説明

拡幅治具

【課題】建物の隣り合う外壁パネル間の目地幅を拡幅する治具を提供する。
【解決手段】外壁面材41と、外壁面材41の背面側に、側面を外壁面材41の側面と揃えて配置される下地桟42を有する外壁パネル40の目地幅を拡幅する治具は、、基端部21、基端部21に対し段差を設けて備えられ、一方の外壁パネル40の側面に当接する第一当接部24、及び基端部21の第一当接部24を有する側に備えられ、第一当接部24の当接面に対し垂直方向に立設する支持部26であるボルトを有する本体片2と、もう一方の外壁パネル40に当接する第二当接部31、及び支持部26を挿通する挿通孔32を有する作動片3とからなり、支持部26の開放端側からナット5を締め付けることで、作動片3を支持部26に沿って本体片2の基端部21側に移動させることで、第一当接部24と第二当接部31が開き、目地幅を拡幅することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う2つの対象物の間の空隙を拡幅する治具に関する。詳しくは建物の隣り合う外壁パネル間の目地幅を拡幅する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁を複数の外壁パネルで構成する建物では、隣り合う外壁パネルどうしの間にできる目地には、不定形のシーリング材を充填したり、定型のガスケットを挿入するといった工法が取られている。近年では、品質の安定、施工の容易さを考慮して目地にはガスケットが挿入されることが多い。
【0003】
しかし、定型のガスケットを目地に挿入する場合、目地幅を管理する必要があり、目地幅が基準以上に狭かったり、広かったりすると、ガスケットが挿入できず、避難処置としてシーリングを充填せざるを得ない。
【0004】
そこで、できる限りガスケットを施工するために、外壁パネルの建て込み時に目地幅の調整をしなければならない。そのため、外壁パネル建て込み時に、所定の目地幅の厚みを有する当て材を目地に挟んだ状態で外壁パネルの建て込みを行ったり、外壁パネル建て込み後の目地幅が狭い場合に、目地にバールやシノを差し込んで目地を拡幅した状態で、躯体側に外壁パネルを固定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−111301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、外壁パネルを躯体に固定した後、当て材を取り外すことは難しく、無理に当て材を取り外そうとすると、外壁面材の小口を傷つけてしまうことがあった。また、外壁パネルの建て込み後に、バールやシノで目地を拡幅すると、バールやシノで面材の小口を傷つけてしまう。
【0007】
そのために、面材の補修や貼り替えなどをしなければならなかった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、建物の隣り合う外壁パネル間の目地幅を拡幅する治具、及び隣り合う2つの対象物の間の空隙を拡幅する治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、隣り合う2つの対象物の間の空隙を拡幅する治具であって、
基端部、該基端部に対し段差を設けて備えられ、一方の対象物の側面に当接する第一当接部、及び該基端部の第一当接部を有する側に備えられ、該第一当接部の当接面に対し垂直方向に立設する支持部を有する本体片と、
もう一方の対象物に当接する第二当接部、及び該支持部を挿通する挿通孔を有する作動片とからなり、
該作動片を支持部に沿って本体片の基端部側に移動させることで、第一当接部と第二当接部が開き、対象物の間の空隙を拡幅することを特徴とする拡幅治具により解決される。
【0010】
この拡幅治具では、第二当接部を有する作動片を、第一当接部を有する本体片の基端部側に移動させることで、第一当接部と第二当接部が開き、対象物の間の空隙を拡幅することができるようになされているので、作動片を本体片の基端部側へ移動させる圧縮動作によって、対象物の空隙を拡幅させることができる。そのため、対象物の空隙にバールやシノを挿入し、こじあけるようにして空隙を拡幅する必要がないため、対象物を傷つけたり、破損させてしまうことがない。さらに、空隙を拡幅する動作を圧縮動作により行えるので、効率よく力を伝達することができ、作業性が向上し、結果的に作業ミスによる対象物の破損等を防くことができる。
【0011】
この拡幅治具において、前記支持部がボルトであって、支持部の開放端側からナットを締め付けることで作動片を本体片の基端部側に移動させることができるとよい。
【0012】
本体片に対する作動片の移動を、本体片に備えられたボルトからなる支持部に対し、ナットを締付けることで実現しているので、空隙を拡幅する動作を、螺子の締め付け動作で行うことができる。また、螺子を締め付ける動作だけなので、対象物の拡幅時に、第一当接部及び第二当接部を介して対象物に均等に力が伝達されるため、対象物の一部に力が集中してかかることがなく、対象物の破損等を防ぐことができる。さらに、ナットの締め付け作業は専用の電動工具により行うことができるので、作業者への負担を低減することができる。
【0013】
また、この拡幅治具において、前記本体片と作動片間に、作動片を本体片の基端部側と反対側に付勢する付勢手段が備えられているとよい。
【0014】
対象物の拡幅動作終了後、本拡幅治具を取り外すときに、付勢手段により、作動片が本体片の基端部側と反対側に付勢されるので、第一当接部と第二当接部が対象物から離れ、本拡幅治具を取り外すことができる。特に、本拡幅治具の支持部がボルトであって、ナットで締め付けることで作動片を本体片の基端部側に移動させることができるようになされている場合には、ナットを緩めるだけで、作動片が付勢手段により付勢されるため、作業者は作動片を移動させる必要がなく、本拡幅治具などを両手に持って作業している状態でも、容易に本拡幅治具を取り外すことができる。
【0015】
また、第一当接部の厚さと第二当接部の厚さが同一であるとよい。
【0016】
第一当接部と第二当接部の厚みが同一であるので、第一当接部と第二当接部とを揃えることで、第一当接部及び第二当接部の厚み以上の空隙に対して、本拡幅治具を適用することができる。
【0017】
さらに、前記対象物が、外壁面材と、該外壁面材の背面側に、側面を該外壁面材の側面と揃えて配置される下地桟を有する外壁パネルであるとよい。
【0018】
外壁面材と、該外壁面材の背面側に、側面を該外壁面材の側面と揃えて配置される下地桟を有する外壁パネルに対して、この拡幅治具を適用することで、拡幅治具は、下地桟に力を伝達して、外壁パネル間の空隙を拡幅することができるので、外壁面材をより傷つけることなく、拡幅することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上のとおりであるから、建物の隣り合う外壁パネル間の目地幅を拡幅する治具、及び隣り合う2つの対象物の間の空隙を拡幅する治具することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図(イ)は、本発明の実施形態である拡幅治具を示す一部断面側面図、図(ロ)は同斜視図である。
【図2】拡幅治具を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】拡幅治具の作動状態を示す側面図であって、図(イ)は、本体片と反対側に作動片を移動した状態を示す側面図、図(ロ)は、本体片の基端部側に作動片を移動させた状態を示す側面図である。
【図4】図(イ)乃至(ハ)は、拡幅治具を用いて外壁パネル間の目地を拡幅する方法を順に示す平面図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1,2に示す本発明の実施形態である拡幅治具1において、2は本体片、3は作動片、4は、付勢手段としてのバネ、5,6は本体片2と作動片を一体化する締結手段としてのナットと平ワッシャである。
【0023】
本体片2は、矩形平板状の基端部21と、基端部21の一辺22に、その一辺22の両端部側より斜め上方に突出する対の立ち上がり部23,23が設けられ、立ち上がり部23,23の上端部に外方に張り出す、基端部21と水平な対の第一当接部24が設けられており、第一当接部24,24の上面側、すなわち基端部21に対し、第一当接部24,24を有する側が当接面25,25となる。基端部21の第一当接部24,24を有する側の中央部には、基端部21から垂直に立設する支持部26としてナットが設けられている。基端部21の対の立ち上がり部23,23を有する一辺22と相対する側の一辺27には、本体片2の面剛性を高めるために、基端部21に対し支持部26を有する側とは反対方向に垂直に立設する立ち上がり板部28が設けられている。なお、29は、拡幅治具1の落下防止のために作業者のベルトなどに取り付けるストラップ7を取り付けるための孔である。
【0024】
作動片3は、本体片2の対の第一当接部24,24の間隔と略同一の幅寸法を有する矩形平板状の第二当接部31に、本体片2の支持部26が挿通する挿通孔32があけられている。33は、挿通孔32と同円心軸上に備えられ、作動片3の支持部26に沿った移動を安定させるための、内部中空の円筒体である。作動片の円筒体33が備えられていない側が当接面34となる。なお、第一当接部24と第二当接部31の厚さが略同一となるように、同じ板厚の部材が用いられれているとよい。
【0025】
本体片2と作動片3とは、それぞれの当接面、25,34を相対する向きにして、本体片2の支持部26に、作動片3の挿通孔32及び円筒体33を挿通させて組み合わされる。なお、付勢手段としてのバネ4は、支持部26に取り付けられ、本体片2と作動片3との間に介設される。円筒体33から突出したボルトには、平ワッシャ6を介してナット5が取り付けられる。
【0026】
図3(イ)、(ロ)に示すように、ボルト5を締めたり緩めたりすることによって、本体片2に対して、作動片3を支持部26に沿って移動させることができ、本体片2に対する作動片3の相対位置を変化させることができる。
【0027】
図3(イ)に示すようにナット5を緩めた状態では、付勢手段としてバネ4の付勢力により、作動片3は本体片2から離れる方向に付勢される。一方、図3(ロ)に示すように、ナット5を締めた状態では、ナットを締めるにしたがって、付勢手段としてのバネ4の付勢力に抗って、作動片3は本体片2の基端部21側へ移動し、作動片3が本体片2の基端部21側へ移動するに従って、本体片2及び作動片3のそれぞれの第一当接部24及び第二当接部31がそれぞれ離間し、第一当接部24及び第二当接部31のそれぞれ当接面25、34はそれぞれ離間する。つまり、本体片2と作動片3とをナット5の締め付けによる圧縮動作をすることによって、第一当接部24及び第二当接部31のそれぞれ当接面25、34どうしを離間させることができ、当接面を空隙を有する2つの対象物のそれぞれの側面に当接して圧縮動作をすることで、空隙を拡幅させることができる。つまり、対象物の空隙の拡幅動作を拡幅治具1に対して圧縮動作を施すことにより実現することができる。
【0028】
次に、本拡幅治具を建物の隣り合う外壁パネル間の目地幅を拡幅するために用いた場合について示す。
【0029】
図4に示す外壁パネル40は、窯業系サイディング材の外壁面材41の背面側に、発泡樹脂材からなる短冊状の下地桟42が、その側面42aを外壁面材の側面41aと揃えて配置され、下地桟42の背面側に板状繊維系断熱材43を介して鋼製の外壁パネルフレーム44が備えられている。45は外壁パネル40内に充填される繊維系断熱材である。
【0030】
隣り合う外壁パネル40,40は、それぞれ外壁パネルフレーム44,44を溝型鋼からなる柱材46に固定し、柱材46を介して、一体化される。47、48はそれぞれ外壁パネルフレーム44と柱材46を締結するためのボルトとナットである。また、49,50はそれぞれ板状繊維系断熱材、繊維系断熱材である。
【0031】
図4(イ)に示すように、隣り合う外壁パネル40,40間の目地部51の幅が狭く、拡幅する必要がある場合には、拡幅治具1のナット5の締付け量を調整し、第一当接部24と第二当接部31が略同一面上に揃うようにした状態で、拡幅治具1の第一当接部24と第二当接部31を目地部51に挿入する。
【0032】
図4(ロ)に示すように、ナット5を締め付けることで、作動片3は本体片2の基端部21側へ移動し、作動片3が本体片2の基端部21側へ移動するに従って、第一当接部24及び第二当接部31がそれぞれ離間し、それぞれの当接面25、34は当接する外壁パネル40,40の側面41a,41a,42a,42aを押し広げる。
【0033】
そして、所定の目地部51を所定の目地幅に拡幅した後、外壁パネルフレーム44と柱材46間にスペーサを挿入するなど目地幅を拡幅させたまま維持する対策を施した後、外壁パネル40と柱材46の本締めを行い、一体化させる。
【0034】
最後に、図4(ハ)に示すように、ナット5を緩めることで、バネ4の付勢力により、作動片3は本体片2から離れる方向に付勢され、当接面25,34は外壁パネル40,40の側面41a,42aから離れ、目地部51から拡幅治具1を抜き取ることができる。
【0035】
本実施例では、外壁パネル40が、外壁面材41の背面側に、下地桟42が、その側面42aを外壁面材の側面41aと揃えて配置されているので、拡幅治具1の当接面25,34から外壁パネルの側面に伝わる力は、下地材42,42を介して外壁パネル40,40に伝わるため、外壁面材41が破損することが抑えられる。また、拡幅治具1のナット5を締付けて、本体片2と作動片3とを近接させる圧縮動作をするだけで、目地の拡幅を行うことができるので、外壁パネル40の側面に均一に力がかかるため、力の集中による、外壁面材40の破損も防ぐことができる。さらに、拡幅治具1を目地部51から抜き取る場合にも、拡幅治具1のナット5を緩めて、本体片2と作動片3とを離間させることで、当接面25,34の外壁パネル40の側面への当接を解除できるので、拡幅治具1を外壁パネル40を傷つけることなく、容易に目地部51から抜き取ることができる。
【0036】
図5に示す本発明の第2の実施形態である拡幅治具60では、本体片2と作動片3との間での指挟み事故を防止するため、本体片2の基端部21に、作動片が近接する周辺部に沿って立設するカバーが取り付けられている。
【0037】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、拡幅治具について、一例について示したが、拡幅治具の形状について制限はなく、本発明の構成を含む範囲において、任意の形状が選択できるのはいうまでもない。
【0038】
例えば、本実施形態では、本体片2には第一当接部24が2つある場合について、示したが第一当接部は1つであってもよく、3つ以上であってもよく、作動片3も、本体片2の形状に合わせて、適合する形状が選択されるとよい。また、上記の実施形態では、第一当接部24と第二当接部31の厚みが略同一である場合について示したが、それぞれ異なる板厚であってもよく、適用する目地幅との関係で任意の板厚が選択されればよい。
【0039】
また、本拡幅治具により拡幅される対象は、外壁パネル間の目地だけでなく、2つの物体間の隙間に適用でき、本拡幅治具を用いることにより、2つの物体間の隙間を拡幅することができる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・拡幅治具
2・・・本体片
3・・・作動片
4・・・バネ(付勢手段)
5・・・ナット
21・・・基端部
24・・・第一当接部
25・・・当接面(第一当接部)
26・・・支持部
31・・・第二当接部
32・・・挿通孔
33・・・円筒体
34・・・当接面(第二当接部)
40・・・外壁パネル
41・・・外壁面材
42・・・下地桟
51・・・目地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2つの対象物の間の空隙を拡幅する治具であって、
基端部、該基端部に対し段差を設けて備えられ、一方の対象物の側面に当接する第一当接部、及び該基端部の第一当接部を有する側に備えられ、該第一当接部の当接面に対し垂直方向に立設する支持部を有する本体片と、
もう一方の対象物に当接する第二当接部、及び該支持部を挿通する挿通孔を有する作動片とからなり、
該作動片を支持部に沿って本体片の基端部側に移動させることで、第一当接部と第二当接部が開き、対象物の間の空隙を拡幅することを特徴とする拡幅治具。
【請求項2】
前記支持部がボルトであって、支持部の開放端側からナットを締め付けることで作動片を本体片の基端部側に移動させることができる請求項1に記載の拡幅治具。
【請求項3】
前記本体片と作動片間に、作動片を本体片の基端部側と反対側に付勢する付勢手段が備えられた請求項1乃至2に記載の拡幅治具。
【請求項4】
第一当接部の厚さと第二当接部の厚さが同一である請求項1乃至3に記載の拡幅治具。
【請求項5】
前記対象物が、外壁面材と、該外壁面材の背面側に、側面を該外壁面材の側面と揃えて配置される下地桟を有する外壁パネルである請求項1乃至4に記載の拡幅治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188808(P2012−188808A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50669(P2011−50669)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(511061660)有限会社サンホームフジ (1)
【出願人】(504082025)株式会社イング (29)
【Fターム(参考)】