説明

押圧操作型入力装置

【課題】ユーザが手元を注視しなくても任意のプッシュスイッチを的確に押圧操作することができて操作感触も良好な「押圧操作型入力装置」を提供すること。
【解決手段】複数個のプッシュスイッチ1の各操作キー2が前面板8aに露出して列状に並んでいる入力装置11において、成形ゴム体に設けられた接点ゴム3がプッシュスイッチ1に組み込まれており、各操作キー2の一側部2aに隣接するガイド突条部10と、このガイド突条部10を支持する弾性支持部材31とを備えている。ガイド突条部10は前面板8aに露出して前方へ突出しており、ユーザはガイド突条部10に載せた手指で任意の操作キー2が押圧操作可能である。弾性支持部材31は成形ゴム体の一部(肉厚部)であり、ガイド突条部10に所定の荷重が付与されると、弾性支持部材31の弾性変形に伴ってガイド突条部10が加圧された方向へ変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列状に配設した複数個のプッシュスイッチを選択的に操作する押圧操作型入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル等には複数個のプッシュスイッチの操作キー群を配設することが多いが、運転中のユーザがこれら多数の操作キーの中から所望の操作キーを正確に選び出すために手元を注視してしまうと、前方への注意がおろそかになってしまうことになる。そこで従来より、コンソールボックスの下側に横方向に延びる棚状のガイド部を設け、ユーザが操作キーを押圧操作する手指と異なる手指をこのガイド部に載せられるようにすることで、操作性の向上を図るという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来技術では、ガイド部を基準にして各操作キーの位置が手探りで把握できるため、運転中であっても所望の操作キーに手指を押し当てることが比較的容易になる。また、このガイド部で手指を支えることができるため、操作キーに加える操作荷重が加減しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−76856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、棚状のガイド部が固い突起物として形成されているため、ユーザが手元を見ないで操作キーを押圧操作しようとして手指をガイド部に強くぶつけてしまう可能性があった。また、複数の手指を使いこなして操作しなければならないため、不慣れなユーザにとって操作性が良好とは言い難かった。
【0005】
また、かかる従来技術では、プッシュスイッチの操作キーからやや離れた場所にガイド部が設けられており、操作キーを押圧操作する手指とガイド部に載せる手指とが異なることを前提としているため、操作キー上の手指をガイド部に沿って所定方向へ所定量だけスライド移動させようとしても位置ずれを起こしやすい。そのため、運転中などにユーザが手元を見ないで、ガイド部に沿って手指をスライド移動させて所望の操作キーを押圧操作しようとすると、誤操作する可能性が高かった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ユーザが手元を注視しなくても任意のプッシュスイッチを的確に押圧操作することができて操作感触も良好な押圧操作型入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数個のプッシュスイッチの各操作キーが操作パネルに露出して列状に並んでいる押圧操作型入力装置において、前記操作キー群の配列方向に沿って延びて各操作キーの一側部と隣接するガイド突条部と、このガイド突条部を支持する弾性支持部材とを備え、前記ガイド突条部は前記操作パネルに露出して前方へ突出しており、このガイド突条部に載せた手指で任意の前記操作キーを押圧操作可能であると共に、前記ガイド突条部に所定の荷重が付与されると、前記弾性支持部材の弾性変形に伴って前記ガイド突条部が加圧された方向へ変位するように構成した。
【0008】
このように構成された押圧操作型入力装置では、ガイド突条部が各操作キーの一側部に隣接しているため、ユーザはガイド突条部に押し当てた手指で無理なく操作キーを押圧操作することができ、このガイド突条部に沿って所望の操作キーの位置まで手指をスライド移動させることも容易である。また、ガイド突条部は弾性支持部材に支持されているため、ユーザがガイド突条部に載せようとした手指をガイド突条部に強くぶつけてしまった場合にも、その衝撃は弾性支持部材の弾性変形によって大幅に緩和される。それゆえ、ユーザは常に安心して入力装置を操作することができる。なお、操作キーの押下ストロークが大きい場合でも、その操作荷重よりも小さい荷重でガイド突条部が変位するようにしておきさえすれば、操作キーを深く押し込む手指の動きがガイド突条部によって阻害されることもない。
【0009】
上記の構成において、各プッシュスイッチに操作キーを介して押圧操作される接点ゴム等の成形ゴムが組み込まれており、弾性支持部材がこの成形ゴムと一体に形成されていると、部品点数を削減できて入力装置の低コスト化が図りやすくなる。ただし、弾性支持部材として、接点ゴムとは別のばね部材等を用いることも可能である。
【0010】
また、上記の構成において、ガイド突条部の長手方向両端部に手指のスライド移動可能な範囲を規定するストッパ部が突設してあると、ガイド突条部上で手指をスライド移動させているユーザは、手指がストッパ部に当接すればガイド突条部を見なくてもスライド移動可能な範囲が把握できると共に、ガイド突条部からの手指の脱落をストッパ部で防止することができるため、ブラインドタッチでの操作が一層行いやすくなる。しかも、ガイド突条部上でスライド移動させた手指がストッパ部に強くぶつかったときに、このストッパ部は加圧された方向へ若干変位して衝撃を弱める働きをするため、不快な突き当たり感が発生しにくくて操作感触が向上する。
【0011】
また、上記の構成において、操作パネルに操作キー群の配列方向に沿って延びる凹溝を設け、この凹溝をガイド突条部と反対側で各操作キーの他側部と隣接させてあると、操作キーを押圧操作するユーザの手指の爪が長くても、この爪の先端部(爪先)を凹溝内に逃がすことができるため、長い爪の損傷を気にせずに操作キーが押圧操作できるようになる。
【0012】
また、上記の構成において、各操作キーの天面形状が凹状に湾曲してガイド突条部側でせり上がっていると共に、非操作状態における各操作キーの一側部がガイド突条部と略同等の高さ位置に配置されていると、ガイド突条部に載せた手指の指先がごく自然に操作キーの天面に置かれるようになって好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、浅押しと深押しの2段階の押圧操作が行えるプッシュスイッチを使用すると共に、ガイド突条部を変位させるために必要な荷重が、このプッシュスイッチの浅押し操作に必要な操作荷重よりも大きく深押し操作に必要な操作荷重よりも小さくなるように設定してあると、ユーザは手指を載せたガイド突条部を変位させることなくプッシュスイッチの浅押し操作が行えると共に、深押し操作時には必ずガイド突条部の変位を伴うことになるため、浅押し操作と深押し操作とを明確に区別でき、多機能で操作性が良好な入力装置が得られる。
【0014】
この場合において、操作キーの一側部がガイド突条部と同一面となる状態またはガイド突条部よりも前方へ突出している状態でプッシュスイッチが浅押し操作状態に切り替わり、かつ、この操作キーの一側部がガイド突条部よりも没入している状態でプッシュスイッチが深押し操作状態に切り替わるようにしてあると、ユーザは手指をガイド突条部に押し当てるだけで、その手指が接触する操作キーの一側部をガイド突条部と同等の高さ位置まで押し下げることができるため、特に押し込み動作を意識しなくてもプッシュスイッチを浅押し操作状態に切り替えることが可能となり、これによりタッチセンサと同じようなセンサ機能が実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の押圧操作型入力装置によれば、操作キー群の配列方向に沿って延びるガイド突条部が各操作キーの一側部と隣接しているため、ユーザはガイド突条部に押し当てた手指で無理なく操作キーを押圧操作することができ、このガイド突条部に沿って所望の操作キーの位置まで手指をスライド移動させることも容易である。また、このガイド突条部は弾性支持部材に支持されているため、ユーザが手指をガイド突条部に強くぶつけた場合の衝撃を大幅に緩和することができ、かつ、操作キーを深く押し込む手指の動きがガイド突条部によって阻害される虞もなくなる。それゆえ、ユーザが手元を注視しなくても任意のプッシュスイッチを的確に押圧操作することができて、操作感触も良好な押圧操作型入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態例に係る押圧操作型入力装置の正面図である。
【図2】該入力装置に備えられるガイド突条部に沿って手指をスライド移動させている状態を示す説明図である。
【図3】該入力装置を含む制御システムのブロック図である。
【図4】図1中の任意の操作キーの非操作状態を示す要部側面図である。
【図5】図4に対応する非操作時のプッシュスイッチを示す断面図である。
【図6】図4の操作キーが浅押し操作された状態を示す要部側面図である。
【図7】図6に対応する浅押し操作時のプッシュスイッチを示す断面図である。
【図8】図4の操作キーが深押し操作された状態を示す要部側面図である。
【図9】図8に対応する深押し操作時のプッシュスイッチを示す断面図である。
【図10】該プッシュスイッチの操作荷重と押下ストロークの関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例について図1〜図10を参照しつつ説明する。図1と図2に示すように、本実施形態例に係る押圧操作型入力装置11では、複数個のプッシュスイッチ1の操作キー2群が列状に配置されており、この操作キー2群が配置された前面板(操作パネル)8aにはガイド突条部10が立設されている。図4〜図10はプッシュスイッチ1の構造や動作を説明するためのものである。また、図3に示すように、この入力装置11は車載用制御装置40やディスプレイ装置50と接続されている。
【0018】
押圧操作型入力装置11は、カーエアコンやカーオーディオ等の車載用制御装置40を操作するためのものであり、入力装置11に配設された任意のプッシュスイッチ1の操作キー2をユーザが所定ストローク押し込むことによって、所望の操作を実行するための制御信号が車載用制御装置40へ出力されるようになっている。また、この入力装置11は、ユーザにとって目視容易な場所に設置されているディスプレイ装置50と接続されており、ユーザの手指が現在どの操作キー2上に置かれているのかという情報や、各操作キー2に割り当てられている操作内容等が、ディスプレイ装置50の表示画面に表示されるようになっている。なお、ディスプレイ装置50は車載用制御装置40とも接続されており、車載用制御装置40の現在の制御内容等をディスプレイ装置50の表示画面に表示させることができる。
【0019】
この入力装置11には複数個のプッシュスイッチ1が配設されており、各プッシュスイッチ1の操作キー2は横一列に並べられている。各プッシュスイッチ1は全て同じ構造のものであり、基板7上に搭載された成形ゴム体の一部である接点ゴム3と、この接点ゴム3上に搭載された操作キー2とを有する。接点ゴム3には可動接点4a,4bが固設されており、基板7上に設けられた固定接点5a,5bに対して可動接点4a,4bが接離可能となっている。これら複数個のプッシュスイッチ1は、上ケース8と下ケース9を組み合わせて構成される筐体に収納されている。各操作キー2は上ケース8の前面板8aに設けられた開口部内に昇降可能(前後進可能)に配置されており、各操作キー2の天面(前面)が前面板8aに露出して押圧操作できるようになっている。また、図1に示すように、列状に並ぶ操作キー2群に沿って直線状に延びるガイド突条部10が、各操作キー2の一側部2aと隣接する位置に配置されている。このガイド突条部10は前記成形ゴム体の肉厚部31上に搭載されて弾性的に支持されており、ガイド突条部10の上部は前面板8aに露出して前方(操作キー2の上動方向)へ突出している。図6と図8に示すように、ガイド突条部10の天面(前面)にユーザが手指Fを載せることにより、この手指Fの指先で所望の操作キー2を押圧操作できるようになっている。前面板8aには操作キー2群の配列に沿って延びる凹溝8bが設けてあり、この凹溝8bはガイド突条部10と反対側で各操作キー2の他側部と隣接してある。この凹溝8bは、操作キー2を押圧操作する手指Fの爪先を逃がすためのものである。
【0020】
プッシュスイッチ1の構造について詳しく説明すると、図5に示すように、非操作時の操作キー2は接点ゴム3の付勢力によって上ケース8に押し付けられており、このプリテンションによって操作キー2のガタつきが防止されている。また、操作キー2の天面には図示せぬ照光領域が設けられており、この照光領域が基板7に実装されたLED6の光によって照光されるようになっている。基板7上にはLED6の周囲に第1固定接点5aが設けられており、第1固定接点5aの周囲に第2固定接点5bが設けられている。そして、図5に示すように、非操作時において、接点ゴム3の第1可動接点4aと第2可動接点4bがそれぞれ第1固定接点5aと第2固定接点5bの真上に接離可能に配置されている。このプッシュスイッチ1には、第1可動接点4aが第1固定接点5aに当接するとオン状態に切り替わる第1のスイッチ回路と、第2可動接点4bが第2固定接点5bに当接するとオン状態に切り替わる第2のスイッチ回路とが設けられている。
【0021】
操作キー2の天面形状は凹状に湾曲してガイド突条部10側でせり上がっている。また、非操作状態の操作キー2の一側部2aは、図4に示すようにガイド突条部10に対して前方へ微少量Aだけ突出しているものの、この一側部2aとガイド突条部10の高さ位置は略同等であるため、ユーザがガイド突条部10上に手指Fを載せると、その指先がごく自然に操作キー2の天面に置かれるようになっている。
【0022】
接点ゴム3には、基板7上で第2固定接点5bを包囲する領域に載置されるベース部3aと、同心状に配置された駆動筒部3bおよび従動筒部3cと、駆動筒部3bの内周面と従動筒部3cの外周面を全周に亘って連結しているクリック生成壁部3dと、駆動筒部3bの外周面を全周に亘ってベース部3aに連結している柔軟変形壁部3eとが設けられており、ベース部3aが柔軟変形壁部3eを介して駆動筒部3bを支持している。駆動筒部3bの天面は接点ゴム3の最上端に位置するため、操作キー2は駆動筒部3b上に搭載され、操作荷重が駆動筒部3bの天面に付与されるようになっている。駆動筒部3bはクリック生成壁部3dを介して従動筒部3cを支持しているので、操作荷重が付与されて駆動筒部3bが下動(後退)すると、従動筒部3cが駆動筒部3bに駆動されて下動する。従動筒部3cの底面は基板7に近接して配置され、この従動筒部3cの底面に第1可動接点4aが固設されている。駆動筒部3bの底面は基板7からやや離れた位置に配置され、この駆動筒部3bの底面に第2可動接点4bが固設されている。クリック生成壁部3dは押圧操作時に座屈変形可能であり、座屈するとクリック感を生起するようになっている。柔軟変形壁部3eは軽い操作荷重で撓み始めるように形成されており、押圧操作時には座屈を伴わずに徐々に撓むようになっている。
【0023】
このような接点ゴム3を組み込んだプッシュスイッチ1は、軽い操作力で操作キー2を浅く押し込むことによって前記第1のスイッチ回路をオン状態に切り替える浅押し操作と、比較的強い操作力で操作キー2を深く押し込むことによって前記第2のスイッチ回路をオン状態に切り替える深押し操作とが行えるようになっている。
【0024】
かかるプッシュスイッチ1の2段階の押圧操作について、図10のフィーリング曲線を参照しつつ説明する。なお、図10は操作キー2を押し込んだときの操作荷重と押下ストロークとの関係を示している。同図に示すように、操作荷重が0.2N(約20g重)以上であるときに操作キー2を介して接点ゴム3が押し撓められるようになっている。これは、操作キー2にプリテンションが付与されているためであり、このプリテンションによって操作キー2のガタつきが防止されていると共に、外部振動等によって操作キー2が意図せず浅押し操作状態にならないように配慮されている。また、非操作時においてプッシュスイッチ1内の接点ゴム3は図5に示すような断面形状になっており、第1および第2可動接点4a,4bがそれぞれ第1および第2固定接点5a,5bの真上に配置されている。
【0025】
操作キー2に0.2N以上の操作荷重が付与されると、接点ゴム3は、まず柔軟変形壁部3eが徐々に撓んでいくのに伴って駆動筒部3bと従動筒部3cが下動(後退)していくが、従動筒部3cと基板7との間隔は僅かなので、押下ストロークがS1(約0.22mm)に達した時点で従動筒部3cの下動が基板7に規制された図7の状態になり、第1可動接点4aが第1固定接点5aに当接する。つまり、0.5mmに満たない微少な押下ストロークS1において第1のスイッチ回路がオン状態に切り替わり、押下ストロークS1を実現するために必要な操作荷重は0.32N(約33g重)と極めて軽い。
【0026】
浅押し操作された操作キー2がさらに押し込まれると、従動筒部3cの下動が規制されたまま駆動筒部3bが下動するため、柔軟変形壁部3eが撓み続けるだけでなくクリック生成壁部3dが撓み始める。それゆえ、図10に示すように、フィーリング曲線の傾斜角度は押下ストロークS1を越えると急に大きくなる。そして、操作荷重が3.17N(約324g重)で押下ストロークをS2(約1.12mm)まで増やすことができるが、押下ストロークがS2を越えるとクリック生成壁部3dが弾性的に座屈するため、押下ストロークがS3(約1.63mm)まで急増して操作荷重が急減し、それに伴ってクリック感が生起される。その結果、駆動筒部3bの下動が基板7に規制された図9の状態になり、第2可動接点4bが第2固定接点5bに当接する。つまり、ユーザは操作キー2に3.17N以上の操作荷重を加えて1.6mm以上押し込むことによって、第2のスイッチ回路をオン状態に切り替えることができる。
【0027】
すなわち、プッシュスイッチ1は、その操作キー2に0.32N以上の操作荷重を加えて0.22mm以上押し下げることによって浅押し操作状態に切り替えることができるが、ガイド突条部10を支持している肉厚部31を押し撓めるためには少なくとも1N以上の荷重が必要である。そのため、図6に示すように、ユーザがガイド突条部10上に手指Fを載せただけで、操作キー2の一側部2aがガイド突条部10と同等の高さ位置まで押し下げられて、プッシュスイッチ1は容易に浅押し操作状態に切り替わるが、この程度の荷重ではガイド突条部10自体は下動しない。しかるに、ガイド突条部10に載せた手指Fで操作キー2を深押し操作する際には3.17N以上の操作荷重を加える必要があるため、図9に示すように、深押し操作時には肉厚部31が押し撓められ、それに伴いガイド突条部10が下動するようになっている。
【0028】
操作キー2の一側部2aとガイド突条部10の高さ位置の関係について詳しく説明すると、図4に示すように、非操作時には、一側部2aがガイド突条部10に対して前方へ微少量A(0.3〜0.5mm)だけ突出しているが、操作キー2の浅押し操作に必要な押下ストロークS1はこの微少量Aよりもさらに小さいので、図6に示すように、ユーザが手指Fで操作キー2の一側部2aをガイド突条部10と同等の高さ位置まで押し込めば、この操作キー2に対応するプッシュスイッチ1を必ず浅押し操作状態に切り替えることができる。しかも、押下ストロークS1を実現するために必要な操作荷重は0.32Nと極めて軽いため、ユーザが手指Fをガイド突条部10に軽く押し当てれば、この手指Fの指先が接触する操作キー2は自ずと押し下げられて図6の状態になる。それゆえ、ユーザは押し込み動作を意識しなくても、該操作キー2を極めて容易に浅押し操作することができる。また、操作キー2の深押し操作に必要な押下ストロークS3は微少量Aよりも十分に大きいので、ユーザはガイド突条部10に押し当てた手指Fの指先で操作キー2を深く押し込まない限り、この操作キー2に対応するプッシュスイッチ1を深押し操作状態に切り替えることはできない。図8は操作キー2が手指Fの指先で深押し操作されている状態を示している。
【0029】
ガイド突条部10は成形ゴム体の肉厚部31によって弾性的に支持されているため、所定の荷重が付与されると、肉厚部31が弾性変形してガイド突条部10は加圧された方向へ変位する。したがって、ユーザがガイド突条部10に載せようとした際に、自身の手指をガイド突条部10に強くぶつけてしまったとしても、その衝撃が肉厚部31の弾性変形によって緩和されるため、ユーザの手指に不快な突き当たり感が伝わる可能性は低い。また、本実施形態例において、ガイド突条部10を変位させるために必要な荷重(前記所定の荷重)は、プッシュスイッチ1の浅押し操作に必要な操作荷重よりも大きく、かつ深押し操作に必要な操作荷重よりも小さく設定されている。そのため、ユーザは手指を載せたガイド突条部10を変位させることなくプッシュスイッチ1の浅押し操作が行えると共に、深押し操作時には必ずガイド突条部10の変位を伴うことになる。また、図2に示すように、ガイド突条部10の長手方向両端部には、手指Fのスライド移動可能な範囲を規定するストッパ部10aが突設されている。すなわち、ユーザは手指Fをガイド突条部10上でスライド移動させている際に、その手指Fがストッパ部10aに当接したことにより、ガイド突条部10を見なくても手指Fがスライド可能範囲の終端に到達したことを把握できるようにしてある。なお、肉厚部31の長手方向端部は斜めに押し撓めることができるので、ガイド突条部10上でスライド移動させた手指がストッパ部10aに衝突しても、このストッパ部10aは加圧された方向へ若干変位して衝撃を弱める働きをし、そのため手指に不快な突き当たり感が伝わりにくくなっている。
【0030】
このようなプッシュスイッチ1が列状に複数個配設されている押圧操作型入力装置11においては、ユーザが手指をガイド突条部10に押し当てると、その指先によって荷重を受ける操作キー2がほぼ自動的に浅押し操作されることになる。また、この手指をガイド突条部10の長手方向に沿ってスライド移動させれば、列状に並んでいる複数個の操作キー2を順次浅押し操作していくことができる。したがって、ユーザは目視容易な場所に設置されているディスプレイ装置50の表示画面を見れば、わざわざ手元を注視しなくても、現在どの操作キー2上に自分の手指が置かれているのかを把握でき、それゆえガイド突条部10に沿って手指をスライド移動させながら所望の操作キー2を正確に選び出して深押し操作することができる。その結果、深押し操作された操作キー2に割り当てられている操作内容を実行するための制御信号が、入力装置11から車載用制御装置40へ出力される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態例に係る押圧操作型入力装置11においては、ガイド突条部10が各操作キー2の一側部と隣接しているため、ユーザはガイド突条部10に載せた手指で無理なく操作キー2を押圧操作することができ、このガイド突条部10に沿って所望の操作キー2の位置まで手指をスライド移動させることも容易である。また、ガイド突条部10は成形ゴム体の肉厚部31に弾性的に支持されているため、ユーザが手指をガイド突条部10に載せようとした際、その手指をガイド突条部10に強くぶつけてしまったとしても、肉厚部31が弾性変形することによって衝撃が緩和される。それゆえ、ユーザは常に安心して入力装置11を操作することができる。また、ユーザがガイド突条部10に載せた手指で操作キー2をやや強く押し込む深押し操作時には、この手指から荷重を受けるガイド突条部10が加圧された方向へ変位するので、ガイド突条部10によって深押し操作が阻害されることもない。
【0032】
また、この入力装置11においては、各プッシュスイッチ1の接点ゴム3と連続している成形ゴム体の一部に、ガイド突条部10を弾性的に支持する肉厚部31が形成されているので、部品点数が非常に少なくて装置の低コスト化が図りやすくなっている。ただし、板ばね等からなる可動接点を駆動するアクチュエータが成形ゴムからなる場合には、ガイド突条部10を支持する弾性支持部材を該成形ゴムと一体に形成してもよい。また、ガイド突条部10を支持する弾性支持部材として、ゴム以外のばね部材等を用いることも可能である。
【0033】
また、この入力装置11においては、ガイド突条部10の長手方向両端部にストッパ部10aが突設してあり、ガイド突条部10上での手指のスライド移動可能な範囲をストッパ部10aによって規定していると共に、ガイド突条部10からの手指の脱落をストッパ部10aによって防止している。そのため、ユーザは手指をガイド突条部10に載せることでブラインドタッチでの操作が非常に行いやすくなっている。しかも、このストッパ部10aは、ガイド突条部10上でスライド移動させた手指が衝突すると加圧された方向へ若干変位して衝撃を弱める働きをするので、スライド移動中の手指がストッパ部10aに強くぶつかっても不快な突き当たり感が発生しにくくて操作感触が良好である
また、この入力装置11においては、上ケース8の前面板8aに操作キー2群の配列に沿って延びる凹溝8bを設け、この凹溝8bをガイド突条部10と反対側で各操作キー2と隣接させてあるため、操作キー2を押圧操作するユーザの手指の爪が長くても、この爪の先端部を凹溝8b内に逃がすことができる。このような凹溝8bが前面板8aに設けてあると、ユーザが女性の場合などに、長い爪の損傷を気にせずに操作キー2が押圧操作できるようになるため実用的価値が高い。
【0034】
また、この入力装置11では、浅押しと深押しの2段階の押圧操作が行えるプッシュスイッチ1を使用しており、ユーザはガイド突条部10に押し当てた手指の指先で、特に押し込み動作を意識しなくても操作キー2が浅押し操作できるようになっている。そして、この手指をガイド突条部10の長手方向へスライド移動させれば、複数個の操作キー2を順次浅押し操作していくことができるので、この入力装置11はタッチセンサと同じようなセンシングが可能である。それゆえ、運転中などでも前方への注意を怠ることなく、所望のプッシュスイッチ1を的確に選び出して深押し操作することができる。しかも、この入力装置11は、手指を載せたガイド突条部10を変位させることなく浅押し操作が行え、かつ深押し操作時には必ずガイド突条部10の変位を伴うように構成されているため、ユーザは浅押し操作と深押し操作とを明確に区別することができ、多機能で操作性が良好な入力装置となっている。ただし、深押し操作のみが可能なプッシュスイッチを使用した場合にも、ガイド突条部10によって操作性や操作感触の向上が図れることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 プッシュスイッチ
2 操作キー
2a (操作キーの)一側部
3 接点ゴム(成形ゴム)
4a,4b 可動接点
5a,5b 固定接点
7 基板
8 上ケース(筐体)
8a 前面板
8b 凹溝
10 ガイド突条部
10a ストッパ部
11 入力装置
31 肉厚部(弾性支持部材)
40 車載用制御装置
50 ディスプレイ装置
F 手指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のプッシュスイッチの各操作キーが操作パネルに露出して列状に並んでいる押圧操作型入力装置において、
前記操作キー群の配列方向に沿って延びて各操作キーの一側部と隣接するガイド突条部と、このガイド突条部を支持する弾性支持部材とを備え、
前記ガイド突条部は前記操作パネルに露出して前方へ突出しており、このガイド突条部に載せた手指で任意の前記操作キーを押圧操作可能であると共に、前記ガイド突条部に所定の荷重が付与されると、前記弾性支持部材の弾性変形に伴って前記ガイド突条部が加圧された方向へ変位するようにしたことを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記プッシュスイッチに前記操作キーを介して押圧操作される成形ゴムが組み込まれており、前記弾性支持部材が前記成形ゴムと一体に形成されていることを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ガイド突条部の長手方向両端部に手指のスライド移動可能な範囲を規定するストッパ部を突設してあることを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記操作パネルに前記操作キー群の配列方向に沿って延びる凹溝を設け、この凹溝を前記ガイド突条部と反対側で各操作キーの他側部と隣接させたことを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記操作キーの天面形状が凹状に湾曲して前記ガイド突条部側でせり上がっていると共に、非操作状態の前記操作キーの一側部が前記ガイド突条部と略同等の高さ位置に配置されていることを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、浅押しと深押しの2段階の押圧操作が行えるプッシュスイッチを使用すると共に、前記ガイド突条部を変位させるのに必要な荷重が、前記プッシュスイッチの浅押し操作に必要な操作荷重よりも大きく深押し操作に必要な操作荷重よりも小さくなるように設定してあることを特徴とする押圧操作型入力装置。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記操作キーの一側部が前記ガイド突条部と同一面となる状態または前記ガイド突条部よりも前方へ突出している状態で前記プッシュスイッチが浅押し操作状態に切り替わり、かつ、前記操作キーの一側部が前記ガイド突条部よりも没入している状態で前記プッシュスイッチが深押し操作状態に切り替わるようにしてあることを特徴とする押圧操作型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−65940(P2011−65940A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217239(P2009−217239)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】