説明

担体

本発明は、生理活性化合物を投与するための担体であって、1種又は2種以上のC−Cアルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体に関する。本担体は生理活性化合物、特に化粧成分を含む薬剤の投与に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性化合物の投与に使用される担体、並びに、生理活性化合物と前記担体とを含有する製剤に関する。本担体は生理活性化合物、特に化粧薬品を含む薬剤の、効力、輸送及び送達の改善に寄与する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、ある文献、行為又は知識について言及又は検討する場合、その言及又は検討は、その文献、行為又は知識、或いはそれらの組合せが、本願優先日の時点において公に入手可能であること、公知であること、技術常識の一部であること、又は、本明細書に関する何らかの課題を解決する試みとの関連が知られていることを認めるものではない。
【0003】
薬剤送達における主目的は、所望の作用部位において適切な生物学的効果を得ることにある。製剤の選択は、薬剤の効力にとって極めて重要である。薬剤の有する生理化学特性が、標的作用部位における製剤からの放出を可能とする的確なものでないと、最適な生物活性が得られない場合があるからである。
【0004】
経腸送達は、胃腸管を通じて薬剤を投与するもので、薬剤は胃腸管で吸収され、血流を介して標的作用部位に分配される。例えば、経口で送達された薬剤が、腸を通じて吸収される。
【0005】
胃腸管の化学環境は、外部薬剤送達にとっても重要である。薬剤は、胃腸管の様々な部位の異なるpHにおいて、安定な形態を維持しなければならない。薬剤が吸収不能な複合体を形成したり、化学的又は酵素的に分解されたりすれば、吸収量は減少することになる。また、薬剤が吸収されるためには、胃腸液において溶液の状態とならなければならない。薬剤が沈降すると、薬剤は固体粒子を形成し、溶液から分離してしまう。管腔固体粒子への吸着は、固体が薬剤を吸着するため、やはり溶液からの薬剤の除去が生じる。よって沈降及び吸着は何れも、薬剤の吸収を低下させることになる。多くの場合は、化学的又は製剤上のアプローチによって、分解や複合化を回避するか、或いは少なくとも最小化することにより、薬剤取り込みが制限されるのを避けることができる。
【0006】
更に、薬剤が腸壁や胃壁を介して吸収される場合には、肝臓を通過しなければならない。肝臓は異物を体内から除去する役割を有する。結果として、かなりの割合の薬剤(例えば40〜50%)が、血流に到達する前に代謝され、排出されてしまう可能性がある。薬剤を口腔の内膜(頬側/舌下)又は直腸の内膜(座薬)から吸収させることにより、肝臓が腸内投与に及ぼす影響を低減することができるが、これらの経路が常に適切であるとは限らない。
【0007】
腸内投与された薬剤の生体利用能を向上させる試みとしては、硫酸モルヒネ等のプロドラッグを形成するもの、又は、吸収を促進する賦形剤を使用するものが挙げられる。
【0008】
局所送達は、薬剤が吸収及び分配される部位の体膜に、薬剤を投与するものである。例えば、経皮的に送達される薬剤は、皮膚を通じて吸収される。
【0009】
皮膚は身体の最大の器官であり、内部器官を外部の化学的、物理的、及び病理学的な危険から保護する役割を有する。通常の皮膚は、表皮、真皮、及び皮下組織という三層に分けられる。表皮外方の角化した層(角質層)は、強度、柔軟性、高電気インピーダンス及び乾燥性という性質を備え、微生物の侵入及び増殖を遅らせる役割を有する。この角質層が原理的に、経皮薬剤吸収に対する障壁ともなる。皮膚を保護する皮脂層の存在は、あらゆる水系医薬製剤にとって障壁となると考えられる。
【0010】
拡散型の薬剤分子が皮膚を通じて移動する場合、皮膚の深部層に侵入するために取り得る経路としては、細胞間経路、経細胞経路、及び経付属器経路という3つの経路が挙げられる。付属器を通じた電解質及び大分子の側路(shunt)拡散は重要ではあるが、輸送に利用可能な面積が比較的小さい(皮膚表面の0.1%)ことから、定常状態の薬剤流に対する本経路の寄与は無視することができる。大部分の分子にとって、浸透の際の主な経路は、通常は細胞間経路であると考えられていることから、その改善のための手法の多くは、角質層の強固な「ブリック・アンド・モルタル」(brick and mortar)構成を破壊することに向けられている。輸送経路に関する現在の理論は、(i)受動的経細胞、及び(ii)細胞間表皮輸送という、二つの機序が可能であることを示している。
【0011】
薬剤の皮膚への局所投与は数々の手法で行なわれる。例としては軟膏、パッチ、溶液、皮下デポー、湿布、プラスター、及び経皮送達器具が挙げられる。
【0012】
経皮薬剤送達への関心は高まっているものの、幾つかの根本的な制約が、本技術の利用の拡大を妨げている。経皮送達の使用に伴う主な制約は、皮膚を介した薬剤の輸送速度である。
【0013】
必ずしも全ての薬剤が、全身投薬治療に有益な血中濃度を達成するのに十分な速度で、経皮投与できる訳ではない。例えば、分子量やサイズが類似する薬剤でも、皮膚からの吸収速度が異なる場合がある。例えば、フェンタニルが皮膚に浸透する速度は2mg/cm2/hrであるのに対し、エフェドリンは200mg/cm2/hrである。よって、フェンタニルに必要となる大型の経皮送達系は、投与経路としての利点にも関わらず、現実的でも経済的でもない。
【0014】
皮膚を通じた薬剤吸収を改善するために、皮膚増強剤(skin enhancers)や、様々な製剤技術が開発されてきた。皮膚増強剤は、例えばカプリン酸、オレイン酸、アゾン、デシルメチルスルホキシド、及びヒドロキシシナメート等の化合物を含有する。これらの化合物は通常、特に脂質マトリックスを溶解して角質層の構造を修飾し、薬剤の浸透性を向上させる。例えば、角質層の脂質が除去されると、プロジェステロンの経皮吸収は143%も上昇する。角質層が完全に除去されると、その増強は843%にも上昇する。こうした侵襲性の修飾の場合、こうした系の繰り返し使用に伴って、一般的に報告されている課題があるのは明白である。例としては接触皮膚炎、皮膚の発赤、掻痒及び灼熱感等が挙げられる。これにより、局所刺激を避けるために、パッチの移動や身体の様々な部位からの薬剤の投与が挙げられる。発赤はパッチの除去後数時間で消失すると言われている。しかし、薬剤の浸透性を高めるために、本来は重要な皮膚の保護層を損なうという犠牲を払っているという点を主な理由に、この種の経皮送達系の使用に伴う長期的な危険性や安全性に関して懸念が指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
生理活性化合物の生体利用能を更に改善する製剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
生理活性化合物を投与する際に、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を使用することで、生理活性化合物の効力、輸送及び送達が上昇することが見出された。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、生理活性化合物を投与するための担体であって、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体が提供される。
【0018】
また、本発明は、生理活性化合物を投与するための担体の製造における、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体との使用を提供する。
【0019】
また、上記の担体を調製するための方法であって:
(a)1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体を、1種又は2種以上のC1-4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと混合する工程;及び
(b)工程(a)の混合物に水を加える工程を含んでなる方法が提供される。
【0020】
当然ながら、本担体は、アルコールと、水と、電子移動剤ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とから調製されるものであってもよく、又はこれらの反応生成物であってもよい。こうした条件下で、前記のアルコールと、水と、電子移動剤ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とが相互作用し、変化した形態で存在していてもよい。
【0021】
前記C1−C4アルコールとしては、エタノールが好ましい。
【0022】
本担体は、1種又は2種以上のジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体を含有するか、1種又は2種以上のジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体と、1種又は2種以上のモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体との組合せを含有することが好ましい。
【0023】
当然ながら、「ジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体」という語は、ホスフェートが電子移動剤でジ−又はモノ−置換されてなる(オルト−ホスフェートかピロ−ホスフェートかは問わない)、電子移動剤のホスフェートエステルを指す。
【0024】
一実施形態によれば、前記ジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体は、ジ−トコフェリルホスフェート誘導体、ジ−トコフェリル−ジ−ホスフェート誘導体、ジ−トコトリエノールホスフェート誘導体、及びそれらの混合物からなる群より選択される。中でも、前記ジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体としては、ジ−トコフェリルホスフェートが好ましい。
【0025】
前記モノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体は、モノ−トコフェリルホスフェート誘導体、モノ−トコフェリルジ−ホスフェート誘導体、モノ−トコトリエニルホスフェート、及びそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0026】
好ましい一実施形態によれば、本製剤は、ジ−トコフェリルホスフェート、ジ−トコフェリル−ジ−ホスフェート、及びジ−トコトリエノールホスフェートのうち少なくとも1種を用いて調製される。
【0027】
別の好ましい実施形態によれば、本製剤は、モノ−トコフェリルホスフェート、モノ−トコフェリルジ−ホスフェート、及びモノ−トコトリエニルホスフェートのうち少なくとも1種と、ジ−トコフェリルホスフェート、ジ−トコフェリルジホスフェート、及びジ−トコトリエニルホスフェートのうち少なくとも1種との組合せを用いて調製される。
【0028】
本製剤がモノ−トコフェリルホスフェートとジ−トコフェリルホスフェートとの組合せを含有する場合には、これらの化合物は、それらのα、β、γ及びδ型のうち1種又は2種以上の何れの形態で存在していてもよいが、α及びγ型が好ましい。
【0029】
モノ−トコフェリルホスフェートのジ−トコフェリルホスフェートに対する比率は、好ましくは4:1から1:4であり、より好ましくは2:1である。
【0030】
更に、本発明は、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体、並びに生理活性化合物を含んでなる製剤を提供する。
【0031】
加えて、本発明は、上述した製剤を調製する方法であって、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を、生理活性化合物と混合する工程を含んでなる方法を提供する。
【0032】
更に、本発明によれば、生理活性化合物を投与する方法であって、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を、生理活性化合物と混合する工程を含んでなる方法を提供する。
【0033】
担体はベシクルの形態であってもよい。生理活性化合物がベシクルによって、少なくとも部分的に被包されていてもよい。理論に束縛されることを所望するものではないが、制御された可鍛性を有するベシクルを形成することによって、細胞間経路を通じて製剤を移動させるとともに、生理活性化合物を細胞間から標的細胞に対し、又は体循環へと送達することが可能となる。ジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体は、製剤の投与により生じる炎症を抑える役割を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の担体は、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含有する。水の存在量は50から99%の範囲内が好ましく、より好ましくは60から95%、最も好ましくは70から90%の範囲内である。
【0035】
続いて、この担体を生理活性化合物と混合することにより、製剤を形成する。
【0036】
アルコール
「C1−C4アルコール」という語は、1から4の炭素原子を有するアルコールを指す。例としてはC1-4アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はブタノール等が挙げられる。C1-4アルコールのポリオール及びポリマーとしては、グリコール、例としてはプロピレングリコール又はポリエチレングリコール、例えばPEG400が挙げられる。複数種のアルコールの組合せを使用してもよい。エタノールが好ましい。
【0037】
1−C4アルコールの存在量は、0.5から50%の範囲が好ましく、より好ましくは5から40%、最も好ましくは10から30%の範囲である。
【0038】
電子移動剤ホスフェート誘導体
「電子移動剤」という語は、リン酸化され得る作用剤であって、(非リン酸化形において)1つの電子を受容して比較的安定な分子ラジカルを生成し得るか、又は2つの電子を受容して可逆的酸化還元系に関与し得る作用剤を言う。リン酸化され得る電子移動剤の例としては、ヒドロキシクロマン、例えばα、β、γ及びδトコールの、鏡像異性体及びラセミ体;電子移動剤K1及びユビキノンの還元型のキノール;ヒドロキシカロテノイド、例えばレチノール;カルシフェロール及びアスコルビン酸が挙げられる。中でも、電子移動剤は、トコール、レチノール、電子移動剤K1の還元型のキノール、及びこれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0039】
中でも、電子移動剤は、トコフェロール又はトコトリエノール等のトコールであることがより好ましい。トコールとしては、下記式(I)を有する6:ヒドロキシ2:メチルクロマンの誘導体のあらゆる異性体、例えばα−5:7:8トリ−メチル;β−5:8ジ−メチル;γ−7:8ジ−メチル;及びδ8メチル誘導体が挙げられる。
【0040】
【化1】

【0041】
式中、R1、R2、及びR3は各々独立に、水素及びC1-4アルキルからなる群より選択されるが、メチルが好ましい。
【0042】
トコフェロールの場合、R4は4:8:12トリ−メチルトリデカンであり、2、4、及び8位(*参照)は、R又はS活性を有する立体異性体であってもよく、ラセミ体であってもよい。トコトリエノールの場合、R4は4:8:12トリ−メチルトリデカ−3:7:11トリエンであり、2位は、R又はS活性を有する立体異性体であってもよく、ラセミ体であってもよい。中でも、電子移動剤としては、α−トコフェロール又はトコトリエノールが最も好ましい。
【0043】
「ホスフェート誘導体」とは、リン酸化電子移動剤の酸形、ホスフェートの塩(例えば金属塩、例えばアルカリ又はアルカリ土類金属塩、例としてはナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウム塩)、並びに、ホスフェートプロトンがC1−C4アルキル基やホスファチジル基等の他の置換基で置換されてなる他の任意の誘導体を指す。
【0044】
場合によっては、フォスファチド等のホスフェート誘導体の使用が必要な場合もある。ホスファチジル誘導体は、有機ホスフェートのアミノアルキル誘導体である。これらの誘導体は、R56N(CH2nOHという構造を有するアミンから調製することができる。式中、nは1から6の整数であり、R5及びR6は各々独立に、H及びC1-4アルキルから選択される。ホスファチジル誘導体は、電子移動剤のヒドロキシルプロトンをホスフェート・エンティティで置換し、続いてアミン(例えばエタノールアミン又はN,N’ジメチルエタノールアミン等)と反応させることにより、調製することができる。ホスファチジル誘導体を調製する方法の1つとして、ピリジンやトリエチルアミン等の塩基性溶媒にオキシ塩化リンを混合して中間体を調製し、これを更にアミンのヒドロキシ基と反応させて、対応するホスファチジル誘導体(例えばPコリルPトコフェリル二水素ホスフェート等)を製造するという方法が挙げられる。
【0045】
「C1-4アルキル」という語は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、1から4の炭素原子を有する炭化水素基を指す。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、及びシクロブチルが挙げられる。
【0046】
特に好ましい電子移動剤ホスフェート誘導体としては、ジ−トコフェリルホスフェート誘導体、ジ−トコフェリル−ジ−ホスフェート誘導体、ジ−トコトリエノールホスフェート誘導体、モノ−トコフェリルホスフェート誘導体、モノ−トコフェリルジ−ホスフェート誘導体及びモノ−トコトリエニルホスフェート誘導体が挙げられる。中でも、モノ−トコフェリルホスフェート誘導体とジ−トコフェリルホスフェート誘導体との組合せが最も好ましい。
【0047】
モノ−α−トコフェリルホスフェート等のモノ−電子移動剤の濃度が上昇するにつれて、担体の安定性も増すことが見出された。モノ−α−トコフェリルホスフェートとジ−トコフェリルホスフェートとの組合せを使用する場合、これらは4:1から1:4の比率とすることが好ましく、より好ましくは2:1の比率である。
【0048】
電子移動剤ホスフェート誘導体の存在量は、最高で11%の範囲が好ましく、より好ましくは1から11%の範囲、最も好ましくは1から3%の範囲である。
【0049】
電子移動剤ホスフェート誘導体の複合体
安定性や送達可能性の改善等、他の特性が所望される場合には、電子移動剤ホスフェート誘導体の複合体を使用してもよい。この複合体とは、1種又は2種以上の電子移動剤ホスフェート誘導体と、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及びこれらのアミノ酸を豊富に含むタンパク質からなる群より選択される、1種又は2種以上の複合化剤との反応生成物である。これらは国際特許公報WO02/40034に開示されている。本文献は引用により本明細書に組み込まれる。
【0050】
好ましい複合化剤としては、アルギニン及びリシン等のアミノ酸、並びに、下記式(II)等の3級置換アミンからなる群より選択されるものが挙げられる。
【0051】
NR789 (II)
【0052】
式中、R7は、カルボニルが介在していてもよいC6-22アルキルからなる群より選択され;
8及びR9は各々独立に、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3X(ここでXは、H、Na、K又はアルカノールアミンである)からなる群より選択され、
但し、R8及びR9が何れもHであることはなく、また、R7がRCOである場合には、R8がNCH3であって、R9が(CH2CH2)N(C24OH)−H2CHOPO3であるか、或いはR8及びR9がともにN(CH22N(C24OH)CH2COOを形成する)を有する。
【0053】
好ましい複合化剤としては、アルギニン、リシン、又はラウリルイミノジプロピオン酸が挙げられる。アルカリ窒素中心とリン酸エステルとの間に複合化が生じ、安定な複合体が形成されるからである。
【0054】
「C6-22アルキル」という語は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、6から22の炭素原子を有する炭化水素を指す。例としては、ヘキシル、シクロヘキシル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及びオクタデシルが挙げられる。
【0055】
生理活性化合物
「生理活性化合物」という語は、ヒト又は動物に生物学的効果を有する、医薬、獣医薬又は化粧品用途の化合物を指す。生理活性化合物としては、薬剤又はその誘導体、特にそのホスフェート誘導体が挙げられる。薬剤としては、ビタミン、植物化学物質、化粧薬品、栄養補助剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は核酸が挙げられる。当然のことながら、生理活性化合物の中には、これらのうち2種類以上の分類に該当するものも存在する。
【0056】
薬剤の例としては以下が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0057】
麻薬性鎮痛薬、例えばモルヒネ、オキシコドン、及びレボルファノール;穏和なオピオイド作動薬、例えばコデイン及びプロポキシフェン;混合オピオイド作動薬、例えばブプレノルフィン及びペンタゾシン;オピオイド拮抗薬、例えばナロキソン及びナルトレキソン;非オピオイド鎮痛剤、例えばアセトアミノフェン及びフェナセチン;コルチコステロイド、例えばコルチゾン;吸入用麻酔剤、例えばハロタン、エンフルラン;静脈用麻酔剤、例えばバルビツール酸類、ベンゾジアゼピン、オピオイド、神経遮断薬(例えばドロペリドール及びフェンタニル)、ケタミン、及びプロポホル;局所麻酔剤、例えばプロカイン及びリグノカイン;制吐剤、例えばスコポラミン;交感神経様作用剤、例えばアドレナリン及びドーパミン;アドレナリン作動薬、例えば直接作用式作動薬(例えばドブタミン及びエピネフリン)、間接作用式作動薬(例えばアンフェタミン及びチラミン)、並びに直接及び間接(混合作用)作動薬(例えばエフェドリン及びメタラミノール)、アドレナリン作動拮抗薬、例えばα遮断薬(例えばプラゾシン及びフェントラミン)、β遮断薬(例えばアテノロール、チモロール及びピンドロール)、並びに神経伝達物質の取り込み又は放出に作用する薬剤(例えばコカイン、レセルピン及びグアネチジン);抗コリン作用薬、例えば抗ムスカリン作用薬(例えばアトロピン及びリン酸アトロピン)、神経節遮断薬(例えばニコチン及びメカミラミン)、神経筋遮断薬(例えばアトラクリウム及びツボクラリン);直接コリン作動薬、例えばピロカルピン;間接コリン作動薬(可逆的及び不可逆)、例えばネオスチグミン及びエコチオフェート。
【0058】
抗パーキンソン病薬、例えばアマンタジン、レボドパ、トルカポン、ロピニロール、セレギリン及びブロモクリプチン;ホルモン及びその断片、例えば性ホルモン、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン及びインシュリン;抗糖尿病薬、例えばインシュリン、グルカゴン様ペプチド及び血糖降下薬、例えばスルホニル尿素、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤及びチアゾリジンジオン;抗狭心症薬、例えば有機硝酸塩(例えばイソソルビド及びニトログリセリン)、ラノラジン、b−遮断薬及びカルシウム・チャンネル遮断薬(例えばジルチアゼム、ニフェジピン及びベラパミル);抗不安薬及び覚醒薬、例えばベンゾジアゼピン(例えばアルプラゾラム及びジアゼパム)、ブスピロン、ヒドロキシジン、ゾルピデム、バルビツール酸類(例えばフェノバルビタール)及び非バルビツール系鎮静剤(例えば抗ヒスタミン剤及び抱水クロラール);精神運動興奮薬、例えばアンフェタミン、カフェイン、コカイン、テオフィリン及びニコチン;抗鬱役、例えば三環系/多環系抗鬱役(例えばアミトリプチリン)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばフルオキセチン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えばフェネルジン);神経遮断薬、例えば定型抗精神病薬(例えばフェノチアジン及びブチロフェノン、例えばクロルプロマジン及びハロペリドール)及び非定型抗精神病薬(例えばベンズイソオキサゾール、ジベンゾジアゼピン及びチエノベンゾジアゼピン、例えばリスペリドン、クロザピン及びオランザピン);抗癲癇作用薬、例えばカルバマゼピン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビン、トピラメート、ビガバトリン、ラモトリギン、エトスクシミド、バルプロ酸、バルビツール酸類及びフェニトイン。
【0059】
うっ血性心不全薬、例えば血管拡張剤、利尿薬及び変力薬(例えば強心配糖体、β−アドレナリン作動薬及びホスホジエステラーゼ阻害剤);血管拡張剤、例えばACE阻害剤(例えばエナラプリル)、ヒドララジン、イソソルビド及びミノキシジル;利尿薬、例えばチアジド利尿薬(例えばヒドロクロロチアジド)、ループ利尿薬(例えばフロセミド)、カリウム保持性利尿薬(例えばアミロリド)及び炭酸脱水酵素阻害剤(例えばアセタゾールアミド);強心配糖体、例えばジゴキシン;β−アドレナリン作動薬、例えばドブタミン;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばアムリノン及びミルリノン;不整脈治療剤、例えばナトリウム・チャンネル遮断薬(例えばジソピラミド、フレカイニド、リドカイン)、β−アドレナリン受容体遮断薬(例えばメトプロロール、エスモロール及びプロプラノロール)、カリウム・チャンネル遮断薬(例えばアミオダロン及びソタロール)、カルシウム・チャンネル遮断薬(例えばジルチアゼム及びベラパミル)、アデノシン及びジゴキシン;血圧降下薬、例えば利尿薬(例えばチアジド、ループ利尿薬及びカリウム保持性利尿薬)、β−遮断薬(例えばアテノロール)、ACE阻害剤(例えばエナラプリル及びラミプリル)、アンジオテンシンII拮抗薬(例えばロサルタン)、カルシウム・チャンネル遮断薬(例えばアムロジピン、ニフェジピン及びベラパミル)、α−遮断薬(例えばドキサゾシン、プラゾシン及びテトラゾシン)、及び他の薬剤、例えばクロニジン、ジアゾキシド及びヒドララジン。
【0060】
血小板抑制薬、例えばアブシキシマブ、アスピリン、クロピドグレル及びチロフィバン;抗凝固剤、例えばエノキサパリン、ヘパリン及びワルファリン;血栓溶解剤、例えばアルテプラーゼ、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ;出血治療薬、例えばアミノカプロン酸、トラネキサム酸及びビタミンK;貧血治療薬、例えばエリスロポエチン、鉄、葉酸及びシアノコバラミン;トロンビン阻害剤、例えばレピルジン;抗微生物薬、例えば1種又は2種以上の嫌気生物、グラム陽性生物及びグラム陰性生物に対する活性を有する薬剤;広域スペクトル(例えばテトラシクリン及びクロラムフェニコール)、狭域スペクトル(例えばイソニアジド)、及び拡張スペクトル活性(例えばアンピシリン)を有する抗微生物剤;代謝を阻害する抗微生物剤(例えばスルホンアミド及びトリメトプリム)、細胞壁合成を阻害する抗微生物剤(例えばβ−ラクタム及びバンコマイシン)、タンパク質合成を阻害する抗微生物剤(例えばテトラシクリン、アミノグリコシド、マクロライド、クリンダマイシン及びクロラムフェニコール)、及び核酸 機能又は合成を阻害する抗微生物剤(例えばフルオロキノロン及びリファンピシン);抗ミコバクテリア剤、例えば結核及びらい病治療用薬剤;抗真菌剤、例えばアンフォテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール及びナイスタチン;抗原虫剤、例えばクロロキン、メトロニダゾール、メフロキン、ピリメタミン、キナクリン、及びキニジン;駆虫剤、例えばプラジカンテル及びメベンダゾル;呼吸器感染用抗ウイルス薬(例えばアマンタジン、リバビリン及びリマンタジン)、ヘルペス及びサイトメガロウイルス感染用抗ウイルス薬(例えばアシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、ファンシクロビル、ガンシクロビル及びビダラビン)、ヒト免疫不全ウイルス感染用抗ウイルス薬(例えばアバカビル、アデフォビル、アプムレナビル、デラビルジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、及びジドブジン)、及び肝炎、白血病及びカポジ肉腫用抗ウイルス薬(例えばインターフェロン)。
【0061】
抗がん剤、例えば代謝拮抗剤(例えばシタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート及び6−チオグアニン)及び抗生物質(例えばブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン及びプリカマイシン)、アルキル化剤(例えばカルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ストレプトゾトシン及びメクロレタミン)、微小管阻害剤(例えばナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチン及びビンクリスチン)、ステロイドホルモン及びその拮抗薬(例えばアミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾン及びタモキシフェン)、及び他の薬剤、例えばアスパラギナーゼ、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、インターフェロン及びプロカルバジン;抗炎症剤、例えば非ステロイド系抗炎症薬(例えばアスピリン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ピロキシカム、フェイルブタゾン、トルメチン、インドメタシン及びケトプロフェン)、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤(例えばセレコキシブ及びロフェコキシブ)、抗関節炎剤(例えばクロロキン、金塩、メトトレキサート及びD−ペニシラミン)、及び通風治療薬(例えばアロプリノール、コルヒチン、プロベネシド及びスルフィンピラゾン)。
【0062】
オータコイド及びオータコイド拮抗薬、例えばプロスタグランジン(例えばカルボポスト、ミソプロストール、及びジノプロスト)、H1抗ヒスタミン剤(例えばシクリジン、メクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、セチリジン及びロラタジン)、H2抗ヒスタミン剤(例えばシメチジン、ファモチジン、ニザタジン及びラニチジン)、及び偏頭痛用治療薬(例えばβ−遮断薬、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、メチセルギド及びスマトリプタン);喘息薬、例えばβ−アドレナリン作動薬、コルチコステロイド、抗炎症予防薬(例えばクロモリン及びネドクロミル)及びコリン拮抗薬(例えばイプラトロピウム);呼吸器系への作用薬、例えばロイコトリエンの形成又は機能を標的とした薬剤(例えばモンテルカスト、ジロートン及びザフィルルカスト);アレルギー性鼻炎薬剤、例えば抗ヒスタミン剤、α−アドレナリン作動薬、コルチコステロイド及び抗炎症予防薬、例えばクロモリン;慢性閉塞性肺疾患薬、例えば気管支拡張剤(例えばβ−アドレナリン作動薬及びコリン拮抗薬、キサンチン−オキシダーゼ阻害剤、例えばテオフィリン)、及び糖質コルチコイド;ステロイドホルモン及びその拮抗薬、例えばエストロゲン(例えばエストラジオール、メストラノール及びキネストロール)、選択的エストロゲン調節剤(例えばラロキシフェン)、プロゲスチン(例えばヒドロキシプロジェステロン、ノルジェストレル、ノレチンドロン、及びメドロキシプロジェステロン)、抗プロゲスチン(例えばミフェプリストン)、アンドロゲン(例えばダナゾール、ナンドロロン、スタノゾロール、テストステロン、シピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン)、抗アンドロゲン(例えばシプロテロン、フィナステリド及びフルタミド)、コルチコステロイド(例えばベクロメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、プレドニソロン及びトリアムシノロン)、及び副腎コルチコイド生合成阻害剤(例えばアミノグルテチミド、ケトコナゾール、メチラポン、ミフェプリストン及びスピロノラクトン);骨粗しょう症治療薬、例えばビスホスホネート(例えばアレンドロネート、パミドロネート及びリセドロネート)、カルシトニン、カルシウム及びエストロゲン;抗肥満薬、例えばリパーゼ阻害剤(例えばオルリスタット)、抗肥満ペプチド(例えば成長ホルモン及びその断片)及び交感神経様作用薬;胃潰瘍及び炎症用治療薬、例えばプロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾール及びランソプラゾール)、抗微生物剤、プロスタグランジン(例えばミソプロストール)、及びH2抗ヒスタミン剤(例えばラニチジン);抗体薬;抗甲状腺薬、例えばチロキシン。
【0063】
ペプチド、タンパク質、及びポリペプチド薬、例えば核酸、オリゴヌクレオチド、アンチセンス薬、酵素、サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子)、サイトカイン類似体、サイトカイン 作動薬、サイトカイン 拮抗薬、ホルモン(例えばカルシトニン、及び副甲状腺ホルモン)、ホルモン断片(例えばテリパラチド)、ホルモン類似体(例えば成長ホルモン作動薬、成長ホルモン拮抗薬、例えばオクトレオチド、及びゴナドトロピン放出ホルモンの類似体、例えばロイプロリド)、インシュリン、インシュリン断片、インシュリン類似体(例えば組み換えヒトインシュリン類似体、リスプロ、グラルジン、アスパルト及びデテミル)、グルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチド断片、グルカゴン様ペプチド類似体(例えばエクステナチド)、イムノグロブリン、抗体、ワクチン、遺伝子治療薬、リポタンパク質、エリスロポエチン、エンフビルチド及びエプチフィバチド;天然のホルモン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、及びオリゴヌクレオチドの直接又は間接的な作動薬、拮抗薬、調節剤、治療剤、又は阻害剤である、ホルモン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸及びオリゴヌクレオチド治療薬;組み換え方法によって合成された、或いは天然産物の化学修飾によって得られた、小分子及び大分子の治療用タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸及びオリゴヌクレオチド;合成又は天然由来の小分子及び大分子の治療用タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸及びオリゴヌクレオチド;小分子の治療用ペプチド、例えば成長因子、ホルモン、サイトカイン及びケモカイン;天然のタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及び核酸の類似体、断片及び変異体、及び同様の化合物(例えばヘマチド、エリスロポエチン及びオクトレオチドの変異体、ソマトスタチンの類似体);ヒト及び動物の疾病の治療又は予防用のホルモン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及び核酸、例えばアレルギー/喘息、関節炎、ガン、糖尿病、成長障害、心臓血管疾患、炎症、免疫学的障害、脱毛、疼痛、眼科疾患、癲癇、婦人科疾患、CNS疾患、ウイルス感染、細菌感染、GI疾患、肥満、及び血液学的疾患。
【0064】
植物化学物質、例えばα−ビサボロール、ユーゲノール、シリビン、大豆イソフラボン、植物ステロール、及びイリドイドグリコシド、例えばオーキュビン及びカタルポール;セスキテルペンラクトン、例えばアルニカ・クラミッソニス(Arnica chamissonis)由来の偽グアイアノリド;テルペン、例えばロスマリン酸及びロスマノール;フェノール性グリコシド、例えばサリチレート、例えばサリシン、サリゲニン及びサリチル酸;トリテルペン、例えばタキサステロール、α−ラクツセロール、イソラクツセロール及びタラキサコシド;ヒドロキノン誘導体、例えばアルブチン;フェニルアルカノン、例えばジンジェロール及びシャガオール;ヒペルシン;抗脂質異常症薬、例えばHMGCoAレダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン、アトルバスタチン、及びプラバスタチン)、フィブレート(例えばクロフィブレート及びジェンフィブロジル)、ナイアシン、プロブコール、コレステロール吸収阻害剤(例えばエゼチミブ)、コレステロールエステルトランスフェラーゼ拮抗薬(例えばトルセトラピブ)、HDLコレステロール増加剤(例えばトルセトラピブ);トリグリセリド低減剤(例えばフィブレート)、V−保護剤(例えばAGI−1067)、ヒトアポリポタンパク質の変異体(例えばETC−216);アシルフロログルシド、例えばキサントフモール、ルプロン、フムロン、及び2−メチルブタ−3−エン−2−オール;栄養補助剤、例えば栄養健康剤又は他の補助剤、ビタミン、例えば補酵素Q及びレチノール(ビタミンA)、栄養剤、ホルモン産生前駆体分子、タンパク質、例えばエラスチン、コラーゲン及びインシュリン、アミノ酸、植物抽出物、例えばぶどう種抽出物、エフェドリン、DHEA、イソフラボン及び植物ステロール;並びに、化粧成分、例えば抗老化又は抗しわ剤、例えばエラスチン及びコラーゲン及び抗酸化剤、例えばレチノール及び補酵素Q、レチノイン酸、オメガ−3−脂肪酸、グルコサミン、γ−トコフェリル及びγ−トコフェリルホスフェート誘導体。
【0065】
当然ながら、医薬的に許容し得る前記薬剤の塩及び誘導体も、本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
生理活性化合物の量は、最高で5%までの範囲が好ましく、より好ましくは0.5から3%の範囲、最も好ましくは0.5から2%の範囲である。
【0067】
ベシクル
ベシクルを使用する場合、その径は50から10,000/nmの範囲が好ましく、より好ましくは100から500nmの範囲、最も好ましくは300から500nmの範囲である。
【0068】
ベシクルによって生理活性化合物が少なくとも部分的に被包されていてもよい。
【0069】
投与方式
本製剤としては、非経口、腸内、経口、局所、経皮、眼内、直腸内、膣内、鼻腔内、及び肺内投与に適した製剤が挙げられる。本製剤は、液体、溶液、懸濁液、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、粉末、エアロゾル、パッチ、腸溶性錠剤、カプセル、座薬、ペッサリー、又はタンポン等の何れの形態としてもよく、その調製は、製薬分野で周知の任意の方法、例えば、Remington JP., The Science and Practice of Pharmacy, ed. AR Gennaro, 20th edition, Lippincott, Williams and Wilkins Baltimore, Md(2000)に記載の方法等により行なうことができる。これらの方法は、生理活性化合物を担体に組み合わせる工程と、その後に必要に応じて製剤を所望の製品へと成形する工程とを有する。
【0070】
本製剤は(静脈内、筋肉内、皮下等に)注射、点滴、又はインプラントすることにより、投薬形態で、製剤として、又は、従来の医薬的に許容し得る非毒性の担体及びアジュバントを含有する適切な送達器具又はインプラントを通じて、非経口的に投与してもよい。
【0071】
非経口投与用製剤は、単位投薬形態として(例えば、単回投薬アンプルとして)提供してもよく、或いは、数回の投薬単位を含有するバイアルとしてもよい。後者の場合は、バイアルに適切な保存料を加えてもよい。本製剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、点滴器具、又はインプラント用送達器具の何れの形態としてもよく、また、乾燥粉末として提供し、使用前に水又は他の適切なビヒクルで戻すことにしてもよい。生理活性化合物の他に、本製剤は、非経口的に許容し得る適切な担体及び/又は賦形剤を含んでいてもよい。生理活性化合物の放出を制御するべく、生理活性化合物をマイクロスフェア、マクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み入れてもよい。更には、本製剤は懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含んでいてもよい。
【0072】
上に示したように、本製剤を無菌注射に適した形態としてもよい。こうした製剤を調製する場合は、本生理活性化合物を非経口的に許容し得るビヒクル液に溶解又は分散させる。本発明に適用可能な、許容し得るビヒクル及び溶媒の例としては、水や、水に適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム、又は適切な緩衝剤、1,3−ブタンジオール、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液を加えて適切なpHに調整したもの等が挙げられる。水性製剤は、1種又は2種以上の保存料(例えば、メチル、エチル、又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート)を含んでいてもよい。何れかの化合物が水に溶解し難く、或いは殆ど溶解しない場合には、溶解促進剤や可溶化剤を加えてもよく、或いは溶媒に10〜60%w/wのプロピレンやグリコール等を加えてもよい。
【0073】
制御放出用の非経口投与用組成物は、水性懸濁液、マイクロスフェア、マクロカプセル、磁気マイクロスフェア、油性溶液、油性懸濁液、又は乳濁液等の形態とすることが出来る。或いは、生理活性化合物を生体適合性のある担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラント、又は点滴器具に組み入れてもよい。
【0074】
マイクロスフェア及び/又はマクロカプセルの調製に使用される材料の例としては、生分解性/生体内分解性ポリマー、例えばポリグラクチン、ポリ(イソブチル シアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)、及びポリ(乳酸)が挙げられる。
【0075】
制御放出用の非経口投与用製剤を製剤する際に使用できる生体適合性担体としては、炭水化物(例えばデキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン)、リポタンパク質、又は抗体が挙げられる。
【0076】
インプラントに使用される材料としては、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)であってもよく、生分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、又はポリ(オルトエステル))であってもよい。
【0077】
経口投与に適した製剤は、分離した単位、例えば所定量の生理活性化合物を各々含有するカプセル、カシェ、又は錠剤として;粉末又は顆粒として;溶液、懸濁液、又は乳濁液として提供するのが、便宜上好ましい。また、生理活性化合物は、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提供してもよい。経口投与用の錠剤及びカプセルは、従来の賦形剤、例えば結着剤、充填剤、滑剤、崩壊剤、又は湿潤剤を含有していてもよい。本技術分野で周知の方法に従って錠剤を被覆してもよい。経口投与用の液体調製剤は、例えば水性又は油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルの形態としてもよく、或いは乾燥品として提供し、使用前に水やその他の適切なビヒクルで戻すこととしてもよい。こうした液体調製剤は、従来の添加剤、例えば懸濁剤、乳化剤、食用油等の非水性ビヒクル、又は保存料を含んでいてもよい。
【0078】
経皮局所投与の場合には、生理活性化合物を軟膏、クリーム、又はローションとして、或いは経皮パッチとして製剤すればよい。軟膏及びクリームは、例えば、水性又は油性の何れを主体としてもよく、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えて製剤することができる。ローションは、水性又は油性の何れを主体としてもよく、また、通常は1種又は2種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含んでなる。
【0079】
口内局所投与に適した製剤としては、活性成分を香味基材(通常はショ糖)及びアカシアゴム又はトラガカントゴム中に含んでなるドロップ;活性成分を不活性基材(例えばゼラチン又はショ糖、及びアカシアゴム)中に含んでなるトローチ;並びに、活性成分を適切な液体担体中に含んでなる口腔洗浄薬が挙げられる。
【0080】
直腸内投与に適した製剤は、座薬として提供することができる。適切な賦形剤としては、カカオバターや、本技術分野で通常用いられるその他の材料が挙げられる。座薬は便宜上、生理活性化合物を軟化又は溶解させた担体に混合した後、冷却して成型することにより調製される。
【0081】
膣内投与に適した製剤は、生理活性化合物に加えて、本技術分野で公知の適切な賦形剤を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレーとして提供することができる。
【0082】
鼻腔内や肺内投与の場合、本製剤を溶液又は懸濁液の形態として、或いは粉末として投与することができる。
【0083】
溶液及び懸濁液は、通常は水(例えば無菌水又はピロゲン非含有水)を主体とし、生理学的に許容し得る共溶媒(例えばエタノール、プロピレン グリコール、又はポリエチレングリコール、例えばPEG400)等を更に含有する。
【0084】
こうした溶液又は懸濁液は、更に他の賦形剤、例えば保存料(例えば塩化ベンザルコニウム等)、可溶化剤又は界面活性剤、例えばポリソルベート(例えばTween 80、Span 80、塩化ベンザルコニウム等)、緩衝剤、等張性調整剤(例えば塩化ナトリウム)、吸収促進剤、及び粘度増加剤等を含有していてもよい。懸濁液は更に懸濁剤(例えば微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)を含んでいてもよい。
【0085】
溶液又は懸濁液は、従来の手段により、例えばスポイト、ピペット、又はスプレーを用いて、鼻腔に直接投与してもよい。本製剤は、単回投薬形態としてもよく、複数回投薬形態としてもよい。後者の場合には、投与量を計測する手段を提供することが好ましい。スポイト又はピペットの場合は、適切な所定量の溶液又は懸濁液が投与されるようにすればよい。スプレーの場合には、噴霧スプレーポンプに計量手段を設ければよい。
【0086】
気管への投与を行なう手段としては、エアロゾル製剤も挙げられる。この製剤は、生理活性化合物を加圧容器内に、適切な推進剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切なガスとともに入れたものである。エアロゾルは便宜上、レシチン等の界面活性剤を更に含んでいることが好ましい。薬剤の投与量を制御するには、例えば計量バルブを設ければよい。
【0087】
或いは、上記化合物を乾燥粉末の形態として提供してもよい、例としては、上記化合物と適切な粉末基材(例えばラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドン(PVP)等)との混合粉末が挙げられる。便宜上は、粉末担体が鼻腔内でゲルを形成するのが好ましい。本粉末組成物を単位投薬形態として、例えばゼラチン等のカプセル又はカートリッジして提供してもよく、或いはブリスター・パックに被包し、そこから吸入器、例えばDiskhaler(GlaxoSmithKlineの商標)、又は定量エアロゾル吸入器を用いて粉末を投与するようにしてもよい。
【0088】
他の賦形剤
当業者であれば分かるように、本製剤に他の賦形剤を含有させてもよい。他の賦形剤の選択は、使用する生理活性化合物の特性や投与の方式によって様々である。他の賦形剤の例としては、溶媒、増粘剤又はゲル化剤、界面活性剤、緩衝剤、軟化剤、甘味料、崩壊剤、香味剤、着色剤、保存料、香料、電解質、膜形成ポリマー等が挙げられる。適切な甘味料としては、ショ糖、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、又はサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸、又は寒天が挙げられる。適切な香味剤としては、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、サクランボ、オレンジ又はラズベリー香料が挙げられる。適切な保存料としては、ナトリウム、ベンゾエート、ビタミンE、αトコフェリル、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0089】
本発明の製剤に通常用いられる賦形剤としては、ゲル化剤(例えばカルボキシビニルポリマーであるカルボマー(Carbopol)等)、保存料(例えばメチルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及び安息香酸ナトリウム等)、及び緩衝剤(例えば水酸化ナトリウム等)が挙げられる。賦形剤の存在量は例えば、最大で約5%である。
【0090】
担体又は製剤を調製する方法
担体を調製する方法は、電子移動剤ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体をアルコールと混合する工程と、続いて水を加える工程とを有する。その際、担体を調製する方法の任意の工程において、生理活性化合物を担体に加えることにより、製剤が調製される。
【0091】
通常は、アルコールを55℃以上の温度に加熱し、電子移動剤ホスフェート誘導体をアルコールに溶解させる。生理活性化合物がアルコールに可溶の場合には、電子移動剤ホスフェート誘導体とアルコールとを混合する際に生理活性化合物を加え、残分の水を加えて製剤とする。
【0092】
他の賦形剤、例えばゲル化剤、保存料、及び緩衝剤は、調製方法の任意の工程で加えればよいが、通常は水を加えた後に加える。
【0093】
担体及び製剤の成分を混合する手法としては、公知の適切な混合手法を任意に使用することができる。例としては、振盪やボルテックスが挙げられる。
【実施例】
【0094】
次いで、本発明の様々な実施形態/態様について、以下の非制限的な実施例を参照しながら説明する。実施例の説明においては、添付の図面を参照する。
【0095】
実施例1
本実施例は、本発明に係る製剤を用いたヒト副甲状腺ホルモン(断片1〜34)(PTH)の経皮摂取を調べるものである。
【0096】
材料及び方法
試験製剤は以下のように調製した。パーセンテージは何れもw/wである。
【0097】
【表1】

【0098】
TPM−02/PTH製剤は乳状の外観を有するコロイド状懸濁液であった。これはベシクルが形成されたことを示している。
【0099】
処置
Sprague-dawleyラット(10〜12週齢雄)を無作為に複数の処理群に割り当て(グループ1及び2、n=6)、他の飼育固体が背中の製剤を舐めるのを避けるため、個別の飼育箱に隔離して飼育した。
【0100】
処置群:
・グループ1 − 100mgのTPM−01/PTH/体重200gを1日2回、24時間。
・グループ2 − 100mgのTPM−02/PTH/体重200gを1日2回、24時間。
【0101】
ラットを麻酔して秤量し、首直下の〜5×4cmの領域を剃毛した。処置の開始前に、麻酔下でラットの尾から採血し、血漿を収集してPTHレベルを決定した。翌日の最初に、各ラットに応じた投与量の製剤を秤量し、手袋を装着した指でラットの皮膚に塗り込んだ。製剤をグループ1及び2に対し、1日2回(朝及び夜)、24時間投与した。処置気管の終了後、CO2により窒息させてラットを屠殺し、心臓穿刺により放血した。
【0102】
血漿中PTHの分析:採取した血液から血漿を遠心分離し、分析まで−20℃で保存した。Human Bioactive PTH 1-34 ELISAキット(Immunotopics Inc., USA)を用い、製造者の説明書に従って、ラットの血漿PTHレベルを分析した。
【0103】
結果
血漿中に検出された平均PTHレベルを図1に纏めた。
【0104】
TPM−01/PTHの1日2回投与では、24時間後に血漿中に存在するPTHの量に有意な(p<0.05*)上昇がみられた。平均血漿PTHレベルは、未処理ラットの基準レベルに対して685pg/ml上昇した。血漿におけるこの上昇は、総投与量の4.5%に相当する。
【0105】
TPM−02/PTHの1日2回投与では、24時間後に血漿中に存在するPTHの量に有意な(p<0.05*)上昇がみられた。この上昇(1185pg/ml)は総投与量の7.7%に相当し、TPM−01/PTH製剤に対して70%向上したことになる。
【0106】
*スチューデントt−検定の結果
【0107】
TPM−02/PTHの経皮処置によって、ラット血漿中のPTHレベルが上昇した。これは、TPMによって、PTH−(1−34)が24時間に亘り、皮膚を通じて吸収された結果、循環PTH血漿レベルが未処理対照に対して有意に上昇したことを示唆している。処置から72時間後、PTHの血漿レベルは基準レベルに戻っていた。
【0108】
既報の実験によれば、治療量(25μg/kg体重)の皮下注射の後、ラット血漿のPTHレベルは注射から40〜60分後にピークに達し、4時間以内に完全に元に戻ったことが示されている。この実験は局所投与ではあるが、遥かに大きな用量をラットに投与している(500μg/kg体重)。PTHが急速に回復することを考慮すると、初回投与から24時間にもPTHが高レベルで維持されているのは、総投与量の僅か数パーセントしか吸収されていないものと結論付けるのが妥当である。従って、TPM製剤の局所投与によって得られる有効な投薬量は、24時間後に測定されたPTHレベルよりも遥かに大きいものと考えられる。
【0109】
結論
TPM−01及びTPM−02製剤は何れも有効にPTHを送達したものの、TPM−02/PTHが循環系に送達したPTHは、TPM−01/PTHより70%も多かった。本発明に係る製剤は、皮膚を通じて活性成分を体循環系に送達する上で、より有効である。
【0110】
実施例2
この方法は、後に本発明に係る製剤に使用するために、100mlの補酵素Q(CoQ)/トコフェリルホスフェート混合製剤を製造するものである。最終製剤は、0.5%のCoQ10、1%のTPM、10%のエタノール、1%のcarbopol、0.1%のメチルパラベン、残分のミリQ水を含有する。
【0111】
装置及び材料
エタノール(ARグレード)
ミリQ水
補酵素Q(Kaneka)
トコフェリルホスフェート(TP)及びジ−トコフェリルホスフェート(T2P)を2:1w/wの比率で含有するトコフェリルホスフェート混合物(TPM)(Phosphagenics Ltd)
カルボマー934P USP粉末(Croda Surfactants Ltd)
メチルパラベンBP粉末(Bronson & Jacobs)
1M水酸化ナトリウム(NaOH)
天秤(Mettler AE 240)
Falconチューブ
100mlプラスチック製試料容器
70℃の湯浴
Multi−ボルテックス
【0112】
手順
【0113】
1.0.5gのCoQを50ml Falconチューブ内に正確に秤量した。
【0114】
2.1gのTPMを同じ50ml Falconチューブ内に正確に秤量した。
【0115】
3.10g(mlではない)のエタノールをチューブ内に秤量した。堅く閉栓して混合した。
【0116】
4.70℃の湯浴で加熱し、成分を溶解/融解させた。CoQ及びTPMが何れも溶解するまで、数分おきに手で振盪した。必要になるまで加熱したまま放置した。CoQをこの濃度のまま、冷却してエタノールから沈殿させた。
【0117】
5.80mlのミリQ水を100ml試料容器内に計り入れた。堅く閉栓し、湯浴に5分間放置して水を加温した。
【0118】
6.加熱したCoQ/TPM/エタノール溶液をミリQ水に直接注ぎ入れた。
【0119】
7.すぐに閉栓し、手でよく振盪して、成分を混合した。製剤の外観は不透明な黄色であった。5分間ボルテックスした。
【0120】
8.1gのCarbopol及び100mgのメチルパラベンを計量皿内に正確に秤量した。CoQ/TPM溶液に少しずつ加え、添加の間によくボルテックスを行なった。試料を70℃の湯浴中で短時間加熱し、試料を溶解させた。
【0121】
9.全量のcarbopol/メチルパラベンを加えた後、成分の稠度が均質となるようにボルテックスした。この段階でもゲル化はみられなかった。
【0122】
10.3mlの1M NaOHを加え、閉栓してよく振盪した。
【0123】
11.製剤がゲル化しない場合には、pHを確認した。Carbopolが最適なゲルを形成するのはpH7〜8の範囲である。
【0124】
12.所望の稠度のゲルが形成されるまで、工程10及び11を繰り返した。
【0125】
13.必要に応じて、ミリQ水を加えて全量を100gとした。
【0126】
14.更に5分間ボルテックスした。
【0127】
15.CoQの光分解を防ぐべく、容器をホイルで被覆した。
【0128】
16.溶解せずに残存していたcarbopolの塊は、翌日までに製剤から水を吸収し、透明なゲルのポケットを形成する。製剤の稠度が均質になるまでよく振盪した。
【0129】
本製剤は乳状の外観を有するコロイド状懸濁液であった。これはベシクルが形成されたことを示している。
【0130】
実施例3
この実施例は、本発明に係る製剤を用いた補酵素Q10(CoQ10)の経皮摂取を調べるものである。
【0131】
材料及び方法
エタノール(ARグレード)
ミリQ水(自社製)
トコフェリルホスフェート(TP)及びジトコフェリルホスフェート(T2P)を2:1w/wの比率で含有するトコフェリルホスフェート混合物(TPM)(Phosphagenics Ltd)
補酵素Q(CoQ)(カネカ、日本)
Nivea Visage(登録商標)抗皺Q10 Day Care(Beiersdorf)
カルボマー 934P USP 粉末(Croda Surfactants Ltd)
メチルパラベン BP 粉末(Bronson & Jacobs)
1M水酸化ナトリウム(NaOH)
天秤(Mettler AE 240)
Falconチューブ
100mlプラスチック製試料容器
55℃の湯浴
Multi−ボルテックス
【0132】
試験製剤
CoQ対照:CoQ対照製剤を用いて、TPMの不在下で皮膚を透過し得るCoQ10量を調べた。成分:0.5%CoQ10(カネカ、日本)、10%エタノール、1%carbopol、0.1%メチルパラベン、水を加えて100%とした。
【0133】
0.5gのCoQ10を50mlのFalconチューブ内に秤量した。卓上天秤を用いて10gのエタノールを加えた。堅く閉栓し、混合した。55℃の湯浴で加熱し、CoQを溶解/融解させた。必要になるまで加熱したまま放置した。この濃度でCoQを冷却し、エタノールから沈殿させた。80mlの水を100mlの試料容器内に測り取った。加熱したCoQ/エタノール溶液を直接、水に注ぎ入れた。すぐに閉栓し、よく手で振盪して成分を混合した。5分間ボルテックスした。CoQ10の一部が溶液から析出し、容器の周囲に橙色の油状物を輪状に形成した。これはCoQ10の不溶性によるものであり、避けることはできない。1gのCarbopol及び100mgのメチルパラベンを、計量皿内に正確に秤量した。製剤に注ぎ入れ、稠度が均一となるまでボルテックスした。但しこの時点ではゲルは形成されない。3mlの1MNaOHを加え、閉栓してよく振盪した。製剤がゲルを形成していない場合は、pHを確認した。Carbopolが最適なゲルを形成するpHは7〜8の範囲である。ゲルが形成されるまで、繰り返し3mlの1MNaOHを加え、振盪してpHを確認した。必要であれば、ミリQ水を加えて100gとする。更に5分間ボルテックスした。CoQの光分解を防止すべく、容器をホイルで被覆した。溶解せずに残存していたcarbopolの塊は、翌日までに製剤から水を吸収し、透明なゲルのポケットを形成する。製剤の稠度が均質になるまでよく振盪した。
【0134】
TPM対照:TPM対照製剤を使用して、内因性のCoQ10レベルに対するTPMの影響を決定した。成分:1%TPM、10%エタノール、1%carbopol、0.1%メチルパラベン、水を加えて100%とした。本製剤中にはCoQ10は存在しない。
【0135】
1gのTPMを50mlのFalconチューブ内に秤量した。卓上天秤を用いて10gのエタノールを加えた。堅く閉栓して混合した。55℃の湯浴で加熱し、TPMを溶解/融解させた。必要となるまで加熱したまま放置した。80mlの水を100mlの試料容器内に測り取った。加熱したTPM/エタノール溶液を直接、水に注ぎ入れた。製剤はすぐに乳状の性質を有するようになった。すぐに閉栓し、よく手で振盪して、成分を混合した。5分間ボルテックスした。1gのCarbopol及び100mgのメチルパラベンを計量皿内に正確に秤量した。製剤に注ぎ入れ、稠度が均質となるまでボルテックスした。。但しこの時点ではゲルは形成されない。3mlの1MNaOHを加え、閉栓してよく振盪した。製剤がゲルを形成していない場合には、pHを確認した。Carbopolが最適なゲルを形成するpHは7〜8の範囲である。ゲルが形成されるまで、繰り返し3mlの1MNaOHを加え、振盪してpHを確認した。必要であれば、ミリQ水を加えて100gとする。更に5分間ボルテックスした。CoQの光分解を防止すべく、容器をホイルで被覆した。溶解せずに残存していたcarbopolの塊は、翌日までに製剤から水を吸収し、透明なゲルのポケットを形成する。製剤の稠度が均質になるまでよく振盪した。
【0136】
TPM−02/CoQ:上の実施例2に記載した方法に従って、本発明に係るTPM−02/CoQ製剤を調製した。成分:0.5%CoQ10、1%TPM、10%エタノール、1%carbopol、0.1%メチルパラベン、水を加えて100%とした。
【0137】
Nivea Visage(登録商標)抗皺Q10 Day Care(Beiersdorf, Germany):Nivea Visage(登録商標)は市販の顔用クリームであり、その広告では肌にとって有効なCoQ10源であることが謳われている。正確なCoQ10含有量は不明だが、このNivea Visage(登録商標)とTPM−02/CoQとの比較は重量対重量基準で行なった。成分:不明。
【0138】
処置群
Sprague-dawleyラット(10〜12週齢雄)をモナッシュ大学の動物部(Animal Services)から購入し、処置開始前の最低5日間、部門の動物室(Departmental Animal House)に馴れさせた。動物を無作為に各処置群(n=6)に割り当て、他の飼育固体が背中の製剤を舐めるのを避けるため、個別の飼育箱に隔離して飼育した。食餌(標準的なラット実験室用ペレット;Barastoc, Australia)及び水は無制限に与えた。
【0139】
グループ1 − 未処理
グループ2 − 100mgのCoQ対照/体重200g、1日2回、24時間
グループ3 − 100mgのTPM対照/体重200g、1日2回、24時間
グループ4 − 100mgのTPM−02/CoQ/体重200g、1日2回、24時間
グループ5 − 100mgのNivea Visage(登録商標)クリーム/体重200g、1日2回、24時間
グループ6 − 100mgのCoQ対照/体重200g、1日2回、48時間
グループ7 − 100mgのTPM対照/体重200g、1日2回、48時間
グループ8 − 100mgのTPM−02/CoQ/体重200g、1日2回、48時間
グループ9 − 100mgのNivea Visage クリーム(登録商標)/体重200g、1日2回、48時間
【0140】
ラットを麻酔して秤量し、首直下の〜5×4cmの領域を剃毛した。翌日の最初に、各ラットに応じた投与量の製剤を秤量し、手袋を装着した指でラットの皮膚に塗り込んで、1日2回(朝及び夜)、24又は48時間投与した。製剤は背面皮膚の領域に限定し、ラットが毛繕いの際に触れることのないようにした。
【0141】
皮膚及び血漿におけるCoQ10の分析:処置期間の終了後、CO2ガスを用いてラットを窒息させて屠殺した。心臓穿刺により血液を採取し、ヘパリン化収集チューブに回収して、血漿を遠心分離した。剃毛した皮膚領域を蒸留水でよく洗浄し、表面に残存する未吸収CoQ10を除去してから、この領域を切除した。組織からCoQを抽出し、HPLCで定量した。これらは基本的に、Aberg et al., (1992) Distribution and redox state of ubiquinones in rat and human tissues, Arch Biochem Biophys 295: 230-234の方法に従って行なった。
【0142】
統計分析:結果を平均±SDで表わす。スチューデントt−試験を実施することにより、血漿及び皮膚の双方から抽出したCoQのレベルに、処置群間で有意差が存在するか否かを決定した。
【0143】
結果
表I−処置後における血漿中及び皮膚中の平均CoQ10レベル
【表2】

【0144】
血漿
TPM−02/CoQをラットの背部に1日2回投与することにより、血漿中に存在するCoQ10量には有意な(p<0.05)上昇が見られた(表I)。TPM−02/CoQによる処置の後、平均血漿CoQ10レベルは、未処理対照における内因性のCoQ10レベルと比べて114%(p<0.05)上昇した。これに対して、CoQ対照及びTPM対照は、平均血漿CoQ10レベルをそれぞれ26%及び22%しか上昇させなかった。これら二つの上昇は統計上有意ではなかった。重要なのは、TPM−02/CoQは、TPMを含有しないCoQ対照製剤と比べて、血漿CoQ10レベルを有意に(p<0.05)70%上昇させた点である。これは、TPMとエタノールとの組合せが、CoQ10の経皮摂取に直接関与していることを示す証拠となる。
【0145】
Nivea Visage(登録商標)は単日処置後において、血漿CoQ10レベルを未処理対照に比べて49%上昇させた。しかしながら、Nivea Visage(登録商標)によって生じた血漿CoQ10の量は、TPM−02/CoQによる処置で生じた増分に比べて有意に少なかった(44%;p<0.05)。
【0146】
皮膚
TPM−02/CoQによる処置は、最初の24時間において、皮膚における内因性のCoQ10レベルを有意に(p<0.05)2454%上昇させた(表I)。48時間後には、この増加は内因レベルの4312%に達した。これに対して、CoQ対照及びTPM対照は、平均皮膚CoQ10レベルを、最初の24時間でそれぞれ208%及び33%上昇させ、48時間でそれぞれ621%及び154%上昇させた。有意ではあるが(p<0.05)、TPM対照の処置後における上昇幅は、殆ど注目に値しないように見える。TPM−02/CoQは、24時間及び48時間において、CoQ対照に比べて平均皮膚CoQ10をそれぞれ728%及び512%上昇させた。
【0147】
TPM−02/CoQは24時間後に、平均皮膚CoQ10レベルをNivea Visage(登録商標)と比較して有意に(p<0.05)上昇させた(1513%)。Nivea Visage(登録商標)は他の対照製剤における値と比較して、皮膚CoQ10レベルに有意な上昇を生じさせなかった。
【0148】
結論
TPM/エタノール製剤は、溶解性を向上させるとともに、その後の皮膚によるCoQ10の吸収を促進させ、市販の化粧品成分であるCoQ10を含有する対照製剤と比べて、血漿及び皮膚CoQ10レベルを有意に上昇させる。経口による生体利用能に乏しい、皮膚特異性が低い、消化時に有害な副作用が現れる等の不具合が知られている分子について、本発明に係るTPM/エタノール製剤に化合物を処方すれば、その局所投与及び吸収に対して大きな可能性が開けることになる。
【0149】
実施例4
上述した手順に従ってインシュリン含有製剤を調製した。製剤の詳細は以下の通りである。
【0150】
【表3】

【0151】
実施例5
本実施例はTPMと製剤されたインシュリンの経皮送達を調べるものである。
【0152】
【表4】

【0153】
4つの個別の実験を実施し、各実験において、TPM製剤を用いた局所投与後におけるインシュリンの経皮送達を立証した。TPMをウシインシュリン、速効性インシュリン類似体(リスプロ)、又は放射能標識ヒト組み換えインシュリンの何れかと一緒に製剤した。経皮送達が首尾よく行なわれたか否かの判断は、血漿インシュリンレベルの上昇、皮下の放射能活性の検出、或いはグルコース導入後の血中グルコースレベルの低下に基づいて行なった。
【0154】
実験1:血漿インシュリンレベルの上昇
実験の前日に、雄Sprague Dawleyラット(220〜300g)の背面皮膚領域を、軽い麻酔(エーテル)下で剃毛した。覚醒前にラットを秤量し、各ラットに応じたネンブタール及び処置用製剤の用量を算出した。ラットを一晩(〜16h)絶食させた。水は無制限に与えた。
【0155】
翌朝にラットを麻酔し、実験の継続中は麻酔下に保った。試験製剤は、2%TPM、ウシインシュリン(3U/100μl;Sigma)、エタノール(30%)、及びカルボマー(1%)を含有し、残りは水となるようにした。最終的なインシュリン用量がラットの体重に対して10U/kgとなるように投与を行なった。対照グループには、インシュリンを含まない他は同一のTPM含有製剤を与えた。対照(n=2)及びTPM−インシュリン製剤(n=2)を局所投与し、手袋を装着した指で皮膚に摺り込んだ。投与後1、2、3、4、及び6時間の時点で血清を採取した。
【0156】
ウシインシュリン特異的な競合放射性免疫アッセイ(Linco Research Inc.)を用いて、血清サンプル中に存在するインシュリンの量を測定した。
【0157】
実験2:放射性プローブを用いたインシュリンの経皮吸収の検出
Sprague Dawleyラット(300〜450g)を用意して、実験1と同様に製剤の局所投与に供した。ラットを一晩(〜16h)絶食させた。水は無制限に与えた。
【0158】
放射性標識(125I−インシュリン、Amersham Biosciences)を有するヒト組み換えインシュリンを、2%TPM、30%エタノール、1%カルボマー、及び水と共に製剤し、ゲルを形成した(TPM−125I−インシュリン)。TPM−125I−インシュリンを、ラット(n=4)一頭当たり〜400nCiの用量で、(上述のように)局所投与した。経皮吸収におけるTPMの役割を調べるため、対照ラット(n=5)にはTPMを含まない製剤を投与した。投与後、ラットを別個に隔離して飼育し、食餌及び水を無制限に与えた。5時間後、ラットを屠殺し、器官を取り出して秤量し、シンチレーションバイアルに入れて、各器官の放射能活性の総計を求めた。皮膚を洗浄して、皮膚表面に残存する未吸収I125−インシュリンを除去した。
【0159】
実験3:経皮インシュリンを用いた血中グルコースの降下
Sprague Dawleyラット(220〜300g)を用意して、実験1と同様に製剤の局所投与に供した。ラットを一晩(〜16h)絶食させた。水は無制限に与えた。
【0160】
速効性ヒトインシュリン類似体であるリスプロ(Eli Lilly)を、2%TPM、30%エタノール、1%カルボマー、及び水とともに製剤し、ゲルを形成した(TPM−リスプロ)。処置群(n=15)には、リスプロが体循環に侵入する時間を確保するべく、グルコース投与の30分前に、TPM−リスプロ(体重に対し32.5Uリスプロ/kgの用量)を局所投与した。対照群(n=15)には、リスプロを含まない製剤を投与した。グルコース(30%w/v)を、体重に対し2g/kg(ラット300g当たり2ml)の用量でIP投与した。
【0161】
実験期間中、ラットを麻酔下(ネンブタール)に維持し、Medisense Optium Blood G Monitor(Abbott)を用いて、尾採血中グルコースを測定した。血中グルコースレベルの測定は、グルコース投与5分後と、更に5分後に行なった。その後は、10分毎に〜2〜2.5時間に亘って血中グルコースを測定した。グルコース投与直前に測定した血中グルコースレベルを、その後の全ての値から減算することにより、実験を通じての各ラットにおける血中グルコースの変化を求めた。各時点における血中グルコースの平均変化を算出し、プロットした(図3)。本試験では糖尿病ではないラットを使用した。ピーク血中グルコースが対照動物に比べ低下した場合に、TPM−リスプロの効力があると判定した。
【0162】
個々のラットについて曲線下の面積を求め、スチューデントt−検定を用いて固体集団間の比較を行なった。
【0163】
実験4:経皮インシュリンを用いた血中グルコースの降下
試験の少なくとも5日前に、2本のカテーテルを外科的に装着した8頭のブタを用意した。午後3:00pm前後に食餌を摂取するようブタを調教し、一晩の絶食に馴れさせた。実験計画としては、インシュリン含有TPM−02ゲル又はインシュリン非含有TPM−02ゲルを用いた二種類の処置を、一回ずつ逆転させて行なった。静脈用(IV)点滴は、少なくとも1日の間隔をおいて行なった。点滴の日には、ブタから15分毎に1時間に亘って採血し、ゲルの投与前の基準血中グルコース濃度を求めた。30分後、グルコース(毎時0.33g/kg)及びキシラジン(毎時0.033mg/kg)の点滴を開始し、血液サンプリングを更に3h継続した。血液はすぐに、Glucometerを用いたグルコース測定に供した。実験の間に一頭のブタのカテーテルが詰まってしまったため、実験できたブタは7頭だけであった。また、ある採血日(インシュリン処置日)に、一頭のブタのサンプリングカテーテルが点滴中に詰まってしまった。従って、対照ブタ及びインシュリン処置ブタの採血日数は、それぞれ7日及び6日であった。
【0164】
REMLを用いて血中グルコースのデータを分析した。処置(対照又はインシュリン)及び血液サンプリングの時間等を固定効果とし、ブタ及び採血日等を変量モデルとした。更に、処置前の期間と、最後の2及び4サンプルの双方とについて、血中グルコースの平均を求めた。これらのデータを更に、REMLを用いて分析した。採血時間(ゲル投与及び点滴の前又は後の何れか)を固定効果とし、ブタ及び採血日等を変量モデルとした。後者の分析においては、データを対数変換した。
【0165】
結果及び考察
予備実験1:血漿インシュリンレベルの上昇
試行実験によれば、TPM−インシュリンの局所投与によって、インシュリンの血清レベルを上昇させることができた(図3)。何れの処理動物でも、血清インシュリンレベルの上昇は、処置の4時間後にピークに達した。対照動物のインシュリンレベルは、この期間を通じて減少し、或いは処置動物と同様のレベルには達しなかった。本予備実験に使用した動物が少数だったことから、統計的評価はできなかった。しかし、首尾よく経皮吸収が行なわれるという好ましい傾向が明らかとなり、より大規模な実験系で試験を行なう根拠が得られた。
【0166】
実験2:放射性プローブを用いたインシュリンの経皮吸収の検出
試行実験において血清インシュリンレベルの上昇を示す証拠が得られたので、発明者等は、TPMとともに製剤したインシュリンが経皮吸収されることを、決定的に実証することにした。このために、TPMを放射能標識インシュリンとともに製剤した。その放射性崩壊を用いて、「ホットな(hot)」インシュリンの経皮吸収と、(ある場合には)その後のラット全身への分配を観察するのが目的である。結果は、TPMが125I−インシュリンの経皮吸収を首尾よく促進することを示している(図2)。投与部位の皮膚で検出された放射能活性レベルは、対照動物と比べて有意に上昇していた(p<0.001)。各ラットの皮膚表面を洗浄したので、この放射能活性は皮膚のより深い層に存在する。重要な点は、投与領域直下の皮下脂肪における放射能活性レベルが、対照と比較して有意に(p<0.05)上昇していた点である。これは、インシュリンが皮膚を通じて下部組織へ吸収されるのを、TPMが促進することを決定的に実証するものである。
【0167】
実験3:経皮インシュリンを用いた血中グルコースの降下
TPMとともに製剤されたインシュリンが首尾よく経皮吸収されることが実証されたので、本発明者等は、送達された分子が有効に体循環に入って血中グルコースを降下させるか否かを調べることにした。TPM−リスプロの局所投与から30分後、絶食ラットをグルコース負荷試験に供し、その後に間隔をおいて血中グルコースを測定した(図4)。TPM−リスプロ処置動物の血中グルコースレベルは、対照と比較して有意に(p<0.02)減少していた。これは経皮送達と、その後における輸送されたリスプロの活性とを示すものである。従って、TPMはインシュリン等の活性大分子を、皮膚を通じて輸送することが可能である。
【0168】
実験4:経皮インシュリンを用いた血中グルコースの降下
本実験は、グルコース負荷試験によって経皮インシュリン製剤が皮膚に浸透し、しかも生物利用能を有することを示したラットの実験を、拡大したものである。ブタを対象とし、TPM−02/インシュリンを用いたIVグルコース負荷試験により調べた。
【0169】
最初の経口グルコース試験が予想していたようにうまくいかなかったので、これをグルコースのIV投与に変更することにより、方法の改良を図った。更に、キシラジン(膵臓で放出されるインシュリンを阻害する化学物質)をグルコースと一緒に点滴した。
【0170】
TPM−02/インシュリンの全体的な統計効果は、高い有意性を示していた(p<0.005)。最も明白な効果が現れたのは、点滴の後半部分、血中グルコースがプラトーに達したときである。プラトーにおいて、血中グルコースの上昇は、経皮インシュリン調製剤を投与したブタの方が有意に低く、糖血症の制御に顕著な改善があったことを表わしていた。このデータは、インシュリンが経皮吸収されたことを示すものである。
【0171】
グルコース及び(キシラジン等の)インシュリン分泌阻害剤の継続的な点滴は、インシュリンの経皮送達を測定するための優れたモデル系であると思われる。更なる研究により、現行モデルの用途を拡大して、より急速な血中グルコースの上昇時における経皮送達の効果を観察したり、実験期間を延長して、送達がどの程度継続するかを決定したりすることも可能であろう。また、標的(即ち糖尿病のヒト)に合わせたモデル系、例えばストレプトゾトシン糖尿病のブタを用いて、更に実験を行なうことも可能であろう。これは、膵臓のインシュリン分泌細胞を破壊する化学物質である、ストレプトゾトシンを用いた処置によって糖尿病になったブタである。
【0172】
結論:
上述の結果は、トコフェリルホスフェート混合物(TPM)によって、インシュリン等の大分子の経皮吸収が首尾よく促進されることを示すものであった。投与部位の真皮、その下の皮下脂肪及び血中において、インシュリンレベルの上昇が示された。重要なのは、送達された分子が活性であり、血中グルコースの降下に有効であることが、グルコース負荷試験によって示された点である。この知見は糖尿病にとって好ましいものである。日々の注射による不快感を軽減する、非侵略的なインシュリン送達法が利用できる可能性について、希望を与えるものである。
【0173】
ブタ及びヒトから採取した鉛直拡散(Franz)細胞を用いた実験を行ない、本製剤の数々の変形例について、その流動速度や浸透性を調べることが望まれる。この手法によって、TPM−インシュリン製剤の最適化が促進されるであろう。
【0174】
実施例6
本明細書で上述した手順に従い、アトロピン含有製剤を調製した。処方の詳細は以下の通りである。
【0175】
【表5】

【0176】
実施例7
本発明の腸溶性製剤が内臓の条件に耐えられるか否かを調べるために、α−トコフェリルのモノホスフェートエステル(TP)及びジ−トコフェリルホスフェート(T2P)の比率2:1の混合物を含むTPMベシクルを、模擬胃液及び腸液に暴露した。
【0177】
蛍光染料ローダミン6Gを含有する2%TPMを用いてベシクルを調製し、ベシクル集団の分布を、蛍光活性化細胞分類(fluorescence activated cell sorting:FACS)を用いて分析した。
【0178】
模擬胃液及び腸液の調製は、アメリカ薬局方に従って行なった。胃液はペプシン酵素の酸性溶液、pH1.2とした。腸液はパンクレアチン粉末をホスフェート緩衝剤に加え、pH6.8として調製した。
【0179】
ベシクルをこれらの液に個別に曝した。模擬胃液への暴露により、ベシクルの巨大化及び/又はベシクルの凝集が生じた。模擬腸液への暴露は、ベシクルの外観に殆ど影響を与えず、ベシクルは元のサイズ分布を維持していた。
【0180】
実施例8
TPMの複合体によってベシクルが形成されるか否かを調べるために、本明細書において上述した手法に従って、TPMの複合体から含有製剤を調製した。処方の詳細は以下の通りである。
【0181】
【表6】

【0182】
本処方に従いベシクルが形成された。
【0183】
本明細書で使用される「含んでなる(comprising)」という語、及び「含んでなる(comprising)」という語の活用形は、本発明の請求範囲から如何なる変形や付加も除外されないことを意味する。
【0184】
本発明に対する変更及び改善は、当業者であれば容易に把握し得るであろう。こうした変更及び改善は、本発明の範囲に含まれるものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、ラット血漿中の平均PTH濃度を示すグラフである。
【図2】図2は、経皮TPM−125I−インシュリン局所投与後のラット器官の放射能活性分布を示すグラフである。
【図3】図3は、ラット血清インシュリンレベルのグラフである。
【図4】図4は、経皮インシュリン(リスプロ)処置後の血中グルコース濃度の平均変化のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性化合物を投与するための担体であって、
1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体。
【請求項2】
前記C1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール及びグリコール、又はそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の担体。
【請求項3】
前記C1-4アルコールがエタノールである、請求項2記載の担体。
【請求項4】
前記C1−C4アルコール、ポリオール及びそのポリマーの存在量が、0.5から50%、5から40%、又は10から30%である、請求項1又は請求項2記載の担体。
【請求項5】
1種又は2種以上のジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体を含んでなる、請求項1記載の担体。
【請求項6】
1種又は2種以上のジ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体と、1種又は2種以上のモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体との組合せを含んでなる、請求項1記載の担体。
【請求項7】
前記ジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体が、電子移動剤のホスフェートエステルであり、前記ホスフェートが、電子移動剤でジ−又はモノ−置換されたオルト−ホスフェート又はピロホスフェートである、請求項1記載の担体。
【請求項8】
前記ジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体又はそれらの複合体が、ヒドロキシクロマンホスフェート誘導体、電子移動剤K1及びユビキノンの還元型であるキノールのホスフェート誘導体、ヒドロキシカロテノイドホスフェート誘導体、カルシフェロールホスフェート誘導体、及びアスコルビン酸ホスフェート誘導体からなる群より選択される、請求項1記載の担体。
【請求項9】
前記ヒドロキシクロマンホスフェート誘導体が、α、β、γ及びδトコールホスフェート誘導体の鏡像異性体及びラセミ体からなる群より選択される、請求項8記載の担体。
【請求項10】
前記トコールホスフェート誘導体が、トコフェリルホスフェート誘導体又はトコトリエノールホスフェート誘導体である、請求項9記載の担体。
【請求項11】
前記トコールホスフェート誘導体が、ジ−トコフェリルホスフェート誘導体、ジ−トコフェリル−ジ−ホスフェート誘導体、ジ−トコトリエノールホスフェート誘導体、モノ−トコフェリルホスフェート誘導体、モノ−トコフェリルジ−ホスフェート誘導体、及びモノ−トコトリエニルホスフェート誘導体からなる群より選択される、請求項10記載の担体。
【請求項12】
前記トコールホスフェート誘導体が、ジ−トコフェリルホスフェート誘導体である、請求項11記載の担体。
【請求項13】
前記トコールホスフェート誘導体が、ジ−トコフェリルホスフェート誘導体とモノ−トコフェリルホスフェート誘導体との組合せである、請求項11記載の担体。
【請求項14】
モノ−トコフェリルホスフェートとジ−トコフェリルホスフェートとの比が、4:1から1:4、又は2:1である、請求項13記載の担体。
【請求項15】
前記ジ−及び/又はモノ−(電子移動ホスフェート)誘導体が、1種又は2種以上の複合化剤と反応して、複合体を形成する、請求項1記載の担体。
【請求項16】
前記複合化剤が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び窒素官能基を有するアミノ酸を含むタンパク質からなる群より選択される、請求項15記載の担体。
【請求項17】
前記複合化剤が、式(II):
NR789 (II)
(式中、
7は、カルボニルが介在していてもよいC6-22アルキルからなる群より選択され;
8及びR9は各々独立に、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3X(ここでXは、H、Na、K又はアルカノールアミンである)からなる群より選択され、
但し、R8及びR9が何れもHであることはなく、また、R7がRCOである場合には、R8がNCH3であって、R9が(CH2CH2)N(C24OH)−H2CHOPO3であるか、或いはR8及びR9がともにN(CH22N(C24OH)CH2COOを形成する)を有する、請求項16記載の担体。
【請求項18】
前記複合化剤が、アルギニン、リシン又はラウリルイミノジプロピオン酸である、請求項17記載の担体。
【請求項19】
前記電子移動剤ホスフェート誘導体又はその複合体の存在量が、最高11%、1から11%、又は1から3%である、請求項1記載の担体。
【請求項20】
水の量が、50から99%、60から95%、又は70から90%である、請求項1記載の担体。
【請求項21】
ベシクルの形態である、請求項1記載の担体。
【請求項22】
前記ベシクルの径が、50から10,000nm、100から500nm、又は300から500nmである、請求項21記載の担体。
【請求項23】
生理活性化合物を投与するための担体の製造における、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体との使用。
【請求項24】
請求項1記載の担体を調製する方法であって:
(a)1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体を、1種又は2種以上のC1-4アルコール、ポリオール、又はそのポリマーと混合する工程;及び
(b)工程(a)の混合物に水を加える工程を含んでなる方法。
【請求項25】
1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を、生理活性化合物とともに含んでなる製剤。
【請求項26】
前記生理活性化合物が、薬剤又はそのホスフェート誘導体である、請求項25記載の製剤。
【請求項27】
前記薬剤が、ビタミン、植物化学物質、化粧薬品、栄養補助剤、ホルモン、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び核酸からなる群より選択される、請求項26記載の製剤。
【請求項28】
前記薬剤が、神経遮断薬、麻薬性鎮痛薬、抗炎症薬、抗ガン剤、抗ヒスタミン剤、抗狭心症薬、抗脂質異常症薬、抗糖尿病薬、及びホルモン類似体からなる群より選択される、請求項27記載の製剤。
【請求項29】
前記薬剤が、補酵素Q、ヒト副甲状腺ホルモン、インシュリン、グルカゴン様ペプチド、モルヒネ、オキシコドン、エラスチン、レチノール、及びコラーゲンからなる群より選択される、請求項28記載の製剤。
【請求項30】
前記生理活性化合物の存在量が、最高5%、0.5から3%、又は0.5から2%である、請求項25記載の製剤。
【請求項31】
他の賦形剤を更に含んでなる、請求項30記載の製剤。
【請求項32】
前記賦形剤が、溶媒、増粘剤又はゲル化剤、界面活性剤、緩衝剤、軟化剤、甘味料、崩壊剤、香味剤、着色剤、保存料、香料、電解質、及び膜形成ポリマーからなる群より選択される、請求項31記載の製剤。
【請求項33】
前記賦形剤の存在量が最大5%である、請求項31記載の製剤。
【請求項34】
上記記載の製剤を調製する方法であって、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を、生理活性化合物と混合する工程を含んでなる方法。
【請求項35】
生理活性化合物を投与する方法であって、1種又は2種以上のC1−C4アルコール、そのポリオール又はそのポリマーと、水と、1種又は2種以上のジ−及び/又はモノ−(電子移動剤)ホスフェート誘導体、又はそれらの複合体とを含んでなる担体を、生理活性化合物と混合する工程を含んでなる方法。
【請求項36】
前記生理活性化合物及び担体が、非経口、腸内、経口、局所、経皮、眼内、直腸内、膣内、鼻腔内又は肺内投与される、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−543788(P2008−543788A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516074(P2008−516074)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000839
【国際公開番号】WO2006/133506
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】