回転方向前方側のリップ部分
40 未加硫ゴム
41 巻き始端
42 巻き終端
50 成型巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の先端に取付けられて、生タイヤの成型巻芯上に巻き取られる未加硫ゴムを所定の横断面形状に成形する口金であって、
回転駆動される前記成型巻芯の周面に近接させて対向配置される前記口金の、成型巻芯の回転方向後方側に位置するリップ部分の成型巻芯への対向面を、回転方向後方側に向けて成型巻芯から次方に離隔する傾斜面もしくは湾曲面としてなる押出機の口金。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240632(P2011−240632A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115747(P2010−115747)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】