説明

押出機

【課題】押出機スクリュー(12)を備えていてその推進方向下流に少なくとも1つの駆動ギア(22)と少なくとも1つの従動ギア(32)を有する容積ギアポンプが接続している粘性材料用の押出機においてギアポンプの充填圧力を低下させる。
【解決手段】駆動ギア(22)の軸(23)が押出機スクリュー(12)の軸(13)に対して実質的に垂直に延在し、従動ギア(32)の軸(33)は実質的に押出機スクリュー(12)の軸(13)と同方向に延在するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出機スクリューを備えていてその推進方向下流に少なくとも1つの駆動ギアと少なくとも1つの容積移送ギア(従動ギア)を有する容積ポンプが接続している、特に熱可塑性溶融剤および天然あるいは合成ゴム等の粘性材料用の押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押出機においては、押出機スクリューの推進方向下流側に一般的に2つのロータを有するギアポンプを配置することが知られている。ギアポンプは独立した駆動機構を必要とするとともに押出機スクリューのケース部材にフランジ付けされ、従って両方のケース部材間に構造的な制約が生じる可能性がある。
【0003】
ギアポンプは高い圧力勾配を形成するために適している。これはギア空洞部が閉鎖空間を形成することによって容積推進原理で操作する。吐出量は抵抗力と略無関係で回転数に比例するものとなる。ギアポンプはスクリュー形状によって生成された圧力拍動を10倍までの単位で緩衝および均一化し、その結果重量および寸法の許容性を比較的に改善することができる。加えてギアポンプの効率は著しく良好なものであり、従って推進する材料が低い温度を有するものとすることができる。
【0004】
既知の押出機構成において、ギアポンプは一種の遊星ギアの形式に形成され、太陽ギア、外輪ギア、遊星キャリア、および全ての遊星ギアの軸が互いに平行であるとともに押出機スクリューの軸に対して平行に配置される。
【0005】
しかしながら、遊星ギアには流入口と通流迂回路のために注入圧力が比較的高くなるという問題点が有る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、ギアポンプの充填圧力を低下させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために本発明によれば、駆動ギアの軸が押出機スクリューの軸に対して実質的に垂直に延在し、従動ギアの軸が実質的に押出機スクリューの軸と同方向に延在するように配置される。
【0008】
それによって、従来の遊星ギアポンプに比べて注入圧力が著しく低くなることに加えて、各遊星ギアに対して割り当てられた通流路が不要となり、その結果スクリュー式押出機によって必要とされる圧力低下が小さくなり、従って粘性材料の過熱が少なくなるという利点が得られる。
【0009】
本発明の別の特徴によれば、ギアポンプのケース部材が押出機スクリューのケース部材に統合され、それによっても流入口が無くなり、従って発熱がさらに少なくなるとともに、さらにエネルギー拡散が少なくなる。
【0010】
本発明のさらに別の特徴によれば、駆動ギアと従動ギアを互いに噛合する傘歯車として形成することによって均一な容積流が達成される。
【0011】
スクリュー式押出機はその内部摩擦によって推進するとともに、その押出機スクリューに沿って推進流を形成する。推進力に加えて圧力勾配を形成する必要がある場合、反対方向に作用する圧力容積流が容積推進流に重ね合わされる。そのことがより高い散逸加熱につながり、また効果的に推進可能な材料流の低下に通じる。それに対して、容積ギアポンプは容積式推進装置であり、従って推進速度の対抗圧力への依存が著しく小さくなる。本発明の解決方式によれば比較的圧力に無関係に推進することが可能となり、その際本発明に従って形成された容積ギアポンプによってより低い材料温度を達成することができる。
【0012】
駆動ギアを平歯車として形成し、従動ギアを傘歯車として形成することができる。他方、従動ギアを平歯車として形成し、駆動ギアを傘歯車として形成することもできる。
【0013】
いずれの場合も、従動ギアの軸が駆動ギアの軸に対して垂直になるように配置する。
【0014】
ゴム混合物等の弾力性材料の推進態様は多様なパラメータに大きく依存する。材料の粘性の存在によって容積ギアポンプが押出機スクリューよりも強力に推進する場合、移行領域に減圧が発生する。そのことが気泡形成につながり、推進された材料の品質が所要のレベルに到達しない可能性がある。このことを防止するために押出機スクリューの推進速度を高めることができるが、その場合例えば低粘性の混合物に対しては移行領域に過剰圧力が生じ、それによって構造に負担がかかるとともに材料温度が不要に上昇する。
【0015】
多様な混合物に対してポンプ内への注入圧力を最適に形成するため、本発明の別の特徴によれば、従動ギアが押出機スクリューから独立した駆動機構を備えている。
【0016】
従って本発明の解決方式は、例えば合成ゴム混合物および天然ゴムからなる混合物等のように異なった材料を使用する場合でも、簡便な手段によって押出物の品質を一定に保持するものである。
【0017】
押出機の粘性材料が比較的限られた粘度範囲内で加工されるものであって構造を簡略化すべきである場合、本発明の別の特徴によれば、従動ギアと押出機スクリューを圧力ばめ式に結合することも可能である。それによって従動ギアおよび/または駆動ギアのための独立した駆動機構が不要となる。
【0018】
他方、駆動ギアが駆動機構を備えることもできる。前記の駆動ギアと反対側の押出機スクリュー側部に同様に従動ギアと噛合している別の駆動ギアを配置することによって、容積ギアポンプによるさらに大きな推進容量を達成することができる。他方、押出機スクリューの周囲にそれぞれ1つあるいは複数の従動ギアによって駆動可能な複数の駆動ギアを配置することもできる。
【0019】
容積ギアポンプの推進容量を増大させる別の可能性は、本発明の別の特徴に従って押出機スクリューが駆動ギアの領域内に延伸する延長部を備えていて、材料流が押出ノズルに向かって誘導される2つの噛合する従動ギア領域の間の従動ギア空洞部を充満させることからなる。
【0020】
前記の延長部は従動ギアまで延在していてそれと圧力ばめ式に結合することができる。
【0021】
また、完全に閉鎖された容積ギアポンプのケース部材内において同軸の孔部内で押出機スクリューを貫通して延在する従動ギアを軸のみによって駆動することも可能である。
【0022】
添付図面には本発明の実施例が示されており、それについては以下の記述において詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1には、従来の構造形式の押出機スクリュー12を収容するための押出機ケース部材11を備えたスクリュー式押出機10の縦断面図が示されている。
【0024】
概略的に図示されているが、押出機ケース部材11にケース部材21内に配置された容積ギアポンプ20が接続している。
【0025】
ケース部材21の内部には軸23周りで回転可能に取り付けられた駆動ギア22が配置されている。
【0026】
図示された実施例において押出機スクリュー12の軸13と同軸に配置された従動ギア32が駆動ギア22と噛合している。図示された実施例においては従動ギア32がスクリュー12から独立して回転可能であり、この際従動ギア32の軸33は従動ギア駆動機構34を有するシャフトとして形成されている。
【0027】
図1に示されている実施例において、押出機スクリュー12はケース部材21内で容積ギアポンプ20に到達している。
【0028】
この方式によって、比較的大きな露出断面を有していて駆動ギア22の均一な動作を可能にする、スクリュー式押出機10から容積ギアポンプ20への移行領域15が形成されている。
【0029】
図1および図2に示されているように、好適な実施例においてギアポンプ20のケース部材21は押出機スクリュー12のケース部材21内に統合されており、それによって両方のケース部材部分間の移行領域上の構造的な制約が無くなる。
【0030】
駆動ギア22の軸23は押出機スクリュー12の軸13に対して実質的に垂直に配置されている。図1に示されている実施例においては軸13と軸23の間に正確な直角が形成されている。
【0031】
駆動ギア22が従動ギア32と噛合することによって、従動領域から押出ノズル25に粘性材料が誘導される。
【0032】
図1に示された実施例においては、駆動ギア22とは反対の押出機スクリュー12の側部に同様に従動ギア32と噛合する別の駆動ギア222が配置されている。押出機スクリュー12の周囲に、従動ギア32と噛合する駆動ギア22,222を複数配置することもできる。駆動ギア22,222が従動ギア32と噛合している各従動領域から、容積ギアポンプ20のケース部材21内部あるいは外部の図示されていない流路を介して押出ノズル25に粘性材料が供給される。
【0033】
図2に示されている実施例においては、押出機スクリュー12が駆動ギア22,22の領域内に延伸している延長部14を備えている。
【0034】
この実施例においてこの押出機スクリュー12の延長部14は縮小された断面を有していて、容積ギアポンプ20のケース部材21の内部で前記延長部14と駆動ギア22,222の間に設けられている壁部26によって被包されている。
【0035】
前記延長部14は従動ギア32まで延在することができ、従動ギア32はその領域で押出機スクリュー12と圧力ばめ式に結合することができる。
【0036】
図1および図2に示された実施例において、駆動ギア22,222を平歯車として形成し、従動ギア32を傘歯車として形成することが可能である。
【0037】
他方、従動ギア32を平歯車として形成し、駆動ギア22,222を傘歯車として形成することもできる。いずれの場合も、従動ギア32の軸が駆動ギア22,222の軸に対して垂直に配置されている。
【0038】
従動ギア32の軸33は駆動ギア22の軸23に対して鋭角に配置することもできる。
【0039】
同様に、駆動ギア22,222および従動ギア32をはすば歯車として形成することもできる。
【0040】
さらに、従動ギア32をウォームとして形成し、駆動ギア22,222をウォーム歯車として形成することもできる。
【0041】
駆動ギア22,222のうちの少なくとも1つが独立した外側からの駆動機構を備えることができる。
【0042】
いずれの場合も、例えば粘性材料を変更する際の保守作業は大きな手間をかけずにまた従来のギアポンプに比べて容易に実施することができる。
【0043】
押出機ケース部材11内に2本の押出機スクリュー12を互いに平行に配置し、材料流と同時に容積ギアポンプ20に作用させることができる。
【0044】
両方の押出機スクリュー12は容積ギアポンプ20の方向に向かって収束するように配置することもできる。
【0045】
また、1つあるいは2つの従動ギアピニオンが駆動平歯車と偏心的に噛合することもできる。そのうちの少なくとも1つは、直接あるいは中間ギアを介して押出機スクリューによって駆動させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る押出機を示した縦断面図である。
【図2】本発明に係る押出機の別の実施例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
+10 スクリュー式押出機
11 押出機ケース部材
12 押出機スクリュー
13 押出機スクリュー軸
14 延長部
15 移行領域
20 容積ギアポンプ
21 容積ギアポンプケース部材
22,222 駆動ギア
23 駆動ギア軸
25 押出ノズル
26 壁部材
32 従動ギア
33 従動ギア軸
34 従動ギア駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機スクリューを備えていてその推進方向下流に少なくとも1つの駆動ギアと少なくとも1つの従動ギアを有する容積ギアポンプが接続している、特に熱可塑性溶融剤および天然あるいは合成ゴム等の粘性材料用の押出機であって、駆動ギア(22)の軸(23)が押出機スクリュー(12)の軸(13)に対して実質的に垂直に延在し、従動ギア(32)の軸(33)は実質的に押出機スクリュー(12)の軸(13)と同方向に延在するように配置することを特徴とする押出機。
【請求項2】
駆動ギア(22)と従動ギア(32)を互いに噛合する傘歯車として形成することを特徴とする請求項1記載の押出機。
【請求項3】
駆動ギア(22)を平歯車、従動ギア(32)を傘歯車として形成するか、あるいは従動ギア(32)を平歯車、駆動ギア(22)を傘歯車として形成することを特徴とする請求項1記載の押出機。
【請求項4】
従動ギア(32)の軸(33)が駆動ギア(22)の軸(23)に対して垂直になるように配置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の押出機。
【請求項5】
従動ギア(32)の軸(33)が駆動ギア(22)の軸(23)に対して鋭角になるように配置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の押出機。
【請求項6】
駆動ギア(22)および従動ギア(32)がウォームギアとして形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の押出機。
【請求項7】
従動ギア(32)をウォームとして形成し、駆動ギア(22)をウォームギアとして形成することを特徴とする請求項6記載の押出機。
【請求項8】
従動ギア(32)と押出機スクリュー(12)を同軸に配置することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の押出機。
【請求項9】
従動ギア(32)が押出機スクリュー(12)と圧力ばめ式に結合されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の押出機。
【請求項10】
従動ギア(32)が押出機スクリュー(12)から独立した駆動機構を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の押出機。
【請求項11】
駆動ギア(22)と反対側の押出機スクリュー(12)側部に同様に従動ギア(32)と噛合している別の駆動ギア(222)を配置することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の押出機。
【請求項12】
押出機スクリュー(12)の周囲に駆動ギア(22,222)を複数配置することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の押出機。
【請求項13】
押出機スクリュー(12)が駆動ギア(22,222)の領域内に延伸する延長部(14)を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の押出機。
【請求項14】
延長部(14)は従動ギア(32)まで延在することを特徴とする請求項13記載の押出機。
【請求項15】
押出機ケース部材(11)内に2本の押出機スクリュー(12)を互いに平行に配置し、材料流と同時に容積ギアポンプ(20)に作用させることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の押出機。
【請求項16】
2本の押出機スクリュー(12)を容積ギアポンプ(20)の方向に向かって収束するように押出機ケース部材(11)内に配置し、材料流と同時に容積ギアポンプ(20)に作用させることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の押出機。
【請求項17】
両方の押出機スクリュー(12)に対して駆動ギアと噛合している1つあるいは2つの従動ギアピニオンが偏心的に配置されることを特徴とする請求項15または16記載の押出機。
【請求項18】
少なくとも1つの前記従動ギアピニオンが直接あるいは中間ギアを介して1つあるいは両方の押出機スクリュー(12)によって駆動され、また駆動平歯車と噛合していることを特徴とする請求項17記載の押出機。
【請求項19】
容積ギアポンプ(20)のケース部材(21)が押出機ケース部材(11)内に統合されていることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の押出機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−201131(P2008−201131A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35366(P2008−35366)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(507241469)ブイエムアイ−エイゼット エクストルージョン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【Fターム(参考)】