説明

拡幅セグメント

【課題】 大きな土圧や水圧にも耐え得る構造にし、材料費の低減を図り、作業性を向上させることを目的とする。
【解決手段】 坑内の天井面及び底面にそれぞれ対向する基部2と、坑内の側壁面に対向する移動自在の拡幅部とが備えられ、拡幅部の移動によって拡幅縮幅自在に形成されている拡幅セグメントにおいて、基部2には、スライド面及び被当接部17をそれぞれ有する基部材13と、拡幅部に接合されていると共にスライド面に沿ってスライド可能に設けられ且つ縮幅時に被当接部17に当接する当接部27を有するスライド部材14a,14bと、被当接部17及び当接部27にそれぞれ貫設されて基部2の曲げ変形に抵抗する補強部材15と、拡幅時に被当接部17と当接部27との間に介在される第1の隙間ブロック40とが備えられ、補強部材15としては矩形盤状の部材が使用され、第1の隙間ブロック40は補強部材15に隣接させて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば坑の途中に形成された拡幅箇所に設置される拡幅セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールド機を用いて構築されるトンネルに非常駐車帯や分岐合流部分を設ける際、前後のトンネルよりも内径が広げられた拡幅トンネル部分をトンネル内に形成する必要がある。また、小口径シールド工法では、坑内を走行するトロッコをすれ違わせるための拡幅トンネル部分を形成する必要があり、この拡幅トンネル部分は施工時に一時的に形成されて後で前後のトンネルと同じように縮幅する必要がある。
【0003】
拡幅トンネル部分を形成する場合、通常は地上から掘削して余掘り部を形成し、この余掘り部に拡幅トンネル部分用のセグメントを設置して形成する。近年、掘削途中で掘削面積を自由に拡幅できるシールド機が提案されており、このシールド機を用いて必要部分のみを拡幅断面で拡幅する方法がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
従来、上記した拡幅自在のシールド機で坑内の一区間を拡幅して拡幅トンネル部分を形成するとき、当該区間に拡幅セグメントを一旦縮幅された状態で設置した後、当該拡幅セグメントを拡幅させる。従来から、拡幅セグメントの拡幅部をヒンジによって回転自在に取り付け、その拡幅部をジャッキで内側から押することでヒンジを中心に拡幅部を外側に回動させ、拡幅セグメントを拡幅させるものがあるが、地盤の土圧や地下水等の水圧を均等に受けることができない等の問題を鑑みて、近年では、拡幅セグメントの拡幅部を坑幅方向にスライドさせることで拡幅させる拡幅セグメントが提案されている。
【0005】
このスライド式の拡幅セグメントの上部および下部には、坑幅方向に延在するスライド面を有する基部材とスライド面に沿って坑幅方向にスライドするスライド部材とがそれぞれ備えられており、このスライド部材をスライドさせることで拡幅セグメントの拡幅部が移動して拡幅セグメントが拡幅される構成となっている。この拡幅セグメントには、拡幅後にスライド部材の内側の端面と基部材の中央部との間に嵌合させる隙間ブロックが備えられている。この隙間ブロックによって、拡幅後の基部材とスライド部材とのガタツキを防止することができるとともに、スライド部材の内側への移動が規制されて拡幅部が土圧や水圧によって内側に押圧されて縮幅することを防止することができる。また、拡幅セグメントには、拡幅された後のスライド部材と基部材中央部との間に亘って延在する補強部材が備えられており、この補強部材によって曲る力に対して抵抗して拡幅後のスライド部材と基部材との連結が補強されている。
【特許文献1】特開2002−89170号公報
【特許文献2】特開2001−329781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の拡幅セグメントでは、補強部材としてパイプ状の部材が使用され、隙間ブロックにはパイプ状の補強部材を嵌め込むための切り欠き(凹部)が形成されたものが使用されるが、隙間ブロックに切り欠きがあることで、隙間ブロックが弱い構造になる。このため、拡幅された拡幅セグメントに側方から大きな土圧や水圧が作用した場合に、隙間ブロックが圧縮力に耐えられずに破損し、拡幅セグメントの拡幅状態が維持できない場合があるという問題がある。また、上記した従来の拡幅セグメントでは、隙間ブロックの製作に切り欠き加工が必要になり、隙間ブロックの単価が高くなるという問題がある。さらに、上記した従来の拡幅セグメントでは、拡幅セグメントの坑軸方向の全長に亘って隙間ブロックを設置することになるため、隙間ブロックの数量が多く或いは1個の隙間ブロックが大きくなり、隙間ブロックの設置する作業に相当の労力を要するという問題が存在する。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、隙間ブロックを強い構造にすることで、大きな土圧や水圧にも耐え得る構造にし、拡幅セグメントの拡幅状態を確実に維持させることができる拡幅セグメントを提供することを目的としている。また、隙間ブロックの製作手間を軽減して材料費の低減を図ることができる拡幅セグメントを提供することを目的としている。さらに、隙間ブロックの設置作業の作業性を向上させることができる拡幅セグメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、掘削された坑内の天井面及び底面にそれぞれ対向する基部と、前記坑内の側壁面に対向する移動自在の拡幅部とが備えられ、前記拡幅部の移動によって拡幅縮幅自在に形成されている拡幅セグメントにおいて、前記基部には、坑幅方向に延在するスライド面及び坑軸方向に延在する被当接部をそれぞれ有する基部材と、前記拡幅部に接合されているとともに前記基部材のスライド面に沿ってスライド可能に設けられて且つ前記拡幅部が縮幅された状態において前記基部材の被当接部に当接する坑軸方向に延在する当接部を有するスライド部材と、前記スライド部材のスライド方向に延在して前記基部材の被当接部及びスライド部材の当接部にそれぞれ貫設されて前記基部の曲げ変形に抵抗する補強部材と、前記拡幅部が拡幅された状態における前記基部材の被当接部と前記スライド部材の当接部との間に介在される第1の隙間ブロックとが備えられ、前記補強部材としては、矩形盤状の部材が使用され、前記第1の隙間ブロックは、前記補強部材に隣接させて配置されることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、基部材の被当接部とスライド部材の当接部との間に介在される第1の隙間ブロックによって、拡幅部が拡幅された後、スライド部材の内側への移動が規制される。また、第1の隙間ブロックは、補強部材の側方に形成された矩形の隙間内で補強部材に隣接させて配置されることになり、第1の隙間ブロックに補強部材を嵌め込むための切り欠きを形成する必要がない。また、補強部材が矩形板状の部材であるため、第1の隙間ブロックを嵌合させる隙間は小面積になり、第1の隙間ブロックの大きさは小さくなり軽量化される。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の拡幅セグメントにおいて、前記スライド部材の内部には坑軸方向に延在する縦リブが設けられ、前記拡幅部が拡幅された状態における前記スライド部材の縦リブと前記補強部材の坑軸方向に延在する端面との間に、第2の隙間ブロックが介在されることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、スライド部材の縦リブと補強部材の端面との間に介在される第2の隙間ブロックによって、拡幅部が拡幅された後、スライド部材の内側への移動が規制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る拡幅セグメントによれば、第1の隙間ブロックによって拡幅後のスライド部材の内側への移動が規制されるため、拡幅された拡幅セグメントが土圧等によって縮幅されることを防止することができるとともに、拡幅セグメントが拡幅された際に第1の隙間ブロックが矩形板状の補強部材の側方に形成される矩形の隙間に嵌め込まれて補強部材に隣接させた状態で配置されるため、第1の隙間ブロックに補強部材を嵌め込むための切り欠き等は不要となり、第1の隙間ブロックが大きな土圧や水圧にも耐え得る強い構造の部材なる。これによって、大きな土圧や水圧が作用する場合にも拡幅セグメントの拡幅状態を確実に維持させることができる。また、隙間ブロックに切り欠きを形成する必要がないため、第1の隙間ブロックの製作手間が軽減され、材料費の低減を図ることができる。さらに、第1の隙間ブロックの大きさが小さくなって軽量化されるため、第1の隙間ブロックの設置作業の作業性を向上させることができる。
【0013】
また、拡幅部が拡幅された際に、スライド部材の縦リブと補強部材の端面との間に第2の隙間ブロックを介在させることで、スライド部材の内側への移動を第2の隙間ブロックによって規制し、より大きな土圧等にも耐える拡幅セグメントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る拡幅セグメントの実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、本実施の形態において、拡幅セグメント1を設置するトンネルの軸線方向(坑軸方向)を前後方向という。
【0015】
図1は両側が拡幅した後の状態(拡幅状態)の拡幅セグメント1の斜視図であり、図2は両側が拡幅する前の状態(縮幅状態)の拡幅セグメント1の断面図である。図1,図2に示すように、円形に形成されたトンネルの一部には小判形に形成された拡幅坑Tが形成されており、拡幅坑Tの内部にリング状の拡幅セグメント1が配置されている。拡幅セグメント1は、拡幅坑Tの天井面及び底面に対向する基部2と、拡幅坑Tの両側の側壁面にそれぞれ対向する円弧板状の拡幅部3とから構成されている。拡幅セグメント1は、拡幅部3の移動によって坑幅方向に拡幅縮幅自在に形成されており、拡幅部3が縮幅されたときの拡幅セグメント1は、断面真円形状に形成され、拡幅部3が拡幅されたときの拡幅セグメント1は、断面小判形状に形成されている。
【0016】
拡幅部3は、鋼製セグメントからなる複数のセグメント部材5を接合して形成されている。セグメント部材5は、トンネルの壁面に対向する円弧状に曲っている板部材30と、拡幅セグメント1の周方向に延在する主桁31,31と、前後方向に延在する継手板32,32と、主桁31,31間に設けられた前後方向に延在する複数の縦リブ33…とから構成されている。主桁31,31は、板部材30の前後端にそれぞれ設けられており、2本平行に配設されている。また、主桁31,31は、弓形に曲った形状の部材からなり、板部材30の内側面に垂直に付設されている。継手板32,32は、直線的な形状の部材からなり、板部材30の両側端にそれぞれ設けられ、板部材30の内側面に垂直に付設されている。縦リブ33…は、直線的な形状の部材からなり、板部材30の中央付近に所定の間隔をあけて設けられており、板部材30の内側面に垂直に付設されている。
【0017】
セグメント部材5の継手板32,32には図示せぬボルト孔が形成されており、このボルト孔に挿通されて締結されるセグメント継手7によって隣接するセグメント部材5,5の継手板32,32は接合されて隣接するセグメント部材5,5同士は連結される。また、セグメント部材5の主桁31,31にも図示せぬボルト孔が形成されており、このボルト孔に挿通されて締結されるリング継手8によって隣接するセグメント部材5,5の主桁31,31は接合されて前後方向に連設される拡幅セグメント1,1の拡幅部3,3同士は連結される。
【0018】
また、拡幅部3の内側には、拡幅セグメント1が拡幅されたときに隣接する他のセグメントとの間に生じる隙間を閉塞するための閉塞部材6が設けられている。この閉塞部材6は、拡幅部3の内側面に対して垂直に形成されてセグメント部材5の前後端に二枚平行に設けられた板部9,9と、平行する板部9,9間に架設され拡幅セグメント1の軸方向に延在する複数のパイプ部10…とから構成されている。板部9は、セグメント部材5の円弧状の縁部に対向する位置に配置されており、板部9にはセグメント部材5の縦リブ部33にボルト接合される断面コ字形状金物の接続部11が付設されている。
【0019】
図3は縮幅状態の基部2の平面図であり、図4は図3に示すA−A間の断面図であり、図5は図3に示すB−B間の断面図である。図3,図4,図5に示すように、縮幅状態の基部2には、拡幅セグメント1の軸方向に延在する断面形状T字形の基部材13と、基部材13の両側にそれぞれ張り出されて設けられて両側の拡幅部3,3にそれぞれ接合されるスライド部材14a,14bと、坑幅方向に延在して基部2の曲げ変形に抵抗する矩形板状の補強部材15とが備えられている。
【0020】
基部材13は、円弧状の外殻部16と、外殻部16の内側面に突設(垂設)された坑軸方向に延在する被当接部17とから構成されている。外殻部16は、外側面が断面円弧状に形成されているとともに内側面は水平に形成されており、その水平の内側面は坑幅方向に延在するスライド面16aとなっている。被当接部17は、下側に開放された箱状の部材であり、外殻部16の内側面に突設(垂設)された状態でそれぞれ配置されて坑軸方向にそれぞれ延在する2本平行の側板18,18と、2枚の側板18,18間に架設されているとともに図示せぬボルトにより外殻部16に固定されている天板19と、前後端面を塞ぐ端板20とから構成されている。2本の側板18,18の中央部には、補強部材15を挿通させるための開口18aがそれぞれ形成されており、その開口18aの両側にはボルト孔18bがそれぞれあけられている。
【0021】
図6は基部材13の坑幅方向の端部を表した拡大断面図である。図4,図6に示すように、基部材13(外殻部16)の前後方向に延在する側面はスライド面16aに対して傾斜されており、外殻部16の両側部は鋭角にそれぞれ形成されている。また、外殻部16の側端部のスライド面16aには、前後方向に延在する3本の溝21が形成されており、これら複数の溝21のうち両端の溝21a内には、溝21aに沿って延在するシール22が設けられている。真中の溝部21bは、両端の溝部21a内に設けられたシール22のうち少なくとも一方が損傷して止水効果が保てなくなった場合の予備の溝21であり、シール22が損傷したとき、真中の溝部21b内に新たにシーリングされ、新たなシール部23が形成される。
【0022】
図7は図3に示すC−C間の断面図である。図3,図4,図7に示すように、スライド部材14a,14bは、図示せぬスライド機構によって基部材13のスライド面16aに沿って坑幅方向にスライド可能に設けられている。スライド機構としては、例えば、基部材13の外殻部16に坑幅方向に延在するレールが付設されてこのレールに沿って移動するランナーがスライド部材14a,14bに付設された構成からなる機構が考えられるが、その他のスライド機構であってもよい。
【0023】
スライド部材14a,14bは、基部材13の被当接部17を挟んで両側にそれぞれ設けられており、一方のスライド部材14aは他方のスライド部材14bよりも坑幅方向に長く張り出されている。各スライド部材14a,14bは、基部材13のスライド面16aやトンネルの壁面に対向する円弧状に曲っている板部材24と、拡幅セグメント1の周方向に延在する主桁25,25と、前後方向に延在して拡幅部3の端部に接合される前後方向に延在する継手板26と、基部材13の被当接部17に当接される前後方向に延在する当接板27(当接部)と、主桁25,25間に設けられた前後方向に延在する縦リブ28,29とから構成されている。
【0024】
板部材24は、基部材13のスライド面16aに摺動される内側の側端部が段差状に凹んだ形状になっており、この凹んだ部分は前後方向に延在されている。主桁25,25は、板部材24の前後端にそれぞれ設けられており、2本平行に配設されている。また、主桁25,25は、弓形に曲った形状の部材からなり、板部材24の内側面に垂直に付設されている。継手板26及び当接板27は、板部材24の内側面に垂直に付設された直線的な形状の部材からなり、継手板26は板部材24の外側の側部に設けられ、当接板27は板部材24の内側の側部に設けられている。縦リブ28,29は、板部材24の内側面に垂直に付設された直線的な形状の部材からなり、板部材24の中央付近に所定の間隔をあけて2本平行に設けられている。また、当接板27及び内側の縦リブ28には、補強部材15を挿通させるための開口27a,28aがそれぞれ形成されており、さらに、当接板27には開口27aの両側にボルト孔27bがそれぞれあけられている。このボルト孔27bは前記した基部材13の被当接部17に形成されたボルト孔18bに対向する位置に形成されている。外側の縦リブ29には、前後方向に延在する補強部材15の端面15aに対向する位置に複数のボルト孔29aがあけられている。
【0025】
また、スライド部材14a,14bの内側には、補強部材15を挿通させるための筒部材34が形成されている。この筒部材34は、補強部材15を取り囲むように配置された上板35と下板36と両側の側板37,37とから構成されており、当接板27と内側の縦リブ28との間に介装されている。下板36と両側の側板37,37には、雌ネジ状の複数のボルト孔36a…,37a…がそれぞれ形成されており、これらのボルト孔36a…,37a…には、先端が補強部材15に当接されて補強部材15を係止する係止ボルト38…がそれぞれ螺合されている。
【0026】
補強部材15は、スライド部材14a,14bのスライド方向(坑幅方向)に延在しており、基部材13の被当接部17、スライド部材14a,14bの当接板27及び内側の縦リブ28にそれぞれ形成された開口18a,27a,28aと、筒部材34との中に緩挿された状態で設置されており、基部材13の被当接部17、スライド部材14a,14bの当接板27及び内側の縦リブ28、そして筒部材34に対してそれぞれ貫設されている。また、前後方向に延在する補強部材15の端面15aには、外側の縦リブ29に形成されたボルト孔29aに対向する位置に雌ネジ孔状のボルト孔15bが穿孔されている。なお、補強部材15は、中空の部材であっても中実の部材であってもよい。
【0027】
拡幅セグメント1が縮幅状態になっている場合には、図3,図4に示すように、スライド部材14a,14bの当接板27が基部材13の被当接部17に当接された状態になり、基部材13の被当接部17およびスライド部材14a,14bの当接板27,27がボルトとナットとからなる締結具35によってボルト接合されている。具体的には、基部材13の被当接部17およびスライド部材14a,14bの当接板27,27にそれぞれ形成されたボルト孔18b,27bに締結具35のボルトが挿通されてナットで締結された状態になっている。
【0028】
また、拡幅セグメント1が縮幅状態になっている場合には、補強部材15の端面15aがスライド部材14a,14bの外側の縦リブ49の側面に当接した状態になっており、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29とがボルトからなる締結具36によってボルト接合されている。具体的には、外側の縦リブ29に形成されたボルト孔29aに締結具36のボルトが挿通されて補強部材15の端面15aに形成されたボルト孔15bに螺合された状態になっている。
【0029】
図8は拡幅状態の基部2の平面図であり、図9は図8に示すD−D間の断面図である。図1,図2,図8,図9に示すように、拡幅セグメント1は、上記したスライド部材14a,14bが基部材13のスライド面16aに沿って外側にスライドすることで拡幅部3が外側に移動され、断面形状が小判形になって拡幅される。
【0030】
拡幅セグメント1が拡幅状態になっている場合には、図8,図9に示すように、スライド部材14a,14bの当接板27が基部材13の被当接部17から離間した状態になり、基部材13の被当接部17とスライド部材14a,14bの当接板27,27との間であって補強部材15の両側方には矩形の隙間が形成される。この補強部材の両側方の隙間には第1の隙間ブロック40…がそれぞれ嵌合されている。
【0031】
第1の隙間ブロック40…は、下側が開放された状態の矩形箱状の部材であり、矩形の隙間と同形状に形成されている。第1の隙間ブロック40…の坑軸方向に延在する両端面にはボルト孔40a,40bがそれぞれあけられている。このボルト孔40a,40bは、基部材13の被当接部17およびスライド部材14a,14bの当接板27,27にそれぞれ形成されたボルト孔18b,27bに対向する位置に形成されている。そして、第1の隙間ブロック40…は、基部材13の被当接部17に締結具41によって接合されているとともに、スライド部材14a,14bの当接板27,27に締結具42によって接合されている。具体的には、被当接部17のボルト孔18b及び第1の隙間ブロック40…のボルト孔40aに締結具41のボルトが挿通されてナットで締結された状態になっており、また、当接板27のボルト孔27b及び第1の隙間ブロック40…のボルト孔40bに締結具42のボルトが挿通されてナットで締結された状態になっている。
【0032】
また、拡幅セグメント1が拡幅状態になっている場合には、補強部材15の端面15aがスライド部材14a,14bの外側の縦リブ29から離間した状態になり、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29の側面との間には隙間が形成される。この隙間には、第2の隙間ブロック43が嵌合されている。
【0033】
第2の隙間ブロック43は、下側が開放された状態の矩形箱状の部材であり、第2の隙間ブロック43の坑軸方向の長さは、補強部材15の坑軸方向の長さと同等であり、第2の隙間ブロック43の坑幅方向の長さは、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29の側面との間隔に相当する長さになっている。第2の隙間ブロック43の坑軸方向に延在する両端面には複数のボルト孔43a,43bがそれぞれあけられている。これらのボルト孔43a,43bは、補強部材15の端面15aにあけられたボルト孔15b及び外側の縦リブ29にあけられたボルト孔29aに対向する位置に形成されている。そして、第2の隙間ブロック43は、補強部材15の端面15aに締結具44によって接合されているとともに、スライド部材14a,14bの外側の縦リブ29に締結具45によって接合されている。具体的には、補強部材15の端面15aにあけられたボルト孔15b及び第2の隙間ブロック43のボルト孔43aに締結具44のボルトが挿通されてナットで締結された状態になっており、また、外側の縦リブ29にあけられたボルト孔29a及び第2の隙間ブロック43のボルト孔43bに締結具45のボルトが挿通されてナットで締結された状態になっている。
【0034】
次に、上記した構成からなる拡幅セグメント1の施工方法について説明する。
【0035】
図1,図2に示すように、縮幅されて円形状の拡幅セグメント1を予め掘削された拡幅坑T内に配置する。このとき、拡幅部3を内側に配置させて拡幅セグメント1を縮幅状態にしておく。また、図2,図4に示すように、基部材13(外殻部16)の傾斜された端面と、スライド部材14a,14bの内側端部の段差状部分との間に、止水のための間詰材46を充填しておく。
【0036】
図10(a)は本発明に係る拡幅セグメント1の拡幅工程の準備状況を表す断面図である。図10(a)に示すように、拡幅セグメント1を拡幅坑T内に配置した後、一方の拡幅部3をスライドさせるため、拡幅セグメント1の内部に拡幅用の器具を設置する。具体的には、一方の拡幅部3の上部と他方の拡幅部の上部との間、及び一方の拡幅部3の下部と他方の拡幅部の下部との間にジャッキ50,50をそれぞれ介装させる。このとき、ジャッキ50,50は水平に設置する。
【0037】
また、拡幅セグメント1内の上部に位置するスライド部材14a,14bのうち他方側のスライド部材14bと、該スライド部材14bに上下で対向する拡幅セグメント1内の下部に位置するスライド部材14bとの間に反力部材(第1のパイプサポート51)を建てる。さらに、一方側の拡幅部3の上下部間に反力部材(第2のパイプサポート52)を建てる。
【0038】
図10(b)は本発明に係る拡幅セグメント1の拡幅工程の拡幅状況を表す断面図である。図10(b)に示すように、一方側の拡幅部3を外側にスライドさせて、拡幅セグメント1の拡幅を行う。具体的には、図3,図4,図8,図9,図10(b)に示すように、基部材13の被当接部17とスライド部材14aの当接板27とを接合する締結具35を取り外すとともに、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29とを接合する締結具36を取り外す。また、筒部材34に付設された複数の係止ボルト38…を緩めて補強部材15に対してスライド部材14aが移動できるようにする。その後、上下2本のジャッキ50を同時に可動させ、ジャッキ50の圧力によって一方側の拡幅部3を押圧し、一方側のスライド部材14aを外側にスライドさせて、拡幅部3を外側に移動させる。
【0039】
拡幅部3が所定の拡幅位置まで移動した時点で、筒部材34に付設された複数の係止ボルト38…を締め込み、係止ボルト38…の先端を補強部材15の表面に当接させて補強部材15を所定の位置に保持する。その後、基部材13の被当接部17とスライド部材14aの当接板27との間であって補強部材15の両側方に形成された矩形の隙間に、第1の隙間ブロック40…をそれぞれ嵌合させる。そして、第1の隙間ブロック40…の側面と基部材13の被当接部17とを締結具41によって接合させるとともに、第1の隙間ブロック40…の側面とスライド部材14aの当接板27とを締結具42によって接合させる。
【0040】
また、係止ボルト38…を締め込んだ後、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29の側面との間に形成された隙間に、第2の隙間ブロック43を嵌合させる。そして、第2の隙間ブロック43と補強部材15の端面15aとを締結具44によって接合させるとともに、第2の隙間ブロック43とスライド部材14aの外側の縦リブ29とを締結具45によって接合させる。
【0041】
図10(c)は本発明に係る拡幅セグメント1の拡幅工程の拡幅状況を表す断面図である。図10(c)に示すように、拡幅セグメント1の内部に設置された拡幅用の器具の盛り替えを行い、他方の拡幅部3をスライドさせて、拡幅セグメント1の拡幅を行う。具体的には、第1,第2のサポート51,52をそれぞれ取り外し、移動したスライド部材14aと被当接部17との間に嵌め込まれた上下の第1の隙間ブロック40…間に第1のサポート51を建てて、他方側の拡幅部3の上下部間に第2のサポート52を建てる。
【0042】
その後、他方側の拡幅部3を外側にスライドさせて、拡幅セグメント1の拡幅を行う。具体的には、図3,図4,図8,図9,図10(c)に示すように、基部材13の被当接部17とスライド部材14bの当接板27とを接合する締結具35を取り外すとともに、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29とを接合する締結具36を取り外す。また、筒部材34に付設された複数の係止ボルト38…を緩めて補強部材15に対してスライド部材14bが移動できるようにする。その後、上下2本のジャッキ50を同時に可動させ、ジャッキ50の圧力によって他方側の拡幅部3を押圧し、他方側のスライド部材14bを外側にスライドさせて、拡幅部3を外側に移動させる。
【0043】
拡幅部3が所定の拡幅位置まで移動した時点で、上記した方法で、基部材13の被当接部17とスライド部材14bの当接板27との間であって補強部材15の両側方に形成された矩形の隙間に第1の隙間ブロック40…をそれぞれ介装させるとともに、補強部材15の端面15aと外側の縦リブ29の側面との間に形成された隙間に、第2の隙間ブロック43を介装させる。
【0044】
最後に、ジャッキ50及び第1,第2のサポート51,52をそれぞれ撤去するとともに、拡幅セグメント1によって拡幅する区間の両端に位置する閉塞部材6だけを残して、拡幅する区間の中間に位置する閉塞部材6は全て撤去する。なお、セグメント継手7によるセグメント部材5同士の接合や、リング継手8によるリング状の拡幅セグメント1同士の接合は、拡幅セグメント1を組み立てる過程で逐一行う。
【0045】
上記した構成からなる拡幅セグメント1によれば、基部2には、坑幅方向に延在するスライド面16a及び坑軸方向に延在する被当接部17をそれぞれ有する基部材13と、拡幅部3に接合されているとともに基部材13のスライド面16aに沿ってスライド可能に設けられて且つ拡幅部3が縮幅された状態において被当接部17に当接する坑軸方向に延在する当接板27を有するスライド部材14a,14bと、スライド部材14a,14bのスライド方向に延在して被当接部17及び当接板27にそれぞれ貫設されて基部2の曲げ変形に抵抗する補強部材15と、拡幅部3が拡幅された状態における被当接部17と当接板27との間に介在される第1の隙間ブロック40…とが備えられ、補強部材15としては、矩形盤状の部材が使用され、第1の隙間ブロック40…は、補強部材15に隣接させて配置される構成となっているため、第1の隙間ブロック40…によって、拡幅部3が拡幅された後、スライド部材14a,14bの内側への移動が規制され、拡幅された拡幅セグメントが土圧等によって縮幅されることを防止することができる。また、第1の隙間ブロック40…は、補強部材15の側方に形成された矩形の隙間内で補強部材15に隣接させて配置されることになり、第1の隙間ブロック40…に補強部材15を嵌め込むための切り欠きを形成する必要がないので、第1の隙間ブロック40…が大きな土圧や水圧にも耐え得る強い構造の部材なる。これによって、大きな土圧や水圧が作用する場合にも拡幅セグメント1の拡幅状態を確実に維持させることができ、また、第1の隙間ブロック40…の製作手間が軽減され、材料費の低減を図ることができる。さらに、補強部材15が矩形板状の部材であるため、第1の隙間ブロック40…を嵌合させる隙間は小面積になり、第1の隙間ブロック40…の大きさは小さくなり軽量化されるので、第1の隙間ブロック40…の設置作業の作業性を向上させることができる。
【0046】
また、拡幅部3が拡幅された際に、スライド部材14a,14bの外側の縦リブ29と補強部材15の端面15aとの間に第2の隙間ブロック43を介在させることで、スライド部材14a,14bの内側への移動を第2の隙間ブロック43によって規制し、より大きな土圧等にも耐える拡幅セグメント1を提供することができる。
【0047】
以上、本発明に係る拡幅セグメントの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、拡幅部3は両側にそれぞれ備えられており、拡幅セグメント1は両側方にそれぞれ拡幅されるが、本発明は、図11(a),図11(b)に示すように、片側のみに拡幅部102が備えられている拡幅セグメント100でもよい。この拡幅セグメント100は、拡幅坑Tの天井面及び底面にそれぞれ対向する基部101と、拡幅坑Tの一方の側壁面に対向する円弧板状の拡幅部103と、拡幅坑Tの他方の側壁面に対向する円弧板状のセグメント部102とから構成されている。基部101には、セグメント部102の上下端にそれぞれ接合されて上下で対向する基部材104と、拡幅坑Tの幅方向にスライドするスライド部材105とが備えられており、拡幅状態のスライド部材105の内側方向に形成される隙間には、第1の隙間ブロック106が嵌合される。
【0048】
また、上記した実施の形態では、補強部材15は基部2の坑軸方向における中央位置に1つだけ設けられているが、本発明は、基部の両側端位置(前後端)にそれぞれ設けられていてもよく、この場合、基部の坑軸方向における中央位置に第1の隙間ブロックが配設されることになる。
【0049】
また、上記した実施の形態では、スライド部材14a,14bの外側の縦リブ29と補強部材15の端面15aとの間に第2の隙間ブロック43を介在させているが、本願に係る請求項1に記載された発明は、スライド部材の縦リブと補強部材の端面との間に第2の隙間ブロックを介在させない構成としてもよい。
また、上記した実施の形態では、鋼製のセグメントについて説明しているが、本発明はコンクリート製のセグメントでもよく、鋼製枠内にコンクリートを中詰めしたセグメントでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントに備えられた基部の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態を説明するための拡幅セグメントの拡幅工程を表す断面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態を説明するための拡幅セグメントの断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 拡幅セグメント
2 基部
3 拡幅部
13 基部材
14a,14b スライド部材
15 補強部材
16a スライド面
17 被当接部
27 当接板(当接部)
29 縦リブ
40 第1の隙間ブロック
43 第2の隙間ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削された坑内の天井面及び底面にそれぞれ対向する基部と、前記坑内の側壁面に対向する移動自在の拡幅部とが備えられ、前記拡幅部の移動によって拡幅縮幅自在に形成されている拡幅セグメントにおいて、
前記基部には、坑幅方向に延在するスライド面及び坑軸方向に延在する被当接部をそれぞれ有する基部材と、前記拡幅部に接合されているとともに前記基部材のスライド面に沿ってスライド可能に設けられて且つ前記拡幅部が縮幅された状態において前記基部材の被当接部に当接する坑軸方向に延在する当接部を有するスライド部材と、前記スライド部材のスライド方向に延在して前記基部材の被当接部及びスライド部材の当接部にそれぞれ貫設されて前記基部の曲げ変形に抵抗する補強部材と、前記拡幅部が拡幅された状態における前記基部材の被当接部と前記スライド部材の当接部との間に介在される第1の隙間ブロックとが備えられ、
前記補強部材としては、矩形盤状の部材が使用され、
前記第1の隙間ブロックは、前記補強部材に隣接させて配置されることを特徴とする拡幅セグメント。
【請求項2】
請求項1記載の拡幅セグメントにおいて、
前記スライド部材の内部には坑軸方向に延在する縦リブが設けられ、
前記拡幅部が拡幅された状態における前記スライド部材の縦リブと前記補強部材の坑軸方向に延在する端面との間に、第2の隙間ブロックが介在されることを特徴とする拡幅セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−51434(P2007−51434A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235713(P2005−235713)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】