説明

押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法

【課題】ケーブルコアに外径変動があっても被覆厚の変動を小さく抑えることができる押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法を提供する
【解決手段】押出機3に入る前のケーブルコア12の外径測定する被覆前外径測定器2と、押出機3を出て冷却槽5を通過した後の押出被覆ケーブル13の外径を測定する冷却後外径測定器6を設置する。走行するケーブルコアの同じ箇所での、冷却後外径測定器6の測定値D2から被覆前外径測定器2の測定値D1を減算して被覆厚T1を求める。被覆厚T1が、目標被覆厚Tより大きい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を低下させ、目標被覆厚Tと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、目標被覆厚Tより小さい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルコアに樹脂を押出被覆して押出被覆ケーブルを製造するラインでの被覆厚制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出被覆ケーブルの製造ラインでは通常、押出被覆ケーブルの外径制御が行われている。例えば特許文献1に開示されている押出被覆ケーブルの外径制御方法は、押出機の出口側に設置された補助冷却槽と本冷却槽の間で押出被覆ケーブルの外径を測定し、その測定値が予め設定された目標外径に近づくように押出被覆ケーブルの引取速度を制御する、というものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−102229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、押出被覆ケーブルの外径を制御する方法では、押出被覆を施す前のケーブルコアに外径変動があると、被覆の厚さが変動してしまうので、最低被覆厚を確保できない被覆厚不良が発生しやすい。例えば、撚線コアの外周に遮蔽テープを巻いて(又は編組を施して)ケーブルコアとし、このケーブルコアに押出被覆を施して遮蔽ケーブルを製造する場合には、ケーブルコアの外径変動が大きいため、被覆厚の変動も大きくなり、被覆厚不良が発生しやすくなる。ケーブルコアの外径変動があっても、被覆厚不良を出さないようにするためには、被覆外径を大きめに設定すればよいが、そうすると被覆目付が多くなり、コスト高になる。
【0005】
本発明の目的は、ケーブルコアに外径変動があっても被覆厚の変動を小さく抑えることができる押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、ケーブルコアに樹脂を押出被覆する押出機と、押し出された被覆を冷却する冷却槽とを備えた押出被覆ケーブル製造ラインでの被覆厚制御方法において、
押出機に入る前のケーブルコアの外径測定する被覆前外径測定器と、押出機を出て冷却槽を通過した後の押出被覆ケーブルの外径を測定する冷却後外径測定器とを設置し、
走行するケーブルコアの同じ箇所での冷却後外径測定器の測定値D2から被覆前外径測定器の測定値D1を減算して被覆厚T1を求め、その被覆厚T1が目標被覆厚Tに近づくように押出機のスクリュー回転数を制御することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の被覆厚制御方法においては、前記被覆厚T1が、目標被覆厚Tより大きい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を低下させ、目標被覆厚Tと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、目標被覆厚Tより小さい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる制御を行うことが好ましい。
【0008】
本発明の被覆厚制御方法においては、押出機を出て冷却槽に入る前の押出被覆ケーブルの外径を測定する冷却前外径測定器をさらに設置し、
走行するケーブルの同じ箇所での冷却前外径測定器の測定値D3から冷却後外径測定器の測定値D2を減算して冷却による被覆の収縮厚S1を求め、その値から平均収縮厚Ave.S1を算出し、さらに、(被覆前外径測定器の測定値D1+目標被覆厚T+平均収縮厚Ave.S1)を演算して冷却前目標外径Dを求め、
冷却前外径測定器の測定値D3が、冷却前目標外径Dより大きい場合は冷却前目標外径Dに近づくようにスクリュー回転数を低下させ、冷却前目標外径Dと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、冷却前目標外径Dより小さい場合は冷却前目標外径Dに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる補正制御を行うことがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルコアの外径が変動しても、被覆厚が一定になるように制御を行うので、被覆厚の変動が少なくなり、被覆厚不良が少なくなって、製品歩留まりを向上させることができる。その結果、安定して安価な押出被覆ケーブルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の一実施形態を示す。この実施形態では、コア撚線11に金属テープフォーミング装置1で遮蔽用金属テープを縦添え被覆してケーブルコア12とし、このケーブルコア12を押出機3に通して樹脂を押出被覆し、さらに冷却槽5に通して冷却した後、引取機7で引き取って押出被覆ケーブル13を製造する。
【0011】
押出機3の手前にはケーブルコア12の外径を測定する被覆前外径測定器2を設置し、押出機3と冷却槽5の間には冷却前の押出被覆ケーブル13の外径を測定する冷却前外径測定器4を設置し、さらに、冷却槽5と引取機7の間には冷却後の押出被覆ケーブル13の外径を測定する冷却後外径測定器6を設置する。
【0012】
被覆前外径測定器2の測定値D1と冷却後外径測定器6の測定値D2は主制御部21に入力される。主制御部21では、入力された測定値D2から測定値D1を減算して被覆厚T1を求める。なお主制御部21で被覆厚T1を演算するときは、製造ラインを走行するケーブルコアの同じ箇所での測定値D1、D2を使用する必要がある。そのためには例えば、被覆前外径測定器2の測定値D1を主制御部21へ出力するタイミングを、ケーブルコア12が被覆前外径測定器2から冷却後外径測定器6に達するまでの時間だけ遅らせればよい。あるいは、被覆前外径測定器2からは測定値D1をそのまま出力し、主制御部21で被覆厚T1を演算するときに、ケーブルコア12が被覆前外径測定器2から冷却後外径測定器6に達するまでの時間だけ遅らせた測定値D1を使用してもよい。
【0013】
次に、上記のようにして求めた被覆厚T1と、予め設定されている目標被覆厚Tとを比較し、被覆厚T1が目標被覆厚Tより大きい場合は、被覆厚T1が目標被覆厚Tに近づくように押出機3のスクリュー回転数を低下させる制御を行い、被覆厚T1が目標被覆厚Tと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、被覆厚T1が目標被覆厚Tより小さい場合は、被覆厚T1が目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる制御を行う。
【0014】
このようにすれば、ケーブルコア12の外径に変動があっても、それに応じて押出機の吐出量が制御されるため、被覆厚がほぼ一定の押出被覆ケーブルを製造することができる。
【0015】
なお、スクリュー回転数の低下率、上昇率は、予め設定されている押出機吐出量、引取速度、被覆目付から求めればよい。
【0016】
以上の被覆厚制御方法は、被覆前外径測定器2の測定値D1と冷却後外径測定器6の測定値D2から押出機スクリューの回転数を制御するものであるが、より精度の高い被覆厚制御を行うためには、押出機3と冷却槽5の間に冷却前外径測定器4を設置すると共に、補助制御部22を設けて、次のような補正制御を行うとよい。
【0017】
すなわち、補助制御部22には、被覆前外径測定器2の測定値D1と、冷却前外径測定器4の測定値D3と、冷却後外径測定器6の測定値D2が入力される。補助制御部22ではまず、冷却前外径測定器4の測定値D3から冷却後外径測定器6の測定値D2を減算して冷却による被覆の収縮厚S1を求め、さらに、その値から平均収縮厚Ave.S1(S1の単位長又は単位時間当たりの平均値)を算出する。次いで、(被覆前外径測定器の測定値D1+目標被覆厚T+平均収縮厚Ave.S1)を演算して冷却前目標外径Dを求める。
【0018】
なお、補助制御部22で、収縮厚S1を求める場合も、製造ラインを走行するケーブルの同じ箇所での測定値D3、D2を使用するため、ケーブル13が冷却前外径測定器4から冷却後外径測定器6に達するまでの時間を考慮する点は、主制御部21の場合と同様である。また冷却前目標外径Dを算出する場合も、ケーブルコア12が被覆前外径測定器2から冷却前外径測定器4に達するまでの時間を考慮する必要がある。
【0019】
次に、上記のようにして求めた冷却前目標外径Dと、冷却前外径測定器4の測定値D3とを比較し、測定値D3が冷却前目標外径Dより大きい場合は、測定値D3が冷却前目標外径Dに近づくように押出機3のスクリュー回転数を低下させる補正制御を行い、冷却前目標外径Dと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、測定値D3が冷却前目標外径Dより小さい場合は冷却前目標外径Dに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる補正制御を行う。
【0020】
このようにすれば、押出直後の段階で、冷却後のケーブル外径を予測し、スクリュー回転数の補正をかけることで、より精度の高い被覆厚制御を行うことができる。
【0021】
なお、補正制御の場合も、スクリュー回転数の低下率、上昇率は、予め設定されている押出機吐出量、引取速度、被覆目付から求めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法の一実施形態を示すブロック図。
【符号の説明】
【0023】
1:金属テープフォーミング装置
2:被覆前外径測定器
3:押出機
4:冷却前外径測定器
5:冷却槽
6:冷却後外径測定器
7:引取機
11:コア撚線
12:ケーブルコア
13:押出被覆ケーブル
21:主制御部
22:補助制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアに樹脂を押出被覆する押出機と、押し出された被覆を冷却する冷却槽とを備えた押出被覆ケーブル製造ラインでの被覆厚制御方法において、
押出機に入る前のケーブルコアの外径測定する被覆前外径測定器と、押出機を出て冷却槽を通過した後の押出被覆ケーブルの外径を測定する冷却後外径測定器とを設置し、
走行するケーブルコアの同じ箇所での冷却後外径測定器の測定値D2から被覆前外径測定器の測定値D1を減算して被覆厚T1を求め、その被覆厚T1が目標被覆厚Tに近づくように押出機のスクリュー回転数を制御することを特徴とする押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の被覆厚制御方法において、被覆厚T1が、目標被覆厚Tより大きい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を低下させ、目標被覆厚Tと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、目標被覆厚Tより小さい場合は目標被覆厚Tに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる制御を行うことを特徴とする押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の被覆厚制御方法において、押出機を出て冷却槽に入る前の押出被覆ケーブルの外径を測定する冷却前外径測定器をさらに設置し、
走行するケーブルの同じ箇所での冷却前外径測定器の測定値D3から冷却後外径測定器の測定値D2を減算して冷却による被覆の収縮厚S1を求め、その値から平均収縮厚Ave.S1を算出し、さらに、(被覆前外径測定器の測定値D1+目標被覆厚T+平均収縮厚Ave.S1)を演算して冷却前目標外径Dを求め、
冷却前外径測定器の測定値D3が、冷却前目標外径Dより大きい場合は冷却前目標外径Dに近づくようにスクリュー回転数を低下させ、冷却前目標外径Dと同じ場合はスクリュー回転数をそのまま維持し、冷却前目標外径Dより小さい場合は冷却前目標外径Dに近づくようにスクリュー回転数を上昇させる補正制御を行うことを特徴とする押出被覆ケーブルの被覆厚制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−214042(P2007−214042A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34152(P2006−34152)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】